JP4435072B2 - 車両用カーテンエアバッグ - Google Patents

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本発明は、ガス導入初期におけるダクト部の内圧を低減して、カーテンエアバッグ本体の展開膨張方向を安定化させることが可能であるとともに、安定化したカーテンエアバッグ本体の展開膨張方向との連係で当該カーテンエアバッグ本体の配置を調整することで、カーテンエアバッグ本体を、窓部を含む車室内側面に沿って展開膨張させることが可能な車両用カーテンエアバッグに関する。
車両用カーテンエアバッグとしては、例えば特許文献1が知られている。この特許文献1は、自動車の窓部を覆うエアバッグに関し、被覆部材を破断部で迅速に破断することを目的としている。細長く折り畳んだエアバッグ本体全体を被覆部材で覆い、折り畳んだ形状を保持する。エアバッグ本体は、ガス導入口に連通する導管部(ダクト部)と、この導管部に連通する集合部(チャンバー部)とを設けるように折り畳む。被覆部材には、車室の内側に向かい、かつ、導管部に対向して、スリット状の破断部を設ける。このように構成したエアバッグを、ルーフサイドレールに沿って設ける。エアバッグ本体にガスを導入すると、まず、導管部が膨張展開し、破断部を破断する。次いで、集合部が窓部に沿って下方に膨張展開する。
特開2003−170798号公報
ところで、本発明者が検討したところ、ルーフサイドレールに沿って設けられるカーテンエアバッグ全体がその前端から後端まで同じような構造であると、ガス導入初期に、ガス導入口に連通する導管部で発生する内圧が、集合部の内圧に比して、一時的にきわめて高い状態になるという知見が得られた。そして本発明者は、導管部でその内圧が急激に上昇することの影響で集合部の内圧の上昇が遅れ、これにより導管部の挙動が不安定となり、この導管部の不安定な挙動に起因して集合部が展開していくときの方向が安定せず、このことが、カーテンエアバッグを好ましい方向に向けて展開膨張させることができない一つの原因になっているという課題を見出した。
また、このようにカーテンエアバッグの展開方向が安定しないことから、本来は乗員との干渉を避けるために、当該カーテンエアバッグ全体を、できる限り乗員から離すように、窓部を含む車室内側面(車室外方)に近接する位置に配置する必要があるが、車両の構造上、車室内側面から若干離隔された張り出し位置にカーテンエアバッグが配置される場合があり、その場合車室内方へとカーテンエアバッグが展開膨張して乗員に干渉するおそれがあるという課題があった。
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、ガス導入初期におけるダクト部の内圧を低減して、たとえ車室内側面に近接させて配置できない場合であっても、カーテンエアバッグ本体の展開膨張方向を安定化させて、カーテンエアバッグ本体を、窓部を含む車室内側面に沿って展開膨張させることが可能な車両用カーテンエアバッグを提供することを目的とする。
本発明にかかる車両用カーテンエアバッグは、ガス導入口に連通するダクト部と該ダクト部に連通するチャンバー部とを備え、折り畳み状態でルーフサイドレールに沿って設けられ、かつ、車室内側面に近接して配置される一般部分および車室内側面から離隔された張り出し位置に位置をずらして配置される張り出し部分を有し、導入されるガスで展開膨張されるカーテンエアバッグ本体と、上記張り出し部分の上記ダクト部内圧の急激な上昇を抑えると同時に上記チャンバー部へのガス流入を生じさせて該チャンバー部内圧の立ち上がりを向上するために、折り畳み状態の上記カーテンエアバッグ本体の上記張り出し部分のみを包み込むカバーと、上記カバーに設けられ、上記カーテンエアバッグ本体の展開膨張によって破断される脆弱部とを備えたことを特徴とする。
前記脆弱部が前記カバーの下向き位置に形成されることが望ましい。
前記カバーは、前記カーテンエアバッグ本体を形成する布地よりも厚手の布地で形成されることが好ましい。
前記張り出し部分の張り出し位置が乗員の着座位置に相当することが好ましい。
前記カーテンエアバッグ本体は、前記チャンバー部が巻き取られるとともに、前記ダクト部が、巻き取られた上記チャンバー部の車室内側位置でその側面に並べて折り畳まれて、全体が折り畳み状態とされることが好ましい。
本発明にかかる車両用カーテンエアバッグにあっては、ガス導入初期において、張り出し部分のダクト部内圧の急激な上昇を抑えると同時にチャンバー部へのガス流入を生じさせて当該チャンバー部内圧の立ち上がりを向上するようにして、たとえ車室内側面に近接させて配置できない場合であっても、ダクト部の挙動を安定化しカーテンエアバッグ本体の展開膨張方向を安定化させて、カーテンエアバッグ本体を車室内側面に沿って展開膨張させることができる。
以下に、本発明にかかる車両用カーテンエアバッグの好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態にかかる車両用カーテンエアバッグ1は基本的には、図1から図3に示すように、折り畳み状態でルーフサイドレール2(図5参照)に沿って設けられ、かつ、車室内側面3に近接して配置される一般部分4aおよび車室内側面3から隙間Sを隔てて離隔された張り出し位置に位置をずらして配置される張り出し部分4bを有し、導入されるガスで展開膨張されるカーテンエアバッグ本体4と、折り畳み状態のカーテンエアバッグ本体4の張り出し部分4bのみを包み込むカバー5と、カバー5に設けられ、カーテンエアバッグ本体4の展開膨張によって破断される脆弱部6とを備えて構成される。
カーテンエアバッグ本体4は、車両7の前後方向に沿ってAピラーから、車室内側にオフセットされているBピラー8を介してCピラーにわたる長さ寸法、並びに車両7の天井部9から窓部を経過してその下方に達する幅寸法で、袋状に形成される。カーテンエアバッグ本体4の車両天井部9側の上方部分には、ちょうどBピラー8のオフセット部分に設けられてガスを噴出するインフレータ10に接続されるガス導入口11に連通するダクト部12が形成される。ダクト部12下の下方部分には、ダクト部12と連通され、導入されるガスで展開膨張する複数の室からなるチャンバー部13が形成される。ダクト部12は、車両7の前後方向に沿って、カーテンエアバッグ本体4の長さ方向全長にわたって形成される。チャンバー部13の各室は、パーティションで区分けされて、車両7の前後方向に沿って複数形成され、各室はそれぞれ個々にダクト部12と連通される。このようなカーテンエアバッグ本体4の構成は、従来よく知られているものと同様である。
そしてカーテンエアバッグ本体4は、インフレータ10から導入されるガスが車両前後方向に延びるダクト部12を介してチャンバー部13の各室に流れ込むことで、展開膨張されるようになっている。図示例にあっては、インフレータ10はBピラー8近傍に設けられていて、インフレータ10からのガスは、Bピラー8のオフセット部分から導入され、ダクト部12によって、カーテンエアバッグ本体4のほぼ中央から車両前後方向に振り分けられるようになっている。
カーテンエアバッグ本体4は、巻き取られることによって、全体が折り畳み状態で車両7に配置される。具体的には、図3に示すように、右側が車室外方(車体内側面側)であって、左側が車室内方(シート側)とすると、チャンバー部13は、反時計回りに繰り出されるように、すなわち車室外方へ向かって繰り出されるように、巻き始めとなる下端13a側から順次時計回り方向に巻き取られる。チャンバー部13の上方に位置するダクト部12は、巻き取られたチャンバー部13の車室内側位置で、当該チャンバー部13の巻き取り面13bに並べて下方から上方に曲げ上げることで折り畳まれる。
このようにして折り畳まれたカーテンエアバッグ本体4は、車両天井部9のルーフサイドレール2に沿って設けられる。カーテンエアバッグ本体4には、巻き終わりとなるダクト部12に、その長さ方向に沿って適宜間隔を隔てて、上方へ突出する突片14が形成される。カーテンエアバッグ本体4は、これら突片14を介して車両7に取り付け固定される。本実施形態では、カーテンエアバッグ本体4は、車両7が備える構造(特に図示しないが、観音開きのドアを有する車両構造)のために、車両7に対する取付位置が調整される。カーテンエアバッグ本体4は、窓部が形成されたりドアトリムなどの内装材で覆われる車室内側面3に近接する取付位置と、この車室内側面3から隙間Sを隔てて離隔するように張り出して位置をずらしたシート側の取付位置とで、取付位置が調整され、これにより、車室内側面に近接して配置される一般部分4aと、この一般部分4aに対して、車室内側面3から車室内方へ離隔された張り出し位置に位置をずらして配置される張り出し部分4bを有する。
張り出し部分4bの張り出し位置Xは図2および図5に示すように、概ね乗員Pの着座位置に相当する位置に設定される。乗員Pの着座位置に相当する位置とは、展開膨張するカーテンエアバッグ本体4が着座している乗員Pと干渉しないように、カーテンエアバッグ本体4の展開膨張方向を特に制御することが必要な位置をいう。
カバー5は、折り畳み状態のカーテンエアバッグ本体4の張り出し部分4bのみを包み込む。カバー5は中空筒状に形成される。この中空筒状のカバー5内に、張り出し位置Xに配置されることとなるカーテンエアバッグ本体4の張り出し部分4bが挿入される。カバー5には、突片14をカバー5外方へ引き出すための切り込みが適宜形成される。これら切り込みは、カーテンエアバッグ本体4の展開膨張作用によっては破断しない強度で強固に形成される。
またカバー5には、カーテンエアバッグ本体4の展開膨張によって破断される脆弱部6が形成される。この脆弱部6はカバー5の下向き位置に形成され、カーテンエアバッグ本体4を車両7に取り付けた際に下方に向けられる。従って、カバー5は、カーテンエアバッグ本体4が展開膨張すると、脆弱部6の破断によって左右方向に裂かれる。脆弱部6は、カバー5に、断続的な切れ込みや細かいミシン目状の切れ込み、比較的細長い開口などを形成することで得られる。さらに、カーテンエアバッグ本体4には、折り畳み状態を保持するベルト15がその長さ方向に沿って適宜間隔を隔てて巻き付けられる。このベルト15は、張り出し部分4bでは、カバー5の外側に巻き付けられる。ベルト15は、始端15aと終端15bがオーバラップする形態で巻き付けられ、カーテンエアバッグ本体4の展開膨張作用で破断もしくは始端15aと終端15bとが引き剥がされて、保持機能が喪失されるようになっている。
カーテンエアバッグ本体4の折り畳み形状を保持し、かつカーテンエアバッグ本体4を取り付け易くするのに一般的に用いられている、背景技術に記載の被覆部材はよく知られているけれども、本発明者は、急激な内圧上昇によるダクト部12の不安定な挙動を抑えるにあたり、カーテンエアバッグ本体4とカバー5との間で擦り合わせて擦動作用を生じさせることに考え到ったものである。カーテンエアバッグ本体4の展開膨張方向を制御したい箇所に位置するカーテンエアバッグ本体4の部分(張り出し部分4b)に、部分的にカバー5を装着することで、一般部分4aも含めてカーテンエアバッグ本体4全体にカバー5を装着するよりも、効果的に目的とする制御箇所に対する擦動作用を得ることができる。さらに、カバー5を形成する布地として、当該カバー5内に収納されるカーテンエアバッグ本体4の布地よりも厚手のものを選定することにより、当該擦動作用をより確実かつ安定的に得ることができる。すなわち、カバー5を形成する厚手の布地は、折り畳まれたカーテンエアバッグ本体4の形状を保持し、車両7に取り付け易くするために一般的に用いられている、薄く強度の低い布地ではなく、カーテンエアバッグ本体4を形成する布地よりも厚手の、少なくとも厚さが1.4mm以上のファブリックからなり、強度的にもカーテンエアバッグ本体4の布地よりも高強度のものである。例えば、1400デシテックスで厚さが1.5mm〜2.0mmのウェビング(編み物)や、470デシテックスのものを2枚重ねた、厚さ1.5mm〜2.0mm程度の布地が本実施形態のカバー5として用いられる。
次に、本実施形態にかかる車両用カーテンエアバッグ1の作用について説明する。インフレータ10からのガスは、ガス導入口11を介して、カーテンエアバッグ本体4のダクト部12に流入し、ガスはさらに、ダクト部12からチャンバー部13へと流入していく。この際、ダクト部12に流入したガスは、車両前後方向に延びるダクト部12全体に行き渡ろうとする。本実施形態にあっては、部分的にカーテンエアバッグ本体4を包み込むカバー5を設けているので、このカバー5が設けられている部分(張り出し部分4b)では、一般部分4aとは異なり、当該カバー5の作用によってダクト部12内圧の急激な上昇が抑えられる。そしてこのようなダクト部12内圧の上昇抑制作用が生じている状況下で、これと同時にチャンバー部13へのガス流入も生じて、当該チャンバー部13内圧の立ち上がりが向上し、これによりチャンバー部13の展開方向に悪影響を与えていたダクト部12の挙動を安定化させることができる。
図4には、ダクト部12内圧の変化を、厚手の布地で形成したカバー5を設けた場合とカバー5を設けない場合とで比較した実験結果が示されている。縦軸は圧力Pを示し、横軸は時間tを示す。カバー5を設けない場合(図中、破線Aで示す)には、ダクト部12内圧は、ガスの流入とともに鋭く立ち上がり、その後のチャンバー部13内へのガスの流入によって顕著な下降傾向を示していて、ダクト部12内の圧力が大きく変動している。特に、ダクト部12にガスが集中する一方で、チャンバー部13への流入が遅れるガス導入初期の圧力状況が、ダクト部12に不安定な挙動を生じさせる。これに対し、厚手の布地で形成したカバー5を設けた場合(図中、実線Bで示す)には、ダクト部12内圧は、ガス導入初期から低い状態にあり、その後もほぼ同じ圧力状態にあって、ガス導入初期からチャンバー部13内へもガスが流れ込んでいることが窺われ、カーテンエアバッグ本体4が展開する際のダクト部12内圧が平準化されて、ダクト部12の挙動を安定化できることがわかる。
その後は、カバー5が脆弱部6で破断され、これによりカーテンエアバッグ本体4の張り出し部分4bを、挙動が安定化したダクト部12によって、安定した方向性をもって車室内へと展開膨張させることができる。
図5は、展開テスト結果を撮影した写真を図面化したもので、表1に示す3種類の布地に対してテストを行った。
Figure 0004435072
すなわち、厚手の布地で形成したカバー5を使用することで、ほぼ真下方向にカーテンエアバッグ本体4を展開膨張させることができ、車室内側面3から多少離隔させて配置しても、カバー5がない場合(図5中、一点鎖線Cで示す)に比べて、より確実に窓部を含む車室内側面3に沿って下方へカーテンエアバッグ本体4を展開膨張させることができる(図5中、実線Dで示す)。
脆弱部6をカバー5の下向き位置に形成したので、展開方向を安定化させたカーテンエアバッグ本体4をスムーズに下方に向かって展開膨張させることができる。張り出し部分4bの張り出し位置Xを乗員Pの着座位置に相当するカーテンエアバッグ本体4の展開方向制御を確実に行う必要のある範囲について、カーテンエアバッグ本体4を適切に、窓部を含む車室内側面3と乗員Pとの間で、当該車室内側面3に沿って下方へ展開膨張させることができる。また、巻き取ったチャンバー部13の車室内側位置に、当該チャンバー部13の巻き取り側面13bに並べてダクト部12を折り畳む態様で、カーテンエアバッグ本体4を折り畳むようにしたので、ダクト部12を基点としてチャンバー部13を車室内側面3側へ向かって展開させることができ、これによってもカーテンエアバッグ本体4を確実に窓部を含む車室内側面3に沿って下方へ展開膨張させることができる。
本発明にかかる車両用カーテンエアバッグの好適な一実施形態を示す側面図である。 図1に示した車両用カーテンエアバッグの平面図である。 図1の車両用カーテンエアバッグに適用されるカーテンエアバッグ本体の張り出し部分の断面図である。 ダクト部内圧の変化を、カバーを設けた場合とカバーを設けない場合とで比較した実験結果を示すグラフ図である。 カバーを設けた場合とカバーを設けない場合とで比較したカーテンエアバッグ本体の展開膨張状態を示す正面図である。
符号の説明
1 車両用カーテンエアバッグ
2 ルーフサイドレール
3 車室内側面
4 カーテンエアバッグ本体
4a カーテンエアバッグ本体の一般部分
4b カーテンエアバッグ本体の張り出し部分
5 カバー
6 脆弱部
11 ガス導入口
12 ダクト部
13 チャンバー部
P 乗員
X 張り出し位置

Claims (4)

  1. ガス導入口に連通するダクト部と該ダクト部に連通するチャンバー部とを備え、折り畳み状態でルーフサイドレールに沿って設けられ、かつ、車室内側面に近接して配置される一般部分および車室内側面から離隔された張り出し位置に位置をずらして配置される張り出し部分を有し、導入されるガスで展開膨張されるカーテンエアバッグ本体と、
    上記張り出し部分の上記ダクト部内圧の急激な上昇を抑えると同時に上記チャンバー部へのガス流入を生じさせて該チャンバー部内圧の立ち上がりを向上するために、折り畳み状態の上記カーテンエアバッグ本体の上記張り出し部分のみを包み込むカバーと、
    上記カバーに設けられ、上記カーテンエアバッグ本体の展開膨張によって破断される脆弱部とを備えたことを特徴とする車両用カーテンエアバッグ。
  2. 前記脆弱部が前記カバーの下向き位置に形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用カーテンエアバッグ。
  3. 前記カバーが、前記カーテンエアバッグ本体を形成する布地よりも厚手の布地で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用カーテンエアバッグ。
  4. 前記カーテンエアバッグ本体は、前記チャンバー部が巻き取られるとともに、前記ダクト部が、巻き取られた上記チャンバー部の車室内側位置でその側面に並べて折り畳まれて、全体が折り畳み状態とされることを特徴とする請求項1〜3いずれかの項に記載の車両用カーテンエアバッグ。
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