JP2004253103A - 記録媒体基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】基板ないし下地との密着性に優れた軟磁性めっき層ないし軟磁性部を有する記録媒体基板、および、その製造方法を提供することを、目的とする。
【解決手段】記録媒体基板X1において、コア基板S1、軟磁性めっき層11、並びに、当該コア基板S1および軟磁性めっき層11の間の多孔質酸化物層20、よりなる積層構造を有することとした。或は、コア基板S1と、複数の軟磁性めっき層11および軟磁性めっき層間に介在し且つ軟磁性めっき層11よりも高電気抵抗率の部位を含むインターカレート層12からなる積層構造を有する軟磁性部10と、当該コア基板S1および軟磁性部10の間の多孔質酸化物層20と、からなる積層構造を有することとした。
【選択図】 図1
【解決手段】記録媒体基板X1において、コア基板S1、軟磁性めっき層11、並びに、当該コア基板S1および軟磁性めっき層11の間の多孔質酸化物層20、よりなる積層構造を有することとした。或は、コア基板S1と、複数の軟磁性めっき層11および軟磁性めっき層間に介在し且つ軟磁性めっき層11よりも高電気抵抗率の部位を含むインターカレート層12からなる積層構造を有する軟磁性部10と、当該コア基板S1および軟磁性部10の間の多孔質酸化物層20と、からなる積層構造を有することとした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体や光磁気記録媒体などの記録媒体の作製に用いることのできる記録媒体基板、および、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータシステムにおける情報処理量の増大に伴い、ハードディスクなどの記憶装置を構成する磁気記録媒体に対しては、記憶容量の増大化が要求される。そのような要求を満たし得る媒体として、近年、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体が注目を集めている。
【0003】
図8は、垂直磁気記録方式の従来の磁気記録媒体の一例である磁気記録媒体X4を表す。磁気記録媒体X4は、基板S2と、記録磁性層81と、軟磁性層82と、非磁性層83と、保護層84と、潤滑層85とからなる積層構造を有する。各層は、軟磁性層82、非磁性層83、記録磁性層81、保護層84、および潤滑層85の順で、基板S2の側から積層形成されたものである。
【0004】
記録磁性層81は、この層を構成する磁性膜の膜面に対して垂直な方向に磁化容易軸を有して磁化された垂直磁化膜である。軟磁性層82は、比較的に大きな飽和磁化と比較的に小さな保磁力とを有する磁性膜により構成され、当該磁性膜の膜面に平行な方向(面内方向)に磁化容易軸を有して磁化された面内磁化膜である。非磁性層83は、非磁性材料よりなり、主に、記録磁性層81および軟磁性層82を磁性的に適切に分離するためのものである。保護層84は、記録磁性層81を外界から物理的および化学的に保護するためのものであり、潤滑層85は、磁気記録媒体X4の表面(記録磁性層81に対して基板S2とは反対の側)における磁気記録ヘッドの潤滑性を確保するためのものである。
【0005】
磁気記録媒体X4では、大きな飽和磁化と小さな保磁力とを有する軟磁性層82が記録磁性層81に近接して存在するため、記録処理時において、磁気記録ヘッドから記録磁性層81に印加される記録磁界の磁束は記録磁性層81にて拡散せずに集中する。したがって、記録磁性層81の記録感度は、軟磁性層82が存在しない場合よりも向上している。記録磁性層81の記録感度の向上は、磁気記録ヘッドによる印加磁界の低減を可能にし、その結果、より高周波での記録すなわち高速記録を適切に実現することが可能となる。このような高速記録化は、記録密度の高い垂直磁気記録媒体の実用化を図るうえで重要である。
【0006】
一方、高密度記録に適した記録媒体として光磁気記録媒体も注目を集めている。光磁気記録媒体は、磁性材料における種々の磁気特性を利用して構成され、熱磁気的な記録および磁気光学効果を利用した再生という2つの機能を担う書換え可能な記録媒体である。
【0007】
図9は、従来の光磁気記録媒体の一例である光磁気記録媒体X5を表す。光磁気記録媒体X5は、基板S3と、記録磁性部91と、軟磁性層92と、溝形成層93と、放熱反射層94と、誘電体層95,96とからなる積層構造を有し、フロントイルミネーション方式の光磁気ディスクとして構成されたものである。各層は、軟磁性層92、溝形成層93、放熱反射層94、誘電体層95、記録磁性部91、および誘電体層96の順で、基板S3の側から積層形成されたものである。
【0008】
記録磁性部91は、熱磁気的な記録および磁気光学効果を利用した再生という2つの機能を担うことが可能な、再生方式に応じた1または2以上の磁性膜よりなる磁性構造を有する。当該磁性膜は希土類−遷移金属アモルファス合金垂直磁化膜よりなる。軟磁性層92は、比較的に大きな飽和磁化と比較的に小さな保磁力とを有する磁性膜により構成され、当該磁性膜の膜面に平行な方向(面内方向)に磁化容易軸を有して磁化された面内磁化膜である。溝形成層93は、樹脂材料よりなり、ランド/グルーブ形成用の層である。放熱反射層94は、読取り用レーザの反射光量を増強し、且つ、記録磁性部91にて発生する熱を基板側に効率よく伝導するためのものである。誘電体層95,96は、記録磁性部91に対する外部からの物理的および化学的な影響を回避するためのものである。
【0009】
光磁気記録媒体X5では、大きな飽和磁化と小さな保磁力とを有する軟磁性層92が記録磁性部91に近接して存在するため、記録処理時において、磁気記録ヘッドから記録磁性部91に印加される記録磁界の磁束は記録磁性部91にて拡散せずに集中する。すなわち、記録磁性部91の記録感度は、軟磁性層92が存在しない場合よりも向上している。したがって、光磁気記録媒体X5においては、磁気記録媒体X4と同様に、より高周波での記録すなわち高速記録を適切に実現することが可能となる。このような高速記録化は、記録密度の高い光磁気記録媒体の実用化を図るうえで重要である。
【0010】
記録密度の高い垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体では、それらの実用化を図るため、上述のように、記録磁性層ないし記録磁性部と基板との間において軟磁性層が設けられる場合がある。このように軟磁性層を有する記録媒体については、例えば特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平03−105741号公報
【特許文献2】
特開2001−283419号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
磁気記録媒体や光磁気記録媒体の製造において、基板上に軟磁性層を形成する手法としては、一般にスパッタリング法が採用されるが、工業的生産において良好なスループットを実現するという観点からは、スパッタリング法に代えて湿式めっき法を採用するのが好ましい。
【0013】
しかしながら、従来の技術においては、めっき法により基板上に軟磁性層を形成すると、即ち、軟磁気特性を示す磁性材料をめっき法により基板上に成膜すると、形成される軟磁性層と基板との間の密着力は、磁気記録媒体や光磁気記録媒体において実用に耐え得るほどには充分ではなかった。
【0014】
本発明は、このような状況の下で考え出されたものであって、基板ないし下地との密着性に優れた軟磁性めっき層を有する記録媒体基板、および、その製造方法を提供することを、目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の側面によると記録媒体基板が提供される。この記録媒体基板は、基材、軟磁性めっき層、並びに、当該基材および軟磁性めっき層の間の多孔質酸化物層よりなる積層構造を有することを特徴とする。基材とは、その上に形成される多孔質酸化物層以上の多層構造のベースとなる部材であって、例えばガラス基板、シリコン基板、樹脂基板、アルミニウム合金基板、およびマグネシウム合金基板などの基板単体、並びに、これら基板単体の表面を所定の金属材料で被覆した複合基板を含む。
【0016】
このような構成を有する記録媒体基板では、めっき法により形成される軟磁性めっき層と基材との間において高い密着力を達成することができる。本発明の第1の側面における軟磁性めっき層は、基材に対して固着形成された多孔質酸化物層を介して基材上に設けられている。多孔質酸化物層は、軟磁性めっき層との界面において多数の細孔を有しており、めっき法により多孔質酸化物層上に積層形成された軟磁性めっき層における多孔質酸化物層との界面は、この多数の細孔に入り込んでいる。界面におけるこのような微細係合構造に由来して、軟磁性めっき層および多孔質酸化物層の間には良好なアンカー効果が得られる。その結果、軟磁性めっき層と基材との間において、高い密着力が得られるのである。
【0017】
また、めっき法により形成される軟磁性めっき層は金属性を有する。そのため、記録媒体の記録処理や再生処理においては、軟磁性めっき層を面内方向に流れる渦電流が発生する。本発明の第1の側面における多孔質酸化物層は、充分な絶縁性を有するので、例えばアルミニウム合金基板のような金属基板を基材として採用する場合であっても、記録媒体の記録処理や再生処理において軟磁性めっき層中を流れる渦電流が当該金属基板にまで流れ込むという不具合は、適切に防止され得る。
【0018】
このように、本発明の第1の側面によると、大きな飽和磁化と小さな保磁力とを有し且つ基材との密着性に優れた軟磁性めっき層を有する記録媒体基板を適切に得ることができる。このような記録媒体基板は、高記録密度化を図るのに適した垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体などの記録媒体を作製するうえで、好適に用いることが可能である。記録磁性層ないし記録磁性部を含む所定の多層構造を本記録媒体基板上に積層形成することによって、垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体などを作製することができる。
【0019】
本発明の第2の側面によると他の記録媒体基板が提供される。この記録媒体基板は、基材と、複数の軟磁性めっき層、および、軟磁性めっき層間に介在し且つ軟磁性めっき層よりも高電気抵抗率の部位を含むインターカレート層(挿入層)、からなる積層構造を有する軟磁性部と、基材および軟磁性部の間の多孔質酸化物層と、からなる積層構造を有することを特徴とする。
【0020】
このような構成を有する記録媒体基板では、軟磁性部と基材との間において高い密着力を達成することができる。本発明の第2の側面における軟磁性部は、多孔質酸化物層の上に軟磁性めっき層およびインターカレート層を交互に所定数積層して形成されたものであり、当該軟磁性部における少なくとも最下層(基材に最も近い層)は、軟磁性めっき層である。最下軟磁性めっき層は、基材に対して固着形成された多孔質酸化物層を介して基材上に設けられている。多孔質酸化物層は、軟磁性めっき層との界面において多数の細孔を有しており、めっき法により多孔質酸化物層上に積層形成された最下軟磁性めっき層における多孔質酸化物層との界面は、この多数の細孔に進入ないし入り込んでいる。界面におけるこのような微細係合構造に由来して、最下軟磁性めっき層および多孔質酸化物層の間には良好なアンカー効果が得られる。その結果、最下軟磁性めっき層ひいては軟磁性部と基材との間において、高い密着力が得られるのである。
【0021】
加えて、本発明の第2の側面に係る記録媒体基板は、軟磁性部において高電気抵抗を達成するうえで好適である。軟磁性部は、軟磁気特性を有する複数の軟磁性めっき層と、当該軟磁性めっき層間に挿設されているインターカレート層よりなり、当該インターカレート層は、軟磁性めっき層よりも高電気抵抗率の部位を有するか、或は、軟磁性めっき層よりも高電気抵抗率の材料よりなる。したがって、インターカレート層の厚さを適宜設定することによって、軟磁性めっき層間を電気的に適切に分断し、各軟磁性めっき層について、層厚方向の電子伝導パスを短くして電気抵抗を大きくすることができる。各軟磁性めっき層ひいては軟磁性部全体の電気抵抗を増大することにより、記録媒体の記録処理や再生処理において軟磁性部にて発生する渦電流を低減することが可能となる。軟磁性部にて発生する渦電流の低減は、良好な高周波記録を達成するうえで好適である。
【0022】
このように、本発明の第2の側面によると、正味の飽和磁化および電気抵抗が大きく且つ正味の保磁力が小さく、加えて基材との密着性に優れた軟磁性部、を有する記録媒体基板を得ることができる。このような記録媒体基板は、高記録密度化を図るのに適した垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体などの記録媒体を作製するうえで、好適に用いることが可能である。記録磁性層ないし記録磁性部を含む所定の多層構造を本記録媒体基板の上に積層形成することによって、垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体などを作製することができる。
【0023】
本発明の第1および第2の側面において、好ましくは、インターカレート層は、酸化物またはアモルファス物質よりなる。酸化物またはアモルファス物質は、本発明において充分な絶縁性を有し、軟磁性めっき層間の電気的分離を適切に達成するためのインターカレート材料として好適である。また、酸化物が多孔質である場合には、軟磁性めっき層間において良好な密着力を得ることができる。
【0024】
好ましくは、軟磁性めっき層は、当該軟磁性めっき層を構成する軟磁性材料よりも高電気抵抗率の粒子を含む。この粒子は、好ましくは酸化亜鉛よりなる。このような構成によると、軟磁性めっき層の電気抵抗を適切に増大することができ、その結果、記録媒体の記録処理や再生処理に際して当該軟磁性めっき層にて発生し得る渦電流を適切に低減することが可能となる。
【0025】
好ましくは、基材における少なくとも表面は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、およびタンタルよりなる群より選択される単体金属、または、当該群より選択される金属を主成分として含む合金よりなる。本構成における単体金属および合金は、その表面に不働態酸化皮膜を形成しやすい。したがって、本構成は、基材表面にて多孔質酸化物層を形成するための手法として陽極酸化処理を採用するうえで好適である。
【0026】
本発明の第3の側面によると記録媒体基板の製造方法が提供される。この製造方法は、基材に対して多孔質酸化物層を形成するための多孔質酸化物層形成工程と、多孔質酸化物層の上に軟磁性めっき層を形成するための軟磁性めっき層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
このような方法によると、本発明の第1の側面に係る記録媒体基板を製造することができる。したがって、本発明の第3の側面によると、製造される記録媒体基板において、第1の側面に関して上述したのと同様の効果が奏される。
【0028】
本発明の第3の側面において、好ましくは、多孔質酸化物層形成工程は、易溶性金属ターゲットおよび酸化物ターゲットを用いて行うコスパッタリング法により、或は、易溶性金属および酸化物を含むターゲットを用いて行うスパッタリング法により、易溶性金属分散酸化物膜を形成するための工程と、当該易溶性金属分散酸化物膜における少なくとも表面に存在する易溶性金属を溶出除去するための工程と、を含む。このような構成によると、多孔質酸化物層形成工程において、多数の緻密な細孔を露出面に有する多孔質酸化物層を、基材上に適切に積層形成することができる。
【0029】
好ましくは、多孔質酸化物層形成工程では、基材の表面に対する陽極酸化処理により多孔質酸化物層は形成される。このような構成によると、多孔質酸化物層形成工程において、多数の緻密な細孔を露出面に有する多孔質酸化物層を、基材表面に適切に形成することができる。
【0030】
好ましくは、軟磁性めっき層形成工程では、無電解めっき法により軟磁性めっき層は形成される。当該無電解めっき法では、好ましくは、軟磁性めっき層を構成するための軟磁性材料よりも高い電気抵抗率を有する物質を、めっき成長時にめっき膜にて析出させる。或は、当該無電解めっき法では、好ましくは、軟磁性めっき層を構成するための軟磁性材料よりも高い電気抵抗率を有する粒子を含む、めっき浴を使用する。これらの構成によると、めっき法により形成される軟磁性めっき層において高電気抵抗粒子を適切に分散させることができ、その結果、当該軟磁性めっき層の電気抵抗または軟磁性部の正味の電気抵抗を、適切に増大することが可能となる。
【0031】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、本発明に係る記録媒体基板X1を表す。図1は、記録媒体基板X1の部分断面模式図であり、図2は、記録媒体基板X1の積層構成を表す。記録媒体基板X1は、コア基板S1と、軟磁性部10と、多孔質酸化物層20とを備え、フロントイルミネーション方式の光磁気記録媒体や垂直磁気記録媒体などの記録媒体を製造するのに用いることのできるディスク基板として構成されている。
【0032】
コア基板S1は、ガラス基板、シリコン基板、樹脂基板、または金属基板、若しくは、ガラス基板、シリコン基板、または樹脂基板などの非金属基板の表面を金属材料で被覆した複合基板である。樹脂基板としては、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、エポキシ樹脂、またはポリオレフィン樹脂よりなる基板を採用することができる。金属基板としては、例えば、アルミニウム合金基板やマグネシウム合金基板を採用することができる。コア基板S1として上述のような複合基板を採用する場合、非金属基板を被覆するための金属材料としては、その表面に不働態酸化皮膜が形成されやすいものを採用するのが好ましい。そのような金属材料としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、タンタル、または、これらから選択される金属を主成分として含む合金が挙げられる。これらのような金属材料を採用すると、多孔質酸化物層20の形成に際し、陽極酸化処理を採用することができる。複合基板における表面金属皮膜の膜厚は、例えば0.5〜10μmである。コア基板S1が垂直磁気記録媒体用の基板である場合、コア基板S1の表面は、化学的方法、物理的方法、または機械的方法により、平滑化されている。
【0033】
軟磁性部10は、記録媒体に対する記録処理の際に記録磁性層を通過する磁束の密度を増大することによって、当該記録磁性層の記録感度を向上するためのものであり、複数の軟磁性層11および当該軟磁性層間のインターカレート層12よりなる積層構造を有する。図2においては、一部の軟磁性層11およびインターカレート層12を省略する。また、図1および図2は、軟磁性部10の最上層が軟磁性層11である構成を表すが、このような構成に代えて、軟磁性部10の最上層が、直下に軟磁性層11を伴うインターカレート層12である構成を、採用してもよい。
【0034】
軟磁性層11は、めっき法により成膜された軟磁性材料11aよりなる。或は、軟磁性層11は、図3に示すように、めっき法により成膜された軟磁性材料11aと、当該軟磁性材料膜の内部に分散している粒子11bとからなる。図3は、軟磁性部10における最下層の軟磁性層11が粒子11bを含む場合の部分拡大図である。軟磁性材料11aとしては、例えば、FeCoNi,FeNi,またはCoNiが挙げられる。粒子11bは、軟磁性材料11aよりも高い電気抵抗率を有する材料よりなる。粒子11bの構成材料としては、例えば、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、または炭素が挙げられる。粒子11bの粒径は、例えば10〜100nmである。軟磁性層11が粒子11bを含む場合、軟磁性部10の電気抵抗を適切に増大することができ、その結果、記録媒体の記録処理や再生処理に際して当該軟磁性層11にて発生し得る渦電流を適切に低減することが可能となる。このような構成の軟磁性層11の厚さは、例えば0.1〜0.5μmである。
【0035】
インターカレート層12は、軟磁性部10における複数の軟磁性層11の間を電気的に適切に分離するためのものであり、軟磁性層11よりも高い電気抵抗率を有する材料よりなる。この場合、インターカレート層12は、例えば、高電気抵抗の酸化物またはアモルファス物質よりなる。酸化物としては、例えば、SiO2,Al2O3,ZnO,またはTiO2が挙げられる。アモルファス物質としては、例えば、NiP,NiB,またはアモルファス炭素が挙げられる。インターカレート層12が多孔質な酸化物よりなる場合、軟磁性部10を構成する軟磁性層11の間において良好な密着力が得られる傾向にある。或は、インターカレート層12は、軟磁性層11よりも高い電気抵抗率を有する材料よりなる部位を含んでなる。この場合、インターカレート層12は、例えば、金属材料層および当該金属材料層表面を陽極酸化処理することによって形成された多孔質酸化物層よりなる積層構造を有する。このような多孔質酸化物層の存在によっても、軟磁性部10を構成する軟磁性層11の間において良好な密着力が得られる傾向にある。インターカレート層12の厚さは、0.01〜0.1μmであるのが好ましい。軟磁性部10における軟磁性層11の間を電気的に適切に分離するためには、インターカレート層12の厚さは0.01μm以上であるのが好ましい。一方、軟磁性部10における複数の軟磁性層11の軟磁気特性を適切に一体化させるためには、インターカレート層12の厚さは0.1μm以下であるのが好ましい。
【0036】
多孔質酸化物層20は、コア基板S1および軟磁性部10の間に介在してこれらの間において良好な密着力を得るためのものであり、多孔質な酸化物膜よりなる。多孔質酸化物層20は、例えば、Al2O3,MgO,TiO2,またはTa2O5よりなる。多孔質酸化物層20は、軟磁性部10における最下層の軟磁性層11との界面において多数の細孔を有しており、当該軟磁性層11における多孔質酸化物層20との界面は、この多数の細孔に進入ないし入り込んでいる。多孔質酸化物層20および軟磁性層11の界面におけるこのような微細係合構造に由来して、軟磁性部10と多孔質酸化物層20の間には良好なアンカー効果が得られ、その結果、軟磁性部10ないしその最下層の軟磁性層11とコア基板S1との間において高い密着力が得られるのである。多孔質酸化物層20の厚さは、例えば0.1〜1μmである。コア基板S1と軟磁性部10との間において良好な密着力を確保するとう観点からは多孔質酸化物層20の厚さは0.1μm以上であるのが好ましく、製造効率および経済性の観点からは多孔質酸化物層20の厚さは1μm以下であるのが好ましい。
【0037】
図4は、記録媒体基板X1の製造方法を表す。記録媒体基板X1の製造においては、まず、図4(a)に示すように、コア基板S1に対して多孔質酸化物層20を形成する。コア基板S1が金属基板である場合、或は金属材料により被覆された複合基板である場合、本工程では、コア基板S1の全体を覆うように多孔質酸化物層20を形成する。一方、コア基板S1が、後出のめっき工程におけるめっき浴にて不当に侵食されないガラス基板、シリコン基板、または樹脂基板である場合には、軟磁性部10が積層形成される面のみに多孔質酸化物層20を形成してもよい。
【0038】
多孔質酸化物層20の形成においては、まず、コア基板S1の上に易溶性金属が内部に分散した酸化物膜を形成する。本発明において易溶性金属とは、酸溶液やアルカリ溶液に容易に溶解する金属をいうものとする。易溶性金属分散酸化物膜の形成は、易溶性金属よりなるターゲットおよび酸化物よりなるターゲットを同時にスパッタするコスパッタリング法により、或は、易溶性金属および酸化物を含む単一のターゲットを用いて行うスパッタリング法により、行うことができる。易溶性金属としては、例えばアルミニウムやマグネシウムが挙げられる。また、酸化物としては、SiO2やTiO2が挙げられる。易溶性金属分散酸化物膜における易溶性金属の含有率は、20〜50vol%であるのが好ましい。
【0039】
多孔質酸化物層20の形成においては、次に、易溶性金属分散酸化物膜に対して酸溶液またはアルカリ溶液を作用させることによって、当該膜における表面およびその近傍に存在する易溶性金属を溶出させる。酸溶液としては、易溶性金属の種類に応じて、例えば、10〜20%の希塩酸、若しくは、10〜20%のアンモニア水または水酸化ナトリウム水溶液を使用することができる。このようにして、多孔質酸化物層20を形成することができる。
【0040】
多孔質酸化物層20の形成においては、本発明では、上述の手法に代えて陽極酸化処理を採用してもよい。不働態を形成し易い例えば上掲の金属材料によりコア基板S1が構成されている場合、或は、不働態を形成し易い例えば上掲の金属材料によりコア基板S1の表面が被覆されている場合には、陽極酸化処理によって、多孔質酸化物層20を適切に形成することができる。本手法においては、5〜10%の希塩酸などによりコア基板S1の表面に対して清浄化処理を施した後、陽極に電気的に接続したコア基板S1を対電極とともに電解浴に浸漬し、陽極酸化処理を行なう。電解浴の組成および電解条件については、例えば下記の表1〜表3に掲げる組成および条件を採用することができる。このような手法によっても、多孔質酸化物層20を形成することができる。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
記録媒体基板X1の製造においては、次に、図4(b)に示すように、多孔質酸化物層20の上に軟磁性層11を積層形成する。具体的には、まず、多孔質酸化物層20を表面に形成したコア基板S1を、塩化スズ水溶液(1〜5wt%、室温)に浸漬した後、充分な水洗を行う。当該水溶液に含まれる塩化スズは、多孔質酸化物層20の表面に吸着し、後出のパラジウムの吸着核として機能する。次に、多孔質酸化物層20が形成されているコア基板S1を塩化パラジウム水溶液(0.01〜0.1wt%、室温)に浸漬した後、充分な水洗を行う。当該水溶液に含まれるパラジウムは、塩化スズを核として多孔質酸化物層20の表面に吸着し、後出のめっき成長における触媒核として機能する。次に、コア基板S1をめっき浴に浸漬し、無電解めっき法によりめっき膜を成長させる。このようにして、めっき膜としての軟磁性層11を形成することができる。コア基板S1が金属材料よりなる場合であっても、或は金属材料により被覆された複合基板であっても、その場合には、コア基板S1は、上述のようにその全体が多孔質酸化物層20で被覆されているので、当該無電解めっき工程においてめっき浴には溶解しない。
【0045】
めっき浴の組成および温度については、例えば下記の表4〜表6に掲げる組成および温度を採用することができる。めっき浴について表4に示す組成および温度を採用する場合、軟磁性材料11aよりなる軟磁性層11が形成される。表5に示す組成および温度を採用する場合、軟磁性材料11aがめっき成長する過程において当該軟磁性材料11aに酸化亜鉛粒子が粒子11bとして取りこまれ、その結果、粒子11bが分散している軟磁性層11が形成される。表6に示す組成および温度を採用する場合、軟磁性材料11aがめっき成長する過程において硝酸亜鉛として浴に溶解された亜鉛が、当該軟磁性材料膜にて酸化亜鉛として粒状に析出し、その結果、酸化亜鉛よりなる粒子11bが分散している軟磁性層11が形成される。
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
記録媒体基板X1の製造においては、次に、図4(c)に示すように、軟磁性層11の上にインターカレート層12を積層形成する。本発明においては、上述のように、インターカレート層12は、酸化物やアモルファス物質などにより構成することができる。
【0050】
インターカレート層12を多孔質酸化物により構成する場合、当該インターカレート層12の形成においては、例えば、まず、軟磁性層11の上に易溶性金属が内部に分散した酸化物膜を形成する。この易溶性金属分散酸化物膜の形成は、多孔質酸化物層20の形成に関して上述したのと同様に、易溶性金属よりなるターゲットおよび酸化物よりなるターゲットを同時にスパッタするコスパッタリング法により、或は、易溶性金属および酸化物を含む単一のターゲットを用いて行うスパッタリング法により、行うことができる。次に、多孔質酸化物層20の形成に関して上述したのと同様に、易溶性金属分散膜に対して酸溶液またはアルカリ溶液を作用させることによって、当該膜における表面およびその近傍に存在する易溶性金属を溶出させる。このようにして、多孔質酸化物よりなるインターカレート層12を形成することができる。
【0051】
インターカレート層12の形成においては、上述のような手法に代えて陽極酸化処理を利用することもできる。その場合、例えば、まず、軟磁性層11の上にスパッタリング法により所定の金属を成膜する。この金属としては、不働態酸化皮膜を形成しやすい、アルミニウム、マグネシウム、チタン、タンタル、または、これらから選択される金属を主成分として含む合金を採用するのが好ましい。次に、このようにして形成された金属膜表面を陽極酸化処理により酸化する。具体的には、5〜10%の希塩酸などにより軟磁性層上の金属膜の表面に対して清浄化処理を施した後、陽極に電気的に接続した金属膜を有するコア基板S1を対電極とともに電解浴に浸漬し、陽極酸化処理を行なう。電解浴の組成および電解条件については、例えば上記の表1〜表3に掲げる組成および条件を採用することができる。このような手法によると、金属膜およびその表面の多孔質酸化物膜よりなるインターカレート層12を形成することができる。
【0052】
インターカレート層12をアモルファス物質により構成する場合、当該インターカレート層12の形成においては、例えば、まず、軟磁性層11が表面に形成されているコア基板S1を、塩化スズ水溶液(1〜5wt%、室温)に浸漬した後、充分な水洗を行う。次に、軟磁性層11が形成されているコア基板S1を塩化パラジウム水溶液(0.01〜0.1wt%、室温)に浸漬した後、充分な水洗を行う。次に、下記の表7に示す組成および温度のめっき浴にコア基板S1を浸漬し、無電解めっき法によりニッケルめっき膜を成長させる。このようにして、アモルファス物質よりなるインターカレート層12を形成することができる。形成されるニッケルめっき膜は、リン化合物含有量が10原子%以上と高く、アモルファスの状態をとる。このような高リン含有率のニッケルめっき膜は、低リン含有率のニッケルめっき膜に比べて電気抵抗が3〜7倍程度大きいことが知られている。
【0053】
【表7】
【0054】
インターカレート層12を酸化亜鉛により構成する場合、当該インターカレート層12の形成においては、例えば、まず、軟磁性層11が表面に形成されているコア基板S1を、塩化スズ水溶液(1〜5wt%、室温)に浸漬した後、充分な水洗を行う。次に、軟磁性層11が形成されているコア基板S1を塩化パラジウム水溶液(0.01〜0.1wt%、室温)に浸漬した後、充分な水洗を行う。次に、下記の表8に示す組成および温度のめっき浴にコア基板S1を浸漬し、無電解めっき法により酸化亜鉛めっき膜を成長させる。このようにして、酸化亜鉛よりなるインターカレート層12を形成することができる。
【0055】
【表8】
【0056】
以上のようなインターカレート層12の形成、および、当該インターカレート層12の上への更なる軟磁性層11の積層形成を、所定の回数繰り返すことにより、図1に示すような軟磁性部10を形成する。その後、軟磁性層11の密着力の向上や軟磁気特性の改善などを目的として、形成された軟磁性部10に対して熱処理を施してもよい。軟磁性部10における各軟磁性層11および各インターカレート層12の形成手法については、上述の軟磁性層11およびインターカレート層12の形成手法と同様である。図1には、軟磁性部10における軟磁性層11の積層数が5である場合を表す。各軟磁性層11の厚さおよび積層数は、軟磁性部10において所望される軟磁気特性に応じて適宜決定される。
【0057】
また、本発明においては、インターカレート層12を設けずに軟磁性部10を形成することもできる。具体的には、軟磁性部10を軟磁性層11により構成することによって、コア基板S1、軟磁性層11、並びに、当該コア基板S1および軟磁性層11の間の多孔質酸化物層20よりなる積層構造からなる記録媒体基板X1として構成することもできる。
【0058】
図5は、記録媒体基板X1を用いて作製された磁気記録媒体X2の積層構成を表す。磁気記録媒体X2は、記録媒体基板X1と、記録磁性層21と、非磁性層22と、保護層23と、潤滑層24とからなる積層構成を有し、垂直磁気記録方式の磁気記録ディスクとして構成されたものである。各層は、非磁性層22、記録磁性層21、保護層23、および潤滑層24の順で、記録媒体基板X1の側から積層形成されたものである。
【0059】
記録磁性層21は、この層を構成する磁性膜の膜面に対して垂直な方向に磁化容易軸を有して磁化された垂直磁化膜であり、例えば、所定の組成のTbFeCo膜、CoCrPt膜、またはPd/Co多層膜からなる。非磁性層22は、記録媒体基板X1の軟磁性部10と記録磁性層21とを磁性的に分離するとともに、記録磁性層21の積層形成の際に軟磁性部10の結晶格子構造の影響を回避するためのものである。このような非磁性層22は、例えば、CoCr膜、CoCrPt膜、Si膜、C膜、NiP膜、RuOx/Ag/C多層膜、またはSiN/Cr/Ag/C多層膜などの非磁性材料よりなる。保護層23は、記録磁性層21を外界から物理的および化学的に保護するためのものであり、例えば、SiN膜、SiO2膜、Y添加SiO2膜、またはダイアモンドライクカーボン膜よりなる。潤滑層24は、磁気記録媒体X2の表面における磁気記録ヘッドの潤滑性を確保するためのものであり、例えば、塗布形成されたフッ素オイル膜よりなる。
【0060】
図6は、記録媒体基板X1を用いて作製された光磁気記録媒体X3の積層構成を表す。光磁気記録媒体X3は、記録媒体基板X1と、記録磁性部31と、溝形成層32と、放熱反射層33と、誘電体層34,35とを備え、熱磁気的な記録および磁気光学効果を利用した再生という2つの機能を担う書換え可能な、フロントイルミネーション方式の光磁気ディスクとして構成されたものである。各層は、溝形成層32、放熱反射層33、誘電体層34、記録磁性部31、および誘電体層35の順で、記録媒体基板X1の側から積層形成されたものである。
【0061】
記録磁性部31は、熱磁気的な記録および磁気光学効果を利用した再生という2つの機能を担うことが可能な、1または2以上の磁性膜よりなる磁性構造を有し、光磁気記録媒体X3における情報トラックを構成する。例えば、記録磁性部31は、記録機能および再生機能を併有する単一の記録層よりなる。或は、記録磁性部31は、相対的に保磁力が大きくて記録機能を担う記録層と、再生用レーザにおけるカー回転角が相対的に大きくて再生機能を担う再生層とからなる、2層構造を有する。或は、記録磁性部31は、MSR方式、MAMMOS方式、またはDWDD方式を実現するための、記録層、再生層、およびこれらの間の中間層よりなる3層構造を有する。記録磁性部31のとり得る各構造における各層は、希土類元素と遷移金属とのアモルファス合金よりなり、垂直磁気異方性を有して垂直方向に磁化された垂直磁化膜である。具体的には、記録層は、例えば、所定の組成を有するTbFeCо,DyFeCо,またはTbDyFeCоよりなる。再生層を設ける場合、当該再生層は、例えば、所定の組成を有するGdFeCо,GdDyFeCо,GdTbDyFeCо,NdDyFeCо,NdGdFeCо,またはPrDyFeCоよりなる。中間層を設ける場合、当該中間層は、例えば、所定の組成を有するGdFe,TbFe,GdFeCо,GdDyFeCо,GdTbDyFeCо,NdDyFeCо,NdGdFeCо,またはPrDyFeCоよりなる。各層の厚さは、記録磁性部31に所望される磁性構造に応じて決定される。
【0062】
溝形成層32は、ランド/グルーブ形成用の層であり、例えば光硬化性樹脂などの樹脂材料よりなり、情報を記録するためのトラックに応じた凹凸形状を放熱反射層33の側に有する。放熱反射層33は、読取り用レーザの反射光量を増強し、且つ、記録磁性部31にて発生する熱をコア基板S1の側に効率よく伝導するためのものであり、例えば、Ag合金膜やAl合金膜よりなる。誘電体層34,35は、記録磁性部31に対する外部からの物理的および化学的な影響を回避するためのものであり、例えば、SiN膜、SiO2膜、Y添加SiO2膜、またはAlN膜よりなる。
【0063】
記録媒体基板X1では、軟磁性部10は、多孔質酸化物層20の上に軟磁性層11およびインターカレート層12を交互に所定数積層して形成されたものであり、その最下層は軟磁性層11である。最下の軟磁性層11は、コア基板S1に対して固着形成された多孔質酸化物層20を介してコア基板S1の上に設けられている。多孔質酸化物層20は、軟磁性層11との界面において多数の細孔を有しており、多孔質酸化物層20の上にめっき法により積層形成された軟磁性層11における多孔質酸化物層20との界面は、この多数の細孔に進入ないし入り込んでいる。界面におけるこのような微細係合構造に由来して、最下の軟磁性層11および多孔質酸化物層20の間には良好なアンカー効果が得られる。その結果、記録媒体基板X1では、最下の軟磁性層11ひいては軟磁性部10とコア基板S1との間において高い密着力が得られるのである。
【0064】
記録媒体基板X1では、めっき法により形成される軟磁性層11は金属性を有するが、多孔質酸化物層20は充分な絶縁性を有する。したがって、例えばアルミニウム合金基板のような金属基板をコア基板S1として採用する場合であっても、記録媒体X2,X3の記録処理や再生処理において軟磁性層11の内部を流れる渦電流が当該金属基板にまで流れ込むことを防止することができる。
【0065】
記録媒体基板X1では、軟磁性部10は、軟磁気特性を有する複数の軟磁性層11と、当該軟磁性層間に挿設されているインターカレート層12よりなり、インターカレート層12は、軟磁性層11よりも電気抵抗率の高い部位を有する。したがって、インターカレート層12の厚さを適宜設定することによって、2つの軟磁性層11の間を電気的に適切に分離し、各軟磁性層11について、層厚方向の電子伝導パスを短くして電気抵抗を大きくすることができる。各軟磁性層11ひいては軟磁性部10の全体の電気抵抗を増大することにより、記録媒体X2,X3の記録処理や再生処理において軟磁性部10にて発生する渦電流を低減することが可能となる。軟磁性部10にて発生する渦電流の低減は、良好な高周波記録を達成するうえで好適である。
【0066】
【実施例】
次に、本発明の実施例について、比較例とともに記載する。
【0067】
【実施例1】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板(φ3.5インチ)の全面に対し、RFスパッタリング法によりAl−SiO2を成膜することにより、厚さ0.5μmの易溶性金属分散酸化物膜(Al分散SiO2膜)を形成した。本スパッタリングでは、Al(30vol%)およびSiO2(70vol%)の圧粉体からなるターゲット(φ6インチ)を用い、ガス圧力を0.5Paとし、投入電力をRF1kWとし、基板温度を室温とした。このような成膜の後、基板を15wt%HCl水溶液(35℃)に3分間浸漬した後、純水で洗浄した。このようにして、コア基板(アルミニウム合金基板)上に多孔質酸化物層(多孔質SiO2層、厚さ0.5μm)を形成した。
【0068】
次に、多孔質酸化物層の上に軟磁性層を積層形成した。具体的には、まず、多孔質酸化物層が形成された基板を3wt%塩化スズ水溶液(35℃)に1分間浸漬した後、純水で洗浄した。次に、当該基板を0.05wt%塩化パラジウム水溶液(35℃)に1分間浸漬した後、純水で洗浄した。次に、当該基板を、無電解めっき浴(55℃)に5分間浸漬した後、純水で洗浄した。本無電解めっき浴は、0.1wt%のジメチルアミンボラン、0.3wt%の硫酸ニッケル、0.3wt%の硫酸鉄、および3wt%の硫酸コバルトを含む水溶液である。このようにして、無電解めっき法により厚さ2μmの軟磁性層(FeCoNi)を形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0069】
【実施例2】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板(φ3.5インチ)を7wt%HCl水溶液(室温)で洗浄し、陽極に接続した後に当該基板を対電極とともに4wt%シュウ酸水溶液(35℃)に浸漬し、陽極酸化処理を行った。陽極酸化処理においては、直流電圧を15Vとし、電流密度を15mA/cm2とし、処理時間を2分間とした。このようにして、コア基板(アルミニウム合金基板)上に多孔質酸化物層(Al合金陽極酸化膜、厚さ0.5μm)を形成した。次に、実施例1と同様にして、無電解めっき法により当該多孔質酸化物層の上に軟磁性層(厚さ2μm)を積層形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0070】
【実施例3】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、実施例1と同様にして、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板の上に多孔質酸化物層(多孔質SiO2層、厚さ0.5μm)を形成した。
【0071】
次に、多孔質酸化物層の上に軟磁性層を積層形成した。具体的には、まず、多孔質酸化物層が形成された基板について、3wt%塩化スズ水溶液(35℃)への1分間の浸漬、純水洗浄、0.05wt%塩化パラジウム水溶液(35℃)への1分間の浸漬、および純水洗浄を順次行った。次に、当該基板を、無電解めっき浴(60℃)に5分間浸漬した後、純水で洗浄した。本無電解めっき浴は、0.1wt%のジメチルアミンボラン、0.3wt%の硫酸ニッケル、0.3wt%の硫酸鉄、3wt%の硫酸コバルト、3wt%の硝酸亜鉛を含む水溶液である。この無電解めっき工程においては、硝酸亜鉛として浴中に溶解された亜鉛は、酸化亜鉛粒子としてめっき膜内にて析出する。このように、無電解めっき法により、内部に酸化亜鉛粒子が分散する厚さ2μmの軟磁性層(酸化亜鉛粒子含有率20vol%)を形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0072】
【実施例4】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、実施例2と同様にして、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板の上に多孔質酸化物層(Al合金陽極酸化膜、厚さ0.5μm)を形成した。次に、実施例3と同様にして、無電解めっき法により当該多孔質酸化物層の上に軟磁性層(酸化亜鉛粒子含有率20vol%、厚さ2μm)を積層形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0073】
【実施例5】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、実施例1と同様にして、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板の上に多孔質酸化物層(多孔質SiO2層、厚さ0.5μm)を形成した。次に、厚さを2μmに代えて0.2μmとした以外は実施例1と同様にして、無電解めっき法により当該多孔質酸化物層の上に軟磁性層を積層形成した。
【0074】
次に、軟磁性層上に、インターカレート層としての多孔質酸化物層を形成した。具体的には、まず、RFスパッタリング法により、軟磁性層上にAl−SiO2を成膜して厚さ0.05μmの易溶性金属分散酸化物膜(Al分散SiO2膜)を形成した。本スパッタリングでは、Al(30vol%)およびSiO2(70vol%)の圧粉体からなるターゲット(φ6インチ)を用い、ガス圧力を0.5Paとし、投入電力をRF1kWとし、基板温度を室温とした。このような成膜の後、基板を15wt%HCl水溶液(35℃)に3分間浸漬した後、純水で洗浄した。このようにして、軟磁性層上に多孔質酸化物層(多孔質SiO2層、厚さ0.05μm)を形成した。
【0075】
本実施例について上述した軟磁性層(厚さ0.2μm)の形成、および、インターカレート層(多孔質SiO2層、厚さ0.05μm)の形成を、更に交互に繰り返すことによって、合計10層の軟磁性層および軟磁性層間に介在する合計9層のインターカレート層よりなる軟磁性部を形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0076】
【実施例6】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、実施例2と同様にして、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板の上に多孔質酸化物層(Al合金陽極酸化膜、厚さ0.5μm)を形成した。次に、実施例5と同様にして、合計10層の軟磁性層(厚さ0.2μm)および軟磁性層間に介在する合計9層のインターカレート層(多孔質SiO2層、厚さ0.05μm)よりなる軟磁性部を形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0077】
【実施例7】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、実施例1と同様にして、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板の上に多孔質酸化物層(多孔質SiO2層、厚さ0.5μm)を形成した。次に、厚さを2μmに代えて0.2μmとした以外は実施例3と同様にして、無電解めっき法により当該多孔質酸化物層の上に軟磁性層(酸化亜鉛粒子含有率20vol%)を積層形成した。次に、軟磁性層上に、実施例5と同様にして、インターカレート層としての多孔質酸化物層(多孔質SiO2層、厚さ0.05μm)を形成した。
【0078】
本実施例について上述した軟磁性層(酸化亜鉛粒子含有率20vol%、厚さ0.2μm)の形成、および、インターカレート層(多孔質SiO2層、厚さ0.05μm)の形成を、更に交互に繰り返すことによって、合計10層の軟磁性層および軟磁性層間に介在する合計9層のインターカレート層よりなる軟磁性部を形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0079】
【実施例8】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、実施例2と同様にして、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板の上に多孔質酸化物層(Al合金陽極酸化膜、厚さ0.5μm)を形成した。次に、実施例7と同様にして、合計10層の軟磁性層(酸化亜鉛粒子含有率20vol%、厚さ0.2μm)および軟磁性層間に介在する合計9層のインターカレート層(多孔質SiO2層、厚さ0.05μm)よりなる軟磁性部を形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0080】
【実施例9〜12】
インターカレート層として、多孔質SiO2層(厚さ0.05μm)に代えてアモルファスNiP層(厚さ0.05μm)を形成した以外は、実施例5〜8と同様にして、実施例9〜12の記録媒体基板を作製した。アモルファスNiP層の形成においては、まず、最表面に軟磁性層が形成された基板について、3wt%塩化スズ水溶液(35℃)への1分間の浸漬、純水洗浄、0.05wt%塩化パラジウム水溶液(35℃)への1分間の浸漬、および純水洗浄を順次行った。次に、当該基板を、無電解めっき浴(70℃)に1分間浸漬した後、純水で洗浄した。本無電解めっき浴は、2wt%の次亜リン酸ナトリウムおよび0.3wt%の硫酸ニッケルを含む水溶液である。
【0081】
【実施例13〜16】
インターカレート層として、多孔質SiO2層(厚さ0.05μm)に代えて酸化亜鉛層(厚さ0.05μm)を形成した以外は、実施例5〜8と同様にして、実施例13〜16の記録媒体基板を作製した。酸化亜鉛層の形成においては、まず、最表面に軟磁性層が形成された基板について、3wt%塩化スズ水溶液(35℃)への1分間の浸漬、純水洗浄、0.05wt%塩化パラジウム水溶液(35℃)への1分間の浸漬、および純水洗浄を順次行った。次に、当該基板を、無電解めっき浴(55℃)に2分間浸漬した後、純水で洗浄した。本無電解めっき浴は、0.1wt%のジメチルアミンボランおよび3wt%の硝酸亜鉛を含む水溶液である。この無電解めっき工程においては、硝酸亜鉛として浴中に溶解された亜鉛は、酸化亜鉛粒子としてめっき膜内にて析出する。
【0082】
【比較例1】
コア基板の表面に多孔質酸化物層を形成しない以外は実施例1と同様にして、本比較例の記録媒体基板を作製した。したがって、本比較例の記録媒体基板は、コア基板としてのアルミニウム合金基板上にめっき法により直接形成された軟磁性層(厚さ2μm)を有する。
【0083】
【比較例2】
コア基板の表面に多孔質酸化物層を形成しない以外は実施例3と同様にして、本比較例の記録媒体基板を作製した。したがって、本比較例の記録媒体基板は、コア基板としてのアルミニウム合金基板上にめっき法により直接形成された軟磁性層(酸化亜鉛粒子含有率20vol%、厚さ2μm)を有する。
【0084】
【密着性試験】
実施例1〜16および比較例1,2の記録媒体基板を各々3枚作製し、各基板について、コア基板に対する軟磁性層または軟磁性部の密着性を調べた。具体的には、まず、コア基板上において軟磁性層または軟磁性部を100ヶの区域(各々1mm×1mm四方)に分断した。次に、分断された軟磁性部ないし軟磁性層に対して、粘着テープを荷重1kgf/cm2で貼りつけた後、当該粘着テープを引き剥がした。このような引き剥がし作業によっても剥離を生じずにコア基板上に適切に残存している区域数を計測した。残存区域数が50未満の場合を密着性1、残存区域数50以上80未満の場合を密着性2、残存区域数80以上90未満の場合を密着性3、残存区域数90以上95未満の場合を密着性4、残存区域数95以上の場合を密着性5、と規定し、各記録媒体基板における軟磁性層または軟磁性部の密着性を調べた。これらの結果は、図7の表に掲げる。図7の表において、例えば密着性評価5は、3枚全ての記録媒体基板の密着性の評価が5であったことを意味する。また、密着性評価3〜4は、3枚の記録媒体基板のうち、少なくとも1枚について密着性の評価が3であり且つ少なくとも1枚について密着性の評価が4であったことを意味する。
【0085】
【電気抵抗測定】
実施例1〜16および比較例1,2の記録媒体基板を各々3枚作製し、各基板について、軟磁性部全体の電気抵抗を調べた。電気抵抗の測定においては、4端子式電気抵抗率測定器を使用した。軟磁性部の電気抵抗率が50μΩcm未満の場合を電気抵抗1、電気抵抗率50μΩcm以上80μΩcm未満の場合を電気抵抗2、電気抵抗率80μΩcm以上100μΩcm未満の場合を電気抵抗3、電気抵抗率100μΩcm以上120μΩcm未満の場合を電気抵抗4、電気抵抗率120μΩcm以上の場合を電気抵抗5、と規定し、各記録媒体基板における軟磁性部の電気抵抗を調べた。これらの結果は、図7の表に掲げる。図7の表において、例えば電気抵抗評価5は、3枚全ての記録媒体基板の電気抵抗の評価が5であったことを意味する。また、密着性評価3〜4は、3枚の記録媒体基板のうち、少なくとも1枚について電気抵抗の評価が3であり且つ少なくとも1枚について電気抵抗の評価が4であったことを意味する。
【0086】
【評価】
図7の表からは、コア基板と軟磁性層または軟磁性部との間に多孔質酸化物層が介在している実施例1〜16の記録媒体基板では、コア基板に対して軟磁性層が直接積層形成されている比較例1,2の記録媒体基板よりも、コア基板に対する軟磁性層または軟磁性部の密着性が高いことが判る。多孔質二酸化ケイ素または酸化亜鉛よりなるインターカレート層を含む軟磁性部を備える実施例5〜8,13〜16の記録媒体基板では、特に優れた密着性が達成されている。また、酸化亜鉛粒子が軟磁性層中に分散している実施例3,4,7,8,11,12,15,16の記録媒体基板では、軟磁性層中に酸化亜鉛粒子が分散していない以外は各々に対応する同一の積層構造を有する実施例1,2,5,6,9,10,13,14の記録媒体基板よりも、軟磁性部または軟磁性層は高電気抵抗であることが判る。多孔質二酸化ケイ素または酸化亜鉛よりなるインターカレート層を含む軟磁性部を備える実施例7,8,15,16の記録媒体基板では、特に高電気抵抗が達成されている。
【0087】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0088】
(付記1)基材、軟磁性めっき層、並びに、当該基材および軟磁性めっき層の間の多孔質酸化物層よりなる積層構造を有することを特徴とする、記録媒体基板。
(付記2)基材と、
複数の軟磁性めっき層、および、軟磁性めっき層間に介在し且つ前記軟磁性めっき層よりも高電気抵抗率の部位を含むインターカレート層、からなる積層構造を有する軟磁性部と、
前記基材および前記軟磁性部の間の多孔質酸化物層と、からなる積層構造を有することを特徴とする、記録媒体基板。
(付記3)前記インターカレート層は、酸化物またはアモルファス物質よりなる、付記2に記載の記録媒体基板。
(付記4)前記軟磁性めっき層は、当該軟磁性めっき層を構成する軟磁性材料よりも高電気抵抗率の粒子を含む、付記1から3のいずれか1つに記載の記録媒体基板。
(付記5)前記粒子は酸化亜鉛よりなる、付記4に記載の記録媒体基板。
(付記6)前記基材における少なくとも表面は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、およびタンタルよりなる群より選択される単体金属、または、当該群より選択される金属を主成分として含む合金よりなる、付記1から5のいずれか1つに記載の記録媒体基板。
(付記7)基材に対して多孔質酸化物層を形成するための多孔質酸化物層形成工程と、
前記多孔質酸化物層の上に軟磁性めっき層を形成するための軟磁性めっき層形成工程と、を含むことを特徴とする、記録媒体基板の製造方法。
(付記8)前記多孔質酸化物層形成工程は、易溶性金属ターゲットおよび酸化物ターゲットを用いて行うコスパッタリング法により、或は、易溶性金属および酸化物を含むターゲットを用いて行うスパッタリング法により、易溶性金属分散酸化物膜を形成するための工程と、当該易溶性金属分散酸化物膜における少なくとも表面に存在する易溶性金属を溶出除去するための工程と、を含む、付記7に記載の記録媒体基板の製造方法。
(付記9)前記多孔質酸化物層形成工程では、前記基材の表面に対する陽極酸化処理により前記多孔質酸化物層は形成される、付記7に記載の記録媒体基板の製造方法。
(付記10)前記軟磁性めっき層形成工程では、無電解めっき法により前記軟磁性めっき層は形成される、付記7から9のいずれか1つに記載の記録媒体基板の製造方法。
(付記11)前記無電解めっき法では、前記軟磁性めっき層を構成するための軟磁性材料よりも高い電気抵抗率を有する物質を、めっき成長時にめっき膜にて析出させる、付記10に記載の記録媒体基板の製造方法。
(付記12)前記無電解めっき法では、前記軟磁性めっき層を構成するための軟磁性材料よりも高い電気抵抗率を有する粒子を含む、めっき浴を使用する、付記10に記載の記録媒体基板の製造方法。
【0089】
【発明の効果】
本発明によると、基板ないし下地との密着性に優れた軟磁性めっき層ないし軟磁性部を有する記録媒体基板を得ることができる。このような記録媒体基板は、高記録密度化に適した垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体を実用化するうえで好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る記録媒体基板の部分断面模式図である。
【図2】図1に示す記録媒体基板の積層構成を表す。
【図3】多孔質酸化物層が粒子を含有する場合の拡大断面図である。
【図4】図1に示す記録媒体基板の製造方法における一部の工程を表す。
【図5】本発明に係る記録媒体基板を用いて作製された磁気記録媒体の積層構成を表す。
【図6】本発明に係る記録媒体基板を用いて作製された光磁気記録媒体の積層構成を表す。
【図7】実施例1〜16および比較例1,2について、構造、並びに、密着性評価および電気抵抗測定の結果を掲げる。
【図8】従来の磁気記録媒体における積層構成の一例を表す。
【図9】従来の光磁気記録媒体における積層構成の一例を表す。
【符号の説明】
X1 記録媒体基板
X2 磁気記録媒体
X3 光磁気記録媒体
S1 コア基板
10 軟磁性部
11 軟磁性層
11a 軟磁性材料
11b 粒子
12 インターカレート層
20 多孔質酸化物層
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体や光磁気記録媒体などの記録媒体の作製に用いることのできる記録媒体基板、および、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータシステムにおける情報処理量の増大に伴い、ハードディスクなどの記憶装置を構成する磁気記録媒体に対しては、記憶容量の増大化が要求される。そのような要求を満たし得る媒体として、近年、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体が注目を集めている。
【0003】
図8は、垂直磁気記録方式の従来の磁気記録媒体の一例である磁気記録媒体X4を表す。磁気記録媒体X4は、基板S2と、記録磁性層81と、軟磁性層82と、非磁性層83と、保護層84と、潤滑層85とからなる積層構造を有する。各層は、軟磁性層82、非磁性層83、記録磁性層81、保護層84、および潤滑層85の順で、基板S2の側から積層形成されたものである。
【0004】
記録磁性層81は、この層を構成する磁性膜の膜面に対して垂直な方向に磁化容易軸を有して磁化された垂直磁化膜である。軟磁性層82は、比較的に大きな飽和磁化と比較的に小さな保磁力とを有する磁性膜により構成され、当該磁性膜の膜面に平行な方向(面内方向)に磁化容易軸を有して磁化された面内磁化膜である。非磁性層83は、非磁性材料よりなり、主に、記録磁性層81および軟磁性層82を磁性的に適切に分離するためのものである。保護層84は、記録磁性層81を外界から物理的および化学的に保護するためのものであり、潤滑層85は、磁気記録媒体X4の表面(記録磁性層81に対して基板S2とは反対の側)における磁気記録ヘッドの潤滑性を確保するためのものである。
【0005】
磁気記録媒体X4では、大きな飽和磁化と小さな保磁力とを有する軟磁性層82が記録磁性層81に近接して存在するため、記録処理時において、磁気記録ヘッドから記録磁性層81に印加される記録磁界の磁束は記録磁性層81にて拡散せずに集中する。したがって、記録磁性層81の記録感度は、軟磁性層82が存在しない場合よりも向上している。記録磁性層81の記録感度の向上は、磁気記録ヘッドによる印加磁界の低減を可能にし、その結果、より高周波での記録すなわち高速記録を適切に実現することが可能となる。このような高速記録化は、記録密度の高い垂直磁気記録媒体の実用化を図るうえで重要である。
【0006】
一方、高密度記録に適した記録媒体として光磁気記録媒体も注目を集めている。光磁気記録媒体は、磁性材料における種々の磁気特性を利用して構成され、熱磁気的な記録および磁気光学効果を利用した再生という2つの機能を担う書換え可能な記録媒体である。
【0007】
図9は、従来の光磁気記録媒体の一例である光磁気記録媒体X5を表す。光磁気記録媒体X5は、基板S3と、記録磁性部91と、軟磁性層92と、溝形成層93と、放熱反射層94と、誘電体層95,96とからなる積層構造を有し、フロントイルミネーション方式の光磁気ディスクとして構成されたものである。各層は、軟磁性層92、溝形成層93、放熱反射層94、誘電体層95、記録磁性部91、および誘電体層96の順で、基板S3の側から積層形成されたものである。
【0008】
記録磁性部91は、熱磁気的な記録および磁気光学効果を利用した再生という2つの機能を担うことが可能な、再生方式に応じた1または2以上の磁性膜よりなる磁性構造を有する。当該磁性膜は希土類−遷移金属アモルファス合金垂直磁化膜よりなる。軟磁性層92は、比較的に大きな飽和磁化と比較的に小さな保磁力とを有する磁性膜により構成され、当該磁性膜の膜面に平行な方向(面内方向)に磁化容易軸を有して磁化された面内磁化膜である。溝形成層93は、樹脂材料よりなり、ランド/グルーブ形成用の層である。放熱反射層94は、読取り用レーザの反射光量を増強し、且つ、記録磁性部91にて発生する熱を基板側に効率よく伝導するためのものである。誘電体層95,96は、記録磁性部91に対する外部からの物理的および化学的な影響を回避するためのものである。
【0009】
光磁気記録媒体X5では、大きな飽和磁化と小さな保磁力とを有する軟磁性層92が記録磁性部91に近接して存在するため、記録処理時において、磁気記録ヘッドから記録磁性部91に印加される記録磁界の磁束は記録磁性部91にて拡散せずに集中する。すなわち、記録磁性部91の記録感度は、軟磁性層92が存在しない場合よりも向上している。したがって、光磁気記録媒体X5においては、磁気記録媒体X4と同様に、より高周波での記録すなわち高速記録を適切に実現することが可能となる。このような高速記録化は、記録密度の高い光磁気記録媒体の実用化を図るうえで重要である。
【0010】
記録密度の高い垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体では、それらの実用化を図るため、上述のように、記録磁性層ないし記録磁性部と基板との間において軟磁性層が設けられる場合がある。このように軟磁性層を有する記録媒体については、例えば特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0011】
【特許文献1】
特開平03−105741号公報
【特許文献2】
特開2001−283419号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
磁気記録媒体や光磁気記録媒体の製造において、基板上に軟磁性層を形成する手法としては、一般にスパッタリング法が採用されるが、工業的生産において良好なスループットを実現するという観点からは、スパッタリング法に代えて湿式めっき法を採用するのが好ましい。
【0013】
しかしながら、従来の技術においては、めっき法により基板上に軟磁性層を形成すると、即ち、軟磁気特性を示す磁性材料をめっき法により基板上に成膜すると、形成される軟磁性層と基板との間の密着力は、磁気記録媒体や光磁気記録媒体において実用に耐え得るほどには充分ではなかった。
【0014】
本発明は、このような状況の下で考え出されたものであって、基板ないし下地との密着性に優れた軟磁性めっき層を有する記録媒体基板、および、その製造方法を提供することを、目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の側面によると記録媒体基板が提供される。この記録媒体基板は、基材、軟磁性めっき層、並びに、当該基材および軟磁性めっき層の間の多孔質酸化物層よりなる積層構造を有することを特徴とする。基材とは、その上に形成される多孔質酸化物層以上の多層構造のベースとなる部材であって、例えばガラス基板、シリコン基板、樹脂基板、アルミニウム合金基板、およびマグネシウム合金基板などの基板単体、並びに、これら基板単体の表面を所定の金属材料で被覆した複合基板を含む。
【0016】
このような構成を有する記録媒体基板では、めっき法により形成される軟磁性めっき層と基材との間において高い密着力を達成することができる。本発明の第1の側面における軟磁性めっき層は、基材に対して固着形成された多孔質酸化物層を介して基材上に設けられている。多孔質酸化物層は、軟磁性めっき層との界面において多数の細孔を有しており、めっき法により多孔質酸化物層上に積層形成された軟磁性めっき層における多孔質酸化物層との界面は、この多数の細孔に入り込んでいる。界面におけるこのような微細係合構造に由来して、軟磁性めっき層および多孔質酸化物層の間には良好なアンカー効果が得られる。その結果、軟磁性めっき層と基材との間において、高い密着力が得られるのである。
【0017】
また、めっき法により形成される軟磁性めっき層は金属性を有する。そのため、記録媒体の記録処理や再生処理においては、軟磁性めっき層を面内方向に流れる渦電流が発生する。本発明の第1の側面における多孔質酸化物層は、充分な絶縁性を有するので、例えばアルミニウム合金基板のような金属基板を基材として採用する場合であっても、記録媒体の記録処理や再生処理において軟磁性めっき層中を流れる渦電流が当該金属基板にまで流れ込むという不具合は、適切に防止され得る。
【0018】
このように、本発明の第1の側面によると、大きな飽和磁化と小さな保磁力とを有し且つ基材との密着性に優れた軟磁性めっき層を有する記録媒体基板を適切に得ることができる。このような記録媒体基板は、高記録密度化を図るのに適した垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体などの記録媒体を作製するうえで、好適に用いることが可能である。記録磁性層ないし記録磁性部を含む所定の多層構造を本記録媒体基板上に積層形成することによって、垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体などを作製することができる。
【0019】
本発明の第2の側面によると他の記録媒体基板が提供される。この記録媒体基板は、基材と、複数の軟磁性めっき層、および、軟磁性めっき層間に介在し且つ軟磁性めっき層よりも高電気抵抗率の部位を含むインターカレート層(挿入層)、からなる積層構造を有する軟磁性部と、基材および軟磁性部の間の多孔質酸化物層と、からなる積層構造を有することを特徴とする。
【0020】
このような構成を有する記録媒体基板では、軟磁性部と基材との間において高い密着力を達成することができる。本発明の第2の側面における軟磁性部は、多孔質酸化物層の上に軟磁性めっき層およびインターカレート層を交互に所定数積層して形成されたものであり、当該軟磁性部における少なくとも最下層(基材に最も近い層)は、軟磁性めっき層である。最下軟磁性めっき層は、基材に対して固着形成された多孔質酸化物層を介して基材上に設けられている。多孔質酸化物層は、軟磁性めっき層との界面において多数の細孔を有しており、めっき法により多孔質酸化物層上に積層形成された最下軟磁性めっき層における多孔質酸化物層との界面は、この多数の細孔に進入ないし入り込んでいる。界面におけるこのような微細係合構造に由来して、最下軟磁性めっき層および多孔質酸化物層の間には良好なアンカー効果が得られる。その結果、最下軟磁性めっき層ひいては軟磁性部と基材との間において、高い密着力が得られるのである。
【0021】
加えて、本発明の第2の側面に係る記録媒体基板は、軟磁性部において高電気抵抗を達成するうえで好適である。軟磁性部は、軟磁気特性を有する複数の軟磁性めっき層と、当該軟磁性めっき層間に挿設されているインターカレート層よりなり、当該インターカレート層は、軟磁性めっき層よりも高電気抵抗率の部位を有するか、或は、軟磁性めっき層よりも高電気抵抗率の材料よりなる。したがって、インターカレート層の厚さを適宜設定することによって、軟磁性めっき層間を電気的に適切に分断し、各軟磁性めっき層について、層厚方向の電子伝導パスを短くして電気抵抗を大きくすることができる。各軟磁性めっき層ひいては軟磁性部全体の電気抵抗を増大することにより、記録媒体の記録処理や再生処理において軟磁性部にて発生する渦電流を低減することが可能となる。軟磁性部にて発生する渦電流の低減は、良好な高周波記録を達成するうえで好適である。
【0022】
このように、本発明の第2の側面によると、正味の飽和磁化および電気抵抗が大きく且つ正味の保磁力が小さく、加えて基材との密着性に優れた軟磁性部、を有する記録媒体基板を得ることができる。このような記録媒体基板は、高記録密度化を図るのに適した垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体などの記録媒体を作製するうえで、好適に用いることが可能である。記録磁性層ないし記録磁性部を含む所定の多層構造を本記録媒体基板の上に積層形成することによって、垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体などを作製することができる。
【0023】
本発明の第1および第2の側面において、好ましくは、インターカレート層は、酸化物またはアモルファス物質よりなる。酸化物またはアモルファス物質は、本発明において充分な絶縁性を有し、軟磁性めっき層間の電気的分離を適切に達成するためのインターカレート材料として好適である。また、酸化物が多孔質である場合には、軟磁性めっき層間において良好な密着力を得ることができる。
【0024】
好ましくは、軟磁性めっき層は、当該軟磁性めっき層を構成する軟磁性材料よりも高電気抵抗率の粒子を含む。この粒子は、好ましくは酸化亜鉛よりなる。このような構成によると、軟磁性めっき層の電気抵抗を適切に増大することができ、その結果、記録媒体の記録処理や再生処理に際して当該軟磁性めっき層にて発生し得る渦電流を適切に低減することが可能となる。
【0025】
好ましくは、基材における少なくとも表面は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、およびタンタルよりなる群より選択される単体金属、または、当該群より選択される金属を主成分として含む合金よりなる。本構成における単体金属および合金は、その表面に不働態酸化皮膜を形成しやすい。したがって、本構成は、基材表面にて多孔質酸化物層を形成するための手法として陽極酸化処理を採用するうえで好適である。
【0026】
本発明の第3の側面によると記録媒体基板の製造方法が提供される。この製造方法は、基材に対して多孔質酸化物層を形成するための多孔質酸化物層形成工程と、多孔質酸化物層の上に軟磁性めっき層を形成するための軟磁性めっき層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
このような方法によると、本発明の第1の側面に係る記録媒体基板を製造することができる。したがって、本発明の第3の側面によると、製造される記録媒体基板において、第1の側面に関して上述したのと同様の効果が奏される。
【0028】
本発明の第3の側面において、好ましくは、多孔質酸化物層形成工程は、易溶性金属ターゲットおよび酸化物ターゲットを用いて行うコスパッタリング法により、或は、易溶性金属および酸化物を含むターゲットを用いて行うスパッタリング法により、易溶性金属分散酸化物膜を形成するための工程と、当該易溶性金属分散酸化物膜における少なくとも表面に存在する易溶性金属を溶出除去するための工程と、を含む。このような構成によると、多孔質酸化物層形成工程において、多数の緻密な細孔を露出面に有する多孔質酸化物層を、基材上に適切に積層形成することができる。
【0029】
好ましくは、多孔質酸化物層形成工程では、基材の表面に対する陽極酸化処理により多孔質酸化物層は形成される。このような構成によると、多孔質酸化物層形成工程において、多数の緻密な細孔を露出面に有する多孔質酸化物層を、基材表面に適切に形成することができる。
【0030】
好ましくは、軟磁性めっき層形成工程では、無電解めっき法により軟磁性めっき層は形成される。当該無電解めっき法では、好ましくは、軟磁性めっき層を構成するための軟磁性材料よりも高い電気抵抗率を有する物質を、めっき成長時にめっき膜にて析出させる。或は、当該無電解めっき法では、好ましくは、軟磁性めっき層を構成するための軟磁性材料よりも高い電気抵抗率を有する粒子を含む、めっき浴を使用する。これらの構成によると、めっき法により形成される軟磁性めっき層において高電気抵抗粒子を適切に分散させることができ、その結果、当該軟磁性めっき層の電気抵抗または軟磁性部の正味の電気抵抗を、適切に増大することが可能となる。
【0031】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、本発明に係る記録媒体基板X1を表す。図1は、記録媒体基板X1の部分断面模式図であり、図2は、記録媒体基板X1の積層構成を表す。記録媒体基板X1は、コア基板S1と、軟磁性部10と、多孔質酸化物層20とを備え、フロントイルミネーション方式の光磁気記録媒体や垂直磁気記録媒体などの記録媒体を製造するのに用いることのできるディスク基板として構成されている。
【0032】
コア基板S1は、ガラス基板、シリコン基板、樹脂基板、または金属基板、若しくは、ガラス基板、シリコン基板、または樹脂基板などの非金属基板の表面を金属材料で被覆した複合基板である。樹脂基板としては、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、エポキシ樹脂、またはポリオレフィン樹脂よりなる基板を採用することができる。金属基板としては、例えば、アルミニウム合金基板やマグネシウム合金基板を採用することができる。コア基板S1として上述のような複合基板を採用する場合、非金属基板を被覆するための金属材料としては、その表面に不働態酸化皮膜が形成されやすいものを採用するのが好ましい。そのような金属材料としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、タンタル、または、これらから選択される金属を主成分として含む合金が挙げられる。これらのような金属材料を採用すると、多孔質酸化物層20の形成に際し、陽極酸化処理を採用することができる。複合基板における表面金属皮膜の膜厚は、例えば0.5〜10μmである。コア基板S1が垂直磁気記録媒体用の基板である場合、コア基板S1の表面は、化学的方法、物理的方法、または機械的方法により、平滑化されている。
【0033】
軟磁性部10は、記録媒体に対する記録処理の際に記録磁性層を通過する磁束の密度を増大することによって、当該記録磁性層の記録感度を向上するためのものであり、複数の軟磁性層11および当該軟磁性層間のインターカレート層12よりなる積層構造を有する。図2においては、一部の軟磁性層11およびインターカレート層12を省略する。また、図1および図2は、軟磁性部10の最上層が軟磁性層11である構成を表すが、このような構成に代えて、軟磁性部10の最上層が、直下に軟磁性層11を伴うインターカレート層12である構成を、採用してもよい。
【0034】
軟磁性層11は、めっき法により成膜された軟磁性材料11aよりなる。或は、軟磁性層11は、図3に示すように、めっき法により成膜された軟磁性材料11aと、当該軟磁性材料膜の内部に分散している粒子11bとからなる。図3は、軟磁性部10における最下層の軟磁性層11が粒子11bを含む場合の部分拡大図である。軟磁性材料11aとしては、例えば、FeCoNi,FeNi,またはCoNiが挙げられる。粒子11bは、軟磁性材料11aよりも高い電気抵抗率を有する材料よりなる。粒子11bの構成材料としては、例えば、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、または炭素が挙げられる。粒子11bの粒径は、例えば10〜100nmである。軟磁性層11が粒子11bを含む場合、軟磁性部10の電気抵抗を適切に増大することができ、その結果、記録媒体の記録処理や再生処理に際して当該軟磁性層11にて発生し得る渦電流を適切に低減することが可能となる。このような構成の軟磁性層11の厚さは、例えば0.1〜0.5μmである。
【0035】
インターカレート層12は、軟磁性部10における複数の軟磁性層11の間を電気的に適切に分離するためのものであり、軟磁性層11よりも高い電気抵抗率を有する材料よりなる。この場合、インターカレート層12は、例えば、高電気抵抗の酸化物またはアモルファス物質よりなる。酸化物としては、例えば、SiO2,Al2O3,ZnO,またはTiO2が挙げられる。アモルファス物質としては、例えば、NiP,NiB,またはアモルファス炭素が挙げられる。インターカレート層12が多孔質な酸化物よりなる場合、軟磁性部10を構成する軟磁性層11の間において良好な密着力が得られる傾向にある。或は、インターカレート層12は、軟磁性層11よりも高い電気抵抗率を有する材料よりなる部位を含んでなる。この場合、インターカレート層12は、例えば、金属材料層および当該金属材料層表面を陽極酸化処理することによって形成された多孔質酸化物層よりなる積層構造を有する。このような多孔質酸化物層の存在によっても、軟磁性部10を構成する軟磁性層11の間において良好な密着力が得られる傾向にある。インターカレート層12の厚さは、0.01〜0.1μmであるのが好ましい。軟磁性部10における軟磁性層11の間を電気的に適切に分離するためには、インターカレート層12の厚さは0.01μm以上であるのが好ましい。一方、軟磁性部10における複数の軟磁性層11の軟磁気特性を適切に一体化させるためには、インターカレート層12の厚さは0.1μm以下であるのが好ましい。
【0036】
多孔質酸化物層20は、コア基板S1および軟磁性部10の間に介在してこれらの間において良好な密着力を得るためのものであり、多孔質な酸化物膜よりなる。多孔質酸化物層20は、例えば、Al2O3,MgO,TiO2,またはTa2O5よりなる。多孔質酸化物層20は、軟磁性部10における最下層の軟磁性層11との界面において多数の細孔を有しており、当該軟磁性層11における多孔質酸化物層20との界面は、この多数の細孔に進入ないし入り込んでいる。多孔質酸化物層20および軟磁性層11の界面におけるこのような微細係合構造に由来して、軟磁性部10と多孔質酸化物層20の間には良好なアンカー効果が得られ、その結果、軟磁性部10ないしその最下層の軟磁性層11とコア基板S1との間において高い密着力が得られるのである。多孔質酸化物層20の厚さは、例えば0.1〜1μmである。コア基板S1と軟磁性部10との間において良好な密着力を確保するとう観点からは多孔質酸化物層20の厚さは0.1μm以上であるのが好ましく、製造効率および経済性の観点からは多孔質酸化物層20の厚さは1μm以下であるのが好ましい。
【0037】
図4は、記録媒体基板X1の製造方法を表す。記録媒体基板X1の製造においては、まず、図4(a)に示すように、コア基板S1に対して多孔質酸化物層20を形成する。コア基板S1が金属基板である場合、或は金属材料により被覆された複合基板である場合、本工程では、コア基板S1の全体を覆うように多孔質酸化物層20を形成する。一方、コア基板S1が、後出のめっき工程におけるめっき浴にて不当に侵食されないガラス基板、シリコン基板、または樹脂基板である場合には、軟磁性部10が積層形成される面のみに多孔質酸化物層20を形成してもよい。
【0038】
多孔質酸化物層20の形成においては、まず、コア基板S1の上に易溶性金属が内部に分散した酸化物膜を形成する。本発明において易溶性金属とは、酸溶液やアルカリ溶液に容易に溶解する金属をいうものとする。易溶性金属分散酸化物膜の形成は、易溶性金属よりなるターゲットおよび酸化物よりなるターゲットを同時にスパッタするコスパッタリング法により、或は、易溶性金属および酸化物を含む単一のターゲットを用いて行うスパッタリング法により、行うことができる。易溶性金属としては、例えばアルミニウムやマグネシウムが挙げられる。また、酸化物としては、SiO2やTiO2が挙げられる。易溶性金属分散酸化物膜における易溶性金属の含有率は、20〜50vol%であるのが好ましい。
【0039】
多孔質酸化物層20の形成においては、次に、易溶性金属分散酸化物膜に対して酸溶液またはアルカリ溶液を作用させることによって、当該膜における表面およびその近傍に存在する易溶性金属を溶出させる。酸溶液としては、易溶性金属の種類に応じて、例えば、10〜20%の希塩酸、若しくは、10〜20%のアンモニア水または水酸化ナトリウム水溶液を使用することができる。このようにして、多孔質酸化物層20を形成することができる。
【0040】
多孔質酸化物層20の形成においては、本発明では、上述の手法に代えて陽極酸化処理を採用してもよい。不働態を形成し易い例えば上掲の金属材料によりコア基板S1が構成されている場合、或は、不働態を形成し易い例えば上掲の金属材料によりコア基板S1の表面が被覆されている場合には、陽極酸化処理によって、多孔質酸化物層20を適切に形成することができる。本手法においては、5〜10%の希塩酸などによりコア基板S1の表面に対して清浄化処理を施した後、陽極に電気的に接続したコア基板S1を対電極とともに電解浴に浸漬し、陽極酸化処理を行なう。電解浴の組成および電解条件については、例えば下記の表1〜表3に掲げる組成および条件を採用することができる。このような手法によっても、多孔質酸化物層20を形成することができる。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
記録媒体基板X1の製造においては、次に、図4(b)に示すように、多孔質酸化物層20の上に軟磁性層11を積層形成する。具体的には、まず、多孔質酸化物層20を表面に形成したコア基板S1を、塩化スズ水溶液(1〜5wt%、室温)に浸漬した後、充分な水洗を行う。当該水溶液に含まれる塩化スズは、多孔質酸化物層20の表面に吸着し、後出のパラジウムの吸着核として機能する。次に、多孔質酸化物層20が形成されているコア基板S1を塩化パラジウム水溶液(0.01〜0.1wt%、室温)に浸漬した後、充分な水洗を行う。当該水溶液に含まれるパラジウムは、塩化スズを核として多孔質酸化物層20の表面に吸着し、後出のめっき成長における触媒核として機能する。次に、コア基板S1をめっき浴に浸漬し、無電解めっき法によりめっき膜を成長させる。このようにして、めっき膜としての軟磁性層11を形成することができる。コア基板S1が金属材料よりなる場合であっても、或は金属材料により被覆された複合基板であっても、その場合には、コア基板S1は、上述のようにその全体が多孔質酸化物層20で被覆されているので、当該無電解めっき工程においてめっき浴には溶解しない。
【0045】
めっき浴の組成および温度については、例えば下記の表4〜表6に掲げる組成および温度を採用することができる。めっき浴について表4に示す組成および温度を採用する場合、軟磁性材料11aよりなる軟磁性層11が形成される。表5に示す組成および温度を採用する場合、軟磁性材料11aがめっき成長する過程において当該軟磁性材料11aに酸化亜鉛粒子が粒子11bとして取りこまれ、その結果、粒子11bが分散している軟磁性層11が形成される。表6に示す組成および温度を採用する場合、軟磁性材料11aがめっき成長する過程において硝酸亜鉛として浴に溶解された亜鉛が、当該軟磁性材料膜にて酸化亜鉛として粒状に析出し、その結果、酸化亜鉛よりなる粒子11bが分散している軟磁性層11が形成される。
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
記録媒体基板X1の製造においては、次に、図4(c)に示すように、軟磁性層11の上にインターカレート層12を積層形成する。本発明においては、上述のように、インターカレート層12は、酸化物やアモルファス物質などにより構成することができる。
【0050】
インターカレート層12を多孔質酸化物により構成する場合、当該インターカレート層12の形成においては、例えば、まず、軟磁性層11の上に易溶性金属が内部に分散した酸化物膜を形成する。この易溶性金属分散酸化物膜の形成は、多孔質酸化物層20の形成に関して上述したのと同様に、易溶性金属よりなるターゲットおよび酸化物よりなるターゲットを同時にスパッタするコスパッタリング法により、或は、易溶性金属および酸化物を含む単一のターゲットを用いて行うスパッタリング法により、行うことができる。次に、多孔質酸化物層20の形成に関して上述したのと同様に、易溶性金属分散膜に対して酸溶液またはアルカリ溶液を作用させることによって、当該膜における表面およびその近傍に存在する易溶性金属を溶出させる。このようにして、多孔質酸化物よりなるインターカレート層12を形成することができる。
【0051】
インターカレート層12の形成においては、上述のような手法に代えて陽極酸化処理を利用することもできる。その場合、例えば、まず、軟磁性層11の上にスパッタリング法により所定の金属を成膜する。この金属としては、不働態酸化皮膜を形成しやすい、アルミニウム、マグネシウム、チタン、タンタル、または、これらから選択される金属を主成分として含む合金を採用するのが好ましい。次に、このようにして形成された金属膜表面を陽極酸化処理により酸化する。具体的には、5〜10%の希塩酸などにより軟磁性層上の金属膜の表面に対して清浄化処理を施した後、陽極に電気的に接続した金属膜を有するコア基板S1を対電極とともに電解浴に浸漬し、陽極酸化処理を行なう。電解浴の組成および電解条件については、例えば上記の表1〜表3に掲げる組成および条件を採用することができる。このような手法によると、金属膜およびその表面の多孔質酸化物膜よりなるインターカレート層12を形成することができる。
【0052】
インターカレート層12をアモルファス物質により構成する場合、当該インターカレート層12の形成においては、例えば、まず、軟磁性層11が表面に形成されているコア基板S1を、塩化スズ水溶液(1〜5wt%、室温)に浸漬した後、充分な水洗を行う。次に、軟磁性層11が形成されているコア基板S1を塩化パラジウム水溶液(0.01〜0.1wt%、室温)に浸漬した後、充分な水洗を行う。次に、下記の表7に示す組成および温度のめっき浴にコア基板S1を浸漬し、無電解めっき法によりニッケルめっき膜を成長させる。このようにして、アモルファス物質よりなるインターカレート層12を形成することができる。形成されるニッケルめっき膜は、リン化合物含有量が10原子%以上と高く、アモルファスの状態をとる。このような高リン含有率のニッケルめっき膜は、低リン含有率のニッケルめっき膜に比べて電気抵抗が3〜7倍程度大きいことが知られている。
【0053】
【表7】
【0054】
インターカレート層12を酸化亜鉛により構成する場合、当該インターカレート層12の形成においては、例えば、まず、軟磁性層11が表面に形成されているコア基板S1を、塩化スズ水溶液(1〜5wt%、室温)に浸漬した後、充分な水洗を行う。次に、軟磁性層11が形成されているコア基板S1を塩化パラジウム水溶液(0.01〜0.1wt%、室温)に浸漬した後、充分な水洗を行う。次に、下記の表8に示す組成および温度のめっき浴にコア基板S1を浸漬し、無電解めっき法により酸化亜鉛めっき膜を成長させる。このようにして、酸化亜鉛よりなるインターカレート層12を形成することができる。
【0055】
【表8】
【0056】
以上のようなインターカレート層12の形成、および、当該インターカレート層12の上への更なる軟磁性層11の積層形成を、所定の回数繰り返すことにより、図1に示すような軟磁性部10を形成する。その後、軟磁性層11の密着力の向上や軟磁気特性の改善などを目的として、形成された軟磁性部10に対して熱処理を施してもよい。軟磁性部10における各軟磁性層11および各インターカレート層12の形成手法については、上述の軟磁性層11およびインターカレート層12の形成手法と同様である。図1には、軟磁性部10における軟磁性層11の積層数が5である場合を表す。各軟磁性層11の厚さおよび積層数は、軟磁性部10において所望される軟磁気特性に応じて適宜決定される。
【0057】
また、本発明においては、インターカレート層12を設けずに軟磁性部10を形成することもできる。具体的には、軟磁性部10を軟磁性層11により構成することによって、コア基板S1、軟磁性層11、並びに、当該コア基板S1および軟磁性層11の間の多孔質酸化物層20よりなる積層構造からなる記録媒体基板X1として構成することもできる。
【0058】
図5は、記録媒体基板X1を用いて作製された磁気記録媒体X2の積層構成を表す。磁気記録媒体X2は、記録媒体基板X1と、記録磁性層21と、非磁性層22と、保護層23と、潤滑層24とからなる積層構成を有し、垂直磁気記録方式の磁気記録ディスクとして構成されたものである。各層は、非磁性層22、記録磁性層21、保護層23、および潤滑層24の順で、記録媒体基板X1の側から積層形成されたものである。
【0059】
記録磁性層21は、この層を構成する磁性膜の膜面に対して垂直な方向に磁化容易軸を有して磁化された垂直磁化膜であり、例えば、所定の組成のTbFeCo膜、CoCrPt膜、またはPd/Co多層膜からなる。非磁性層22は、記録媒体基板X1の軟磁性部10と記録磁性層21とを磁性的に分離するとともに、記録磁性層21の積層形成の際に軟磁性部10の結晶格子構造の影響を回避するためのものである。このような非磁性層22は、例えば、CoCr膜、CoCrPt膜、Si膜、C膜、NiP膜、RuOx/Ag/C多層膜、またはSiN/Cr/Ag/C多層膜などの非磁性材料よりなる。保護層23は、記録磁性層21を外界から物理的および化学的に保護するためのものであり、例えば、SiN膜、SiO2膜、Y添加SiO2膜、またはダイアモンドライクカーボン膜よりなる。潤滑層24は、磁気記録媒体X2の表面における磁気記録ヘッドの潤滑性を確保するためのものであり、例えば、塗布形成されたフッ素オイル膜よりなる。
【0060】
図6は、記録媒体基板X1を用いて作製された光磁気記録媒体X3の積層構成を表す。光磁気記録媒体X3は、記録媒体基板X1と、記録磁性部31と、溝形成層32と、放熱反射層33と、誘電体層34,35とを備え、熱磁気的な記録および磁気光学効果を利用した再生という2つの機能を担う書換え可能な、フロントイルミネーション方式の光磁気ディスクとして構成されたものである。各層は、溝形成層32、放熱反射層33、誘電体層34、記録磁性部31、および誘電体層35の順で、記録媒体基板X1の側から積層形成されたものである。
【0061】
記録磁性部31は、熱磁気的な記録および磁気光学効果を利用した再生という2つの機能を担うことが可能な、1または2以上の磁性膜よりなる磁性構造を有し、光磁気記録媒体X3における情報トラックを構成する。例えば、記録磁性部31は、記録機能および再生機能を併有する単一の記録層よりなる。或は、記録磁性部31は、相対的に保磁力が大きくて記録機能を担う記録層と、再生用レーザにおけるカー回転角が相対的に大きくて再生機能を担う再生層とからなる、2層構造を有する。或は、記録磁性部31は、MSR方式、MAMMOS方式、またはDWDD方式を実現するための、記録層、再生層、およびこれらの間の中間層よりなる3層構造を有する。記録磁性部31のとり得る各構造における各層は、希土類元素と遷移金属とのアモルファス合金よりなり、垂直磁気異方性を有して垂直方向に磁化された垂直磁化膜である。具体的には、記録層は、例えば、所定の組成を有するTbFeCо,DyFeCо,またはTbDyFeCоよりなる。再生層を設ける場合、当該再生層は、例えば、所定の組成を有するGdFeCо,GdDyFeCо,GdTbDyFeCо,NdDyFeCо,NdGdFeCо,またはPrDyFeCоよりなる。中間層を設ける場合、当該中間層は、例えば、所定の組成を有するGdFe,TbFe,GdFeCо,GdDyFeCо,GdTbDyFeCо,NdDyFeCо,NdGdFeCо,またはPrDyFeCоよりなる。各層の厚さは、記録磁性部31に所望される磁性構造に応じて決定される。
【0062】
溝形成層32は、ランド/グルーブ形成用の層であり、例えば光硬化性樹脂などの樹脂材料よりなり、情報を記録するためのトラックに応じた凹凸形状を放熱反射層33の側に有する。放熱反射層33は、読取り用レーザの反射光量を増強し、且つ、記録磁性部31にて発生する熱をコア基板S1の側に効率よく伝導するためのものであり、例えば、Ag合金膜やAl合金膜よりなる。誘電体層34,35は、記録磁性部31に対する外部からの物理的および化学的な影響を回避するためのものであり、例えば、SiN膜、SiO2膜、Y添加SiO2膜、またはAlN膜よりなる。
【0063】
記録媒体基板X1では、軟磁性部10は、多孔質酸化物層20の上に軟磁性層11およびインターカレート層12を交互に所定数積層して形成されたものであり、その最下層は軟磁性層11である。最下の軟磁性層11は、コア基板S1に対して固着形成された多孔質酸化物層20を介してコア基板S1の上に設けられている。多孔質酸化物層20は、軟磁性層11との界面において多数の細孔を有しており、多孔質酸化物層20の上にめっき法により積層形成された軟磁性層11における多孔質酸化物層20との界面は、この多数の細孔に進入ないし入り込んでいる。界面におけるこのような微細係合構造に由来して、最下の軟磁性層11および多孔質酸化物層20の間には良好なアンカー効果が得られる。その結果、記録媒体基板X1では、最下の軟磁性層11ひいては軟磁性部10とコア基板S1との間において高い密着力が得られるのである。
【0064】
記録媒体基板X1では、めっき法により形成される軟磁性層11は金属性を有するが、多孔質酸化物層20は充分な絶縁性を有する。したがって、例えばアルミニウム合金基板のような金属基板をコア基板S1として採用する場合であっても、記録媒体X2,X3の記録処理や再生処理において軟磁性層11の内部を流れる渦電流が当該金属基板にまで流れ込むことを防止することができる。
【0065】
記録媒体基板X1では、軟磁性部10は、軟磁気特性を有する複数の軟磁性層11と、当該軟磁性層間に挿設されているインターカレート層12よりなり、インターカレート層12は、軟磁性層11よりも電気抵抗率の高い部位を有する。したがって、インターカレート層12の厚さを適宜設定することによって、2つの軟磁性層11の間を電気的に適切に分離し、各軟磁性層11について、層厚方向の電子伝導パスを短くして電気抵抗を大きくすることができる。各軟磁性層11ひいては軟磁性部10の全体の電気抵抗を増大することにより、記録媒体X2,X3の記録処理や再生処理において軟磁性部10にて発生する渦電流を低減することが可能となる。軟磁性部10にて発生する渦電流の低減は、良好な高周波記録を達成するうえで好適である。
【0066】
【実施例】
次に、本発明の実施例について、比較例とともに記載する。
【0067】
【実施例1】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板(φ3.5インチ)の全面に対し、RFスパッタリング法によりAl−SiO2を成膜することにより、厚さ0.5μmの易溶性金属分散酸化物膜(Al分散SiO2膜)を形成した。本スパッタリングでは、Al(30vol%)およびSiO2(70vol%)の圧粉体からなるターゲット(φ6インチ)を用い、ガス圧力を0.5Paとし、投入電力をRF1kWとし、基板温度を室温とした。このような成膜の後、基板を15wt%HCl水溶液(35℃)に3分間浸漬した後、純水で洗浄した。このようにして、コア基板(アルミニウム合金基板)上に多孔質酸化物層(多孔質SiO2層、厚さ0.5μm)を形成した。
【0068】
次に、多孔質酸化物層の上に軟磁性層を積層形成した。具体的には、まず、多孔質酸化物層が形成された基板を3wt%塩化スズ水溶液(35℃)に1分間浸漬した後、純水で洗浄した。次に、当該基板を0.05wt%塩化パラジウム水溶液(35℃)に1分間浸漬した後、純水で洗浄した。次に、当該基板を、無電解めっき浴(55℃)に5分間浸漬した後、純水で洗浄した。本無電解めっき浴は、0.1wt%のジメチルアミンボラン、0.3wt%の硫酸ニッケル、0.3wt%の硫酸鉄、および3wt%の硫酸コバルトを含む水溶液である。このようにして、無電解めっき法により厚さ2μmの軟磁性層(FeCoNi)を形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0069】
【実施例2】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板(φ3.5インチ)を7wt%HCl水溶液(室温)で洗浄し、陽極に接続した後に当該基板を対電極とともに4wt%シュウ酸水溶液(35℃)に浸漬し、陽極酸化処理を行った。陽極酸化処理においては、直流電圧を15Vとし、電流密度を15mA/cm2とし、処理時間を2分間とした。このようにして、コア基板(アルミニウム合金基板)上に多孔質酸化物層(Al合金陽極酸化膜、厚さ0.5μm)を形成した。次に、実施例1と同様にして、無電解めっき法により当該多孔質酸化物層の上に軟磁性層(厚さ2μm)を積層形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0070】
【実施例3】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、実施例1と同様にして、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板の上に多孔質酸化物層(多孔質SiO2層、厚さ0.5μm)を形成した。
【0071】
次に、多孔質酸化物層の上に軟磁性層を積層形成した。具体的には、まず、多孔質酸化物層が形成された基板について、3wt%塩化スズ水溶液(35℃)への1分間の浸漬、純水洗浄、0.05wt%塩化パラジウム水溶液(35℃)への1分間の浸漬、および純水洗浄を順次行った。次に、当該基板を、無電解めっき浴(60℃)に5分間浸漬した後、純水で洗浄した。本無電解めっき浴は、0.1wt%のジメチルアミンボラン、0.3wt%の硫酸ニッケル、0.3wt%の硫酸鉄、3wt%の硫酸コバルト、3wt%の硝酸亜鉛を含む水溶液である。この無電解めっき工程においては、硝酸亜鉛として浴中に溶解された亜鉛は、酸化亜鉛粒子としてめっき膜内にて析出する。このように、無電解めっき法により、内部に酸化亜鉛粒子が分散する厚さ2μmの軟磁性層(酸化亜鉛粒子含有率20vol%)を形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0072】
【実施例4】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、実施例2と同様にして、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板の上に多孔質酸化物層(Al合金陽極酸化膜、厚さ0.5μm)を形成した。次に、実施例3と同様にして、無電解めっき法により当該多孔質酸化物層の上に軟磁性層(酸化亜鉛粒子含有率20vol%、厚さ2μm)を積層形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0073】
【実施例5】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、実施例1と同様にして、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板の上に多孔質酸化物層(多孔質SiO2層、厚さ0.5μm)を形成した。次に、厚さを2μmに代えて0.2μmとした以外は実施例1と同様にして、無電解めっき法により当該多孔質酸化物層の上に軟磁性層を積層形成した。
【0074】
次に、軟磁性層上に、インターカレート層としての多孔質酸化物層を形成した。具体的には、まず、RFスパッタリング法により、軟磁性層上にAl−SiO2を成膜して厚さ0.05μmの易溶性金属分散酸化物膜(Al分散SiO2膜)を形成した。本スパッタリングでは、Al(30vol%)およびSiO2(70vol%)の圧粉体からなるターゲット(φ6インチ)を用い、ガス圧力を0.5Paとし、投入電力をRF1kWとし、基板温度を室温とした。このような成膜の後、基板を15wt%HCl水溶液(35℃)に3分間浸漬した後、純水で洗浄した。このようにして、軟磁性層上に多孔質酸化物層(多孔質SiO2層、厚さ0.05μm)を形成した。
【0075】
本実施例について上述した軟磁性層(厚さ0.2μm)の形成、および、インターカレート層(多孔質SiO2層、厚さ0.05μm)の形成を、更に交互に繰り返すことによって、合計10層の軟磁性層および軟磁性層間に介在する合計9層のインターカレート層よりなる軟磁性部を形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0076】
【実施例6】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、実施例2と同様にして、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板の上に多孔質酸化物層(Al合金陽極酸化膜、厚さ0.5μm)を形成した。次に、実施例5と同様にして、合計10層の軟磁性層(厚さ0.2μm)および軟磁性層間に介在する合計9層のインターカレート層(多孔質SiO2層、厚さ0.05μm)よりなる軟磁性部を形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0077】
【実施例7】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、実施例1と同様にして、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板の上に多孔質酸化物層(多孔質SiO2層、厚さ0.5μm)を形成した。次に、厚さを2μmに代えて0.2μmとした以外は実施例3と同様にして、無電解めっき法により当該多孔質酸化物層の上に軟磁性層(酸化亜鉛粒子含有率20vol%)を積層形成した。次に、軟磁性層上に、実施例5と同様にして、インターカレート層としての多孔質酸化物層(多孔質SiO2層、厚さ0.05μm)を形成した。
【0078】
本実施例について上述した軟磁性層(酸化亜鉛粒子含有率20vol%、厚さ0.2μm)の形成、および、インターカレート層(多孔質SiO2層、厚さ0.05μm)の形成を、更に交互に繰り返すことによって、合計10層の軟磁性層および軟磁性層間に介在する合計9層のインターカレート層よりなる軟磁性部を形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0079】
【実施例8】
本実施例の記録媒体基板の製造においては、まず、実施例2と同様にして、コア基板としての磁気ディスク用アルミニウム合金基板の上に多孔質酸化物層(Al合金陽極酸化膜、厚さ0.5μm)を形成した。次に、実施例7と同様にして、合計10層の軟磁性層(酸化亜鉛粒子含有率20vol%、厚さ0.2μm)および軟磁性層間に介在する合計9層のインターカレート層(多孔質SiO2層、厚さ0.05μm)よりなる軟磁性部を形成した。以上のようにして、本実施例の記録媒体基板を作製した。
【0080】
【実施例9〜12】
インターカレート層として、多孔質SiO2層(厚さ0.05μm)に代えてアモルファスNiP層(厚さ0.05μm)を形成した以外は、実施例5〜8と同様にして、実施例9〜12の記録媒体基板を作製した。アモルファスNiP層の形成においては、まず、最表面に軟磁性層が形成された基板について、3wt%塩化スズ水溶液(35℃)への1分間の浸漬、純水洗浄、0.05wt%塩化パラジウム水溶液(35℃)への1分間の浸漬、および純水洗浄を順次行った。次に、当該基板を、無電解めっき浴(70℃)に1分間浸漬した後、純水で洗浄した。本無電解めっき浴は、2wt%の次亜リン酸ナトリウムおよび0.3wt%の硫酸ニッケルを含む水溶液である。
【0081】
【実施例13〜16】
インターカレート層として、多孔質SiO2層(厚さ0.05μm)に代えて酸化亜鉛層(厚さ0.05μm)を形成した以外は、実施例5〜8と同様にして、実施例13〜16の記録媒体基板を作製した。酸化亜鉛層の形成においては、まず、最表面に軟磁性層が形成された基板について、3wt%塩化スズ水溶液(35℃)への1分間の浸漬、純水洗浄、0.05wt%塩化パラジウム水溶液(35℃)への1分間の浸漬、および純水洗浄を順次行った。次に、当該基板を、無電解めっき浴(55℃)に2分間浸漬した後、純水で洗浄した。本無電解めっき浴は、0.1wt%のジメチルアミンボランおよび3wt%の硝酸亜鉛を含む水溶液である。この無電解めっき工程においては、硝酸亜鉛として浴中に溶解された亜鉛は、酸化亜鉛粒子としてめっき膜内にて析出する。
【0082】
【比較例1】
コア基板の表面に多孔質酸化物層を形成しない以外は実施例1と同様にして、本比較例の記録媒体基板を作製した。したがって、本比較例の記録媒体基板は、コア基板としてのアルミニウム合金基板上にめっき法により直接形成された軟磁性層(厚さ2μm)を有する。
【0083】
【比較例2】
コア基板の表面に多孔質酸化物層を形成しない以外は実施例3と同様にして、本比較例の記録媒体基板を作製した。したがって、本比較例の記録媒体基板は、コア基板としてのアルミニウム合金基板上にめっき法により直接形成された軟磁性層(酸化亜鉛粒子含有率20vol%、厚さ2μm)を有する。
【0084】
【密着性試験】
実施例1〜16および比較例1,2の記録媒体基板を各々3枚作製し、各基板について、コア基板に対する軟磁性層または軟磁性部の密着性を調べた。具体的には、まず、コア基板上において軟磁性層または軟磁性部を100ヶの区域(各々1mm×1mm四方)に分断した。次に、分断された軟磁性部ないし軟磁性層に対して、粘着テープを荷重1kgf/cm2で貼りつけた後、当該粘着テープを引き剥がした。このような引き剥がし作業によっても剥離を生じずにコア基板上に適切に残存している区域数を計測した。残存区域数が50未満の場合を密着性1、残存区域数50以上80未満の場合を密着性2、残存区域数80以上90未満の場合を密着性3、残存区域数90以上95未満の場合を密着性4、残存区域数95以上の場合を密着性5、と規定し、各記録媒体基板における軟磁性層または軟磁性部の密着性を調べた。これらの結果は、図7の表に掲げる。図7の表において、例えば密着性評価5は、3枚全ての記録媒体基板の密着性の評価が5であったことを意味する。また、密着性評価3〜4は、3枚の記録媒体基板のうち、少なくとも1枚について密着性の評価が3であり且つ少なくとも1枚について密着性の評価が4であったことを意味する。
【0085】
【電気抵抗測定】
実施例1〜16および比較例1,2の記録媒体基板を各々3枚作製し、各基板について、軟磁性部全体の電気抵抗を調べた。電気抵抗の測定においては、4端子式電気抵抗率測定器を使用した。軟磁性部の電気抵抗率が50μΩcm未満の場合を電気抵抗1、電気抵抗率50μΩcm以上80μΩcm未満の場合を電気抵抗2、電気抵抗率80μΩcm以上100μΩcm未満の場合を電気抵抗3、電気抵抗率100μΩcm以上120μΩcm未満の場合を電気抵抗4、電気抵抗率120μΩcm以上の場合を電気抵抗5、と規定し、各記録媒体基板における軟磁性部の電気抵抗を調べた。これらの結果は、図7の表に掲げる。図7の表において、例えば電気抵抗評価5は、3枚全ての記録媒体基板の電気抵抗の評価が5であったことを意味する。また、密着性評価3〜4は、3枚の記録媒体基板のうち、少なくとも1枚について電気抵抗の評価が3であり且つ少なくとも1枚について電気抵抗の評価が4であったことを意味する。
【0086】
【評価】
図7の表からは、コア基板と軟磁性層または軟磁性部との間に多孔質酸化物層が介在している実施例1〜16の記録媒体基板では、コア基板に対して軟磁性層が直接積層形成されている比較例1,2の記録媒体基板よりも、コア基板に対する軟磁性層または軟磁性部の密着性が高いことが判る。多孔質二酸化ケイ素または酸化亜鉛よりなるインターカレート層を含む軟磁性部を備える実施例5〜8,13〜16の記録媒体基板では、特に優れた密着性が達成されている。また、酸化亜鉛粒子が軟磁性層中に分散している実施例3,4,7,8,11,12,15,16の記録媒体基板では、軟磁性層中に酸化亜鉛粒子が分散していない以外は各々に対応する同一の積層構造を有する実施例1,2,5,6,9,10,13,14の記録媒体基板よりも、軟磁性部または軟磁性層は高電気抵抗であることが判る。多孔質二酸化ケイ素または酸化亜鉛よりなるインターカレート層を含む軟磁性部を備える実施例7,8,15,16の記録媒体基板では、特に高電気抵抗が達成されている。
【0087】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0088】
(付記1)基材、軟磁性めっき層、並びに、当該基材および軟磁性めっき層の間の多孔質酸化物層よりなる積層構造を有することを特徴とする、記録媒体基板。
(付記2)基材と、
複数の軟磁性めっき層、および、軟磁性めっき層間に介在し且つ前記軟磁性めっき層よりも高電気抵抗率の部位を含むインターカレート層、からなる積層構造を有する軟磁性部と、
前記基材および前記軟磁性部の間の多孔質酸化物層と、からなる積層構造を有することを特徴とする、記録媒体基板。
(付記3)前記インターカレート層は、酸化物またはアモルファス物質よりなる、付記2に記載の記録媒体基板。
(付記4)前記軟磁性めっき層は、当該軟磁性めっき層を構成する軟磁性材料よりも高電気抵抗率の粒子を含む、付記1から3のいずれか1つに記載の記録媒体基板。
(付記5)前記粒子は酸化亜鉛よりなる、付記4に記載の記録媒体基板。
(付記6)前記基材における少なくとも表面は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、およびタンタルよりなる群より選択される単体金属、または、当該群より選択される金属を主成分として含む合金よりなる、付記1から5のいずれか1つに記載の記録媒体基板。
(付記7)基材に対して多孔質酸化物層を形成するための多孔質酸化物層形成工程と、
前記多孔質酸化物層の上に軟磁性めっき層を形成するための軟磁性めっき層形成工程と、を含むことを特徴とする、記録媒体基板の製造方法。
(付記8)前記多孔質酸化物層形成工程は、易溶性金属ターゲットおよび酸化物ターゲットを用いて行うコスパッタリング法により、或は、易溶性金属および酸化物を含むターゲットを用いて行うスパッタリング法により、易溶性金属分散酸化物膜を形成するための工程と、当該易溶性金属分散酸化物膜における少なくとも表面に存在する易溶性金属を溶出除去するための工程と、を含む、付記7に記載の記録媒体基板の製造方法。
(付記9)前記多孔質酸化物層形成工程では、前記基材の表面に対する陽極酸化処理により前記多孔質酸化物層は形成される、付記7に記載の記録媒体基板の製造方法。
(付記10)前記軟磁性めっき層形成工程では、無電解めっき法により前記軟磁性めっき層は形成される、付記7から9のいずれか1つに記載の記録媒体基板の製造方法。
(付記11)前記無電解めっき法では、前記軟磁性めっき層を構成するための軟磁性材料よりも高い電気抵抗率を有する物質を、めっき成長時にめっき膜にて析出させる、付記10に記載の記録媒体基板の製造方法。
(付記12)前記無電解めっき法では、前記軟磁性めっき層を構成するための軟磁性材料よりも高い電気抵抗率を有する粒子を含む、めっき浴を使用する、付記10に記載の記録媒体基板の製造方法。
【0089】
【発明の効果】
本発明によると、基板ないし下地との密着性に優れた軟磁性めっき層ないし軟磁性部を有する記録媒体基板を得ることができる。このような記録媒体基板は、高記録密度化に適した垂直磁気記録媒体や光磁気記録媒体を実用化するうえで好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る記録媒体基板の部分断面模式図である。
【図2】図1に示す記録媒体基板の積層構成を表す。
【図3】多孔質酸化物層が粒子を含有する場合の拡大断面図である。
【図4】図1に示す記録媒体基板の製造方法における一部の工程を表す。
【図5】本発明に係る記録媒体基板を用いて作製された磁気記録媒体の積層構成を表す。
【図6】本発明に係る記録媒体基板を用いて作製された光磁気記録媒体の積層構成を表す。
【図7】実施例1〜16および比較例1,2について、構造、並びに、密着性評価および電気抵抗測定の結果を掲げる。
【図8】従来の磁気記録媒体における積層構成の一例を表す。
【図9】従来の光磁気記録媒体における積層構成の一例を表す。
【符号の説明】
X1 記録媒体基板
X2 磁気記録媒体
X3 光磁気記録媒体
S1 コア基板
10 軟磁性部
11 軟磁性層
11a 軟磁性材料
11b 粒子
12 インターカレート層
20 多孔質酸化物層
Claims (5)
- 基材、軟磁性めっき層、並びに、当該基材および軟磁性めっき層の間の多孔質酸化物層よりなる積層構造を有することを特徴とする、記録媒体基板。
- 基材と、
複数の軟磁性めっき層、および、軟磁性めっき層間に介在し且つ前記軟磁性めっき層よりも高電気抵抗率の部位を含むインターカレート層、からなる積層構造を有する軟磁性部と、
前記基材および前記軟磁性部の間の多孔質酸化物層と、からなる積層構造を有することを特徴とする、記録媒体基板。 - 前記軟磁性めっき層は、当該軟磁性めっき層を構成する軟磁性材料よりも高電気抵抗率の粒子を含む、請求項1または2に記載の記録媒体基板。
- 基材に対して多孔質酸化物層を形成するための多孔質酸化物層形成工程と、
前記多孔質酸化物層の上に軟磁性めっき層を形成するための軟磁性めっき層形成工程と、を含むことを特徴とする、記録媒体基板の製造方法。 - 前記多孔質酸化物層形成工程は、易溶性金属ターゲットおよび酸化物ターゲットを用いて行うコスパッタリング法により、或は、易溶性金属および酸化物を含むターゲットを用いて行うスパッタリング法により、易溶性金属分散酸化物膜を形成するための工程と、当該易溶性金属分散酸化物膜における少なくとも表面に存在する易溶性金属を溶出除去するための工程と、を含む、請求項4に記載の記録媒体基板の製造方法。
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