JP2004255595A - 板状インクジェット記録材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度が非常に高く、耐候性があり、カール性、表面性及びインク吸収性が良好で、且つ、天然パルプ素材を中心とする環境に優しい板状インクジェット記録材料を提供する。
【解決手段】基材が、基紙の少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層を有するポリオレフィン樹脂被覆紙を少なくとも2枚積層した板状基材であって、該板状基材の少なくとも一方の面に、インクジェット記録材料を積層したことを特徴とする板状インクジェット記録材料及びその製造方法。
【選択図】 なし。
【解決手段】基材が、基紙の少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層を有するポリオレフィン樹脂被覆紙を少なくとも2枚積層した板状基材であって、該板状基材の少なくとも一方の面に、インクジェット記録材料を積層したことを特徴とする板状インクジェット記録材料及びその製造方法。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク受容層を有するインクジェット用記録材料に関し、更に詳しくは、広告板、表示板やパネル板等の環境変化の激しい過酷な条件で使用される板状インクジェット記録材料に関し、さらに詳しくは強度が非常に高く、耐候性があり、カール性、表面性及びインク吸収性が良好で、且つ、天然パルプ素材を中心とする環境に優しい板状インクジェット記録材料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、例えば、特開昭55−51583号、同56−157号、同57−107879号、同57−107880号、同59−230787号、同62−160277号、同62−184879号、同62−183382号、及び同64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。
【0003】
また、光沢を付与したインクジェット記録材料として、特開平2−113986号公報には、カチオン性高分子電解質を含む水溶液で処理した後にキャストする方法、特開平2−274587号公報にはコロイダルシリカを用い、カチオン性高分子電解質を含む水溶液で処理した後にキャストする方法の提案がなされている。
【0004】
上述した記録材料の支持体としては、従来、紙が一般的に用いられており、紙自体にインク吸収層としての役割を持たせていた。近年、銀塩写真印画紙に質感の類似したフォトライクの記録材料が要望される中、紙支持体を用いた記録材料は、光沢、質感、耐水性、印字後のコックリング(皺あるいは波打ち)等の問題があり、例えば、特開2001−270232、特開2001−96898、特開2001−63205、特開2000−351270、特開2000−522649号公報にあるように、紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートした樹脂ラミネート紙(ポリオレフィン樹脂被覆紙)等が用いられるようになってきた。
【0005】
このような状況の中、高品位の多色印刷シートが容易に得られ、厚手のものでも印字可能であるインクジェット用記録の利点を生かして広告板、表示板やパネル板等の用途への応用もなされてきている。このような用途においては、屋内外含めて例えば風雨に晒されるような環境変化が激しく過酷な条件で使用されるため、従来、このような用途としては、ポリプロピレン製樹脂板、アルミ板を発泡ポリエチレン製板の両面に貼り合わせたもの、アクリル製樹脂板、塩化ビニル製樹脂板等の非常に強度の高い板状基材が広く用いられていた。また、このような用途においては、用いる基材は剛直があって強度が高いために、少しでもカールすると、例えば壁等に貼り付けて掲示する場合には作業性が悪くなったり、吊り下げ式で掲示する場合には、見栄えが悪くなるので、カール性も非常に重要である。したがって、基材自体の強度や、耐雨性を含む耐久性が非常に高く、カール性の良好な板状インクジェット記録材料が望まれている。
【0006】
特開平6−72016号公報(特許文献1)には合成樹脂フィルムの両面に薄層の紙を貼り合わせ塗布層を設ける方法、また特開平8−258408号公報(特許文献2)にはプラスチックフィルムの少なくとも片面に紙を貼り合わせ、多孔性樹脂のインク受容層を設けたインクジェット記録材料が提案されている。しかしながら、これらは基材として合成樹脂系素材を主に使用しているため、前記用途で使用するために厚みを厚くすれば強度及び耐久性は比較的良好であるものの、昨今の廃棄にかかる環境負荷、焼却時の有害物質の発生、焼却炉を傷める等の問題から好ましい材料とは言えず、これらに替わる環境に優しい材料の開発が急がれていた。
【0007】
また、特開平9−71036号公報(特許文献3)には、シート状支持体の片面にインク受容層有するインクジェット記録材料の2枚をインク受容層を有しない面同士を、熱可塑性樹脂にエクストルージョンラミネート方式で貼り合わせる両面印字可能なインクジェット記録材料が提案されているが、シート状支持体として好ましい記述及び例示も紙を使用しているため、前記環境負荷等の問題からは好ましいものの、材料自体の強度と耐久性に関して更なる性能アップが必要であった。また、エクストルージョンラミネート方式で貼り合わせた場合、一般的に冷却ロールに圧着して冷却するため、冷却ロールの曲率によるカールが発生して、前記用途に適さなかった。
【0008】
また、特開2002−2095号公報(特許文献4)には、片面に無機顔料微粒子と親水性バインダーを含有するインク受容層を設けた非吸水性支持体の反対面と、厚さ0.4mm以上の厚紙の厚さ5μm以上の合成樹脂フィルムまたは熱可塑性樹脂ラミネート層を設けた面の反対面とを貼り合わせたインクジェット用記録材料が提案されている。しかしながら、基材の主構成材料が0.4mm以上の厚紙であるため、前記環境負荷等の問題からは好ましいものの、材料自体の強度と耐久性に関して更なる性能アップが必要であった。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−72016号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献2】
特開平8−258408号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献3】
特開平9−71036号公報(第3頁〜第4頁)
【特許文献4】
特開2002−2095号公報(第3頁〜第4頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、広告板、表示板やパネル板等の環境変化の激しい過酷な条件で使用される板状インクジェット記録材料に関し、さらに詳しくは強度が非常に高く、耐久性があり、カール性、表面性及びインク吸収性が良好で、且つ、天然パルプ素材を中心とする環境に優しい板状インクジェット記録材料及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的を達成するために種々検討した結果、以下の手段によって達成された。
【0012】
(1)基材が、基紙の少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層を有するポリオレフィン樹脂被覆紙を少なくとも2枚積層した板状基材であって、該板状基材の少なくとも一方の面に、インクジェット記録材料を積層したことを特徴とする板状インクジェット記録材料。
(2)前記板状基材の厚みが0.5mm以上であり、且つ該板状基材の基紙の合計厚み(Tp)と、ポリオレフィン樹脂層の合計厚み(Tr)の関係が、2×Tr<Tp<6×Trである前記1に記載の板状インクジェット記録材料。
(3)前記インクジェット記録材料が、ポリオレフィン樹脂被覆紙に無機顔料微粒子を主体とし親水性バインダーを含有するインク受容層を塗設してなることを特徴とする前記1または2に記載の板状インクジェット記録材料。
(4)前記板状インクジェット記録材料のインク受容層面が、合成樹脂フィルムでラミネートされてなることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の板状インクジェット記録材料。
(5)前記1に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法であって、基紙の少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層を有するポリオレフィン樹脂被覆紙を少なくとも2枚積層した板状基材と、該板状基材の少なくとも一方の面に、インクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱することにより貼り合わせることを特徴とする板状インクジェット記録材料の製造方法。
(6)前記1に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法であって、前記ポリオレフィン樹脂被覆紙を積層し加圧及び加熱することにより貼り合わせて板状基材を作製した後、その少なくとも一方の面にインクジェット記録材料を積層し再度加圧及び加熱することにより貼り合わせることを特徴とする板状インクジェット記録材料の製造方法。
(7)前記板状インクジェット記録材料の製造方法において、前記板状基材が、両面をポリオレフィン樹脂で被覆した同一構成の複数のポリオレフィン樹脂被覆紙を互いに同じ面が対向するように積層することを特徴とする前記5または6に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法。
(8)前記板状基材の含水率が8質量%以下であり、且つインクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱する際に、インクジェット記録材料の被加圧面温度が70℃〜100℃で、且つ加圧面とインクジェット記録材料の被加圧面との間の圧力が6kg/cm2〜15kg/cm2である前記5〜7の何れか1項に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法。
(9)前記板状インクジェット記録材料の製造方法において、インクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱する際に、加圧面とインクジェット記録材料との間に、100℃以上の耐熱温度を有する保護材料を配置して加熱及び加圧を行い、冷却後に該保護材料を剥離することを特徴とする前記5〜8の何れか1項に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における板状基材は、基紙の少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層を有するポリオレフィン樹脂被覆紙を少なくとも2枚積層したものである。これにより板状インクジェット記録材料の強度及び耐久性が高くなると同時に、前記合成樹脂系材料を使用した場合と比較して、基紙が天然パルプが主構成であるため、廃棄にかかる環境負荷が低く、焼却時の有害物質の発生が少なく、高熱により焼却炉を痛める問題が無く、環境に非常に優しい特徴を有する。板状基材が天然パルプを成分とする基紙そのものであった場合は、本発明の強度及び耐久性が得られず、また板状基材の主構成が合成樹脂系材料であった場合は環境負荷が大きくなり、本発明が目的とする記録材料が得られない。
【0014】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、天然パルプを成分とする基紙にポリオレフィン樹脂を被覆したものであれば特に制限なく使用できるが、本発明で用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、得られる積層板の表面平滑性、白色性の観点から、特に写真印画紙用もしくはインクジェット記録材料用支持体として用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙が好ましい。
【0015】
この様なポリオレフィン樹脂被覆紙に使用される基紙は、針葉樹材パルプ、広葉樹材パルプ、針葉樹広葉樹混合パルプの木材パルプを主成分とする天然パルプ紙が有効である。これらの基紙中には各種の高分子化合物、添加剤を含有せしめることが出来る。例えば乾燥紙力増強材としてカチオン化殿粉、カチオン化ポリアクリルアミド、アニオン化ポリアクリルアド、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ゼラチンなど、サイズ剤として脂肪酸塩、ロジン誘導体、ジアルキルケテンダイマー乳化物、石油樹脂エマルジョンなど、顔料としてクレー、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンなど、湿潤紙力増強剤としてメラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂など、定着剤として硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどの多価金属塩、カチオン化殿粉などのカチオン変性ポリマーなど、pH調節剤としてカセイソーダ、炭酸ソーダ、塩酸など、無機電解質として食塩、ボウ硝など、そのほか染料、蛍光増白剤、ラテックス等を適宜組み合わせて含有せしめることが出来る。上述の原料により作成した坪量50g/m2〜200g/m2で密度が0.90〜1.15g/cm3の紙基体が本発明のポリオレフィン樹脂被覆紙に使用される基紙として好ましい。
【0016】
この基紙の少なくとも一方の面を被覆するポリオレフィン樹脂とは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などであり、ポリオレフィン樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛などの白色顔料やステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩及び群青、紺青、フタロシアニンブルーなどの顔料や染料を含んでもよい。基紙を被覆する樹脂量は各々10g/m2〜40g/m2が好ましい。
【0017】
ポリオレフィン樹脂被覆紙は、写真用印画紙やインクジェット記録材料の支持体としての用途が一般的に知られている。本発明に用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、写真印画紙やインクジェット記録材料の製造工程で用いられる写真印画紙の支持体であるポリオレフィン樹脂被覆紙をそのまま利用してもよく、場合によっては写真印画紙やインクジェット記録材料用の製造工程において排出される損紙を用いることも可能である。昨今、環境問題から製造工程で排出される各種廃棄物の再利用が叫ばれており、本発明はこのような製造工程で排出されるポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の有効な再利用方法とも言える。従って、本発明の基材に用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、写真印画紙やインクジェット記録材料のための裏塗り層あるいは下引き層を設けたものであっても良い。
【0018】
本発明における板状基材の厚みは0.5mm以上が板状インクジェット記録材料の強度や耐久性がより高くなるため好ましく、0.8mm以上がさらに好ましい。また板状基材の厚みの上限は10mm程度である。また同時に該板状基材の基紙の合計厚み(Tp)と、ポリオレフィン樹脂層の合計厚み(Tr)の関係が、2×Tr<Tp<6×Trであることが好ましく、2×Tr<Tp<4×Trであることがさらに好ましい。2×Tr<Tpであることで焼却時の有害物質の発生等の環境負荷を抑えることが出来、Tp<6×Trであることより、柔軟な基紙にポリオレフィン樹脂の強度が付与されるため耐久性のある板状インクジェット記録材料が得られる。
【0019】
本発明における板状基材を作製する際のポリオレフィン樹脂被覆紙の積層枚数は、前述したように少なくとも2枚以上であり、5枚以上積層する場合に耐久性のある板状インクジェット記録材料が得られるためさらに好ましい。
【0020】
本発明における板状基材に積層するインクジェット記録材料は、例えば通常の紙やポリオレフィン樹脂被覆紙、合成フィルム上にインク受容層を少なくとも1層設けてなる公知のいかなるインクジェット記録材料を使用することが出来るが、中でもポリオレフィン樹脂被覆紙に無機顔料微粒子を主体とし親水性バインダーを含有するインク受容層を塗設してなるインクジェット記録材料が、さらに強度、耐久性やインク吸収性を維持しながら環境に優しい板状インクジェット記録材料を得るためには好ましい。
【0021】
また、本発明においては、板状インクジェット記録材料のインク受容層面が合成樹脂フィルムでラミネートされてなる場合に耐久性をさらに高めることが出来るため好ましい。
【0022】
前記インク受容層をラミネートする合成樹脂フィルムとしては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ナイロン等のポリアミド類、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の公知のフィルムに、熱と圧力によって被ラミネート基材接着可能な公知のヒートシール層を塗設した合成樹脂フィルム等を好適に用いることが出来る。
【0023】
前記合成樹脂フィルムの厚みは特に制限はないが、好ましくは20μm〜150μm、さらに好ましくは100μm〜150μmのものを用いることができる。
【0024】
本発明のインク受容層で使用する無機顔料微粒子としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0025】
高い印字濃度、鮮明な画像、安い製造コストの点では合成シリカ、アルミナやアルミナ水和物が選択され、中でもインク吸収性の観点から合成シリカが好ましく、さらに気相法シリカが好ましい。
【0026】
合成シリカには、湿式法によるものと気相法によるものがある。通常シリカ微粒子といえば湿式法シリカを指す場合が多い。湿式法シリカとしては、▲1▼ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾル、または▲2▼このシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカ、▲3▼シリカゾルをゲル化させ、その生成条件を変えることによって数μmから10μm位の一次粒子がシロキサン結合をした三次元的な二次粒子となったシリカゲル、更には▲4▼シリカゾル、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等を加熱生成させて得られるもののようなケイ酸を主体とする合成ケイ酸化合物等がある。
【0027】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、トクヤマ(株)からQSタイプとして市販されており入手することができる。
【0028】
気相法シリカの一次粒子の平均粒径は、高い光沢を得るためには、5〜30nmが好ましく、BET法による比表面積が150〜500m2/gのものを用いるのが好ましい。本発明で云うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
【0029】
本発明の無機顔料微粒子は、インク受容層の全固形分に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有するものであり、上限は90質量%程度である。
【0030】
無機顔料微粒子を含有するインク受容層は、皮膜としての特性を維持するためにバインダーが用いられるが、親水性バインダーが透明性が高くインクのより高い浸透性が得られるので好ましい。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0031】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0032】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0033】
本発明では、親水性バインダーの量は無機顔料微粒子に対して5〜35質量%がインク吸収性が高まるため好ましく、特に8〜25質量%含有するのが好ましい。
【0034】
本発明において好ましくは、インク受容層に水溶性の金属化合物を含有することによって、更にひび割れを防止することができる。従って、インク吸収性を向上させるために親水性バインダー量の更なる低減及び気相法シリカ付着量の更なる増量が可能となる。
【0035】
水溶性の金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩として、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0036】
本発明において好ましくは、耐水性を向上させるためにカチオンポリマーを含有させるのが好ましい。カチオンポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、5,000以上が好ましく、更に5,000〜10万程度が好ましい。
【0037】
これらのカチオンポリマーの使用量は無機顔料微粒子に対して1〜10質量%、好ましくは2〜7質量%である。
【0038】
本発明において、インク受容層には、親水性バインダーと共に硬膜剤を含有するのが好ましい。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にほう酸あるいはほう酸塩が好ましい。硬膜剤の添加量はインク受容層を構成する親水性バインダーに対して、0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%である。
【0039】
本発明において、インク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0040】
本発明において、インク受容層の塗布方法は、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ケッドバーコーティング方式、バーコター方式、ディップ方式等がある。
【0041】
本発明における板状インクジェット記録材料の製造方法としては、▲1▼板状基材を構成するポリオレフィン樹脂被覆紙を2枚以上積層し、少なくとも一方の面にインクジェット記録材料をさらに積層した後、前記積層したポリオレフィン樹脂被覆紙とインクジェット記録材料を同時に加圧及び加熱することにより貼り合わせる方法、▲2▼板状基材を構成するポリオレフィン樹脂被覆紙を2枚以上積層し加圧及び加熱することにより貼り合わせて板状基材を作製した後、その少なくとも一方の面にインクジェット記録材料を積層し再度加圧及び加熱することにより貼り合わせる方法があり、これによりポリオレフィン樹脂被覆紙のポリオレフィン樹脂が熱により軟化し、圧力により軟化したポリオレフィン樹脂が接着剤としてポリオレフィン樹脂被覆紙の基紙に含浸して、ポリオレフィン樹脂被覆紙同士及びポリオレフィン樹脂被覆紙とインクジェット記録材料が融着するとともに強度が非常に高く、耐久性のある板状インクジェット記録材料が得られる。特に前記▲2▼の場合には、2度加圧及び加熱されることにより耐久性がさらに高まるため好ましい。
【0042】
本発明において、ポリオレフィン樹脂被覆紙を積層し加圧及び加熱することにより貼り合わせて板状基材を作製する場合に、同一構成の複数のポリオレフィン樹脂被覆紙を互いに同じ面が対向するように積層して加圧及び加熱する場合、即ちポリオレフィン樹脂被覆紙は基紙を使用していることより少なからず必ずカールが発生しており凸面と凹面が存在するが、凸面と凸面、凹面と凹面がそれぞれ対向するように積層して貼り合わせた場合は、そのカールが相殺されてフラットに近くなり板状インクジェット記録材料のカール性がさらに良化するために好ましい。
【0043】
ポリオレフィン樹脂被覆紙を積層し貼り合わせる方法としては、例えば前述の特開平9−71036号公報(特許文献3)に例示されている様な、熱可塑性樹脂にエクストルージョンラミネート方式で貼り合わせた場合、一般的に冷却ロールに圧着して冷却するため、冷却ロールの曲率によるカールが発生するため好ましくなく、またポリオレフィン樹脂被覆紙のポリオレフィン樹脂が基紙まで含浸しないため、本発明に必要な強度や耐久性が得られないため好ましくない。また前述の特開2002−2095号公報(特許文献4)に例示されている様な、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエステル系、イソシアネート系、フェノール系、酢酸ビニル系、アクリル系等の接着剤を使用して貼り合わせた場合、ポリオレフィン樹脂被覆紙のポリオレフィン樹脂が基紙まで含浸しないため、本発明に必要な強度や耐久性が得られないため好ましくない。
【0044】
本発明における板状インクジェット記録材料を加圧及び加熱して製造する際に使用する装置としては、上下のプレス型間に枚葉にカット、重ねた状態の被積層材料を挟み、加圧加熱状態にて圧着させるタイプ(以下、ホットプレス装置という)のものが使用される。また、生産効率向上の点から、2本の熱ロール間に加圧状態で被積層材料を連続で通しながら、接着積層しても良いし、加熱方法として高周波を併用することもできる。
【0045】
具体的には、ポリオレフィン樹脂被覆紙をホットプレス装置の下プレス型の上に2枚以上重ね、さらにインクジェット記録材料を該板状基材の少なくとも一方の面に重ねて載せた後、ホットプレス装置の上プレス型を下降させてホットプレス成形を行う。尚、該ホットプレス装置の加圧面の材質は特に制限はなく公知のものを使用できる。
【0046】
本発明においては該ホットプレス成形の条件として、板状基材の含水率が8質量%以下、好ましくは7%以下であり、且つインクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱する際に、インクジェット記録材料の被加圧面温度が70℃〜100℃、好ましくは70℃〜90℃であり、加圧面とインクジェット記録材料の被加圧面との間の圧力が6kg/cm2〜15kg/cm2、好ましくは8kg/cm2〜13kg/cm2となるようにプレスすることにより、脆弱性の高いインク受容層面の表面を過度な圧力により傷つけることなくインク吸収性も良好で、且つ過度の加熱により基材の水分による水蒸気でポリオレフィン樹脂被覆層が膨張する所謂ブリストー現象にて表面性を悪化させることなく、適度な温度と圧力によりポリオレフィン樹脂が軟化して接着剤として基紙に含浸して強度が非常に高く、耐久性のある板状インクジェット記録材料を得ることが出来るため好ましい。
【0047】
上記板状基材の含水率は、貼り合わせる前の板状基材を構成している全基材の含水率の算術平均値で求められる。
【0048】
含水率の測定方法としては、板状基材を20cm×25cmのサイズに5枚断裁し、120℃のオーブンで30分絶乾させた前後の質量差を含水量として、これを絶乾前の質量で除して算出する。(以下、絶乾法という)
【0049】
前記加圧及び加熱する時間は、インクジェット記録材料の被加圧面温度が70℃〜100℃、加圧面とインクジェット記録材料の被加圧面との間の圧力が6kg/cm2〜15kg/cm2の条件を満たせば特に制限はないが、作業性の観点から好ましくは1分〜15分、さらに好ましくは5分〜10分である。
【0050】
本発明においては、該ホットプレス装置の加圧面と被積層材料との間に、100℃以上、好ましくは120℃以上の耐熱温度を有する保護材料を配置して加熱及び加圧を行い、冷却後に該保護材料を積層板から剥離することにより、加圧加熱プレス型の面質の影響を受けることなく、より表面性の優れた板状インクジェット記録材料を得ることができる。尚、本発明でいう保護材料の耐熱温度とは、保護材料の被加熱面が変化しない最大の温度である。
【0051】
本発明に用いられる保護材料としては、例えばポリオレフィン系、シリコン系、ナイロン系、ポリエステル系、フッ素系フイルムおよびこれらの素材を紙に貼り合わせたもの等、100℃以上の耐熱性を有するものであれば特に制限されるものでなく、熱伝導性、表面平滑性の点から適宜選択される。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、実施例に限定されるものではない。
【0053】
<ポリオレフィン樹脂被覆紙A>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5質量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0質量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0質量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5質量%添加し、水で希釈して1質量%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥後調湿して厚さ170μmのポリオレフィン樹脂被覆紙の基紙とした。抄造した基紙の表面に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100質量%の樹脂に対して、10質量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ30μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。裏面であるもう一方の面には密度0.962g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂70質量部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30質量部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
【0054】
その後、樹脂表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/m2となるように塗布乾燥してポリオレフィン樹脂被覆紙Aを作製した。
【0055】
(下引き層)
石灰処理ゼラチン 100質量部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2質量部
クロム明ばん 10質量部
【0056】
<インクジェット記録材料A>
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙Aに下記組成のインク受容層塗布液Aをスライド塗布装置で塗布量が固形分で25g/m2になるように塗布、乾燥し、インクジェット記録材料Aを得た。
(インク受容層塗布液A)
気相法シリカ 100質量部
(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m2/g)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー 4質量部
(第一工業製薬(株)製、シャロールDC902P、分子量9000)
ほう酸 4質量部
ポリビニルアルコール 18質量部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3質量部
【0057】
<インクジェット記録材料B>
濾水度450mlCSFのLBKP70質量部、濾水度450mlCSFのNBKP30質量部から成る木材パルプ100質量部に、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウム/タルクの比率が30/35/35の顔料5質量部、市販アルキルケテンダイマー0.1質量部、市販カチオン系アクリルアミド0.03質量部、市販カチオン化澱粉1.0質量部、硫酸バンド0.5質量部を調成後、長網抄紙機を用いて坪量80g/m2で抄造し、市販酸化澱粉をインクラインドサイズプレスで乾燥付着量5g/m2させて乾燥してインクジェット記録材料Bの基紙を得た。その後、該基紙上に以下のインク受容層塗布液Bを固形分が9g/m2となるようにエアーナイフコーターにより塗布・乾燥し、これをスーパーカレンダー処理してインクジェット記録材料Bを得た。
【0058】
(インク受容層塗布液B)
合成非晶質シリカ
(徳山曹達株式会社製:ファインシールX37B) 100質量部
ポリビニルアルコール
(クラレ株式会社製:PVA117) 30質量部
カチオン性染料定着剤
(住友化学工業株式会社製:スミレーズレジン1001)20質量部
【0059】
<インクジェット記録材料C>
上記のインクジェット記録材料Bのインク受容層面側に、光沢を付与するため、さらに以下のインク受容層塗布液Cを固形分が6g/m2となるようにエアーナイフコーターにより塗布した後に、加熱した鏡面ロールに圧接してキャスト処理・乾燥してインクジェット記録材料Cを得た。
【0060】
(インク受容層塗布液C)
コロイダルシリカ
(日産化学株式会社製:スノーテックスXL) 100質量部
変性アクリルエマルジョン
(ヘキスト合成株式会社製:モビニール8020:) 15質量部
アルカリ溶解したカゼイン
(ニュージランド製) 10質量部
【0061】
実施例1
板状基材として前記ポリオレフィン樹脂被覆紙AをA4サイズにカットし同方向に10枚重ね、さらにその一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスにて、被加圧面圧力8kg/cm2、被加圧面温度80℃、時間8分間の条件で加圧加熱成形し、貼り合わせて実施例1の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0062】
実施例2
板状基材として前記ポリオレフィン樹脂被覆紙AをA4サイズにカットし同方向に10枚重ね、さらにその両面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスした以外は実施例1と同様にして実施例2の板状インクジェット記録材料Aを作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0063】
実施例3
<ポリオレフィン樹脂被覆紙B>
ポリオレフィン樹脂被覆紙Aの裏面のポリオレフィン樹脂をコーティングしなかった以外はポリオレフィン樹脂被覆紙Aと同様にして、ポリオレフィン樹脂被覆紙Bを作製した。
【0064】
板状基材として上記ポリオレフィン樹脂被覆紙BをA4サイズにカットし同方向に10枚重ね、さらにその一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスした以外は実施例1と同様にして実施例3の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ1.7mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0065】
実施例4
実施例1の板状インクジェット記録材料のインク受容層面側に、片面にヒートシール層を有する38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの接着層面を重ね合わせ、100℃加熱された直径30mmのスチールローラと直径30mmのゴムローラ対に、ラミネートフィルムがスチールローラ側になるよう加熱圧着させて、実施例4の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0066】
実施例5
板状基材として前記ポリオレフィン樹脂被覆紙AをA4サイズにカットし同方向に2枚重ね、さらにその一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスした以外は実施例1と同様にして実施例5の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ0.4mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0067】
実施例6
<ポリオレフィン樹脂被覆紙C>
基紙として、長網抄紙機で坪量200g/m2になるように抄造し乾燥後調湿して厚さ200μmとし、且つ表裏のポリオレフィン樹脂をそれぞれ厚さ15μmになるように押出コーティングした以外は、ポリオレフィン樹脂被覆紙Aと同様にして、ポリオレフィン樹脂被覆紙Cを作製した。
【0068】
板状基材として上記ポリオレフィン樹脂被覆紙CをA4サイズにカットし同方向に10枚重ね、さらにその一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスした以外は実施例1と同様にして実施例6の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0069】
実施例7
インクジェット記録材料として、実施例1のインクジェット記録材料Aをインクジェット記録材料Bに代えた以外は実施例1と同様にして実施例7の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0070】
実施例8
インクジェット記録材料として、実施例1のインクジェット記録材料Aをインクジェット記録材料Cに代えた以外は実施例1と同様にして実施例8の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0071】
比較例1
板状基材として実施例1のポリオレフィン樹脂被覆紙Aに代えて、ポリオレフィン樹脂被覆紙Aの製造過程で抄造された基紙を用いた以外は実施例1と同様にしてホットプレスにより比較例1の板状インクジェット記録材料を作製しようとしたが、基紙がポリオレフィン樹脂層を有していなかったため未接着であった。そこで、各々の基紙の接着面にアクリル系接着剤を固形分として10g/m2になるように塗布・乾燥し、A4サイズにカットし同方向に10枚重ね、さらにその一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、圧着することでドライラミネートして比較例1の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ1.8mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0072】
比較例2
板状基材としてポリエチレンテレフタレートに代えた以外は比較例1と同様にしてドライラミネートして比較例2の板状インクジェット記録材料を作製した。尚、該ポリエチレンテレフタレートも比較例1と同様にホットプレスによる接着は不可能であった。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2.1mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0073】
比較例3
板状基材として前記ポリオレフィン樹脂被覆紙AをA4サイズにカットしたものを1枚用意し、該基材の一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスした以外は実施例1と同様にして比較例3の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ0.2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0074】
作製した実施例1〜8及び比較例1〜3の板状インクジェット記録材料の強度、耐久性、カール性、表面性、インク吸収性及び環境負荷に関して以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0075】
<強度>
作製した板状インクジェット記録材料を折り曲げたときの強度を2mm厚のアクリル樹脂板と比較して以下の基準で評価した。
◎:アクリル樹脂板以上の強度を持つ
○:アクリル樹脂板同等の強度を持つ
△:アクリル樹脂板には劣るが2mm厚のボール紙を越えるの強度を持ち実用上使用可能
×:2mm厚のボール紙以下の強度であり実用上使用不可
【0076】
<耐久性>
作製した板状インクジェット記録材料にエプソン社製MC−7000で黒ベタを印字し、10分間水に含浸した後乾燥させた。含浸前と含浸・乾燥後の印字部、用紙表面及び端部の変化を以下の基準で目視評価した。
◎:試験前後で全く変化無し
○:試験前後で印字部がやや変化しているが一見では分からないレベル
△:試験前後で印字部、用紙表面は変化しているものの端部の変化はなく実用上使用可能
×:試験前後で印字部、用紙表面及び端部の内、一つ以上が著しく変化しており実用上使用不可
【0077】
<カール性>
作製したA4の板状インクジェット記録材料を水平面上に試料の中心が凹になるようにして静置し、試料のインク受容層面が凹の場合の四隅の高さを測定し平均値として計算した。
◎:1mm以下。
○:1mmより大で3mm以下。実使用上下限。
×:3mmより大。実使用不可。
【0078】
<表面性>
作製した板状インクジェット記録材料の表面性を以下の基準で目視評価した。
◎:表面性良好
○:やや表面性悪化しているが実用上問題なし
△:上記○レベルより表面性悪化しているが実用上問題なし
×:著しく表面性が悪化しており実用上不可
【0079】
<インク吸収性>
作製した板状インクジェット記録材料にエプソン社製MC−7000でコンポジット黒ベタを印字し、直後にPPCを圧着し端がしたときのPPCへのインク転写程度を以下の基準で目視評価した。
◎:全くインクが転写して無くインク吸収性が非常に良好
○:ややインクが転写しているがインク吸収性として実用上下限
×:著しくインクが転写しておりインク吸収性として実用上不可
【0080】
<環境負荷>
作製した板状インクジェット記録材料を以下の基準で評価した。
○:天然パルプを主体として用いているため、環境負荷が小さい
×:合成樹脂フィルムを主体として用いているため、環境負荷が大きい
【0081】
【表1】
【0082】
表1から明らかなように、本発明の板状インクジェット記録材料は、強度が非常に高く、耐候性があり、カール性、表面性及びインク吸収性が良好で、且つ、天然パルプ素材を中心とする環境に優しい板状インクジェット記録材料であることが判る。中でも実施例5及び6と実施例1との関係より、板状基材の厚みが0.5mm以上であり、且つ該板状基材の基紙の合計厚み(Tp)と、ポリオレフィン樹脂層の合計厚み(Tr)の関係が、2×Tr<Tp<6×Trである場合に、より強度と耐久性が高くなることが判る。また、実施例7及び8と実施例1との関係より、板状基材に積層するインクジェット記録材料が、ポリオレフィン樹脂被覆紙に無機顔料微粒子を主体とし親水性バインダーを含有するインク受容層を塗設してなる場合に、より耐久性が高くなることが判る。また、実施例4と実施例1との関係より、板状インクジェット記録材料のインク受容層面が、合成樹脂フィルムでラミネートされてなる場合に、より耐久性が高くなることが判る。
【0083】
対して、比較例1の板状インクジェット記録材料は、板状基材が基紙であったため、強度及び耐久性が低く実用上問題となった。また、比較例2の板状インクジェット記録材料は、板状基材が合成樹脂系材料であるポリエチレンテレフタレートであったため、廃棄、焼却時の有害物質の発生等の環境負荷が大きかった。また比較例3の板状インクジェット記録材料は、ポリオレフィン樹脂被覆紙を1枚しか使用しなかったため強度と耐久性が低く実用上問題となった。
【0084】
実施例9
実施例1のポリオレフィン樹脂被覆紙Aを、板状基材の含水率が前記絶乾法にて8.5質量%となるように水分調整して作製し使用した以外は実施例1と同様にして実施例9の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであった。
【0085】
実施例10
実施例1のホットプレス時の被加圧面温度を120℃とした以外は実施例1と同様にして実施例10の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0086】
実施例11
実施例1のホットプレス時の被加圧面圧力を20kg/cm2とした以外は実施例1と同様にして実施例11の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0087】
実施例12
実施例1のホットプレス時に加圧面とインクジェット記録材料Aの間に120℃の耐熱性を有するナイロン製フィルムを配置して加熱加圧成形し冷却後に該保護材料を剥離した以外は、実施例1と同様にして実施例12の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0088】
実施例13
板状基材として前記ポリオレフィン樹脂被覆紙AをA4サイズにカットし互いに同じ面が対向するように10枚重ね、さらにその一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスした以外は実施例1と同様にして実施例13の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0089】
実施例14
板状基材として前記ポリオレフィン樹脂被覆紙AをA4サイズにカットし同方向に10枚重ねた後、ホットプレスにて被加圧面圧力8kg/cm2、被加圧面温度80℃、時間8分間の条件で加圧加熱成形した後、再度、その一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスにて、被加圧面圧力8kg/cm2、被加圧面温度80℃、時間8分間の条件で加圧加熱成形し、貼り合わせて実施例14の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0090】
作製した実施例1及び実施例9〜14の板状インクジェット記録材料を、前記と同様にして強度、耐久性、カール性、表面性、インク吸収性及び環境負荷に関して評価した。結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2から明らかなように、本発明の板状インクジェット記録材料の製造方法は、強度が非常に高く、耐候性があり、カール性、表面性及びインク吸収性が良好で、且つ、天然パルプ素材を中心とする環境に優しい板状インクジェット記録材料が得られることが判る。中でも実施例9〜11と実施例1との関係より、板状インクジェット記録材料の含水率が8質量%以下であり、且つインクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱する際に、インクジェット記録材料の被加圧面温度が70℃〜100℃、加圧面とインクジェット記録材料の被加圧面との間の圧力が6kg/cm2〜15kg/cm2である場合に、より表面性が良好となることが判る。また、実施例12と実施例1との関係より、インクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱する際に、加圧面とインクジェット記録材料との間に、100℃以上の耐熱性を有する保護材料を配置して加熱及び加圧を行い、冷却後に該保護材料を剥離する場合に、より表面性が良好となることが判る。また、実施例13と実施例1との関係より、板状基材が、両面をポリオレフィン樹脂で被覆した同一構成の複数のポリオレフィン樹脂被覆紙を互いに同じ面が対向するように積層された場合に、よりカール性が良好となることが判る。また、実施例14と実施例1との関係より、ポリオレフィン樹脂被覆紙を積層し加圧及び加熱することにより貼り合わせて板状基材を作製した後、その少なくとも一方の面にインクジェット記録材料を積層し再度加圧及び加熱することにより貼り合わた場合に、耐久性がさらに高くなることが判る。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、強度が非常に高く、耐候性があり、カール性、表面性及びインク吸収性が良好で、且つ、天然パルプ素材を中心とする環境に優しい板状インクジェット記録材料が得られた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク受容層を有するインクジェット用記録材料に関し、更に詳しくは、広告板、表示板やパネル板等の環境変化の激しい過酷な条件で使用される板状インクジェット記録材料に関し、さらに詳しくは強度が非常に高く、耐候性があり、カール性、表面性及びインク吸収性が良好で、且つ、天然パルプ素材を中心とする環境に優しい板状インクジェット記録材料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、例えば、特開昭55−51583号、同56−157号、同57−107879号、同57−107880号、同59−230787号、同62−160277号、同62−184879号、同62−183382号、及び同64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。
【0003】
また、光沢を付与したインクジェット記録材料として、特開平2−113986号公報には、カチオン性高分子電解質を含む水溶液で処理した後にキャストする方法、特開平2−274587号公報にはコロイダルシリカを用い、カチオン性高分子電解質を含む水溶液で処理した後にキャストする方法の提案がなされている。
【0004】
上述した記録材料の支持体としては、従来、紙が一般的に用いられており、紙自体にインク吸収層としての役割を持たせていた。近年、銀塩写真印画紙に質感の類似したフォトライクの記録材料が要望される中、紙支持体を用いた記録材料は、光沢、質感、耐水性、印字後のコックリング(皺あるいは波打ち)等の問題があり、例えば、特開2001−270232、特開2001−96898、特開2001−63205、特開2000−351270、特開2000−522649号公報にあるように、紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートした樹脂ラミネート紙(ポリオレフィン樹脂被覆紙)等が用いられるようになってきた。
【0005】
このような状況の中、高品位の多色印刷シートが容易に得られ、厚手のものでも印字可能であるインクジェット用記録の利点を生かして広告板、表示板やパネル板等の用途への応用もなされてきている。このような用途においては、屋内外含めて例えば風雨に晒されるような環境変化が激しく過酷な条件で使用されるため、従来、このような用途としては、ポリプロピレン製樹脂板、アルミ板を発泡ポリエチレン製板の両面に貼り合わせたもの、アクリル製樹脂板、塩化ビニル製樹脂板等の非常に強度の高い板状基材が広く用いられていた。また、このような用途においては、用いる基材は剛直があって強度が高いために、少しでもカールすると、例えば壁等に貼り付けて掲示する場合には作業性が悪くなったり、吊り下げ式で掲示する場合には、見栄えが悪くなるので、カール性も非常に重要である。したがって、基材自体の強度や、耐雨性を含む耐久性が非常に高く、カール性の良好な板状インクジェット記録材料が望まれている。
【0006】
特開平6−72016号公報(特許文献1)には合成樹脂フィルムの両面に薄層の紙を貼り合わせ塗布層を設ける方法、また特開平8−258408号公報(特許文献2)にはプラスチックフィルムの少なくとも片面に紙を貼り合わせ、多孔性樹脂のインク受容層を設けたインクジェット記録材料が提案されている。しかしながら、これらは基材として合成樹脂系素材を主に使用しているため、前記用途で使用するために厚みを厚くすれば強度及び耐久性は比較的良好であるものの、昨今の廃棄にかかる環境負荷、焼却時の有害物質の発生、焼却炉を傷める等の問題から好ましい材料とは言えず、これらに替わる環境に優しい材料の開発が急がれていた。
【0007】
また、特開平9−71036号公報(特許文献3)には、シート状支持体の片面にインク受容層有するインクジェット記録材料の2枚をインク受容層を有しない面同士を、熱可塑性樹脂にエクストルージョンラミネート方式で貼り合わせる両面印字可能なインクジェット記録材料が提案されているが、シート状支持体として好ましい記述及び例示も紙を使用しているため、前記環境負荷等の問題からは好ましいものの、材料自体の強度と耐久性に関して更なる性能アップが必要であった。また、エクストルージョンラミネート方式で貼り合わせた場合、一般的に冷却ロールに圧着して冷却するため、冷却ロールの曲率によるカールが発生して、前記用途に適さなかった。
【0008】
また、特開2002−2095号公報(特許文献4)には、片面に無機顔料微粒子と親水性バインダーを含有するインク受容層を設けた非吸水性支持体の反対面と、厚さ0.4mm以上の厚紙の厚さ5μm以上の合成樹脂フィルムまたは熱可塑性樹脂ラミネート層を設けた面の反対面とを貼り合わせたインクジェット用記録材料が提案されている。しかしながら、基材の主構成材料が0.4mm以上の厚紙であるため、前記環境負荷等の問題からは好ましいものの、材料自体の強度と耐久性に関して更なる性能アップが必要であった。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−72016号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献2】
特開平8−258408号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献3】
特開平9−71036号公報(第3頁〜第4頁)
【特許文献4】
特開2002−2095号公報(第3頁〜第4頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、広告板、表示板やパネル板等の環境変化の激しい過酷な条件で使用される板状インクジェット記録材料に関し、さらに詳しくは強度が非常に高く、耐久性があり、カール性、表面性及びインク吸収性が良好で、且つ、天然パルプ素材を中心とする環境に優しい板状インクジェット記録材料及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的を達成するために種々検討した結果、以下の手段によって達成された。
【0012】
(1)基材が、基紙の少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層を有するポリオレフィン樹脂被覆紙を少なくとも2枚積層した板状基材であって、該板状基材の少なくとも一方の面に、インクジェット記録材料を積層したことを特徴とする板状インクジェット記録材料。
(2)前記板状基材の厚みが0.5mm以上であり、且つ該板状基材の基紙の合計厚み(Tp)と、ポリオレフィン樹脂層の合計厚み(Tr)の関係が、2×Tr<Tp<6×Trである前記1に記載の板状インクジェット記録材料。
(3)前記インクジェット記録材料が、ポリオレフィン樹脂被覆紙に無機顔料微粒子を主体とし親水性バインダーを含有するインク受容層を塗設してなることを特徴とする前記1または2に記載の板状インクジェット記録材料。
(4)前記板状インクジェット記録材料のインク受容層面が、合成樹脂フィルムでラミネートされてなることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の板状インクジェット記録材料。
(5)前記1に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法であって、基紙の少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層を有するポリオレフィン樹脂被覆紙を少なくとも2枚積層した板状基材と、該板状基材の少なくとも一方の面に、インクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱することにより貼り合わせることを特徴とする板状インクジェット記録材料の製造方法。
(6)前記1に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法であって、前記ポリオレフィン樹脂被覆紙を積層し加圧及び加熱することにより貼り合わせて板状基材を作製した後、その少なくとも一方の面にインクジェット記録材料を積層し再度加圧及び加熱することにより貼り合わせることを特徴とする板状インクジェット記録材料の製造方法。
(7)前記板状インクジェット記録材料の製造方法において、前記板状基材が、両面をポリオレフィン樹脂で被覆した同一構成の複数のポリオレフィン樹脂被覆紙を互いに同じ面が対向するように積層することを特徴とする前記5または6に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法。
(8)前記板状基材の含水率が8質量%以下であり、且つインクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱する際に、インクジェット記録材料の被加圧面温度が70℃〜100℃で、且つ加圧面とインクジェット記録材料の被加圧面との間の圧力が6kg/cm2〜15kg/cm2である前記5〜7の何れか1項に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法。
(9)前記板状インクジェット記録材料の製造方法において、インクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱する際に、加圧面とインクジェット記録材料との間に、100℃以上の耐熱温度を有する保護材料を配置して加熱及び加圧を行い、冷却後に該保護材料を剥離することを特徴とする前記5〜8の何れか1項に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における板状基材は、基紙の少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層を有するポリオレフィン樹脂被覆紙を少なくとも2枚積層したものである。これにより板状インクジェット記録材料の強度及び耐久性が高くなると同時に、前記合成樹脂系材料を使用した場合と比較して、基紙が天然パルプが主構成であるため、廃棄にかかる環境負荷が低く、焼却時の有害物質の発生が少なく、高熱により焼却炉を痛める問題が無く、環境に非常に優しい特徴を有する。板状基材が天然パルプを成分とする基紙そのものであった場合は、本発明の強度及び耐久性が得られず、また板状基材の主構成が合成樹脂系材料であった場合は環境負荷が大きくなり、本発明が目的とする記録材料が得られない。
【0014】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、天然パルプを成分とする基紙にポリオレフィン樹脂を被覆したものであれば特に制限なく使用できるが、本発明で用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、得られる積層板の表面平滑性、白色性の観点から、特に写真印画紙用もしくはインクジェット記録材料用支持体として用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙が好ましい。
【0015】
この様なポリオレフィン樹脂被覆紙に使用される基紙は、針葉樹材パルプ、広葉樹材パルプ、針葉樹広葉樹混合パルプの木材パルプを主成分とする天然パルプ紙が有効である。これらの基紙中には各種の高分子化合物、添加剤を含有せしめることが出来る。例えば乾燥紙力増強材としてカチオン化殿粉、カチオン化ポリアクリルアミド、アニオン化ポリアクリルアド、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ゼラチンなど、サイズ剤として脂肪酸塩、ロジン誘導体、ジアルキルケテンダイマー乳化物、石油樹脂エマルジョンなど、顔料としてクレー、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンなど、湿潤紙力増強剤としてメラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂など、定着剤として硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどの多価金属塩、カチオン化殿粉などのカチオン変性ポリマーなど、pH調節剤としてカセイソーダ、炭酸ソーダ、塩酸など、無機電解質として食塩、ボウ硝など、そのほか染料、蛍光増白剤、ラテックス等を適宜組み合わせて含有せしめることが出来る。上述の原料により作成した坪量50g/m2〜200g/m2で密度が0.90〜1.15g/cm3の紙基体が本発明のポリオレフィン樹脂被覆紙に使用される基紙として好ましい。
【0016】
この基紙の少なくとも一方の面を被覆するポリオレフィン樹脂とは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などであり、ポリオレフィン樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛などの白色顔料やステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩及び群青、紺青、フタロシアニンブルーなどの顔料や染料を含んでもよい。基紙を被覆する樹脂量は各々10g/m2〜40g/m2が好ましい。
【0017】
ポリオレフィン樹脂被覆紙は、写真用印画紙やインクジェット記録材料の支持体としての用途が一般的に知られている。本発明に用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、写真印画紙やインクジェット記録材料の製造工程で用いられる写真印画紙の支持体であるポリオレフィン樹脂被覆紙をそのまま利用してもよく、場合によっては写真印画紙やインクジェット記録材料用の製造工程において排出される損紙を用いることも可能である。昨今、環境問題から製造工程で排出される各種廃棄物の再利用が叫ばれており、本発明はこのような製造工程で排出されるポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の有効な再利用方法とも言える。従って、本発明の基材に用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、写真印画紙やインクジェット記録材料のための裏塗り層あるいは下引き層を設けたものであっても良い。
【0018】
本発明における板状基材の厚みは0.5mm以上が板状インクジェット記録材料の強度や耐久性がより高くなるため好ましく、0.8mm以上がさらに好ましい。また板状基材の厚みの上限は10mm程度である。また同時に該板状基材の基紙の合計厚み(Tp)と、ポリオレフィン樹脂層の合計厚み(Tr)の関係が、2×Tr<Tp<6×Trであることが好ましく、2×Tr<Tp<4×Trであることがさらに好ましい。2×Tr<Tpであることで焼却時の有害物質の発生等の環境負荷を抑えることが出来、Tp<6×Trであることより、柔軟な基紙にポリオレフィン樹脂の強度が付与されるため耐久性のある板状インクジェット記録材料が得られる。
【0019】
本発明における板状基材を作製する際のポリオレフィン樹脂被覆紙の積層枚数は、前述したように少なくとも2枚以上であり、5枚以上積層する場合に耐久性のある板状インクジェット記録材料が得られるためさらに好ましい。
【0020】
本発明における板状基材に積層するインクジェット記録材料は、例えば通常の紙やポリオレフィン樹脂被覆紙、合成フィルム上にインク受容層を少なくとも1層設けてなる公知のいかなるインクジェット記録材料を使用することが出来るが、中でもポリオレフィン樹脂被覆紙に無機顔料微粒子を主体とし親水性バインダーを含有するインク受容層を塗設してなるインクジェット記録材料が、さらに強度、耐久性やインク吸収性を維持しながら環境に優しい板状インクジェット記録材料を得るためには好ましい。
【0021】
また、本発明においては、板状インクジェット記録材料のインク受容層面が合成樹脂フィルムでラミネートされてなる場合に耐久性をさらに高めることが出来るため好ましい。
【0022】
前記インク受容層をラミネートする合成樹脂フィルムとしては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ナイロン等のポリアミド類、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の公知のフィルムに、熱と圧力によって被ラミネート基材接着可能な公知のヒートシール層を塗設した合成樹脂フィルム等を好適に用いることが出来る。
【0023】
前記合成樹脂フィルムの厚みは特に制限はないが、好ましくは20μm〜150μm、さらに好ましくは100μm〜150μmのものを用いることができる。
【0024】
本発明のインク受容層で使用する無機顔料微粒子としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0025】
高い印字濃度、鮮明な画像、安い製造コストの点では合成シリカ、アルミナやアルミナ水和物が選択され、中でもインク吸収性の観点から合成シリカが好ましく、さらに気相法シリカが好ましい。
【0026】
合成シリカには、湿式法によるものと気相法によるものがある。通常シリカ微粒子といえば湿式法シリカを指す場合が多い。湿式法シリカとしては、▲1▼ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾル、または▲2▼このシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカ、▲3▼シリカゾルをゲル化させ、その生成条件を変えることによって数μmから10μm位の一次粒子がシロキサン結合をした三次元的な二次粒子となったシリカゲル、更には▲4▼シリカゾル、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等を加熱生成させて得られるもののようなケイ酸を主体とする合成ケイ酸化合物等がある。
【0027】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、トクヤマ(株)からQSタイプとして市販されており入手することができる。
【0028】
気相法シリカの一次粒子の平均粒径は、高い光沢を得るためには、5〜30nmが好ましく、BET法による比表面積が150〜500m2/gのものを用いるのが好ましい。本発明で云うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
【0029】
本発明の無機顔料微粒子は、インク受容層の全固形分に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有するものであり、上限は90質量%程度である。
【0030】
無機顔料微粒子を含有するインク受容層は、皮膜としての特性を維持するためにバインダーが用いられるが、親水性バインダーが透明性が高くインクのより高い浸透性が得られるので好ましい。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0031】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0032】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0033】
本発明では、親水性バインダーの量は無機顔料微粒子に対して5〜35質量%がインク吸収性が高まるため好ましく、特に8〜25質量%含有するのが好ましい。
【0034】
本発明において好ましくは、インク受容層に水溶性の金属化合物を含有することによって、更にひび割れを防止することができる。従って、インク吸収性を向上させるために親水性バインダー量の更なる低減及び気相法シリカ付着量の更なる増量が可能となる。
【0035】
水溶性の金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩として、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0036】
本発明において好ましくは、耐水性を向上させるためにカチオンポリマーを含有させるのが好ましい。カチオンポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、5,000以上が好ましく、更に5,000〜10万程度が好ましい。
【0037】
これらのカチオンポリマーの使用量は無機顔料微粒子に対して1〜10質量%、好ましくは2〜7質量%である。
【0038】
本発明において、インク受容層には、親水性バインダーと共に硬膜剤を含有するのが好ましい。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にほう酸あるいはほう酸塩が好ましい。硬膜剤の添加量はインク受容層を構成する親水性バインダーに対して、0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%である。
【0039】
本発明において、インク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0040】
本発明において、インク受容層の塗布方法は、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ケッドバーコーティング方式、バーコター方式、ディップ方式等がある。
【0041】
本発明における板状インクジェット記録材料の製造方法としては、▲1▼板状基材を構成するポリオレフィン樹脂被覆紙を2枚以上積層し、少なくとも一方の面にインクジェット記録材料をさらに積層した後、前記積層したポリオレフィン樹脂被覆紙とインクジェット記録材料を同時に加圧及び加熱することにより貼り合わせる方法、▲2▼板状基材を構成するポリオレフィン樹脂被覆紙を2枚以上積層し加圧及び加熱することにより貼り合わせて板状基材を作製した後、その少なくとも一方の面にインクジェット記録材料を積層し再度加圧及び加熱することにより貼り合わせる方法があり、これによりポリオレフィン樹脂被覆紙のポリオレフィン樹脂が熱により軟化し、圧力により軟化したポリオレフィン樹脂が接着剤としてポリオレフィン樹脂被覆紙の基紙に含浸して、ポリオレフィン樹脂被覆紙同士及びポリオレフィン樹脂被覆紙とインクジェット記録材料が融着するとともに強度が非常に高く、耐久性のある板状インクジェット記録材料が得られる。特に前記▲2▼の場合には、2度加圧及び加熱されることにより耐久性がさらに高まるため好ましい。
【0042】
本発明において、ポリオレフィン樹脂被覆紙を積層し加圧及び加熱することにより貼り合わせて板状基材を作製する場合に、同一構成の複数のポリオレフィン樹脂被覆紙を互いに同じ面が対向するように積層して加圧及び加熱する場合、即ちポリオレフィン樹脂被覆紙は基紙を使用していることより少なからず必ずカールが発生しており凸面と凹面が存在するが、凸面と凸面、凹面と凹面がそれぞれ対向するように積層して貼り合わせた場合は、そのカールが相殺されてフラットに近くなり板状インクジェット記録材料のカール性がさらに良化するために好ましい。
【0043】
ポリオレフィン樹脂被覆紙を積層し貼り合わせる方法としては、例えば前述の特開平9−71036号公報(特許文献3)に例示されている様な、熱可塑性樹脂にエクストルージョンラミネート方式で貼り合わせた場合、一般的に冷却ロールに圧着して冷却するため、冷却ロールの曲率によるカールが発生するため好ましくなく、またポリオレフィン樹脂被覆紙のポリオレフィン樹脂が基紙まで含浸しないため、本発明に必要な強度や耐久性が得られないため好ましくない。また前述の特開2002−2095号公報(特許文献4)に例示されている様な、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエステル系、イソシアネート系、フェノール系、酢酸ビニル系、アクリル系等の接着剤を使用して貼り合わせた場合、ポリオレフィン樹脂被覆紙のポリオレフィン樹脂が基紙まで含浸しないため、本発明に必要な強度や耐久性が得られないため好ましくない。
【0044】
本発明における板状インクジェット記録材料を加圧及び加熱して製造する際に使用する装置としては、上下のプレス型間に枚葉にカット、重ねた状態の被積層材料を挟み、加圧加熱状態にて圧着させるタイプ(以下、ホットプレス装置という)のものが使用される。また、生産効率向上の点から、2本の熱ロール間に加圧状態で被積層材料を連続で通しながら、接着積層しても良いし、加熱方法として高周波を併用することもできる。
【0045】
具体的には、ポリオレフィン樹脂被覆紙をホットプレス装置の下プレス型の上に2枚以上重ね、さらにインクジェット記録材料を該板状基材の少なくとも一方の面に重ねて載せた後、ホットプレス装置の上プレス型を下降させてホットプレス成形を行う。尚、該ホットプレス装置の加圧面の材質は特に制限はなく公知のものを使用できる。
【0046】
本発明においては該ホットプレス成形の条件として、板状基材の含水率が8質量%以下、好ましくは7%以下であり、且つインクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱する際に、インクジェット記録材料の被加圧面温度が70℃〜100℃、好ましくは70℃〜90℃であり、加圧面とインクジェット記録材料の被加圧面との間の圧力が6kg/cm2〜15kg/cm2、好ましくは8kg/cm2〜13kg/cm2となるようにプレスすることにより、脆弱性の高いインク受容層面の表面を過度な圧力により傷つけることなくインク吸収性も良好で、且つ過度の加熱により基材の水分による水蒸気でポリオレフィン樹脂被覆層が膨張する所謂ブリストー現象にて表面性を悪化させることなく、適度な温度と圧力によりポリオレフィン樹脂が軟化して接着剤として基紙に含浸して強度が非常に高く、耐久性のある板状インクジェット記録材料を得ることが出来るため好ましい。
【0047】
上記板状基材の含水率は、貼り合わせる前の板状基材を構成している全基材の含水率の算術平均値で求められる。
【0048】
含水率の測定方法としては、板状基材を20cm×25cmのサイズに5枚断裁し、120℃のオーブンで30分絶乾させた前後の質量差を含水量として、これを絶乾前の質量で除して算出する。(以下、絶乾法という)
【0049】
前記加圧及び加熱する時間は、インクジェット記録材料の被加圧面温度が70℃〜100℃、加圧面とインクジェット記録材料の被加圧面との間の圧力が6kg/cm2〜15kg/cm2の条件を満たせば特に制限はないが、作業性の観点から好ましくは1分〜15分、さらに好ましくは5分〜10分である。
【0050】
本発明においては、該ホットプレス装置の加圧面と被積層材料との間に、100℃以上、好ましくは120℃以上の耐熱温度を有する保護材料を配置して加熱及び加圧を行い、冷却後に該保護材料を積層板から剥離することにより、加圧加熱プレス型の面質の影響を受けることなく、より表面性の優れた板状インクジェット記録材料を得ることができる。尚、本発明でいう保護材料の耐熱温度とは、保護材料の被加熱面が変化しない最大の温度である。
【0051】
本発明に用いられる保護材料としては、例えばポリオレフィン系、シリコン系、ナイロン系、ポリエステル系、フッ素系フイルムおよびこれらの素材を紙に貼り合わせたもの等、100℃以上の耐熱性を有するものであれば特に制限されるものでなく、熱伝導性、表面平滑性の点から適宜選択される。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、実施例に限定されるものではない。
【0053】
<ポリオレフィン樹脂被覆紙A>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5質量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0質量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0質量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5質量%添加し、水で希釈して1質量%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥後調湿して厚さ170μmのポリオレフィン樹脂被覆紙の基紙とした。抄造した基紙の表面に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100質量%の樹脂に対して、10質量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ30μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。裏面であるもう一方の面には密度0.962g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂70質量部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30質量部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
【0054】
その後、樹脂表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/m2となるように塗布乾燥してポリオレフィン樹脂被覆紙Aを作製した。
【0055】
(下引き層)
石灰処理ゼラチン 100質量部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2質量部
クロム明ばん 10質量部
【0056】
<インクジェット記録材料A>
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙Aに下記組成のインク受容層塗布液Aをスライド塗布装置で塗布量が固形分で25g/m2になるように塗布、乾燥し、インクジェット記録材料Aを得た。
(インク受容層塗布液A)
気相法シリカ 100質量部
(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m2/g)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー 4質量部
(第一工業製薬(株)製、シャロールDC902P、分子量9000)
ほう酸 4質量部
ポリビニルアルコール 18質量部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3質量部
【0057】
<インクジェット記録材料B>
濾水度450mlCSFのLBKP70質量部、濾水度450mlCSFのNBKP30質量部から成る木材パルプ100質量部に、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウム/タルクの比率が30/35/35の顔料5質量部、市販アルキルケテンダイマー0.1質量部、市販カチオン系アクリルアミド0.03質量部、市販カチオン化澱粉1.0質量部、硫酸バンド0.5質量部を調成後、長網抄紙機を用いて坪量80g/m2で抄造し、市販酸化澱粉をインクラインドサイズプレスで乾燥付着量5g/m2させて乾燥してインクジェット記録材料Bの基紙を得た。その後、該基紙上に以下のインク受容層塗布液Bを固形分が9g/m2となるようにエアーナイフコーターにより塗布・乾燥し、これをスーパーカレンダー処理してインクジェット記録材料Bを得た。
【0058】
(インク受容層塗布液B)
合成非晶質シリカ
(徳山曹達株式会社製:ファインシールX37B) 100質量部
ポリビニルアルコール
(クラレ株式会社製:PVA117) 30質量部
カチオン性染料定着剤
(住友化学工業株式会社製:スミレーズレジン1001)20質量部
【0059】
<インクジェット記録材料C>
上記のインクジェット記録材料Bのインク受容層面側に、光沢を付与するため、さらに以下のインク受容層塗布液Cを固形分が6g/m2となるようにエアーナイフコーターにより塗布した後に、加熱した鏡面ロールに圧接してキャスト処理・乾燥してインクジェット記録材料Cを得た。
【0060】
(インク受容層塗布液C)
コロイダルシリカ
(日産化学株式会社製:スノーテックスXL) 100質量部
変性アクリルエマルジョン
(ヘキスト合成株式会社製:モビニール8020:) 15質量部
アルカリ溶解したカゼイン
(ニュージランド製) 10質量部
【0061】
実施例1
板状基材として前記ポリオレフィン樹脂被覆紙AをA4サイズにカットし同方向に10枚重ね、さらにその一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスにて、被加圧面圧力8kg/cm2、被加圧面温度80℃、時間8分間の条件で加圧加熱成形し、貼り合わせて実施例1の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0062】
実施例2
板状基材として前記ポリオレフィン樹脂被覆紙AをA4サイズにカットし同方向に10枚重ね、さらにその両面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスした以外は実施例1と同様にして実施例2の板状インクジェット記録材料Aを作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0063】
実施例3
<ポリオレフィン樹脂被覆紙B>
ポリオレフィン樹脂被覆紙Aの裏面のポリオレフィン樹脂をコーティングしなかった以外はポリオレフィン樹脂被覆紙Aと同様にして、ポリオレフィン樹脂被覆紙Bを作製した。
【0064】
板状基材として上記ポリオレフィン樹脂被覆紙BをA4サイズにカットし同方向に10枚重ね、さらにその一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスした以外は実施例1と同様にして実施例3の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ1.7mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0065】
実施例4
実施例1の板状インクジェット記録材料のインク受容層面側に、片面にヒートシール層を有する38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの接着層面を重ね合わせ、100℃加熱された直径30mmのスチールローラと直径30mmのゴムローラ対に、ラミネートフィルムがスチールローラ側になるよう加熱圧着させて、実施例4の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0066】
実施例5
板状基材として前記ポリオレフィン樹脂被覆紙AをA4サイズにカットし同方向に2枚重ね、さらにその一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスした以外は実施例1と同様にして実施例5の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ0.4mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0067】
実施例6
<ポリオレフィン樹脂被覆紙C>
基紙として、長網抄紙機で坪量200g/m2になるように抄造し乾燥後調湿して厚さ200μmとし、且つ表裏のポリオレフィン樹脂をそれぞれ厚さ15μmになるように押出コーティングした以外は、ポリオレフィン樹脂被覆紙Aと同様にして、ポリオレフィン樹脂被覆紙Cを作製した。
【0068】
板状基材として上記ポリオレフィン樹脂被覆紙CをA4サイズにカットし同方向に10枚重ね、さらにその一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスした以外は実施例1と同様にして実施例6の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0069】
実施例7
インクジェット記録材料として、実施例1のインクジェット記録材料Aをインクジェット記録材料Bに代えた以外は実施例1と同様にして実施例7の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0070】
実施例8
インクジェット記録材料として、実施例1のインクジェット記録材料Aをインクジェット記録材料Cに代えた以外は実施例1と同様にして実施例8の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0071】
比較例1
板状基材として実施例1のポリオレフィン樹脂被覆紙Aに代えて、ポリオレフィン樹脂被覆紙Aの製造過程で抄造された基紙を用いた以外は実施例1と同様にしてホットプレスにより比較例1の板状インクジェット記録材料を作製しようとしたが、基紙がポリオレフィン樹脂層を有していなかったため未接着であった。そこで、各々の基紙の接着面にアクリル系接着剤を固形分として10g/m2になるように塗布・乾燥し、A4サイズにカットし同方向に10枚重ね、さらにその一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、圧着することでドライラミネートして比較例1の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ1.8mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0072】
比較例2
板状基材としてポリエチレンテレフタレートに代えた以外は比較例1と同様にしてドライラミネートして比較例2の板状インクジェット記録材料を作製した。尚、該ポリエチレンテレフタレートも比較例1と同様にホットプレスによる接着は不可能であった。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2.1mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0073】
比較例3
板状基材として前記ポリオレフィン樹脂被覆紙AをA4サイズにカットしたものを1枚用意し、該基材の一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスした以外は実施例1と同様にして比較例3の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ0.2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0074】
作製した実施例1〜8及び比較例1〜3の板状インクジェット記録材料の強度、耐久性、カール性、表面性、インク吸収性及び環境負荷に関して以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0075】
<強度>
作製した板状インクジェット記録材料を折り曲げたときの強度を2mm厚のアクリル樹脂板と比較して以下の基準で評価した。
◎:アクリル樹脂板以上の強度を持つ
○:アクリル樹脂板同等の強度を持つ
△:アクリル樹脂板には劣るが2mm厚のボール紙を越えるの強度を持ち実用上使用可能
×:2mm厚のボール紙以下の強度であり実用上使用不可
【0076】
<耐久性>
作製した板状インクジェット記録材料にエプソン社製MC−7000で黒ベタを印字し、10分間水に含浸した後乾燥させた。含浸前と含浸・乾燥後の印字部、用紙表面及び端部の変化を以下の基準で目視評価した。
◎:試験前後で全く変化無し
○:試験前後で印字部がやや変化しているが一見では分からないレベル
△:試験前後で印字部、用紙表面は変化しているものの端部の変化はなく実用上使用可能
×:試験前後で印字部、用紙表面及び端部の内、一つ以上が著しく変化しており実用上使用不可
【0077】
<カール性>
作製したA4の板状インクジェット記録材料を水平面上に試料の中心が凹になるようにして静置し、試料のインク受容層面が凹の場合の四隅の高さを測定し平均値として計算した。
◎:1mm以下。
○:1mmより大で3mm以下。実使用上下限。
×:3mmより大。実使用不可。
【0078】
<表面性>
作製した板状インクジェット記録材料の表面性を以下の基準で目視評価した。
◎:表面性良好
○:やや表面性悪化しているが実用上問題なし
△:上記○レベルより表面性悪化しているが実用上問題なし
×:著しく表面性が悪化しており実用上不可
【0079】
<インク吸収性>
作製した板状インクジェット記録材料にエプソン社製MC−7000でコンポジット黒ベタを印字し、直後にPPCを圧着し端がしたときのPPCへのインク転写程度を以下の基準で目視評価した。
◎:全くインクが転写して無くインク吸収性が非常に良好
○:ややインクが転写しているがインク吸収性として実用上下限
×:著しくインクが転写しておりインク吸収性として実用上不可
【0080】
<環境負荷>
作製した板状インクジェット記録材料を以下の基準で評価した。
○:天然パルプを主体として用いているため、環境負荷が小さい
×:合成樹脂フィルムを主体として用いているため、環境負荷が大きい
【0081】
【表1】
【0082】
表1から明らかなように、本発明の板状インクジェット記録材料は、強度が非常に高く、耐候性があり、カール性、表面性及びインク吸収性が良好で、且つ、天然パルプ素材を中心とする環境に優しい板状インクジェット記録材料であることが判る。中でも実施例5及び6と実施例1との関係より、板状基材の厚みが0.5mm以上であり、且つ該板状基材の基紙の合計厚み(Tp)と、ポリオレフィン樹脂層の合計厚み(Tr)の関係が、2×Tr<Tp<6×Trである場合に、より強度と耐久性が高くなることが判る。また、実施例7及び8と実施例1との関係より、板状基材に積層するインクジェット記録材料が、ポリオレフィン樹脂被覆紙に無機顔料微粒子を主体とし親水性バインダーを含有するインク受容層を塗設してなる場合に、より耐久性が高くなることが判る。また、実施例4と実施例1との関係より、板状インクジェット記録材料のインク受容層面が、合成樹脂フィルムでラミネートされてなる場合に、より耐久性が高くなることが判る。
【0083】
対して、比較例1の板状インクジェット記録材料は、板状基材が基紙であったため、強度及び耐久性が低く実用上問題となった。また、比較例2の板状インクジェット記録材料は、板状基材が合成樹脂系材料であるポリエチレンテレフタレートであったため、廃棄、焼却時の有害物質の発生等の環境負荷が大きかった。また比較例3の板状インクジェット記録材料は、ポリオレフィン樹脂被覆紙を1枚しか使用しなかったため強度と耐久性が低く実用上問題となった。
【0084】
実施例9
実施例1のポリオレフィン樹脂被覆紙Aを、板状基材の含水率が前記絶乾法にて8.5質量%となるように水分調整して作製し使用した以外は実施例1と同様にして実施例9の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであった。
【0085】
実施例10
実施例1のホットプレス時の被加圧面温度を120℃とした以外は実施例1と同様にして実施例10の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0086】
実施例11
実施例1のホットプレス時の被加圧面圧力を20kg/cm2とした以外は実施例1と同様にして実施例11の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0087】
実施例12
実施例1のホットプレス時に加圧面とインクジェット記録材料Aの間に120℃の耐熱性を有するナイロン製フィルムを配置して加熱加圧成形し冷却後に該保護材料を剥離した以外は、実施例1と同様にして実施例12の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0088】
実施例13
板状基材として前記ポリオレフィン樹脂被覆紙AをA4サイズにカットし互いに同じ面が対向するように10枚重ね、さらにその一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスした以外は実施例1と同様にして実施例13の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0089】
実施例14
板状基材として前記ポリオレフィン樹脂被覆紙AをA4サイズにカットし同方向に10枚重ねた後、ホットプレスにて被加圧面圧力8kg/cm2、被加圧面温度80℃、時間8分間の条件で加圧加熱成形した後、再度、その一方の面に前記インクジェット記録材料Aをインク受容層が外側になるように重ねた後、ホットプレスにて、被加圧面圧力8kg/cm2、被加圧面温度80℃、時間8分間の条件で加圧加熱成形し、貼り合わせて実施例14の板状インクジェット記録材料を作製した。作製した板状インクジェット記録材料の断面より板状基材の厚みを測定したところ2mmであり、板状基材の含水率を前記絶乾法にて測定したところ6.5質量%であった。
【0090】
作製した実施例1及び実施例9〜14の板状インクジェット記録材料を、前記と同様にして強度、耐久性、カール性、表面性、インク吸収性及び環境負荷に関して評価した。結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
表2から明らかなように、本発明の板状インクジェット記録材料の製造方法は、強度が非常に高く、耐候性があり、カール性、表面性及びインク吸収性が良好で、且つ、天然パルプ素材を中心とする環境に優しい板状インクジェット記録材料が得られることが判る。中でも実施例9〜11と実施例1との関係より、板状インクジェット記録材料の含水率が8質量%以下であり、且つインクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱する際に、インクジェット記録材料の被加圧面温度が70℃〜100℃、加圧面とインクジェット記録材料の被加圧面との間の圧力が6kg/cm2〜15kg/cm2である場合に、より表面性が良好となることが判る。また、実施例12と実施例1との関係より、インクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱する際に、加圧面とインクジェット記録材料との間に、100℃以上の耐熱性を有する保護材料を配置して加熱及び加圧を行い、冷却後に該保護材料を剥離する場合に、より表面性が良好となることが判る。また、実施例13と実施例1との関係より、板状基材が、両面をポリオレフィン樹脂で被覆した同一構成の複数のポリオレフィン樹脂被覆紙を互いに同じ面が対向するように積層された場合に、よりカール性が良好となることが判る。また、実施例14と実施例1との関係より、ポリオレフィン樹脂被覆紙を積層し加圧及び加熱することにより貼り合わせて板状基材を作製した後、その少なくとも一方の面にインクジェット記録材料を積層し再度加圧及び加熱することにより貼り合わた場合に、耐久性がさらに高くなることが判る。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、強度が非常に高く、耐候性があり、カール性、表面性及びインク吸収性が良好で、且つ、天然パルプ素材を中心とする環境に優しい板状インクジェット記録材料が得られた。
Claims (9)
- 基材が、基紙の少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層を有するポリオレフィン樹脂被覆紙を少なくとも2枚積層した板状基材であって、該板状基材の少なくとも一方の面に、インクジェット記録材料を積層したことを特徴とする板状インクジェット記録材料。
- 前記板状基材の厚みが0.5mm以上であり、且つ該板状基材の基紙の合計厚み(Tp)と、ポリオレフィン樹脂層の合計厚み(Tr)の関係が、2×Tr<Tp<6×Trである請求項1に記載の板状インクジェット記録材料。
- 前記インクジェット記録材料が、ポリオレフィン樹脂被覆紙に無機顔料微粒子を主体とし親水性バインダーを含有するインク受容層を塗設してなることを特徴とする請求項1または2に記載の板状インクジェット記録材料。
- 前記板状インクジェット記録材料のインク受容層面が、合成樹脂フィルムでラミネートされてなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の板状インクジェット記録材料。
- 請求項1に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法であって、基紙の少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層を有するポリオレフィン樹脂被覆紙を少なくとも2枚積層した板状基材と、該板状基材の少なくとも一方の面に、インクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱することにより貼り合わせることを特徴とする板状インクジェット記録材料の製造方法。
- 請求項1に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法であって、前記ポリオレフィン樹脂被覆紙を積層し加圧及び加熱することにより貼り合わせて板状基材を作製した後、その少なくとも一方の面にインクジェット記録材料を積層し再度加圧及び加熱することにより貼り合わせることを特徴とする板状インクジェット記録材料の製造方法。
- 前記板状インクジェット記録材料の製造方法であって、前記板状基材が、両面をポリオレフィン樹脂で被覆した同一構成の複数のポリオレフィン樹脂被覆紙を互いに同じ面が対向するように積層することを特徴とする請求項5または6に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法。
- 前記板状基材の含水率が8質量%以下であり、且つインクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱する際に、インクジェット記録材料の被加圧面温度が70℃〜100℃で、且つ加圧面とインクジェット記録材料の被加圧面との間の圧力が6kg/cm2〜15kg/cm2である請求項5〜7の何れか1項に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法。
- 前記板状インクジェット記録材料の製造方法において、インクジェット記録材料を積層し加圧及び加熱する際に、加圧面とインクジェット記録材料との間に、100℃以上の耐熱温度を有する保護材料を配置して加熱及び加圧を行い、冷却後に該保護材料を剥離することを特徴とする請求項5〜8の何れか1項に記載の板状インクジェット記録材料の製造方法。
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2003
- 2003-02-24 JP JP2003045755A patent/JP2004255595A/ja active Pending
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