JP2004076027A - 環境浄化材料およびその製造方法と使用方法 - Google Patents
環境浄化材料およびその製造方法と使用方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004076027A JP2004076027A JP2002233684A JP2002233684A JP2004076027A JP 2004076027 A JP2004076027 A JP 2004076027A JP 2002233684 A JP2002233684 A JP 2002233684A JP 2002233684 A JP2002233684 A JP 2002233684A JP 2004076027 A JP2004076027 A JP 2004076027A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- iron
- soil
- purifying material
- groundwater
- heavy metals
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Catalysts (AREA)
- Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)
- Powder Metallurgy (AREA)
- Fire-Extinguishing Compositions (AREA)
- Processing Of Solid Wastes (AREA)
- Combined Means For Separation Of Solids (AREA)
- Treatment Of Water By Oxidation Or Reduction (AREA)
Abstract
【課題】重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌および/または地下水等の浄化が可能な鉄系の環境浄化材料、その製造方法と使用方法を提供する。
【解決手段】(1)粒径が篩分級法で1mm以上である鉄系の環境浄化材料で、還元性雰囲気中で加熱、焼結されたものが好ましい。(2)この浄化材は、微粉状の鉄系化合物(例えば、製鉄所で発生するダスト類)を還元性雰囲気中で加熱し、焼結することにより製造できる。(3)使用に際しては、前記浄化材を汚染された土壌および/または地下水に接触させる。使用後の浄化材は、重金属類等を浄化材に固定させた状態で土壌から篩い分け、磁気選別により分離可能で、土壌中の重金属類の含有量を減少できる。また、使用後の浄化材は、還元性雰囲気中で加熱・焼結することによって再生可能である。
【選択図】なし
【解決手段】(1)粒径が篩分級法で1mm以上である鉄系の環境浄化材料で、還元性雰囲気中で加熱、焼結されたものが好ましい。(2)この浄化材は、微粉状の鉄系化合物(例えば、製鉄所で発生するダスト類)を還元性雰囲気中で加熱し、焼結することにより製造できる。(3)使用に際しては、前記浄化材を汚染された土壌および/または地下水に接触させる。使用後の浄化材は、重金属類等を浄化材に固定させた状態で土壌から篩い分け、磁気選別により分離可能で、土壌中の重金属類の含有量を減少できる。また、使用後の浄化材は、還元性雰囲気中で加熱・焼結することによって再生可能である。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境浄化材料およびその製造方法と使用方法に関し、詳しくは、重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌や地下水等を現場で浄化するための環境浄化材料およびその製造方法と使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微粉状の金属鉄粉は、重金属類や揮発性有機化合物(有機ハロゲン化合物や難分解性有機化合物等)で汚染された土壌、地下水等、広い意味での「環境」を浄化する作用があるため、環境浄化用材料として注目されている。例えば、特開昭64−27690号公報では、難分解性有機化合物を含有する水を金属鉄粉等の金属系還元剤を用いて浄化する方法が提案されており、特表平6−506631号公報では、有機ハロゲン化合物で汚染された水を活性炭と金属鉄のヤスリ屑からなる透過性混合物に通すことにより前記汚染水を浄化する技術が提案されている。
【0003】
また、金属鉄粉は、有機ハロゲン化合物や難分解性有機化合物による汚染だけでなく、重金属類により汚染された地下水の浄化にも有効である。例えば、特開平11−336060号公報では、金属粉末を用いることにより6価クロム、カドミウム、鉛、セレン、砒素などの重金属類を除去できることが報告されている。
【0004】
このような金属鉄粉の揮発性有機化合物や重金属類により汚染された土壌や地下水等に対する浄化作用は、以下に述べるように、金属鉄が腐食される際に生じる反応に類似の反応が一部生じることによるものである。
【0005】
金属鉄の水の存在下における腐食反応は一般に以下のように進行する。
【0006】
【化1】
【0007】
前記の▲1▼式および▲2▼式は、それぞれ、酸化によりFeが溶解する反応および腐食液中の溶存酸素が還元される反応であり、▲3▼式および▲4▼式は、溶解したFeが水酸化物を形成し、さらに酸化されていわゆるさび(FeOOH)を形成する反応である。
【0008】
これらの反応の中で 、▲2▼式に代わって、以下に述べる▲5▼式または▲6▼式の反応が進行することにより、土壌や、それに地下水がしみ込んだ土壌や、土壌が混濁した地下水や、汚染物質が溶け込んだ地下水等(以下、これらを「土壌および/または地下水」と記す。なお、「地下水」とは、通常、地下水といわれているものの他、地表面下にある水をいう)に含まれる汚染物質が浄化される。
【0009】
例えば、揮発性有機化合物として、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、ヘキサクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、cis−1,2−ジクロロエチレン、trans−1,2−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、塩化ビニル、1,2,3−トリクロルプロパン、1,2−ジクロロプロパン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、へキサクロロブタジエン、1,2−ジブロモエタン、フロン113、N−ニトロソジメチルアミン等があげられるが、それらを代表して有機塩素化合物をとり、RCl(Rはアルキル基を表す)で示すと、▲5▼式に従い、土壌および/または地下水中の有機塩素化合物(RCl)が還元され、分解される。
【0010】
RCl+H++2e− →RH+Cl− ・・・▲5▼
また、重金属類としては、6価クロム、ニッケル、鉛、ウラン、テクネチウム、鉄、マンガン、銅、コバルト、砒素、カドミウム、セレン、亜鉛、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ヒ酸イオン等があげられるが、それらを代表して重金属イオンを6価クロムイオンで示すと、▲6▼式が進行して、6価クロムイオンが3価に還元されて、土壌および/または地下水中の重金属類が金属鉄粉上に固定される。
【0011】
CrO4 2−+4H++3e− →Cr(OH)3+OH− ・・・▲6▼
このように、金属鉄粉は重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌および/または地下水の浄化に有用である。
【0012】
金属鉄粉を製造する方法としては、最近いくつかの方法が開示されている。例えば、特開2002−20806号公報には、粉末冶金で発生する鉄系廃棄物を加熱処理して、それに含まれる油分(鉄粉の表面をコーティングして偏析を防止するためにに加える有機系バインダー)を除去し、反応性の高い汚染浄化用鉄粉を得る方法が開示されており、特開2002−167602号公報には、平均粒径が10μm以上2000μm以下の大粒径鉄粉の表面に、平均粒径が0.05μm以上10μm未満の小粒径鉄粉を焼結により付着させた有機ハロゲン化合物の分解に好適な鉄粉が開示されている。また、微粒子の鉄粉を酸化銅と混合した後に還元性雰囲気または非酸化性雰囲気で焼成して、鉄と銅の両者が表面に顕れている粒状の有機ハロゲン化合物分解剤(特開2002−69425号公報)や、ニッケル、銅、コバルト、モリブデンのうちの少なくとも一種の金属を表面に有し、それ以外の部分が鉄酸化皮膜で被覆されている有機ハロゲン化合物分解用鉄粉(特開2002−161263号公報)等が提案されている。
【0013】
しかしながら、これらの方法で製造された鉄粉は、微粉状であり、汚染された土壌の浄化に使用された後にその土壌から鉄粉を分離することが困難であるため、汚染現場に残されることとなる。その結果、例えば重金属類により汚染されている土壌においては、土壌中の重金属類は金属鉄粉上に固定されるが、汚染土壌から重金属類を分離することが困難なために、土壌中の重金属類の含有量を減少させることはできなかった。そのため、汚染土壌中の重金属類の含有量を減少させるためには、汚染土壌を最終処分場まで運搬、廃棄し、新たに清浄な土壌を埋め戻すという対策が必要であった。
【0014】
しかし、最終処分場が不足する事態が予想されるために、汚染現場で重金属を処理する技術(重金属類を金属鉄粉上に固定するとともに、汚染土壌中の重金属類の含有量を減少させる技術)の開発が望まれている。
【0015】
一方、汚染された土壌や地下水の浄化に用いられる鉄系の浄化材料は大量に使用されるため、廉価で安定した品質を有する浄化材料を工業的に製造する方法の開発に対する要請も大きい。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような状況に鑑みなされたもので、その目的は、重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌および/または地下水等を浄化することができ、特に重金属類で汚染された土壌を最終処分場に運搬・廃棄することなく、現場で重金属類を効率的に除去して、汚染現場の重金属類の含有量、あるいはその他の汚染物質の含有量を低下させ得る鉄系の環境浄化材料(以下、「鉄系浄化材」、または単に「浄化材」という)、およびその製造方法と使用方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酸化鉄の皮膜をその表面に有する金属鉄粉が汚染された土壌および/または地下水から効率的に重金属を固定化し、あるいは揮発性有機化合物を分解することができ、しかも、酸化皮膜を有することにより、赤錆の発生による二次的な汚染を防止できることを見いだした。
【0018】
さらに、特定の粒径を有する鉄系浄化材を使用することにより、上記効果に加えて、浄化後の土壌と浄化に使用した鉄系浄化材とを容易に分離することが可能であることを見いだした。
【0019】
このような特定の粒径を有する鉄系浄化材は、還元性雰囲気下で、微粉状の鉄系化合物を回転キルン(ロータリーキルン)で焼結することにより製造することができ、また、鉄鋼業等で多用されている融剤のカルシウム(例えば、酸化カルシウム)を添加することが粒経制御に有効であることを知見した。なお、浄化後の土壌から分離した鉄系浄化材を再び還元性雰囲気中で焼結することにより、前記微粉状の鉄系化合物を還元性雰囲気下で焼結することにより得られた浄化材と同様の浄化能力を前記土壌から分離した鉄系浄化材に付与することが可能であることを確認した。
【0020】
本発明は、このような知見に基づいてなされたもので、その要旨は、下記(1)の鉄系浄化材、(2)のその浄化材の製造方法、および(3)のその浄化材の使用方法にある。
【0021】
(1)粒径が篩分級法で実質的に1mm以上である鉄系浄化材。
【0022】
ここで、「鉄系浄化材」とは、金属鉄や酸化鉄を主成分とする混合物で、汚染された土壌や地下水の浄化に使用されるものである。
【0023】
また、「実質的に1mm以上」とは、前記鉄系浄化材の製造後、必要なハンドリング、使用現場までの輸送等の際の粒子の粉化、貯蔵時の湿分により生じる酸化反応による粉化等により不可避的に混入してくる粒径が1mm未満の微粒子は、含まれていてもよいことを意味する。具体的な比率で表すと、粒径1mm未満のものが10質量%以下含まれていてもよい。以下、単に「1mm以上」と記す。なお、10質量%を超えて含まれると、後述するように、例えば土壌の浄化に使用した後、その土壌から分離、回収される鉄系浄化材の割合が減少し、地中に残存する浄化材量が増加する。その結果、土壌中の重金属類の含有量が、粒径1mm以上の浄化材を用いた場合に比べて増大し易くなる。
【0024】
この鉄系浄化材は、還元性雰囲気中で加熱、焼結されたものであれば、土壌の浄化の際に、赤錆の発生による二次的な汚染を防止することができ、好ましい。
【0025】
(2)微粉状の酸化鉄を主成分とする鉄系化合物を還元性雰囲気中で加熱し、焼結する前記(1)に記載の鉄系浄化材の製造方法。
【0026】
前記(1)に記載の鉄系浄化材を、汚染された土壌および/または地下水の浄化に使用した後、土壌および/または地下水から分離し、これを還元性雰囲気中で加熱し、焼結することによって、これに、前記(2)に記載の鉄系化合物を加熱・焼結する方法により得られた鉄系浄化材と同様の浄化能力を付与することができる。
前記の加熱、焼結を、回転キルンを用いて行い、鉄系浄化材中における含有量が酸化カルシウムに換算して15質量%未満になるようにカルシウムを加えると、キルン内の被処理物の流動性を確保することができ、回転キルンを安定して運転することができ、粒経制御に有効である。
【0027】
(3)前記(1)に記載の鉄系浄化材(前記(2)に記載の、浄化に使用した後、土壌等から分離した浄化材料を還元性雰囲気中で加熱し、焼結することによって得られた鉄系浄化材を含む)を汚染された土壌および/または地下水に接触させて前記土壌および/または地下水を浄化する鉄系浄化材の使用方法。
【0028】
前記のように鉄系浄化材を汚染された土壌および/または地下水に接触させて使用した後、その鉄系浄化材を土壌および/または地下水から分離する使用方法を採れば、汚染土壌および/または地下水から重金属類を鉄系浄化材に固定させた状態で分離することができ、土壌中の重金属類の含有量を減少できるので好適である。
【0029】
前記の鉄系浄化材の分離は、分級(粒度別に分けること)により行うことができ、特に、篩い分けおよび/または磁気による選別により行うのが簡便である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明(上記(1)の鉄系浄化材、(2)のその浄化材の製造方法、および(3)のその浄化材の使用方法)について詳細に説明する。
【0031】
上記(1)の鉄系浄化材は、粒径が篩分級法で1mm以上である鉄系浄化材である。
【0032】
この浄化材は、鉄系なので、重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌や地下水等に接すると、前述した▲1▼式の反応(酸化反応)が起こってFeが溶解し、これに対する還元反応として▲2▼式の反応(溶存酸素の還元反応)が起こる代わりに、前記の▲6▼式の反応または▲5▼式の反応が進行する。その結果、汚染物質が重金属類であれば、還元されて浄化材料の表面に固定され、また、汚染物質が揮発性有機化合物(例えば、有機ハロゲン化合物)であれば、還元、脱ハロゲン化され、無害化される。
【0033】
この鉄系浄化材の粒径が篩分級法で1mm以上であること、すなわち、鉄系浄化材が粒径が1mm以上の粒子で構成されていることとするのは、以下に述べる理由によるものである。
【0034】
一般に、汚染された土壌の中で処理が困難な土壌は粒径の小さい泥状を呈する土壌である。泥状のため、水の透水性は小さく、汚染物質が長期間にわたり滞留しがちである。
【0035】
そこで、このような泥状の汚染土壌、またはそれに地下水がしみ込んだ泥状物、または汚染された地下水の浄化に用いられる鉄系浄化材は、それを用いて処理した(つまり、浄化した)土壌との分離が容易に行えるように、篩分級法で少なくとも1mmの粒径を有することとする。粒径が1mm未満では、前記の泥状の汚染土壌等とその浄化に用いた浄化材料との分離が困難で、例えば、重金属類により汚染されている土壌においては、土壌中の重金属類は浄化材上に固定はされるが、汚染土壌から重金属類を分離することが困難なために、土壌中の重金属類そのものを減少させることはできないからである。
【0036】
この鉄系浄化材の粒径の上限は特に限定されない。鉄系の環境浄化用の材料であって、粒状のものであるという前提の下にあっては、浄化反応の効率、取扱い上の利便性等の面から自ずと望ましい上限が定まるからである。そのような意味からすれば、好ましい上限は、10mm程度である。
【0037】
このように、本発明の鉄系浄化材において、その粒径が篩分級法で1mm以上とする最大の理由は、浄化した土壌との分離の容易性を確保するためである。したがって、浄化処理対象の土壌の粒度構成、汚染物質の分布状況等を勘案しつつ、用いる浄化材の粒径の下限、好ましい上限を適宜調整することができる。
【0038】
また、汚染された地下水等を対象として浄化処理を行う場合においては、本発明の浄化材は、粒径が1mm以上であることから透水性がよく、その結果、砂などの透水性材料と混合使用することなく周辺の地下水を浄化材の層に集めることが可能であり、浄化を効率的に行えるという利点も有している。
【0039】
上記(1)の鉄系浄化材が、還元性雰囲気中で加熱、焼結されたものであれば、この浄化材を構成する各粒子の表面に酸化鉄の皮膜が形成されており、土壌の浄化の際に、赤錆の発生による二次的な汚染を防止することができるので好ましい。これは、鉄系浄化材の製造時に原料として用いる酸化鉄を還元、焼結したときに残存するマグネタイトを主成分とする酸化皮膜によるもので、マグネタイトが共存するとゲータイトが生成することなくマグネタイトが成長するが、共存しない場合には赤錆(ゲータイト)が生成するまで酸化反応が進行する。
【0040】
上記(1)の鉄系浄化材は、微粉状の酸化鉄を主成分とする鉄系化合物を還元性雰囲気中で加熱し、焼結することにより製造することができる。
【0041】
前記の「酸化鉄を主成分とする鉄系化合物」としては、例えば、製鉄所内で発生するダスト・スラッジ類があげられる。しかし、必ずしも製鉄所内に限定されることはない。「主成分とする」には、例えば「何%以上」という厳密な意味はなく、酸化鉄が過半量を占める程度であればよい。その程度含まれていれば、還元性雰囲気中で加熱し、焼結することにより、上記(1)の鉄系浄化材とすることができ、先に述べた▲5▼式、▲6▼式の反応により汚染物質の還元を現実に進行させることができるからである。
【0042】
この鉄系浄化材の好ましい製造方法の一例を以下に示す。
【0043】
微粉状の酸化鉄を主成分とする鉄系化合物を、燃料となる炭素源と共に回転キルン中に供給する。炭素源に対して化学量論的に当量以下の酸素を供給して、回転キルン内を還元性雰囲気に保ちながら、加熱する。加えられた熱とキルンの回転により、微粉状の鉄系化合物は造粒されると同時に、還元される。
【0044】
前記の炭素源としては、粉コークス、微粉炭、あるいは製鉄所副生ガス等が好適である。
【0045】
回転キルン内の温度は1000℃以上が好ましい。1000℃未満では造粒が不十分になりがちである。
【0046】
前記の鉄系化合物に代えて、上記(1)の鉄系浄化材を汚染された土壌および/または地下水の浄化に使用した後、土壌および/または地下水から分離したものを用いてもよい。これを還元性雰囲気中で加熱し、焼結することによって、鉄系化合物から得られた鉄系浄化材と同様の浄化能力を付与し、上記(1)の鉄系浄化材として再生することができる。なお、その場合、前記鉄系化合物の一部に代えて、土壌等の浄化に使用した後にそれから分離した浄化材を用い、還元性雰囲気中で加熱・焼結することが好ましい。
【0047】
前記の回転キルン内での造粒時に、カルシウムを共存させると、キルン内の被処理物の流動性を確保することができ、回転キルンを安定して運転することができる。すなわち、浄化材料の過度の造粒を防止して、適正な粒径の浄化材料を製造することができる。なお、カルシウムとしては、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が使用できる。
【0048】
後述する実施例に示すように、前記造粒時に共存させるカルシウムの量、すなわち鉄系浄化材のカルシウム含有量は、酸化カルシウムに換算して15質量%以下とするのが好ましい。カルシウムの含有量が15質量%以下であれば、市販されているような粒径の小さい金属鉄粉を単独で使用する場合と同等またはそれ以上の浄化効果を得ることができる。カルシウムを含有させる効果を効率的に発揮させるためには、前記含有量を13質量%以下とするのが好ましく、特に好ましいのは10質量%以下である。
【0049】
一方、回転キルン内に塊が生成しない状態で安定して操業を行うために、鉄系浄化材のカルシウム含有量は4質量%以上とするのが好ましい。カルシウム含有量が増加すると回転キルンの操業性は向上するが、その含有量が15質量%を超えると、目的とする鉄系浄化材の浄化反応速度が低下する。鉄系浄化材のカルシウム含有量はこれらを総合的に考慮して決定すればよい。
【0050】
このようにして製造された特定の粒径を有する鉄系浄化材を用いて、汚染された土壌および/または地下水を浄化することができる。
【0051】
前記浄化に際しては、上記(1)に記載の鉄系浄化材を汚染された土壌および/または地下水に接触させればよい。具体的には、汚染現場の状況に応じて、鉄系浄化材と汚染した土壌および/または地下水とを直接混合して浄化する方法、透過性の壁を設けて、流出する地下水に含まれる汚染物質を浄化して間接的に汚染土壌を浄化する方法等を用いることができる。
【0052】
鉄系浄化材と汚染土壌を直接混合して浄化する場合には、土壌に含まれる水のみでは先に述べた▲1▼式の反応が十分には進まず、それに伴って生じる▲5▼式または▲6▼式の反応の進行に時間がかかるので、水を添加して全体を攪拌混合し、浄化に要する時間を短縮することができる。鉄系浄化材が存在することにより、使用した水は重金属に汚染されることなく、そのまま放流することも可能であるが、経済性の観点から循環使用することが望ましい。
【0053】
水に対する重金属の溶解度を増加させるために、水に鉱酸を添加することも可能である。その処理水を放流する場合には重金属の流出の惧れはないが、鉄系浄化材にカルシウムが含まれている場合には処理水はアルカリ性を呈するので、pH調整等が必要となる。
【0054】
なお、鉄系浄化材としては、酸化鉄を主成分とする鉄系化合物を還元性雰囲気中で加熱し、焼結することにより製造したもののほかに、浄化に使用した後、土壌等から分離した浄化材を還元性雰囲気中で加熱し、焼結することによって得られた鉄系浄化材を用いてもよい。この場合、浄化に使用後、土壌等から分離した浄化材を還元性雰囲気中で加熱・焼結して得られた鉄系浄化材を単独で用いてもよいし、鉄系化合物を還元性雰囲気中で加熱・焼結して得られた鉄系浄化材と同時にまたは混合して用いてもよい。
【0055】
汚染土壌に対する鉄系浄化材の使用量は特に限定されない。土壌の汚染状況や浄化結果等を勘案しながら、適正量を定めればよい。
【0056】
鉄系浄化材を作用させる前に、予め汚染土壌を洗浄して、粒径が細かな粘土状の汚染土壌を分離して、それに鉄系浄化材を作用させる方法を採ることもでき、好適な使用例としてあげられる。あらかじめ分離された粒径が細かな粘土状の汚染土壌のみを対象とするので、汚染土壌の浄化を効率よく行い、また、本発明の鉄系浄化材は粒径が1mm以上という特定の粒径を有するので、使用後の鉄系浄化材を粒径が細かな粘土状の浄化された土壌から容易に分離することができるからである。
【0057】
また、本発明の鉄系浄化材には粒径の小さい粒子は含まれていないので透水性がよく、先にも述べたように、汚染された地下水等を対象として浄化処理を行う場合においては、周辺の地下水を浄化材の層に集めることが可能であり、浄化を効率的に行うことができる。土壌に混合して使用する際においても、透水性が低下するようなことがなく、水との接触が容易である。
【0058】
なお、本発明の鉄系浄化材を使用するに際し、前記の分離を行わず、従来行われているように、浄化材を処理現場に残したままとする方法を採ってもよい。土壌中の重金属の含有量を減少させることはできないが、重金属は還元され、鉄系浄化材上に固定されるので、重金属の流出はなく、安全性は確保される。
【0059】
前記の使用後の鉄系浄化材の分離の方法としては、粒径の差を利用した篩い分け、密度の差を利用した風力を用いる方法、鉄系浄化材の磁気的性質を利用する方法等が採用可能であり、これらの方法を、単独であるいは組み合わせて用いることができる。
【0060】
分離した後の鉄系浄化材は、先にも述べたように、還元性雰囲気下での加熱・焼結により再生することができる。その際、汚染物質が、例えば砒素、カドミウム、亜鉛等の重金属類であれば、それら重金属類を、その沸点以上に加熱することにより蒸発させ、鉄系浄化材と分離することができる。
【0061】
以上述べたように、本発明の浄化材は、鉄系で、1mm以上の粒径を有しており、重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌、地下水等を浄化することができる。また、特に重金属類で汚染された微粒の土壌を浄化(処理)した後、その処理後の土壌から、重金属類を表面に固定した浄化材を分離することができるので、その汚染された土壌を最終処分場に運搬・廃棄することなく、汚染現場の重金属類の含有量、あるいはその他の汚染物質の含有量を低下させることができる。
【0062】
重金属類を表面に固定した浄化材は、還元性雰囲気中で加熱・焼結することにより再生が可能である。
【0063】
【実施例】
(実施例1)
鉄系浄化材としては、製鉄所で発生したダスト類をロータリーキルン方式の還元ペレット製造装置で焼結することにより製造した材料のうちの、篩分級法で分級した粒径が1〜5mmのものを使用した。なお、還元ガスには、不完全燃焼で発生した燃焼排ガスを用い、還元ペレット製造装置の中心温度を1350℃で制御した。
【0064】
表1に還元ペレット製造装置で製造した材料(鉄系浄化材)の粒度別の全Fe量、金属Fe量、CaO含有量および比表面積を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
また、泥状の汚染土壌のモデルとして微粒のシリカ(SiO2)を使用した。この微粒シリカは日本エアロジル社製のAEROSIL−130であり、一時粒子の平均粒径が約16nmである。
【0067】
前記の鉄系浄化材2gまたはシリカ1gを、それぞれ鉛の濃度が100mg/l(リットル)の鉛水溶液40mlに入れ、24時間攪拌した後、ろ過により鉄系浄化材またはシリカをそれぞれ鉛水溶液と分離し、鉄系浄化材、シリカのそれぞれについて、ろ過後の固形分とろ液(鉛水溶液)中の鉛含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表2の結果に示されるように、鉄系浄化材では鉛が完全に鉄系浄化材に沈積しており、シリカでは逆に鉛はほとんどが水溶液中に残り、シリカ上にはわずかの付着が認められた。
【0070】
次に、前記の鉄系浄化材2gとシリカ1gを、鉛の濃度が100mg/l(リットル)の鉛水溶液40mlに入れ、24時間攪拌した後、ろ過により固形分と鉛水溶液とを分離した。さらに、固形分を、乾燥した後、篩を用いて鉄系浄化材とシリカに分離し、シリカ、鉄系浄化材および鉛水溶液中の鉛含有量を測定した。結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
表3の結果から、鉛は鉄系浄化材に選択的に沈積していることがわかる。しかも、この鉄系浄化材は篩分けで汚染土壌に擬した微粒子のシリカと容易に分離できることが確認された。
【0073】
なお、前記のろ過により鉛水溶液から分離した固形分に磁石を近づけると鉄系浄化材が選択的に磁石に付くことが観察できることから、磁気による分離も容易であると推測される。
【0074】
(実施例2)
実施例1でシリカから分離、回収された鉄系浄化材を、製鉄所で発生したダスト類と共にロータリーキルン方式の還元ペレット製造装置で焼結することにより再生した。このときの回収された鉄系浄化材とダスト類の比率は10:90とした。なお、前記再生時の条件は実施例1の場合と同様で、還元ガスには不完全燃焼で発生した燃焼排ガスを用い、還元ペレット製造装置の中心温度を1350℃で制御した。
【0075】
再生された鉄系浄化材の分析結果を表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
この鉄系浄化材を用いて実施例1の場合と同様の方法で鉛水溶液の浄化試験を実施した結果、ダスト類のみを原料として用いた鉄系浄化材の場合と同様、鉛を吸着できることを確認した。
【0078】
(実施例3)
実施例1で用いた鉄系浄化材1gを10mg/lのトリクロロエチレン溶液10mlに入れ、トリクロロエチレン濃度の経時変化を調べた。
【0079】
調査結果を図1に示す。この結果から明らかなように、トリクロロエチレン濃度は初期(反応初期)に急激に減少した後、徐々に減少した。反応初期における急激な減少はトリクロロエチレンの鉄系浄化材への吸着反応によるものであり、後期の緩慢な減少はトリクロロエチレンの鉄系浄化材による分解反応(先に述べた▲5▼の式)によるものと考えられる。
【0080】
トリクロロエチレンで汚染された土壌および/または地下水の浄化反応で重要なのは、後期の分解反応である。
【0081】
そこで次に、実施例1で原料として用いたダスト類をロータリーキルン内で造粒する際に、酸化カルシウムを共存させて製造した、酸化カルシウム含有量の異なる鉄系浄化材(粒径が1〜5mm)のそれぞれ1gを別々に20mg/lのトリクロロエチレン溶液10mlに入れ、前記の反応後期におけるトリクロロエチレンの減少速度(分解速度)定数を求めた。
【0082】
調査結果を図2に示す。図2において、破線で示した減少速度定数は微粒の金属鉄粉(同和鉱業製「E−200」、粒径:−150μm)について前記と同様に求めた減少速度定数である。なお、同図において、縦軸の「トリクロロエチレンの減少速度定数」の単位のd−1は、日(day)の逆数を表す。
【0083】
図2に示したように、ダスト類を還元性雰囲気中で加熱・焼結して得られた鉄系浄化材を使用した場合は、金属鉄粉を使用した場合よりもトリクロロエチレンの減少速度定数が大きいこと、鉄系浄化材中の酸化カルシウム含有量が増すにつれてトリクロロエチレンの減少速度定数は低下し、酸化カルシウム含有量が10質量%を超えると金属鉄粉を使用した場合よりも小さく、反応性が劣ることが認められた。ダスト類を還元性雰囲気中で加熱・焼結して得られた鉄系浄化材の方が微粒の金属鉄粉を用いた場合よりトリクロロエチレンの減少速度定数が大きいのは、ダスト類を焼結して得られた鉄系浄化材を構成する各粒子の表面に形成されている酸化鉄の皮膜により、金属鉄の電荷分離反応(前記の▲1▼式の反応)が促進されるからである。なお、浄化材中の酸化カルシウム含有量が増すにつれてトリクロロエチレンの分解に寄与しない酸化カルシウムが金属鉄表面を覆うため、トリクロロエチレンの減少速度定数は低下する。
【0084】
【発明の効果】
本発明の鉄系浄化材は、鉄系で、1mm以上の粒径を有しており、重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌や地下水等を浄化することができる。また、特に重金属類で汚染された微粒の土壌を浄化(処理)した後、その土壌から重金属類を表面に固定した鉄系浄化材を分離することができるので、汚染土壌を最終処分場に運搬・廃棄することなく、現場で重金属類を効率的に除去して、汚染現場の重金属類の含有量を低下させることができる。
【0085】
重金属類を表面に固定した鉄系浄化材は、還元性雰囲気中で加熱・焼結することにより再生が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鉄系浄化材によるトリクロロエチレンの分解の経時変化を示す図である。
【図2】本発明の鉄系浄化材中の酸化カルシウム含有量とトリクロロエチレンの減少速度(分解速度)定数の関係を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境浄化材料およびその製造方法と使用方法に関し、詳しくは、重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌や地下水等を現場で浄化するための環境浄化材料およびその製造方法と使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微粉状の金属鉄粉は、重金属類や揮発性有機化合物(有機ハロゲン化合物や難分解性有機化合物等)で汚染された土壌、地下水等、広い意味での「環境」を浄化する作用があるため、環境浄化用材料として注目されている。例えば、特開昭64−27690号公報では、難分解性有機化合物を含有する水を金属鉄粉等の金属系還元剤を用いて浄化する方法が提案されており、特表平6−506631号公報では、有機ハロゲン化合物で汚染された水を活性炭と金属鉄のヤスリ屑からなる透過性混合物に通すことにより前記汚染水を浄化する技術が提案されている。
【0003】
また、金属鉄粉は、有機ハロゲン化合物や難分解性有機化合物による汚染だけでなく、重金属類により汚染された地下水の浄化にも有効である。例えば、特開平11−336060号公報では、金属粉末を用いることにより6価クロム、カドミウム、鉛、セレン、砒素などの重金属類を除去できることが報告されている。
【0004】
このような金属鉄粉の揮発性有機化合物や重金属類により汚染された土壌や地下水等に対する浄化作用は、以下に述べるように、金属鉄が腐食される際に生じる反応に類似の反応が一部生じることによるものである。
【0005】
金属鉄の水の存在下における腐食反応は一般に以下のように進行する。
【0006】
【化1】
【0007】
前記の▲1▼式および▲2▼式は、それぞれ、酸化によりFeが溶解する反応および腐食液中の溶存酸素が還元される反応であり、▲3▼式および▲4▼式は、溶解したFeが水酸化物を形成し、さらに酸化されていわゆるさび(FeOOH)を形成する反応である。
【0008】
これらの反応の中で 、▲2▼式に代わって、以下に述べる▲5▼式または▲6▼式の反応が進行することにより、土壌や、それに地下水がしみ込んだ土壌や、土壌が混濁した地下水や、汚染物質が溶け込んだ地下水等(以下、これらを「土壌および/または地下水」と記す。なお、「地下水」とは、通常、地下水といわれているものの他、地表面下にある水をいう)に含まれる汚染物質が浄化される。
【0009】
例えば、揮発性有機化合物として、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、ヘキサクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、cis−1,2−ジクロロエチレン、trans−1,2−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロエチレン、塩化ビニル、1,2,3−トリクロルプロパン、1,2−ジクロロプロパン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、へキサクロロブタジエン、1,2−ジブロモエタン、フロン113、N−ニトロソジメチルアミン等があげられるが、それらを代表して有機塩素化合物をとり、RCl(Rはアルキル基を表す)で示すと、▲5▼式に従い、土壌および/または地下水中の有機塩素化合物(RCl)が還元され、分解される。
【0010】
RCl+H++2e− →RH+Cl− ・・・▲5▼
また、重金属類としては、6価クロム、ニッケル、鉛、ウラン、テクネチウム、鉄、マンガン、銅、コバルト、砒素、カドミウム、セレン、亜鉛、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、ヒ酸イオン等があげられるが、それらを代表して重金属イオンを6価クロムイオンで示すと、▲6▼式が進行して、6価クロムイオンが3価に還元されて、土壌および/または地下水中の重金属類が金属鉄粉上に固定される。
【0011】
CrO4 2−+4H++3e− →Cr(OH)3+OH− ・・・▲6▼
このように、金属鉄粉は重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌および/または地下水の浄化に有用である。
【0012】
金属鉄粉を製造する方法としては、最近いくつかの方法が開示されている。例えば、特開2002−20806号公報には、粉末冶金で発生する鉄系廃棄物を加熱処理して、それに含まれる油分(鉄粉の表面をコーティングして偏析を防止するためにに加える有機系バインダー)を除去し、反応性の高い汚染浄化用鉄粉を得る方法が開示されており、特開2002−167602号公報には、平均粒径が10μm以上2000μm以下の大粒径鉄粉の表面に、平均粒径が0.05μm以上10μm未満の小粒径鉄粉を焼結により付着させた有機ハロゲン化合物の分解に好適な鉄粉が開示されている。また、微粒子の鉄粉を酸化銅と混合した後に還元性雰囲気または非酸化性雰囲気で焼成して、鉄と銅の両者が表面に顕れている粒状の有機ハロゲン化合物分解剤(特開2002−69425号公報)や、ニッケル、銅、コバルト、モリブデンのうちの少なくとも一種の金属を表面に有し、それ以外の部分が鉄酸化皮膜で被覆されている有機ハロゲン化合物分解用鉄粉(特開2002−161263号公報)等が提案されている。
【0013】
しかしながら、これらの方法で製造された鉄粉は、微粉状であり、汚染された土壌の浄化に使用された後にその土壌から鉄粉を分離することが困難であるため、汚染現場に残されることとなる。その結果、例えば重金属類により汚染されている土壌においては、土壌中の重金属類は金属鉄粉上に固定されるが、汚染土壌から重金属類を分離することが困難なために、土壌中の重金属類の含有量を減少させることはできなかった。そのため、汚染土壌中の重金属類の含有量を減少させるためには、汚染土壌を最終処分場まで運搬、廃棄し、新たに清浄な土壌を埋め戻すという対策が必要であった。
【0014】
しかし、最終処分場が不足する事態が予想されるために、汚染現場で重金属を処理する技術(重金属類を金属鉄粉上に固定するとともに、汚染土壌中の重金属類の含有量を減少させる技術)の開発が望まれている。
【0015】
一方、汚染された土壌や地下水の浄化に用いられる鉄系の浄化材料は大量に使用されるため、廉価で安定した品質を有する浄化材料を工業的に製造する方法の開発に対する要請も大きい。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような状況に鑑みなされたもので、その目的は、重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌および/または地下水等を浄化することができ、特に重金属類で汚染された土壌を最終処分場に運搬・廃棄することなく、現場で重金属類を効率的に除去して、汚染現場の重金属類の含有量、あるいはその他の汚染物質の含有量を低下させ得る鉄系の環境浄化材料(以下、「鉄系浄化材」、または単に「浄化材」という)、およびその製造方法と使用方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酸化鉄の皮膜をその表面に有する金属鉄粉が汚染された土壌および/または地下水から効率的に重金属を固定化し、あるいは揮発性有機化合物を分解することができ、しかも、酸化皮膜を有することにより、赤錆の発生による二次的な汚染を防止できることを見いだした。
【0018】
さらに、特定の粒径を有する鉄系浄化材を使用することにより、上記効果に加えて、浄化後の土壌と浄化に使用した鉄系浄化材とを容易に分離することが可能であることを見いだした。
【0019】
このような特定の粒径を有する鉄系浄化材は、還元性雰囲気下で、微粉状の鉄系化合物を回転キルン(ロータリーキルン)で焼結することにより製造することができ、また、鉄鋼業等で多用されている融剤のカルシウム(例えば、酸化カルシウム)を添加することが粒経制御に有効であることを知見した。なお、浄化後の土壌から分離した鉄系浄化材を再び還元性雰囲気中で焼結することにより、前記微粉状の鉄系化合物を還元性雰囲気下で焼結することにより得られた浄化材と同様の浄化能力を前記土壌から分離した鉄系浄化材に付与することが可能であることを確認した。
【0020】
本発明は、このような知見に基づいてなされたもので、その要旨は、下記(1)の鉄系浄化材、(2)のその浄化材の製造方法、および(3)のその浄化材の使用方法にある。
【0021】
(1)粒径が篩分級法で実質的に1mm以上である鉄系浄化材。
【0022】
ここで、「鉄系浄化材」とは、金属鉄や酸化鉄を主成分とする混合物で、汚染された土壌や地下水の浄化に使用されるものである。
【0023】
また、「実質的に1mm以上」とは、前記鉄系浄化材の製造後、必要なハンドリング、使用現場までの輸送等の際の粒子の粉化、貯蔵時の湿分により生じる酸化反応による粉化等により不可避的に混入してくる粒径が1mm未満の微粒子は、含まれていてもよいことを意味する。具体的な比率で表すと、粒径1mm未満のものが10質量%以下含まれていてもよい。以下、単に「1mm以上」と記す。なお、10質量%を超えて含まれると、後述するように、例えば土壌の浄化に使用した後、その土壌から分離、回収される鉄系浄化材の割合が減少し、地中に残存する浄化材量が増加する。その結果、土壌中の重金属類の含有量が、粒径1mm以上の浄化材を用いた場合に比べて増大し易くなる。
【0024】
この鉄系浄化材は、還元性雰囲気中で加熱、焼結されたものであれば、土壌の浄化の際に、赤錆の発生による二次的な汚染を防止することができ、好ましい。
【0025】
(2)微粉状の酸化鉄を主成分とする鉄系化合物を還元性雰囲気中で加熱し、焼結する前記(1)に記載の鉄系浄化材の製造方法。
【0026】
前記(1)に記載の鉄系浄化材を、汚染された土壌および/または地下水の浄化に使用した後、土壌および/または地下水から分離し、これを還元性雰囲気中で加熱し、焼結することによって、これに、前記(2)に記載の鉄系化合物を加熱・焼結する方法により得られた鉄系浄化材と同様の浄化能力を付与することができる。
前記の加熱、焼結を、回転キルンを用いて行い、鉄系浄化材中における含有量が酸化カルシウムに換算して15質量%未満になるようにカルシウムを加えると、キルン内の被処理物の流動性を確保することができ、回転キルンを安定して運転することができ、粒経制御に有効である。
【0027】
(3)前記(1)に記載の鉄系浄化材(前記(2)に記載の、浄化に使用した後、土壌等から分離した浄化材料を還元性雰囲気中で加熱し、焼結することによって得られた鉄系浄化材を含む)を汚染された土壌および/または地下水に接触させて前記土壌および/または地下水を浄化する鉄系浄化材の使用方法。
【0028】
前記のように鉄系浄化材を汚染された土壌および/または地下水に接触させて使用した後、その鉄系浄化材を土壌および/または地下水から分離する使用方法を採れば、汚染土壌および/または地下水から重金属類を鉄系浄化材に固定させた状態で分離することができ、土壌中の重金属類の含有量を減少できるので好適である。
【0029】
前記の鉄系浄化材の分離は、分級(粒度別に分けること)により行うことができ、特に、篩い分けおよび/または磁気による選別により行うのが簡便である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明(上記(1)の鉄系浄化材、(2)のその浄化材の製造方法、および(3)のその浄化材の使用方法)について詳細に説明する。
【0031】
上記(1)の鉄系浄化材は、粒径が篩分級法で1mm以上である鉄系浄化材である。
【0032】
この浄化材は、鉄系なので、重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌や地下水等に接すると、前述した▲1▼式の反応(酸化反応)が起こってFeが溶解し、これに対する還元反応として▲2▼式の反応(溶存酸素の還元反応)が起こる代わりに、前記の▲6▼式の反応または▲5▼式の反応が進行する。その結果、汚染物質が重金属類であれば、還元されて浄化材料の表面に固定され、また、汚染物質が揮発性有機化合物(例えば、有機ハロゲン化合物)であれば、還元、脱ハロゲン化され、無害化される。
【0033】
この鉄系浄化材の粒径が篩分級法で1mm以上であること、すなわち、鉄系浄化材が粒径が1mm以上の粒子で構成されていることとするのは、以下に述べる理由によるものである。
【0034】
一般に、汚染された土壌の中で処理が困難な土壌は粒径の小さい泥状を呈する土壌である。泥状のため、水の透水性は小さく、汚染物質が長期間にわたり滞留しがちである。
【0035】
そこで、このような泥状の汚染土壌、またはそれに地下水がしみ込んだ泥状物、または汚染された地下水の浄化に用いられる鉄系浄化材は、それを用いて処理した(つまり、浄化した)土壌との分離が容易に行えるように、篩分級法で少なくとも1mmの粒径を有することとする。粒径が1mm未満では、前記の泥状の汚染土壌等とその浄化に用いた浄化材料との分離が困難で、例えば、重金属類により汚染されている土壌においては、土壌中の重金属類は浄化材上に固定はされるが、汚染土壌から重金属類を分離することが困難なために、土壌中の重金属類そのものを減少させることはできないからである。
【0036】
この鉄系浄化材の粒径の上限は特に限定されない。鉄系の環境浄化用の材料であって、粒状のものであるという前提の下にあっては、浄化反応の効率、取扱い上の利便性等の面から自ずと望ましい上限が定まるからである。そのような意味からすれば、好ましい上限は、10mm程度である。
【0037】
このように、本発明の鉄系浄化材において、その粒径が篩分級法で1mm以上とする最大の理由は、浄化した土壌との分離の容易性を確保するためである。したがって、浄化処理対象の土壌の粒度構成、汚染物質の分布状況等を勘案しつつ、用いる浄化材の粒径の下限、好ましい上限を適宜調整することができる。
【0038】
また、汚染された地下水等を対象として浄化処理を行う場合においては、本発明の浄化材は、粒径が1mm以上であることから透水性がよく、その結果、砂などの透水性材料と混合使用することなく周辺の地下水を浄化材の層に集めることが可能であり、浄化を効率的に行えるという利点も有している。
【0039】
上記(1)の鉄系浄化材が、還元性雰囲気中で加熱、焼結されたものであれば、この浄化材を構成する各粒子の表面に酸化鉄の皮膜が形成されており、土壌の浄化の際に、赤錆の発生による二次的な汚染を防止することができるので好ましい。これは、鉄系浄化材の製造時に原料として用いる酸化鉄を還元、焼結したときに残存するマグネタイトを主成分とする酸化皮膜によるもので、マグネタイトが共存するとゲータイトが生成することなくマグネタイトが成長するが、共存しない場合には赤錆(ゲータイト)が生成するまで酸化反応が進行する。
【0040】
上記(1)の鉄系浄化材は、微粉状の酸化鉄を主成分とする鉄系化合物を還元性雰囲気中で加熱し、焼結することにより製造することができる。
【0041】
前記の「酸化鉄を主成分とする鉄系化合物」としては、例えば、製鉄所内で発生するダスト・スラッジ類があげられる。しかし、必ずしも製鉄所内に限定されることはない。「主成分とする」には、例えば「何%以上」という厳密な意味はなく、酸化鉄が過半量を占める程度であればよい。その程度含まれていれば、還元性雰囲気中で加熱し、焼結することにより、上記(1)の鉄系浄化材とすることができ、先に述べた▲5▼式、▲6▼式の反応により汚染物質の還元を現実に進行させることができるからである。
【0042】
この鉄系浄化材の好ましい製造方法の一例を以下に示す。
【0043】
微粉状の酸化鉄を主成分とする鉄系化合物を、燃料となる炭素源と共に回転キルン中に供給する。炭素源に対して化学量論的に当量以下の酸素を供給して、回転キルン内を還元性雰囲気に保ちながら、加熱する。加えられた熱とキルンの回転により、微粉状の鉄系化合物は造粒されると同時に、還元される。
【0044】
前記の炭素源としては、粉コークス、微粉炭、あるいは製鉄所副生ガス等が好適である。
【0045】
回転キルン内の温度は1000℃以上が好ましい。1000℃未満では造粒が不十分になりがちである。
【0046】
前記の鉄系化合物に代えて、上記(1)の鉄系浄化材を汚染された土壌および/または地下水の浄化に使用した後、土壌および/または地下水から分離したものを用いてもよい。これを還元性雰囲気中で加熱し、焼結することによって、鉄系化合物から得られた鉄系浄化材と同様の浄化能力を付与し、上記(1)の鉄系浄化材として再生することができる。なお、その場合、前記鉄系化合物の一部に代えて、土壌等の浄化に使用した後にそれから分離した浄化材を用い、還元性雰囲気中で加熱・焼結することが好ましい。
【0047】
前記の回転キルン内での造粒時に、カルシウムを共存させると、キルン内の被処理物の流動性を確保することができ、回転キルンを安定して運転することができる。すなわち、浄化材料の過度の造粒を防止して、適正な粒径の浄化材料を製造することができる。なお、カルシウムとしては、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が使用できる。
【0048】
後述する実施例に示すように、前記造粒時に共存させるカルシウムの量、すなわち鉄系浄化材のカルシウム含有量は、酸化カルシウムに換算して15質量%以下とするのが好ましい。カルシウムの含有量が15質量%以下であれば、市販されているような粒径の小さい金属鉄粉を単独で使用する場合と同等またはそれ以上の浄化効果を得ることができる。カルシウムを含有させる効果を効率的に発揮させるためには、前記含有量を13質量%以下とするのが好ましく、特に好ましいのは10質量%以下である。
【0049】
一方、回転キルン内に塊が生成しない状態で安定して操業を行うために、鉄系浄化材のカルシウム含有量は4質量%以上とするのが好ましい。カルシウム含有量が増加すると回転キルンの操業性は向上するが、その含有量が15質量%を超えると、目的とする鉄系浄化材の浄化反応速度が低下する。鉄系浄化材のカルシウム含有量はこれらを総合的に考慮して決定すればよい。
【0050】
このようにして製造された特定の粒径を有する鉄系浄化材を用いて、汚染された土壌および/または地下水を浄化することができる。
【0051】
前記浄化に際しては、上記(1)に記載の鉄系浄化材を汚染された土壌および/または地下水に接触させればよい。具体的には、汚染現場の状況に応じて、鉄系浄化材と汚染した土壌および/または地下水とを直接混合して浄化する方法、透過性の壁を設けて、流出する地下水に含まれる汚染物質を浄化して間接的に汚染土壌を浄化する方法等を用いることができる。
【0052】
鉄系浄化材と汚染土壌を直接混合して浄化する場合には、土壌に含まれる水のみでは先に述べた▲1▼式の反応が十分には進まず、それに伴って生じる▲5▼式または▲6▼式の反応の進行に時間がかかるので、水を添加して全体を攪拌混合し、浄化に要する時間を短縮することができる。鉄系浄化材が存在することにより、使用した水は重金属に汚染されることなく、そのまま放流することも可能であるが、経済性の観点から循環使用することが望ましい。
【0053】
水に対する重金属の溶解度を増加させるために、水に鉱酸を添加することも可能である。その処理水を放流する場合には重金属の流出の惧れはないが、鉄系浄化材にカルシウムが含まれている場合には処理水はアルカリ性を呈するので、pH調整等が必要となる。
【0054】
なお、鉄系浄化材としては、酸化鉄を主成分とする鉄系化合物を還元性雰囲気中で加熱し、焼結することにより製造したもののほかに、浄化に使用した後、土壌等から分離した浄化材を還元性雰囲気中で加熱し、焼結することによって得られた鉄系浄化材を用いてもよい。この場合、浄化に使用後、土壌等から分離した浄化材を還元性雰囲気中で加熱・焼結して得られた鉄系浄化材を単独で用いてもよいし、鉄系化合物を還元性雰囲気中で加熱・焼結して得られた鉄系浄化材と同時にまたは混合して用いてもよい。
【0055】
汚染土壌に対する鉄系浄化材の使用量は特に限定されない。土壌の汚染状況や浄化結果等を勘案しながら、適正量を定めればよい。
【0056】
鉄系浄化材を作用させる前に、予め汚染土壌を洗浄して、粒径が細かな粘土状の汚染土壌を分離して、それに鉄系浄化材を作用させる方法を採ることもでき、好適な使用例としてあげられる。あらかじめ分離された粒径が細かな粘土状の汚染土壌のみを対象とするので、汚染土壌の浄化を効率よく行い、また、本発明の鉄系浄化材は粒径が1mm以上という特定の粒径を有するので、使用後の鉄系浄化材を粒径が細かな粘土状の浄化された土壌から容易に分離することができるからである。
【0057】
また、本発明の鉄系浄化材には粒径の小さい粒子は含まれていないので透水性がよく、先にも述べたように、汚染された地下水等を対象として浄化処理を行う場合においては、周辺の地下水を浄化材の層に集めることが可能であり、浄化を効率的に行うことができる。土壌に混合して使用する際においても、透水性が低下するようなことがなく、水との接触が容易である。
【0058】
なお、本発明の鉄系浄化材を使用するに際し、前記の分離を行わず、従来行われているように、浄化材を処理現場に残したままとする方法を採ってもよい。土壌中の重金属の含有量を減少させることはできないが、重金属は還元され、鉄系浄化材上に固定されるので、重金属の流出はなく、安全性は確保される。
【0059】
前記の使用後の鉄系浄化材の分離の方法としては、粒径の差を利用した篩い分け、密度の差を利用した風力を用いる方法、鉄系浄化材の磁気的性質を利用する方法等が採用可能であり、これらの方法を、単独であるいは組み合わせて用いることができる。
【0060】
分離した後の鉄系浄化材は、先にも述べたように、還元性雰囲気下での加熱・焼結により再生することができる。その際、汚染物質が、例えば砒素、カドミウム、亜鉛等の重金属類であれば、それら重金属類を、その沸点以上に加熱することにより蒸発させ、鉄系浄化材と分離することができる。
【0061】
以上述べたように、本発明の浄化材は、鉄系で、1mm以上の粒径を有しており、重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌、地下水等を浄化することができる。また、特に重金属類で汚染された微粒の土壌を浄化(処理)した後、その処理後の土壌から、重金属類を表面に固定した浄化材を分離することができるので、その汚染された土壌を最終処分場に運搬・廃棄することなく、汚染現場の重金属類の含有量、あるいはその他の汚染物質の含有量を低下させることができる。
【0062】
重金属類を表面に固定した浄化材は、還元性雰囲気中で加熱・焼結することにより再生が可能である。
【0063】
【実施例】
(実施例1)
鉄系浄化材としては、製鉄所で発生したダスト類をロータリーキルン方式の還元ペレット製造装置で焼結することにより製造した材料のうちの、篩分級法で分級した粒径が1〜5mmのものを使用した。なお、還元ガスには、不完全燃焼で発生した燃焼排ガスを用い、還元ペレット製造装置の中心温度を1350℃で制御した。
【0064】
表1に還元ペレット製造装置で製造した材料(鉄系浄化材)の粒度別の全Fe量、金属Fe量、CaO含有量および比表面積を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
また、泥状の汚染土壌のモデルとして微粒のシリカ(SiO2)を使用した。この微粒シリカは日本エアロジル社製のAEROSIL−130であり、一時粒子の平均粒径が約16nmである。
【0067】
前記の鉄系浄化材2gまたはシリカ1gを、それぞれ鉛の濃度が100mg/l(リットル)の鉛水溶液40mlに入れ、24時間攪拌した後、ろ過により鉄系浄化材またはシリカをそれぞれ鉛水溶液と分離し、鉄系浄化材、シリカのそれぞれについて、ろ過後の固形分とろ液(鉛水溶液)中の鉛含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表2の結果に示されるように、鉄系浄化材では鉛が完全に鉄系浄化材に沈積しており、シリカでは逆に鉛はほとんどが水溶液中に残り、シリカ上にはわずかの付着が認められた。
【0070】
次に、前記の鉄系浄化材2gとシリカ1gを、鉛の濃度が100mg/l(リットル)の鉛水溶液40mlに入れ、24時間攪拌した後、ろ過により固形分と鉛水溶液とを分離した。さらに、固形分を、乾燥した後、篩を用いて鉄系浄化材とシリカに分離し、シリカ、鉄系浄化材および鉛水溶液中の鉛含有量を測定した。結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
表3の結果から、鉛は鉄系浄化材に選択的に沈積していることがわかる。しかも、この鉄系浄化材は篩分けで汚染土壌に擬した微粒子のシリカと容易に分離できることが確認された。
【0073】
なお、前記のろ過により鉛水溶液から分離した固形分に磁石を近づけると鉄系浄化材が選択的に磁石に付くことが観察できることから、磁気による分離も容易であると推測される。
【0074】
(実施例2)
実施例1でシリカから分離、回収された鉄系浄化材を、製鉄所で発生したダスト類と共にロータリーキルン方式の還元ペレット製造装置で焼結することにより再生した。このときの回収された鉄系浄化材とダスト類の比率は10:90とした。なお、前記再生時の条件は実施例1の場合と同様で、還元ガスには不完全燃焼で発生した燃焼排ガスを用い、還元ペレット製造装置の中心温度を1350℃で制御した。
【0075】
再生された鉄系浄化材の分析結果を表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
この鉄系浄化材を用いて実施例1の場合と同様の方法で鉛水溶液の浄化試験を実施した結果、ダスト類のみを原料として用いた鉄系浄化材の場合と同様、鉛を吸着できることを確認した。
【0078】
(実施例3)
実施例1で用いた鉄系浄化材1gを10mg/lのトリクロロエチレン溶液10mlに入れ、トリクロロエチレン濃度の経時変化を調べた。
【0079】
調査結果を図1に示す。この結果から明らかなように、トリクロロエチレン濃度は初期(反応初期)に急激に減少した後、徐々に減少した。反応初期における急激な減少はトリクロロエチレンの鉄系浄化材への吸着反応によるものであり、後期の緩慢な減少はトリクロロエチレンの鉄系浄化材による分解反応(先に述べた▲5▼の式)によるものと考えられる。
【0080】
トリクロロエチレンで汚染された土壌および/または地下水の浄化反応で重要なのは、後期の分解反応である。
【0081】
そこで次に、実施例1で原料として用いたダスト類をロータリーキルン内で造粒する際に、酸化カルシウムを共存させて製造した、酸化カルシウム含有量の異なる鉄系浄化材(粒径が1〜5mm)のそれぞれ1gを別々に20mg/lのトリクロロエチレン溶液10mlに入れ、前記の反応後期におけるトリクロロエチレンの減少速度(分解速度)定数を求めた。
【0082】
調査結果を図2に示す。図2において、破線で示した減少速度定数は微粒の金属鉄粉(同和鉱業製「E−200」、粒径:−150μm)について前記と同様に求めた減少速度定数である。なお、同図において、縦軸の「トリクロロエチレンの減少速度定数」の単位のd−1は、日(day)の逆数を表す。
【0083】
図2に示したように、ダスト類を還元性雰囲気中で加熱・焼結して得られた鉄系浄化材を使用した場合は、金属鉄粉を使用した場合よりもトリクロロエチレンの減少速度定数が大きいこと、鉄系浄化材中の酸化カルシウム含有量が増すにつれてトリクロロエチレンの減少速度定数は低下し、酸化カルシウム含有量が10質量%を超えると金属鉄粉を使用した場合よりも小さく、反応性が劣ることが認められた。ダスト類を還元性雰囲気中で加熱・焼結して得られた鉄系浄化材の方が微粒の金属鉄粉を用いた場合よりトリクロロエチレンの減少速度定数が大きいのは、ダスト類を焼結して得られた鉄系浄化材を構成する各粒子の表面に形成されている酸化鉄の皮膜により、金属鉄の電荷分離反応(前記の▲1▼式の反応)が促進されるからである。なお、浄化材中の酸化カルシウム含有量が増すにつれてトリクロロエチレンの分解に寄与しない酸化カルシウムが金属鉄表面を覆うため、トリクロロエチレンの減少速度定数は低下する。
【0084】
【発明の効果】
本発明の鉄系浄化材は、鉄系で、1mm以上の粒径を有しており、重金属類や揮発性有機化合物で汚染された土壌や地下水等を浄化することができる。また、特に重金属類で汚染された微粒の土壌を浄化(処理)した後、その土壌から重金属類を表面に固定した鉄系浄化材を分離することができるので、汚染土壌を最終処分場に運搬・廃棄することなく、現場で重金属類を効率的に除去して、汚染現場の重金属類の含有量を低下させることができる。
【0085】
重金属類を表面に固定した鉄系浄化材は、還元性雰囲気中で加熱・焼結することにより再生が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鉄系浄化材によるトリクロロエチレンの分解の経時変化を示す図である。
【図2】本発明の鉄系浄化材中の酸化カルシウム含有量とトリクロロエチレンの減少速度(分解速度)定数の関係を示す図である。
Claims (9)
- 粒径が篩分級法で実質的に1mm以上であることを特徴とする鉄系の環境浄化材料。
- 微粉状の酸化鉄を主成分とする鉄系化合物を還元性雰囲気中で加熱し、焼結することを特徴とする請求項1に記載の環境浄化材料の製造方法。
- 請求項1に記載の環境浄化材料を汚染された土壌および/または地下水の浄化に使用した後、土壌および/または地下水から分離し、これを還元性雰囲気中で加熱し、焼結することを特徴とする環境浄化材料の製造方法。
- カルシウムの含有量が酸化カルシウムに換算して15質量%未満であることを特徴とする請求項2または3に記載の環境浄化材料の製造方法。
- 請求項1に記載の環境浄化材料を汚染された土壌および/または地下水に接触させて前記土壌および/または地下水を浄化することを特徴とする環境浄化材料の使用方法。
- 請求項3に記載の方法で製造された環境浄化材料を汚染された土壌および/または地下水に接触させて前記土壌および/または地下水を浄化することを特徴とする環境浄化材料の使用方法。
- 請求項1に記載の環境浄化材料および/または請求項3に記載の方法で製造された環境浄化材料を汚染された土壌および/または地下水に接触させて前記土壌および/または地下水を浄化し、その後、前記接触させた環境浄化材料を前記浄化した後の土壌および/または地下水から分離することを特徴とする環境浄化材料の使用方法。
- 前記環境浄化材料の分離を分級で行うことを特徴とする請求項7に記載の環境浄化材料の使用方法。
- 前記分級を篩い分けおよび/または磁気による選別により行うことを特徴とする請求項8に記載の環境浄化材料の使用方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002233684A JP2004076027A (ja) | 2002-08-09 | 2002-08-09 | 環境浄化材料およびその製造方法と使用方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002233684A JP2004076027A (ja) | 2002-08-09 | 2002-08-09 | 環境浄化材料およびその製造方法と使用方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004076027A true JP2004076027A (ja) | 2004-03-11 |
Family
ID=32018758
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002233684A Pending JP2004076027A (ja) | 2002-08-09 | 2002-08-09 | 環境浄化材料およびその製造方法と使用方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004076027A (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005320481A (ja) * | 2004-05-11 | 2005-11-17 | Dowa Mining Co Ltd | 有機ハロゲン系化合物の分解剤およびその製法 |
JP2006061843A (ja) * | 2004-08-27 | 2006-03-09 | Taisei Corp | 鉄粉および金属粉 |
JP2008086876A (ja) * | 2006-09-29 | 2008-04-17 | Nippon Sheet Glass Co Ltd | 重金属及び/又は非金属を含有する媒体の処理方法 |
US7524350B2 (en) * | 2004-10-12 | 2009-04-28 | Ibiden Co., Ltd. | Ceramic honeycomb structural body |
JP2011041935A (ja) * | 2009-07-24 | 2011-03-03 | Kobe Steel Ltd | 重金属類を含有する汚染水の処理剤および処理方法 |
JP2018099636A (ja) * | 2016-12-19 | 2018-06-28 | 日本磁力選鉱株式会社 | 汚染物質の無害化処理用吸着剤 |
-
2002
- 2002-08-09 JP JP2002233684A patent/JP2004076027A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005320481A (ja) * | 2004-05-11 | 2005-11-17 | Dowa Mining Co Ltd | 有機ハロゲン系化合物の分解剤およびその製法 |
JP2006061843A (ja) * | 2004-08-27 | 2006-03-09 | Taisei Corp | 鉄粉および金属粉 |
US7524350B2 (en) * | 2004-10-12 | 2009-04-28 | Ibiden Co., Ltd. | Ceramic honeycomb structural body |
JP2008086876A (ja) * | 2006-09-29 | 2008-04-17 | Nippon Sheet Glass Co Ltd | 重金属及び/又は非金属を含有する媒体の処理方法 |
JP2011041935A (ja) * | 2009-07-24 | 2011-03-03 | Kobe Steel Ltd | 重金属類を含有する汚染水の処理剤および処理方法 |
JP2018099636A (ja) * | 2016-12-19 | 2018-06-28 | 日本磁力選鉱株式会社 | 汚染物質の無害化処理用吸着剤 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Li et al. | Removal and immobilization of heavy metals in contaminated soils by chlorination and thermal treatment on an industrial-scale | |
Gupta et al. | Process development for the removal of lead and chromium from aqueous solutions using red mud—an aluminium industry waste | |
Bhattacharjee et al. | Removal of lead from contaminated water bodies using sea nodule as an adsorbent | |
Guan et al. | Enhanced immobilization of chromium (VI) in soil using sulfidated zero-valent iron | |
Agrawal et al. | Kinetic and isotherm studies of cadmium adsorption on manganese nodule residue | |
KR100921261B1 (ko) | 토양ㆍ지하수의 정화 처리용 철 입자, 그의 제조법, 해당철 입자를 포함하는 정화제, 그의 제조법 및토양ㆍ지하수의 정화 처리 방법 | |
JP6118571B2 (ja) | 汚染土壌の処理方法 | |
JP2010069391A (ja) | 汚染土壌の浄化方法および浄化装置 | |
Agrawal et al. | Systematic studies on adsorption of lead on sea nodule residues | |
Tian et al. | Mechanism analysis of selenium (VI) immobilization using alkaline-earth metal oxides and ferrous salt | |
JP2007125536A (ja) | 有害成分の固定化薬剤および固定化方法 | |
US20060021946A1 (en) | Method and material for water treatment | |
Jiang et al. | Stabilization of arsenic, antimony, and lead in contaminated soil with montmorillonite modified by ferrihydrite: Efficiency and mechanism | |
Letina et al. | Investigating waste rock, tailings, slag and coal ash clinker as adsorbents for heavy metals: Batch and column studies | |
JP2005230643A (ja) | 汚染土壌の浄化方法 | |
Drobíková et al. | Bioleaching of hazardous waste | |
JP2004076027A (ja) | 環境浄化材料およびその製造方法と使用方法 | |
US20050051493A1 (en) | Material and method for water treatment | |
Liu et al. | A high-efficient and recyclable aged nanoscale zero-valent iron compound for V5+ removal from wastewater: Characterization, performance and mechanism | |
Jiabao et al. | Pyrometallurgy treatment of electroplating sludge, emulsion mud and coal ash: ZnAlFeO4 spinel separation and stabilization in calcium metasilicate glass | |
Zhang et al. | Passivation efficiency and mechanism of arsenic-contaminated mining soil with iron-based solid wastes in collaboration with ferrous sulfate | |
Gonzalez-Olmos et al. | Use of by-products from integrated steel plants as catalysts for the removal of trichloroethylene from groundwater | |
Zhao et al. | Elimination of Chromium (VI) and Vanadium (V) from Waters by Carboxymethylcellulose-Stabilized Amorphous Nanoscale Zero-Valent Iron | |
JP2004082102A (ja) | 有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化剤、その製造法及び有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水の浄化処理方法 | |
Radjenovic et al. | Removal of Ni2+ from aqueous solution by blast furnace sludge as an adsorbent |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20041029 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050322 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20050726 |