JP2004255664A - 孔版印刷用マスタおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】多孔性繊維層と、前記多孔性繊維層の一方の面上に形成された多孔性樹脂層とを含む孔版印刷用マスタであって、圧縮弾性率が7MPa以下、ステキヒト・サイズ度が20〜300秒であり、かつ、前記多孔性樹脂層の表面粗さ(Ra)が4μm以下である。上記本発明に係る孔版印刷用マスタの製造方法は、機械的攪拌法により多孔性樹脂層形成用塗料に気泡を含有させる工程、および、多孔性繊維層の一方の面上に、前記気泡を含有させた多孔性樹脂層形成用塗料を塗工して多孔性樹脂層を形成する工程、を含む。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、孔版印刷用マスタとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、孔版印刷用のマスタとしては、赤外線照射またはサーマルヘッドによって穿孔される感熱孔版印刷用(感熱孔版用)マスタが知られており、熱可塑性プラスチックフィルムと、該フィルムの支持体である多孔性薄葉紙等を接着剤で貼り合わせたものが一般に用いられている。また、感熱孔版用マスタを用いた孔版印刷装置としては、主に輪転式孔版印刷装置および簡易押圧式孔版印刷装置が知られており、これらの印刷装置では、マスタの支持体側から押し出されたインキが、印刷画像の画線部に対応してフィルムに開けられた孔を通して印刷用紙に転移することにより印刷が行われる。
【0003】
従来の孔版印刷においては、支持体側から押しだされるインキの粘度が高く、印刷用紙に浸透するのに時間がかかるため、印刷直後の印刷物に触れると指等が汚れ、また、多色印刷の際の2色目以降の印刷や両面印刷における裏面の印刷を続けて行うと、乾燥が不十分な印刷用紙上のインキが印刷機のゴムロール等に転移し、さらにそのインキが次の印刷用紙に再転移することで印刷物が汚れるという問題があった。それ故、乾燥を十分に行うため、次工程に移るまでに一定時間(たとえば10〜20分程度)待たなければならなかった。
【0004】
インキの乾燥性を高めるためには、低粘度のインキを使用して印刷用紙へのインキの浸透性を高めることが有効である。そのような低粘度のインキ用のマスタとして、平均孔径が30μm以下の多孔質体を用い、インクを浸透させて孔を選択的に目止めすることにより版パターンを形成する孔版印刷版(特許文献1)、および、非弾性樹脂フィルムからなり、0.001〜1Pa・sの低粘度インキを用いた孔版印刷に用いられる、透気度1〜600秒、厚み1〜100μmの孔版印刷用マスタが知られていた(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−48105号公報
【0006】
【特許文献2】
特開2002−2140号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献に記載のマスタは、インキの乾燥性を向上させるために低粘度インキを用いることを意図して開発されたものであり、多孔性材を用い選択的に孔を閉塞してインキの通過を阻止することによりインキ透過性を制御している。しかし、多孔性樹脂層表面および印刷用紙表面には凹凸があり、印刷用紙にインキが転移する際に、その凹部が十分に接触しないために白抜けが発生し、ベタ均一性や細字再現性に劣る、あるいは、部分的にインキが過剰に転移して、ベタ印刷部分に濃度ムラが発生する、という問題があった。
そこで本発明は、印刷時のベタ均一性や細字再現性に優れ、濃度ムラのない印刷物を得ることができる孔版印刷用マスタ、その製造方法、およびそれを用いた孔版印刷用製版物の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、孔版印刷用マスタの多孔性繊維層に強度補強以外のインキ保持性とインキ供給性を持たせるという観点から検討を加え、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、多孔性繊維層と、前記多孔性繊維層の一方の面上に形成された多孔性樹脂層とを含み、圧縮弾性率が7MPa以下、ステキヒト・サイズ度(耐水度:JIS P8122)が20〜300秒であり、かつ、前記多孔性樹脂層の表面粗さ(Ra)が4μm以下である孔版印刷用マスタに関する。
別の本発明は、上記本発明に係る孔版印刷用マスタの製造方法であって、(1)機械的攪拌法により多孔性樹脂層形成用塗料に気泡を含有させる工程、および(2)多孔性繊維層の一方の面上に、前記気泡を含有させた多孔性樹脂層形成用塗料を塗工して多孔性樹脂層を形成する工程、を含む孔版印刷用マスタの製造方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係る孔版印刷用マスタ(以下、単に「マスタ」と記す。)は、多孔性繊維層と、その一方の面上に形成された多孔性樹脂層とを含む。
多孔性繊維層としては、たとえば、セルロース繊維を主成分とする薄葉紙または塗工紙等の紙類や、ポリエステル繊維等の合成繊維を混抄した抄造紙、あるいは、織布、不織布等の布類を使用することができる。なかでも、針葉樹や広葉樹等の木材を原料とするパルプ(機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプを含む)を主成分とした紙類を好ましく使用できる。特に、広葉樹を原料とするパルプを多く含むことが好ましい。従来、マスタの多孔性繊維層として、コウゾ、ミツマタ、麻等の靭皮繊維を主原料とした薄葉紙等が使用されてきたが、木材を原料とするパルプを主成分とした紙類を多孔性繊維層に使用すると、従来と比べて多孔性繊維層表面の空隙が少なく、気泡を含有する多孔性樹脂層形成用の塗料が多孔性繊維層に埋没することが少ないので、マスタ表面の樹脂層を凹凸なく形成することが可能である。そのため、サーマルヘッドでの製版時に、凹凸による熱伝達不良を起こすことなく、製版不良になることが少ない。多孔性繊維層に使用される紙類は、木材を原料とするパルプを50質量%以上含むものであることが好ましい。
【0010】
本発明において、多孔性繊維層に求められる特性は、フィルム支持体としての強度だけではなく、(1)表面の空隙が少なく、気泡を含有する多孔性樹脂層形成用塗料の塗工の際に、多孔性繊維層に塗料が埋没しにくいこと、(2)多孔性繊維層中に十分なインキを保持し、かつ、多孔性繊維層中をインキが通過しやすく、多孔性樹脂層に円滑にインキを供給できること、(3)表面の凹凸が少なく、多孔性樹脂層の表面孔の閉塞性に影響を与えないこと、が含まれる。
【0011】
そのため、多孔性繊維層の密度は0.5〜1g/cm3の範囲であることが好ましく、透気度は3〜100秒の範囲であることが好ましく、表面粗さRaは1〜4μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、それぞれ、密度は0.6〜0.9g/cm3、透気度は3〜50秒、表面粗さRaは1.2〜3μmの範囲である。また、低粘度インキの保持性および供給性の観点から、多孔性繊維層のステキヒト・サイズ度は10〜150秒であることが好ましく、10〜50秒であることがより好ましい。さらに、多孔性繊維層の坪量は、印刷機内におけるマスタの詰まりや、印刷用ドラムへの巻装時のマスタのシワが発生しないのであれば特に制限されないが、十分なインクを保持するためには30g/m2以上であることが好ましい。一方、排版時のインキ消費量の観点から、多孔性繊維層の坪量は130g/m2以下であることが好ましく、90g/m2以下であることがより好ましく、70g/m2以下であることが一層好ましい。
多孔性繊維層がこれらの特性、特に上記ステキヒト・サイズ度を有することにより、粘度が0.001〜1Pa・sであるような低粘度のインキを保持し、かつ、多孔性樹脂層に円滑に供給することができる。
【0012】
多孔性樹脂層の形成に使用可能な樹脂としては、種々の分子量およびケン化度のポリビニルアルコールおよびその誘導体;メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、ポリアクリルアミドおよびその誘導体、ポリエチレングリコール等の水溶性樹脂;ポリエチレン等のポリオレフィン類;エチレン−メタクリル酸共重合体等のアイオノマー類;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ウレタン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体(SBRラテックス)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBRラテックス)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MBRラテックス)、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体、ポリ塩化ビニリデン等の水分散型樹脂、等が例示されるが、これらに限定されるものではない。これらの樹脂は、単独で用いられる他、必要に応じて2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
多孔性樹脂層は、サーマルヘッド等による熱溶融による孔閉塞を可能とするために、実質的に熱可塑性樹脂からなることが好ましい。すなわち、好ましい実施形態において、多孔性樹脂層は、熱可塑性樹脂に他の熱可塑性ではない樹脂類等を、熱溶融やインキ通過性を妨げない範囲内で含むことができる。また、細線再現性の観点からは、樹脂の軟化点(軟化温度)がなるべく狭い範囲にあることが好ましい。
【0014】
熱可塑性樹脂は、熱により多孔性樹脂層の孔が閉塞できるものであればよく、その種類について特に制限はされないが、特に種々の分子量およびケン化度のポリビニルアルコールおよびその誘導体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のアイオノマー類、ポリオレフィン類、ポリアクリル酸エステル、ポリウレタン等が好ましい。
熱可塑性樹脂の軟化点については、熱可塑性樹脂の熱溶融が実用上可能であるように、製版方法等に応じて適宜調節すればよいが、低すぎるとマスタがブロッキングを起こす場合があるので、軟化点は50℃以上であることが好ましい。一方、軟化点が高すぎると、たとえば熱溶融による製版にサーマルヘッドを使用する場合に、サーマルヘッドの発熱温度を高くするためにサーマルヘッドへの投入エネルギーを大きくする必要が生じ、これによってサーマルヘッドの耐久性に影響を及ぼす場合があるので、軟化点は260℃以下であることが好ましい。
【0015】
上記のような樹脂からなる多孔性樹脂層面の表面粗さ(Ra)は、印刷用紙にインキを転移させた画像の均一性を向上させるために、4μm以下であることが必要である。これにより、多孔性樹脂層表面の凹凸が小さくなるので、多孔性樹脂層表面の凹み部分が印刷時の圧力によって印刷用紙表面に接触しやすくなる。この表面粗さが4μmを超えると、多孔性樹脂層表面あるいは印刷用紙表面の凹み部分が印刷時の圧力によっても接触しにくくなり、その部分にインキが転移せず印刷物に白抜けが発生し、ベタ均一性や細字再現性の低下につながる。
【0016】
多孔性樹脂層の表面粗さ(Ra)を低くする方法としては、たとえば、次のような方法が挙げられる。(1)気泡を含有する多孔性樹脂層形成用の塗料に高い流動性を与える。(2)平滑度の高い多孔性繊維層を使用する。(3)多孔性樹脂層表面の孔を小さくする。(4)多孔性樹脂層形成後の孔版印刷用マスタの表面を平滑化処理する(具体的な処理方法については後述)。
【0017】
多孔性樹脂層の表面の平均孔径は、インキ通過性を確保しベタ均一性や細字再現性を良好にする観点から2μm以上であることが好ましく、孔閉塞性の確保およびインキ転移量制御の観点から、20μm以下であることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。上記好ましい範囲を超えて孔が大きすぎると、熱溶融による製版時に、孔を閉塞しきれない部分が一部に生じ始め、そこからインキが通過してしまい、印刷物の白地になるべき部分にピンホール状にインキ転移部が生じてしまう傾向があり、また、インキの通過量が過剰となって印刷画像に滲みが発生する傾向があるため好ましくない。一方、孔が小さすぎる場合は、多孔性樹脂層の孔が連続孔になっていない部分が増加してインキが通過しにくくなるため好ましくない。
【0018】
多孔性樹脂層の孔部分の占める割合は、細字再現性、ベタ均一性および全体の濃度を確保する観点から30%以上であることが好ましく、多孔性樹脂層の強度の観点から90%以下であることが好ましく、35〜75%であることがより好ましい。上記範囲を超えて孔の占める割合が大きいと、製版時や印刷時に多孔性樹脂層が剥がれてしまう恐れがある。
【0019】
多孔性樹脂層は、主成分となる上記樹脂の他に、必要に応じて各種助剤を適宜含んでいてもよい。各種助剤としては、公知の顔料、粘度調整剤、分散剤、染色剤、潤滑剤、架橋剤、可塑剤などが挙げられる。
なかでも、多孔性樹脂層中には、溶融した多孔性樹脂がサーマルヘッド等に融着しないように、離型剤が含まれていることが好ましい。離型剤としては、シリコーン系、フッ素系、ワックス系、または界面活性剤系の1種または2種以上からなる離型剤や、シリコーンリン酸エステル等が挙げられる。特に、気泡安定性の観点から、HLB値が5以上のシリコーン系界面活性剤、または、粒子径が1μm以下のワックス系離型剤であることが好ましい。HLB値9以上のシリコーン系界面活性剤、粒子径が0.1μm以下のワックス系離型剤であればさらに好ましい。シリコーン系界面活性剤は、一般的に消泡剤として利用されることも多く、気泡を含有させた多孔性樹脂層形成用塗料(以下、「樹脂混合液」と記す。)中の気泡の安定性を低下させ、塗工・乾燥後の多孔性樹脂層表面の孔が大きくなったり、孔が破壊されて連通孔が形成できなかったりする恐れがあるが、HLB値5以上のシリコーン系界面活性剤の場合は、樹脂混合液中の気泡の安定性をほとんど低下させることがなく、多孔性樹脂層表面の孔が大きくなることもない。
【0020】
HLB値とは、非イオン性界面活性剤の親水性と親油性の割合のことで、以下の式によって表される。
【数1】
非イオン界面活性剤のHLB=親水基の質量%×(1/5)
=(親水基の分子量/界面活性剤の分子量)×(100/5)
HLB値の低い非イオン界面活性剤は、消泡剤として使用され、HLB値が高い非イオン界面活性剤は、乳化剤や洗浄剤として使われることが多い。HLB値の高いシリコーン系界面活性剤は、シリコーンの末端が親水基で変性されているものである。このHLB値の高いシリコーン系界面活性剤は、気液の界面に配列し、泡安定剤的な働きをする。
【0021】
シリコーン系界面活性剤の配合量は、水分散型の樹脂混合液の固形分100質量部に対して、固形分で0.5〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部、さらに好ましくは1〜5質量部である。シリコーン系界面活性剤の添加量が15質量部を超えて多量になっても、その効果は飽和し、かえって経済的に不利になることが多い。
ワックス系離型剤は、水にその粒子が分散されたエマルジョンのものが多い。樹脂混合液中にワックス系離型剤を添加した場合、エマルジョンの粒子径が大きくなると気泡含有樹脂混合液中の気泡が大きくなり、その結果、多孔性樹脂層表面の孔が大きくなる。したがって、気泡を取り囲む樹脂混合液の膜に大きな粒子径のエマルジョンが存在すると、局部的に樹脂層の薄い部分ができ、泡の安定性が低下する恐れがあるが、ワックス系離型剤の粒子径が1μm以下であれば、泡安定性に与える影響が小さく好ましい。
【0022】
上記のような多孔性樹脂層中に離型剤を含有させる方法以外に、多孔性樹脂層の上に離型剤を含む離型層を設けるようにしてもよい。しかし、前記のように多孔性樹脂層中に離型剤を含有させると、離型層を設ける工程を必要としないので、生産性が向上し非常に経済的である。
【0023】
上記の多孔性繊維層と多孔性樹脂層とを含む本発明のマスタは、圧縮弾性率が7MPa以下であり、ステキヒト・サイズ度が20〜300秒である、という特性を有している。マスタの圧縮弾性率が7MPa以下であることによって、印刷時の圧力により孔版印刷用マスタが圧縮され、多孔性繊維層および多孔性樹脂層に保持されているインキがマスタから押し出され、インキ転移量が増えて印刷用紙表面の凹部に転移しやすくなり、白抜けが発生することなく、ベタ均一性や細字再現性に優れた印刷物を得ることができる。また、印刷時に多孔性樹脂層表面と印刷用紙表面との間の隙間が小さくなるため、過剰なインキがその隙間に転移してしまうことがなく、ベタ印刷部分に濃度ムラがなく、印刷品質に優れた印刷物を得ることができる。マスタの圧縮弾性率は、ベタ均一性および細字再現性をより一層高めるために、さらに好ましくは1〜5MPaの範囲が選ばれる。
【0024】
低粘度のインキを保持し、印刷時にその適量を供給するため、マスタのステキヒト・サイズ度は20秒以上が選ばれる。このステキヒト・サイズ度が20秒未満の場合には、印圧を低くしてもマスタのインキが過剰に転写してしまい、インキの滲みや濃度ムラ、インキの乾燥不良による汚れ等につながるため好ましくない。一方、ステキヒト・サイズ度が300秒を越える場合には、多孔性樹脂層に供給するインキ量が少なくなり、白抜けや細字再現性が劣るため好ましくない。印刷物の品質をより一層高めるために、マスタのステキヒト・サイズ度は、好ましくは、30〜100秒が選ばれる。なお、印圧を過剰にかけてインク供給量を増やしても、濃度ムラを生じる場合があり、印刷終了後にマスタに残存するインクが多くなって廃棄の手間がかかるために経済的でない。
【0025】
マスタの圧縮弾性率を低くする方法としては、たとえば、次のような方法が挙げられる。(1)多孔性樹脂層の密度を低くする。(2)密度の低い多孔性繊維層を使用する。(3)多孔性樹脂層の主成分として圧縮弾性率の低い樹脂を使用する。マスタのステキヒト・サイズ度を20秒以上にする方法としては、たとえば、次のような方法が挙げられる。(1)多孔性樹脂層の密度を低くする。(2)多孔性樹脂層の塗工量を増加させる。(3)密度、坪量の高い多孔性繊維層を使用する。
【0026】
マスタの断面の構造を走査型電子顕微鏡で観察すると、多孔性樹脂層の気孔は、多孔性繊維層の表面から多孔性樹脂層の表面へと連通する連通孔を形成しており、多孔性繊維層においても繊維間に多くの空隙がある。この構造により、多孔性繊維層および多孔性樹脂層にインキが保持され、さらにインキが浸透・通過することができるので、印刷用紙へとインキが転移することができる。
【0027】
マスタの透気度は、インキ通過量を適性に制御する観点から、100秒以下であることが好ましい。より好ましくは60秒以下であり、さらに好ましくは30秒以下である。マスタの透気度が100秒以下であれば、印刷用紙への浸透速度が速い低粘度(0.001〜1Pa・s)のインキの通過量を適正量に抑制して印刷することが可能となり、かつ、印刷の際にインキ転移量の不足による白抜けが発生することがなく、ベタ均一性や細字再現性が良好となる。一方、マスタの透気度が低すぎると、マスタに保持されるインキ量が多くなって印刷時に過剰のインキが印刷紙へ転写されてしまい、インキの滲み、濃度ムラ、インキの乾燥不良による汚れ等につながる恐れがあるため、3秒以上であることが好ましい。
【0028】
マスタの坪量は、マスタのインキ保持量および印刷用ドラムへのマスタ巻装時のシワ発生防止の観点から35g/m2以上であることが好ましい。一方、マスタの坪量に上限はないが、排版時のインキ消費量の観点から150g/m2以下であることが好ましく、100g/m2以下であることがより好ましく、80g/m2以下であることが一層好ましい。
【0029】
多孔性樹脂層の形成方法は、特に限定はされないが、樹脂を主成分として含む混合液である上述の樹脂混合液を多孔性繊維層の一方の面に塗工し、樹脂混合液に形成された多数の微細気孔を含有する状態で乾燥させることによって好ましく得ることができる。気泡を形成、含有させる方法や設備、塗工方法にも、特に制限はない。
具体的には、多孔性樹脂層を多孔性繊維層上に形成する方法として、たとえば次のような方法が挙げられる。(1)泡沫を包含する樹脂混合液を多孔性繊維層上に塗布し、塗布中あるいは塗布後に気体を発生させて気孔を形成する方法、(2)互いに接することにより、気体が発生する2種以上の成分のうち、少なくとも1種を多孔性繊維層に予め塗工しておき、この塗工面に他の成分を含む樹脂混合液を塗工し、発泡皮膜化させる方法、(3)1気圧より高い気圧下で気体を溶解せしめた樹脂混合液を常圧下で多孔性繊維層に塗布し、発泡させて気孔を形成する方法、(4)機械的攪拌を施して多数の気泡を形成、分散させた気泡含有樹脂混合液を多孔性繊維層に塗布し、これを乾燥させる方法。上記(1)〜(4)のいずれの方法でもよいが、(4)の方法が最も好ましい。
【0030】
そこで、本発明に係るマスタの製造方法は、以下の工程を含んでいる。
(1)機械的攪拌法により樹脂混合液に気泡を含有させる工程、および、
(2)多孔性繊維層の一方の面上に、前記気泡を含有させた樹脂混合液を塗工して多孔性樹脂層を形成する工程。
【0031】
上記の樹脂混合液は、主成分である樹脂と、必要に応じて添加される上記の各種助剤とを、公知の方法により混合して得ることができる。
樹脂混合液の塗工量は、得られる多孔性樹脂層表面の平滑性、インキ通過性などの観点から適宜設定すればよいが、一般に、乾燥重量で5〜40g/m2の範囲とするのが好ましく、より好ましくは7〜20g/m2である。塗工量が乾燥重量で5g/m2より少ない場合は、多孔性繊維層の表面粗さを十分に被覆するのが困難になり、適正な平滑性を持った表面の孔版印刷用マスタが得られない傾向がある。一方、乾燥重量が40g/m2を超えるような場合は、多孔性樹脂層の厚さが過大となり、インキ通過性が低下する傾向がある。さらには、多孔性樹脂層内の結合強度が低下して、通常の取り扱いにおいて傷や塗工層剥離が発生しやすくなり、十分な強度を得られない傾向がある。
【0032】
気泡を含有する樹脂混合液の気泡含有状態にも、特に制限はないが、気泡含有液の原液に対する体積比(以下、「発泡倍率」という。)が1.5倍〜10倍であることが好ましく、2倍〜5倍であることがより好ましい。ここで発泡倍率は、気泡含有樹脂混合液中の気泡含有率を示す尺度であり、発泡倍率が大きくなると、気泡を構成する樹脂膜(壁)の厚さが薄くなることを意味している。また、同じ発泡倍率の場合は、発泡前の樹脂混合液の固形分の濃度が低いほど、樹脂膜が薄くなることを意味している。このように、樹脂膜が薄くなると、得られる多孔性樹脂層の強度を十分なレベルに維持することが困難になることがあるため、発泡倍率は要求性能に応じて適宜設定することが好ましい。
【0033】
気孔の大きさは、気泡形成・分散処理前の樹脂混合液の組成、すなわち配合成分の種類や配合比率、あるいは前記の発泡倍率等の発泡条件、塗工方式や塗工条件など、種々の要因によって影響される。したがって、気孔の大きさは、これらの条件や要求性能に応じて、適宜設定することができる。なお、機械的攪拌によって得られた気泡含有樹脂混合液中の気泡の大きさが小さいほど、塗工・乾燥後の多孔性樹脂層表面の気孔も小さくなる。
【0034】
多孔性樹脂層の孔部分の占める割合は、気泡形成・分散処理前の樹脂混合液の固形分濃度、あるいは、上記の発泡倍率等の発泡条件、塗工方式や塗工条件、上記の気孔の大きさなど、種々の要因によって影響されるが、その要求性能に応じて適宜条件を設定すればよい。この孔部分の占める割合は、(1)樹脂混合液の樹脂固形分が低い、(2)上記の発泡倍率が高い、(3)樹脂混合液中の気泡が大きい、ほど高くなる傾向にある。
【0035】
樹脂混合液に気泡を形成し分散させる発泡方法としては、特に制限はないが、たとえば、遊星運動をしつつ回転する攪拌翼を有するいわゆる製菓用の発泡機、一般に乳化分散等に利用されているホモミキサー、カウレスディゾルバー等の攪拌機、密閉系内に空気と樹脂混合液の混合物とを連続的に送入しながら機械的に攪拌を施し、空気を微細な気泡として分散、混合できる装置(たとえば米国ガストンカウンティー社製、オランダのストーク社製)等の連続発泡機を用いることができる。
【0036】
また、樹脂混合液には、機械的攪拌設備の性能を補ってより高い気泡含有状態を得る目的、あるいは、気泡含有樹脂混合液中の気泡の安定性を向上する等の目的で、整泡剤、発泡剤と称される添加剤を、広範な界面活性材料の中から適宜選択して配合することが可能である。このような界面活性剤としては、樹脂混合液の流動性や塗工作業性を考慮して適宜選定すればよいが、特に樹脂混合液の発泡性を高める効果や分散・含有させた気泡の安定性を向上させる効果が高いことから、高級脂肪酸、高級脂肪酸変性物、高級脂肪酸のアルカリ塩等を好ましく使用できる。整泡剤や発泡剤として添加される界面活性剤の配合量(固形分)は、たとえば水分散型樹脂混合液の場合、その固形分100質量部に対して0〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。界面活性剤の配合量が30質量部を超えて多量になっても、その効果は飽和し、かえって経済的に不利になることが多い。
【0037】
樹脂混合液の塗工方式は、メイヤーバー方式、グラビアロール方式、ロール方式、リバースロール方式、ブレード方式、ナイフ方式、エアーナイフ方式、押し出し方式、キャスト方式等の既知の方法から、任意に選定することができる。
【0038】
以上のようにして、多孔性繊維層の一方の面上に樹脂混合液を均一に塗工した後、乾燥させて、多孔性樹脂層を得ることができる。
【0039】
この段階でも表面平滑性が高い状態にあるが、さらに表面平滑性を上げるため、この多孔性樹脂層に仕上げ処理を施してもよい。仕上げ処理の装置としては、たとえば金属製ロール2段以上で構成されるマシンカレンダー、または金属製ロールおよび樹脂製ロール、あるいは金属製ロールとコットン製ロールなどを適宜組み合わせて構成されるスーパーカレンダー等が挙げられる。ただし、過度の圧力下で平滑仕上げ処理を施すと、多孔性樹脂層および多孔性繊維層の緻密化が生じたり、表面の気孔の変形や破壊が起こることがあり、インキの浸透・通過ができなくなることもある。したがって、このような観点から、平滑仕上げ処理の処理条件を適宜選定することが好ましい。
【0040】
マスタの製版は、所望の印刷画像の非画線部に対応するマスタの多孔性樹脂層の孔を閉塞させてインキ非浸出部を形成することにより行われる。孔を閉塞させる方法としては、特に限定されず、熱溶融による方法、あるいは樹脂またはワックスを転写させる方法、あるいは光硬化性液体を塗布または含浸させた後、その液体を硬化させて孔を塞ぐ方法等が挙げられ、なかでも熱溶融による方法が好ましい。さらに、上記の熱溶融による方法は、サーマルヘッド、電磁波(レーザー光等)照射等の加熱手段によるのが好ましい。サーマルヘッドとしては、ラインタイプのサーマルヘッドでもよいし、シリアルタイプのサーマルヘッドでもよい。サーマルヘッドの抵抗体は、主にスパッタリングにより形成された薄膜サーマルヘッドでもよいし、厚膜印刷法により形成された厚膜サーマルヘッドでもよい。
【0041】
図1に、製版方法の一例として、サーマルヘッドを用いた熱溶融によりマスタを製版している状態を模式的に示す。多孔性繊維層11と多孔性樹脂層12を含むマスタ1は、任意の送りローラ(図示せず)によりサーマルヘッド2とプラテンローラ3とから構成される画像形成部に送られる。そして、サーマルヘッド2の発熱素子4が、画像信号に基づき発熱することにより、マスタ1の表面(製版面)、すなわち多孔性樹脂層12が溶融され、孔が閉塞された閉塞部(非画線部)5が設けられる。
【0042】
以上のようにして得られた製版物(製版されたマスタ)の製版面(多孔性樹脂層面)を印刷用紙と重ね、反対側である非製版面(多孔性繊維層側)からインキを供給すると、製版面の非製版部の孔(閉塞されておらず、画線部に相当する)からインキがしみ出し、印刷用紙に転移して孔版印刷が行われる。上記製版物において、非画線部に相当する孔は、インキの浸出を妨げるために、少なくとも製版面において閉塞されて、製版物の一方の面から他方の面に貫通しない孔となっていればよい。
【0043】
本発明に係るマスタは、粘度が0.001〜1Pa・sのインキを用いた孔版印刷用として適している。粘度が1Pa・sを超えるインキを用いた場合、多孔性繊維層や多孔性樹脂層においてインキが通過できない部分が生じることにより、印刷物のベタ部に白点が多発したり、細字部にてカスレが生じて文字の判読が出来なかったりするので、好ましくない。一方、粘度が0.001Pa・s未満のインキは、インキとして製造するのが非常に困難であったり、印刷機内においてインキ漏れ等の不具合が顕著に生じたりするため、好ましくない。
【0044】
インキに配合される着色剤は、顔料でも染料でも良い。多孔性樹脂層の平均孔径によっては顔料では目詰まりを起こす恐れがあるため、その場合は染料を使用することが好ましい。その他、インキのビヒクル、添加剤などの成分は特に限定されることはなく、また、W/O型孔版印刷用エマルションインキに限定されることもなく、たとえばインクジェットやスタンプ用の水性あるいは油性インキなどを用いることもできる。乾燥性の面からは、特に油性インキが好ましい。
【0045】
製版物へのインキの供給方法は、特に限定はされず、たとえばインキ含浸可能な連続気泡を有する材質(たとえば、天然ゴム、合成ゴム系のスポンジゴムや合成樹脂発泡体)にインキを含浸させ、これを上記製版物の非製版面と重ね、次に製版面と印刷用紙を合わせ、押圧することで印刷用紙にインキが転移して孔版印刷を行なうことができる。
【0046】
具体的な印刷方法も、特に限定されないが、周知の輪転式孔版印刷装置の印刷用ドラムに、製版物を巻装し、印刷ドラム内部からインキを供給して連続印刷を行ってもよいし、家庭用の簡易孔版印刷装置を用いて、押圧印刷してもよい。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。たとえば、サーマルヘッドの解像度や種類は、以下に記載のもの以外でも構わないし、離型剤等の各種配合成分の種類や処方も、以下に記載のもの以外でもよい。
実施例中に記載した測定および評価は、下記の方法で行った。各物性の測定は、ISO規格環境下(23℃、相対湿度50%)で被測定サンプルを24時間放置した後に行った。
【0048】
(1)サーマルヘッド製版方法
作製した各マスタを、製版装置により、印刷画像の非画線部に対応して多孔性樹脂層に熱がかかりその部分の孔を塞いで非印字部とする方法で、サーマルヘッド製版し、製版物を得た。用いた製版装置は、任意のサーマルヘッドの装着が可能で、サーマルヘッド駆動条件や製版圧条件等を任意に設定することができるものであり、解像度300dpiのコーナーエッジ式の熱転写印字用サーマルヘッドを用いた。印刷原稿は、6〜16ポイントの文字部分とベタ部分とが混在した印字率25%の原稿とした。
【0049】
(2)孔閉塞性の評価
上記(1)で得られた製版物について、孔の閉塞度合いをSEMにより観察して、下記の基準で評価した。
○:孔が完全に塞がれており、使用可能
△:孔が塞がれていない部分も僅かにあるが、実用上使用可能
×:孔が塞がれていない部分が多く、非印字部にピンホール状にインキが印刷用紙に転移するため、使用不可能
【0050】
(3)印刷方法
上記(1)で得られた製版物を、孔版印刷装置(理想科学工業株式会社製 商標リソグラフ)の印刷用ドラムに巻装し、孔版印刷を行った。印刷には、実施例4を除き粘度0.01Pa・sの顔料インキを用い、実施例4では粘度0.01Pa・sの染料インキを用いた。
【0051】
(4)ベタ均一性、細字再現性、濃度ムラの評価
上記(3)で得られた印刷物の、ベタ均一性および細字再現性を、下記の基準により評価して、使用可否の判断を行った。
[ベタ均一性:印刷物のベタ部分の目視評価]
○:ベタ部分に白点がなく使用可能
△:ベタ部分に若干の白点があるが、実用上使用可能
×:ベタ部分の白点が目立ち使用不可
[細字再現性:印刷物の文字部分の目視評価]
○:文字のインキ転移像に滲みもなくシャープであり使用可能
△:わずかな滲み、またはかすれがあるが、実用上使用可能
×:滲み、またはかすれが目立ち、文字として判読出来ず使用不可
[濃度ムラ]
○:ベタ部分に濃度ムラがなく使用可能
△:ベタ部分に若干の濃度ムラがあるが、実用上使用可能
×:ベタ部分の濃度ムラが目立ち使用不可
【0052】
(5)表面粗さ
各マスタ(多孔性樹脂層側)と多孔性繊維層の表面粗さ(Ra)を、万能表面形状測定器(商標 SE−3C)を用いて測定した。接触型端子を使用し、送り速さを0.1mm/s、基準長さを8mmとして測定を行った。
(6)圧縮弾性率
JIS K 7220「硬質発泡プラスチックの圧縮試験方法」に準拠して、各マスタの圧縮弾性率を測定した。ただし、試験片の高さ(厚さ)に関しては、孔版印刷用マスタをそのまま試験に供した。圧縮速度は20μm/min.とした。
【0053】
(7)透気度
J.TAPPI No.5に準拠し、王研式平滑度試験機を用いて、各マスタの透気度(空気100mlが紙の単位面積を通過するのに必要な秒数)を測定した。
(8)平滑度
J.TAPPI No.5に準拠し、王研式平滑度試験機を用いて、多孔性繊維層の平滑度(紙表面とガラス製標準面との間を通って、10mlの空気が密閉減圧された器内に進入するのに要する時間)を測定した。
【0054】
(9)多孔性樹脂層表面の平均孔径、孔面積率
各マスタの多孔性樹脂層の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくは光学顕微鏡を使用して撮影した後、表面の気孔の輪郭を正確に透明フィルム上に黒色のペン等で描き写し、これを画像解析装置(商標 イメージアナライザーV10、(株)東洋紡製)を用いて測定した。各マスタの多孔性樹脂層表面の気孔形状は、必ずしも真円でないので、平均孔径は画像解析で得られる気孔の輪郭内の面積をもとに、円相当径に換算して平均孔径とした。また、孔部分の占める割合(孔面積率)は、各マスタ表面の全面積に対する、気孔による開孔部分の占有する面積の割合であり、次式によって算出した。(孔部分の割合%)=(気孔による開孔部分の占有する面積)/(孔版印刷用マスタ表面の全面積)×100
【0055】
(10)ステキヒト・サイズ度
JIS P8122に従い、各マスタおよび多孔性繊維層のステキヒト・サイズ度(秒)を測定した。
(11)坪量
JIS P8124に従い、各多孔性繊維層とマスタの坪量(g/m2)を測定した。
【0056】
[実施例1]
以下の表1に示す樹脂混合液(1)(塗料固形分25%、塗料粘度3000cps)を、連続発泡機(商品名:ターボホイップTW−70、愛工舎製作所社製)を使用して、攪拌速度1200rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が3倍となるように発泡処理を施した。発泡処理後直ちに、得られた気泡含有樹脂混合液を、以下の表2に示す多孔性繊維層(上質紙)の表面上に、アプリケーターバーを用いて乾燥後の塗工量が10g/m2になるように塗工・乾燥させて多孔性樹脂層を形成し、マスタを得た。得られたマスタの各物性について、表3にまとめて示す。表2の「種類」の欄において、上質紙および両面塗工紙はパルプ配合紙であり、Lは広葉樹、Nは針葉樹、Bは晒パルプ(Bleached Pulp)、KPは化学パルプの中のクラフトパルプを示し、数値は配合割合(質量%)を示す。
【0057】
このマスタをサーマルヘッドにより製版し、得られた製版物と粘度が0.010Pa・sの顔料インキを使用して、孔版印刷を行った。製版性と印刷性能の結果を、表3に併せて示す。
【0058】
[実施例2]
樹脂混合液(2)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度1000rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が3倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層を用いてマスタを作成し、さらにその製版物を評価した。
【0059】
[実施例3]
樹脂混合液(3)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度200rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が3倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層を用いてマスタを作成し、さらにその製版物を評価した。
【0060】
[実施例4]
樹脂混合液(4)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度1000rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が2倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層を用いてマスタを作成し、さらにその製版物を評価した。
【0061】
[実施例5]
樹脂混合液(6)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度1000rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が1.5倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層を用いてマスタを作成し、さらにその製版物を評価した。
【0062】
[実施例6]
樹脂混合液(5)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度1000rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が3倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層上に多孔性樹脂層を形成した。得られた多孔性樹脂層上に、ポリエーテル変性シリコーンオイル(GE東芝シリコーン(株)製、製品名TSF400)5質量部およびメタノール95質量部からなる離型剤溶液をワイヤーバーで塗布し、乾燥後の塗工量が0.1g/m2の離型層を形成してマスタを作成し、その製版物を評価した。
【0063】
[比較例1]
樹脂混合液(7)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度700rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が3倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層を用いてマスタを作成し、さらにその製版物を評価した。
【0064】
[比較例2]
樹脂混合液(1)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度1000rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が1.2倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層を用いてマスタを作成し、さらにその製版物を評価した。
【0065】
[比較例3]
樹脂混合液(8)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度100rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が3倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層を用いてマスタを作成し、さらにその製版物を評価した。
【0066】
[比較例4]
樹脂混合液(1)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度1000rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が2倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層を用いてマスタを作成し、さらにその製版物を評価した。
【0067】
[比較例5]
樹脂混合液(1)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度1000rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が2倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層を用いてマスタを作成し、さらにその製版物を評価した。
【0068】
[比較例6]
樹脂混合液(1)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度1000rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が3倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層上に多孔性樹脂層を形成した。次いで、1本の金属ロールと1本のコットンロールとで構成されるスーパーカレンダー(熊谷理機工業(株)製、テストカレンダー45FR−150E2型)を用いて、得られた多孔性樹脂層の表面を金属ロールと接触させ、線圧20kg/cm、ロール速度5m/分で加圧表面処理を施してマスタを作成し、その製版物を評価した。
【0069】
[比較例7]
樹脂混合液(1)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度1000rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が3倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層(両面塗工紙)を用いてマスタを作成し、さらにその製版物を評価した。
【0070】
[比較例8]
樹脂混合液(1)を用い、実施例1と同様にして、攪拌速度1000rpmで空気と混合、攪拌して、発泡倍率が3倍となるように発泡処理を施した。以下、実施例1と同様にして、表2に示す多孔性繊維層(天然繊維とポリエステル繊維からなる混抄紙)を用いてマスタを作成し、さらにその製版物を評価した。得られたマスタには、気泡含有樹脂混合液が部分的に多孔性繊維層を通過し、外観不良な部分が存在した。
【0071】
[比較例9]
延伸手段により、フィルム厚みが1.7μmになるようにあらかじめ単膜製膜して、ポリエステルフィルム(軟化点220℃)を作製した。このフィルムに、表2に示す多孔性繊維層(天然繊維とポリエステル繊維からなる混抄紙)を、塗布量0.8g/m2のポリ酢酸ビニル樹脂を介して貼り合わせた後、フィルムの表面にシリコーン系離型剤を0.1g/m2塗布してマスタを作製し、さらにその製版物を評価した。得られたマスタは多孔性ではないので、ステキヒト・サイズ度の測定は不可であった。
【0072】
【表1】
【0073】
表1において、配合した各成分の詳細は、以下のとおりである。
ポリビニルアルコール(1):(株)クラレ製、製品名PVA−205、軟化点170℃
ポリビニルアルコール(2):(株)クラレ製、製品名R−1130、軟化点210℃
エチレン−メタクリル酸アイオノマー樹脂:三井化学(株)製、製品名ケミパールS75N、軟化点60℃
オレフィンアクリル樹脂:中央理化(株)製、製品名リカボンド、ET−1000、軟化点80℃
高級脂肪酸系整泡剤:サンノプコ(株)製、製品名SNフォーム200
ポリエーテル系増粘剤:サンノプコ(株)製、製品名SNシックナー612
ポリエチレンワックス系離型剤:サンノプコ(株)製、製品名ノプコートPEM−17、粒子径0.03μm
マイクロワックス系離型剤:中京油脂(株)製、製品名ハイドリンD−338、粒子径0.85μm
ポリエーテル変性シリコーンオイル(1):信越化学工業(株)製、製品名X−24−3302
ポリエーテル変性シリコーンオイル(2):信越化学工業(株)製、製品名KF−354L
アルコール変性シリコーンオイル:東レ・ダウコーニング(株)製、製品名SF−8427
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
表3にみるように、実施例では、孔閉塞性、ベタ均一性、細字再現性および濃度ムラのいずれも使用可能な製版物が得られた。一方、比較例1〜8では、孔閉塞性、ベタ均一性、細字再現性、濃度ムラの評価において、充分な結果が得られず、実用上の問題が発生した。比較例9では、支持体であるポリエステルフィルム層が多孔質でないため、インキが樹脂層を通過せず使用不可であった。
【0077】
【発明の効果】
本発明に係るマスタおよびその製造方法によると、孔閉塞性に優れた孔版印刷用の製版物を得ることができ、それを用いて孔版印刷を行うと、ベタ均一性が良好で細字再現性に優れ、濃度ムラのない印刷物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】製版方法の一例として、サーマルヘッドによる熱溶融でマスタを製版している状態を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 マスタ
2 サーマルヘッド
3 プラテンローラ
4 発熱素子
5 閉塞部(非画線部)
Claims (8)
- 多孔性繊維層と、前記多孔性繊維層の一方の面上に形成された多孔性樹脂層とを含む孔版印刷用マスタであって、圧縮弾性率が7MPa以下、ステキヒト・サイズ度が20〜300秒であり、かつ、前記多孔性樹脂層の表面粗さ(Ra)が4μm以下である孔版印刷用マスタ。
- 坪量が35g/m2以上、透気度が100秒以下である請求項1記載の孔版印刷用マスタ。
- 前記多孔性樹脂層表面の平均孔径が2〜20μmであり、かつ、孔部分の占める割合が30〜90%である請求項1または2記載の孔版印刷用マスタ。
- 前記多孔性繊維層の主成分が木材を原料とするパルプである請求項1〜3のいずれか1項記載の孔版印刷用マスタ。
- 前記多孔性繊維層のステキヒト・サイズ度が10〜150秒である請求項1〜4のいずれか1項記載の孔版印刷用マスタ。
- 粘度0.001〜1Pa・sのインキを用いた孔版印刷に用いられる請求項1〜5のいずれか1項記載の孔版印刷用マスタ。
- 前記多孔性樹脂層が、機械的攪拌法により気泡を含有させた多孔性樹脂層形成用塗料を塗工することにより形成されたものである請求項1〜6のいずれか1項記載の孔版印刷用マスタ。
- 請求項1〜7のいずれか1項記載の孔版印刷用マスタの製造方法であって、以下の工程を含む孔版印刷用マスタの製造方法:
(1)機械的攪拌法により多孔性樹脂層形成用塗料に気泡を含有させる工程、および、
(2)多孔性繊維層の一方の面上に、前記気泡を含有させた多孔性樹脂層形成用塗料を塗工して多孔性樹脂層を形成する工程。
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