JP2004244690A - スパッタリング成膜方法、成膜製品及びスパッタリング装置の電子流量調節装置 - Google Patents
スパッタリング成膜方法、成膜製品及びスパッタリング装置の電子流量調節装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】スパッタリング成膜において、最適安定放電を可能にするとともに、放電熱電子による下地の損傷を最小限にし、特にカーボン薄膜を低温で成膜する手段を提供することにより、従来のDLC成膜条件では製造不可能な熱容量が小さくかつ耐熱性に乏しい繊維表面などの改質を可能にする成膜方法とその成膜製品を提供する。
【解決手段】スパッタリング成膜を行う真空槽1内のターゲット3と基材10との間の放電プラズマを囲むようにマグネット4を配置したマグネトロン・スパッタリング成膜装置の基材10に近接して、冷却可能な高導電率表面体7を配置し、この熱電子吸引部材7で基材10近傍の余剰な熱電子をアノード側に逃がすことにより、基材10の温度上昇を抑制しつつ成膜を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】スパッタリング成膜を行う真空槽1内のターゲット3と基材10との間の放電プラズマを囲むようにマグネット4を配置したマグネトロン・スパッタリング成膜装置の基材10に近接して、冷却可能な高導電率表面体7を配置し、この熱電子吸引部材7で基材10近傍の余剰な熱電子をアノード側に逃がすことにより、基材10の温度上昇を抑制しつつ成膜を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、スパッタリング成膜において、最適安定放電を可能にするとともに、放電熱電子による基材(下地)の損傷を最小限にする技術に関し、特にカーボン薄膜を、カーボンの縞状膜からカーボングラファイト及びDLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜に亘って、低温で成膜する手段を提供することにより、基材が高温となる従来のDLC成膜条件では製造不可能な熱容量が小さくかつ耐熱性に乏しい繊維表面などの改質に利用することができる、上記成膜方法とその成膜製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
工具などの基材表面に硬度や潤滑性を付与する目的で、PVD、CVD、スパッタリングなどの成膜技術を用いて、基材表面にカーボン薄膜を形成する技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、
【特許文献1】には、グラファイトのターゲットをアルゴン原子と水素原子でスパッタし、炭素原子を飛び出させ、ニッケル基材の表面に蒸着する工程を含む薄膜構造体の製造方法が示されている。
【0004】
また、
【特許文献2】には、薄膜形成時のガス雰囲気を低くすること及び基材に対する膜の密着性を向上させることを目的として、基材に対する炭素の蒸着と、不活性ガスや炭化水素ガスをイオン化して得られるイオンビームの照射とを行うことによって、基材表面にダイヤモンド結晶とアモルファス炭素とを含む被膜を形成する方法が開示されており、基材に対する炭素の蒸着手段として、電子ビームによって過熱蒸気化して得られる炭素を基材表面に蒸着させる方法、炭素からなるターゲットを不活性ガスイオンの照射やマグネトロン放電によってスパッタさせる方法、炭素からなる可塑度における真空アーク放電によって炭素を蒸発させる方法が利用可能なことが例示されている。
【0005】
この技術は、イオン照射によって基材に蒸着された炭素をアモルファス化及びダイヤモンド結晶化させるもので、ダイヤモンド結晶の存在によって耐摩耗性を付与し、アモルファス炭素の存在によって潤滑性を付与しようとするものである。この公報には、膜形成時に冷却手段によって基体を室温から100℃程度以内になるように冷却してもよいことが記載されているが、ダイヤモンド形成の反応を促進するためには、基体を加熱手段で数100℃程度まで加熱するのが良いことが示されている。
【0006】
また、
【特許文献3】及び
【特許文献4】には、基材表面にDLC薄膜を形成するのに用いることができる磁界圧着型マグネトロンスパッタ装置が、この出願の発明者の一人によって提案されている。
【0007】
更に
【特許文献5】には、基材表面に損傷を与えずに炭素皮膜を形成するプラズマCVD装置が示されている。この発明は、加速された正イオンを形成中の炭素皮膜に衝突させることにより、一重結合の炭素を増やし、また炭素原子と結合している水素原子を除去して、DLCを形成する際に大きな運動エネルギーを持った正イオンが製膜中の炭素皮膜に衝突するときに、被形成面をスパッタして損傷を与えるのを防止するために、被形成面にスパッタによる損傷を与えない程度のセルフバイヤスをかけて炭素皮膜を形成するというものである。
【0008】
また、
【特許文献6】には、DLC薄膜の基材との密着性を高めることを目的として、イオン注入法により基材表面に形成されたカーボン被膜に炭素と珪素とを含むガスによるプラズマを用いてDLC膜を形成する技術が示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭63−267166号公報
【特許文献2】
特開昭63−222095号公報
【特許文献3】
特開昭55−31142号公報
【特許文献4】
特開昭63−43466号公報
【特許文献5】
特開平11−269648号公報
【特許文献6】
特開2000−319784号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
スパッタリングで成膜する際、グロー放電で生ずる熱電子の作用で基材(下地)表面の昇温を招き、基材表層に単体や化合物として存在している水や有機分がガス化あるいは抽出され、基材表面に析出してきたこれらの諸成分がスパッタ成膜成分元素と反応又は共存堆積することで、意図した組成や結合構造の膜が得られず、結果として使用目的を満足させる耐久性や機能性を基材表面に付与できないという問題がある。
【0011】
特に従来方法によりスパッタリングでDLCやカーボングラファイトを成膜する過程では、基材表面が多量の熱電子流の作用で昇温し、基材が金属、セラミックス、ガラス等の耐熱性を備えた基材である場合は、目標とするDLC薄膜やカーボングラファイト薄膜を比較的容易に成膜でき、また、プラスッチクフイルム等で厚さ50μm以下の極薄のフィルム基材と特殊耐熱プラスッチク基材に対しては、基材を冷却装置で冷却することにより、DLC膜ないしカーボングラファイト膜が成膜できているが、100℃以下の耐熱性しか有していないプラスッチク基材に対しては、基材の組成変性を生じ、かつカーボンはランダム構造の状態で付着していて、当初の目的とする膜は得られていない。
【0012】
本発明は、低温条件のスパッタリング工程下でカーボン(カーボングラファイト、DLC)薄膜を成膜可能にする手段を得ると共に、成膜条件の設定・制御を容易にすることにより、カーボン成膜をプラスチックや繊維の表面に100℃以下、実用的に80℃以下の温度領域で表面性状の優れた硬質のカーボン薄膜を形成することを可能にし、更には表面にカーボン薄膜を形成したプラスチック製品や繊維製品の表面に更に種々の機能性を具有する金属膜や金属化合物(酸化物、窒化物、金属塩)膜を積層した構造の所望の機能性を備えると共に、耐久性に富んだプラスチック製品ないし繊維製品を提供することを課題としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための具体的手段を種々検討し試験した結果、前記
【特許文献4】記載の電磁界圧着型マグネトロンスパッタ源を用いるとスパッタ成膜効率の点で著しい効果が確認できたが、更に下記の課題を改善する必要があることが見いだされた。すなわち、
(1)製造ラインにおいて必要とする経済性を実現するには、繊維等の基材表面にカーボン膜を成膜する工程や、更に金属膜や金属化合物膜を成膜する工程の生産性を飛躍的に改善する必要があること。
(2)昇温による繊維等の表面の損傷を更に軽減し、実用面での製品の耐久性を高めること
が必要であると認められた。
【0014】
この発明は、上記の知見と当該知見に基づく試験研究の結果としてなされたもので、スパッタリング成膜を行う真空槽1内のカソードターゲット3と基材(下地材料)10との間の放電プラズマを囲むようにコイルないしマグネット4を配置したマグネトロン・スパッタリング成膜装置の前記基材に近接して、冷却可能な熱電子吸引部材71、74を配置し、この熱電子吸引部材71、74で基材10近傍の余剰な熱電子をアノード側に逃がすことにより、基材10の温度上昇を抑制しつつ成膜を行う技術手段を提案している。熱電子吸引部材71、74は、製造及び成膜操作上好ましくは高導電性金属表面を備えた冷却パイプ71とし、表面積を増すためのフィン74を設けるのが好ましく、更に熱電子を導くための開度調整可能な覆い72を備えたものとするのが好ましい。これにより、吸引される熱電子の量を自由に調整することが可能になり、最適制御を容易に行うことができるようになる。
【0015】
本願発明は、繊維その他の有機質材料の下地表面にDLCやカーボングラファイト薄膜を成膜するのに特に有効である。従って、本願請求項1に係るマグネトロン・スパッタリング成膜方法は、槽壁12をアノードとしたマグネトロン・スパッタリング成膜用の真空槽1内に、基材10と、炭素からなるカソードターゲット3と、真空槽壁に電気的に接続された熱電子吸引部材、好ましくは冷却可能な高導電材表面を備えた上記部材71、74とを設け、最適スパッタ条件を満たすスパッタ電子流がカソードターゲット3とアノード側基材10間に流れるように、放電で生じる余乗電子流を放電プラズマ中から吸引除去する、低温成膜可能な電磁界圧着型低温スパッタリング成膜方法であり、基材10として織布、編布、不織布などの繊維布(植物性天然繊維、動物性天然繊維及び化学繊維など)や熱可塑性プラスチックシートなども用いることができるものである。
【0016】
また本願発明は、電磁界圧着型マグネトロン・スパッタリングにおいて、カソードターゲットとしてカーボンターゲットを用い、スパッター・ガスとして炭化水素(メタン、エタン、ブタン、プロパンガス等)を用い、基材として前記繊維布、木製品、動植物、皮革等の有機質材料を用い、当該有機質材料の表面に前記手段によるスパッタリング放電でダイヤモンドライクカーボン、グラファイトないしカーボン系膜を成膜する方法及び当該方法により得られるカーボン成膜有機質材料を提供する。
【0017】
更にこの発明は、前記方法で成膜したカーボン系薄膜表面に金属薄膜ないし金属化合物(酸化物、窒化物、金属塩など)薄膜を、カーボンターゲットに代えて目的金属ないし金属化合物ターゲットを用いる前記手段により、熱電子流量を調整してスパッタリングする方法及び当該方法により得られる表面構造、すなわち、下地+カーボン系膜+金属ないし金属化合物膜を備えた有機質材料を提供する。
【0018】
本願請求項5のスパッタリング装置における電子流量調節装置は、スパッタ放電プラズマ中から余剰な熱電子流を吸引除去する高導電率表面体71、74と、その周囲に配置されて電子流を遮る絶縁体又は真空槽内部壁より導電率の高い材料からなる覆い72と、当該覆いの一部に設けられた開口73とを備え、当該開口73により高導電率表面体71、74の表面の一部を露出させることで、高導電率表面体71、74に流入する電子流の量を調整するものである。
【0019】
また本願請求項6のスパッタリング装置における電子流量調節装置は、請求項5の装置における余剰電子除去用の高導電率表面体71、74が、真空槽1内で絶縁構造で支持され、当該表面体が真空槽外部において可変抵抗器75を介して真空槽壁12に接続されるとともに、当該接続端が接地されていることを特徴とするもので、余剰な熱電子流の吸引量を前記可変抵抗器75で調整し、最適低温高速安定スッパタ成膜条件を得られるようにしたものである。可変抵抗器75による調整は、簡単な手段で成膜中でも電子流量を自由に調整できる特徴がある。
【0020】
そして本願請求項7のスパッタリング成膜方法は、前記高導電率表面体71、74と覆い72とを備えたスパッタリング成膜装置を用いて、スパッタリング放電中の入力電力量、ガス導入量、ガス比率及び余剰電子の吸引除去による電子流量の調節により、最適スパッタ成膜条件のマッチングを取ることで、低温高速安定スパッタリング成膜を実現する成膜方法である。
【0021】
【作用】
スパッタリング成膜時の下地材料に対する熱衝撃の原因は、スパッタ放電で二次的に増加する熱電子の量がカソードターゲットへの入力電力量(W)と導入ガス量(SCCM)に基本的に依存し、放電中の真空圧力が高くて放電電流量が多くなると、流入する熱電子の作用で基材が急激に昇温することによる。この発明では、下地材料の温度上昇の原因となる余剰の熱電子を、装置の真空槽内に設けた電子流量調整装置7でバイパスさせることにより、下地材料の温度上昇を制御して成膜を行っている。
【0022】
従って本発明により、スパッタリング成膜を高速で、かつ下地となる繊維等の有機質材料表面に熱的な衝撃を与えない低温で行うことが可能になり、繊維表面にDLC、カーボングラファイトその他のカーボン系薄膜を成膜すること、更にその上に重ねて金属、金属化合物(酸化物、窒化物、塩基物など)の薄膜を成膜することで、各種の有機質材料の機能性や耐久性を飛躍的に向上させることが可能となる。また同じく熱的衝撃の小さい成膜工程で酸化膜等を施すことが可能となり、繊維製品、プラスチック製品、木製品などに耐久性に優れた導電性、電磁波シールド性などの機能を付与することが可能になる。
【0023】
更にこの発明によれば、繊維を始めとして、同様な条件を備えたプラスッチクフイルム及びプラスッチ製品の表面や木製品表面のスパッタリング成膜処理による反射率低減、電波障害防止、導電性付与等の新機能を付与することによる改質改善が可能となり、新しい各種の機能繊維ないし機能有機質材料の創出が可能になる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の成膜方法を実施する装置の一例を示した図で、図中、1はチャンバー(真空槽)、2は下地ホルダ、3はターゲット、4は磁界圧着用磁石、5はターゲット用磁石、6はターゲットカバー、7は電子流量調節装置、8はガス導入装置、9は高圧電源、10は基材(下地)である。
【0025】
チャンバー1は、断面が方形ないし矩形で、図1の紙面直角方向に細長い直方体形状である(図2参照)。下地ホルダ2は、チャンバー1内の上部に配置した図1の紙面直角方向に細長い板状の部材で、基材となる繊維布や樹脂シート10は、このホルダ2の下面に広げた状態で添設される。下地ホルダ2は、導電材でチャンバー1に支持されているが、その支持部分には、導体抵抗が存在している。この下地ホルダ2には、下地の昇温を検出するための温度計21が接続されている。
【0026】
ターゲット3は、両端を支持部32a(図2参照)としたパイプ32の前記支持部を除く外周にターゲット材31を溶射等により所定厚さに付着したものである。すなわち、ターゲット3は、図1の紙面直角方向に細長いパイプ状のターゲットで、チャンバー1の長手方向(図1の紙面直角方向)の略全長に亘る長さで配置されている。支持パイプ32は、その支持部32aでチャンバー1に軸回りに回転自在に支持されており、これを回転させる駆動機構が設けられている。
【0027】
ターゲットカバー6は、ターゲット材31の外周から放電が生じない所定の間隔を隔てて配置された断面円弧薄板状の図1の紙面直角方向に細長い部材で(図2参照)、その長手両端はチャンバー1の壁面に達している。ターゲットカバー6の下部は、ガス導入ダクト81の壁面となっており、このガス導入ダクト81に流量制御器(マスフローコントローラ)82m、82h及び必要なバルブ83m、84m、83h、84hを介してスパッタガスが供給されている。図1の例では、ガス供給路85m、85hが2系統設けられており、一方がメタンガス源に、他方が水素ガス源に接続されている。供給されたガスは、ガス導入ダクト81で混合し、ターゲット材31とターゲットカバー6との間隙を通って、ターゲット材31の前方部分(基材に対向する部分)でチャンバー1内に供給される。チャンバー1には、排気系へ接続されているガス排気口11が設けられている。
【0028】
ターゲット支持パイプ32内には、偏平八画断面の磁石支持棒51が挿通されており、図1の紙面直角方向に細長い3個の磁石6が、この磁石支持棒51の周面に固定して設けられている(図5参照)。3個の磁石の内、中央の磁石5cと両側の磁石5sとは、磁極の向きが逆になっており、例えば中央の磁石5cは外側端をN極とし、両側の磁石5sは外側端をS極として配置することにより、図1にイで示したような漏洩磁界がターゲット材31の前面に生ずる。また、ターゲット支持パイプ32の内部には、冷却水が供給されてターゲット3を冷却している。
【0029】
磁界圧着用磁石4は、チャンバー1に固定した磁石支持枠41の内壁に固定して上下に枠状に配置されており(図3、4参照)、カソード(ターゲット材)からアノード(基材)へと向う電子の流路を囲んで当該流路に上下方向の漏洩磁界ロを発生している。磁界圧着用磁石4の磁極は、ターゲット磁石の両側のもの5sと同磁極が対向するように配置されている。すなわち、両側のターゲット用磁石5sの外側をS極とした図の例では、磁界圧着用磁石4の下内側がS極となり、上内側がN極となるように磁界圧着用磁石4を配置する。磁界圧着用磁石4は、冷却水カバー42で覆われており、この中に供給する冷却水によって冷却されている。
【0030】
電子流量調節装置7は、両端を絶縁材を介してチャンバー1で支持された電極パイプ71と、電子流に向いて開口する開口73を備えた電流調整カバー(覆い)72とを備えており、電極パイプ71には図6、7に示すように、電子を受容する表面積を大きくするために、フィン74が一体に固着されている。電極パイプ71及びフィン74は、導電率の低い銅で製作し、パイプ71内には冷却水を供給している。すなわち、電極パイプ71とフィン74とが、熱電子流を吸引する高導電率表面体となっており、熱電子流が多量に流入しても水冷冷却することができる。高導電率表面体71、74の周辺には、2分割された電気絶縁材製の開口幅調整可能な電流調整カバー72が取り付けてあり、流入電子流の流量調整が可能になっている。すなわち、電流調整カバー72は、図8に示すように、円弧状にスライドして開口73の幅を調整可能にした2枚のカバー板72a、72bで構成され、開口73の開度を調整することによって、吸引する電子量を調整できるようになっている。
【0031】
高導電率表面体の電極パイプ71は、可変抵抗器75を介してチャンバー1に電気的に接続されており、可変抵抗器75を調整することにより、下地ホルダ2と電極パイプ71の電位差を調整して、除去する熱電子の流量を調整することができる。なお、76は電子流調整装置7に流れる電流値を検出する電流計、22は下地ホルダ2に流れる電流値を検出する電流計である。
【0032】
すなわち上記のスパッタリング装置では、一般的に磁界圧着用磁石とカソードターゲットの中間に配置している電流収集用のアノードリングを除去し、図6ないし8に示す構造の電子流量調節装置7を図1に示す様に下地ホルダ2の側方に配置して、放電電流の流量調整機能を持たせている。
【0033】
チャンバー1は、高圧電源9の一端子(DC電源の場合は陽極)と接地アース91に接続されており、高圧電源9のもう一つ電極(DC電源の場合は陰極)は、カソードに接続されていて、真空チャンバー1内にマスフローコントローラ82m、82hを介してスパッタガスを導入し、高圧電源9より電力をカソードターゲット3より入力すると、グロー放電が生じ、入力電力量を増加させるとスパッタリング成膜が開始する。
【0034】
スパッタリング成膜開始時には、一般に放電電流はスパッター成膜材料分子・原子と一緒に下地ホルダ2に流入し、成膜材料は下地10に付着し、電子流は下地ホルダー2を介して真空チャンバー1の外部へ導体を伝って流れ、高圧電源9の陽極と接地アース91に到る。この際の、下地ホルダー2に電子流が流入する際、下地ホルダー2表面で熱電子と電子流の量が多くなると、発熱し下地ホルダー2を介して下地10の昇温を招く。
【0035】
本願発明者は、下地ホルダ2への所望流入量以上の熱電子流が下地の発熱昇温を招き、下地に障害を及ぼすという知見に基づき、障害の原因となる余剰電子流を図6ないし図7に示すような熱電子吸引用のアノード電極71、74を設けて、その外部可変抵抗器75の抵抗値と下地の表面抵抗を含む全抵抗との相互調整と、このアノード電極71、74への電子流の流入量を調整する調整カバー72の開口幅を調整し、余剰の熱電子をバイパスさせるアノード電極71、74にバイパスさせることにより、スパッタ成膜レートが最大で下地昇温が最小になる条件下で成膜を可能にしたのである。
【0036】
上記の調整機構を駆使することで、実際の成膜レートと成膜条件の相関性をベースに成膜された膜は、成膜中の昇温を80℃以下に抑えてカーボン系の膜の成膜を可能にした。これらの一連の実験結果は下記のようになった。
【0037】
【表1】
【0038】
・スパッタ成膜条件
(1)導入ガス メタンガス及びメタンと水素の混合ガス
(2)ターゲット材料 カーボン円筒ターゲット(外径50Φ)、10RPM常時回転
・成膜フロー
チャンバー内排気(E2.67*E−4Pa)⇒ターゲット回転⇒ガス導入⇒電力入力⇒シャッター開⇒成膜
⇒シャッター閉
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の成膜方法で使用するスパッタリング成膜装置の一例を示す模式図
【図2】図1の装置のA部の横断面図
【図3】図1の装置の磁石配置を示す縦断面図
【図4】図3のB部の斜視図
【図5】図1の装置のターゲット磁石の配置を示す斜視図
【図6】電子流調整装置の一部を示す斜視図
【図7】電子流調整装置の一部を示す断面図
【図8】電子流調整装置の覆いの開閉構造を示す模式図
【符号の説明】
1 真空槽
3 ターゲット
4 マグネット
5 マグネット
7 電子流量調整装置
10 基材(下地材料)
71,74 熱電子吸引部材
72 覆い
75 可変抵抗器
【発明が属する技術分野】
本発明は、スパッタリング成膜において、最適安定放電を可能にするとともに、放電熱電子による基材(下地)の損傷を最小限にする技術に関し、特にカーボン薄膜を、カーボンの縞状膜からカーボングラファイト及びDLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜に亘って、低温で成膜する手段を提供することにより、基材が高温となる従来のDLC成膜条件では製造不可能な熱容量が小さくかつ耐熱性に乏しい繊維表面などの改質に利用することができる、上記成膜方法とその成膜製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
工具などの基材表面に硬度や潤滑性を付与する目的で、PVD、CVD、スパッタリングなどの成膜技術を用いて、基材表面にカーボン薄膜を形成する技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、
【特許文献1】には、グラファイトのターゲットをアルゴン原子と水素原子でスパッタし、炭素原子を飛び出させ、ニッケル基材の表面に蒸着する工程を含む薄膜構造体の製造方法が示されている。
【0004】
また、
【特許文献2】には、薄膜形成時のガス雰囲気を低くすること及び基材に対する膜の密着性を向上させることを目的として、基材に対する炭素の蒸着と、不活性ガスや炭化水素ガスをイオン化して得られるイオンビームの照射とを行うことによって、基材表面にダイヤモンド結晶とアモルファス炭素とを含む被膜を形成する方法が開示されており、基材に対する炭素の蒸着手段として、電子ビームによって過熱蒸気化して得られる炭素を基材表面に蒸着させる方法、炭素からなるターゲットを不活性ガスイオンの照射やマグネトロン放電によってスパッタさせる方法、炭素からなる可塑度における真空アーク放電によって炭素を蒸発させる方法が利用可能なことが例示されている。
【0005】
この技術は、イオン照射によって基材に蒸着された炭素をアモルファス化及びダイヤモンド結晶化させるもので、ダイヤモンド結晶の存在によって耐摩耗性を付与し、アモルファス炭素の存在によって潤滑性を付与しようとするものである。この公報には、膜形成時に冷却手段によって基体を室温から100℃程度以内になるように冷却してもよいことが記載されているが、ダイヤモンド形成の反応を促進するためには、基体を加熱手段で数100℃程度まで加熱するのが良いことが示されている。
【0006】
また、
【特許文献3】及び
【特許文献4】には、基材表面にDLC薄膜を形成するのに用いることができる磁界圧着型マグネトロンスパッタ装置が、この出願の発明者の一人によって提案されている。
【0007】
更に
【特許文献5】には、基材表面に損傷を与えずに炭素皮膜を形成するプラズマCVD装置が示されている。この発明は、加速された正イオンを形成中の炭素皮膜に衝突させることにより、一重結合の炭素を増やし、また炭素原子と結合している水素原子を除去して、DLCを形成する際に大きな運動エネルギーを持った正イオンが製膜中の炭素皮膜に衝突するときに、被形成面をスパッタして損傷を与えるのを防止するために、被形成面にスパッタによる損傷を与えない程度のセルフバイヤスをかけて炭素皮膜を形成するというものである。
【0008】
また、
【特許文献6】には、DLC薄膜の基材との密着性を高めることを目的として、イオン注入法により基材表面に形成されたカーボン被膜に炭素と珪素とを含むガスによるプラズマを用いてDLC膜を形成する技術が示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開昭63−267166号公報
【特許文献2】
特開昭63−222095号公報
【特許文献3】
特開昭55−31142号公報
【特許文献4】
特開昭63−43466号公報
【特許文献5】
特開平11−269648号公報
【特許文献6】
特開2000−319784号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
スパッタリングで成膜する際、グロー放電で生ずる熱電子の作用で基材(下地)表面の昇温を招き、基材表層に単体や化合物として存在している水や有機分がガス化あるいは抽出され、基材表面に析出してきたこれらの諸成分がスパッタ成膜成分元素と反応又は共存堆積することで、意図した組成や結合構造の膜が得られず、結果として使用目的を満足させる耐久性や機能性を基材表面に付与できないという問題がある。
【0011】
特に従来方法によりスパッタリングでDLCやカーボングラファイトを成膜する過程では、基材表面が多量の熱電子流の作用で昇温し、基材が金属、セラミックス、ガラス等の耐熱性を備えた基材である場合は、目標とするDLC薄膜やカーボングラファイト薄膜を比較的容易に成膜でき、また、プラスッチクフイルム等で厚さ50μm以下の極薄のフィルム基材と特殊耐熱プラスッチク基材に対しては、基材を冷却装置で冷却することにより、DLC膜ないしカーボングラファイト膜が成膜できているが、100℃以下の耐熱性しか有していないプラスッチク基材に対しては、基材の組成変性を生じ、かつカーボンはランダム構造の状態で付着していて、当初の目的とする膜は得られていない。
【0012】
本発明は、低温条件のスパッタリング工程下でカーボン(カーボングラファイト、DLC)薄膜を成膜可能にする手段を得ると共に、成膜条件の設定・制御を容易にすることにより、カーボン成膜をプラスチックや繊維の表面に100℃以下、実用的に80℃以下の温度領域で表面性状の優れた硬質のカーボン薄膜を形成することを可能にし、更には表面にカーボン薄膜を形成したプラスチック製品や繊維製品の表面に更に種々の機能性を具有する金属膜や金属化合物(酸化物、窒化物、金属塩)膜を積層した構造の所望の機能性を備えると共に、耐久性に富んだプラスチック製品ないし繊維製品を提供することを課題としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための具体的手段を種々検討し試験した結果、前記
【特許文献4】記載の電磁界圧着型マグネトロンスパッタ源を用いるとスパッタ成膜効率の点で著しい効果が確認できたが、更に下記の課題を改善する必要があることが見いだされた。すなわち、
(1)製造ラインにおいて必要とする経済性を実現するには、繊維等の基材表面にカーボン膜を成膜する工程や、更に金属膜や金属化合物膜を成膜する工程の生産性を飛躍的に改善する必要があること。
(2)昇温による繊維等の表面の損傷を更に軽減し、実用面での製品の耐久性を高めること
が必要であると認められた。
【0014】
この発明は、上記の知見と当該知見に基づく試験研究の結果としてなされたもので、スパッタリング成膜を行う真空槽1内のカソードターゲット3と基材(下地材料)10との間の放電プラズマを囲むようにコイルないしマグネット4を配置したマグネトロン・スパッタリング成膜装置の前記基材に近接して、冷却可能な熱電子吸引部材71、74を配置し、この熱電子吸引部材71、74で基材10近傍の余剰な熱電子をアノード側に逃がすことにより、基材10の温度上昇を抑制しつつ成膜を行う技術手段を提案している。熱電子吸引部材71、74は、製造及び成膜操作上好ましくは高導電性金属表面を備えた冷却パイプ71とし、表面積を増すためのフィン74を設けるのが好ましく、更に熱電子を導くための開度調整可能な覆い72を備えたものとするのが好ましい。これにより、吸引される熱電子の量を自由に調整することが可能になり、最適制御を容易に行うことができるようになる。
【0015】
本願発明は、繊維その他の有機質材料の下地表面にDLCやカーボングラファイト薄膜を成膜するのに特に有効である。従って、本願請求項1に係るマグネトロン・スパッタリング成膜方法は、槽壁12をアノードとしたマグネトロン・スパッタリング成膜用の真空槽1内に、基材10と、炭素からなるカソードターゲット3と、真空槽壁に電気的に接続された熱電子吸引部材、好ましくは冷却可能な高導電材表面を備えた上記部材71、74とを設け、最適スパッタ条件を満たすスパッタ電子流がカソードターゲット3とアノード側基材10間に流れるように、放電で生じる余乗電子流を放電プラズマ中から吸引除去する、低温成膜可能な電磁界圧着型低温スパッタリング成膜方法であり、基材10として織布、編布、不織布などの繊維布(植物性天然繊維、動物性天然繊維及び化学繊維など)や熱可塑性プラスチックシートなども用いることができるものである。
【0016】
また本願発明は、電磁界圧着型マグネトロン・スパッタリングにおいて、カソードターゲットとしてカーボンターゲットを用い、スパッター・ガスとして炭化水素(メタン、エタン、ブタン、プロパンガス等)を用い、基材として前記繊維布、木製品、動植物、皮革等の有機質材料を用い、当該有機質材料の表面に前記手段によるスパッタリング放電でダイヤモンドライクカーボン、グラファイトないしカーボン系膜を成膜する方法及び当該方法により得られるカーボン成膜有機質材料を提供する。
【0017】
更にこの発明は、前記方法で成膜したカーボン系薄膜表面に金属薄膜ないし金属化合物(酸化物、窒化物、金属塩など)薄膜を、カーボンターゲットに代えて目的金属ないし金属化合物ターゲットを用いる前記手段により、熱電子流量を調整してスパッタリングする方法及び当該方法により得られる表面構造、すなわち、下地+カーボン系膜+金属ないし金属化合物膜を備えた有機質材料を提供する。
【0018】
本願請求項5のスパッタリング装置における電子流量調節装置は、スパッタ放電プラズマ中から余剰な熱電子流を吸引除去する高導電率表面体71、74と、その周囲に配置されて電子流を遮る絶縁体又は真空槽内部壁より導電率の高い材料からなる覆い72と、当該覆いの一部に設けられた開口73とを備え、当該開口73により高導電率表面体71、74の表面の一部を露出させることで、高導電率表面体71、74に流入する電子流の量を調整するものである。
【0019】
また本願請求項6のスパッタリング装置における電子流量調節装置は、請求項5の装置における余剰電子除去用の高導電率表面体71、74が、真空槽1内で絶縁構造で支持され、当該表面体が真空槽外部において可変抵抗器75を介して真空槽壁12に接続されるとともに、当該接続端が接地されていることを特徴とするもので、余剰な熱電子流の吸引量を前記可変抵抗器75で調整し、最適低温高速安定スッパタ成膜条件を得られるようにしたものである。可変抵抗器75による調整は、簡単な手段で成膜中でも電子流量を自由に調整できる特徴がある。
【0020】
そして本願請求項7のスパッタリング成膜方法は、前記高導電率表面体71、74と覆い72とを備えたスパッタリング成膜装置を用いて、スパッタリング放電中の入力電力量、ガス導入量、ガス比率及び余剰電子の吸引除去による電子流量の調節により、最適スパッタ成膜条件のマッチングを取ることで、低温高速安定スパッタリング成膜を実現する成膜方法である。
【0021】
【作用】
スパッタリング成膜時の下地材料に対する熱衝撃の原因は、スパッタ放電で二次的に増加する熱電子の量がカソードターゲットへの入力電力量(W)と導入ガス量(SCCM)に基本的に依存し、放電中の真空圧力が高くて放電電流量が多くなると、流入する熱電子の作用で基材が急激に昇温することによる。この発明では、下地材料の温度上昇の原因となる余剰の熱電子を、装置の真空槽内に設けた電子流量調整装置7でバイパスさせることにより、下地材料の温度上昇を制御して成膜を行っている。
【0022】
従って本発明により、スパッタリング成膜を高速で、かつ下地となる繊維等の有機質材料表面に熱的な衝撃を与えない低温で行うことが可能になり、繊維表面にDLC、カーボングラファイトその他のカーボン系薄膜を成膜すること、更にその上に重ねて金属、金属化合物(酸化物、窒化物、塩基物など)の薄膜を成膜することで、各種の有機質材料の機能性や耐久性を飛躍的に向上させることが可能となる。また同じく熱的衝撃の小さい成膜工程で酸化膜等を施すことが可能となり、繊維製品、プラスチック製品、木製品などに耐久性に優れた導電性、電磁波シールド性などの機能を付与することが可能になる。
【0023】
更にこの発明によれば、繊維を始めとして、同様な条件を備えたプラスッチクフイルム及びプラスッチ製品の表面や木製品表面のスパッタリング成膜処理による反射率低減、電波障害防止、導電性付与等の新機能を付与することによる改質改善が可能となり、新しい各種の機能繊維ないし機能有機質材料の創出が可能になる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の成膜方法を実施する装置の一例を示した図で、図中、1はチャンバー(真空槽)、2は下地ホルダ、3はターゲット、4は磁界圧着用磁石、5はターゲット用磁石、6はターゲットカバー、7は電子流量調節装置、8はガス導入装置、9は高圧電源、10は基材(下地)である。
【0025】
チャンバー1は、断面が方形ないし矩形で、図1の紙面直角方向に細長い直方体形状である(図2参照)。下地ホルダ2は、チャンバー1内の上部に配置した図1の紙面直角方向に細長い板状の部材で、基材となる繊維布や樹脂シート10は、このホルダ2の下面に広げた状態で添設される。下地ホルダ2は、導電材でチャンバー1に支持されているが、その支持部分には、導体抵抗が存在している。この下地ホルダ2には、下地の昇温を検出するための温度計21が接続されている。
【0026】
ターゲット3は、両端を支持部32a(図2参照)としたパイプ32の前記支持部を除く外周にターゲット材31を溶射等により所定厚さに付着したものである。すなわち、ターゲット3は、図1の紙面直角方向に細長いパイプ状のターゲットで、チャンバー1の長手方向(図1の紙面直角方向)の略全長に亘る長さで配置されている。支持パイプ32は、その支持部32aでチャンバー1に軸回りに回転自在に支持されており、これを回転させる駆動機構が設けられている。
【0027】
ターゲットカバー6は、ターゲット材31の外周から放電が生じない所定の間隔を隔てて配置された断面円弧薄板状の図1の紙面直角方向に細長い部材で(図2参照)、その長手両端はチャンバー1の壁面に達している。ターゲットカバー6の下部は、ガス導入ダクト81の壁面となっており、このガス導入ダクト81に流量制御器(マスフローコントローラ)82m、82h及び必要なバルブ83m、84m、83h、84hを介してスパッタガスが供給されている。図1の例では、ガス供給路85m、85hが2系統設けられており、一方がメタンガス源に、他方が水素ガス源に接続されている。供給されたガスは、ガス導入ダクト81で混合し、ターゲット材31とターゲットカバー6との間隙を通って、ターゲット材31の前方部分(基材に対向する部分)でチャンバー1内に供給される。チャンバー1には、排気系へ接続されているガス排気口11が設けられている。
【0028】
ターゲット支持パイプ32内には、偏平八画断面の磁石支持棒51が挿通されており、図1の紙面直角方向に細長い3個の磁石6が、この磁石支持棒51の周面に固定して設けられている(図5参照)。3個の磁石の内、中央の磁石5cと両側の磁石5sとは、磁極の向きが逆になっており、例えば中央の磁石5cは外側端をN極とし、両側の磁石5sは外側端をS極として配置することにより、図1にイで示したような漏洩磁界がターゲット材31の前面に生ずる。また、ターゲット支持パイプ32の内部には、冷却水が供給されてターゲット3を冷却している。
【0029】
磁界圧着用磁石4は、チャンバー1に固定した磁石支持枠41の内壁に固定して上下に枠状に配置されており(図3、4参照)、カソード(ターゲット材)からアノード(基材)へと向う電子の流路を囲んで当該流路に上下方向の漏洩磁界ロを発生している。磁界圧着用磁石4の磁極は、ターゲット磁石の両側のもの5sと同磁極が対向するように配置されている。すなわち、両側のターゲット用磁石5sの外側をS極とした図の例では、磁界圧着用磁石4の下内側がS極となり、上内側がN極となるように磁界圧着用磁石4を配置する。磁界圧着用磁石4は、冷却水カバー42で覆われており、この中に供給する冷却水によって冷却されている。
【0030】
電子流量調節装置7は、両端を絶縁材を介してチャンバー1で支持された電極パイプ71と、電子流に向いて開口する開口73を備えた電流調整カバー(覆い)72とを備えており、電極パイプ71には図6、7に示すように、電子を受容する表面積を大きくするために、フィン74が一体に固着されている。電極パイプ71及びフィン74は、導電率の低い銅で製作し、パイプ71内には冷却水を供給している。すなわち、電極パイプ71とフィン74とが、熱電子流を吸引する高導電率表面体となっており、熱電子流が多量に流入しても水冷冷却することができる。高導電率表面体71、74の周辺には、2分割された電気絶縁材製の開口幅調整可能な電流調整カバー72が取り付けてあり、流入電子流の流量調整が可能になっている。すなわち、電流調整カバー72は、図8に示すように、円弧状にスライドして開口73の幅を調整可能にした2枚のカバー板72a、72bで構成され、開口73の開度を調整することによって、吸引する電子量を調整できるようになっている。
【0031】
高導電率表面体の電極パイプ71は、可変抵抗器75を介してチャンバー1に電気的に接続されており、可変抵抗器75を調整することにより、下地ホルダ2と電極パイプ71の電位差を調整して、除去する熱電子の流量を調整することができる。なお、76は電子流調整装置7に流れる電流値を検出する電流計、22は下地ホルダ2に流れる電流値を検出する電流計である。
【0032】
すなわち上記のスパッタリング装置では、一般的に磁界圧着用磁石とカソードターゲットの中間に配置している電流収集用のアノードリングを除去し、図6ないし8に示す構造の電子流量調節装置7を図1に示す様に下地ホルダ2の側方に配置して、放電電流の流量調整機能を持たせている。
【0033】
チャンバー1は、高圧電源9の一端子(DC電源の場合は陽極)と接地アース91に接続されており、高圧電源9のもう一つ電極(DC電源の場合は陰極)は、カソードに接続されていて、真空チャンバー1内にマスフローコントローラ82m、82hを介してスパッタガスを導入し、高圧電源9より電力をカソードターゲット3より入力すると、グロー放電が生じ、入力電力量を増加させるとスパッタリング成膜が開始する。
【0034】
スパッタリング成膜開始時には、一般に放電電流はスパッター成膜材料分子・原子と一緒に下地ホルダ2に流入し、成膜材料は下地10に付着し、電子流は下地ホルダー2を介して真空チャンバー1の外部へ導体を伝って流れ、高圧電源9の陽極と接地アース91に到る。この際の、下地ホルダー2に電子流が流入する際、下地ホルダー2表面で熱電子と電子流の量が多くなると、発熱し下地ホルダー2を介して下地10の昇温を招く。
【0035】
本願発明者は、下地ホルダ2への所望流入量以上の熱電子流が下地の発熱昇温を招き、下地に障害を及ぼすという知見に基づき、障害の原因となる余剰電子流を図6ないし図7に示すような熱電子吸引用のアノード電極71、74を設けて、その外部可変抵抗器75の抵抗値と下地の表面抵抗を含む全抵抗との相互調整と、このアノード電極71、74への電子流の流入量を調整する調整カバー72の開口幅を調整し、余剰の熱電子をバイパスさせるアノード電極71、74にバイパスさせることにより、スパッタ成膜レートが最大で下地昇温が最小になる条件下で成膜を可能にしたのである。
【0036】
上記の調整機構を駆使することで、実際の成膜レートと成膜条件の相関性をベースに成膜された膜は、成膜中の昇温を80℃以下に抑えてカーボン系の膜の成膜を可能にした。これらの一連の実験結果は下記のようになった。
【0037】
【表1】
【0038】
・スパッタ成膜条件
(1)導入ガス メタンガス及びメタンと水素の混合ガス
(2)ターゲット材料 カーボン円筒ターゲット(外径50Φ)、10RPM常時回転
・成膜フロー
チャンバー内排気(E2.67*E−4Pa)⇒ターゲット回転⇒ガス導入⇒電力入力⇒シャッター開⇒成膜
⇒シャッター閉
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の成膜方法で使用するスパッタリング成膜装置の一例を示す模式図
【図2】図1の装置のA部の横断面図
【図3】図1の装置の磁石配置を示す縦断面図
【図4】図3のB部の斜視図
【図5】図1の装置のターゲット磁石の配置を示す斜視図
【図6】電子流調整装置の一部を示す斜視図
【図7】電子流調整装置の一部を示す断面図
【図8】電子流調整装置の覆いの開閉構造を示す模式図
【符号の説明】
1 真空槽
3 ターゲット
4 マグネット
5 マグネット
7 電子流量調整装置
10 基材(下地材料)
71,74 熱電子吸引部材
72 覆い
75 可変抵抗器
Claims (7)
- マグネトロン・スパッタリング成膜装置の真空槽内に当該真空槽の槽壁に抵抗器を介して又は介さないで電気的に接続された高導電性表面を備えた熱電子流吸引装置を配置し、アノードとなる下地ホルダで下地材料となる繊維布その他の有機質基材を保持し、カソードとして炭素ターゲットを配置し、前記熱電子流吸引装置で所望のスパッタ条件を満たすスパッタ電子流がカソードターゲットとアノード間に流れるように、放電で生ずる余剰な熱電子流を放電プラズマ中から吸収除去して成膜することを特徴とする、電磁界圧着型スパッタリング成膜方法。
- スパッタ・ガスとして炭化水素ガスを用いる、請求項1記載のスパッタリング成膜方法。
- 有機質下地材料の表面にカーボン系薄膜をスパッタリング成膜した、有機質材料を下地とするスパッタリング成膜製品。
- 有機質下地材料の表面に請求項1又は2記載の方法でカーボン系薄膜が形成され、更にそのカーボン系薄膜の表面に金属ないし金属化合物薄膜が形成されている、有機質材料を下地とするスパッタリング成膜製品。
- アノードに接続してスパッタ放電プラズマ中の熱電子流を吸引除去する高導電率表面体(71,74)と、この高導電率表面体を囲むように配置された絶縁材料又は真空槽内壁より導電率の高い材料からなる覆い(72)と、当該覆いを一部欠落させて前記高導電率表面体の一部を露出させる開口(73)とを備え、前記開口の面積によってアノードに流入する電子流の量を調整する、スパッタリング装置の電子流量調節装置。
- 前記高導電率表面体が真空槽内に絶縁構造で支持され、当該高導電率表面体が真空槽外部において可変抵抗器(75)を介して真空槽(1)の槽壁と接続されており、吸引する電子流の量を前記可変抵抗器の抵抗値で調整可能とした、請求項5記載の電子流量調節装置。
- 請求項5又は6記載の電子流量調節装置を備えた電磁界圧着型スパッタリング成膜装置を用い、スパッタリング放電中の電子流量を入力電力量、ガス導入量、ガス比率及び熱電子吸引量を調整して最適スパッタ成膜条件の制御を行うことを特徴とする、低温高速安定スパッタリング成膜方法。
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