JP2004248411A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジンからの動力と1つ以上の発電可能なモータジェネレータを有するハイブリッド車両の制御装置において、動力伝達機構のの回転速度を検出または推定する回転速度検出手段と、エンジントルクと走行抵抗トルクの少なくとも1つを外乱トルクとし、動力伝達機構の回転速度と外乱トルクとを状態量とし、エンジントルクと走行抵抗トルクのうち外乱トルクとしなかったトルクとモータトルクとを入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化したプラントモデルと、プラントモデルが出力する回転速度推定値と、前記回転速度検出手段による回転速度検出値との偏差を求める比較手段と、プラントモデルの状態量が実際の値付近に収束するように、プラントモデルの状態量を該偏差で補正して、外乱トルクを推定する外乱推定手段とを有する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1つ以上のモータトルクとエンジントルクを狙った目標値に制御するハイブリッド車両の制御装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンと2つのモータジェネレータによる動力を遊星歯車装置で合成して、駆動軸に出力するハイブリッド車両において、遊星歯車装置に作用するエンジントルクとモータトルクと走行抵抗トルクがすべて分かれば、制御で、過渡的にも目標駆動トルクを精度良く実現できる。
【0003】
これらのトルクを安価に検出することは難しいので、推定することを考える。モータトルクは、モータジェネレータ電流から精度良く推定可能である。しかし、ハイブリッド車両の走行抵抗トルクやエンジントルクを推定する従来技術は開示されていない。最も近い従来技術として、トルク推定の趣旨は異なるが、パワートレインの柔軟性による捩れトルクを外乱トルクとして推定し、この外乱トルクをモータジェネレータで補償する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この従来技術では、実プラントの回転速度出力とプラントモデルの回転速度出力との偏差に応じて外乱トルクを推定する。そして、外乱トルクで実プラントの入力を補正して、実プラントの特性をプラントモデルの特性に近似する。実プラントとプラントモデルの入力は、プラントモデルの逆特性に基づくフィードフォワード制御器を通して得られる。結果として、実プラントの特性をプラントモデルの特性に近似できれば、フィードフォワード制御器によりプラントの共振点が打ち消され、振動が低減する。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−217209号公報(図1)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術をハイブリッド車両のエンジントルクと走行抵抗トルクの推定に適用した場合、従来技術の方法では、エンジントルクと走行抵抗トルクの2つを分離して推定することができない。この2つを分離して推定することができないと、過渡的に目標駆動トルクを精度良く実現できない可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、エンジントルクと走行抵抗トルクの2つを分離して推定することができ、過渡的にも目標駆動トルクが精度良く実現されることで、運転者の希望する加速感を得ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、
エンジンからの動力と1つ以上の発電可能なモータジェネレータからの動力を駆動軸に伝達する動力伝達機構を有するハイブリッド車両で、エンジン,車速,モータジェネレータのいずれかの回転速度が変化しているときでも、運転者の意図に応じた駆動力を実現するように、エンジントルクと走行抵抗トルクに応じてモータトルクを指令する制御装置において、
動力伝達機構回転要素の少なくとも1つの回転速度を検出または推定する回転速度検出手段と、
動力伝達機構に入力されるトルクのうち、エンジントルクと走行抵抗トルクの少なくとも1つを外乱トルクとし、動力伝達機構の回転速度と外乱トルクとを状態量とし、エンジントルクと走行抵抗トルクのうち外乱トルクとしなかったトルクとモータトルクとを入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化したプラントモデルと、
プラントモデルが出力する回転速度推定値と、前記回転速度検出手段による回転速度検出値との偏差を求める比較手段と、
プラントモデルの状態量が実際の値付近に収束するように、プラントモデルの状態量を該偏差で補正して、外乱トルクを推定する外乱推定手段と、
を有することを特徴とする。
【0009】
【発明の効果】
よって、本発明のハイブリッド車両の制御装置にあっては、動力伝達機構に入力されるトルクのうち、エンジントルクと走行抵抗トルクの少なくとも1つを外乱トルクとし、動力伝達機構の回転速度と外乱トルクとを状態量とし、エンジントルクと走行抵抗トルクのうち外乱トルクとしなかったトルクとモータトルクとを入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化することでプラントモデルを設定し、比較手段において、プラントモデルが出力する回転速度推定値と、回転速度検出手段による回転速度検出値との偏差を求め、外乱推定手段において、プラントモデルの状態量が実際の値付近に収束するように、プラントモデルの状態量を該偏差で補正して、外乱トルクを推定するようにしたため、エンジントルクと走行抵抗トルクの2つを分離して推定することができ、過渡的にも目標駆動トルクが精度良く実現されることで、運転者の希望する加速感を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実現する実施の形態を、図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(第1実施例)
図1は、本発明第1実施例のハイブリッド変速機を示し、これを第1実施例においては、前輪駆動車(FF車)用のトランスアクスルとして用いるのに有用な以下の構成とする。
【0012】
図1において、ハイブリッド変速機は、左側からエンジンENG、ラビニョ型遊星歯車装置2および複合電流2層モータ3を同軸に配置する。ラビニョ型遊星歯車装置2は、ピニオンP2を共有する第2シングルピニオン遊星歯車装置4および第1シングルピニオン遊星歯車装置5とから成る。第2シングルピニオン遊星歯車装置4はサンギヤS2およびリングギヤR2にそれぞれピニオンP2を噛合させた構造とし、第1シングルピニオン遊星歯車装置5はサンギヤS1および共有ピニオンP2の他に、リングギヤR1および大径ピニオンP1を具え、大径ピニオンP1をサンギヤS1、リングギヤR1および共有ピニオンP2の3者に噛合させた構造とする。そして遊星歯車装置4、5のピニオンP1、P2を全て、共通なキャリアCにより回転自在に支持する。なお、このラビニョ型遊星歯車装置2を縦列にみた場合には、上記のように2つのシングルピニオン遊星歯車装置4、5とみなされるが、ラビニョ型遊星歯車装置2を互いに交差するクロス列でみた場合には、互いに噛み合う大径ピニオンP1と共有ピニオンP2を有する2つのダブルピニオン遊星歯車装置とみなすことができる。
【0013】
以上の構成になるラビニョ型遊星歯車装置2は、サンギヤS1、サンギヤS2、リングギヤR1、リングギヤR2、ピニオンP1、ピニオンP2およびキャリアCの7個の回転メンバを主たる要素とし、これら7個のメンバのうち、2個のメンバの回転速度を決定すると、他のメンバの回転速度が決まる2自由度の差動装置を構成する。かかるラビニョ型遊星歯車装置2に対し第1実施例においては、図1の左側に同軸に配置したエンジンENGからの回転がシングルピニオン遊星歯車装置5のリングギヤR2に入力されるよう、リングギヤR2にエンジンENGのクランクシャフトを結合する。一方で、ラビニョ型遊星歯車装置2からの出力回転を共通なキャリアCより取り出すよう、このキャリアCに車輪駆動系Out(例えば、図1におけるディファレンシャルギヤ装置を含む終減速機6および左右駆動車輪7)を結合する。
【0014】
前記複合電流2層モータ3は、インナーロータ3riと、これを包囲する環状のアウターロータ3roとを、変速機ケース1内の後軸端に同軸に回転自在に支持して具え、これらインナーロータ3riおよびアウターロータ3ro間における環状空間に同軸に配置した環状コイルよりなるステータ3sを変速機ケース1に固設して構成する。かくして、環状コイル3sとアウターロータ3roとで外側に第2のモータジェネレータMG2が構成され、環状コイル3sとインナーロータ3riとで内側に第1のモータジェネレータMG1が構成される。ここでモータジェネレータMG1、MG2はそれぞれ、複合電流を供給される時は供給電流に応じた個々の方向の、また供給電流に応じた個々の速度(停止を含む)の回転を出力するモータとして機能し、複合電流を供給されない時は外力による回転に応じた電力を発生する発電機として機能する。かかる複合電流2層モータ3と、ラビニョ型遊星歯車装置2との間の結合に当たっては、ダブルピニオン遊星歯車装置5のサンギヤS1に第1のモータジェネレータMG1(詳しくはインナーロータ3ri)を結合し、シングルピニオン遊星歯車装置4のサンギヤS2に第2のモータジェネレータMG2(詳しくはアウターロータ3ro)を結合する。
【0015】
図2は制御装置を含んだハイブリッドシステムの構成を示す。ハイブリッドシステムは、全体のエネルギーを統合制御する「統合コントローラ10」と、エンジンENGを制御する「エンジンコントローラ12」と、ハイブリッド変速機内のモータジェネレータMG1,MG2を制御する「モータコントローラ11」と、モータジェネレータMG1,MG2に電気を供給する「インバータ13」と、電気エネルギーを蓄える「バッテリ14」と、モータジェネレータMG1,MG2を含む「ハイブリッド変速機」と、から成る。
【0016】
前記統合コントローラ10は、アクセル開度APとエンジン回転速度ωEと車速VSP(出力軸回転速度に比例)とに応じて、運転者が意図する運転状態を実現するように、モータコントローラ11に目標MGトルクを、エンジンコントローラ12に目標エンジントルクを指令する。ここで、統合コントローラ10に入力する回転速度は、エンジン回転速度と出力軸回転速度に限定されるものではなく、ラビニョ型遊星歯車装置2の回転要素のうち、いずれか2つの回転速度であれば良い。なぜなら、ラビニョ型遊星歯車装置2の回転自由度は2であるので、いずれか2つの回転要素の回転速度が分かれば、他の回転要素の回転速度も分かるためである。また、モータコントローラ11への指令値は、目標MGトルクではなく目標MG回転速度とし、モータコントローラ11内部に、PI制御器などで目標MG回転速度を実現する制御系を有しても良い。
【0017】
図3は、第1実施例の統合コントローラ10で実行される制御のブロック図である。第1実施例の統合コントローラ10は、「目標駆動力生成手段20」と、「目標値生成手段21」と、「目標エンジン回転加速度演算手段22」と、「トルク配分手段23」と、「外乱推定手段30」と、から成る。
【0018】
前記目標駆動力生成手段20は、アクセル開度APと車速VSPとから、目標駆動トルクT0 *と目標駆動動力P0 *を演算する。
先ず、アクセル開度APと車速VSPとから、図4に示す駆動トルクマップを用いて、ハイブリッド変速機出力軸における目標駆動トルクT0 *を算出する。ここで、車速VSPは、例えば、出力軸回転速度ω0から次式を用いて演算される。
VSP=kv・ω0 ...(1)
ここで、kvは、タイヤ半径やファイナルギア比で決まる定数である。
次に、目標駆動トルクT0 *と出力軸回転速度ω0とから、目標駆動動力P0 *を、
P0 *=ω0・T0 * ...(2)
の式を用いて演算する。
【0019】
目標値生成手段21は、目標駆動動力P0 *に応じて、目標エンジン回転速度ωE *と目標エンジントルクT E *とを演算する。例えば、目標エンジン回転速度ωE *と目標エンジントルクT E *として、目標駆動動力P0 *をエンジンENGで供給した場合において、燃費最適となるエンジン動作点とすれば良い。先ず、目標駆動動力P0 *から、図5に示す燃費最適目標エンジン回転速度マップを用いて、目標エンジン回転速度ωE *を算出する。次に、目標駆動動力P0 *をエンジンENGで供給するために、次式を用いて、目標駆動動力P0 *と目標エンジン回転速度ωE *とから、目標エンジントルクTE *を、
TE *=P0 */ωE * ...(3)
の式を用いて演算する。
【0020】
前記目標エンジン回転加速度演算手段22は、目標エンジン回転速度ωE *とエンジン回転速度ωEとの偏差を入力して、この偏差が減少するように、目標エンジン回転加速度ω’E *を演算する。例えば、次式に示すスライディングモード制御器を用いて、目標エンジン回転加速度ω’E *を演算すれば良い。
ここで、Kは目標エンジン回転加速度ω’E *の上限を決める定数、εはσのゼロ近傍で、目標エンジン回転加速度ω’E *を連続化する正の定数である。
【0021】
前記トルク配分手段23は、変速時や加速時においても、目標駆動トルクT0 *が実現されるように、目標MG1トルクT1 *と目標MG2トルクT2 *を設定する。
【0022】
ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性は、例えば、エンジン回転速度ωEと出力軸回転速度ω0とを状態量として次式で表される。
ω’E=b11TR+b12TE+b13T1+b14T2 ...(6)
ω’0=b21TR+b22TE+b23T1+b24T2 ...(7)
ここで、b+添字は、ラビニョ型遊星歯車装置回転要素の半径と慣性モーメントで決まる定数である。また、出力軸における駆動トルクをT0とすると、キャリアの運動方程式は次のように表される。
(IC+IV)ω’0=T0−TR ...(8)
式(7)と式(8)とから、ω’0を消去すると次式が得られる。
T0={(IC+IV)b21+1}TR+(IC+IV)b22TE+(IC+IV)b23T1+(IC+IV)b24T2 ...(9)
式(6)と式(9)をまとめると、次式が得られる。
この式(10)を用いて、目標エンジン回転加速度ω’E *、目標駆動トルクT0 *、走行抵抗トルク推定値T^R、エンジントルク推定値T^Eから、目標MG1トルクT1 *と目標MG2トルクT2 *を次式のように演算する。
ここで、走行抵抗トルク推定値T^R、エンジントルク推定値T^Eは、後述する外乱推定手段30で演算される。
【0023】
図6は、第1実施例装置の外乱推定手段30のブロック図である。この外乱推定手段30は、MG1トルクT1とMG2トルクT2と遊星歯車装置回転要素のいずれか2つの回転速度を入力し、外乱オブザーバを用いて走行抵抗トルク推定値T^Rとエンジントルク推定値T^Eとを演算する(請求項1)。以下に、外乱オブザーバを説明する。
【0024】
式(6),(7)で表される遊星歯車装置の動特性を、状態空間表現すると次式で表される。
走行抵抗トルクTRとエンジントルクTEとを外乱として推定するために、これらを一定外乱と考え、遊星歯車装置の状態量に加えて拡大プラントを求めると、遊星歯車装置の動特性は次式で書き直される。
出力方程式は次式で表される。
この拡大プラントは可観測であるので、外乱オブザーバで、外乱(ここでは走行抵抗トルクとエンジントルク)を独立に推定できる。拡大プラントに基づいて、外乱オブザーバは次式で表される。
ここで、eωEはエンジン回転速度推定値、eω0は出力軸回転速度推定値、eTRは走行抵抗トルク推定値、eTEはエンジントルク推定値であり、(Ae−HCe)が安定な固有値を持つように、オブザーバゲインHを設定することで、外乱オブザーバによる推定値は、実際の値近くに収束する。
【0025】
以下に、図6に基づいて、外乱推定手段30のアルゴリズムを説明する。
先ず、比較手段32は、遊星歯車装置回転要素の回転速度yと外乱推定手段による回転速度推定値yob1との偏差を求める。次に、プラントモデル31の演算を行い、状態量を更新する。この際、状態量を偏差に応じて補正する。この拡大プラントの演算は、式(15)で表される。最後に、外乱推定手段30は、走行抵抗トルク推定値eTRとエンジントルク推定値eTEを出力する。
【0026】
第1実施例の構成によれば、走行抵抗トルクとエンジントルクとを独立して、推定することができるので、式(11)で表される制御則で、過渡的にも目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できることが可能となり、運転者の希望に近い加速感が得られる。
【0027】
次に、効果を説明する。
第1実施例のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記の効果を得ることができる。
【0028】
(1)エンジンENGからの動力と1つ以上の発電可能なモータジェネレータMG1,MG2からの動力を駆動軸に伝達するラビニョ型遊星歯車装置2を有するハイブリッド車両で、エンジンENG,車速VSP,モータジェネレータMG1,MG2のいずれかの回転速度が変化しているときでも、運転者の意図に応じた駆動力を実現するように、エンジントルクと走行抵抗トルクに応じてモータトルクを指令する制御装置において、ラビニョ型遊星歯車装置2の回転速度を検出または推定する回転速度検出手段と、ラビニョ型遊星歯車装置2に入力されるトルクのうち、エンジントルクと走行抵抗トルクの少なくとも1つを外乱トルクとし、ラビニョ型遊星歯車装置2の回転速度と外乱トルクとを状態量とし、エンジントルクと走行抵抗トルクのうち外乱トルクとしなかったトルクとモータトルクとを入力として、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化したプラントモデル31と、プラントモデル31が出力する回転速度推定値と、前記回転速度検出手段による回転速度検出値との偏差を求める比較手段32と、プラントモデル31の状態量が実際の値付近に収束するように、プラントモデル31の状態量を該偏差で補正して、外乱トルクを推定する外乱推定手段30とを有するので、エンジントルクと走行抵抗トルクの2つを分離して推定することができ、過渡的にも目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できるため、運転者の希望する加速感が得られる。
【0029】
外乱推定に用いる回転速度は、エンジン回転速度と出力軸回転速度としたが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、ラビニョ型遊星歯車装置回転要素のいずれか2つの回転速度であればよい。なぜなら、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性は、エンジン回転速度と出力軸回転速度で表されるのみならず、ラビニョ型遊星歯車装置回転要素のいずれか2つの回転速度で表されるためである。したがって、式(6),(7)で表されるラビニョ型遊星歯車装置2の動特性の状態量を、エンジン回転速度と出力軸回転速度以外の回転速度にした場合、新たな状態量に応じた拡大プラントを用いて外乱オブザーバを構築すればよい。
【0030】
また、外乱推定手段30は、必ずしも走行抵抗トルクとエンジントルクを2つとも推定する必要はなく、どちらか一方を推定してもよい。このとき、拡大プラントで用いるラビニョ型遊星歯車装置2の動特性は、式(6),(7)で表される関係の少なくとも1つを用いれば、拡大プラントを可観測とすることができる。
【0031】
(第2実施例)
以下、本発明の第2実施例のハイブリッド車の制御装置を図面に基づき詳細に説明する。
図7に、第2実施例のハイブリッド変速機を示す。第1実施例のハイブリッド変速機と異なるのは、第2シングルピニオン遊星歯車装置5のリングギアR1を、ブレーキL/Bでケース1に締結可能な構成を有する点であり、その他の構成は第1実施例のハイブリッド変速機(図1)と同じであるので説明は省略する。ブレーキL/Bとして、湿式多板クラッチが用いられ、油圧に応じてブレーキの締結/解放/スリップを行うことができる。
【0032】
図8は制御装置を含んだハイブリッドシステムの構成を示す。第1実施例のハイブリッドシステムと異なるのは、ブレーキ油圧を供給するソレノイドバルブ16を有する点であり、その他の構成は第1実施例と同じであるので説明は省略する。ソレノイドバルブ16は、統合コントローラ10からのPWM信号で駆動される。
【0033】
図9は、第2実施例の統合コントローラ10で実行される制御のブロック図である。目標駆動力生成手段20と目標値生成手段21と、目標エンジン回転加速度演算手段22は、第1実施例の統合コントローラ10と同じであるので説明は省略する。
【0034】
モード選択手段40では、ブレーキの解放/締結指令値の設定と、外乱推定モードの選択を行う。
先ず、例えば、車速VSPとアクセル開度APとから、大きな駆動力が必要なときに、ブレーキL/Bを締結するようにブレーキL/Bの締結/解放指令を設定する。
【0035】
次に、ブレーキL/Bの締結/解放指令に基づいてブレーキ油圧制御手段41が出力するブレーキ油圧指令値と第2シングルピニオン遊星歯車装置5のリングギアR1の回転速度とから、次に示す表1のように外乱推定モードを選択する(請求項2)。
ここで、モードAが締結状態、モードBが動力を伝達しながらスリップしている状態、モードCが解放状態を表す。
【0036】
トルク配分手段23では、外乱推定手段30で推定したエンジントルク、走行抵抗トルク、ブレーキトルクと、モータトルクと、目標エンジン回転加速度と目標駆動トルクとから、目標MG1トルクT1 *と目標MG2トルクT2 *を演算する。
【0037】
ブレーキ非締結時(リングギアR1の回転速度がゼロではない時、モードBとモードC)のブレーキ付ラビニョ型遊星歯車装置の動特性は、例えば、エンジン回転速度ωEと出力軸回転速度ω0とを状態量として次式で表される。
ω’E=b’11TR+b’12TB+b’13TE+b’14T1+b’15T2 ...(17)
ω’0=b’21TR+b’22TB+b’23TE+b’24T1+b’25T2 ...(18)
ここで、b’+添字は、ラビニョ型遊星歯車装置回転要素の半径と慣性モーメントで決まる定数である。式(18)と式(8)とから、ω’0を消去すると次式が得られる。
T0={(IC+IV)b’21+1}TR+(IC+IV)b’22TE+(IC+IV)b’23TE+(IC+IV)b’24T1+(IC+IV)b’25T2 ...(19)
式(17)と式(19)をまとめると、次式が得られる。
この式(20)を用いて、モードBもしくはモードCのとき、目標エンジン回転加速度ω’E *、目標駆動トルクT0 *、走行抵抗トルク推定値eTR、エンジントルク推定値eTE、ブレーキトルク推定値eTBから、目標MG1トルクT1 *と目標MG2トルクT2 *を次式のように演算する。
但し、ブレーキ解放時、ブレーキは動力を伝達していないので、ブレーキトルク推定値eTBはゼロとしてよい。
【0038】
また、ブレーキ締結時(リングギアR1の回転速度がゼロの時、モードA)のブレーキ付ラビニョ型遊星歯車装置の動特性は、例えば、出力軸回転速度ω0を状態量として次式で表される。
ω’0=b1TR+b2TE+b3T1+b4T2 ...(22)
ここで、b+添字は、ラビニョ型遊星歯車装置回転要素の半径と慣性モーメントで決まる定数である。式(22)と式(8)とから、ω’0を消去すると次式が得られる。
T0={(IC+IV)b1+1}TR+(IC+IV)b2TE+(IC+IV)b3T1+(IC+IV)b4T2 ...(23)
ブレーキ締結時(モードA時)は、変速比制御(エンジン回転速度制御)は行わないので、式(23)を用いて、目標駆動トルクT0 *、走行抵抗トルク推定値eTR、エンジントルク推定値eTEから、目標MG2トルクT2 *を次式のように演算する。
ここで、例えば、目標MG1トルクT1 *はゼロとすればよい。
【0039】
外乱推定手段30は、第1実施例に示したように、遊星歯車装置の動特性を表したモデルの状態量に、推定する外乱を状態量として加えたプラントモデルに基づく外乱オブザーバを用いて、走行抵抗トルク、エンジントルク、ブレーキトルクを適時選択して推定する(請求項2、3、4)。
【0040】
外乱オブザーバには、状態量に外乱を加えて拡大したプラントモデルが可観測でなければ、外乱を推定できないという制約がある。この制約は、遊星歯車装置の動特性を表現したモデルに依存し、動特性が式(17),(18)で表されるブレーキ非締結時では、推定できる外乱は2つまでであり、動特性が式(22)で表されるブレーキ締結時では、推定できる外乱は1つである。
【0041】
しかし、上記トルク配分手段23で示したように、ブレーキL/Bが動力を伝達しながらスリップしている場合(モードBの場合)は走行抵抗トルクとエンジントルクとブレーキトルクの3つを知りたいし、その他の場合(モードAもしくはモードCの場合)は走行抵抗トルクとエンジントルクとの2つを知りたい。次に示す表2に、ここで述べた、モード毎に知りたいトルクの数と、外乱オブザーバで推定できるトルクの数を示す。
この表2から、モードAとモードBでは、知りたいトルクの数に対して外乱オブザーバで推定できるトルクの数が1つ少ないことが分かる。そこで、モードAとモードBでは、知りたいトルクのうち、外乱オブザーバ以外の方法で推定した場合、最も精度良く推定できるトルクは外乱オブザーバ以外の方法で推定し、残りのトルクを外乱オブザーバで推定することにする。このとき、外乱オブザーバ以外の方法で推定したトルクは、外乱オブザーバの入力とする。例えば、外乱オブザーバで推定するトルクを、モードに応じて次に示す表3のように選択する。
第1実施例で示した外乱オブザーバの設計方法に準じて、モード毎の外乱オブザーバを設計する。モード毎の外乱オブザーバは次のように表される。但し、それぞれの外乱オブザーバの係数行列要素は、第1実施例で示した外乱オブザーバの設計方法に準じて外乱オブザーバを設計すると容易に導出可能なので、ここでは省略する。
【0042】
《モードA》(請求項2、3)
式(22)で表される遊星歯車装置の動特性に基づき、プラントモデルの状態量は出力軸回転速度と走行抵抗トルクとした外乱オブザーバ、
とする。
【0043】
《モードB》(請求項4、5)
式(17),(18)で表される遊星歯車装置の動特性に基づき、プラントモデルの状態量はエンジン回転速度と出力軸回転速度と走行抵抗トルクとブレーキトルクした外乱オブザーバ、
とする。
【0044】
《モードC》(請求項2)
式(17),(18)で表される遊星歯車装置の動特性に基づき、プラントモデルの状態量はエンジン回転速度と出力軸回転速度と走行抵抗トルクとエンジントルクした外乱オブザーバ、
とする。
【0045】
以下に、図10に基づいて、外乱推定手段30のアルゴリズムを説明する。
先ず、比較手段32は、モードに応じて、遊星歯車装置回転要素の回転速度と外乱推定手段30による回転速度推定値との偏差を求める。モード毎の偏差を以下に示す。
《モードA》yA−yobA
《モードB》yB−yobB
《モードC》yC−yobC
次に、プラントモデル31の演算を行い、状態量を更新する。この際、状態量を偏差に応じて補正する。この演算は、モード毎に式(25)から式(27)で表される。最後に、外乱推定手段30は、走行抵抗トルク推定値eTRとエンジントルク推定値eTEとブレーキトルク推定値eTBを出力する。
【0046】
また、表3に示したような、モードに応じた、外乱オブザーバで推定するトルクの選択の他に、次に示す表4のような選択も考えられる。
表3と表4との違いは、モードBで走行抵抗トルクの代わりにエンジントルクを外乱オブザーバで推定する点である。この場合、モードBでは、走行抵抗トルクが外乱オブザーバの入力になる。モードBの間は、モードBに遷移する前に、モードAもしくはモードCで最後に推定した走行抵抗トルク推定値を保持して、外乱オブザーバの入力とする(請求項5)。この理由を以下に示す。
【0047】
動力を伝達している状態でブレーキL/Bをスリップさせ続けると、ブレーキL/Bは発熱し続けてブレーキプレートが焼けてしまう可能性がある。ブレーキプレートが焼けてしまうと、ブレーキプレートの摩擦係数が非常に小さくなって動力が伝達や締結ができなくなる。したがって、ブレーキL/Bの締結は、約1秒以下という短時間に行い、プレートが焼けるのを防ぐのが一般的である。走行抵抗トルクは、主に空気抵抗、転がり抵抗、斜面の重力に依存しており、これらが約1秒以下という短時間に大きく変化する可能性は少ない。そこで、モードBでは、走行抵抗トルクを外乱オブザーバの入力とし、エンジントルクとブレーキトルクを外乱オブザーバで推定する。
【0048】
次に、効果を説明する。
第2実施例のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0049】
(2)1つ以上の遊星歯車装置で構成され、エンジンENGからの動力と1つ以上の発電可能なモータジェネレータMG1,MG2からの動力を駆動軸に伝達するラビニョ型遊星歯車装置2と、前記遊星歯車装置回転要素のいずれか1つを、ケース1もしくは他の遊星歯車装置回転要素に締結することで、エンジンENGと駆動軸との回転速度比を固定可能なブレーキL/Bと、を有するハイブリッド車両で、エンジンENG,車速VSP,モータジェネレータMG1,MG2のいずれかの回転速度が変化しているときでも、運転者の意図に応じた駆動力を実現するように、エンジントルクと走行抵抗トルクに応じてモータトルクを指令する制御装置において、ブレーキ締結状態をモードAとし、ブレーキ解放状態をモードCとし、現時刻の運転状態から上記モードを選択するモード選択手段40と、モードAが選択された場合、ブレーキL/Bでケース1に締結されていない遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか1つの回転速度を検出または推定し、モードCが選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定する回転速度検出手段と、モードAが選択された場合、エンジントルクと走行抵抗トルクのいずれかを外乱トルクとし、エンジントルクと走行抵抗トルクのうち外乱トルクとしなかったトルクとモータトルク指令値とを入力とし、回転速度検出手段で回転速度を検出または推定する回転要素の回転速度と外乱トルクを状態量とし、一方、モードCが選択された場合、エンジントルクと走行抵抗トルクを外乱トルクとし、モータトルク指令値を入力し、回転速度検出手段で回転速度を検出または推定する回転要素の回転速度と外乱トルクを状態量とし、ラビニョ型遊星歯車装置2をモデル化したプラントモデル31と、プラントモデル31が出力する回転速度推定値と、前記回転速度検出手段による回転速度検出値との偏差を求める比較手段32と、プラントモデル31の状態量が実際の値付近に収束するように、プラントモデル31の状態量を該偏差で補正して、外乱トルクを推定する外乱推定手段30と、を有するため、ブレーキ締結状態によりオブザーバで推定できる外乱トルクの数が変化するのに応じて、オブザーバで推定する外乱トルクを最適に選択すると共に、全体のトルク推定精度がより向上するようにオブザーバで推定する外乱トルクを選択するので、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現でき、運転者の希望する加速感が得られる。
【0050】
(3)予め実験などで求めたエンジントルク特性でエンジントルクを推定するエンジントルク推定手段を有し、前記プラントモデル31は、モードAが選択された場合、走行抵抗トルクを外乱トルクとし、エンジントルクとモータトルクとを入力としてラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化するようにしたため、ブレーキ締結時(モードA時)に、外乱オブザーバの方法以外で推定した場合に精度良く推定できるエンジントルクとモータトルクとを外乱オブザーバの入力とし、オブザーバで推定する外乱トルクとして走行抵抗トルクを選択するので、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できる。
【0051】
(4)予め実験などで求めたエンジントルク特性でエンジントルクを推定するエンジントルク推定手段を有し、前記モード選択手段40は、モードAとモードCに加え、ブレーキL/Bが動力を伝達しながらスリップしている状態をモードBとし、前記回転速度検出手段は、モードBが選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、前記プラントモデル31は、モードBが選択された場合、走行抵抗トルクとブレーキトルクを外乱トルクとし、モータトルクとエンジントルク推定値を入力として、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化するようにしため、ブレーキスリップ締結時(モードB時)に、外乱オブザーバの方法以外で推定した場合に精度良く推定できるエンジントルクとモータトルクとを外乱オブザーバの入力とし、オブザーバで推定する外乱トルクとして走行抵抗トルクとブレーキトルクを選択するので、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できる。
【0052】
(5)前記モード選択手段40は、モードAとモードCに加え、ブレーキが動力を伝達しながらスリップしている状態をモードBとし、前記回転速度検出手段は、モードBが選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、前記プラントモデル31は、モードBが選択された場合、エンジントルクとブレーキトルクを外乱トルクとし、モータトルクと走行抵抗トルクを入力として、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化すると共に、プラントモデル31を用いて状態量を演算するときに入力する走行抵抗トルクとして、モードAもしくはモードCからモードBへ変化する直前に、モードAもしくはモードCで外乱トルクとして推定した走行抵抗トルク推定値を、モードBが選択されている間保持するようにしたため、ブレーキスリップ締結時(モードB時)に、外乱オブザーバの方法以外で精度良く推定できるモータトルクと予め推定しておいた走行抵抗トルクとを外乱オブザーバの入力とし、オブザーバで推定する外乱トルクとしてエンジントルクとブレーキトルクを選択するので、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できる。
【0053】
(第3実施例)
以下、本発明の第3実施例のハイブリッド車の制御装置を図面に基づき詳細に説明する。
【0054】
図11に、第3実施例のハイブリッド変速機を示す。第2実施例のハイブリッド変速機と異なるのは、エンジンENGと第1シングルピニオン遊星歯車4のサンギアS2を断続可能なクラッチ8を有する点であり、その他の構成は第2実施例と同じであるので説明は省略する。前記クラッチ8として、湿式多板クラッチが用いられ、油圧に応じてクラッチ8の締結/解放/スリップを行うことができる。
【0055】
図12は制御装置を含んだハイブリッドシステムの構成を示す。第2実施例のハイブリッドシステムと異なるのは、クラッチ油圧を供給するソレノイドバルブ17を有する点であり、その他の構成は第2実施例と同じであるので説明は省略する。ソレノイドバルブ17は、統合コントローラ10からのPWM信号で駆動される。
【0056】
図13は、第3実施例の統合コントローラ10で実行される制御のブロック図である。目標駆動力生成手段20は第1実施例の統合コントローラ10と同じであるので説明は省略する。
【0057】
目標値生成手段21は、目標駆動動力P0 *に応じて、目標入力回転速度ωi *と目標エンジントルクTE *とを演算する。例えば、目標入力回転速度ωi *は目標エンジン回転と等価として、目標駆動動力P0 *をエンジンENGで供給した場合において、燃費最適となるエンジン動作点とすれば良い。先ず、目標駆動動力P0 *から、図5に示す燃費最適目標エンジン回転速度マップを用いて、目標入力回転速度ωi *を算出する。次に、目標駆動動力P0 *をエンジンENGで供給するために、次式を用いて、目標駆動動力P0 *と目標入力回転速度ωi *とから、目標エンジントルクTE *を演算する。
TE *=P0 */ωi *
目標入力回転加速度演算手段24は、目標入力回転速度ωi *とサンギアS2の回転速度ωiとの偏差を入力して、この偏差が減少するように、目標入力回転加速度ω’i *を演算する。例えば、次式に示すスライディングモード制御器を用いて、目標入力回転加速度ω’i *を演算すれば良い。
モード選択手段40では、ブレーキL/Bの解放/締結指令値の設定と、クラッチ8の解放/締結指令値の設定と、外乱推定モードの選択を行う。
【0058】
先ず、例えば、車速VSPとアクセル開度APとから、大きな駆動力が必要なときに、ブレーキL/Bを締結するようにブレーキL/Bの締結/解放指令を設定する。そして、例えば、車速VSPがある所定値より高い場合にクラッチ8を締結するように、クラッチ8の締結/解放指令を設定する。
【0059】
次に、ブレーキL/Bの締結/解放指令に基づいてブレーキ油圧制御手段41が出力するブレーキ油圧指令値と第2シングルピニオン遊星歯車装置5のリングギアR1の回転速度とから、次に示す表5のようにブレーキL/Bの締結状態を推定する。
また、クラッチ8の締結/解放指令に基づいてクラッチ油圧制御手段42が出力するクラッチ油圧指令値と、エンジン回転速度と入力回転速度との速度差とから、次に示す表6のようにクラッチ8の締結状態を推定する。
そして、ブレーキL/Bの締結状態とクラッチ8の締結状態とから、次に示す表7のようにモードを選択する(請求項6)。
トルク配分手段23では、後述する外乱推定手段30で推定するエンジントルク推定値もしくはクラッチトルク推定値、走行抵抗トルク推定値、ブレーキトルク推定値と、モータトルクと目標入力回転加速度と目標駆動トルクとから、目標MG1トルクT1 *と目標MG2トルクT2 *を演算する。ブレーキ非締結かつクラッチ締結時(モードB1、モードC1)のブレーキ・クラッチ付ラビニョ型遊星歯車装置の動特性は、例えば、入力回転速度ωiと出力軸回転速度ω0とを状態量とすると、式(17),(18)でエンジン回転速度ωEを入力回転速度ωiに置き換えた形で表される。これは、第2実施例におけるブレーキ非締結時の動特性と同じである。したがって、式(21)において、目標エンジン回転加速度ωE *を目標入力回転加速度ωi *に置き換えた式を用いて、モードB1、モードC1のとき、目標入力回転加速度ωi *、目標駆動トルクT0 *、走行抵抗トルク推定値eTR、エンジントルク推定値eTE、ブレーキトルク推定値eTBから、目標MG1トルクT1 *と目標MG2トルクT2 *を演算できる。
【0060】
ブレーキ非締結かつクラッチ非締結時(モードB2、B3、C2、C3)のブレーキ・クラッチ付ラビニョ型遊星歯車装置の動特性は、例えば、入力回転速度ωiと出力軸回転速度ω0とを状態量として次式で表される。
ω’i=b”11TR+b”12TB+b”13TE+b”14T1+b”15T2 ...(28)
ω’0=b”21TR+b”22TB+b”23TE+b”24T1+b”25T2 ...(29)
ここで、b’+添字は、ラビニョ型遊星歯車装置回転要素の半径と慣性モーメントで決まる定数である。式(29)と式(8)とから、ω’0を消去すると次式が得られる。
T0={(IC+IV)b”21+1}TR+(IC+IV)b”22TE+(IC+IV)b”23TE+(IC+IV)b”24T1+(IC+IV)b”25T2 ...(30)
式(28)と式(30)をまとめると、次式が得られる。
この式(31)を用いて、モードB2,B3,C2,C3のとき、目標エンジン回転加速度ω’E *、目標駆動トルクT0 *、走行抵抗トルク推定値eTR、クラッチトルク推定値eTEC、ブレーキトルク推定値eTBから、目標MG1トルクT1 *と目標MG2トルクT2 *を次式のように演算する。
但し、ブレーキ解放時(モードC2,C3)、ブレーキL/Bは動力を伝達していないので、ブレーキトルク推定値eTBはゼロとしてよく、クラッチ解放時(モードB3,C3)、クラッチ8は動力を伝達していないので、クラッチトルク推定値eTECはゼロとしてよい。
【0061】
ブレーキ締結かつクラッチ締結時(モードA1)のブレーキ・クラッチ付ラビニョ型遊星歯車装置の動特性は、例えば、出力軸回転速度ω0を状態量として式(22)で表される。これは、第2実施例におけるブレーキ締結時の動特性と同じである。したがって、式(24)を用いて、目標駆動トルクT0 *、走行抵抗トルク推定値eTR、エンジントルク推定値eTEから、目標MG2トルクT2 *を演算できる。
【0062】
ブレーキ締結かつクラッチ非締結時(モードA2、A3)のブレーキ・クラッチ付ラビニョ型遊星歯車装置の動特性は、例えば、出力軸回転速度ω0を状態量として次式で表される。
ω’0=b’1TR+b’2TEC+b’3T1+b’4T2 ...(33)
ここで、b’+添字は、ラビニョ型遊星歯車装置回転要素の半径と慣性モーメントで決まる定数である。式(33)と式(8)とから、ω’0を消去すると次式が得られる。
T0={(IC+IV)b’1+1}TR+(IC+IV)b’2TE+(IC+IV)b’3T1+(IC+IV)b’4T2 ...(34)
ブレーキ締結時は、変速比制御(エンジン回転速度制御)は行わないので、式(34)を用いて、目標駆動トルクT0 *、走行抵抗トルク推定値eTR、クラッチトルク推定値eTECから、目標MG2トルクT2 *を次式のように演算する。
ここで、例えば目標MG1トルクT1 *はゼロとすればよい。
【0063】
外乱推定手段30は、第1実施例に示したように、遊星歯車装置の動特性を表したモデルの状態量に、推定する外乱を状態量として加えたプラントモデルに基づく外乱オブザーバを用いて、走行抵抗トルク、エンジントルク、クラッチトルク、ブレーキトルクを適時選択して推定する(請求項6、7、8、9、11、13、14)。
【0064】
第2実施例と同様の理由から、モード毎に知りたいトルクの数と、外乱オブザーバで推定できるトルクの数を次の表8に示す。
この表から、モードA1、A2、B1、B2では、知りたいトルクの数に対して外乱オブザーバで推定できるトルクの数が1つ少ないことが分かる。そこで、モードA1、A2、B1、B2では、知りたいトルクのうち、外乱オブザーバ以外の方法で推定した場合、最も精度良く推定できるトルクは外乱オブザーバ以外の方法で推定し、残りのトルクを外乱オブザーバで推定することにする。このとき、外乱オブザーバ以外の方法で推定したトルクは、外乱オブザーバの入力とする。例えば、外乱オブザーバで推定するトルクを、モードに応じて次に示す表9のように選択する。
第1実施例で示した外乱オブザーバの設計方法に準じて、モード毎の外乱オブザーバを設計する。モード毎の外乱オブザーバは次のように表される。但し、それぞれの外乱オブザーバの係数行列要素は、トルク配分手段23で示したモード毎の動特性に注意しながら、第1実施例で示した外乱オブザーバの設計方法に準じて外乱オブザーバを設計すると容易に導出可能なので、ここでは省略する。
【0065】
《モードA1》(請求項6、7)
式(22)で表される遊星歯車装置の動特性に基づき、プラントモデルの状態量は出力軸回転速度と走行抵抗トルクとした外乱オブザーバ、
とする。
【0066】
《モードA2、A3》(請求項6、11)
式(33)で表される遊星歯車装置の動特性に基づき、プラントモデルの状態量は出力軸回転速度と走行抵抗トルクとした外乱オブザーバ、
とする。
但し、モードA3のとき、クラッチは動力を伝達していないので、クラッチトルク推定値eTEはゼロとしてよい。このとき、オブザーバの入力はすべて検出値となるため、推定精度は向上する。
【0067】
《モードB1》(請求項9)
式(17),(18)で表される遊星歯車装置の動特性に基づき、プラントモデルの状態量は入力回転速度と出力軸回転速度と走行抵抗トルクとブレーキトルクした外乱オブザーバ、
とする。
【0068】
《モードB2》(請求項13、14、15)
式(28),(29)で表される遊星歯車装置の動特性に基づき、プラントモデルの状態量は入力回転速度と出力軸回転速度と走行抵抗トルクとブレーキトルクした外乱オブザーバ、
とする。
【0069】
《モードB3》(請求項8)
式(28),(29)で表される遊星歯車装置の動特性に基づき、プラントモデルの状態量は入力回転速度と出力軸回転速度と走行抵抗トルクとブレーキトルクした外乱オブザーバ、
とする。
【0070】
《モードC1》(請求項6)
式(17),(18)で表される遊星歯車装置の動特性に基づき、プラントモデルの状態量は入力回転速度と出力軸回転速度と走行抵抗トルクとエンジントルクした外乱オブザーバ、
とする。
【0071】
《モードC2》(請求項8)
式(28),(29)で表される遊星歯車装置の動特性に基づき、プラントモデルの状態量は入力回転速度と出力軸回転速度と走行抵抗トルクとクラッチトルクした外乱オブザーバ、
とする。
【0072】
《モードC3》(請求項6)
式(29)で表される遊星歯車装置の動特性に基づき、プラントモデルの状態量は出力軸回転速度と走行抵抗トルクとした外乱オブザーバ、
とする。
【0073】
以下に、図10に基づいて、外乱推定手段30のアルゴリズムを説明する。
先ず、比較手段32は、モードに応じて、遊星歯車装置回転要素の回転速度と外乱推定手段30による回転速度推定値との偏差を求める。次に、プラントモデル31の演算を行い、状態量を更新する。この際、状態量を偏差に応じて補正する。この演算は、モード毎に式(36)から式(43)で表される。最後に、外乱推定手段30は、走行抵抗トルク推定値eTRとエンジントルク推定値eTEとブレーキトルク推定値eTBを出力する。
【0074】
また、表9に示したような、モードに応じた、外乱オブザーバで推定するトルクの選択の他に、次に示す表10のような選択も考えられる。
表9と表10との違いは、モードA2、モードB2で走行抵抗トルクの代わりにクラッチトルクを、モードB1で走行抵抗トルクの代わりにクラッチトルクを外乱オブザーバで推定する点である。この場合、モードA2、B1、B2では、走行抵抗トルクが外乱オブザーバの入力になる。モードA2、B1、B2の間は、モードA2、B1、B2に遷移する前に、最後に推定した走行抵抗トルク推定値を保持して、外乱オブザーバの入力とする(請求項10、12、15)。
【0075】
この理由は、第2実施例の表4の説明で示したのと同様に、ブレーキL/Bやクラッチ8をスリップさせている時間は、約1秒以下と短いため、この間、走行抵抗が大きく変わる可能性は低いからである。
【0076】
次に、効果を説明する。
第3実施例のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0077】
(6)1つ以上の遊星歯車装置で構成され、エンジンENGからの動力と1つ以上の発電可能なモータジェネレータMG1,MG2からの動力を駆動軸に伝達するラビニョ型遊星歯車装置2と、前記遊星歯車装置回転要素のいずれか1つを、ケース1もしくは他の遊星歯車装置回転要素に締結することで、エンジンENGと駆動軸との回転速度比を固定可能なブレーキL/Bと、エンジンENGと遊星歯車装置とを断続可能なクラッチ8とを有するハイブリッド車両で、エンジンENG,車速VSP,モータジェネレータMG1,MG2のいずれかの回転速度が変化しているときでも、運転者の意図に応じた駆動力を実現するように、エンジントルクもしくはクラッチトルクと走行抵抗トルクに応じてモータトルクを指令する制御装置において、ブレーキ締結かつクラッチ締結状態をモードA1とし、ブレーキ解放かつクラッチ締結状態をモードA3とし、ブレーキ締結かつクラッチ解放状態をモードC1とし、ブレーキ解放かつクラッチ解放状態をモードC3とし、現時刻の運転状態から上記モードを選択するモード選択手段40と、モードA1、A3、C3が選択された場合、ブレーキL/Bで締結されていない遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか1つの回転速度を検出または推定し、モードC1が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定する回転速度検出手段と、モードA1が選択された場合、ラビニョ型遊星歯車装置2に入力されるトルクのうち、エンジントルクと走行抵抗トルクのいずれかを外乱トルクとし、エンジントルクと走行抵抗トルクのうち外乱トルクとしなかったトルクとモータトルクとを入力とし、回転速度検出手段で回転速度を検出または推定する回転要素の回転速度と外乱トルクとを状態量とし、モードA3が選択された場合、走行抵抗トルクを外乱トルクとし、モータトルクとを入力とし、回転速度検出手段で回転速度を検出または推定する回転要素の回転速度と外乱トルクとを状態量とし、モードC1が選択された場合、動力伝達機構に入力されるトルクのうち、エンジントルクと走行抵抗トルクの少なくとも1つを外乱トルクとし、エンジントルクと走行抵抗トルクのうち外乱トルクとしなかったトルクとモータトルクとを入力とし、回転速度検出手段で回転速度を検出または推定する回転要素の回転速度と外乱トルクとを状態量とし、モードC3が選択された場合、走行抵抗トルクを外乱トルクとし、モータトルクを入力とし、回転速度検出手段で回転速度を検出または推定する回転要素の回転速度と外乱トルクとを状態量として動力伝達機構の動特性をモデル化し、プラントモデル31が出力する回転速度推定値と、前記回転速度検出手段による回転速度検出値との偏差を求める比較手段32と、プラントモデル31の状態量が実際の値付近に収束するように、プラントモデル31の状態量を該偏差で補正して、外乱トルクを推定する外乱推定手段30と、を有し、ブレーキ締結状態によりオブザーバで推定できる外乱トルクの数が変化するのに応じて、オブザーバで推定する外乱トルクを最適に選択すると共に、ブレーキ締結状態とクラッチ締結状態とに応じて、全体のトルク推定精度がより向上するようにオブザーバで推定する外乱トルクを選択するので、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できるので、運転者の希望する加速感が得られる。
【0078】
(7)予め実験などで求めたエンジントルク特性でエンジントルクを推定するエンジントルク推定手段を有し、前記プラントモデル31は、モードA1が選択された場合、走行抵抗トルクを外乱トルクとし、エンジントルクとモータトルクとを入力としてラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化するようにしたため、ブレーキ締結・クラッチ締結時(モードA1時)に、外乱オブザーバの方法以外で推定した場合に精度良く推定できるエンジントルクとモータトルクとを外乱オブザーバの入力とし、オブザーバで推定する外乱トルクとして走行抵抗トルクを選択するので、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できる。
【0079】
(8)前記モード選択手段40は、ブレーキL/Bが動力を伝達しながらスリップしている状態で、かつクラッチ解放状態をモードB3とし、ブレーキ解放状態で、かつクラッチが動力を伝達しながらスリップしている状態をモードC2とし、前記回転速度検出手段は、モードB3、C2が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、前記プラントモデル31は、モードB3が選択された場合、走行抵抗トルクとブレーキトルクを外乱トルクとし、モータトルクを入力として、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化し、モードC2が選択された場合、走行抵抗トルクとクラッチトルクを外乱トルクとし、モータトルクを入力として、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化するようにしたため、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できる。
【0080】
(9)予め実験などで求めたエンジントルク特性でエンジントルクを推定するエンジントルク推定手段を有し、前記モード選択手段40は、ブレーキL/Bが動力を伝達しながらスリップしている状態で、かつクラッチ締結状態をモードB1とし、前記回転速度検出手段は、モードB1が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、前記プラントモデル31は、モードB1が選択された場合、走行抵抗トルクとブレーキトルクを外乱トルクとし、モータトルクとエンジントルクを入力として、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化するようにしたため、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できる。
【0081】
(10)前記モード選択手段40は、ブレーキが動力を伝達しながらスリップしている状態で、かつクラッチ締結状態をモードB1とし、前記回転速度検出手段は、モードB1が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、前記プラントモデル31は、モードB1が選択された場合、エンジントルクとブレーキトルクを外乱トルクとし、モータトルクと走行抵抗トルクを入力として、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化すると共に、プラントモデル31を用いて状態量を演算するときに入力する走行抵抗トルクとして、モードA1もしくはモードC1からモードB1へ変化する直前に、モードA1もしくはモードC1で外乱トルクとして推定した走行抵抗トルク推定値を、モードB1が選択されている間保持するようにしたため、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できる。
【0082】
(11)クラッチトルクを検出または推定するクラッチトルク推定手段を有し、前記モード選択手段40は、ブレーキ締結状態で、かつクラッチ8が動力を伝達しながらスリップしている状態をモードA2とし、前記回転速度検出手段は、モードA2が選択された場合、ブレーキL/Bで締結されていない遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか1つの回転速度を検出または推定し、前記プラントモデル31は、モードA2が選択された場合、走行抵抗トルクを外乱トルクとし、モータトルクとクラッチトルクを入力として、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化するようにしたため、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できる。
【0083】
(12)前記モード選択手段40は、ブレーキ締結状態で、かつクラッチ8が動力を伝達しながらスリップしている状態をモードA2とし、前記回転速度検出手段は、モードA2が選択された場合、ブレーキで締結されていない遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか1つの回転速度を検出または推定し、前記プラントモデル31は、モードA2が選択された場合、クラッチトルクを外乱トルクとし、モータトルクと走行抵抗トルクを入力として、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化すると共に、プラントモデル31を用いて状態量を演算するときに入力する走行抵抗トルクとして、モードA1もしくはモードA3からモードA2へ変化する直前に、モードA1もしくはモードA3で外乱トルクとして推定した走行抵抗トルク推定値を、モードA2が選択されている間保持するようにしたため、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できる。
【0084】
(13)ブレーキトルクを検出または推定するブレーキトルク推定手段を有し、前記モード選択手段40は、ブレーキL/B、クラッチ8ともに、動力を伝達しながらスリップしている状態をモードB2とし、前記回転速度検出手段は、モードB2が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、前記プラントモデル31は、モードB2が選択された場合、クラッチトルクと走行抵抗トルクとを外乱トルクとし、ブレーキトルクとモータトルクとを入力とし、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化するようにしたため、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できる。
【0085】
(14)クラッチトルクを検出または推定するクラッチトルク推定手段を有し、前記モード選択手段40は、ブレーキL/B、クラッチ8ともに、動力を伝達しながらスリップしている状態をモードB2とし、前記回転速度検出手段は、モードB2が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、前記プラントモデル31は、モードB2が選択された場合、ブレーキトルクと走行抵抗トルクを外乱トルクとし、クラッチトルクとモータトルクを入力とし、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化するようにしたため、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できる。
【0086】
(15)前記モード選択手段40は、ブレーキL/B、クラッチ8ともに、動力を伝達しながらスリップしている状態をモードB2とし、前記回転速度検出手段は、モードB2が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、前記プラントモデル31は、モードB2が選択された場合、クラッチトルクとブレーキトルクを外乱トルクとし、モータトルクと走行抵抗トルクを入力として、ラビニョ型遊星歯車装置2の動特性をモデル化すると共に、プラントモデル31を用いて状態量を演算するときに入力する走行抵抗トルクとして、モードB2以外のモードからモードB2へ変化する直前に、外乱トルクとして推定した走行抵抗トルク推定値を、モードB2が選択されている間保持するようにしたため、遊星歯車装置回転要素の回転速度が変化するときでも、目標駆動トルクT0 *を精度良く実現できる。
【0087】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を第1実施例〜第3実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0088】
例えば、第1実施例〜第3実施例で示した構成のハイブリッド車両のみならず、エンジンとからの動力と少なくとも1つ以上の発電可能なモータからの動力を駆動軸に伝達する動力伝達機構を用いたハイブリッド車両に対して適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例のハイブリッド車両の制御装置を示す全体システム図である。
【図2】第1実施例のハイブリッド制御システム図である。
【図3】第1実施例装置の統合コントローラで実行される制御のブロック図である。
【図4】駆動トルクマップ図である。
【図5】燃費最適エンジン回転数マップ図である。
【図6】第1実施例装置の外乱オブザーバを示す構成図である。
【図7】第2実施例のハイブリッド車両の制御装置を示す全体システム図である。
【図8】第2実施例のハイブリッド制御システム図である。
【図9】第2実施例装置の統合コントローラで実行される制御のブロック図である。
【図10】第2実施例装置の外乱オブザーバを示す構成図である。
【図11】第3実施例のハイブリッド車両の制御装置を示す全体システム図である。
【図12】第3実施例のハイブリッド制御システム図である。
【図13】第3実施例装置の統合コントローラで実行される制御のブロック図である。
【符号の説明】
ENG エンジン
1 変速機ケース
2 ラビニョ型遊星歯車装置
3 複合電流2層モータ
3ro アウターロータ(第2のモータジェネレータ)
3ri インナーロータ(第1のモータジェネレータ)
3s ステータ
4 第1シングルピニオン遊星歯車装置
5 第2ダブルピニオン遊星歯車装置
6 終減速機
7 左右駆動車輪
8 クラッチ
L/B ブレーキ
10 統合コントローラ
11 モータコントローラ
12 エンジンコントローラ
13 インバータ
14 バッテリ
16 ソレノイドバルブ
17 ソレノイドバルブ
20 目標駆動力生成手段
21 目標値生成手段
22 目標エンジン回転加速度演算手段
23 トルク配分手段
24 目標入力回転加速度演算手段
30 外乱推定手段
31 プラントモデル
32 比較手段
40 モード選択手段
41 ブレーキ油圧制御手段
42 クラッチ油圧制御手段
Claims (15)
- 1つ以上の遊星歯車装置で構成され、エンジンからの動力と1つ以上の発電可能なモータジェネレータからの動力を駆動軸に伝達する動力伝達機構を有するハイブリッド車両で、エンジン,車速,モータジェネレータのいずれかの回転速度が変化しているときでも、運転者の意図に応じた駆動力を実現するように、エンジントルクと走行抵抗トルクに応じてモータトルクを指令する制御装置において、
動力伝達機構回転要素の少なくとも1つの回転速度を検出または推定する回転速度検出手段と、
動力伝達機構に入力されるトルクのうち、エンジントルクと走行抵抗トルクの少なくとも1つを外乱トルクとし、動力伝達機構の回転速度と外乱トルクとを状態量とし、エンジントルクと走行抵抗トルクのうち外乱トルクとしなかったトルクとモータトルクとを入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化したプラントモデルと、
プラントモデルが出力する回転速度推定値と、前記回転速度検出手段による回転速度検出値との偏差を求める比較手段と、
プラントモデルの状態量が実際の値付近に収束するように、プラントモデルの状態量を該偏差で補正して、外乱トルクを推定する外乱推定手段と、
を有することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 1つ以上の遊星歯車装置で構成され、エンジンからの動力と1つ以上の発電可能なモータジェネレータからの動力を駆動軸に伝達する動力伝達機構と、前記遊星歯車装置回転要素のいずれか1つを、ケースもしくは他の遊星歯車装置回転要素に締結することで、エンジンと駆動軸との回転速度比を固定可能なブレーキと、を有するハイブリッド車両で、エンジン,車速,モータジェネレータのいずれかの回転速度が変化しているときでも、運転者の意図に応じた駆動力を実現するように、エンジントルクと走行抵抗トルクに応じてモータトルクを指令する制御装置において、
ブレーキ締結状態をモードAとし、ブレーキ解放状態をモードCとし、現時刻の運転状態から上記モードを選択するモード選択手段と、
モードAが選択された場合、ブレーキでケースに締結されていない遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか1つの回転速度を検出または推定し、モードCが選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定する回転速度検出手段と、
モードAが選択された場合、エンジントルクと走行抵抗トルクのいずれかを外乱トルクとし、エンジントルクと走行抵抗トルクのうち外乱トルクとしなかったトルクとモータトルク指令値とを入力とし、回転速度検出手段で回転速度を検出または推定する回転要素の回転速度と外乱トルクを状態量とし、一方、モードCが選択された場合、エンジントルクと走行抵抗トルクを外乱トルクとし、モータトルク指令値を入力し、回転速度検出手段で回転速度を検出または推定する回転要素の回転速度と外乱トルクを状態量とし、動力伝達機構の動特性をモデル化したプラントモデルと、
プラントモデルが出力する回転速度推定値と、前記回転速度検出手段による回転速度検出値との偏差を求める比較手段と、
プラントモデルの状態量が実際の値付近に収束するように、プラントモデルの状態量を該偏差で補正して、外乱トルクを推定する外乱推定手段と、
を有することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 請求項2に記載されたハイブリッド車の制御装置において、予め実験などで求めたエンジントルク特性でエンジントルクを推定するエンジントルク推定手段を有し、
前記プラントモデルは、モードAが選択された場合、走行抵抗トルクを外乱トルクとし、エンジントルクとモータトルクとを入力として動力伝達機構の動特性をモデル化することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 請求項2または請求項3に記載されたハイブリッド車の制御装置において、
予め実験などで求めたエンジントルク特性でエンジントルクを推定するエンジントルク推定手段を有し、
前記モード選択手段は、モードAとモードCに加え、ブレーキが動力を伝達しながらスリップしている状態をモードBとし、
前記回転速度検出手段は、モードBが選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、
前記プラントモデルは、モードBが選択された場合、走行抵抗トルクとブレーキトルクを外乱トルクとし、モータトルクとエンジントルク推定値を入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 請求項2または請求項3に記載されたハイブリッド車の制御装置において、
前記モード選択手段は、モードAとモードCに加え、ブレーキが動力を伝達しながらスリップしている状態をモードBとし、
前記回転速度検出手段は、モードBが選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、
前記プラントモデルは、モードBが選択された場合、エンジントルクとブレーキトルクを外乱トルクとし、モータトルクと走行抵抗トルクを入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化すると共に、プラントモデルを用いて状態量を演算するときに入力する走行抵抗トルクとして、モードAもしくはモードCからモードBへ変化する直前に、モードAもしくはモードCで外乱トルクとして推定した走行抵抗トルク推定値を、モードBが選択されている間保持することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 1つ以上の遊星歯車装置で構成され、エンジンからの動力と1つ以上の発電可能なモータジェネレータからの動力を駆動軸に伝達する動力伝達機構と、前記遊星歯車装置回転要素のいずれか1つを、ケースもしくは他の遊星歯車装置回転要素に締結することで、エンジンと駆動軸との回転速度比を固定可能なブレーキと、エンジンと遊星歯車装置とを断続可能なクラッチとを有するハイブリッド車両で、エンジン,車速,モータジェネレータのいずれかの回転速度が変化しているときでも、運転者の意図に応じた駆動力を実現するように、エンジントルクもしくはクラッチトルクと走行抵抗トルクに応じてモータトルクを指令する制御装置において、
ブレーキ締結かつクラッチ締結状態をモードA1とし、ブレーキ解放かつクラッチ締結状態をモードA3とし、ブレーキ締結かつクラッチ解放状態をモードC1とし、ブレーキ解放かつクラッチ解放状態をモードC3とし、現時刻の運転状態から上記モードを選択するモード選択手段と、
モードA1、A3、C3が選択された場合、ブレーキで締結されていない遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか1つの回転速度を検出または推定し、モードC1が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定する回転速度検出手段と、
モードA1が選択された場合、動力伝達機構に入力されるトルクのうち、エンジントルクと走行抵抗トルクのいずれかを外乱トルクとし、エンジントルクと走行抵抗トルクのうち外乱トルクとしなかったトルクとモータトルクとを入力とし、回転速度検出手段で回転速度を検出または推定する回転要素の回転速度と外乱トルクとを状態量とし、モードA3が選択された場合、走行抵抗トルクを外乱トルクとし、モータトルクとを入力とし、回転速度検出手段で回転速度を検出または推定する回転要素の回転速度と外乱トルクとを状態量とし、モードC1が選択された場合、動力伝達機構に入力されるトルクのうち、エンジントルクと走行抵抗トルクの少なくとも1つを外乱トルクとし、エンジントルクと走行抵抗トルクのうち外乱トルクとしなかったトルクとモータトルクとを入力とし、回転速度検出手段で回転速度を検出または推定する回転要素の回転速度と外乱トルクとを状態量とし、モードC3が選択された場合、走行抵抗トルクを外乱トルクとし、モータトルクを入力とし、回転速度検出手段で回転速度を検出または推定する回転要素の回転速度と外乱トルクとを状態量として動力伝達機構の動特性をモデル化し、
プラントモデルが出力する回転速度推定値と、前記回転速度検出手段による回転速度検出値との偏差を求める比較手段と、
プラントモデルの状態量が実際の値付近に収束するように、プラントモデルの状態量を該偏差で補正して、外乱トルクを推定する外乱推定手段と、
を有することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 請求項6に記載されたハイブリッド車の制御装置において、
予め実験などで求めたエンジントルク特性でエンジントルクを推定するエンジントルク推定手段を有し、
前記プラントモデルは、モードA1が選択された場合、走行抵抗トルクを外乱トルクとし、エンジントルクとモータトルクとを入力として動力伝達機構の動特性をモデル化することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 請求項6または請求項7に記載されたハイブリッド車の制御装置において、
前記モード選択手段は、ブレーキが動力を伝達しながらスリップしている状態で、かつクラッチ解放状態をモードB3とし、ブレーキ解放状態で、かつクラッチが動力を伝達しながらスリップしている状態をモードC2とし、
前記回転速度検出手段は、モードB3、C2が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、
前記プラントモデルは、モードB3が選択された場合、走行抵抗トルクとブレーキトルクを外乱トルクとし、モータトルクを入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化し、モードC2が選択された場合、走行抵抗トルクとクラッチトルクを外乱トルクとし、モータトルクを入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 請求項6ないし請求項8の何れか1項に記載されたハイブリッド車の制御装置において、
予め実験などで求めたエンジントルク特性でエンジントルクを推定するエンジントルク推定手段を有し、
前記モード選択手段は、ブレーキが動力を伝達しながらスリップしている状態で、かつクラッチ締結状態をモードB1とし、
前記回転速度検出手段は、モードB1が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、
前記プラントモデルは、モードB1が選択された場合、走行抵抗トルクとブレーキトルクを外乱トルクとし、モータトルクとエンジントルクを入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 請求項6ないし請求項8の何れか1項に記載されたハイブリッド車の制御装置において、
前記モード選択手段は、ブレーキが動力を伝達しながらスリップしている状態で、かつクラッチ締結状態をモードB1とし、
前記回転速度検出手段は、モードB1が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、
前記プラントモデルは、モードB1が選択された場合、エンジントルクとブレーキトルクを外乱トルクとし、モータトルクと走行抵抗トルクを入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化すると共に、プラントモデルを用いて状態量を演算するときに入力する走行抵抗トルクとして、モードA1もしくはモードC1からモードB1へ変化する直前に、モードA1もしくはモードC1で外乱トルクとして推定した走行抵抗トルク推定値を、モードB1が選択されている間保持することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 請求項6ないし請求項10の何れか1項に記載されたハイブリッド車の制御装置において、
クラッチトルクを検出または推定するクラッチトルク推定手段を有し、
前記モード選択手段は、ブレーキ締結状態で、かつクラッチが動力を伝達しながらスリップしている状態をモードA2とし、
前記回転速度検出手段は、モードA2が選択された場合、ブレーキで締結されていない遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか1つの回転速度を検出または推定し、
前記プラントモデルは、モードA2が選択された場合、走行抵抗トルクを外乱トルクとし、モータトルクとクラッチトルクを入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 請求項6ないし請求項10の何れか1項に記載されたハイブリッド車の制御装置において、
前記モード選択手段は、ブレーキ締結状態で、かつクラッチが動力を伝達しながらスリップしている状態をモードA2とし、
前記回転速度検出手段は、モードA2が選択された場合、ブレーキで締結されていない遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか1つの回転速度を検出または推定し、
前記プラントモデルは、モードA2が選択された場合、クラッチトルクを外乱トルクとし、モータトルクと走行抵抗トルクを入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化すると共に、プラントモデルを用いて状態量を演算するときに入力する走行抵抗トルクとして、モードA1もしくはモードA3からモードA2へ変化する直前に、モードA1もしくはモードA3で外乱トルクとして推定した走行抵抗トルク推定値を、モードA2が選択されている間保持することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 請求項6ないし請求項12の何れか1項に記載されたハイブリッド車の制御装置において、
ブレーキトルクを検出または推定するブレーキトルク推定手段を有し、
前記モード選択手段は、ブレーキ、クラッチともに、動力を伝達しながらスリップしている状態をモードB2とし、
前記回転速度検出手段は、モードB2が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、
前記プラントモデルは、モードB2が選択された場合、クラッチトルクと走行抵抗トルクとを外乱トルクとし、ブレーキトルクとモータトルクとを入力とし、動力伝達機構の動特性をモデル化することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 請求項6ないし請求項12の何れか1項に記載されたハイブリッド車の制御装置において、
クラッチトルクを検出または推定するクラッチトルク推定手段を有し、
前記モード選択手段は、ブレーキ、クラッチともに、動力を伝達しながらスリップしている状態をモードB2とし、
前記回転速度検出手段は、モードB2が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、
前記プラントモデルは、モードB2が選択された場合、ブレーキトルクと走行抵抗トルクを外乱トルクとし、クラッチトルクとモータトルクを入力とし、動力伝達機構の動特性をモデル化することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。 - 請求項6ないし請求項12の何れか1項に記載されたハイブリッド車の制御装置において、
前記モード選択手段は、ブレーキ、クラッチともに、動力を伝達しながらスリップしている状態をモードB2とし、
前記回転速度検出手段は、モードB2が選択された場合、遊星歯車装置回転要素のうち、いずれか2つの回転速度を検出または推定し、
前記プラントモデルは、モードB2が選択された場合、クラッチトルクとブレーキトルクを外乱トルクとし、モータトルクと走行抵抗トルクを入力として、動力伝達機構の動特性をモデル化すると共に、プラントモデルを用いて状態量を演算するときに入力する走行抵抗トルクとして、モードB2以外のモードからモードB2へ変化する直前に、外乱トルクとして推定した走行抵抗トルク推定値を、モードB2が選択されている間保持することを特徴とするハイブリッド車の制御装置。
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