JP3548034B2 - 電解コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、陽極化成箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子内に、導電性ポリマー層を形成すると共に電解液を含浸させた電解コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子機器のデジタル化に伴い、それに使用されるコンデンサにも小型、大容量で高周波領域における等価直列抵抗(以下、ESRと略す)の小さいものが求められるようになってきている。
【0003】
従来、高周波領域用のコンデンサとしてはプラスチックフイルムコンデンサ、積層セラミックコンデンサ等が多用されているが、これらは比較的小容量である。
【0004】
小型、大容量で低ESRのコンデンサとしては、二酸化マンガン、TCNQ錯塩等の電子電導性固体を陰極材として用いた固体電解コンデンサがある。ここでTCNQとは7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンを意味する。
【0005】
又、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン等の導電性ポリマーを陰極材として用いた固体電解コンデンサも有望である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記導電性ポリマーを陰極材として用いた固体電解コンデンサの従来製法においては、アルミニウム、タンタル等の弁作用金属からなる陽極焼結体あるいは陽極箔の表面に、化成皮膜、導電性ポリマー層、グラファイト層、銀ペイント層が順次形成され、そこへ陰極リード線が導電性接着剤等により接続されるが、この製法は、化成皮膜を形成した陽極箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に電解液を含浸するという通常の電解コンデンサの製法に比べて、かなり煩雑である。又、上述の如き陰極引き出し法では、対向陰極箔を用いる場合に比べてESRが大きくなる。
【0007】
一方、前記導電性ポリマー層は電解重合法や気相重合法等により形成されるが、巻回型のコンデンサ素子内に電解重合法や気相重合法により導電性ポリマー層を形成するのは容易でない。陽極箔上に化成皮膜及び導電性ポリマー層を形成した後、対向陰極箔とともに巻き取るという製法も考えられるが、化成皮膜や導電性ポリマー層を損傷することなく巻き取るのは困難である。
【0008】
そこで本願出願人は、特願平8−202524号において、酸化剤を含む溶液を巻回型のコンデンサ素子に含浸させた後乾燥し、該コンデンサ素子に酸化重合により導電性ポリマーとなるモノマーを含浸させることにより、巻回型のコンデンサ素子内に導電性ポリマー層を形成する技術を提案した。
【0009】
又、本願出願人は特願平9−132552号において、酸化重合により導電性ポリマーとなるモノマーを巻回型のコンデンサ素子に含浸させた後、該コンデンサ素子を酸化剤を含む溶液に浸漬することにより、巻回型のコンデンサ素子内に導電性ポリマー層を形成する技術を提案した。
【0010】
更に本願出願人は、特願平9−285229号において、巻回型のコンデンサ素子内に導電性ポリマー層を形成すると共に電解液を含浸させた電解コンデンサを提案した。
【0011】
前記特願平9−285229号に記載の電解コンデンサにおいては、導電性ポリマーを陰極材として用いることによるESRの低減と、電解液を含浸させることによる漏れ電流の低減を両立させることができて、初期特性は良好であるが、高温負荷試験を行うと、特性がやや劣化する傾向にあった。
【0012】
本発明は、陽極化成箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子内に、導電性ポリマー層を形成すると共に電解液を含浸させた電解コンデンサにおいて、高温負荷試験等による特性の劣化を抑制するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明による固体電解コンデンサは、陽極化成箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子内にポリピロールからなる導電性ポリマー層が形成されると共に、当該導電性ポリマー層に電解液が含浸されている固体電解コンデンサにおいて、前記導電性ポリマー層及び/又は前記電解液に、ニトロ化合物が添加されていることを特徴とするものである。
【0014】
上記本発明の構成によれば、電解液中の微量水分による導電性ポリマーの分解がニトロ化合物の作用により抑制され、低ESRで漏れ電流が小さく、且つ長寿命の電解コンデンサが提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に従った電解コンデンサは、図1に示すような巻回型のコンデンサ素子7内に、導電性ポリマー層を形成する共に電解液を含浸させた電解コンデンサにおいて、前記導電性ポリマー層又は前記電解液に、ニトロ化合物を添加したことを特徴とするものである。或いは、前記導電性ポリマー層と前記電解液の両者に、ニトロ化合物を添加してもよい。
【0016】
巻回型のコンデンサ素子7は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン等の弁作用金属からなる箔に粗面化のためのエッチング処理及び誘電体皮膜形成のための化成処理を施した陽極化成箔1と、対向陰極箔2とをセパレータ3を介して巻き取ることにより形成される。前記陽極化成箔1及び対向陰極箔2には、それぞれリードタブ61、62を介してリード線51、52が取り付けられている。4は巻き止めテープである。
【0017】
前記導電性ポリマー層としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、或いはそれらの誘導体等からなるものを用いることができる。
【0018】
前記電解液としては、通常の電解コンデンサ用電解液を用いることができ、例えば、γブチロラクトン、エチレングリコール、キシレン等を主溶媒とし、フタル酸、アジピン酸等のアミジン塩、アミン塩、アンモニウム塩等を主溶質とするものを用いることができる。
【0019】
前記ニトロ化合物としては、m−ジニトロベンゼン、o−ニトロアニリン、p−ニトロ安息香酸、4−ニトロカテコール、2,4−ジニトロトルエン等の芳香族ニトロ化合物を用いることができる。
【0020】
尚、電解液にニトロ化合物を添加する実施形態には、溶媒としてのγブチロラクトン、エチレングリコール、キシレン等を電解液の均等物と考え、それにニトロ化合物を添加しただけのものも含まれる。
【0021】
前記コンデンサ素子内に導電性ポリマー層を形成するには、該コンデンサ素子に適量のピロール、チオフェン、フラン、アニリン、或いはそれらの誘導体等、酸化重合により導電性ポリマーとなるモノマーを含浸させた後、該コンデンサ素子を過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の酸化剤を含む水溶液に浸漬することにより、前記モノマーを酸化重合させる。・・・・・導電性ポリマー層の形成法[A]
或いは、前記コンデンサ素子に過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の酸化剤を含む水溶液を含浸させた後、乾燥して素子内部に酸化剤を析出させ、その後、該コンデンサ素子に適量のピロール、チオフェン、フラン、アニリン、或いはそれらの誘導体等、酸化重合により導電性ポリマーとなるモノマーを含浸させることにより、前記モノマーを酸化重合させて導電性ポリマー層を形成してもよい。・・・・・導電性ポリマー層の形成法[B]
上記導電性ポリマー層の形成法[A]、[B]は、それぞれ複数回繰り返してもよい。
【0022】
上記導電性ポリマー層の形成法[A]、[B]において、ニトロ化合物が添加された導電性ポリマー層を形成するには、前記モノマーにニトロ化合物を添加しておけばよい。
【0023】
尚、コンデンサ素子内に導電性ポリマー層を形成する工程の前に、加熱処理等を施すことによりコンデンサ素子内のセパレータを炭化(すなわち、低密度化)しておけば、該コンデンサ素子内に導電性ポリマー層が形成されやすくなる。
【0024】
このようにして導電性ポリマー層を形成したコンデンサ素子は、水洗、乾燥された後、電解液の含浸に供される。この時、前記導電性ポリマー層にニトロ化合物が添加されていない場合には、電解液にニトロ化合物を添加する。前記導電性ポリマー層にニトロ化合物が添加されている場合には、電解液にニトロ化合物を添加してもよいし、添加しなくてもよい。
【0025】
更にこのコンデンサ素子7を図2に示すように有底筒状のアルミニウム製ケース8に収納し、その開口部にゴムパッキング9を装着すると共にカーリングして封止し、定格電圧を印加しながら約85℃で約1時間のエージング処理を行うことにより、所望の電解コンデンサが完成する。
【0026】
ここで、外形φ6.3mm×H7mm、定格6.3V−56μFのアルミニウム巻回型コンデンサ素子を用い、上記本発明の実施形態に準じながら表1及び表2に示すような条件で試作した実施例1〜12及び比較例1、2の電解コンデンサについて、105℃×1000時間の高温負荷試験を行った。高温負荷試験前の静電容量:C(μF)、高温負荷試験前後における静電容量変化率:ΔC/C(%)、損失角の正接:tanδ、定格電圧を印加してから15秒後の漏れ電流:LC(μA)、100kHzでの等価直列抵抗:ESR(mΩ)の測定結果を表3に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0003548034
【0028】
【表2】
Figure 0003548034
【0029】
【表3】
Figure 0003548034
【0030】
表1〜3を対照すればわかるように、本発明に従って導電性ポリマー層及び/又は電解液にニトロ化合物を添加した実施例1〜12における高温負荷試験後の特性劣化は、ニトロ化合物を添加しない比較例1、2に比べて著しく小さくなっている。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、巻回型のコンデンサ素子を用いた電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子内に導電性ポリマー層を形成することによるESRの低減と、電解液を含浸させることによる漏れ電流の低減に加え、
導電性ポリマー層及び/又は電解液にニトロ化合物を添加することにより、電解液中の微量水分による導電性ポリマーの分解が抑制され、高温負荷試験等による特性の劣化が抑制されて、長寿命の電解コンデンサが提供される。
【0032】
又、本発明に用いられるコンデンサ素子としては、既存のアルミニウム電解コンデンサ用の巻回型コンデンサ素子そのものを転用することが可能であるので、部品の共通化によるコストダウンを図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例において用いられるコンデンサ素子の分解斜視図である。
【図2】本発明実施例による電解コンデンサの断面図である。
【符号の説明】
1 陽極化成箔
2 対向陰極箔
3 セパレータ
4 巻き止めテープ
51 陽極リード線
52 陰極リード線
61 陽極リードタブ
62 陰極リードタブ
7 コンデンサ素子
8 外装ケース
9 ゴムパッキング

Claims (6)

  1. 陽極化成箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子内にポリピロールからなる導電性ポリマー層が形成されると共に、当該導電性ポリマー層に電解液が含浸された固体電解コンデンサであって、
    前記導電性ポリマー層及び/又は前記電解液に、m−ジニトロベンゼンが添加されていることを特徴とする電解コンデンサ。
  2. 陽極化成箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子内にポリピロールからなる導電性ポリマー層が形成されると共に、当該導電性ポリマー層に電解液が含浸された固体電解コンデンサであって、
    前記導電性ポリマー層及び前記電解液に、2,4−ジニトロトルエンが添加されていることを特徴とする電解コンデンサ。
  3. 陽極化成箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子内にポリピロールからなる導電性ポリマー層が形成されると共に、当該導電性ポリマー層に電解液が含浸された電解コンデンサであって、
    前記電解液に、o−ニトロアニリン、p−ニトロ安息香酸、4−ニトロカテコールのいずれかが添加されていることを特徴とする電解コンデンサ。
  4. 陽極化成箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子内に、モノマーを酸化重合させて導電性ポリマー層を形成すると共に、前記コンデンサ素子内に形成された導電性ポリマー層に電解液を含浸させる電解コンデンサの製造方法において、
    前記導電性ポリマーとなるモノマー及び/又は前記電解液に、m−ジニトロベンゼンを添加したことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
  5. 陽極化成箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子内に、モノマーを酸化重合させて導電性ポリマー層を形成すると共に、前記コンデンサ素子内に形成された導電性ポリマー層に電解液を含浸させる電解コンデンサの製造方法において、
    前記導電性ポリマーとなるモノマー及び前記電解液に、2,4−ジニトロトルエンを添加したことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
  6. 陽極化成箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子内に、モノマーを酸化重合させて導電性ポリマー層を形成すると共に、前記コンデンサ素子内に形成された導電性ポリマー層に電解液を含浸させる電解コンデンサの製造方法において、
    前記電解液に、o−ニトロアニリン、p−ニトロ安息香酸、4−ニトロカテコールのいずれかを添加したことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
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