JP2004354857A - 光学フィルタとその製造方法、光量調節部材とその製造方法、光量調節装置及び及び撮影装置 - Google Patents

光学フィルタとその製造方法、光量調節部材とその製造方法、光量調節装置及び及び撮影装置 Download PDF

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英利子 鯰江
Ichiro Onuki
一朗 大貫
Takeshi Miyazaki
健 宮崎
Akio Kashiwazaki
昭夫 柏崎
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Abstract

【目的】耐湿性能に優れた樹脂層の吸湿によって生じる恐れのある光路長の部分的変化が防止され、光学特性の劣化の発生が有効に防止された充分な信頼性を有する光学フィルタを提供すること。
【構成】透明基材上に所定の波長帯域の光を減衰する樹脂層及び保護層を設けた少なくとも3つの材料から成る光学フィルタを、その樹脂層が保護層で覆われているものとする。ここで、前記保護層はディップコーティング法により形成される。又、前記光学フィルタの保護層に覆われていない部分と光学フィルタの有効領域の距離が離れている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カメラ等の撮影装置や光学機器等に使用される光学フィルタとその製造方法、光量調節部材とその製造方法、光学フィルタを用いた光量調節装置及び撮影装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、デジタルカメラやビデオカメラ等の光学機器には、その光量調節のために絞り装置が組み込まれている。そして、この絞り装置においては、通常、絞り羽根を用いて光量を調節することが行われている。しかし、特に、高輝度被写体に対しては、その絞り径が小さくなり過ぎると、回折による解像力の劣化が生じるため、その絞り径に制限を加え、それと同時に、光量調節部材としてNeutral Density フィルタ(以下、NDフィルタと略す)等を用いて通過光量を制限し、これにより画質低下を防止している。
【0003】
具体的には、絞り羽根の一部に、絞り羽根とは別部材であるNDフィルタを接着剤で装着するように構成することで、被写体が高輝度の時には、絞り径を余り小さくなるまで絞り込まずに絞り開口を一定の大きさに維持し、その代わりにNDフィルタを光軸上に位置させるようにして、通過光量を制限している。更には、このNDフィルタとして、その光量調節機能に勾配(以下、濃度勾配と呼ぶ)を有しているものを用い、このフィルタを光軸上で移動させることにより、更なる光量調節を行うこともある。又、NDフィルタを絞り羽根に装着しないで、独立して光学的作用を持たせて構成した絞り装置も種々提案されている。
【0004】
上記したような光量調節装置における光量調節部材としてのNDフィルタには、通常、金属膜又は誘電体膜を蒸着等により成膜したものや(特許文献1、特許文献2等参照)、或は、これらを多層積層したものが一般に使用されている。これは、これらの材料が光学特性が良好で、且つ、耐久性が優れていることに起因している。
【0005】
又、その他のNDフィルタの作製方法としては、ガラスや透明フィルムの形成材料であるセルロースアセテート、PET等中に光を吸収する染料や顔料を混ぜ、練り込んだタイプのものや(特許文献3等参照)、前記材料から成る透明基材に光を吸収する染料や顔料を塗布するタイプのものがある。更に、銀塩フィルムを利用したNDフィルタの製造方法も提案されている(特許文献4参照)。又、濃度勾配を有する光学フィルタは、分光透過特性が一定でなくとも、レーザービームプリンタ等の光量調節装置として利用されている(特許文献5参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−133254号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2000−352736号公報
【0008】
【特許文献3】
特開平10−96971号公報
【0009】
【特許文献4】
特開平5−173004号公報
【0010】
【特許文献5】
特開平11−14923号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、蒸着により膜を形成してなるNDフィルタは、その製造装置の規模が大きくなること、製造工程が複雑であること等の理由により、その製品コストが高くなるという問題があった。又、フィルム等の形成材料中に染料や顔料を練り込むタイプや基材表面に塗布するタイプのものでは、均一濃度のNDフィルタを作製することはできても、濃度勾配を有したフィルタの作製が非常に困難であった。又、銀塩フィルムを利用すれば、濃度勾配を有するフィルタを作製することも可能であるが、フィルム中に残存する銀粒子によって光の散乱が生じ、その光学特性が悪化するという問題がある。
【0012】
これに対し、本発明者は、透明基材上にインク受容層を設け、このインク受容層に光量調節機能を有するインク(着色液)を吐出して、その機能を付与することで樹脂層を形成し、更に、その上に保護層を形成して、光量調節部材である光学フィルタを作製する方法が有効であると考え、種々の検討を重ねている。上記方法によれば、簡便に優れた性能を有する光学フィルタを製造できることが確認されたが、更なる詳細な検討の結果、充分な信頼性を有する光学フィルタとするためには、更に、下記に述べるような解決すべき課題があることが分かった。
【0013】
即ち、光学フィルタを、一般のインクジェット記録で行われているような階調記録方式で作製した場合には、形成した樹脂層が直接外気に曝されることとなるため、光学フィルタを長期保存や或は湿度の高い状況下に長期間に亘って置いた場合に、空気中の水分を吸収して樹脂層が膨潤する場合があった。樹脂層の膨潤により、光学フィルタの光路長の部分的変化を生じた場合、光学フィルタとしての光学特性が損なわれることが考えられる。このため、このような膨潤を抑制し、或は防止することが、上記したようなインクジェット法を用いて形成して成る光学フィルタのより一層の性能向上を図る上で重要な技術課題であると本発明者等は認識した。
【0014】
ところで、特開平9−105814号公報には、光学フィルムの素材面の片面又は両面に、50℃、90%R.H.での飽和吸水率が1.0重量%以下であり、且つ、基準温度23℃、緩和時間10 秒での緩和弾性率が15×10 dyn/cm 以下である粘着剤層を光学フィルムの片面又は両面に設けることで、液晶セルに貼着するための光学フィルムの加熱加湿処理による光学特性の低下を抑えることが提案されている。
【0015】
しかし、本発明者等の検討によれば、上記特開平9−105814号公報に開示された方法を適用したとしても、光学フィルタの端面からの吸湿を抑えることはできなかった。
【0016】
又、特開2001−159712号公報では、基材の片面に光吸収膜と透明誘電体膜から成る2層構成の反射防止膜を設ける一方、基材のもう片方の面に着色粘着剤層を設け、着色粘着剤層は、複数の発光波長のうち、特定の発光域の光を他の発光域の光より透過させる特性を有する光学フィルタが開示されているが、反射防止膜が端面を覆っておらず、本願発明に技術を何ら開示しているものではない。
【0017】
従って、本発明の目的は、安価で、且つ、安定して優れた光学特性を有する光量調節部材である光学フィルタ及び該光学フィルタの簡便な製造方法を提供することにある。より具体的には、特に耐湿性能に優れた樹脂層の吸湿によって生じる恐れのある光路長の部分的変化が防止され、光学特性の劣化の発生が有効に防止された充分な信頼性を有する光学フィルタ及びその製造方法を提供することにある。
【0018】
更に、本発明の目的は、安価で、しかも優れた光学特性を有する光学フィルタを得ることで、経済的でありながら、且つ、充分な信頼性をも有する光量調節部材とその製造方法、光量調節装置及び撮影装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記した本発明の目的は、下記の本発明によって達成される。
【0020】
即ち、本発明は、透明基材上に所定の波長帯域の光を減衰する樹脂層及び保護層を設けた少なくとも3つの材料から成る光学フィルタにおいて、樹脂層が保護層で覆われていることを特徴とする光学フィルタである。その好ましい形態としては、前記保護層がディップコーティング法により形成されることを特徴とする光学フィルタである。
【0021】
又、樹脂層が保護層に覆われていない部分と光学フィルタの有効領域との距離が離れていることを特徴とする光学フィルタである。更に、上記構成において請光学フィルタと前記光学フィルタを保持する部材を有した光量調節部材において、前記保護層に覆われていない光学フィルタの端面が接着剤にて封止されるとともに前記光学フィルタを保持する部材に固定されることを特徴とする光量調節部材である。
【0022】
本発明の別の実施形態は、上記した光学フィルタを製造する方法である。透明基材上に所定の波長帯域の光を減衰する樹脂層と保護層との少なくとも3層を具備する光学フィルタの製造方法であって、一方の面に該樹脂層を有している透明基材から、透明基材と該樹脂層とを備え、所定の形状を有している光学フィルタの前駆体が枝材により枠体、若しくは他の光学フィルタ前駆体と結合している部材を得る工程と、前記部材を構成している光学フィルタ前駆体の全面に保護層を付与し、光学フィルタを形成する工程と、前記部材から光学フィルタを切り出す工程と、を有することを特徴とする光学フィルタの製造方法が挙げられる。
【0023】
又、光学フィルタの前駆体と結合している部分を光学フィルタの有効領域から距離が離れたところに設けることを特徴とする製造方法である。更に、上記構成の記載の方法で製造された光学フィルタと該光学フィルタを保持する部材に固定されている光量調節部材の製造方法であって、該光学フィルタの該保護層で被覆されていない部分を接着剤で封止しつつ、前記保持する部材に該接着剤で該光学フィルタを固定する工程、を有することを特徴とする光量調節部材の製造方法が挙げられる。
【0024】
本発明の別の実施形態は、上記記載の方法で作製された光学フィルタと、該光学フィルタを備えた光量調節部材と、該光量調節部材を駆動する駆動手段とを有し、上記光量調節部材の駆動量に応じて所定の開口部を透過する光束の透過量が調節されるように構成されることを特徴とする光量調節装置である。
【0025】
本発明の別の実施形態は上記記載の光量調節装置と、被写体像を形成する撮影光学系と、該被写体像を光電変換する撮像手段と、該光電変換された信号を記録する記録手段とを有し、上記光量調節装置を撮影光学系に配置することを特徴とする撮影装置である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0027】
本発明に係る光学フィルタは、下記に挙げたような透明基材上に、所定の光路長を有し、且つ、所定の波長帯域の光を減衰する機能を有する樹脂層から成る第2の層と、該第2の層を保護するための第3の層(以降「保護層」と称する)から成り、保護層が第2の層である樹脂層を覆っている構造を有する。このような構造の光学フィルタは、先に述べた光学フィルタの製造方法によって容易に得られる。以下、これらについて詳細に説明する。
[製造方法の形態]
本発明に係る光学フィルタの製造方法では、上記透明基材から成る第1の層の全面に、先ず、液体噴射記録法を利用して所定の光路長を有し、且つ、所定の波長帯域の光を減衰する機能を有する樹脂層から成る第2の層を形成する。次いで、プレス法若しくはレーザにより所定の形状に加工した光学フィルタの前駆体を得る。次いで、第2の層を保護する第3の層をディップコート法により形成する。その後、前駆体から切り出して光学フィルタを製造する。
【0028】
更に、切り出し部において外気と触れている第2の層を接着剤で封止するとともに、光学フィルタを保持する部材に取り付けることで、光量調節部材を製造する。
【0029】
第1の層としては透明基材を用いる。透明基材としては、光学フィルタとした場合における機械的強度及び光学的特性等の必要特性を有していれば、特に限られるものではない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ジアセテート、トリアセテート、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等から成る透明フィルム基材を挙げることができる。又、上記した必要特性を満たすものであれば、透明のガラス製の基材も使用可能である。
【0030】
第2の層は、前記したような材料から成る透明基材上に形成されたものであって、所定の光路長を有し、且つ、所定の波長帯域の光を減衰する機能を有する樹脂層から成る。このため、該樹脂層は、均一濃度を付与した光量調節領域が形成されたものであっても、連続的に或は段階的に濃度が変化する勾配が付与された濃度変化領域が形成されたものであっても良い。具体的には、透明基材上に形成したインク受容層に、液体噴射記録法を用いてインクを付与することによって容易に得られる均一濃度、或は濃度勾配を有する着色樹脂層とすることが好ましい。この際に用いるインク受容層は、インクを吸収し、インク中の色材を層中に受容して定着し得るものであれば特に限られるものではない。このような層は、下記に挙げるような水溶性樹脂及び水分散性樹脂を用いることにより形成することができる。
【0031】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール及びアニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコールの変性物;水系ポリウレタン;ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドンと酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、4級化したビニルピロリドンとジメチルアミノエチル・メタクリル酸の共重合体、ビニルピロリドンとメタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体等のポリビニルピロリドンの変性物;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系水溶性樹脂;及びカチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースの変性物;ポリエステル、ポリアクリル酸(エステル)、メラミン樹脂或はこれらの変性物、少なくともポリエステルとポリウレタンとを含むグラフト共重合体等の合成樹脂;又、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、カチオン化でんぷん、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然樹脂を挙げることができる。
【0032】
又、水分散性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル,エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド系共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、ポリビニルエーテル、シリコン−アクリル系共重合体等、多数列挙することができるが、勿論、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0033】
又、上記に挙げたような樹脂に、アルミナ水和物や非晶質シリカ等を含有させた塗工液を用いることで、塗工膜に細孔(アルミナ水和物や非晶質シリカの微粒子間の隙間)を生じさせ、該細孔にインクを吸収させる隙間吸収タイプのインク受容層とすることも可能である。更に、コーティング性、インクの吸収性能の制御、機械的特性の向上等のために、インク受容層の形成材料中に、各種の界面活性剤、架橋剤、染料固着剤(耐水化剤)、消泡剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、防カビ剤及び可塑剤等を含有させても良い。
【0034】
インク受容層を形成する方法としては、例えば、下記のようにして行う。
【0035】
先ず、上述したインクを受容し得る水溶性樹脂及び水分散性樹脂等の材料を、必要に応じて添加される他の添加剤と共に水或はアルコール、多価アルコール類、又は他の適当な有機溶媒等から選択される液媒体に溶解、又は分散し、塗工液を調製する。次いで、得られた塗工液を、例えば、ロールコーター法、ブレードコーター法、エアナイフコーター法、ゲートロールコーター法、バーコーター法、サイズプレス法、スプレーコート法、グラビアコーター法、カーテンコーター法、スピンコート法等の塗工方法によって透明基材表面に塗工する。その後、例えば、熱風乾燥炉、熱ドラム、ホットプレート等を用いて乾燥を行うことで、インク受容層を形成する。
【0036】
上記のようにしてインク受容層を形成した後、液体吐出装置を用いてインクジェットヘッドを透明基材に対して相対的に走査させながら、該インクジェットヘッドからインクを吐出してインク受容層に均一濃度を付与したり、連続的に或は段階的に濃度が変化する勾配を付与して第2の層である樹脂層を形成する。
【0037】
この際に用いるインクとしては、インクジェットヘッドにより吐出可能なものであれば特に限られるものではないが、下記のものを使用することが好ましい。インクとしては、色材を水系或は油系の液媒体に溶解又は分散させて成る水系インク或は油系インクを何れも使用することができるが、インクジェットヘッドからの吐出信頼性の点から、水系インクを使用することが好ましい。
【0038】
又、用いる色材としては、インクが付与されて樹脂層を形成した場合に、所定の波長帯域の光を減衰する機能を有するものとできれば、何れのものでも良い。従って、本発明で言う色材とは、可視光、紫外光、赤外光を含む所定波長帯の光の透過率を制御する材料を指す。
【0039】
本発明の光学フィルタの製造方法によってNDフィルタを製造する場合には、可視光域全域に亘ってほぼフラットな透過率特性が求められるため、この場合には、各種染料や顔料を適宜組み合わせたものを使用して、可視光帯域全体に亘って均一な特定の透過特性を与えるものを使用することが望ましい。
【0040】
しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、赤外線カメラ用の光量調節装置に用いる場合には、赤外域の特定波長のみを透過する材料が用いられるが、これも本発明で言う色材に含まれる。更に、透過光量を制御する際の光の吸収が材料内部で生じるものや材料表面で生じるもの等、何れも本発明で言う色材に含まれる。具体的には、各種染料や顔料を用いることができる。顔料としては、有機顔料、無機顔料(各種金属、各種金属酸化物、金属窒化物等その複合体、有機微粒子等との複合体)も使用可能である。
【0041】
上記のインクを形成する場合に、上記した色材と共に使用される液媒体としては、水或は各種の有機溶剤が挙げられるが、水性媒体としては、下記に挙げるような各種の水溶性有機溶剤を用いることができる。
【0042】
例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0043】
上記のような水溶性有機溶剤は、単独でも或は混合物としても使用することができる。更に、本発明で使用するインクとしては、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、例えば、各種の界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を添加したものを用いることができる。
【0044】
本発明に係る製造方法では、インク受容層を形成した透明基材上に、液体吐出装置を利用して上記したような構成のインクを付与して、特定の光学特性を有する樹脂層を形成するが、この場合のインクの付与方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたサーマルタイプ或は圧電素子を用いたピエゾタイプのインクジェットヘッドが利用可能である。
【0045】
以下に示すように、インクの吐出量を変化させる必要がある場合には、吐出量の変調が比較的簡単にできるピエゾタイプのインクジェットヘッドを使用することが好ましい。この記録ヘッドを駆動して、インクを付与する装置としては、市販の液体吐出装置を用いることも可能であるが、その際には、プリンタドライバによるガンマ補正や色変換の処理が行われるため、若干の留意が必要である。従って、できれば、本発明で使用する吐出条件に対応した特別の液体吐出装置で行うことが好ましい。
【0046】
上記のようなインクジェットヘッドから吐出させるインクの状態を適宜に制御することで、均一濃度を付与した光量調節領域を形成したり、連続的に或は段階的に濃度が変化する勾配が付与された濃度変化領域を形成することが容易にできるため、第2の層である樹脂層を容易に所望する光学特性を有するものとできる。特に、本発明に係る光学フィルタの製造方法では、所定の波長帯域の光を減衰する機能を有する樹脂層の形成に液体吐出装置を利用しているので、濃度勾配を有する光学フィルタも、均一濃度の光学フィルタと同じ工程で簡便に作製することが可能である。この点は、従来の蒸着等によって光学フィルタを製造する場合と大きく異なる点であり、製造上有利な点でもある。
【0047】
インク受容層に付与されたインクによって形成される樹脂層の状態は、例えば、インクジェットヘッドから吐出されるインクの吐出量、吐出位置及びその際に使用するインクの種類やインクドットの数を制御することによって所望のものとできる。又、上記のようにして透明基材上に樹脂層を付与した後、必要に応じて熱風乾燥炉、熱ドラム、ホットプレート等を用いて乾燥を行っても良い。特に、上記インクを吸収し得る材料中に架橋剤を混合させた場合には、加熱或は光照射を行うことにより皮膜を硬化させる処理を行うのが効果的である。
【0048】
図1は本発明に係る光学フィルタの製造方法の説明図である。
【0049】
図1(a)に示すように、透明基材111上に、上記のようにして樹脂層112を形成する。その後、プレス法若しくはレーザにより所定の形状に加工した光学フィルタの前駆体120を得る(図1(b))。このときの上面図を図2に示す。つまり、図1(b)は図2のA−A’線断面図である。
【0050】
次いで、第2の層を保護する第3の層である保護層113をディップコーティング法により形成する(図1(c))。該保護層は、前記した樹脂層を保護し、且つ、樹脂層の表面や端部、内部における光散乱を防ぐ目的で設けられるものである。保護層の形成に用いることのできる材料としては、着色樹脂層との密着性、機械的強度、光学的特性等の必要性能を満たしていれば、特に限られるものではない。先に挙げた樹脂層の形成材料と比較した場合に、屈折率差の少ないものを保護層の形成に材料に用いることが好ましい。これらの材料間での屈折率の差が大きい場合には、樹脂層と保護層との界面での反射等の影響によって、得られる光学フィルタの散乱成分が増加するためである。
【0051】
更に、保護層の形成に用いる材料としては、樹脂層の材料と比較して吸水率の小さいものを使用することが好ましい。保護層の吸水率が樹脂層の吸水率よりも大きい場合には、光学フィルタ内に空気中の水分が浸入して膨潤現象が生じ、光学フィルタの膜厚の変化が生じて光学特性が損なわれる恐れがあるからである。
【0052】
保護層の形成方法としては、ディップコーティング法が好適であり、以下にその詳細を説明する。
【0053】
ディップコーティング装置は、一般的に図3(a)に示すように、洗浄槽、コロナ放電等の前処理槽、接着剤コーティング槽、プレベーク槽、保護層コーティング槽、ベーキング槽から構成されている。洗浄槽では対象物つまり本発明における実施形態では前駆体120の脱脂・埃取り・汚れ落としのために洗浄を行い、通常、5槽程度以上の槽から成る。これらの5つの槽は、例えば界面活性剤洗浄槽、水洗槽、純水洗浄槽、有機溶剤洗浄槽、有機溶剤ベーパー乾燥槽等から成る。前処理は、前駆体に対する接着剤の密着性が悪い場合に効果を上げるために連続或はバッチ方式でコロナ放電処理、UVO 処理、プラズマ処理、大気圧下プラズマ処理を行う。接着剤コーティング槽では、前駆体に対する保護層の密着性が悪い場合やもっと密着性を上げたい場合に、シランカップリング剤、プライマー等がディップ槽に入っていて、一般的には5℃〜28℃に保たれている。
【0054】
前駆体を引き上げ乾燥させることによって、表面に薄い接着剤層を形成する。風乾の後、プレベーク段階として室温〜100℃程度に保たれたプレベーク槽で接着剤を乾燥させた後、保護層用の材料の入っている保護層コーティング槽で、接着剤コーティング時と類似の条件でコーティングを行い風乾する。最後にベーキング槽で室温〜300℃位でベークし、焼き締めた後全工程を終了する。尚、ディップコートする際には、図3(b)に示すように、前駆体120を一定速度で垂直に引き上げることが望ましい。
【0055】
保護層に用いられる材料として好適なものとしては、例えば、非晶質フッ素樹脂、フルオロアクリレート、二酸化珪素等を用いることができる。これらの中でも、樹脂層との屈折率差や吸水率差が上記した要件を満足するものであって、更に、樹脂層との密着性が良好で、保護層とした場合の機械的強度、光学的特性等が必要性能を満たし、且つ、樹脂層の上に積層可能な材料が好適である。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0056】
又、先に述べたインク受容層がインク受容層中にアルミナ水和物等の微粒子を含み、これらの微粒子間の隙間にインクを吸収する隙間吸収タイプである場合には、インクを付与した後、これらの隙間にシリコーンオイルや脂肪酸エステル等の液状の材料を埋め込んでも良い。この場合には、充填した上記のような液状物質が流失することを防ぐために、更に、上記したような通常の場合と同様の保護層を形成して被覆することが好ましい。
【0057】
本発明に係る光学フィルタの製造方法においては、光学特性を向上させる目的で、更に、第3の層の表面の少なくとも何れか一方、或は、図1(d)に示したように、第3の層の両表面に反射防止膜114等を形成することも好ましい形態である。形成する反射防止膜としては、可視光帯域において反射防止特性に優れてたものであることが好ましい。更に、水分やガス(窒素酸化物や硫黄酸化物等)の遮断特性にも優れたものであることが好ましい。これにより、最終的に得られる光学フィルタの耐久性をより優れたものとできる。
【0058】
このような条件を満たす反射防止膜としては、例えば、無機材料の蒸着多層膜等を挙げることができる。例えば、特願平6−273601号公報に記載されているような反射防止膜は、光学フィルタ表面における反射による迷光の発生を防止でき、又、水分やガス成分の光学フィルタ内部への侵入を遮断でき、光学フィルタの劣化を有効に防ぐことができる。特に、樹脂層に付与するインクの着色剤として、染料や有機顔料を用いる光学フィルタに対しては、その耐久性の向上を図る上で、反射防止膜を設けた構成は極めて有効である。
【0059】
このような構成の前駆体を製造した後に、前駆体120から切り出して光学フィルタを製造する(図1(e))。
【0060】
その後、切り出し部において外気と触れている第2の層を接着剤121で封止するとともに、光学フィルタを保持する部材に取り付けることで、光量調節部材を製造する。例えば、図4に示す通り、上記の方法で作製した光学フィルタ110を光学フィルタを保持する部材である絞り羽根101に接着剤で取り付けることで、光量調節部材を製造する。その際には、光学フィルタ110の切り出し部で外気と触れている第2の層を接着剤121で封止する。
【0061】
このように本発明の重要な特徴として、光学フィルタを構成している保護層が樹脂層を覆っていることであり、切断後、外気と触れることになってしまった樹脂層については、接着剤で封止するとともに光学フィルタを保持する部材に取り付けることで、光量調節部材を製造することである。
【0062】
このような構成にすることにより樹脂層が直接外気に暴露されることなく、長期の保存、或は湿度の高い状況下において空気中の水分を吸収してしまうことにより樹脂層が膨潤し、結果的に光量調節部材の周辺部の膜厚が増大するために結果として光路差が生じて解像力が低下するといった問題は有効に解決される。
【0063】
又、光学フィルタの所定の波長帯域の光を減衰する機能を有する樹脂層の吸湿が有効に防止され、信頼性に優れた光学フィルタとなる。
【0064】
上記した方法で形成される第2の層である樹脂層(着色樹脂層)である着色部は、特定の光学濃度を有する領域となるように、目的によって各種の態様とすることができる。例えば、着色部内で均一の光学濃度を有する領域としても良く、連続的に或は段階的に光学濃度を変化させて濃度勾配を付けた領域としても良い。この連続的に、或は光学的に光学濃度を変化させた領域は、液体噴射記録法を用いるプリント装置に搭載する着色液(インク)として、濃度が段階的に異なるインクを複数搭載させることで、或はこれらのインクを用い、且つ、インクの吐出量を適宜に制御することで容易に形成できる。
【0065】
上記に述べたように本発明による光量調節部材の製造方法によれば、光学濃度が連続的に、或は段階的に変化する濃度勾配を有するパターン状の着色部を持つ光量調節部材を簡便に作製することができる。更に、本発明の方法は、形成できる光学濃度勾配パターンの自由度が高いので、光量調節部材に所望される特性に対して光学上の最適化が容易であるという利点もある。
【0066】
以下に本発明に係る光量調節装置について説明する。尚、本発明は、以下に記載する構成に限定されるものではない。
【0067】
図4は先に説明したように本発明の光量調節部材の一例である絞り羽根を示し、図5は斯かる光量調節部材を具備した光量調節装置、具体的にはビデオカメラ等で使用される絞り羽根装置を示す図である。尚、図3及び図4中、光遮断部101Qについては、光量調節部101Pとの境界を明確にするために彩色を施していないが、本来は光を遮断するためのものであるので、黒色等で形成されている。
【0068】
図5において、101は図4で示した第1の絞り羽根であり、102は第2の絞り羽根である。尚、図4及び図5中の絞り羽根101,102については、光量調節部材110との境界を明確にするために色彩を施していないが、本来は光を遮断するためのものであるので、黒色等で形成されている。
【0069】
103は不図示のモータの軸に孔103aにおいて嵌着されて該孔103aを中心として回動される絞り羽根駆動レバーである。第1の絞り羽根101及び第2の絞り羽根102は、絞り羽根駆動レバー103の両端の突設ピン103b及び103cにそれぞれの溝穴において係合している。105は第1及び第2の絞り羽根101及び102のそれぞれの側縁部の溝に相対摺動可能に係合している不図示の地板のガイドピン、106は該地板に貫設されている光路孔である。
【0070】
図5は絞りが全開の時の状態を示している。絞りが全開の状態から絞りを絞っていくと、絞りの開口部である光路孔106は第1及び第2の絞り羽根の光透過部101P及び102Pで遮蔽されて、開口径が小さくなるため、光路孔106を通る光束の透過率(光量)が徐々に低くなる。
【0071】
図6は図5で示した光量調節装置を光学装置に配置した場合における概略配置図である。本実施例では、光学装置は動画像若しくは静止画像を撮像手段で電気信号に光電変換し、これをデジタルデータとして記録するビデオカメラを例として説明する。
【0072】
400は複数のレンズ群から成る撮影光学系で、第1レンズ群401、第2レンズ群402、第3レンズ群403及び図5で示した絞り装置100で構成される。401は固定の前玉レンズ群、402はバリエータレンズ群、403はフォーカシングレンズ群である。
【0073】
404は光学ローパスフィルタである。又、撮影光学系400の焦点位置(予定結像面)には撮像手段411が配置される。これは照射された光エネルギを電荷に変換する複数の光電変換部、該電荷を蓄える電荷蓄積部及び該電荷を転送し、外部に送出する電荷転送部から成る2次元CCD等の光電変換手段が用いられる。
【0074】
421は液晶ディスプレイ等の表示器で、撮像手段411で取得した被写体像や光学装置の動作状況を表示する。422は操作スイッチ群でズームスイッチ、撮影準備スイッチ、撮影開始スイッチ、シャッター秒時等を設定する撮影条件スイッチで構成される。423はアクチュエータで、これによりフォーカス駆動を行い撮影光学系400の焦点状態を調節したり、その他の部材を駆動する。
【0075】
CPU431では、取り込まれた平均濃度の大きさが自身内にメモリーされている適正露出に相当する数値と一致しているかどうかを算出し、差がある場合は、その差分との絶対符号との絶対値に応じて絞り開口を変化させ、若しくは、撮像手段411への電荷蓄積時間を変化させることになる。絞りを動かす場合には、絞り駆動回路432により、絞り羽根駆動レバー103が103aを回転中心とし回動することで、絞り羽根101及び102が上下にスライドする。これにより、開口部である光路孔106の大きさが変化する。このように絞り開口面積或は電荷蓄積時間を変化させて最適の露出を得ることができる。
【0076】
最適露出にて、撮像手段411上に結像した被写体の像は、その明るさの強弱に応じた画素毎の電荷量として電気信号に変換され、アンプ回路441で増幅された後、カメラ信号処理回路442で所定のγ補正等の処理を施される。尚、この処理は、A/D変換後のデジタル信号処理で行われても良い。そして、このようにして作られた映像信号は、レコーダ443にて記録される。
【0077】
[実施例]
以下に実施例及び比較例を挙げて更に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、文中の作製法にける「部」或は「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0078】
[実施例1]
図1に示した方法に従って光学フィルタを製造した。
【0079】
本実施例では、光量調節部材である光学フィルタは可視光を各波長帯域に亘って一様に減衰するNDフィルタとしたが、可視帯域内の特定波長の光を減衰させる光学フィルタ、紫外線や赤外線を減衰させる光学フィルタにも同様に適用できる。
【0080】
先ず、第1の層である透明基材111として、吸水率0.3%,厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、この上に下記の方法で第2の層である樹脂層112を形成した。尚、樹脂層112は、インク受容層及びインクで形成されている。
【0081】
以下にインク受容層112の形成方法を述べる。
【0082】
塗工液として、ポリビニルアルコール(日本合成化学(株)製、ゴーセノールGM−14L)を用い、このポリビニルアルコール樹脂が固形分換算で10部となる水溶液を調製した。次に、得られた塗工液をワイヤーバーを用いて、透明基材である上記PETフィルム上に塗工した後、熱風乾燥オーブンによって100℃、5分の条件で乾燥を行った。このようにして作製したインク受容層の厚みは7μmであった。尚、ポリビニルアルコールの平衡吸水率は、温度及び相対湿度によるが、約10〜30%である。そして、上記で形成したインク受容層に、異なる色材濃度を有するインクを液体吐出装置(キヤノン(株)製 BJS600)で付与し、第2の層を形成するための樹脂層112を透明基板111の全面に形成した(図1(a))。使用したインクは色材を含まないインク(インク1)を1種類と、特定の波長帯域の光を減衰する機能を有する色材を含むインク5種類の計6種類である。特定の波長帯域の光を減衰する機能を有するインクとしては表1に示す組成から成る色材濃度の異なる黒色の色材を含むインク2〜6の5種類である。
【0083】
又、使用する色材は、可視光領域においてほぼフラットな分光透過率を得るために、数種類の染料を混合したものを使用するのが望ましい。
【0084】
次に、プレスで所望の形状に加工し前駆体120を得た(図1(b))。
【0085】
その後、ディップコーティング法により第3の層である透明の保護層113を設けた(図1(c))。具体的には、塗布液としてフッ素樹脂の固形分濃度が16〜25重量%の溶液を用い、図3に示すディップコート装置を用いて保護層113を塗布し、100℃で45分ベークさせて保護層113を作製した。このようにして作製された保護層の厚みは15μmであった。
【0086】
次いで、蒸着法によって反射防止膜114を形成した(図1(d))。反射防止膜の形成法、形成材料としては、特開平6−273601号公報に記載されているようにケイ素酸化物を主成分とするものと、酸化チタンを主成分とするものを用い、これらを抵抗加熱法或は電子ビーム加熱法によって上記2種の材料を加熱蒸発させることにより交互に積層して5層から成る反射防止膜を形成した。
【0087】
以上のようにして前駆体120を形成した。
【0088】
その後、前駆体120から切り出し、光学フィルタ110を得た(図1(e))。そのときの上面図が図1(e’)である。
【0089】
その後、切り出し部において外気と触れている第2の層である樹脂層を接着剤121で封止するとともに、光学フィルタを保持する部材である絞り羽根101に取り付けることで、光量調節部材を製造した(図4)。
【0090】
次に、本実施例で作製した光量調節部材を用いて、図5に示したビデオカメラ用の光量調節装置である絞り装置を作製した。
【0091】
この絞り装置を用いて、光量調節装置に組み込んだ本実施例で作製した光学フィルタの光学特性を評価した。その際、光量調節装置を撮影系のレンズ内に組み込み、解像力チャートを撮影してMTFを測定した。尚、測定した解像力チャートの像面上での空間周波数は100 line pairs /mmである。その結果、光学フィルタが開口部の半分を覆っている状態(F2.4)での水平方向のMTFは61.5%であり、充分に高性能であることが分かった。
【0092】
更に、上記のようにして作製された本発明に係る光学フィルタの波面収差をレーザ干渉計によって測定した。その結果、高温高湿放置前と、60℃、90%の環境下で100時間放置後の波面収差測定結果に変化がないことから、光量調節部材の端面の膨潤、膜厚の増加現象が発生していないことが分かった。
【0093】
比較のために光学フィルタの端面において第2の層である樹脂層の端部が露出して空気相に接している光学フィルタを作製した。作製法は、実施例1とほぼ同様であるが、ディップコーティング法ではなくスピンコート法保護層を形成した光学フィルタを得た。そして、上記と同様の方法で評価を行った。この結果、初期においては、上記したと同様に優れた光学特性を有することが分かった。
【0094】
しかし、60℃、90%の環境下で100時間放置した後に、レーザ干渉計によって波面収差を測定したところ、高温高湿放置前と比較して、端面から1mm幅の範囲全周に渡って波面収差が増加し、端面では波面収差が最大でλ/2程度増加していることが分かった。これは樹脂層が光学フィルタの端面に露出しており、該露出部から空気中の水分が浸入して膨潤現象が発生し、周辺部の膜厚の増加を来したものと考えられる。
【0095】
以上の結果、本実施例の作製法によって得られた光学フィルタによれば、吸湿・吸水を防止することができ、吸湿・吸水で樹脂層が膨潤することによる膜厚の変化を抑えられることが確認できた。
【0096】
本実施例において作製した光学フィルタを使用した絞り装置を、前記図6に示した構成を有する光学装置に配置して画像を形成したところ、回折の影響の少ない良好な画像を記録することができた。
【0097】
[実施例2]
上記実施例1と同様にして、図7(a)のように基材上111に樹脂層112を形成した後、スピンコート法にて保護層113を形成した(図7(b))。具体的には、樹脂層112を設けた基材上に、吸水率が約0.1%程度のエポキシ系UV硬化樹脂をスピンコータにて塗布した。そのときのスピンコータの条件は、2000rpm、60秒であった。塗布後、照射強度、200mW/cm 、60秒間の条件でUV光を照射し、保護層113を作製した。このようにして作製された平坦化層の厚みは20μmであった。その後、プレスにて所望の形状に加工して前駆体120を得た(図7(c))。次いで、保護層を覆うように反射防止膜を形成した(図7(d))。
【0098】
その後、前駆体より切り出し、光学フィルタ110を得た(図7(e))。
【0099】
[実施例3]
上記実施例1と同様の製法・材料で基材上に樹脂層を形成した後、ディップコーティング法により保護層を形成し、デジタルスチルカメラ用の光学フィルタの前駆体を形成した。そのときの形状(上面図)を図8(a)に示す。図8(a)に示すように、切り出し部Aは、有効部から遠い所、つまりフィルタの光路長が変化しても有効部には影響を及ぼさないような所に設けてある。次いで、実施例1と同様に前駆体に反射防止膜を形成した後に切り出して、光学フィルタ810を得た(図8(b))。
【0100】
尚、光学フィルタ810をそのままデジタルスチルカメラの光量調節装置として使用しても良く、光学フィルタ810を別の地板(不図示)に貼り付けて光量調節装置としても良い。その際には、切り出し部Aの樹脂層を接着剤で封止するとともに、光学フィルタ810を地板に貼り付ける。
【0101】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、所定の光路長を有し且つ所定の波長帯域の光を減衰する機能を有する樹脂層である第2の層が第3の層である保護層に覆われ、第2の層が外気に触れない構成を有するため、光学フィルタに水が侵入し、光学フィルタが膨潤することを防ぐことができ、信頼性、特に耐湿性に優れた光学フィルタを得ることができる。
【0102】
又、光学フィルタが液体吐出装置にて製造されるため、非常に簡便に、歩留まり良く安価に、光学特性に優れた光量調節部材が得られる光学フィルタの製造方法が提供できる。
【0103】
更に、本発明に係る光学フィルタを用いて光量調節装置を作製し、その光量調節装置を撮影装置に組み込むことで、信頼性に優れた撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係る光学フィルタの製造方法の説明図である。
【図2】本発明の実施例1に係る光学フィルタの前駆体の上面図である。
【図3】本発明の実施例1に係るディップコーティング装置の概略図である。
【図4】本発明に係る光学フィルタを組込んだ光量調節装置に用いる絞り羽根の概略図である。
【図5】図4の絞り羽根を用いた光量調節装置である絞り装置の概略図である。
【図6】本発明に係る光量調節装置を組み込んだ撮影装置の構成図である。
【図7】本発明の実施例2に係る光学フィルタの製造方法の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る光学フィルタの前駆体の構成図である。
【符号の説明】
100 光量調節装置(絞り装置)
101,102 絞り羽根
101P 絞り羽根駆動レバー
103a 孔
103b,103c 突設ピン
105 ガイドピン
106 地板の光路孔
110 光学フィルタ
111 基材
112 樹脂層
113 保護層
114 反射防止膜
120 光学フィルタの前駆体
121 接着剤
400 撮影光学系
401 第1レンズ群
402 第2レンズ群
403 第3レンズ群
404 光学ローパスフィルタ
411 撮像手段
421 表示器
422 操作スイッチ群
423 アクチュエータ
431 CPU
432 絞り駆動回路
433 撮像手段駆動回路
441 アンプ回路
442 カメラ信号処理回路
443 レコーダ

Claims (9)

  1. 透明基材上に所定の波長帯域の光を減衰する樹脂層及び保護層を設けた少なくとも3つの材料から成る光学フィルタであって、樹脂層が保護層で覆われていることを特徴とする光学フィルタ。
  2. 前記保護層がディップコーティング法により形成されることを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
  3. 前記光学フィルタの保護層に覆われていない部分と光学フィルタの有効領域の距離が離れていることを特徴とする請求項1又は2記載の光学フィルタ。
  4. 請求項1〜3の光学フィルタと前記光学フィルタを保持する部材を有した光量調節部材において、
    光学フィルタの前記保護層に覆われていない部分が接着剤にて封止されるとともに前記光学フィルタを保持する部材に固定されることを特徴とする光量調節部材。
  5. 透明基材上に所定の波長帯域の光を減衰する樹脂層と保護層との少なくとも3層を具備する光学フィルタの製造方法であって、
    一方の面に該樹脂層を有している透明基材から、透明基材と該樹脂層とを備え、所定の形状を有している光学フィルタの前駆体が枝材により枠体若しくは他の光学フィルタ前駆体と結合している部材を得る工程と、前記部材を構成している光学フィルタ前駆体の全面に保護層を付与し、光学フィルタを形成する工程と、前記部材から光学フィルタを切り出す工程を有することを特徴とする光学フィルタの製造方法。
  6. 前記光学フィルタの前駆体と結合している部分を光学フィルタの有効領域から距離が離れたところに設けることを特徴とする請求項5記載の光学フィルタの製造方法。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載の方法で製造された光学フィルタと該光学フィルタを保持する部材に固定されている光量調節部材の製造方法であって、該光学フィルタの該保護層で被覆されていない部分を接着剤で封止しつつ、前記保持する部材に該接着剤で該光学フィルタを固定する工程、を有することを特徴とする光量調節部材の製造方法。
  8. 請求項1〜6の何れかに記載の方法で作製された光学フィルタと、該光学フィルタを備えた光量調節部材と、該光量調節部材を駆動する駆動手段とを有し、上記光量調節部材の駆動量に応じて所定の開口部を透過する光束の透過量が調節されるように構成されることを特徴とする光量調節装置。
  9. 請求項7記載の光量調節装置と、被写体像を形成する撮影光学系と、該被写体像を光電変換する撮像手段と、該光電変換された信号を記録する記録手段とを有し、上記光量調節装置を撮影光学系に配置することを特徴とする撮影装置。
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