JP2004244503A - エナメル線用ポリエステル系絶縁塗料、その製造方法およびエナメル線 - Google Patents
エナメル線用ポリエステル系絶縁塗料、その製造方法およびエナメル線 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】従来から使用されているフェノール系溶剤を使用しないで、有害毒性が解消され、上記溶剤を用いた場合と同等の特性と優れた高周波特性を有するエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を提供すること。
【解決手段】ポリエステル系樹脂がプロピレンカーボネートに溶解してなる絶縁塗料に、上記樹脂分100重量部に対して、オルガノゾルを固形分で1.0〜50重量部の割合で配合してなることを特徴とするエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリエステル系樹脂がプロピレンカーボネートに溶解してなる絶縁塗料に、上記樹脂分100重量部に対して、オルガノゾルを固形分で1.0〜50重量部の割合で配合してなることを特徴とするエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波特性に優れるエナメル線の製造が可能な、簡単、且つ容易に製造でき、長期保存安定性に優れるエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気機器の小型化が進展するにつれて、エナメル線への特性要求は従来より一層高度化されてきている。そのひとつにエナメル線の高周波特性の向上がある。例えば、PWMインバータ駆動方式で運転されるモータでは、従来の交流電圧と異なり高周波の繰り返しサージ電圧ストレスが加わることから、エナメル線の高周波特性の向上が機器の長期的信頼性の向上に欠かせなくなっており、酸化チタン、アルミナ、シリカなどの無機物を分散させた樹脂皮膜を構成絶縁皮膜とするエナメル線が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、フェノール系溶剤を使用した絶縁塗料に金属酸化物微粒子ゾルおよびケイ素酸化物微粒子ゾルを配合してなる樹脂皮膜を構成絶縁皮膜とするエナメル線が提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。
【0004】
前者提案の絶縁塗料は、高回転のディスパーやボールミル、ロールミルなどのいわゆる分散器を用いて、強力なシェアをかけて酸化チタン、アルミナ、シリカなどの無機物を絶縁塗料中に分散させて製造される。
しかしながら、強力な物理的なシェアは絶縁塗料の主成分である熱硬化性樹脂に対しては好ましいものではなく、上記の無機物を分散させる過程で熱硬化性樹脂が反応して塗料が増粘したり、該樹脂が部分ゲル化し、はなはだしい場合には全てゲル化を起こすことさえある。
【0005】
後者提案の絶縁塗料を使用したエナメル線は、高周波特性に優れているが、絶縁塗料の主溶剤にはフェノール、クレゾールまたはクレゾール酸のようなフェノール系溶剤が使用されている。これらフェノール系溶剤は強い刺激臭を有し、皮膚接触で薬傷を呈すなど、一般的な他の塗料に用いられている溶剤に比較しても更に有毒有害性が強い溶剤である。フェノールは特定化学物質に指定されているし、日本産業衛生学会ではフェノールおよびクレゾールの許容濃度をいずれも5ppmと勧告している。また、フェノールを含む物質またクレゾールを含む物質は医薬用外劇物にも該当する。
このため、塗料にフェノール系溶剤を使用する場合には、材料の管理から始まって、塗料廃棄物の管理に至るまで、多大な注意が必要となっている。
【0006】
【特許文献1】
特開平2−106812号公報
【特許文献2】
米国特許第5,654,095号明細書
【特許文献3】
特開2001−307557号公報
【特許文献4】
特開2002−025344号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、従来から使用されているフェノール系溶剤を使用しないで、有害毒性が解消され、上記溶剤を用いた場合と同等の特性と優れた高周波特性を有するエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を提供することである。
本発明者らは従来のエナメル線用絶縁塗料の上記問題点を解決すべく種々検討した結果、ポリエステル系樹脂がプロピレンカーボネートに溶解してなる絶縁塗料に無機物のオルガノゾルを配合することで、絶縁塗料を簡単、且つ容易に製造することができ、得られた絶縁塗料は長期の保存安定性を有し、また、この絶縁塗料を用いて作製したエナメル線は高周波特性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、ポリエステル系樹脂がプロピレンカーボネートに溶解してなる絶縁塗料に、上記樹脂分100重量部に対して、オルガノゾルを固形分で1.0〜50重量部の割合で配合してなることを特徴とするエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料、その製造方法およびエナメル線である。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明においてオルガノゾルが配合されるベースとなるエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料は、プロピレンカーボネート(炭酸プロピレン)中にポリエステル系樹脂が溶解してなるものであり、このベースとなる絶縁塗料はポリエステル系樹脂として、その原料成分をプロピレンカーボネート中で加熱反応させ、生成した分子中にイミド環を有するポリエステル系樹脂(以下では単にポリエステル系樹脂と称することがある。)を使用することが特徴である。
【0010】
分子中にイミド環を有し、プロピレンカーボネートに溶解するポリエステル系樹脂を合成するための原料成分は、芳香族ジイミドジカルボン酸、これ以外の多価カルボン酸および多価アルコールである。尚、芳香族ジイミドジカルボン酸は、反応系中でポリエステル系樹脂の他の原料成分の存在下に芳香族トリカルボン酸あるいはその無水物と芳香族ジアミンなどを原料成分として反応させて生成させることもできる。
【0011】
芳香族ジイミドジカルボン酸は、例えば、芳香族トリメリット酸無水物2モルと芳香族ジアミン1モルとを反応させて得られる下記の構造を有する芳香族ジカルボン酸である。
【0012】
芳香族ジアミンとしては、例えば、ベンジジン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノジフェニルケトンなどが挙げられるが、4,4′−ジアミノジフェニルメタンが好ましい。芳香族ジアミンに代えて、例えば、4,4′−ジイソシアネートジフェニルメタン、4,4′−ジイソシアネートジフェニルエーテルなどの芳香族ジイソシアネートを用いることもできる。
【0013】
芳香族ジイミドジカルボン酸以外の多価カルボン酸あるいはその誘導体としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、トリメリット酸、ヘメリット酸などの芳香族三価カルボン酸、ピロメリット酸などの芳香族四価カルボン酸などの芳香族多価カルボン酸あるいはこれらの酸無水物、低級(アルキル基の炭素数が1〜4程度の)エステル化物などの多価カルボン酸の誘導体が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。芳香族三価カルボン酸あるいはその無水物は、前記の芳香族ジイミドジカルボン酸の原料と同時に多価カルボン酸として使用することができる。
好ましい多価カルボン酸は、芳香族ジカルボン酸および芳香族三価カルボン酸であり、なかでも好ましいのはテレフタル酸およびトリメリット酸である。
【0014】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、スピログリコールなどの脂肪族二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットなどの脂肪族三価以上のアルコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)などの環状の三価以上のアルコールなどが挙げられる。好ましい多価アルコールは、二価アルコールと三価アルコールの併用である。二価アルコールは全アルコール当量の5〜95当量%が好ましく、さらに好ましくは45〜90当量%である。二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオールなどが好ましく、三価アルコールとしてはグリセリン、THEIC、トリメチロールプロパンなどが好ましい。
【0015】
上記の原料成分を用いてプロピレンカーボネート中で分子中にイミド環を有するポリエステル系樹脂を製造する場合、全多価カルボン酸成分中の酸基と全多価アルコール成分中の水酸基の当量比(OH/COOH)が、好ましくは1.2〜3.0、さらに好ましくは1.5〜2.5となるように多価カルボン酸と多価アルコールを反応させる。上記の当量比が1.2未満では反応系の粘度が高くなり、反応制御に難があり、3.0を超えると反応生成物の上記ポリエステル系樹脂の分子量が小さくなりすぎ、得られた絶縁塗料を導体に塗布および焼付けた際のスタックロスが多くなるとともに、良好な硬化が行われず、絶縁皮膜としての性能が不充分となる。
【0016】
ポリエステル系樹脂中のイミド基の含有量(イミド当量)は、絶縁塗料に要求される耐熱性に応じて任意に変更できるが、通常、樹脂中のエステル当量とイミド当量の合計に対して5〜50当量%であり、好ましいイミド当量は10〜40当量%である。
【0017】
本発明におけるポリエステル系樹脂の製造方法は、溶剤のプロピレンカーボネート中で製造することを除き、従来公知の絶縁塗料用のポリエステル系樹脂の製造方法がいずれも使用でき、特に限定されない。以下に製造方法の好ましい例を示す。
本発明においても反応を促進するために触媒を使用することが可能であり、また好ましい。使用できる触媒としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラクレジルチタネート、トリエタノールアミンチタネートなどのチタン酸エステル、ジブチルチンオキサイドやスタナスオキサイドなどのスズ化合物、酢酸亜鉛、酢酸鉛、プロピオン酸亜鉛などの有機酸金属塩などが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。触媒の使用量は、通常、全原料成分量に対して2重量%以下の量で使用される。
【0018】
プロピレンカーボネート、芳香族ジイミドジカルボン酸またはその原料成分、上記ジカルボン酸以外の多価カルボンまたはその誘導体および多価アルコールを反応容器に仕込み、触媒の存在下または非存在下に、180〜270℃の温度に加熱および反応せしめ、分子中にイミド環を有する所定のポリエステル系樹脂を合成する。
上記のポリエステル系樹脂の製造方法は一例であり、原料成分の分割添加およびその際の添加順序や反応温度などは種々変更できることを理解すべきである。
【0019】
上記方法により製造されるポリエステル系樹脂は、プロピレンカーボネートに溶解した溶液状態であり、そのままの濃度で、あるいはプロピレンカーボネートや稀釈剤で適当な濃度に調整してオルガノゾルが配合されるベースとなるエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料として使用される。
絶縁塗料における主溶剤は、プロピレンカーボネートであり、稀釈剤として、芳香族炭化水素や二塩基酸エステル、ベンジルアルコールなどを使用することができる。
【0020】
こうして調製されたベースとなるエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料には、後述のオルガノゾルが配合され、そのままでもエナメル線製造に供することができるが、より良い特性を発現させるために従来のポリエステル系絶縁塗料に使用されている硬化剤や硬化触媒などの各種添加剤を配合することができる。
【0021】
硬化剤としては、従来のポリエステル系絶縁塗料で用いられている硬化剤がいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、好ましい硬化剤としては、ポリイソシアネートのイソシアネート基をフェノール、クレゾールなどでマスキングした安定化ポリイソシアネートが挙げられる。この具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネートのキシレノールマスキング体、ジフェニルメタンジイソシアネート/トリメチロールプロパンのキシレノールマスキング体、トリレンジイソシアネートの三量体のフェノールマスキング体などを挙げることができる。その添加量は、ポリエステル系樹脂に対して、通常1〜15重量%程度である。
【0022】
また、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛などの有機酸金属塩やテトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラクレジルチタネート、トリエタノールアミンチタネートなどのチタン酸エステルなどが硬化触媒または硬化剤として使用でき、その添加量はポリエステル系樹脂に対して、通常0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲である。
【0023】
他の添加剤としてはフェノール系ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。上記樹脂としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシンなどのフェノール類とホルムアルデヒドから得られる樹脂およびそれらの変性樹脂を挙げることができる。その添加量は、ポリエステル系樹脂に対して、通常0.3〜20重量%程度である。
【0024】
本発明で使用されるオルガノゾルは、SiO2、Al2O3、Sb2O3、TiO2、SnO2およびZrO2であり、これらは1種または2種以上を組合せて使用される。これらのオルガノゾルは、一次粒子のままコロイド次元で有機溶剤に分散されているものであり、分散の安定度はほぼ半永久的なものである。コロイド粒子の凝集粒子からなる無機物には、例えば、ホワイトカーボンと呼ばれるSiO2などもあるが、これらは有機溶剤に無理に分散させても、経時的に凝集、沈殿、沈降するために安定性は保持できず、オルガノゾルとはならない。オルガノゾルを形成している上記無機物は、通常、平均粒子径が5〜30nm程度であるが、本発明においては平均粒子径は特に限定されない。
【0025】
本発明に使用するオルガノゾルは、例えば、スノーテックスDMSC−ST(日産化学工業社製:SiO2、分散媒:N−ジメチルアセトアミド、平均粒子径10〜20nm)、スノーテックスXBA−ST(日産化学工業社製:SiO2、分散媒:キシレン/n−ブタノール、平均粒子径10〜20nm)、OSCA1632(触媒化学工業社製:SiO2、分散媒:エチルセロソルブ、平均粒子径10〜20nm)、オプトレイク−1120Z(触媒化学工業社製:TiO2、SiO2およびZrO2の複合オルガノゾル)などとして市販品が入手可能である。
【0026】
本発明のエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料は、ベースとなるポリエステル系樹脂がフェノール系溶剤を含まない溶剤に溶解してなり、その樹脂分100重量部に対して、上記の無機物のオルガノゾルを固形分で1.0〜50重量部、好ましくは5〜40重量部の割合で配合してなるものである。配合に際しては、何んら特殊な設備や攪拌などの条件は全く必要でなく、例えば、常温で、ベースとするエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料とオルガノゾルを通常の攪拌機にて充分に混合すればよい。オルガノゾルの固形分が1.0重量部未満では得られたエナメル線の高周波特性が不充分であり、50重量部を超すと得られる絶縁皮膜の可撓性や密着性が不充分となる。
【0027】
本発明のエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を使用してエナメル線を製造するに際しては、従来のエナメル線用絶縁塗料と同様に、銅やアルミニウムなどの導体に直接、または他の絶縁層皮膜の上に常法に従って塗布し、焼き付ければよい。更には本発明のエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料からなる絶縁皮膜の上に他の絶縁層皮膜を施してもよい。優れた高周波特性を有するエナメル線を得るためには、本発明のエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料からなる皮膜の厚さを5μm以上とすることが好ましく、5μm未満では優れた高周波特性は期待できない。
【0028】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1
攪拌機、温度計および冷却管を備えた2リットルのフラスコに、プロピレンカーボネート164g、エチレングリコール74g、トリス−2−ヒドロキシイソシアヌレート313g、ジメチルテレフタレート218g、トリメリット酸無水物144g、4,4′−ジアミノジフェニルメタン74gおよび触媒としてテトラブチルチタネート0.7gを仕込み、200℃まで6時間かけて昇温し、この温度で5時間反応させた。反応液にプロピレンカーボネート392g、ハイゾール#100(日石化学社製)を98gを加え、不揮発分50重量%のポリエステル系樹脂溶液を調製した。この溶液に樹脂分に対し3重量%のテトラブチルチタネートと2重量%のフェノールホルムアルデヒド樹脂を加え、不揮発分50重量%、30℃における粘度50dPa・sのポリエステル系絶縁塗料を得た。
得られたポリエステル系絶縁塗料500gにスノーテックスDMSC−ST(日産化学工業社製:SiO2オルガノゾル、固形分20重量%)62.5gを、常温にて攪拌しながら混合し、エナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0030】
実施例2〜4
混合するオルガノゾルの量を各々125g、312.5g、500gとする以外は実施例1と同様にしてエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0031】
実施例5
混合するオルガノゾルとその量をスノーテックスXBA−ST(日産化学工業社製:SiO2、分散媒:キシレン/n−ブタノール、平均粒子径10〜20nm)125gとする以外は実施例1と同様にしてエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0032】
実施例6
オルガノゾルとその量をオプトレイク−1120Z(触媒化学工業社製:TiO2、SiO2およびZrO2の複合オルガノゾル)125gとする以外は実施例1と同様にしてエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0033】
比較例1
実施例1においてプロピレンカーボネート164gの代わりにクレゾール289gを用いて反応させた。反応液にプロピレンカーボネート392gの代わりにクレゾール622gを、またハイゾール#100(日石化学社製)の量を101gに代えて加え、不揮発分40重量%のポリエステル系樹脂溶液を調製した。この溶液に、樹脂分に対し3重量%のテトラブチルチタネートを加え、不揮発分40重量%、30℃における粘度40dPa・sのポリエステル系絶縁塗料を得た。
得られたポリエステル系絶縁塗料500gにスノーテックスDMSC−ST(日産化学工業社製:SiO2オルガノゾル、固形分20重量%)100gを、常温にて攪拌しながら混合してエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0034】
比較例2
混合するオルガノゾルの量を6.3gとする以外は実施例1と同様にしてエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0035】
比較例3
混合するオルガノゾルの量を750gとする以外は実施例1と同様にしてエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0036】
実施例7〜12、比較例4〜6
以上の実施例および比較例で作製した各エナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を用いた絶縁皮膜を有するエナメル線を作製し、評価した。エナメル線の作製方法および評価方法は下記の通りである。
【0037】
〔エナメル線の作製〕
1.0mm径の軟銅線にポリエステルイミド絶縁塗料(大日精化工業社製 EH402−45)を塗布および焼き付けて、皮膜厚20μmの絶縁層を形成した後、その上に得られたエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を塗布および焼き付けて10μmの絶縁中間層を形成し、更に、その上にポリアミドイミド絶縁塗料(大日精化工業社製AI602−30)を塗布および焼き付けて5μmの絶縁外層を形成し、3層構造の絶縁皮膜を有するエナメル線を作製した。
【0038】
〔エナメル線の評価〕
(1)外観平滑性は、各実施例および比較例の絶縁塗料をそれぞれ塗布および焼き付けた段階で目視判定した。
(2)一般特性は、JIS C3003−1999に従って評価した。
(3)パルス特性は、JIS C3003−1999に規定される2個撚り試料に、電圧3,000V、周波数30,000Hzを印加し、破壊に至るまでの時間を測定した。
これらの評価結果を表1、2に示す。
【0039】
【0040】
【0041】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、従来のフェノール系溶剤を使用した絶縁塗料の有害有毒性を大きく下回り、長期保存安定性に優れ、従来の絶縁塗料と同等の特性を有するエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料が提供される。本発明の絶縁塗料を使用することにより、高周波特性に優れたエナメル線の製造が可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波特性に優れるエナメル線の製造が可能な、簡単、且つ容易に製造でき、長期保存安定性に優れるエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気機器の小型化が進展するにつれて、エナメル線への特性要求は従来より一層高度化されてきている。そのひとつにエナメル線の高周波特性の向上がある。例えば、PWMインバータ駆動方式で運転されるモータでは、従来の交流電圧と異なり高周波の繰り返しサージ電圧ストレスが加わることから、エナメル線の高周波特性の向上が機器の長期的信頼性の向上に欠かせなくなっており、酸化チタン、アルミナ、シリカなどの無機物を分散させた樹脂皮膜を構成絶縁皮膜とするエナメル線が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、フェノール系溶剤を使用した絶縁塗料に金属酸化物微粒子ゾルおよびケイ素酸化物微粒子ゾルを配合してなる樹脂皮膜を構成絶縁皮膜とするエナメル線が提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。
【0004】
前者提案の絶縁塗料は、高回転のディスパーやボールミル、ロールミルなどのいわゆる分散器を用いて、強力なシェアをかけて酸化チタン、アルミナ、シリカなどの無機物を絶縁塗料中に分散させて製造される。
しかしながら、強力な物理的なシェアは絶縁塗料の主成分である熱硬化性樹脂に対しては好ましいものではなく、上記の無機物を分散させる過程で熱硬化性樹脂が反応して塗料が増粘したり、該樹脂が部分ゲル化し、はなはだしい場合には全てゲル化を起こすことさえある。
【0005】
後者提案の絶縁塗料を使用したエナメル線は、高周波特性に優れているが、絶縁塗料の主溶剤にはフェノール、クレゾールまたはクレゾール酸のようなフェノール系溶剤が使用されている。これらフェノール系溶剤は強い刺激臭を有し、皮膚接触で薬傷を呈すなど、一般的な他の塗料に用いられている溶剤に比較しても更に有毒有害性が強い溶剤である。フェノールは特定化学物質に指定されているし、日本産業衛生学会ではフェノールおよびクレゾールの許容濃度をいずれも5ppmと勧告している。また、フェノールを含む物質またクレゾールを含む物質は医薬用外劇物にも該当する。
このため、塗料にフェノール系溶剤を使用する場合には、材料の管理から始まって、塗料廃棄物の管理に至るまで、多大な注意が必要となっている。
【0006】
【特許文献1】
特開平2−106812号公報
【特許文献2】
米国特許第5,654,095号明細書
【特許文献3】
特開2001−307557号公報
【特許文献4】
特開2002−025344号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、従来から使用されているフェノール系溶剤を使用しないで、有害毒性が解消され、上記溶剤を用いた場合と同等の特性と優れた高周波特性を有するエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を提供することである。
本発明者らは従来のエナメル線用絶縁塗料の上記問題点を解決すべく種々検討した結果、ポリエステル系樹脂がプロピレンカーボネートに溶解してなる絶縁塗料に無機物のオルガノゾルを配合することで、絶縁塗料を簡単、且つ容易に製造することができ、得られた絶縁塗料は長期の保存安定性を有し、また、この絶縁塗料を用いて作製したエナメル線は高周波特性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、ポリエステル系樹脂がプロピレンカーボネートに溶解してなる絶縁塗料に、上記樹脂分100重量部に対して、オルガノゾルを固形分で1.0〜50重量部の割合で配合してなることを特徴とするエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料、その製造方法およびエナメル線である。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明においてオルガノゾルが配合されるベースとなるエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料は、プロピレンカーボネート(炭酸プロピレン)中にポリエステル系樹脂が溶解してなるものであり、このベースとなる絶縁塗料はポリエステル系樹脂として、その原料成分をプロピレンカーボネート中で加熱反応させ、生成した分子中にイミド環を有するポリエステル系樹脂(以下では単にポリエステル系樹脂と称することがある。)を使用することが特徴である。
【0010】
分子中にイミド環を有し、プロピレンカーボネートに溶解するポリエステル系樹脂を合成するための原料成分は、芳香族ジイミドジカルボン酸、これ以外の多価カルボン酸および多価アルコールである。尚、芳香族ジイミドジカルボン酸は、反応系中でポリエステル系樹脂の他の原料成分の存在下に芳香族トリカルボン酸あるいはその無水物と芳香族ジアミンなどを原料成分として反応させて生成させることもできる。
【0011】
芳香族ジイミドジカルボン酸は、例えば、芳香族トリメリット酸無水物2モルと芳香族ジアミン1モルとを反応させて得られる下記の構造を有する芳香族ジカルボン酸である。
【0012】
芳香族ジアミンとしては、例えば、ベンジジン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノジフェニルケトンなどが挙げられるが、4,4′−ジアミノジフェニルメタンが好ましい。芳香族ジアミンに代えて、例えば、4,4′−ジイソシアネートジフェニルメタン、4,4′−ジイソシアネートジフェニルエーテルなどの芳香族ジイソシアネートを用いることもできる。
【0013】
芳香族ジイミドジカルボン酸以外の多価カルボン酸あるいはその誘導体としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、トリメリット酸、ヘメリット酸などの芳香族三価カルボン酸、ピロメリット酸などの芳香族四価カルボン酸などの芳香族多価カルボン酸あるいはこれらの酸無水物、低級(アルキル基の炭素数が1〜4程度の)エステル化物などの多価カルボン酸の誘導体が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。芳香族三価カルボン酸あるいはその無水物は、前記の芳香族ジイミドジカルボン酸の原料と同時に多価カルボン酸として使用することができる。
好ましい多価カルボン酸は、芳香族ジカルボン酸および芳香族三価カルボン酸であり、なかでも好ましいのはテレフタル酸およびトリメリット酸である。
【0014】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、スピログリコールなどの脂肪族二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットなどの脂肪族三価以上のアルコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)などの環状の三価以上のアルコールなどが挙げられる。好ましい多価アルコールは、二価アルコールと三価アルコールの併用である。二価アルコールは全アルコール当量の5〜95当量%が好ましく、さらに好ましくは45〜90当量%である。二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオールなどが好ましく、三価アルコールとしてはグリセリン、THEIC、トリメチロールプロパンなどが好ましい。
【0015】
上記の原料成分を用いてプロピレンカーボネート中で分子中にイミド環を有するポリエステル系樹脂を製造する場合、全多価カルボン酸成分中の酸基と全多価アルコール成分中の水酸基の当量比(OH/COOH)が、好ましくは1.2〜3.0、さらに好ましくは1.5〜2.5となるように多価カルボン酸と多価アルコールを反応させる。上記の当量比が1.2未満では反応系の粘度が高くなり、反応制御に難があり、3.0を超えると反応生成物の上記ポリエステル系樹脂の分子量が小さくなりすぎ、得られた絶縁塗料を導体に塗布および焼付けた際のスタックロスが多くなるとともに、良好な硬化が行われず、絶縁皮膜としての性能が不充分となる。
【0016】
ポリエステル系樹脂中のイミド基の含有量(イミド当量)は、絶縁塗料に要求される耐熱性に応じて任意に変更できるが、通常、樹脂中のエステル当量とイミド当量の合計に対して5〜50当量%であり、好ましいイミド当量は10〜40当量%である。
【0017】
本発明におけるポリエステル系樹脂の製造方法は、溶剤のプロピレンカーボネート中で製造することを除き、従来公知の絶縁塗料用のポリエステル系樹脂の製造方法がいずれも使用でき、特に限定されない。以下に製造方法の好ましい例を示す。
本発明においても反応を促進するために触媒を使用することが可能であり、また好ましい。使用できる触媒としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラクレジルチタネート、トリエタノールアミンチタネートなどのチタン酸エステル、ジブチルチンオキサイドやスタナスオキサイドなどのスズ化合物、酢酸亜鉛、酢酸鉛、プロピオン酸亜鉛などの有機酸金属塩などが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。触媒の使用量は、通常、全原料成分量に対して2重量%以下の量で使用される。
【0018】
プロピレンカーボネート、芳香族ジイミドジカルボン酸またはその原料成分、上記ジカルボン酸以外の多価カルボンまたはその誘導体および多価アルコールを反応容器に仕込み、触媒の存在下または非存在下に、180〜270℃の温度に加熱および反応せしめ、分子中にイミド環を有する所定のポリエステル系樹脂を合成する。
上記のポリエステル系樹脂の製造方法は一例であり、原料成分の分割添加およびその際の添加順序や反応温度などは種々変更できることを理解すべきである。
【0019】
上記方法により製造されるポリエステル系樹脂は、プロピレンカーボネートに溶解した溶液状態であり、そのままの濃度で、あるいはプロピレンカーボネートや稀釈剤で適当な濃度に調整してオルガノゾルが配合されるベースとなるエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料として使用される。
絶縁塗料における主溶剤は、プロピレンカーボネートであり、稀釈剤として、芳香族炭化水素や二塩基酸エステル、ベンジルアルコールなどを使用することができる。
【0020】
こうして調製されたベースとなるエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料には、後述のオルガノゾルが配合され、そのままでもエナメル線製造に供することができるが、より良い特性を発現させるために従来のポリエステル系絶縁塗料に使用されている硬化剤や硬化触媒などの各種添加剤を配合することができる。
【0021】
硬化剤としては、従来のポリエステル系絶縁塗料で用いられている硬化剤がいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、好ましい硬化剤としては、ポリイソシアネートのイソシアネート基をフェノール、クレゾールなどでマスキングした安定化ポリイソシアネートが挙げられる。この具体例としては、ジフェニルメタンジイソシアネートのキシレノールマスキング体、ジフェニルメタンジイソシアネート/トリメチロールプロパンのキシレノールマスキング体、トリレンジイソシアネートの三量体のフェノールマスキング体などを挙げることができる。その添加量は、ポリエステル系樹脂に対して、通常1〜15重量%程度である。
【0022】
また、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛などの有機酸金属塩やテトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラクレジルチタネート、トリエタノールアミンチタネートなどのチタン酸エステルなどが硬化触媒または硬化剤として使用でき、その添加量はポリエステル系樹脂に対して、通常0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲である。
【0023】
他の添加剤としてはフェノール系ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。上記樹脂としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシンなどのフェノール類とホルムアルデヒドから得られる樹脂およびそれらの変性樹脂を挙げることができる。その添加量は、ポリエステル系樹脂に対して、通常0.3〜20重量%程度である。
【0024】
本発明で使用されるオルガノゾルは、SiO2、Al2O3、Sb2O3、TiO2、SnO2およびZrO2であり、これらは1種または2種以上を組合せて使用される。これらのオルガノゾルは、一次粒子のままコロイド次元で有機溶剤に分散されているものであり、分散の安定度はほぼ半永久的なものである。コロイド粒子の凝集粒子からなる無機物には、例えば、ホワイトカーボンと呼ばれるSiO2などもあるが、これらは有機溶剤に無理に分散させても、経時的に凝集、沈殿、沈降するために安定性は保持できず、オルガノゾルとはならない。オルガノゾルを形成している上記無機物は、通常、平均粒子径が5〜30nm程度であるが、本発明においては平均粒子径は特に限定されない。
【0025】
本発明に使用するオルガノゾルは、例えば、スノーテックスDMSC−ST(日産化学工業社製:SiO2、分散媒:N−ジメチルアセトアミド、平均粒子径10〜20nm)、スノーテックスXBA−ST(日産化学工業社製:SiO2、分散媒:キシレン/n−ブタノール、平均粒子径10〜20nm)、OSCA1632(触媒化学工業社製:SiO2、分散媒:エチルセロソルブ、平均粒子径10〜20nm)、オプトレイク−1120Z(触媒化学工業社製:TiO2、SiO2およびZrO2の複合オルガノゾル)などとして市販品が入手可能である。
【0026】
本発明のエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料は、ベースとなるポリエステル系樹脂がフェノール系溶剤を含まない溶剤に溶解してなり、その樹脂分100重量部に対して、上記の無機物のオルガノゾルを固形分で1.0〜50重量部、好ましくは5〜40重量部の割合で配合してなるものである。配合に際しては、何んら特殊な設備や攪拌などの条件は全く必要でなく、例えば、常温で、ベースとするエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料とオルガノゾルを通常の攪拌機にて充分に混合すればよい。オルガノゾルの固形分が1.0重量部未満では得られたエナメル線の高周波特性が不充分であり、50重量部を超すと得られる絶縁皮膜の可撓性や密着性が不充分となる。
【0027】
本発明のエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を使用してエナメル線を製造するに際しては、従来のエナメル線用絶縁塗料と同様に、銅やアルミニウムなどの導体に直接、または他の絶縁層皮膜の上に常法に従って塗布し、焼き付ければよい。更には本発明のエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料からなる絶縁皮膜の上に他の絶縁層皮膜を施してもよい。優れた高周波特性を有するエナメル線を得るためには、本発明のエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料からなる皮膜の厚さを5μm以上とすることが好ましく、5μm未満では優れた高周波特性は期待できない。
【0028】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1
攪拌機、温度計および冷却管を備えた2リットルのフラスコに、プロピレンカーボネート164g、エチレングリコール74g、トリス−2−ヒドロキシイソシアヌレート313g、ジメチルテレフタレート218g、トリメリット酸無水物144g、4,4′−ジアミノジフェニルメタン74gおよび触媒としてテトラブチルチタネート0.7gを仕込み、200℃まで6時間かけて昇温し、この温度で5時間反応させた。反応液にプロピレンカーボネート392g、ハイゾール#100(日石化学社製)を98gを加え、不揮発分50重量%のポリエステル系樹脂溶液を調製した。この溶液に樹脂分に対し3重量%のテトラブチルチタネートと2重量%のフェノールホルムアルデヒド樹脂を加え、不揮発分50重量%、30℃における粘度50dPa・sのポリエステル系絶縁塗料を得た。
得られたポリエステル系絶縁塗料500gにスノーテックスDMSC−ST(日産化学工業社製:SiO2オルガノゾル、固形分20重量%)62.5gを、常温にて攪拌しながら混合し、エナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0030】
実施例2〜4
混合するオルガノゾルの量を各々125g、312.5g、500gとする以外は実施例1と同様にしてエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0031】
実施例5
混合するオルガノゾルとその量をスノーテックスXBA−ST(日産化学工業社製:SiO2、分散媒:キシレン/n−ブタノール、平均粒子径10〜20nm)125gとする以外は実施例1と同様にしてエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0032】
実施例6
オルガノゾルとその量をオプトレイク−1120Z(触媒化学工業社製:TiO2、SiO2およびZrO2の複合オルガノゾル)125gとする以外は実施例1と同様にしてエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0033】
比較例1
実施例1においてプロピレンカーボネート164gの代わりにクレゾール289gを用いて反応させた。反応液にプロピレンカーボネート392gの代わりにクレゾール622gを、またハイゾール#100(日石化学社製)の量を101gに代えて加え、不揮発分40重量%のポリエステル系樹脂溶液を調製した。この溶液に、樹脂分に対し3重量%のテトラブチルチタネートを加え、不揮発分40重量%、30℃における粘度40dPa・sのポリエステル系絶縁塗料を得た。
得られたポリエステル系絶縁塗料500gにスノーテックスDMSC−ST(日産化学工業社製:SiO2オルガノゾル、固形分20重量%)100gを、常温にて攪拌しながら混合してエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0034】
比較例2
混合するオルガノゾルの量を6.3gとする以外は実施例1と同様にしてエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0035】
比較例3
混合するオルガノゾルの量を750gとする以外は実施例1と同様にしてエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を得た。
【0036】
実施例7〜12、比較例4〜6
以上の実施例および比較例で作製した各エナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を用いた絶縁皮膜を有するエナメル線を作製し、評価した。エナメル線の作製方法および評価方法は下記の通りである。
【0037】
〔エナメル線の作製〕
1.0mm径の軟銅線にポリエステルイミド絶縁塗料(大日精化工業社製 EH402−45)を塗布および焼き付けて、皮膜厚20μmの絶縁層を形成した後、その上に得られたエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料を塗布および焼き付けて10μmの絶縁中間層を形成し、更に、その上にポリアミドイミド絶縁塗料(大日精化工業社製AI602−30)を塗布および焼き付けて5μmの絶縁外層を形成し、3層構造の絶縁皮膜を有するエナメル線を作製した。
【0038】
〔エナメル線の評価〕
(1)外観平滑性は、各実施例および比較例の絶縁塗料をそれぞれ塗布および焼き付けた段階で目視判定した。
(2)一般特性は、JIS C3003−1999に従って評価した。
(3)パルス特性は、JIS C3003−1999に規定される2個撚り試料に、電圧3,000V、周波数30,000Hzを印加し、破壊に至るまでの時間を測定した。
これらの評価結果を表1、2に示す。
【0039】
【0040】
【0041】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、従来のフェノール系溶剤を使用した絶縁塗料の有害有毒性を大きく下回り、長期保存安定性に優れ、従来の絶縁塗料と同等の特性を有するエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料が提供される。本発明の絶縁塗料を使用することにより、高周波特性に優れたエナメル線の製造が可能である。
Claims (7)
- ポリエステル系樹脂がプロピレンカーボネートに溶解してなる絶縁塗料に、上記樹脂分100重量部に対して、オルガノゾルを固形分で1.0〜50重量部の割合で配合してなることを特徴とするエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料。
- オルガノゾルが、SiO2、Al2O3、Sb2O3、TiO2、SnO2およびZrO2から選ばれる少なくとも1種のオルガノゾルである請求項1に記載のポリエステル系絶縁塗料。
- プロピレンカーボネート中でポリエステル系樹脂の原料成分を加熱反応させて分子中にイミド環を有するポリエステル系樹脂を生成させ、得られたポリエステル系樹脂のプロピレンカーボネート溶液に請求項2に記載のオルガノゾルを配合することを特徴とするエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料の製造方法。
- 原料成分が、芳香族ジイミドジカルボン酸、これ以外の多価カルボン酸および多価アルコールである請求項3に記載のエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料の製造方法。
- 芳香族ジイミドジカルボン酸を、芳香族トリカルボン酸無水物と芳香族ジアミンとを用いて反応系中で生成させる請求項4に記載のエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料の製造方法。
- 請求項1に記載のエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料に、または請求項3に記載の方法で得られるエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料に、硬化剤および/または硬化触媒を混合してなることを特徴とするエナメル線用ポリエステル系絶縁塗料。
- 導体に請求項6に記載の絶縁塗料を塗布および焼き付けてなる絶縁皮膜を少なくとも有することを特徴とするエナメル線。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2006126755A1 (en) * | 2005-05-24 | 2006-11-30 | Ls Cable Ltd. | Polyester resin composition for covering material of cable and cable using the same |
CN109181503A (zh) * | 2018-08-01 | 2019-01-11 | 江苏恒兴制漆有限公司 | 一种可焊锡聚酯漆包线漆及其制作方法 |
-
2003
- 2003-02-13 JP JP2003035333A patent/JP2004244503A/ja active Pending
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