JP2012050200A - 分割ステータコアとその製造方法、および、分割ステータコアを具備するモータ - Google Patents
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Abstract
【課題】分割ステータコアの製造過程で、そのヨークに圧縮応力が作用する場合であっても、生じ得るモータ鉄損を可及的に低減することのできる分割ステータコアとその製造方法、さらには、該分割ステータコアを具備するモータを提供する。
【解決手段】平面視が弧状のヨーク11と、該ヨーク11から径方向内側に突出するティース12と、からなる電磁鋼板1が積層されて分割コア10が形成され、該分割コア10、…が円周方向に組み付けられ、その外周が筒体20にて締結されてなる、モータ用の分割ステータコア100であり、ティース12を形成する結晶粒12aの平均粒径に比して、ヨーク11を形成する結晶粒11aの平均粒径が相対的に小さくなっている。
【選択図】図2
【解決手段】平面視が弧状のヨーク11と、該ヨーク11から径方向内側に突出するティース12と、からなる電磁鋼板1が積層されて分割コア10が形成され、該分割コア10、…が円周方向に組み付けられ、その外周が筒体20にて締結されてなる、モータ用の分割ステータコア100であり、ティース12を形成する結晶粒12aの平均粒径に比して、ヨーク11を形成する結晶粒11aの平均粒径が相対的に小さくなっている。
【選択図】図2
Description
本発明は、分割ステータコアとその製造方法、および分割ステータコアを具備するモータに関するものである。
自動車産業においては、ハイブリッド自動車や電気自動車のさらなる走行性能の向上を目指して、駆動用モータの高出力化、軽量化、小型化への開発が日々進められている。また、家電製品メーカーにおいても、各種家電製品に内蔵されるモータのさらなる小型化、高性能化への開発に余念がない。
モータの性能を向上させるには、モータ内部で発生する各種損失を如何に低減できるかが課題である。例えば、電気入力後においては、モータを構成するコイルにおいて導体抵抗損失に起因する銅損が生じ、ロータやステータには渦電流損失やヒステリシス損失に起因する鉄損(または高周波鉄損)が生じ、これらの損失に応じてモータ効率やトルク性能が低下することとなる。この渦電流損失は磁束密度の変化によって齎される損失であり、ヒステリシス損失は磁束密度波形に起因する損失である。
ところで、モータを構成するステータコアとして、コイル形成を含めた製造効率向上の観点から、複数の分割コアからステータ(分割ステータ)を製造する方法がある。この分割ステータにおいては、分割コアのティースにコイルを形成して各分割コアを組付けて円環状のコアユニットを形成し、このコアユニットを筒体(ケーシング)に挿入し、この筒体を焼き嵌めることにより、分割ステータが製造されている。また、その他の方法として、組み付けられた分割コアの外周寸法よりも小さな寸法のテーパー部をその内周に具備する筒体を、組み付けられた分割コアの外周に圧入する(嵌め込む)ことで、分割コアを一体化する方法もある。たとえば、特許文献1,2には、分割コアを組み付け、それらの外周を焼き嵌め処理して製造されるステータに関する技術が開示されている。
上記いずれの方法であっても、ステータコアの特に外周のヨークでは、焼き嵌めや圧入時の圧縮力が直接作用してその内部に圧縮応力が生じる結果、ヨーク内部の磁区の向きが好ましい方向から乱れてしまい、あるいは磁壁の動きが妨げられてしまうことで上記する鉄損が大きくなってしまうという課題が生じており、この課題は、上記する特許文献1,2に開示の技術も当然に有するものである。
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、分割ステータコアの製造過程で、そのヨークに圧縮応力が作用する場合であっても、生じ得る鉄損を可及的に低減することのできる分割ステータコアとその製造方法、さらには、該分割ステータコアを具備するモータを提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による分割ステータコアは、平面視が弧状のヨークと、該ヨークから径方向内側に突出するティースと、からなる電磁鋼板が積層されて分割コアが形成され、該分割コアが円周方向に組み付けられ、その外周が筒体にて締結されてなる、モータ用の分割ステータコアであって、前記ティースを形成する結晶粒の平均粒径に比して、前記ヨークを形成する結晶粒の平均粒径が相対的に小さくなっているものである。
本発明者等によれば、電磁鋼板に圧縮応力が作用した場合には、励磁周波数にも依存するが、該電磁鋼板の結晶粒の平均粒径が大きくなるに従って生じる鉄損も大きくなること、および、圧縮応力が作用しない場合(無応力の場合)には、平均粒径が所定範囲の場合に鉄損が少なくなり、その範囲を下回る、もしくは上回る場合には鉄損が大きくなること、という知見が得られている。そこで、本発明の分割ステータコアは、たとえば、円環状が分割されてなる弧状のヨークと、このヨークから径方向内側に突出するティースと、を有する電磁鋼板が積層された分割コアが組み付けられたものにおいて、このティースを構成する結晶粒の平均粒径に比してヨークの結晶粒の平均粒径が小さくなっており、これにより、焼き嵌め等の処理の際に圧縮力が直接作用して、内部応力が生じるヨークの鉄損を可及的に少なくするとともに、該焼き嵌め等の処理の際に内部応力が生じ得ないティースの鉄損も可及的に少なくして、コア全体の鉄損を最小とする分割ステータコアである。
なお、無応力時に電磁鋼板の結晶粒径が所定範囲で最小となる、すなわち、所定範囲で鉄損の最適値を有する理由は、渦損が粒子径の増加に伴って増加する一方で、ヒステリシス損が粒子径の増加に伴って減少する傾向にあり、したがって、渦損とヒステリシス損の総計からなる鉄損は、ある粒子径範囲で鉄損の少ない最適値(最適範囲)を有するというものである。また、ここでいう「粒子径」とは、結晶粒が球状もしくは略球状の場合はその直径のことであり、結晶粒がそのほかの形状(多角形状、角形と曲面が混ざり合った形状、などの任意形状)の場合にはその最大寸法のことである。また、「平均粒径」とは、ヨーク内、もしくはティース内でそれぞれ測定された、複数の結晶粒径の平均値のことであり、たとえば、ヨーク内のデジタル画像から任意部位の複数の結晶粒の粒径を測定し、その平均値を求めることで「平均粒径」を規定することができる。
ここで、本件特許発明によれば、前記ティースの結晶粒の平均粒径が70〜120μmの範囲にあり、前記ヨークの結晶粒の平均粒径が30〜70μm未満の範囲にある場合に、分割コア全体の鉄損を最も少なくできることが実証されている。なお、平均粒径の最下限である30μmは、30μm未満となった際にその粒径制御が極めて困難になるという本発明者等の知見に基づくものである。
また、本発明による分割ステータコアの好ましい実施の形態は、前記ヨークの結晶粒の平均粒径が前記ティースの結晶粒の平均粒径に比して小さいことに加えて、前記ティースが前記ヨークに比して低鉄損となっているものである。
たとえば、電磁鋼板のティース部とヨーク部を鉄損特性の異なる別体の電磁鋼板で形成し、これらを組み付ける(接続部を嵌め合い構造とするなど)ことで、一つの電磁鋼板とすることができる。
本発明者等の検証によれば、ヨークとティースでその結晶粒径の大きさを変化させることに加えて、ティースをヨークに比して低鉄損とすることにより、分割ステータコア全体の鉄損をより低減できることが実証されている。
また、本発明による分割ステータコアの製造方法は、平面視が弧状のヨークと、該ヨークから径方向内側に突出するティースと、からなる電磁鋼板が積層されて分割コアが形成され、該分割コアが円周方向に組み付けられ、その外周が筒体にて締結されてなる、モータ用の分割ステータコアの製造方法であって、用意された電磁鋼板を分割ステータコア製造用の形状に打ち抜き加工して電磁鋼板片を製造してこれを積層し、ティースのみを加熱処理して、該ティースの結晶粒の平均粒径を成長させることで、ヨークを形成する結晶粒の平均粒径に比してティースの結晶粒の平均粒径が相対的に大きな分割コアを製造する第1の工程と、前記分割コアを円周方向に組み付け、その外周を筒体にて締結して分割ステータコアを製造する第2の工程と、からなるものである。
電磁鋼板の製造は従来公知の方法を適用することができ、たとえば、転炉で吹錬した溶鋼を脱ガス処理し、所定の成分に調整し、引き続き、鋳造、熱間圧延、冷間圧延、仕上げ焼鈍をおこなう。この焼鈍処理によって結晶粒を大きくして所望の粒径にすることができる。
製造された電磁鋼板を所定の分割ステータコア製造用の形状に打ち抜き加工することで、分割ステータコア用の電磁鋼板片を製造する。この電磁鋼板片を所望高さまで積層することで、分割コアが製造される。なお、電磁鋼板片を積層後に、そのヨークをかしめて分割コアの形状保持を図ってもよい。
次に、製造された分割コアのうち、ティースのみを加熱処理(もしくは高温処理)することで、該ティースを形成する結晶粒の粒径を成長させ、ヨークを形成する結晶粒に比してその平均粒径を大きくする。
ここで、ティースの加熱温度は適宜に調整でき、たとえば、焼鈍時の温度と同程度の温度であってもよいし、それ以上の温度であってもよい。電磁鋼板は、高温処理することで、その結晶粒の成長が再開し、その処理温度と処理時間を調整することで、所望粒径の結晶粒を具備する電磁鋼板からなる分割コアが得られる(第1の工程)。
なお、このティースの加熱処理の際に、ヨークのみに冷媒を提供する等して冷却し、ヨークを形成する結晶粒の粒径の成長抑止を同時に図ってもよい。
得られた分割コアを円周方向に組み付け、その外周を筒体にて締結して分割ステータコアを製造する(第2の工程)。
ここで、上記する組み付けられた複数の分割コアの締結方法として、たとえば以下の2つの方法を挙げることができる。
その一つは、組み付けられた分割コアの外周に筒体を設置し、焼き嵌め処理するものであり、他の一つは、組み付けられた分割コアの外周に、該外周の寸法よりも小さなテーパー部をその内周に具備する筒体を嵌め込むものである。
組み付けられた分割コアをいずれの方法で締結する場合でも、締結時に分割コアの特にヨークには圧縮力が作用し、この圧縮力に起因する圧縮応力がヨーク内に生じる。
既述するように、本発明者等によれば、圧縮応力が電磁鋼板に生じた際に、その結晶粒の粒径が大きくなるにしたがって鉄損も比例的に増大するという知見が得られていることから、ヨークを形成する結晶粒の平均粒径を可及的に小さくしておくことで、この締結時に生じる圧縮応力に起因するヨークの鉄損を可及的に低く抑えることができる。
一方、電磁鋼板に圧縮力が作用せず、したがってその内部が無応力の場合には、渦損とヒステリシス損を加算してなる鉄損は、その結晶粒の粒径が所定範囲で最小となり、その範囲よりも小さな粒径および大きな粒径において、鉄損は増加するという知見が得られている。そこで、ティースの結晶粒の平均粒径を上記する所定範囲程度に調整し、ヨークの結晶粒の平均粒径をティースのそれよりも小さく調整することで、ステータコア全体の鉄損を最小とすることができるのである。
また、本発明による分割ステータコアの製造方法の好ましい実施の形態において、前記第1の工程では、ヨークとティースで用意される電磁鋼板が異なるものであって、ティース用の電磁鋼板がヨーク用の電磁鋼板に比して低鉄損となっており、ヨークおよびティースそれぞれの形状にそれぞれに固有の電磁鋼板が打ち抜き加工され、双方が組み付けられて前記電磁鋼板片が製造される、もしくは、打ち抜き加工されたヨーク用鋼板片を積層して分割積層体を形成し、ティース用鋼板片を積層して別途の分割積層体を形成し、双方を組み付けて前記分割コアとするものである。
既述するように、分割コアのヨークとティースで双方の鉄損を変化させる、より具体的には、ヨークに比してティースの鉄損を低くすることにより、分割ステータコア全体の鉄損をより低鉄損とすることができる。
ここで、双方の鉄損特性を変化させる方法としては、ティース用の電磁鋼板のみに方向性電磁鋼板を適用する方法や、ティース用電磁鋼板を圧延加工する際の圧延方向を、ティース内での磁束流れに沿う方向(ティースの長手方向に沿う方向)に調整する一方で、ヨーク用電磁鋼板はそのような調整をおこなわない等の方法がある。
本実施の形態では、第1の工程において、ティースとヨークの双方に固有の電磁鋼板を打ち抜き加工し、次いで双方を嵌め合い等して組み付けて一つの電磁鋼板片を製造し、この電磁鋼板片を積層して分割コアを製造する方法、もしくは、ティースとヨークのそれぞれで、打ち抜き加工後の鋼板片を積層して分割積層体をまず形成し、双方の分割積層体を組み付けて分割コアを製造する方法、のいずれか一方を適用できるものである。さらに、ティースの加熱処理は、そのいずれのタイミングでおこなわれてもよく、分割コア製造後であってもよいし、ティース用の分割積層体を加熱処理し、その後に双方の分割積層体を組み付けて分割コアを製造してもよい。
上記する本発明の分割ステータコアの製造方法は、従来一般の方法で分割コアを製造後に、そのティースのみを加熱処理するだけの極めて簡易な製造方法であり、この製造方法によって、鉄損の少ない高性能な分割コア、ひいては分割ステータコアを何等のコスト増を齎すことなく製造することができる。したがって、この分割ステータコアを具備するモータ(回転機)は、トルク性能、回転性能、出力効率に優れたものとなり、近時その生産が拡大しており、車載される特に駆動用モータに一層の高出力性能を要求する、ハイブリッド車や電気自動車に好適である。
以上の説明から理解できるように、本発明の分割ステータコアとその製造方法によれば、製造された分割コアのティースのみを加熱処理するだけの極めて簡易な製造方法によって、鉄損の少ない高性能な分割コア、ひいては分割ステータコアを何等のコスト増を齎すことなく製造することができ、この分割ステータコアを具備するモータは、トルク性能、回転性能、出力効率に優れたものとなる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、ステータコアのティース周りに形成されるコイルや絶縁紙等のインシュレータ(このコイルがボビンの周りに形成されるものであってもよい)の図示は省略している。
図1は、本発明の分割ステータコアを形成する分割コアの一実施の形態を示した斜視図であり、図2は、図1の分割コアの平面図であって、ヨークとティース双方の結晶粒を模式的に示した図であり、図3a、bはともに、図1の分割コアの他の実施の形態の平面図であって、ヨークとティース双方の結晶粒を模式的に示した図である。
分割コア10は、弧状のヨーク11とヨーク11の径方向内側に突出するティース12とからなる電磁鋼板片1,…が所定高さまで積層され、たとえば、このヨーク11がかしめられて図示のごとき外形を保持したものであり、さらに、ティース12の結晶粒12aの平均粒径がヨーク11の結晶粒11aのそれに比して相対的に大きくなっているものである。
電磁鋼板片1の製造方法は、所定の成分に調整された溶鋼を鋳造後、圧延処理してシート状の鋼板を製造し、これを、600〜1000℃程度で、数分〜数時間焼鈍処理することにより、所望する粒径(平均粒径)の結晶粒を有する電磁鋼板を得ることができる。次いで、製造された電磁鋼板を図1で示すような形状に打ち抜き加工することで、分割ステータコア用の電磁鋼板片1が得られる。
電磁鋼板片1,…を積層してヨーク11をかしめた後に、ティース12のみを直接加熱し、もしくはティース12のみを加熱炉内に収容し、たとえば焼鈍時の温度と同程度の高温雰囲気下に置くことで、図2で示すごとく、ティース12の結晶粒12aのみを成長させ、ヨーク11の結晶粒11aに比して相対的に大きな粒径に調整する。ティース12の加熱は、鋼板端面に電極を取り付けて通電加熱することや、誘導加熱、赤外線加熱なども適用できる。なお、この際の加熱温度および加熱時間は、所望する結晶粒12aの粒径に応じて適宜調整される。また、ティース12のみを加熱処理する際に、ヨーク11に冷水や冷気を提供して該ヨーク11のみを冷却してもよい。
ここで、図2で示す結晶粒11a,12aは、たとえば分割コア10をCCDカメラで撮影し、その撮影画像をコンピュータ内で処理後、その拡大図に対して、ヨークおよびティースでそれぞれ、任意箇所の結晶粒を選定してその最大寸法や直径を計測し、それらの平均値をヨークおよびティースごとに求めることで、双方の結晶粒11a,12aの平均粒径を得ることができる。なお、図2で示すように、実際に形成される結晶粒の平面視形状は、円形、略円形、楕円形、角形、角部と湾曲部が混合した形状など、任意の形状を呈するものである。
さらに、ヨークとティースを別体に成形し、ヨークの鉄損に比してティースの鉄損が低鉄損であり、双方を組み付けて一つの分割コアが形成されるものであってもよい。具体的には、図3aで示すように、ティース12Aの端部をヨーク11Aに埋め込むようにし、双方の端部12’、11’を嵌め合い構造に形成したもの、図3bで示すように、ティース12Bをヨーク11Bの端面まで臨ませ、その両側12”、12”に、ヨーク11B,11Bを接着固定等したもの、などがある。
ここで、ティースとヨークの鉄損を変化させる方法としては、ティース用の電磁鋼板のみに方向性電磁鋼板を適用する方法、ティース用電磁鋼板を圧延加工する際の圧延方向を、ティース内での磁束流れに沿う方向に調整する一方で、ヨーク用電磁鋼板はそのような調整をおこなわない方法、を挙げることができる。
図4は、図1で示す分割コア10を円周方向に組み付け(隣接する分割コア10,10双方のヨーク11,11の端面同士を当接させる)、この組み付け姿勢の分割コア10,…の外周に焼き嵌め用の筒体20を嵌め込み、焼き嵌め処理することで分割コア10,…の一体化が図られて分割ステータコア100が製造される。
なお、その他の方法として、組み付けられた分割コア10,…の外周に、該外周の寸法よりも小さなテーパー部をその内周に具備する不図示の筒体を嵌め込む(圧入する)方法であってもよい。
[電磁鋼板に圧縮応力が生じた際の鉄損、および、電磁鋼板が無応力の際の鉄損に関する実験とその結果]
本発明者等は、Si濃度が3.0mass%、板厚が0.35mmであって、結晶粒の平均粒径が異なる複数の電磁鋼板を製造し、一つの実験は、その電磁鋼板に圧縮力を付与して圧縮応力を生じさせてその際の鉄損を求め、他の実験は、電磁鋼板に圧縮力を作用させず、したがって無応力の状態における鉄損を求めたものである。本実験では、1T(テスラ)で周波数が1000Hzで励磁し、結晶粒の平均粒径が100μmの電磁鋼板で求められた鉄損を基準として、他の平均粒径の結晶粒からなる電磁鋼板の鉄損を求め、基準鉄損に対する比を算定したものである。
本発明者等は、Si濃度が3.0mass%、板厚が0.35mmであって、結晶粒の平均粒径が異なる複数の電磁鋼板を製造し、一つの実験は、その電磁鋼板に圧縮力を付与して圧縮応力を生じさせてその際の鉄損を求め、他の実験は、電磁鋼板に圧縮力を作用させず、したがって無応力の状態における鉄損を求めたものである。本実験では、1T(テスラ)で周波数が1000Hzで励磁し、結晶粒の平均粒径が100μmの電磁鋼板で求められた鉄損を基準として、他の平均粒径の結晶粒からなる電磁鋼板の鉄損を求め、基準鉄損に対する比を算定したものである。
圧縮応力が生じた際の鉄損比を図5に、無応力の際の鉄損比を図6にそれぞれ示している。
図5より、電磁鋼板に圧縮応力が生じている場合は、その結晶粒の平均粒径の大きさにほぼ比例するようにして鉄損が増加する傾向にあることが実証されている。このことから、焼き嵌め処理によって圧縮力が作用し、内部に圧縮応力が生じているヨークにおいては、可及的に平均粒径の小さな結晶粒から形成するのが好ましいことが分かる。
なお、本発明者等によれば、平均粒径が30μm未満の結晶粒からなる電磁鋼板の製造、すなわち、その範囲の粒径制御が極めて困難であることも特定されており、したがって、鉄損と、製造可能性もしくは製造効率の観点から、ヨークの結晶粒の平均粒径は可及的に小さく、かつ、30μm以上に調整されるのが望ましいことが実証された。
一方、図6より、電磁鋼板が無応力の場合は、その結晶粒の平均粒径が70μm、120μmで変曲点を有し、かつ、70〜120μmの範囲で鉄損が相対的に小さくなる傾向にあることが実証されている。このことから、焼き嵌め処理の際に圧縮力が作用せず、したがって無応力状態のティースにおいては、その結晶粒がたとえば上記する70〜120μmの範囲の平均粒径で形成されるのが好ましいことが分かる。
図5,6の結果を総合勘案すると、ヨークの結晶粒の平均粒径は可及的に小さく、かつ、30μm以上が望ましいこと、ティースの結晶粒の平均粒径は70〜120μmの範囲が好ましいこと、より、ティースの結晶粒の平均粒径を70〜120μmの範囲に調整し、かつ、ヨークの結晶粒の平均粒径を30〜70μm未満の範囲に調整するのが望ましいと結論付けられる。
[ヨークとティース双方の結晶粒の平均粒径の大小関係を変化させた際の鉄損に関する実験とその結果]
本発明者等はさらに、ヨークとティース双方の結晶粒の平均粒径の大小関係を変化させた際の鉄損を求め、該大小関係の中で最適となる、すなわち鉄損が最も少なくなる電磁鋼板を特定することとした。
本発明者等はさらに、ヨークとティース双方の結晶粒の平均粒径の大小関係を変化させた際の鉄損を求め、該大小関係の中で最適となる、すなわち鉄損が最も少なくなる電磁鋼板を特定することとした。
本実験に際して、実施例1は、結晶粒の平均粒径が100μmのティース、平均粒径が60〜70μmのヨーク、からなる電磁鋼板であり、実施例2は、さらに、ヨークとティースが図3aのような形態となっており、ティースが相対的に低鉄損となっているもの、比較例1は、ティースとヨークがともに結晶粒の平均粒径が100μmの電磁鋼板であり、比較例2は、結晶粒の平均粒径が100μmのティース、平均粒径が130μmのヨーク、からなる電磁鋼板である。これらの電磁鋼板に1T(テスラ)で周波数が1000Hzの磁気を作用させ、それぞれの電磁鋼板の鉄損を求めた。
図7はその実験結果を示したグラフであり、実施例1の鉄損を基準として、実施例2および比較例1,2の鉄損を基準鉄損に対する比で示している。
図7より、実施例1に対して、比較例1は鉄損が2割増加し、比較例2は鉄損が4割も増加することが実証された。
一方、実施例1に対して、実施例2は鉄損が3割も低減することが実証された。
一方、実施例1に対して、実施例2は鉄損が3割も低減することが実証された。
この実験結果より、ヨークに比してティースの結晶粒の平均粒径が相対的に大きな本発明の分割ステータコアを具備するモータを製造することで、ステータコアの鉄損を可及的に少なくでき、もって、トルク性能、回転性能、出力効率に優れたモータが得られることが分かった。さらには、ヨークに比してティースを低鉄損とすることにより、より一層鉄損を少なくできることが実証された。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…電磁鋼板片、10…分割コア、11,11A,11B…ヨーク、11a…ヨークの結晶粒、12,12A,12B…ティース、12a…ティースの結晶粒、20…筒体、100…分割ステータコア
Claims (9)
- 平面視が弧状のヨークと、該ヨークから径方向内側に突出するティースと、からなる電磁鋼板が積層されて分割コアが形成され、該分割コアが円周方向に組み付けられ、その外周が筒体にて締結されてなる、モータ用の分割ステータコアであって、
前記ティースを形成する結晶粒の平均粒径に比して、前記ヨークを形成する結晶粒の平均粒径が相対的に小さくなっている、分割ステータコア。 - 前記ティースの結晶粒の平均粒径が70〜120μmの範囲にあり、前記ヨークの結晶粒の平均粒径が30〜70μm未満の範囲にある、請求項1に記載の分割ステータコア。
- 前記ティースが前記ヨークに比して低鉄損である、請求項1または2に記載の分割ステータコア。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の分割ステータコアと、該分割ステータコアの内側に配設されたロータコアと、からなる、モータ。
- 平面視が弧状のヨークと、該ヨークから径方向内側に突出するティースと、からなる電磁鋼板が積層されて分割コアが形成され、該分割コアが円周方向に組み付けられ、その外周が筒体にて締結されてなる、モータ用の分割ステータコアの製造方法であって、
用意された電磁鋼板を分割ステータコア製造用の形状に打ち抜き加工して電磁鋼板片を製造してこれを積層し、ティースのみを加熱処理して、該ティースの結晶粒の平均粒径を成長させることで、ヨークを形成する結晶粒の平均粒径に比してティースの結晶粒の平均粒径が相対的に大きな分割コアを製造する第1の工程と、
前記分割コアを円周方向に組み付け、その外周を筒体にて締結して分割ステータコアを製造する第2の工程と、からなる、分割ステータコアの製造方法。 - 前記ヨークの結晶粒の平均粒径が30〜70μm未満の範囲にあり、前記第1の工程で、前記ティースの結晶粒の平均粒径を70〜120μmの範囲に調整する、請求項5に記載の分割ステータコアの製造方法。
- 前記第1の工程では、ヨークとティースで用意される電磁鋼板が異なるものであって、ティース用の電磁鋼板がヨーク用の電磁鋼板に比して低鉄損となっており、
ヨークおよびティースそれぞれの形状にそれぞれに固有の電磁鋼板が打ち抜き加工され、双方が組み付けられて前記電磁鋼板片が製造される、
もしくは、打ち抜き加工されたヨーク用鋼板片を積層して分割積層体を形成し、ティース用鋼板片を積層して別途の分割積層体を形成し、双方を組み付けて前記分割コアとする、請求項5または6に記載の分割ステータコアの製造方法。 - 前記第2の工程では、組み付けられた分割コアの外周に筒体を設置し、焼き嵌め処理する、請求項5〜7のいずれかに記載の分割ステータコアの製造方法。
- 前記第2の工程では、組み付けられた分割コアの外周に、該外周の寸法よりも小さなテーパー部をその内周に具備する筒体を嵌め込む、請求項5〜7のいずれかに記載の分割ステータコアの製造方法。
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