JP2004254512A - 料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法とその製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】精米歩合99%〜70%の白米またはくず米、小米等の蛋白質が多い原料を使用して原清酒を醸造し、前記原清酒を単式蒸留して分離し、蒸留分をアルコール濃度50〜70V/V%の清酒醸造用アルコールとして取り出し、かつ、同時に蒸留残分をアルコール濃度1〜13V/V%の料理用清酒または1%未満の料理用調味液として取り出すことができ、さらに、前記清酒醸造用アルコールを清酒もろみに添加して新規清酒を得ることができる料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、清酒の製造および蒸留操作を含んだ方法に関し、特に清酒由来の旨味成分を濃縮した料理用清酒または料理用調味液と香気成分の濃縮を図った新規清酒とを得る製造方法及び前記製造方法で製造された新規清酒、料理用清酒と料理用調味液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常行われている清酒の製造では、アミノ酸等の成分を減少させて淡麗な酒質の清酒を造る目的で、精米歩合70%以下、すなわち蛋白質含量が少ない白米が原料として使用されることが多い。また、近年は香味、色沢が良好な純米酒、吟醸酒が好まれ、特に吟醸酒の場合には、精米歩合60%以下の白米が用いられている。
【0003】
また、清酒は色々な料理に風味向上を目的として広く使用されている。その使用に際しては、煮切りと称して一旦清酒を加熱してアルコール分の一部あるいは全部を飛散させてアミノ酸等の旨味成分を濃くして調味料として使用されることが多い。また、通常の米焼酎は白米を原料とするもろみをそのまま蒸留するか、一旦もろみを搾って蒸留するかして製造されている。この米焼酎は使用する麹の種類の違いから清酒の成分とは異なっているので、料理用に使われることがほとんどない。まして蒸留廃液から料理酒が製造されることはなかった。
【0004】
しかし、最近、米焼酎の蒸留残液を再度又は繰返しアルコール発酵を行った蒸留残液から発酵調味料及びその製造方法が開示されている(特開2000−135068号公報参照)。この発明はそれなりに有効であるが、工程が複雑で、かつ、蒸留残渣を除去しなければならない不具合があった。
【0005】
また、近年嗜好は多様化しておりロックで飲まれるタイプの清酒が求められている。しかし、現在市販されている通常の清酒をロックで飲むと成分が薄くなり、味のバランスが崩れて水っぽくなってしまう問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の現状を鑑みて、白米の精米歩合を高めて白米成分を歩留まり良く有効活用を図った原清酒から簡便な方法で多種多様に使用される料理用清酒、料理用調味液、新規清酒を得ることを目的とした。すなわち、清酒の醸造法をベースとして、清酒由来の旨味成分を濃縮した料理用清酒および清酒由来の香気成分を濃縮した高アルコール濃度または通常アルコール濃度の新規清酒の製造法を確立することである。精米歩合99〜70%の通常清酒醸造に使用され難い白米を用いた場合に、清酒を蒸留することによって、清酒中に多く生成されるアミノ酸類の旨味成分を料理用清酒または料理用調味液に、また、香気成分とアルコール分を新規清酒に濃縮する製造方法を確立するために、鋭意研究を行うことで本発明を完成するに到ったのである。
【0007】
本発明は、原清酒から蒸留分離することで、蒸留残分である煮切り等の操作をしなくてもそのまま使用できる旨味成分の濃縮された料理用清酒または料理用調味液と、蒸留分である香気が濃縮された清酒醸造用アルコールとを製造する。さらに、清酒醸造において前記清酒醸造用アルコールを添加使用することにより香気成分が濃縮された通常アルコール濃度の新規清酒を製造する。さらに、清酒醸造において前記清酒醸造用アルコールを使用してロックで飲んでも香味のバランスが崩れない高アルコール濃度の新規清酒の製造する方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明(請求項1)に係る料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法によれば、精米歩合99%〜70%の白米またはくず米、小米等の蛋白質が多い原料を使用して原清酒を醸造し、前記原清酒を単式蒸留して分離し、蒸留分をアルコール濃度50〜70V/V%の清酒醸造用アルコールとして取り出し、かつ、同時に蒸留残分をアルコール濃度1〜13V/V%の料理用清酒または1V/V%未満の料理用調味液として取り出すこと、また前記清酒醸造用アルコールを清酒もろみに添加して新規清酒を得ることができる。また、本発明(請求項2)に係る料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法によれば、精米歩合70%以下の白米を使用して原清酒を醸造し、前記原清酒を単式蒸留して分離し、蒸留分をアルコール濃度50〜70V/V%の清酒醸造用アルコールとして取り出し、かつ、同時に蒸留残分をアルコール濃度1〜13V/V%の料理用清酒または1V/V%未満の料理用調味液として取り出すこと、また前記清酒醸造用アルコールを清酒もろみに添加して新規清酒を得ることができる。また、本発明(請求項3)に係る新規清酒の製造方法によれば、請求項1または2に記載の清酒醸造用アルコールを清酒もろみ工程の最終段階で添加した後、上槽してアルコール濃度15〜20V/V%の新規清酒を得ることができる。また、本発明(請求項4)に係る新規清酒の製造方法によれば、請求項1または2に記載の清酒醸造用アルコールを清酒もろみ工程の最終仕込後5日目までに添加し、添加後1日以内に上槽してアルコール濃度20〜40V/V%の新規清酒を得ることができる。また、本発明(請求項5)に係る新規清酒は、請求項4に記載の新規清酒の製造方法で製造したアルコール濃度が20〜40V/V%の新規清酒である。本発明(請求項6)に係る料理用清酒は、請求項1または2に記載の料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法で製造したアルコール濃度が1〜13V/V%の料理用清酒である。本発明(請求項7)に係る料理用調味液は、請求項1または2に記載の料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法で製造したアルコール濃度が1V/V%未満の料理用調味液である。
【0009】
本発明は、精米歩合の高い白米などを用いて清酒醸造すると、アミノ酸等の旨味成分がより多く含まれる原清酒が得られ、前記原清酒を単式蒸留することにより、蒸留分に香気成分が濃縮されたアルコール濃度の高い清酒醸造用アルコールを、蒸留残分に旨味成分が濃縮された低アルコール濃度の料理用清酒または料理用調味液を同時に取り出す製造方法である。また、精米歩合70%以下の白米で醸造された従来の清酒でもアミノ酸等は含まれているので、これを蒸留分離して旨味成分として蒸留残分に取り残すことは可能である。また、旨味成分が濃縮された蒸留残分は低アルコール濃度になるが、酒税法上、清酒はアルコール濃度が1V/V%以上と定義されているので、アルコール濃度が1〜13V/V%のものを料理用清酒とし、アルコール濃度が1V/V%未満のものを料理用調味液としたのである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る料理用清酒および新規清酒の製造工程のフローシートの一例である。原清酒は通常の清酒製造方法に準じ、蒸米製造工程、麹製造工程、酒母製造工程、もろみ製造工程および上槽工程を経て製造される。原清酒の原料米は精米歩合99〜70%の白米が適し、蛋白質含量が多く含まれることから醸造工程で旨味成分であるグリシン、アラニン等のアミノ酸類及びコハク酸、乳酸等の有機酸が多く生成する。
この精米歩合は90〜75%が旨味成分の点で好適である。蛋白質含量が多く含まれる点からくず米、小米、低品位米も原料米として適する。精米歩合70%以下を用いる純米酒、吟醸酒等の特定名称の清酒に準ずる原清酒の場合でも、これらの旨味成分および香気成分を料理用清酒および新規清酒に活用できる点で好ましい。麹製造工程における麹は蒸し米粒に黄麹菌(AspergillusOryzae)を純粋培養させるばら麹を用いる。麹菌の生育最適温度はアミラーゼ系酵素を多く生産するのには37〜38℃とされているが、他方、タンパク質を分解してアミノ酸を生成するタンパク分解酵素群の生産はこの温度範囲より3〜5℃低目の方が好ましい。製麹法は蓋麹法の在来法でも良いし、機械製麹法でも良い。酒母製造工程で製造される酒母は生もと系酒母でも良いし、速醸系酒母でも良い。
【0011】
もろみ製造工程は酒母に蒸し米、麹、汲み水を一定の割合で配合し、糖化と発酵の調和と清酒らしい香味を得るため、10〜17℃で20〜30日間にわたり発酵させる。清酒もろみは総糖分が40%になる濃厚仕込みを行うが、仕込み初期に酵母を大量に増殖させるために麹と蒸し米とを3回に分割しておおよそ1:2:4(初添:仲:留)の量比で仕込む三段仕込みを行うのが良く、また、一段仕込みでも問題は無い。アルコール濃度は最終段階で18.5〜19.5V/V%になる。主要な酸を乳酸とコハク酸とする酸度は15日目位に2.0〜2.8となり、以降は増加しない。アミノ酸は白米の精米歩合によって左右され、かつ、もろみの発酵温度によっても左右されるが、最終段階で2.0〜2.5の範囲になる。もろみの末期に醸造アルコールを添加しても良いが、本発明においては香味を損なわないために添加しない方が好ましい。上槽して、原清酒と酒粕に分離する方が、蒸留残分をそのまま料理用清酒又は料理用調味料とすることができるので好ましい。上槽からおり引き、濾過によって清澄された原清酒は直ちに蒸留しても良いし、貯蔵して蒸留するのでも良い。
【0012】
次いで、前記原清酒は蒸留操作に掛けて、蒸留分で香気成分が濃縮された清酒醸造用アルコールと、蒸留残分で旨味成分が濃縮された料理用清酒または料理用調味液とを同時に分離して取り出すことができる。蒸留操作には図2に示すような蒸留分のアルコール濃度及び香気成分が、かつ、蒸留残分のアルコール濃度及び旨味成分が調節しやすい単式蒸留器を適用する。単式蒸留器は加熱のための蒸気入り口1から蒸気はジャケット2に入り、間接的に蒸留釜3内の原清酒を加熱させる。蒸留釜3は密閉式で、通常ステンレス鋼製である。蒸留釜3で発生したアルコール蒸気は真空ポンプ5の減圧吸引によって冷却器4に送られ、冷却されて清酒醸造用アルコール液として密閉タンク6内に溜められる。常圧蒸留の液温85〜95℃に比べて、真空ポンプ5を用いる減圧蒸留(減圧度マイナス100〜300mmHg)では液温を50〜70℃と低くくして蒸留できるので、清酒醸造用アルコールが比較的高沸点成分が少なく香味が軽快になるので好ましい。
清酒醸造用アルコールの濃度は50〜70V/V%の範囲である。
【0013】
アルコール濃度50〜70V/V%の清酒醸造用アルコールを用いて製成される新規清酒は二種類あり、通常のアルコール濃度14〜20V/V%の新規清酒と高アルコール濃度20〜40V/V%の新規清酒がある。通常のアルコール濃度の新規清酒は定法の清酒醸造法でもろみ製造工程の最終段階で、前記アルコール濃度50〜70V/V%の清酒醸造用アルコールに加水したアルコール濃度30〜60V/V%程度としたものを添加し、その後上槽して20〜22V/V%アルコール濃度の新酒を造り、これを火入れ・貯蔵熟成してから濾過加水してアルコール濃度14〜20V/V%の新規清酒とする。これにより香気を含め香味成分が濃縮された新規清酒が得られる。
【0014】
高アルコール濃度20〜40V/V%の新規清酒は定法の清酒醸造法で、清酒もろみ工程の最終仕込み後5日以内に、前記アルコール濃度50〜70V/V%の清酒醸造用アルコールをそのまま、または加水してアルコール濃度30〜60V/V%程度としたものを添加し、1日以内に上槽して製造される。製造後火入れ・貯蔵熟成し、濾過して、さらに必要があれば加水し、高アルコール濃度の新規清酒とする。これにより香気を含め香味成分が濃縮された高アルコール濃度の新規清酒が得られる。清酒醸造用アルコールを添加し、1日以内に上槽するのは、添加後日を置くと酵母菌が自己消化してアミノ酸が出来て味を損なうからこれを防止するためである。また、前記アルコール濃度50〜70V/V%の清酒醸造用アルコールを加水して清酒風の風味を有する米焼酎を製造することも可能である。
【0015】
料理用清酒または料理用調味液としては蒸留操作によりアルコール濃度13V/V%からほぼ0V/V%に調節できる。すなわち、原清酒を蒸留して前記原清酒に含まれるアルコール分は蒸留分と蒸留残分とに分配されるが、蒸留分である醸造用アルコールはアルコール濃度が50〜70V/V%の範囲であるのに対し、蒸留残分である料理用清酒または料理用調味液は蒸留時間を長く取ればアルコール濃度が下がるので、そのアルコール濃度を13V/V%からほぼ0V/V%に近い範囲まで調整することが可能である。
【0016】
アルコール濃度1〜13V/V%の料理用清酒は濃縮された旨味成分が料理の風味向上に用いられるが、アルコール濃度5〜13V/V%の料理用清酒は料理用味付け清酒として用いられ、その中でもアルコール濃度8〜12V/V%のものが風味向上により好ましい。また、アルコール濃度8〜10V/V%の料理用清酒は加熱して、焼いたフグの鰭や蟹の甲羅を、あるいは梅、かつお、とろろこんぶを浸漬して風味を抽出すれば、火を点けてアルコール分を飛ばす必要が無く、すなわち、アルコール臭が抑えられた香りや旨味成分に富んだ燗酒を得ることができる。また、アルコール濃度1〜5V/V%のものは鍋料理用スープ清酒として用いるのが良く、アルコール濃度1V/V%未満の料理用調味液は鍋料理用スープとして用いるのが良い。
【0017】
実施例を次に挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0018】
【実施例1】
原料米「金南風」を精米歩合85%と70%に精米し定法によって仕込を行い清酒を製造した。すなわち、製麹、酒母製造、初添仕込み、仲添仕込み、留添仕込み、糖化発酵の工程を経て発酵終了後上槽し、製成清酒A,Bを得た。その仕込配合を表1に、製成清酒の成分を表2に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
清酒Aは精米歩合85%の白米で銘柄「金南風」を使用したもので、清酒Bは精米歩合70%の白米で銘柄「金南風」を使用したものである。成分分析は第四回改正国税庁所定分析法注解に記載の方法で行った。精米歩合85%の白米を使用して製造した清酒Aのほうが精米歩合70%の白米で製造した通常レベルの清酒Bよりもアミノ酸が25%増加した。
【0022】
【実施例2】
実施例1で得られた清酒A5lを原清酒として、単式減圧蒸留器である東京理化器械(株)製ロータリーエバポレーターを使って液温50〜70℃、真空圧−200mmHgで減圧蒸留し、蒸留分として清酒醸造用アルコール1lと蒸留残分として料理用清酒4lとを得た。その各々の成分を表3に示す。
【0023】
【表3】
【0024】
成分分析は第四回改正国税庁所定分析法注解に記載の方法で行った。酸度、アミノ酸度は0.1NNaOHl/10ml、糖分はgr/100ml、アルコールはV/V%で表す。この結果、料理用清酒の旨味成分(アミノ酸3.10)は通常レベルの清酒B(アミノ酸2.0)の約1.6倍に増加した。
【0025】
【実施例3】
実施例2で得られた清酒醸造用アルコール(本発明)、明石醗酵工業(株)製の糖蜜を醸造した醸造用アルコール(比較例1)および市販米アルコール(比較例2)の3種をアルコール濃度58V/V%に調整し、表1の仕込配合で精米歩合70%の白米(金南風)を使用して仕込み、発酵が終了した清酒もろみ各2lにそれぞれ各400mlづつ添加後上槽し、それぞれ新規清酒、製成酒(比較例1)及び製成酒(比較例2)を得た。各製成酒の成分を表4に、各製成酒の官能評価を表5に示す。
【0026】
【表4】
【0027】
香気成分はヘッドスペースガスクロマトグラフ法により測定を行った。
【0028】
【表5】
【0029】
官能検査は5点法(1:良い〜5:悪い)で行い、対照である製成酒(比較例1)を3点として、パネラー8名の平均値で表した。実施例2で得られた清酒醸造用アルコールを使用して出来た新規清酒は他の原料由来のアルコールを使用した、すなわち、糖蜜が原料の製成酒(比較例1)、米が原料の製成酒(比較例2)に比べて、清酒由来の香気成分である酢酸イソアミル、イソアミルアルコール、カプロン酸エチル等が多く含まれ、官能評価も高くなった。又異原料である糖蜜からの醸造用アルコールを使用して製造した製成酒(比較例1)と比べ、清酒醸造用アルコールを使用して製造した新規清酒は添加アルコール由来の違和感が無く、純米酒の様な爽やかな風味の清酒となった。
【0030】
【実施例4】
原料米「金南風」を精米歩合85%に精米し定法によって仕込を行い原清酒を製造した。原清酒1435lを図2に示すようなジャケット2付き密閉ステンレス蒸留釜3に入れ、ジャケット下部よりジャケット2内に蒸気を吹き込み蒸留釜3内の原清酒を50℃〜80℃に加熱させた。次に蒸留釜3の上部に溜まった蒸気を真空ポンプ5で冷却器4の蛇管を通して冷却してから密閉タンク6に導きアルコール分58V/V%の清酒醸造用アルコール100lを得た。蒸留後、ジャケット2内に冷水(15℃)を循環させて冷却し、蒸留釜3内に料理用清酒1320lを得た。その結果を表6に示す。
【0031】
【表6】
【0032】
成分分析は第四回改正国税庁所定分析法注解に記載の方法で行った。香気成分はヘッドスペースガスクロマトグラフ法により測定を行った。清酒醸造用アルコールは香気成分である酢酸イソアミル、イソアミルアルコール及びカプロン酸エチルが濃縮され、反対に料理用清酒には旨味成分であるアミノ酸度が濃縮された結果が得られた。
【0033】
【実施例5】
実施例4で得られたアルコール濃度58.0V/V%の清酒醸造用アルコールを使用して、表7の仕込配合で清酒醸造を行った。
【0034】
【表7】
【0035】
まず、速醸系酒母を製造するために、ステンレスポット(容量3l)に仕込水250ml、加工用米の麹180gr(白米150gr分)と乳酸1gを加え15℃で2時間水麹を行った。次いで、麹エキス(ボーメ7)10mlに酵母菌(自社酵母SKR−17)を植菌し、30℃で36時間培養後、沈殿を仕込水5mlで懸濁させて前記の水麹に加えて酒母を仕込み、定法により超速醸仕込で酒母を製造した。酒母製造後、初添えを行った。すなわち、酒母をステンレスタンク(容量20l)に移し、仕込水1150ml、麹120gr(白米100gr分)と蒸米1300gr(白米1000gr分)を加えて添仕込を行った。添仕込後、もろみのアルコール分を毎日分析し、仕込時より1%以上増加した時点(仕込4日目)で清酒醸造用アルコール2400mlと追水500mlを添加し、遠心分離機で上槽しアルコール濃度31.5V/V%の新規清酒約4lを得た。新規清酒の成分を表8に示す。
【0036】
【表8】
【0037】
得られた新規清酒をアルコール分25%まで加水したものと当社の純米酒(比較例1)市販米焼酎(比較例2)との成分比較を表9に示す。さらに、新規清酒(本発明)と純米酒(比較例1)及び米焼酎(比較例2)をロックにして官能検査をした結果を表10に示す。一般分析値については第四回改正国税庁所定分析法注解に記載の方法により、香気成分についてはヘッドスペースガスクロマトグラフ法により測定を行った。アミノ酸度は0.1NNaOHml/10mlで表す。
【0038】
【表9】
【0039】
その結果、本発明の新規清酒は比較例1又は2に比べて香気成分である酢酸イソアミル、イソアミルアルコール及びカプロン酸エチルに最も富み、かつ、アミノ酸度も市販の清酒よりも少なく、米焼酎のアミノ酸度に近いものが得られた。
【0040】
【表10】
【0041】
官能検査は5点法(1:良い〜5:悪い)で行い対照を3点として、パネラー8名の平均値で表した。清酒醸造用アルコールを使用して製造した新規清酒は従来の清酒でも米焼酎でもない新規な香味がありロックでも香り及び味のバランスが崩れなかった。
【0042】
【実施例6】
アルコール濃度5V/V%の料理用清酒(本発明)と市販清酒(櫻正宗(株)上撰)のアルコール濃度を15及び10V/V%になるように加水したもの(比較例1及び比較例2)とをそれぞれ300mlを土鍋(容量500ml)入れて蓋をしてガスコンロ上で加熱した。約5分後沸騰しかけたのを見てガス着火器で点火した。その結果を表11に示す。
【0043】
【表11】
【0044】
上記の結果は通常の煮きり操作にあたるが、アルコール濃度が高いほど炎が大きく、かつ長時間燃焼し続けるので大変危険であることが分った。本発明のアルコール濃度5V/V%の料理用清酒はコンロ上で加熱しても着火の危険性は無いので、例えば、この料理用清酒を鍋料理用スープと使用しても着火する危険性が無いことが分かった。
【0045】
【発明の効果】
本発明に係る請求項1の料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法によれば、通常よりも精米歩合の高い白米の持つタンパクを有効に活用できて、旨味成分を多く取り出して料理用清酒または料理用調味液とすることができる。これにより白米成分を有効に歩留まり良く活用できる。また、原清酒を簡易な装置で単式蒸留することにより、旨味成分を料理用清酒または料理用調味液に、香気成分を清酒醸造用アルコールに同時に分離濃縮することができる。また、前記清酒醸造用アルコールを清酒もろみに添加してさらに香味成分が濃縮された新規清酒を得ることができる。とくに、蒸留残分には渣が全く含まれないので、料理用清酒または料理用調味液の品質を良好にし、かつ、廃棄を要する残渣が全く発生しない利点がある。また、前述のように、白米成分の有効活用ができること及び蒸留により同時に分離濃縮できることと残渣の発生が全く無いということでコスト的メリットを享受することができる。本発明に係る請求項2の料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法によれば、通常の原清酒からも前述の効果とほぼ同等の効果を享受することができる。本発明に係る請求項3の新規清酒の製造方法によれば、本発明に係る清酒醸造用アルコールを清酒もろみに添加することにより、従来と比較してより多くの香気成分を含む香味の優れた新規清酒を得ることが出来る。本発明に係る請求項4の新規清酒の製造方法によれば、清酒醸造用アルコールを清酒醸造の最終仕込み段階で添加することにより従来と比較して高アルコール濃度の、かつ香気に富む新規清酒が得られる。また、本発明に係る請求項5の新規清酒によれば、ロックとして飲用しても全く新しい香味を賞味でき、新味な酒食の分野を拡げることができる。本発明に係る請求項6、7の料理用清酒、料理用調味液によれば、種々の料理に適合できる広いアルコール濃度範囲の料理用清酒または料理用調味液が提供でき、料理の味を初めとする質の向上及び料理に適用できる分野を拡げることに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法に用いられる工程フローシートの一例である。
【図2】本発明に係る料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法に使われる単式蒸留器の説明図である。
【符号の説明】
1:蒸気入口 2:ジャケット 3:蒸留釜
4:冷却器 5:真空ポンプ 6:密閉タンク
Claims (7)
- 精米歩合99%〜70%の白米またはくず米、小米等の蛋白質が多い原料を使用して原清酒を醸造し、前記原清酒を単式蒸留して分離し、蒸留分をアルコール濃度50〜70V/V%の清酒醸造用アルコールとして取り出し、かつ、同時に蒸留残分をアルコール濃度1〜13V/V%の料理用清酒または1V/V%未満の料理用調味液として取り出すこと、また前記清酒醸造用アルコールを清酒もろみに添加して新規清酒を得ることを特徴とする料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法。
- 精米歩合70%以下の白米を使用して原清酒を醸造し、前記原清酒を単式蒸留して分離し、蒸留分をアルコール濃度50〜70V/V%の清酒醸造用アルコールとして取り出し、かつ、同時に蒸留残分をアルコール濃度1〜13V/V%の料理用清酒または1V/V%未満の料理用調味液として取り出すこと、また前記清酒醸造用アルコールを清酒もろみに添加して新規清酒を得ることを特徴とする料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法。
- 請求項1または2に記載の清酒醸造用アルコールを清酒もろみ工程の最終段階で添加した後、上槽してアルコール濃度15〜20V/V%の新規清酒を得ることを特徴とする新規清酒の製造方法。
- 請求項1または2に記載の清酒醸造用アルコールを清酒もろみ工程の最終仕込後5日目までに添加し、添加後1日以内に上槽してアルコール濃度20〜40V/V%の新規清酒を得ることを特徴とする新規清酒の製造方法。
- 請求項4に記載の新規清酒の製造方法で製造したアルコール濃度が20〜40V/V%の新規清酒。
- 請求項1または2に記載の料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法で製造したアルコール濃度が1〜13V/V%の料理用清酒。
- 請求項1または2に記載の料理用清酒または料理用調味液および新規清酒の製造方法で製造したアルコール濃度1V/V%未満の料理用調味液。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003045578A JP4114924B2 (ja) | 2003-02-24 | 2003-02-24 | 料理用清酒、料理用調味液、または清酒の製造方法とその製品 |
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