JP2004260899A - モータのステータ鉄心の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コイルが巻回されるティースを備えたコアシートを複数枚、厚さ方向に積層したモータのステータ鉄心の製造方法において、通常の電磁鋼板から打抜いた後、歪取焼鈍を施したコアシート(A)と、接着コーティングが両面に施された電磁鋼板から打抜いたコアシート(B)とを1枚おきに積層した後に、加圧下で熱処理して相互に接着一体化することでモータのステータ鉄心を構成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はステータコアの鉄損改善を図った各種モータのステータ鉄心の製造方法に関し、詳しくはモータのステータを形成する際に接着コーティングにより交互に積層する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば三相同期モータのステータは、電磁鋼板の打抜片を回転軸の軸方向に積層して構成されている。積層される鋼板は、表面に絶縁層が形成されており、組立後、機械的にかしめたり、コア端部を溶接したり、一部の例においては接着層がコーティングされており、該接着層を加熱溶融することでコアシートが一体化される。こうしたモータの一例としては、特許文献1に示された「可変リラクタンスモータ」などが知られている。
モータコアのコアシート固定法には電磁鋼板を積層して、かしめや溶接することが一般的であるが、かしめや溶接等の加工を施した場合、コアの磁気特性劣化が問題となる。また、かしめや溶接等の積層コアでは部分的に固定するため、振動や騒音の原因になる場合がある。
【0003】
電磁鋼板の表面には、渦電流損の低減を目的として絶縁被膜が施されている。この絶縁被膜には、本来の絶縁性のほかに耐食性や打抜き性などの各種機能が付与されているが、これらの被膜特性に接着剤としての機能をさらに付与することが可能で、古くから様々な技術が提案されている。すなわち、電磁鋼板に塗布されている絶縁被膜を加圧と同時に加熱することにより被膜が溶融・融着して積層した鋼板を接着し、コアシートを一体化できるいわゆる接着コーティング(特許文献2、特許文献3など)が考案されている。この接着コーティングはかしめや溶接で生じる問題を軽減でき、最近浸透し始めた技術である。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−119561号公報
【特許文献2】
特公昭49−33491号公報
【特許文献3】
特公昭55−9815号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
モータの効率の向上、例えば三相同期モータの出力トルクの増大、形状の小型化を図るためには、磁束密度が高くなり鉄損が増加する。これに対し鉄損による発熱を抑えるために冷却ファンを大きくするとモータ全体が大きくなる。
改正省エネルギー法が公示され、トップランナー方式が適用されるに至り、電気機器のモータ等におけるさらなる低鉄損化が必要となった。この中で接着コーティングは、かしめや溶接に見られるようなコアシート間の短絡がなく、渦電流損失が小さい。しかしながら、接着コーティングは歪取焼鈍により劣化するので、歪取焼鈍するコアには用いられず、歪取焼鈍による鉄損低減効果が享受されていない。
本発明の目的は、接着コーティングと歪取焼鈍による2つの鉄損低減効果を合わせて享受することが可能なモータのステータ鉄心の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の具体的な手段は以下の通りである。
コイルが巻回されるティースを備えたコアシートを複数枚、厚さ方向に積層したモータのステータ鉄心の製造方法において、通常の電磁鋼板から打抜いた後、歪取焼鈍を施したコアシート(A)と、接着コ−ティングが両面に施された電磁鋼板から打抜いたコアシート(B)とを1枚おきに積層した後に、加圧下で熱処理して相互に接着一体化することを特徴とするモータのステータ鉄心の製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
ステータにおけるコア歪取焼鈍の効果、および接着コーティングによる層間短絡回避と加工歪の回避とかしめ等の効果を同時に享受するためには、接着コーティング付き電磁鋼板のコアへの適用方法と焼鈍工程の組み合わせが重要と考えた。以下にその実施の形態を詳細に説明する。
【0008】
本発明におけるコア製造工程を図1に示す。この工程では打抜き工程と焼鈍工程において接着コーティングが両面に施された電磁鋼板と全く施されていない電磁鋼板を分離した。接着コーティングが施された鋼板は一般的な工程と同様に打抜いた。接着コーティングが無い鋼板は打抜いたあと、焼鈍炉により750℃で歪み取り焼鈍を行った。これら2種類のコアシートはベルトコンベア等で運ばれ、機械的に交互に積み重ねられ積層してコア形状に整えた。積層後コアを200℃に加熱し、1MPaの圧縮力を加えて焼き付けによりコアを接着一体化した。
【0009】
本発明の製造方法により、コアの半分は焼鈍済みのコアシート(A)、残り半分は焼鈍無しのコアシート(B)で構成されたステータができた。この構成を図2に示す。これに巻線を挿入してステータ部を構成した。焼鈍済みの鋼板は低い鉄損を示し、コア全体の鉄損低減に寄与している。一方、接着コーティング付き鋼板は隣り合う鋼板に接着し、コア固定の役割を果たすと同時に層間短絡、加工歪による鉄損増加の抑制に寄与している。
以下、実施例にもとづき本発明を説明する。
【0010】
【実施例】
[実施例1]
本発明を適用して実験に用いたモータのステータは鋼板厚さ0.5mmの50H350、ロータ径φ40mm、外径φ150mmで積層厚が50mmになるようにコアシートを重ねた。このステータを構成するにあたり、▲1▼本発明を適用した、接着コーティング付き鋼板を1枚おきに積んで固定したコア、▲2▼接着コーティング付き鋼板のみで構成して焼鈍していないコア、▲3▼打抜・歪取焼鈍後、かしめで固定したコア、▲4▼打抜・歪取焼鈍後、溶接で固定したコアの4ケースについて鉄損(W15/50;50Hzで1.5Tの鉄損)を測定した。鉄損測定に関して、コアの周方向に数100ターンのコイルを2本巻き、一方のコイルは励磁してこの電流を測定し、残りのコイルから電圧を測定し、電力計を用いて値を求めた。この結果を図3に示す。
【0011】
本発明で構成したコアは焼鈍効果が現れ、鉄損が一番低かった。焼鈍無しのコアシートを用い接着コーティング付き鋼板のみで構成したコアは、本発明で構成されたものより鉄損が高かった。また、かしめで固定したコアはコアシート間で短絡が生じるのでさらに鉄損は高かった。溶接による固定は歪取焼鈍後においても最も鉄損が高く、層間短絡がさらに大きいことが予想される。
【0012】
[実施例2]
以下本発明の第2の実施例について、図面を参照しながら説明する。
コア形状は鋼板厚さ0.15mmの15HTH1000、積層厚が50mm、ロータ径φ50mm、外径φ200mmである。実施例1と同様に、▲1▼本発明を適用した、接着コーティング付き鋼板を1枚おきに積んで固定したコア、▲2▼接着コーティングのみで構成して焼鈍していないコア、▲3▼打抜・歪取焼鈍後、かしめで固定したコア、▲4▼打抜・歪取焼鈍後、溶接で固定したコアの4ケースについて実施例1と同様の方法により鉄損(W15/50)を測定した。この結果を図4に示す。
【0013】
本発明で構成したコアは焼鈍効果が現れ、鉄損が一番低かった。焼鈍無しのコアシートを用い接着コーティングのみで構成したコアは、本発明で構成されたものより鉄損が高かった。また打抜・歪取焼鈍後、かしめあるいは溶接により固定したコアはさらに鉄損が高かった。
【0014】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、積層の固定のために接着コーティングを用い、焼鈍した鋼板と焼鈍なしの鋼板を交互に積層することで接着コーティングによる固定と焼鈍効果を同時に享受する効果が期待し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造工程を示した図である。
【図2】本発明のコアの構成を示した図である。
【図3】実施例の効果を示す図である。
【図4】実施例の効果を示す図である。
Claims (1)
- コイルが巻回されるティースを備えたコアシートを複数枚、厚さ方向に積層したモータのステータ鉄心の製造方法において、通常の電磁鋼板から打抜いた後、歪取焼鈍を施したコアシート(A)と、接着コーティングが両面に施された電磁鋼板から打抜いたコアシート(B)とを1枚おきに積層した後に、加圧下で熱処理して相互に接着一体化することを特徴とするモータのステータ鉄心の製造方法。
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