JP2004249841A - 車両用エアバッグ - Google Patents

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【課題】ガス抜き孔に代わる内圧調整手段を備えた車両用エアバッグを提供する。
【解決手段】袋織り工法で製造したエアバッグ本体18の膨張室10、11の一部を裁断して開口部22、23を形成し、その開口部22、23を縫製部24で塞いだ構造にしたため、縫製部24からガスを逃がして、エアバッグ1の内圧を最適に調整することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用エアバッグに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車の車室内上部には、側面衝突時に乗員頭部を保護するエアバッグが収納されている。このエアバッグは、上端部が車体上部のサイドルーフレールに固定された状態で、全体が折り畳まれて収納され、車室内側はガーニッシュにより覆われている。そして、自動車の側面衝突時に、インフレータのガスにより膨張し、ガーニッシュの下端部を車室内側へ押し開きながら、下方へ向けてカーテン状に展開することで、乗員頭部を保護するようになっている。
【0003】
この種のエアバッグは、二枚の基布を部分的に連結して袋状の膨張室を形成した構造になっている。従来は、2枚の基布をミシン縫いして膨張室を形成していたが、現在では、製造効率を高めるために、自動織機による袋織り工法(OPW工法)により、表裏2枚の基布を織ると同時に、袋状の膨張室を区画する連結部も共通の織りで一体に織製し、織製した後にコーティングを施して裁断する製法がとられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−40070号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、エアバッグを袋織り工法により製造することで、エアバッグの製造効率は高められるものの、袋織り工法は二重織りの過程で部分的に連結部だけを共通織りする製法のため、片方の基布だけに「ガス抜き孔」を形成することは困難である。従って、袋織り工法によるエアバッグの場合は、ガス抜き孔を開けることでエアバッグの内圧調整をすることはできず、その代わりに、インフレータから発生するガス量を調整することにより、エアバッグの内圧を最適に調整する必要があるため、インフレータの発生するガス量を厳密に管理する必要があり、インフレータの製造が困難になっている。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、ガス抜き孔に代わる内圧調整手段を備えた車両用エアバッグを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、袋織り工法にて一体的に製造されたエアバッグ本体の膨張室の一部を裁断して開口部を形成すると共に、該開口部を縫製部により塞いだことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、膨張室のガス導入側とは反対側に縫製された開口部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、縫製部により塞がれた開口部を中心にした巻き取り状態で車体に収納されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、エアバッグ本体には非膨張部を挟んだ状態で前後に2つの膨張室が形成され、且つエアバッグ本体の上部には両膨張室にインフレータからのガスを上方より導入するガス導入路が前後方向に沿って形成され、該エアバッグ本体の下端部を直線状に裁断して前後の膨張室の下端に開口部を各々形成し、且つ両開口部を非膨張室も含めて直線状に縫製した縫製部により塞いだことを特徴とする。
【0011】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、袋織り工法で製造したエアバッグ本体の膨張室の一部を裁断して開口部を形成し、その開口部を縫製部で塞いだ構造にしたため、縫製部だけ気密性が低下し、縫製部からガスを逃がすことができる。従って、開口部のサイズや、縫製部のピッチ等を変更することにより、縫製部から逃げるガス量を調整して、エアバッグ膨張時における内圧を最適に調整することができる。このようにエアバッグ側で内圧調整可能なため、インフレータ側で内圧調整(発生ガス量調整)する必要がなく、インフレータの製造が容易になる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、膨張室のガス導入側とは反対側に開口部を形成したため、導入されたガスはエアバッグ全体に行き渡った後、縫製された開口部より外部へ抜る。従って、縫製した開口部を設けても、ガスによりエアバッグを効率良く膨張させる性能に影響はない。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、エアバッグが縫製部により塞がれた開口部を中心にした巻き取り状態で車体に収納されているため、ガスはエアバッグが巻き戻されて展開する最後の段階で開口部に達するようになる。従って、縫製した開口部を設けても、ガスによりエアバッグを効率良く展開させる性能に影響はない。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、非膨張部を挟んで前後に2つの膨張室を有するような複雑な構造のエアバッグ本体であっても、袋織りされたエアバッグ本体の下端部を直線状に裁断し、またその裁断された開口部を非膨張部も含めて直線状に縫製するだけでエアバッグを完成させることができるため、エアバッグの製造効率の良さは維持される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態を、図1〜図7に基づいて説明する。図1は、自動車の上部を車室内側から見た図で、エアバッグ1が展開した状態を示している。2はフロントピラー、3はセンタピラー、4はリヤピラーを示している。各ピラー2、3、4の上部には、前後方向に沿って閉断面構造のサイドルーフレール5が形成されている。エアバッグ1は、上端の取付片6がサイドルーフレール5に沿って固定され、図2に示すような巻き取り状態で、図示せぬケース内に収納保持され、車室内側からはガーニッシュ7により覆われている。
【0016】
次に、エアバッグ1の構造を、図3〜図5に示す製法に基づいて説明する。
【0017】
エアバッグ原反(図3)
まず、長方形状のエアバッグ原反8を袋織り工法により一体形成する。エアバッグ原反8には、外周連結部9により、前席乗員に対応する前側膨張室10と、後席乗員に対応する後側膨張室11が区画形成されている。前側膨張室10と後側膨張室11の間は非膨張部12となっており、大きく膨らまない。但し、非膨張部12を膨張させなくとも、下向きに早く展開させるために、細長膨張室13が非膨張部12の中央に形成されている。前側膨張室10及び後側膨張室11には、それぞれ膨らんだ時の厚さを抑えるための内側連結部14、15が形成されている。
【0018】
前側膨張室10及び後側膨張室11の上部同士は、前後方向に沿うガス導入路16により連通した状態となっており、ガス導入路16の後側にインフレータ17が接続される。従って、インフレータ17のガスはガス導入路16を通過して、前側膨張室10及び後側膨張室11の上部側から内部へと導入される。
【0019】
エアバッグ本体(図4参照)
次に、長方形状のエアバッグ原反8を所定形状に裁断してエアバッグ本体18を形成する。すなわち、エアバッグ原反8の上部では、複数の取付片6及びガス導入口19が形成される形状で、上端部20を裁断して切り離す。エアバッグ原反8の下部では、前側の一部を除き、エアバッグ原反8の下端部21を直線状に裁断して切り離す。直線状に裁断して、下端部21を切り離すことにより、前側膨張室10及び後側膨張室11と、その間の非膨張部12も含めて直線状の切口となり、そこには前側膨張室10と後側膨張室11の下部において開口部22、23がそれぞれ形成される。
【0020】
エアバッグ(図5参照)
次に、エアバッグ本体18の下端における直線状の切口から所定寸法だけ内側のところを、その全長にわたって直線状に縫製する。そうすることで、前側膨張室10及び後側膨張室11の開口部22、23と、非膨張部12の細長膨張室13の口開き部分も含めて、全てが縫製部24により塞がれた状態となる。この縫製部24のピッチPは、このエアバッグ1に合わせて最適な寸法に設定されている。最後に、縫製部24よりも下側の前端部分にストラップ25の後端を取付けて、エアバッグ1が完成する。このストラップ25の前端は、フロントピラー2に取付けられ、エアバッグ1が下向きに展開する際に、エアバッグ1を前側へ引っ張って、前後方向への展開を助ける働きをする。
【0021】
このエアバッグ1は、エアバッグ本体18の下端を直線状に裁断し、且つその切口をまた直線状に縫製するだけで殆ど完成した状態になるため、エアバッグ1の製造効率が良い。また、このようにして完成されたエアバッグ1は、前述のような巻き取り状態で車体に取付けられるが、エアバッグ1の下端の縫製された開口部22、23が、最も中心に位置するように巻き取られる。
【0022】
従って、車両の側面衝突時に、インフレータ17からガスが噴射されると、そのガスはまずガス導入路16から前側膨張室10及び後側膨張室11の上部へ入り、上部から膨張させる。従って前側膨張室10及び後側膨張室11は、上部が初期に膨張することで、大部分が巻き取り状態のまま車室内側に飛び出し、その後、カーテン状に下方へ展開する。
【0023】
そして、エアバッグ1が下側へ向けてカーテン状に展開した後に、エアバッグ1の下端にある縫製部24からガスが抜け、エアバッグ1の内圧が適正に保たれ、乗員頭部を最適な内圧で保護することができる。
【0024】
エアバッグ1が開口部22、24を中心した巻き取り状態になっていることで、ガスはエアバッグ1が巻き戻されてカーテン状に展開する最後の段階まで開口部22、23に達せず、エアバッグ1を効率良く展開させる性能に優れる。また、縫製した開口部22、23を、前側膨張室10及び後側膨張室11におけるガス導入側(上側)とは反対側(下側)に形成したことも、膨張初期におけるガスの抜けを防止して、エアバッグ1の効率的な膨張の実現に寄与している。
【0025】
図7は、下端に縫製部24で塞いだ開口部22、23を形成しない比較例としてのエアバッグと、本実施形態のエアバッグ1における展開ストローク(S)と内圧(N)との関係をそれぞれ示したグラフである。本実施形態のエアバッグ1は、縫製部24からガスが抜けることにより、比較例に比べて適正な内圧に抑えられているものの、エアバッグ1が膨張開始するまでの立ち上がりストロークS1は、比較例と変わらないことが分かる。
【0026】
以上説明したように、この実施形態によれば、袋織り工法で製造したエアバッグ本体18の前側膨張室10及び後側膨張室11の一部を裁断して開口部22、23を形成し、その開口部22、23を縫製部24で塞いだ構造にしたため、縫製部24だけ気密性が低下し、縫製部24からガスを逃がすことができる。従って、エアバッグ1の形状に合わせて、開口部22、23のサイズや、縫製部24のピッチP等を変更することにより、逃げるガス量を調整して、エアバッグ1の膨張時における内圧を最適に調整することができる。このようにエアバッグ1側で内圧調整可能なため、従来のようにインフレータ17側で内圧調整(発生ガス量調整)する必要がなく、その分、インフレータ17の製造が容易になる。
【0027】
尚、以上の実施形態においては、インフレータ17のガスをガス導入路16の後側から導入する例を示したが、インフレータ17を前側に設けて、ガス導入路の前側からガスを導入するようにしても良い。
【0028】
また、車体上部から下側へ向けてカーテン状に展開させるエアバッグ1を例にしたが、その他のエアバッグにも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係るエアバッグが下向きに展開した状態を示す車室内斜視図。
【図2】エアバッグを折り畳んで収納した状態を示す断面図。
【図3】袋織り工法により製造したエアバッグ原反を示す側面図。
【図4】エアバッグ原反を裁断して形成したエアバッグ本体を示す側面図。
【図5】エアバッグ本体の開口部を縫製部で塞いで形成したエアバッグを示す側面図。
【図6】縫製前の開口部と、縫製後の開口部を示す断面図。
【図7】展開ストロークと内圧との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1 エアバッグ
10 前側膨張室
11 後側膨張室
16 ガス導入路
17 インフレータ
18 エアバッグ本体
22、23 開口部
24 縫製部
P ピッチ

Claims (4)

  1. 袋織り工法にて一体的に製造されたエアバッグ本体の膨張室の一部を裁断して開口部を形成すると共に、該開口部を縫製部により塞いだことを特徴とする車両用エアバッグ。
  2. 請求項1に記載の車両用エアバッグであって、
    膨張室のガス導入側とは反対側に縫製された開口部が形成されていることを特徴とする車両用エアバッグ。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車両用エアバッグであって、縫製部により塞がれた開口部を中心にした巻き取り状態で車体に収納されていることを特徴とする車両用エアバッグ。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用エアバッグであって、
    エアバッグ本体には非膨張部を挟んだ状態で前後に2つの膨張室が形成され、且つエアバッグ本体の上部には両膨張室にインフレータからのガスを上方より導入するガス導入路が前後方向に沿って形成され、
    該エアバッグ本体の下端部を直線状に裁断して前後の膨張室の下端に開口部を各々形成し、且つ両開口部を非膨張室も含めて直線状に縫製した縫製部により塞いだことを特徴とする車両用エアバッグ。
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