JP2004246305A - 光量調節部材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】安価で且つ光学特性の優れた光量調節部材、特にNDフィルタを、簡便に製造でき、更に、該方法により提供される光量調節部材を具備した、安価でしかも優れた光学特性を有する光量調節装置及び撮影装置を提供すること。
【解決手段】表面にインク受容層が形成されている透明基材上に、インクを吐出するインクジェットヘッドを、上記透明基材に対して相対的に走査してインクを付与し、光量調節領域を形成する工程を有する光量調節部材の製造方法であって、上記光量調節領域を形成する工程において、光量調節領域の全域にインクが付与されるようにインクジェットヘッドからインクを吐出させることを特徴とする光量調節部材の製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カメラ等の撮影装置や光学機器等に使用される光量調節装置における光量調節部材、例えば減光フィルタに関するものであり、特に、その分光透過特性が可視光域においてほぼ一定であるNDフィルタの製造に好適な光量調節部材の製造方法、かかる方法によって得られる光量調節部材、該光量調節部材を用いた光量調節装置及び撮影装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、デジタルカメラやビデオカメラ等の光学機器には、その光量調節のために絞り装置が組み込まれている。そして、この絞り装置においては、通常、絞り羽根を用いて光量を調節することが行われている。しかし、特に、高輝度被写体に対しては、その絞り径が小さくなり過ぎると、回折による解像力の劣化が生じるため、その絞り径に制限を加え、それと同時に、光量調節部材としてNeutralDensityフィルタ(以下、NDフィルタと略す)等を用いて通過光量を制限し、これにより画質低下を防止している。具体的には、絞り羽根の一部に、絞り羽根とは別部材であるNDフィルタを接着剤で装着するように構成することで、被写体が高輝度の時には、絞り径をあまり小さくなるまで絞り込まずに絞り開口を一定の大きさに維持し、その代わりにNDフィルタを光軸上に位置させるようにして、通過光量を制限している。更には、このNDフィルタとして、その光量調節機能に勾配を有したもの(以下、濃度勾配と呼ぶ)を用い、このフィルタを光軸上で移動させることにより、更なる光量調節を行うこともある。又、NDフィルタを絞り羽根に装着せずに、独立して光学的作用を持たせて構成した絞り装置も種々提案されている。
【0003】
前記したような光量調節装置における光量調節部材としてのNDフィルタには、通常、金属膜又は誘電体膜を蒸着等により成膜したものや、或いは、これらを多層積層したものが一般に使用されている。これは、これらの材料が、光学特性が良好で、且つ、耐久性が優れたものであることに起因している。又、その他のNDフィルタの作製方法としては、ガラスや、透明フィルムの形成材料であるセルロースアセテート、PET等の材料中に、光を吸収する染料や顔料を混ぜ、練り込んでフィルムとしたタイプのものや、前記材料からなる透明基材に光を吸収する染料や顔料を塗布したタイプのものがある。更に、銀塩フィルムを利用したNDフィルタの製造方法についての提案もある(例えば、特許文献1参照)。ここで、濃度勾配を有する光量調節部材は、分光透過特性が一定でなくとも、レーザービームプリンタ等の光量調節装置として利用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平05−173004号公報
【特許文献2】
特開平11−14923号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の製造方法にはいずれも下記に挙げるような課題があった。先ず、蒸着により膜を形成してなるNDフィルタは、その製造装置の規模が大きくなること、製造工程が複雑であること等の理由により、その製品コストが高くなるという問題がある。又、透明フィルムの形成材料中に染料や顔料を練り込むタイプや、透明基材表面に染料や顔料を塗布するタイプのものでは、均一濃度のNDフィルタを作成することはできても、濃度勾配を有したフィルタは、作成が非常に困難であるという問題がある。又、銀塩フィルムを利用すれば、濃度勾配を有するフィルタを作成することも可能であるが、この場合には、フィルム中に残存する銀粒子によって光の散乱が生じ、その光学特性が悪化するという問題点がある。
【0006】
一方、本発明者らの検討によれば、本発明のように、透明基材上にインク受容層を設け、このインク受容層に、光量調節機能を有するインクをインクジェット記録方式によって吐出することで、その機能を付与して作製した光量調節部材においては、一般のインクジェット記録で行われているような階調記録方式で作成した場合には、例えば、図2に示したようなインクドットを形成すると、ドットの有無による透過光量の分布や、ドットのエッジ部分における回折の影響を受け、その結果、結像にボケが生じる場合があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、安価で、且つ、光学特性の優れた光量調節部材、特にNDフィルタを、簡便に製造できる光量調節部材の製造方法を提供することにある。更に、本発明の目的は、簡便な光量調節部材の製造方法を提供することによって、該光量調節部材を具備した、安価でしかも優れた光学特性を有する光量調節装置及び撮影装置の提供を可能とすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明の第1の態様は、[1]表面にインク受容層が形成されている透明基材上に、インクを吐出するインクジェットヘッドを、上記透明基材に対して相対的に走査してインクを付与し、光量調節領域を形成する工程を有する光量調節部材の製造方法であって、上記光量調節領域を形成する工程において、光量調節領域の全域にインクが付与されるようにインクジェットヘッドからインクを吐出させることを特徴とする光量調節部材の製造方法である。又、その好ましい形態としては、[2]前記光量調節領域を形成する工程が、(i)インクジェットヘッドからのインクの吐出量と前記透明基材へのインク付与間隔(記録ピッチ)とをほぼ一定として記録を行うサブ工程と、(ii)上記(i)において、記録し得る最少単位(画素)の1つ若しくは複数の画素を1単位として、インク受容層にくり返し記録するサブ工程、とを有し、上記1単位を構成している各画素に対して付与される1つ以上のインクの種類と記録ドット数とが予め設定されている上記[1]に記載の光量調節部材の製造方法が挙げられる。
【0009】
本発明の第2の態様は、[3]表面にインク受容層が形成されている透明基材上に、インクを吐出するインクジェットヘッドを、上記透明基材に対して相対的に走査させながら、該インクジェットヘッドから異なる光量調節機能を有する複数種類のインクを吐出して、上記透明基材にインクを付与して光量調節機能が勾配を有する光量調節領域を形成する工程を有する光量調節部材の製造方法であって、上記光量調節領域を形成する工程において、インクジェットヘッドから吐出するインクの種類、インクの数、上記透明基材へのインク付与間隔(記録ピッチ)及びインク吐出量から選ばれる少なくとも1の条件を変化させることで、光量調節機能が勾配を有するように光量調節領域を形成し、且つ、上記複数種類のインクの中における最少の光量調節機能を有するインクを用いて光量調節領域の全域にインクを付与した時の光透過率は50%以上であり、その光透過率以下の全領域においてインクが付与されることを特徴とする光量調節部材の製造方法である。
【0010】
上記本発明の第2の態様の好ましい形態としては、下記の[4]〜[6]を挙げることができる。[4]前記光量調節機能が勾配を有する光量調節領域を形成する工程が、(i)インクジェットヘッドからのインクの吐出量と前記透明基材へのインク付与間隔(記録ピッチ)とをほぼ一定として記録を行うサブ工程と、(ii)上記(i)において、記録し得る最少単位(画素)の1つ若しくは複数の画素からなる光量調節レベルの異なる複数の単位を形成し、該レベルによって多値化処理を行った結果に従って該単位をインク受容層に記録するサブ工程、とを有し、上記複数の単位は、夫々の単位を構成する各画素に対して記録する1つ以上のインクの種類と記録ドット数とが設定されている上記[3]に記載の光量調節部材の製造方法。
【0011】
[5]光量調節領域全域にインクを付与し得る最大の記録ピッチを最大ピッチとして、記録ピッチを該最大ピッチよりも小さくさせることで勾配を有する光量調節機能を付与する上記[3]又は[4]に記載の光量調節部材の製造方法。[6]光量調節領域全域にインクを付与し得る最少の吐出量を最少吐出量として、吐出量を該最少吐出量よりも大きくさせることで勾配を有する光量調節機能を付与する上記[3]又は[4]に記載の光量調節部材の製造方法。
【0012】
上記本発明の第1又は第2の態様の好ましい形態としては、下記の[7]〜[13]を挙げることができる。[7]前記光量調節領域を形成する工程が、
前記インクジェットヘッドを、前記透明基材の所定領域に対して相対的に複数回走査して光量調節領域を形成するサブ工程を有し、且つ、複数回走査のうちの各1回の走査で記録される複数のインクドットの被記録材上での相互の距離が、各インクドット径よりも大きい上記[1]〜[6]のいずれかに記載の光量調節部材の製造方法。
【0013】
[8]前記光量調節領域を形成する工程が、前記インクジェットヘッドを、前記透明基材の所定領域に対して相対的に複数回走査して光量調節領域を形成するサブ工程を有し、且つ、前記インクとして光量調節機能の異なる複数種のインクを用い、すべての種類のインクにおいて、1回の走査で付与される複数のインクドットの被記録材上での相互の距離が、各インクドット径よりも大きい上記[1]〜[6]のいずれかに記載の光量調節部材の製造方法。
【0014】
[9]前記光量調節領域を形成する工程が、前記インクジェットヘッドを、前記透明基材の所定領域に対して相対的に複数回走査して光量調節領域を形成するサブ工程を有し、且つ、前記インクとして複数種の光量調節機能を有するインクを用い、それぞれの種類のインクにおいて、1回の走査で付与される複数のインクドットの被記録材上での相互の距離が、該インクドット径よりも大きく、更に、上記複数種のインクの付与場所が同じである上記[1]〜[6]のいずれかに記載の光量調節部材の製造方法。
【0015】
[10]前記インク受容層は、吸水性高分子を使用して形成された膨潤タイプのインク受容層である上記[1]〜[9]のいずれかに記載の光量調節部材の製造方法。[11]前記インクジェットヘッドは、複数個のインク吐出孔を有するマルチノズルのインクジェットヘッドである上記[1]〜[10]のいずれかに記載の光量調節部材の製造方法。[12]前記インクは、その分光透過特性が可視光域において略一定である上記[1]〜[11]のいずれかに記載の光量調節部材の製造方法。[13]インクが付与されたインク受容層上に平坦化層を形成する工程を更に有する上記[1]〜[12]のいずれかに記載の光量調節部材の製造方法。
【0016】
更に、本発明にかかる別の実施形態としては、下記の[14]〜[16]を挙げることができる。[14]上記[1]〜[12]のいずれかに記載の光量調節部材の製造方法で製作されたことを特徴とする光量調節部材。[15]上記[14]に記載の光量調節部材の製造方法で製作された光量調節部材と、該光量調節部材を駆動する駆動手段とを有し、上記光量調節部材の駆動量に応じて所定の開口部を透過する光束の透過量が調節されるように構成されていることを特徴とする光量調節装置。[16]上記[14]に記載の光量調節装置と、被写体像を形成する撮影光学系と、形成された被写体像を光電変換する撮像手段と、該光電変換された信号を記録する記録手段とを有し、且つ、上記光量調節装置が撮影光学系に配置されていることを特徴とする撮影装置。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。上記したように、本発明の第1の態様にかかる光量調節部材の製造方法は、表面にインク受容層が形成されている透明基材上に、インクを吐出するインクジェットヘッドを、上記透明基材に対して相対的に走査してインクを付与し、光量調節領域を形成する工程を有する光量調節部材の製造方法であって、光量調節領域を形成する工程において、光量調節領域全域にインクが付与されるようにインクジェットヘッドからインクを吐出させることを特徴とする。
【0018】
即ち、上記本発明の第1の態様にかかる方法では、インクジェットヘッドからインクを吐出して、透明基材にインクを付与して光量調節領域を形成する場合に、インクを吐出するインクジェットヘッドと、表面にインク受容層を備えた透明基材とを相対的に走査してインクを付与する際に、第1の方向での吐出する位置の間隔(主走査記録ピッチ)をa、それと直行する第2の方向での吐出する位置の間隔(副走査記録ピッチ)をb、記録したインクドットのドット径(直径)をrとした時、a+b<(r/2)の関係を満たすようにしてインクが付与されることを示している。
【0019】
ここで、主走査とは、インクジェットヘッドと透明基材とを相対的に走査する際の第1の方向であり、通常、マルチノズルのインクジェットヘッドを使用した場合には、そのノズル列方向と直行する方向を示し、又、副走査方向とは、通常ノズル列方向を示している。本発明で使用する光量調節機能を有するインク(以下、単にインクと称す)とは、少なくとも光を吸収する色材を含み、必要に応じて、インクジェットヘッドからの吐出性能を満たすように各種添加剤を含有したものである。前記したようにして光量調節領域全域にインクを付与することにより、図3に模式的に示したように、インクが存在しない部分がなくなり、先に述べた従来技術における課題であったインクドットのエッジの部分における回折等の影響をなくした、優れた光学特性の光量調節部材を得ることが可能となる。
【0020】
上記本発明の第1の態様にかかる方法の好ましい形態としては、上記光量調節領域を形成する工程が、(i)インクジェットヘッドからのインクの吐出量と、透明基材へのインク付与間隔(記録ピッチ)とをほぼ一定として記録を行うサブ工程と、(ii)上記(i)において、記録し得る最少単位(画素)の1つ若しくは複数の画素を1単位として、インク受容層にくり返し記録するサブ工程、とを有し、上記1単位を構成している各画素に対して付与される1つ以上のインクの種類と記録ドット数とが予め設定された方法が挙げられる。
【0021】
本発明の第2の態様にかかる光量調節部材の製造方法は、表面にインク受容層が形成されている透明基材上に、インクを吐出するインクジェットヘッドを、上記透明基材に対して相対的に走査させながら、該インクジェットヘッドから異なる光量調節機能を有する複数種類のインクを吐出して、上記透明基材にインクを付与して光量調節機能が勾配を有する光量調節領域を形成する工程を有する光量調節部材の製造方法であって、上記光量調節領域を形成する工程で、インクジェットヘッドから吐出するインクの種類、インクの数、上記透明基材へのインク付与間隔(記録ピッチ)及びインク吐出量から選ばれる少なくとも1つの条件を変化させることで、光量調節機能が勾配を有するように光量調節領域を形成し、且つ、上記複数種類のインクの中から選択された最少の光量調節機能を有するインクを用いて上記光量調節領域の全域にインクを付与した時の光透過率が50%以上であり、その光透過率以下の全領域においてインクが付与されることを特徴とする。
【0022】
上記本発明の第2の態様にかかる構成の光量調節部材の製造方法では、使用する複数種類のインクの中で最少の光量調節機能を有するインクを用いて光量調節領域全域を記録した時の光透過率は50%以上であり、当該光透過率以下となるように、全光量調節領域にインクを付与するとしているので、インクドットと透明部分との境界が生じる部分を極力少なくでき、且つ、該境界部分でのインクドットの濃度は、上述したように最少の光量調節機能を有するインクが有するインク濃度となることから、前述したインクドットのエッジの部分における回折等は、ほぼ実用上問題ない程度となる。
【0023】
上記本発明の第2の態様の好ましい形態としては、光量調節機能が勾配を有する光量調節領域を形成する工程が、(i)インクジェットヘッドからのインクの吐出量と前記透明基材へのインク付与間隔(記録ピッチ)とをほぼ一定として記録を行うサブ工程と、(ii)上記(i)において、記録し得る最少単位(画素)の1つ若しくは複数の画素からなる光量調節レベルの異なる複数の単位を形成し、該レベルによって多値化処理を行った結果に従って該単位をインク受容層に記録するサブ工程、とを有し、上記複数の単位は、夫々の単位を構成する各画素に対して記録する1つ以上のインクの種類と記録ドット数とが設定されている光量調節部材の製造方法が挙げられる。
【0024】
これに対し、吐出インク量を概ね一定とし、記録ピッチを変化させることで光量調節機能に勾配を持たせた光量調節領域を形成してもよい。具体的には、光量調節領域全域にインクを付与し得る最大の記録ピッチを最大ピッチとして、その記録ピッチを徐々に縮めることによっても光量調節機能に勾配を持たせることができる。但し、インク受容層における最大インク受容量には限界があることから、必要に応じて、色材濃度の高いインクと切り替えたり、記録ピッチも一時的に広げたりして記録を行うことも有効である。
【0025】
記録ピッチを概ね一定とし、インクの吐出量を変化させて光量調節機能に勾配を持たせた光量調節領域を形成させる別の方法としては、光量調節領域全域にインクを付与し得るインクの吐出量を最少吐出量とし、その吐出量を徐々に増加させることにより行うことが挙げられる。但し、この場合も前記と同様に、インク受容層の最大インク受容量の観点から、必要に応じて、色材濃度の高いインクと切り替えると共に、吐出量を一時的に減少させて記録を行うことも有効である。
【0026】
更に、上記本発明の第1又は2の態様にかかる方法の光量調節領域を形成する工程において、インクジェットヘッドを、透明基材の所定領域に対して相対的に複数回走査して光量調節領域を形成するためのサブ工程を有し、且つ、該複数回走査のうちの各1回の走査で記録される複数のインクドットの被記録材上での相互の距離が、各インクドット径よりも大きいくなるように構成することも好ましい形態である。即ち、上記のようにしてインクを付与すれば、1回の走査で記録されたインクドット群は、互いに重なりがなく、それぞれが独立した状態でドットが形成され、その結果、付与されたインクドット同士が重なることによって生じる色材の凝集を防ぐことが可能となる。
【0027】
上記で説明したような形態を有する本発明にかかる光量調節部材の製造方法によって製作された光量調節部材は、上記したような優れた効果を有する光量調節部材となる。更に、前記したいずれかの構成の光量調節部材の製造方法で製作された光量調節部材と、該光量調節部材を駆動する駆動手段とを有し、前記光量調節部材の駆動量に応じて所定の開口部を透過する光束の透過量が調節されるように構成されていることを特徴とする光量調節装置は、光量調節時に、前記光量調節部材による光量調節がなされ、回折の影響が少ない光量調節装置となる。
【0028】
又、上記記したいずれかの構成の光量調節装置と、被写体像を形成する撮影光学系と、形成された被写体像を光電変換する撮像手段と、前記光電変換された信号を記録する記録手段とを有し、且つ、前記光量調節装置が撮影光学系に配置されていることを特徴とする撮影装置は、撮影の際の光量調節時に前記光学調節装置による光量調節がなされ、回折による撮影解像力の低下が少なく、且つボケ像の一様性を悪化させない撮影装置となる。
【0029】
以下に、本発明にかかる光量調節部材の製造方法について、より具体的に説明する。先ず始めに、本発明の光量調節部材の製造方法において使用するインク受容層が形成されている透明基材について説明する。本発明において用いることのできる透明基材としては、光量調節部材とした場合における、機械的強度及び光学的特性等の必要特性を有していれば、特に限られるものではない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ジアセテート、トリアセテート、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる透明フィルム基材を挙げることができる。又、前記した必要特性を満たすものであれば、ガラス製の基材も使用可能である。
【0030】
本発明の光量調節部材の製造方法では、前記に挙げたような透明基材上に、下記のようにして形成されたインク受容層を有するものを使用する。この際に用いるインクを受容する材料としては、インクを吸収し、インク中の色材を層中に受容して定着し得るものであれば特に限られるものではなく、下記に挙げるような水溶性樹脂及び水分散性樹脂を用いることが好ましい。水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、及びアニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコールの変性物;水系ポリウレタン;ポリビニルピロリドン、及びビニルピロリドンと酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、4級化したビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、ビニルピロリドンとメタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体等のポリビニルピロリドンの変性物;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系水溶性樹脂;及びカチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースの変性物;ポリエステル、ポリアクリル酸(エステル)、メラミン樹脂、或いはこれらの変性物、少なくともポリエステルとポリウレタンとを含むグラフト共重合体等の合成樹脂;又、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、カチオン化でんぷん、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然樹脂等を挙げることができる。これらの材料の中でも特に、でんぷん系、カルボキシメチルセルロース系、ポリアクリル系、ポバール系等の吸水性高分子を用いて形成されるインク受容層は、膨潤タイプのものとなる。
【0031】
又、水分散性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド系共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、ポリビニルエーテル、シリコーン−アクリル系共重合体等、多数列挙することができるが、勿論、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0032】
又、前記に挙げたような樹脂に、アルミナ水和物や非晶質シリカ等を含有させた塗工液を用いることで、塗工膜に細孔(アルミナ水和物や非晶質シリカの微粒子間の隙間)を生じさせ、該細孔にインクを吸収させる隙間吸収タイプのインク受容層とすることも可能である。更に、コーティング性、インクの吸収性能の制御、機械的特性の向上等のために、インク受容層の形成材料中に、各種の、界面活性剤、架橋剤、染料固着剤(耐水化剤)、消泡剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、防カビ剤及び可塑剤等を含有させてもよい。
【0033】
インク受容層を形成する方法としては、例えば、下記のようにして行う。先ず、上述したインクを受容しうる水溶性樹脂及び水分散性樹脂等の材料を、必要に応じて添加される他の添加剤と共に、水或いはアルコール、多価アルコール類、又は他の適当な有機溶媒等から選択される液媒体に溶解、又は分散し、塗工液を調製する。次いで、得られた塗工液を、例えば、ロールコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、ゲートロールコーター法、バーコーター法、サイズプレス法、スプレーコート法、グラビアコーター法、カーテンコーター法、スピンコート法等の塗工方法によって、透明基材表面に塗工する。その後、例えば、熱風乾燥炉、熱ドラム、ホットプレート等を用いて乾燥を行うことで、インク受容層が形成される。
【0034】
本発明においては、膨潤タイプ及び隙間吸収タイプ、双方のインク受容層を使用することが可能であるが、これらの中でも膨潤タイプのインク受容層を用いることがより好ましい。膨潤タイプのインク受容層は、隙間吸収タイプのインク受容層と異なり、全体が一様な構造を成しているため、受容層内の空隙での散乱が防止され、その光学特性は均一で良好なものが得られ易いという特徴を持つからである。
【0035】
本発明の光量調節部材の製造方法では、前記のようにインク受容層を有する透明基材上に、インクジェットヘッドを透明基材に対して相対的に走査させながら、インクを吐出して、光量調節領域を形成する。以下、かかる光量調節領域の形成工程について説明する。
【0036】
本発明において用いるインクとしては、インクジェットヘッドにより吐出可能なものであれば特に限られるものではない。インクとしては、水系インク、油系インク共に用いることができるが、インクジェットヘッドからの吐出信頼性の点から、水系インクを使用することが好ましい。インクに光量調節機能を付与するための色材としては、各種の染料や顔料を用いることができるが、各種金属、無機微粒子、有機微粒子等も使用可能である。尚、本発明における色材とは、可視光、紫外光、赤外光を含む所定波長帯の光の透過率を制御する材料を指す。即ち、本発明において例示した光量調節部材の製造においては、色材として、可視光帯域全体に渡って均一な透過特性を与えるものを利用したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、赤外線カメラ用の光量調節装置に用いる光量調節部材を形成する場合には、赤外域の特定波長のみを透過する材料を用いることが必要となるが、これも色材に含まれる。更に、透過光量を制御する際の光の吸収が、材料内部で生じるもの、材料表面で生じるもの等、いずれも、本発明で使用する色材に含まれる。
【0037】
本発明において用いるインクを形成する場合に、前記した色材と共に使用される液媒体としては、水或いは各種の有機溶剤が挙げられるが、水性媒体としては、下記に挙げるような各種の水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。前記の如き水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。更に、本発明で使用するインクとしては、前記の成分の他に、必要に応じて、所望の物性値を持つインクとするために、例えば、各種の、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を添加したものを用いることができる。
【0038】
本発明においては、前記のような成分からなるインクを、インク受容層が形成された基材上にインクジェット記録方法を利用して付与して、所望の光量調節領域を形成する。この場合のインクの付与方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたサーマルタイプ、或いは圧電素子を用いたピエゾタイプのインクジェットヘッドが利用可能である。以下に示すように、インクの吐出量を変化させる必要がある場合には、吐出量の変調が比較的簡単にできるピエゾタイプのインクジェットヘッドを使用することが好ましい。この記録ヘッドを駆動して、インクを付与する装置としては、市販のインクジェットプリンタを用いることも可能であるが、その際には、プリンタドライバによるガンマ補正や色変換の処理が行われるため、若干の留意が必要である。従って、できれば、本発明の吐出条件に対応した特別のプリント装置で行うことが好ましい。又、このインクジェットヘッドとして、複数個のインク吐出孔を有するマルチノズルのインクジェットヘッドを使用するのが、本発明の特徴を生かし、且つ、その生産性を向上させるという観点からも、より好ましい。
【0039】
本発明にかかる方法では、前記のようなインクジェットヘッドから吐出させるインクの状態を適宜に制御することで、均一の光量調節機能(均一濃度)を付与した光量調節領域を形成したり、連続的に或いは段階的に光量調節機能が変化する勾配が付与された光量調節領域を形成することが可能である。特にかかる本発明による製造方法によれば、濃度勾配を有する光量調節部材も、均一濃度の光量調節部材と同じ工程で簡便に作成することが可能である。この点は、従来の蒸着等によって光量調節部材を製造する場合と大きく異なる点であり、製造上有利な点でもある。
【0040】
又、前記したようなインク受容層が形成されている透明基材上に、インクジェットヘッドを透明基材に対して相対的に複数回走査し、インクを吐出させて、インク受容層にインクを付与する場合に、1回の走査で記録されるインクドット群が、互いに重なりがなく、独立したインクドットが形成されるようにするとより好ましい。即ち、具体的には、複数回走査する場合に、各走査において、インクを付与する場所の相対距離(1回の走査で被記録材上に形成されるインクドットの相互間隔)が、形成されるインクドットのドット径よりも大きくなるようなマスク(マルチパス記録マスク)をかけて、インクを付与する。その結果、インクの凝集を防ぐことが可能となる。
【0041】
更に、複数種のインクを用いてインクドットを形成する際には、すべての種類のインクにおいて、1回の走査で記録するインクドット群は、互いに重なりがなく、独立したインクドットが形成されたものが好ましい。若しくは、複数種のインクを用いてインクドットを形成する際に、それぞれの種類のインクにおいて、1回の走査で記録するインクドット群が、互いに重なりがなく、独立したインクドットを形成すると共に、種類の異なるインク同士の関係としては、これらを同一場所に形成したものが好ましい。
【0042】
理想的には、前者のように、すべての種類のインクに対して、互いに重なりが生じないようにドットを形成した方が好ましいが、この場合は、インクの種類が増えるに従い、その制御のためのマルチパスの数も複雑且つ膨大になる。本発明者らの検討によれば、複数種のインクを用いる場合において、後者のように、すべてのインク種において同一場所にインクを付与する方法であっても、充分な効果があることが確認できた。即ち、同一場所にインクを付与する結果、付与するインクの量が増えても、従来の場合に比べて、インクの凝集を防ぐことが可能となる。
【0043】
インク受容層に付与されたインクによって形成される光量調節領域の状態は、例えば、インクジェットヘッドから吐出されるインクの吐出量、吐出位置、及び、その際に使用するインクの種類やインクドットの数を制御することによって所望のものとできる。前述したように、本発明では、基準となる吐出量、基準となる吐出ピッチ(吐出位置間隔)においてインクを吐出した際、その光量調節領域全域にインクが付与されるように設定し、各吐出位置に対して少なくとも1のインクを吐出することによって、前記光量調節領域全域にインクが付与されることを達成する。又、濃度勾配を有するNDフィルタを作成する場合には、インクジェットヘッドから吐出するインクの種類やその数、又は、記録ピッチや吐出インク量を、適宜に制御することで達成する。
【0044】
前記のようにして透明基材上にインクを付与した後、必要に応じて、熱風乾燥炉、熱ドラム、ホットプレート等を用いて乾燥を行ってもよい。特に前記インクを吸収しうる材料中に架橋剤を混合した場合には加熱或いは光照射を行うことにより被膜を硬化させる処理を行うことが効果的である。
【0045】
本発明の光量調節部材の製造方法では、前記のようにして透明基材のインク受容層上にインクを付与して光量調節領域を形成した後、更に、前記インク受容層上に透明の平坦化層を設けることが好ましい。この透明平坦化層は、インク受容層の表面や、内部における光散乱を防ぐ目的で設けるものである。透明平坦化層の形成に用いられる材料としては、先に挙げたインクを受容し得る材料と比較した場合に、屈折率差の少ないものを使用することが好ましい。これらの材料間での屈折率の差が大きい場合には、インク受容層と平坦化層との界面での反射等の影響によって、得られる光量調節部材の散乱成分が増加するためである。
【0046】
従って、透明平坦化層に用いられる材料としては、前記した理由により、先にインクを受容し得る材料として列挙したものの中から選択される、インク受容層との密着性が良好で、平坦化層とした場合の機械的強度、光学的特性等が必要性能を満たし、且つ、インク受容層の上に積層可能な材料を好適に用いることができる。例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド系共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、ポリビニルエーテル、シリコーン−アクリル系共重合体等、多数列挙することができるが、本発明は、これに限定されない。このような材料を塗工液として行う透明平坦化層の成膜も、例えば、ロールコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、ゲートロールコーター法、バーコーター法、サイズプレス法、スプレーコート法、グラビアコーター法、カーテンコーター法、スピンコート法等の方法によって行うことができる。又、前記のようにして成膜後、例えば、熱風乾燥炉、熱ドラム、ホットプレート等を用いて乾燥を行って、透明平坦化層を形成することも好ましい。
【0047】
又、先に述べた、インク受容層中にアルミナ等の粒子を含み、これら粒子間の隙間にインクを吸収する隙間吸収タイプである場合には、インクを付与した後、これらの隙間にシリコーンオイルや脂肪酸エステル等の液状の材料を埋め込んでもよい。この場合には、充填した前記のような液状物質が流失することを防ぐために、更に、前記したような通常の場合と同様の透明平坦化層を形成して被覆することが好ましい。
【0048】
本発明の光量調節部材の製造方法では、光学特性を向上させる目的で、更に、透明平坦化層や透明基材上に反射防止膜を形成してもよい。この際に形成する反射防止膜は、可視光帯域において反射防止特性が優れる、及び水分や有害ガスの遮断特性に優れる、という特性を有するものが好ましい。かかる要求を満たすためには、各種の機能性膜が積層された無機材料の蒸着多層膜を用いるのが好適である。例えば、本出願人による特開平06−273601号公報に記載されている反射防止膜を用いれば、フィルタの表面反射による迷光の発生を防止するとともに、水分や有害ガスの色材への浸入を遮断し、色材の劣化を防止することができる。
【0049】
即ち、上記した無機材料の蒸着多層膜からなる反射防止膜として、下記に挙げるような、光量調節部材の両表面に蒸着させたアンダーコート層と、これに積層させた繰返し多層膜からなる構成のものを用いることが好ましい。具体的には、例えば、上記アンダーコート層としては、光量調節部材の最表層を構成している合成樹脂製材料に対して良好な密着性を有し、且つ、耐薬品性及び耐摩耗性に優れたケイ素酸化物SiO(2>x>1)を主成分とする屈折率n=1.49〜1.59の低屈折率の材料からなる膜厚d=200nm〜300nmの薄膜とすることが好ましい。又、このアンダーコート層に積層させる多層膜が、酸化チタンTiO又は酸化ジルコニウムZrO又はこれらの混合物を主成分とする高屈折率の材料からなる第1層の薄膜と、この上に積層させたケイ素酸化物SiO(2≧x≧1)を主成分とする低屈折率材料からなる第2層の薄膜と、この上に積層させた酸化チタンTiO又は酸化ジルコニウムZrO又はこれらの混合物を主成分とする高屈折率材料からなる第3層の薄膜と、更に、この上に積層させたケイ素酸化物SiO(2≧x≧1)を主成分とする低屈折率材料からなる第4層の薄膜によって構成されたものとすることが好ましい。
【0050】
又、本発明にかかる製造方法によって得られる光量調節部材の、光学的厚さや表面粗さに影響され得る光学特性を好適に保つためには、インクジェット記録方法によって付与されるインクの液滴体積、着弾ドット径が小さい方が、局部的なインクの付与量の差によって生じるインク受容層厚の差を小さくできるため好ましい。具体的には、光量調節領域と前記層上に着色液が付与されて形成されるインクの1ドット面積との関係が、該光量調節領域の面積の20分の1以下となるようにインクを付与することが好ましく、より好ましくは50分の1以下とする。光量調節領域は調節する光束の径と同等かやや大きいことが望まれるが、ここで光束の径は該光量調節装置が適用される光学系の焦点距離やFナンバ等の光学的仕様によっても異なるが、5mm程度以下であると考えられる。又、得られる光量調節領域の表面粗さ(Ra)が、該光量を調節する光の波長の1/5以下、更には1/10以下であると好ましい。
【0051】
【実施例】
次に、実施例を挙げて、更に本発明を具体的に説明する。尚、文中、「wt%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
(実施例1)
本実施例では、光透過率約32%(OpticalDensity:O.D.=0.5)の、均一濃度を有するNDフィルタを作成した。先ず、透明基材として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、この上に下記の方法でインク受容層を形成した。先ず、塗工液として、ポリビニルアルコール(日本合成化学(株)製、ゴーセノールGM−14L)を用い、このポリビニルアルコール樹脂が固形分換算で10部となる水溶液を調製した。次に、得られた塗工液をワイヤーバーを用いて、透明基材であるPETフィルム上に塗工した後、熱風乾燥オーブンによって、100℃、5分の条件で乾燥を行った。このようにして作製したインク受容層の厚みは7μmであった。
【0052】
一方、本実施例で使用する光量調節機能を有するインクを、下記の方法で調製した。本実施例では、光量調節機能を付与する色材として、黒色顔料である水分散性カーボンブラックを使用し、表1に示す組成からなる、色材濃度の異なる黒色インク1及び2の2種類の水系インクを作製した。
【0053】
Figure 2004246305
【0054】
次に、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたサーマルインクジェットタイプのインクジェットヘッド(キヤノン製BC−50:ノズルピッチ1,200dpi、吐出量4.5pl)を使用し、このヘッドを、主走査及び副走査ともに1,200dpiピッチで記録し得るインクジェット記録装置を作成して、これに前記で調製したインクを搭載して、先に述べたインク受容層を形成した透明基材に、インクの付与を行って着色層を形成した。
【0055】
本実施例で形成した具体的な記録単位について以下に説明する。本実施例においては、図4に示したように、21.17μm(1,200dpi)角を1画素として、この画素が2×2の計4画素を1単位とした。そして、この1単位のa、b、c及びdのすべての場所に対しては、前記顔料濃度0.6wt%のインク1を1ドット付与し、該単位を構成するaとdの部分に対しては、更に顔料濃度1.2wt%のインク2を1ドット付与する。即ち、1単位を構成するaとdの部分には、2種類の異なる濃度のインクが1ドットずつ記録され、残りのbとcの部分には、濃度の薄いインク1のみを1ドット記録するようにした。この単位を、全ての記録領域に繰り返すことでパターンを形成するようにインクを付与した。尚、本実施例におけるインクを4.5pl吐出した際のインク受容層上でのドット径は、約φ40μmであり、図4に示したように光量調節領域の全域にインクが付与されて、エリアファクターは100%となっている。
【0056】
次に、インクが付与されたインク受容層(着色層)上に、更に、以下のようにして透明平坦化層を設けた。先ず、スチレン−ブタジエン共重合体(JSR(株)製、TR2000C)が、固形分換算で10部含有されたトルエン/メチルエチルケトン溶液を調製して塗工液とした。次に、この塗工液を、ワイヤーバーを用いて着色層上に塗工した後、熱風乾燥オーブンによって、100℃、5分の条件で乾燥を行った。このようにして作製された平坦化層の厚みは5μmであった。
【0057】
前記のようにして作製した本実施例のNDフィルタの光学特性について、下記のようにして評価を行った。光量調節装置の構成部材であるNDフィルタの良否を判断するためにNDフィルタ単体での透過特性を評価した。
【0058】
NDフィルタ単体での透過特性の評価方法について以下に示す。本実施例において作成した光透過率約32%のNDフィルタを、約5cm×5cmの大きさに切り出し、キヤノン(株)製デジタルカメラPowerShotG1のレンズ前方に配置し、ISO規格電子スチルカメラ用解像力チャートを撮影した。露出制御モードは、絞り解放による絞り優先AEを使用し、NDフィルタの有無に関わらず適正露出が得られるようにした。この撮影画像から白黒バーチャート(像面上での空間周波数14.5 linepares/mm)を切り出し、画像の白部のレベルと黒部のレベルの差分の比を求め、これを評価コントラストとした。又、NDフィルタを取り外した状態で同様の撮影を行って、画像の白部のレベルと黒部のレベルの差分の比を求め、これを参照コントラストとした。
【0059】
以上のようにして得られた値から、参照コントラストに対する評価コントラストの比率を求め、これをフィルタコントラストと定義した。このフィルタコントラストによる許容下限値は、その撮影装置の用途や価格帯により異なるが、普及クラスの撮影装置においては0.9以上、高級クラスでは0.92以上が好ましいことが分かっている。これに対して、本実施例におけるフィルタコントラストは0.94であり、充分に使用し得るものであることが分かった。
【0060】
(実施例2)
本実施例においては、図5の模式的に示したような、光透過率約100〜5%(O.D.=0〜1.3)の範囲で濃度勾配を有するNDフィルタを作製した。本実施例では、インクジェット記録装置によって光量調節領域を形成する際に使用したインクと、その記録方法以外は、実施例1の場合と同様にしてNDフィルタを作成した。以下、実施例1と異なる点を中心にして、本実施例について説明する。
【0061】
先ず、実施例1と同様にして、透明基材であるPET上に、ポリビニルアルコールを形成材料としてインク受容層を形成した。次に、このインク受容層にインクを付与する工程となるが、本実施例においても実施例1と同様の記録装置を使用し、記録ピッチとインク吐出量は概ね一定とし、又、1単位を1,200dpiの2×2=4画素とした。但し、その際に使用したインクは、表2に示した異なる色材濃度を有する6種類のインク1〜6である。又、表2に示したように、本実施例においては、色材として染料混合物を使用した。その際に、染料混合物として、可視光領域において、ほぼフラットな分光透過率を得るために、表3に示したような4種類の染料を表3に示した混合比率で混合したものを使用した。
【0062】
Figure 2004246305
【0063】
Figure 2004246305
【0064】
そして、これらの異なる色材濃度を有する6種類のインク1〜6を使用して、表4に示す11種類の単位を設定し、それぞれの単位の濃度レベルを利用して多値化処理を行った。尚、本実施例では、この際に、誤差拡散処理を利用して多値化処理を行ったが、特に誤差拡散法に限られるものではなく、ディザ法等、広く利用できる。
【0065】
Figure 2004246305
【0066】
上記のようにして各インクをPETフィルム上に付与して、光量調節機能が勾配を有する光量調節領域(着色層)を形成した。更に、実施例1と同様にして、着色層上にスチレン−ブタジエン共重合体からなる透明平坦化層113を形成した。本実施例では、更に、光量調節部材の両面に反射防止膜114を形成して(図8(b)参照)、濃度勾配を有するNDフィルタを作製した。反射防止膜114としては、特開平06−273601号公報の実施例に記載されたと同様の方法で、無機材料の蒸着多層膜からなる反射防止膜を形成した。この反射防止膜は、それぞれの表面に蒸着したアンダーコート層と、これに積層した繰返し膜である多層膜からなるが、具体的には、上記アンダーコート層は、表面に対して良好な密着性を有し、且つ、耐薬品性、及び耐摩耗性に優れたケイ素酸化物SiO(2>x>1)を主成分とする屈折率n=1.5程度の低屈折率材料からなる膜厚が300nm程度の薄膜であり、この上に積層させた多層膜は、酸化チタンTiOと酸化ジルコニウムZrOの混合物を主成分とする高屈折率材料からなる第1層の薄膜と、ケイ素酸化物SiO(2≧x≧1)を主成分とする低屈折率材料からなる第2層の薄膜と、酸化チタンTiOと酸化ジルコニウムZrOの混合物を主成分とする高屈折率材料からなる第3層の薄膜と、ケイ素酸化物SiO(2≧x≧1)を主成分とする低屈折率材料からなる第4層の薄膜によりなる。
【0067】
次に、このようにして作製した本実施例のNDフィルタの光学特性について、下記のようにして評価を行った。評価の際に、実施例1の、均一な濃度のNDフィルタについての評価結果と比較し得るように、光透過率約32%の均一濃度部分を作成し、この部分について実施例1と同様にして評価を行った。即ち、本実施例で作製したNDフィルタの、光透過率約32%の均一濃度の部分を約5cm×5cmの大きさに切り出し、キヤノン(株)製デジタルカメラPowerShotG1のレンズ前方に配置し、ISO規格電子スチルカメラ用解像力チャートを撮影した。露出制御モードは、実施例1と同様に、絞り解放による絞り優先AEを使用し、NDフィルタの有無に関わらず適正露出が得られるようにした。この撮影画像から白黒バーチャート(像面上での空間周波数14.5 linepares/mm)を切り出し、画像の白部のレベルと黒部のレベルの差分から評価コントラストを求めた。又、NDフィルタを取り外した際の撮影画像から参照コントラストを求め、これらの値からフィルタコントラストを求めた。
【0068】
本実施例で得られたNDフィルタにおけるフィルタコントラストは、0.97であり、大変良好な結果が得られた。又、図6に本実施例におけるNDフィルタの分光透過率を示した。図6に示したように、若干の透過率ゆらぎがあるものの、許容限界値、中心値±5%をほぼ満足し得るものであった。尚、より長波長側の透過特性を必要とする際には、色材として、近赤外吸収色素等を使用することによって、達成可能である。
【0069】
又、本実施例で得られたNDフィルタにおける濃度勾配の状況を、有効測定径φ1mmの透過濃度計(X−Rite製TR−310)を用い、0.5mmピッチで濃度を測定した。その結果を図7に示した。測定径が濃度変化に対して大き過ぎたという難点はあるものの、図7に示したように、きれいな濃度勾配が確認された。更に、本実施例で得られたNDフィルタは、水分や有害ガスの色材への浸入を遮断し、色材の劣化の防止されたものとなることが確認できた。
【0070】
次に、本実施例で作製したNDフィルタを用いて、ビデオカメラ用の光量調節装置である絞り装置を作成した。図8は、絞り装置の部材の1つである絞り羽根であり、図8(a)は上面図であり、図8(b)は、図8(a)のA−A’における模式的な断面図である。101は、1枚の絞り羽根であり、110は、この絞り羽根に組み込まれたNDフィルタである。101Qは光を遮断する光遮断部材であり、101Pで示した部分が、101Qに取り付けられたNDフィルタにおける光量を調節する部分となる。
【0071】
図1は、この絞り羽根を用いて作成した絞り装置であり、101は、図8で示した第1の絞り羽根、102は、第2の絞り羽根である。103は、不図示のモータの軸に孔103aにて嵌着されて、該孔103aを中心として回動される絞り羽根駆動レバーである。第1の絞り羽根101及び第2の絞り羽根102は、絞り羽根駆動レバー103の両端の突設ピン104にそれぞれの溝穴において係合している。105は、第1及び第2の絞り羽根101及び102のそれぞれの側縁部の溝に相対摺動可能に係合している不図示の地板のガイドピン、106は、該地板に貫設されている光路孔である。
【0072】
図1は、絞りが全開の時の状態を示している。絞りが全開の状態から絞りを絞っていくと絞りの開口部である光路孔106は、第1及び第2の絞り羽根の開口面積の減少と、濃度勾配を有するNDフィルタ部分101Pにより減光されるため、光路孔106を通る光束の透過率を徐々に低くすることができ、且つ、極端に開口面積を減少しなくとも充分な減光効果を得ることが可能となる。
【0073】
図9は、図1に示した絞り装置を光学装置に配置したものである。本実施例では、光学装置としては、動画像若しくは静止画像を撮像手段で電気信号に光電変換し、これをデジタルデータとして記録するビデオカメラ(撮影装置)を例にとって説明する。400は、複数のレンズ群からなる撮影光学系であり、第1レンズ群401、第2レンズ群402、第3レンズ群403、及び、図1で示した絞り装置100で構成される。そして、401は固定の前玉レンズ群、402はバリエータレンズ群、403はフォーカシングレンズ群である。404は、光学ローパスフィルタである。
【0074】
又、撮影光学系400の焦点位置(予定結像面)には、撮像手段411が配置される。これには、照射された光エネルギーを電荷に変換する複数の光電変換部、該電荷を蓄える電荷蓄積部、及び該電荷を転送し、外部に送出する電荷転送部からなる2次元CCD等の光電変換手段が用いられる。421は、液晶ディスプレイ等の表示器で、撮像手段411で取得した被写体像や、光学装置の動作状況を表示する。422は、操作スイッチ群でズームスイッチ、撮影準備スイッチ、撮影開始スイッチ、シャッター秒時等を設定する撮影条件スイッチで構成される。
【0075】
423はアクチュエータで、これによりフォーカス駆動を行い撮影光学系400の焦点状態を調節したり、その他の部材を駆動する。CPU431では、取り込まれた平均濃度の大きさが自身内にメモリーされている適正露出に相当する数値と一致しているかどうかを算出し、差のある場合は、その差分との絶対符号との絶対値に応じて、絞り開口を変化させ、若しくは、撮像手段411への電荷蓄積時間を変化させることになる。絞りを動かす場合には、絞り駆動回路432により、絞り羽根駆動レバー103が103aを回転中心とし回動することで、絞り羽根101及び102が上下にスライドする。これにより、開口部である光路孔106の大きさが変化する。
【0076】
以上のようにして、絞り開口面積或いは電荷蓄積時間を変化させて、最適の露出を得ることができる。最適露出にて、撮像手段411上に結像した被写体の像は、その明るさの強弱に応じた画素毎の電荷量として、電気信号に変換され、アンプ回路441で増幅された後、カメラ信号処理回路442で所定のγ補正等の処理を施される。尚、この処理は、A/D変換後のデジタル信号処理で行われてもよい。このようにして作られた映像信号はレコーダ443にて記録される。
【0077】
本実施例において作製したNDフィルタを使用した絞り装置を、前記のような構成の光学装置に配置して画像を形成したところ、回折の影響の少ない良好な画像を記録することができた。
【0078】
(実施例3)
本実施例においては、図10に示すような、光透過率が約70〜5%に段階的に変化するNDフィルタを作成した。各濃度ステップの値は、薄い方から、O.D.=0.15、0.3、0.5、0.75、1.0、及び1.3である。又、各ステップの幅は約0.76mmである。本実施例において使用したインクは、実施例2で使用したと同じ染料系(前記表3参照)のインクであり、染料混合物の含有量(色材濃度)を下記表5に示した色材濃度とし、この色材濃度による変化をイオン交換水の含有量で調節した以外は、表2に記載した各インクと同じ組成とした。又、透明基材及びインク受容層として市販のOHPシートを利用した点、及び、透明平坦化層の形成方法、又、インクの付与方法が異なる。これらの点を中心にして、本実施例を説明する。
【0079】
市販のOHPシート(キヤノン製CF−301)を利用し、NDフィルタの透明基材及びインク受容層とした。このOHPシートを構成している透明基材はPETであり、又、インク受容層は、アルミナ水和物を使用した隙間吸収タイプのものである。このインク受容層上に、電気熱変換体を用いたサーマルインクジェットタイプのインクジェットヘッド(キヤノン製BC−50:ノズルピッチ1,200dpi、吐出量4.5pl)を使用し、このヘッドを主走査ピッチを約31.0〜10.6μmに変化させて、前記実施例2で使用したと同様の染料系のインクの付与を行った。尚、副走査ピッチは1,200dpi約21.2μmで、一定とした。
【0080】
表5に、各光学濃度における主走査記録ピッチ、及び、使用したインクの色材濃度を示した。
Figure 2004246305
【0081】
以上のようにしてインクを付与した後、熱風乾燥オーブンにより、90℃、5分の条件で乾燥を行って、インク中の水分や溶剤等の蒸発を促した。次に、透明平坦化層を形成するが、本実施例においては、始めにシリコーンオイルを前記隙間吸収タイプの受容層に詰込み、その後に、実施例1と同様にスチレン−ブタジエン共重合体からなる透明膜を形成して透明平坦化層とした。このようにして、本実施例の段階的に変化した濃度ステップを有するNDフィルタを作製した。
【0082】
前記のようにして作製した本実施例のNDフィルタの光学特性について、評価を行った。本実施例においても、実施例1で示した評価結果と比較し得るように、光透過率約32%の均一濃度部分を作成し、この部分について実施例1と同様にして評価を行った。その結果、本実施例におけるフィルタコントラストは、0.94で、良好な結果が得られた。
【0083】
(実施例4)
本実施例においては、光透過率約32%(OpticalDensity:O.D.=0.5)の、均一濃度を有するNDフィルタを作製した。透明基材、及びその上に形成されたインク受容層として、実施例1と同様の方法で作成したと同様のものを用いた。
【0084】
本実施例で使用する光量調節機能を有するインクを調製した。本実施例において使用したインクは、色材としては実施例2と同じ染料混合物(前記表3参照)を用いたインクであり、表6に記載した組成を有するインクである。
【0085】
Figure 2004246305
【0086】
次に、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたサーマルインクジェットタイプのインクジェットヘッド(キヤノン製BC−50:ノズルピッチ1,200dpi、吐出量4.5pl)を使用し、このヘッドを主走査、副走査とも1,200dpiピッチ(約21.2μm)で、記録しうるインクジェット記録装置を作成した。そして、これに前記で調製したインクを搭載して、先に述べたインク受容層が形成された透明基材にインクの付与を行って着色層を形成した。本実施例においては、21.2μm角を1画素として、すべての画素に対して、表6に示した組成を有する染料濃度0.85wt%のインクが1ドット記録されるようにした。尚、この際のインク受容層上でのドット径は、約φ40μmであった。
【0087】
本実施例において行った具体的なインクの付与の方法を、以下に説明する。本実施例においては、1つの画素領域に対して16回の走査で記録が完了する、いわゆる16パス記録を行った。図11に、本実施例で、インクジェットヘッド部が1回の走査で記録する位置を選択する際に使用したマスクを示した。実線で示した部分が、1つの画素領域を形成するためのマスク部である。このマスクサイズは4×4の大きさであり、図中の数値は、何回目の走査で記録するかを示している。本実施例では、図11に示したように、このようなものを繰り返し並べてマスクとし、実際に記録する位置(画素)と対応付け、この状態でインクを吐出した。即ち、16回の走査を行う場合に、一回の走査においてインクが付与される場所の間隔は、どの回の走査においても4画素相当(21.2×4=84.8μm)離れており(図11に示した1パス目の部分参照)、この値は、形成されるドット径約40μmよりも十分大きな値となっている。
【0088】
図12に、この1回目の走査において記録したインクドットの写真の複写画像を示した。図12に示したように、各ドットが、いずれも他のドットと重なることなく独立した状態で形成されていることが確認できた。比較として、従来方法における1回目の走査において記録したインクドットの写真の複写画像を図15に示した。
本実施例では、以上のようにして順次記録走査を繰り返していき、インク付与の工程とした。図13に、このようにして作成したインクドットの写真の複写画像を示した。図13に示したように、色材の凝集のない均一な着色層が形成されていることがわかった。又、比較として、図16に従来方法で作成したインクドットの写真の複写画像を示した。
【0089】
次に、前記のようにしてインクが付与された受容層(着色層)上に、実施例1と同様にして透明平坦化層を設けた。
【0090】
前記のようにして作製した本実施例のNDフィルタの光学特性について、実施例1と同様に評価を行なった。その結果、本実施例におけるフィルタコントラストは0.95であり、良好な結果を得た。
【0091】
又、図14に、本実施例におけるNDフィルタの分光透過率を示した。一般に、カメラ等の撮影装置に使用する際の分光透過率の許容限界値は、可視光全域(400〜700nm)において、中心値±5%と言われており、前記結果は、若干の透過率ゆらぎがあるものの、許容限界値、中心値±5%をほぼ満足しうるものであった。尚、より長波長側の透過特性を必要とする際には、色材として近赤外吸収色素等も使用することにより、達成可能である。
【0092】
(実施例5)
本実施例においては、図5に示したような、光透過率約100〜5%(OpticalDensity:O.D.=0〜1.3)の濃度勾配を有するNDフィルタを作製した。本実施例においても、実施例4の場合とほぼ同様の手順で作製した。以下、実施例4と異なる点を中心にして、本実施例を説明する。
【0093】
先ず始めに、実施例4の場合と同様に、実施例1で用いた方法で、透明基材としてのPET上にポリビニルアルコールからなるインク受容層を形成した。次に、このインク受容層にインクを付与して、光量調節領域(着色層)を形成したが、この際に、本実施例においても、実施例4と同様の記録装置を使用し、又、1,200dpiの2×2=4画素を1単位として、これを繰り返し記録することによって付与するインクの色材量を制御した。但し、使用したインクは、表7に示した6種類の濃度の異なるものである。尚、本実施例においても、実施例4と同様に、色材としては実施例2と同じ染料混合物(前記表3参照)を用いた。
【0094】
Figure 2004246305
【0095】
これらの6種類のインクを使用して、表8に示した10種類の単位を設定した。表8中の、abcdは、図4に示すような1単位中での位置を示しており、そのそれぞれの単位の濃度レベルを利用して多値化処理を行った。尚、本実施例においては、誤差拡散処理を利用して多値化処理を行ったが、特に誤差拡散法に限られるものではなく、ディザ法等広く利用できる。
【0096】
Figure 2004246305
【0097】
次に、多値化処理の結果得られた単位の分布に従ってそれぞれの種類のインクを付与することとなるが、本実施例では、図17に示したような順番で走査する16パスのマスクを使用して、1回の走査における同一種類のインクが重ならないようにした。又、6種類のインクに対しては、全て同一マスクを用い、本実施例では、異なる種類のインクに対しても、同一走査においては全て同一場所に記録するように制御した。
【0098】
以上のようにしてインクを付与した後、実施例1と同様の方法で、スチレン−ブタジエン共重合体からなる透明平坦化層を形成して、濃度勾配を有するNDフィルタを作成した。
【0099】
次に、このようにして作製した本実施例のNDフィルタの光学特性について、下記のようにして評価を行った。評価の際に、実施例1の、均一な濃度のNDフィルタについての評価結果と比較し得るように、光透過率約32%の均一濃度部分を作成し、この部分について実施例1と同様にして評価を行った。その結果、本実施例におけるフィルタコントラストは、0.97であり、大変良好な結果が得られた。又、本実施例におけるNDフィルタの分光透過率も、実施例4の場合と同様に、若干の透過率ゆらぎがあるものの、許容限界値、中心値±5%をほぼ満足し得るものであった。尚、より長波長側の透過特性を必要とする際には、色材として、近赤外吸収色素等を使用することによって、達成可能である。
【0100】
又、本実施例における濃度勾配の状況を、有効測定径φ1mmの透過濃度計(X−Rite製TR−310)を用い、0.5mmピッチで濃度を測定した。その結果を図18に示した。測定径が濃度変化に対して大き過ぎたという難点はあるものの、図18に示したように、きれいな濃度勾配が確認された。
【0101】
次に、本実施例で作製したNDフィルタを用いて、実施例2で作成した物と同様にビデオカメラ用の光量調節装置である絞り装置を作成した。その結果、実施例2と同様に本実施例において作製したNDフィルタを使用した絞り装置を光学装置に配置して画像を形成したところ、回折の影響の少ない良好な画像を記録することができた。
【0102】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、非常に簡便に、歩留まりよく安価に、光学特性に優れた光量調節部材が得られる光量調節部材の製造方法が提供される。又、本発明によれば、他の製造方式では著しく困難な、連続的に或いは段階的に変化する濃度分布を有する、光学特性に優れた光量調節部材を簡便に製造することが可能な光量調節部材の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で作成した光量調節装置(絞り装置)を示す図である。
【図2】一般のインクジェット記録における記録状態の模式図である。
【図3】本発明で使用する記録状態を示す模式図である。
【図4】単位の説明図である。
【図5】実施例2で作成したNDフィルタを示す図である。
【図6】実施例2で作成したNDフィルタの分光透過率を示す図である。
【図7】実施例2で作成したNDフィルタの光学濃度分布を示す図である。
【図8】実施例2で作成した光量調節装置の絞り羽根を示す図である。
【図9】実施例2で作成した光量調節装置を組み込んだ撮影装置の構成図である。
【図10】実施例3で作成したNDフィルタを示す図である。
【図11】実施例4で使用した16パスマスクの説明図である。
【図12】実施例4における1回の走査で形成したインクドット写真の複写図である。
【図13】実施例4で作成したNDフィルタのインクドットの写真の複写図である。
【図14】実施例4で作成したNDフィルタの分光透過率を示す図である。
【図15】従来の方法における1回の走査で形成したインクドット写真の複写図の一例である。
【図16】従来の方法で作成したNDフィルタのインクドットの写真の複写図である。
【図17】実施例5で使用した16パスマスクの説明図である。
【図18】実施例5で作成したNDフィルタの光学濃度分布を示す図である。
【符号の説明】
100:絞り装置
101、102:絞り羽根
101P:NDフィルタで形成された光量調節部分
101Q:光量遮断部分
103:絞り羽根駆動レバー
104:突設ピン
105:ガイドピン
106:地板の光路孔
110:NDフィルタ
111:透明基材
112:インク受容層
113:透明平坦化層
114:反射防止膜
400:撮影光学系
401:第1レンズ群
402:第2レンズ群
403:第3レンズ群
404:光学ローパスフィルタ
411:撮像手段
421:表示器
422:操作スイッチ群
423:アクチュエータ
431:CPU
432:絞り駆動回路
433:CCD駆動回路
441:アンプ回路
442:カメラ信号処理回路
443:レコーダ

Claims (1)

  1. 表面にインク受容層が形成されている透明基材上に、インクを吐出するインクジェットヘッドを、上記透明基材に対して相対的に走査してインクを付与し、光量調節領域を形成する工程を有する光量調節部材の製造方法であって、
    上記光量調節領域を形成する工程において、光量調節領域の全域にインクが付与されるようにインクジェットヘッドからインクを吐出させることを特徴とする光量調節部材の製造方法。
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