JP2004253214A - 有機elデバイスの製造方法および有機elデバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】工程を複雑化することなく異物などによる電極層間の短絡を防止し、信頼性および歩留まりを向上した有機ELデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】異物191が存在するなどの有機層形成面120の不良箇所にインクジェット方式により紫外線硬化樹脂を吐出し、これを硬化させて絶縁層140を形成する。これにより不良のある有機EL素子102では、透明電極120と有機層150および金属電極160とは絶縁層140により隔離され、これらの短絡が防止される。有機EL素子の製造工程においては、透明電極120の仕事関数を変化させるために電極層に紫外線を照射する工程があるので、この時に紫外線硬化樹脂を同時に硬化させればよい。したがって、不良箇所に絶縁層を形成するための工程の増加は、紫外線硬化樹脂の吐出工程のみとなり、工程の増加を最小限に押さえることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】異物191が存在するなどの有機層形成面120の不良箇所にインクジェット方式により紫外線硬化樹脂を吐出し、これを硬化させて絶縁層140を形成する。これにより不良のある有機EL素子102では、透明電極120と有機層150および金属電極160とは絶縁層140により隔離され、これらの短絡が防止される。有機EL素子の製造工程においては、透明電極120の仕事関数を変化させるために電極層に紫外線を照射する工程があるので、この時に紫外線硬化樹脂を同時に硬化させればよい。したがって、不良箇所に絶縁層を形成するための工程の増加は、紫外線硬化樹脂の吐出工程のみとなり、工程の増加を最小限に押さえることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機電界発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子:以下、「有機EL素子」と言う)を有する有機ELパネルなどの有機ELデバイスの製造方法、および、その有機ELデバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
発光素子として電界発光を利用した有機EL素子を用いた有機ELパネルが注目を集めている。有機ELパネルは、バックライトが不要な自己発光型のフラットパネルディスプレイであり、視野角が広く視認性の高いディスプレイを実現できる。また、必要な画素のみを発光させればよいため、液晶ディスプレイなどのバックライト型のディスプレイに比べて消費電力を少なくすることができる。また、応答性能を、今後実用化が期待されている高精細度の高速のビデオ信号にも十分対応可能な程度に高くすることもできる。
【0003】
有機ELパネルに用いられる有機EL素子は、たとえば透明電極膜により形成されるアノード(陽極層)、発光層である有機層、および、たとえば金属電極膜により形成されるカソード(陰極層)が積層されて形成される。すなわち、有機材料を上下から電極(陽極および陰極)で挟み込んだ構造を有する。有機層に上下の電極層から電圧を印加することにより、陽極層から正孔が、陰極層から電子がそれぞれ有機層に注入され、有機層にて正孔と電子が再結合し発光が生じる。
また、有機EL素子の製造においては、有機材料の耐水性が低いため、有機層の形成にウエットプロセスを利用するのが難しい。そのため、有機層は、真空薄膜成膜技術を利用した真空蒸着により形成するのが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、有機ELパネルなどの有機ELデバイスの製造工程においては、有機層の成膜工程において、成膜面にゴミなどの異物が付着したり傷が発生したりするなどの不良が生じる可能性がある。そのような場合、その部分の有機層の成膜は不完全なものとなる場合が多い。その結果、金属電極層が透明電極層に接触する状態で成膜され、透明電極層と金属電極層が短絡(ショート)する可能性がある。また、短絡までは至らなくとも、透明電極層と金属電極層との間の有機層が極度に薄く成膜され、発光電流が集中およびこれによる電流のリークをもたらす可能性がある。
有機ELパネルの表示面が大きくなるなど、有機ELデバイスの大きさが大きくなればなるほど、このようなゴミなどの異物の付着や傷の発生の確率は高くなり、歩留まりを悪化させる大きな原因となる。
【0005】
このような問題に対処するため、感光性材料を使用して、あるいは、非感光性材料を用いた後に感光性材料を用いて、ゴミや傷などの上に絶縁物を形成し、ゴミや傷などを被覆する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
しかしながら、これらの方法はいずれもレジスト膜をフォトリソグラフィ加工する工程を有し、プロセス工程を増やし、また、プロセス工程を複雑にしている。また、非感光性材料を用いてスパッタなどで絶縁膜を形成する場合、微細パターニングの成膜精度に限界があり、適切にそのゴミや傷の部分のみを被覆するのは難しい。
またこれらの方法は、いずれも現像除去する工程を含んでおり、完全な現像除去ができない場合、新たなゴミなどの異物が発生する可能性がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−54286号公報
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、製造工程を複雑化したり大幅に増加したりすることなく異物や欠陥などに起因する電極層間の短絡を防止し、これにより信頼性および歩留まりを向上することのできる有機ELデバイスの製造方法および有機ELデバイスを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の有機ELデバイスの製造方法は、基体上に第1電極層、有機層および前記第1電極層の対極となる第2電極層が順に積層された有機EL素子が複数配置された有機ELデバイスの製造方法であって、
前記基体上に形成された前記第1電極層における有機層形成面の不良箇所を検出する工程と、
検出した前記不良箇所に、インクジェット方式により液状絶縁物を吐出する工程と、
吐出された前記絶縁物を硬化させ、前記不良箇所を被覆する絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層が形成された前記第1電極層上、および、前記絶縁層が形成されていない前記第1電極層上に、前記有機層および前記第2電極層を順次形成する工程と
を有する。
【0009】
このような有機ELデバイスの製造方法においては、有機層を形成する前段階で有機層形成面に不良があるか否かを検出し、不良があった場合にはこの不良箇所に液状絶縁物を吐出する。この液状絶縁物の吐出は、インクジェット方式により行うので、不良箇所のみに精度よく液状絶縁物を付着させることができる。また、不良箇所を被覆する程度の適度な量の液状絶縁物を吐出することができる。
次に、不良箇所に吐出された液状絶縁物を硬化して不良箇所を被覆した絶縁層を形成し、その後、絶縁層が形成されていない箇所をも含めて、有機層および第2電極層を順次形成する。この時、不良箇所においては既に絶縁層が形成されているので、有機層および第2電極層はこの絶縁層の上に形成される。したがって、不良箇所においては、有機層および第2電極層と第1電極層とは絶縁層により隔離されることとなり、これらの短絡が防止される。
このような有機ELデバイスの製造方法における絶縁層を形成する工程は、現像処理やエッチング処理などを使用せず、単にインクジェット方式により絶縁物を選択的に配置して硬化させる比較的簡単な処理である。したがって、この工程により新たに不良の原因となるような異物が発生したり、有機層形成面を傷つけたりする可能性は、現像処理やエッチング処理を行う場合と比較して極めて低い。また、有機ELデバイスの製造工程全体を複雑することは無く、工程を大幅に増やすことも無い。
【0010】
好適には、前記絶縁物は、紫外線硬化樹脂であり、前記絶縁層を形成する工程においては、吐出した前記液状絶縁物および前記第1電極層に対して紫外線を照射し、前記絶縁物を硬化させるとともに前記第1電極層の仕事関数を変化させる。
このような方法によれば、不良箇所に吐出された樹脂に紫外線を照射するのみで、樹脂が硬化し絶縁層が形成される。電極層に紫外線を照射する処理は、有機EL素子を製造する成膜工程において電極層の仕事関数を変化させるために電極層に対して通常行われている処理である。したがって、紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線の照射は、この従来から行われる工程において一括的に行うことができる。そのため、不良箇所に絶縁層を形成するための工程の増加は、実質的に紫外線硬化樹脂の吐出工程のみとなり、工程の増加を最小限に押さえることができる。
【0011】
また好適には、前記第1電極層における前記有機層形成面の前記不良が、前記第1電極層上の異物の存在の場合は、前記液状絶縁物を吐出する工程において、前記異物を被覆するように、前記液状絶縁物を吐出する。
これにより、異物が存在するような不良において、第1電極層はその後積層される有機層および第2電極層から分離される。したがって、電極層間の短絡を防止することができる。
また好適には、前記第1電極層における前記有機層形成面の前記不良が、前記第1電極層の表面の傷の場合は、前記液状絶縁物を吐出する工程においては、前記傷を被覆するように、前記液状絶縁物を吐出する。
これにより、有機層形成面に傷などの損傷が存在するような不良において、第1電極層はその後積層される有機層および第2電極層から分離される。したがって、電極層間の短絡を防止することができる。
【0012】
また、好適な一例としては、前記有機ELデバイスは、複数の前記有機EL素子によりそれぞれ単一の表示画素を形成する表示デバイスであり、前記不良の無い前記有機EL素子のみにより各表示画素における表示が行われるように、検出した前記不良箇所の前記有機EL素子に対して前記液状絶縁物を吐出して前記絶縁層を形成し、当該有機EL素子を無効にする。
これにより、不良箇所の有機EL素子を無効としたとしても、表示画素においては他の有機EL素子による発光が行われる。不良箇所の有機EL素子を無効とすることにより電極層間の短絡を防止する本発明の製造方法およびデバイスを、画素単位での欠陥が許容されない表示デバイスに対しても適用することができる。
【0013】
また、好適な一例としては、前記有機層における発光を前記第2電極層側から取り出すように、前記第2電極層を透明電極により形成する。
これにより、外部に取り出される発光量を大きくし、デバイスの輝度を向上させることができる。このような構成のデバイスに対しても、不良箇所を有する有機EL素子に対して絶縁層を形成して無効にする処理は有効である。
【0014】
また、本発明の有機ELデバイスは、上述したいずれかの有機ELデバイスの製造方法により製造した有機ELデバイスである。
上述したいずれかの製造方法により製造した有機ELデバイスでは、不良箇所がある有機EL素子において、第1電極層と有機層との間に十分な絶縁層を形成している。したがって、この不良に起因して電極層間が短絡することを防ぐことができ、信頼性の高い有機ELデバイスを提供することができる。
【0015】
また、本発明の有機ELデバイスは、第1電極層、発光層を有する有機層および前記第1電極層の対極となる第2電極層が順に積層された有機EL素子が基体上に複数配置された有機ELデバイスであって、複数の前記有機EL素子によりそれぞれ単一の表示画素が構成されており、前記表示画素の各々においては、不良な前記有機EL素子は前記第1電極層と前記有機層との間に形成された絶縁層により無効にされ、残った正常な有機EL素子のみにより前記各表示画素において表示が行われる有機ELデバイスである。
このような構成の有機ELデバイスにおいては、不良箇所の有機EL素子を無効としたとしても、表示画素においては他の有機EL素子による発光が行われる。したがって、電極層間が短絡することを防止した信頼性の高い有機ELデバイスであって、画素単位での欠陥が発生しない表示デバイスに適用可能な有機ELデバイスを提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、第1実施形態〜第3実施形態に基づき説明する。
図1(A)は本発明の第1実施形態に係る有機ELデバイスの部分断面図、図1(B)は図1(A)の領域aに相当する正常な有機EL素子の積層状態を模式的に示す断面図、図2は図1(A)に示す有機ELデバイスの製造工程を示す流れ図、図3(A)〜図5(F)は図2に示す各製造工程における有機ELデバイスの部分断面図、図6(A)および図6(B)は本発明の第2実施形態に係る有機EL表示パネルの画素を構成する画素部の構成を示す上面図、図7は本発明の第3実施形態に係る成膜面側から発光を取り出す有機ELデバイスの構造を示す部分断面図である。
【0017】
第1実施形態
第1実施形態においては、ディスプレイ装置あるいは照明装置(バックライト光源など)などに用いて好適な、有機EL素子が発光素子として2次元マトリクス状に配設された有機ELデバイスおよびその製造方法を例示して本発明を説明する。
【0018】
図1(A)に示すように、本発明に係る有機ELデバイス100は、ガラス基板110上に複数の有機EL素子101〜103が配設されて構成される。有機ELデバイス100の製造工程においては、ゴミなどの異物が付着したり傷が発生したりする場合があり、図1(A)はそのような異物や傷が存在する箇所の断面をも示している。すなわち、図1(A)において、有機EL素子101は異物や傷の無い正常な素子を示し、有機EL素子102は異物191が存在する素子を示し、有機EL素子103は傷192が発生した素子を示す。
なお、図1(A)においては、3個の有機EL素子101〜103のみが図示してあるが、実際には多数の素子が配置されて有機ELデバイス100が構成される。
なお、有機ELデバイス100の製造工程において通常よく発生する異物191は、たとえば粒径が最大で数μm程度の異物である。
【0019】
正常な有機EL素子101は、図1(B)に模式的に示すような積層構造を有する。すなわち、有機EL素子101は、透明基板(基体)110上に、陽極としての透明電極(第1電極層)120、有機層150および陰極としての金属電極(第2電極層)160が順次積層されて構成される。有機層150は、正孔(ホール)を発光層152に輸送する正孔輸送層151、発光する発光層152、および、電子を発光層152に輸送する電子輸送層153を有する。
このような有機EL素子101においては、透明電極(陽極)120と金属電極(陰極)160との間に直流電圧を印加することにより、正孔は透明電極120から正孔輸送層151を経て発光層152に注入される。また、電子は金属電極160から電子輸送層153を経て発光層152に注入される。その結果、注入された正孔および電子の結合により発光層152内の蛍光分子が励起され発光現象が生じる。
【0020】
図1(A)に示すように、異物191が存在する有機EL素子102は、基本的には正常な有機EL素子101と同様の構成を有する。しかしながら、素子102においては、異物191が存在する透明電極120の表面(有機層形成面)と有機層150との間に、絶縁層140が形成される。絶縁層140は、後述するように、紫外線硬化樹脂(液状絶縁物)が、異物191および透明電極120の表面を完全に被覆するように吐出され、硬化されて形成された層であり、抵抗の高い絶縁性の層である。
この絶縁層140の介在により、素子102においては、透明電極120と金属電極160との間で通電は行われず、素子102は発光しない。しかしながら、異物191に起因して素子102の箇所で透明電極120と金属電極160とが短絡することも無い。すなわち、素子102は、重大な不良を引き起こすことも電力を消費することも無い無害な単に無効な素子として残存する。
【0021】
傷192が存在する有機EL素子103においては、素子102と同様に、傷192が存在する透明電極120と有機層150との間に、絶縁層140が形成される。この絶縁層140の介在により、素子103において透明電極120と金属電極160との間で通電は行われず、素子103が発光することも無い。しかしながら、素子102と同様に、傷192に起因して素子103の箇所で透明電極120と金属電極160とが短絡することや電界集中が生じることもなく、素子103は、重大な不良や電力の消費をすることの無い無害な単に無効な素子として存在する。
【0022】
なお、有機ELデバイス100においては、発光層が発光しなくなる暗点の成長を防ぐために、ポリイミド樹脂などで構成された隔壁130により個々の有機EL素子が隔てられている。
また、図1(A)および図1(B)に示す有機EL素子101〜103において、透明電極120の厚さは10〜1000〔nm〕、有機層150の正孔輸送層151、発光層152および電子輸送層153の厚さは各々10〜100〔nm〕程度である。また、隔壁130の高さは、好適には0.2〜100〔μm〕であり、本実施形態においては2〔μm〕である。
【0023】
次に、有機ELデバイス100の製造方法について説明する。
有機ELデバイス100は、図2に示す工程が順に施されて製造される。以下、図2の各工程について、図3(A)〜図5(F)に示す有機EL素子の各状態図を参照して説明する。
【0024】
図3(A)に示すように、まず、透明基板110上にスパッタ法によりITO膜を形成して透明電極120を形成する(工程S301)。
次に、各素子部101〜103(有機EL素子101〜103に相当する)を規定する領域の間にポリイミド樹脂などをスクリーン印刷することなどで隔壁130を形成し、透明電極120を各素子部101〜103ごとに区切る(工程S302)。
次に、透明電極120の有機層150形成面にゴミなどの異物や傷などの不良が無いか検査を行う(工程S303)。これは、たとえばCCDを搭載した光学顕微鏡などにより、透明電極120およびポリイミド隔壁130が形成された透明基板110を観察することにより行う。たとえば図3(B)に示すように、透明電極120上の素子102の形成領域に異物191が存在する場合や、素子103の形成領域に傷192が発生している場合には、この検査によりこれらの不良が発見され、その位置が特定される。
【0025】
このような不良箇所が発見されたら、図4(C)に示すように、これらの不良が存在する素子部に対して、インクジェット方式の液滴吐出装置210により、紫外線硬化樹脂(UV樹脂)141を滴下する(工程S304)。なお、UV樹脂141の滴下は、工程S203において検出された不良の位置に基づいて、CCD搭載光学顕微鏡などにより異物191や傷192の位置を確認しながら行う。各素子部は、ポリイミド隔壁130により区切られているため、滴下されたUV樹脂141は他の素子部に流れこむことが無い。したがって、図4(D)に示すように、異物191や傷192が存在する素子部102,103に対してのみ、適切にUV樹脂141が付着される。
なお、UV樹脂141は、図4(D)に示すように、異物191あるいは傷192および透明電極120の露出面が完全に被覆される量、滴下する。この量は、予測される異物191や傷192の大きさなどに応じて予め決めておいてもよいし、CCD搭載光学顕微鏡による観察画像などに基づいて異物191や傷192の大きさを検出し、これに基づいて決めてもよい。
【0026】
次に、図5(E)に示すように、不良のある素子部102,103にUV樹脂141が滴下された透明基板110の全体に対して、紫外線(UV)を照射する(工程S305)。その結果、滴下されたUV樹脂141は硬化し、不良のある素子部102、103において絶縁層140が形成される。
また、その紫外線は、UV樹脂141が滴下されていない素子部101においては直接に、また、UV樹脂141が滴下される素子部102,103においてはそのUV樹脂141を介して、透明電極120にも照射される。その結果、透明電極120の仕事関数を透明電極120上に後に堆積される有機層(150)の正孔輸送層(151)の仕事関数に近づけ、有機EL素子101の駆動電圧を低くするUVクリーニング処理も同時に行われる。
なお、本実施形態においては、図5(E)に示すように、UV樹脂141および透明電極120に対して成膜方向から紫外線を照射しているが、透明基板110方向から照射してもよい。
【0027】
不良のある素子部102,103に対する絶縁層140の形成が終了したら、図5(F)に示すように、それらの素子部を含めた全素子部101〜103に対して、有機層150を形成する(工程S306)。有機層150は、たとえば蒸着法により、図1(B)に示す正孔輸送層151、発光層152、電子輸送層153の順に形成される。
有機層150が形成されたら、有機ELデバイス100の全体にたとえば蒸着法によりアルミニウムなどの金属電極160を形成することにより、図1(A)に示す有機ELデバイス100が形成される(工程S307)。
【0028】
このように、図1(A)に示す本実施形態の有機ELデバイス100においては、異物191や傷192が存在した素子部102,103については、有機層150形成前に絶縁層140を形成し、異物191、傷192および透明電極120を完全に被覆している。したがって、素子部102,103において、透明電極120と金属電極160が短絡したり電流がリークしたりすることを未然に防ぐことができる。
またこのとき、絶縁層140を形成するためのUV樹脂141は、ポリイミド隔壁130により各素子部ごとに区切られた領域に対して、インクジェット方式を適用した液滴吐出装置210により滴下している。したがって、異物191や傷192が存在する素子部のみに絶縁層140を形成することが可能となる。
【0029】
また、絶縁層140の形成には、図4(C)および図4(D)に示すUV樹脂141の滴下と、図5(E)に示すUV光の照射という2つの工程を必要とする。しかし、図5(E)に示すUV光を照射する工程は、透明電極120の仕事関数を変化させるために、もとよりUVクリーニングとして行っていた処理である。したがって、UV光の照射によるUV樹脂141の硬化は、このUVクリーニング処理の中で同時に行うことができる。その結果、絶縁層140の形成のためには、実質的にはインクジェット方式によるUV樹脂141の滴下工程のみを新たに追加すればよく、工程の大幅な増加や複雑化を避けることができる。
【0030】
また、絶縁層の形成工程を含め本実施形態の有機ELデバイスの製造工程においては、露光・現像工程を用いていない。したがって、基板全体に新たなレジストを塗布する処理などを行う必要が無く、新たな異物が発生する可能性を少なくすることができる。
このように、本実施形態の有機ELデバイス100およびその製造方法によれば、ただ1つの工程の追加により、異物や傷などに起因する電極層の短絡や電流のリークを防止することができ、製造時の歩留まりを改善することができる。
【0031】
なお、図1(A)に示すこのような有機ELデバイス100においては、絶縁層140が形成された有機EL素子102,103は、発光しない非発光箇所となる。しかし、わずかな数の素子が非発光である状態が実質的に認識されない用途や、認識されたとしても使用に影響しない用途あるいは使用に耐え得る用途は多数ある。たとえば、バックライト照明などの全面発光用途のデバイスとして用いるのであれば、非発光の素子の影響を何ら受けずに使用可能である。本実施形態の有機ELデバイス100はそのような用途に適用可能であり十分に有効である。
【0032】
第2実施形態
本発明の第2実施形態として、本発明に係る有機ELデバイスを適用した有機EL表示パネルについて説明する。
図1(A)を参照して前述したように、本発明に係る有機ELデバイス100においては、絶縁層140を形成した有機EL素子102,103は発光しない。このような有機ELデバイス100を、全画素の発光が要望される表示パネルに適用するために、本実施形態の有機ELパネルにおいては、単一の画素を複数の有機EL素子により構成する。
【0033】
図6(A)に示す画素部(表示画素)410においては、3つの有機EL素子411〜413により1つの画素が構成される。有機EL素子413の形成時に異物などの不良が発生したとすると、有機EL素子413には第1実施形態と同様の処理が施され、陽極層と有機層との間に絶縁層が形成される。その結果、有機EL素子413は、陽極層と陰極層との短絡は防止されるものの発光もしない無効な素子として形成されることになる。
しかし、画素部410は、図6(A)に示すように、有機EL素子411〜413の3つの素子により構成されるので、有機EL素子413が発光しなくとも残りの2つの有機EL素子411および412は正常に発光する。その結果、表示パネル内で1つの画素を構成する画素部410としては、適切に発光を継続している。したがって、表示パネル全体として見た場合、発光しない有機EL素子がところどころに存在したとしても画素として発光しなくなることは防ぐことができ、実質的に全ての画素において発光が行われることになる。
このように、1つの画素を複数の有機EL素子により構成しておけば、いずれかの有機EL素子が無効とされたとしても画素としては発光を継続することができ、異物や傷などの不良の影響を最小限に抑えることができる。
【0034】
1つの画素を構成する画素部に配置する有機EL素子の構成は任意に決めてよい。たとえば、図6(B)に示すように、9個の有機EL素子を有するような画素部420としてもよい。画素部420においては、有機EL素子421、422が、各々異物および傷により無効となり非発光の素子となっているが、残りの7個の有機EL素子は正常に発光可能な素子である。このように1つの画素をより多くの有機EL素子で構成しておけば、異物や傷などの不良により無効な有機EL素子が発生したことの影響をより少なくすることができる。
【0035】
なお、このような構成の画素部410、420を有する有機EL表示パネルにおいても、第1実施形態の有機ELデバイスと同様の特徴を有する。
すなわち、その製造時に有機層形成面に異物や傷が存在した場合には、インクジェット方式により選択的にUV樹脂を滴下して絶縁層を形成している。したがって、陽極層と陰極層とが短絡したり電流がリークしたりすることを防ぐことができる。また、そのときのUV樹脂を硬化させる処理は、従来よりUVクリーニングとして行っていた透明電極の仕事関数を変化させる処理の際に同時に行う。したがって、インクジェット方式によりUV樹脂を滴下する工程を追加するのみでこのような有機EL表示パネルを製造することができる。すなわち、工程の大幅な増加や複雑化を避けることができる。また、露光・現像工程を用いないため、新たな異物が発生する可能性を少なくすることもでき、信頼性が高く、また高い歩留まりで、このような有機EL表示パネルを製造することができる。
【0036】
なお、このような画素部を有する有機EL表示パネルは、画素部における各有機EL素子の発光色を変えることにより、フルカラー表示が可能な表示パネルとすることができる。
有機EL素子は、発光層に含まれる有機発光材料(蛍光物質)を変えることにより、赤(R)、緑(G)、青(B)を発光する各有機EL素子に区別することができる。このR、G、B3色の有機EL素子を、図6(A)および図6(B)に示す各画素部の各有機EL素子として所定のパターンで適宜配置することにより、各画素部においてフルカラー表示が可能となる。またこれにより、フルカラー表示が可能な表示パネルが実現できる。
【0037】
なお、カラー有機ELパネルを製造するための各色の有機EL素子の配置は、パターニング成膜によって実現できる。パターニング成膜は、所定の成膜パターンに対応して開口が設けられているマスクを、有機層形成面を覆うように透明基板と密着させて配置し成膜を行う。各色に対応した複数種類のマスクを用意して発光層の成膜を順番に行うことにより、結果として複数種類の有機EL素子を所望の配列で配置することができる。
【0038】
第3実施形態
図1(A)および図1(B)に示した第1実施形態の有機ELデバイス100は、基板110および電極120を透明基板および透明電極として形成し、発光層152で発光した光を透明基板110側から取り出す構成であった。しかしながら、発光層152で発光した光は成膜面側から取り出すこともでき、その場合も絶縁層140を介在させる本発明に係る構成とすることが可能である。
そのような構成の有機EL素子を有する有機ELデバイスを、本発明の第3実施形態として説明する。
【0039】
図7に示す有機ELデバイス500の構成は、図1(A)に示す有機ELデバイス100とほぼ同じ構成であり、製造工程も同じである。しかしながら、図1(A)に示す有機ELデバイス100の金属電極160に代わって、図7に示す有機ELデバイス500においては、透明電極560を用いる。本実施形態においては、透明電極560は、たとえばマグネシウム(Mg)と銀(Ag)の混合材料などの低仕事関数の金属を用いる。
なお、基板510および陽極層520として透明部材を用いる必要は無い。陽極部材としては、任意の金属を用いてよい。
図7に示す構造の有機EL素子においては、成膜方向において臨界角が大きくなる傾向にあり、基板510側から取り出す場合よりも光を取り出し易い。したがって、有機EL素子501のように成膜側から光を取り出すことにより、同一の駆動電圧・電流においても輝度が向上する傾向にあり、好適である。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、異物や傷が発生した素子部に形成する絶縁層としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いてよい。
また、絶縁層を形成するために滴下した樹脂などの材料にある程度の粘性があれば、ポリイミド隔壁により有機EL素子の範囲が規定されていなくてとも、その材料は適切に異物の周囲に密着し、異物を被覆する。このような状況で材料を硬化させ、絶縁層を形成するようにしてもよい。
また、ゴミなどの異物や傷が発生している素子部の全面を絶縁層で被覆するのではなく、ゴミなどの異物や傷などの不良が発生している部分のみを絶縁層で覆い、単一の素子部における絶縁層で覆われていない部分では発光するようにしても良い。
【0041】
【発明の効果】
このように本発明によれば、製造工程を複雑化したり大幅に増加したりすることなく異物や欠陥などによる電極層間の短絡を防止し、これにより信頼性および歩留まりを向上することのできる有機ELデバイスの製造方法および有機ELデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)は、本発明の第1実施形態の有機ELデバイスの構成を示す部分断面図であり、図1(B)は、図1(A)に示した有機EL素子の積層状態を模式的に示す図1(A)の領域aの部分の断面図である。
【図2】図2は、図1に示す有機ELデバイスの製造工程を示す流れ図である。
【図3】図3(A)は、透明基板上に透明電極およびポリイミド隔壁を形成した状態を示す部分断面図であり、図3(B)は形成された透明電極上に異物および傷が発生した状態を示す上面図である。
【図4】図4(C)は、異物および傷が発生した素子部に紫外線硬化樹脂を吐出する状態を示す部分断面図であり、図4(D)は、異物および傷が発生した素子部に紫外線硬化樹脂が吐出された状態を示す部分断面図である。
【図5】図5(E)は、紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して絶縁層を形成した状態を示す部分断面図であり、図5(F)は、有機層を形成した状態を示す部分断面図である。
【図6】図6(A)および図6(B)は、各々、本発明の第2実施形態の有機EL表示パネルの画素部の構成を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第3実施形態の有機ELデバイスの構成を示す図である。
【符号の説明】
100…有機ELデバイス、101〜103…有機EL素子、110…透明基板、120…透明電極、130…ポリイミド隔壁、140…絶縁層、141…UV樹脂、150…有機層、151…正孔輸送層、152…発光層、153…電子輸送層、160…金属電極、191…異物、192…傷、210…液滴吐出装置、410,420…画素部、411,412…正常な有機EL素子、413,421,422…非発光素子、500…有機ELデバイス、501〜503…有機EL素子、510…基板、520…陽極層、560…透明電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機電界発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子:以下、「有機EL素子」と言う)を有する有機ELパネルなどの有機ELデバイスの製造方法、および、その有機ELデバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
発光素子として電界発光を利用した有機EL素子を用いた有機ELパネルが注目を集めている。有機ELパネルは、バックライトが不要な自己発光型のフラットパネルディスプレイであり、視野角が広く視認性の高いディスプレイを実現できる。また、必要な画素のみを発光させればよいため、液晶ディスプレイなどのバックライト型のディスプレイに比べて消費電力を少なくすることができる。また、応答性能を、今後実用化が期待されている高精細度の高速のビデオ信号にも十分対応可能な程度に高くすることもできる。
【0003】
有機ELパネルに用いられる有機EL素子は、たとえば透明電極膜により形成されるアノード(陽極層)、発光層である有機層、および、たとえば金属電極膜により形成されるカソード(陰極層)が積層されて形成される。すなわち、有機材料を上下から電極(陽極および陰極)で挟み込んだ構造を有する。有機層に上下の電極層から電圧を印加することにより、陽極層から正孔が、陰極層から電子がそれぞれ有機層に注入され、有機層にて正孔と電子が再結合し発光が生じる。
また、有機EL素子の製造においては、有機材料の耐水性が低いため、有機層の形成にウエットプロセスを利用するのが難しい。そのため、有機層は、真空薄膜成膜技術を利用した真空蒸着により形成するのが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、有機ELパネルなどの有機ELデバイスの製造工程においては、有機層の成膜工程において、成膜面にゴミなどの異物が付着したり傷が発生したりするなどの不良が生じる可能性がある。そのような場合、その部分の有機層の成膜は不完全なものとなる場合が多い。その結果、金属電極層が透明電極層に接触する状態で成膜され、透明電極層と金属電極層が短絡(ショート)する可能性がある。また、短絡までは至らなくとも、透明電極層と金属電極層との間の有機層が極度に薄く成膜され、発光電流が集中およびこれによる電流のリークをもたらす可能性がある。
有機ELパネルの表示面が大きくなるなど、有機ELデバイスの大きさが大きくなればなるほど、このようなゴミなどの異物の付着や傷の発生の確率は高くなり、歩留まりを悪化させる大きな原因となる。
【0005】
このような問題に対処するため、感光性材料を使用して、あるいは、非感光性材料を用いた後に感光性材料を用いて、ゴミや傷などの上に絶縁物を形成し、ゴミや傷などを被覆する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
しかしながら、これらの方法はいずれもレジスト膜をフォトリソグラフィ加工する工程を有し、プロセス工程を増やし、また、プロセス工程を複雑にしている。また、非感光性材料を用いてスパッタなどで絶縁膜を形成する場合、微細パターニングの成膜精度に限界があり、適切にそのゴミや傷の部分のみを被覆するのは難しい。
またこれらの方法は、いずれも現像除去する工程を含んでおり、完全な現像除去ができない場合、新たなゴミなどの異物が発生する可能性がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−54286号公報
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、製造工程を複雑化したり大幅に増加したりすることなく異物や欠陥などに起因する電極層間の短絡を防止し、これにより信頼性および歩留まりを向上することのできる有機ELデバイスの製造方法および有機ELデバイスを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の有機ELデバイスの製造方法は、基体上に第1電極層、有機層および前記第1電極層の対極となる第2電極層が順に積層された有機EL素子が複数配置された有機ELデバイスの製造方法であって、
前記基体上に形成された前記第1電極層における有機層形成面の不良箇所を検出する工程と、
検出した前記不良箇所に、インクジェット方式により液状絶縁物を吐出する工程と、
吐出された前記絶縁物を硬化させ、前記不良箇所を被覆する絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層が形成された前記第1電極層上、および、前記絶縁層が形成されていない前記第1電極層上に、前記有機層および前記第2電極層を順次形成する工程と
を有する。
【0009】
このような有機ELデバイスの製造方法においては、有機層を形成する前段階で有機層形成面に不良があるか否かを検出し、不良があった場合にはこの不良箇所に液状絶縁物を吐出する。この液状絶縁物の吐出は、インクジェット方式により行うので、不良箇所のみに精度よく液状絶縁物を付着させることができる。また、不良箇所を被覆する程度の適度な量の液状絶縁物を吐出することができる。
次に、不良箇所に吐出された液状絶縁物を硬化して不良箇所を被覆した絶縁層を形成し、その後、絶縁層が形成されていない箇所をも含めて、有機層および第2電極層を順次形成する。この時、不良箇所においては既に絶縁層が形成されているので、有機層および第2電極層はこの絶縁層の上に形成される。したがって、不良箇所においては、有機層および第2電極層と第1電極層とは絶縁層により隔離されることとなり、これらの短絡が防止される。
このような有機ELデバイスの製造方法における絶縁層を形成する工程は、現像処理やエッチング処理などを使用せず、単にインクジェット方式により絶縁物を選択的に配置して硬化させる比較的簡単な処理である。したがって、この工程により新たに不良の原因となるような異物が発生したり、有機層形成面を傷つけたりする可能性は、現像処理やエッチング処理を行う場合と比較して極めて低い。また、有機ELデバイスの製造工程全体を複雑することは無く、工程を大幅に増やすことも無い。
【0010】
好適には、前記絶縁物は、紫外線硬化樹脂であり、前記絶縁層を形成する工程においては、吐出した前記液状絶縁物および前記第1電極層に対して紫外線を照射し、前記絶縁物を硬化させるとともに前記第1電極層の仕事関数を変化させる。
このような方法によれば、不良箇所に吐出された樹脂に紫外線を照射するのみで、樹脂が硬化し絶縁層が形成される。電極層に紫外線を照射する処理は、有機EL素子を製造する成膜工程において電極層の仕事関数を変化させるために電極層に対して通常行われている処理である。したがって、紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線の照射は、この従来から行われる工程において一括的に行うことができる。そのため、不良箇所に絶縁層を形成するための工程の増加は、実質的に紫外線硬化樹脂の吐出工程のみとなり、工程の増加を最小限に押さえることができる。
【0011】
また好適には、前記第1電極層における前記有機層形成面の前記不良が、前記第1電極層上の異物の存在の場合は、前記液状絶縁物を吐出する工程において、前記異物を被覆するように、前記液状絶縁物を吐出する。
これにより、異物が存在するような不良において、第1電極層はその後積層される有機層および第2電極層から分離される。したがって、電極層間の短絡を防止することができる。
また好適には、前記第1電極層における前記有機層形成面の前記不良が、前記第1電極層の表面の傷の場合は、前記液状絶縁物を吐出する工程においては、前記傷を被覆するように、前記液状絶縁物を吐出する。
これにより、有機層形成面に傷などの損傷が存在するような不良において、第1電極層はその後積層される有機層および第2電極層から分離される。したがって、電極層間の短絡を防止することができる。
【0012】
また、好適な一例としては、前記有機ELデバイスは、複数の前記有機EL素子によりそれぞれ単一の表示画素を形成する表示デバイスであり、前記不良の無い前記有機EL素子のみにより各表示画素における表示が行われるように、検出した前記不良箇所の前記有機EL素子に対して前記液状絶縁物を吐出して前記絶縁層を形成し、当該有機EL素子を無効にする。
これにより、不良箇所の有機EL素子を無効としたとしても、表示画素においては他の有機EL素子による発光が行われる。不良箇所の有機EL素子を無効とすることにより電極層間の短絡を防止する本発明の製造方法およびデバイスを、画素単位での欠陥が許容されない表示デバイスに対しても適用することができる。
【0013】
また、好適な一例としては、前記有機層における発光を前記第2電極層側から取り出すように、前記第2電極層を透明電極により形成する。
これにより、外部に取り出される発光量を大きくし、デバイスの輝度を向上させることができる。このような構成のデバイスに対しても、不良箇所を有する有機EL素子に対して絶縁層を形成して無効にする処理は有効である。
【0014】
また、本発明の有機ELデバイスは、上述したいずれかの有機ELデバイスの製造方法により製造した有機ELデバイスである。
上述したいずれかの製造方法により製造した有機ELデバイスでは、不良箇所がある有機EL素子において、第1電極層と有機層との間に十分な絶縁層を形成している。したがって、この不良に起因して電極層間が短絡することを防ぐことができ、信頼性の高い有機ELデバイスを提供することができる。
【0015】
また、本発明の有機ELデバイスは、第1電極層、発光層を有する有機層および前記第1電極層の対極となる第2電極層が順に積層された有機EL素子が基体上に複数配置された有機ELデバイスであって、複数の前記有機EL素子によりそれぞれ単一の表示画素が構成されており、前記表示画素の各々においては、不良な前記有機EL素子は前記第1電極層と前記有機層との間に形成された絶縁層により無効にされ、残った正常な有機EL素子のみにより前記各表示画素において表示が行われる有機ELデバイスである。
このような構成の有機ELデバイスにおいては、不良箇所の有機EL素子を無効としたとしても、表示画素においては他の有機EL素子による発光が行われる。したがって、電極層間が短絡することを防止した信頼性の高い有機ELデバイスであって、画素単位での欠陥が発生しない表示デバイスに適用可能な有機ELデバイスを提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、第1実施形態〜第3実施形態に基づき説明する。
図1(A)は本発明の第1実施形態に係る有機ELデバイスの部分断面図、図1(B)は図1(A)の領域aに相当する正常な有機EL素子の積層状態を模式的に示す断面図、図2は図1(A)に示す有機ELデバイスの製造工程を示す流れ図、図3(A)〜図5(F)は図2に示す各製造工程における有機ELデバイスの部分断面図、図6(A)および図6(B)は本発明の第2実施形態に係る有機EL表示パネルの画素を構成する画素部の構成を示す上面図、図7は本発明の第3実施形態に係る成膜面側から発光を取り出す有機ELデバイスの構造を示す部分断面図である。
【0017】
第1実施形態
第1実施形態においては、ディスプレイ装置あるいは照明装置(バックライト光源など)などに用いて好適な、有機EL素子が発光素子として2次元マトリクス状に配設された有機ELデバイスおよびその製造方法を例示して本発明を説明する。
【0018】
図1(A)に示すように、本発明に係る有機ELデバイス100は、ガラス基板110上に複数の有機EL素子101〜103が配設されて構成される。有機ELデバイス100の製造工程においては、ゴミなどの異物が付着したり傷が発生したりする場合があり、図1(A)はそのような異物や傷が存在する箇所の断面をも示している。すなわち、図1(A)において、有機EL素子101は異物や傷の無い正常な素子を示し、有機EL素子102は異物191が存在する素子を示し、有機EL素子103は傷192が発生した素子を示す。
なお、図1(A)においては、3個の有機EL素子101〜103のみが図示してあるが、実際には多数の素子が配置されて有機ELデバイス100が構成される。
なお、有機ELデバイス100の製造工程において通常よく発生する異物191は、たとえば粒径が最大で数μm程度の異物である。
【0019】
正常な有機EL素子101は、図1(B)に模式的に示すような積層構造を有する。すなわち、有機EL素子101は、透明基板(基体)110上に、陽極としての透明電極(第1電極層)120、有機層150および陰極としての金属電極(第2電極層)160が順次積層されて構成される。有機層150は、正孔(ホール)を発光層152に輸送する正孔輸送層151、発光する発光層152、および、電子を発光層152に輸送する電子輸送層153を有する。
このような有機EL素子101においては、透明電極(陽極)120と金属電極(陰極)160との間に直流電圧を印加することにより、正孔は透明電極120から正孔輸送層151を経て発光層152に注入される。また、電子は金属電極160から電子輸送層153を経て発光層152に注入される。その結果、注入された正孔および電子の結合により発光層152内の蛍光分子が励起され発光現象が生じる。
【0020】
図1(A)に示すように、異物191が存在する有機EL素子102は、基本的には正常な有機EL素子101と同様の構成を有する。しかしながら、素子102においては、異物191が存在する透明電極120の表面(有機層形成面)と有機層150との間に、絶縁層140が形成される。絶縁層140は、後述するように、紫外線硬化樹脂(液状絶縁物)が、異物191および透明電極120の表面を完全に被覆するように吐出され、硬化されて形成された層であり、抵抗の高い絶縁性の層である。
この絶縁層140の介在により、素子102においては、透明電極120と金属電極160との間で通電は行われず、素子102は発光しない。しかしながら、異物191に起因して素子102の箇所で透明電極120と金属電極160とが短絡することも無い。すなわち、素子102は、重大な不良を引き起こすことも電力を消費することも無い無害な単に無効な素子として残存する。
【0021】
傷192が存在する有機EL素子103においては、素子102と同様に、傷192が存在する透明電極120と有機層150との間に、絶縁層140が形成される。この絶縁層140の介在により、素子103において透明電極120と金属電極160との間で通電は行われず、素子103が発光することも無い。しかしながら、素子102と同様に、傷192に起因して素子103の箇所で透明電極120と金属電極160とが短絡することや電界集中が生じることもなく、素子103は、重大な不良や電力の消費をすることの無い無害な単に無効な素子として存在する。
【0022】
なお、有機ELデバイス100においては、発光層が発光しなくなる暗点の成長を防ぐために、ポリイミド樹脂などで構成された隔壁130により個々の有機EL素子が隔てられている。
また、図1(A)および図1(B)に示す有機EL素子101〜103において、透明電極120の厚さは10〜1000〔nm〕、有機層150の正孔輸送層151、発光層152および電子輸送層153の厚さは各々10〜100〔nm〕程度である。また、隔壁130の高さは、好適には0.2〜100〔μm〕であり、本実施形態においては2〔μm〕である。
【0023】
次に、有機ELデバイス100の製造方法について説明する。
有機ELデバイス100は、図2に示す工程が順に施されて製造される。以下、図2の各工程について、図3(A)〜図5(F)に示す有機EL素子の各状態図を参照して説明する。
【0024】
図3(A)に示すように、まず、透明基板110上にスパッタ法によりITO膜を形成して透明電極120を形成する(工程S301)。
次に、各素子部101〜103(有機EL素子101〜103に相当する)を規定する領域の間にポリイミド樹脂などをスクリーン印刷することなどで隔壁130を形成し、透明電極120を各素子部101〜103ごとに区切る(工程S302)。
次に、透明電極120の有機層150形成面にゴミなどの異物や傷などの不良が無いか検査を行う(工程S303)。これは、たとえばCCDを搭載した光学顕微鏡などにより、透明電極120およびポリイミド隔壁130が形成された透明基板110を観察することにより行う。たとえば図3(B)に示すように、透明電極120上の素子102の形成領域に異物191が存在する場合や、素子103の形成領域に傷192が発生している場合には、この検査によりこれらの不良が発見され、その位置が特定される。
【0025】
このような不良箇所が発見されたら、図4(C)に示すように、これらの不良が存在する素子部に対して、インクジェット方式の液滴吐出装置210により、紫外線硬化樹脂(UV樹脂)141を滴下する(工程S304)。なお、UV樹脂141の滴下は、工程S203において検出された不良の位置に基づいて、CCD搭載光学顕微鏡などにより異物191や傷192の位置を確認しながら行う。各素子部は、ポリイミド隔壁130により区切られているため、滴下されたUV樹脂141は他の素子部に流れこむことが無い。したがって、図4(D)に示すように、異物191や傷192が存在する素子部102,103に対してのみ、適切にUV樹脂141が付着される。
なお、UV樹脂141は、図4(D)に示すように、異物191あるいは傷192および透明電極120の露出面が完全に被覆される量、滴下する。この量は、予測される異物191や傷192の大きさなどに応じて予め決めておいてもよいし、CCD搭載光学顕微鏡による観察画像などに基づいて異物191や傷192の大きさを検出し、これに基づいて決めてもよい。
【0026】
次に、図5(E)に示すように、不良のある素子部102,103にUV樹脂141が滴下された透明基板110の全体に対して、紫外線(UV)を照射する(工程S305)。その結果、滴下されたUV樹脂141は硬化し、不良のある素子部102、103において絶縁層140が形成される。
また、その紫外線は、UV樹脂141が滴下されていない素子部101においては直接に、また、UV樹脂141が滴下される素子部102,103においてはそのUV樹脂141を介して、透明電極120にも照射される。その結果、透明電極120の仕事関数を透明電極120上に後に堆積される有機層(150)の正孔輸送層(151)の仕事関数に近づけ、有機EL素子101の駆動電圧を低くするUVクリーニング処理も同時に行われる。
なお、本実施形態においては、図5(E)に示すように、UV樹脂141および透明電極120に対して成膜方向から紫外線を照射しているが、透明基板110方向から照射してもよい。
【0027】
不良のある素子部102,103に対する絶縁層140の形成が終了したら、図5(F)に示すように、それらの素子部を含めた全素子部101〜103に対して、有機層150を形成する(工程S306)。有機層150は、たとえば蒸着法により、図1(B)に示す正孔輸送層151、発光層152、電子輸送層153の順に形成される。
有機層150が形成されたら、有機ELデバイス100の全体にたとえば蒸着法によりアルミニウムなどの金属電極160を形成することにより、図1(A)に示す有機ELデバイス100が形成される(工程S307)。
【0028】
このように、図1(A)に示す本実施形態の有機ELデバイス100においては、異物191や傷192が存在した素子部102,103については、有機層150形成前に絶縁層140を形成し、異物191、傷192および透明電極120を完全に被覆している。したがって、素子部102,103において、透明電極120と金属電極160が短絡したり電流がリークしたりすることを未然に防ぐことができる。
またこのとき、絶縁層140を形成するためのUV樹脂141は、ポリイミド隔壁130により各素子部ごとに区切られた領域に対して、インクジェット方式を適用した液滴吐出装置210により滴下している。したがって、異物191や傷192が存在する素子部のみに絶縁層140を形成することが可能となる。
【0029】
また、絶縁層140の形成には、図4(C)および図4(D)に示すUV樹脂141の滴下と、図5(E)に示すUV光の照射という2つの工程を必要とする。しかし、図5(E)に示すUV光を照射する工程は、透明電極120の仕事関数を変化させるために、もとよりUVクリーニングとして行っていた処理である。したがって、UV光の照射によるUV樹脂141の硬化は、このUVクリーニング処理の中で同時に行うことができる。その結果、絶縁層140の形成のためには、実質的にはインクジェット方式によるUV樹脂141の滴下工程のみを新たに追加すればよく、工程の大幅な増加や複雑化を避けることができる。
【0030】
また、絶縁層の形成工程を含め本実施形態の有機ELデバイスの製造工程においては、露光・現像工程を用いていない。したがって、基板全体に新たなレジストを塗布する処理などを行う必要が無く、新たな異物が発生する可能性を少なくすることができる。
このように、本実施形態の有機ELデバイス100およびその製造方法によれば、ただ1つの工程の追加により、異物や傷などに起因する電極層の短絡や電流のリークを防止することができ、製造時の歩留まりを改善することができる。
【0031】
なお、図1(A)に示すこのような有機ELデバイス100においては、絶縁層140が形成された有機EL素子102,103は、発光しない非発光箇所となる。しかし、わずかな数の素子が非発光である状態が実質的に認識されない用途や、認識されたとしても使用に影響しない用途あるいは使用に耐え得る用途は多数ある。たとえば、バックライト照明などの全面発光用途のデバイスとして用いるのであれば、非発光の素子の影響を何ら受けずに使用可能である。本実施形態の有機ELデバイス100はそのような用途に適用可能であり十分に有効である。
【0032】
第2実施形態
本発明の第2実施形態として、本発明に係る有機ELデバイスを適用した有機EL表示パネルについて説明する。
図1(A)を参照して前述したように、本発明に係る有機ELデバイス100においては、絶縁層140を形成した有機EL素子102,103は発光しない。このような有機ELデバイス100を、全画素の発光が要望される表示パネルに適用するために、本実施形態の有機ELパネルにおいては、単一の画素を複数の有機EL素子により構成する。
【0033】
図6(A)に示す画素部(表示画素)410においては、3つの有機EL素子411〜413により1つの画素が構成される。有機EL素子413の形成時に異物などの不良が発生したとすると、有機EL素子413には第1実施形態と同様の処理が施され、陽極層と有機層との間に絶縁層が形成される。その結果、有機EL素子413は、陽極層と陰極層との短絡は防止されるものの発光もしない無効な素子として形成されることになる。
しかし、画素部410は、図6(A)に示すように、有機EL素子411〜413の3つの素子により構成されるので、有機EL素子413が発光しなくとも残りの2つの有機EL素子411および412は正常に発光する。その結果、表示パネル内で1つの画素を構成する画素部410としては、適切に発光を継続している。したがって、表示パネル全体として見た場合、発光しない有機EL素子がところどころに存在したとしても画素として発光しなくなることは防ぐことができ、実質的に全ての画素において発光が行われることになる。
このように、1つの画素を複数の有機EL素子により構成しておけば、いずれかの有機EL素子が無効とされたとしても画素としては発光を継続することができ、異物や傷などの不良の影響を最小限に抑えることができる。
【0034】
1つの画素を構成する画素部に配置する有機EL素子の構成は任意に決めてよい。たとえば、図6(B)に示すように、9個の有機EL素子を有するような画素部420としてもよい。画素部420においては、有機EL素子421、422が、各々異物および傷により無効となり非発光の素子となっているが、残りの7個の有機EL素子は正常に発光可能な素子である。このように1つの画素をより多くの有機EL素子で構成しておけば、異物や傷などの不良により無効な有機EL素子が発生したことの影響をより少なくすることができる。
【0035】
なお、このような構成の画素部410、420を有する有機EL表示パネルにおいても、第1実施形態の有機ELデバイスと同様の特徴を有する。
すなわち、その製造時に有機層形成面に異物や傷が存在した場合には、インクジェット方式により選択的にUV樹脂を滴下して絶縁層を形成している。したがって、陽極層と陰極層とが短絡したり電流がリークしたりすることを防ぐことができる。また、そのときのUV樹脂を硬化させる処理は、従来よりUVクリーニングとして行っていた透明電極の仕事関数を変化させる処理の際に同時に行う。したがって、インクジェット方式によりUV樹脂を滴下する工程を追加するのみでこのような有機EL表示パネルを製造することができる。すなわち、工程の大幅な増加や複雑化を避けることができる。また、露光・現像工程を用いないため、新たな異物が発生する可能性を少なくすることもでき、信頼性が高く、また高い歩留まりで、このような有機EL表示パネルを製造することができる。
【0036】
なお、このような画素部を有する有機EL表示パネルは、画素部における各有機EL素子の発光色を変えることにより、フルカラー表示が可能な表示パネルとすることができる。
有機EL素子は、発光層に含まれる有機発光材料(蛍光物質)を変えることにより、赤(R)、緑(G)、青(B)を発光する各有機EL素子に区別することができる。このR、G、B3色の有機EL素子を、図6(A)および図6(B)に示す各画素部の各有機EL素子として所定のパターンで適宜配置することにより、各画素部においてフルカラー表示が可能となる。またこれにより、フルカラー表示が可能な表示パネルが実現できる。
【0037】
なお、カラー有機ELパネルを製造するための各色の有機EL素子の配置は、パターニング成膜によって実現できる。パターニング成膜は、所定の成膜パターンに対応して開口が設けられているマスクを、有機層形成面を覆うように透明基板と密着させて配置し成膜を行う。各色に対応した複数種類のマスクを用意して発光層の成膜を順番に行うことにより、結果として複数種類の有機EL素子を所望の配列で配置することができる。
【0038】
第3実施形態
図1(A)および図1(B)に示した第1実施形態の有機ELデバイス100は、基板110および電極120を透明基板および透明電極として形成し、発光層152で発光した光を透明基板110側から取り出す構成であった。しかしながら、発光層152で発光した光は成膜面側から取り出すこともでき、その場合も絶縁層140を介在させる本発明に係る構成とすることが可能である。
そのような構成の有機EL素子を有する有機ELデバイスを、本発明の第3実施形態として説明する。
【0039】
図7に示す有機ELデバイス500の構成は、図1(A)に示す有機ELデバイス100とほぼ同じ構成であり、製造工程も同じである。しかしながら、図1(A)に示す有機ELデバイス100の金属電極160に代わって、図7に示す有機ELデバイス500においては、透明電極560を用いる。本実施形態においては、透明電極560は、たとえばマグネシウム(Mg)と銀(Ag)の混合材料などの低仕事関数の金属を用いる。
なお、基板510および陽極層520として透明部材を用いる必要は無い。陽極部材としては、任意の金属を用いてよい。
図7に示す構造の有機EL素子においては、成膜方向において臨界角が大きくなる傾向にあり、基板510側から取り出す場合よりも光を取り出し易い。したがって、有機EL素子501のように成膜側から光を取り出すことにより、同一の駆動電圧・電流においても輝度が向上する傾向にあり、好適である。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、異物や傷が発生した素子部に形成する絶縁層としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いてよい。
また、絶縁層を形成するために滴下した樹脂などの材料にある程度の粘性があれば、ポリイミド隔壁により有機EL素子の範囲が規定されていなくてとも、その材料は適切に異物の周囲に密着し、異物を被覆する。このような状況で材料を硬化させ、絶縁層を形成するようにしてもよい。
また、ゴミなどの異物や傷が発生している素子部の全面を絶縁層で被覆するのではなく、ゴミなどの異物や傷などの不良が発生している部分のみを絶縁層で覆い、単一の素子部における絶縁層で覆われていない部分では発光するようにしても良い。
【0041】
【発明の効果】
このように本発明によれば、製造工程を複雑化したり大幅に増加したりすることなく異物や欠陥などによる電極層間の短絡を防止し、これにより信頼性および歩留まりを向上することのできる有機ELデバイスの製造方法および有機ELデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)は、本発明の第1実施形態の有機ELデバイスの構成を示す部分断面図であり、図1(B)は、図1(A)に示した有機EL素子の積層状態を模式的に示す図1(A)の領域aの部分の断面図である。
【図2】図2は、図1に示す有機ELデバイスの製造工程を示す流れ図である。
【図3】図3(A)は、透明基板上に透明電極およびポリイミド隔壁を形成した状態を示す部分断面図であり、図3(B)は形成された透明電極上に異物および傷が発生した状態を示す上面図である。
【図4】図4(C)は、異物および傷が発生した素子部に紫外線硬化樹脂を吐出する状態を示す部分断面図であり、図4(D)は、異物および傷が発生した素子部に紫外線硬化樹脂が吐出された状態を示す部分断面図である。
【図5】図5(E)は、紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して絶縁層を形成した状態を示す部分断面図であり、図5(F)は、有機層を形成した状態を示す部分断面図である。
【図6】図6(A)および図6(B)は、各々、本発明の第2実施形態の有機EL表示パネルの画素部の構成を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第3実施形態の有機ELデバイスの構成を示す図である。
【符号の説明】
100…有機ELデバイス、101〜103…有機EL素子、110…透明基板、120…透明電極、130…ポリイミド隔壁、140…絶縁層、141…UV樹脂、150…有機層、151…正孔輸送層、152…発光層、153…電子輸送層、160…金属電極、191…異物、192…傷、210…液滴吐出装置、410,420…画素部、411,412…正常な有機EL素子、413,421,422…非発光素子、500…有機ELデバイス、501〜503…有機EL素子、510…基板、520…陽極層、560…透明電極
Claims (8)
- 基体上に第1電極層、有機層および前記第1電極層の対極となる第2電極層が順に積層された有機EL素子が複数配置された有機ELデバイスの製造方法であって、
前記基体上に形成された前記第1電極層における有機層形成面の不良箇所を検出する工程と、
検出した前記不良箇所に、インクジェット方式により液状絶縁物を吐出する工程と、
吐出された前記絶縁物を硬化させ、前記不良箇所を被覆する絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層が形成された前記第1電極層上、および、前記絶縁層が形成されていない前記第1電極層上に、前記有機層および前記第2電極層を順次形成する工程と
を有する有機ELデバイスの製造方法。 - 前記絶縁物は、紫外線硬化樹脂であり、
前記絶縁層を形成する工程においては、吐出した前記液状絶縁物および前記第1電極層に対して紫外線を照射し、前記絶縁物を硬化させるとともに前記第1電極層の仕事関数を変化させる
請求項1に記載の有機ELデバイスの製造方法。 - 前記第1電極層における前記有機層形成面の前記不良が、前記第1電極層上の異物の存在の場合は、前記液状絶縁物を吐出する工程において、前記異物を被覆するように前記液状絶縁物を吐出する
請求項1または2に記載の有機ELデバイスの製造方法。 - 前記第1電極層における前記有機層形成面の前記不良が、前記第1電極層の表面の傷の場合は、前記液状絶縁物を吐出する工程においては、前記傷を被覆するように前記液状絶縁物を吐出する
請求項1〜3のいずれかに記載の有機ELデバイスの製造方法。 - 前記有機ELデバイスは、複数の前記有機EL素子によりそれぞれ単一の表示画素を形成する表示デバイスであり、
不良の無い前記有機EL素子のみにより各表示画素における表示が行われるように、検出した前記不良箇所の前記有機EL素子に対して前記液状絶縁物を吐出して前記絶縁層を形成し、当該有機EL素子を無効にする
請求項1〜4のいずれかに記載の有機ELデバイスの製造方法。 - 前記有機層における発光を前記第2電極層側から取り出すように、前記第2電極層を透明電極により形成する
請求項1〜5のいずれかに記載の有機ELデバイスの製造方法。 - 前記請求項1〜6のいずれかに記載の有機ELデバイスの製造方法により製造された有機ELデバイス。
- 第1電極層、発光層を有する有機層および前記第1電極層の対極となる第2電極層が順に積層された有機EL素子が基体上に複数配置された有機ELデバイスであって、
複数の前記有機EL素子によりそれぞれ単一の表示画素が構成されており、
前記表示画素の各々においては、不良な前記有機EL素子は前記第1電極層と前記有機層との間に形成された絶縁層により無効にされ、残った正常な有機EL素子のみにより前記各表示画素において表示が行われる
有機ELデバイス。
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