JP2004259448A - 試料ステージ駆動機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】チャンバに固定された球面凹部を有する中空管状の球面受け部材と、その球面と摺動する球面凸部を持つ棒状の試料ホルダと、試料ホルダ先端に位置する試料ステージと、試料ホルダを駆動する駆動モータと、球形支点部材に装着され、試料ステージ部分を真空に保つためのOリングで構成される試料ステージ駆動機構において、試料ステージ動作後のドリフトを低減すること。
【解決手段】真空を保つためのOリングに弾性力を発生させ、これを有効に活用する。
【効果】Oリングに反発力が生じることで、ドリフトの収束が早くなり、また、ドリフト量が低減される。これにより、電子顕微鏡の操作性は向上し、電子顕微鏡による高精度の測定ができる。
【選択図】 図1
【解決手段】真空を保つためのOリングに弾性力を発生させ、これを有効に活用する。
【効果】Oリングに反発力が生じることで、ドリフトの収束が早くなり、また、ドリフト量が低減される。これにより、電子顕微鏡の操作性は向上し、電子顕微鏡による高精度の測定ができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子顕微鏡の試料ステージ駆動機構に係わり、特に、最小分解能が500nm以下の性能を有する電子顕微鏡用サイドエントリー形試料ステージ駆動構造系に関する。
【0002】
【従来の技術】
高精度の観察や測定を行う電子顕微鏡では、目標視野を移動させるために試料ステージを駆動すると、駆動構造内の摺動部で発生する摩擦力によって生じた構造内のひずみが周囲の微小振動によって開放されていくことにより、数分後まで画面上の像が移動しつづける現象がある。これを試料ステージのドリフト現象と呼んでおり、可能な限り小さくすることが求められている。
【0003】
サイドエントリー形の試料ステージ駆動構造としては、例えば、特開平5−82065号公報や特開平6−68828号公報で説明がなされている。
【0004】
通常のサイドエントリー形電子顕微鏡では、試料ステージのドリフト量を低減させるために、一旦、ステージをドリフト補正量だけ行き過ぎさせてから行き過ぎ分を戻すという動作ができるようになっている。しかしながら、この方法においても駆動構造内には摩擦力によるひずみが発生し、倍率を高くするとドリフトが目立つ場合があるという課題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−82065号公報
【特許文献2】
特開平6−68828号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のようなソフト的解決法によらずにドリフトそのものを低減させ、高精度の試料観察および測定を実現することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では、電子顕微鏡用サイドエントリー形試料ステージ駆動機構において、試料ステージ部分の真空を保つために試料ホルダに設置されているOリングに弾性力を発生させ、摺動部における摩擦ひずみが開放されにくくすることにより、ドリフト量を低減することを特徴としている。
【0008】
従来例となる上記サイドエントリー形試料ステージの駆動原理およびドリフト現象の発生原因について、図2、図3、図4を用いて説明する。
【0009】
図2は、駆動モータにより試料ステージをy正方向に移動させた直後における試料ホルダの状態を模式的に示したものである。一般にサイドエントリー形試料ステージ駆動機構では、試料ホルダ2をモータ5で駆動すると、試料ホルダ2の球面凸部が球面受け部材3の球面凹部と摺動しながら球中心を回転支点として回転する。この試料ホルダ2の回転により、試料ステージ1は駆動モータ5が試料ホルダ2を押したのとは逆方向に駆動される。試料ステージ1が駆動されるとき、試料ホルダ2の球面凸部と球面受け部材3の球面凹部の間には摩擦力が発生している。この摩擦力は試料ステージ1が移動するのを妨げる方向に働き、試料ホルダ2にひずみを生じさせる。
【0010】
試料ホルダ2の球面部には駆動モータ5停止後も摩擦力が働いているが、周囲からの振動によって試料ホルダ2に蓄積されたひずみが徐々に開放されていく。ひずみが開放されていくのに伴い、試料ステージ1はy正方向に移動していくことでドリフトが進行してしまう。
【0011】
図3は図2において、試料ステージ1がドリフトしていくときに試料ホルダ2の球面部周辺に働く力を示したものである。球面部には試料ステージ1がドリフトするための回転とは逆方向に摩擦力8が働き、図3における試料ホルダ2の断面部には試料ホルダ2のひずみに起因する力9、10が働く。摩擦力8および、試料ホルダ2のひずみに起因する力9、10は回転支点11に対するモーメントを発生させる。
【0012】
図4は図3で示した各力が回転支点に与えるモーメントの関係および、時間経過における変化を定性的に示したものである。モーメント12は図3における摩擦力8に、モーメント13は図3における試料ホルダ2のひずみに起因する力9、10による。点線14はドリフトの時間変化を示したものである。ドリフトが進行するのにしたがって、モーメント13は減少していき、やがて摩擦力によるモーメント12とつりあうことでドリフトが終了する。
【0013】
本発明では、試料ホルダ2に生じたひずみが開放されにくくするために、上記のモーメント12とモーメント13に加えて、Oリングが発生する弾性力に起因し、モーメント12と同じ方向に働く第3のモーメントを利用できる構造にすることを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、第1の実施例を図1、図5、図6、図7、図8を用いて説明する。
【0015】
図1は本発明を適用したときの電子顕微鏡用サイドエントリー形試料ステージ駆動機構の断面図である。この試料ステージ駆動機構は球面摺動部およびつば部24を持つ球形支点部材と前記球形支点部材に固定された管部材と、前記2つの部材を貫通し、それらに固定されるステージ棒からなる試料ホルダ25と、試料ホルダ25の先端に位置する試料ステージ26と、前記球形支点部材の球面部と摺動する球面凹部を有する球面受け部材27と、球面受け部材27を壁内部に固定する基台28と、試料ホルダ25を駆動する駆動モータ29と駆動モータ29の反対側から試料ホルダ25を押す押しばね30と、試料ステージ部分の真空を維持するためのOリング31と、試料ステージの動きに追従する微動装置32により構成される。微動装置32が試料ステージに及ぼす力は無視できるため、微動装置32は試料ステージのドリフト現象には影響しない。試料ステージ26に電子線33が照射され、試料ステージ上に固定された試料の形状などを計測するシステムである。
【0016】
図5は本発明により、試料ホルダ2の球面部につば部15を設置した場合の構造で、試料ステージ1をy正方向に駆動したときの球面部周辺を示した図である。図6の構造では、球面受け部材3端と試料ホルダ2に設置されたつば部15によってOリング7に試料ホルダ2の長手方向の弾性力を生じさせる構造となっている。
【0017】
以下に、図6、図7、図8を用いて図5に示した構造における作用力とドリフト量低減効果について説明する。
【0018】
図6は試料ステージ1がドリフトしていくときに試料ホルダ2の球面部周辺部に働く力を示したものである。上記で説明した従来の構造におけるドリフト原因の場合と同様、試料ステージ1がドリフトするための回転方向とは逆方向に摩擦力16が働き、図6の試料ホルダ断面部には試料ホルダのひずみに起因する力17、18が働く。加えて、本発明を適用したことにより、Oリングの弾性力19が試料ホルダ2のつば部15に働く。摩擦力16、試料ホルダのひずみに起因する力17、18、Oリングの弾性力19は回転支点11に対してモーメントを発生させる。
【0019】
図7は図6で示した各力が回転支点に与えるモーメントの関係および、時間経過における変化を定性的に示したものである。モーメント20は図6における摩擦力16に、モーメント21は図6における試料ホルダのひずみに起因する力17、18に、モーメント22は図6におけるOリングの弾性力19と摩擦力16の和による。点線23はドリフトの時間変化を示したものである。
【0020】
上記で説明した従来構造の場合と比べると、Oリングが発生する弾性力によるモーメントの存在により、モーメント21とモーメント22は早くつりあいに達する。したがってドリフトは早く収束し、その絶対値も小さくなる。
【0021】
図8は本発明を用いた場合の試料ステージ26のドリフト推移と試料ホルダ25につば部を持たない従来構造における試料ステージのドリフト推移を比較したものである。図8では本発明を用いた場合の構造における300秒後のドリフト量は、本発明を用いない場合と比べて約40%小さくなった。
【0022】
第1の実施例における本発明の効果は、以上で述べたように、従来のドリフト推移に比べて、ドリフトが早く収束し、かつ、300秒後のドリフト量が低減されたことである。
【0023】
次に本発明の第2の実施例を図9を用いて説明する。
【0024】
第1の実施例との相違点は図1におけるOリング31部にリング状の板スペーサを装着する点であり、以下でその部分について説明する。
【0025】
図9は球面受け部材27と試料ホルダ25のつば部24の間に生じる隙間をOリング幅以上に作り、Oリング部にリング状の板スペーサ34を装着した場合におけるステージ駆動機構を示したものである。この実施例では、ドリフト量が低減されることに加えて、板スペーサ34の厚さを変更することで、Oリングに生じさせる試料ホルダ長手方向の弾性力を制御することができる。Oリングを装着した残りの隙間幅が0.4mmのときに厚さ0.4mmのステンレス製スペーサを装着した場合のドリフト推移は図8と同様である。
【0026】
第2の実施例における本発明の効果は、ドリフトが低減されることに加えて、板スペーサ34の厚さを変更することにより、Oリングに生じさせる試料ホルダ長手方向の弾性力を調節できることである。
【0027】
次に、第3の実施例を図10を用いて説明する。
【0028】
第2の実施例との相違点は、前記リング状の板スペーサの材質を樹脂製の弾性体とする点であり、以下でこのことについて説明する。以下でこのことについて説明する。
【0029】
図10は図1におけるOリング31部にリング状のゴム製スペーサ35を装着した場合の試料ステージ駆動機構を示したものである。この場合、前記金属スペーサのみを装着する場合と比べて、試料ステージ26が中心位置から大きく振れている状態においてもOリングの弾性力が大きくなり過ぎないように調整することが可能である。
【0030】
第3の実施例における本発明の効果は、ドリフトが低減されることに加えて、試料ステージが中心位置から大きく振れている状態においても、Oリングの弾性力が大きくなり過ぎないように調整できることである。
【0031】
次に、第4の実施例を図11を用いて説明する。
【0032】
第1、第2、第3の実施例との相違点は球面摺動部に装着されているOリングに弾性力を発生させることなく、ドリフトを低減できる点である。
【0033】
図11は、図1におけるつば部24の幅を小さくして、Oリング31に接触しない構造とした場合に、球面受け部材27と試料ホルダ25との球面摺動部に、潤滑剤として米国アウジモント社製のフォンブリンオイルHVAC 40/11を用いた場合のドリフト推移とグリースを用いた場合のドリフト推移を比較したものである。図11ではグリース潤滑の場合に比べて前記フォンブリンオイルによる潤滑の場合では、後者の方がドリフト量は約40%低減されている。
【0034】
第4の実施例における本発明の効果は、ドリフトが低減されることに加えて、Oリング弾性力を発生させる必要がないため設計が簡単になることである。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、電子顕微鏡用の試料ステージにおいて、ステージ移動後のドリフト収束を早め、また、ドリフトの絶対量を小さくすることが可能であり、観察者が高精度の観察および測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における試料ステージ駆動機構を示す断面図。
【図2】ドリフト現象を説明するための従来構造を示す断面図。
【図3】従来構造における試料ステージ駆動時の部材に働く力関係を示す図。
【図4】従来の構造における試料ステージ駆動時の部材に働くモーメントの時間変化を定性的に示した図。
【図5】本発明の一実施例において試料ステージを駆動したときの駆動機構拡大図。
【図6】本発明の一実施例における試料ステージ駆動時の部材に働く力関係を示す図。
【図7】本発明の一実施例における試料ステージ駆動時の部材に働くモーメントの時間変化を定性的に示した図。
【図8】本発明の一実施例における試料ステージドリフトの測定結果と従来の構造におけるドリフト測定結果を比較した図。
【図9】本発明の第2の実施例における試料ステージ駆動機構を示す断面図。
【図10】本発明の第3の実施例における試料ステージ駆動機構を示す断面図。
【図11】球面摺動部の潤滑剤としてグリースを用いた場合とオイルを用いた場合の試料ステージドリフトを比較した図。
【符号の説明】
1…試料ステージ、2…試料ホルダ、3…球面受け部材、4…基台、5…駆動モータ、6…押しばね、7…Oリング、8…摩擦力、9…試料ホルダ2の伸びひずみによる力、10…試料ホルダ2の縮みひずみによる力、11…回転支点、12…力9によるモーメント、13…力10、11に夜モーメント、14…ドリフト推移を示す破線、15…つば部、16…摩擦力、17…試料ホルダ2の伸びひずみによる力、18…試料ホルダ2の縮みひずみによる力、19…Oリングの弾性力、20 …力16によるモーメント、21…力17、18によるモーメント、22…力19によるモーメント、23…ドリフト推移を示す破線、24…つば部、25…試料ホルダ、26…試料ステージ、27…球面受け部材、28…基台、29…駆動モータ、30…押しばね、31…Oリング、32…微動装置、33…電子線、34…スペーサ、35…ゴム製スペーサ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子顕微鏡の試料ステージ駆動機構に係わり、特に、最小分解能が500nm以下の性能を有する電子顕微鏡用サイドエントリー形試料ステージ駆動構造系に関する。
【0002】
【従来の技術】
高精度の観察や測定を行う電子顕微鏡では、目標視野を移動させるために試料ステージを駆動すると、駆動構造内の摺動部で発生する摩擦力によって生じた構造内のひずみが周囲の微小振動によって開放されていくことにより、数分後まで画面上の像が移動しつづける現象がある。これを試料ステージのドリフト現象と呼んでおり、可能な限り小さくすることが求められている。
【0003】
サイドエントリー形の試料ステージ駆動構造としては、例えば、特開平5−82065号公報や特開平6−68828号公報で説明がなされている。
【0004】
通常のサイドエントリー形電子顕微鏡では、試料ステージのドリフト量を低減させるために、一旦、ステージをドリフト補正量だけ行き過ぎさせてから行き過ぎ分を戻すという動作ができるようになっている。しかしながら、この方法においても駆動構造内には摩擦力によるひずみが発生し、倍率を高くするとドリフトが目立つ場合があるという課題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−82065号公報
【特許文献2】
特開平6−68828号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のようなソフト的解決法によらずにドリフトそのものを低減させ、高精度の試料観察および測定を実現することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では、電子顕微鏡用サイドエントリー形試料ステージ駆動機構において、試料ステージ部分の真空を保つために試料ホルダに設置されているOリングに弾性力を発生させ、摺動部における摩擦ひずみが開放されにくくすることにより、ドリフト量を低減することを特徴としている。
【0008】
従来例となる上記サイドエントリー形試料ステージの駆動原理およびドリフト現象の発生原因について、図2、図3、図4を用いて説明する。
【0009】
図2は、駆動モータにより試料ステージをy正方向に移動させた直後における試料ホルダの状態を模式的に示したものである。一般にサイドエントリー形試料ステージ駆動機構では、試料ホルダ2をモータ5で駆動すると、試料ホルダ2の球面凸部が球面受け部材3の球面凹部と摺動しながら球中心を回転支点として回転する。この試料ホルダ2の回転により、試料ステージ1は駆動モータ5が試料ホルダ2を押したのとは逆方向に駆動される。試料ステージ1が駆動されるとき、試料ホルダ2の球面凸部と球面受け部材3の球面凹部の間には摩擦力が発生している。この摩擦力は試料ステージ1が移動するのを妨げる方向に働き、試料ホルダ2にひずみを生じさせる。
【0010】
試料ホルダ2の球面部には駆動モータ5停止後も摩擦力が働いているが、周囲からの振動によって試料ホルダ2に蓄積されたひずみが徐々に開放されていく。ひずみが開放されていくのに伴い、試料ステージ1はy正方向に移動していくことでドリフトが進行してしまう。
【0011】
図3は図2において、試料ステージ1がドリフトしていくときに試料ホルダ2の球面部周辺に働く力を示したものである。球面部には試料ステージ1がドリフトするための回転とは逆方向に摩擦力8が働き、図3における試料ホルダ2の断面部には試料ホルダ2のひずみに起因する力9、10が働く。摩擦力8および、試料ホルダ2のひずみに起因する力9、10は回転支点11に対するモーメントを発生させる。
【0012】
図4は図3で示した各力が回転支点に与えるモーメントの関係および、時間経過における変化を定性的に示したものである。モーメント12は図3における摩擦力8に、モーメント13は図3における試料ホルダ2のひずみに起因する力9、10による。点線14はドリフトの時間変化を示したものである。ドリフトが進行するのにしたがって、モーメント13は減少していき、やがて摩擦力によるモーメント12とつりあうことでドリフトが終了する。
【0013】
本発明では、試料ホルダ2に生じたひずみが開放されにくくするために、上記のモーメント12とモーメント13に加えて、Oリングが発生する弾性力に起因し、モーメント12と同じ方向に働く第3のモーメントを利用できる構造にすることを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、第1の実施例を図1、図5、図6、図7、図8を用いて説明する。
【0015】
図1は本発明を適用したときの電子顕微鏡用サイドエントリー形試料ステージ駆動機構の断面図である。この試料ステージ駆動機構は球面摺動部およびつば部24を持つ球形支点部材と前記球形支点部材に固定された管部材と、前記2つの部材を貫通し、それらに固定されるステージ棒からなる試料ホルダ25と、試料ホルダ25の先端に位置する試料ステージ26と、前記球形支点部材の球面部と摺動する球面凹部を有する球面受け部材27と、球面受け部材27を壁内部に固定する基台28と、試料ホルダ25を駆動する駆動モータ29と駆動モータ29の反対側から試料ホルダ25を押す押しばね30と、試料ステージ部分の真空を維持するためのOリング31と、試料ステージの動きに追従する微動装置32により構成される。微動装置32が試料ステージに及ぼす力は無視できるため、微動装置32は試料ステージのドリフト現象には影響しない。試料ステージ26に電子線33が照射され、試料ステージ上に固定された試料の形状などを計測するシステムである。
【0016】
図5は本発明により、試料ホルダ2の球面部につば部15を設置した場合の構造で、試料ステージ1をy正方向に駆動したときの球面部周辺を示した図である。図6の構造では、球面受け部材3端と試料ホルダ2に設置されたつば部15によってOリング7に試料ホルダ2の長手方向の弾性力を生じさせる構造となっている。
【0017】
以下に、図6、図7、図8を用いて図5に示した構造における作用力とドリフト量低減効果について説明する。
【0018】
図6は試料ステージ1がドリフトしていくときに試料ホルダ2の球面部周辺部に働く力を示したものである。上記で説明した従来の構造におけるドリフト原因の場合と同様、試料ステージ1がドリフトするための回転方向とは逆方向に摩擦力16が働き、図6の試料ホルダ断面部には試料ホルダのひずみに起因する力17、18が働く。加えて、本発明を適用したことにより、Oリングの弾性力19が試料ホルダ2のつば部15に働く。摩擦力16、試料ホルダのひずみに起因する力17、18、Oリングの弾性力19は回転支点11に対してモーメントを発生させる。
【0019】
図7は図6で示した各力が回転支点に与えるモーメントの関係および、時間経過における変化を定性的に示したものである。モーメント20は図6における摩擦力16に、モーメント21は図6における試料ホルダのひずみに起因する力17、18に、モーメント22は図6におけるOリングの弾性力19と摩擦力16の和による。点線23はドリフトの時間変化を示したものである。
【0020】
上記で説明した従来構造の場合と比べると、Oリングが発生する弾性力によるモーメントの存在により、モーメント21とモーメント22は早くつりあいに達する。したがってドリフトは早く収束し、その絶対値も小さくなる。
【0021】
図8は本発明を用いた場合の試料ステージ26のドリフト推移と試料ホルダ25につば部を持たない従来構造における試料ステージのドリフト推移を比較したものである。図8では本発明を用いた場合の構造における300秒後のドリフト量は、本発明を用いない場合と比べて約40%小さくなった。
【0022】
第1の実施例における本発明の効果は、以上で述べたように、従来のドリフト推移に比べて、ドリフトが早く収束し、かつ、300秒後のドリフト量が低減されたことである。
【0023】
次に本発明の第2の実施例を図9を用いて説明する。
【0024】
第1の実施例との相違点は図1におけるOリング31部にリング状の板スペーサを装着する点であり、以下でその部分について説明する。
【0025】
図9は球面受け部材27と試料ホルダ25のつば部24の間に生じる隙間をOリング幅以上に作り、Oリング部にリング状の板スペーサ34を装着した場合におけるステージ駆動機構を示したものである。この実施例では、ドリフト量が低減されることに加えて、板スペーサ34の厚さを変更することで、Oリングに生じさせる試料ホルダ長手方向の弾性力を制御することができる。Oリングを装着した残りの隙間幅が0.4mmのときに厚さ0.4mmのステンレス製スペーサを装着した場合のドリフト推移は図8と同様である。
【0026】
第2の実施例における本発明の効果は、ドリフトが低減されることに加えて、板スペーサ34の厚さを変更することにより、Oリングに生じさせる試料ホルダ長手方向の弾性力を調節できることである。
【0027】
次に、第3の実施例を図10を用いて説明する。
【0028】
第2の実施例との相違点は、前記リング状の板スペーサの材質を樹脂製の弾性体とする点であり、以下でこのことについて説明する。以下でこのことについて説明する。
【0029】
図10は図1におけるOリング31部にリング状のゴム製スペーサ35を装着した場合の試料ステージ駆動機構を示したものである。この場合、前記金属スペーサのみを装着する場合と比べて、試料ステージ26が中心位置から大きく振れている状態においてもOリングの弾性力が大きくなり過ぎないように調整することが可能である。
【0030】
第3の実施例における本発明の効果は、ドリフトが低減されることに加えて、試料ステージが中心位置から大きく振れている状態においても、Oリングの弾性力が大きくなり過ぎないように調整できることである。
【0031】
次に、第4の実施例を図11を用いて説明する。
【0032】
第1、第2、第3の実施例との相違点は球面摺動部に装着されているOリングに弾性力を発生させることなく、ドリフトを低減できる点である。
【0033】
図11は、図1におけるつば部24の幅を小さくして、Oリング31に接触しない構造とした場合に、球面受け部材27と試料ホルダ25との球面摺動部に、潤滑剤として米国アウジモント社製のフォンブリンオイルHVAC 40/11を用いた場合のドリフト推移とグリースを用いた場合のドリフト推移を比較したものである。図11ではグリース潤滑の場合に比べて前記フォンブリンオイルによる潤滑の場合では、後者の方がドリフト量は約40%低減されている。
【0034】
第4の実施例における本発明の効果は、ドリフトが低減されることに加えて、Oリング弾性力を発生させる必要がないため設計が簡単になることである。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、電子顕微鏡用の試料ステージにおいて、ステージ移動後のドリフト収束を早め、また、ドリフトの絶対量を小さくすることが可能であり、観察者が高精度の観察および測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における試料ステージ駆動機構を示す断面図。
【図2】ドリフト現象を説明するための従来構造を示す断面図。
【図3】従来構造における試料ステージ駆動時の部材に働く力関係を示す図。
【図4】従来の構造における試料ステージ駆動時の部材に働くモーメントの時間変化を定性的に示した図。
【図5】本発明の一実施例において試料ステージを駆動したときの駆動機構拡大図。
【図6】本発明の一実施例における試料ステージ駆動時の部材に働く力関係を示す図。
【図7】本発明の一実施例における試料ステージ駆動時の部材に働くモーメントの時間変化を定性的に示した図。
【図8】本発明の一実施例における試料ステージドリフトの測定結果と従来の構造におけるドリフト測定結果を比較した図。
【図9】本発明の第2の実施例における試料ステージ駆動機構を示す断面図。
【図10】本発明の第3の実施例における試料ステージ駆動機構を示す断面図。
【図11】球面摺動部の潤滑剤としてグリースを用いた場合とオイルを用いた場合の試料ステージドリフトを比較した図。
【符号の説明】
1…試料ステージ、2…試料ホルダ、3…球面受け部材、4…基台、5…駆動モータ、6…押しばね、7…Oリング、8…摩擦力、9…試料ホルダ2の伸びひずみによる力、10…試料ホルダ2の縮みひずみによる力、11…回転支点、12…力9によるモーメント、13…力10、11に夜モーメント、14…ドリフト推移を示す破線、15…つば部、16…摩擦力、17…試料ホルダ2の伸びひずみによる力、18…試料ホルダ2の縮みひずみによる力、19…Oリングの弾性力、20 …力16によるモーメント、21…力17、18によるモーメント、22…力19によるモーメント、23…ドリフト推移を示す破線、24…つば部、25…試料ホルダ、26…試料ステージ、27…球面受け部材、28…基台、29…駆動モータ、30…押しばね、31…Oリング、32…微動装置、33…電子線、34…スペーサ、35…ゴム製スペーサ。
Claims (4)
- 先端に試料を取付ける試料ステージと、前記試料ステージが先端に固定され中間部に試料ステージ側の方へ頂点を持つ半球面凸部を有する棒状部材である試料ホルダと、前記球面凸部と摺動する球面凹部を有し中空管状の球面受け部材と、前記球面受け部材を壁内部に固定する基台と前記試料ホルダの球面凸部を基準としたときに試料ステージ側とは反対側の試料ホルダ壁に垂直な荷重を加えられる駆動モータと、試料ホルダの半球面部に同心となるように装着され基台壁と接触することで試料ステージ側の真空を維持するためのOリングで構成されるサイドエントリー形試料ステージ駆動機構を有する電子顕微鏡において、
前記Oリングに試料ホルダ長手方向の弾性力を発生させるように前記試料ホルダの半球面部球面切り口側につば部に設置することを特徴とした試料ステージ駆動機構。 - 上記請求項1に記載の試料ホルダにつば部を設置するにあたり、つば部と球面受け部材端にOリングの幅以上のスペースを確保し、Oリングを設置してなお生じる隙間にスペーサを装着することを特徴とする試料ステージ駆動機構。
- 上記請求項2に記載のスペーサを樹脂製の弾性体とし、Oリングによる試料ホルダ長手方向の弾性力と弾性体による弾性力を前記つば部に作用させることを特徴とする試料ステージ駆動機構。
- 上記請求項1に記載された球面受け部材および試料ホルダの球面摺動部に、潤滑剤としてフッ素系高分子オイルを用いることを特徴とした試料ステージ駆動機構。
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