JP2004243222A - 水の浄化剤、浄化方法および金属の回収方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】重金属等および/または有機化合物等の汚染物質を含む排水の無害化に好適な浄化剤と浄化方法、および金属の回収方法を提供する。
【解決手段】金属鉄と、酸化鉄と、水酸化カルシウムや酸化カルシウムのようなカルシウム化合物とを含み、鉄の総質量が60質量%以上である浄化剤で、重金属や有機化合物等を含有する排水、特に、最終処分場から流れ出る浸出水をこの浄化剤に接触させ(例えば、前記浄化剤を充填した処理槽に排水を導入し、滞留させる)、浄化する。重金属が固定化された前記浄化剤から重金属を回収することができる。
【選択図】なし
【解決手段】金属鉄と、酸化鉄と、水酸化カルシウムや酸化カルシウムのようなカルシウム化合物とを含み、鉄の総質量が60質量%以上である浄化剤で、重金属や有機化合物等を含有する排水、特に、最終処分場から流れ出る浸出水をこの浄化剤に接触させ(例えば、前記浄化剤を充填した処理槽に排水を導入し、滞留させる)、浄化する。重金属が固定化された前記浄化剤から重金属を回収することができる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、水の浄化剤、特に、最終処分場から浸出する重金属や有機化合物を含む浸出水の浄化に好適な浄化剤と浄化方法、および前記浄化剤に固定化された金属の回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみ、産業廃棄物などの固形の廃棄物は、必要に応じ、破砕、圧縮、焼却その他の処理を施された後、最終処分場に埋立処分されている。
【0003】
最終処分場に持ち込まれる廃棄物は、持ち込み当初においては、「有害な産業廃棄物に係る判定基準を定める総理府令(昭和48年総理府令第5号)」で定められている判定基準(所定の溶出試験における溶出許容量)を満足する不溶性の安定した廃棄物(不溶性廃棄物)である。しかし、時間の経過とともに、6価クロムなどの有害重金属類や有機化合物などの汚染物質が溶出してくるおそれがあり、最終処分場からこれら汚染物質が浸出するという事態になれば、重大な社会問題となる。
【0004】
不溶性廃棄物の可溶化については、例えば、非特許文献1によれば、以下の(1)〜(5)の機構が示されている。
(1)腐敗性有機物の埋立処分により、有機酸が発生し、この有機酸が不溶な金属水酸化物等を可溶化する。
(2)有機物の腐敗によって発生した硫化水素やアンモニアにより、不溶な金属水酸化物等がアンモニア錯体や多硫化錯体に変化し、可溶化する。
(3)高濃度塩化ナトリウムにより、クロロ錯体が合成され、可溶化する。
(4)炭酸ガスにより、重炭酸塩が合成され、可溶化する。
(5)微生物の作用により、硫化物が硫酸塩に変化し、可溶化する。
【0005】
最終処分場では、これらの複雑な反応が単独でまたは並行して進行し、有害重金属類や有機化合物などの汚染物質が溶出してくる可能性があるため、最終処分場から徐々に流れ出してくる「浸出水」をそのまま放流することはできず、常にその性状を監視し、必要に応じて無害化処理する必要があった。
【0006】
前記汚染物質の無害化処理方法の一つとして、重金属を含む排水に硫酸鉄と水酸化ナトリウムの混合物を添加して、60℃以上に加熱し、溶解している各種の重金属イオンを固体のフェライトとして回収するフェライト化処理が知られており、重金属含有排水の処理方法として多用されている。この場合、含まれている重金属の種類が特定できるフェライトが回収されるのであれば、磁性材料等に使用できる可能性があるが、前記の回収されるフェライトに含まれる重金属は、埋立処分場からの浸出水に含まれる重金属であってその種類や濃度が特定できないため、この回収フェライトは再び廃棄物として処分される。
【0007】
一方、微粉状の金属鉄粉が、重金属類や、有機ハロゲン化合物、難分解性有機化合物等の有機化合物で汚染された土壌、地下水など、広い意味での「環境」を浄化する作用を有しているため、環境浄化用材料として注目されている。例えば、特許文献1では、難分解性有機化合物を含有する水を金属鉄粉で還元、浄化する方法が提案されており、特許文献2では、有機ハロゲン化合物で汚染された水を活性炭と金属鉄のヤスリ屑からなる混合物に通すことにより、前記汚染水を浄化する方法が提案されている。また、特許文献3では、金属鉄粉が、6価クロム、カドミウム、鉛、セレン、砒素などの除去に適用可能であることが報告されている。
【0008】
このような金属鉄粉の環境浄化作用は、次に述べるように、金属鉄の酸化とそれに伴う汚染物質(有機化合物や重金属類等)の還元によるものである。
【0009】
一般に、金属鉄の水の存在下における腐食反応は以下のように進行する。
【0010】
【化1】
前記の▲1▼式および▲2▼式は、それぞれ、酸化によりFeが溶解する反応および水中の溶存酸素が還元される反応であり、▲3▼式は溶解したFeが水酸化物を形成する反応、▲4▼式は、Feの水酸化物がさらに酸化されて、いわゆるさび(FeOOH)を形成する反応である。
【0011】
これらの反応の中で 、▲2▼式に代わって、以下に述べる▲5▼式または▲6▼式の反応が進行することにより、土壌および/または地下水(土壌や地下水、またはそれらが混ざり合った泥土や泥水をいう)に含まれる有害重金属類や有機化合物などの汚染物質が浄化される。なお、ここでいう「地下水」とは、通常、地下水といわれているものの他、地表面下にある水をいう。
【0012】
例えば、前記の有機化合物として、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、ヘキサクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、cis−1,2−ジクロロエチレン、trans−1,2−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、塩化ビニル、1,2,3−トリクロルプロパン、1,2−ジクロロプロパン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、へキサクロロブタジエン、1,2−ジブロモエタン、フロン113、N−ニトロソジメチルアミン等があげられるが、それらを代表して有機塩素化合物をとり、RCl(Rはアルキル基を表す)で示すと、▲5▼式に従い、土壌および/または地下水中の有機塩素化合物(RCl)が還元され、分解される。
【0013】
RCl+H++2e− →RH+Cl− ・・・▲5▼
また、重金属類としては、6価クロム、ニッケル、鉛、ウラン、テクネチウム、鉄、マンガン、銅、コバルト、砒素、カドミウム、セレン、亜鉛、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ヒ酸イオン等があげられるが、それらを代表して重金属イオンを6価クロムイオンで示すと、▲6▼式が進行して、6価クロムイオンが3価に還元され、金属鉄粉上に固定される。
【0014】
CrO4 2−+4H++3e− →Cr(OH)3+OH− ・・・▲6▼
このように、金属鉄粉は重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌および/または地下水の浄化に有用である。
【0015】
しかし、最終処分場から流れ出る浸出水の浄化に金属鉄粉を用いる場合には、溶解した2価の鉄イオンが酸化されて赤水を発生し、さらに、水質汚濁に係わる環境基準を達成するために設定された排水基準(例えば、「溶解性鉄」についての排水基準(10mg/l以下)を超過する等の問題が発生する。そのため、アルカリ水を用いる凝集沈殿装置を新たに設置する等の設備投資が必要となる。
【0016】
また、前述した排水に含まれる重金属イオンをフェライトとして回収するフェライト化処理方法を浸出水の浄化に用いようとすると、浸出水の性状、特に重金属イオンの含有量を常時監視して、その量に見合う硫酸鉄と水酸化ナトリウムを加える必要があり、適用は難しい。
【0017】
そのため、最終処分場から流れ出る浸出水に含まれる汚染物質中の重金属は、処理された後、再び廃棄物として埋め戻すことが行われていた。しかし、重金属は貴重な資源であり、前記浸出水から回収する技術の開発が望まれる。
【0018】
【特許文献1】
特開昭64−27690号公報
【特許文献2】
特表平6−506631号公報
【特許文献3】
特開平11−336060号公報
【非特許文献1】
村田徳治著「廃棄物のやさしい化学 第III卷(廃酸、廃アルカリ、汚泥の巻)」株式会社日報(1999.6.21出版)155頁
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の実状に鑑みなされたもので、その目的は、水の浄化剤、特に、重金属および/または有機化合物、その他の汚染物質が混入して最終処分場から流れ出してくる水(以下、「浸出水」という)等の排水の無害化に好適な浄化剤とそれを用いる浄化方法、および前記浄化剤に固定化された金属の回収方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討を重ねた結果、一般ごみをガス化溶融炉で処理して発生した飛灰から浸出させた水や、重金属等を含む模擬汚染水(これらを、「汚染水」という)に、金属鉄、酸化鉄およびカルシウム化合物を含む鉄系化合物を接触させることにより、それら汚染水中の重金属等を前記鉄系化合物に選択的に固定化でき、汚染水を浄化できることを見出した。さらに、この重金属等が固定化された鉄系化合物(この鉄系化合物を、以下、「浄化剤」という)を還元的に加熱することにより、亜鉛等の有用金属を回収できることを見出した。
【0021】
本発明は、このような知見に基づいてなされたもので、その要旨は、下記(1)の浄化剤、(2)のその浄化剤を用いる水の浄化方法、および(3)のその排水に含まれる金属の回収方法にある。
【0022】
(1)金属鉄と、酸化鉄と、カルシウム化合物とを含み、鉄の総質量が60質量%以上である浄化剤。
【0023】
(2)浄化しようとする水と、前記(1)に記載の浄化剤とを接触させる排水の浄化方法。
【0024】
なお、環境省環境管理局水環境部発行の「平成12年度土壌汚染調査・対象事例及び対応状況に関する調査結果の概要」における定義と同様に、鉛、クロム、亜鉛など、密度が比較的大きく一般に重金属と称される金属だけでなく、砒素、フッ素、ホウ素、シアン等の有害な元素などを総称して「重金属等」といい、「浄化しようとする水」とは、このような重金属等や、前述した有機塩素化合物などのように処理が困難で有害な有機化合物等を含有する水をいう。
【0025】
浄化しようとする水が、鉛、クロム、亜鉛、鉄、銅、カドミウム、セレン等の重金属、砒素、フッ素、ホウ素、シアンなどの有害な元素、有機化合物(有機塩素化合物など)のうちの1種以上を含むものである場合、本発明の浄化方法は特に効果的である。
【0026】
また、前記(1)に記載の浄化剤とともに可溶性の鉄塩を使用すれば、浸出水が高濃度の重金属等を含有する場合等においても、無害化が可能である。なお、「可溶性の鉄塩」とは、硫酸鉄、塩化鉄等の、溶解度が比較的大きく、重金属等のフェライト化に必要な鉄イオンを十分に供給できる鉄化合物を指す。
【0027】
(3)浄化しようとする水と、前記(1)に記載の浄化剤とを接触させることにより金属が固定化された浄化剤から前記金属を分離する金属の回収方法。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明(上記(1)の浄化剤、(2)の水の浄化方法、および(3)の金属の回収方法)について詳細に説明する。
【0029】
上記(1)の浄化剤は、金属鉄と、酸化鉄と、カルシウム化合物とを含み、鉄の総質量が60質量%以上である鉄系化合物からなる浄化剤である。
【0030】
この浄化剤の重金属等との反応は、基本的にはフェライト化反応と、金属鉄による酸化・還元反応、カルシウムによる不溶化反応が並行的に進行する反応である。
【0031】
先に述べた、排水に含まれる重金属イオンをフェライトとして回収する従来のフェライト化処理では、排水に対して、硫酸鉄と水酸化ナトリウムの混合物を、2NaOH/FeSO4(モル比)=1となるように添加し、60℃以上に保持すると、下記の▲7▼式および▲8▼式(これらの式で、Mは鉄以外の重金属を表す)の反応が進行する。
【0032】
(3−x)Fe2++xM2++6OH−→ Fe3−xMx(OH)6 ・・▲7▼
Fe3−xMx(OH)6+O2→ MxFe3−xO4 ・・・▲8▼
本発明の浄化剤では、前記の▲7▼式の反応に関与する鉄イオンの供給源として、硫酸鉄の代わりに金属鉄が用いられる。また、水酸イオンの供給源として、水酸化ナトリウムの代わりに、水の存在下で水酸イオンをわずかずつ供給し得る水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム化合物が用いられる。
【0033】
これは、排水のフェライト化処理では、多量の排水を対象として、前記▲7▼式、▲8▼式の反応を進行させるために、重金属イオンの含有量に見合う所定量の硫酸鉄と水酸化ナトリウムを添加し、加温して、急速に処理する必要があるが、本発明で処理しようとしている水、例えば浸出水の場合は、後述するように、ある程度時間をかけて緩慢に処理することが、マグネタイトの結晶成長を促進させる上で望ましいからである。すなわち、金属鉄や前記のカルシウム化合物を用いると、鉄イオンは金属鉄の溶解反応により、また、水酸イオンは溶解度が小さいカルシウム化合物により、わずかずつ供給されるので、フェライト化反応が徐々に進行して、重金属等が浄化剤に固定化される。
【0034】
この浄化剤において、金属鉄とカルシウム化合物に加えて酸化鉄を含有させるのは、酸化鉄が含まれることにより、浄化剤の固定化能力(鉛や6価クロムをフェライトとして固定化させる能力)が向上するからである。含有させる酸化鉄としては、マグネタイトが望ましい。マグネタイトを浄化剤に混合することにより、重金属等のイオンと鉄イオンからフェライトを生成させる反応を常温でも顕著に進行させることができる。
【0035】
本発明の浄化剤は、カルシウム化合物が共存することにより、金属鉄の溶解反応よりも卑な金属鉄の水酸イオンによる酸化反応を進行させることができる。その結果、金属鉄の溶解反応よりも卑な還元反応を行わせることができるので、還元・無害化できる有害元素の種類が増加する。
【0036】
金属鉄とカルシウム化合物の混合比は、金属鉄/カルシウム化合物のモル比で1以上が好ましい。これは、カルシウムは溶解度が小さく、しかもこの反応では金属鉄とカルシウム化合物とが系内に存在することにより、カルシウムが触媒的に作用して反応が進行するので、それに必要な量以上のカルシウム化合物を混合する必要はないからである。
【0037】
一方、酸化鉄の混合比率は、浄化剤の全体量に対して10質量%未満であるのが望ましい。酸化鉄の含有量が10質量%以上になると、重金属等を鉄系化合物表面に吸着することはできても、フェライトとして浄化剤に固定化することができにくくなるからである。
【0038】
この浄化剤は、一般的には、金属鉄、酸化鉄および前記のカルシウム化合物を前記所定の条件および次に述べる条件(鉄の総質量が60質量%以上)を満たすように混合することによって得られる。その場合の粒径は、特に限定されないが、取扱いが容易で、鉄イオンや水酸イオンがわずかずつ持続して供給されるように、0.01〜10mm程度であるのが好ましい。
【0039】
また、製鉄所等で発生する鉄系のダストを前記のカルシウム化合物とともに溶融・還元して成形された還元鉄を用いることもできる。この還元鉄は、金属鉄、酸化鉄およびカルシウム化合物が混合した状態で成形されており、適度な粒径を有しているので、本発明で使用する浄化剤として特に好適である。
【0040】
本発明の浄化剤において、鉄の総質量(すなわち、金属鉄と、鉄量に換算した酸化鉄との合計量)が60質量%以上であることとするのは、例えば、酸化鉄が比較的多量に含まれること等により、鉄の総質量が60質量%未満である場合は、フェライト化反応に必要な鉄イオンの供給が確保できず、重金属等のフェライトとしての固定化ができにくくなるからである。また、後述するように、固定化された金属を回収した後の浄化剤(つまり、鉄系化合物)を高炉の鉄源として再利用する場合、鉄の含有量が少なく、再利用に際しての制約になることもあるからである。
【0041】
この浄化剤の重金属等との反応は、前述したように基本的にはフェライト化反応、金属鉄の酸化・還元反応、カルシウムによる不溶化反応であるが、有機化合物との反応は、前記の▲5▼式により例示した還元反応で、有機塩素化合物等の有機化合物、硝酸性窒素やシアン等の還元されやすい汚染物質はこの反応によって分解、無害化される。
【0042】
上記(2)の水の浄化方法は、汚染物質を含有し、浄化しようとする水に、前記本発明の浄化剤を接触させる水の浄化方法である。
【0043】
前記の浄化剤を接触させる形態に、特に限定はない。
【0044】
最終処分場(以下、「最終処分場」と呼称される場所のみではなく、都市ごみ、産業廃棄物などの固形の廃棄物を埋立処分した場所をいう)で発生する浸出水を浄化する場合を例にとると、例えば、最終処分場の一隅に浄化剤が充填された処理槽を設置しておき、この処理槽に浸出水を供給し、適当な時間滞留させ、前記のフェライト化反応を進行させて重金属等を固定化すればよい。実際には、調整池を数個設けて、連続的に、あるいはバッチ式で処理するのが、簡便かつコスト的にも有利である。
【0045】
前記の滞留時間は1週間以上とするのが望ましい。1週間に満たないと、前記のフェライト化反応が十分に進行せず、重金属等の固定化が不十分で、排水規制を満足できないことが多いからである。
【0046】
本発明の浄化方法において浄化の対象となる水は、重金属等の有害な元素を含有する水、有機化合物を含有する水、またはその両方(重金属等および有機化合物)を含有する水である。もちろん重金属等や有機化合物以外の汚染物質が含まれていてもよい。また、種々の排水のほか、排水前のものであってもよく、前述した最終処分場からの浸出水などのように、さまざまな態様の水に適用することができる。重金属等や難分解性の有機化合物で汚染された地下水の浄化に使用しても同様の浄化効果を得ることができる。
【0047】
前記の浄化しようとする水が、鉛、クロム、亜鉛、鉄、銅、カドミウム、セレン等の重金属、砒素、フッ素、ホウ素、シアンなどの有害な元素のうちの1種以上を含むものであれば、本発明の浄化方法によって、これら汚染物質を効果的に固定化し、または還元、無害化することができる。また、先に挙げた有機塩素化合物(RCl)などの、処理が困難で有害な有機化合物を含有するものであっても、本発明の浄化方法は有効で、効果的に還元、分解することができる。
【0048】
本発明の浄化方法で処理しようとする水(例えば、前記の浸出水)が高濃度の重金属等を含有する場合、あるいは、重金属等を含む排水が多量の場合には、本発明の浄化剤における金属鉄からの溶出のみでは鉄イオンの供給が間に合わないことがある。その場合は、本発明の浄化剤に、必要に応じて、従来のフェライト化処理で用いる硫酸鉄や、塩化鉄、硝酸鉄等の可溶性の鉄塩を添加する方法を採ることも可能である。さらに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリおよび/またはアルカリ土類の水酸化物を添加し、60℃以上に加熱してもよい。鉄イオンや、水酸イオンが十分に供給されるので、高濃度の重金属等のイオンはそれらと反応してフェライトを生成し、重金属等のイオンの状態で排出されることはない。
【0049】
上記(3)の金属の回収方法は、金属含有排水と前記本発明の浄化剤とが接触することにより金属が固定化された浄化剤から前記金属を分離する金属の回収方法である。
【0050】
金属を回収する方法としては、例えば、重金属等が固定化された浄化剤を還元的に加熱することにより、回収しようとする重金属等を気化させる方法を採ることができる。なお、「還元的に加熱する」とは、雰囲気中の酸素含有量が少なく、前記の気化させた重金属等の酸化が起こらない程度の還元性雰囲気中で加熱することを意味する。加熱温度は、特に限定されず、回収しようとする重金属等を気化させるために必要な温度以上であればよい。
【0051】
この方法によって、亜鉛を金属亜鉛として回収することができる。金属亜鉛は酸化され易いので、最終的には酸化亜鉛として回収される。また、亜鉛よりも沸点の低い重金属(例えば、カドミウム)、あるいは、沸点は高くても、亜鉛の沸点(907℃)の近傍の温度域で高い蒸気圧を有する重金属(例えば、鉛)を回収することが可能である。
【0052】
最終処分場で発生する浸出水を対象として重金属を回収する場合を例にとって説明すると、まず、重金属含有排水に本発明の浄化剤を接触させ、重金属が固定化された浄化剤を処理槽(または、調整池等)から取り出し、乾燥する。その際に、浄化剤と酸素との接触が充分になされて、前記の▲8▼式の反応が促進され、フェライト化反応が終了する。この浄化剤を、1000℃以上で還元的に加熱することにより、亜鉛、カドミウム、鉛等の重金属をそれぞれ金属の状態で回収することができる。
【0053】
前記の亜鉛、カドミウム、鉛等の重金属を回収した後の浄化剤は、鉄の総質量が60質量%以上の鉄系化合物なので、鉄源としての利用が可能であり、例えば、製鉄原料として高炉へ装入し再利用することができる。この場合、回収できない重金属は銑鉄への夾雑物になると考えられるが、微量であるため問題にはならない。なお、重金属を回収した後の浄化剤を製鉄原料として再利用する場合は、回収が容易な前記の亜鉛を完全に除去し、これら以外の重金属もできるだけ除去するために、回収時の加熱温度を1300℃以上とするのが望ましい。
【0054】
【実施例】
(実施例1)
製鉄所で発生したダスト類をロータリーキルン方式の還元ペレット製造装置で焼結した鉄系化合物を浄化剤として使用し、一般ごみをガス化溶融炉で処理して発生した飛灰に水を加え、浸出した液の浄化試験を行った。
【0055】
還元ペレット製造装置において、還元ガスには、不完全燃焼で発生した燃焼排ガスを用い、焼結する間、還元ペレット製造装置の中心温度を1350℃に制御した。得られた鉄系化合物(浄化剤)の主な性状を表1に示す。
【0056】
【表1】
表2に前記の飛灰の分析結果を、また、表3に、この飛灰にその10倍量(質量)の水を加え、浸出した液の分析結果を示す。
【0057】
【表2】
【表3】
前記の浸出液に含まれる各成分(元素)の中で、排水基準を超過しているのは鉛である。また、超過する可能性がある重金属としては、カドミウムおよび亜鉛が挙げられる。
【0058】
この浸出液100mlに、表1に示した浄化剤5gを加え、1日攪拌した。その結果、浸出液中の鉛濃度は、排水基準値である「0.1mg/l未満」を満たす程度にまで低下した。
【0059】
(実施例2)
実施例1で使用したものと同じ鉄系化合物を浄化剤として用い、同じく実施例1で使用したものと同じ飛灰に塩酸水を加えて調製した浸出液の浄化試験を行った。
【0060】
試験では、前記の飛灰に塩酸水を加え、種々のpHを有する浸出液を調製し、これらの浸出液に前記浄化剤5gを加え、1日攪拌した。
【0061】
浸出液のpHと鉛濃度の関係を図1に、浸出液のpHと亜鉛濃度の関係を図2に、また、浸出液のpHとカドミウム濃度の関係を図3にそれぞれ示す。これらの図において、○印は浄化剤を加える前の鉛、亜鉛、またはカドミウムの濃度であり、●印は浄化剤を加えた後の鉛、亜鉛、またはカドミウムの濃度である。また、図中に示した横軸に平行な太い実線は、それぞれ排水基準を表す。
【0062】
図1〜図3に示したように、pH、および浄化剤を加える前の重金属の濃度によって多少の差はあるが、鉛、亜鉛、カドミウムのいずれの場合にも、浄化剤と接触させることにより浸出液中の重金属濃度の低下が認められた。
【0063】
(実施例3)
実施例1で使用したものと同じ鉄系化合物を浄化剤として用い、蒸留水に硝酸鉄(III)を加えて調製した模擬汚染水の浄化試験を行った。
【0064】
試験では、蒸留水100mlに硝酸鉄(9水和物)約220mgを加え、鉄濃度60mg/lの模擬汚染水を調製し、この模擬汚染水に前記浄化剤20gを加え、1日攪拌した後、ろ過して、ろ液(これを「浄化水」という)と浄化剤に分離した。さらに、この浄化剤にその10倍量(質量)の蒸留水を加えた(この操作により得られる液を「浸出液」という)。
【0065】
前記の浄化水および浸出液の鉄濃度は、それぞれ0.09mg/lおよび0.11mg/lと、いずれも微量であり、模擬汚染水(原水)中の鉄イオンが浄化剤によって除去(浄化)され、しかも浄化剤に固定化されていることが確認された。
【0066】
(実施例4)
実施例1で使用したものと同じ鉄系化合物を浄化剤として用い、蒸留水に塩化鉄(II)またはクエン酸鉄(III)を加えて調製した鉄の模擬汚染水、および、蒸留水に塩化鉛またはクエン酸鉛を加えて調製した鉛の模擬汚染水の浄化試験を行った。
【0067】
試験方法は実施例3の場合と同様で、それぞれの模擬汚染水について、「浄化水」と「浸出液」を得た。
【0068】
前記の浄化水および浸出液の鉄濃度、鉛濃度を、模擬汚染水(原水)中のそれらの濃度と併せて表4に示す。
【0069】
【表4】
表4に示した結果から、実施例3の場合と同様に、模擬汚染水(原水)中の鉄や鉛が浄化剤によって除去され、しかも浄化剤に固定化されていることが確認された。
【0070】
(実施例5)
実施例1で使用したものと同じ鉄系化合物(本発明の浄化剤)に、さらに塩化鉄(II)または硝酸鉄を加えたものを浄化剤として用い、蒸留水にクエン酸鉛または塩化鉛を加えて調製した模擬汚染水の浄化試験を行った。これは、例えば、最終処分地からの浸出水が高濃度の重金属を含有する場合を想定した試験である。
【0071】
本発明の浄化剤にさらに塩化鉄(II)を加えたものを浄化剤として用い、蒸留水に塩化鉛を加えて調製した模擬汚染水を浄化する場合を例にとると、まず、塩化鉛0.28gを蒸留水30mlに溶解して、鉛の模擬汚染水を調製し、この模擬汚染水に前記浄化剤3gと塩化鉄(II)(4水和物)0.40gを加えた。その後、1週間風乾して、水を蒸発させた。この浄化剤にその10倍量の蒸留水を加え、24時間攪拌し、「浸出液」を得、この浸出液の鉛濃度を測定した。なお、本発明の浄化剤にさらに前記の硝酸鉄を加えた場合、鉛の模擬汚染水の調製にクエン酸鉛を用いた場合も、同様の操作を行った。
【0072】
表5に、浸出液の鉛濃度の測定結果を示す。同表には、用いた鉛塩や鉄塩の量も併せて示した。表5のケース1が、前記の例にあげて説明した、本発明の浄化剤にさらに塩化鉄(II)を加え、鉛の模擬汚染水の調製に塩化鉛を用いた場合である。
【0073】
【表5】
表5に示した結果から明らかなように、用いた鉛塩や鉄塩に関係なく、浸出液の鉛濃度は微量であり、溶解した鉛の大部分が浄化剤に固定化されていることが認められた。
【0074】
(実施例6)
酸化鉛、砒酸カリウム、重クロム酸カリウム、硝酸カドミウム、青酸カリウム、フッ化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化水銀およびセレン酸ナトリウムを用いて、汚染物質の濃度が環境基準値の10倍の汚染水をそれぞれ調製した。なお、「検出されないこと」が基準とされているシアンについては、0.1mg/lの濃度の汚染水とした。
【0075】
それぞれの汚染水について、汚染水20mlと実施例1で使用したものと同じ鉄系化合物(本発明の浄化剤)5gを30mlのスクリュウ管に入れ、24時間振とうした後、汚染物質の濃度を測定したところ、いずれも環境基準値以下に減少していることが認められた。
【0076】
【発明の効果】
本発明の浄化剤を用いれば、水、排水、特に、最終処分場から浸出する重金属等や有機化合物などを含む浸出水を、簡便な方法で容易に浄化することができる。この場合、複数の重金属イオンが共存する浸出液に対しても有効である。浄化処理の際、重金属は浄化剤に固定化されるので、その重金属を回収することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般ごみをガス化溶融炉で処理した飛灰の塩酸水による浸出液のpHと鉛濃度の関係を示す図である。
【図2】一般ごみをガス化溶融炉で処理した飛灰の塩酸水による浸出液のpHと亜鉛濃度の関係を示す図である。
【図3】一般ごみをガス化溶融炉で処理した飛灰の塩酸水による浸出液のpHとカドミウム濃度の関係を示す図である。
【産業上の利用分野】
本発明は、水の浄化剤、特に、最終処分場から浸出する重金属や有機化合物を含む浸出水の浄化に好適な浄化剤と浄化方法、および前記浄化剤に固定化された金属の回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみ、産業廃棄物などの固形の廃棄物は、必要に応じ、破砕、圧縮、焼却その他の処理を施された後、最終処分場に埋立処分されている。
【0003】
最終処分場に持ち込まれる廃棄物は、持ち込み当初においては、「有害な産業廃棄物に係る判定基準を定める総理府令(昭和48年総理府令第5号)」で定められている判定基準(所定の溶出試験における溶出許容量)を満足する不溶性の安定した廃棄物(不溶性廃棄物)である。しかし、時間の経過とともに、6価クロムなどの有害重金属類や有機化合物などの汚染物質が溶出してくるおそれがあり、最終処分場からこれら汚染物質が浸出するという事態になれば、重大な社会問題となる。
【0004】
不溶性廃棄物の可溶化については、例えば、非特許文献1によれば、以下の(1)〜(5)の機構が示されている。
(1)腐敗性有機物の埋立処分により、有機酸が発生し、この有機酸が不溶な金属水酸化物等を可溶化する。
(2)有機物の腐敗によって発生した硫化水素やアンモニアにより、不溶な金属水酸化物等がアンモニア錯体や多硫化錯体に変化し、可溶化する。
(3)高濃度塩化ナトリウムにより、クロロ錯体が合成され、可溶化する。
(4)炭酸ガスにより、重炭酸塩が合成され、可溶化する。
(5)微生物の作用により、硫化物が硫酸塩に変化し、可溶化する。
【0005】
最終処分場では、これらの複雑な反応が単独でまたは並行して進行し、有害重金属類や有機化合物などの汚染物質が溶出してくる可能性があるため、最終処分場から徐々に流れ出してくる「浸出水」をそのまま放流することはできず、常にその性状を監視し、必要に応じて無害化処理する必要があった。
【0006】
前記汚染物質の無害化処理方法の一つとして、重金属を含む排水に硫酸鉄と水酸化ナトリウムの混合物を添加して、60℃以上に加熱し、溶解している各種の重金属イオンを固体のフェライトとして回収するフェライト化処理が知られており、重金属含有排水の処理方法として多用されている。この場合、含まれている重金属の種類が特定できるフェライトが回収されるのであれば、磁性材料等に使用できる可能性があるが、前記の回収されるフェライトに含まれる重金属は、埋立処分場からの浸出水に含まれる重金属であってその種類や濃度が特定できないため、この回収フェライトは再び廃棄物として処分される。
【0007】
一方、微粉状の金属鉄粉が、重金属類や、有機ハロゲン化合物、難分解性有機化合物等の有機化合物で汚染された土壌、地下水など、広い意味での「環境」を浄化する作用を有しているため、環境浄化用材料として注目されている。例えば、特許文献1では、難分解性有機化合物を含有する水を金属鉄粉で還元、浄化する方法が提案されており、特許文献2では、有機ハロゲン化合物で汚染された水を活性炭と金属鉄のヤスリ屑からなる混合物に通すことにより、前記汚染水を浄化する方法が提案されている。また、特許文献3では、金属鉄粉が、6価クロム、カドミウム、鉛、セレン、砒素などの除去に適用可能であることが報告されている。
【0008】
このような金属鉄粉の環境浄化作用は、次に述べるように、金属鉄の酸化とそれに伴う汚染物質(有機化合物や重金属類等)の還元によるものである。
【0009】
一般に、金属鉄の水の存在下における腐食反応は以下のように進行する。
【0010】
【化1】
前記の▲1▼式および▲2▼式は、それぞれ、酸化によりFeが溶解する反応および水中の溶存酸素が還元される反応であり、▲3▼式は溶解したFeが水酸化物を形成する反応、▲4▼式は、Feの水酸化物がさらに酸化されて、いわゆるさび(FeOOH)を形成する反応である。
【0011】
これらの反応の中で 、▲2▼式に代わって、以下に述べる▲5▼式または▲6▼式の反応が進行することにより、土壌および/または地下水(土壌や地下水、またはそれらが混ざり合った泥土や泥水をいう)に含まれる有害重金属類や有機化合物などの汚染物質が浄化される。なお、ここでいう「地下水」とは、通常、地下水といわれているものの他、地表面下にある水をいう。
【0012】
例えば、前記の有機化合物として、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、ヘキサクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、cis−1,2−ジクロロエチレン、trans−1,2−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、塩化ビニル、1,2,3−トリクロルプロパン、1,2−ジクロロプロパン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、へキサクロロブタジエン、1,2−ジブロモエタン、フロン113、N−ニトロソジメチルアミン等があげられるが、それらを代表して有機塩素化合物をとり、RCl(Rはアルキル基を表す)で示すと、▲5▼式に従い、土壌および/または地下水中の有機塩素化合物(RCl)が還元され、分解される。
【0013】
RCl+H++2e− →RH+Cl− ・・・▲5▼
また、重金属類としては、6価クロム、ニッケル、鉛、ウラン、テクネチウム、鉄、マンガン、銅、コバルト、砒素、カドミウム、セレン、亜鉛、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ヒ酸イオン等があげられるが、それらを代表して重金属イオンを6価クロムイオンで示すと、▲6▼式が進行して、6価クロムイオンが3価に還元され、金属鉄粉上に固定される。
【0014】
CrO4 2−+4H++3e− →Cr(OH)3+OH− ・・・▲6▼
このように、金属鉄粉は重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌および/または地下水の浄化に有用である。
【0015】
しかし、最終処分場から流れ出る浸出水の浄化に金属鉄粉を用いる場合には、溶解した2価の鉄イオンが酸化されて赤水を発生し、さらに、水質汚濁に係わる環境基準を達成するために設定された排水基準(例えば、「溶解性鉄」についての排水基準(10mg/l以下)を超過する等の問題が発生する。そのため、アルカリ水を用いる凝集沈殿装置を新たに設置する等の設備投資が必要となる。
【0016】
また、前述した排水に含まれる重金属イオンをフェライトとして回収するフェライト化処理方法を浸出水の浄化に用いようとすると、浸出水の性状、特に重金属イオンの含有量を常時監視して、その量に見合う硫酸鉄と水酸化ナトリウムを加える必要があり、適用は難しい。
【0017】
そのため、最終処分場から流れ出る浸出水に含まれる汚染物質中の重金属は、処理された後、再び廃棄物として埋め戻すことが行われていた。しかし、重金属は貴重な資源であり、前記浸出水から回収する技術の開発が望まれる。
【0018】
【特許文献1】
特開昭64−27690号公報
【特許文献2】
特表平6−506631号公報
【特許文献3】
特開平11−336060号公報
【非特許文献1】
村田徳治著「廃棄物のやさしい化学 第III卷(廃酸、廃アルカリ、汚泥の巻)」株式会社日報(1999.6.21出版)155頁
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の実状に鑑みなされたもので、その目的は、水の浄化剤、特に、重金属および/または有機化合物、その他の汚染物質が混入して最終処分場から流れ出してくる水(以下、「浸出水」という)等の排水の無害化に好適な浄化剤とそれを用いる浄化方法、および前記浄化剤に固定化された金属の回収方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討を重ねた結果、一般ごみをガス化溶融炉で処理して発生した飛灰から浸出させた水や、重金属等を含む模擬汚染水(これらを、「汚染水」という)に、金属鉄、酸化鉄およびカルシウム化合物を含む鉄系化合物を接触させることにより、それら汚染水中の重金属等を前記鉄系化合物に選択的に固定化でき、汚染水を浄化できることを見出した。さらに、この重金属等が固定化された鉄系化合物(この鉄系化合物を、以下、「浄化剤」という)を還元的に加熱することにより、亜鉛等の有用金属を回収できることを見出した。
【0021】
本発明は、このような知見に基づいてなされたもので、その要旨は、下記(1)の浄化剤、(2)のその浄化剤を用いる水の浄化方法、および(3)のその排水に含まれる金属の回収方法にある。
【0022】
(1)金属鉄と、酸化鉄と、カルシウム化合物とを含み、鉄の総質量が60質量%以上である浄化剤。
【0023】
(2)浄化しようとする水と、前記(1)に記載の浄化剤とを接触させる排水の浄化方法。
【0024】
なお、環境省環境管理局水環境部発行の「平成12年度土壌汚染調査・対象事例及び対応状況に関する調査結果の概要」における定義と同様に、鉛、クロム、亜鉛など、密度が比較的大きく一般に重金属と称される金属だけでなく、砒素、フッ素、ホウ素、シアン等の有害な元素などを総称して「重金属等」といい、「浄化しようとする水」とは、このような重金属等や、前述した有機塩素化合物などのように処理が困難で有害な有機化合物等を含有する水をいう。
【0025】
浄化しようとする水が、鉛、クロム、亜鉛、鉄、銅、カドミウム、セレン等の重金属、砒素、フッ素、ホウ素、シアンなどの有害な元素、有機化合物(有機塩素化合物など)のうちの1種以上を含むものである場合、本発明の浄化方法は特に効果的である。
【0026】
また、前記(1)に記載の浄化剤とともに可溶性の鉄塩を使用すれば、浸出水が高濃度の重金属等を含有する場合等においても、無害化が可能である。なお、「可溶性の鉄塩」とは、硫酸鉄、塩化鉄等の、溶解度が比較的大きく、重金属等のフェライト化に必要な鉄イオンを十分に供給できる鉄化合物を指す。
【0027】
(3)浄化しようとする水と、前記(1)に記載の浄化剤とを接触させることにより金属が固定化された浄化剤から前記金属を分離する金属の回収方法。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明(上記(1)の浄化剤、(2)の水の浄化方法、および(3)の金属の回収方法)について詳細に説明する。
【0029】
上記(1)の浄化剤は、金属鉄と、酸化鉄と、カルシウム化合物とを含み、鉄の総質量が60質量%以上である鉄系化合物からなる浄化剤である。
【0030】
この浄化剤の重金属等との反応は、基本的にはフェライト化反応と、金属鉄による酸化・還元反応、カルシウムによる不溶化反応が並行的に進行する反応である。
【0031】
先に述べた、排水に含まれる重金属イオンをフェライトとして回収する従来のフェライト化処理では、排水に対して、硫酸鉄と水酸化ナトリウムの混合物を、2NaOH/FeSO4(モル比)=1となるように添加し、60℃以上に保持すると、下記の▲7▼式および▲8▼式(これらの式で、Mは鉄以外の重金属を表す)の反応が進行する。
【0032】
(3−x)Fe2++xM2++6OH−→ Fe3−xMx(OH)6 ・・▲7▼
Fe3−xMx(OH)6+O2→ MxFe3−xO4 ・・・▲8▼
本発明の浄化剤では、前記の▲7▼式の反応に関与する鉄イオンの供給源として、硫酸鉄の代わりに金属鉄が用いられる。また、水酸イオンの供給源として、水酸化ナトリウムの代わりに、水の存在下で水酸イオンをわずかずつ供給し得る水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム化合物が用いられる。
【0033】
これは、排水のフェライト化処理では、多量の排水を対象として、前記▲7▼式、▲8▼式の反応を進行させるために、重金属イオンの含有量に見合う所定量の硫酸鉄と水酸化ナトリウムを添加し、加温して、急速に処理する必要があるが、本発明で処理しようとしている水、例えば浸出水の場合は、後述するように、ある程度時間をかけて緩慢に処理することが、マグネタイトの結晶成長を促進させる上で望ましいからである。すなわち、金属鉄や前記のカルシウム化合物を用いると、鉄イオンは金属鉄の溶解反応により、また、水酸イオンは溶解度が小さいカルシウム化合物により、わずかずつ供給されるので、フェライト化反応が徐々に進行して、重金属等が浄化剤に固定化される。
【0034】
この浄化剤において、金属鉄とカルシウム化合物に加えて酸化鉄を含有させるのは、酸化鉄が含まれることにより、浄化剤の固定化能力(鉛や6価クロムをフェライトとして固定化させる能力)が向上するからである。含有させる酸化鉄としては、マグネタイトが望ましい。マグネタイトを浄化剤に混合することにより、重金属等のイオンと鉄イオンからフェライトを生成させる反応を常温でも顕著に進行させることができる。
【0035】
本発明の浄化剤は、カルシウム化合物が共存することにより、金属鉄の溶解反応よりも卑な金属鉄の水酸イオンによる酸化反応を進行させることができる。その結果、金属鉄の溶解反応よりも卑な還元反応を行わせることができるので、還元・無害化できる有害元素の種類が増加する。
【0036】
金属鉄とカルシウム化合物の混合比は、金属鉄/カルシウム化合物のモル比で1以上が好ましい。これは、カルシウムは溶解度が小さく、しかもこの反応では金属鉄とカルシウム化合物とが系内に存在することにより、カルシウムが触媒的に作用して反応が進行するので、それに必要な量以上のカルシウム化合物を混合する必要はないからである。
【0037】
一方、酸化鉄の混合比率は、浄化剤の全体量に対して10質量%未満であるのが望ましい。酸化鉄の含有量が10質量%以上になると、重金属等を鉄系化合物表面に吸着することはできても、フェライトとして浄化剤に固定化することができにくくなるからである。
【0038】
この浄化剤は、一般的には、金属鉄、酸化鉄および前記のカルシウム化合物を前記所定の条件および次に述べる条件(鉄の総質量が60質量%以上)を満たすように混合することによって得られる。その場合の粒径は、特に限定されないが、取扱いが容易で、鉄イオンや水酸イオンがわずかずつ持続して供給されるように、0.01〜10mm程度であるのが好ましい。
【0039】
また、製鉄所等で発生する鉄系のダストを前記のカルシウム化合物とともに溶融・還元して成形された還元鉄を用いることもできる。この還元鉄は、金属鉄、酸化鉄およびカルシウム化合物が混合した状態で成形されており、適度な粒径を有しているので、本発明で使用する浄化剤として特に好適である。
【0040】
本発明の浄化剤において、鉄の総質量(すなわち、金属鉄と、鉄量に換算した酸化鉄との合計量)が60質量%以上であることとするのは、例えば、酸化鉄が比較的多量に含まれること等により、鉄の総質量が60質量%未満である場合は、フェライト化反応に必要な鉄イオンの供給が確保できず、重金属等のフェライトとしての固定化ができにくくなるからである。また、後述するように、固定化された金属を回収した後の浄化剤(つまり、鉄系化合物)を高炉の鉄源として再利用する場合、鉄の含有量が少なく、再利用に際しての制約になることもあるからである。
【0041】
この浄化剤の重金属等との反応は、前述したように基本的にはフェライト化反応、金属鉄の酸化・還元反応、カルシウムによる不溶化反応であるが、有機化合物との反応は、前記の▲5▼式により例示した還元反応で、有機塩素化合物等の有機化合物、硝酸性窒素やシアン等の還元されやすい汚染物質はこの反応によって分解、無害化される。
【0042】
上記(2)の水の浄化方法は、汚染物質を含有し、浄化しようとする水に、前記本発明の浄化剤を接触させる水の浄化方法である。
【0043】
前記の浄化剤を接触させる形態に、特に限定はない。
【0044】
最終処分場(以下、「最終処分場」と呼称される場所のみではなく、都市ごみ、産業廃棄物などの固形の廃棄物を埋立処分した場所をいう)で発生する浸出水を浄化する場合を例にとると、例えば、最終処分場の一隅に浄化剤が充填された処理槽を設置しておき、この処理槽に浸出水を供給し、適当な時間滞留させ、前記のフェライト化反応を進行させて重金属等を固定化すればよい。実際には、調整池を数個設けて、連続的に、あるいはバッチ式で処理するのが、簡便かつコスト的にも有利である。
【0045】
前記の滞留時間は1週間以上とするのが望ましい。1週間に満たないと、前記のフェライト化反応が十分に進行せず、重金属等の固定化が不十分で、排水規制を満足できないことが多いからである。
【0046】
本発明の浄化方法において浄化の対象となる水は、重金属等の有害な元素を含有する水、有機化合物を含有する水、またはその両方(重金属等および有機化合物)を含有する水である。もちろん重金属等や有機化合物以外の汚染物質が含まれていてもよい。また、種々の排水のほか、排水前のものであってもよく、前述した最終処分場からの浸出水などのように、さまざまな態様の水に適用することができる。重金属等や難分解性の有機化合物で汚染された地下水の浄化に使用しても同様の浄化効果を得ることができる。
【0047】
前記の浄化しようとする水が、鉛、クロム、亜鉛、鉄、銅、カドミウム、セレン等の重金属、砒素、フッ素、ホウ素、シアンなどの有害な元素のうちの1種以上を含むものであれば、本発明の浄化方法によって、これら汚染物質を効果的に固定化し、または還元、無害化することができる。また、先に挙げた有機塩素化合物(RCl)などの、処理が困難で有害な有機化合物を含有するものであっても、本発明の浄化方法は有効で、効果的に還元、分解することができる。
【0048】
本発明の浄化方法で処理しようとする水(例えば、前記の浸出水)が高濃度の重金属等を含有する場合、あるいは、重金属等を含む排水が多量の場合には、本発明の浄化剤における金属鉄からの溶出のみでは鉄イオンの供給が間に合わないことがある。その場合は、本発明の浄化剤に、必要に応じて、従来のフェライト化処理で用いる硫酸鉄や、塩化鉄、硝酸鉄等の可溶性の鉄塩を添加する方法を採ることも可能である。さらに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリおよび/またはアルカリ土類の水酸化物を添加し、60℃以上に加熱してもよい。鉄イオンや、水酸イオンが十分に供給されるので、高濃度の重金属等のイオンはそれらと反応してフェライトを生成し、重金属等のイオンの状態で排出されることはない。
【0049】
上記(3)の金属の回収方法は、金属含有排水と前記本発明の浄化剤とが接触することにより金属が固定化された浄化剤から前記金属を分離する金属の回収方法である。
【0050】
金属を回収する方法としては、例えば、重金属等が固定化された浄化剤を還元的に加熱することにより、回収しようとする重金属等を気化させる方法を採ることができる。なお、「還元的に加熱する」とは、雰囲気中の酸素含有量が少なく、前記の気化させた重金属等の酸化が起こらない程度の還元性雰囲気中で加熱することを意味する。加熱温度は、特に限定されず、回収しようとする重金属等を気化させるために必要な温度以上であればよい。
【0051】
この方法によって、亜鉛を金属亜鉛として回収することができる。金属亜鉛は酸化され易いので、最終的には酸化亜鉛として回収される。また、亜鉛よりも沸点の低い重金属(例えば、カドミウム)、あるいは、沸点は高くても、亜鉛の沸点(907℃)の近傍の温度域で高い蒸気圧を有する重金属(例えば、鉛)を回収することが可能である。
【0052】
最終処分場で発生する浸出水を対象として重金属を回収する場合を例にとって説明すると、まず、重金属含有排水に本発明の浄化剤を接触させ、重金属が固定化された浄化剤を処理槽(または、調整池等)から取り出し、乾燥する。その際に、浄化剤と酸素との接触が充分になされて、前記の▲8▼式の反応が促進され、フェライト化反応が終了する。この浄化剤を、1000℃以上で還元的に加熱することにより、亜鉛、カドミウム、鉛等の重金属をそれぞれ金属の状態で回収することができる。
【0053】
前記の亜鉛、カドミウム、鉛等の重金属を回収した後の浄化剤は、鉄の総質量が60質量%以上の鉄系化合物なので、鉄源としての利用が可能であり、例えば、製鉄原料として高炉へ装入し再利用することができる。この場合、回収できない重金属は銑鉄への夾雑物になると考えられるが、微量であるため問題にはならない。なお、重金属を回収した後の浄化剤を製鉄原料として再利用する場合は、回収が容易な前記の亜鉛を完全に除去し、これら以外の重金属もできるだけ除去するために、回収時の加熱温度を1300℃以上とするのが望ましい。
【0054】
【実施例】
(実施例1)
製鉄所で発生したダスト類をロータリーキルン方式の還元ペレット製造装置で焼結した鉄系化合物を浄化剤として使用し、一般ごみをガス化溶融炉で処理して発生した飛灰に水を加え、浸出した液の浄化試験を行った。
【0055】
還元ペレット製造装置において、還元ガスには、不完全燃焼で発生した燃焼排ガスを用い、焼結する間、還元ペレット製造装置の中心温度を1350℃に制御した。得られた鉄系化合物(浄化剤)の主な性状を表1に示す。
【0056】
【表1】
表2に前記の飛灰の分析結果を、また、表3に、この飛灰にその10倍量(質量)の水を加え、浸出した液の分析結果を示す。
【0057】
【表2】
【表3】
前記の浸出液に含まれる各成分(元素)の中で、排水基準を超過しているのは鉛である。また、超過する可能性がある重金属としては、カドミウムおよび亜鉛が挙げられる。
【0058】
この浸出液100mlに、表1に示した浄化剤5gを加え、1日攪拌した。その結果、浸出液中の鉛濃度は、排水基準値である「0.1mg/l未満」を満たす程度にまで低下した。
【0059】
(実施例2)
実施例1で使用したものと同じ鉄系化合物を浄化剤として用い、同じく実施例1で使用したものと同じ飛灰に塩酸水を加えて調製した浸出液の浄化試験を行った。
【0060】
試験では、前記の飛灰に塩酸水を加え、種々のpHを有する浸出液を調製し、これらの浸出液に前記浄化剤5gを加え、1日攪拌した。
【0061】
浸出液のpHと鉛濃度の関係を図1に、浸出液のpHと亜鉛濃度の関係を図2に、また、浸出液のpHとカドミウム濃度の関係を図3にそれぞれ示す。これらの図において、○印は浄化剤を加える前の鉛、亜鉛、またはカドミウムの濃度であり、●印は浄化剤を加えた後の鉛、亜鉛、またはカドミウムの濃度である。また、図中に示した横軸に平行な太い実線は、それぞれ排水基準を表す。
【0062】
図1〜図3に示したように、pH、および浄化剤を加える前の重金属の濃度によって多少の差はあるが、鉛、亜鉛、カドミウムのいずれの場合にも、浄化剤と接触させることにより浸出液中の重金属濃度の低下が認められた。
【0063】
(実施例3)
実施例1で使用したものと同じ鉄系化合物を浄化剤として用い、蒸留水に硝酸鉄(III)を加えて調製した模擬汚染水の浄化試験を行った。
【0064】
試験では、蒸留水100mlに硝酸鉄(9水和物)約220mgを加え、鉄濃度60mg/lの模擬汚染水を調製し、この模擬汚染水に前記浄化剤20gを加え、1日攪拌した後、ろ過して、ろ液(これを「浄化水」という)と浄化剤に分離した。さらに、この浄化剤にその10倍量(質量)の蒸留水を加えた(この操作により得られる液を「浸出液」という)。
【0065】
前記の浄化水および浸出液の鉄濃度は、それぞれ0.09mg/lおよび0.11mg/lと、いずれも微量であり、模擬汚染水(原水)中の鉄イオンが浄化剤によって除去(浄化)され、しかも浄化剤に固定化されていることが確認された。
【0066】
(実施例4)
実施例1で使用したものと同じ鉄系化合物を浄化剤として用い、蒸留水に塩化鉄(II)またはクエン酸鉄(III)を加えて調製した鉄の模擬汚染水、および、蒸留水に塩化鉛またはクエン酸鉛を加えて調製した鉛の模擬汚染水の浄化試験を行った。
【0067】
試験方法は実施例3の場合と同様で、それぞれの模擬汚染水について、「浄化水」と「浸出液」を得た。
【0068】
前記の浄化水および浸出液の鉄濃度、鉛濃度を、模擬汚染水(原水)中のそれらの濃度と併せて表4に示す。
【0069】
【表4】
表4に示した結果から、実施例3の場合と同様に、模擬汚染水(原水)中の鉄や鉛が浄化剤によって除去され、しかも浄化剤に固定化されていることが確認された。
【0070】
(実施例5)
実施例1で使用したものと同じ鉄系化合物(本発明の浄化剤)に、さらに塩化鉄(II)または硝酸鉄を加えたものを浄化剤として用い、蒸留水にクエン酸鉛または塩化鉛を加えて調製した模擬汚染水の浄化試験を行った。これは、例えば、最終処分地からの浸出水が高濃度の重金属を含有する場合を想定した試験である。
【0071】
本発明の浄化剤にさらに塩化鉄(II)を加えたものを浄化剤として用い、蒸留水に塩化鉛を加えて調製した模擬汚染水を浄化する場合を例にとると、まず、塩化鉛0.28gを蒸留水30mlに溶解して、鉛の模擬汚染水を調製し、この模擬汚染水に前記浄化剤3gと塩化鉄(II)(4水和物)0.40gを加えた。その後、1週間風乾して、水を蒸発させた。この浄化剤にその10倍量の蒸留水を加え、24時間攪拌し、「浸出液」を得、この浸出液の鉛濃度を測定した。なお、本発明の浄化剤にさらに前記の硝酸鉄を加えた場合、鉛の模擬汚染水の調製にクエン酸鉛を用いた場合も、同様の操作を行った。
【0072】
表5に、浸出液の鉛濃度の測定結果を示す。同表には、用いた鉛塩や鉄塩の量も併せて示した。表5のケース1が、前記の例にあげて説明した、本発明の浄化剤にさらに塩化鉄(II)を加え、鉛の模擬汚染水の調製に塩化鉛を用いた場合である。
【0073】
【表5】
表5に示した結果から明らかなように、用いた鉛塩や鉄塩に関係なく、浸出液の鉛濃度は微量であり、溶解した鉛の大部分が浄化剤に固定化されていることが認められた。
【0074】
(実施例6)
酸化鉛、砒酸カリウム、重クロム酸カリウム、硝酸カドミウム、青酸カリウム、フッ化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化水銀およびセレン酸ナトリウムを用いて、汚染物質の濃度が環境基準値の10倍の汚染水をそれぞれ調製した。なお、「検出されないこと」が基準とされているシアンについては、0.1mg/lの濃度の汚染水とした。
【0075】
それぞれの汚染水について、汚染水20mlと実施例1で使用したものと同じ鉄系化合物(本発明の浄化剤)5gを30mlのスクリュウ管に入れ、24時間振とうした後、汚染物質の濃度を測定したところ、いずれも環境基準値以下に減少していることが認められた。
【0076】
【発明の効果】
本発明の浄化剤を用いれば、水、排水、特に、最終処分場から浸出する重金属等や有機化合物などを含む浸出水を、簡便な方法で容易に浄化することができる。この場合、複数の重金属イオンが共存する浸出液に対しても有効である。浄化処理の際、重金属は浄化剤に固定化されるので、その重金属を回収することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般ごみをガス化溶融炉で処理した飛灰の塩酸水による浸出液のpHと鉛濃度の関係を示す図である。
【図2】一般ごみをガス化溶融炉で処理した飛灰の塩酸水による浸出液のpHと亜鉛濃度の関係を示す図である。
【図3】一般ごみをガス化溶融炉で処理した飛灰の塩酸水による浸出液のpHとカドミウム濃度の関係を示す図である。
Claims (5)
- 金属鉄と、酸化鉄と、カルシウム化合物とを含み、鉄の総質量が60質量%以上であることを特徴とする浄化剤。
- 浄化しようとする水と、請求項1に記載の浄化剤とを接触させることを特徴とする水の浄化方法。
- 浄化しようとする水が、鉛、クロム、亜鉛、鉄、銅、カドミウム、セレン等の重金属、砒素、フッ素、ホウ素、シアンなどの有害な元素、有機化合物のうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の水の浄化方法。
- 請求項1に記載の浄化剤とともに可溶性の鉄塩を使用することを特徴とする請求項2または3に記載の水の浄化方法。
- 請求項1に記載の浄化剤が水と接触することにより金属が固定化された浄化剤から前記金属を分離することを特徴とする金属の回収方法。
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