JP2004256371A - 低線膨張性耐熱部材及びその製造方法 - Google Patents
低線膨張性耐熱部材及びその製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】優れた耐熱性、機械的特性、寸法安定性及び成形性を有し、高温における成形体の線膨張係数が極めて低い低線膨張性耐熱部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】低線膨張性耐熱部材は、水硬性組成物を含む成形体、好ましくは水硬性組成物と樹脂とを含む水硬性樹脂組成物からなる未硬化成形体から該樹脂を全部または一部脱脂した成形体で構成される。また、低線膨張性耐熱部材を製造する有効な方法は、樹脂と水硬性組成物を含む水硬性樹脂組成物を所定形状に成形し、次いで、得られた未硬化成形体内部から該樹脂を全部または一部脱脂して、その後、水分を導入して養生硬化させることにより、低線膨張性耐熱部材を得る方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】低線膨張性耐熱部材は、水硬性組成物を含む成形体、好ましくは水硬性組成物と樹脂とを含む水硬性樹脂組成物からなる未硬化成形体から該樹脂を全部または一部脱脂した成形体で構成される。また、低線膨張性耐熱部材を製造する有効な方法は、樹脂と水硬性組成物を含む水硬性樹脂組成物を所定形状に成形し、次いで、得られた未硬化成形体内部から該樹脂を全部または一部脱脂して、その後、水分を導入して養生硬化させることにより、低線膨張性耐熱部材を得る方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水硬性組成物を用いる低線膨張性耐熱部材及びその製造方法に関し、特に、優れた耐熱性、機械的特性、寸法安定性、成形性を有し、高温における成形体の線膨張係数が極めて低い低線膨張性耐熱部材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から高温環境下における機械部品材料としては、その優れた材料特性を生かして金属材料が幅広く利用されているが、近年は焼結セラミックス、プラスチック等の非金属材料も多く機械部品に利用されるようになっている。
例えば、車両用のヘッドランプや投影機などのプロジェクター用のランプなどには、光源からの直接光が眩惑光となることを防止するために光源を覆う遮光フードを設けたものや、所定の形状に光を集束・拡散させるために光源近傍に反射鏡を設けるものが提案されている。
【0003】
このような、遮光フードや反射鏡は、光源が発生する熱により高温環境下におかれるため、200〜300℃の温度に対応できる耐熱性を必要とするだけでなく、高温時においても安定した光の集束・拡散を行う必要から、機械的寸法の安定性、例えば、線膨張係数が200×10−7/℃以下、好ましくは150×10−7/℃以下であることが要求される。
また、プロジェクターにおいては、600〜700℃の耐熱性と、30×10−7以下/℃の線膨張係数が要求される。
【0004】
従来は、このような遮光フードなどには、平板状の金属板が利用されている。
具体的には、金属板に外形抜き加工を施した後、左右・上下を必要な角度に折り曲げ、略函状の遮光フードや反射鏡が形成されるものである。また、最近では、打ち抜き加工やプレス成形を利用して、一度の工程で所定の形状の遮光フードなどを形成することも行われている。
【0005】
しかしながら、従来の金属板を用いたものにおいては、反射面や遮光面における折り曲げや、これらの部材を取り付けるための取付部の折り曲げなど、複数回の折り曲げを必要とするため、製造工程が複雑化する上、製造誤差が生じやすく、所要の光学的性能が得られないなどの問題点が生じていた。
また、金属板を用いたものにおいては、乱反射を行うための加工を施すことが難しく、別途、反射面の一部を黒く塗装し2次反射を防止するよう構成している。
さらに、金属板では、300℃に達する高温環境下では熱膨張が顕著となり、光学的性能が劣化する問題が生じていた。
【0006】
他方、プラスチックなどを利用したものでは、射出成形が利用できるため複雑な形状を有する遮光フードや反射鏡が容易に製造可能であるが、高温環境下では使用が困難であった。
焼結セラミックを用いたものでは、高温環境下での機械的寸法安定性は優れているものの、複雑な形状のものの成形が難しく、焼結前後の寸法変化も考慮に入れる必要があり、成形性が劣るという問題点を有していた。
【0007】
一方、本出願人は、多様なニーズに応える機械部品を提供するため、水硬性組成物を用いた機械部品を提案している。
例えば、水硬性粉体と、水硬性粉体の平均粒子径よりも1桁以上小さい平均粒子径を有する非水硬性粉体、加工性改良材、成形性改良剤とを組み合わせた水硬性組成物を加圧成形、押出成形することにより紙送りローラ部品等の機械部品への適用が可能であることを見出し、すでに特許出願を行った。(特開2000−7411、特開2000−7179、特開2001−58737)。
【0008】
しかしながら、これらの水硬性組成物および成形体は、単純形状の機械部品への適用は容易であるものの、複雑な形状を有する機械部品への適用は困難であったため、種々の機械部品の広範な用途への使用に用いることは難しかった。
【0009】
また、本出願人は、熱可塑性樹脂と水硬性組成物からなる熱可塑性水硬性組成物を用いた成形体を発明し、優れた耐熱性、機械的特性、寸法安定性及び成形性を実現している(特願2002−162225)。
ただし、この熱可塑性水硬性組成物を利用した成形体においては、100℃以下の温度環境においては、良好な低線膨張状態を示すが、上記遮光フードや反射鏡などのように、300℃付近の高温環境下において、線膨張係数を100×10−7/℃以下に維持することに関しては、十分な性能を実現することが困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、優れた耐熱性、機械的特性、寸法安定性及び成形性を有し、高温における線膨張係数が極めて低い低線膨張性耐熱部材を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記本発明の低線膨張性耐熱部材を、経済的にかつ有効に製造する低線膨張性耐熱部材の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく研究を重ねた結果、水硬性組成物を含む成形体、好ましくは水硬性組成物と樹脂とを含む水硬性樹脂組成物からなる未硬化成形体から該樹脂を全部または一部脱脂した成形体で構成される低線膨張性耐熱部材は、耐熱性に優れ、しかも優れた機械的物性、加工性を有し、特に、高温における成形体の線膨張係数が極めて低い低線膨張性耐熱部材を提供することができることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
請求項1記載の低線膨張性耐熱部材は、水硬性組成物を含む成形体で構成されることを特徴とする。
請求項2記載の低線膨張性耐熱部材は、水硬性組成物と樹脂とを含む水硬性樹脂組成物からなる未硬化成形体から該樹脂を全部または一部脱脂した成形体で項構成されることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項2記載の低線膨張性耐熱部材において、該樹脂が、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする。
請求項4記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項1〜3いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該水硬性組成物には、更に繊維が含まれることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項1〜4いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該水硬性組成物が、水硬性粉体からなることを特徴とする。
請求項6記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項1〜4いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該水硬性組成物が、水硬性粉体と非水硬性粉体とからなることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項2〜6いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、樹脂100重量部に対して、水硬性組成物を200〜900重量部含むことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項1〜7いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該低線膨張性耐熱部材の加熱たわみ温度(HDT)が200℃以上でかつ、線膨張係数が、0〜400℃において200×10−7/℃以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項1〜8いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該低線膨張性耐熱部材がランプの遮光フードであることを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の低線膨張性耐熱部材の製造方法は、水硬性組成物と樹脂とを含む水硬性樹脂組成物を所定形状に成形し、次いで、得られた未硬化成形体内部から該樹脂を全部または一部脱脂して、その後、水分を導入して養生硬化させることにより製造されることを特徴とする。
【0019】
請求項11記載の低線膨張性耐熱部材の製造方法は、請求項10記載の低温膨張性耐熱部材の製造方法において、脱脂を樹脂の融点以上の温度で行うことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の低線膨張性耐熱部材は、水硬性組成物を含み、好ましくは、樹脂と水硬性組成物を含む水硬性樹脂組成物を所定形状に成形し、次いで、得られた未硬化成形体内部から該樹脂を全部または一部脱脂して、その後、水分を導入して養生硬化させることにより得られる。
また、好適には上記樹脂には、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂、あるいはそれらの組み合わせを用いることができる。
更に好適には、上記水硬性組成物は、繊維を含むことにより、耐熱性、機械的特性、寸法安定性を改善することが可能となる。
【0021】
本発明の低線膨張性耐熱部材に用いる水硬性組成物は、水硬性粉体のみからなることができる。
ここで、水硬性粉体とは、水によって硬化する粉体を意味し、好ましくはポルトランドセメント、珪酸カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムフルオロアルミネート、カルシウムサルフォアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、リン酸カルシウム、半水又は無水石膏及び自硬性を有する生石灰の粉体からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体が使用される。
【0022】
前記水硬性粉体の粒径等は特に制限されないが、成形時の可使時間ならびに得られる成形体の強度の点から、平均粒径10〜40μm程度のものが好ましく、また、成形体の高強度を確保する点から、ブレーン比表面積が2500cm2/g以上であることが好ましい。
【0023】
また、本発明に用いる水硬性組成物は、上記水硬性粉体のほかに、非水硬性粉体を含有してなることもできる。
当該非水硬性粉体は、単体では水と接触しても硬化することがない粉体を意味するが、アルカリ性若しくは酸性状態、あるいは高圧蒸気雰囲気においてその成分が溶出し、他の既溶出成分と反応して生成物を形成する粉体も含む意である。
【0024】
非水硬性粉体としては、水酸化カルシウム粉末、二水石膏粉末、炭酸カルシウム粉末、スラグ粉末、フライアッシュ粉末、珪石粉末、粘土粉末及びシリカヒューム粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体を好適に用いることができる。
これらの非水硬性粉体は、ポゾラン反応もしくはマイクロフィラー効果により、強度を増進する機能を有する。
【0025】
また低線膨張性耐熱部材を得る場合に、特に複雑な形状に成形する際には、その性状が流動性に富むことが、成形性を容易にする要因であり、このためには前記非水硬性粉体の40〜60重量部が5〜20μmの球状粒子で構成されていることが流動性を高める有効な手段であり、特に好ましい。
【0026】
かかる非水硬性粉体は、上記水硬性粉体と非水硬性粉体との混合粉体である水硬性組成物中、0〜80重量%、特に好適には50〜70重量%含有されることが好ましい。
これは、80重量%を超えて、水硬性組成物中に非水硬性粉体が含有されると、得られる成形体の強度及びHDT(加熱たわみ温度)の低下、線膨張係数が温度依存を受ける場合が生じ、好ましくない場合が生じるからである。
また、非水硬性粉体の平均粒径は、水硬性粉体の平均粒径より1桁以上小さく、好ましくは2桁以上小さいものが良いが、細かさの下限は本発明の効果を害することがなければ特に限定されない。
【0027】
更に好適には、本発明の低線膨張性耐熱部材には、上記水硬性組成物のほか、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂などの樹脂を含むことが望ましい。
特にまた、樹脂100重量部に対して水硬性組成物を200〜900重量部の量で用いることが、より好ましい。水硬性組成物が200重量部未満であると、成形体強度が低下し、900重量部を超えると樹脂配合量が減ることから成形性が低下して問題となることがあるからである。
【0028】
熱可塑性樹脂とは、加熱により成形できる程度にまで可塑性が得られる樹脂であり、特に種類は限定されず、押出成形や射出成形に使用でき、脱脂に供されるものである。
具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロビレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリエステル、PEEK、PEN、パラフィンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、脂肪酸エステル、グリセライト、変性ワックス及びシラン変性ポリオレフィン重合体等挙げられる。
【0029】
また、本発明に用いることができる熱硬化性樹脂には、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂等の公知の熱硬化性樹脂が含まれ、これらを1種又はそれ以上で用いることができる。
【0030】
本発明においては、好適に、水硬性組成物を樹脂と一緒に、樹脂が軟化する温度で溶融混練することにより、例えばペレット状に成形して、例えば次の射出成形用の原料として用いる。
【0031】
かかるペレット状原料は、射出成形機内部の加熱シリンダ内で再び溶融・混練され、射出装置によって金型内に充填される。
金型内に充填された水硬性組成物および樹脂の混合物は、樹脂の冷却により未硬化成形品として金型内より取り出すことができる。
また、熱硬化性樹脂を利用する場合には、金型内に充填した時点で、金型を熱硬化性樹脂の硬化点以上の温度に加熱し、その後冷却することにより成形品を金型内より取り出すことができる。
【0032】
水硬性組成物は一般的に水によって流動性が得られるが、脱型には長時間が必要となり射出成形等の成形は不可能である。
また、水硬性組成物と水が接触した場合には水和反応が進行するため、成形不良品等のリサイクルは不可能となる。
しかしながら、熱可塑性樹脂と水硬性組成物の混合物は水を使用せずに水硬性組成物に形状を与え、短時間での脱型を実現し、さらに成形段階では水を使用しないものであるため、水硬性組成物の水和反応は開始されず、養生前であれば何度でもリサイクルすることが可能である。
【0033】
本発明の低線膨張性耐熱部材は成形時に水を使用していないことから成形後に水分の供給を行う必要がある。
射出成形後の未硬化成形体は、水硬性組成物の粒子間を樹脂が埋めているため、このままでは未硬化成形体内部への水の供給を阻害し、成形体の水和反応が不十分となる。
【0034】
このため樹脂の一部あるいは全部を未硬化成形体内部より除去し、水分の供給路を形成する必要がある。
成形体内部から樹脂を除去する場合においては、成形体の寸法変化を極力抑えることを考慮すれば、シラン変性樹脂または融点の異なる2種類の樹脂を使用することが好ましい。
【0035】
特に融点の異なる2種類の樹脂を使用することにより、低分子の樹脂は、比較的低温で溶融するので水硬性組成物を容易に流動化させることが可能であり、水硬性組成物および樹脂の混合物を射出成形することを可能とし、複雑な形状の成形体を得ることを可能とする。
そして、斯かる低分子の樹脂は、比較的低温(樹脂によっては100℃程度)から分解が始まるが、一方の高分子の樹脂は比較的高温(同200℃近辺)から分解が開始される。
【0036】
従って、この中間の温度での樹脂分の除去を行った場合には、低分子樹脂のみが成形体内部より除去され、低分子樹脂の除去された空隙部分が水分の供給路となって成形体内部の水和反応を促進することができる。
一方、分解されずに成形体内部に残った高分子樹脂は、成形体内部に存在して成形体の寸法変化等を抑制することができる。
【0037】
さらに、高分子樹脂の融点以上の温度で樹脂分の除去を行った場合には、低分子樹脂と高分子樹脂とを全て除去することとなり、完全に無機質な硬化体を得ることができる。
この場合、低分子樹脂と高分子樹脂との融点が異なる為、まず先に低分子樹脂が除去された後、続いて高分子樹脂が除去されることとなる。
よって、このような時間差によって樹脂成分を除去することにより、成形体の寸法変化を抑制することが可能となる。
【0038】
例えば、低融点である熱可塑性低分子化合物の分子量は200〜数千、高融点である熱可塑性高分子化合物の分子量は10000以上が好ましい。
上限については、分子量が大きくなると混練性に大きく影響するため、混練性の観点等から適宜選択設定することが好ましい。
【0039】
また、融点の異なる2種類の熱可塑性樹脂を配合する場合には、低分子化合物を50〜90重量%とすることが好ましく、55〜65重量%とすることが最も好ましい。また、熱可塑性高分子化合物は50〜10重量%とすることが好ましく、45〜35重量%とすることがより好ましい。
熱可塑性低分子化合物が50重量%未満となると水分供給路が少なくなり水和が十分に進行しない。また、90重量%より多いと脱型時の寸法変化が大きくなり、好ましくない。
【0040】
前記熱可塑性低分子化合物は、パラフィンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、脂肪酸エステル、グリセライト、及び変性ワックスの低融点化合物から選ばれる単体もしくは2種以上が用いられることが好ましい。
熱可塑性高分子化合物としては、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体、ポリプロピレン、アクリルニトリルーブタジエン−スチレン共重合体、アクリルニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル、塩化ビニル塩化酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルマレイン酸共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニルアクリルニトリル共重合体、エチレン塩化ビニル共重合体、プロピレン塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド及びポリフェニレンスルファイドの単体もしくは2種以上が用いられる。
【0041】
また特に好適には、本発明に用いられる熱可塑性樹脂には、特に、水または熱により架橋反応を示す熱可塑性樹脂が好んで用いられる。
すなわち本発明で用いる射出成形法では、水硬性組成物成形体の成形工程においては、射出成形後の養生段階までは水を使用することなしに成形が可能であり、水との反応による架橋反応を示す樹脂の使用が可能だからである。かかる樹脂の使用によって成形体の高強度化及び耐衝撃性を向上させることができる。
【0042】
このような架橋高分子となる樹脂としては、前述のシラン変性ポリオレフィン重合体があり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合体及びプロピレン共重合体からなる群より選ばれるシラン変性ポリマーを使用することができる。
シラン変性ポリマーの使用は、架橋によりポリマーが硬化することによって、より高強度化が図れるため、熱可塑性低分子樹脂の使用はなくてもよい。
【0043】
また、使用する樹脂がシラン変性ポリオレフィン重合体の場合は、該水硬性組成物の硬化段階において、樹脂が水との接触により架橋反応が進行して硬化し、また、水硬性粉体も水との接触により同時に硬化が進行することとなる。
この硬化した成形体中の樹脂は、架橋反応により3次元の網目構造を作り、より高強度となると推測される。
【0044】
他方、熱硬化性樹脂を用いる場合には、脱脂の際に成形体を高温状態に維持するため、樹脂が硬化状態で脱脂が進行し、成形体の寸法変化をより一層抑制することが可能となる。
【0045】
さらに、本発明の低線膨張性耐熱部材に用いられる水硬性樹脂組成物は、強度、特に引っ張り強度を改善するため、例えば、繊維等の強化材を含有することができる。
当該繊維は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜200重量部を添加することが好ましく、100〜170重量部を添加することがより好ましい。
繊維を添加しない場合、あるいは添加量が40重量部未満であると水硬性組成物特有の耐衝撃性、引張強度の低さが改善できないおそれが生じる場合がある。一方、200重量部より多いと流動性への影響が大きく成形不良の原因となることがあり望ましくない。
【0046】
繊維としてはガラス、カーボン、アラミド、ポリアミド、ボロン等の繊維およびチタン酸カリウムウィスカー等の公知の強化繊維が使用できる。
繊維の長さは0.1〜20mmが好ましく、3〜6mmがより好ましい。
また、太さは5〜30μmであることが、水硬性樹脂組成物の調製の容易さ及び成形性の点から好ましい。
【0047】
更に、好ましくは、本発明の低線膨張性耐熱部材に用いられる水硬性樹脂組成物は、金型からの剥離性を改善するために、離型剤を含有することができる。
離型剤は、樹脂に対して、0.5〜10.0重量部添加することが好ましく、2.0〜3.0重量部添加することがより好ましい。
0.5重量部未満であると型枠からの剥離性が不良となり、10.0重量部より多くなると水硬性組成物の水和反応の障害等となるおそれがある。
離型剤としてはステアリン酸、ステアリルアルコール、工チレンビスステアオロアミド、グリセリントリエステル、グリセリンモノエステル等が使用できる。
【0048】
その他の添加剤としては、熱可塑性樹脂の酸化防止のためのアルキルフェノール類、2.6ターシャルブチルパラクレゾール、ビスフェノールA等を使用することができる。
また、紫外線吸収剤として、サルシル酸エステル、ベンゼン酸エステル等を必要に応じて添加することもできる。
【0049】
本発明に係る水和硬化した成形体である低線膨張性耐熱部材は、水硬性組成物を、または、樹脂と水硬性組成物からなる水硬性樹脂組成物を、更に必要に応じて含有される強化材や離型材等の添加剤を含有して、所定の形状に成形し、未硬化成形体を得た後、樹脂の融点以上の温度で加熱することにより成形体内部より樹脂を除去(「脱脂」と称する)し、得られた成形体を養生して水分を導入することにより、該成形体を水和硬化させることによって製造するものである。
【0050】
樹脂は1種類の上記した化合物でも良いが、上述したように熱可塑性低分子化合物と熱可塑性高分子化合物の2種類から構成されてなるものやシラン変性樹脂を使用するなど、種々の態様が可能である。
例えば、熱可塑性樹脂が、このような2種類の化合物から構成されている場合には、低融点である熱可塑性低分子化合物の融点と高融点である熱可塑性高分子化合物の融点との問の温度(270℃以下)で脱脂することが好ましく、これによって成形体内部より熱可塑性低分子化合物のみを除去し、これによって生じた空隙を水分供給路として水分を導入することにより、水和反応率を高めて水和硬化させるものである。
【0051】
具体的には、成形方法としては、射出成形法、押出成形法、加圧成形法等を用いることができる。また、脱脂方法としては、例えば低分子化合物としてDEP、高分子化合物としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用した場合、DEPは100℃から分解が開始し190℃で終了し、一方、エチレン・酢酸ビニル共重合体は210℃から分解が始まる。従って、200℃で成形体を加熱することにより、DEPのみを選択的に除去することができる。
また、400〜500℃で養生すれば、これらの熱可塑性樹脂を完全に除去することもできる。
尚、脱脂方法としては、加熱以外の方法を適用することも可能であり、例えば溶媒抽出や減圧による除去方法を挙げることができる。
【0052】
樹脂の除去に要する時間は樹脂の種類、配合量、圧力、温度等により適宜設定することができる。上記の例に示した樹脂の組み合わせを大気圧下200℃で脱脂した場合には、3時間では脱脂率が70%程度となり、12時間後にはほぼ100%となる。
さらに、養生方法としては、80℃以上で常圧蒸気養生、高圧蒸気養生、熱水養生等の養生法を単独で行うか、または常圧蒸気養生と熱水養生との組合せ、あるいは高圧蒸気養生と熱水養生との組み合わせにより行うことができる。
【0053】
このようにして得られた成形体である低線膨張性耐熱部材は、耐熱性に優れるとともに、線膨張率が低い特性を有する。
耐熱性は、JIS K 7191−2 A法準拠で測定した加熱たわみ温度(HDT)が、200℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは280℃以上の値を呈するものとなり、また、線膨張係数は、ASTM D−648法準拠で測定して、0〜400℃において、200×10−7/℃以下、好適には200〜400℃において150×10−7/℃以下、更に好適には100×10−7/℃以下となるものである。
従って、例えば、ランプやプロジェクターの遮光フードや反射鏡等の、高温環境下での機械的寸法安定性が要求される部材に好適に使用できる。
【0054】
〈実施例〉
以下に本発明を、実施例、比較例及び試験例により説明する。
<実験例1〜5>
水硬性粉体としてポルトランドセメント(平均粒径20μm、商品名;ポルトランドセメント、住友大阪セメント株式会社製)、非水硬性粉体としてフライアッシュ(平均粒径10μm、球状粒子、商品名;中部フライアッシュ、株式会社中部テクノ)や珪石粉(平均粒径35μm、商品名;マイクロシリカ、秩父工業株式会社製)を混合した粉体に、熱可塑性高分子化合物としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA、分子量:30000〜50000、商品名;サンテック、旭化成工業株式会社製)、熱可塑性低分子化合物としてカルナバワックス(分子量:300〜500、商品名;セルナND、中京油脂株式会社製)、シラン変性ポリプロピレン(商品名;スミコンFM、住友ベークライト株式会社製)、離型剤としてステアリン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬)、カーボン繊維(商品名C6−S、東邦テナックス株式会社製)をそれぞれ表1のような割合で配合して、熱可塑性水硬性組成物を調製し、ホットロールにて140℃、45分混練してペレットを得た。
【0055】
次にこのペレットを使用して長さ120mm×幅10mm×厚み3mmの射出成形体を得た。得られた未硬化成形体を加熱による脱脂工程(200℃、12時間)によって脱脂した後、オートクレーブ養生(160℃、12時間、8.8気圧)によって成形体を作製した。該成形体について、曲げ強度、加熱たわみ温度および線膨張係数について試験し、比較した。その結果を表1に示す。
【0056】
〈比較例1〜5〉
比較例1〜5は、脱脂工程を行なわない以外は、実施例1〜5とそれぞれ同様にして実施して成形体を得た。得られた成形体について、実施例1〜5と同様の試験を行い、その結果を表2に示す。
【0057】
<試験方法1>
1)曲げ強度・・・JIS K 7171法準拠で行なった。
得られた長さ120mm×幅10mm×厚み3mmの成形体試験片を用意し、該試験片を距離80mmの支点間に指示し、中心部を1mm/分の速度で荷重をかけ破壊点を求めた。
【0058】
2)HTD試験(加熱たわみ温度試験)…JIS K 7191−2 A法準拠で行なった。
得られた長さ120mm×幅10mm×厚み3mmの試験片を用意し、該試験片を距離100mmの支点問に支持し、中心部上方より1.8MPaの曲げ応力をかけた状態で一定速度で昇温し、標準たわみ量に到達したときの温度を加熱たわみ温度とした。
【0059】
3)線膨張係数…ASTM D−648法準拠で行なった。
得られた上記各成形体をφ3×20mmの試験片とし、熱応力歪み測定装置(商品名;TMA/SS:セイコーインスツルメント株式会社製)を使用して、30〜250℃の温度域で線膨張係数を測定した。
【0060】
4)成形性
◎:極めて良好 射出時に容易に射出でき、しかも成形品の形が満足できるもの
○:良好 射出が若干難しいが、成形品の形が満足できるもの
×:不良 射出性に困難があり、しかも成形品の形が満足しないもの
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
上記結果から、本発明に係るいずれの成形体も、比較例の成形体と比べて曲げ強度で測定した機械的強度に優れていることがわかる。
また、加熱たわみ温度が高く、耐熱性にも優れることがわかる。さらに、線膨張係数が小さいことにより、成形体の寸法安定性にも優れていることがわかる。
特に、実施例1〜5においては、いずれも、加熱たわみ温度が280℃を超え、30℃〜250℃の測定環境において線膨張係数が100×10−7/℃以下という優れた性能を実現できた。
また、比較例3〜5は、内部にシラン変性ポリエチレン樹脂が残存しており、一定の曲げ強度の発現も認められるが、加熱たわみ温度(HTD)も180℃以下となり、高温環境下での使用が困難なものとなっている。
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る低線膨張性耐熱部材は、水を添加することなく射出成形することが可能であり、耐熱性、機械的特性、寸法安定性、加工性を必要とする各種機械部品に適用することが可能となる。
特に、本発明に係る低線膨張性耐熱部材は、300℃付近で、200×10−7/℃以下の線膨張係数を満たす必要のある、ヘッドランプやプロジェクターの遮光フードや反射鏡に適用することが可能となる。
【0065】
しかも、射出成形により部材を成形するため、遮光フードや反射鏡の取り付け部まで一体構造とすることが可能となり、寸法精度が一層向上可能となる。
また、従来のプレスや折り曲げ加工と比較し、射出成形においては乱反射させるための複雑な形状(例えば、ローレット模様など)を製造することが可能となり、従来の2次反射防止用の塗料を塗装する工程を省くことも可能となる。
【0066】
さらに、より高温で脱脂を十分に行うことにより、低線膨張性耐熱部材を無機物で構成でき、200℃を超える耐熱性、寸法安定性も確保できる。
【0067】
また、本発明に係る低線膨張性耐熱部材の製造方法は、上記本発明の低線膨張性耐熱部材を経済的にまた、簡易に、さらには有効に製造することができるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水硬性組成物を用いる低線膨張性耐熱部材及びその製造方法に関し、特に、優れた耐熱性、機械的特性、寸法安定性、成形性を有し、高温における成形体の線膨張係数が極めて低い低線膨張性耐熱部材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から高温環境下における機械部品材料としては、その優れた材料特性を生かして金属材料が幅広く利用されているが、近年は焼結セラミックス、プラスチック等の非金属材料も多く機械部品に利用されるようになっている。
例えば、車両用のヘッドランプや投影機などのプロジェクター用のランプなどには、光源からの直接光が眩惑光となることを防止するために光源を覆う遮光フードを設けたものや、所定の形状に光を集束・拡散させるために光源近傍に反射鏡を設けるものが提案されている。
【0003】
このような、遮光フードや反射鏡は、光源が発生する熱により高温環境下におかれるため、200〜300℃の温度に対応できる耐熱性を必要とするだけでなく、高温時においても安定した光の集束・拡散を行う必要から、機械的寸法の安定性、例えば、線膨張係数が200×10−7/℃以下、好ましくは150×10−7/℃以下であることが要求される。
また、プロジェクターにおいては、600〜700℃の耐熱性と、30×10−7以下/℃の線膨張係数が要求される。
【0004】
従来は、このような遮光フードなどには、平板状の金属板が利用されている。
具体的には、金属板に外形抜き加工を施した後、左右・上下を必要な角度に折り曲げ、略函状の遮光フードや反射鏡が形成されるものである。また、最近では、打ち抜き加工やプレス成形を利用して、一度の工程で所定の形状の遮光フードなどを形成することも行われている。
【0005】
しかしながら、従来の金属板を用いたものにおいては、反射面や遮光面における折り曲げや、これらの部材を取り付けるための取付部の折り曲げなど、複数回の折り曲げを必要とするため、製造工程が複雑化する上、製造誤差が生じやすく、所要の光学的性能が得られないなどの問題点が生じていた。
また、金属板を用いたものにおいては、乱反射を行うための加工を施すことが難しく、別途、反射面の一部を黒く塗装し2次反射を防止するよう構成している。
さらに、金属板では、300℃に達する高温環境下では熱膨張が顕著となり、光学的性能が劣化する問題が生じていた。
【0006】
他方、プラスチックなどを利用したものでは、射出成形が利用できるため複雑な形状を有する遮光フードや反射鏡が容易に製造可能であるが、高温環境下では使用が困難であった。
焼結セラミックを用いたものでは、高温環境下での機械的寸法安定性は優れているものの、複雑な形状のものの成形が難しく、焼結前後の寸法変化も考慮に入れる必要があり、成形性が劣るという問題点を有していた。
【0007】
一方、本出願人は、多様なニーズに応える機械部品を提供するため、水硬性組成物を用いた機械部品を提案している。
例えば、水硬性粉体と、水硬性粉体の平均粒子径よりも1桁以上小さい平均粒子径を有する非水硬性粉体、加工性改良材、成形性改良剤とを組み合わせた水硬性組成物を加圧成形、押出成形することにより紙送りローラ部品等の機械部品への適用が可能であることを見出し、すでに特許出願を行った。(特開2000−7411、特開2000−7179、特開2001−58737)。
【0008】
しかしながら、これらの水硬性組成物および成形体は、単純形状の機械部品への適用は容易であるものの、複雑な形状を有する機械部品への適用は困難であったため、種々の機械部品の広範な用途への使用に用いることは難しかった。
【0009】
また、本出願人は、熱可塑性樹脂と水硬性組成物からなる熱可塑性水硬性組成物を用いた成形体を発明し、優れた耐熱性、機械的特性、寸法安定性及び成形性を実現している(特願2002−162225)。
ただし、この熱可塑性水硬性組成物を利用した成形体においては、100℃以下の温度環境においては、良好な低線膨張状態を示すが、上記遮光フードや反射鏡などのように、300℃付近の高温環境下において、線膨張係数を100×10−7/℃以下に維持することに関しては、十分な性能を実現することが困難であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、優れた耐熱性、機械的特性、寸法安定性及び成形性を有し、高温における線膨張係数が極めて低い低線膨張性耐熱部材を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記本発明の低線膨張性耐熱部材を、経済的にかつ有効に製造する低線膨張性耐熱部材の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく研究を重ねた結果、水硬性組成物を含む成形体、好ましくは水硬性組成物と樹脂とを含む水硬性樹脂組成物からなる未硬化成形体から該樹脂を全部または一部脱脂した成形体で構成される低線膨張性耐熱部材は、耐熱性に優れ、しかも優れた機械的物性、加工性を有し、特に、高温における成形体の線膨張係数が極めて低い低線膨張性耐熱部材を提供することができることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
請求項1記載の低線膨張性耐熱部材は、水硬性組成物を含む成形体で構成されることを特徴とする。
請求項2記載の低線膨張性耐熱部材は、水硬性組成物と樹脂とを含む水硬性樹脂組成物からなる未硬化成形体から該樹脂を全部または一部脱脂した成形体で項構成されることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項2記載の低線膨張性耐熱部材において、該樹脂が、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする。
請求項4記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項1〜3いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該水硬性組成物には、更に繊維が含まれることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項1〜4いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該水硬性組成物が、水硬性粉体からなることを特徴とする。
請求項6記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項1〜4いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該水硬性組成物が、水硬性粉体と非水硬性粉体とからなることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項2〜6いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、樹脂100重量部に対して、水硬性組成物を200〜900重量部含むことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項1〜7いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該低線膨張性耐熱部材の加熱たわみ温度(HDT)が200℃以上でかつ、線膨張係数が、0〜400℃において200×10−7/℃以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の低線膨張性耐熱部材は、請求項1〜8いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該低線膨張性耐熱部材がランプの遮光フードであることを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の低線膨張性耐熱部材の製造方法は、水硬性組成物と樹脂とを含む水硬性樹脂組成物を所定形状に成形し、次いで、得られた未硬化成形体内部から該樹脂を全部または一部脱脂して、その後、水分を導入して養生硬化させることにより製造されることを特徴とする。
【0019】
請求項11記載の低線膨張性耐熱部材の製造方法は、請求項10記載の低温膨張性耐熱部材の製造方法において、脱脂を樹脂の融点以上の温度で行うことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の低線膨張性耐熱部材は、水硬性組成物を含み、好ましくは、樹脂と水硬性組成物を含む水硬性樹脂組成物を所定形状に成形し、次いで、得られた未硬化成形体内部から該樹脂を全部または一部脱脂して、その後、水分を導入して養生硬化させることにより得られる。
また、好適には上記樹脂には、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂、あるいはそれらの組み合わせを用いることができる。
更に好適には、上記水硬性組成物は、繊維を含むことにより、耐熱性、機械的特性、寸法安定性を改善することが可能となる。
【0021】
本発明の低線膨張性耐熱部材に用いる水硬性組成物は、水硬性粉体のみからなることができる。
ここで、水硬性粉体とは、水によって硬化する粉体を意味し、好ましくはポルトランドセメント、珪酸カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムフルオロアルミネート、カルシウムサルフォアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、リン酸カルシウム、半水又は無水石膏及び自硬性を有する生石灰の粉体からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体が使用される。
【0022】
前記水硬性粉体の粒径等は特に制限されないが、成形時の可使時間ならびに得られる成形体の強度の点から、平均粒径10〜40μm程度のものが好ましく、また、成形体の高強度を確保する点から、ブレーン比表面積が2500cm2/g以上であることが好ましい。
【0023】
また、本発明に用いる水硬性組成物は、上記水硬性粉体のほかに、非水硬性粉体を含有してなることもできる。
当該非水硬性粉体は、単体では水と接触しても硬化することがない粉体を意味するが、アルカリ性若しくは酸性状態、あるいは高圧蒸気雰囲気においてその成分が溶出し、他の既溶出成分と反応して生成物を形成する粉体も含む意である。
【0024】
非水硬性粉体としては、水酸化カルシウム粉末、二水石膏粉末、炭酸カルシウム粉末、スラグ粉末、フライアッシュ粉末、珪石粉末、粘土粉末及びシリカヒューム粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体を好適に用いることができる。
これらの非水硬性粉体は、ポゾラン反応もしくはマイクロフィラー効果により、強度を増進する機能を有する。
【0025】
また低線膨張性耐熱部材を得る場合に、特に複雑な形状に成形する際には、その性状が流動性に富むことが、成形性を容易にする要因であり、このためには前記非水硬性粉体の40〜60重量部が5〜20μmの球状粒子で構成されていることが流動性を高める有効な手段であり、特に好ましい。
【0026】
かかる非水硬性粉体は、上記水硬性粉体と非水硬性粉体との混合粉体である水硬性組成物中、0〜80重量%、特に好適には50〜70重量%含有されることが好ましい。
これは、80重量%を超えて、水硬性組成物中に非水硬性粉体が含有されると、得られる成形体の強度及びHDT(加熱たわみ温度)の低下、線膨張係数が温度依存を受ける場合が生じ、好ましくない場合が生じるからである。
また、非水硬性粉体の平均粒径は、水硬性粉体の平均粒径より1桁以上小さく、好ましくは2桁以上小さいものが良いが、細かさの下限は本発明の効果を害することがなければ特に限定されない。
【0027】
更に好適には、本発明の低線膨張性耐熱部材には、上記水硬性組成物のほか、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂などの樹脂を含むことが望ましい。
特にまた、樹脂100重量部に対して水硬性組成物を200〜900重量部の量で用いることが、より好ましい。水硬性組成物が200重量部未満であると、成形体強度が低下し、900重量部を超えると樹脂配合量が減ることから成形性が低下して問題となることがあるからである。
【0028】
熱可塑性樹脂とは、加熱により成形できる程度にまで可塑性が得られる樹脂であり、特に種類は限定されず、押出成形や射出成形に使用でき、脱脂に供されるものである。
具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロビレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリエステル、PEEK、PEN、パラフィンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、脂肪酸エステル、グリセライト、変性ワックス及びシラン変性ポリオレフィン重合体等挙げられる。
【0029】
また、本発明に用いることができる熱硬化性樹脂には、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂等の公知の熱硬化性樹脂が含まれ、これらを1種又はそれ以上で用いることができる。
【0030】
本発明においては、好適に、水硬性組成物を樹脂と一緒に、樹脂が軟化する温度で溶融混練することにより、例えばペレット状に成形して、例えば次の射出成形用の原料として用いる。
【0031】
かかるペレット状原料は、射出成形機内部の加熱シリンダ内で再び溶融・混練され、射出装置によって金型内に充填される。
金型内に充填された水硬性組成物および樹脂の混合物は、樹脂の冷却により未硬化成形品として金型内より取り出すことができる。
また、熱硬化性樹脂を利用する場合には、金型内に充填した時点で、金型を熱硬化性樹脂の硬化点以上の温度に加熱し、その後冷却することにより成形品を金型内より取り出すことができる。
【0032】
水硬性組成物は一般的に水によって流動性が得られるが、脱型には長時間が必要となり射出成形等の成形は不可能である。
また、水硬性組成物と水が接触した場合には水和反応が進行するため、成形不良品等のリサイクルは不可能となる。
しかしながら、熱可塑性樹脂と水硬性組成物の混合物は水を使用せずに水硬性組成物に形状を与え、短時間での脱型を実現し、さらに成形段階では水を使用しないものであるため、水硬性組成物の水和反応は開始されず、養生前であれば何度でもリサイクルすることが可能である。
【0033】
本発明の低線膨張性耐熱部材は成形時に水を使用していないことから成形後に水分の供給を行う必要がある。
射出成形後の未硬化成形体は、水硬性組成物の粒子間を樹脂が埋めているため、このままでは未硬化成形体内部への水の供給を阻害し、成形体の水和反応が不十分となる。
【0034】
このため樹脂の一部あるいは全部を未硬化成形体内部より除去し、水分の供給路を形成する必要がある。
成形体内部から樹脂を除去する場合においては、成形体の寸法変化を極力抑えることを考慮すれば、シラン変性樹脂または融点の異なる2種類の樹脂を使用することが好ましい。
【0035】
特に融点の異なる2種類の樹脂を使用することにより、低分子の樹脂は、比較的低温で溶融するので水硬性組成物を容易に流動化させることが可能であり、水硬性組成物および樹脂の混合物を射出成形することを可能とし、複雑な形状の成形体を得ることを可能とする。
そして、斯かる低分子の樹脂は、比較的低温(樹脂によっては100℃程度)から分解が始まるが、一方の高分子の樹脂は比較的高温(同200℃近辺)から分解が開始される。
【0036】
従って、この中間の温度での樹脂分の除去を行った場合には、低分子樹脂のみが成形体内部より除去され、低分子樹脂の除去された空隙部分が水分の供給路となって成形体内部の水和反応を促進することができる。
一方、分解されずに成形体内部に残った高分子樹脂は、成形体内部に存在して成形体の寸法変化等を抑制することができる。
【0037】
さらに、高分子樹脂の融点以上の温度で樹脂分の除去を行った場合には、低分子樹脂と高分子樹脂とを全て除去することとなり、完全に無機質な硬化体を得ることができる。
この場合、低分子樹脂と高分子樹脂との融点が異なる為、まず先に低分子樹脂が除去された後、続いて高分子樹脂が除去されることとなる。
よって、このような時間差によって樹脂成分を除去することにより、成形体の寸法変化を抑制することが可能となる。
【0038】
例えば、低融点である熱可塑性低分子化合物の分子量は200〜数千、高融点である熱可塑性高分子化合物の分子量は10000以上が好ましい。
上限については、分子量が大きくなると混練性に大きく影響するため、混練性の観点等から適宜選択設定することが好ましい。
【0039】
また、融点の異なる2種類の熱可塑性樹脂を配合する場合には、低分子化合物を50〜90重量%とすることが好ましく、55〜65重量%とすることが最も好ましい。また、熱可塑性高分子化合物は50〜10重量%とすることが好ましく、45〜35重量%とすることがより好ましい。
熱可塑性低分子化合物が50重量%未満となると水分供給路が少なくなり水和が十分に進行しない。また、90重量%より多いと脱型時の寸法変化が大きくなり、好ましくない。
【0040】
前記熱可塑性低分子化合物は、パラフィンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、脂肪酸エステル、グリセライト、及び変性ワックスの低融点化合物から選ばれる単体もしくは2種以上が用いられることが好ましい。
熱可塑性高分子化合物としては、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体、ポリプロピレン、アクリルニトリルーブタジエン−スチレン共重合体、アクリルニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル、塩化ビニル塩化酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸ビニルマレイン酸共重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニルアクリルニトリル共重合体、エチレン塩化ビニル共重合体、プロピレン塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド及びポリフェニレンスルファイドの単体もしくは2種以上が用いられる。
【0041】
また特に好適には、本発明に用いられる熱可塑性樹脂には、特に、水または熱により架橋反応を示す熱可塑性樹脂が好んで用いられる。
すなわち本発明で用いる射出成形法では、水硬性組成物成形体の成形工程においては、射出成形後の養生段階までは水を使用することなしに成形が可能であり、水との反応による架橋反応を示す樹脂の使用が可能だからである。かかる樹脂の使用によって成形体の高強度化及び耐衝撃性を向上させることができる。
【0042】
このような架橋高分子となる樹脂としては、前述のシラン変性ポリオレフィン重合体があり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合体及びプロピレン共重合体からなる群より選ばれるシラン変性ポリマーを使用することができる。
シラン変性ポリマーの使用は、架橋によりポリマーが硬化することによって、より高強度化が図れるため、熱可塑性低分子樹脂の使用はなくてもよい。
【0043】
また、使用する樹脂がシラン変性ポリオレフィン重合体の場合は、該水硬性組成物の硬化段階において、樹脂が水との接触により架橋反応が進行して硬化し、また、水硬性粉体も水との接触により同時に硬化が進行することとなる。
この硬化した成形体中の樹脂は、架橋反応により3次元の網目構造を作り、より高強度となると推測される。
【0044】
他方、熱硬化性樹脂を用いる場合には、脱脂の際に成形体を高温状態に維持するため、樹脂が硬化状態で脱脂が進行し、成形体の寸法変化をより一層抑制することが可能となる。
【0045】
さらに、本発明の低線膨張性耐熱部材に用いられる水硬性樹脂組成物は、強度、特に引っ張り強度を改善するため、例えば、繊維等の強化材を含有することができる。
当該繊維は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜200重量部を添加することが好ましく、100〜170重量部を添加することがより好ましい。
繊維を添加しない場合、あるいは添加量が40重量部未満であると水硬性組成物特有の耐衝撃性、引張強度の低さが改善できないおそれが生じる場合がある。一方、200重量部より多いと流動性への影響が大きく成形不良の原因となることがあり望ましくない。
【0046】
繊維としてはガラス、カーボン、アラミド、ポリアミド、ボロン等の繊維およびチタン酸カリウムウィスカー等の公知の強化繊維が使用できる。
繊維の長さは0.1〜20mmが好ましく、3〜6mmがより好ましい。
また、太さは5〜30μmであることが、水硬性樹脂組成物の調製の容易さ及び成形性の点から好ましい。
【0047】
更に、好ましくは、本発明の低線膨張性耐熱部材に用いられる水硬性樹脂組成物は、金型からの剥離性を改善するために、離型剤を含有することができる。
離型剤は、樹脂に対して、0.5〜10.0重量部添加することが好ましく、2.0〜3.0重量部添加することがより好ましい。
0.5重量部未満であると型枠からの剥離性が不良となり、10.0重量部より多くなると水硬性組成物の水和反応の障害等となるおそれがある。
離型剤としてはステアリン酸、ステアリルアルコール、工チレンビスステアオロアミド、グリセリントリエステル、グリセリンモノエステル等が使用できる。
【0048】
その他の添加剤としては、熱可塑性樹脂の酸化防止のためのアルキルフェノール類、2.6ターシャルブチルパラクレゾール、ビスフェノールA等を使用することができる。
また、紫外線吸収剤として、サルシル酸エステル、ベンゼン酸エステル等を必要に応じて添加することもできる。
【0049】
本発明に係る水和硬化した成形体である低線膨張性耐熱部材は、水硬性組成物を、または、樹脂と水硬性組成物からなる水硬性樹脂組成物を、更に必要に応じて含有される強化材や離型材等の添加剤を含有して、所定の形状に成形し、未硬化成形体を得た後、樹脂の融点以上の温度で加熱することにより成形体内部より樹脂を除去(「脱脂」と称する)し、得られた成形体を養生して水分を導入することにより、該成形体を水和硬化させることによって製造するものである。
【0050】
樹脂は1種類の上記した化合物でも良いが、上述したように熱可塑性低分子化合物と熱可塑性高分子化合物の2種類から構成されてなるものやシラン変性樹脂を使用するなど、種々の態様が可能である。
例えば、熱可塑性樹脂が、このような2種類の化合物から構成されている場合には、低融点である熱可塑性低分子化合物の融点と高融点である熱可塑性高分子化合物の融点との問の温度(270℃以下)で脱脂することが好ましく、これによって成形体内部より熱可塑性低分子化合物のみを除去し、これによって生じた空隙を水分供給路として水分を導入することにより、水和反応率を高めて水和硬化させるものである。
【0051】
具体的には、成形方法としては、射出成形法、押出成形法、加圧成形法等を用いることができる。また、脱脂方法としては、例えば低分子化合物としてDEP、高分子化合物としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用した場合、DEPは100℃から分解が開始し190℃で終了し、一方、エチレン・酢酸ビニル共重合体は210℃から分解が始まる。従って、200℃で成形体を加熱することにより、DEPのみを選択的に除去することができる。
また、400〜500℃で養生すれば、これらの熱可塑性樹脂を完全に除去することもできる。
尚、脱脂方法としては、加熱以外の方法を適用することも可能であり、例えば溶媒抽出や減圧による除去方法を挙げることができる。
【0052】
樹脂の除去に要する時間は樹脂の種類、配合量、圧力、温度等により適宜設定することができる。上記の例に示した樹脂の組み合わせを大気圧下200℃で脱脂した場合には、3時間では脱脂率が70%程度となり、12時間後にはほぼ100%となる。
さらに、養生方法としては、80℃以上で常圧蒸気養生、高圧蒸気養生、熱水養生等の養生法を単独で行うか、または常圧蒸気養生と熱水養生との組合せ、あるいは高圧蒸気養生と熱水養生との組み合わせにより行うことができる。
【0053】
このようにして得られた成形体である低線膨張性耐熱部材は、耐熱性に優れるとともに、線膨張率が低い特性を有する。
耐熱性は、JIS K 7191−2 A法準拠で測定した加熱たわみ温度(HDT)が、200℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは280℃以上の値を呈するものとなり、また、線膨張係数は、ASTM D−648法準拠で測定して、0〜400℃において、200×10−7/℃以下、好適には200〜400℃において150×10−7/℃以下、更に好適には100×10−7/℃以下となるものである。
従って、例えば、ランプやプロジェクターの遮光フードや反射鏡等の、高温環境下での機械的寸法安定性が要求される部材に好適に使用できる。
【0054】
〈実施例〉
以下に本発明を、実施例、比較例及び試験例により説明する。
<実験例1〜5>
水硬性粉体としてポルトランドセメント(平均粒径20μm、商品名;ポルトランドセメント、住友大阪セメント株式会社製)、非水硬性粉体としてフライアッシュ(平均粒径10μm、球状粒子、商品名;中部フライアッシュ、株式会社中部テクノ)や珪石粉(平均粒径35μm、商品名;マイクロシリカ、秩父工業株式会社製)を混合した粉体に、熱可塑性高分子化合物としてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA、分子量:30000〜50000、商品名;サンテック、旭化成工業株式会社製)、熱可塑性低分子化合物としてカルナバワックス(分子量:300〜500、商品名;セルナND、中京油脂株式会社製)、シラン変性ポリプロピレン(商品名;スミコンFM、住友ベークライト株式会社製)、離型剤としてステアリン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬)、カーボン繊維(商品名C6−S、東邦テナックス株式会社製)をそれぞれ表1のような割合で配合して、熱可塑性水硬性組成物を調製し、ホットロールにて140℃、45分混練してペレットを得た。
【0055】
次にこのペレットを使用して長さ120mm×幅10mm×厚み3mmの射出成形体を得た。得られた未硬化成形体を加熱による脱脂工程(200℃、12時間)によって脱脂した後、オートクレーブ養生(160℃、12時間、8.8気圧)によって成形体を作製した。該成形体について、曲げ強度、加熱たわみ温度および線膨張係数について試験し、比較した。その結果を表1に示す。
【0056】
〈比較例1〜5〉
比較例1〜5は、脱脂工程を行なわない以外は、実施例1〜5とそれぞれ同様にして実施して成形体を得た。得られた成形体について、実施例1〜5と同様の試験を行い、その結果を表2に示す。
【0057】
<試験方法1>
1)曲げ強度・・・JIS K 7171法準拠で行なった。
得られた長さ120mm×幅10mm×厚み3mmの成形体試験片を用意し、該試験片を距離80mmの支点間に指示し、中心部を1mm/分の速度で荷重をかけ破壊点を求めた。
【0058】
2)HTD試験(加熱たわみ温度試験)…JIS K 7191−2 A法準拠で行なった。
得られた長さ120mm×幅10mm×厚み3mmの試験片を用意し、該試験片を距離100mmの支点問に支持し、中心部上方より1.8MPaの曲げ応力をかけた状態で一定速度で昇温し、標準たわみ量に到達したときの温度を加熱たわみ温度とした。
【0059】
3)線膨張係数…ASTM D−648法準拠で行なった。
得られた上記各成形体をφ3×20mmの試験片とし、熱応力歪み測定装置(商品名;TMA/SS:セイコーインスツルメント株式会社製)を使用して、30〜250℃の温度域で線膨張係数を測定した。
【0060】
4)成形性
◎:極めて良好 射出時に容易に射出でき、しかも成形品の形が満足できるもの
○:良好 射出が若干難しいが、成形品の形が満足できるもの
×:不良 射出性に困難があり、しかも成形品の形が満足しないもの
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
上記結果から、本発明に係るいずれの成形体も、比較例の成形体と比べて曲げ強度で測定した機械的強度に優れていることがわかる。
また、加熱たわみ温度が高く、耐熱性にも優れることがわかる。さらに、線膨張係数が小さいことにより、成形体の寸法安定性にも優れていることがわかる。
特に、実施例1〜5においては、いずれも、加熱たわみ温度が280℃を超え、30℃〜250℃の測定環境において線膨張係数が100×10−7/℃以下という優れた性能を実現できた。
また、比較例3〜5は、内部にシラン変性ポリエチレン樹脂が残存しており、一定の曲げ強度の発現も認められるが、加熱たわみ温度(HTD)も180℃以下となり、高温環境下での使用が困難なものとなっている。
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る低線膨張性耐熱部材は、水を添加することなく射出成形することが可能であり、耐熱性、機械的特性、寸法安定性、加工性を必要とする各種機械部品に適用することが可能となる。
特に、本発明に係る低線膨張性耐熱部材は、300℃付近で、200×10−7/℃以下の線膨張係数を満たす必要のある、ヘッドランプやプロジェクターの遮光フードや反射鏡に適用することが可能となる。
【0065】
しかも、射出成形により部材を成形するため、遮光フードや反射鏡の取り付け部まで一体構造とすることが可能となり、寸法精度が一層向上可能となる。
また、従来のプレスや折り曲げ加工と比較し、射出成形においては乱反射させるための複雑な形状(例えば、ローレット模様など)を製造することが可能となり、従来の2次反射防止用の塗料を塗装する工程を省くことも可能となる。
【0066】
さらに、より高温で脱脂を十分に行うことにより、低線膨張性耐熱部材を無機物で構成でき、200℃を超える耐熱性、寸法安定性も確保できる。
【0067】
また、本発明に係る低線膨張性耐熱部材の製造方法は、上記本発明の低線膨張性耐熱部材を経済的にまた、簡易に、さらには有効に製造することができるものである。
Claims (11)
- 水硬性組成物を含む成形体で構成されることを特徴とする低線膨張性耐熱部材。
- 水硬性組成物と樹脂とを含む水硬性樹脂組成物からなる未硬化成形体から該樹脂を全部または一部脱脂した成形体で構成されることを特徴とする低線膨張性耐熱部材。
- 請求項2記載の低線膨張性耐熱部材において、該樹脂は、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする低線膨張性耐熱部材。
- 請求項1〜3いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該水硬性組成物には、更に、強化材が含まれることを特徴とする低線膨張性耐熱部材。
- 請求項1〜4いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該水硬性組成物は、水硬性粉体からなることを特徴とする低線膨張性耐熱部材。
- 請求項1〜4いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該水硬性組成物は、水硬性粉体と非水硬性粉体とからなることを特徴とする低線膨張性耐熱部材。
- 請求項2〜6いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、樹脂100重量部に対して、水硬性組成物を200〜900重量部含むことを特徴とする低線膨張性耐熱部材。
- 請求項1〜7いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該低線膨張性耐熱部材の加熱たわみ温度が200℃以上でかつ、線膨張係数が0〜400℃において200×10−7/℃以下であることを特徴とする低線膨張性耐熱部材。
- 請求項1〜8いずれかの項記載の低線膨張性耐熱部材において、該低線膨張性耐熱部材がランプの遮光フードであることを特徴とする低線膨張性耐熱部材。
- 水硬性組成物と樹脂とを含む水硬性樹脂組成物を所定形状に成形し、次いで、得られた未硬化成形体内部から該樹脂を全部または一部脱脂して、その後、水分を導入して養生硬化させることにより製造されることを特徴とする低線膨張性耐熱部材の製造方法。
- 請求項10記載の低線膨張性耐熱部材の製造方法において、脱脂を、樹脂の融点以上の温度で行なうことを特徴とする低線膨張性耐熱部材の製造方法。
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