JP2004253614A - 高分子ptc素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高分子PTC素子の電極を、接触抵抗を上げずに、接合強度を高め、しかも簡易な工程で製造できるような高分子PTC素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】高分子PTC素子用電極箔1に強磁性体の導電性ペーストを塗工し、かつ電極箔に対して垂直方向の磁場を印加しながら乾燥させて接着層5を形成し、その後、高分子PTC組成物2との熱圧着を行って高分子PTC素子を製造する。
【選択図】 図1
【解決手段】高分子PTC素子用電極箔1に強磁性体の導電性ペーストを塗工し、かつ電極箔に対して垂直方向の磁場を印加しながら乾燥させて接着層5を形成し、その後、高分子PTC組成物2との熱圧着を行って高分子PTC素子を製造する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、PTC(Positive Temperature Coefficient:正温度係数)を有する素子に関するものであり、電池や電子機器の回路等への異常発生時に流れる過電流を防止する過電流保護素子等として好適な高分子PTC素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からPTC特性を有するものとして、Y2O3を微量添加したBaTiO3等のセラミックPTC組成物とポリエチレンを代表とする結晶性高分子材料に導電性フィラー、一般的には粒状のカーボンブラック粉末等を混練して成形した高分子PTC組成物が知られている。
【0003】
しかしながら、セラミックPTC組成物は定常状態の低抗率が約100Ω・cmと高いために、数A程度の比較的大きな電流を流すことができない。このことは、セラミックPTC組成物が前記過電流保護素子として用いることができないことを意味している。さらに、セラミックPTCは、所望形状に成形、加工することが困難であり、耐衝撃性に劣る面がある。それに対して、本発明で論述する高分子PTC組成物は、セラミックPTC組成物に比べて室温抵抗が低いこと、成形や加工が容易であること、さらに耐衝撃性が優れていること等により、過電流保護素子の用途として適している。
【0004】
高分子PTC組成物の導電性フィラーとして一般的には、カーボンブラックのような比較的かさ密度が大きく、粒度の小さい安価な材料が用いられている。またその原理は、前記導電性フィラーが結晶性高分子材料中に所定の配合量で分散されている組成物中において、室温では導電フィラーのネットワークにより低い抵抗率を示すが、結晶性高分子材料の結晶融点Tmを境にして相対的に高分子材料の体積が増加して導電粒子相互間のネットワークが切断されていくことにより、抵抗率が急に上昇していく(いわゆるPTC特性)。それが常温に戻ると、その導電性フィラー相互間のネットワークが復帰することにより元の低い低抗値となる。
【0005】
このような高分子PTC素子の一般的な製法として、例えば熱可塑性高分子材料を代表するポリオレフィン類等の高分子材料、例えば高密度ポリエチレン等と良好な導電性を有するカーボンブラックや金属炭化物等のフィラーを混練(混合)して、分散処理を行う。その際に2本ロールやニーダー等を用いる場合では、展延機やロール成形や押し出し成形等で高分子PTC組成物を作製し、熱プレス機等で金属箔等や各種金属でパターン化された基板2枚に挟んで成形する等の方法でシート状に加工して、電極端子を取りつけて素子を作製する。
【0006】
しかし、高分子PTC素子において、電極を形成する場合、高分子PTC組成物と金属とでは熱膨張率に大きな差があり、熱により高分子PTC組成物−金属界面において剥離が生じ易いため、他の有機/無機材料の接合(例えばプリント基板)同様、如何にして高分子PTC組成物−金属界面の接合性を上げるかが課題である。
【0007】
接合強度を高めるために、メッキ処理等により金属箔表面に粗面化処理を施す方法が知られているが、十分な接合性を得るためには、金属箔表面に長時間メッキ処理を施す必要があることと、大掛かりな設備が必要になるなど生産性に乏しい。
【0008】
また、熱膨張の差を小さくする手法として高分子PTC組成物−金属間に緩和層を設ける方法があるが、接触抵抗が取れなくなり素子抵抗が上がってしまう問題があった。
【0009】
この対策のため、特許文献1では、高分子PTC組成物表面を酸化処理すると共に、金属箔上に導電性フィラーとバインダーを混合した導電層を形成させ熱圧着する方法が提案されている。この方法では、接触抵抗を低くし、酸化処理により接合強度を高めているが、工程が複雑である。
【0010】
【特許文献1】
特開平6−318504号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、高分子PTC素子の電極の接触抵抗を上げずに、接合強度を高め、しかも製造工程が比較的簡略であるような高分子PTC素子及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来の欠点を解決するためになされたもので、高分子PTC素子用電極箔に強磁性の導電性ペーストを塗工し、かつ電極箔に対して垂直方向の磁場を印加しながら乾燥させて、接着層を形成し、その後PTC樹脂組成物との熱圧着を行う高分子PTC素子の製造方法である。
【0013】
即ち、本発明は、電極箔に強磁性の導電性ペーストを塗工して接着層を形成後、高分子PTC組成物と前記電極箔を圧着することを特徴とする高分子PTC素子の製造方法である。
【0014】
また、本発明は、前記接着層が導電性フィラーと強磁性体粒子と高分子材料からなることを特徴とする高分子PTC素子の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、前記接着層が強磁性体の導電性フィラーと高分子材料からなることを特徴とするPTC素子の製造方法である。
【0016】
また、本発明は、前記導電性フィラーがアスペクト比2以上の強磁性体粒子であることを特徴とする高分子PTC素子の製造方法である。
【0017】
また、本発明は、前記接着層が磁場中乾燥により形成されることを特徴とする高分子PTC素子の製造方法である。
【0018】
また、本発明は、前記磁場が前記電極箔に対して垂直方法へ印加されていることを特徴とする高分子PTC素子の製造方法である。
【0019】
また、本発明は、電極箔が強磁性の導電性フィラーと高分子材料からなる接着層により高分子PTC組成物に圧着されていることを特徴とする高分子PTC素子である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、高分子PTC素子用電極箔に強磁性体の導電性ペーストを塗工し、かつ電極箔に対して垂直方向の磁場を印加しながら乾燥させて接着層を形成し、その後、高分子PTC組成物との熱圧着を行って高分子PTC素子を製造する。
【0021】
図1は、本発明で製造された高分子PTC素子の断面を示す模式図である。図2は、従来法により製造された高分子PTC素子の断面を示す模式図である。本発明では、図1及び図2に示すように、接着層5に特徴があり、本発明で製造された高分子PTC素子は電極箔1が強磁性の導電性フィラー6と高分子材料からなる接着層5により高分子PTC組成物2に圧着されている。
【0022】
高分子PTC組成物2としては、結晶性高分子材料4に導電性フィラー3を混合して製造される。結晶性高分子材料4として結晶性のオレフィン系高分子材料が用いられるが、高密度ポリエチレンが望ましい。また、導電性フィラー3は、金属粒子やカーボンブラック等の導電性炭素材料やTiC、WC、W2C、ZrC、VC、NbC、TaC、MoC等の金属炭化物のうち1種以上を用いることができるが、比重が低く熱伝導率の良好なTiC等の金属炭化物が望ましい。
【0023】
高分子材料と導電性フィラーと強磁性体に溶媒等を加えて混練して製造した導電性ペーストを電極箔1に塗工して接着層5を形成する。高分子材料としては、溶媒(一般的なケトン類、トルエン等の有機溶剤または水)に溶けやすい高分子材料を選定することが望ましく、特に塩素化ポリエチレンを用いることが好ましい。また、導電性フィラー6は、高分子PTC組成物2用のものも使用できるが、金属粒子が望ましく導電性の面からは銀粒子が好ましい。強磁性体6は、特に粒子形状が不規則な粉末が望ましく、アスペクト比が2以上のものが好ましい。
【0024】
強磁性体粉末として、金属粒子を用いれば、導電性フィラーと兼用することが可能である。特に耐食性も良好であるニッケル粉を用いることが望ましい。図1の場合は、導電性フィラー6と強磁性体6とが同一、即ち強磁性の導電性フィラー6を用いた例である。
【0025】
電極箔1としては、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属箔を用いることができる。
【0026】
接着層5は、電極箔1に強磁性を有する導電性ペーストを塗工し、電極箔に対して垂直方向の磁場を印加しながら乾燥させて形成する。詳しくは接着層5が乾燥固化する際、電極箔と垂直な方向へ磁場を印加することでペースト内に含有する強磁性体が磁場方向へ配向するため、接着層5の表面が非常に荒れた構造を有するようになり、簡単に粗面を形成することができる。ここで、薄い電極箔を用いれば、電極箔が縒れて電極箔と導電ペーストとの接触面積が増える効果もある。
【0027】
次いで、接着層5を形成した電極箔1の間に高分子PTC組成物を挟んで熱圧着することにより高分子PTC素子が製造される。
【0028】
【実施例】
さらに、具体的に本発明の高分子PTC素子の製造方法を実施例、比較例を基に詳細に説明する。
【0029】
(実施例1)
まず、高分子材料として軟化点130℃程度の結晶性高密度ポリエチレンと粒径1〜5μmのTiC導電性粉末を200℃程度の温度での加熱ロール上で導電性粉末50vol%となるように混練して高分子PTC混練物を得て、それを成形することにより高分子PTC組成物シートを得た。
【0030】
また、金属電極箔上に、アスペクト比3のNi粉末と塩素化ポリエチレン及び溶剤からなる導電性ペーストを塗布し、その際に400G磁場強度の垂直配向磁場をかけながら120℃×5分の乾燥処理を行った結果、接着層の表面が粗い電極箔シートが得られた。
【0031】
その金属電極箔シート間に高分子PTC組成物シートを挟んで200℃の温度で15分間熱プレスを行い熱圧着して、高分子PTCシートを得た。そのシートを所定の形状に打抜き高分子PTC素子を作製した。
【0032】
(比較例)
実施例1と同様の高分子PTC組成物シートおよび金属電極箔を用いて、金属電極箔間に直接高分子PTC組成物シートを挟んで200℃の温度で15分間熱プレスを行い、熱圧着して、高分子PTCシートを得た。そのシートを所定の形状に打抜き高分子PTC素子を作製した。
【0033】
実施例1および比較例の各々の高分子PTC素子について、各々、サンプル数100個についての素子抵抗の測定と、−20℃と80℃間で100サイクルのヒートサイクル試験を行い、その前後の素子抵抗を測定した結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
素子抵抗の測定結果によれば、実施例1の高分子PTC素子の方が比較例の高分子PTC素子に比べてばらつきが小さく、安定しており、電極箔と高分子PTC組成物との電気的な接触が良好である。
【0036】
ヒートサイクル試験後でも実施例1の高分子PTC素子では、素子抵抗が10%程度の増加を示しただけで安定性が高いことが分かる。また、素子の抵抗値をサイクル試験前の抵抗値で割った倍率をみると明らかなように、実施例1の高分子PTC素子の方が比較例の高分子PTC素子に比べて数十倍良好な結果が得られている。
【0037】
この結果より、本発明の方法で製造された実施例1の高分子PTC素子は、従来方法で製造された比較例の高分子PTC素子に比べて、接着力が向上して接触低抗値の低減とそのばらつきが抑えられ、ヒートサイクルに対する信頼性も高いことがわかる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、高分子PTC素子用電極箔に強磁性体を含む導電性ペーストを塗工し、かつ電極箔に対して垂直方向の磁場を印加しながら乾燥させることで、表面を粗面化した接着層を簡単に形成でき、接触抵抗の低減と電極の接合強度を向上させた高分子PTC素子が得られる。また、本発明により、接触抵抗のばらつきの問題、およびヒートサイクルの信頼性も解決される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高分子PTC素子の断面図。
【図2】従来の高分子PTC素子の断面図。
【符号の説明】
1 電極箔
2 高分子PTC組成物
3 導電性フィラー
4 結晶性高分子材料
5 接着層
6 導電性フィラー(強磁性体)
【発明の属する技術分野】
本発明は、PTC(Positive Temperature Coefficient:正温度係数)を有する素子に関するものであり、電池や電子機器の回路等への異常発生時に流れる過電流を防止する過電流保護素子等として好適な高分子PTC素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からPTC特性を有するものとして、Y2O3を微量添加したBaTiO3等のセラミックPTC組成物とポリエチレンを代表とする結晶性高分子材料に導電性フィラー、一般的には粒状のカーボンブラック粉末等を混練して成形した高分子PTC組成物が知られている。
【0003】
しかしながら、セラミックPTC組成物は定常状態の低抗率が約100Ω・cmと高いために、数A程度の比較的大きな電流を流すことができない。このことは、セラミックPTC組成物が前記過電流保護素子として用いることができないことを意味している。さらに、セラミックPTCは、所望形状に成形、加工することが困難であり、耐衝撃性に劣る面がある。それに対して、本発明で論述する高分子PTC組成物は、セラミックPTC組成物に比べて室温抵抗が低いこと、成形や加工が容易であること、さらに耐衝撃性が優れていること等により、過電流保護素子の用途として適している。
【0004】
高分子PTC組成物の導電性フィラーとして一般的には、カーボンブラックのような比較的かさ密度が大きく、粒度の小さい安価な材料が用いられている。またその原理は、前記導電性フィラーが結晶性高分子材料中に所定の配合量で分散されている組成物中において、室温では導電フィラーのネットワークにより低い抵抗率を示すが、結晶性高分子材料の結晶融点Tmを境にして相対的に高分子材料の体積が増加して導電粒子相互間のネットワークが切断されていくことにより、抵抗率が急に上昇していく(いわゆるPTC特性)。それが常温に戻ると、その導電性フィラー相互間のネットワークが復帰することにより元の低い低抗値となる。
【0005】
このような高分子PTC素子の一般的な製法として、例えば熱可塑性高分子材料を代表するポリオレフィン類等の高分子材料、例えば高密度ポリエチレン等と良好な導電性を有するカーボンブラックや金属炭化物等のフィラーを混練(混合)して、分散処理を行う。その際に2本ロールやニーダー等を用いる場合では、展延機やロール成形や押し出し成形等で高分子PTC組成物を作製し、熱プレス機等で金属箔等や各種金属でパターン化された基板2枚に挟んで成形する等の方法でシート状に加工して、電極端子を取りつけて素子を作製する。
【0006】
しかし、高分子PTC素子において、電極を形成する場合、高分子PTC組成物と金属とでは熱膨張率に大きな差があり、熱により高分子PTC組成物−金属界面において剥離が生じ易いため、他の有機/無機材料の接合(例えばプリント基板)同様、如何にして高分子PTC組成物−金属界面の接合性を上げるかが課題である。
【0007】
接合強度を高めるために、メッキ処理等により金属箔表面に粗面化処理を施す方法が知られているが、十分な接合性を得るためには、金属箔表面に長時間メッキ処理を施す必要があることと、大掛かりな設備が必要になるなど生産性に乏しい。
【0008】
また、熱膨張の差を小さくする手法として高分子PTC組成物−金属間に緩和層を設ける方法があるが、接触抵抗が取れなくなり素子抵抗が上がってしまう問題があった。
【0009】
この対策のため、特許文献1では、高分子PTC組成物表面を酸化処理すると共に、金属箔上に導電性フィラーとバインダーを混合した導電層を形成させ熱圧着する方法が提案されている。この方法では、接触抵抗を低くし、酸化処理により接合強度を高めているが、工程が複雑である。
【0010】
【特許文献1】
特開平6−318504号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、高分子PTC素子の電極の接触抵抗を上げずに、接合強度を高め、しかも製造工程が比較的簡略であるような高分子PTC素子及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来の欠点を解決するためになされたもので、高分子PTC素子用電極箔に強磁性の導電性ペーストを塗工し、かつ電極箔に対して垂直方向の磁場を印加しながら乾燥させて、接着層を形成し、その後PTC樹脂組成物との熱圧着を行う高分子PTC素子の製造方法である。
【0013】
即ち、本発明は、電極箔に強磁性の導電性ペーストを塗工して接着層を形成後、高分子PTC組成物と前記電極箔を圧着することを特徴とする高分子PTC素子の製造方法である。
【0014】
また、本発明は、前記接着層が導電性フィラーと強磁性体粒子と高分子材料からなることを特徴とする高分子PTC素子の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、前記接着層が強磁性体の導電性フィラーと高分子材料からなることを特徴とするPTC素子の製造方法である。
【0016】
また、本発明は、前記導電性フィラーがアスペクト比2以上の強磁性体粒子であることを特徴とする高分子PTC素子の製造方法である。
【0017】
また、本発明は、前記接着層が磁場中乾燥により形成されることを特徴とする高分子PTC素子の製造方法である。
【0018】
また、本発明は、前記磁場が前記電極箔に対して垂直方法へ印加されていることを特徴とする高分子PTC素子の製造方法である。
【0019】
また、本発明は、電極箔が強磁性の導電性フィラーと高分子材料からなる接着層により高分子PTC組成物に圧着されていることを特徴とする高分子PTC素子である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、高分子PTC素子用電極箔に強磁性体の導電性ペーストを塗工し、かつ電極箔に対して垂直方向の磁場を印加しながら乾燥させて接着層を形成し、その後、高分子PTC組成物との熱圧着を行って高分子PTC素子を製造する。
【0021】
図1は、本発明で製造された高分子PTC素子の断面を示す模式図である。図2は、従来法により製造された高分子PTC素子の断面を示す模式図である。本発明では、図1及び図2に示すように、接着層5に特徴があり、本発明で製造された高分子PTC素子は電極箔1が強磁性の導電性フィラー6と高分子材料からなる接着層5により高分子PTC組成物2に圧着されている。
【0022】
高分子PTC組成物2としては、結晶性高分子材料4に導電性フィラー3を混合して製造される。結晶性高分子材料4として結晶性のオレフィン系高分子材料が用いられるが、高密度ポリエチレンが望ましい。また、導電性フィラー3は、金属粒子やカーボンブラック等の導電性炭素材料やTiC、WC、W2C、ZrC、VC、NbC、TaC、MoC等の金属炭化物のうち1種以上を用いることができるが、比重が低く熱伝導率の良好なTiC等の金属炭化物が望ましい。
【0023】
高分子材料と導電性フィラーと強磁性体に溶媒等を加えて混練して製造した導電性ペーストを電極箔1に塗工して接着層5を形成する。高分子材料としては、溶媒(一般的なケトン類、トルエン等の有機溶剤または水)に溶けやすい高分子材料を選定することが望ましく、特に塩素化ポリエチレンを用いることが好ましい。また、導電性フィラー6は、高分子PTC組成物2用のものも使用できるが、金属粒子が望ましく導電性の面からは銀粒子が好ましい。強磁性体6は、特に粒子形状が不規則な粉末が望ましく、アスペクト比が2以上のものが好ましい。
【0024】
強磁性体粉末として、金属粒子を用いれば、導電性フィラーと兼用することが可能である。特に耐食性も良好であるニッケル粉を用いることが望ましい。図1の場合は、導電性フィラー6と強磁性体6とが同一、即ち強磁性の導電性フィラー6を用いた例である。
【0025】
電極箔1としては、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属箔を用いることができる。
【0026】
接着層5は、電極箔1に強磁性を有する導電性ペーストを塗工し、電極箔に対して垂直方向の磁場を印加しながら乾燥させて形成する。詳しくは接着層5が乾燥固化する際、電極箔と垂直な方向へ磁場を印加することでペースト内に含有する強磁性体が磁場方向へ配向するため、接着層5の表面が非常に荒れた構造を有するようになり、簡単に粗面を形成することができる。ここで、薄い電極箔を用いれば、電極箔が縒れて電極箔と導電ペーストとの接触面積が増える効果もある。
【0027】
次いで、接着層5を形成した電極箔1の間に高分子PTC組成物を挟んで熱圧着することにより高分子PTC素子が製造される。
【0028】
【実施例】
さらに、具体的に本発明の高分子PTC素子の製造方法を実施例、比較例を基に詳細に説明する。
【0029】
(実施例1)
まず、高分子材料として軟化点130℃程度の結晶性高密度ポリエチレンと粒径1〜5μmのTiC導電性粉末を200℃程度の温度での加熱ロール上で導電性粉末50vol%となるように混練して高分子PTC混練物を得て、それを成形することにより高分子PTC組成物シートを得た。
【0030】
また、金属電極箔上に、アスペクト比3のNi粉末と塩素化ポリエチレン及び溶剤からなる導電性ペーストを塗布し、その際に400G磁場強度の垂直配向磁場をかけながら120℃×5分の乾燥処理を行った結果、接着層の表面が粗い電極箔シートが得られた。
【0031】
その金属電極箔シート間に高分子PTC組成物シートを挟んで200℃の温度で15分間熱プレスを行い熱圧着して、高分子PTCシートを得た。そのシートを所定の形状に打抜き高分子PTC素子を作製した。
【0032】
(比較例)
実施例1と同様の高分子PTC組成物シートおよび金属電極箔を用いて、金属電極箔間に直接高分子PTC組成物シートを挟んで200℃の温度で15分間熱プレスを行い、熱圧着して、高分子PTCシートを得た。そのシートを所定の形状に打抜き高分子PTC素子を作製した。
【0033】
実施例1および比較例の各々の高分子PTC素子について、各々、サンプル数100個についての素子抵抗の測定と、−20℃と80℃間で100サイクルのヒートサイクル試験を行い、その前後の素子抵抗を測定した結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
素子抵抗の測定結果によれば、実施例1の高分子PTC素子の方が比較例の高分子PTC素子に比べてばらつきが小さく、安定しており、電極箔と高分子PTC組成物との電気的な接触が良好である。
【0036】
ヒートサイクル試験後でも実施例1の高分子PTC素子では、素子抵抗が10%程度の増加を示しただけで安定性が高いことが分かる。また、素子の抵抗値をサイクル試験前の抵抗値で割った倍率をみると明らかなように、実施例1の高分子PTC素子の方が比較例の高分子PTC素子に比べて数十倍良好な結果が得られている。
【0037】
この結果より、本発明の方法で製造された実施例1の高分子PTC素子は、従来方法で製造された比較例の高分子PTC素子に比べて、接着力が向上して接触低抗値の低減とそのばらつきが抑えられ、ヒートサイクルに対する信頼性も高いことがわかる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、高分子PTC素子用電極箔に強磁性体を含む導電性ペーストを塗工し、かつ電極箔に対して垂直方向の磁場を印加しながら乾燥させることで、表面を粗面化した接着層を簡単に形成でき、接触抵抗の低減と電極の接合強度を向上させた高分子PTC素子が得られる。また、本発明により、接触抵抗のばらつきの問題、およびヒートサイクルの信頼性も解決される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高分子PTC素子の断面図。
【図2】従来の高分子PTC素子の断面図。
【符号の説明】
1 電極箔
2 高分子PTC組成物
3 導電性フィラー
4 結晶性高分子材料
5 接着層
6 導電性フィラー(強磁性体)
Claims (7)
- 電極箔に強磁性の導電性ペーストを塗工して接着層を形成後、高分子PTC組成物と前記電極箔を圧着することを特徴とする高分子PTC素子の製造方法。
- 前記接着層が導電性フィラーと強磁性体粒子と高分子材料からなることを特徴とする請求項1記載の高分子PTC素子の製造方法。
- 前記接着層が強磁性体の導電性フィラーと高分子材料からなることを特徴とする請求項1記載の高分子PTC素子の製造方法。
- 前記導電性フィラーがアスペクト比2以上の強磁性体粒子であることを特徴とする請求項3記載の高分子PTC素子の製造方法。
- 前記接着層が磁場中乾燥により形成されることを特徴とする請求項1記載の高分子PTC素子の製造方法。
- 前記磁場が前記電極箔に対して垂直方法へ印加されていることを特徴とする請求項5記載の高分子PTC素子の製造方法。
- 電極箔が強磁性の導電性フィラーと高分子材料からなる接着層により高分子PTC組成物に圧着されていることを特徴とする高分子PTC素子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003042414A JP2004253614A (ja) | 2003-02-20 | 2003-02-20 | 高分子ptc素子及びその製造方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003042414A JP2004253614A (ja) | 2003-02-20 | 2003-02-20 | 高分子ptc素子及びその製造方法 |
Publications (1)
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JP2004253614A true JP2004253614A (ja) | 2004-09-09 |
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ID=33025699
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JP2003042414A Pending JP2004253614A (ja) | 2003-02-20 | 2003-02-20 | 高分子ptc素子及びその製造方法 |
Country Status (1)
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---|---|
JP (1) | JP2004253614A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110793658A (zh) * | 2019-11-26 | 2020-02-14 | 青岛科技大学 | 一种自带电路保护功能的聚合物基温敏电阻器 |
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2003
- 2003-02-20 JP JP2003042414A patent/JP2004253614A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN110793658A (zh) * | 2019-11-26 | 2020-02-14 | 青岛科技大学 | 一种自带电路保护功能的聚合物基温敏电阻器 |
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