JP2004247155A - 固体高分子電解質膜及び固体高分子型燃料電池用膜電極接合体 - Google Patents
固体高分子電解質膜及び固体高分子型燃料電池用膜電極接合体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004247155A JP2004247155A JP2003035281A JP2003035281A JP2004247155A JP 2004247155 A JP2004247155 A JP 2004247155A JP 2003035281 A JP2003035281 A JP 2003035281A JP 2003035281 A JP2003035281 A JP 2003035281A JP 2004247155 A JP2004247155 A JP 2004247155A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polymer electrolyte
- membrane
- solid polymer
- ion exchange
- catalyst layer
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E60/00—Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
- Y02E60/30—Hydrogen technology
- Y02E60/50—Fuel cells
Landscapes
- Conductive Materials (AREA)
- Inert Electrodes (AREA)
- Fuel Cell (AREA)
Abstract
【課題】耐久性に優れた固体高分子型燃料電池及びそのための固体高分子電解質膜の提供。
【解決手段】イオン交換樹脂とキノン化合物とからなることを特徴とする固体高分子電解質膜、及び固体高分子電解質膜と該膜を介して対向し触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を備えるアノード及びカソードとからなり、イオン交換膜、アノードの触媒層及びカソードの触媒層のいずれかがキノン化合物を含む固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
【選択図】なし
【解決手段】イオン交換樹脂とキノン化合物とからなることを特徴とする固体高分子電解質膜、及び固体高分子電解質膜と該膜を介して対向し触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を備えるアノード及びカソードとからなり、イオン交換膜、アノードの触媒層及びカソードの触媒層のいずれかがキノン化合物を含む固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池や水電解セル等に好適な固体高分子電解質膜及び固体高分子型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、原料となるガスの反応エネルギを直接電気エネルギに変換する電池であり、水素・酸素燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであり地球環境への影響がほとんどない。なかでも電解質として固体高分子電解質膜を使用する固体高分子型燃料電池は、高いイオン導電性を有する高分子電解質膜が開発され、常温でも作動でき高出力密度が得られるため、近年のエネルギ、地球環境問題への社会的要請の高まりとともに、電気自動車用等の移動車両や、小型コージェネレーションシステムの電源として大きな期待が寄せられている。
【0003】
固体高分子型燃料電池では、通常、固体高分子電解質としてプロトン伝導性のイオン交換膜が使用され、特にスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が基本特性に優れている。固体高分子型燃料電池では、イオン交換膜の両面にガス拡散性の電極層を配置し、燃料である水素を含むガス及び酸化剤となる酸素を含むガス(空気等)を、それぞれアノード及びカソードに供給することにより発電を行う。
【0004】
固体高分子型燃料電池のカソードにおける酸素の還元反応は、過酸化水素(H2O2)を経由して反応が進行することから、触媒層中で生成する過酸化水素又は過酸化物ラジカル等により、電解質膜の劣化を引き起こす可能性が懸念されている。また、アノードでは、水素分子と膜中を透過してくる酸素分子とが触媒上で反応を引き起こし、ヒドロキシラジカルやハイドロパーオキシラジカル等を生成することも考えられる。特に炭化水素系膜ではラジカルに対する安定性に乏しく長期間に渡る運転においては大きな問題となっていた。固体高分子型燃料電池が初めて実用化されたのは、米国のジェミニ宇宙船の電源として採用された時であり、この時にはスチレン−ジビニルベンゼン重合体をスルホン化した膜が電解質膜として使用されたが、長期間に渡る耐久性には問題があった。
【0005】
炭化水素系の重合体に対し、ラジカルに対する安定性に優れる重合体として、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が知られており、当該イオン交換膜が一般的に固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜に使用されている。さらに、ラジカルに対する安定性を向上させるため、高分子電解質膜中に過酸化物ラジカルを接触分解できる遷移金属酸化物又はフェノール性水酸基を有する化合物を添加する系(特許文献1参照)や、高分子電解質膜内に触媒金属粒子を担持し、過酸化水素を分解する技術(特許文献2参照)も開示されている。しかし、これらの技術は、改善の効果はあるものの不充分であり、長期間に渡る耐久性には大きな問題が生じる可能性があった。またコスト的にも高くなるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−118591号公報(請求項1、2頁2〜9行)
【特許文献2】
特開平6−103992号公報(2頁33〜37行)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、車載用、住宅用市場等への固体高分子型燃料電池の実用化等に対して、十分に高いエネルギ効率での発電を可能にすると同時に、発電に伴って生成する過酸化水素や過酸化物ラジカル等に対して安定で、低加湿運転条件及び高加湿運転条件のどちらにおいても、長期間に渡って優れた耐久性を示す固体高分子型燃料電池用膜電極接合体を提供することを目的とする。また、当該固体高分子型燃料電池をはじめ、水分解セル等にも好適な固体高分子電解質膜を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、キノン化合物を含むイオン交換膜からなることを特徴とする固体高分子電解質膜、及び当該固体高分子電解質膜と該膜を介して対向し触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を備えるアノード及びカソードとからなる固体高分子型燃料電池用膜電極接合体を提供する。
【0009】
また、本発明は、固体高分子電解質膜と該膜を介して対向し触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を備えるアノード及びカソードとからなる固体高分子型燃料電池用膜電極接合体において、前記アノード及び前記カソードの少なくとも一方の触媒層は、キノン化合物を含むことを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜電極接合体を提供する。
【0010】
なお、本明細書においてキノン化合物とは、芳香族炭化水素のベンゼン環の水素2原子が酸素2原子で置換された化合物であるキノン及びその誘導体をいうものとする。ここでキノンの誘導体とは、キノンの水素原子の1つ以上が1価の有機基、水酸基、アミノ基又はハロゲン原子等に置換されたものをいう。ここで1価の有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、−(CH2CH=CXCH2)nHで表わされるアルケニル基(Xは水素原子又はメチル基であり、nは1〜10の整数である。)等が挙げられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
固体高分子型燃料電池について、本発明の実施の形態を図1に示す。膜電極接合体7は、固体高分子電解質膜1と、この固体高分子電解質膜1の膜面に密着したアノード触媒層2及びカソード触媒層3と、これら各触媒層に密着したガス拡散層4、4’とガスシール体6により構成される。そしてアノード触媒層2とガス拡散層4とでアノードが構成され、カソード触媒層3とガス拡散層4’でカソードが構成される。ガス拡散層4、4’は通常多孔性の導電性基材からなり、必ずしも備えられていなくてもよいが、触媒層へのガスの拡散を促進し、集電体の機能も有するので、通常は備えられていることが好ましい。
【0012】
膜電極接合体7の外側にはガス流路5aとなる溝が形成されたセパレータ5が配置されている。アノード側には、セパレータの溝を介して、例えばメタノールや天然ガス等の燃料を改質して得られる水素ガスが供給されるが、この改質には通常、250〜300℃程度の温度が必要である。その際の排熱を利用すれば高温で加湿して露点の高い水素ガスを供給できるため、アノード側の方がカソード側よりもシステム的により高温で加湿を行いやすい。
【0013】
固体高分子電解質膜1は、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体やスルホン酸基を有する炭化水素系重合体からなるイオン交換樹脂に、キノン化合物が分散配合されてなるイオン交換膜であり、アノード触媒層中で生成するプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層へ選択的に透過させる役割を有している。また、固体高分子電解質膜1は、アノードに供給される水素とカソードに供給される酸素が混じり合わないようにするための隔膜としての機能も有している。
【0014】
固体高分子電解質膜1を構成するイオン交換樹脂としては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体が好ましく、特にCF2=CF−(OCF2CFX)m−OP−(CF2)n−SO3Hで表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とからなる共重合体が好ましい。
【0015】
上記フルオロビニル化合物の好ましい例としては、下記式(i)〜(iii)で表される化合物が挙げられる。ただし、下記式中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜3の整数を示す。
【0016】
【化1】
【0017】
また、その他に当該イオン交換樹脂としてスルホン酸基を有する炭化水素系重合体からなるイオン交換樹脂としては、スチレンをスルホン化したスチレンスルホン酸ポリマー等が使用できる。
【0018】
上述のイオン交換樹脂は、固体高分子電解質膜1のほかに、アノード触媒層2又はカソード触媒層3に含まれるイオン交換樹脂としても好ましい。
【0019】
アノード触媒層2及びカソード触媒層3は、後述するガス拡散層4、4’と固体高分子電解質膜1との間に配置される。アノード触媒層2には、例えば、白金とルテニウムの合金をカーボン材料に担持した担持触媒と、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体を含んで構成され、カソード触媒層3は、白金又は白金合金をカーボン材料に担持した触媒と、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体とを含んで構成される。本発明の膜電極接合体7では、固体高分子電解質膜1がキノン化合物を含まずにアノード触媒層及び/又はカソード触媒層中にキノン化合物を含んでいてもよいし、固体高分子電解質膜1がキノン化合物を含み、かつアノード触媒層及び/又はカソード触媒層中にキノン化合物を含んでいてもよい。
【0020】
キノン化合物が固体高分子電解質膜1中に含有されることにより、又は触媒層中に固体高分子電解質であるイオン交換樹脂とともに含有されることにより、本発明の膜電極接合体7発電に伴って生成する過酸化水素や過酸化物ラジカル等に対して安定な特性を示し、長期間に渡って優れた耐久性を示す。また、供給ガスの加湿温度がセル温度よりも低い低加湿又は無加湿での運転においても、長期間に渡って安定した発電が可能である。ここで、キノン化合物の存在により長期にわたる安定した発電が可能になる詳細な理由は明らかではない。しかし、一般的にはキノン化合物は典型的なラジカルスカベンジャーとして機能することが知られていることから、本発明においてもキノン化合物がラジカルをトラップし、さらには不活化する効果があると推定される。すなわち、キノン化合物が固体高分子電解質膜又は触媒層中に存在することで、長期にわたってラジカルをトラップ又は不活化し固体高分子電解質(イオン交換樹脂)の分解を抑制できるものと推定される。
【0021】
本発明におけるキノン化合物としては、ベンゾキノンや、ナフトキノン、アントラキノン、クリセンキノン等の縮合多環キノン構造を有する化合物又はこれらの誘導体等が使用できる。ここでキノンの誘導体としては種々の化合物が存在するが、ベンゾキノン誘導体としては生体中に存在して抗酸化機能を有するユビキノンや、葉緑体中に存在して光化学反応に関与するプラストキノン等が挙げられ、ナフトキノン誘導体としては、ビタミンKとして有名なフィロキノンやメナキノン等が挙げられる。またアントラキノン誘導体としては、過酸化水素製造用キャリアとして用いられている2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等が挙げられる。また、アントラキノン染料として代表的なビオラントロン、フラバントロン、ピラントロン等も好ましく使用できる。
【0022】
一般的に、これらのキノン化合物は電荷移動反応や酸化還元反応に深く関与できるので、本発明における固体高分子電解質膜又は触媒層にこれらのキノン化合物を分散配合して使用すると、前述のとおり燃料電池用膜電極接合体に用いた場合に発生するラジカルを効果的にトラップし、さらには不活化する効果があると推定される。このような効果を有する本発明の固体高分子電解質膜は、燃料電池だけでなく、水電解セル等にも好適に使用できる。すなわち、水電解セルのアノードで生成した酸素分子が固体高分子電解質膜中を拡散してカソード触媒層上で生成する水素と反応してラジカル等が生成しても、これらのキノン化合物のラジカル等の効果的なトラップ、不活化により、膜の劣化が防止される。
【0023】
本発明においては、高分子電解質膜中にキノン化合物が含まれる場合、その含有量としては、膜全質量の0.01〜20%が好ましく、特に0.1〜10%が好ましい。キノン化合物の含有量が少なすぎると、固体高分子型燃料電池の発電中に生成するラジカルを不活性化するキノンの絶対量が少なくて、耐久性を向上させる効果が現れない。また、逆に多すぎると、膜中のプロトンの電気泳動を阻害して電圧低下を引き起こすおそれが生じる。
【0024】
また、触媒層中にキノン化合物が含まれる場合は、触媒層中のイオン交換樹脂とキノン化合物との合量の0.01〜20%(質量比)のキノン化合物が含まれることが好ましい。触媒層全質量に対しては、キノン化合物は0.002〜7%含まれることが好ましく、特に0.01〜5%含まれることが好ましい。
【0025】
本発明の固体高分子電解質膜を製造する方法としては、イオン交換樹脂を溶媒に溶解又は分散させた液に、上述したキノン化合物を添加混合した後、キャストして膜状に成形する方法がある。またイオン交換樹脂の溶液又は分散液とキノン化合物を溶媒に溶解した溶液を混合して、得られた液をキャストして膜状にする方法も使用できる。また、イオン交換樹脂の粉末とキノン化合物粉末を混練した後、溶融押し出し等により膜状に成形する方法や、イオン交換樹脂の前駆体(加水分解等によりイオン交換基に変換される基を有する樹脂)とキノン化合物粉末を混練した後、溶融押し出し等により膜状に成形し、その後加水分解やスルホン化によりイオン交換基を形成しイオン交換膜にする方法も採用できる。
【0026】
また、本発明における触媒層は、例えばイオン交換樹脂を溶媒に溶解又は分散させた液と触媒粉末とを混合し、キノン化合物を含有させる場合はキノン化合物も加えてよく混合し、これを触媒層形成用塗工液として塗工し乾燥させることにより形成できる。上記塗工液はガス拡散層となる基材又は高分子電解質膜となるイオン交換膜に直接塗工できる。また、別途用意した基材に上記塗工液を塗工した後、高分子電解質膜と積層してホットプレスすることにより高分子電解質膜に触媒層を転写させてもよい。ガス拡散層としては、カーボンペーパー、カーボンクロス等の多孔性の導電性基材が使用できる。これらの基材は表面が撥水化処理されていてもよい。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を具体的に実施例(例1〜4、7)及び比較例(例5、6、8)を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0028】
[例1]
CF2=CF2/CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2SO3H共重合体(イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂、以下、共重合体Aという)をエタノールに分散させた固形分濃度9質量%の液(以下、共重合体Aのエタノール分散液という)200.0gにユビキノン0.2gを添加し十分に混合した。この混合液をキャスト成形後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて、ユビキノンを添加した厚さ50μmのイオン交換膜を作製した。このイオン交換膜中のユビキノンの含有量(質量比)は1.1%であった。
【0029】
次に、白金がカーボン担体(比表面積800m2/g)に触媒全質量の50%含まれるように担持された触媒(エヌ・イーケムキャット社製、以下触媒Bという)1.0gに蒸留水5.1gを混合した。この混合液に共重合体Aのエタノール分散液5.6gを混合した。この混合液をホモジナイザー(商品名:ポリトロン、キネマチカ社製)を使用して混合、粉砕させ、これを触媒層形成用塗工液とした。
【0030】
この塗工液を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を作製した。なお、触媒層形成前の基材フィルムのみの質量と触媒層形成後の基材フィルムの質量を測定することにより、触媒層に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。
【0031】
固体高分子電解質膜として上記ユビキノンを添加した厚さ50μmのイオン交換膜を使用し、上記触媒層が形成された基材2枚を触媒層を内側に向けてこのイオン交換膜を挟んで対向させた。これをホットプレスすることにより触媒層を膜に転写し、基材を剥離することにより電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0032】
[例2]
例1において、ユビキノンを添加しなかった以外は、例1と同様にして厚さ50μmのイオン交換膜を作製した。
次に、1.0gの触媒Bに蒸留水5.1gを混合し、これに共重合体Aのエタノール分散液5.6gを混合し、さらにフィロキノン0.05gを添加した。この液をホモジナイザー(商品名:ポリトロン、キネマチカ社製)を使用して混合し、これを触媒層形成用塗工液とした。
【0033】
この塗工液を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を作製した。なお、例1における触媒層と同様にこの触媒層中の単位面積あたりの白金の量を測定したところ、0.5mg/cm2であった。また、この触媒層中の共重合体Aとフィロキノンの合量に対するフィロキノンの含有量は質量比で9.0%であった。
【0034】
固体高分子電解質膜として上記イオン交換膜を使用し、カソード、アノードともに上記触媒層を使用した以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0035】
[例3]
例1におけるイオン交換膜の作製において、ユビキノンのかわりにアントラキノン1.0gを使用した以外は、例1と同様にして厚さ50μmのイオン交換膜を作製した。このイオン交換膜中のアントラキノンの含有量は質量比で5.3%であった。
固体高分子電解質膜として上記イオン交換膜を使用した以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0036】
[例4]
例1におけるユビキノンのかわりに2−エチルアントラキノンを0.1g添加した以外は、例1と同様にして厚さ50μmのイオン交換膜を作製した。このイオン交換膜中の2−エチルアントラキノンの含有量は質量比で0.55%であった。
【0037】
次に、1.0gの触媒Bに蒸留水5.1gを混合し、これに共重合体Aのエタノール分散液5.6gを混合し、さらに2−t−ブチルアントラキノン0.01gを添加した。この液をホモジナイザー(商品名:ポリトロン、キネマチカ社製)を使用して混合し、これを触媒層形成用塗工液とした。
【0038】
この塗工液を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を作製した。なお、例1における触媒層と同様にこの触媒層中の単位面積あたりの白金の量を測定したところ、0.5mg/cm2であった。また、この触媒層中の共重合体Aと2−t−ブチルアントラキノンの合量に対する2−t−ブチルアントラキノンの含有量は質量比で2%であった。
【0039】
固体高分子電解質膜として上記イオン交換膜を使用し、カソード、アノードともに上記触媒層を使用した以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0040】
[例5]
例1において、ユビキノンを添加しなかった以外は、例1と同様にして厚さ50μmのイオン交換膜を作製した。固体高分子電解質膜として上記イオン交換膜を使用した以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0041】
[例6]
例1におけるイオン交換膜のかわりに、市販の厚さ50μmのイオン交換膜(商品名:ナフィオン112、デュポン社製)を用いた以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0042】
[例7]
例1におけるユビキノンのかわりにアントラキノンを0.001g添加した以外は、例1と同様にして厚さ50μmのイオン交換膜を作製した。このイオン交換膜中のアントラキノンの含有量は質量比で0.0056%であった。
固体高分子電解質膜として上記イオン交換膜を使用した以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0043】
[例8]
特許文献1を参考に以下のようにして膜・触媒層接合体を作製した。スチレン−ジビニルベンゼンスルホン酸系のカチオン交換膜(厚さ100μm)をパラ−t−ブチルフェノールの1%のメタノール溶液に1時間浸漬した後に、ホルムアルデヒドの3%溶液に30分浸漬した後、室温で30分間乾燥した。次に80℃の乾燥器内で8時間放置した後、メタノール洗浄を行なって電解質膜を調製した。
固体高分子電解質膜として上記イオン交換膜を使用した以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0044】
(評価)
例1〜8で得られた膜・触媒層接合体を、それぞれ厚さ350μmのカーボンクロスからなるガス拡散層2枚の間に挟んで膜・電極接合体を作製し、これを発電用セルに組み込んで固体高分子型燃料電池を作製した。常圧にて、水素(利用率70%)/空気(利用率40%)を供給し、セル温度70℃において、固体高分子型燃料電池の初期特性評価及び電流密度0.2A/cm2における耐久性評価を実施した。アノード側の露点は70℃とし、カソード側の露点は40℃とし、それぞれ水素及び空気を加湿してセル内に供給した。表2に、例1〜9の各膜・電極接合体について、電流密度0.2A/cm2で連続運転したときの経過時間とセル電圧の関係を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明は、キノン化合物を固体高分子電解質膜中に分散配合、又は燃料電池の触媒層中にイオン交換樹脂とともに分散配合することで、発電に伴って生成するラジカルや過酸化物に対しても安定な高耐久性固体高分子電解質を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池の実施態様を示す図。
【符号の説明】
1:高耐久性固体高分子電解質膜、
2:アノード触媒層、
3:カソード触媒層、
4、4’:ガス拡散層、
5:セパレータ、
5a:セパレータのガス供給溝、
6:ガスシール体、
7:膜・電極接合体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池や水電解セル等に好適な固体高分子電解質膜及び固体高分子型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、原料となるガスの反応エネルギを直接電気エネルギに変換する電池であり、水素・酸素燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであり地球環境への影響がほとんどない。なかでも電解質として固体高分子電解質膜を使用する固体高分子型燃料電池は、高いイオン導電性を有する高分子電解質膜が開発され、常温でも作動でき高出力密度が得られるため、近年のエネルギ、地球環境問題への社会的要請の高まりとともに、電気自動車用等の移動車両や、小型コージェネレーションシステムの電源として大きな期待が寄せられている。
【0003】
固体高分子型燃料電池では、通常、固体高分子電解質としてプロトン伝導性のイオン交換膜が使用され、特にスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が基本特性に優れている。固体高分子型燃料電池では、イオン交換膜の両面にガス拡散性の電極層を配置し、燃料である水素を含むガス及び酸化剤となる酸素を含むガス(空気等)を、それぞれアノード及びカソードに供給することにより発電を行う。
【0004】
固体高分子型燃料電池のカソードにおける酸素の還元反応は、過酸化水素(H2O2)を経由して反応が進行することから、触媒層中で生成する過酸化水素又は過酸化物ラジカル等により、電解質膜の劣化を引き起こす可能性が懸念されている。また、アノードでは、水素分子と膜中を透過してくる酸素分子とが触媒上で反応を引き起こし、ヒドロキシラジカルやハイドロパーオキシラジカル等を生成することも考えられる。特に炭化水素系膜ではラジカルに対する安定性に乏しく長期間に渡る運転においては大きな問題となっていた。固体高分子型燃料電池が初めて実用化されたのは、米国のジェミニ宇宙船の電源として採用された時であり、この時にはスチレン−ジビニルベンゼン重合体をスルホン化した膜が電解質膜として使用されたが、長期間に渡る耐久性には問題があった。
【0005】
炭化水素系の重合体に対し、ラジカルに対する安定性に優れる重合体として、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が知られており、当該イオン交換膜が一般的に固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜に使用されている。さらに、ラジカルに対する安定性を向上させるため、高分子電解質膜中に過酸化物ラジカルを接触分解できる遷移金属酸化物又はフェノール性水酸基を有する化合物を添加する系(特許文献1参照)や、高分子電解質膜内に触媒金属粒子を担持し、過酸化水素を分解する技術(特許文献2参照)も開示されている。しかし、これらの技術は、改善の効果はあるものの不充分であり、長期間に渡る耐久性には大きな問題が生じる可能性があった。またコスト的にも高くなるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−118591号公報(請求項1、2頁2〜9行)
【特許文献2】
特開平6−103992号公報(2頁33〜37行)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、車載用、住宅用市場等への固体高分子型燃料電池の実用化等に対して、十分に高いエネルギ効率での発電を可能にすると同時に、発電に伴って生成する過酸化水素や過酸化物ラジカル等に対して安定で、低加湿運転条件及び高加湿運転条件のどちらにおいても、長期間に渡って優れた耐久性を示す固体高分子型燃料電池用膜電極接合体を提供することを目的とする。また、当該固体高分子型燃料電池をはじめ、水分解セル等にも好適な固体高分子電解質膜を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、キノン化合物を含むイオン交換膜からなることを特徴とする固体高分子電解質膜、及び当該固体高分子電解質膜と該膜を介して対向し触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を備えるアノード及びカソードとからなる固体高分子型燃料電池用膜電極接合体を提供する。
【0009】
また、本発明は、固体高分子電解質膜と該膜を介して対向し触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を備えるアノード及びカソードとからなる固体高分子型燃料電池用膜電極接合体において、前記アノード及び前記カソードの少なくとも一方の触媒層は、キノン化合物を含むことを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜電極接合体を提供する。
【0010】
なお、本明細書においてキノン化合物とは、芳香族炭化水素のベンゼン環の水素2原子が酸素2原子で置換された化合物であるキノン及びその誘導体をいうものとする。ここでキノンの誘導体とは、キノンの水素原子の1つ以上が1価の有機基、水酸基、アミノ基又はハロゲン原子等に置換されたものをいう。ここで1価の有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、−(CH2CH=CXCH2)nHで表わされるアルケニル基(Xは水素原子又はメチル基であり、nは1〜10の整数である。)等が挙げられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
固体高分子型燃料電池について、本発明の実施の形態を図1に示す。膜電極接合体7は、固体高分子電解質膜1と、この固体高分子電解質膜1の膜面に密着したアノード触媒層2及びカソード触媒層3と、これら各触媒層に密着したガス拡散層4、4’とガスシール体6により構成される。そしてアノード触媒層2とガス拡散層4とでアノードが構成され、カソード触媒層3とガス拡散層4’でカソードが構成される。ガス拡散層4、4’は通常多孔性の導電性基材からなり、必ずしも備えられていなくてもよいが、触媒層へのガスの拡散を促進し、集電体の機能も有するので、通常は備えられていることが好ましい。
【0012】
膜電極接合体7の外側にはガス流路5aとなる溝が形成されたセパレータ5が配置されている。アノード側には、セパレータの溝を介して、例えばメタノールや天然ガス等の燃料を改質して得られる水素ガスが供給されるが、この改質には通常、250〜300℃程度の温度が必要である。その際の排熱を利用すれば高温で加湿して露点の高い水素ガスを供給できるため、アノード側の方がカソード側よりもシステム的により高温で加湿を行いやすい。
【0013】
固体高分子電解質膜1は、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体やスルホン酸基を有する炭化水素系重合体からなるイオン交換樹脂に、キノン化合物が分散配合されてなるイオン交換膜であり、アノード触媒層中で生成するプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層へ選択的に透過させる役割を有している。また、固体高分子電解質膜1は、アノードに供給される水素とカソードに供給される酸素が混じり合わないようにするための隔膜としての機能も有している。
【0014】
固体高分子電解質膜1を構成するイオン交換樹脂としては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体が好ましく、特にCF2=CF−(OCF2CFX)m−OP−(CF2)n−SO3Hで表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とからなる共重合体が好ましい。
【0015】
上記フルオロビニル化合物の好ましい例としては、下記式(i)〜(iii)で表される化合物が挙げられる。ただし、下記式中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜3の整数を示す。
【0016】
【化1】
【0017】
また、その他に当該イオン交換樹脂としてスルホン酸基を有する炭化水素系重合体からなるイオン交換樹脂としては、スチレンをスルホン化したスチレンスルホン酸ポリマー等が使用できる。
【0018】
上述のイオン交換樹脂は、固体高分子電解質膜1のほかに、アノード触媒層2又はカソード触媒層3に含まれるイオン交換樹脂としても好ましい。
【0019】
アノード触媒層2及びカソード触媒層3は、後述するガス拡散層4、4’と固体高分子電解質膜1との間に配置される。アノード触媒層2には、例えば、白金とルテニウムの合金をカーボン材料に担持した担持触媒と、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体を含んで構成され、カソード触媒層3は、白金又は白金合金をカーボン材料に担持した触媒と、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体とを含んで構成される。本発明の膜電極接合体7では、固体高分子電解質膜1がキノン化合物を含まずにアノード触媒層及び/又はカソード触媒層中にキノン化合物を含んでいてもよいし、固体高分子電解質膜1がキノン化合物を含み、かつアノード触媒層及び/又はカソード触媒層中にキノン化合物を含んでいてもよい。
【0020】
キノン化合物が固体高分子電解質膜1中に含有されることにより、又は触媒層中に固体高分子電解質であるイオン交換樹脂とともに含有されることにより、本発明の膜電極接合体7発電に伴って生成する過酸化水素や過酸化物ラジカル等に対して安定な特性を示し、長期間に渡って優れた耐久性を示す。また、供給ガスの加湿温度がセル温度よりも低い低加湿又は無加湿での運転においても、長期間に渡って安定した発電が可能である。ここで、キノン化合物の存在により長期にわたる安定した発電が可能になる詳細な理由は明らかではない。しかし、一般的にはキノン化合物は典型的なラジカルスカベンジャーとして機能することが知られていることから、本発明においてもキノン化合物がラジカルをトラップし、さらには不活化する効果があると推定される。すなわち、キノン化合物が固体高分子電解質膜又は触媒層中に存在することで、長期にわたってラジカルをトラップ又は不活化し固体高分子電解質(イオン交換樹脂)の分解を抑制できるものと推定される。
【0021】
本発明におけるキノン化合物としては、ベンゾキノンや、ナフトキノン、アントラキノン、クリセンキノン等の縮合多環キノン構造を有する化合物又はこれらの誘導体等が使用できる。ここでキノンの誘導体としては種々の化合物が存在するが、ベンゾキノン誘導体としては生体中に存在して抗酸化機能を有するユビキノンや、葉緑体中に存在して光化学反応に関与するプラストキノン等が挙げられ、ナフトキノン誘導体としては、ビタミンKとして有名なフィロキノンやメナキノン等が挙げられる。またアントラキノン誘導体としては、過酸化水素製造用キャリアとして用いられている2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等が挙げられる。また、アントラキノン染料として代表的なビオラントロン、フラバントロン、ピラントロン等も好ましく使用できる。
【0022】
一般的に、これらのキノン化合物は電荷移動反応や酸化還元反応に深く関与できるので、本発明における固体高分子電解質膜又は触媒層にこれらのキノン化合物を分散配合して使用すると、前述のとおり燃料電池用膜電極接合体に用いた場合に発生するラジカルを効果的にトラップし、さらには不活化する効果があると推定される。このような効果を有する本発明の固体高分子電解質膜は、燃料電池だけでなく、水電解セル等にも好適に使用できる。すなわち、水電解セルのアノードで生成した酸素分子が固体高分子電解質膜中を拡散してカソード触媒層上で生成する水素と反応してラジカル等が生成しても、これらのキノン化合物のラジカル等の効果的なトラップ、不活化により、膜の劣化が防止される。
【0023】
本発明においては、高分子電解質膜中にキノン化合物が含まれる場合、その含有量としては、膜全質量の0.01〜20%が好ましく、特に0.1〜10%が好ましい。キノン化合物の含有量が少なすぎると、固体高分子型燃料電池の発電中に生成するラジカルを不活性化するキノンの絶対量が少なくて、耐久性を向上させる効果が現れない。また、逆に多すぎると、膜中のプロトンの電気泳動を阻害して電圧低下を引き起こすおそれが生じる。
【0024】
また、触媒層中にキノン化合物が含まれる場合は、触媒層中のイオン交換樹脂とキノン化合物との合量の0.01〜20%(質量比)のキノン化合物が含まれることが好ましい。触媒層全質量に対しては、キノン化合物は0.002〜7%含まれることが好ましく、特に0.01〜5%含まれることが好ましい。
【0025】
本発明の固体高分子電解質膜を製造する方法としては、イオン交換樹脂を溶媒に溶解又は分散させた液に、上述したキノン化合物を添加混合した後、キャストして膜状に成形する方法がある。またイオン交換樹脂の溶液又は分散液とキノン化合物を溶媒に溶解した溶液を混合して、得られた液をキャストして膜状にする方法も使用できる。また、イオン交換樹脂の粉末とキノン化合物粉末を混練した後、溶融押し出し等により膜状に成形する方法や、イオン交換樹脂の前駆体(加水分解等によりイオン交換基に変換される基を有する樹脂)とキノン化合物粉末を混練した後、溶融押し出し等により膜状に成形し、その後加水分解やスルホン化によりイオン交換基を形成しイオン交換膜にする方法も採用できる。
【0026】
また、本発明における触媒層は、例えばイオン交換樹脂を溶媒に溶解又は分散させた液と触媒粉末とを混合し、キノン化合物を含有させる場合はキノン化合物も加えてよく混合し、これを触媒層形成用塗工液として塗工し乾燥させることにより形成できる。上記塗工液はガス拡散層となる基材又は高分子電解質膜となるイオン交換膜に直接塗工できる。また、別途用意した基材に上記塗工液を塗工した後、高分子電解質膜と積層してホットプレスすることにより高分子電解質膜に触媒層を転写させてもよい。ガス拡散層としては、カーボンペーパー、カーボンクロス等の多孔性の導電性基材が使用できる。これらの基材は表面が撥水化処理されていてもよい。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を具体的に実施例(例1〜4、7)及び比較例(例5、6、8)を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0028】
[例1]
CF2=CF2/CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)2SO3H共重合体(イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂、以下、共重合体Aという)をエタノールに分散させた固形分濃度9質量%の液(以下、共重合体Aのエタノール分散液という)200.0gにユビキノン0.2gを添加し十分に混合した。この混合液をキャスト成形後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて、ユビキノンを添加した厚さ50μmのイオン交換膜を作製した。このイオン交換膜中のユビキノンの含有量(質量比)は1.1%であった。
【0029】
次に、白金がカーボン担体(比表面積800m2/g)に触媒全質量の50%含まれるように担持された触媒(エヌ・イーケムキャット社製、以下触媒Bという)1.0gに蒸留水5.1gを混合した。この混合液に共重合体Aのエタノール分散液5.6gを混合した。この混合液をホモジナイザー(商品名:ポリトロン、キネマチカ社製)を使用して混合、粉砕させ、これを触媒層形成用塗工液とした。
【0030】
この塗工液を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を作製した。なお、触媒層形成前の基材フィルムのみの質量と触媒層形成後の基材フィルムの質量を測定することにより、触媒層に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。
【0031】
固体高分子電解質膜として上記ユビキノンを添加した厚さ50μmのイオン交換膜を使用し、上記触媒層が形成された基材2枚を触媒層を内側に向けてこのイオン交換膜を挟んで対向させた。これをホットプレスすることにより触媒層を膜に転写し、基材を剥離することにより電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0032】
[例2]
例1において、ユビキノンを添加しなかった以外は、例1と同様にして厚さ50μmのイオン交換膜を作製した。
次に、1.0gの触媒Bに蒸留水5.1gを混合し、これに共重合体Aのエタノール分散液5.6gを混合し、さらにフィロキノン0.05gを添加した。この液をホモジナイザー(商品名:ポリトロン、キネマチカ社製)を使用して混合し、これを触媒層形成用塗工液とした。
【0033】
この塗工液を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を作製した。なお、例1における触媒層と同様にこの触媒層中の単位面積あたりの白金の量を測定したところ、0.5mg/cm2であった。また、この触媒層中の共重合体Aとフィロキノンの合量に対するフィロキノンの含有量は質量比で9.0%であった。
【0034】
固体高分子電解質膜として上記イオン交換膜を使用し、カソード、アノードともに上記触媒層を使用した以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0035】
[例3]
例1におけるイオン交換膜の作製において、ユビキノンのかわりにアントラキノン1.0gを使用した以外は、例1と同様にして厚さ50μmのイオン交換膜を作製した。このイオン交換膜中のアントラキノンの含有量は質量比で5.3%であった。
固体高分子電解質膜として上記イオン交換膜を使用した以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0036】
[例4]
例1におけるユビキノンのかわりに2−エチルアントラキノンを0.1g添加した以外は、例1と同様にして厚さ50μmのイオン交換膜を作製した。このイオン交換膜中の2−エチルアントラキノンの含有量は質量比で0.55%であった。
【0037】
次に、1.0gの触媒Bに蒸留水5.1gを混合し、これに共重合体Aのエタノール分散液5.6gを混合し、さらに2−t−ブチルアントラキノン0.01gを添加した。この液をホモジナイザー(商品名:ポリトロン、キネマチカ社製)を使用して混合し、これを触媒層形成用塗工液とした。
【0038】
この塗工液を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を作製した。なお、例1における触媒層と同様にこの触媒層中の単位面積あたりの白金の量を測定したところ、0.5mg/cm2であった。また、この触媒層中の共重合体Aと2−t−ブチルアントラキノンの合量に対する2−t−ブチルアントラキノンの含有量は質量比で2%であった。
【0039】
固体高分子電解質膜として上記イオン交換膜を使用し、カソード、アノードともに上記触媒層を使用した以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0040】
[例5]
例1において、ユビキノンを添加しなかった以外は、例1と同様にして厚さ50μmのイオン交換膜を作製した。固体高分子電解質膜として上記イオン交換膜を使用した以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0041】
[例6]
例1におけるイオン交換膜のかわりに、市販の厚さ50μmのイオン交換膜(商品名:ナフィオン112、デュポン社製)を用いた以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0042】
[例7]
例1におけるユビキノンのかわりにアントラキノンを0.001g添加した以外は、例1と同様にして厚さ50μmのイオン交換膜を作製した。このイオン交換膜中のアントラキノンの含有量は質量比で0.0056%であった。
固体高分子電解質膜として上記イオン交換膜を使用した以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0043】
[例8]
特許文献1を参考に以下のようにして膜・触媒層接合体を作製した。スチレン−ジビニルベンゼンスルホン酸系のカチオン交換膜(厚さ100μm)をパラ−t−ブチルフェノールの1%のメタノール溶液に1時間浸漬した後に、ホルムアルデヒドの3%溶液に30分浸漬した後、室温で30分間乾燥した。次に80℃の乾燥器内で8時間放置した後、メタノール洗浄を行なって電解質膜を調製した。
固体高分子電解質膜として上記イオン交換膜を使用した以外は例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜・触媒層接合体を作製した。
【0044】
(評価)
例1〜8で得られた膜・触媒層接合体を、それぞれ厚さ350μmのカーボンクロスからなるガス拡散層2枚の間に挟んで膜・電極接合体を作製し、これを発電用セルに組み込んで固体高分子型燃料電池を作製した。常圧にて、水素(利用率70%)/空気(利用率40%)を供給し、セル温度70℃において、固体高分子型燃料電池の初期特性評価及び電流密度0.2A/cm2における耐久性評価を実施した。アノード側の露点は70℃とし、カソード側の露点は40℃とし、それぞれ水素及び空気を加湿してセル内に供給した。表2に、例1〜9の各膜・電極接合体について、電流密度0.2A/cm2で連続運転したときの経過時間とセル電圧の関係を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明は、キノン化合物を固体高分子電解質膜中に分散配合、又は燃料電池の触媒層中にイオン交換樹脂とともに分散配合することで、発電に伴って生成するラジカルや過酸化物に対しても安定な高耐久性固体高分子電解質を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体高分子型燃料電池の実施態様を示す図。
【符号の説明】
1:高耐久性固体高分子電解質膜、
2:アノード触媒層、
3:カソード触媒層、
4、4’:ガス拡散層、
5:セパレータ、
5a:セパレータのガス供給溝、
6:ガスシール体、
7:膜・電極接合体。
Claims (9)
- キノン化合物を含むイオン交換膜からなることを特徴とする固体高分子電解質膜。
- 前記キノン化合物は、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、クリセンキノン及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種以上である請求項1に記載の固体高分子電解質膜。
- 前記キノン化合物は、ユビキノン、フィロキノン、アントラキノン、2−エチルアントラキノン及び2−t−ブチルアントラキノンからなる群から選ばれる1種以上である請求項2に記載の固体高分子電解質膜。
- 前記キノン化合物が全質量中に0.01〜20%含まれる請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子電解質膜。
- 固体高分子電解質膜と該膜を介して対向し触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を備えるアノード及び前記カソードとからなる固体高分子型燃料電池用膜電極接合体において、前記固体高分子電解質膜は請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子電解質膜からなることを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
- 固体高分子電解質膜と該膜を介して対向し触媒とイオン交換樹脂とを含む触媒層を備えるアノード及びカソードとからなる固体高分子型燃料電池用膜電極接合体において、前記アノード及び前記カソードの少なくとも一方の触媒層は、キノン化合物を含むことを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
- 前記キノン化合物は、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、クリセンキノン及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる1種以上である請求項6に記載の固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
- 前記キノン化合物は、ユビキノン、フィロキノン、アントラキノン、2−エチルアントラキノン及び2−t−ブチルアントラキノンからなる群から選ばれる1種以上である請求項7に記載の固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
- 前記キノン化合物は、前記触媒層中の前記イオン交換樹脂と前記キノン化合物の合量の0.01〜20%含まれる請求項6〜8のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003035281A JP2004247155A (ja) | 2003-02-13 | 2003-02-13 | 固体高分子電解質膜及び固体高分子型燃料電池用膜電極接合体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003035281A JP2004247155A (ja) | 2003-02-13 | 2003-02-13 | 固体高分子電解質膜及び固体高分子型燃料電池用膜電極接合体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004247155A true JP2004247155A (ja) | 2004-09-02 |
Family
ID=33020750
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003035281A Pending JP2004247155A (ja) | 2003-02-13 | 2003-02-13 | 固体高分子電解質膜及び固体高分子型燃料電池用膜電極接合体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004247155A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006260811A (ja) * | 2005-03-15 | 2006-09-28 | Asahi Glass Co Ltd | 固体高分子形燃料電池用電解質膜、その製造方法及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 |
JP2020184521A (ja) * | 2019-04-29 | 2020-11-12 | 天津大学 | 高い化学的安定性を有するプロトン交換膜およびその調製方法 |
JP2022552560A (ja) * | 2019-12-27 | 2022-12-16 | コーロン インダストリーズ インク | 高分子電解質膜、その製造方法、及びそれを含む電気化学装置 |
WO2023091557A1 (en) * | 2021-11-19 | 2023-05-25 | The Lubrizol Corporation | Carbon supported electrode |
-
2003
- 2003-02-13 JP JP2003035281A patent/JP2004247155A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006260811A (ja) * | 2005-03-15 | 2006-09-28 | Asahi Glass Co Ltd | 固体高分子形燃料電池用電解質膜、その製造方法及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 |
JP2020184521A (ja) * | 2019-04-29 | 2020-11-12 | 天津大学 | 高い化学的安定性を有するプロトン交換膜およびその調製方法 |
JP2022552560A (ja) * | 2019-12-27 | 2022-12-16 | コーロン インダストリーズ インク | 高分子電解質膜、その製造方法、及びそれを含む電気化学装置 |
JP7450707B2 (ja) | 2019-12-27 | 2024-03-15 | コーロン インダストリーズ インク | 高分子電解質膜、その製造方法、及びそれを含む電気化学装置 |
WO2023091557A1 (en) * | 2021-11-19 | 2023-05-25 | The Lubrizol Corporation | Carbon supported electrode |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5287969B2 (ja) | 固体高分子電解質膜及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 | |
JP5151074B2 (ja) | 固体高分子電解質膜,膜電極接合体およびそれを用いた燃料電池 | |
JP4781818B2 (ja) | 固体高分子型燃料電池用膜電極接合体の製造方法 | |
JP5247974B2 (ja) | 固体高分子形水素・酸素燃料電池用電解質膜の製造方法 | |
US20080118808A1 (en) | Electrolyte membrane for polymer electrolyte fuel cell, process for its production and membrane-electrode assembly for polymer electrolyte fuel cell | |
JP4946026B2 (ja) | 固体高分子形燃料電池用電解質膜の製造方法及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法 | |
JP2006049110A (ja) | 燃料電池用触媒、それを用いた膜電極接合体、その製造方法及び燃料電池 | |
JP2006099999A (ja) | 固体高分子形燃料電池用電解質膜、その製造方法及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 | |
JP2007513472A (ja) | イオン伝導性ランダムコポリマー | |
JP2007109599A (ja) | 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 | |
JP2002298867A (ja) | 固体高分子型燃料電池 | |
JP2006318755A (ja) | 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 | |
JP2004152615A (ja) | 固体高分子電解質膜、その製造方法及び膜電極接合体 | |
JP5286651B2 (ja) | 液状組成物、その製造方法及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法 | |
CN101041137B (zh) | 燃料电池的阴极催化剂以及包括它的膜电极组件和燃料电池系统 | |
Song et al. | Investigation of direct methanol fuel cell performance of sulfonated polyimide membrane | |
JP4823583B2 (ja) | 燃料電池用高分子膜/電極接合体及びこれを含む燃料電池 | |
JP2007031718A5 (ja) | ||
JP5322145B2 (ja) | 燃料電池用複合電解質膜とその製造方法、膜電極接合体および燃料電池 | |
JP2004178814A (ja) | 固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体の製造方法 | |
JP2001076742A (ja) | 固体高分子型燃料電池 | |
JP2006210342A (ja) | 燃料電池用電極、これを含む膜−電極接合体及び燃料電池システム | |
JP4682629B2 (ja) | 固体高分子型燃料電池用電解質膜、および固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体 | |
JP2004247155A (ja) | 固体高分子電解質膜及び固体高分子型燃料電池用膜電極接合体 | |
JP2008098179A (ja) | 固体高分子形燃料電池用電解質膜、その製造方法及び固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 |