JP2014131902A - ハイブリッド車のモータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転角センサや電流センサの出力誤差の影響をあまり受けずにMG(モータジェネレータ)の回転速度変動を抑制できるようにする。
【解決手段】モータ回転速度制御では、MG12の目標回転速度Nt と実回転速度Nm との偏差ΔNm を小さくするように基本トルク指令値Tpiを算出すると共に、MG12の実回転速度Nm とトルク指令値Tm の前回値とに基づいて外乱トルクTobs を算出し、この外乱トルクTobs を用いて基本トルク指令値Tpiを補正する外乱トルク補正を行って最終的なトルク指令値Tm を求める。この際、回転角センサ誤差学習や電流センサ誤差学習が未完了のときには、外乱トルク補正を制限する(外乱トルクを算出する際のゲインを小さくして外乱トルク補正の応答性を低下させる)。これにより、回転角センサや電流センサの出力誤差の影響による外乱トルク算出値の周期的な変動を抑制する。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両の動力源としてエンジンとモータとを搭載したハイブリッド車のモータ制御装置に関する発明である。
近年、低燃費、低排気エミッションの社会的要請から車両の動力源としてエンジンとモータとを搭載したハイブリッド車が注目されている。このようなハイブリッド車においては、例えば、特許文献1(特許第4779857号公報)に記載されているように、エンジンの動力を車輪に伝達する動力伝達系にモータを連結したシステムにおいて、モータの実回転速度を目標回転速度に一致させるようにモータのトルクを制御するモータ回転速度制御を実行するようにしたものがある。
特許第4779857号公報
ところで、本出願人は、モータ回転速度制御の際に、モータの目標回転速度と実回転速度との偏差を小さくするようにモータの基本トルク指令値を算出すると共に、モータの実回転速度とトルク指令値の前回値とに基づいてモータの外乱トルクを算出し、この外乱トルクを用いて基本トルク指令値を補正する外乱トルク補正を行ってモータの最終的なトルク指令値を求めることで、外乱トルクによるモータの回転速度変動を抑制するシステムを研究しているが、その研究過程で、次のような新たな課題が判明した。
ハイブリッド車では、モータの回転角を検出する回転角センサの出力やモータに流れる電流を検出する電流センサの出力を用いてモータを制御するようにしたものがあるが、これらの回転角センサや電流センサ等のセンサは、個体差(製造ばらつき)や経時変化等によって出力に誤差(例えばリニアリティ誤差やオフセット誤差やゲイン誤差等)が生じるため、システム起動後に所定の学習実行条件が成立したときにセンサの出力誤差を学習し、その学習結果に基づいてセンサの出力を補正するようにしたものがある。
しかし、モータ回転速度制御の際に、センサの出力誤差の学習がまだ完了していない期間は、センサの出力誤差の影響でモータのトルク指令値が周期的に変動して、モータの回転速度変動が発生することがある。このような場合、通常(センサの出力誤差の学習完了後)と同じ条件で外乱トルク補正を行うと、センサの出力誤差の影響によるモータの回転速度変動によって外乱トルク算出値(つまりトルク補正値)が周期的に変動してしまい、これにより、モータのトルク指令値の変動が助長されて、モータの回転速度変動が助長されてしまう可能性がある。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、モータ回転速度制御の際に、センサの出力誤差等の変動要因の影響をあまり受けずにモータの回転速度変動を抑制することができるハイブリッド車のモータ制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の動力源としてエンジン(11)とモータ(12)とを搭載し、エンジン(11)の動力を車輪(16)に伝達する動力伝達系にモータ(12)を動力伝達可能に連結したハイブリッド車のモータ制御装置において、モータ(12)の目標回転速度と実回転速度との偏差を小さくするようにモータ(12)の基本トルク指令値を算出する基本トルク指令値算出手段(27)と、モータ(12)の実回転速度とトルク指令値の前回値とに基づいてモータ(12)の外乱トルクを算出する外乱トルク算出手段(28)と、外乱トルクを用いて基本トルク指令値を補正する外乱トルク補正を行ってモータ(12)の最終的なトルク指令値を求めるトルク指令値算出手段(29)と、トルク指令値の算出に影響を与える変動要因を考慮して外乱トルク補正を制限する外乱トルク補正制限手段(33)とを備えた構成としたものである。
この構成では、変動要因を考慮して外乱トルク補正を制限することで、変動要因の影響による外乱トルク算出値の周期的な変動を抑制することができる。これにより、変動要因の影響をあまり受けずに、外乱トルク補正によりモータのトルク指令値の変動を抑制して、モータの回転速度変動を抑制することができる。
図1は本発明の一実施例におけるハイブリッド車の駆動システムの概略構成を示す図である。 図2はモータ回転速度制御の機能を示すブロック図である。 図3は外乱オブザーバの機能を示すブロック図である。 図4はモータ回転速度制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。 図5は外乱トルク算出ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。 図6はゲインGain.sensの設定方法を説明する図である。 図7はゲインGain.teの設定方法を説明する図である。 図8は本実施例のモータ回転速度制御の実行例を示すタイムチャートである。 図9は比較例のモータ回転速度制御の実行例を示すタイムチャートである。
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいてハイブリッド車の駆動システムの概略構成を説明する。
車両の動力源として内燃機関であるエンジン11とモータジェネレータ(以下「MG」と表記する)12とが搭載されている。エンジン11の出力軸(クランク軸)の動力がMG12を介して変速機13に伝達され、この変速機13の出力軸の動力がデファレンシャルギヤ機構14や車軸15等を介して車輪16に伝達される。変速機13は、複数段の変速段の中から変速段を段階的に切り換える有段変速機であっても良いし、無段階に変速するCVT(無段変速機)であっても良い。
エンジン11の動力を車輪16に伝達する動力伝達系のうちのエンジン11と変速機13との間に、MG12の回転軸が動力伝達可能に連結されている。また、エンジン11とMG12との間には、動力伝達を断続するための第1のクラッチ17が設けられ、MG12と変速機13との間には、動力伝達を断続するための第2のクラッチ18が設けられている。これらのクラッチ17,18は、油圧駆動式の油圧クラッチであっても良いし、電磁駆動式の電磁クラッチであっても良い。
また、MG12を駆動するインバータ19がバッテリ20に接続され、MG12がインバータ19を介してバッテリ20と電力を授受するようになっている。MG12には、MG12の回転角(回転位置)を検出する回転角センサ21が設けられ、インバータ19(又は後述するMG−ECU24)には、MG12に流れる電流(例えば三相のうちの二相又は三相に流れる各電流)を検出する電流センサ25が設けられている。
ハイブリッドECU22は、車両全体を総合的に制御するコンピュータであり、アクセルセンサ、ブレーキスイッチ、車速センサ等(いずれも図示せず)の各種のセンサやスイッチの出力信号を読み込んで、車両の運転状態を検出する。このハイブリッドECU22は、エンジン11の運転を制御するエンジンECU23やインバータ19を制御してMG12を制御するMG−ECU24との間で制御信号やデータ信号を送受信し、各ECU23,24によって車両の運転状態に応じて、エンジン11、MG12等を制御する。
その際、MG−ECU24は、回転角センサ21や電流センサ25の出力を用いてMG12を制御するようにしているが、回転角センサ21や電流センサ25等のセンサは、個体差(製造ばらつき)や経時変化等によって出力に誤差(例えばリニアリティ誤差やオフセット誤差やゲイン誤差等)が生じる。
そこで、MG−ECU24は、図示しないセンサ誤差学習補正ルーチンを実行することで、特許請求の範囲でいうセンサ誤差学習補正手段として機能し、所定の回転角センサ誤差学習実行条件が成立したときに、回転角センサ21の出力の誤差(例えばリニアリティ誤差やオフセット誤差やゲイン誤差等)を学習する回転角センサ誤差学習を実行し、その回転角センサ誤差学習の学習結果に基づいて回転角センサ21の出力を補正すると共に、所定の電流センサ誤差学習実行条件が成立したときに、電流センサ25の出力の誤差(例えばリニアリティ誤差やオフセット誤差やゲイン誤差等)を学習する電流センサ誤差学習を実行し、その電流センサ誤差学習の学習結果に基づいて電流センサ25の出力を補正するようにしている。
また、MG−ECU24は、後述する図4及び図5のモータ回転速度制御用の各ルーチンを実行することで、所定のモータ回転速度制御実行条件が成立したときに、MG12の実回転速度を目標回転速度に一致させるようにMG12のトルク指令値を算出するモータ回転速度制御を実行する。
このモータ回転速度制御では、図2に示すように、車両の運転状態(例えば、アクセル開度、車速等)に応じて算出されたMG12の目標回転速度Nt と、回転角センサ21の出力に基づいて算出されたMG12の実回転速度Nm を、偏差器26に入力して、MG12の目標回転速度Nt と実回転速度Nm との偏差ΔNm (=Nt −Nm )を算出し、PI制御部27(基本トルク指令値算出手段)で、MG12の目標回転速度Nt と実回転速度Nm との偏差ΔNm を小さくするようにPI制御によりMG12の基本トルク指令値Tpiを算出する。
また、外乱オブザーバ28(外乱トルク算出手段)で、MG12の実回転速度Nm とトルク指令値Tm の前回値とに基づいてMG12の外乱トルクTobs を算出する。具体的には、図3に示すように、回転寄与トルク算出部31で、MG12の実回転速度Nm に基づいてMG12の角加速度Δωを算出し、この角加速度ΔωにMG12の回転軸と一体的に回転する動力伝達系のイナーシャ値Jを乗算してMG12の回転寄与トルクTr (実際にMG12の回転に寄与しているトルク)を求める。この後、外乱トルクベース値算出部32で、MG12の回転寄与トルクTr からトルク指令値Tm の前回値を減算して外乱トルクベース値Tobs.b を求めた後、ゲイン器33(外乱トルク補正制限手段)で、外乱トルクベース値Tobs.b に補正ゲインGain.obs を乗算して最終的な外乱トルクTobs を求める。
以上のようにして基本トルク指令値Tpi及び外乱トルクTobs を算出した後、図2に示すように、トルク指令値算出部29(トルク指令値算出手段)で、基本トルク指令値Tpiに外乱トルクTobs を加算して基本トルク指令値Tpiを補正する外乱トルク補正を行って最終的なトルク指令値Tm を求める。
この後、上下限ガード処理部30で、トルク指令値Tm を所定の上限ガード値及び下限ガード値でガード処理する上下限ガード処理を実施し、この上下限ガード処理後のトルク指令値Tm を出力する。このトルク指令値Tm を実現するようにインバータ19を制御してMG12の印加電圧を制御することで、MG12の実回転速度Nm を目標回転速度Nt に一致させるように制御する。
しかし、モータ回転速度制御の際に、回転角センサ誤差学習や電流センサ誤差学習がまだ完了していない期間は、回転角センサ21や電流センサ25の出力誤差の影響でMG12のトルク指令値が周期的に変動して、MG12の回転速度変動が発生することがある。このような場合、図9に示す比較例のように、通常(回転角センサ21や電流センサ25の出力誤差の学習完了後)と同じ条件で外乱トルク補正を行うと、回転角センサ21や電流センサ25の出力誤差の影響によるMG12の回転速度変動によって外乱トルク算出値(つまりトルク補正値)が周期的に変動してしまい、これにより、MG12のトルク指令値の変動が助長されて、MG12の回転速度変動が助長されてしまう可能性がある。
この対策として、本実施例では、トルク指令値の算出に影響を与える変動要因(回転角センサ21や電流センサ25の出力誤差)を考慮して外乱トルク補正を制限する。具体的には、回転角センサ誤差学習や電流センサ誤差学習が未完了のときに、外乱トルク補正を制限する(例えば、ゲイン器33で外乱トルクを算出する際のゲインを小さくして外乱トルク補正の応答性を低下させる)。これにより、回転角センサ誤差学習や電流センサ誤差学習が未完了のときに、回転角センサ21や電流センサ25の出力誤差の影響による外乱トルク算出値の周期的な変動を抑制する。
また、モータ回転速度制御の際に、第1のクラッチ17の接続時には、エンジントルク(つまりエンジン11の燃焼周期で変動するトルク)の影響でMG12のトルク指令値が周期的に変動して、MG12の回転速度変動が発生することがある。このような場合、第1のクラッチ17の非接続時と同じ条件で外乱トルク補正を行うと、エンジントルクの影響によるMG12の回転速度変動によって外乱トルク算出値(つまりトルク補正値)が周期的に変動してしまい、これにより、MG12のトルク指令値の変動が助長されて、MG12の回転速度変動が助長されてしまう可能性がある。
そこで、本実施例では、第1のクラッチ17の接続時に、エンジントルクに応じて外乱トルク補正を制限する(例えば、ゲイン器33で外乱トルクを算出する際のゲインを小さくして外乱トルク補正の応答性を低下させる)。これにより、第1のクラッチ17の接続時に、エンジントルク(つまりエンジン11の燃焼周期で変動するトルク)の影響による外乱トルク算出値の周期的な変動を抑制する。
また、本実施例では、MG12に掛かる定常負荷レベルが変化するとき(例えばエンジン始動時や加減速時等)には外乱トルク補正の制限を実施しない(つまり外乱トルク補正を制限しない)。これにより、MG12に掛かる定常負荷レベルが変化するときには、外乱トルク補正を有効に作用させて、外乱トルク(例えば車輪16側からの入力等)によるMG12の回転速度変動を抑制する。
以上説明した本実施例のモータ回転速度制御は、MG−ECU24によって図4及び図5のモータ回転速度制御用の各ルーチンに従って実行される。以下、これらの各ルーチンの処理内容を説明する。
[モータ回転速度制御ルーチン]
図4に示すモータ回転速度制御ルーチンは、MG−ECU24の電源オン期間中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、モータ回転速度制御実行条件が成立しているか否かを、例えば、第2のクラッチ18が非接続状態(開放状態又はスリップ状態)であるか否かによって判定する。
このステップ101で、モータ回転速度制御実行条件が不成立であると判定された場合には、ステップ102以降のモータ回転速度制御に関する処理を実行することなく、本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ101で、モータ回転速度制御実行条件が成立していると判定された場合には、ステップ102以降のモータ回転速度制御に関する処理を次のようにして実行する。まず、ステップ102で、車両の運転状態(例えば、アクセル開度、車速等)に応じて算出されたMG12の目標回転速度Nt と、回転角センサ21の出力に基づいて算出されたMG12の実回転速度Nm を読み込む。
この後、ステップ103に進み、第1のクラッチ17が接続状態であるか否かを判定し、第1のクラッチ17が接続状態であると判定された場合には、ステップ104に進み、基本トルク指令値Tpiを算出する際のPIゲインG(PI制御のゲイン)を、第1のクラッチ17の接続時のPIゲインG1 に設定する。
PIゲインG=G1
この第1のクラッチ17の接続時のPIゲインG1 は、エンジン11の回転変動による基本トルク指令値Tpiの変動を抑制できる程度に小さい値に設定されている。
また、第1のクラッチ17の接続時には、エンジン11から第の2クラッチ18の入力側(MG12側)までの動力伝達系がMG12の回転軸と一体的に回転するため、次のステップ105で、トルク補正値Tj の算出に用いるイナーシャ値Jを、エンジン11から第の2クラッチ18の入力側までの動力伝達系のイナーシャ値J1 に設定する。
イナーシャ値J=J1
一方、上記ステップ103で、第1のクラッチ17が接続状態ではない(つまり第1のクラッチ17が非接続状態である)と判定された場合には、ステップ106に進み、基本トルク指令値Tpiを算出する際のPIゲインGを、第1のクラッチ17の非接続時のPIゲインG2 に設定する。
PIゲインG=G2
また、第1のクラッチ17の非接続時には、第1のクラッチ17の出力側(MG12側)から第の2クラッチ18の入力側までの動力伝達系がMG12の回転軸と一体的に回転するため、次のステップ107で、トルク補正値Tj の算出に用いるイナーシャ値Jを、第1のクラッチ17の出力側から第の2クラッチ18の入力側までの動力伝達系のイナーシャ値J2 に設定する。
イナーシャ値J=J2
上記ステップ104〜107で、PIゲインGとイナーシャ値Jを設定した後、ステップ108に進み、MG12の目標回転速度Nt と実回転速度Nm との偏差ΔNm を算出し、この目標回転速度Nt と実回転速度Nm との偏差ΔNm を小さくするように、上記ステップ104又は106で設定したPIゲインGを用いてPI制御によりMG12の基本トルク指令値Tpiを算出する。
この後、ステップ109に進み、後述する図5の外乱トルク算出ルーチンを実行することで、MG12の実回転速度Nm とトルク指令値Tm の前回値とに基づいてMG12の外乱トルクTobs を算出する。
この後、ステップ110に進み、基本トルク指令値Tpiに外乱トルクTobs を加算して基本トルク指令値Tpiを補正する外乱トルク補正を行って最終的なトルク指令値Tm を求める。
Tm =Tpi+Tobs
この後、ステップ111に進み、トルク指令値Tm を所定の上限ガード値及び下限ガード値でガード処理する上下限ガード処理を実施する。具体的には、トルク指令値Tm が上限ガード値よりも大きいときにはトルク指令値Tm を上限ガード値でガード処理する(トルク指令値Tm =上限ガード値)。一方、トルク指令値Tm が下限ガード値よりも小さいときにはトルク指令値Tm を下限ガード値でガード処理する(トルク指令値Tm =下限ガード値)。
[外乱トルク算出ルーチン]
図5に示す外乱トルク算出ルーチンは、前記図4のモータ回転速度制御ルーチンのステップ109で実行されるサブルーチンである。
本ルーチンが起動されると、まず、ステップ201で、MG12の実回転速度Nm に基づいてMG12の角加速度Δωを算出し、この角加速度Δωに前記図4のステップ105又はステップ107で設定したイナーシャ値Jを乗算してMG12の回転寄与トルクTr を求め、この回転寄与トルクTr からトルク指令値Tm の前回値を減算して外乱トルクベース値Tobs.b を求める。
この後、ステップ202に進み、エンジン始動時又は加減速時(加速時又は減速時)であるか否かを判定し、エンジン始動時でも加減速時でもないと判定された場合には、ステップ203に進み、回転角センサ誤差学習や電流センサ誤差学習の学習状態(完了/未完了)に応じたゲインGain.sensを算出する。この場合、例えば、次の二つの設定方法のうちのいずれか一方の方法でゲインGain.sensを設定する。
〈第1の設定方法〉
図6に示すように、回転角センサ誤差学習と電流センサ誤差学習が両方とも完了(○)の場合には、ゲインGain.sensを通常値Gain0(例えば1)に設定する。
Gain.sens=Gain0
回転角センサ誤差学習が未完了(×)で電流センサ誤差学習が完了(○)の場合には、ゲインGain.sensを通常値Gain0よりも小さい制限値Gain1(例えば0.5)に設定する。
Gain.sens=Gain1
回転角センサ誤差学習が完了(○)で電流センサ誤差学習が未完了(×)の場合には、ゲインGain.sensを通常値Gain0よりも小さい制限値Gain2(例えば0.6)に設定する。
Gain.sens=Gain2
回転角センサ誤差学習と電流センサ誤差学習が両方とも未完了(×)の場合には、ゲインGain.sensを制限値Gain1及び制限値Gain2よりも小さい制限値Gain3(例えば0.3)に設定する。
Gain.sens=Gain3
〈第2の設定方法〉
回転角センサ誤差学習が完了の場合にはGain.a を通常値(例えば1)に設定し、回転角センサ誤差学習が未完了の場合にはGain.a を制限値(例えば0.5)に設定する。
また、電流センサ誤差学習が完了の場合にはGain.b を通常値(例えば1)に設定し、電流センサ誤差学習が未完了の場合にはGain.b を制限値(例えば0.6)に設定する。
この後、Gain.a 及びGain.b を用いて、次式によりゲインGain.sensを求める。
Gain.sens=Gain.a ×Gain.b
このようにして、回転角センサ誤差学習の完了/未完了と電流センサ誤差学習の完了/未完了との組み合わせに応じてゲインGain.sensを設定することによって、回転角センサ誤差学習と電流センサ誤差学習のうちの少なくとも一方が未完了のときに、外乱トルクを算出する際に用いるゲインGain.sensを通常値(例えば1)よりも小さくして外乱トルク補正の応答性を低下させることで外乱トルク補正を制限する。
また、回転角センサ誤差学習の完了/未完了や電流センサ誤差学習の完了/未完了に応じて、MG12の回転速度の変動状態が変化して外乱トルク算出値の変動状態が変化するため、回転角センサ誤差学習の完了/未完了や電流センサ誤差学習の完了/未完了に応じて、外乱トルク補正の適正な制限度合(出力誤差の影響による外乱トルク算出値の変動を抑制するのに必要な制限度合)も変化する。
そこで、回転角センサ誤差学習の完了/未完了と電流センサ誤差学習の完了/未完了との組み合わせに応じてゲインGain.sensを設定することによって、回転角センサ誤差学習の完了/未完了と電流センサ誤差学習の完了/未完了との組み合わせに応じて、外乱トルクを算出する際に用いるゲインGain.sensをを変化させて外乱トルク補正の応答性を変化させることで外乱トルク補正の制限度合を変化させるようにしている。
このようにすれば、回転角センサ誤差学習の完了/未完了と電流センサ誤差学習の完了/未完了との組み合わせに応じて、外乱トルク補正の適正な制限度合が変化するのに対応して、外乱トルク補正の制限度合を変化させて、外乱トルク補正を適度に制限することができ、外乱トルク補正を必要以上に制限してしまうことを回避することができる。
上記ステップ203で、ゲインGain.sensを設定した後、ステップ204に進み、第1のクラッチ17が接続状態であるか否かを判定し、第1のクラッチ17が接続状態であると判定された場合には、ステップ205に進み、エンジントルクに応じたゲインGain.teを算出する。
この場合、例えば、図7に破線で示すように、エンジントルク(例えばエンジン11の要求トルク又は実トルク)が所定値T1 以下の場合には、ゲインGain.teを通常値(例えば1)に設定し、エンジントルクが所定値T1 よりも大きい場合には、ゲインGain.teを通常値よりも小さい値(例えば0.2)に設定する。
或は、図7に実線で示すように、エンジントルクが所定値Ta 以下の場合には、ゲインGain.teを通常値(例えば1)に設定し、エンジントルクが所定値Ta よりも大きくて所定値Tb よりも小さい場合には、エンジントルクが大きくなるほどゲインGain.teを小さくして、エンジントルクが所定値Tb 以上の場合には、ゲインGain.teを通常値よりも小さい値(例えば0.2)に設定するようにしても良い。
このようにして、第1のクラッチ17の接続時にエンジントルクが所定値よりも大きい場合に、外乱トルクを算出する際に用いるゲインGain.teを通常値(例えば1)よりも小さくして外乱トルク補正の応答性を低下させることで外乱トルク補正を制限する。
また、エンジントルクに応じて、MG12の回転速度の変動状態が変化して外乱トルク算出値の変動状態が変化するため、エンジントルクに応じて、外乱トルク補正の適正な制限度合(エンジントルクの影響による外乱トルク算出値の変動を抑制するのに必要な制限度合)も変化する。
そこで、図7に実線で示す例では、エンジントルクに応じて、外乱トルクを算出する際に用いるゲインGain.teを変化させて外乱トルク補正の応答性を変化させることで外乱トルク補正の制限度合を変化させるようにしている。このようにすれば、エンジントルクに応じて、外乱トルク補正の適正な制限度合が変化するのに対応して、外乱トルク補正の制限度合を変化させて、外乱トルク補正を適度に制限することができ、外乱トルク補正を必要以上に制限してしまうことを回避することができる。尚、エンジン回転速度によっても、MG12の回転速度の変動状態が変化して外乱トルク算出値の変動状態が変化するため、エンジン回転速度に応じてゲインGain.teを変化させるようにしても良い。
一方、上記ステップ204で、第1のクラッチ17が非接続状態(開放状態又はスリップ状態)であると判定された場合には、ステップ206に進み、ゲインGain.teを通常値(例えば1)に設定する。
上記ステップ205又はステップ206で、ゲインGain.teを設定した後、ステップ207に進み、ゲインGain.sens及びゲインGain.teを用いて、次式により外乱トルクの補正ゲインGain.obs を求める。
Gain.obs =Gain.sens×Gain.te
一方、上記ステップ202で、エンジン始動時又は加減速時であると判定された場合には、ステップ208に進み、外乱トルクの補正ゲインGain.obs を通常値(例えば1)に設定する。これにより、外乱トルク補正の制限を実施しない(つまり外乱トルク補正を制限しない)ようにする。
上記ステップ207又はステップ208で、外乱トルクの補正ゲインGain.obs を設定した後、ステップ209に進み、外乱トルクベース値Tobs.b に補正ゲインGain.obs を乗算して最終的な外乱トルクTobs を求める。
Tobs =Tobs.b ×Gain.obs
以上説明した本実施例では、図8に示すように、回転角センサ誤差学習や電流センサ誤差学習が未完了のときに、外乱トルク補正を制限する(外乱トルクを算出する際のゲインを小さくして外乱トルク補正の応答性を低下させる)ようにしたので、回転角センサ21や電流センサ25の出力誤差の影響による外乱トルク算出値の周期的な変動を抑制することができる。これにより、回転角センサ21や電流センサ25の出力誤差の影響をあまり受けずに、外乱トルク補正によりMG12のトルク指令値の変動を抑制して、MG12の回転速度変動を抑制することができる。
更に、本実施例では、第1のクラッチ17の接続時に、エンジントルクに応じて外乱トルク補正を制限する(外乱トルクを算出する際のゲインを小さくして外乱トルク補正の応答性を低下させる)ようにしたので、エンジントルク(つまりエンジン11の燃焼周期で変動するトルク)の影響による外乱トルク算出値の周期的な変動を抑制することができる。これにより、エンジントルクの影響をあまり受けずに、外乱トルク補正によりMG12のトルク指令値の変動を抑制して、MG12の回転速度変動を抑制することができる。
尚、上記実施例では、回転角センサ誤差学習の学習結果に基づいて回転角センサ21の出力を補正すると共に、電流センサ誤差学習の学習結果に基づいて電流センサ25の出力を補正するシステムに本発明を適用したが、これに限定されず、回転角センサ誤差学習の学習結果に基づいて回転角センサ21の出力に応じて変化する制御パラメータを補正するシステムや、電流センサ誤差学習の学習結果に基づいて電流センサ25の出力に応じて変化する制御パラメータを補正するシステムに本発明を適用しても良い。
また、上記実施例では、回転角センサ21や電流センサ25の出力の誤差を学習するセンサ誤差学習の未完了時に外乱トルク補正を制限するようにしたが、これに限定されず、例えば、モータの制御に関する物理量を検出する他のセンサ(例えば電圧センサ等)の出力の誤差を学習するセンサ誤差学習の未完了時に外乱トルク補正を制限するようにしても良い。
また、本発明は、図1に示す構成のハイブリッド車に限定されず、例えば、第1のクラッチ17(エンジン11とMG12との間のクラッチ)と第2のクラッチ18(MG12と変速機13との間のクラッチ)のうちの一方又は両方を省略した構成のハイブリッド車に適用しても良い等、エンジンの動力を車輪に伝達する動力伝達系にモータを動力伝達可能に連結した構成のハイブリッド車に広く適用することができる。
11…エンジン(内燃機関)、12…MG(モータジェネレータ)、16…車輪、17,18…クラッチ、21…回転角センサ、24…MG−ECU(センサ誤差学習補正手段)、25…電流センサ、27…PI制御部(基本トルク指令値算出手段)、28…外乱オブザーバ(外乱トルク算出手段)、29…トルク指令値算出部(トルク指令値算出手段)、33…ゲイン器(外乱トルク補正制限手段)

Claims (10)

  1. 車両の動力源としてエンジン(11)とモータ(12)とを搭載し、前記エンジン(11)の動力を車輪(16)に伝達する動力伝達系に前記モータ(12)を動力伝達可能に連結したハイブリッド車のモータ制御装置において、
    前記モータ(12)の目標回転速度と実回転速度との偏差を小さくするように前記モータ(12)の基本トルク指令値を算出する基本トルク指令値算出手段(27)と、
    前記モータ(12)の実回転速度とトルク指令値の前回値とに基づいて前記モータ(12)の外乱トルクを算出する外乱トルク算出手段(28)と、
    前記外乱トルクを用いて前記基本トルク指令値を補正する外乱トルク補正を行って前記モータ(12)の最終的なトルク指令値を求めるトルク指令値算出手段(29)と、
    前記トルク指令値の算出に影響を与える変動要因を考慮して前記外乱トルク補正を制限する外乱トルク補正制限手段(33)と
    を備えていることを特徴とするハイブリッド車のモータ制御装置。
  2. 前記変動要因は、前記モータ(12)の制御に関する物理量を検出するセンサ(21,25)の出力の誤差であり、
    前記センサ(21,25)の出力の誤差を学習するセンサ誤差学習を実行し、該センサ誤差学習の学習結果に基づいて前記センサ(21,25)の出力又はこれに応じて変化する制御パラメータを補正するセンサ誤差学習補正手段(24)を備え、
    前記外乱トルク補正制限手段(33)は、前記センサ誤差学習が未完了のときに前記外乱トルク補正を制限することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車のモータ制御装置。
  3. 前記センサは、前記モータ(12)の回転角を検出する回転角センサ(21)と前記モータ(12)に流れる電流を検出する電流センサ(25)のうちの少なくとも一方であることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車のモータ制御装置。
  4. 前記外乱トルク補正制限手段(33)は、前記回転角センサ(21)のセンサ誤差学習の完了/未完了と前記電流センサ(25)のセンサ誤差学習の完了/未完了との組み合わせに応じて前記外乱トルク補正の制限度合を変化させることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車のモータ制御装置。
  5. 前記外乱トルク補正制限手段(33)は、前記エンジン(11)のトルクに応じて前記外乱トルク補正を制限することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のハイブリッド車のモータ制御装置。
  6. 前記エンジン(11)と前記モータ(12)との間の動力伝達を断続するクラッチ(17)を備え、
    前記外乱トルク補正制限手段(33)は、前記クラッチ(17)の接続時に前記エンジン(11)のトルクに応じて前記外乱トルク補正を制限することを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド車のモータ制御装置。
  7. 前記外乱トルク補正制限手段(33)は、前記エンジン(11)の要求トルク又は実トルクに応じて前記外乱トルク補正の制限度合を変化させることを特徴とする請求項5又は6に記載のハイブリッド車のモータ制御装置。
  8. 前記外乱トルク補正制限手段(33)は、前記外乱トルクを算出する際のゲインを小さくすることで前記外乱トルク補正を制限することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のハイブリッド車のモータ制御装置。
  9. 前記外乱トルク補正制限手段(33)は、前記外乱トルクを算出する際のゲインを変化させることで前記外乱トルク補正の制限度合を変化させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のハイブリッド車のモータ制御装置。
  10. 前記外乱トルク補正制限手段(33)は、前記モータ(12)に掛かる定常負荷レベルが変化するときには前記外乱トルク補正の制限を実施しないことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のハイブリッド車のモータ制御装置。
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