JP2004253668A - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固体電解コンデンサの製造方法は、高分子材料及び金属塩酸化剤の混合溶液である第1のアルコール溶媒内に、コンデンサ素子2を浸漬する工程と、第1のアルコール溶媒よりも高沸点である第2のアルコール溶媒に、該コンデンサ素子2を浸漬して、熱重合反応させ、導電性高分子層を形成するとともに、コンデンサ素子2上の重合バリの発生を抑える工程を具えている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、陽極箔と陰極箔を巻き取った固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2は、従来の固体電解コンデンサ(1)の断面正面図であり、図3は、従来のコンデンサ素子(2)の斜視図である(例えば、特許文献1参照)。
これは、上面が開口したアルミニウム製のケース(3)内に、コンデンサ素子(2)を収納して、ゴム製のパッキング(30)にてケース(3)の開口を封止している。ケース(3)の上端部をカールしてパッキング(30)を固定し、ケース(3)の上面には、プラスチック製の座板(31)が取り付けられている。コンデンサ素子(2)から延びたリード線(21)(21)はパッキング(30)及び座板(31)を貫通した後、横向きに折曲されている。
コンデンサ素子(2)は、図3に示すように、誘電体酸化被膜を形成したアルミニウム箔である陽極箔(4)と、アルミニウム箔である陰極箔(5)とを、紙等の絶縁体であるセパレータ(6)を介してロール状に巻回して構成される。コンデンサ素子(2)の内部には、導電性高分子層が形成されている。陽極箔(4)と陰極箔(5)からは一対のリードタブ(25)(25)が引き出され、該リードタブ(25)(25)から前記リード線(21)(21)が延びている。
【0003】
コンデンサ素子(2)内に、導電性高分子層を形成する手順を以下に示す。先ず、チオフェンである高分子材料を、ブチルアルコールであるアルコール溶媒に溶かすとともに、金属塩等の酸化剤を加え、コンデンサ素子(2)を溶媒内に浸漬する。室温−約300℃にて熱重合反応を起こさせ、コンデンサ素子(2)内に導電性高分子層を生成する。
該高分子が導電性を持つのは、酸化剤の陰イオンが高分子構造内にドーパントとして取り込まれ、正孔が形成されるためである。尚、ポリチオフェンを導電性高分子として用いる固体電解コンデンサは、周知であるが(例えば、特許文献2参照)、高分子材料として、ピロール、アニリンを用いてもよい。
【0004】
【特許文献1】
特公平4−19695号(第2図)
【0005】
【特許文献2】
特開平2−15611号(明細書第1頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
斯種コンデンサは、ESR(等価直列抵抗)が低いことが求められている。従って、ドーピングされる確率を増やして導電性を改善すべく、50重量%を超える酸化剤溶液を用いている。しかし、この場合、急激な熱重合反応により、図4に示すように、コンデンサ素子(2)の上面又は下面に重合バリ(22)が発生する。即ち、アルコール溶媒の沸点を超えて高温に加熱すると、アルコール溶媒が蒸発して、熱重合反応が急激に進み、重合バリが発生する。
特に、コンデンサの製造工程にて取り扱い易いように、酸化剤溶液の粘度を低くすべく、溶媒にエチルアルコール等の低価のアルコールを用いている。また、出願人は以前に導電性を改善すべく、酸化剤を高濃度にすることを提案している(特願2002−68156号参照、この出願は未公開である)。
しかし、エチルアルコールの沸点が約78.3℃と低く、蒸発しやすくなっているから、重合バリ(22)が発生しやすくなっている。
この重合バリが生じることにより、該コンデンサ素子(2)をケース(3)に入れた際に、コンデンサ素子(2)が稍浮き上がり、ケース(3)の上端部をカールする際に、正しくカールできない、又はパッキング(30)を正しく挿入できない等の不良を招来する。
本発明の目的は、重合反応時に重合バリの発生を抑えることにある。
【0007】
【課題を解決する為の手段】
固体電解コンデンサの製造方法は、高分子材料及び金属塩酸化剤の混合溶液である第1のアルコール溶媒内に、コンデンサ素子(2)を浸漬する工程と、
第1のアルコール溶媒よりも高沸点である第2のアルコール溶媒に、コンデンサ素子(2)を浸漬して、熱重合反応させ、導電性高分子層を形成するとともにコンデンサ素子(2)上の重合バリの発生を抑える工程を具えている。
【0008】
【作用及び効果】
高分子材料と酸化剤の混合溶液に、コンデンサ素子(2)を浸漬し、その後酸化剤溶液の第1アルコール溶媒よりも高沸点の第2のアルコール溶媒にコンデンサ素子(2)を浸漬し、熱重合させることにより、重合バリの発生を抑えている。
これは、第1のアルコール溶媒と第2のアルコール溶媒とが混合することにより、それらが共沸化合物となる。その結果、第1のアルコール溶媒よりも沸点が上昇して、加熱してもアルコール溶媒が蒸発しにくくなる。故に、急激な熱重合反応が抑えられ、重合バリの発生を抑えることができると推測される。
更に、第2のアルコール溶媒は、重合反応に直接関与しないから、ESRを増加させないと考えられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一例を図を用いて詳述する。
固体電解コンデンサ(1)の全体形状は、図2に示す従来品と同様である。コンデンサ素子(2)は、図3に示すように、化成被膜を形成したアルミニウム箔である陽極箔(4)と、アルミニウム箔である陰極箔(5)を、絶縁体であるセパレータ(6)を介してロール状に巻回し、テープ(26)で止めて構成される。コンデンサ素子(2)の内部に導電性高分子層が形成されている。導電性高分子には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等があるが、本例ではチオフェン系高分子を例示する。コンデンサ素子(2)からは一対のリード線(21)(21)が延びている。
【0010】
固体電解コンデンサ(1)は、以下の手順で形成される。陽極箔(4)は、アルミニウム製シートから切り出されて作成されるので、陽極箔(4)の端面には、誘電体酸化被膜が形成されていない。従って、先ず、コンデンサ素子(2)の切り口化成を行って、陽極箔(4)の端面に誘電体酸化被膜を形成する。この後、巻取り素子(20)を280℃で熱処理して、誘電体酸化被膜の特性を安定させる。
次に、希釈剤としてエチルアルコールを含む3,4−エチレンジオキシチオフェン及びp−トルエンスルホン酸鉄(II)の混合溶液に、コンデンサ素子(2)を浸漬する。p−トルエンスルホン酸鉄(II)は、60重量パーセントでエチルアルコールに含まれ、これはコンデンサの製造工程に於いて、実用的な粘度である。
この直後に、図1に示すように、コンデンサ素子(2)をエチルアルコールから抜き出し、多価アルコールであるエチレングリコールに浸漬して、室温−約300℃にて熱重合反応を起こさせる。こうして、コンデンサ素子(2)が完成する。コンデンサ素子(2)を前記ケース(3)に封入して、固体電解コンデンサ(1)が完成する。
【0011】
エチルアルコールの沸点は、約78.3℃であり(平成7年度版 国立天文台編集理科年表参照)、エチレングリコールの沸点は、197.5℃である。
本例にあっては、先ずコンデンサ素子(2)に高分子材料と酸化剤を含浸する。その後、酸化剤溶液の第1アルコール溶媒(即ち、エチルアルコール)よりも高沸点の第2アルコール溶媒(即ち、エチレングリコール)にコンデンサ素子(2)を浸漬し、室温−約300℃にて熱重合させることにより、両箔(4)(5)間に導電性高分子層を形成するとともに、重合バリ(22)の発生を抑えている。
これは、第1のアルコール溶媒と第2のアルコール溶媒とが混合することにより、それらが共沸化合物となる。その結果、第1のアルコール溶媒よりも沸点が上昇して、加熱してもアルコール溶媒が蒸発しにくくなる。重合が完了した後に、アルコール溶媒が蒸発しても、重合バリは発生しない。故に、急激な熱重合反応が抑えられ、重合バリの発生を抑えることができると推測される。
更に、第2のアルコール溶媒は、重合反応に直接関与しないから、ESRを増加させないと考えられる。
尚、第1のアルコール溶媒には、エチルアルコールの他に、メタノール、ブタノールがある。
【0012】
出願人は、本例の方法で、固体電解コンデンサ(1)を試作した。また、従来の方法で、固体電解コンデンサ(1)を試作した。コンデンサ(1)は、何れも定格電圧4Vで、静電容量150μF、ケース(3)の外形寸法が直径6.3mmで高さ6.0mmのコンデンサである。
本例の方法で製作したコンデンサを実施例とし、実施例及び従来例のコンデンサ、120Hzの交流定格電圧を印加して、静電容量(Cap、単位:μF)を測定し、100kHzの交流定格電圧を印加して、等価直列抵抗(ESR、単位:mΩ)を測定した。また、重合バリが発生した発生数、及びケース(3)にコンデンサ素子(2)を挿入した際の歩留まり(単位:%)も確認した。測定結果を表1に示す。電気的特性値は、20ヶの平均値である。
【表1】
【0013】
上記の表1から、本例の方法にて、コンデンサ素子(2)を製作すると、静電容量、ESRを悪化させることなく、重合バリ発生数を低減することができた。従って、ケース(3)の上端をカールする際に発生する封口不良を大幅に低減できた。
【0014】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
例えば、本例ではコンデンサ素子(2)を陽極箔(4)と陰極箔(5)を巻き取って構成したが、コンデンサ素子(2)を弁金属の焼結体又は板材の積層構造から構成してもよい。ここで、弁金属とは表面に酸化被膜を形成する金属であり、アルミニウム、タンタル、ニオブ等が該当する。また、ケース(3)の上面開口は、エポキシ樹脂で塞いでも構わない。更に、コンデンサの形状は、ラジアルリードタイプでもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1のアルコール溶媒にコンデンサ素子を浸漬した後に、第2のアルコール溶媒に浸漬する工程を示す図である。
【図2】従来のコンデンサ素子の斜視図である。
【図3】従来の固体電解コンデンサの断面正面図である。
【図4】コンデンサ素子に重合バリが生じた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
(2) コンデンサ素子
(4) 陽極箔
(5) 陰極箔
(6) セパレータ
Claims (3)
- 陽極側に誘電体酸化被膜を形成するとともに、内部に導電性高分子層が形成されたコンデンサ素子(2)を具えた固体電解コンデンサの製造方法であって、
高分子材料及び金属塩酸化剤の混合溶液である第1のアルコール溶媒内に、コンデンサ素子(2)を浸漬する工程と、
第1のアルコール溶媒よりも高沸点である第2のアルコール溶媒に、該コンデンサ素子(2)を浸漬して、熱重合反応させ、導電性高分子層を形成するとともに、コンデンサ素子(2)上の重合バリの発生を抑える工程を具えた固体電解コンデンサの製造方法。 - 導電性高分子層はチオフェン系高分子から形成され、金属塩酸化剤はスルホン酸金属塩である請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- コンデンサ素子(2)は、陽極箔(4)と陰極箔(5)をセパレータ(6)を介して巻き取って構成される請求項1又は2に記載の固定電解コンデンサの製造方法。
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