JP2004256984A - スエード調皮革様シート及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 天然皮革並みの柔軟な風合いと機械物性、特に形態安定性と引裂強力を兼備したスエード調皮革様シートを提供する。
【解決手段】 平均繊度0.5dtex以下の極細繊維(A)からなる層(I)と、該極細繊維(A)の平均繊度以下の平均繊度を有する極細繊維(B)からなる層(II)からなる絡合不織布および該絡合不織布に含有された高分子弾性体からなるスエード調皮革様シートであって、前記層(I)と前記層(II)は極細繊維(A)と極細繊維(B)の質量比が10/90〜90/10になるように積層、絡合一体化されており、前記層(I)の表面は極細繊維(A)からなる立毛を主体とする立毛面であり、かつ、前記極細繊維(A)と前記極細繊維(B)が特定の強度、破断伸度を満足する極細繊維発生型繊維(a)、極細繊維発生型繊維(b)をそれぞれ極細繊維化することにより形成されたことを特徴とするスエード調皮革様シート。
【選択図】なし
【解決手段】 平均繊度0.5dtex以下の極細繊維(A)からなる層(I)と、該極細繊維(A)の平均繊度以下の平均繊度を有する極細繊維(B)からなる層(II)からなる絡合不織布および該絡合不織布に含有された高分子弾性体からなるスエード調皮革様シートであって、前記層(I)と前記層(II)は極細繊維(A)と極細繊維(B)の質量比が10/90〜90/10になるように積層、絡合一体化されており、前記層(I)の表面は極細繊維(A)からなる立毛を主体とする立毛面であり、かつ、前記極細繊維(A)と前記極細繊維(B)が特定の強度、破断伸度を満足する極細繊維発生型繊維(a)、極細繊維発生型繊維(b)をそれぞれ極細繊維化することにより形成されたことを特徴とするスエード調皮革様シート。
【選択図】なし
Description
本発明は、柔軟で適度の伸縮性があり、形態安定性に優れ、衣料用途、特に手袋用途に適した皮革様シートおよびその製造方法に関する。
従来、ポリエステルやポリアミドの極細繊維不織布に高分子弾性体を含浸・凝固したシート状物を起毛処理したスエード調皮革様シートが提案されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、該スエード調皮革様シートは、全体に風合いが硬い傾向にあり、また衣服に仕立てたときの着用感において天然皮革に劣るものであった。また、高伸縮性を有する不織布として本願出願人は弾性繊維及び非弾性繊維よりなる不織布を提案している(特許文献2参照)。しかしながら、該不織布は、高分子弾性体を含浸・凝固していないため、製造工程通過時の形態安定性、起毛性がやや不十分であり、衣服に仕立てた場合も形態安定性やフィット感が不十分であった。また、本願出願人は縦方向の20%モジュラスが好ましくは0.1〜0.3kg/mm2、横方向の20%モジュラスが0.001〜0.03kg/mm2である、柔軟で適度の伸縮性があるスエード調皮革様シートを提案している(特許文献3参照)。しかしながら、該スエード調皮革様シートは、天然皮革並みの柔軟な風合いおよび良好な伸縮性を発現するものの、衣服に縫製し長時間着用した場合に型崩れを生じる傾向があるとともに引裂強力が充分とはいえず衣料用途として充分に満足されるものではなかった。
近年、スエード調皮革様シートからなる衣料手袋等に対して、風合い、触感などの感性面に対する要求が年々高まり、そして、これまでにない柔軟で伸縮性に富み、かつ長時間の着用に際しても型崩れを起こさない形態安定性に優れた衣料手袋が強く要求されるようになった。以上のような背景から、本発明の課題は、天然皮革並みの柔軟な風合いと機械物性、特に形態安定性と引裂強力を兼備したスエード調皮革様シートを提供することである。
極細繊維からなる絡合不織布に高分子弾性体が含有されたスエード調皮革様シートの風合いは、一般に、使用される極細繊維の伸度が高くかつ強度が弱いほど柔軟になる傾向があるが、一方で引裂強力および形態安定性の低下を引き起こし、商品価値の低下を招く傾向があった。本発明者らは、天然皮革並みの柔軟な風合いと、充分な機械物性、特に形態安定性と引裂強力を兼備したスエード調皮革様シートについて鋭意検討を行った結果、2種類の物性の異なる繊維を積層一体化させることにより柔軟な風合い、機械物性、形態安定性を兼備した皮革様シートが得られることを見出した。より詳しくは、高伸度かつ低強度の極細繊維発生型繊維から発生した極細繊維からなる表層と、低伸度かつ高強度の極細繊維発生型繊維から発生した極細繊維からなる下層を積層することにより上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、平均繊度0.5dtex以下の極細繊維(A)からなる層(I)と、該極細繊維(A)の平均繊度以下の平均繊度を有する極細繊維(B)からなる層(II)からなる絡合不織布および該絡合不織布に含有された高分子弾性体からなるスエード調皮革様シートであって、前記層(I)と前記層(II)は極細繊維(A)と極細繊維(B)の質量比が10/90〜90/10になるように積層、絡合一体化されており、前記層(I)の表面は極細繊維(A)からなる立毛を主体とする立毛面であり、かつ、前記極細繊維(A)は、下記式(1)および(2)を満足する極細繊維発生型繊維(a)を極細繊維化することにより形成され、前記極細繊維(B)は、下記式(3)および(4)を満足する極細繊維発生型繊維(b)を極細繊維化することにより発生させたことを特徴とするスエード調皮革様シートを提供する。
130<Sa<200 (1)
Fa<0.8 (2)
30<Sb<90 (3)
1.5<Fb (4)
(Sa:極細繊維発生型繊維(a)の平均破断伸度(%)、Fa:極細繊維発生型繊維(a)の平均強度(cN/dtex)、Sb:極細繊維発生型繊維(b)の平均破断伸度(%)、Fb:極細繊維発生型繊維(b)の平均強度(cN/dtex))
を提供する。
130<Sa<200 (1)
Fa<0.8 (2)
30<Sb<90 (3)
1.5<Fb (4)
(Sa:極細繊維発生型繊維(a)の平均破断伸度(%)、Fa:極細繊維発生型繊維(a)の平均強度(cN/dtex)、Sb:極細繊維発生型繊維(b)の平均破断伸度(%)、Fb:極細繊維発生型繊維(b)の平均強度(cN/dtex))
を提供する。
さらに、本発明は、平均繊度0.5dtex以下の極細繊維(A)からなる層(I)と、該極細繊維(A)の平均繊度以下の平均繊度を有する極細繊維(B)からなる層(II)からなる絡合不織布および該絡合不織布に含有された高分子弾性体からなるスエード調皮革様シートであって、前記層(I)と前記層(II)は極細繊維(A)と極細繊維(B)の質量比が10/90〜90/10になるように積層、絡合一体化されており、前記層(I)の表面は極細繊維(A)からなる立毛を主体とする立毛面であり、かつ、前記極細繊維(A)が下記式(5)および(6)を満足し、前記極細繊維(B)が下記式(7)および(8)を満足することを特徴とするスエード調皮革様シート。
130<SA<200 (5)
FA<1.5 (6)
30<SB<90 (7)
2.0<FB (8)
(SA:極細繊維(A)の平均破断伸度(%)、FA:極細繊維(A)の平均強度(cN/dtex)、SB:極細繊維(B)の平均破断伸度(%)、FB:極細繊維(B)の平均強度(cN/dtex))
を提供する。
130<SA<200 (5)
FA<1.5 (6)
30<SB<90 (7)
2.0<FB (8)
(SA:極細繊維(A)の平均破断伸度(%)、FA:極細繊維(A)の平均強度(cN/dtex)、SB:極細繊維(B)の平均破断伸度(%)、FB:極細繊維(B)の平均強度(cN/dtex))
を提供する。
また、本発明は、以下の(i)から(vii)の工程を含むことを特徴とするスエード調皮革様シートの製造方法を提供する。
(i)下記式(1)および式(2)を満足する極細繊維発生型繊維(a)のステープルからなるウェブ(I)を作製する工程、
130<Sa<200 (1)
Fa<0.8 (2)
(Sa:極細繊維発生型繊維(a)の平均破断伸度(%)、Fa:極細繊維発生型繊維(a)の平均強度(cN/dtex)
(ii)下記式(3)および式(4)を満足する極細繊維発生型繊維(b)のステープルからなるウェブ(II)を作製する工程、
30<Sb<90 (3)
1.5<Fb (4)
(Sb:極細繊維発生型繊維(b)の平均破断伸度(%)、Fb:極細繊維発生型繊維(b)の平均強度(cN/dtex))
(iii)ウェブ(I)およびウェブ(II)を積層し、絡合不織布とする工程、
(iv)得られた絡合不織布の内部に高分子弾性体溶液または分散液を含浸し、高分子弾性体を凝固させる工程、
(v)極細繊維発生型繊維(a)を極細繊維化して平均繊度が0.5dtex以下の極細繊維(A)を発生させ、かつ、極細繊維発生型繊維(b)を極細繊維化して、平均繊度が極細繊維(A)の平均繊度以下である極細繊維(B)を発生させ、皮革様シート基体とする工程、
(vi)得られた皮革様シート基体のウェブ(I)側の表面を起毛処理して、該表面に極細繊
維(A)を主体とする立毛を形成する工程、および
(vii)立毛を有する皮革様シート基体を染色してスエード調皮革様シートとする工程。
を提供する。
さらに、本発明は、少なくとも素材の一部がこれらのスエード調皮革様シートにより形成された手袋を提供する。
(i)下記式(1)および式(2)を満足する極細繊維発生型繊維(a)のステープルからなるウェブ(I)を作製する工程、
130<Sa<200 (1)
Fa<0.8 (2)
(Sa:極細繊維発生型繊維(a)の平均破断伸度(%)、Fa:極細繊維発生型繊維(a)の平均強度(cN/dtex)
(ii)下記式(3)および式(4)を満足する極細繊維発生型繊維(b)のステープルからなるウェブ(II)を作製する工程、
30<Sb<90 (3)
1.5<Fb (4)
(Sb:極細繊維発生型繊維(b)の平均破断伸度(%)、Fb:極細繊維発生型繊維(b)の平均強度(cN/dtex))
(iii)ウェブ(I)およびウェブ(II)を積層し、絡合不織布とする工程、
(iv)得られた絡合不織布の内部に高分子弾性体溶液または分散液を含浸し、高分子弾性体を凝固させる工程、
(v)極細繊維発生型繊維(a)を極細繊維化して平均繊度が0.5dtex以下の極細繊維(A)を発生させ、かつ、極細繊維発生型繊維(b)を極細繊維化して、平均繊度が極細繊維(A)の平均繊度以下である極細繊維(B)を発生させ、皮革様シート基体とする工程、
(vi)得られた皮革様シート基体のウェブ(I)側の表面を起毛処理して、該表面に極細繊
維(A)を主体とする立毛を形成する工程、および
(vii)立毛を有する皮革様シート基体を染色してスエード調皮革様シートとする工程。
を提供する。
さらに、本発明は、少なくとも素材の一部がこれらのスエード調皮革様シートにより形成された手袋を提供する。
本発明により、天然皮革並みの柔軟な風合い、触感およびきめの細かいライティング効果などの高品位な外観を有し、これまでになく柔軟で伸縮性に富み、かつ長時間の着用に際しても外観変化および型崩れを起こさない形態安定性と引裂強力等の機械物性に優れたスエード調皮革様シートが得られる。
以下に本発明について詳細に説明する。本発明のスエード調皮革様シートは、平均繊度0.5dtex以下の極細繊維(A)と、該極細繊維(A)の平均繊度以下の極細繊維(B)が絡合一体化された不織布と、該絡合不織布の内部に含浸・凝固されてなる高分子弾性体とからなる。
該極細繊維(A)の平均繊度は0.5dtex以下であることが必要で、好ましくは、0.001〜0.5dtexの範囲である。0.5dtexを超えると、立毛面の触感がざらざらとした感じとなり、きめの細かい光沢が得られず、皮革様シートの商品価値が低下する。また、0.001dtex以上であると、染色による発色性が良好になり、スエード調皮革様シートをより広い範囲の色に染色することができる。極細繊維(B)の平均繊度は、該極細繊維(A)の平均繊度以下であることが必要で、好ましくは、0.001〜0.3dtexの範囲である。極細繊維(B)の平均繊度が、該極細繊維(A)の平均繊度を超えると、絡合により極細繊維(B)が極細繊維(A)からなる層に侵入し表面付近に達した場合に、スエード調皮革様シートの外観の品位が低下する。0.001dtex以上であると、該皮革様シートの物性が良好になる。しかし、極細繊維(A)と極細繊維(B)の平均繊度の差が大きすぎる場合には、最終的に得られる皮革様シートが染色後色斑を生じる一因にもなることから、両者の平均繊度の関係は、下式(9)を満足することが好ましい。なお、本発明で言う平均繊度は、極細繊維発生型繊維を極細繊維化した後の電子顕微鏡写真により観察される極細繊維の平均直径と、極細繊維を形成するポリマーの密度から算出される。
0.1A<B<A (9)
(A:極細繊維(A)の平均繊度(dtex)、B:極細繊維(B)の平均繊度(dtex))
0.1A<B<A (9)
(A:極細繊維(A)の平均繊度(dtex)、B:極細繊維(B)の平均繊度(dtex))
前記極細繊維(A)を発生させる極細繊維発生型繊維(a)および前記極細繊維(B)を発生させる極細繊維発生型繊維(b)は、それぞれ、相溶性を有していない2種以上の熱可塑性ポリマーを複合紡糸または混合紡糸することにより得られる。複合繊維はいわゆる海島型断面繊維で代表され、該複合繊維から海成分を除去することにより残った島成分からなる極細繊維が形成される。
極細繊維発生型繊維(a)および極細繊維発生型繊維(b)の島成分としては、溶融紡糸可能で、強度等の繊維物性を十分に発揮するポリマーが好ましく、例えば6−ナイロン、66−ナイロン等で代表されるポリアミド系ポリマーおよびこれを主体とする共重合体;ポリエチレンテレフタート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族または脂肪族のポリエステル系ポリマーおよびこれを主体とする共重合体;アクリロニトリル系共重合体等のアクリル系ポリマー等が好適に用いられる。とくに芳香族ポリエステル系ポリマーやポリアミド系ポリマーが天然皮革調の外観・風合および機械物性に優れ、染色性にも優れる点で好ましい。
また、極細繊維発生型繊維(a)および極細繊維発生型繊維(b)の海成分としては、紡糸条件下で島成分よりも溶融粘度が低く、島成分とは溶解性、分解性を異にし、海成分の除去に用いられる溶剤または分解剤等への溶解性が大きく、島成分との相溶性の小さいポリマーが好ましい。例えばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、変性ポリエステル、変性ポリビニルアルコール系共重合体などが好適に用いられる。
また、極細繊維発生型繊維(a)および極細繊維発生型繊維(b)の海成分としては、紡糸条件下で島成分よりも溶融粘度が低く、島成分とは溶解性、分解性を異にし、海成分の除去に用いられる溶剤または分解剤等への溶解性が大きく、島成分との相溶性の小さいポリマーが好ましい。例えばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、変性ポリエステル、変性ポリビニルアルコール系共重合体などが好適に用いられる。
また、島成分には必要に応じて紡糸の際の安定性を損なわない範囲でカーボンブラックや酸化チタン等の顔料を加えることが出来る。該顔料は、目的とする皮革様シートの色に応じて、極細繊維(A)を構成する樹脂100質量部に対して好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下添加してもよい。極細繊維(A)100質量部に対して15質量部を超えて顔料を添加した場合には、極細繊維(A)が脆くなり、得られる皮革様シートの表面強度が低下する傾向がある。また、極細繊維(B)を構成する樹脂100質量部に対して好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下の顔料を添加しても良い。極細繊維(B)100質量部に対して10質量部を超えて顔料を添加した場合には、皮革様シートの引裂強力等の機械物性が低下する傾向がある。
前記極細繊維発生型繊維(a)および前記極細繊維発生型繊維(b)それぞれにおいて、海島比率は該繊維の横断面における海と島の面積比率が海:島=30:70〜70:30の範囲であることが好ましい。海成分が30%以上であると、溶剤または分解剤などにより溶解または分解除去される成分の量が充分なので、良好な柔軟性を得る上で好ましい。また、海成分を溶解または分解除去した後に充分な量の島成分からなる繊維(極細繊維)が得られ、皮革様シートの充分な物性が確保でき、また、溶解または分解除去する成分の量が少なくなり生産性が向上するので、海成分は70%以下であるのが好ましい。
混合紡糸または複合紡糸により得られた海島型断面繊維は、次いで、従来公知の方法による延伸、捲縮、カット等の処理を経てステープルとされ、本発明で使用する極細繊維発生型繊維(a)および極細繊維発生型繊維(b)が得られる。ただし、極細繊維発生型繊維(a)の製造では、後述する特定の破断伸度と強度とを同時に付与するために延伸工程を省略することもある。
極細繊維発生型繊維(a)および極細繊維発生型繊維(b)のステープルには、例えばシリコーン等を含有する油剤が付与されていてもよい。油剤の種類としては、繊維間の摩擦を下げる効果のあるポリオルガノシロキサンや各種の変性シリコーン系の油剤、および極細繊維発生型繊維間をまとめ対金属間の摩擦を下げる効果のある鉱物油系の油剤、帯電防止剤等の公知の油剤が挙げられる。これらの油剤は、極細繊維発生型繊維の特質を考慮してブレンドして付与することが好ましい。付与する工程としては各極細繊維発生型繊維の捲縮前、捲縮後いずれでもよく、同じ種類または異なる種類の油剤を2つ以上の工程において付与してもよい。また、極細繊維発生型繊維(a)および極細繊維発生型繊維(b)にそれぞれ種類の異なる油剤を付与してもよい。但し、異なる2種類以上の成分により形成される極細繊維発生型繊維は、一般的にカード工程、ニードルパンチ工程での巻き付きや繊維割れなどのトラブルが起きやすいため極細繊維発生型繊維には少なくとも摩擦係数を軽減する効果のある上記油剤を付与するのが好ましい。
既に述べた通り、皮革様シートの風合いは、これを構成する繊維の破断伸度が高くかつ強度が低いほど柔軟となる傾向があるが、高破断伸度かつ低強度の繊維のみの使用は機械物性の低下につながる。そのため、本発明では、式(1)と(2)を満足する極細繊維発生型繊維(a)と、式(3)と(4)を満足する極細繊維発生型繊維(b)の異なる機械物性を示す2種類の極細繊維発生型繊維を用いる。式(1)〜(4)を満足する極細繊維発生型繊維の組合せを用いることによって、該組合せから生じた極細繊維が、皮革様シートの外観、風合、形態安定性および引裂強力に優れた効果を発揮する。
130<Sa<200 (1)
Fa<0.8 (2)
30<Sb<90 (3)
1.5<Fb (4)
(Sa:極細繊維発生型繊維(a)の平均破断伸度(%)、Fa:極細繊維発生型繊維(a)の平均強度(cN/dtex)、Sb:極細繊維発生型繊維(b)の平均破断伸度(%)、Fb:極細繊維発生型繊維(b)の平均強度(cN/dtex))
130<Sa<200 (1)
Fa<0.8 (2)
30<Sb<90 (3)
1.5<Fb (4)
(Sa:極細繊維発生型繊維(a)の平均破断伸度(%)、Fa:極細繊維発生型繊維(a)の平均強度(cN/dtex)、Sb:極細繊維発生型繊維(b)の平均破断伸度(%)、Fb:極細繊維発生型繊維(b)の平均強度(cN/dtex))
極細繊維発生型繊維(a)の平均破断伸度が130%以下の場合には、極細繊維化後の皮革様シートの風合いが硬化し、また200%以上の場合には残留伸度が大きいために衣料として着用した場合にピリングを生じやすい。極細繊維発生型繊維(b)の平均破断伸度が30%以下の場合には、極細繊維化後の皮革様シートの風合いが硬化し、また90%以上の場合には引裂強力等の機械物性の低下を抑制できない。着用感及び外観に優れる点で、極細繊維発生型繊維(a)の平均破断伸度は140〜180%、極細繊維発生型繊維(b)の平均破断伸度は40〜60%であるのが好ましい。
極細繊維発生型繊維(a)の平均強力が0.8cN/dtex以上の場合には、極細繊維化後の皮革様シートの風合いが硬化し、極細繊維発生型繊維(b)の平均強度が1.5cN/dtex以下の場合には引裂強力等の機械物性の低下を抑制できない。手袋等にした場合の使用時の物性に優れる点で、極細繊維発生型繊維(a)の平均強度は0.7cN/dtex以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、紡糸性や基本的繊維物性の観点から、0.1cN/dtex以上であることが好ましい。極細繊維発生型繊維(b)の平均強度は1.6cN/dtex以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、風合や延伸工程の安定性の観点から5cN/dtex以下であることが好ましい。
上記式(1)〜(4)の要件を満たす極細繊維発生型繊維(a)および極細繊維発生型繊維(b)は、公知の紡糸操作または延伸操作の条件を適宜設定することにより得ることができる。極細繊維発生型繊維(a)の場合、例えば、構成成分にもよるが、延伸倍率を上げれば平均破断伸度(Sa)が式(1)の下限および平均強度(Fa)が式(2)の上限に近づき、延伸倍率を下げれば平均破断伸度(Sa)が式(1)の上限および平均強度(Fa)が上記した好ましい下限に近づく。延伸倍率は、1.0〜2倍であることが好ましく、1.0〜1.5倍であることがより好ましい。特に紡糸後に極細繊維発生型繊維(a)の延伸処理を行わないことによって、平均破断伸度および平均強度を容易に好適範囲とすることができる。極細繊維発生型繊維(b)の場合、構成成分にもよるが、延伸倍率を上げれば平均破断伸度(Sb)が式(3)の下限に近づくと共に、平均強度(Fb)が式(4)を満たす。延伸倍率を下げれば平均破断伸度(Sb)が式(3)の上限に近づくと共に平均強度(Fb)が式(4)の下限に近づく。特に延伸倍率は2倍より高いことが好ましく、2.2倍以上であることがより好ましい。上限は延伸を安定的に行うことができれば特に限定されないが、例えば5倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましい。また極細繊維発生型繊維(a)および極細繊維発生型繊維(b)の紡糸は、紡糸速度が250〜600m/分、紡糸温度が250〜300℃の範囲で行うことが好ましい。
次に極細繊維発生型繊維(a)および極細繊維発生型繊維(b)からなるステープルを用いて皮革様シート基体を製造する方法について説明する。皮革様シート基体を製造する方法としては、公知の方法、例えば極細繊維発生型繊維からなる絡合不織布を製造する工程、その絡合不織布に高分子弾性体溶液を含浸させ、凝固する工程、極細繊維発生型繊維を極細繊維化する工程を順次行う方法が挙げられる。もちろん極細繊維化する工程と高分子弾性体溶液を含浸、凝固させる工程を逆にしてもよい。
まず、ステープルをカードでカージングし、ランダムウェブまたはクロスラップウェブ処理を行い、それぞれ極細繊維発生型繊維(a)からなるウェブ(I)および極細繊維発生型繊維(b)からなるウェブ(II)を形成する。ウェブ(I)およびウェブ(II)を積層して所望の目付けの積層体とする。本発明の皮革様シートにおいて、極細繊維発生型繊維(a)から発生した極細繊維(A)からなる層(I)と極細繊維発生型繊維(b)から発生した極細繊維(B)からなる層(II)の質量比(A)/(B)は、10/90〜90/10であり、好ましくは15/85〜70/30、より好ましくは、得られるスエード調皮革様シートの外観や形態安定性に優れる点で20/80〜50/50である。従って、前記ウェブ(I)とウェブ(II)は、極細繊維(A)と極細繊維(B)に極細繊維化した後の質量比(A)/(B)が上記範囲となるように積層する。質量比(A)/(B)が10/90未満の場合には、充分に柔軟な風合いの皮革様シートが得られず、また90/10を超える場合には極細繊維(B)による強度の向上効果が薄れ、充分な強度が得られなくなる。
ウェブ(I)とウェブ(II)の積層体において、単位面積当りの積層体の重さ(目付け)は、目的とする最終的な用途分野に応じて適宜選択されが、一般的に、目付けが100〜3000g/m2の範囲が好ましい。また、製造の効率化などの目的で、必要とする目付けの約2倍の積層絡合不織布を形成し、その内部に高分子弾性体溶液を含浸、凝固させた後にバンドナイフ等で主表面と平行にスライスすることで所望の目付けを有する皮革様シート基体を効率よく複数枚同時に製造することもできる。この場合のウェブ積層体には、ウェブ(I)/ウェブ(II)/ウェブ(I)とウェブ(II)/ウェブ(I)/ウェブ(II)の2通りがあり、本発明では特に限定はないが、ウェブ(I)/ウェブ(II)/ウェブ(I)の方が、得られるスエード調皮革様シートの表面を緻密な立毛面にし易く、また厚み方向に密度勾配が発生し、より天然皮革に近い風合いになる点から好ましく用いられる。
次いで、公知の手段、例えばニードルパンチ法を用いてウェブ積層体を絡合処理し、各ウェブ層を一体化して絡合不織布を形成する。本発明におけるニードルパンチの針は公知の物が用いられるが、ウェブの厚さ方向への絡合を行うには繊維切れの起きにくい1バーブ針が好適に用いられる。また不織布の表面の比重を上げるためには3バーブ、6バーブ、9バーブ等の多バーブの針が使用できる。目的によってこれらの針を組み合わせて良い。ニードルパンチ工程におけるパンチ数は使用する針の形状や、ウェッブの厚みにより異なるが、200〜2500パンチ/cm2の範囲で設定される。一般的に極細繊維発生型繊維からなるウェブをニードルパンチ処理する場合、使用するニードルのバーブ数を増やすか、ニードルパンチの突き刺し深度を深くするか、あるいはニードルパンチ数を増やすなどの条件変更によってニードルパンチ条件を強くすることができるが、ニードルパンチ条件が強すぎる場合には極細繊維発生型繊維の切断や繊維割れがおこり、充分に絡合しない。またニードルパンチ条件が弱すぎる場合には、厚み方向に配向する繊維数の不足をまねき充分に絡合しない。さらに美しい毛羽密度の高い高級感あるスエード面が得られにくい傾向がある。
次に、絡合不織布の表面を平滑化し厚みを調節するため、厚さ方向にプレスする。プレス方法としては、複数の加熱ロール間を通す方法、予熱した不織布を冷却ロール間に通す方法等従来公知の方法が利用できる。プレス工程により、極細繊維発生型繊維中の海成分すなわちポリエチレンなどの低溶融粘度成分の溶融・圧着が起こり、絡合不織布の表面が平滑化される。なおプレス工程に先立って、テンションやプレス等による形態変化を抑制する目的、あるいは、極細繊維とこれを取り囲むように存在する高分子弾性体との間の空隙を制御し、得られるスエード調皮革様シートを柔軟な風合とする目的で、ポリビニルアルコール、デンプン、樹脂エマルジョン等の後工程において溶剤あるいは分解剤等にて除去可能な物質を付与することが好ましい。
次に表面を平滑化した絡合不織布の内部に高分子弾性体溶液または分散液を含浸し、スポンジ状に凝固させる。高分子弾性体としては従来から皮革様シートの製造に用いられている樹脂が好適に用いられる。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリアミノ酸系樹脂、シリコーン系樹脂、およびこれらを主体とする共重合体、これらの混合物等が好適である。なかでもポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を主体とした共重合体、混合物が天然皮革様の風合い、触感等が得られることから好ましい。好ましいポリウレタン樹脂としては、ソフトセグメントとしてジオールとジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とを反応させて得られるポリエステル系ジオール、ポリラクトン系ジオール、ポリカーボネート系ジオール、ポリエーテル系ジオール等からなる群から選ばれた数平均分子量が500〜5000の少なくとも1種類のポリマージオールを使用し、これとジイソシアネート化合物と低分子鎖伸長剤とを反応させて得られる、いわゆるセグメント化ポリウレタンが挙げられる。ソフトセグメントを構成する上記ジオール化合物としては、耐久性あるいは風合いの点で炭素数6以上10以下の化合物が好ましく、例えば3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールなどが挙げられる。ジカルボン酸の代表例としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。ポリマージオールの数平均分子が500以上であると、柔軟性に優れ、天然皮革様の風合いを持つ皮革様シートが得られるので好ましい。また、ポリマージオールの数平均分子量が5000以下であると、ウレタン基濃度が減少するために、柔軟性および耐久性、耐熱性、耐加水分解性においてバランスの取れたポリウレタン樹脂が得られるので好ましい。ジイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート等が挙げられる。
また低分子鎖伸長剤としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、N−メチルジエタノールアミン、エチレンジアミンなどの分子量が300以下の活性水素原子を2個有する低分子化合物が挙げられる。
また必要に応じて、高分子弾性体には、凝固調節剤、安定剤などを添加してもよく、更に2種以上のポリマーを併用しても構わない。さらに、カーボンブラックや酸化チタンなどの着色剤を添加してもよい。
また必要に応じて、高分子弾性体には、凝固調節剤、安定剤などを添加してもよく、更に2種以上のポリマーを併用しても構わない。さらに、カーボンブラックや酸化チタンなどの着色剤を添加してもよい。
これらの高分子弾性体は水系エマルジョンまたは有機溶剤溶液として前記絡合不織布に含浸した後、スポンジ状に凝固させる。絡合不織布に高分子弾性体を含有させる方法については特に限定されるものではないが、風合いのバランスの点から絡合不織布に高分子弾性体溶液を直接含浸させ、必要によりマングルで絞る方法や、高分子弾性体溶液をコーターでコーティングしながらしみ込ませる方法などが好ましい。
また、天然皮革様の柔軟な風合いを得るためには、最終的な皮革様シートを構成する極細繊維(A)と(B)の合計と高分子弾性体との質量比率が、好ましくは20:80〜95:5、更に好ましくは25:75〜90:10になるように、高分子弾性体を絡合不織布に含浸させる。極細繊維の比率が低くなりすぎると、皮革様シートがゴムライクな風合いとなり、極細繊維の比率が高くなりすぎるとペーパーライクな風合いになる。
また、天然皮革様の柔軟な風合いを得るためには、最終的な皮革様シートを構成する極細繊維(A)と(B)の合計と高分子弾性体との質量比率が、好ましくは20:80〜95:5、更に好ましくは25:75〜90:10になるように、高分子弾性体を絡合不織布に含浸させる。極細繊維の比率が低くなりすぎると、皮革様シートがゴムライクな風合いとなり、極細繊維の比率が高くなりすぎるとペーパーライクな風合いになる。
高分子弾性体溶液または分散液を含浸凝固した後に、極細繊維および高分子弾性体に対しては非溶剤であり、極細繊維発生型繊維の海成分に対しては溶剤または分解剤である薬剤により該海成分を公知の方法によって溶解または分解除去し、極細繊維発生型繊維を極細繊維化して、極細繊維と高分子弾性体からなる皮革様シート基体を得る。
既に述べた通り、皮革様シートの風合いは、極細繊維の破断伸度が高くかつ強度が低いほど柔軟となる傾向があるが、高破断伸度かつ低強度の極細繊維のみの使用は機械物性の低下につながる。そのため、皮革様シートを構成する極細繊維(A)は下記式(5)と(6)、および極細繊維(B)は下記式(7)と(8)を満足する必要がある。
130<SA<200 (5)
FA<1.5 (6)
30<SB<90 (7)
2.0<FB (8)
(SA:極細繊維(A)の平均破断伸度(%)、FA:極細繊維(A)の平均強度(cN/dtex)、SB:極細繊維(B)の平均破断伸度(%)、FB:極細繊維(B)の平均強度(cN/dtex))
130<SA<200 (5)
FA<1.5 (6)
30<SB<90 (7)
2.0<FB (8)
(SA:極細繊維(A)の平均破断伸度(%)、FA:極細繊維(A)の平均強度(cN/dtex)、SB:極細繊維(B)の平均破断伸度(%)、FB:極細繊維(B)の平均強度(cN/dtex))
極細繊維(A)の平均破断伸度(SA)が130%以下の場合には、皮革様シートの風合いが硬化する傾向があり、また200%以上の場合には残留伸度が大きいために衣料として着用した場合にピリングを生じ易くなる。極細繊維(B)の平均破断伸度(SB)が30%以下の場合には、皮革様シートの風合いが硬化する傾向がある。また90%以上の場合には引裂き強力等の機械物性の低下を抑制できない。また、極細繊維(A)の平均強力(FA)が1.5cN/dtex以上の場合には、皮革様シートの風合いが硬化する傾向にあり、極細繊維(B)の平均強力(FB)が2.0cN/dtex以下の場合には引裂き強力等の機械物性の低下を抑制できない。FAの下限、FBの上限は、特に限定されないが、それぞれ0.1、5.0cN/dtexであるのが好ましい。式(5)と(6)を満足する極細繊維(A)および式(7)と(8)を満足する極細繊維(B)は、前述の式(1)と(2)を満足する極細繊維発生型繊維(a)および式(3)と(4)を満足する極細繊維発生型繊維(b)を極細繊維化することにより得られる。特に、島成分にポリアミド系ポリマーを用いた極細繊維発生型繊維を極細繊維化して得るのが好ましい。
皮革様シート基体の厚みは用途に応じて任意に選択でき、特に限定されるものではないが、好ましくは0.3〜3mmである。0.3mm以上であると、製造工程での伸び等の問題を防ぐことができ、3.0mm以下であると不織布の絡合や高分子弾性体の含浸がし易くなるので好ましい。また、比重も特に限定されるものではないが、0.3〜0.7g/cm3であることが好ましい。0.3g/cm3以上であると、シートの強度が充分であり、0.7g/cm3以下であると柔軟な風合が得られ、さらに天然皮革の比重に近くなり、従来皮革様シートとして一般に認知されてきた「軽い」という特徴が充分に発揮されるので好ましい。
次に、得られた皮革様シート基体の極細繊維(A)からなる層(I)の表面を起毛処理し
、表面に極細繊維(A)を主体とする立毛を形成させる。起毛方法は特に限定されないが、サンドペーパーなどの研磨材にて表面を研削することによって、所望の深さまでの極細繊維を掘り起こして立毛密度が均一な立毛面となるように起毛し、また立毛面全体に渡って所望の長さの均一な立毛となるように整毛する方法が高級感のある天然皮革様の面感が得られるので好ましい。立毛長は、触感や光沢等の外観に影響するため、起毛や整毛の条件、例えば用いるサンドペーパーの番手や、研削速度、研削圧力等を調整することにより、好みの立毛長を得ることができる。
、表面に極細繊維(A)を主体とする立毛を形成させる。起毛方法は特に限定されないが、サンドペーパーなどの研磨材にて表面を研削することによって、所望の深さまでの極細繊維を掘り起こして立毛密度が均一な立毛面となるように起毛し、また立毛面全体に渡って所望の長さの均一な立毛となるように整毛する方法が高級感のある天然皮革様の面感が得られるので好ましい。立毛長は、触感や光沢等の外観に影響するため、起毛や整毛の条件、例えば用いるサンドペーパーの番手や、研削速度、研削圧力等を調整することにより、好みの立毛長を得ることができる。
以上のように皮革様シート基体表面を起毛した後、必要に応じて公知の方法により染色することによって、本発明におけるスエード調皮革様シートが得られる。このようにして得られたスエード調皮革様シートは、衣料用素材としてはもちろん、機械的強度が必要とされるスポーツ手袋、作業手袋はもちろんのこと、品位のある外観、柔らかな風合いが好まれるファッション用途などの一般消費向け手袋等の手袋用素材としても好適に用いられ、商品価値の非常に高い各種用途向け手袋が得られる。
次に、本発明を具体的な実施例で説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の部および比率はことわりのない限り、質量に関するものである。なお、本実施例では、耐磨耗性に対する要求が厳しいゴルフ手袋について評価を行ったので、ゴルフ手袋の色は、非常に好まれる色の一つである黒に統一したが、もちろん、本発明のスエード調皮革様シートの色を限定する意図ではない。
各物性は下記のようにして求めた。
(i)極細繊維発生型繊維の繊度
押し出し機の押し出し量を紡糸口金の孔数、紡糸速度で除して、繊維10000m当りの質量として表した。
(ii)極細繊維の繊度
繊維断面を電子顕微鏡で撮影し、その写真から任意に選び出した50本の極細繊維の断面積の平均値から算出した。
(iii)極細繊維発生型繊維の平均破断伸度と平均強度
JIS L1096に従って任意の10本の極細繊維発生型繊維を測定した値の平均値。
(iv)極細繊維の平均破断伸度および平均強度
任意に選択した極細繊維発生型繊維のステープルを90℃〜95℃に加熱したトルエンもしくはパークレンに浸漬し搾液した。この操作を数回繰り返すことにより海成分を抽出除去し、得られた極細繊維束10本の破断伸度および強度をJIS L1015に従って測定し、平均値により評価した。
(v)厚さ
JIS L1096に従って、240g/cm2荷重時の厚さを測定した。
(vi)引裂強力(kg)
JIS L1096により評価した。
(vii)ピリング
JIS L1076により評価した。
(viii)スエード調皮革様シートの外観、タッチ、風合い
触感や光沢等を加味して人工皮革の製造販売を業とする者が評価した。風合いの評価結果は、良好:○、普通:△、不良:×で表した。
(ix)ゴルフ手袋の着用感、外観、形態
触感や光沢等を加味して人工皮革の製造販売を業とする者が評価した。また、ゴルフ用手袋を着用し、ゴム製グリップ付きのゴルフクラブを使用して10人のモニターにより1000発の試打試験を実施した。着用感および試験後の外観、形態の評価結果を良好:○、普通:△、不良:×で表した。
(i)極細繊維発生型繊維の繊度
押し出し機の押し出し量を紡糸口金の孔数、紡糸速度で除して、繊維10000m当りの質量として表した。
(ii)極細繊維の繊度
繊維断面を電子顕微鏡で撮影し、その写真から任意に選び出した50本の極細繊維の断面積の平均値から算出した。
(iii)極細繊維発生型繊維の平均破断伸度と平均強度
JIS L1096に従って任意の10本の極細繊維発生型繊維を測定した値の平均値。
(iv)極細繊維の平均破断伸度および平均強度
任意に選択した極細繊維発生型繊維のステープルを90℃〜95℃に加熱したトルエンもしくはパークレンに浸漬し搾液した。この操作を数回繰り返すことにより海成分を抽出除去し、得られた極細繊維束10本の破断伸度および強度をJIS L1015に従って測定し、平均値により評価した。
(v)厚さ
JIS L1096に従って、240g/cm2荷重時の厚さを測定した。
(vi)引裂強力(kg)
JIS L1096により評価した。
(vii)ピリング
JIS L1076により評価した。
(viii)スエード調皮革様シートの外観、タッチ、風合い
触感や光沢等を加味して人工皮革の製造販売を業とする者が評価した。風合いの評価結果は、良好:○、普通:△、不良:×で表した。
(ix)ゴルフ手袋の着用感、外観、形態
触感や光沢等を加味して人工皮革の製造販売を業とする者が評価した。また、ゴルフ用手袋を着用し、ゴム製グリップ付きのゴルフクラブを使用して10人のモニターにより1000発の試打試験を実施した。着用感および試験後の外観、形態の評価結果を良好:○、普通:△、不良:×で表した。
繊維製造例1(極細繊維発生型繊維(a)及び極細繊維(A))
6−ナイロンチップ(島成分)と高流動性低密度ポリエチレンチップ(海成分)を押出機内で溶融混合し、350m/分の紡糸速度で紡糸口金から押出して繊度10dtexの海島型極細繊維発生型繊維(島成分/海成分=50/50)を紡糸した。なお、紡糸する際に、6−ナイロン100質量部に対してカーボンブラック7質量部を添加した。この海島型極細繊維発生型繊維を延伸することなく機械倦縮した後、長さ51mmにカットしてステープル1を得た。得られたステープル1の物性を第1表に記す。また、得られたステープル1の海成分を抽出除去して得た極細繊維の物性を第1表に併せて記す。
6−ナイロンチップ(島成分)と高流動性低密度ポリエチレンチップ(海成分)を押出機内で溶融混合し、350m/分の紡糸速度で紡糸口金から押出して繊度10dtexの海島型極細繊維発生型繊維(島成分/海成分=50/50)を紡糸した。なお、紡糸する際に、6−ナイロン100質量部に対してカーボンブラック7質量部を添加した。この海島型極細繊維発生型繊維を延伸することなく機械倦縮した後、長さ51mmにカットしてステープル1を得た。得られたステープル1の物性を第1表に記す。また、得られたステープル1の海成分を抽出除去して得た極細繊維の物性を第1表に併せて記す。
繊維製造例2(極細繊維発生型繊維(b)及び極細繊維(B))
6−ナイロンチップ(島成分)と高流動性低密度ポリエチレンチップ(海成分)を押出機内で溶融混合し、280m/分の紡糸速度で紡糸口金から押出して繊度10dtexの海島型極細繊維発生型繊維(島成分/海成分=50/50)を紡糸した。なお、紡糸する際に、6−ナイロン100質量部に対してカーボンブラック4.5質量部を添加した。この海島型極細繊維発生型繊維を2.8倍に延伸し、次いで機械倦縮した後、長さ51mmにカットしてステープル2を得た。得られたステープル2の物性を第1表に記す。また、得られたステープル2の海成分を抽出除去して得た極細繊維の物性を第1表に併せて記す。
6−ナイロンチップ(島成分)と高流動性低密度ポリエチレンチップ(海成分)を押出機内で溶融混合し、280m/分の紡糸速度で紡糸口金から押出して繊度10dtexの海島型極細繊維発生型繊維(島成分/海成分=50/50)を紡糸した。なお、紡糸する際に、6−ナイロン100質量部に対してカーボンブラック4.5質量部を添加した。この海島型極細繊維発生型繊維を2.8倍に延伸し、次いで機械倦縮した後、長さ51mmにカットしてステープル2を得た。得られたステープル2の物性を第1表に記す。また、得られたステープル2の海成分を抽出除去して得た極細繊維の物性を第1表に併せて記す。
繊維製造例3(極細繊維発生型繊維(b)及び極細繊維(B))
2基の押出機内で6−ナイロン(島成分)と高流動性低密度ポリエチレン(海成分)を別々に溶融させた。2種類のポリマー流を紡糸頭部で合流させ、紡糸口金内部において分割、統合を繰り返して(静的混合)混合流を形成し、これを200m/分の紡糸速度で紡糸して繊度10dtexの海島型極細繊維発生型繊維(島成分/海成分=50/50)を得た。なお、紡糸する際に、6−ナイロン100質量部に対してカーボンブラック3.5質量部を添加した。この海島型極細繊維発生型繊維を2.8倍に延伸し、次いで機械倦縮した後、長さ51mmにカットしてステープル3を得た。得られたステープル3の物性を第1表に記す。また、得られたステープル3の海成分を抽出除去して得た極細繊維の物性を第1表に併せて記す。
2基の押出機内で6−ナイロン(島成分)と高流動性低密度ポリエチレン(海成分)を別々に溶融させた。2種類のポリマー流を紡糸頭部で合流させ、紡糸口金内部において分割、統合を繰り返して(静的混合)混合流を形成し、これを200m/分の紡糸速度で紡糸して繊度10dtexの海島型極細繊維発生型繊維(島成分/海成分=50/50)を得た。なお、紡糸する際に、6−ナイロン100質量部に対してカーボンブラック3.5質量部を添加した。この海島型極細繊維発生型繊維を2.8倍に延伸し、次いで機械倦縮した後、長さ51mmにカットしてステープル3を得た。得られたステープル3の物性を第1表に記す。また、得られたステープル3の海成分を抽出除去して得た極細繊維の物性を第1表に併せて記す。
繊維製造例4
6−ナイロンチップ(島成分)と高流動性低密度ポリエチレンチップ(海成分)を押出機内で溶融混合し、350m/分の紡糸速度で紡糸口金から押出して繊度10dtexの海島型極細繊維発生型繊維(島成分/海成分=50/50)を紡糸した。なお、紡糸する際に、6−ナイロン100質量部に対してカーボンブラック7質量部を添加した。この海島型極細繊維発生型繊維を2.8倍に延伸し、次いで機械倦縮した後、長さ51mmにカットしてステープル4を得た。得られたステープル4の物性を第1表に記す。また、得られたステープル4の海成分を抽出除去して得た極細繊維の物性を第1表に併せて記す。
6−ナイロンチップ(島成分)と高流動性低密度ポリエチレンチップ(海成分)を押出機内で溶融混合し、350m/分の紡糸速度で紡糸口金から押出して繊度10dtexの海島型極細繊維発生型繊維(島成分/海成分=50/50)を紡糸した。なお、紡糸する際に、6−ナイロン100質量部に対してカーボンブラック7質量部を添加した。この海島型極細繊維発生型繊維を2.8倍に延伸し、次いで機械倦縮した後、長さ51mmにカットしてステープル4を得た。得られたステープル4の物性を第1表に記す。また、得られたステープル4の海成分を抽出除去して得た極細繊維の物性を第1表に併せて記す。
繊維製造例5
紡糸温度における溶融粘度が、製造例1で用いた6−ナイロンチップより低い6−ナイロンチップ(島成分)と高流動性低密度ポリエチレンチップ(海成分)を押出機内で溶融混合し、230m/分の紡糸速度で紡糸口金から押出して繊度10dtexの海島型極細繊維発生型繊維(島成分/海成分=50/50)を紡糸した。なお、紡糸する際に、6−ナイロン100質量部に対してカーボンブラック4.5質量部を添加した。この海島型極細繊維発生型繊維を2.8倍に延伸し、次いで機械倦縮した後、長さ51mmにカットしてステープル5を得た。得られたステープル5の物性を第1表に記す。また、得られたステープル5の海成分を抽出除去して得た極細繊維の物性を第1表に併せて記す。
紡糸温度における溶融粘度が、製造例1で用いた6−ナイロンチップより低い6−ナイロンチップ(島成分)と高流動性低密度ポリエチレンチップ(海成分)を押出機内で溶融混合し、230m/分の紡糸速度で紡糸口金から押出して繊度10dtexの海島型極細繊維発生型繊維(島成分/海成分=50/50)を紡糸した。なお、紡糸する際に、6−ナイロン100質量部に対してカーボンブラック4.5質量部を添加した。この海島型極細繊維発生型繊維を2.8倍に延伸し、次いで機械倦縮した後、長さ51mmにカットしてステープル5を得た。得られたステープル5の物性を第1表に記す。また、得られたステープル5の海成分を抽出除去して得た極細繊維の物性を第1表に併せて記す。
実施例1
ステープル1とステープル2をそれぞれ別にカードで解繊後、ウェバーでステープル1からなるウェブ(I)およびステープル2からなるウェブ(II)を得た。ウェブ(I)/ウェブ(II)/ウェブ(I)=1/4/1の質量比で積層した後、1バーブのニードルをセットしたニードルパンチング機を用いて700パンチ/cm2のニードルパンチングを施して絡合不織布を得た。この絡合不織布にポリエステルポリエーテル共重合系ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液を含浸し、湿式凝固した後、80℃のトルエン中で海成分を抽出除去し極細繊維化した。得られたシートを主平面と平行に2分割スライスし皮革様シート基体を得た。得られた皮革様シート基体は目付350g/m2、厚み0.95mm、ポリウレタン樹脂と極細繊維の比率が40/60であった。得られた皮革様シート基体のスライス面をサンドペーパーにて研削して厚さを0.8mmに調整した後、反対の面を起毛して立毛皮革様シートとした。得られた立毛皮革様シートはステープル1から発生した極細繊維から主体としてなる層(I)とステープル2から発生した極細繊維から主体としてなる層(II)が質量
比=1/2で積層された状態であった。
ステープル1とステープル2をそれぞれ別にカードで解繊後、ウェバーでステープル1からなるウェブ(I)およびステープル2からなるウェブ(II)を得た。ウェブ(I)/ウェブ(II)/ウェブ(I)=1/4/1の質量比で積層した後、1バーブのニードルをセットしたニードルパンチング機を用いて700パンチ/cm2のニードルパンチングを施して絡合不織布を得た。この絡合不織布にポリエステルポリエーテル共重合系ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液を含浸し、湿式凝固した後、80℃のトルエン中で海成分を抽出除去し極細繊維化した。得られたシートを主平面と平行に2分割スライスし皮革様シート基体を得た。得られた皮革様シート基体は目付350g/m2、厚み0.95mm、ポリウレタン樹脂と極細繊維の比率が40/60であった。得られた皮革様シート基体のスライス面をサンドペーパーにて研削して厚さを0.8mmに調整した後、反対の面を起毛して立毛皮革様シートとした。得られた立毛皮革様シートはステープル1から発生した極細繊維から主体としてなる層(I)とステープル2から発生した極細繊維から主体としてなる層(II)が質量
比=1/2で積層された状態であった。
次いで、ウインス染色機にて、黒の含金属錯塩染料(IRGARAN BLACKGL)
をowfが3%となる条件下で、90℃で1時間染色を行い、スエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートは充分な黒度の立毛面を有しており、表面は裏面よりも濃く、自然なバランスの色合いであった。また、きめの細かいライティング効果により高級感のある外観、タッチおよび充実感のある風合いを兼ね備えていた。また、このスエード調皮革様シートをゴルフ用手袋に縫製したところ外観、着用感共に優れていた。該ゴルフ用手袋を着用して、10人のモニターにより1000発の試打試験を実施した。着用中の型崩れはなく、耐ピリング性に優れ、試打後の外観も良好であり、ゴルフ手袋として非常に商品価値の高いものであった。スエード調皮革様シートの評価結果を第2表に示す。
をowfが3%となる条件下で、90℃で1時間染色を行い、スエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートは充分な黒度の立毛面を有しており、表面は裏面よりも濃く、自然なバランスの色合いであった。また、きめの細かいライティング効果により高級感のある外観、タッチおよび充実感のある風合いを兼ね備えていた。また、このスエード調皮革様シートをゴルフ用手袋に縫製したところ外観、着用感共に優れていた。該ゴルフ用手袋を着用して、10人のモニターにより1000発の試打試験を実施した。着用中の型崩れはなく、耐ピリング性に優れ、試打後の外観も良好であり、ゴルフ手袋として非常に商品価値の高いものであった。スエード調皮革様シートの評価結果を第2表に示す。
比較例1
ステープル4のみを用いてウェブとし、700パンチ/cm2のニードルパンチングを施して絡合不織布を得た以外は実施例1と同様の処理を行いスエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートは、きめの細かいライティング効果により高級感のある外観を有していたが、立毛面の黒度が不足しており、また風合いは硬いものであった。また、このスエード調皮革様シートを用いて縫製したゴルフ用手袋は、きめの細かいライティング効果のある外観を示したが、着用感に硬さが感じられるものであった。10人のモニターによる1000発の試打試験を実施したところ、試打後の外観変化はほとんど見られなかったものの型崩れが若干発生したと共にグリップと接する部分にピリングが発生しゴルフ手袋としてはあまり商品価値の高いものではなかった。スエード調皮革様シートの評価結果を第2表に示す。
ステープル4のみを用いてウェブとし、700パンチ/cm2のニードルパンチングを施して絡合不織布を得た以外は実施例1と同様の処理を行いスエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートは、きめの細かいライティング効果により高級感のある外観を有していたが、立毛面の黒度が不足しており、また風合いは硬いものであった。また、このスエード調皮革様シートを用いて縫製したゴルフ用手袋は、きめの細かいライティング効果のある外観を示したが、着用感に硬さが感じられるものであった。10人のモニターによる1000発の試打試験を実施したところ、試打後の外観変化はほとんど見られなかったものの型崩れが若干発生したと共にグリップと接する部分にピリングが発生しゴルフ手袋としてはあまり商品価値の高いものではなかった。スエード調皮革様シートの評価結果を第2表に示す。
比較例2
ステープル1のみを用いてウェブにし、ニードルパンチング機を用いて700パンチ/cm2のニードルパンチングを施して絡合不織布を得た以外は実施例1と同様の処理を行いスエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートの立毛面は充分な黒度を有していた。また、きめの細かいライティング効果により高級感のある外観、タッチおよび充実感のある風合いを兼ね備えていた。また、このスエード調皮革様シートを用いて縫製したゴルフ用手袋は、外観、着用感共に申し分なかったが、10人のモニターによる1000発の試打試験を実施したところ、着用中に型崩れを生じ外観に劣るものであった。さらに約700発打ったところで表面にピリングが発生したため、ゴルフ手袋としては商品価値の低いものであった。スエード調皮革様シートの評価結果を第2表に示す。
ステープル1のみを用いてウェブにし、ニードルパンチング機を用いて700パンチ/cm2のニードルパンチングを施して絡合不織布を得た以外は実施例1と同様の処理を行いスエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートの立毛面は充分な黒度を有していた。また、きめの細かいライティング効果により高級感のある外観、タッチおよび充実感のある風合いを兼ね備えていた。また、このスエード調皮革様シートを用いて縫製したゴルフ用手袋は、外観、着用感共に申し分なかったが、10人のモニターによる1000発の試打試験を実施したところ、着用中に型崩れを生じ外観に劣るものであった。さらに約700発打ったところで表面にピリングが発生したため、ゴルフ手袋としては商品価値の低いものであった。スエード調皮革様シートの評価結果を第2表に示す。
比較例3
ステープル1の代りにステープル3を使用した以外は実施例1と同様の処理を行いスエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートは、きめの細かいライティング効果により高級感のある外観を有しており、立毛面は充分な黒度を有していたが、風合いは硬いものであった。また、このスエード調皮革様シートを用いて縫製したゴルフ用手袋は、外観は良好だが着用感に硬さが感じられた。10人のモニターによる1000発の試打試験を実施したところ、着用中の型崩れはなかったものの、約700発打ったところで表面にピリングが発生したため外観に劣りゴルフ手袋としては商品価値の低いものであった。スエード調皮革様シートの評価結果を第2表に示す。
ステープル1の代りにステープル3を使用した以外は実施例1と同様の処理を行いスエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートは、きめの細かいライティング効果により高級感のある外観を有しており、立毛面は充分な黒度を有していたが、風合いは硬いものであった。また、このスエード調皮革様シートを用いて縫製したゴルフ用手袋は、外観は良好だが着用感に硬さが感じられた。10人のモニターによる1000発の試打試験を実施したところ、着用中の型崩れはなかったものの、約700発打ったところで表面にピリングが発生したため外観に劣りゴルフ手袋としては商品価値の低いものであった。スエード調皮革様シートの評価結果を第2表に示す。
比較例4
ステープル1の代りにステープル5を使用した以外は実施例1と同様の処理を行い、スエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートは、きめの細かいライティング効果により高級感のある外観を有していたものの、立毛面の黒度が充分でなく、風合いが硬いものであった。また、このスエード調皮革様シートを用いて縫製したゴルフ用手袋は、外観において高級感に欠け、着用感が硬いものであった。10人のモニターによる1000発の試打試験を実施したところ、着用中の型崩れはなく、また、試打後の外観変化もほとんど見られなかったものの表面にピリングが発生しゴルフ手袋としては商品価値のあまり高いものではなかった。スエード調皮革様シートの評価結果を第2表に示す。
ステープル1の代りにステープル5を使用した以外は実施例1と同様の処理を行い、スエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートは、きめの細かいライティング効果により高級感のある外観を有していたものの、立毛面の黒度が充分でなく、風合いが硬いものであった。また、このスエード調皮革様シートを用いて縫製したゴルフ用手袋は、外観において高級感に欠け、着用感が硬いものであった。10人のモニターによる1000発の試打試験を実施したところ、着用中の型崩れはなく、また、試打後の外観変化もほとんど見られなかったものの表面にピリングが発生しゴルフ手袋としては商品価値のあまり高いものではなかった。スエード調皮革様シートの評価結果を第2表に示す。
比較例5
上記比較例2において得られたスエード調皮革様シートの裏面に、目付け100g/m2の極薄ニットを裏貼りすることによりスエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートは、比較例2と同様に、充分な黒度の立毛面を有し、きめの細かいライティング効果により高級感のある外観を有していたものの、風合いが硬い上に一体感の無いものであった。また、このスエード調皮革様シートを用いて縫製したゴルフ用手袋は、外観は良好であるものの着用感に劣ったものであった。さらに10人のモニターによる1000発の試打試験を実施したところ、着用中の型崩れはなく、また、試打後の形態変化もほとんど見られなかったが、若干ピリングが発生し、ゴルフ手袋としては商品価値の低いものであった。スエード調皮革様シートの評価結果を第2表に示す。
上記比較例2において得られたスエード調皮革様シートの裏面に、目付け100g/m2の極薄ニットを裏貼りすることによりスエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートは、比較例2と同様に、充分な黒度の立毛面を有し、きめの細かいライティング効果により高級感のある外観を有していたものの、風合いが硬い上に一体感の無いものであった。また、このスエード調皮革様シートを用いて縫製したゴルフ用手袋は、外観は良好であるものの着用感に劣ったものであった。さらに10人のモニターによる1000発の試打試験を実施したところ、着用中の型崩れはなく、また、試打後の形態変化もほとんど見られなかったが、若干ピリングが発生し、ゴルフ手袋としては商品価値の低いものであった。スエード調皮革様シートの評価結果を第2表に示す。
本発明のスエード調皮革様シートは、天然皮革並みの柔軟な風合い、きめの細かいライティング効果などの高品位な外観、および過酷な条件での着用にも充分に耐え得る良好な物性を同時に有するので、衣料用途、あるいはスポーツ手袋、作業手袋、一般手袋などの手袋用途などに適用できる。特にゴルフ手袋に好適である。
Claims (9)
- 平均繊度0.5dtex以下の極細繊維(A)からなる層(I)と、該極細繊維(A)の平均繊度以下の平均繊度を有する極細繊維(B)からなる層(II)からなる絡合不織布および該絡合不織布に含有された高分子弾性体からなるスエード調皮革様シートであって、前記層(I)と前記層(II)は極細繊維(A)と極細繊維(B)の質量比が10/90〜90/10になるように積層、絡合一体化されており、前記層(I)の表面は極細繊維(A)からなる立毛を主体とする立毛面であり、かつ、前記極細繊維(A)は、下記式(1)および(2)を満足する極細繊維発生型繊維(a)を極細繊維化することにより形成され、前記極細繊維(B)は、下記式(3)および(4)を満足する極細繊維発生型繊維(b)を極細繊維化することにより発生させたことを特徴とするスエード調皮革様シート。
130<Sa<200 (1)
Fa<0.8 (2)
30<Sb<90 (3)
1.5<Fb (4)
(Sa:極細繊維発生型繊維(a)の平均破断伸度(%)、Fa:極細繊維発生型繊維(a)の平均強度(cN/dtex)、Sb:極細繊維発生型繊維(b)の平均破断伸度(%)、Fb:極細繊維発生型繊維(b)の平均強度(cN/dtex)) - 前記極細繊維(A)が下記式(5)および(6)を満足し、前記極細繊維(B)が下記式(7)および(8)を満足することを特徴とする請求項1記載のスエード調皮革様シート。
130<SA<200 (5)
FA<1.5 (6)
30<SB<90 (7)
2.0<FB (8)
(SA:極細繊維(A)の平均破断伸度(%)、FA:極細繊維(A)の平均強度(cN/dtex)、SB:極細繊維(B)の平均破断伸度(%)、FB:極細繊維(B)の平均強度(cN/dtex)) - 前記極細繊維(A)および前記極細繊維(B)がポリアミド系ポリマー、これを主体とする共重合体、芳香族または脂肪族のポリエステル系ポリマー、これを主体とする共重合体およびアクリル系ポリマーからなる群より選ばれた少なくとも1種のポリマーから形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のスエード調皮革様シート。
- 前記極細繊維(A)および前記極細繊維(B)がポリアミド系ポリマーから形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のスエード調皮革様シート。
- 平均繊度0.5dtex以下の極細繊維(A)からなる層(I)と、該極細繊維(A)の平均繊度以下の平均繊度を有する極細繊維(B)からなる層(II)からなる絡合不織布および該絡合不織布に含有された高分子弾性体からなるスエード調皮革様シートであって、前記層(I)と前記層(II)は極細繊維(A)と極細繊維(B)の質量比が10/90〜90/10になるように積層、絡合一体化されており、前記層(I)の表面は極細繊維(A)からなる立毛を主体とする立毛面であり、かつ、前記極細繊維(A)が下記式(5)および(6)を満足し、前記極細繊維(B)が下記式(7)および(8)を満足することを特徴とするスエード調皮革様シート。
130<SA<200 (5)
FA<1.5 (6)
30<SB<90 (7)
2.0<FB (8)
(SA:極細繊維(A)の平均破断伸度(%)、FA:極細繊維(A)の平均強度(cN/dtex)、SB:極細繊維(B)の平均破断伸度(%)、FB:極細繊維(B)の平均強度(cN/dtex)) - 前記極細繊維(A)および前記極細繊維(B)がポリアミド系ポリマー、これを主体とする共重合体、芳香族または脂肪族のポリエステル系ポリマー、これを主体とする共重合体およびアクリル系ポリマーからなる群より選ばれた少なくとも1種のポリマーから形成されていることを特徴とする請求項5記載のスエード調皮革様シート。
- 前記極細繊維(A)および前記極細繊維(B)がポリアミド系ポリマーから形成されていることを特徴とする請求項5記載のスエード調皮革様シート。
- 以下の(i)から(vii)の工程を含むことを特徴とするスエード調皮革様シートの製造方法。
(i)下記式(1)および式(2)を満足する極細繊維発生型繊維(a)のステープルからなるウェブ(I)を作製する工程、
130<Sa<200 (1)
Fa<0.8 (2)
(Sa:極細繊維発生型繊維(a)の平均破断伸度(%)、Fa:極細繊維発生型繊維(a)の平均強度(cN/dtex)
(ii)下記式(3)および式(4)を満足する極細繊維発生型繊維(b)のステープルからなるウェブ(II)を作製する工程、
30<Sb<90 (3)
1.5<Fb (4)
(Sb:極細繊維発生型繊維(b)の平均破断伸度(%)、Fb:極細繊維発生型繊維(b)の平均強度(cN/dtex))
(iii)ウェブ(I)およびウェブ(II)を積層し、絡合不織布とする工程、
(iv)得られた絡合不織布の内部に高分子弾性体溶液または分散液を含浸し、高分子弾性体を凝固させる工程、
(v)極細繊維発生型繊維(a)を極細繊維化して平均繊度が0.5dtex以下の極細繊維(A)を発生させ、かつ、極細繊維発生型繊維(b)を極細繊維化して、平均繊度が極細繊維(A)の平均繊度以下である極細繊維(B)を発生させ、皮革様シート基体とする工程、
(vi)得られた皮革様シート基体のウェブ(I)側の表面を起毛処理して、該表面に極細繊
維(A)を主体とする立毛を形成する工程、および
(vii)立毛を有する皮革様シート基体を染色してスエード調皮革様シートとする工程。 - 少なくとも素材の一部が、請求項1〜7のいずれかに記載のスエード調皮革様シートにより形成された手袋。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004025515A JP2004256984A (ja) | 2003-02-07 | 2004-02-02 | スエード調皮革様シート及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003030374 | 2003-02-07 | ||
JP2004025515A JP2004256984A (ja) | 2003-02-07 | 2004-02-02 | スエード調皮革様シート及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004256984A true JP2004256984A (ja) | 2004-09-16 |
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JP2004025515A Ceased JP2004256984A (ja) | 2003-02-07 | 2004-02-02 | スエード調皮革様シート及びその製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004256984A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2018110280A1 (ja) * | 2016-12-13 | 2019-10-24 | 株式会社クラレ | 立毛調人工皮革、ポリエステル繊維、及び不織布 |
-
2004
- 2004-02-02 JP JP2004025515A patent/JP2004256984A/ja not_active Ceased
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPWO2018110280A1 (ja) * | 2016-12-13 | 2019-10-24 | 株式会社クラレ | 立毛調人工皮革、ポリエステル繊維、及び不織布 |
JP7049267B2 (ja) | 2016-12-13 | 2022-04-06 | 株式会社クラレ | 立毛調人工皮革、ポリエステル繊維、及び不織布 |
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