JP2004257923A - 生理活性物質の測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】試料中の生理活性物質の測定において、高感度かつ生理活性と対応した測定結果を得る測定方法を提供する。
【解決手段】(1)生理活性物質の測定において、測定対象物質の細胞への信号伝達に関与する受容体タンパクまたはその誘導体を用いる生理活性物質の測定方法。
(2)測定対象物質がHMGB1である上記の生理活性物質の測定方法。
(3)受容体タンパクまたはその誘導体を用いて生理活性物質の測定を行うための測定キット。
【選択図】なし
【解決手段】(1)生理活性物質の測定において、測定対象物質の細胞への信号伝達に関与する受容体タンパクまたはその誘導体を用いる生理活性物質の測定方法。
(2)測定対象物質がHMGB1である上記の生理活性物質の測定方法。
(3)受容体タンパクまたはその誘導体を用いて生理活性物質の測定を行うための測定キット。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中の生理活性物質を測定するための方法および測定キットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
混合物中から特定の物質を選択的に検出・測定する目的で、測定対象物質と特異的に結合する物質を用いる方法は非常に有用な手段である。特に、2種類の特異的結合物質を用い、一方の基材表面に固相化して用いることにより結合物質−測定対象物質−結合物質の3者複合体を基材表面に形成させてこれを検出するサンドイッチ法は、特異性、感度に優れた方法として、体液などの多種の物質を含む試料からの特定の微量成分を特異的に測定する目的に広く用いられている。(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
ローヒアイネン(Rouhiainen A)他3名、「血小板の活性化に伴い細胞表面に移送される内因性タンパクとしてのアンフォテリン(HMG1)の存在(Occurrence of amphoterin (HMG1) as an endogenous protein of human platelets that is exported to the cell surface upon platelet activation)」、Thromb.Haemost.(ドイツ)、2000年、84巻、p1087−1094
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
通常、上述の測定方法においては、測定対象物質と特異的に結合する物質として抗体が用いられている。抗体は、一般に対象物質との結合の特異性、親和性に優れており、また酵素などを共有結合させて誘導体化することが容易であるなど多くの利点を有している。しかし、一方血液などの体液中、あるいは細胞培養サンプル中などから生理活性物質を測定する系においては、測定サンプル中に測定対象物質と類似しているが生理活性を持たない物質が存在する可能性が考えられ、抗体を用いる従来の方法では、抗体が生理活性を持たない類似物も認識してしまうために、測定結果が対象物質の生理活性と対応しない懸念が常にある。例えば、生理活性タンパク質を測定する場合には、測定対象タンパク質の前駆体あるいは部分分解産物が存在し、抗体がこれらとも結合することはしばしば起こりうる。また、タンパクによっては、サンプル中の他の物質と複合体をつくるなどして活性を失う場合もあるが、抗体はこのような複合体も認識する可能性がある。
【0005】
すなわち、生理活性物質の測定において、結合物質として抗体のみを用いる従来の方法では、結果が測定対象物質の生理活性を正しく反映しない場合があり、特に、2種類の抗体を組み合わせて用いる測定においては、両方の抗体の認識性が複雑に影響するため、測定結果と生理活性が対応しない可能性がさらに高くなる。
【0006】
また、抗体を用いる測定方法の他の問題点として、測定対象物質の性質によっては動物に免疫した場合の抗原性が低いために、測定に用いるための抗体として性能の高い(結合力の強い)ものが得られにくい場合がしばしばある。特に2種類の抗体を組合せ用いるサンドイッチ法では、測定対象物質上の異なる2点と結合する2種の抗体を得る必要があるが、抗原性が低い物質では、得られる抗体の認識部位が測定対象物質上の特定の部位に限定されてしまうために、高感度なサンドイッチ測定系を作製することが困難となり、この場合満足のいく測定感度が得られないことになる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
多くの生理活性タンパク質は、細胞表面にある受容体に結合することによりその活性を細胞に伝える。従って、測定対象物質の生理活性は、細胞への信号伝達に関与する受容体との結合性に反映されると考えられる。このため、免疫測定系に受容体タンパクを用いれば、生理活性に対応した物質量をより正しく測定することができると考えられる。
【0008】
さらに、受容体は一般的に結合タンパクとの親和性、特異性に優れるため、結合力の強い抗体が得られにくいような抗原に対しても、受容体タンパクを用いることにより高感度の測定系を構築することが可能になる。
【0009】
以上の点に鑑み、本発明者らは本発明に到達した。すなわち、本発明は以下のような構成を有する。
(1)試料中の生理活性物質を測定するにあたり、測定対象物質と特異的に結合する第1の結合物質を基材上に固相化するステップ、この基材と測定対象物質を含むサンプル、および測定対象物質と特異的に結合する第2の結合物質を順次あるいは同時に接触させるステップを含む測定方法において、第1の結合物質または第2の結合物質の少なくとも一方が、測定対象物質の細胞への信号伝達に関与する細胞表面の受容体タンパクまたはその部分ペプチドを含むタンパクまたはそれらの誘導体であることを特徴とする生理活性物質の測定方法。
(2)受容体タンパクが、細胞膜貫通領域および細胞内領域を欠失させた可溶性受容体またはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載の生理活性物質の測定方法。
(3)測定対象物質と特異的に結合する第1および第2の物質の一方が測定対象物質に対する抗体であり、他方が受容体タンパクまたはその部分ペプチドを含むタンパクまたはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載の生理活性物質の測定方法。
(4)測定対象物質がハイモビリティーグループタンパク1(HMGB1)である請求項1〜3のいずれかに記載の生理活性物質の測定方法。
(5)受容体タンパクが、糖化変性タンパク受容体(RAGE)またはその誘導体である請求項4記載の生理活性物質の測定方法。
(6)請求項1〜5のいずれかに記載の生理活性物質の測定方法で測定を行うための測定キット。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、試料中の生理活性物質を測定(定量)するにあたり、測定対象の生理活性物質(以下、測定対象物質という)と特異的に結合する第1の結合物質を基材上に固相化するステップ、この基材と測定対象物質を含むサンプル、および測定対象物質と特異的に結合する第2の結合物質を順次あるいは同時に接触させるステップを含む方法であって、第1の結合物質または第2の結合物質の少なくとも一方が、測定対象物質の細胞への信号伝達に関与する細胞表面の受容体タンパクまたはその部分ペプチドを含むタンパクまたはそれらの誘導体であることを特徴とする方法である。
【0011】
本発明でいう受容体タンパクの部分ペプチドとは、受容体タンパクを構成する全アミノ酸配列のうちアミノ末端またはカルボキシル末端またはその両方が欠失した配列であり、そのペプチドの長さは限定されないが、受容体としての結合能を維持するためには少なくとも8個以上のアミノ酸からなる配列が望ましい。特に、細胞膜貫通領域および細胞内領域を欠失させた可溶性受容体は、安定性に優れており好適である。また、本発明でいう受容体タンパクの誘導体とは、天然の受容体のアミノ酸配列またはその部分ペプチドに、該受容体に由来する以外の任意の配列のアミノ酸、あるいはアミノ酸以外の化合物を付加させたもの、または受容体のアミノ酸配列に0、1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失を加えたもの等をいう。
【0012】
本発明において、測定対象物質と結合する第1の結合物質および第2の結合物質のうち、少なくとも一方は測定対象物質の細胞への信号伝達に関与する細胞表面の受容体タンパクまたはその部分ペプチドを含むタンパクまたはその誘導体(以下、受容体等という)であり、他方は特に限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体などの抗体、特に測定対象物質に対する抗体が好適に用いられる。測定対象物質が分子上に2カ所以上の受容体結合部位を有する場合は、第1の結合物質および第2の結合物質の両方ともに受容体等を用いることができる。
【0013】
結合物質として用いる受容体等は、細胞膜から精製した受容体そのもの、細胞が分泌する受容体の部分ペプチド、遺伝子組み換えにより大腸菌、動物細胞、昆虫細胞などで作製した受容体またはその部分ペプチドおよびそれらの誘導体など、測定対象物質との結合領域を保持した受容体であれば、その作製方法および形態は限定されない。
【0014】
測定対象物質と特異的に結合する第1の結合物質を固相化する基材は、物理的な吸着あるいは化学結合により固定化が可能なものであれば、その材質及び形状は限定されない。例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、ラテックス、リポソーム、ゼラチン、アガロース、セルロース、ガラス、金属、セラミックスなどの材質からなる繊維、ビーズ、試験管、マイクロプレート、スティックなどが用いられる。
【0015】
この受容体等は、そのままの形態で固相化して第1の結合物質として測定対象物質を基材表面にトラップする目的で用いることが可能である。第1の結合物質の基材への固相化は物理的な吸着または適当な官能基を介した共有結合などの化学的な結合のいずれの方法でも可能である。物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、緩衝液などに溶解した第1の結合物質を基材の固定化したい部分に添加し接触させることにより行うことができる。共有結合を介した化学的な結合としては、受容体等の持つアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基等を用いて基材表面の反応基と結合させることが可能である。
【0016】
また、受容体等を第2の結合物質として用いることも可能である。その場合は、受容体等を第1の結合物質と結合した測定対象物質に反応(結合)させ、さらに受容体等と結合する物質(酵素標識抗受容体タンパク抗体など)を反応させてこれを検出する方法、受容体等をラジオアイソトープ、酵素、ビオチンなど適当な物質で直接共有結合的に修飾してこれを検出する方法などが考えられる。結合した標識化された物質量は、通常の免疫測定法と同様にラジオアイソトープの測定、酵素基質を添加して、発色あるいは発光などの測定により定量化が可能である。
【0017】
また、前述のとおり、測定対象物質が分子上に2カ所以上の受容体結合部位を有する場合は、上述の方法に従って受容体等を第1および第2の結合物質の両方に用いることもが可能である。
【0018】
本発明の測定をおこなうためのキットとしては、例えば、第1の結合物質を固相化した基材、既知量の測定対象物質を含有する標準サンプル、酵素で標識化した第2の結合物質および酵素反応を検出するための基質を構成品として含むキットが用いられる。そのほか検体、結合物質を希釈するための緩衝液、洗浄液なども含めた構成のキットも可能である。
【0019】
本発明でいう測定対象物質は、生体内で何らかの生物学的作用を持ついわゆる生理活性物質であり、タンパク、糖、核酸、などである。これらは、各種ホルモンのような生体が自ら作り出す物質、および外来の微生物などが生体に侵入して作り出す毒素のような外来物質の両方が含まれる。
【0020】
本発明での具体的な測定対象例としては、例えばハイモビリティーグループタンパク1(以下、HMGB1という。なお、HMG−1、アンフォテリンとも呼ばれる)が挙げられる。HMGB1とは、真核細胞内に存在する一群の非ヒストン性のDNA結合タンパクの一種であるが、LPS等の刺激により細胞外に分泌されたHMGB1が全身性炎症反応、敗血症性ショックのメディエーターとして働くことが近年報告されている。また、HMGB1は癌の増殖、転移にも関与することが報告されている。たとえば、ワン(Wang H)他18名、「マウスにおけるエンドトキシン侵襲の後期メディエーターとしてのHMG−1(HMG−1 as a late mediator of endotoxin lethality in mice)」、Science、(アメリカ)、1999年、285巻、p248−251、または、タグチ(Taguchi A)他18名、「RAGE−アンホテリン情報伝達を阻害すると腫瘍の成長と転移が抑制される(Blockade of RAGE−amphoterin signalling suppresses tumor growth andmetastases)」、Nature、(イギリス)、2000年、405巻、p354−360、などにその報告がある。
【0021】
このHMGB1の生理作用を伝える受容体として糖化変性タンパク受容体(以下、RAGEという)が知られている。(たとえば、ホリ(Hori O)他13名、「最終糖化産物受容体(RAGE)は、アンフォテリンの細胞での結合部位である(The Receptor for Advanced glycation end products (RAGE) is a cellular binding site for amphoterin)」、J.Biol.Chem.、(アメリカ)、1995年、270、p25752−25761)。HMGB1測定の目的で本発明を実施する場合の受容体としては、細胞から精製したRAGEそのもの、あるいはRAGEの細胞外領域をコードする遺伝子領域を遺伝子工学的に作製して種々の細胞で発現分泌させた可溶性RAGEなどを用いることができる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)HMGB1の作製
ヒト白血病由来細胞HL60を5×105/mlの濃度でRPMI1640培地(無血清)を用いて培養した。4日間培養後の上清1L分を遠心分離で回収し、HiTrap Heparin HPカラム(5ml)(Amersham Pharmacia)に通して培養上清中のHMGB1を吸着させた。カラムを25mlのリン酸生理緩衝液(PBS;137mM NaCl,8.10mM Na2PO4,2.68mM KCl,1.47mM KH2PO4)で洗浄後、0.5MNaClを含むPBS15mlを流して、吸着したタンパクを溶出させた。溶出液をPD−10カラム(Amersham Pharmacia)を用いて脱塩し、溶液組成を7.5mMホウ酸ナトリウムpH9.0に置換した。これを5mlのカルボキシメチルセファデックスを充填したカラムにアプライし、0−0.5MのNaClグラジエントで分離溶出させた。溶出させたフラクション中のタンパクをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウエスタンブロット法で解析し、HMGB1を含む画分を集めて精製標品を得た。
(2)可溶性RAGEの作製
A.ヒトRAGE遺伝子のクローニング
ヒト肺cDNAライブラリー(宝酒造(株)製)を鋳型にPCR(polymerase chain reaction)を行い、細胞外ドメイン上流及び下流の2つの断片を増幅した。PCRプライマーはヒトRAGEのデータベース配列(Genebank accession No.M91211)を基に4種類設計し、各々2種類ずつを上流及び下流増幅プライマーとして用いた。
【0023】
・上流増幅プライマー:(プライマーのRAGE中の位置または塩基番号(RAGEの開始コドンATGのAを1とした。))
S(1〜29)及びAS(730〜749)
・5’−AGAATTCATGGCAGCTGGCACCGCAGTTG−3’ (29mer:S)
・5’−GCTACTGCTCCACCTTCTGG−3’ (20mer:AS)
・下流増幅プライマー:(プライマーのRAGE中の位置)
S(462〜481)及びAS(1007〜1032)
・5’−TCTTAGCTGGCACTTGGATG−3’ (20mer:S)
・5’−AAGATCTTCATCATGCAAGAGCTAGAGTTCCCAGCCCTG−3’ (39mer:AS)
(上流には制限酵素EcoRI、下流にはBglIIの切断部位を付加した。)
また、プライマーの安定性と遺伝子発現効率を上げるためにいくつかの塩基は適宜置換した。さらに、RAGEを可溶型とするため、細胞外ドメインの下流末端に終止コドン(TGA)を付加した。
【0024】
2種類の反応産物をアガロースゲル電気泳動した。さらに得られた各PCR増幅断片を電気泳動のゲルから回収した後、pUC18ベクターにクローニングし、PCR産物の塩基配列確認を行った。
【0025】
B.バキュロウイルストランスファーベクターへの遺伝子挿入
バキュロウイルスベクターへのクローニングを以下のように行った。ベクターはpVL1393(pharmingen)を用いた。まず、ベクターを制限酵素EcoRIとBglIIで切断し、アルカリフォスファターゼで脱リン酸化した後精製した。A.で得たRAGE細胞外ドメイン上流及び下流の2つの断片は以下に示す制限酵素で切断後、目的断片を精製した(目的断片の塩基数)。
・上流:EcoRI/FspI(666bp)
・下流:FspI/BglII(384bp)
精製した2断片をpVL1393ベクターのポリヘドリンプロモーターの下流に挿入した。得られたクローンについて電気泳動による挿入断片のサイズ確認と塩基配列決定により、目的DNAを持つクローンが構築できたことを確認した。
【0026】
C.昆虫細胞への感染とヒトRAGE細胞外ドメインの発現
バキュロウイルスを感染させる昆虫細胞はHigh Five(登録商標)細胞を用いた。無血清培地(Express Five SFM(Gibco BRL))を用いて、300cm2フラスコ中で培養し、セミコンフルエントとなった時点でウイルス感染させた。3〜5日間25℃で静置した後、培養上清を回収した。
【0027】
D.ヘパリンカラムによるヒトRAGE細胞外ドメインの精製
上記C.で得られたヒトRAGE細胞外ドメインを含む培養上清から、ヒトRAGE細胞外ドメインを精製した。はじめに、回収した培養上清を遠心してから0.22μmのフィルターで濾過した。次いで、HiTrap Heparin HP(Amersham Pharmacia)に4℃で一晩循環させた。0.25M NaClを含む20mMリン酸緩衝液を流して洗浄してから、0.75M NaClを含む20mMリン酸緩衝液で溶出し、精製を行った。さらに、その分画をヒドロキシアパタイトカラム((株)高研製)を用いて精製した。ヒトRAGE細胞外ドメイン分画を、分画分子量10000の透析膜を用いて、PBS(リン酸緩衝生理食塩液)に対して透析した。精製後のヒトRAGE細胞外ドメイン分画について電気泳動を行い、CBB染色により精製度を確認した結果、シングルバンドが観察され、精製が確認された。
【0028】
(3)抗体と可溶性RAGEを用いたHMGB1の測定(実施例)
ELISA用96穴マイクロプレート(Nunc、Maxisorp)のウェルに2μg/mlの抗HMGB1モノクローナル抗体(MBL cloneFBH7)PBS溶液を入れ4℃で一晩固相化を行い、抗体溶液を除去した後、0.5%BSAを含むPBSを入れ室温で10分間ブロッキングを行った。プレートをTris−T(0.05%Tween−20(登録商標)を含む0.1MTris塩酸pH8.0)で洗浄後、種々濃度のHMGB1を添加した緩衝液(0.25%BSAおよび0.05%Tween−20(登録商標)を含む0.1MTris−塩酸pH8.0)100μlを加えて25℃で60分反応させた。各ウェルを400μlのTris−Tで3回洗浄後、1μg/mlの可溶性RAGE溶液(1mM塩化カルシウムを含む緩衝液で希釈)100μlを入れて25℃で60分間反応させ、さらに各ウェルをTris−Tで3回洗浄後5μg/mlのビオチン標識化抗RAGEモノクローナル抗体溶液(緩衝液で希釈)を加えて30分反応させた。各ウェルを400μlのTris−Tで3回洗浄後、緩衝液で40000倍に希釈したHRP標識ストレプトアビジン(Zymed)溶液を100μl入れ25℃で15分反応させた。各ウェルを400μlのTris−Tで3回洗浄後、発色液(0.006%過酸化水素,0.2mg/mlテトラメチルベンジジン(TMB)を含む0.1M酢酸―クエン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5))を100μl分注して15分反応させた。1N硫酸を100μl加えて反応を止め、マイクロプレートリーダーを用いて450nmで吸光度を測定した。結果を図1に示す。
【0029】
(4)2種の抗体を用いたHMGB1の測定(比較例)
ELISA用96穴マイクロプレート(Nunc、Maxisorp)のウェルに2μg/mlの抗HMGB1モノクローナル抗体(MBL cloneFBH7)PBS溶液を入れ4℃で一晩固相化を行い、抗体溶液を除去した後、0.5%BSAを含むPBSを入れ室温で10分間ブロッキングを行った。プレートをTris−T(0.05%Tween−20を含む0.1MTris塩酸pH8.0)で洗浄後、種々濃度のHMGB1を添加した緩衝液(0.25%BSAおよび0.05%Tween−20(登録商標)を含む0.1MTris−塩酸pH8.0)100μlを加えて25℃で60分反応させた。各ウェルを400μlのTris−Tで3回洗浄後、0.5μg/mlのビオチン標識抗HMGB1ポリクローナル抗体(Pharmingen)緩衝液溶液100μlを入れて25℃で60分間反応させ、さらに各ウェルをTris−Tで3回洗浄後、緩衝液で40000倍に希釈したHRP標識ストレプトアビジン(Zymed)溶液を100μl入れ25℃で15分反応させた。各ウェルを400μlのPBS−Tで3回洗浄後、発色液(0.006%過酸化水素,0.2mg/mlテトラメチルベンジジン(TMB)を含む0.1M酢酸―クエン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5))を100μl分注して10分反応させた。1N硫酸を100μl加えて反応を止め、マイクロプレートリーダーを用いて450nmで吸光度を測定した。結果を図2に示す。
【0030】
【発明の効果】
本発明の生理活性物質の測定方法によれば、従来の抗体のみを用いる方法と比べて、測定対象物質の抗原性によらず、高感度でかつ生理活性を正しく反映した測定結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】抗体と受容体(可溶性RAGE)を用いた測定系によるHMGB1の測定結果(実施例)である。
【図2】2種の抗体を用いた測定系によるHMGB1の測定結果(比較例)である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中の生理活性物質を測定するための方法および測定キットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
混合物中から特定の物質を選択的に検出・測定する目的で、測定対象物質と特異的に結合する物質を用いる方法は非常に有用な手段である。特に、2種類の特異的結合物質を用い、一方の基材表面に固相化して用いることにより結合物質−測定対象物質−結合物質の3者複合体を基材表面に形成させてこれを検出するサンドイッチ法は、特異性、感度に優れた方法として、体液などの多種の物質を含む試料からの特定の微量成分を特異的に測定する目的に広く用いられている。(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
ローヒアイネン(Rouhiainen A)他3名、「血小板の活性化に伴い細胞表面に移送される内因性タンパクとしてのアンフォテリン(HMG1)の存在(Occurrence of amphoterin (HMG1) as an endogenous protein of human platelets that is exported to the cell surface upon platelet activation)」、Thromb.Haemost.(ドイツ)、2000年、84巻、p1087−1094
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
通常、上述の測定方法においては、測定対象物質と特異的に結合する物質として抗体が用いられている。抗体は、一般に対象物質との結合の特異性、親和性に優れており、また酵素などを共有結合させて誘導体化することが容易であるなど多くの利点を有している。しかし、一方血液などの体液中、あるいは細胞培養サンプル中などから生理活性物質を測定する系においては、測定サンプル中に測定対象物質と類似しているが生理活性を持たない物質が存在する可能性が考えられ、抗体を用いる従来の方法では、抗体が生理活性を持たない類似物も認識してしまうために、測定結果が対象物質の生理活性と対応しない懸念が常にある。例えば、生理活性タンパク質を測定する場合には、測定対象タンパク質の前駆体あるいは部分分解産物が存在し、抗体がこれらとも結合することはしばしば起こりうる。また、タンパクによっては、サンプル中の他の物質と複合体をつくるなどして活性を失う場合もあるが、抗体はこのような複合体も認識する可能性がある。
【0005】
すなわち、生理活性物質の測定において、結合物質として抗体のみを用いる従来の方法では、結果が測定対象物質の生理活性を正しく反映しない場合があり、特に、2種類の抗体を組み合わせて用いる測定においては、両方の抗体の認識性が複雑に影響するため、測定結果と生理活性が対応しない可能性がさらに高くなる。
【0006】
また、抗体を用いる測定方法の他の問題点として、測定対象物質の性質によっては動物に免疫した場合の抗原性が低いために、測定に用いるための抗体として性能の高い(結合力の強い)ものが得られにくい場合がしばしばある。特に2種類の抗体を組合せ用いるサンドイッチ法では、測定対象物質上の異なる2点と結合する2種の抗体を得る必要があるが、抗原性が低い物質では、得られる抗体の認識部位が測定対象物質上の特定の部位に限定されてしまうために、高感度なサンドイッチ測定系を作製することが困難となり、この場合満足のいく測定感度が得られないことになる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
多くの生理活性タンパク質は、細胞表面にある受容体に結合することによりその活性を細胞に伝える。従って、測定対象物質の生理活性は、細胞への信号伝達に関与する受容体との結合性に反映されると考えられる。このため、免疫測定系に受容体タンパクを用いれば、生理活性に対応した物質量をより正しく測定することができると考えられる。
【0008】
さらに、受容体は一般的に結合タンパクとの親和性、特異性に優れるため、結合力の強い抗体が得られにくいような抗原に対しても、受容体タンパクを用いることにより高感度の測定系を構築することが可能になる。
【0009】
以上の点に鑑み、本発明者らは本発明に到達した。すなわち、本発明は以下のような構成を有する。
(1)試料中の生理活性物質を測定するにあたり、測定対象物質と特異的に結合する第1の結合物質を基材上に固相化するステップ、この基材と測定対象物質を含むサンプル、および測定対象物質と特異的に結合する第2の結合物質を順次あるいは同時に接触させるステップを含む測定方法において、第1の結合物質または第2の結合物質の少なくとも一方が、測定対象物質の細胞への信号伝達に関与する細胞表面の受容体タンパクまたはその部分ペプチドを含むタンパクまたはそれらの誘導体であることを特徴とする生理活性物質の測定方法。
(2)受容体タンパクが、細胞膜貫通領域および細胞内領域を欠失させた可溶性受容体またはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載の生理活性物質の測定方法。
(3)測定対象物質と特異的に結合する第1および第2の物質の一方が測定対象物質に対する抗体であり、他方が受容体タンパクまたはその部分ペプチドを含むタンパクまたはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載の生理活性物質の測定方法。
(4)測定対象物質がハイモビリティーグループタンパク1(HMGB1)である請求項1〜3のいずれかに記載の生理活性物質の測定方法。
(5)受容体タンパクが、糖化変性タンパク受容体(RAGE)またはその誘導体である請求項4記載の生理活性物質の測定方法。
(6)請求項1〜5のいずれかに記載の生理活性物質の測定方法で測定を行うための測定キット。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、試料中の生理活性物質を測定(定量)するにあたり、測定対象の生理活性物質(以下、測定対象物質という)と特異的に結合する第1の結合物質を基材上に固相化するステップ、この基材と測定対象物質を含むサンプル、および測定対象物質と特異的に結合する第2の結合物質を順次あるいは同時に接触させるステップを含む方法であって、第1の結合物質または第2の結合物質の少なくとも一方が、測定対象物質の細胞への信号伝達に関与する細胞表面の受容体タンパクまたはその部分ペプチドを含むタンパクまたはそれらの誘導体であることを特徴とする方法である。
【0011】
本発明でいう受容体タンパクの部分ペプチドとは、受容体タンパクを構成する全アミノ酸配列のうちアミノ末端またはカルボキシル末端またはその両方が欠失した配列であり、そのペプチドの長さは限定されないが、受容体としての結合能を維持するためには少なくとも8個以上のアミノ酸からなる配列が望ましい。特に、細胞膜貫通領域および細胞内領域を欠失させた可溶性受容体は、安定性に優れており好適である。また、本発明でいう受容体タンパクの誘導体とは、天然の受容体のアミノ酸配列またはその部分ペプチドに、該受容体に由来する以外の任意の配列のアミノ酸、あるいはアミノ酸以外の化合物を付加させたもの、または受容体のアミノ酸配列に0、1もしくは数個のアミノ酸の置換、欠失を加えたもの等をいう。
【0012】
本発明において、測定対象物質と結合する第1の結合物質および第2の結合物質のうち、少なくとも一方は測定対象物質の細胞への信号伝達に関与する細胞表面の受容体タンパクまたはその部分ペプチドを含むタンパクまたはその誘導体(以下、受容体等という)であり、他方は特に限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体などの抗体、特に測定対象物質に対する抗体が好適に用いられる。測定対象物質が分子上に2カ所以上の受容体結合部位を有する場合は、第1の結合物質および第2の結合物質の両方ともに受容体等を用いることができる。
【0013】
結合物質として用いる受容体等は、細胞膜から精製した受容体そのもの、細胞が分泌する受容体の部分ペプチド、遺伝子組み換えにより大腸菌、動物細胞、昆虫細胞などで作製した受容体またはその部分ペプチドおよびそれらの誘導体など、測定対象物質との結合領域を保持した受容体であれば、その作製方法および形態は限定されない。
【0014】
測定対象物質と特異的に結合する第1の結合物質を固相化する基材は、物理的な吸着あるいは化学結合により固定化が可能なものであれば、その材質及び形状は限定されない。例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、ラテックス、リポソーム、ゼラチン、アガロース、セルロース、ガラス、金属、セラミックスなどの材質からなる繊維、ビーズ、試験管、マイクロプレート、スティックなどが用いられる。
【0015】
この受容体等は、そのままの形態で固相化して第1の結合物質として測定対象物質を基材表面にトラップする目的で用いることが可能である。第1の結合物質の基材への固相化は物理的な吸着または適当な官能基を介した共有結合などの化学的な結合のいずれの方法でも可能である。物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、緩衝液などに溶解した第1の結合物質を基材の固定化したい部分に添加し接触させることにより行うことができる。共有結合を介した化学的な結合としては、受容体等の持つアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基等を用いて基材表面の反応基と結合させることが可能である。
【0016】
また、受容体等を第2の結合物質として用いることも可能である。その場合は、受容体等を第1の結合物質と結合した測定対象物質に反応(結合)させ、さらに受容体等と結合する物質(酵素標識抗受容体タンパク抗体など)を反応させてこれを検出する方法、受容体等をラジオアイソトープ、酵素、ビオチンなど適当な物質で直接共有結合的に修飾してこれを検出する方法などが考えられる。結合した標識化された物質量は、通常の免疫測定法と同様にラジオアイソトープの測定、酵素基質を添加して、発色あるいは発光などの測定により定量化が可能である。
【0017】
また、前述のとおり、測定対象物質が分子上に2カ所以上の受容体結合部位を有する場合は、上述の方法に従って受容体等を第1および第2の結合物質の両方に用いることもが可能である。
【0018】
本発明の測定をおこなうためのキットとしては、例えば、第1の結合物質を固相化した基材、既知量の測定対象物質を含有する標準サンプル、酵素で標識化した第2の結合物質および酵素反応を検出するための基質を構成品として含むキットが用いられる。そのほか検体、結合物質を希釈するための緩衝液、洗浄液なども含めた構成のキットも可能である。
【0019】
本発明でいう測定対象物質は、生体内で何らかの生物学的作用を持ついわゆる生理活性物質であり、タンパク、糖、核酸、などである。これらは、各種ホルモンのような生体が自ら作り出す物質、および外来の微生物などが生体に侵入して作り出す毒素のような外来物質の両方が含まれる。
【0020】
本発明での具体的な測定対象例としては、例えばハイモビリティーグループタンパク1(以下、HMGB1という。なお、HMG−1、アンフォテリンとも呼ばれる)が挙げられる。HMGB1とは、真核細胞内に存在する一群の非ヒストン性のDNA結合タンパクの一種であるが、LPS等の刺激により細胞外に分泌されたHMGB1が全身性炎症反応、敗血症性ショックのメディエーターとして働くことが近年報告されている。また、HMGB1は癌の増殖、転移にも関与することが報告されている。たとえば、ワン(Wang H)他18名、「マウスにおけるエンドトキシン侵襲の後期メディエーターとしてのHMG−1(HMG−1 as a late mediator of endotoxin lethality in mice)」、Science、(アメリカ)、1999年、285巻、p248−251、または、タグチ(Taguchi A)他18名、「RAGE−アンホテリン情報伝達を阻害すると腫瘍の成長と転移が抑制される(Blockade of RAGE−amphoterin signalling suppresses tumor growth andmetastases)」、Nature、(イギリス)、2000年、405巻、p354−360、などにその報告がある。
【0021】
このHMGB1の生理作用を伝える受容体として糖化変性タンパク受容体(以下、RAGEという)が知られている。(たとえば、ホリ(Hori O)他13名、「最終糖化産物受容体(RAGE)は、アンフォテリンの細胞での結合部位である(The Receptor for Advanced glycation end products (RAGE) is a cellular binding site for amphoterin)」、J.Biol.Chem.、(アメリカ)、1995年、270、p25752−25761)。HMGB1測定の目的で本発明を実施する場合の受容体としては、細胞から精製したRAGEそのもの、あるいはRAGEの細胞外領域をコードする遺伝子領域を遺伝子工学的に作製して種々の細胞で発現分泌させた可溶性RAGEなどを用いることができる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)HMGB1の作製
ヒト白血病由来細胞HL60を5×105/mlの濃度でRPMI1640培地(無血清)を用いて培養した。4日間培養後の上清1L分を遠心分離で回収し、HiTrap Heparin HPカラム(5ml)(Amersham Pharmacia)に通して培養上清中のHMGB1を吸着させた。カラムを25mlのリン酸生理緩衝液(PBS;137mM NaCl,8.10mM Na2PO4,2.68mM KCl,1.47mM KH2PO4)で洗浄後、0.5MNaClを含むPBS15mlを流して、吸着したタンパクを溶出させた。溶出液をPD−10カラム(Amersham Pharmacia)を用いて脱塩し、溶液組成を7.5mMホウ酸ナトリウムpH9.0に置換した。これを5mlのカルボキシメチルセファデックスを充填したカラムにアプライし、0−0.5MのNaClグラジエントで分離溶出させた。溶出させたフラクション中のタンパクをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウエスタンブロット法で解析し、HMGB1を含む画分を集めて精製標品を得た。
(2)可溶性RAGEの作製
A.ヒトRAGE遺伝子のクローニング
ヒト肺cDNAライブラリー(宝酒造(株)製)を鋳型にPCR(polymerase chain reaction)を行い、細胞外ドメイン上流及び下流の2つの断片を増幅した。PCRプライマーはヒトRAGEのデータベース配列(Genebank accession No.M91211)を基に4種類設計し、各々2種類ずつを上流及び下流増幅プライマーとして用いた。
【0023】
・上流増幅プライマー:(プライマーのRAGE中の位置または塩基番号(RAGEの開始コドンATGのAを1とした。))
S(1〜29)及びAS(730〜749)
・5’−AGAATTCATGGCAGCTGGCACCGCAGTTG−3’ (29mer:S)
・5’−GCTACTGCTCCACCTTCTGG−3’ (20mer:AS)
・下流増幅プライマー:(プライマーのRAGE中の位置)
S(462〜481)及びAS(1007〜1032)
・5’−TCTTAGCTGGCACTTGGATG−3’ (20mer:S)
・5’−AAGATCTTCATCATGCAAGAGCTAGAGTTCCCAGCCCTG−3’ (39mer:AS)
(上流には制限酵素EcoRI、下流にはBglIIの切断部位を付加した。)
また、プライマーの安定性と遺伝子発現効率を上げるためにいくつかの塩基は適宜置換した。さらに、RAGEを可溶型とするため、細胞外ドメインの下流末端に終止コドン(TGA)を付加した。
【0024】
2種類の反応産物をアガロースゲル電気泳動した。さらに得られた各PCR増幅断片を電気泳動のゲルから回収した後、pUC18ベクターにクローニングし、PCR産物の塩基配列確認を行った。
【0025】
B.バキュロウイルストランスファーベクターへの遺伝子挿入
バキュロウイルスベクターへのクローニングを以下のように行った。ベクターはpVL1393(pharmingen)を用いた。まず、ベクターを制限酵素EcoRIとBglIIで切断し、アルカリフォスファターゼで脱リン酸化した後精製した。A.で得たRAGE細胞外ドメイン上流及び下流の2つの断片は以下に示す制限酵素で切断後、目的断片を精製した(目的断片の塩基数)。
・上流:EcoRI/FspI(666bp)
・下流:FspI/BglII(384bp)
精製した2断片をpVL1393ベクターのポリヘドリンプロモーターの下流に挿入した。得られたクローンについて電気泳動による挿入断片のサイズ確認と塩基配列決定により、目的DNAを持つクローンが構築できたことを確認した。
【0026】
C.昆虫細胞への感染とヒトRAGE細胞外ドメインの発現
バキュロウイルスを感染させる昆虫細胞はHigh Five(登録商標)細胞を用いた。無血清培地(Express Five SFM(Gibco BRL))を用いて、300cm2フラスコ中で培養し、セミコンフルエントとなった時点でウイルス感染させた。3〜5日間25℃で静置した後、培養上清を回収した。
【0027】
D.ヘパリンカラムによるヒトRAGE細胞外ドメインの精製
上記C.で得られたヒトRAGE細胞外ドメインを含む培養上清から、ヒトRAGE細胞外ドメインを精製した。はじめに、回収した培養上清を遠心してから0.22μmのフィルターで濾過した。次いで、HiTrap Heparin HP(Amersham Pharmacia)に4℃で一晩循環させた。0.25M NaClを含む20mMリン酸緩衝液を流して洗浄してから、0.75M NaClを含む20mMリン酸緩衝液で溶出し、精製を行った。さらに、その分画をヒドロキシアパタイトカラム((株)高研製)を用いて精製した。ヒトRAGE細胞外ドメイン分画を、分画分子量10000の透析膜を用いて、PBS(リン酸緩衝生理食塩液)に対して透析した。精製後のヒトRAGE細胞外ドメイン分画について電気泳動を行い、CBB染色により精製度を確認した結果、シングルバンドが観察され、精製が確認された。
【0028】
(3)抗体と可溶性RAGEを用いたHMGB1の測定(実施例)
ELISA用96穴マイクロプレート(Nunc、Maxisorp)のウェルに2μg/mlの抗HMGB1モノクローナル抗体(MBL cloneFBH7)PBS溶液を入れ4℃で一晩固相化を行い、抗体溶液を除去した後、0.5%BSAを含むPBSを入れ室温で10分間ブロッキングを行った。プレートをTris−T(0.05%Tween−20(登録商標)を含む0.1MTris塩酸pH8.0)で洗浄後、種々濃度のHMGB1を添加した緩衝液(0.25%BSAおよび0.05%Tween−20(登録商標)を含む0.1MTris−塩酸pH8.0)100μlを加えて25℃で60分反応させた。各ウェルを400μlのTris−Tで3回洗浄後、1μg/mlの可溶性RAGE溶液(1mM塩化カルシウムを含む緩衝液で希釈)100μlを入れて25℃で60分間反応させ、さらに各ウェルをTris−Tで3回洗浄後5μg/mlのビオチン標識化抗RAGEモノクローナル抗体溶液(緩衝液で希釈)を加えて30分反応させた。各ウェルを400μlのTris−Tで3回洗浄後、緩衝液で40000倍に希釈したHRP標識ストレプトアビジン(Zymed)溶液を100μl入れ25℃で15分反応させた。各ウェルを400μlのTris−Tで3回洗浄後、発色液(0.006%過酸化水素,0.2mg/mlテトラメチルベンジジン(TMB)を含む0.1M酢酸―クエン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5))を100μl分注して15分反応させた。1N硫酸を100μl加えて反応を止め、マイクロプレートリーダーを用いて450nmで吸光度を測定した。結果を図1に示す。
【0029】
(4)2種の抗体を用いたHMGB1の測定(比較例)
ELISA用96穴マイクロプレート(Nunc、Maxisorp)のウェルに2μg/mlの抗HMGB1モノクローナル抗体(MBL cloneFBH7)PBS溶液を入れ4℃で一晩固相化を行い、抗体溶液を除去した後、0.5%BSAを含むPBSを入れ室温で10分間ブロッキングを行った。プレートをTris−T(0.05%Tween−20を含む0.1MTris塩酸pH8.0)で洗浄後、種々濃度のHMGB1を添加した緩衝液(0.25%BSAおよび0.05%Tween−20(登録商標)を含む0.1MTris−塩酸pH8.0)100μlを加えて25℃で60分反応させた。各ウェルを400μlのTris−Tで3回洗浄後、0.5μg/mlのビオチン標識抗HMGB1ポリクローナル抗体(Pharmingen)緩衝液溶液100μlを入れて25℃で60分間反応させ、さらに各ウェルをTris−Tで3回洗浄後、緩衝液で40000倍に希釈したHRP標識ストレプトアビジン(Zymed)溶液を100μl入れ25℃で15分反応させた。各ウェルを400μlのPBS−Tで3回洗浄後、発色液(0.006%過酸化水素,0.2mg/mlテトラメチルベンジジン(TMB)を含む0.1M酢酸―クエン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5))を100μl分注して10分反応させた。1N硫酸を100μl加えて反応を止め、マイクロプレートリーダーを用いて450nmで吸光度を測定した。結果を図2に示す。
【0030】
【発明の効果】
本発明の生理活性物質の測定方法によれば、従来の抗体のみを用いる方法と比べて、測定対象物質の抗原性によらず、高感度でかつ生理活性を正しく反映した測定結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】抗体と受容体(可溶性RAGE)を用いた測定系によるHMGB1の測定結果(実施例)である。
【図2】2種の抗体を用いた測定系によるHMGB1の測定結果(比較例)である。
Claims (6)
- 試料中の生理活性物質を測定するにあたり、測定対象物質と特異的に結合する第1の結合物質を基材上に固相化するステップ、この基材と測定対象物質を含むサンプル、および測定対象物質と特異的に結合する第2の結合物質を順次あるいは同時に接触させるステップを含む測定方法において、第1の結合物質または第2の結合物質の少なくとも一方が、測定対象物質の細胞への信号伝達に関与する細胞表面の受容体タンパクまたはその部分ペプチドを含むタンパクまたはそれらの誘導体であることを特徴とする生理活性物質の測定方法。
- 受容体タンパクが、細胞膜貫通領域および細胞内領域を欠失させた可溶性受容体またはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載の生理活性物質の測定方法。
- 測定対象物質と特異的に結合する第1および第2の物質の一方が測定対象物質に対する抗体であり、他方が受容体タンパクまたはその部分ペプチドを含むタンパクまたはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載の生理活性物質の測定方法。
- 測定対象物質がハイモビリティーグループタンパク1(HMGB1)である請求項1〜3のいずれかに記載の生理活性物質の測定方法。
- 受容体タンパクが、糖化変性タンパク受容体(RAGE)またはその誘導体である請求項4記載の生理活性物質の測定方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の生理活性物質の測定方法で測定を行うための測定キット。
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JP2003050491A JP2004257923A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | 生理活性物質の測定方法 |
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