JP3736497B2 - インク噴出ヘッド用オリフィスプレート及びその製造方法 - Google Patents

インク噴出ヘッド用オリフィスプレート及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインク噴出ヘッド用オリフィスプレート及びその製造方法に関し、特に、インクジェットプリンタの記録ヘッド部分のオリフィスプレート等の精度が要求される機械部品に好適に使用できる、寸法安定性及び面平滑度に優れ、複雑な形状でも容易に製造可能なインク噴出ヘッド用オリフィスプレート及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の画像処理技術の発達に伴い、電子画像の出力装置であるプリンタには、高画質化、高速化、コンパクト化、省力化などの多様なニーズに対応することが求められており、プリンタに係る技術分野は、急速な技術進歩を遂げている。
特に、インクジェットプリンタは、産業用から家庭用まで多様なニーズに対応する高機能化が実現され、プリンタの一形態として重要な位置を占めていると言える。
インクジェットプリンタの原理は、インク噴出ヘッドの先端から微量インクを高速で選択的に吐出しながら、記録体とインク噴出ヘッドとを相対的に移動させ、所要の画像・文字を記録するものである。
【0003】
インクジェットプリンタの高機能化を達成するには、プリンタ装置自体に関わる多様な技術改良から画像信号処理の改善まで、多種多様な技術開発を必要とするが、その中でも、特に、インクの吐出及び用紙等の記録体へのインク付着工程は、最終的な画質を決定する重要なポイントと言える。
このため、インクの吐出口については、インクの吐出量や吐出方向が正確に制御されること、また、吐出口付近に残留インクが無いこと、更には、長期間に渡る不使用などに起因するインク乾燥・付着を除去するためのクリーニング工程への耐久性などが求められており、このため、インク噴出ヘッドの吐出口については、形状の成形精度や材料の適切な選択などが、重要な条件として求められていた。
【0004】
このような条件を満たすため、現在のインクジェットプリンタの多くには、インク噴出ヘッドの吐出口を形成するオリフィスプレートは、金属等の材料が用いられている。
オリフィスプレートとしては、例えば、アルミナセラミックスを粉体プレスし、得られた成形体を焼結し、更に、オリフィス部などを機械加工によって精密成形する方法や、レーザ加工が可能な樹脂上にNiPメッキ層及びPdメッキ層などを積層する基盤を用いて、樹脂層側からレーザ光を利用して貫通穴を形成して寸法精度の高い吐出口とし、更にその先端部を撥水層で覆う処理を施す方法など、多様な方法が用いられてきた。
【0005】
しかしながら、アルミナセラミックスなどの焼結過程を必要とする材料においては、成形品と焼結後の製品とでは寸法変化が発生し易く、正確な寸法精度が確保できず、焼結後の製品を再度加工する必要があり、歩留まりが不安定となる。
また、樹脂層を用いる場合には、多層構造を形成したり、撥水処理など後処理を必要とするなど、製造工程が複雑化するという欠点を有していた。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題を解消し、寸法安定性に優れ、複雑な形状でも容易に製造可能なインク噴出ヘッド用オリフィスプレートであり、特に、線膨張率が少なく、面精度の高いインク噴出ヘッド用オリフィスプレートを提供することにある。
また本発明の他の目的は、上記本発明のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートを、複雑な形状かつ自由な形状で、再現性よく、寸法精度に優れた方法で、かつ後加工が不要とする簡便な方法で、経済的に製造することができるインク噴出ヘッド用オリフィスプレートの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく研究を重ねた結果、水硬性組成物を含有する材料には、インク噴出ヘッド用オリフィスプレートに必要とされる、寸法安定性、成形性、特に射出成形性に優れたものであり、しかも成形後に養生硬化させて得られる成形体は、高強度である上、線膨張が少なく、後加工も不要であることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
本発明のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートは、水硬性組成物を含有する材料により構成されることを特徴とする。
好適には、上記オリフィスプレートにおいて、前記水硬性組成物を含有する材料は、更に樹脂を含有してなることを特徴とする。
更に好適には、上記オリフィスプレートにおいて、水硬性組成物と樹脂との配合割合は、樹脂100重量部に対して、水硬性組成物が200〜900重量部であることを特徴とする。
【0009】
また、好適には上記オリフィスプレートにおいて、水硬性組成物は、水硬性粉体からなることを特徴とする。または、上記オリフィスプレートにおいて、水硬性組成物は、水硬性粉体と非水硬性粉体とからなることを特徴とする。
好適には、上記オリフィスプレートにおいて、水硬性粉体と非水硬性粉体との混合割合は、水硬性粉体と非水硬性粉体との混合粉体中、非水硬性粉体が0〜80重量%含有されることを特徴とする。
【0010】
好適には、上記オリフィスプレートにおいて、樹脂は、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂からなることを特徴とし、更に好適には前記熱可塑性樹脂はシラン変性樹脂であることを特徴とする。
より好適には、上記オリフィスプレートにおいて、水硬性組成物を含有する材料は、更に強化材を含有してなることを特徴とする。
【0011】
好適には、本発明の上記オリフィスプレートにおいて、熱線膨張係数が20×10−6以下、好適には15×10−6以下、更に好適には10×10−6以下であることを特徴とする。
また、より好ましくは、上記オリフィスプレートにおいて、面平滑度が10μm以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートの製造方法は、水硬性組成物を含有する材料を所定の形状に成形し、次いで養生硬化させることにより製造することを特徴とし、好適には、前記成形は、射出成形で行うことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートは、水硬性組成物を含有する材料から構成されるものである。
本発明のオリフィスプレートに用いる水硬性組成物を含有する材料は、水硬性組成物と樹脂とからなる樹脂含有水硬性組成物が好適である。
前記水硬性組成物と樹脂との配合割合は、該樹脂含有水硬性組成物の成形性によっても変化するが、上記樹脂100重量部に対して水硬性組成物を200〜900重量部、特に好適には550〜750重量部の量で用いることが望ましい。200重量部未満であると、得られるオリフィスプレートの強度が低下し、熱線膨張が大きくなり、900重量部を超えると樹脂含有硬性組成物中の樹脂の配合量が減ることから成形性が低下し望ましくない。
【0014】
また、本発明のオリフィスプレートに用いられる水硬性組成物は、水硬性粉体のみからなることができる。
ここで、水硬性粉体とは、水によって硬化する粉体を意味し、好ましくはポルトランドセメント、珪酸カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムフルオロアルミネート、カルシウムサルフォアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、リン酸カルシウム、半水又は無水石膏及び自硬性を有する生石灰の粉体からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体が使用される。
【0015】
前記水硬性粉体の粒径等は特に制限されないが、成形時の可使時間ならびに得られる成形体の強度の点から、平均粒径10〜40μm程度のものが好ましく、また、成形体の高強度を確保する点から、ブレーン比表面積が2500cm/g以上であることが好ましい。
【0016】
また、本発明のオリフィスプレートに用いられる水硬性組成物は、上記水硬性粉体のほかに、非水硬性粉体を含有してなることもできる。
当該非水硬性粉体は、単体では水と接触しても硬化することがない粉体を意味するが、アルカリ性若しくは酸性状態、あるいは高圧蒸気雰囲気においてその成分が溶出し、他の既溶出成分と反応して生成物を形成する粉体も含む意である。
【0017】
非水硬性粉体としては、水酸化カルシウム粉末、二水石膏粉末、炭酸カルシウム粉末、スラグ粉末、フライアッシュ粉末、珪石粉末、粘土粉末及びシリカヒューム粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体を好適に用いることができる。
これらの非水硬性粉体は、ポゾラン反応もしくはマイクロフィラー効果により、強度を増進する機能を有する。
【0018】
また、水硬性組成物含有材料を成形する際、特に複雑な形状に成形する際には、その性状が流動性に富むことが、成形性を容易にする要因であり、このためには前記非水硬性粉体の40〜60重量部が5〜20μmの球状粒子で構成されていることが流動性を高める有効な手段であり、特に好ましい。
【0019】
かかる非水硬性粉体は、上記水硬性粉体と非水硬性粉体との混合粉体である水硬性組成物中、0〜80重量%、特に好適には 50〜70 重量%含有されることが好ましい。これは、80重量%を超えて、水硬性組成物中に非水硬性粉体が含有されると、十分な機械的強度が得られないため好ましくないからである。
【0020】
本発明のオリフィスプレートに用いられる水硬性組成物を含有する材料を構成する樹脂は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を使用することができる。
本発明に用いることができる熱可塑性樹脂には、加熱により融解し、冷却すると固化する樹脂を意味し、例えばポリエチレン、ポリプロビレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステル、PEEK、PEN、パラフィンワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、脂肪酸エステル、グリセライト、変性ワックス及びシラン変性ポリオレフィン重合体等の公知の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらを1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0021】
また特に、当該熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂含有水硬性組成物の成形性をより優れたものとするため、分子量は5000以上、好ましくは10000以上であることが望ましい。なお、その上限については、分子量が大きくなると混練性に大きく影響を与えない範囲で適宜選択することが好ましい。
【0022】
上記に例示した熱可塑性樹脂のうち、特に、水または熱により架橋反応を示す熱可塑性樹脂が好んで用いられる。
すなわち本発明のオリフィスプレートを製造する際に好適に使用される射出成形法では、オリフィスプレートの成形工程においては、射出成形後の養生段階までは水を使用することなしに成形が可能であり、水との反応による架橋反応を示す樹脂の使用が可能だからである。かかる樹脂の使用によって成形体の高強度化及び耐衝撃性を向上させることができる。
【0023】
このような架橋高分子となる樹脂としては、前述のシラン変性樹脂、例えばシラン変性ポリオレフィン重合体があり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合体及びプロピレン共重合体からなる群より選ばれるシラン変性ポリマーを使用することができる。
シラン変性ポリマーの使用は、架橋によりポリマーが硬化することによって、より高強度化が図れるため、熱可塑性低分子樹脂の使用はなくてもよい。
【0024】
また、使用する樹脂がシラン変性ポリオレフィン重合体の場合は、水硬性組成物含有材料の硬化段階において、樹脂が水との接触により架橋反応が進行して硬化し、また、水硬性粉体も水との接触により同時に硬化が進行することとなる。
【0025】
この硬化した成形体中の樹脂は、架橋反応により3次元の網目構造を作り、より高強度で立体構造がより制振性を発揮することとなると推測される。
【0026】
また、上記樹脂の熱硬化性樹脂とは、熱可塑性樹脂とは逆に加熱により固化する樹脂を意味し、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂等の公知の熱硬化性樹脂が挙げられ、これらを1種またはそれ以上で用いることができ、その分子量は10000以上のものが好ましい。なお、その上限については、混練性に影響を与える恐れがあるので、混練性に影響を与えない範囲で分子量を適宜選択することが好ましい。
また、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合して一緒に用いることもできる。
【0027】
このような樹脂含有水硬性組成物は、射出成形、押出成形、加圧成形等の種々の成形に使用できるものであるが、特に射出成形に好適に使用することができる。
【0028】
好ましくは、本発明のオリフィスプレートに用いる水硬性組成物含有材料の耐衝撃性、強度、特に引張強度を改善するため、水硬性組成物には強化材を含有することが望ましい。
当該強化材としては、例えばガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等の繊維およびチタン酸カリウムウィスカー等の強化繊維が使用できる。
好適には強化繊維の長さは1〜20mm、より好適には3〜13mmであり、また太さは5〜30μmであることが、水硬性組成物の調製の容易さ及び、得られる水硬性組成物の成形性の点から好ましい。
【0029】
当該強化材の添加量については、前記樹脂100重量部に対して、1〜100重量部を添加することが好ましく、5〜70重量部を添加することがより好ましい。100重量部より多いと流動性への影響が大きく成形不良の原因となる。また、強化繊維の長さは1〜20mmが好ましく、3〜13mmがより好ましく、太さは5〜30μmが好ましい。
【0030】
本発明のオリフィスプレートに用いる水硬性組成物に添加するその他の添加物としては、離型剤等がある。離型剤を適量添加することによって、例えば射出成形後の型枠からの剥離性が良好になる。
離型剤としては、ステアリン酸、ステアリルアルコール、エチレンビスステアオロアミド、グリセリントリエステル、グリセリンモノエステル等が使用できる。
【0031】
本発明のオリフィスプレートは、線膨張係数が20×10−6以下、好ましくは15×10−6、より好ましくは10×10−6以下、更に好ましくは8×10−6以下である。
インクジェットプリンタは、多様な温度環境の下で使用され、しかも、高画質機能を有するプリンタにおいては、1ドットが4pl以下という極めて少量のインクを正確に吐出制御することが必要となる。このため、温度変化によりインク噴出ヘッドのオリフィスプレートの形状が変化すると、インクの吐出方向や速度、また、吐出時の飛翔インクの形状なども変化し、安定した画像形成が困難なものとなる。
したがって、本発明のように線膨張係数は可能な限り低く抑えることが望ましい。
【0032】
また、本発明のオリフィスプレートは、面平滑度が10μm以下、好ましくは5μm以下である。
オリフィスプレートをインク噴出ヘッドの先端に接合する際に、インクノズル部とオリフィス部とを正確に位置合わせするためには、オリフィスプレートの接合面の面平滑度を高めることが必要である。
さらに、上述のようにインクジェットプリンタが4pl以下という極めて少量のインクを正確に吐出制御することが必要であるため、吐出部の開口形状を滑らかで、かつ精度良く成形することが必要であり、オリフィスプレートにおける成形体の寸法精度を高めることが不可欠である。
【0033】
しかも、インクジェットプリンタのインク噴出ヘッドは、画像等の記録時において、記録体の進行方向に対して垂直方向に高速な往復運動を行っている。このため、インク噴出ヘッドと記録体との間に存在する空気の挙動が変化し易く、このような場合には、インクの吐出制御を正確に行うことができないという問題が発生する。これに対して、オリフィスプレートの記録体に対向する面についても面平滑度を高くすることにより、吐出部を含む周辺部の空気の流れをスムーズに設定でき、安定した画像形成が可能となる。
したがって、本発明のように面平滑度が高くなることにより、オリフィスプレートに、特に好ましく適用することが可能となる。
【0034】
上記本発明のオリフィスプレートは、上記水硬性組成物含有材料を所定の形状に成形した後、養生硬化されることにより製造される。
本発明のオリフィスプレートの一例として、図1は、オリフィスプレート1の外形を示す図であり、図1(a)は、オリフィスプレートの正面図であり、図1(b)は、図1(a)の一点鎖線Aにおける断面図を示す。2は、インクの吐出口であり、3は、オリフィスプレート1をインクヘッドの筐体に螺子等で取り付けるための開口である。インクは、図1(b)の上側からインク吐出口2を通過して下方に出射する。
【0035】
前記水硬性組成物含有材料を調製するには、上記樹脂と、上記水硬性組成物と、更に必要に応じて添加される強化材や離型材とを、上記した割合で混合して調製する。混合方法については、特に限定はなく、これらの成分を均一に混合できればよい。
【0036】
次いで、得られた水硬性組成物含有材料を用いて、所定形状に成形してオリフィスプレート成形体を製造する。
具体的には、オリフィスプレートの成形方法としては、射出成形法、押出成形法、加圧成形法等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、公知の成形法を利用することができる。特に射出成形では、三次元の任意の形状に精度よく成形できるので、カラープリンタやマルチノズル型のプリンタなどのように複数の吐出部を高精度に配置する必要のあるインクジェットプリンタに対しても、複雑な形状のオリフィスプレートを精度良く制作・提供することができる。
【0037】
しかも、射出成形を用いることにより、最初から吐出部の開口を成形したり、プリンタの機種に応じた各種の形状を有するオリフィスプレートを再現性よく、かつ寸法精度性よく製造することができる。
射出成形を用いる場合には、水硬性組成物を混練することにより、例えばペレット状に成形し、これを射出成形用の原料として用いることが好ましい。
【0038】
特に樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合には、当該熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度で樹脂含有水硬性組成物を溶融混練して、射出用ペレット状原料に成形する。
前記ペレット状原料は、射出成形機内部の加熱シリンダ内で再び溶融・混練されて、射出装置によって所望する形状の金型内に充填され、成形体を得る。
【0039】
一般に、水硬性組成物は水によって流動性が得られるが、脱型には長時間が必用であり、射出成形等の成形は不可能である。また、水硬性組成物と水が接触した場合には水和反応が進行して硬化するため、成形不良品等のリサイクルは不可能となる。
しかしながら、特に、樹脂含有水硬性組成物として、熱可塑性樹脂を使用した樹脂含有組成物は、水を使用せずに樹脂含有水硬性組成物に形状を付与して未硬化成形体を得、短時間での脱型を実現し、さらに成形段階では水を使用しないものであるため、樹脂含有水硬性組成物の水和反応は開始されず、養生前であれば何度でもリサイクルすることが可能である。
【0040】
次いで、得られた成形体の成形時には、水を使用していないことから、成形後に水分の供給を行う必要がある。
【0041】
当該成形体に水分を供給する養生方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、養生は20〜180℃で3時間以上行うことが好ましい。養生方法としては、例えば、常圧蒸気養生、高圧蒸気養生及び熱水養生からなる群より選ばれる少なくとも1種の養生方法を用いることができるが、好ましくは常圧蒸気養生、高圧蒸気養生または熱水養生等の養生法を単独で行うか、あるいは常圧蒸気養生と熱水養生との組合せ、あるいは高圧蒸気養生と熱水養生との組合せにより行うことができる。特に、本発明においては加圧条件下における熱水養生が好ましい。
【0042】
かかる養生・硬化により、樹脂に熱可塑性樹脂を用いた樹脂含有水硬性組成物によるオリフィスプレートにおいては、未硬化成形体を硬化させることができ、また、樹脂に熱硬化性樹脂を用いた樹脂含有水硬性組成物によるオリフィスプレートの場合には、樹脂部分は先の成形時において既に硬化しているため水硬性組成物の硬化を促進する機能を有する。
【0043】
このようにして得られたオリフィスプレート製品は成形後と養生硬化後に、ほとんど変形が起きず、金型にならったオリフィスプレートを得ることができる。従って、型枠にならった成形体を得ることにより、型枠の寸法精度を上げることにより、後加工が不要な精密部品の大量生産を実施することができる。
具体的には、本発明のオリフィスプレートは、線膨張係数が20×10−6以下、好適には15×10−6以下、更に好適には10×10−6以下で、かつ面精度が10μm以下、好ましくは5μm以下であり、極めて成形性のよい、また寸法精度のよいオリフィスプレートである。
【0044】
さらに、本発明のオリフィスプレートは、水硬性組成物からなるため、それ自体が撥水性を有するので、従来のように別途、撥水処理を施す必要がなく、製造工程も簡略化することが可能となる。
【0045】
【実施例】
本発明を、次の実施例、比較例及び試験例に基づき詳細に説明する。
<実施例1〜8>
表1に示す配合割合(重量部)に従って、水硬性粉体としてポルトランドセメント(平均粒径20μm、商品名 普通ポルトランドセメント、住友大阪セメント株式会社製)、非水硬性粉体としてフライアッシュ(平均粒径10μm、球状粒子、商品名 中部フライアッシュ、株式会社中部テクノ製)及びシリカヒューム(平均粒径0.2μm、商品名 マイクロシリカ、SKW株式会社製)、樹脂としてポリフェニレンサルファイド(PPS、商品名 フォートロン、ポリプラスチック株式会社製)、更に強化材としてのカーボン繊維(商品名 べスファイト、東邦テナックス株式会社製)を添加し均一に混合して、樹脂含有水硬性組成物を調製した。
【0046】
次いで、当該樹脂含有水硬性組成物を、ニーダー混練機(商品名;ラボプラストミル)にて220℃で45分間混合して、ペレットを得た。該ぺレットを使用して、30×40mmの面積を有し、平面精度が1μmであるオリフィスプレート金型を使用して、射出成形体を得た。
得られた成形体について、熱水養生(160℃、12時間)を行い、本発明のオリフィスプレートを得た。
【0047】
<比較例1〜4>
比較例1は、アルミナセラミックス(商品名 AES−23、住友化学株式会社製)をプレス成形(圧力1000から2000kgf/cm)した後、1700〜2000℃で焼結して、オリフィスプレートを得た。また比較例2は、ポリプロピレン(PP、商品名 スミコンFM、住友ベークライト株式会社製)を用いて、また比較例3は実施例4で用いたのと同様のPPSを用いて、上記実施例1と同様の方法で、オリフィスプレートを得た。比較例4は、鉄板(商品名 SS400平板、川崎製鉄株式会社製)を機械加工によって製作したオリフィスプレートである。
【0048】
<試験例>
上記実施例1〜8、及び比較例1〜4で得られたオリフィスプレートを、以下の試験に供した。
【0049】
熱膨張係数の評価
ASTM D−648に準拠して、線膨張係数の試験を行った。φ3×20mmの制振材試験片を用意し、熱応力歪み測定装置(商品名;TMA/SS:セイコーインスツルメント株式会社製)を使用して、30〜80℃の温度域で線膨張係数を測定した。
【0050】
面精度の評価
面精度は、射出成形した養生硬化する前のオリフィスプレート成形体と該成形体を養生硬化して得られたオリフィスプレートに関して、それぞれの中心部8×8mm部の面精度を三次元測定器(商品名 マイクロコードBH−V700、株式会社ミツトヨ製)により、測定した。
これらの結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
Figure 0003736497
【0052】
上記結果から本発明のオリフィスプレートに係る水硬性組成物を用いた場合には、熱線膨張率、面精度に関して、比較例と同等またはそれ以上に優れた効果を有することが確認でき、本発明のオリフィスプレートに用いる材料としては好適なものであることが分かる。
【0053】
例えば、本発明の実施例に係る熱線膨張は、比較例2、3のような樹脂による成形体と比較して、極めて小さく、アルミナセラミックスや金属比較しても同等の性能を確保することが可能であることが理解される。
ただし、実施例1と3、又は4と8とを比較して見られるように、一般的に樹脂含有水硬性組成物中の樹脂の分量が増加するに従い、熱線膨張率が増加する傾向にあることが理解される。しかも、この傾向を抑制するには、実施例1と2、又は4と5との結果比較から、カーボン繊維を含有させることが効果的であることが分かる。
【0054】
このように、本発明のような水硬性組成物を含有した材料を用いることにより、従来のセラミックや金属と同様に、熱線膨張を低く抑えることができ、温度変化による形状変化を嫌う成形品であるオリフィスプレートには、特に好適に利用することができる。しかも、実施例1〜8については、線膨張係数が20×10−6以下であることから、オリフィスプレートを成形するにはより望ましい成分配合である。
【0055】
成形後及び養生後の面精度変化量については、本発明に係る実施例は、いずれも比較例のアルミナセラミックや樹脂と比較して、同等以上の効果が達成され、面精度の変化量が低く抑えられていることが理解される。
ただし、熱線膨張率と同様に、実施例1と3、又は4と8とを比較して見られるように、一般的に樹脂含有水硬性組成物中の樹脂の分量が増加するに従い、面精度変化量が増加する傾向にあることが理解される。しかも、この傾向を抑制するには、実施例1と2、又は4と5との結果比較から、カーボン繊維を含有させることが効果的であることが分かる。
【0056】
また、実施例4、6、及び7を比較して見られるように、水硬性粉体としてポルトランドセメントの含有量が少ない場合にも、面精度変化量が増加しており、水硬性粉体が面精度変化量の抑制に効果的に機能していることが理解される。
このように、本発明のような水硬性組成物を含有した材料を用いることにより、従来のセラミックや樹脂と同等以上に、面精度変化量を低く抑えることができ、特に、実施例1〜8については、成形後も養生後も共に面精度変化量が10μm以下であることから、オリフィスプレートに好適に利用することができる。
【0057】
また、配合する樹脂の種類に関しては、実施例1と4とを比較すると、シラン変性ポリマーよりポリフェニレンサルファイドの方が、より好ましいことが理解される。
このように、表1の実験結果から、熱線膨張及び面精度変化量などの物性を総合的に考慮した場合は、実施例における適正配合は、実施例1、4、7が有効であり、成形性などの観点からは特に実施例4が好適であると判断される。
さらに、本発明のオリフィスプレートを形成する水硬性組成物は、それ自体が撥水性を有するため、従来のように別途、撥水処理を施す必要がなく、製造工程も簡略化することが可能となる。
【0058】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明のように、水硬性組成物を利用したインク噴出ヘッド用オリフィスプレートによれば、寸法安定性に優れ、複雑な形状でも容易に製造可能なオリフィスプレートを提供でき、特に、線膨張率が少なく、面精度の高いオリフィスプレートを提供することが可能となる。
また本発明のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートの製造方法によれば、上記本発明のオリフィスプレートを、複雑な形状かつ自由な形状で、再現性よく、寸法精度に優れた方法で、かつ型枠にならった製品を得ることができ、後加工が不要となる簡便な方法で、経済的にかつ大量に製造することができるオリフィスプレートの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のオリフィスプレートの一例を模式的に示した概略図である。
【符号の説明】
1 オリフィスプレート
2 インクの吐出口
3 インクヘッドの筐体に螺子等で取り付けるための開口

Claims (12)

  1. 水硬性組成物と樹脂とを含有する材料を成形してなることを特徴とするインク噴出ヘッド用オリフィスプレート。
  2. 請求項1記載のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートにおいて、水硬性組成物と樹脂との配合割合は、樹脂100重量部に対して、水硬性組成物が200〜900重量部であることを特徴とするインク噴出ヘッド用オリフィスプレート。
  3. 請求項1又は2いずれかの項記載のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートにおいて、水硬性組成物は、水硬性粉体からなることを特徴とするインク噴出ヘッド用オリフィスプレート。
  4. 請求項1又は2いずれかの項記載のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートにおいて、水硬性組成物は、水硬性粉体と非水硬性粉体とからなることを特徴とするインク噴出ヘッド用オリフィスプレート。
  5. 請求項4記載のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートにおいて、水硬性粉体と非水硬性粉体との混合割合は、水硬性粉体と非水硬性粉体との混合粉体中、非水硬性粉体が0〜80重量%含有されることを特徴とするインク噴出ヘッド用オリフィスプレート。
  6. 請求項1〜5いずれかの項記載のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートにおいて、樹脂は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを含むことを特徴とするインク噴出ヘッド用オリフィスプレート。
  7. 請求項6記載のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートにおいて、熱可塑性樹脂は、シラン変性樹脂であることを特徴とするインク噴出ヘッド用オリフィスプレート。
  8. 請求項1〜7いずれかの項記載のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートにおいて、水硬性組成物を含有する材料は、更に強化材を含有してなることを特徴とするインク噴出ヘッド用オリフィスプレート。
  9. 請求項1〜8いずれかの項記載のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートにおいて、熱線膨張係数が20×10−6以下であることを特徴とするインク噴出ヘッド用オリフィスプレート。
  10. 請求項1〜9いずれかの項記載のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートにおいて、面平滑度が10μm以下であることを特徴とするインク噴出ヘッド用オリフィスプレート。
  11. 請求項1〜10いずれかの項記載のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートを製造するにあたり、水硬性組成物を含有する材料を所定の形状に成形し、次いで養生硬化させることにより製造することを特徴とするインク噴出ヘッド用オリフィスプレートの製造方法。
  12. 請求項11記載のインク噴出ヘッド用オリフィスプレートの製造方法において、成形は、射出成形で行うことを特徴とするインク噴出ヘッド用オリフィスプレートの製造方法。
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