JP2004258423A - 三角溝及び光学素子の製造方法 - Google Patents

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清司 梅本
Yuuki Nakano
勇樹 中野
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亮児 木下
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一郎 網野
Toshihiko Ariyoshi
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Abstract

【課題】形状精度に優れる三角溝、特に溝頂点部に形状異常が発生しにくい三角溝の製造方法の開発
【解決手段】光の照射形状を規制する光透過部を形成する投影マスクを介した光照射で高分子膜を部分的にエッチングして高分子膜に三角形の断面を具備する凹部を形成するにあたり光透過部が閉塞する前にエッチングを停止する製造方法、その製造方法による三角溝を形成する操作を繰り返して高分子膜の片面に複数の三角溝をブレーズド回折格子や光出射手段などの光学機能を示す状態に分布させる光学素子の製造方法、その光学素子の三角溝を分布させた面形状を写した金型を得てその面形状を高分子層に転写する光学素子の製造方法。
【効果】急斜面を伴う三角溝をマスク固定方式等で形成する場合にも溝頂点に異常エッチングによる異常形状が発生しにくい
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、溝頂点の形状異常を抑制できる三角溝の製造方法、及びその三角溝により横方向の入射光を効率よく縦方向に光路変換する光出射手段やブレーズド回折格子、導波路等の光学機能を示す光学素子の製造方法に関する。
【0002】
【発明の背景】
従来、エキシマレーザ等のレーザー光を用いたアブレーション加工により高分子膜の表面をエッチングして凹部を形成する方法が知られていた(特開平3−89518)。斯かる方法は、バイトや砥石等による切削加工方式では形成が困難な、膜面内の任意な位置に微細凹部を形成しうる利点などを有する。しかしながら従来方法では、形成される凹部が形状精度に乏しい問題点があった。
【0003】
【発明の技術的課題】
本発明は、形状精度に優れる三角溝、特に溝頂点部に形状異常が発生しにくい三角溝の製造方法の開発を目的とする。ちなみに三角溝の形成は、例えば2枚のマスクで光透過部となる開口を形成し、その開口を介し高分子膜の吸収波長に相当するレーザー光を照射して高分子膜をエッチングし、その際にマスクの移動で開口を閉塞することにより行うことができる。
【0004】
前記の方法で例えば直角三角形の断面を有する凹部の形成を目的とする場合には、照射エネルギーの分布が直角三角形となるようにレーザー光を照射してエッチングする方式が採られ、例えばマスクの一方を固定して垂直面が形成されるようにし、他方のマスクの移動を介し開口を一定速度で閉塞して一定の傾斜角でエッチングする方法が採られる。
【0005】
しかし垂直面の形成を予定したマスク固定側では急斜面となり、その急斜面とほぼ予定通りのマスク移動側の傾斜面との連結部分である溝頂点部が異常にエッチングされた凹部が形成されることとなる。その異常エッチングによる溝頂点部における形状の異常化は、マスク移動側の傾斜面における反射の異常点になるなど、三角溝の光学機能を大きく損なうものであり、回避される必要がある。
【0006】
【課題の解決手段】
本発明は、光の照射形状を規制する光透過部を形成する投影マスクを介した光照射で高分子膜を部分的にエッチングして高分子膜に三角形の断面を具備する凹部を形成するにあたり、前記投影マスクによる光透過部を2枚以上の部分マスクで形成してそれら部分マスクの内の、当該形成目的の凹部における対向する一対の辺を形成する部分マスクを当該光透過部が凹部形成開始の開状態から閉塞する方向に移動させて、高分子膜に凹部における斜面を形成するものであり、かつその斜面形成の際に当該光透過部が閉塞する前にエッチングを停止することを特徴とする三角溝の製造方法を提供するものである。
【0007】
また本発明は、前記の製造方法により、高分子膜平面に対し所定傾斜角の斜面を具備する三角溝を形成する操作を繰り返して、高分子膜の片面に複数の三角溝をブレーズド回折格子や光出射手段などの光学機能を示す状態に分布させることを特徴とする光学素子の製造方法を提供するものである。
【0008】
さらに本発明は、前記の製造方法による光学素子の三角溝を分布させた面上に金属層を形成した後、その金属層と光学素子を分離して光学素子形成用金型を得る工程、その金型における三角溝分布を形成しうる凸部を有する面形状を高分子層に転写した後、その高分子層を固体の状態で金型より分離する工程を有することを特徴とする光学素子の製造方法を提供するものである。
【0009】
【発明の効果】
本発明によれば、急斜面を伴う三角溝をマスク固定方式等で形成する場合にも溝頂点に異常エッチングによる異常形状が発生しにくく、マスク移動による光透過部閉塞方式にて形状精度に優れる三角断面具備の凹部を形成することができる。またその三角溝からなる微細構造の凹部も位置精度よく分布させることができ、横方向の光を縦方向に効率よく光路変換する光出射手段やブレーズド回折格子などの、三角溝の分布構造に基づいて光学機能を示す光学素子を得ることができる。特に金型を介し所定形状を転写する方法では所定の光学機能を示す光学素子を効率よく得ることができる。
【0010】
前記した光透過部閉塞前のエッチング停止方式で溝頂点部の形状異常化が回避される理由は不明である。すなわち斯かる方式では溝頂点部にエッチングの未了部分が発生することが予測され、エッチング停止が早すぎる場合にはその予測通りとなる。一方、溝頂点部で発生する異常エッチングの原因を、垂直面予定のマスク固定側で形成される急斜面にエッチング光が入射し、その光が反射して溝頂点部に集光し予定外の過度なエッチングが発生して深くエッチングされるためと考えると、その過度なエッチングは、急斜面の形成開始より始まって凹部形成の全過程におけるそれが累積することとなる。
【0011】
しかし前記した過度なエッチングの累積結果は現れないから、前記の考えでは異常エッチングの発生を十分に説明できない。ただしエッチングが進行して急斜面の大きさが増大した三角溝の溝頂点の近傍を形成する段階で過度なエッチングが発生すると仮定した場合には、前記の考えで異常エッチングの発生を合理的に説明できる。従って上記のように本発明にて溝頂点部の形状異常化が回避される明確な理由は不明である。
【0012】
なお光透過部の閉塞後にエッチングを停止する方式で異常エッチングの発生を防止する試みを、例えば光の照射エネルギー密度や照射パルス数ないし照射時間などの条件を変更して行ったが、解決は困難であった。一方、マスク固定側でエッチング面が垂直面とならずに急斜面となる理由は、その急斜面の角度が光の照射条件や高分子膜の種類にて決まることより、マスクのエッジ作用であると考えられる。
【0013】
【発明の実施形態】
本発明による三角溝の製造方法は、光の照射形状を規制する光透過部を形成する投影マスクを介した光照射で高分子膜を部分的にエッチングして高分子膜に三角形の断面を具備する凹部を形成するものであり、その形成にあたり、前記投影マスクによる光透過部を2枚以上の部分マスクで形成してそれら部分マスクの内の、当該形成目的の凹部における対向する一対の辺を形成する部分マスクを当該光透過部が凹部形成開始の開状態から閉塞する方向に移動させて、高分子膜に凹部における斜面を形成し、かつその斜面形成の際に当該光透過部が閉塞する前にエッチングを停止するものである。
【0014】
図1に前記方法の実施に用いうる装置を例示した。投影マスクは、光の照射形状を規制する光透過部を形成する部分マスク1、2からなる。図例では、光遮蔽材料からなる部分マスク1が開口を有し、不必要な透過光の遮蔽下に光透過用の開口を介して透過光による光照射形状の最大形を規制するようになっており、配置位置が固定されている。部分マスク2は、光遮蔽材料で形成されて移動可能となっており、その移動を介した透過光の遮蔽で部分マスク1の開口に供給される光を規制できるようになっている。
【0015】
従って部分マスク1に対する部分マスク2の配置位置に基づいて光透過部の形状が規制され、高分子膜8に対する光の初期の照射形状が決定される。また部分マスク2が部分マスク1の開口上を一定速度又は任意速度で光透過部を閉塞する方向に移動することで高分子膜に対する光の照射形状が変化する。その変化は、高分子膜に対する光の照射幅が部分マスク2の移動速度に応じて狭くなるものである。またその狭くなる部分マスク2の移動方向に光照射量が増大して深くエッチングされ、傾斜面の形成、ひいては三角溝の形成が可能となる。
【0016】
なお図1において3は、光31の供給手段としてのレーザー発振器である。部分マスク2とレーザー発振器3の間には、図例の如く必要に応じて例えばビームホモジナイザやハエの目レンズなどからなる照射光たるビームの均一化手段4や、例えばアッテネータ等の光量調節手段5を配置することもできる。
【0017】
一方、部分マスク1と高分子膜(ワーク)の間には、図例の如く必要に応じて例えば光透過部を透過した光の大きさを制御して、一般には縮小してワークに照射するための例えばレンズ等からなる、投影像を作り出す光学機器6を配置することもできる。
【0018】
なお7は、高分子膜8を固定保持するワークステージである。部分マスクも必要に応じて図外のマスクステージに固定保持される。マスクステージ、ワークステージ、光学機器は、高分子膜に対して正確な光照射を行うことなどを目的に、部分マスクや高分子膜等の位置や角度などを制御できるように図外の駆動源を介しそれぞれ独立して、三次元直交座標に基づくX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向に移動でき、かつX軸、Y軸及びZ軸の各軸において軸回転できるように形成することもできる。またワークステージは、あおり動作が可能なものであってもよく、また高分子膜を吸着機構等を介して容易に着脱できるようにしたものであっても良い。
【0019】
前記によりレーザー発振器3からの出射光31が、部分マスク1、2にて形成される光透過部を透過することで照射形状に規制され、その規制光32の大きさがレンズ6を介し制御(縮小)33されて高分子膜8に照射され、その高分子膜の形成材が照射光によりエッチングされて消失し、除去される。
【0020】
前記の場合に図2に例示の如く、部分マスク2と部分マスク1が光透過部における閉塞用対向辺を一辺ずつ分担するように配置して凹部形成を開始する開状態W0の光透過部とし、その光透過部を介し配置位置を固定した高分子膜に光を照射しつつ、部分マスク2を矢印の如く光透過部が閉塞する方向の図上右側に移動させる。
【0021】
前記の部分マスク2を介した光透過部における凹部形成開始の開状態から閉塞方向への移動操作により、部分マスク2の移動距離に応じて高分子膜の形成材を連続的に除去でき、その場合に光の照射時間が長い位置(光透過量の積分値が多い位置)ほど、従って光透過部の閉塞位置に近いほど深くエッチングされ高分子膜に凹部における斜面aが形成される。また位置固定の部分マスク1の側では光の照射時間に応じて深くエッチングされ急斜面bが形成される。その結果、図2Aに例示の如く目的とする三角形の断面を有する凹部の形態が高分子膜に形成される。
【0022】
前記において部分マスク2を移動して斜面を形成するためのエッチング処理は、図2イに例示の如く光透過部が閉塞状態となる前(Ws)に停止される。これにより図2ロに例示の如く溝頂点部での過剰エッチングによる予定外の異常形状の発生が防止され、目的とした三角形の断面を有する凹部からなる三角溝が形成される。上記の例で形成される三角溝は、部分マスク1、2を介した光透過部の形状に基づいて高分子膜面における開口が方形(長方形)のものである。なお斯かる三角形や方形は、厳密なものでなく製造精度等に基づく変形が許容される。
【0023】
従って上記した部分マスク1、2を介して形成した光透過部の如く、2枚以上の部分マスクを用いて光透過部を変形可能に形成し、その光透過部を介し高分子膜に照射する光線像を制御して、具体的には形成目的の凹部における対向する一対の辺を形成する部分マスクの一方又は両方を介した光透過部の開状態(凹部形成開始状態)から閉塞する方向への動作により、その部分マスクの移動方向における光透過量の積分値を連続的に変化させて、形成される凹部の深さ方向における単位面積当たりのエッチング量を連続的に変化させて凹部における斜面を形成しつつ、光透過部が閉塞する前にエッチングを停止することにより、高分子膜に目的とする三角形の断面を具備する凹部を形成することができる。
【0024】
なお上記の例では各部分マスクを1枚のマスクにて形成したが、2枚以上のマスクの組合せにて目的とする形態を形成する部分マスクとすることもできる。また図例では部分マスク1、2が上下で重畳する配置関係として、光の照射形状を規制する光透過部を形成したが光透過部は、投影マスクを形成する2枚又は3枚以上の部分マスクの全体を介して光を四辺形等の所定の照射形状に成形規制する形態が形成されればよい。
【0025】
従って例えば開口部を有しない短冊などからなる全遮蔽型の部分マスクの複数を用いて投影マスクとし、それらを中央に所定形状の開口部が形成されるように配置して光の照射形状を規制する光透過部を形成することもできる。また四辺形の光透過部とする場合には、コノ字形やL字形の全遮蔽型の部分マスクの2枚、又はコノ字形とI字形の全遮蔽型の部分マスクの2枚を用いて投影マスクとし、それらを中央に四辺形の開口部が形成されるように口ノ字状に配置して光透過部を形成することもできる。
【0026】
前記の如く投影マスクは、光の照射形状を規制する光透過部を形成できる、適宜な形態を有する複数の部分マスクの組合せ体として形成することができる。その投影マスクを介して形成する光透過部の大きさについては、特に限定はない。光透過部による光透過像は、必要に応じレンズ等の光学機器を介しその大きさを制御して、一般には縮小して高分子膜に照射できることより、その過程でのサイズ制御も可能であり、従って光透過部の大きさは形成目的の凹部サイズなどに応じて適宜に決定することができる。
【0027】
また光透過部の形状については一般には四辺形とされるが、他の多角形などとすることもでき任意である。光透過部を介して高分子膜上に形成する三角形の断面を有する凹部のサイズや斜面形態などについても任意である。形成する凹部における斜面の角度は、光透過部を閉塞する際の部分マスクの移動速度、照射光の強さや量などにて制御することができる。光の照射量を一定として単位時間当たりのエッチング量を一定とし、部分マスクを一定速度で移動させることにより、傾斜角が一定な斜面を形成することができる。
【0028】
投影マスクを形成する部分マスクとしては、光遮蔽性材料からなる適宜なものを用いうる。ちなみにレーザー光用の部分マスクとしては、金属からなるもの、石英等からなるガラス板上に金属や誘電体等の適宜なレーザー光遮蔽性材料を蒸着し、必要に応じてその蒸着層をパターニングして光透過部を形成してなるガラスマスクなども用いうる。
【0029】
前記のガラスマスクにおける蒸着材料としては、限定するものではないが、レーザー光に対する耐久性や解像力の点より、クロムやアルミニウム、モリブデンや誘電体多層膜などが好ましい。なお部分マスクは、上記したように2枚又は3枚以上のマスクで形成し、それらを所定の形態に組み合わせて光の照射に供することもできる。
【0030】
エッチング処理は、光を連続照射する方式にて行うこともできるし、パルス方式の如く光を断続的に照射する方式にて行うこともでき、適宜な方式で行うことができる。前者の光連続照射方式で傾斜角が一定な斜面を形成するためには、同期方式等にて光照射の開始と同時に部分マスクを閉塞移動させることが必要である。
【0031】
後者の光断続的照射方式では図2イに照射エネルギー分布密度を示した如く斜面は、階段状のものとして形成される。従って厳密な意味での傾斜角が一定な斜面の形成は困難であるが、ステップの高さ制御で実用的には傾斜角が一定な斜面に準じた機能を示す(階段状の)斜面を形成することができる。光断続的照射方式では部分マスクの閉塞移動も断続的に行えて、エッチング操作が容易な利点がある。
【0032】
エッチング光には高分子膜を部分的に除去できる適宜なものを用いうる。一般にはレーザー光が用いられ、高次の変調光として照射することもできる。そのレーザー発振器には、例えばエキシマレーザーやYAGレーザー、COレーザーやフェムト秒レーザーなどの適宜なものを1種又は2種以上用いうる。就中、微細加工精度等の点より波長400nm以下の紫外領域のレーザー光が好ましい。またエッチング処理は、アブレーション加工による方式が好ましい。
【0033】
部分マスクによる光透過部の閉塞操作において、可及的に垂直面に近いエッチング面を形成する点よりは、そのエッチング面を形成するための部分マスクを移動させないで位置固定しておくことが有利である。従って形成目的の凹部における対向辺を形成する部分マスクの一方の辺を形成する部分マスクのみを閉塞移動させることが好ましい。
【0034】
また部分マスクによる光透過部の閉塞操作において、その閉塞前におけるエッチング処理の停止は、上記したように形成目的の三角溝における溝頂点部での異常エッチングによるエッチング形状の異常化の防止を目的とする。そのエッチング停止時は、三角溝の光学機能の維持性の点より、図2イ、ロに例示した如く形成目的の凹部Aの深さをDとしたとき、凹部の対向辺を形成する部分マスク1、2の間隙Wsに基づいて、Ws=D/tanθ(ただしθ=65〜85度)を満足する時が好ましい。そのθが85度超では溝頂点部にエッチング形状の異常化が発生して三角溝の光学機能が大きく低下しやすい。またθが65度未満では加工不足で溝頂点部の形成にまで加工が進行しにくく、溝頂点部が曲率半径の大きい形態となるか平坦化して台形溝の形状に近くなり、三角溝に属さないものとなりやすい。
【0035】
当該θは、高分子膜の種類やエッチング条件にて変化するが、ポリイミドの場合の特に好ましい当該θは、70〜80度の範囲である。なお部分マスクによる光透過部が所定の閉塞前状態となった時におけるエッチング処理の停止は、高分子膜に対する光の照射を中止でき、例えば光源の電源を切断する方式や光源のシャッター方式による光の遮蔽など、適宜な方式で行うことができる。
【0036】
また図2において溝深さDの増大と共に急斜面bへの照射エネルギー量も増大して溝頂点部を形成する際の影響も大きくなることより、その影響を抑制する点よりエッチング操作による三角溝の形成において前記のDは、100μm以下、就中50μm以下とすることが好ましく、またW0(加工幅)/Dを50/1〜2/1とすることが好ましい。特に好ましい条件は、そのW0に基づいて100μm以下、就中50μm以下、特に3〜20μmである。W0が3μm未満では部分マスクによる回折の影響が大きくなり、急斜面bの角度が大きくなってV字状の溝形状となりやすく、形成する溝の形状を制御しにくくなる。
【0037】
エッチング対象の高分子膜としては、照射光を吸収してエッチング処理できる適宜な材質からなるものを用いることができ、特に限定がない。一般には電気絶縁性を示してレーザー光でエッチングできる高分子フィルムが用いられる。就中、紫外域のレーザー光による加工性の点よりは、アクリル系やメタクリル系やウレタン系等の紫外線硬化樹脂などからなる紫外線吸収性のものが好ましい。また可視光域の透過率に優れるものが好ましい。なお通例では高分子膜の吸収波長域にない光にあっても、2光子吸収によるアブレーション加工なども可能であるので高分子膜の種類は幅広く選択することができる。
【0038】
ちなみに前記高分子膜の例としては、ポリエステル系樹脂やセルロース系樹脂、ウレタン系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂やポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂やアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂やポリエーテル系樹脂、塩化ビニル系樹脂やポリエーテルスルホン系樹脂、ノルボルネン系樹脂やポリフェニレンスルフィド系樹脂などの熱可塑性樹脂からなる塗工膜やフィルムなどがあげられる。
【0039】
また特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマー、例えば(A)側鎖に置換又は/及び非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換又は/及び非置換のフェニル基並びにニトリル基を有する熱可塑性樹脂との前記A、Bを含有する樹脂組成物、あるいはアクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系、シリコーン系等の熱や光、ないし紫外線や電子線等の放射線で重合処理しうる硬化型樹脂からなる塗工膜やフィルムなどよりなる高分子膜もあげられる。
【0040】
なお前記A、Bを含有する樹脂組成物の具体例としては、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有するものなどがあげられる。フィルムは、樹脂組成物の押出成形などにて形成することができる。高分子膜は、1種のポリマー又は2種以上のポリマー混合物を用いて前記の如く塗工膜やフィルムなどとして形成することができる。
【0041】
耐熱性や耐薬品性、レーザー加工性の点より好ましい高分子膜は、熱硬化性樹脂、特にポリイミド系樹脂からなる高分子フィルムである。高分子膜の厚さは、任意であるが加工時のハンドリング性や、形成される凹部におけるエッジ部分のシャープさ、加工表面のフラット性などの点より500μm以下、就中5〜200μm、特に10〜100μmが好ましい。なお高分子膜は、必要に応じガラス基板上や金属板上に保持して、ワークステージ上に配置することもできる。
【0042】
上記した三角溝の製造方法は、例えば高分子膜平面に対し所定傾斜角の斜面を具備する三角溝を形成する操作を繰り返して、高分子膜の片面に複数の三角溝を光学機能を示す状態に分布させてなる光学素子の製造に好ましく適用することができる。
【0043】
前記の方法にて形成する光学素子については特に限定はない。ちなみにその例としては、三角溝の分布が光の通路としての光学機能を示す導波路や、三角溝の分布が回折格子としての光学機能を示すブレーズド回折格子、あるいは三角溝の分布が横方向の入射光を縦方向に光路変換する光出射手段としての光学機能を示す面発光化素子、その他、反射防止素子や異方性拡散シートなどがあげられる。
【0044】
従って光学素子における斜面傾斜角等の三角溝の形態は、目的とする光学機能に応じて適宜に決定しうる。また複数の三角溝の分布形態も目的とする光学機能に応じて適宜に決定しうる。ちなみにその分布形態としては、三角溝が光通路となるように回路状に連続溝として形成された分布形態、連続した三角溝をストライプ状に配列させた分布形態、あるいは微小な三角溝を分散分布させた形態などがあげられる。
【0045】
前記分布形態の三角溝の形成は、例えば図1の例ではワークステージ7を介して高分子膜8を移動させると共にレーザー照射33を断続する方式などにて、上記の方法による所定形態の三角溝を形成するエッチング操作を高分子膜の所定位置に繰り返すことにより行うことができる。
【0046】
光学素子は、前記の方法で一体ずつ製造することができる。量産性等の点より光学素子の好ましい製造方法は、上記の方法で得た光学素子を母型に用いて、光学素子形成用の金型を製造し、その金型を用いて光学素子を量産する方法である。すなわち上記のエッチング操作による製造方法で形成した光学素子における三角溝を分布させた面上に金属層を形成し、その金属層を光学素子と分離して光学素子形成用金型を得、その金型における三角溝分布を形成しうる凸部を有する面形状を高分子層に転写した後、その高分子層を固体の状態で金型より分離して光学素子を製造する方法である。
【0047】
なお前記の三角溝分布形態を金型に転写して光学素子を製造する方法は、その母型が光学素子でない場合にも適用でき、その非光学素子に設けた所定の形態を金型に転写し、その金型に転写した面形態を光学素子形成用の透明基材に転写する方法にても光学素子を形成することができる。従ってその場合には上記した高分子膜として透明基材以外のものも用いうる。
【0048】
前記した光学素子形成用金型の製造は、例えば電気鋳造法を適用して行うことができる。これにより高分子膜等に設けた三角溝分布を形成する凹部に高精度に対応した凸部を有する金型を形成することができる。電気鋳造法は、高分子膜等のエッチング加工を施した側より金属を充填して、高分子膜等の当該三角溝分布を有する面形状を写したレプリカを有する金属層からなる金型を形成する、従来に準じた方法を適用することができる。
【0049】
前記の場合、高分子膜等はガラスや金属等からなる基板上に支持することができる。なお金属層からなる金型の形成に際しては絶縁性の高分子膜に導電膜が設けられるが、その導電膜の形成についても従来に準じた方法を適用することができる。
【0050】
金型を形成する金属の種類については特に限定はなく、一般には例えば金や銀、銅や鉄、ニッケルやコバルト、あるいはそれらの合金類などが用いられ、窒化物やリン等を添加したものなどであってもよい。用いる金属種は、1種でもよし、2種以上であってもよく、また異種金属を積層してなる金型を形成することもできる。
【0051】
金型として形成する金属層の厚さは、適宜に決定してよい。高分子膜等と分離する際の破損防止や、光学素子形成時のハンドリング性などの点より、凸部を有しない部分の厚さが0.02〜3mm程度の金属層からなる金属箔ないし金属板による金型としたものが好ましい。
【0052】
前記の金型を介した光学素子の形成は、例えば放射線硬化型樹脂を必要に応じ透明フィルムや透明板等に塗布して支持した状態で、金型の凸部を形成した面に密着させて、放射線硬化型樹脂層に金型の凸部形成側の表面形状を写し、それにより当該表面形状を写した成形層を形成し、それに放射線を照射して成形層を硬化させ、その成形硬化層を金型から分離することにより行うことができる。
【0053】
光学素子の形成に際する、放射線硬化型樹脂の成形層に対する透明フィルム又は透明板からなる透明基材の密着配置には、前記した事前の塗工方式のほか、例えば金型上の成形層の上に透明基材を配置する事後方式などの、成形層上に透明基材を密着させた状態でその透明基材側より放射線を照射して成形層を硬化させうる適宜な方式を採ることができる。
【0054】
前記の放射線硬化型樹脂には、例えば上記した紫外線硬化型樹脂などの紫外線の照射、就中、紫外線又は/及び電子線の照射にて硬化処理できる適宜な樹脂の1種又は2種以上を用いることができ、その種類について特に限定はない。就中、光透過率に優れる成形硬化層を形成できる放射線硬化型樹脂が好ましい。
【0055】
また必要に応じ放射線硬化型樹脂の支持に用いて、光学素子を形成することのある透明フィルムや透明板は、必要に応じ照明装置等を介して入射させる光の波長域に応じそれに透明性を示す適宜な材料の1種又は2種以上を用いて形成しうる。ちなみに可視光域では、例えば上記の高分子膜で例示したものなどで代表される透明樹脂や、熱、紫外線、電子線等で重合処理しうる硬化型樹脂などがあげられる。
【0056】
なお放射線硬化型樹脂の成形硬化層の形成に際し、支持用の透明基材を用いた場合、光学素子は、その透明基材と当該成形硬化層とが固着一体化したものとして得ることもできるし、透明基材とは分離された状態の当該成形硬化層からなるものとして得ることもできる。透明基材と当該成形硬化層の分離は、例えば透明基材を剥離剤で表面処理する方式などの適宜な方式にて達成することができる。
【0057】
上記の金型を介した光学素子の形成方法としては、放射線硬化型樹脂に代えて熱硬化型樹脂を用いてそれを熱硬化処理する方法や、ホットプレス方式等にて熱可塑性樹脂に形状転写する方法もあげられる。また射出成形型内や注形型内に上記電気鋳造法等による金型を設置し、射出成形方式や注形方式にて光学素子を成形する方法などもあげられる。
【0058】
従って金型を介した光学素子は、必要に応じ流動状態とした熱可塑性樹脂や硬化性樹脂等の適宜な材料を介して、金型における三角溝分布に対応した凸部を有する面の形態を転写してなる透明基材を形成しうる適宜な方法にて形成することができる。
【0059】
前記において熱可塑性樹脂からなる透明基材では、その基材全体が熱可塑性樹脂からなっていてもよいし、硬化樹脂の如き熱可塑性樹脂でない材料からなる基材に被転写層として表面に熱可塑性樹脂層を設けたものであってもよい。熱可塑性樹脂からなる層を被転写層として三角溝分布形状を転写する場合、形状の転写精度の点より被転写層をそのガラス転移温度以上の加熱下に金型の所定面に密着させることが好ましい。
【0060】
なお金型上ないし透明基材上に形成する放射線硬化型樹脂の塗布層や熱可塑性樹脂からなる被転写層の厚さは、高精度に形状転写する点より金型における凸部の高さの1.2〜20倍、就中1.5〜10倍、特に2〜5倍が好ましいが、これに限定されない。
【0061】
上記した横方向の入射光を縦方向に光路変換する光出射手段としての光学機能を示す面発光化素子(光学素子)は、サイドライト型導光板の形成や、フィルム状の面発光化素子を液晶表示パネルの視認側(フロントライト)又は/及び背面側(バックライト)に配置して、パネルの側面や角部より入射させた光を効率よく視認方向に光路変換して薄型軽量で明るく、見易い表示の液晶表示装置の形成などに好ましく用いうる。
【0062】
前記において導光板や液晶表示装置等の形成に好ましく用いうる面発光化素子は、図2ロに例示した如く高分子膜8が形成する平面に対する傾斜角θ1が35〜48度の光路変換斜面aを具備し、高分子膜面での開口が矩形状の三角溝(凹部)Aの複数を高分子膜の片面に、不連続に分布させてなる光出射手段を有するものである。
【0063】
前記により、液晶セルの側面等に配置した光源による側面方向からの入射光ないしその伝送光を、光路変換斜面aを介し面発光化素子の光出射手段を有しない裏面側に光路変換して、液晶セル等に対し法線方向の指向性に優れる光を、光源光の利用効率よく出射させることができる。
【0064】
光路変換斜面の当該傾斜角が35度未満では、液晶表示パネルより出射する表示光の角度が30度を越えることとなり、視認に不利となる。一方、光路変換斜面の当該傾斜角が48度を超えると、全反射されずに斜面から光洩れが生じやすくなり、光利用効率が低下する。
【0065】
光路変換斜面を介し効率よく全反射させて、光出射手段を有しない側より、面発光化素子の法線方向に指向性よく出射させ、液晶セルを効率よく照明して明るくて見やすい液晶表示を達成する点より、光路変換斜面の好ましい当該傾斜角θ1は38〜45度、就中40〜43度である。
【0066】
上記の方法による三角溝では、回折にかかわる有効面積を大きくできて回折効率を高くできるブレーズド回折格子の場合と同様に、光路変換斜面の有効面積が大きく、溝頂点部の形状異常による伝送光の散乱も発生しにくい。また溝頂点部の平坦化(台形化)も防止されて、その平坦化部分よる伝送光の散乱も抑制することができる。
【0067】
光出射手段を形成する複数の三角溝は、その光路変換斜面に基づいて平行に分布していてもよいし、不規則に分布していてもよい。さらに仮想中心に対してピット状(同心円状)に配置された分布状態にあってもよい。
【0068】
ちなみに前記したピット状配置の分布は、光を照射する際に、高分子膜の端面又はその外側に仮想中心を想定し、その仮想中心より派生する仮想の放射線に対して直交する方向に部分マスクの光透過部閉塞線が形成されるように三角溝を設けることにより形成することができる。なお二箇所以上の仮想中心を想定して、その各仮想中心に対してピット状に分布配置した複数の三角溝からなる光出射手段とすることもできる。
【0069】
三角溝ないしその光路変換斜面のサイズが大きいと、観察者にその斜面の存在が認識されやすくなって表示品位を大きく低下させやすくなり、液晶セルに対する照明の均一性も低下しやすくなることなども考慮して、高分子膜面での開口が矩形状の三角溝において、その開口の長辺長が短辺長の3倍以上、就中5倍以上、特に8倍以上の三角溝であることが好ましい。
【0070】
また光路変換斜面の長さを、三角溝の深さDの5倍以上、就中8倍以上、特に10倍以上の三角溝とすることが好ましい。さらに光路変換斜面の長さは、500μm以下、就中200μm以下、特に10〜150μm、三角溝の深さD及び幅W0は2μm〜100μm、就中5〜80μm、特に10〜50μmとすることが好ましい。なお前記の長さは、光路変換斜面の長辺長に基づく。
【0071】
三角溝Aの断面形状は、その傾斜角等がシートの全面で一定な形状であってもよいし、吸収ロスや先の光路変換による伝送光の減衰に対処して面発光化素子上での発光の均一化を図ることを目的に、光が入射する側の側面から遠離るほど三角溝を大きくしてもよい。また三角溝を一定ピッチで分散分布させた光出射手段とすることもできるし、光が入射する側の側面から遠離るほど徐々にピッチを狭くして、三角溝の分布密度を高くした光出射手段とすることもできる。
【0072】
さらに三角溝の分布密度や配置位置等が不規則なランダムピッチによる光出射手段にて、面発光化素子上での発光の均一化を図ることもできる。ランダムピッチは、画素との干渉によるモアレの防止に特に有利である。よって光出射手段は、ピッチに加えて、形状等も異なる三角溝の組合せからなっていてもよい。
【0073】
三角溝における光路変換斜面は、液晶セル等の側面方向より入射させる光の方向に対面していることが出射効率の向上の点より好ましい。従って線状光源を用いる場合の光路変換斜面は、一定の方向を向いていることが好ましい。また発光ダイオード等の点状光源を用いる場合の光路変換斜面は、その点状光源の発光中心の方向を向いていることが好ましい。
【0074】
三角溝Aにおける光路変換斜面aの対向面bの傾斜角θ2は、60〜90度が一般的である。三角溝の分布面積は、フロントライトやバックライトの使用目的に応じて適宜に決定することができる。一般には三角溝の表面開口による光出射手段の占有面積に基づいて80%以下、就中2〜50%、特に4〜20%とされる。
【0075】
面発光化素子は、光出射手段を設けた透明フィルムや透明板(導光板)として形成でき、また単層物や同種又は異種の材料からなる積層体などとして形成することができる。面発光化素子の厚さは、適宜に決定できて特に限定はないが、一般には5μm〜5mm、就中10μm〜3mm、特に20μm〜2mmとされる。
【0076】
上記において斜面精度等に基づく光学機能の点より三角溝における好ましい斜面は、0.01〜5μm/パルス、就中0.02〜2μm/パルス、特に0.05〜1μm/パルス、更には0.1〜0.5μm/パルスのエッチングレート(1ショット当たりのエッチング量)にて三角溝を形成したものである。
【0077】
特に傾斜角θ1が35〜48度の光路変換斜面aと傾斜角θ2が60〜90度の対向面bを具備する三角溝Aを前記のエッチングレートにて形成する場合には1ショット(パルス)当たりのエネルギー密度を0.1〜5J/cm、就中0.2〜4J/cm、特に0.3〜3J/cm、更には0.4〜1.5J/cmに制御して三角溝を形成する方式が斜面精度等に基づく光学機能の点より好ましい。
【0078】
さらに前記の場合、光路変換斜面を形成する側の部分マスクを対向面を形成する側の部分マスクの1.1〜150倍、就中1.5〜100倍、特に2〜70倍の一定速度で連続移動させて光透過部の閉塞操作を行いながらパルスを連続的に照射して連続的にエッチング処理する方式が三角溝における斜面精度の向上等の点より好ましい。この場合、対向面を形成する側の部分マスクを移動させないときにはその速度を1とする。
【0079】
また前記の方式に加えて、光透過部を1回当たり0.1〜50μm、就中0.5〜30μm、特に1〜20μm、更には2〜10μmの幅単位で段階的に閉塞しながら、その単位幅を閉塞する毎にパルスを照射してエッチング処理する方式も三角溝における斜面精度の向上等の点より好ましい。
【0080】
前記の場合、光路変換斜面を形成する側の部分マスクと、対向面を形成する側の部分マスクとの単位幅の閉塞における移動比は、形成する斜面の傾斜角比に基づいて、すなわち斜面を水平面に投影した場合の長さ比に基づいて決定される。従って光透過部の閉塞操作において対向面を形成する側の部分マスクを移動させない場合(位置固定)、当該単位幅の閉塞は、光路変換斜面を形成する側の部分マスクの移動のみにて達成される。
【0081】
【実施例】
参考例
図1に準じ、KrFエキシマレーザー発振器(波長248nm)、アッテネータ、ビームホモジナイザ、マスクステージ、投影レンズ、ワーク吸着装置、及びワークステージを前記の順序で備えるエッチング装置を準備した。次に金属箔に所定の開口を設けた部分マスク1をU軸に配し、その上に金属板よりなる部分マスク2をV軸として配置した。U軸を動かすことでマスク位置を変化させることができ、V軸を動かすことで光透過部の開口面積を制御することができる。またU軸はそれと直交するW軸に乗せられている。さらにワークステージは、X、Y、Z、θの各軸を備え、Z軸は投影レンズのオートフォーカス機能を有する。ワークステージの最上部には吸着装置を備え、ワークを固定する。なお投影レンズは1/15倍に設定した。
【0082】
例1
マスクステージに幅150μm、長さ1.5mmの開口からなる凹部形成開始状態の光透過部が形成されるように設定した部分マスク1,2を固定し、その光透過部の1/15倍の投影像がワーク上に焦点を結ぶように投影レンズ位置を調節した後、平滑なガラス板上に固定した厚さ50μmのポリイミドフィルム(高分子膜)にビームをエネルギー密度0.7J/cmで照射し、その際に部分マスク2の移動で光透過部の幅を5μmずつ狭めてビームを1ショット照射するステップアンドリピート方式において、光透過部の幅を120μm狭めてその間24ショット照射することにより三角溝を形成した。その三角溝の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で測定し(以下同じ)、深さDを求めたところ7.78μmであった。よってレンズの倍率よりWsは2.0μmであるのでθは76度である。
【0083】
例2
光透過部の幅を115μm狭めてその間23ショット照射したほかは例1に準じて三角溝を形成した。その三角溝の深さDは7.62μmであり、θは73度であった(Ws:2.33μm)。
【0084】
例3
光透過部の幅を110μm狭めてその間22ショット照射したほかは例1に準じて三角溝を形成した。その三角溝の深さDは7.18μmであり、θは70度であった(Ws:2.67μm)。
【0085】
例4
光透過部の幅を105μm狭めてその間21ショット照射したほかは例1に準じて三角溝を形成した。その三角溝の深さDは6.88μmであり、θは66度であった(Ws:3μm)。
【0086】
例5
光透過部の幅を135μm狭めてその間27ショット照射したほかは例1に準じて三角溝を形成した。その三角溝の深さDは7.65μmであり、θは83度であった(Ws:1μm)。
【0087】
例6
光透過部の幅を150μm(全幅)狭めてその間30ショット照射したほかは例1に準じて三角溝を形成した。その三角溝の深さDは8.2μmであり、θは90度であった(Ws:0μm)。
【0088】
例7
部分マスク2の移動幅を250μmとしてその間50ショット照射したほかは例1に準じて三角溝を形成した。その三角溝の深さDは8.3μmであった(Ws:−100μm)。
【0089】
例8
光透過部の幅を75μm狭めてその間15ショット照射したほかは例1に準じて三角溝を形成した。その三角溝の深さDは4.25μmであり、θは40度であった(Ws:5μm)。
【0090】
評価試験1
例1〜8による三角溝の断面形状の全体を図3に示した(SEM)。また図4に例1〜7による三角溝における溝頂点部の断面形状に示した(SEM)。なおフィルム面に対する緩斜面(光路変換斜面a)の傾斜角は42〜44度の範囲である。
【0091】
図3、4より例1〜5では溝頂点部近傍の面形状がほぼ直線であり、エッチング角度に大きな異常は発生していないことが判る。一方、例6、7では溝頂点付近のエッチング角度が70度を越え、エッチング深さが異常に大きくなっていることが判る。また例8のようにθが小さすぎると、溝頂点付近が形成不足となり、台形化や溝頂点付近の曲率半径が大きくなることが判る。
【0092】
評価試験2
フィルム表面での開口に基づいて長さ約100μm、幅約10μmの三角溝を、縦0.1mm×横0.2mmの碁盤目の各交点に、その交点が開口の中心位置となるように、かつ光路変換斜面aが同一方向を向くように5mm角の範囲内でエッチング加工して分散配置してなる光出射手段を単位として、前記した例1〜8の条件による各光出射手段を同一のフィルム面に8mm間隔で横一列に整列させて形成した。
【0093】
ついで前記で得た例1〜8の条件による各光出射手段を横一列で有するフィルム(母型)の凹部付き面を導電化し、その上に電気鋳造法によりニッケル・リンを充填して厚さが約200μmの金属層を形成した後、フィルムを剥離して所定の光出射手段に対応する凸部形成面を有する金型を得た。
【0094】
無延伸PC(ポリカーボネート)フィルムに設けた紫外線硬化性アクリル系樹脂からなる厚さ25μmの塗工層を前記の金型にゴムローラで密着させると共に、余分な樹脂と気泡を押し出しメタルハライドランプで紫外線照射して硬化させ、屈折率が1.510の透明フィルム(面発光化素子)を形成して金型から剥離し無延伸PCフィルムと分離した後、その透明フィルムを屈折率が1.515のアクリル系粘着層を介して厚さ1mm、屈折率1.495のアクリル板に接着し、導光板を得た。
【0095】
前記の導光体におけるアクリル板の鏡面研磨した側面に冷陰極管を配置してバックライトを作製した。各光出射手段における三角溝の光路変換斜面aは、冷陰極管配置の側面と対面する状態にある。また前記の透明フィルムにおける各光出射手段を形成する三角溝の断面形状は、前記した例1〜8の各例にほぼ等しいものであった。なお透明フィルムの形成において紫外線硬化性アクリル系樹脂の塗工層の厚さを8μmとした場合、気泡の発生が酷くて形状転写を行うことができなかった。
【0096】
前記のバックライトについて冷陰極管を点灯させ、各光出射手段による発光状態を観察すると共に、ピーク輝度(トプコン社製、BM−5A)を調べた。その結果を次表に示した。
【0097】
Figure 2004258423
【0098】
発光状態については、例1〜5の輝度が表よりも明らかなように他の例よりも若干高く、ピーク輝度方向における発光の集中性(指向性)においても例1〜5が他の例よりも優れていた。例6、7ではピーク輝度方向と反対方向の出射光が相当あり、例8ではピーク輝度方向が導光板の法線に対して大きい角度で傾斜していた。以上より例1〜5で良好な発光特性を示す導光体が得られていることが判った。
【0099】
なお本発明による方法では加工幅(W0)を180μmとした場合にも例1〜5に準じて良好なエッチング形状の三角溝を形成することができた。以上より本発明にて、機械加工では困難な、面上の任意な位置に任意な長さの三角溝を良好な断面形状で形成でき、微細な三角溝をランダムに分散配置することも容易であることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造方法の説明図
【図2】部分マスク(投影マスク)移動の説明図
【図3】(実施)例による三角溝断面の全体図
【図4】(実施)例による三角溝断面の溝頂点部の拡大図
【符号の説明】
1、2:部分マスク(投影マスク)
3:レーザー発振器
8:高分子膜
A:三角溝(凹部)
a:光路変換斜面
b:立面

Claims (11)

  1. 光の照射形状を規制する光透過部を形成する投影マスクを介した光照射で高分子膜を部分的にエッチングして高分子膜に三角形の断面を具備する凹部を形成するにあたり、前記投影マスクによる光透過部を2枚以上の部分マスクで形成してそれら部分マスクの内の、当該形成目的の凹部における対向する一対の辺を形成する部分マスクを当該光透過部が凹部形成開始の開状態から閉塞する方向に移動させて、高分子膜に凹部における斜面を形成するものであり、かつその斜面形成の際に当該光透過部が閉塞する前にエッチングを停止することを特徴とする三角溝の製造方法。
  2. 請求項1において、形成目的の凹部の深さをDとしたとき、エッチング停止時が対向辺を形成する部分マスクの間隙Wsに基づいて、Ws=D/tanθ(ただしθ=65〜85度)を満足する時である三角溝の製造方法。
  3. 請求項1又は2において、対向辺を形成する部分マスクの一方の辺を形成する部分マスクのみを閉塞移動させる三角溝の製造方法。
  4. 請求項1〜3において、エッチングにレーザー光を使用する三角溝の製造方法。
  5. 請求項1〜4において、エッチングをアブレーション加工にて行う三角溝の製造方法。
  6. 請求項1〜5に記載の製造方法により、高分子膜平面に対し所定傾斜角の斜面を具備する三角溝を形成する操作を繰り返して、高分子膜の片面に複数の三角溝を光学機能を示す状態に分布させることを特徴とする光学素子の製造方法。
  7. 請求項6において、三角溝の光学機能を示す分布がブレーズド回折格子、又は高分子膜平面に対する傾斜角が35〜48度の光路変換斜面を具備して高分子膜面での開口が矩形状の三角溝の複数が不連続に分布してなる光出射手段である光学素子の製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載の製造方法による光学素子の三角溝を分布させた面上に金属層を形成した後、その金属層と光学素子を分離して光学素子形成用金型を得る工程、その金型における三角溝分布を形成しうる凸部を有する面形状を高分子層に転写した後、その高分子層を固体の状態で金型より分離する工程を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
  9. 請求項8において、電気鋳造により金属層を形成する光学素子の製造方法。
  10. 請求項8又は9において、透明フィルム上に設けた放射線硬化型樹脂の塗工層を光学素子形成用金型の所定面に密着させて三角溝分布形状を転写した成形層を形成した後、その成形層に放射線を照射して硬化させる光学素子の製造方法。
  11. 請求項8又は9において、少なくとも表面層として熱可塑性樹脂からなる被転写層を有する高分子層をその被転写層を介し、かつ被転写層のガラス転移温度以上の加熱下に光学素子形成用金型の所定面に密着させて、被転写層に三角溝分布形状を転写する光学素子の製造方法。
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