JP2004250587A - 水性インク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】色材をポリマーを用いて水に分散可能とした分散体を二種以上含んでなる水性インクであって、該二種以上の分散体は少なくとも第一の分散体と、第二の分散体とを有し、且つ該第一の分散体の色材及び/又はポリマーと該第二の分散体の色材及び/又はポリマーとが種類が異なるものである。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は普通紙、再生紙およびコート紙に対して高い印字品質が得られ、且つ保存安定性および耐擦性に優れる水性インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の水性インクとしては顔料を水に分散させる手段として界面活性剤を用いる方法(特許文献1参照)、または疎水部と親水部を有する分散ポリマーを用いて分散されていた。(特許文献2参照)また、着色材の表面を高分子で被覆する方法としては、インクジェットプリンター用インクとして、染料インクを内包したマイクロカプセルを用いる方法(特許文献3参照)、水に不溶な溶媒に色素を溶解または分散させこれを界面活性剤で水中で乳化したマイクロカプセル化した色素を用いる方法(特許文献4参照)、水、水溶性溶媒並びにポリエステルの少なくとも1種に昇華性分散染料を溶解または分散させた内包物をマイクロカプセルとして記録液に使用する方法(特許文献5参照)、着色された乳化重合粒子と水性材料からなるインキ組成物(特許文献6参照)、転相乳化反応や酸析法による方法が検討されている(特許文献7参照)。
また、定着性を得るために、室温以下のガラス転移温度を有する高分子微粒子を添加することなどが試みられている。
【0003】
【特許文献1】
特開平01−301760号公報
【特許文献2】
特公平5−064724号公報
【特許文献3】
特開昭62−95366号公報
【特許文献4】
特開平1−170672号公報
【特許文献5】
特開平5−39447号公報
【特許文献6】
特開平6−313141号公報
【特許文献7】
特開平10−140065号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の水性インクは不安定であり、界面活性剤やグリコールエーテル等の親水部と疎水部を有する物質が存在すると、吸脱着が起こりやすくなり、保存安定性が劣るという課題がある。通常の水性インクは紙に対するにじみを低減させるため、界面活性剤やグリコールエーテル等の親水部と疎水部を有する物質が必要である。これらの物質を用いないインクでは紙に対する浸透性が不十分となり、均一な印字を行なうためには紙種が制限され、印字画像の低下を引き起こしやすくなるという課題があった。
【0005】
さらに、従来の分散体に印字品質を向上させるための添加剤(アセチレングリコール、アセチレンアルコール、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルまたは1,2−アルキレングリコールまたはこれらの混合物)を用いると長期の保存安定性が得られず、インクの再溶解性が悪いためインクが乾燥してインクジェットヘッドのノズルで詰まり易くなるという課題を有していた。
【0006】
また、このような分散剤により分散された顔料は分散剤の残存物がインク系中に残り、分散剤が十分に分散に寄与せず顔料から脱離して粘度が高いものになってしまうという課題があった。粘度が高くなると顔料等の色材の添加量が制限され特に普通紙において十分な印字品質が得られない。
【0007】
また、従来の水性インクでは耐擦性が不十分であり、専用紙上では剥がれやすく、十分な発色性も得られなかった。そこで本発明はこのような課題を解決するもので、その目的とするところは、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有する水性インクであり、インクジェット記録にあってはさらに吐出安定性が優れるところにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の水性インクは、色材をポリマーを用いて水に分散可能とした分散体を二種以上含んでなる水性インクであって、該二種以上の分散体は少なくとも第一の分散体と、第二の分散体とを有し、且つ該第一の分散体の色材及び/又はポリマーと該第二の分散体の色材及び/又はポリマーとが種類が異なるものであることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の水性インクが含有する分散体は安定性に優れ、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有する水性インクを作成可能とするものであり、インクジェット記録にあってはさらにインクジェットヘッドからのインクの吐出安定性に優れることなどの特性が要求されていることに鑑み、鋭意検討した結果によるものである。
【0010】
本発明の水性インクは、色材をポリマーを用いて水に分散可能とした分散体を二種以上含んでなる水性インクであって、該二種以上の分散体は少なくとも第一の分散体と、第二の分散体とを有し、且つ該第一の分散体の色材及び/又はポリマーと該第二の分散体の色材及び/又はポリマーとが種類が異なるものであることを特徴とする。
【0011】
色材を分散させるポリマーによって定着性を向上させる。色材とポリマーの種類について、色材が多いと定着性が低下するし、ポリマーが多いと十分な発色性が得られない。そこで定着性と発色性を両立させるために、用いる色材の色毎に最適になるように色材とポリマーの種類が異なる複数の分散体を用いる。一方の分散ポリマーには定着性を考慮した種類や比を用いて、他方は発色性を考慮した種類や比を用いる。用いるポリマーの官能基は定着性や発色性を考慮してアクリロイル基、メタクリロイル基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、フラン基、チオフェン基、ピロリドン基、イミダゾール基、イミダゾリジノン基、ラクトン基、ラクタム基、カーボネート基、エポキシ基、ウレタン基、尿素基、アロハネート基、ビウレット基、およびイソシアヌレート基などが挙げられる。
【0012】
また、定着性をさらに向上させるために高分子微粒子を用いることもよい。その場合高分子微粒子の最低造膜温度(MFT)は室温以下であることが定着性が向上する。また、ガラス転位点が室温以上でも造膜助剤を用いて見かけ上の造膜温度を低下させることもよい。さらに、高分子微粒子の製造方法として、長鎖のマクロマーを用いた重合により、ハードセグメントとソフトセグメントが分かれたミクロ相分離構造を導入することも定着性の向上になる。
【0013】
前述の分散体の少なくとも一種類は色材が70%以上90%以下であることが好ましい。色材が70%以上90%以下で十分な発色性を確保する。
【0014】
前述の分散体の少なくとも一種類は色材が70%以上90%以下であり、他の一種類以上は色材が40%以上70%未満であることが好ましい。一種類は色材が70%以上90%以下であり、他の一種類以上は色材が40%以上70%未満であることで十分な発色性と十分な定着性を確保する。
【0015】
色材とポリマーの種類が異なる複数の前述の分散体に用いる色材の色が同一系統色であることが好ましい。発色性をより向上させるためには色材の色が同一系統色であることが好ましい。この場合、発色性を得るための色材はポリマーの相対量を少なく、逆に定着性を得るために色材はポリマーの相対量を多くする組み合わせがよい。
【0016】
色材とポリマーの種類が異なる複数の前記分散体の混合状態でのゼータ電位の絶対値が30ミリボルト以上であることが好ましい。ゼータ電位を上記の範囲にすることで、インク中で安定して存在することが可能となる。前述のゼータ電位は好ましくは40ミリボルト以上である。
【0017】
色材とポリマーの種類が異なる複数の前記分散体のゼータ電位の絶対値がそれぞれ独立して30ミリボルト以上であり、そのポリマーの比が異なる複数の前記分散体のゼータ電位の値の差が±10ミリボルト以下であることが好ましい。ゼータ電位を上記の範囲にすることで、インク中で安定して存在することが可能となる。前述のゼータ電位の差は好ましくは±5ミリボルト以下である。また、色材とポリマーの比が異なる複数の前述の分散体のイオンの極性が同一であることが好ましい。さらに、等電点におけるpH差が±2以下であることが好ましい。これらの範囲を超えると凝集を起こしやすくなる。
【0018】
色材が有機顔料または無機顔料であることが好ましい。ここで、本発明において色材とは、いわゆる有色の分子を有する物質をいい、着色材、色材、顔料、および染料を含めたものをいう。
【0019】
例えば、黒色インク用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられるがインクジェット用としては比重が比較的低く水中で沈降しにくいカーボンブラックが好ましい。更にカラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、93、94、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138、153、180、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等が使用できる。
【0020】
水性インク中でもインクジェットに用いる場合これらの顔料としての添加量は、0.5〜30%が好ましいが、1.0〜12%がさらに好ましい。これ以下の添加量では、印字濃度が確保できなくなり、またこれ以上の添加量では、インクの粘度増加や粘度特性に構造粘性が生じ、インクジェットヘッドからのインクの吐出安定性が悪くなる傾向になる。
【0021】
また、顔料の粒経は5μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm以下の粒子からなる顔料を、さらに好ましくは0.01〜0.15μmの粒子からなる顔料が好ましい。
【0022】
分散方法は超音波分散、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ナノマイザーあるいはジェットミルなどによる分散方法を用いることができる。
【0023】
色材とポリマーの種類が異なる複数の前述の分散体のイオンの極性が同一であることが好ましい。イオンの極性が同一であることでインクとしての長期の安定性が向上する。
【0024】
色材とポリマーの種類が異なる複数の前述分散体に含まれる官能基がヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、フラン基、チオフェン基、ピロリドン基、イミダゾール基、イミダゾリジノン基、ラクトン基、ラクタム基、カーボネート基、エポキシ基、尿素基、アロハネート基、ビウレット基、およびイソシアヌレート基から選ばれた1種以上であり、その高分子微粒子の1%以上であることが好ましい。1%以上で定着性が向上する。
【0025】
本発明の水性インクに少なくとも界面活性剤を添加してなることが好ましい。
【0026】
その界面活性剤がアセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上であることが好ましい。これらの界面活性剤を用いることで普通紙上のにじみが特に低減され、専用紙上での線幅を適当な値に調整することが可能となる。
【0027】
また、その水性インクに少なくともアルキレングリコールモノアルキルエーテルおよび/または1,2−アルキレングリコールを添加してなることが好ましい。
【0028】
そのアルキレングリコールモノアルキルエーテルが繰り返し単位10以下のアルキレングリコールであって、且つ炭素数4〜10のアルキルエーテルであることが好ましい。
【0029】
前述のアルキレングリコールモノアルキルエーテルがジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエ−テルおよび/または(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルであることが好ましい。
前述の1,2−アルキレングリコールが1,2−ヘキサンジオールおよび/または1,2−ペンタンジオールであることが好ましい。これらの添加により印字の乾燥性が向上し、連続して印刷しても前の印字部分が次の媒体の裏面に転写されることがなくなるため、特にインクジェット記録にあっては高速印字が可能となる。
【0030】
また、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質を含むインクであって、該物質の添加量が0.5%以上30%以下であることであることが好ましい。
【0031】
前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上の物質の添加量が0.1%以上5%以下であることが好ましい。
【0032】
少なくとも前記アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上と、を含むことが好ましい。
【0033】
前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上の添加量が0.01%〜0.5%であり、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上の添加量が1%以上であることが好ましい。
【0034】
前述の記顔料を分散するポリマーが、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0035】
前述の高分子微粒子の粒径が50〜500nmであり、添加量が0.1〜20%であることが好ましい。
【0036】
高分子微粒子の粒径が50nm未満では分散の安定性が得られにくくなり、吐出安定性が得られにくくなる。しかし、添加量が3%以下であれば、影響が低減され50nm未満でも用いることができる。500nmを超えてもまた出吐安定性が得られなくなる。好ましくは70〜300nmである。そして、その添加量が0.1%未満では定着性向上の効果が低くなる。しかし、専用紙上でのインクの凝集によるむらの発生は0.1%未満でも効果がある。20%を超えると粘度が上昇し、吐出安定性か得られない。定着性向上のためには、好ましくは1〜10%である。
【0037】
この高分子微粒子を水に分散したエマルジョンを形成する物質として、スチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびブチルメタクリレートの他に(α、2、3または4)−アルキルスチレン、(α、2、3または4)−アルコキシスチレン、3、4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N、N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1、8−オクタンジオールおよび1、10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等アクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。
【0038】
このような高分子微粒子を形成するために用いる乳化剤としてはラウリル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸カリウムの他にステアルリル基、ノニル基、オクチル基などを有するアルキル基や分岐アルキル基、あるいはアルキルフェニル基などの硫酸塩である活性剤の他に燐酸塩、硼酸塩の活性剤やアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および両性界面活性剤等を用いることができる。
【0039】
重合開始剤は過硫酸カリや過硫酸アンモニウムの他に、過流酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどラジカル重合に用いられる一般的な開始剤を用いることができるが、重合反応は水中で行なうため水溶性の方が好ましい。
【0040】
重合のための連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタンの他にn−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、あるいはジペンテン、インデン、1、4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなど一般的な連鎖移動剤を用いることができる。
【0041】
また、コアとシェルが構造が違うコアシェル型の高分子微粒子を用いた複相の他に、単相の場合でも構わない。そして、これら高分子微粒子の膜形成温度(MFT)は室温以下に設計するか、またはMFT低下剤(成膜助剤)を用いて室温以下にすることが好ましい。また、反応条件等によっては上述の添加剤を用いなくてもよい。例えば、ミセル形成モノマーを用いる場合にはミセル形成剤は不要になり、反応条件によっては連鎖移動剤も用いなくて良い場合もあるので、適宜選択できる。
【0042】
さらに、前述の顔料を分散剤で分散した分散体が少なくとも重合性基を有する分散剤と共重合性モノマーとの共重合体でその顔料を包含したものであることが好ましい。ここで、重合性基を有する分散剤とは少なくとも疎水基、親水基および重合性基を有するもので、重合性基はアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などであり、共重合性基も同じくアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などである。インクジェット記録用インクとしては粒径が比較的そろっていた方が目詰まりや吐出の安定性の観点から好ましいので、顔料を分散剤で分散した着色材は、乳化重合または転相乳化法によって製造されることが好ましい。
【0043】
前述の顔料を分散剤で分散した分散体は、重合性基を有する分散剤でその顔料を分散させた後、その分散剤と共重合可能なモノマーと重合開始剤を用いて水中で乳化重合されたものまたは顔料を分散剤が覆うように水中への転相乳化であることが好ましい。また、2重結合を有するアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基あるいはアリル基を有するモノマーやオリゴマー類を用いたポリマーを用いることができる。例えばスチレン、ブチルメタクリレート、(α,2,3または4)−アルキルスチレン、(α,2,3または4)−アルコキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等アクリロイル基やメタクリロイル基を有する化合物を用いることができる。
【0044】
また、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上を成分とするようにこれらのポリマーを添加しながら作成することもできる。
【0045】
重合開始剤は過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムの他に、過硫酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスアセトキシフェニルエタン、アゾビスメチルブタンアミドジヒドロクロライドテトラハイドレート、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ジメチルアゾビスイソブチレート、アゾビスシアノ吉草酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどラジカル重合に用いられる一般的な開始剤を用いることができる。
【0046】
本発明における、乳化重合では連鎖移動剤を用いることもできる。例えば、t−ドデシルメルカプタンの他にn−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、あるいはジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなどが挙げられる。
【0047】
そして、前述の分散体を用いることによって安定性の優れたインクジェット記録用インクとすることができる。さらに前述の分散体を筆記具用インクにも好適に用いることができる。
【0048】
本発明におけるインクジェット記録用インクは、その放置安定性の確保、インク吐出ヘッドからの安定吐出達成等の目的で保湿剤、溶解助剤、浸透制御剤、粘度調整剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート等種々の添加剤を添加する場合がある。
【0049】
以下、それらを例示する。
【0050】
インクジェットのノズル面で乾燥を抑えるために水溶性のあるグリコール類を添加することが好ましく、その例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトールなどがある。
【0051】
また、本発明においてはノズル前面でインクが乾燥して詰まることを抑制するために、多くの種類の糖類を用いることもできる。単糖類および多糖類があり、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類を用いることができる。そしてその添加量は0.05%以上で30%以下がよい。0.05%未満ではインクがヘッドの先端で乾燥して詰まる目詰まり現象を回復させる効果は少なく、30%を超えるとインクの粘度が上昇して適切な印字ができなくなる。一般的な糖類である単糖類および多糖類のグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等のより好ましい添加量は3〜20%である。アルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類はインクにしたときの粘度が高くなり過ぎない程度の添加量にする必要がある。
【0052】
その他に水と相溶性を有し、インクに含まれる水との溶解性の低いグリコールエーテル類やインク成分の溶解性を向上させ、さらに被記録体たとえば紙に対する浸透性を向上させ、あるいはノズルの目詰まりを防止するために用いることのできるものとして、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1から4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン、パラトルエンスルホンアミド、パラトルエンスルホンアミド−4−エチレンオキシ付加物などがあり、これらを適宜選択して使用することができる。
【0053】
また、本発明になるインクにはさらに紙や特殊紙等の媒体への浸透性を制御するため、他の界面活性剤を添加することも可能である。添加する界面活性剤は本実施例に示すインク系との相溶性のよい界面活性剤が好ましく、界面活性剤のなかでも浸透性が高く安定なものがよい。その例としては、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などがあげられる。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル)などのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などがある。
【0054】
また、pH調整剤、溶解助剤あるいは酸化防止剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸(水素)カリウム、炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩などがある。また、市販の酸化防止剤、紫外線吸収剤なども用いることができる。その例としてはチバガイギーのTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物などがある。
【0055】
さらに、粘度調整剤としては、ロジン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチなどがある。
【0056】
防腐剤はアルキルイソチアゾロン、クロルアルキルイソチアゾロン、ベンズイソチアゾロン、ブロモニトロアルコール、オキサゾリジン系化合物および/またはクロルキシレノールなどが挙げられ、金属イオン捕獲剤はエチレンジアミン酢酸塩、防錆剤がジシクロヘキシルアンモニウムニトラート、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0057】
防腐剤として、アルキルイソチアゾロンの中でオクチルイソチアゾロンを有効成分とするものが(例えばNS−800H、NS800G、NS−800P:以上ナガセ化成工業株式会社)市販されている。クロルアルキルイソチアゾロンとしてはクロルイソメチルチアゾロンを有効成分とするものが(例えばNS−500W、NS−80D、NS−CG、NS−TM、NS−RS:以上ナガセ化成工業株式会社)市販されている。ベンズイソチアゾロンを有効成分とするものが(例えばプロキセルBDN、プロキセルBD20、プロキセルGXL、プロキセルLV、プロキセルTN:以上ゼネカ(英国)、デニサイドBIT、デニサイドNIPA:以上ナガセ化成工業株式会社)市販されている。ブロモニトロアルコールを有効成分とするものが(例えばブロノポール、ミアサイドBT、ミアサイドAS:以上ナガセ化成工業株式会社)市販されている。クロルキシレノールを有効成分とするものが(例えばPCMX:ナガセ化成工業株式会社)市販されている。また、オキサゾリジン系化合物やこれらの成分の混合物あるいは変性物を有効成分とするものが用途に応じて(例えばNS−BP、デニサイドBIT−20N、デニサイドSPB、サニセットHP、マイクロスタットS520、サニセットSK2、デニサイドNS−100、デニサイドBF−1、デニサイドC3H、サニセット161、デニサイドCSA、デニサイドCST、デニサイドC3、デニサイドOMP、デニサイドXR−6、デニサイドNM、モルデナイズN760、デニサットP4、デニサットP−8、デニサットCHR:以上ナガセ化成工業株式会社)市販されている。この中でも水性インクにおいてはオキサゾリジン系化合物を有効成分とするもの、クロルイソメチルチアゾロンを有効成分とするものおよびベンズイソチアゾロンを有効成分とするものが効果が高い。また、これら防腐剤は単独成分ではなく、構造があまり似通っていない2種以上用いた複合成分の方が耐性菌の抑制ができるので好ましい。
【0058】
エチレンジアミン酢酸塩としてはエチレンジアミン二酢酸遊離酸、エチレンジアミン四酢酸遊離酸、2ナトリウム塩、3ナトリウム塩、4ナトリウム塩があるが、2ナトリウム塩、3ナトリウム塩および4ナトリウム塩好ましい。水性インクにおいてはエチレンジアミン二酢酸遊離酸の他に、エチレンジアミン四酢酸塩として、リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩なども有効である。このエチレンジアミン酢酸塩はインクのカートリッジやヘッド中のインク経路に金属イオンが存在し、それによって分子発色体の分散体や高分子微粒子が凝集や変質しないようにする効果がある。
【0059】
防錆剤としてはジシクロヘキシルアンモニウムニトラート、ベンゾトリアゾールが有効である。この防錆剤ヘッド材料が金属で形成されているときの防錆剤であり、特にノズルの前面が錆びるとインクの飛びが悪くなるのでメッキ面など錆び易い場合に有効である。
【0060】
【実施例】
次に具体的な実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は斯かる実施例に何ら限定されるものではない。
【0061】
実施例および比較例において、顔料1はカーボンブラック顔料、顔料2はフタロシアニン顔料、顔料3はジメチルキナクリドン顔料、顔料4はジケトピロロピロール顔料を用いた。しかし、これらに限定されず多くの有機、無機顔料を用いることができる。また、<>中にそれぞれの顔料の平均粒径をnm(ナノメートル)単位で示す。
【0062】
(分散体1〜4の製造)
まず、分散体1はカーボンブラックであるモナーク880(キャボット製)を用いる。攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン20部、2−エチルヘキシルメタクリレート5部、ブチルメタクリレート15部、ラウリルメタクリレート10部、ウレタンアクリレートオリゴマー(CN−972日本化薬株式会社製)5部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン150部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させる。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成する。
【0063】
上記分散ポリマー溶液40部とカーボンブラックであるモナーク880(キャボット社製)30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン30部を混合し、ホモジナイザーで30分攪拌する。その後、イオン交換水を300部添加して、さらに1時間攪拌する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで中和してpH9に調整してから0.3μmのメンブレンフィルターでろ過して固形分(分散ポリマーとカーボンブラック)が20%であり分散ポリマーとカーボンブラックの重量比が20:80であるの分散体1とする。
【0064】
上記と同様な手法で分散体2〜4を得る。分散ポリマーと顔料の重量比が20:80になるように調整する。分散体2はピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン顔料:クラリアント製)を用いる。分散体3はピグメントレッド122(ジメチルキナクリドン顔料:クラリアント製)を用いる。分散体4はピグメントイエロー180(ジケトピロロピロール:クラリアント製)を用いる。
【0065】
(分散体5〜8の製造)
分散体5〜8は分散体1〜4と同様に作成するが、分散ポリマーと顔料の重量比が40:60になるように調整する。分散体5はカーボンブラックであるMA100(三菱化学製)、分散体6はピグメントブルー15:4(銅フタロシアニン顔料:クラリアント製)を用いる。分散体7はピグメントバイオレット19(キナクリドン顔料:クラリアント製)を用いる。分散体8はピグメントイエロー74(ジケトピロロピロール:クラリアント製)を用いる。
【0066】
(高分子微粒子の製造)
反応容器に滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー、攪拌機を備え、イオン交換水100部を入れ、攪拌しながら窒素雰囲気70℃で、重合開始剤の過流酸カリを0.2部を添加しておく。イオン交換水7部にラウリル硫酸ナトリウムを0.05部、グリシドキシアクリレート4部、スチレン5部、テトラヒドロフルフリルアクリレート6部、ウレタンアクリレートオリゴマー(CN−972日本化薬株式会社製)15部、ブチルメタクリレート5部およびt−ドデシルメルカプタン0.02を入れたモノマー溶液を、70℃に滴下して反応させて1次物質を作成する。その1次物質に、過流酸アンモニウム10%溶液2部を添加して攪拌し、さらにイオン交換水30部、ラウリル硫酸カリ0.2部、スチレン30部、ブチルメタクリレート25部、ブチルアクリレート6部、アクリル酸2部、1、6−ヘキサンジオールジメタクリレート1部、t−ドデシルメルカプタン0.5部よりなる反応液を70℃で攪拌しながら添加して重合反応させた後、水酸化ナトリウムで中和しpH8〜8.5にして0.3μmのフィルターでろ過した高分子微粒子30%水溶液を作成してエマルジョンAとした。
【0067】
(インクジェットインクの調製例)
以下水性インクの具体例としてのインクジェット記録用インクに好適な組成の例を示す。分散体の添加量はその量(固形分濃度:顔料と分散ポリマーの合計量)を重量で換算したものとして示す。<>は顔料の粒径をnm単位で示す。尚、本実施例中の残量の水と示す中にはインクの腐食防止のためトップサイド240(パーマケムアジア社製)を0.05%、インクジェットヘッド部材の腐食防止のためベンゾトリアゾールを0.02%、インク系中の金属イオンの影響を低減するためにEDTA・2Na塩を0.04%それぞれイオン交換水に添加したものを用いた。各インク組成を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1中
TEGmBE:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤:日信化学工業株式会社製)
DEGmBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
オルフィンSTG(アセチレングリコール系界面活性剤:日信化学工業株式会社製)
サーフィノール61(アセチレンアルコール系界面活性剤:エアープロダクツ(米国)製)
DPGmBE:ジプロピレングリコールモノブチルエーテル
PGmBE:プロピレングリコールモノブチルエーテル
をそれぞれ示す。
【0070】
(分散体を1種類のみ用いた場合のOD値と定着性評価)
次に表2に実施例1〜8と実施例1〜8において分散体を1種類のみ用いた場合の、OD値と定着性の比較結果(比較例1〜16)を示す。定着性の評価は普通紙(Xerox4024紙)と専用紙(PM写真用紙)を用いて印刷面とその裏面を300gの荷重で重ね合わせで1m/sの速度で移動させたときのインクの剥がれ具合を観察する方法による。印刷直後、1分後、5分後、10分後および1時間後の結果を示す。表3中Aは全く剥がれがないもの、Bはわずかにはがれがあるもの、Cは剥がれがあり裏面に移るもの、Dはかなり剥がれがあり裏面に移るものである。ODの測定はGRETAG MACBETH SPECTROSCAN(GRERAG社製)を用いて行なった。
【0071】
【表2】
【0072】
表2の結果から明らかなように、本発明のように色材をポリマーを用いて水に分散可能とした分散体において、色材とポリマーの種類が異なる複数の分散体の混合であり、色材とポリマーの比を変えることで定着性と高ODを両立できるようになることがわかる。
【0073】
(色材の量とOD値と定着性評価)
次に、実施例1の組成で色材とポリマーの重量比を変化させた場合のODと定着性の評価結果を示す。OD値と定着性評価は表2に示す場合と同じ方法による。
【0074】
【表3】
【0075】
表3の結果からわかるように、少なくとも一種類は色材が70%以上90%以下とし、前記分散体の少なくとも一種類は色材が70%以上90%以下であり、他の一種類以上は色材が40%以上70%未満であることで耐擦性と高ODを両立できるようになることがわかる。
【0076】
(ζ電位と保存安定性)
次に実施例1〜4の組成で分散体のζ電位をそれぞれ変化させた場合の保存安定性の評価結果を示す。保存安定性はインクをガラス製のサンプル瓶に入れ密栓後、それぞれ60℃/1週間で放置し、放置前後でのインクの発生異物と粘度変化量について調べた。ζ電位の測定はゼータサイザー3000HS(マルバーン社(英国)製)を用いてpH4から11までpH依存性を測定することにより行ない、その安定領域での値とした。異物は60℃/1週間放置後の異物量を初期の異物量で除した値で示す。粘度は60℃/1週間放置後の粘度を初期の粘度で除した値で示す。
【0077】
【表4】
【0078】
表4の結果からわかるようにζ電位の絶対値がそれぞれ独立して30ミリボルト以上であり、該分散体のゼータ電位の値と該高分子微粒子のゼータ電位の値との差が±10ミリボルト以下であることで保存安定性が優れることがわかる。
(高分子微粒子の添加量と粒径による定着性、光沢性および吐出安定性)
次に、表5に実施例1〜4の組成のインクにおいてその高分子微粒子の添加量と粒径を振った場合の比較について示す。粒径の測定はゼータサイザー3000HS(マルバーン社(英国)製))を用いて行なった。尚、定着性の評価は表2と同様の方法で行ない、光沢性の評価はセイコーエプソン株式会社製インクジェット専用紙のPM写真用紙を用いて、堀場製作所製グロスチェッカーを用いることで行なった。値が40以上をA、30以上40未満をB、20以上30未満をC、20未満をDとする。吐出安定性はセイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンターEM−930Cを用いて、A4版Xerox P紙にマイクロソフト社のワードのMS明朝文字をスタイル標準サイズ10で2000字/ページの割合で100ページ連続印字して印字乱れを生じないものをA、10個所未満印字乱れのあるものをB、10個所以上100個所未満印字乱れのあるものをC、100個所以上印字乱れのあるものをDとする。
【0079】
【表5】
【0080】
表5の結果からわかるように高分子微粒子の粒径が50〜500nmであり、添加量が0.1〜20%であることで専用紙の定着性と光沢性が向上することがわかる。以上のように、本発明においては印字画像の紙等の被記録体に対するにじみが低減される高品質で実用性の高いインクジェット記録用インクを提供することができる。
【0081】
尚、本発明はこれらの実施例に限定されると考えるべきではなく、本発明の主旨を逸脱しない限り種々の変更は可能である。
【0082】
【発明の効果】
以上述べたように本発明は本発明による分散体は安定性に優れ、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有する水性インクを作成可能とするものであり、インクジェット記録にあってはさらにインクジェットヘッドからのインクの吐出安定性に優れるという効果を有する。
Claims (10)
- 色材をポリマーを用いて水に分散可能とした分散体を二種以上含んでなる水性インクであって、該二種以上の分散体は少なくとも第一の分散体と、第二の分散体とを有し、且つ該第一の分散体の色材及び/又はポリマーと該第二の分散体の色材及び/又はポリマーとが種類が異なるものであることを特徴とする、水性インク。
- 前記第一の分散体は、分散体中色材が70重量%(以下単に%と示すものは重量%を示す)以上90%以下である請求項1に記載の水性インク。
- 前記第二の分散体は、分散体中色材が40%以上70%未満である請求項2に記載の水性インク。
- 色材をポリマーを用いて水に分散可能とした分散体を二種以上含んでなる水性インクであって、該二種以上の分散体は少なくとも第一の分散体と、第二の分散体とを有し、且つ該第一の分散体の色材とポリマーとの構成比が、該第二の分散体の色材とポリマーとの構成比と異なるものであることを特徴とする、水性インク。
- 前記第一の分散体の色材と前記第二の分散体の色材との色が同一系統色である請求項1〜4の何れかに記載の水性インク。
- 前記二種以上の分散体の混合状態でのゼータ電位の絶対値が30ミリボルト以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の水性インク。
- 粒径が50〜500nmであり、添加量が0.1〜20%である高分子微粒子をさらに含んでなることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の水性インク。
- 前記二種以上の分散体のゼータ電位の値と前記高分子微粒子のゼータ電位の値との差が±10ミリボルト以下である請求項6または7に記載の水性インク。
- 色材が有機顔料または無機顔料であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の水性インク。
- 前記二種以上の分散体のイオン極性が同一である請求項1〜9の何れかに記載の水性インク。
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