JP2004252311A - 光半導体素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】十分な変調を行うことできると共に、素子長を短くすることができる光半導体素子を提供する。
【解決手段】光導波路との間で光導波路4を挟む位置に、複数個の支持部50が光導波路と平行に、かつ断続的に形成され、隣り合う支持部50に挟まれた空隙部9が形成されている。そして、支持部50上及び空隙部9上に光導波路と平行に延びる信号電極が形成されている。このような構成とすることにより、信号電極8と接地電極との間の電極間容量が、空隙部9がない場合と比較すると低減され、変調部の装荷による装荷容量を大きくとっても、特性インピーダンスの整合をとることができる。この結果、素子長を短くすることが可能となる。
【選択図】 図6
【解決手段】光導波路との間で光導波路4を挟む位置に、複数個の支持部50が光導波路と平行に、かつ断続的に形成され、隣り合う支持部50に挟まれた空隙部9が形成されている。そして、支持部50上及び空隙部9上に光導波路と平行に延びる信号電極が形成されている。このような構成とすることにより、信号電極8と接地電極との間の電極間容量が、空隙部9がない場合と比較すると低減され、変調部の装荷による装荷容量を大きくとっても、特性インピーダンスの整合をとることができる。この結果、素子長を短くすることが可能となる。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、長距離の大容量光通信等に利用され、電気信号を用いて光信号を制御する光変調器に好適な光半導体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
長距離の大容量光通信で用いる光変調器には、広帯域、低電圧動作及び小型であることが求められる。広帯域化には、素子の寄生容量やリードのインダクタンス等による帯域制限の影響を受けない進行波型の電極構成を採用することが有効である。進行波型の電極構成では、線路の特性インピーダンスの他の回路(通常50Ω)との整合、及び素子内を伝搬する光の速度と電気信号の速度とを整合させることが重要である。
【0003】
このような進行波型の電極構成を採用した半導体マッハツェンダ型変調器は、例えば「IEEE Journal of Quantum Electronics, vol. 27, p. 645, 1991」(非特許文献1)に記載されている。図25は、上記文献に記載された従来の半導体マッハツェンダ型変調器の構造を示す模式図である。
【0004】
この従来の半導体マッハツェンダ型変調器は、進行波型電極101及び集中定数型電極102を組み合わせたような構造を備えている。そして、2個の光導波路103及び104と進行波型電極101とが互いに分離して配置されている。具体的には、進行波型電極101が、位相変調器として機能する部分(位相変調部)105から独立して配置されている。位相変調部105には、光導波路103及び104上に断続的かつ周期的に配置された電極102が設けられ、進行波型電極101に接続された櫛歯状の配線を介して進行波型電極101に接続されている。位相変調部105に設けられた電極102は、夫々集中定数型電極として機能するが、その大きさが十分小さいため、この従来の半導体マッハツェンダ型変調器は、十分に高い周波数帯域まで制限を受けずに動作することが可能である。
【0005】
また、この従来の半導体マッハツェンダ型変調器では、各集中定数型電極202は、外部の進行波型電極201からすると、分布定数型の容量及びインダクタンスに見える。このため、これらを含めた進行波型電極として設計することで、特性インピーダンスを50Ωに整合させ、光の速度と電気信号が伝搬する速度を整合させることも可能である。そして、導波路の下部には導電層があり、この導電層を介して2本の導波路が等質な容量として作用し、電圧を印加した際に2本の導波路に対し電界が互いに逆方向に生じ、素子がプッシュプル駆動される。
【0006】
また、米国特許第2,266,257号明細書(特許文献1)には、半導体吸収型変調器が記載されている。図26は、米国特許第2,266,257号に記載された従来の半導体吸収型変調器の構造を示す模式図である。
【0007】
この従来の半導体吸収型変調器も、進行波型電極201及び集中定数型電極202を組み合わせたような構造を備えている。そして、2個の光導波路203及び204と進行波型電極201とが互いに分離して配置されている。具体的には、進行波型電極201が吸収変調器として機能する部分(吸収型変調部)205から独立して配置されている。吸収型変調部205には、光導波路203及び204の側面に断続的かつ周期的に配置された電極202が設けられ、進行波型電極201に接続された櫛歯状の配線を介して進行波型電極201に接続されている。吸収型変調部205に設けられた電極202は、夫々集中定数型電極として機能するが、その大きさが十分小さいため、この従来の半導体吸収型変調器も、十分に高い周波数帯域まで制限を受けずに動作することが可能である。
【0008】
また、この従来の半導体吸収型変調器では、各集中定数型電極202は、外部の進行波型電極201からすると、分布定数型の容量及びインダクタンスに見える。このため、これらを含めた進行波型電極として設計することで、特性インピーダンスを50Ωに整合させ、光の速度と電気信号が伝搬する速度を整合させることも可能である。
【0009】
図27は、進行波型電極の等価回路図である。容量が装荷された進行波型電極での特性インピーダンス及び屈折率は、以下の数式1及び2で表すことができる(IEEE Journal of Quantum Electronics, vol. 27, p. 645, 1991)。
【0010】
【数1】
【0011】
【数2】
【0012】
ここで、cは真空中の光速であり、L及びCは夫々進行波型電極の等価回路におけるインダクタンス、容量である。
【0013】
進行波型電極のみから構成された構造においては、図27(a)に示すように、等式「L=LC」及び「C=CC」が成り立つ。一方、変調部を構成する容量が周期的に装荷された構造においては、図27(b)に示すように、等式「L=LC」及び「C=CC+CL」が成り立つ。ここで、LC及びCCは夫々進行波型電極の単位長さ当たりのインダクタンス、容量であり、CLは、周期的に装荷された容量(装荷容量)の一周期分の大きさを、一周期の長さで割ったものである。そして、光と電気信号との伝搬速度を整合するようにする場合、容量Cの値は、下記数式3のように、数式1及び2によって一意に決められる。
【0014】
【数3】
【0015】
ここで、n0は光導波路中の光の屈折率であり、正味の特性インピーダンスを50Ωに整合させる場合、特性インピーダンスZ0は50Ωである。このとき、装荷容量CLは、例えば変調部(位相変調部又は吸収型変調部)の長さの進行波型電極全体に対する割合によって決まり、この割合が増えると、装荷容量CLが大きくなる。また、変調部の進行波型電極に対する割合が大きいほど、素子長に対して効率的に変調を行うことができる。このように、長さに対して効率的な変調を行うことができる素子構造では、装荷容量CLは大きくなる。
【0016】
【特許文献1】
米国特許第2,266,257号明細書
【非特許文献1】
アイ・イー・イー・イー ジャーナル オブ クウォンタム エレクトロニクス(IEEE Journal of Quantum Electronics)、1991年、vol.27、p.645
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の構造において、正味の特性インピーダンスを50Ωに整合させると共に、光と電気信号との伝搬速度の整合をとると、電極幅及び電極厚さ等のパラメータを最適化しても、電極間容量CCの低減には限界がある。その一方で、前述のように、容量Cの値は一意的に決定される。このため、装荷容量CLの増加が制限され、長さに対し効率的な変調を行うことができないため、素子長を長くする必要がある。
【0018】
また、電極間隔を広くすることにより、電極間容量CCを小さくすることは可能であるが、この場合には、櫛歯状の配線が長くなり、この部分のインダクタンスが大きくなる。この結果、このインダクタンスの増加に伴って、装荷容量CLの増加が妨げられてしまう。このため、電極間隔を広げても、変調部の進行波型電極に対する割合が制限され、十分な変調を行うためには、素子長を長くする必要がある。例えば、図25に示す従来の光変調器では、進行波型電極部の長さは10mmである。
【0019】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、十分な変調を行うことできると共に、素子長を短くすることができる光半導体素子を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0021】
本発明に係る第1の光半導体素子は、半導体基板と、前記半導体基板の上方に形成された第1及び第2の光導波路と、前記第1及び第2の光導波路に接続された導電層とを有する。そして、複数個の第1の電極が、前記第1の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記第1の光導波路を挟む位置で前記第1の光導波路に接続されており、複数個の第2の電極が、前記第2の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記第2の光導波路を挟む位置で前記第2の光導波路に接続されている。また、信号電極が、前記複数個の第1の電極に接続され、前記半導体基板の上方に前記半導体基板から離間して設けられており、接地電極が前記複数個の第2の電極に接続されている。更に、前記半導体基板と前記信号電極との間に存在する物質の少なくとも一部分、例えば気体又は誘電体の誘電率は、前記半導体基板の誘電率よりも低い。
【0022】
本発明に係る第2の光半導体素子は、半導体基板と、前記半導体基板の上方に形成された光導波路と、前記光導波路に接続された導電層とを有する。そして、複数個の第1の電極が、前記第1の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記光導波路を挟む位置で前記光導波路に接続されており、第2の電極が前記導電層に接続されている。また、信号電極が、前記複数個の第1の電極に接続され、前記半導体基板の上方に前記半導体基板から離間して設けられており、接地電極が前記第2の電極に接続されている。更に、前記半導体基板と前記信号電極との間に存在する物質の少なくとも一部分、例えば気体又は誘電体の誘電率は、前記半導体基板の誘電率よりも低い。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
(本発明の基本的原理)
先ず、本発明の基本的原理について説明する。前述のように、特性インピーダンス、及び光信号と電気信号との伝搬速度の整合をとったときに、装荷容量CLを大きくするためには、数式3において、CCを小さくすれば良い。しかし、このときに、櫛歯状の配線が長くなると、前述のように、装荷容量CLの増加が制限されてしまうため、この配線が長くならないようにする必要がある。
【0025】
そこで、本発明においては、信号電極の下方の一部分に空隙部を設け、この空隙部をそのままとするか、又は誘電率が低い材料を空隙部内に埋め込む。この結果、図1に示すように、空隙部が設けられた部分は、その他の部分とは異なる等価回路を持つようになり、電極間容量CC’が空隙部が設けられていない場合の電極間容量CCよりも小さくなる。進行波型電極の単位長さ当たりの平均容量は、空間のない部分とある部分の容量CC及びCC’の長さに対する重み付け平均となる。従って、その平均した容量CC’’も従来の構造におけるCCよりも低くなる。この結果、数式3から判るように、本発明によれば、従来の構造に比べて装荷容量CLを大きくすることができる。また、このときの電極間隔は変化しないため、櫛歯状の配線によるインダクタンスの増加は生じない。
【0026】
このように、信号電極の下方の一部分に空隙部を設けることで、進行波型電極における変調部の割合を増加させ、十分な変調を行いながら素子長を短縮することができるのである。
【0027】
(第1の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す上面図である。図3は、図2中の一部を拡大して示す上面図である。図4乃至図7は、夫々図3中のI−I線、II−II線、III−III線、IV−IV線に沿った断面を示す断面図である。
【0028】
第1の実施形態においては、図3乃至図7に示すように、半導体基板1上に導電層(高導電率層)2が形成され、その上に、2個の光導波路3及び4が形成されている。光導波路3(第2の光導波路)では、導電層2上に下層クラッド層3n(第2の導電性半導体層)及びコア層3i(真性半導体層)が順次形成され、その上に、上部クラッド層3p(第1の導電性半導体層)及び半絶縁性InP層30(半絶縁性半導体層)が形成されている。また、上部クラッド層3p上に電極コンタクト層(図示せず)が形成されている。光導波路4(第1の光導波路)では、導電層2上に下部クラッド層4n(第2の導電性半導体層)及びコア層4i(真性半導体層)が順次形成され、その上に、上部クラッド層4p(第1の導電性半導体層)及び半絶縁性InP層30(半絶縁性半導体層)が形成されている。また、上部クラッド層4p上に電極コンタクト層(図示せず)が形成されている。
【0029】
半導体基板1は、例えば半絶縁性のInP基板であり、導電層2は、例えば1×1018cm−3以上にn型不純物が導入されたn型InP層である。また、その厚さは、例えば1μm以上である。下部クラッド層3n及び4nは、例えばn型InP層であり、上部クラッド層3p及び4pは、例えばp型クラッド層である。また、コア層3i及び4iは、例えば厚さが10nm程度のGaInAsP層(図示せず)及び厚さが10nm程度のInP層(図示せず)が交互に積層された半導体量子井戸構造を備えている。GaInAsP層及びInP層の数は、例えばいずれも5〜20である。また、電極コンタクト層は、例えばp型GaInAs層である。
【0030】
光導波路3及び4は、互いに実質的に平行に等間隔で延びている。そして、図7に示すように、上部クラッド層3p及び半絶縁性InP層30は、光導波路3が延びる方向において、互いに交互に断続的に一定の周期で配置され、上部クラッド層4p及び半絶縁性InP層30は、光導波路4が延びる方向において、互いに交互に断続的に一定の周期で配置されている。なお、上部クラッド層3p及び4pは、互いに対向するようにして配置されており、これらの配置の周期は等しい。この周期は、例えば50μm以上1mm以下程度であり、上部クラッド層3pと上部クラッド層4pの長さは、例えば30μm以上500μm以下程度である。
【0031】
そして、半導体基板1、導電層2並びに光導波路3及び4は、電極コンタクト層の上面を除いて、誘電体保護膜40により覆われている。誘電体保護膜40は、例えば厚さが0.5μm程度のSiO2膜である。
【0032】
誘電体保護膜40上には、図2に示すように、光導波路4との間で光導波路3を挟む位置に、光導波路3及び4と実質的に平行に延びる接地電極7が形成されている。一方、光導波路3との間で光導波路4を挟む位置には、図6に示すように、複数個の支持部50が光導波路3及び4と平行に、かつ断続的に形成され、隣り合う支持部50に挟まれた空隙部9が形成されている。支持部50は、例えば、光導波路3及び4が延びる方向において、半絶縁性InP層30と整合する位置に配置されており、従って、空隙部9は上部クラッド層3p及び4p並びに後述の電極5及び6と整合する位置に存在する。そして、支持部50上及び空隙部9上に光導波路3及び4と実質的に平行に延びる信号電極8が形成されている。接地電極7、支持部50及び信号電極8は、例えば厚さが3μm以上のAuメッキ膜からなる。
【0033】
更に、上部クラッド層3p上の電極コンタクト層上に電極5(第2の電極)が形成され、上部クラッド層4p上の電極コンタクト層上に電極6(第1の電極)が形成されている。従って、電極5及び6は、互いに対向するようにして配置されており、これらの配置の周期は、例えば50μm以上1mm以下程度であり、電極5及び6の長さは、例えば30μm以上500μm以下程度である。また、電極5毎に、電極5と接地電極7とを接続する配線10が設けられ、電極6毎に、電極6と信号電極8とを接続する配線11が設けられている。電極5及び6並びに配線10及び11は、例えば厚さが3μm以上のAuメッキ膜からなる。また、配線10及び11の幅は、5μm以上であり、最大でも電極5及び6の長さである。
【0034】
また、半導体基板1上には、光導波路3及び4の一端に連結された分波器12及び他端に連結された合波器13が設けられている。分波器12の入力側及び合波器13の出力側には、夫々入力導波路18a、出力導波路18bが設けられている。
【0035】
接地電極7及び信号電極8の一端は、高周波信号源14に接続され、接地電極7及び信号電極8の他端には、終端抵抗15が接続されている。また、導電層2は、インダクタを介して直流電圧用電源17からバイアス電圧を印加される。
【0036】
このように構成された第1の実施形態では、高周波信号源14により高周波信号が生成され、この高周波信号が信号電極8及び接地電極7によって構成される非対称コプレーナストリップ型マイクロ波導波路に入力される。また、その一方で、入力導波路18aに連続レーザ光(CW Light)16が入力される。そして、入力された連続レーザ光16は、分波器12によって分波された後、光導波路3及び4を進行する。この進行中、光導波路3及び4のうち、互いに対向する電極5及び6との間に位置する部分(位相変調部)で光信号の位相変調が行われる。即ち、位相変調部において、光信号の位相が変化させられる。その後、これらの光信号は、合波器13によって合波され、それらの位相変化に応じた強度変化を持った光(Modulated Light)に変換されて出力導波路18bから出力される。
【0037】
なお、空隙部9の中は、外部と同じ気体の雰囲気とされるか、又は真空とされ、信号電極8と半導体基板1との間に存在する物質(本実施形態では、気体)の誘電率は半導体基板1の誘電率よりも低い。
【0038】
ここで、第1の実施形態における容量について説明する。図8は、空隙部9の割合と電極間容量及び位相変調部の長さの割合の最大許容範囲との関係を示すグラフである。なお、図8中の●は電極間容量を示し、○は位相変調部の長さの割合の最大許容範囲を示す。ここで、「位相変調部の長さの割合」とは、光導波路3及び4について、互いに隣り合う1組の電極5及び6が設けられた部分と設けられていない部分との長さの合計に対する、電極5及び6が設けられた部分の割合をいう。第1の実施形態では、上部クラッド層3p及び4pが設けられた部分(上部クラッド層3p及び4pの上に、電極5及び6が設けられている。)と半絶縁性InP層30が設けられた部分(半絶縁性InP層30上には、電極5及び6は設けられていない)との長さの合計に対する、上部クラッド層3p及び4pが設けられた部分の長さの割合である。そして、この割合の許容値とは、特性インピーダンスを50Ωに整合させ、更に光と電気信号の伝搬速度を整合させたときに、上記の割合をどれだけ大きくすることができるかを示す値である。また、電極間容量は、接地電極7と信号電極8との間の容量である。
【0039】
図8に示すように、空隙部9の割合を0(従来の技術に相当)から大きくするに連れて、電極間容量は小さくなる。このため、特性インピーダンスを50Ωに整合させて、全体の容量Cが制限されている場合であっても、数式3によれば、装荷容量CLを大きくすることが可能となる。この結果、例えば、空隙部9の割合を0.6にした場合には、位相変調部の長さの割合を、空隙部9の割合が0のときよりも約1.3倍まで大きくすることができ、空隙部9の割合を1にした場合には、約1.5倍まで大きくすることができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、電極間容量が低減されるため、その分だけ装荷容量CLを大きくすることが可能である。従って、素子長を短くして小型化することができる。また、装荷容量を大きくしても、特性インピーダンス及び光と電気信号との伝搬速度の整合が確保できるため、広帯域の変調が可能である。更に、光導波路3及び4の構造としてpin構造を採用し、コア層に量子井戸構造を採用しているため、低電圧動作が可能である。
【0041】
なお、分波器12及び合波器13は、半導体基板1の外部に設けられていてもよいが、素子の小型化及び光の過剰損失の防止という観点からは、本実施形態のように、半導体基板1上に設けられていることが好ましい。
【0042】
支持部50及び信号電極8は、例えば次のような方法により形成することができる。先ず、誘電体保護膜40上に、支持部用レジスト膜を形成し、この支持部用レジスト膜の支持部50を形成する予定の領域に開口部を形成する。次に、開口部内にAuメッキ膜を形成する。次いで、全面に信号電極用レジスト膜を形成し、この信号電極用レジスト膜の信号電極8を形成する予定の領域に開口部を形成する。続いて、開口部内にAuメッキ膜を形成する。そして、信号電極用レジスト膜及び支持部用レジスト膜をアッシングにより除去する。このようにして、支持部50及び信号電極8を形成することができるが、これらを形成する方法は、これに限定されるものではない。また、支持部50及び信号電極8は、適宜、接地電極7等と同時に形成してもよい。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図9は、本発明の第2の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す断面図である。図9は、第1の実施形態を示す図4に相当する。
【0044】
本実施形態においては、導電層2上に、光導波路3及び4の側面を覆う半絶縁性InP層(半絶縁性半導体層)60が形成されている。
【0045】
このような第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られると共に、半絶縁性InP層60によって光導波路3及び4が保護されるため、より高い光のモード安定性、素子の信頼性及び歩留りが得られる。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図10乃至図12は、本発明の第3の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す断面図であって、夫々第1の実施形態を示す図4乃至図6に相当する。
【0047】
本実施形態においては、支持部50が設けられておらず、半導体基板1の第1の実施形態において支持部50が設けられていた部分に挟まれた部分に溝19が形成され、この内部に空隙部9が形成されている。また、信号電極8は、半導体基板1の第1の実施形態において支持部50が設けられていた部分(溝19が形成されていない部分)及び空隙部9上に形成されている。
【0048】
このように構成された第3の実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図13乃至図15は、本発明の第4の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す断面図であって、夫々第1の実施形態を示す図4乃至図6に相当する。
【0050】
本実施形態は、第1の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせて構成されている。より具体的には、第1の実施形態と同様に、支持部50が設けられると共に、第3の実施形態と同様に、溝19が形成され、第1及び第3の実施形態よりも大きい空隙部9が形成されている。信号電極8は、第1の実施形態と同様に、支持部50上及び空隙部9上に形成されている。
【0051】
このように構成された第4の実施形態によれば、より大きな空隙部9が設けられているため、接地電極7と信号電極8との間の容量がより低減される。このため、位相変調部の割合をより一層高いものとすることができ、素子長をより短縮することが可能である。
【0052】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図16は、本発明の第5の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す上面図である。図16は、第1の実施形態を示す図3に相当する。
【0053】
本実施形態においては、配線10及び11の幅が電極5及び6の長さと等しい。
【0054】
このように構成された第5の実施形態によれば、配線10及び11のインダクタンスが、第1の実施形態よりも小さくなる。このため、特性インピーダンスを整合させるために容量Cが一意的に決まっている場合でも、装荷容量CLをより大きなものとすることが可能である。このため、位相変調部の割合をより一層高くすることができる。従って、素子長を短くすることができる。
【0055】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。図17は、本発明の第6の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す断面図である。図17は、第1の実施形態を示す図4に相当する。
【0056】
本実施形態においては、第1の実施形態における接地電極7の代わりに接地電極7aが設けられている。接地電極7aの長手方向に垂直な断面形状は、図17に示すように、光導波路3及び4側の面に段差が設けられたものとなっており、上部が下部よりも光導波路3に近接している。そして、下部よりも突き出した上部に配線10が接続されている。
【0057】
このように構成された第6の実施形態によれば、配線10の長さを第1の実施形態のそれと等しくしたまま、接地電極7aと信号電極8との間の電極間容量をより低減することが可能であり、素子長をより短縮することができる。
【0058】
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。図18は、本発明の第7の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す断面図である。図18は、第1の実施形態を示す図4に相当する。
【0059】
本実施形態においては、支持部50の代わりに、支持部50よりも幅が狭い支持部50aが設けられている。
【0060】
このような第7の実施形態によれば、接地電極7aと信号電極8との間の電極間容量をより低減することが可能であり、素子長をより短縮することができる。
【0061】
(第8の実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。図19は、本発明の第8の実施形態に係る光半導体素子(吸収型光変調器)の構造を示す上面図である。図20は、図19中の一部を拡大して示す上面図である。図21乃至図24は、夫々図20中のI−I線、II−II線、III−III線、IV−IV線に沿った断面を示す断面図である。
【0062】
本実施形態においては、第1の実施形態とは異なり、導電層2上に光導波路4は形成されているが、光導波路3は形成されていない。電極5は導電層2に接続されている。また、分波器12、合波器13、入力導波路18a及び出力導波路18bも設けられておらず、光導波路4が半導体基板1の両端まで延びている。なお、光導波路4を構成するコア層4iは、第1の実施形態等と同様に、例えば半導体量子井戸構造を構成する材料から形成され、その光の吸収係数は、電界が印加されると変化する。
【0063】
このように構成された第8の実施形態では、高周波信号源14により高周波信号が生成され、この高周波信号が信号電極8及び接地電極7によって構成される非対称コプレーナストリップ型マイクロ波導波路に入力される。また、その一方で、光導波路4に連続レーザ光(CW Light)16が入力される。そして、入力された連続レーザ光16は光導波路4を進行する。この進行中、光導波路4のうち、互いに対向する電極5及び6との間に位置する部分(吸収型変調部)で光信号の変調が行われ、強度変化を持った光(Modulated Light)に変換されて出力される。
【0064】
このように構成された第8の実施形態によっても、変調器の型は異なるが、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
なお、本実施形態において、断続的に配置されている電極5及び配線10を設けずに、連続的な接地電極7がそのまま導電層2に接続された構成としてもよい。但し、この場合には、電気信号の損失が増大し、変調器の動作帯域が制限される。
【0066】
また、本実施形態では吸収型光変調器としているが、電界を印加すると屈折率が変化する材料を光導波路のコア層4iに用いれば、同様の構造で光位相変調器として用いることもできる。この場合も、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
更に、第8の実施形態のような吸収型光変調器に対して、第2乃至第7の実施形態を適用してもよい。
【0068】
なお、各実施形態では、電極5及び6が光の伝搬方向(光導波路3及び4が延びる方向)において、周期的に配置されているが、必ずしも周期的に配置されていなくても、本発明の目的は達成することができる。但し、この場合には、電気信号の過剰損失及び反射等が生じることがある。
【0069】
また、支持部50又は50aが配置されている位置や溝19が形成された実施形態において溝19間の壁が配置されている位置、即ち信号電極8を支持する部材又は部位が存在する位置は、光導波路3及び4が延びる方向において、電極5及び6が存在しない位置に限定されるものではなく、電極5及び6が存在する位置であっても本発明の効果が得られる。
【0070】
また、支持部50等の信号電極8を支持する部材又は部位は、電極5及び6と同じ周期で配置されている必要はなく、例えば、より長い周期で配置されていてもよく、非周期的に配置されていてもよい。また、信号電極8の両端部さえ支持されていれば、その間に信号電極8を支持する部材又は部位が設けられていなくても、本発明の効果は得られる。但し、電気信号の安定した伝搬の観点及び機械的強度の観点から、一定の周期で配置されていることが望ましい。
【0071】
また、支持部50及び50aの材料は、信号電極8と同じ金属材料(Auメッキ膜)に限定されず、例えば誘電体であっても、本発明の効果が得られる。
【0072】
また、空隙部9内に、半導体よりも誘電率の小さい誘電体が充填されていてもよい。但し、この場合には、雰囲気ガスが存在している場合や、真空とされている場合よりも、空隙部9内の誘電率が高くなるため、電極間容量が低減する効果は小さくなるが、機械的な強度が高くなる。
【0073】
また、誘電体保護膜40は必ずしも形成されている必要はないが、高い信頼性を確保し、電気信号の過剰損失を防止するためには、形成されていることが好ましい。
【0074】
また、光導波路の構造は、光導波路3及び4のようなpin構造には限定されず、例えばi型半導体のみで形成されていてもよい。但し、光導波路のコア部に効率的に電界を印加して、駆動電圧を低く抑えるためには、pin構造となっていることが好ましい。
【0075】
また、光導波路3及び4の構造は、上から順にp型、i型、n型となっているものに限定されず、上から順にn型、i型、p型となっていてもよい。但し、n型半導体よりも伝導率の小さいp型半導体の体積の増加を抑制することにより、電気信号の損失の増加を防止し、変調速度の制限を受けないようにするためには、上から順にp型、i型、n型となっている構造が好ましい。
【0076】
また、導電層2の材料はn型半導体に限定されるものではなく、例えば金属層が導電層2の一部又は全部として形成されていてもよい。但し、金属層と半導体層との接合よりも半導体層同士の接合の方が安定した特性が得られるため、導電層2は不純物が導入された半導体層からなることが好ましい。また、導電層2が光導波路3及び4の上に形成され、電極5及び6が光導波路3及び4の下に形成されていてもよい。但し、煩雑な製造工程を避けるためには、導電層2は光導波路3及び4の下に形成されていることが好ましい。
【0077】
また、半絶縁性InP層30の代わりに、i型半導体層、SiO2層等の絶縁体層や上部クラッド層3p又は4pが設けられていてもよい。但し、i型半導体層が設けられた場合には、各実施形態と比較して電気信号の損失が増加して動作速度が制限され、また、絶縁体層が設けられた場合には、光導波路を伝搬する光の散乱がこの部分で生じて、各実施形態と比較して光の損失や反射が増加する。また、上部クラッド層3p又は4pが設けられた場合には、電気信号の伝搬損失が増加して、各実施形態と比較して変調速度が制限される。更に、半絶縁性InP層30が形成されずに、コア層3i及び4i上に誘電体保護膜40のみが形成されていてもよいが、この場合にも、この部分で光が散乱し、光の損失や反射が増加する。従って、半絶縁性InP層30が設けられていることが最も好ましい。
【0078】
また、半導体基板1はInP基板に限定されず、例えばGaAs基板を用いてもよい。また、光導波路のコア層の構造は、GaInAsP量子井戸構造に限定されず、例えばGaInAs量子井戸構造やAlGaInAs量子井戸構造であってもよく、また、上記材料よりなるバルク半導体層でもよい。また、クラッド層として、例えばAlGaAs層又はAlInAs層が設けられていてもよい。これらのいずれの場合でも、本発明の効果が得られる。
【0079】
また、配線10及び11と半導体基板1との間に、樹脂によって形成された台が設けられ、配線10及び11がその上に形成されていてもよい。但し、電気信号の損失を防止して、動作速度の制限を受けないようにするためには、この部分は中空としておくことが好ましい。
【0080】
そして、本発明が適用される光半導体素子は、半導体マッハツェンダ型変調器及び吸収型変調器に限定されるものではなく、本発明の素子を、例えば各実施形態と同様の構成を備えた高速の光スイッチやDEMUX(DEMULTIPLEXER)に適用することも可能である。
【0081】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0082】
(付記1) 半導体基板と、
前記半導体基板の上方に形成された第1及び第2の光導波路と、
前記第1及び第2の光導波路に接続された導電層と、
前記第1の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記第1の光導波路を挟む位置で前記第1の光導波路に接続された複数個の第1の電極と、
前記第2の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記第2の光導波路を挟む位置で前記第2の光導波路に接続された複数個の第2の電極と、
前記複数個の第1の電極に接続され、前記半導体基板の上方に前記半導体基板から離間して設けられた信号電極と、
前記複数個の第2の電極に接続された接地電極と、
を有し、
前記半導体基板と前記信号電極との間に存在する物質の少なくとも一部分の誘電率は、前記半導体基板の誘電率よりも低いことを特徴とする光半導体素子。
【0083】
(付記2) 前記第1の光導波路と前記第2の光導波路は、互いに実質的に平行に延びていることを特徴とする付記1に記載の光半導体素子。
【0084】
(付記3) 前記信号電極及び接地電極は、前記第1及び第2の光導波路と実質的に平行に延びていることを特徴とする付記2に記載の光半導体素子。
【0085】
(付記4) 前記半導体基板上に設けられ、入力された光を前記第1及び第2の光導波路に分波する分波器と、
前記半導体基板上に設けられ、前記第1及び第2の光導波路を伝搬した光を合波する合波器と、
を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0086】
(付記5) 前記接地電極の最も前記半導体基板側に位置している部位は、前記複数個の第2の電極が接続された部位よりも前記信号電極から離間していることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0087】
(付記6) 前記複数個の第1の電極は、夫々その前記第1の光導波路が延びる方向の長さを一定として前記信号電極に接続され、
前記複数個の第2の電極は、夫々その前記第2の光導波路が延びる方向の長さを一定として前記接地電極に接続されていることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0088】
(付記7) 半導体基板と、
前記半導体基板の上方に形成された光導波路と、
前記光導波路に接続された導電層と、
前記第1の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記光導波路を挟む位置で前記光導波路に接続された複数個の第1の電極と、
前記導電層に接続された第2の電極と、
前記複数個の第1の電極に接続され、前記半導体基板の上方に前記半導体基板から離間して設けられた信号電極と、
前記第2の電極に接続された接地電極と、
を有し、
前記半導体基板と前記信号電極との間に存在する物質の少なくとも一部分の誘電率は、前記半導体基板の誘電率よりも低いことを特徴とする光半導体素子。
【0089】
(付記8) 前記信号電極及び接地電極は、前記光導波路と実質的に平行に延びていることを特徴とする付記7に記載の光半導体素子。
【0090】
(付記9) 前記第2の電極は、複数個設けられ、前記光導波路が延びる方向に断続的に配置されていることを特徴とする付記7又は8に記載の光半導体素子。
【0091】
(付記10) 前記接地電極と前記第2の電極とが一体化されていることを特徴とする付記7又は8に記載の光半導体素子。
【0092】
(付記11) 前記光導波路は、前記第1及び第2の電極から電界が印加されると光の吸収係数が変化する材料から構成されていることを特徴とする付記7乃至10のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0093】
(付記12) 前記複数個の第1の電極は、夫々その前記第1の光導波路が延びる方向の長さを一定として前記信号電極に接続されていることを特徴とする付記7乃至11のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0094】
(付記13) 前記半導体基板と前記信号電極との間に空隙部が設けられていることを特徴とする付記1乃至12のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0095】
(付記14) 前記半導体基板と前記信号電極との間に設けられ、誘電率が前記半導体基板のそれよりも低い誘電体膜を有することを特徴とする付記1乃至12のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0096】
(付記15) 前記半導体基板と前記信号電極との間に断続的に設けられ、前記信号電極を支持する支持部材を有することを特徴とする付記1乃至14のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0097】
(付記16) 前記支持部材は、前記信号電極と同じ材料から構成されていることを特徴とする付記15に記載の光半導体素子。
【0098】
(付記17) 前記支持部材の幅は、前記信号電極の幅よりも狭いことを特徴とする付記15又は16に記載の光半導体素子。
【0099】
(付記18) 前記半導体基板の表面の前記信号電極と対向する部位に溝が形成されていることを特徴とする付記1乃至17のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0100】
(付記19) 前記光導波路は、第1の導電性半導体層、真性半導体層及び第2の導電性半導体層からなるpinダイオード構造を備えていることを特徴とする付記1乃至18のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0101】
(付記20) 前記第1の導電性半導体層は、前記第1及び第2の電極のいずれかに接する部位のみに設けられており、
前記光導波路は、隣り合う第1の導電性半導体層間に設けられた半絶縁性半導体層を有することを特徴とする付記19に記載の光半導体素子。
【0102】
(付記21) 前記光導波路のコア層は、半導体量子井戸構造を備えていることを特徴とする付記1乃至20のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0103】
(付記22) 前記光導波路の側面を覆う半絶縁性半導体層を有することを特徴とする付記1乃至21のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0104】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、特性インピーダンス及び光と電気との伝搬速度の整合をとった場合でも、接地電極と信号電極との間の容量を低く抑えることができるため、第1の電極と第2の電極との間の容量を高くすることができる。即ち、進行波電極として機能する接地電極及び信号電極全体の長さに対する、変調部を構成する第1及び第2の電極の割合を大きくすることができる。従って、素子長を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した場合の進行波型電極の等価回路図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す上面図である。
【図3】図2中の一部を拡大して示す上面図である。
【図4】図3中のI−I線に沿った断面を示す断面図である。
【図5】図3中のII−II線に沿った断面を示す断面図である。
【図6】図3中のIII−III線に沿った断面を示す断面図である。
【図7】図3中のIV−IV線に沿った断面を示す断面図である。
【図8】空隙部9の割合と電極間容量及び位相変調部の長さの割合の最大許容範囲との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図であって、図3中のI−I線に沿った断面に相当する断面を示す断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図であって、図3中のII−II線に沿った断面に相当する断面を示す断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図であって、図3中のIII−III線に沿った断面に相当する断面を示す断面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図であって、図3中のI−I線に沿った断面に相当する断面を示す断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図であって、図3中のII−II線に沿った断面に相当する断面を示す断面図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図であって、図3中のIII−III線に沿った断面に相当する断面を示す断面図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す上面図である。
【図17】本発明の第6の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図である。
【図18】本発明の第7の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図である。
【図19】本発明の第8の実施形態に係る吸収型光変調器の構造を示す上面図である。
【図20】図19中の一部を拡大して示す上面図である。
【図21】図20中のI−I線、II−II線、III−III線、IV−IV線に沿った断面を示す断面図である。
【図22】図20中のI−I線に沿った断面を示す断面図である。
【図23】図20中のII−II線に沿った断面を示す断面図である。
【図24】図20中のIII−III線に沿った断面を示す断面図である。
【図25】非特許文献1に記載された従来の半導体マッハツェンダ型変調器の構造を示す模式図である。
【図26】特許文献1に記載された従来の半導体吸収型変調器の構造を示す模式図である。
【図27】進行波型電極の等価回路図である。
【符号の説明】
1:半導体基板
2:導電層
3、4:光導波路
3n、4n:下部クラッド層
3i、4i:コア層
3p、4p:上部クラッド層
5、6:電極
7、7a:接地電極
8:信号電極
9:空隙部
10、11:配線
12:分波器
13:合波器
14:高周波信号源
15:終端抵抗
16:連続レーザ光
17:直流電圧用電源
18a:入力導波路
18b:出力導波路
30:半絶縁性InP層
40:誘電体保護膜
50、50a:支持部
60:半絶縁性InP層
【発明の属する技術分野】
本発明は、長距離の大容量光通信等に利用され、電気信号を用いて光信号を制御する光変調器に好適な光半導体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
長距離の大容量光通信で用いる光変調器には、広帯域、低電圧動作及び小型であることが求められる。広帯域化には、素子の寄生容量やリードのインダクタンス等による帯域制限の影響を受けない進行波型の電極構成を採用することが有効である。進行波型の電極構成では、線路の特性インピーダンスの他の回路(通常50Ω)との整合、及び素子内を伝搬する光の速度と電気信号の速度とを整合させることが重要である。
【0003】
このような進行波型の電極構成を採用した半導体マッハツェンダ型変調器は、例えば「IEEE Journal of Quantum Electronics, vol. 27, p. 645, 1991」(非特許文献1)に記載されている。図25は、上記文献に記載された従来の半導体マッハツェンダ型変調器の構造を示す模式図である。
【0004】
この従来の半導体マッハツェンダ型変調器は、進行波型電極101及び集中定数型電極102を組み合わせたような構造を備えている。そして、2個の光導波路103及び104と進行波型電極101とが互いに分離して配置されている。具体的には、進行波型電極101が、位相変調器として機能する部分(位相変調部)105から独立して配置されている。位相変調部105には、光導波路103及び104上に断続的かつ周期的に配置された電極102が設けられ、進行波型電極101に接続された櫛歯状の配線を介して進行波型電極101に接続されている。位相変調部105に設けられた電極102は、夫々集中定数型電極として機能するが、その大きさが十分小さいため、この従来の半導体マッハツェンダ型変調器は、十分に高い周波数帯域まで制限を受けずに動作することが可能である。
【0005】
また、この従来の半導体マッハツェンダ型変調器では、各集中定数型電極202は、外部の進行波型電極201からすると、分布定数型の容量及びインダクタンスに見える。このため、これらを含めた進行波型電極として設計することで、特性インピーダンスを50Ωに整合させ、光の速度と電気信号が伝搬する速度を整合させることも可能である。そして、導波路の下部には導電層があり、この導電層を介して2本の導波路が等質な容量として作用し、電圧を印加した際に2本の導波路に対し電界が互いに逆方向に生じ、素子がプッシュプル駆動される。
【0006】
また、米国特許第2,266,257号明細書(特許文献1)には、半導体吸収型変調器が記載されている。図26は、米国特許第2,266,257号に記載された従来の半導体吸収型変調器の構造を示す模式図である。
【0007】
この従来の半導体吸収型変調器も、進行波型電極201及び集中定数型電極202を組み合わせたような構造を備えている。そして、2個の光導波路203及び204と進行波型電極201とが互いに分離して配置されている。具体的には、進行波型電極201が吸収変調器として機能する部分(吸収型変調部)205から独立して配置されている。吸収型変調部205には、光導波路203及び204の側面に断続的かつ周期的に配置された電極202が設けられ、進行波型電極201に接続された櫛歯状の配線を介して進行波型電極201に接続されている。吸収型変調部205に設けられた電極202は、夫々集中定数型電極として機能するが、その大きさが十分小さいため、この従来の半導体吸収型変調器も、十分に高い周波数帯域まで制限を受けずに動作することが可能である。
【0008】
また、この従来の半導体吸収型変調器では、各集中定数型電極202は、外部の進行波型電極201からすると、分布定数型の容量及びインダクタンスに見える。このため、これらを含めた進行波型電極として設計することで、特性インピーダンスを50Ωに整合させ、光の速度と電気信号が伝搬する速度を整合させることも可能である。
【0009】
図27は、進行波型電極の等価回路図である。容量が装荷された進行波型電極での特性インピーダンス及び屈折率は、以下の数式1及び2で表すことができる(IEEE Journal of Quantum Electronics, vol. 27, p. 645, 1991)。
【0010】
【数1】
【0011】
【数2】
【0012】
ここで、cは真空中の光速であり、L及びCは夫々進行波型電極の等価回路におけるインダクタンス、容量である。
【0013】
進行波型電極のみから構成された構造においては、図27(a)に示すように、等式「L=LC」及び「C=CC」が成り立つ。一方、変調部を構成する容量が周期的に装荷された構造においては、図27(b)に示すように、等式「L=LC」及び「C=CC+CL」が成り立つ。ここで、LC及びCCは夫々進行波型電極の単位長さ当たりのインダクタンス、容量であり、CLは、周期的に装荷された容量(装荷容量)の一周期分の大きさを、一周期の長さで割ったものである。そして、光と電気信号との伝搬速度を整合するようにする場合、容量Cの値は、下記数式3のように、数式1及び2によって一意に決められる。
【0014】
【数3】
【0015】
ここで、n0は光導波路中の光の屈折率であり、正味の特性インピーダンスを50Ωに整合させる場合、特性インピーダンスZ0は50Ωである。このとき、装荷容量CLは、例えば変調部(位相変調部又は吸収型変調部)の長さの進行波型電極全体に対する割合によって決まり、この割合が増えると、装荷容量CLが大きくなる。また、変調部の進行波型電極に対する割合が大きいほど、素子長に対して効率的に変調を行うことができる。このように、長さに対して効率的な変調を行うことができる素子構造では、装荷容量CLは大きくなる。
【0016】
【特許文献1】
米国特許第2,266,257号明細書
【非特許文献1】
アイ・イー・イー・イー ジャーナル オブ クウォンタム エレクトロニクス(IEEE Journal of Quantum Electronics)、1991年、vol.27、p.645
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の構造において、正味の特性インピーダンスを50Ωに整合させると共に、光と電気信号との伝搬速度の整合をとると、電極幅及び電極厚さ等のパラメータを最適化しても、電極間容量CCの低減には限界がある。その一方で、前述のように、容量Cの値は一意的に決定される。このため、装荷容量CLの増加が制限され、長さに対し効率的な変調を行うことができないため、素子長を長くする必要がある。
【0018】
また、電極間隔を広くすることにより、電極間容量CCを小さくすることは可能であるが、この場合には、櫛歯状の配線が長くなり、この部分のインダクタンスが大きくなる。この結果、このインダクタンスの増加に伴って、装荷容量CLの増加が妨げられてしまう。このため、電極間隔を広げても、変調部の進行波型電極に対する割合が制限され、十分な変調を行うためには、素子長を長くする必要がある。例えば、図25に示す従来の光変調器では、進行波型電極部の長さは10mmである。
【0019】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、十分な変調を行うことできると共に、素子長を短くすることができる光半導体素子を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0021】
本発明に係る第1の光半導体素子は、半導体基板と、前記半導体基板の上方に形成された第1及び第2の光導波路と、前記第1及び第2の光導波路に接続された導電層とを有する。そして、複数個の第1の電極が、前記第1の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記第1の光導波路を挟む位置で前記第1の光導波路に接続されており、複数個の第2の電極が、前記第2の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記第2の光導波路を挟む位置で前記第2の光導波路に接続されている。また、信号電極が、前記複数個の第1の電極に接続され、前記半導体基板の上方に前記半導体基板から離間して設けられており、接地電極が前記複数個の第2の電極に接続されている。更に、前記半導体基板と前記信号電極との間に存在する物質の少なくとも一部分、例えば気体又は誘電体の誘電率は、前記半導体基板の誘電率よりも低い。
【0022】
本発明に係る第2の光半導体素子は、半導体基板と、前記半導体基板の上方に形成された光導波路と、前記光導波路に接続された導電層とを有する。そして、複数個の第1の電極が、前記第1の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記光導波路を挟む位置で前記光導波路に接続されており、第2の電極が前記導電層に接続されている。また、信号電極が、前記複数個の第1の電極に接続され、前記半導体基板の上方に前記半導体基板から離間して設けられており、接地電極が前記第2の電極に接続されている。更に、前記半導体基板と前記信号電極との間に存在する物質の少なくとも一部分、例えば気体又は誘電体の誘電率は、前記半導体基板の誘電率よりも低い。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
(本発明の基本的原理)
先ず、本発明の基本的原理について説明する。前述のように、特性インピーダンス、及び光信号と電気信号との伝搬速度の整合をとったときに、装荷容量CLを大きくするためには、数式3において、CCを小さくすれば良い。しかし、このときに、櫛歯状の配線が長くなると、前述のように、装荷容量CLの増加が制限されてしまうため、この配線が長くならないようにする必要がある。
【0025】
そこで、本発明においては、信号電極の下方の一部分に空隙部を設け、この空隙部をそのままとするか、又は誘電率が低い材料を空隙部内に埋め込む。この結果、図1に示すように、空隙部が設けられた部分は、その他の部分とは異なる等価回路を持つようになり、電極間容量CC’が空隙部が設けられていない場合の電極間容量CCよりも小さくなる。進行波型電極の単位長さ当たりの平均容量は、空間のない部分とある部分の容量CC及びCC’の長さに対する重み付け平均となる。従って、その平均した容量CC’’も従来の構造におけるCCよりも低くなる。この結果、数式3から判るように、本発明によれば、従来の構造に比べて装荷容量CLを大きくすることができる。また、このときの電極間隔は変化しないため、櫛歯状の配線によるインダクタンスの増加は生じない。
【0026】
このように、信号電極の下方の一部分に空隙部を設けることで、進行波型電極における変調部の割合を増加させ、十分な変調を行いながら素子長を短縮することができるのである。
【0027】
(第1の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す上面図である。図3は、図2中の一部を拡大して示す上面図である。図4乃至図7は、夫々図3中のI−I線、II−II線、III−III線、IV−IV線に沿った断面を示す断面図である。
【0028】
第1の実施形態においては、図3乃至図7に示すように、半導体基板1上に導電層(高導電率層)2が形成され、その上に、2個の光導波路3及び4が形成されている。光導波路3(第2の光導波路)では、導電層2上に下層クラッド層3n(第2の導電性半導体層)及びコア層3i(真性半導体層)が順次形成され、その上に、上部クラッド層3p(第1の導電性半導体層)及び半絶縁性InP層30(半絶縁性半導体層)が形成されている。また、上部クラッド層3p上に電極コンタクト層(図示せず)が形成されている。光導波路4(第1の光導波路)では、導電層2上に下部クラッド層4n(第2の導電性半導体層)及びコア層4i(真性半導体層)が順次形成され、その上に、上部クラッド層4p(第1の導電性半導体層)及び半絶縁性InP層30(半絶縁性半導体層)が形成されている。また、上部クラッド層4p上に電極コンタクト層(図示せず)が形成されている。
【0029】
半導体基板1は、例えば半絶縁性のInP基板であり、導電層2は、例えば1×1018cm−3以上にn型不純物が導入されたn型InP層である。また、その厚さは、例えば1μm以上である。下部クラッド層3n及び4nは、例えばn型InP層であり、上部クラッド層3p及び4pは、例えばp型クラッド層である。また、コア層3i及び4iは、例えば厚さが10nm程度のGaInAsP層(図示せず)及び厚さが10nm程度のInP層(図示せず)が交互に積層された半導体量子井戸構造を備えている。GaInAsP層及びInP層の数は、例えばいずれも5〜20である。また、電極コンタクト層は、例えばp型GaInAs層である。
【0030】
光導波路3及び4は、互いに実質的に平行に等間隔で延びている。そして、図7に示すように、上部クラッド層3p及び半絶縁性InP層30は、光導波路3が延びる方向において、互いに交互に断続的に一定の周期で配置され、上部クラッド層4p及び半絶縁性InP層30は、光導波路4が延びる方向において、互いに交互に断続的に一定の周期で配置されている。なお、上部クラッド層3p及び4pは、互いに対向するようにして配置されており、これらの配置の周期は等しい。この周期は、例えば50μm以上1mm以下程度であり、上部クラッド層3pと上部クラッド層4pの長さは、例えば30μm以上500μm以下程度である。
【0031】
そして、半導体基板1、導電層2並びに光導波路3及び4は、電極コンタクト層の上面を除いて、誘電体保護膜40により覆われている。誘電体保護膜40は、例えば厚さが0.5μm程度のSiO2膜である。
【0032】
誘電体保護膜40上には、図2に示すように、光導波路4との間で光導波路3を挟む位置に、光導波路3及び4と実質的に平行に延びる接地電極7が形成されている。一方、光導波路3との間で光導波路4を挟む位置には、図6に示すように、複数個の支持部50が光導波路3及び4と平行に、かつ断続的に形成され、隣り合う支持部50に挟まれた空隙部9が形成されている。支持部50は、例えば、光導波路3及び4が延びる方向において、半絶縁性InP層30と整合する位置に配置されており、従って、空隙部9は上部クラッド層3p及び4p並びに後述の電極5及び6と整合する位置に存在する。そして、支持部50上及び空隙部9上に光導波路3及び4と実質的に平行に延びる信号電極8が形成されている。接地電極7、支持部50及び信号電極8は、例えば厚さが3μm以上のAuメッキ膜からなる。
【0033】
更に、上部クラッド層3p上の電極コンタクト層上に電極5(第2の電極)が形成され、上部クラッド層4p上の電極コンタクト層上に電極6(第1の電極)が形成されている。従って、電極5及び6は、互いに対向するようにして配置されており、これらの配置の周期は、例えば50μm以上1mm以下程度であり、電極5及び6の長さは、例えば30μm以上500μm以下程度である。また、電極5毎に、電極5と接地電極7とを接続する配線10が設けられ、電極6毎に、電極6と信号電極8とを接続する配線11が設けられている。電極5及び6並びに配線10及び11は、例えば厚さが3μm以上のAuメッキ膜からなる。また、配線10及び11の幅は、5μm以上であり、最大でも電極5及び6の長さである。
【0034】
また、半導体基板1上には、光導波路3及び4の一端に連結された分波器12及び他端に連結された合波器13が設けられている。分波器12の入力側及び合波器13の出力側には、夫々入力導波路18a、出力導波路18bが設けられている。
【0035】
接地電極7及び信号電極8の一端は、高周波信号源14に接続され、接地電極7及び信号電極8の他端には、終端抵抗15が接続されている。また、導電層2は、インダクタを介して直流電圧用電源17からバイアス電圧を印加される。
【0036】
このように構成された第1の実施形態では、高周波信号源14により高周波信号が生成され、この高周波信号が信号電極8及び接地電極7によって構成される非対称コプレーナストリップ型マイクロ波導波路に入力される。また、その一方で、入力導波路18aに連続レーザ光(CW Light)16が入力される。そして、入力された連続レーザ光16は、分波器12によって分波された後、光導波路3及び4を進行する。この進行中、光導波路3及び4のうち、互いに対向する電極5及び6との間に位置する部分(位相変調部)で光信号の位相変調が行われる。即ち、位相変調部において、光信号の位相が変化させられる。その後、これらの光信号は、合波器13によって合波され、それらの位相変化に応じた強度変化を持った光(Modulated Light)に変換されて出力導波路18bから出力される。
【0037】
なお、空隙部9の中は、外部と同じ気体の雰囲気とされるか、又は真空とされ、信号電極8と半導体基板1との間に存在する物質(本実施形態では、気体)の誘電率は半導体基板1の誘電率よりも低い。
【0038】
ここで、第1の実施形態における容量について説明する。図8は、空隙部9の割合と電極間容量及び位相変調部の長さの割合の最大許容範囲との関係を示すグラフである。なお、図8中の●は電極間容量を示し、○は位相変調部の長さの割合の最大許容範囲を示す。ここで、「位相変調部の長さの割合」とは、光導波路3及び4について、互いに隣り合う1組の電極5及び6が設けられた部分と設けられていない部分との長さの合計に対する、電極5及び6が設けられた部分の割合をいう。第1の実施形態では、上部クラッド層3p及び4pが設けられた部分(上部クラッド層3p及び4pの上に、電極5及び6が設けられている。)と半絶縁性InP層30が設けられた部分(半絶縁性InP層30上には、電極5及び6は設けられていない)との長さの合計に対する、上部クラッド層3p及び4pが設けられた部分の長さの割合である。そして、この割合の許容値とは、特性インピーダンスを50Ωに整合させ、更に光と電気信号の伝搬速度を整合させたときに、上記の割合をどれだけ大きくすることができるかを示す値である。また、電極間容量は、接地電極7と信号電極8との間の容量である。
【0039】
図8に示すように、空隙部9の割合を0(従来の技術に相当)から大きくするに連れて、電極間容量は小さくなる。このため、特性インピーダンスを50Ωに整合させて、全体の容量Cが制限されている場合であっても、数式3によれば、装荷容量CLを大きくすることが可能となる。この結果、例えば、空隙部9の割合を0.6にした場合には、位相変調部の長さの割合を、空隙部9の割合が0のときよりも約1.3倍まで大きくすることができ、空隙部9の割合を1にした場合には、約1.5倍まで大きくすることができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、電極間容量が低減されるため、その分だけ装荷容量CLを大きくすることが可能である。従って、素子長を短くして小型化することができる。また、装荷容量を大きくしても、特性インピーダンス及び光と電気信号との伝搬速度の整合が確保できるため、広帯域の変調が可能である。更に、光導波路3及び4の構造としてpin構造を採用し、コア層に量子井戸構造を採用しているため、低電圧動作が可能である。
【0041】
なお、分波器12及び合波器13は、半導体基板1の外部に設けられていてもよいが、素子の小型化及び光の過剰損失の防止という観点からは、本実施形態のように、半導体基板1上に設けられていることが好ましい。
【0042】
支持部50及び信号電極8は、例えば次のような方法により形成することができる。先ず、誘電体保護膜40上に、支持部用レジスト膜を形成し、この支持部用レジスト膜の支持部50を形成する予定の領域に開口部を形成する。次に、開口部内にAuメッキ膜を形成する。次いで、全面に信号電極用レジスト膜を形成し、この信号電極用レジスト膜の信号電極8を形成する予定の領域に開口部を形成する。続いて、開口部内にAuメッキ膜を形成する。そして、信号電極用レジスト膜及び支持部用レジスト膜をアッシングにより除去する。このようにして、支持部50及び信号電極8を形成することができるが、これらを形成する方法は、これに限定されるものではない。また、支持部50及び信号電極8は、適宜、接地電極7等と同時に形成してもよい。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図9は、本発明の第2の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す断面図である。図9は、第1の実施形態を示す図4に相当する。
【0044】
本実施形態においては、導電層2上に、光導波路3及び4の側面を覆う半絶縁性InP層(半絶縁性半導体層)60が形成されている。
【0045】
このような第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られると共に、半絶縁性InP層60によって光導波路3及び4が保護されるため、より高い光のモード安定性、素子の信頼性及び歩留りが得られる。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図10乃至図12は、本発明の第3の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す断面図であって、夫々第1の実施形態を示す図4乃至図6に相当する。
【0047】
本実施形態においては、支持部50が設けられておらず、半導体基板1の第1の実施形態において支持部50が設けられていた部分に挟まれた部分に溝19が形成され、この内部に空隙部9が形成されている。また、信号電極8は、半導体基板1の第1の実施形態において支持部50が設けられていた部分(溝19が形成されていない部分)及び空隙部9上に形成されている。
【0048】
このように構成された第3の実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図13乃至図15は、本発明の第4の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す断面図であって、夫々第1の実施形態を示す図4乃至図6に相当する。
【0050】
本実施形態は、第1の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせて構成されている。より具体的には、第1の実施形態と同様に、支持部50が設けられると共に、第3の実施形態と同様に、溝19が形成され、第1及び第3の実施形態よりも大きい空隙部9が形成されている。信号電極8は、第1の実施形態と同様に、支持部50上及び空隙部9上に形成されている。
【0051】
このように構成された第4の実施形態によれば、より大きな空隙部9が設けられているため、接地電極7と信号電極8との間の容量がより低減される。このため、位相変調部の割合をより一層高いものとすることができ、素子長をより短縮することが可能である。
【0052】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図16は、本発明の第5の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す上面図である。図16は、第1の実施形態を示す図3に相当する。
【0053】
本実施形態においては、配線10及び11の幅が電極5及び6の長さと等しい。
【0054】
このように構成された第5の実施形態によれば、配線10及び11のインダクタンスが、第1の実施形態よりも小さくなる。このため、特性インピーダンスを整合させるために容量Cが一意的に決まっている場合でも、装荷容量CLをより大きなものとすることが可能である。このため、位相変調部の割合をより一層高くすることができる。従って、素子長を短くすることができる。
【0055】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。図17は、本発明の第6の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す断面図である。図17は、第1の実施形態を示す図4に相当する。
【0056】
本実施形態においては、第1の実施形態における接地電極7の代わりに接地電極7aが設けられている。接地電極7aの長手方向に垂直な断面形状は、図17に示すように、光導波路3及び4側の面に段差が設けられたものとなっており、上部が下部よりも光導波路3に近接している。そして、下部よりも突き出した上部に配線10が接続されている。
【0057】
このように構成された第6の実施形態によれば、配線10の長さを第1の実施形態のそれと等しくしたまま、接地電極7aと信号電極8との間の電極間容量をより低減することが可能であり、素子長をより短縮することができる。
【0058】
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。図18は、本発明の第7の実施形態に係る光半導体素子(マッハツェンダ型光変調器)の構造を示す断面図である。図18は、第1の実施形態を示す図4に相当する。
【0059】
本実施形態においては、支持部50の代わりに、支持部50よりも幅が狭い支持部50aが設けられている。
【0060】
このような第7の実施形態によれば、接地電極7aと信号電極8との間の電極間容量をより低減することが可能であり、素子長をより短縮することができる。
【0061】
(第8の実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。図19は、本発明の第8の実施形態に係る光半導体素子(吸収型光変調器)の構造を示す上面図である。図20は、図19中の一部を拡大して示す上面図である。図21乃至図24は、夫々図20中のI−I線、II−II線、III−III線、IV−IV線に沿った断面を示す断面図である。
【0062】
本実施形態においては、第1の実施形態とは異なり、導電層2上に光導波路4は形成されているが、光導波路3は形成されていない。電極5は導電層2に接続されている。また、分波器12、合波器13、入力導波路18a及び出力導波路18bも設けられておらず、光導波路4が半導体基板1の両端まで延びている。なお、光導波路4を構成するコア層4iは、第1の実施形態等と同様に、例えば半導体量子井戸構造を構成する材料から形成され、その光の吸収係数は、電界が印加されると変化する。
【0063】
このように構成された第8の実施形態では、高周波信号源14により高周波信号が生成され、この高周波信号が信号電極8及び接地電極7によって構成される非対称コプレーナストリップ型マイクロ波導波路に入力される。また、その一方で、光導波路4に連続レーザ光(CW Light)16が入力される。そして、入力された連続レーザ光16は光導波路4を進行する。この進行中、光導波路4のうち、互いに対向する電極5及び6との間に位置する部分(吸収型変調部)で光信号の変調が行われ、強度変化を持った光(Modulated Light)に変換されて出力される。
【0064】
このように構成された第8の実施形態によっても、変調器の型は異なるが、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
なお、本実施形態において、断続的に配置されている電極5及び配線10を設けずに、連続的な接地電極7がそのまま導電層2に接続された構成としてもよい。但し、この場合には、電気信号の損失が増大し、変調器の動作帯域が制限される。
【0066】
また、本実施形態では吸収型光変調器としているが、電界を印加すると屈折率が変化する材料を光導波路のコア層4iに用いれば、同様の構造で光位相変調器として用いることもできる。この場合も、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
更に、第8の実施形態のような吸収型光変調器に対して、第2乃至第7の実施形態を適用してもよい。
【0068】
なお、各実施形態では、電極5及び6が光の伝搬方向(光導波路3及び4が延びる方向)において、周期的に配置されているが、必ずしも周期的に配置されていなくても、本発明の目的は達成することができる。但し、この場合には、電気信号の過剰損失及び反射等が生じることがある。
【0069】
また、支持部50又は50aが配置されている位置や溝19が形成された実施形態において溝19間の壁が配置されている位置、即ち信号電極8を支持する部材又は部位が存在する位置は、光導波路3及び4が延びる方向において、電極5及び6が存在しない位置に限定されるものではなく、電極5及び6が存在する位置であっても本発明の効果が得られる。
【0070】
また、支持部50等の信号電極8を支持する部材又は部位は、電極5及び6と同じ周期で配置されている必要はなく、例えば、より長い周期で配置されていてもよく、非周期的に配置されていてもよい。また、信号電極8の両端部さえ支持されていれば、その間に信号電極8を支持する部材又は部位が設けられていなくても、本発明の効果は得られる。但し、電気信号の安定した伝搬の観点及び機械的強度の観点から、一定の周期で配置されていることが望ましい。
【0071】
また、支持部50及び50aの材料は、信号電極8と同じ金属材料(Auメッキ膜)に限定されず、例えば誘電体であっても、本発明の効果が得られる。
【0072】
また、空隙部9内に、半導体よりも誘電率の小さい誘電体が充填されていてもよい。但し、この場合には、雰囲気ガスが存在している場合や、真空とされている場合よりも、空隙部9内の誘電率が高くなるため、電極間容量が低減する効果は小さくなるが、機械的な強度が高くなる。
【0073】
また、誘電体保護膜40は必ずしも形成されている必要はないが、高い信頼性を確保し、電気信号の過剰損失を防止するためには、形成されていることが好ましい。
【0074】
また、光導波路の構造は、光導波路3及び4のようなpin構造には限定されず、例えばi型半導体のみで形成されていてもよい。但し、光導波路のコア部に効率的に電界を印加して、駆動電圧を低く抑えるためには、pin構造となっていることが好ましい。
【0075】
また、光導波路3及び4の構造は、上から順にp型、i型、n型となっているものに限定されず、上から順にn型、i型、p型となっていてもよい。但し、n型半導体よりも伝導率の小さいp型半導体の体積の増加を抑制することにより、電気信号の損失の増加を防止し、変調速度の制限を受けないようにするためには、上から順にp型、i型、n型となっている構造が好ましい。
【0076】
また、導電層2の材料はn型半導体に限定されるものではなく、例えば金属層が導電層2の一部又は全部として形成されていてもよい。但し、金属層と半導体層との接合よりも半導体層同士の接合の方が安定した特性が得られるため、導電層2は不純物が導入された半導体層からなることが好ましい。また、導電層2が光導波路3及び4の上に形成され、電極5及び6が光導波路3及び4の下に形成されていてもよい。但し、煩雑な製造工程を避けるためには、導電層2は光導波路3及び4の下に形成されていることが好ましい。
【0077】
また、半絶縁性InP層30の代わりに、i型半導体層、SiO2層等の絶縁体層や上部クラッド層3p又は4pが設けられていてもよい。但し、i型半導体層が設けられた場合には、各実施形態と比較して電気信号の損失が増加して動作速度が制限され、また、絶縁体層が設けられた場合には、光導波路を伝搬する光の散乱がこの部分で生じて、各実施形態と比較して光の損失や反射が増加する。また、上部クラッド層3p又は4pが設けられた場合には、電気信号の伝搬損失が増加して、各実施形態と比較して変調速度が制限される。更に、半絶縁性InP層30が形成されずに、コア層3i及び4i上に誘電体保護膜40のみが形成されていてもよいが、この場合にも、この部分で光が散乱し、光の損失や反射が増加する。従って、半絶縁性InP層30が設けられていることが最も好ましい。
【0078】
また、半導体基板1はInP基板に限定されず、例えばGaAs基板を用いてもよい。また、光導波路のコア層の構造は、GaInAsP量子井戸構造に限定されず、例えばGaInAs量子井戸構造やAlGaInAs量子井戸構造であってもよく、また、上記材料よりなるバルク半導体層でもよい。また、クラッド層として、例えばAlGaAs層又はAlInAs層が設けられていてもよい。これらのいずれの場合でも、本発明の効果が得られる。
【0079】
また、配線10及び11と半導体基板1との間に、樹脂によって形成された台が設けられ、配線10及び11がその上に形成されていてもよい。但し、電気信号の損失を防止して、動作速度の制限を受けないようにするためには、この部分は中空としておくことが好ましい。
【0080】
そして、本発明が適用される光半導体素子は、半導体マッハツェンダ型変調器及び吸収型変調器に限定されるものではなく、本発明の素子を、例えば各実施形態と同様の構成を備えた高速の光スイッチやDEMUX(DEMULTIPLEXER)に適用することも可能である。
【0081】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0082】
(付記1) 半導体基板と、
前記半導体基板の上方に形成された第1及び第2の光導波路と、
前記第1及び第2の光導波路に接続された導電層と、
前記第1の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記第1の光導波路を挟む位置で前記第1の光導波路に接続された複数個の第1の電極と、
前記第2の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記第2の光導波路を挟む位置で前記第2の光導波路に接続された複数個の第2の電極と、
前記複数個の第1の電極に接続され、前記半導体基板の上方に前記半導体基板から離間して設けられた信号電極と、
前記複数個の第2の電極に接続された接地電極と、
を有し、
前記半導体基板と前記信号電極との間に存在する物質の少なくとも一部分の誘電率は、前記半導体基板の誘電率よりも低いことを特徴とする光半導体素子。
【0083】
(付記2) 前記第1の光導波路と前記第2の光導波路は、互いに実質的に平行に延びていることを特徴とする付記1に記載の光半導体素子。
【0084】
(付記3) 前記信号電極及び接地電極は、前記第1及び第2の光導波路と実質的に平行に延びていることを特徴とする付記2に記載の光半導体素子。
【0085】
(付記4) 前記半導体基板上に設けられ、入力された光を前記第1及び第2の光導波路に分波する分波器と、
前記半導体基板上に設けられ、前記第1及び第2の光導波路を伝搬した光を合波する合波器と、
を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0086】
(付記5) 前記接地電極の最も前記半導体基板側に位置している部位は、前記複数個の第2の電極が接続された部位よりも前記信号電極から離間していることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0087】
(付記6) 前記複数個の第1の電極は、夫々その前記第1の光導波路が延びる方向の長さを一定として前記信号電極に接続され、
前記複数個の第2の電極は、夫々その前記第2の光導波路が延びる方向の長さを一定として前記接地電極に接続されていることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0088】
(付記7) 半導体基板と、
前記半導体基板の上方に形成された光導波路と、
前記光導波路に接続された導電層と、
前記第1の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記光導波路を挟む位置で前記光導波路に接続された複数個の第1の電極と、
前記導電層に接続された第2の電極と、
前記複数個の第1の電極に接続され、前記半導体基板の上方に前記半導体基板から離間して設けられた信号電極と、
前記第2の電極に接続された接地電極と、
を有し、
前記半導体基板と前記信号電極との間に存在する物質の少なくとも一部分の誘電率は、前記半導体基板の誘電率よりも低いことを特徴とする光半導体素子。
【0089】
(付記8) 前記信号電極及び接地電極は、前記光導波路と実質的に平行に延びていることを特徴とする付記7に記載の光半導体素子。
【0090】
(付記9) 前記第2の電極は、複数個設けられ、前記光導波路が延びる方向に断続的に配置されていることを特徴とする付記7又は8に記載の光半導体素子。
【0091】
(付記10) 前記接地電極と前記第2の電極とが一体化されていることを特徴とする付記7又は8に記載の光半導体素子。
【0092】
(付記11) 前記光導波路は、前記第1及び第2の電極から電界が印加されると光の吸収係数が変化する材料から構成されていることを特徴とする付記7乃至10のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0093】
(付記12) 前記複数個の第1の電極は、夫々その前記第1の光導波路が延びる方向の長さを一定として前記信号電極に接続されていることを特徴とする付記7乃至11のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0094】
(付記13) 前記半導体基板と前記信号電極との間に空隙部が設けられていることを特徴とする付記1乃至12のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0095】
(付記14) 前記半導体基板と前記信号電極との間に設けられ、誘電率が前記半導体基板のそれよりも低い誘電体膜を有することを特徴とする付記1乃至12のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0096】
(付記15) 前記半導体基板と前記信号電極との間に断続的に設けられ、前記信号電極を支持する支持部材を有することを特徴とする付記1乃至14のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0097】
(付記16) 前記支持部材は、前記信号電極と同じ材料から構成されていることを特徴とする付記15に記載の光半導体素子。
【0098】
(付記17) 前記支持部材の幅は、前記信号電極の幅よりも狭いことを特徴とする付記15又は16に記載の光半導体素子。
【0099】
(付記18) 前記半導体基板の表面の前記信号電極と対向する部位に溝が形成されていることを特徴とする付記1乃至17のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0100】
(付記19) 前記光導波路は、第1の導電性半導体層、真性半導体層及び第2の導電性半導体層からなるpinダイオード構造を備えていることを特徴とする付記1乃至18のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0101】
(付記20) 前記第1の導電性半導体層は、前記第1及び第2の電極のいずれかに接する部位のみに設けられており、
前記光導波路は、隣り合う第1の導電性半導体層間に設けられた半絶縁性半導体層を有することを特徴とする付記19に記載の光半導体素子。
【0102】
(付記21) 前記光導波路のコア層は、半導体量子井戸構造を備えていることを特徴とする付記1乃至20のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0103】
(付記22) 前記光導波路の側面を覆う半絶縁性半導体層を有することを特徴とする付記1乃至21のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【0104】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、特性インピーダンス及び光と電気との伝搬速度の整合をとった場合でも、接地電極と信号電極との間の容量を低く抑えることができるため、第1の電極と第2の電極との間の容量を高くすることができる。即ち、進行波電極として機能する接地電極及び信号電極全体の長さに対する、変調部を構成する第1及び第2の電極の割合を大きくすることができる。従って、素子長を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した場合の進行波型電極の等価回路図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す上面図である。
【図3】図2中の一部を拡大して示す上面図である。
【図4】図3中のI−I線に沿った断面を示す断面図である。
【図5】図3中のII−II線に沿った断面を示す断面図である。
【図6】図3中のIII−III線に沿った断面を示す断面図である。
【図7】図3中のIV−IV線に沿った断面を示す断面図である。
【図8】空隙部9の割合と電極間容量及び位相変調部の長さの割合の最大許容範囲との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図であって、図3中のI−I線に沿った断面に相当する断面を示す断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図であって、図3中のII−II線に沿った断面に相当する断面を示す断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図であって、図3中のIII−III線に沿った断面に相当する断面を示す断面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図であって、図3中のI−I線に沿った断面に相当する断面を示す断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図であって、図3中のII−II線に沿った断面に相当する断面を示す断面図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図であって、図3中のIII−III線に沿った断面に相当する断面を示す断面図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す上面図である。
【図17】本発明の第6の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図である。
【図18】本発明の第7の実施形態に係るマッハツェンダ型光変調器の構造を示す断面図である。
【図19】本発明の第8の実施形態に係る吸収型光変調器の構造を示す上面図である。
【図20】図19中の一部を拡大して示す上面図である。
【図21】図20中のI−I線、II−II線、III−III線、IV−IV線に沿った断面を示す断面図である。
【図22】図20中のI−I線に沿った断面を示す断面図である。
【図23】図20中のII−II線に沿った断面を示す断面図である。
【図24】図20中のIII−III線に沿った断面を示す断面図である。
【図25】非特許文献1に記載された従来の半導体マッハツェンダ型変調器の構造を示す模式図である。
【図26】特許文献1に記載された従来の半導体吸収型変調器の構造を示す模式図である。
【図27】進行波型電極の等価回路図である。
【符号の説明】
1:半導体基板
2:導電層
3、4:光導波路
3n、4n:下部クラッド層
3i、4i:コア層
3p、4p:上部クラッド層
5、6:電極
7、7a:接地電極
8:信号電極
9:空隙部
10、11:配線
12:分波器
13:合波器
14:高周波信号源
15:終端抵抗
16:連続レーザ光
17:直流電圧用電源
18a:入力導波路
18b:出力導波路
30:半絶縁性InP層
40:誘電体保護膜
50、50a:支持部
60:半絶縁性InP層
Claims (9)
- 半導体基板と、
前記半導体基板の上方に形成された第1及び第2の光導波路と、
前記第1及び第2の光導波路に接続された導電層と、
前記第1の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記第1の光導波路を挟む位置で前記第1の光導波路に接続された複数個の第1の電極と、
前記第2の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記第2の光導波路を挟む位置で前記第2の光導波路に接続された複数個の第2の電極と、
前記複数個の第1の電極に接続され、前記半導体基板の上方に前記半導体基板から離間して設けられた信号電極と、
前記複数個の第2の電極に接続された接地電極と、
を有し、
前記半導体基板と前記信号電極との間に存在する物質の少なくとも一部分の誘電率は、前記半導体基板の誘電率よりも低いことを特徴とする光半導体素子。 - 前記複数個の第1の電極は、夫々その前記第1の光導波路が延びる方向の長さを一定として前記信号電極に接続され、
前記複数個の第2の電極は、夫々その前記第2の光導波路が延びる方向の長さを一定として前記接地電極に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光半導体素子。 - 半導体基板と、
前記半導体基板の上方に形成された光導波路と、
前記光導波路に接続された導電層と、
前記第1の光導波路が延びる方向に断続的に配置され、前記導電層との間で前記光導波路を挟む位置で前記光導波路に接続された複数個の第1の電極と、
前記導電層に接続された第2の電極と、
前記複数個の第1の電極に接続され、前記半導体基板の上方に前記半導体基板から離間して設けられた信号電極と、
前記第2の電極に接続された接地電極と、
を有し、
前記半導体基板と前記信号電極との間に存在する物質の少なくとも一部分の誘電率は、前記半導体基板の誘電率よりも低いことを特徴とする光半導体素子。 - 前記半導体基板と前記信号電極との間に空隙部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
- 前記半導体基板と前記信号電極との間に断続的に設けられ、前記信号電極を支持する支持部材を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光半導体素子。
- 前記半導体基板の表面の前記信号電極と対向する部位に溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光半導体素子。
- 前記光導波路は、第1の導電性半導体層、真性半導体層及び第2の導電性半導体層からなるpinダイオード構造を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光半導体素子。
- 前記第1の導電性半導体層は、前記第1及び第2の電極のいずれかに接する部位のみに設けられており、
前記光導波路は、隣り合う第1の導電性半導体層間に設けられた半絶縁性半導体層を有することを特徴とする請求項7に記載の光半導体素子。 - 前記光導波路のコア層は、半導体量子井戸構造を備えていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光半導体素子。
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2003
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