JP2004244455A - 常温アスファルト混合物およびその施工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の常温アスファルト混合物は,アスファルト化合物と,骨材と,ポリオールと,脂肪族3級アミンとをあらかじめ混合した常温アスファルト混合物であり,施工直前に,イソシアネートを混入して施工するものである。このため,イソシアネートを混入しない状態では長期に保管が可能であり,イソシアネートを混入すれば素早く硬化させることができる。さらに,脂肪族3級アミンはトリエチレンジアミンであり、ゼオライトをさらに含むことが望ましい。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,路面舗装用の常温アスファルト混合物およびその施工方法に関する。さらに詳細には,主として路面の部分的な復旧舗装に使用される速硬性の常温アスファルト混合物およびその施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より,車道などの道路の路面舗装用として,アスファルトに骨材等と各種の樹脂系強化剤を混合した常温アスファルト混合物が使用されている。これは,常温保存が可能で,常温で柔らかいのでそのまま施工できるものである。このような常温アスファルト混合物としては,一般に次のような性質が要求される。施工のためのほどよい可使時間(流動しない状態になるまでの時間)があり,施工終了後には速やかに硬化して短時間での交通開放が可能であり,硬化後の強度および耐久性が車両の通行に十分耐えるものであることである。さらには,施工に特殊な技術を必要とせず,製造が容易で長期保存が可能であればさらによい。
【0003】
アスファルトに混合される樹脂系強化剤としては,従来,(1)アクリル系,(2)エポキシ系,(3)ウレタン系の各種が知られている。それぞれの特徴を説明する。まず(1)アクリル系強化剤を使用する場合は,開粒(空隙の多い)常温アスファルト混合物を施工し,その上から,混合したアクリル系2液タイプの強化剤を散布して含浸させる。硬化速度が速く,硬化後の強度は高い。しかし,強化剤の散布含浸作業は煩雑であり,熟練を要する。(2)エポキシ系強化剤を使用する場合は,密粒(空隙の少ない)常温アスファルト混合物に2液強化剤の一方を予め混合したものを基礎常温混合物とする。そして,施工直前に2液強化剤の他方を混合して,その上で施工する。硬化後の強度は高いが,特に低温下での硬化速度が遅く,交通開放までに長時間を要する。
【0004】
これらに対し,(3)ウレタン系強化剤を使用したアスファルト混合物として,主剤のポリオールとイソシアネート系硬化剤とを反応させて製造したイソシアネート末端プレポリマーを混合した常温アスファルト混合物がある(例えば,特許文献1,特許文献2参照。)。このウレタン系強化剤を使用した常温アスファルト混合物は,硬化後の強度が高い。さらに,施工時に架橋材を混合すれば,低気温下においても硬化速度が速い常温アスファルト混合物となる。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−157343号公報
【特許文献2】
特開2001−72860号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,前記した従来のウレタン系強化剤を使用した常温アスファルト混合物は,空気中の水分と反応して,徐々に硬化が進行してしまう。そのため,長期保存が困難であった。また,製造時も乾燥気体雰囲気中で混合する必要があり,製造・保管のために特殊な設備が必要となるという問題点があった。
【0007】
本発明は,前記した従来の常温アスファルト混合物およびその施工方法が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,製造・保管および施工が容易であり,低温下でも硬化速度が速く,硬化後の強度や耐久性が高い常温アスファルト混合物およびその施工方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この課題の解決を目的としてなされた本発明に係る常温アスファルト混合物は,アスファルト化合物と,骨材とを含む常温アスファルト混合物であって,ポリオールと,脂肪族3級アミンとを含むものである。ここで,ポリオールは主剤であり,脂肪族3級アミンは硬化促進剤である。
【0009】
本発明の常温アスファルト混合物によれば,ポリオールと脂肪族3級アミンを含み,イソシアネートを含んでいないので,水分を含んでもウレタン化反応は起きない。従って,乾燥気体雰囲気中で製造する必要もなく,また通常の保管設備で長期間保管した場合でも柔らかい状態を保つことができる。さらには,施工前にこの常温アスファルト混合物にイソシアネートを混合すれば,ウレタン化反応により硬化させることができる。その際には,この混合物に脂肪族3級アミンを含んでいるので,低温下でも短時間で硬化する。従って,製造・保管および施工が容易であり,低温下でも硬化速度が速く,硬化後の強度や耐久性が高い常温アスファルト混合物となっている。
【0010】
また,本発明の常温アスファルト混合物においては,イソシアネートをさらに含むことが望ましい。また,脂肪族3級アミンは,トリエチレンジアミンであることが望ましい。また,ゼオライトをさらに含むことが望ましい。ここで,イソシアネートは硬化剤である。
このようにすれば,ポリオールとイソシアネートとによるウレタン化反応により高分子化合物が生成されて硬化する。さらに,トリエチレンジアミンは脂肪族3級アミンのうちでも引火点が高く使用しやすい。さらに,ゼオライトは,反応によって発生する炭酸ガスを吸着するので,生成物中に気泡ができることが防止される。
【0011】
また,本発明の常温アスファルト混合物の施工方法は,アスファルト化合物と,骨材とを含む常温アスファルト混合物の施工方法であって,アスファルト化合物と,骨材と,ポリオールと,アミン化合物とをあらかじめ混合した常温アスファルト混合物を用意しておき,常温アスファルト混合物にイソシアネートを混入して施工に供するものである。
この常温アスファルト混合物は,製造・保管が容易であり,長期間柔らかい状態を保つので,イソシアネートの混入は容易である。従って,この常温アスファルト混合物の施工方法によれば,現場で容易に施工できる。
【0012】
さらに,本発明の常温アスファルト混合物の施工方法では,アミン化合物の混合割合の異なる前記常温アスファルト混合物を複数種類用意しておき,施工条件に応じて選択して使用することが望ましい。
このようにすれば,施工現場の気温や環境に応じて適度な硬化速度の常温アスファルト混合物を選択できる。従って,適度な可使時間を得られ,さらに短時間での交通開放が可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下,本発明を具体化した実施の形態に係る常温アスファルト混合物について,詳細に説明する。
本実施の形態では,アスファルト,骨材,ゼオライト,ポリオール(主剤),アミン化合物(硬化促進剤)を常温で混合したものを基礎常温混合物として保管し,これに,施工時にイソシアネートを簡易に混合する。まず,常温アスファルト混合物の各成分について説明する。
【0014】
(1)アスファルト
アスファルトとしては,カットバックアスファルトを使用する。カットバックアスファルトは,通常のアスファルトと灯油,重油,潤滑廃油等との混合物である。その混合割合によりさまざまな柔らかさのものがある。
【0015】
(2)骨材
骨材は,一般的なものであり,砕石6号,7号および粗砂等を使用する。
(3)ゼオライト
ゼオライトは,イソシアネートと大気中などの水分との反応で発生する炭酸ガスを吸着するためのものである。この発生した炭酸ガスを混合物中に分散滞留させておくと,施工後の混合物の耐久性を低下させるからである。さらには,発生した炭酸ガスが舗装面を押し上げて膨らむことにより,施工面の平坦性を損なうという点でも好ましくない。これを防ぐため,ゼオライトを混合しておくことにより,発生した炭酸ガスを吸着させるのである。ゼオライトは,粗砂と同等の粒径3〜0.075mmの範囲内のものが好ましい。これ以上に粒度の粗いものは効果が低い。実際には,粗砂の配合量の一部を置き換える形で,配合量を決定する。
【0016】
(4)ポリオール(主剤)
ポリオールは,OH基を有する強化剤の主剤である。このポリオールとイソシアネートとの反応によってウレタン結合を有する合成高分子(ポリウレタン)が得られる。ポリオールとしては,耐候性に優れたポリエーテル系ポリオールが好ましい。中でも,低粘度と低価格との点で分子量300〜500程度のプロピレングリコールが好ましい。ポリオールの分子量がこの範囲を超えて大きいと,硬化前の混合物の柔らかさが阻害されるため,製造時の混合に難が生じる。一方,この範囲を超えて小さいと,硬化後の強度が低く舗装面の耐久性が阻害されるので好ましくない。
【0017】
(5)アミン化合物(硬化促進剤)
アミン化合物(硬化促進剤)は,ポリオールとイソシアネートとの硬化反応を促進させるための活性水素化合物である。硬化促進剤としては,反応速度の速い脂肪族3級アミンが好ましい。中でも,引火点が高いことからトリエチレンジアミンが好ましい。ポリオールとこの硬化促進剤とを混合しただけでは硬化反応は起きないので,混合した状態で常温で保存することができる。また,硬化促進剤の配合割合によって硬化反応の速度が異なるので,適度な可使時間および硬化時間を得られるように季節(外気温)によって配合割合を決定するとよい。
【0018】
(6)イソシアネート(硬化剤)
イソシアネートは,NCO基を有し,ポリオールのOH基と反応して硬化させる硬化剤である。イソシアネートとしては,粘度40〜100mPa・s/25℃のものが好ましく,低温下においても現場で容易に簡易混合可能となる。
【0019】
次に,このアスファルト混合物の製造方法について説明する。この製造方法は,2工程に分けられる。第1の工程は,製造工場で行われ,アスファルト,骨材,ゼオライト,ポリオール,硬化促進剤をそれぞれ適量混合して,基礎常温混合物を製造する工程である。この工程により,骨材とゼオライトの粒とが偏りなく混在し,それらの隙間がアスファルトとポリオールとによって充填された混合状態となる。この状態では,硬化反応は起こらず,空気中の水分とも反応しない。従って,一般的な保存状態で長期間にわたり保存可能である。
【0020】
次に,第2の工程は,施工現場で行われる。施工直前に,上記の基礎常温混合物と,適量のイソシアネートとを簡易に混合する工程である。この基礎常温混合物もイソシアネートもともに,常温において柔らかいので,混合は容易である。簡易混合したら,可使時間内に通常の方法で舗設施工する。
【0021】
次に,これらの各成分の配合比率について説明する。以下,ポリオール+硬化促進剤+イソシアネートの合計を,強化剤と呼ぶ。まず,強化剤/アスファルトの配合比率は,45wt%/55wt%〜50wt%/50wt%が好ましい。これより強化剤が少ないと,可使時間が長すぎ,さらに硬化後も十分な強度が得られない。
【0022】
また,強化剤中のポリオールとイソシアネートとの配合比率は,官能基当量比(OH基/NCO基比)1以下,特に0.81〜0.67が好ましい。これより大きくても小さくても,硬化速度が遅くなる。さらに一般に,NCO基の含有量の方がOH基より多い場合の反応における生成物の方が,逆の場合に比べて耐水性が高いので,この配合比率はこの点でも好ましい。
【0023】
次に,アスファルト混合物に混合する硬化促進剤の配合比率について説明する。前記したように,ポリオールとイソシアネートとの反応速度は温度に大きく依存する。低温下では,非常にゆっくりした反応となる。この硬化促進剤は,その反応を促進するものであり,少なすぎれば反応速度が低下し,交通開放までの時間が長くなる。一方,多すぎれば施工のための可使時間が短くなりすぎる。
【0024】
そこで,基礎常温混合物中の硬化促進剤の含有量の異なるものを数種類用意し,外袋に表示しておく。そして,季節ごと,あるいは,施工当日の気温や,施工箇所の環境,施工範囲の大きさ等を考慮して使い分ける。強化剤中の硬化促進剤の重量%は,例えば,以下の4種類を用意すればよい。気温30℃前後では1.0wt%,気温23℃前後では1.5wt%,気温16℃前後では2.0wt%,気温8℃前後では3.0wt%とすれば,いずれも可使時間が約10分となるので好ましい。
【0025】
【実施例】
以下,実施例により本発明をさらに具体的に説明する。以下の説明で配合比率の%は,すべて重量%を意味する。
【0026】
ここで使用した各原料は,以下の通りである。ゼオライトとしては,アクトゼオライト(天然ゼオライト)2号を使用し,粗砂の約10%分をこのゼオライトに振り替えて配合した。ポリオールとしては,分子量約400のサンニックス(三洋化成工業(株)製)を使用した。これは,ポリオキシプロピレングリコール100%である。イソシアネートとしては,ルプラネート(BASF・INOACポリウレタン(株)製)を使用した。これは,ジフェニールメタンジイソシアネートを42%含有している。
【0027】
これらの配合比率は,以下のように設定した。アスファルト混合物全体に対する(アスファルト+強化剤)の割合は,5.5%とした。これ以外は,骨材およびフィラーであり,そのうち,粗砂の10%はゼオライトに振り替えた。また,アスファルトと強化剤との配合比率は,アスファルト55%に対して強化剤45%とした。
【0028】
次に,強化剤中の各原料の配合比率は,以下のように設定した。上記のように,主剤としてサンニックスを,硬化剤としてルプラネートを,それぞれ使用した場合,主剤60%/硬化剤40%のときに官能基(OH基とNCO基)はおよそ当量となり,官能基比=1となる。これに対し,主剤50%/硬化剤50%では,官能基比=約0.67であり,主剤55%/硬化剤45%では,官能基比=約0.81である。この範囲内が好ましい比率であり,硬化速度が速く,耐水性の高い反応生成物が得られる。ここでは,主剤50%/硬化剤50%を採用した。さらに,強化剤中の硬化促進剤の割合は,上記のように4種類のものを用意した。従って,強化剤中の各原料の配合比率は以下の表の4種類となった。
【0029】
【表1】
【0030】
このように配合して製造したアスファルト混合物について諸物性を測定した結果は,以下の表のようになった。ここで,4種類の各常温アスファルト混合物は,それぞれ対応する気温下で施工した結果を示している。
【0031】
【表2】
【0032】
この結果において,本発明の実施例の可使時間はいずれも10分程度であった。これは,一般的な施工が十分に可能な時間であり,長すぎることもない適度な可使時間である。さらには,4種類のいずれにおいても,成型1時間後には交通開放に必要なマーシャル安定度500kg以上を達成した。また,成型1日後の性状はいずれも通常の加熱混合物以上の優れた特性を示した。このことから,本発明の実施例に係る常温アスファルト混合物は,硬化速度が速く,硬化後の強度は十分であるといえる。
【0033】
以上詳細に説明したように,本実施の形態の常温アスファルト混合物およびその施工方法によれば,アスファルトにポリオールと硬化促進剤のみを混合しておくことにより,常温での長期保存が可能である。さらには,施工現場でイソシアネートを簡易に混合することにより,急速に硬化が進行する。従って,製造・保管および施工が容易であり,低温下でも硬化速度が速く,硬化後の強度や耐久性が高い常温アスファルト混合物およびその施工方法が実現されている。
【0034】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
【0035】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば,製造・保管および施工が容易であり,低温下でも硬化速度が速く,硬化後の強度や耐久性が高い常温アスファルト混合物およびその施工方法が提供されている。
Claims (6)
- アスファルト化合物と,骨材とを含む常温アスファルト混合物において,
ポリオールと,
脂肪族3級アミンとを含むことを特徴とする常温アスファルト混合物。 - 請求項1に記載する常温アスファルト混合物において,
イソシアネートをさらに含むことを特徴とする常温アスファルト混合物。 - 請求項1または請求項2に記載する常温アスファルト混合物において,
脂肪族3級アミンは,トリエチレンジアミンであることを特徴とする常温アスファルト混合物。 - 請求項1から請求項3に記載する常温アスファルト混合物において,
ゼオライトをさらに含むことを特徴とする常温アスファルト混合物。 - アスファルト化合物と,骨材とを含む常温アスファルト混合物の施工方法において,
アスファルト化合物と,骨材と,ポリオールと,アミン化合物とをあらかじめ混合した常温アスファルト混合物を用意しておき,
前記常温アスファルト混合物にイソシアネートを混入して施工に供することを特徴とする常温アスファルト混合物の施工方法。 - 請求項5に記載する常温アスファルト混合物の施工方法において,
アミン化合物の混合割合の異なる前記常温アスファルト混合物を複数種類用意しておき,施工条件に応じて選択して使用することを特徴とする常温アスファルト混合物の施工方法。
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