本出願人は、先に、図9に示す希ガス放電灯DLを提案した。同図において、Aは例えばガラスバルブにて密閉状に構成された直管状の外囲器であって、その内面には希土類蛍光体,ハロリン酸塩蛍光体などの蛍光体よりなる発光層Bが形成されている。特に、この発光層Bには所定の開口角を有するアパーチャ部(発光層の未形成部)Baがほぼ全長に亘って形成されている。そして、外囲器Aの封着構造はガラスバルブの端部にディスク状の封着ガラス板を封着して構成されているが、例えば単にガラスバルブを加熱しながら縮径加工し溶断するいわゆるトップシールによって構成することもできる。尚、この外囲器Aの密閉空間には水銀などの金属蒸気を含まないキセノンを主成分とする希ガスが所定量封入されている。この外囲器Aの外周面には金属部材よりなる帯状の一対の外部電極C,Dが、外囲器Aのほぼ全長に亘って互いに離隔して配置されている。
この希ガス放電灯DLは、例えば図10に示す点灯装置によって点灯される。この点灯装置は、例えば周波数が30KHz,電圧が1880V程度の高周波電圧を発生し、かつ出力波形がほぼ正弦波である高周波電圧発生回路(インバータ回路)HAと、直流電源EBからインバータ回路HAへの直流電力の供給をコントロールするトランジスタなどのスイッチング素子QAと、スイッチング素子QAに駆動信号を供給する駆動回路Pとから構成されており、このインバータ回路HAの出力側には希ガス放電灯DLが、外部電極C,Dに高周波電圧が印加されるように接続されている。
この点灯装置において、駆動回路Pからスイッチング素子QAのベースに駆動信号を所定のタイミングで付与・停止すると、スイッチング素子QAは所定の間隔でオン・オフ動作する。スイッチング素子QAがオン動作の期間中、インバータ回路HAが動作することによって高周波電圧が出力され、希ガス放電灯DLの外部電極C,Dに印加される。これにより、希ガス放電灯DLは、熱陰極や冷陰極を用いた放電灯のように外囲器の長手方向に沿った1つの放電路によって点灯するものとは異なり、外部電極C,Dの間(外囲器Aの長手方向に対してほぼ直角方向)に無数の放電路が形成されることによって縞状の状態で点灯する。この状態において、希ガスの励起線によって発光層Bが励起されて発光し、光は主としてアパーチャ部Baを介して外部に放出される。
特に、この希ガス放電灯DLには水銀が用いられていないために、点灯後における光量の立ち上がりが急峻であり、点灯と同時に光量がほぼ100%近くにまで達するという特徴を有している。このために、ファクシミリ,イメージスキャナ,複写機などのOA機器の原稿読取用の光源として好適するものである。
例えばこの希ガス放電灯DLを上述の原稿照射読取装置に適用した場合には、アパーチャ部構造の採用により発光層Bの放射光の高密度化が可能となることから、原稿面照度を高めることができ、原稿の読み取り性を改善できるものである。
しかしながら、近時、OA機器は、その処理能力を高め、事務処理の効率化を図るために、原稿の送り速度をさらに高速化する傾向にあり、上述の希ガス放電灯DLをそのまま適用すると、原稿の読み取り精度(解像度)が損なわれるようになる。このために、一層の照度アップが求められている。
従って、本出願人は、先に図11に示す希ガス放電灯の点灯装置を提案した。この点灯装置はパルス状の高周波電圧を発生する高周波電圧発生回路HBの出力側に希ガス放電灯DLが、外部電極C,Dに高周波電圧が印加されるように接続して構成されている。この高周波電圧発生回路HBは、例えば一次コイルTRa,二次コイルTRbを有する出力トランスTRと、出力トランスTRの一次コイルTRaに直列的に接続された電界効果形トランジスタ(FET)などのスイッチング素子QBと、一次コイルTRaとスイッチング素子QBとの直列回路に並列的に接続されたコンデンサCAと、スイッチング素子QBにほぼ方形波の駆動信号を付与するための駆動回路PDとから構成されている。
特に、上述の駆動回路PDには駆動信号のオンデューティ比を変更できるようにPWM(Pulse Width Modulation )機能が付与されており、スイッチング素子QBをオン動作させる駆動タイミングが、後述する繰り返し波形の1周期(T)内において希ガス放電灯DLに流れるランプ電流Ibの方向が反転する跳ね返り期間(T2)内に設定されている。
このように構成された点灯装置は次のように動作する。まず、高周波高電圧発生回路HBの入力側に直流電源EBを接続すると、コンデンサCAは充電される。この状態で、駆動回路PDからスイッチング素子QBのゲートに図12(a)に示す方形波の駆動信号を印加すると、スイッチング素子QBは同図(b)及び図13(a)に示すように時点t1,t2,t3・・・でオン,オフ動作する。スイッチング素子QBが時点t1でオン状態になると、コンデンサCA,直流電源EBから出力トランスTRの一次コイルTRaには同図(c)に示すように電流(コイル電流Ic)が流れ、出力トランスTRの一次コイルTRaには電磁エネルギーが蓄積される。次に、スイッチング素子QBが時点t2でオフ状態になると、蓄積された電磁エネルギーの作用に基づいて二次コイルTRbにはパルス状の高周波電圧が発生し、希ガス放電灯DLの外部電極C,Dに印加されることによって、外部電極間には放電が生起され、希ガス放電灯DLは点灯状態になり、図12(d)及び図13(b)に示すようにランプ電流Ibが流れる。このランプ電流Ibは、繰り返し周期におけるそれぞれの1周期(T)の前半部分の期間T1に流れると共に、希ガス放電灯DLに蓄積された電荷がランプ電流Ibとして跳ね返り期間T2に、期間T1の方向とは逆方向に流れるようになる。この跳ね返り期間T2の間にスイッチング素子QBに駆動信号を付与すると、図12(c)に示すように、時点t1,t3・・・においてコイル電流Icにパルス的な電流が流れる。この電流に関連してランプ電流Ibには図12(d)及び図13(b)において斜線で示すランプ電流Ibjが、期間T2に流れるランプ電流に重畳されて流れる。尚、スイッチング素子QBへの駆動信号の付与タイミングを跳ね返り期間T2の範囲外に遅らせると、ランプ電流Ibは単なる減衰振動となり、斜線で示すランプ電流Ibjは流れなくなる。これによって、希ガス放電灯DLは図12(e)に示すように発光(φ)し、ランプ電流Ibjの増加に対応して明るさφも同図において斜線(φj)で示すように増加される。尚、スイッチング素子QBへの駆動信号の付与タイミングは跳ね返り期間T2の早い時期ほど、点灯装置への入力をことさらに増やさなくても斜線で示すランプ電流Ibjを効果的に増加させることができる。
この点灯装置によれば、希ガス放電灯DLの点灯状態において、スイッチング素子QBのオフ動作後の期間T1に流れるランプ電流Ibの方向が反転する跳ね返り期間T2内にスイッチング素子QBをオン動作させているために、高周波電圧発生回路HBの入力電流をことさらに増加させなくても、跳ね返り期間T2 に流れるランプ電流をIbj分だけ増加させることができ、これに伴って、明るさ(光量)φもφj分だけ増加させることができる。従って、OA機器の原稿照射読取装置に適用した場合には、原稿面照度を高めることができ、原稿の送り速度の高速化にも対応が可能となる。
しかしながら、動作状態において、高周波電圧発生回路HBの入力電圧(出力トランスTRの一次コイルTRa側の電圧)Vbが電源変動などによって高くなると、コイル電流Icは図12(c)において点線で示すように時点t2での電流値が高くなる。これに伴って、ランプ電流Ib,光量φも同図(d),(e)において点線で示すように増加することになる。従って、OA機器の稼働中に電源変動が生じたりすると、再生品位が損なわれるという問題が生ずる。
又、この点灯装置は希ガス放電灯DLが点灯後における光量の立ち上がり性に優れていることから、OA機器の原稿照射読取装置に適用した場合、OA機器の稼働とほぼ同時に原稿の読み取り動作を行なうことができるものであるが、例えば5分間程度動作させた後の照度が点灯直後の照度に比較して5%程度低下するために、時間の経過と共に読み取り精度が変化してしまい、再生品位が損なわれるという問題もある。
具体的には、希ガス放電灯DLは、上述のように外部電極C,Dに高周波電圧を印加することによって外囲器(ガラスバルブ)Aを介して外部電極間に放電が生起されて点灯されるのであるが、この際に、ガラスバルブが放電などによって例えば100°C程度にまで温度上昇する。このために、発光層Bの発光特性が損なわれるようになったり、高周波電圧発生回路HBの特性に影響を及ぼしたりすることになり、照度が5%程度も低下するようになる。従って、点灯装置の動作後における希ガス放電灯DLの光量の安定化が求められている。
それ故に、本発明の目的は、動作後における希ガス放電灯の光量変動を比較的に安定化できる希ガス放電灯の点灯装置を提供することにある。
従って、本発明は、上述の目的を達成するために、内部空間に希ガスを封入した外囲器の外周面に一対の外部電極を互いに離隔して配置してなる希ガス放電灯と、一次コイル,二次コイルを有する出力トランス、出力トランスの一次コイルに直列的に接続した第1のスイッチング素子,電流検出回路、及び第1のスイッチング素子にデューティ比が一定で、周波数が50から100kHzの範囲の一定の駆動信号を付与する第1の駆動回路を含み、第1のスイッチング素子のスイッチング動作に基づいて出力トランスの二次コイル側にパルス状の高周波電圧を発生する高周波電圧発生回路と、高周波電圧発生回路における電流検出回路のピーク電流に対応する電圧を検出し、直流に変換するDC変換回路と、DC変換回路の出力信号に基づいて出力をほぼ一定の電力に制御し得る機能を有するDC/DCコンバータとを具備し、前記高周波電圧発生回路の入力側にDC/DCコンバータを、出力側に希ガス放電灯をそれぞれ接続し、希ガス放電灯の点灯状態における高周波電圧発生回路の入力側の電力を、電流検出回路で検出したピーク電流に対応する電圧に関連するDC変換回路からの出力信号に基づくDC/DCコンバータの定電力化機能によってほぼ一定となるように制御し、前記第1のスイッチング素子のオフ期間を、出力トランスの二次コイル側の実効インダクタンスと希ガス放電灯が点灯した状態の実効静電容量とにより発生するランプ電流の自由振動の最初の1周期以内に設定したことを特徴とする。
又、本発明の第2の発明は、前記DC/DCコンバータは、少なくとも、第2のスイッチング素子と、コイルと、コンデンサと、ダイオードと、DC変換回路の出力信号に基づいてPWM制御された駆動信号を第2のスイッチング素子に付与する第2の駆動回路とから構成し、高周波電圧発生回路における電流検出回路で検出したピーク電流に対応する電圧をDC変換回路を介して第2の駆動回路にフィードバックすることにより、電流検出回路に流れる電流のピーク値がほぼ一定となるように制御することを特徴とし、第3の発明は、前記DC/DCコンバータが降圧型コンバータであることを特徴とし、第4の発明は、前記第1の駆動回路から出力される駆動信号のオンデューティ比を60%以上に設定したことを特徴とする。
又、本発明の第5の発明は、前記DC変換回路が、電流検出回路で検出したピーク電流に対応する電圧のピーク値を保持するピークホールド回路であることを特徴とし、第6の発明は、前記DC変換回路が、電流検出回路で検出した電流に対応する電圧を平均値化した直流電圧に変換する回路であることを特徴とする。
以上のように本発明によれば、高周波電圧発生回路の入力側の電力の定電力化は、高周波電圧発生回路における電流検出回路にて検出される電流のピーク値に対応する電圧が一定となるようにDC/DCコンバータの出力電圧を制御することによって行われる。このために、高周波電圧発生回路の入力側の電力は電源変動,環境の温度変化,希ガス放電灯の特性変化などに影響されることなくほぼ一定に制御することができる。従って、希ガス放電灯の光量を安定化させることができる。
又、DC/DCコンバータは高周波電圧発生回路に一定の電力を供給するように構成されているために、高周波電圧発生回路の構成を何の制御も不要で、第1のスイッチング素子のオン・オフ動作を単に一定周期で繰り返すだけの単純な構成にできる。従って、回路構成が簡単になり、コストの低減が可能になる。
又、DC/DCコンバータは、高周波電圧発生回路の電流検出回路で検出された電流のピーク値に対応する電圧がDC変換回路で直流に変換され、この信号が第2の駆動回路にフィードバックされることによってPWM制御されるように構成されているために、それの出力電圧は、常に、コイル電流のピーク値に対応する電圧が一定となるように制御される。従って、高周波電圧発生回路の入力電力をほぼ一定にできる。
さらには、希ガス放電灯の点灯状態におけるランプ電流は出力トランスの二次コイル側の実効インダクタンスと希ガス放電灯が点灯した状態の実効静電容量とによる自由振動に基づいて流れるのであるが、ランプ電流の方向が反転する跳ね返り期間に、第2のスイッチング素子が再びオン動作する際に生ずるパルス的なコイル電流に基づいて流れる電流がランプ電流に重畳される。このために、高周波電圧発生回路の入力電流をことさらに増加させなくても、実質的にランプ電流を増加させることができ、これに伴って、明るさも増加させることができる。従って、希ガス放電灯の光量増加のみならず、点灯装置の効率も高めることができ、例えばOA機器における原稿の送り速度の高速化にも対応が可能となる。
次に、本発明にかかる希ガス放電灯の点灯装置の1実施例について図1〜図5を参照して説明する。同図において、DLは希ガス放電灯であって、次のように構成されている。即ち、1は、例えばガラスバルブにて密閉状に構成された直管状の外囲器であって、その内面には希土類蛍光体,ハロリン酸塩蛍光体などの蛍光体よりなる発光層2が形成されている。特に、この発光層2には所定の開口角で発光層の形成されないアパーチャ部2aがほぼ全長に亘って形成されている。そして、外囲器1の封着構造はガラスバルブの端部にディスク状の封着ガラス板を封着して構成されているが、例えば単にガラスバルブを加熱しながら縮径加工し溶断するいわゆるトップシールによって構成することもできる。尚、この外囲器1の密閉空間には後述するように水銀などの金属蒸気を含まないキセノンを主成分とする希ガスが所定量封入されている。
この外囲器1の外周面にはシート構体3が密着するように巻回されている。このシート構体3は、例えば外囲器1の全長とほぼ同程度の長さを有する絶縁性の透光性シート4と、この透光性シート4の一方の面に互いに所定の間隔だけ離隔配置して接着された金属部材よりなる帯状の一対の外部電極5,6と、この外部電極5,6の端部から導出された端子51,61と、透光性シート4の一方の面及び外部電極5,6の面に付与された接着層9とから構成されている。尚、シート構体3の外囲器1への装着状態において、外部電極5,6の一方の側縁部間には第1の開口部7が、他方の側縁部間には第2の開口部8がそれぞれ形成されており、発光層2からの光は主としてアパーチャ部2aから第1の開口部7を介して外部に放出される。
上述のシート構体3は外囲器1の外周面に、外部電極5,6が外囲器1と透光性シート4との間に位置するように装着(巻回)されている。このシート構体3の外囲器1への装着は、例えば図6に示すように行われる。まず、シート構体3をステージ10に展開状態で配置する。次に、このシート構体3における透光性シート4の一端4aに外囲器1を配置すると共に、外囲器1が一対の従動ローラ11,11にて透光性シート4に押しつけられるようにセットした上で、ステージ10を若干M方向に移動させた後、N方向に移動させる。すると、シート構体3は透光性シート4の上において相対的に転動し、その外周面にはシート構体3が巻回されることにより装着が行われる。尚、シート構体3において、外部電極5,6はこの表面に形成された接着層9を利用して外囲器1の外周面に接着されており、透光性シート4はそれの一方に形成された接着層9を利用して巻回時に外囲器1の外周面に接着されると共に、それぞれの端部4a,4bは第2の開口部8で重ね合わされて接着されている。
上述の希ガス放電灯DLの外囲器1の構成部材としては、例えば150°Cにおける体積抵抗率が1×109Ωcm以上であり、酸化珪素,酸化硼素を主成分とする鉛を含まない硼珪酸ガラス系(以下、便宜的にBFKガラスと呼称する)が好適する。このBFKガラスは、例えば酸化珪素(67.6%),アルミナ(4%),酸化硼素(18%),酸化ナトリウム(1%),酸化カリウム(8%),酸化リチウム(1%),酸化チタン(0.4%)などから構成されている。この他にも、鉛ガラスやバリウムガラスなどが適用できる。このバリウムガラスは、例えば珪酸,アルミナ,硼酸,カリウム,バリウム,カルシウムなどの酸化物などから構成されている。これらガラスの肉厚は0.2〜0.7mmの範囲(好ましくは0.4〜0.7mmの範囲)に設定されている。しかしながら、肉厚が0.4mm未満、特に0.2mm未満になると、外囲器1の機械的な強度が極端に低下するために、量産設備による生産工程でのガラス破損に伴う不良率が増加するようになるし、逆に、肉厚が0.7mmを超えると、縞状の放電状態が目視され、アパーチャ部2aから放出される光にチラツキが生ずることがある。従って、外囲器1の肉厚は上記範囲内に設定することが望ましい。尚、場合によっては、外囲器1の肉厚はそれの上限を逸脱して設定することも可能である。
又、この外囲器1の内部空間にはキセノンガスを主成分とする希ガスが封入されており、その封入圧力は例えば83〜200トルの範囲に設定されている。この範囲では始動特性,光出力(原稿面照度),チラツキに関する改善効果が得られる。しかしながら、封入圧力が83トル未満になると、光出力に対する改善効果が不十分になるし、逆に、封入圧力が200トルを超えると、始動特性が損なわれるのみならず、縞状の放電状態が目視され、アパーチャ部2aから放出される光にチラツキが生ずることがある。従って、希ガスの封入圧力は上記範囲内に設定することが望ましい。尚、希ガス放電灯の用途,要求などによっては、希ガスの封入圧力は上記範囲から逸脱して設定することも可能である。
さらには、発光層2は、希ガス放電灯の用途によって、使用する蛍光体が1種のみにて構成されたり、2種以上を混合して構成されたりする。例えば三波長域発光形の場合には、例えば青色領域に発光スペクトルを有するユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム蛍光体,緑色領域に発光スペクトルを有するセリウム・テルビウム付活リン酸ランタン蛍光体,赤色領域に発光スペクトルを有するユーロピウム付活硼酸イットリウム・ガドリウム蛍光体を混合してなる混合蛍光体にて形成され、その付着量は1cm2当たり5〜30mgの範囲に設定されている。この範囲では十分の光量(光出力)が得られるものの、その付着量が5mg未満になると、光量不足によって原稿面照度が不十分になるし、逆に、付着量が30mgを超えると、均質な発光層の形成が困難になる。従って、発光層2の付着量は上記範囲内に設定することが望ましい。尚、希ガス放電灯の用途,要求などによっては、発光層の付着量は上記範囲から逸脱して設定することも可能である。
一方、パルス状の高周波電圧を発生する高周波電圧発生回路HCは、例えば一次コイルTRa,二次コイルTRbを有する出力トランスTRと、出力トランスTRの一次コイルTRaに直列的に接続された第1のスイッチング素子S1と、第1のスイッチング素子S1に直列的に接続された電流検出回路R1と、第1のスイッチング素子S1に付与する駆動信号V1を発生する第1の駆動回路PD1と、第1の駆動回路PD1と第1のスイッチング素子S1のゲートとの間に接続された第1のドライバー回路DR1とから構成されている。尚、第1のスイッチング素子S1は、例えばNチャンネルの電界効果形トランジスタ(FET)などによって構成されており、電流検出回路R1は抵抗によって構成されている。又、第1の駆動回路PD1は、所定のオンデューティ比(例えば60%以上の固定デューティ),所定の周波数(例えば50〜100KHz)の駆動信号が出力されるように構成されている。
この高周波電圧発生回路HCと直流電源E1との間にはDC/DCコンバータCVが接続されている。このDC/DCコンバータCVは、例えば第2のスイッチング素子S2と、第2のスイッチング素子S2に直列的に接続されたコイルLと、コイルLの入力側(第2のスイッチング素子S2との接続側)とアースとの間に逆方向に接続されたダイオードD1と、コイルLの出力側(高周波電圧発生回路HC側)とアースとの間に接続されたコンデンサC1と、第2のスイッチング素子S2にPWM制御された駆動信号V2を付与する第2の駆動回路PD2とから構成されている。尚、第2のスイッチング素子S2は、例えばPチャンネルの電界効果形トランジスタ(FET)などによって構成されている。特に、このDC/DCコンバータCVは、図示例では入力電圧(直流電源E1の電圧)Vaと出力電圧Vbとが Va>Vb の関係を有する降圧型コンバータに構成されているが、例えば昇圧型コンバータ,昇降圧型コンバータ,極性反転型コンバータなど適宜の回路を適用することもできる。
上述のDC/DCコンバータCVにおける第2の駆動回路PD2は、例えば図2に示すように、エラーアンプ(誤差増幅器)OP1と、エラーアンプOP1の反転入力端子(−)と出力端子との間に接続された抵抗R2とコンデンサC2の直列回路と、エラーアンプOP1の非反転入力端子(+)に接続された基準電源(基準電圧)E2と、エラーアンプOP1の出力が非反転入力端子(+)に接続された比較回路OP2と、比較回路OP2の反転入力端子(−)に接続された三角波発振器OSCと、比較回路OP2の出力側に接続された第2のドライバー回路DR2から構成されており、第2のドライバー回路DR2の出力は第2のスイッチング素子S2のゲートに接続されている。尚、比較回路OP2は、例えばオペアンプによって構成されている。
又、高周波電圧発生回路HCにおける電流検出回路R1とDC/DCコンバータCVにおける第2の駆動回路PD2との間には、電流検出回路R1で検出されたコイル電流Icのピーク値に対応する電圧VRを直流に変換するDC変換回路PHが接続されている。このDC変換回路PHは、例えばオペアンプOP3と、オペアンプOP3の出力側に接続されたダイオードD2と、ダイオードD2の出力側とアースとの間に接続されたコンデンサC2とから構成されている。このオペアンプOP3の反転入力端子(−)はダイオードD2の出力側に、非反転入力端子(+)は電流検出回路R1と第1のスイッチング素子S1との接続点にそれぞれ接続されており、ダイオードD2の出力側は第2の駆動回路PD2におけるエラーアンプOP1の反転入力端子(−)に接続されている。尚、このDC変換回路PHはピークホールド回路によって構成されているが、オペアンプOP3を省略することもできる。
又、このDC変換回路PHはピークホールド回路で構成する他に、例えば図8に示すように、抵抗R3とコンデンサC4とからなる平均値化回路によって構成することもできる。この平均値化回路(PH)では電流検出回路R1で検出されたコイル電流Icに対応する電圧VRを抵抗R3,コンデンサC4によって平均値化された直流に変換され、第2の駆動回路PD2に付与される。又、このDC変換回路PHは、例えば図14に示すように、コンパレータOP4と抵抗R3とコンデンサC3とからなる平均値化回路によって構成することもできる。このDC変換回路PHにおいて、コンパレータOP4の反転入力端子(−)には基準電源(基準電圧)E3が接続されており、非反転入力端子(+)に入力される電流検出回路R1の端子電圧VRは基準電圧E3と比較され、端子電圧VRが端子電圧VRに達すると、コンパレータOP4から信号が出力され、抵抗R3とコンデンサC3とによって平均値化された電圧信号VPが第2の駆動回路PD2に付与される。
さらに、高周波電圧発生回路HCにおいて、出力トランスTRの二次コイルTRbには希ガス放電灯DLが、その外部電極5,6にパルス状の高周波電圧が印加されるように接続されており、外部電極5,6のうち一方の外部電極6が接地されている。特に、第1の駆動回路PD1からの駆動信号V1に基づく第1のスイッチング素子S1のオフ期間は、出力トランスTRの二次コイルTRb側の実効インダクタンスと希ガス放電灯DLが点灯した状態の実効静電容量とにより発生するランプ電流の自由振動の最初の1周期以内、好ましくはランプ電流の方向が反転する跳ね返り期間T2の間に設定されている。このように構成された点灯装置は次のように動作する。まず、DC/DCコンバータCVの入力側に直流電源E1を接続すると、DC/DCコンバータCVは第2の駆動回路PD2から第2のスイッチング素子S2への駆動信号V2の付与・停止によって作動し、その出力電圧VbはコイルL,コンデンサC1などとの協働作用により、直流電源E1の電圧Vaより低い電圧に制御される。この状態において、図7(a)に示すように、第1の駆動回路PD1から第1のドライバー回路DR1を介してオンデューティ比,周波数が一定であり、時点t1,t2,t3・・・において交互にハイレベル,ロウレベルとなる駆動信号V1が第1のスイッチング素子S1のゲートに付与されると、第1のスイッチング素子S1は、同図(b)に示すように、時点t1においてオン状態になる。第1のスイッチング素子S1がオン状態になると、DC/DCコンバータCVから高周波電圧発生回路HCに電力が供給される。
即ち、高周波電圧発生回路HCにおける出力トランスTRの一次コイルTRa,第1のスイッチング素子S1,電流検出回路R1よりなる閉回路には、図7(c)に示すように、ほぼ直線的に増加する電流(コイル電流)Icが流れる。これにより、出力トランスTRの一次コイルTRaには電磁エネルギーが蓄積されると共に、電流検出回路R1には抵抗とコイル電流Icによる電圧降下(出力電圧VR=Ic・R1)が生ずる。この出力電圧は、時間の経過に伴うコイル電流Icの増加と共に高くなり、時点t2でコイル電流Icがピーク値ICPに達すると、出力電圧VR(=ICP・R1)も最大となる。
この最大の出力電圧VRはDC変換回路PHにおけるオペアンプOP3の非反転入力端子(+)に印加されると共に直流VPに変換され、ピークホールドされる。この信号VPはDC/DCコンバータCVにおける第2の駆動回路PD2のエラーアンプOP1の反転入力端子(−)に入力される。エラーアンプOP1ではDC変換回路PHからの信号VPと非反転入力端子に接続された基準電圧E2との差分(誤差分)が増幅され、比較回路OP2に入力される。比較回路OP2ではエラーアンプOP1の出力信号と三角波発振器OSCからの三角波信号とが比較され、その出力信号の大きさに関連するパルス幅の駆動信号(PWM制御された信号)V2が第2のドライバー回路DR2を介して第2のスイッチング素子S2に付与される。この結果、DC/DCコンバータCVからは第2のスイッチング素子S2のスイッチング動作に応じた電圧Vbが出力される。
ところで、第1の駆動回路PD1から第1のスイッチング素子S1に付与される駆動信号V1は、デューティ比及び周波数が一定であることから、第1のスイッチング素子S1は、これらの駆動条件に従って規則的に、図7(b)に示すように、時点t2においてオン状態からオフ状態になる。これにより、コイル電流Icも同図(c)に示すように時点t2において流れなくなる。この際に、出力トランスTRの一次コイルTRaに蓄積された電磁エネルギーの作用に基づき、二次コイルTRbには一次コイルTRaと二次コイルTRbとの卷線比によるパルス状の高周波電圧が発生し、希ガス放電灯DLの外部電極5,6に印加される。そして、外部電極5,6間には放電が生起され、希ガス放電灯DLは点灯状態になり、同図(d)に示すように、ほぼ時点t2からランプ電流Ibが流れ始めると共に、希ガス放電灯DLがコンデンサを形成する関係で同放電灯に電荷が蓄積される。ランプ電流Ibが0になると、希ガス放電灯DLに蓄積された電荷が再びランプ電流として最初の期間T1(図13参照)の方向とは逆方向に流れるようになる。尚、この逆方向の期間(T2)を便宜的に跳ね返り期間と呼称する。これに伴って、希ガス放電灯DLは、同図(e)に示すように、発光(φ)を呈する。
次に、図7(a)に示すように、時点t3において駆動信号V1がハイレベルになると、第1のスイッチング素子S1は、同図(b)に示すように、時点t3において再びオン状態になる。これによって、出力トランスTRの一次コイルTRaには再びコイル電流Icが流れるのであるが、同図(c)に示すように、時点t3(t1)においてパルス的に流れた後、ほぼ直線的に増加する。このパルス的なコイル電流Icに基づいて出力トランスTRの二次コイルTRbには電力が供給される関係で、跳ね返り期間中(T2)に流れるランプ電流に同図(d)において斜線で示すランプ電流Ibjが重畳されると共に、同図(e)において斜線で示す光量φjがランプ光量φに重畳される。
特に、図7(b)に示すように、第1のスイッチング素子S1がオフ状態からオン状態に反転する時点t3が、出力トランスTRの二次コイルTRb側の実効インダクタンスと希ガス放電灯DLが点灯した状態の実効静電容量とにより発生するランプ電流の自由振動の最初の1周期以内(好ましくはランプ電流の方向が反転する跳ね返り期間T2の間)に設定されているために、上述の斜線で示す電流Ibjを、ランプ電流の自由振動成分に有効に重畳させることができる。以下、時点t3以降も時点t1〜t3期間と同様な動作が継続的に繰り返し行なわれる。
ところで、この点灯装置において、高周波電圧発生回路HCの入力側の電力の定電力化は、基本的には高周波電圧発生回路HCにおける電流検出回路R1にて検出される電流のピーク値に対応する電圧VRが一定となるようにDC/DCコンバータCVの出力電圧Vbを制御することによって行われる。ここで、出力トランスTRの一次コイルTRaのインダクタンスをLp、コイル電流Icのピーク値をICP、第1のスイッチング素子S1のスイッチング周波数をfとすると、入力側の電力Pは P=0.5Lp・ICP 2・f なる式で表される。この電力Pは、出力トランスTRの一次コイルTRaのインダクタンスLpがほぼ一定である上に、第1のスイッチング素子S1のスイッチング周波数fも予め一定値に固定されていることから、コイル電流Icのピーク値ICP、即ち、電流検出回路R1の出力電圧VR(=ICP・R1)に依存することになる。従って、電流検出回路R1の出力電圧VRが一定となるようにDC/DCコンバータCVの出力電圧Vbを制御することによって定電力化が達成できる。換言すれば、コイル電流IcとDC/DCコンバータCVの出力電圧Vb,出力トランスTRの一次コイルTRaのインダクタンスLp,第1のスイッチング素子S1のオン時間TONとの間には ICP=(Vb/Lp)・TON の関係を有し、インダクタンスLp,オン時間TONが一定であることから、コイル電流Icのピーク値ICPが一定となるようにDC/DCコンバータCVの出力電圧Vbを制御することによって定電力化が達成できることになる。このために、希ガス放電灯DLの明るさはほぼ一定に維持される。
この点灯装置では、直流電源E1の電源変動,環境温度の変化,希ガス放電灯DLのインピーダンス変化,高圧配線の漏れ電流などによる希ガス放電灯DLの光量変化を軽減できるものである。例えば直流電源E1の電源変動によって電圧Vaが高くなると、それに伴いDC/DCコンバータCVの出力電圧Vbも上昇することになる。すると、図7(c)に示す時点t2において電流検出回路R1が検出するコイル電流Icのピーク値は図示のピーク値ICPよりも大きくなり、DC変換回路PHの出力信号VPも大きくなる。この増大した信号VPはDC/DCコンバータCVにおける第2の駆動回路PD2に入力され、第2の駆動回路PD2からはPWM制御によってオン期間が短縮された駆動信号V2が出力される。第2のスイッチング素子S2は、この駆動信号V2によってスイッチング制御される結果、DC/DCコンバータCVの出力電圧Vbは低下し、コイル電流Icは一定のピーク値ICPとなり、定電力化される。即ち、DC/DCコンバータCVはDC変換回路PHの出力信号VPと第2の駆動回路PD2のエラーアンプOP1における基準電圧E2との差分がなくなるような電圧Vbを出力するように制御される。従って、高周波電圧発生回路HCの入力電力は定電力化される。尚、電圧Vaが低下した場合には上述とは逆の動作が行なわれる。
又、希ガス放電灯DLの点灯による外囲器温度の上昇によって負荷インピーダンスが高くなった場合には、希ガス放電灯DLのランプ電流Ibが減少することによって高周波電圧発生回路HCに供給される電力も減少し、希ガス放電灯DLの光量も定常状態よりも少なくなる。この場合、図7(c)に示す時点t2において電流検出回路R1が検出するコイル電流Icのピーク値は図示のピーク値ICPよりも小さくなり、DC変換回路PHの出力信号VPも小さくなる。この減少した信号VPはDC/DCコンバータCVにおける第2の駆動回路PD2に入力され、第2の駆動回路PD2からはPWM制御によってオン期間が増大された駆動信号V2が出力される。第2のスイッチング素子S2は、この駆動信号V2によってスイッチング制御される結果、DC/DCコンバータCVの出力電圧Vbは上昇し、コイル電流Icは一定のピーク値ICPとなり、定電力化される。従って、希ガス放電灯DLには一定の電力が供給され、一定の光量が維持されることになる。
この実施例によれば、高周波電圧発生回路HCの入力側の電力の定電力化は、高周波電圧発生回路HCにおける電流検出回路R1にて検出される電流のピーク値に対応する電圧VRが一定となるようにDC/DCコンバータCVの出力電圧Vbを制御することによって行われる。このために、高周波電圧発生回路HCの入力側の電力は電源変動,環境の温度変化,希ガス放電灯の特性変化などに影響されることなくほぼ一定に制御することができる。従って、希ガス放電灯DLの光量を安定化させることができる。
又、DC/DCコンバータCVは高周波電圧発生回路HCに一定の電力を供給するように構成されているために、高周波電圧発生回路HCの構成を何の制御も不要で、第1のスイッチング素子S1のオン・オフ動作を単に一定周期で繰り返すだけの単純な構成にできる。従って、回路構成が簡単になり、コストの低減が可能になる。
特に、DC/DCコンバータCVは、高周波電圧発生回路HCの電流検出回路R1で検出された電流のピーク値に対応する電圧VRがDC変換回路PHで直流に変換され、この信号VPが第2の駆動回路PD2にフィードバックされることによってPWM制御されるように構成されているために、それの出力電圧Vbは、常に、コイル電流のピーク値に対応する電圧VRが一定となるように制御される。従って、高周波電圧発生回路HCの入力電力をほぼ一定にできる。
さらには、希ガス放電灯DLの点灯状態におけるランプ電流Ibは出力トランスTRの二次コイルTRb側の実効インダクタンスと希ガス放電灯DLが点灯した状態の実効静電容量とによる自由振動に基づいて流れるのであるが、ランプ電流の方向が反転する跳ね返り期間T2に、第2のスイッチング素子S2が再びオン動作する際に生ずるパルス的なコイル電流に基づき、図7(d)において斜線で示すランプ電流Ibjが重畳される。このために、高周波電圧発生回路HCの入力電流をことさらに増加させなくても、実質的にランプ電流を増加させることができ、これに伴って、明るさも同図(e)において斜線で示すようにさらに増加させることができる。従って、希ガス放電灯DLの光量増加のみならず、点灯装置の効率も高めることができ、例えばOA機器における原稿の送り速度の高速化にも対応が可能となる。
尚、本発明は、何ら上記実施例にのみ制約されることなく、例えば第1,第2のスイッチング素子はFETの他、トランジスタなども利用可能である。又、第1,第2のドライバー回路は省略することもできる。又、点灯装置に組み込まれる希ガス放電灯において、外囲器に装着される絶縁部材は透光性シートの他に、熱収縮性樹脂チューブを適用したりすることもできるし、或いは省略することもできるし、発光層はアパーチャ部を省略して外囲器の内面全体に形成することもできるし、外部電極の側縁部に鋸歯状などの異形部を形成したりすることもできる。さらには、外部電極の形態において、帯状とは全体としての形態が帯状であることを意味し、側縁部や側縁部でない部分に異形部,孔などが存在したりするものも含まれるものとする。