JP2004242057A - スピーカシステム、スピーカユニットの駆動方法、および表示装置 - Google Patents

スピーカシステム、スピーカユニットの駆動方法、および表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】表示装置に設置されるようなスピーカシステムでは充分な音響効果が得られなことがある。
【解決手段】左第1スピーカユニットSPL1、左第2スピーカユニットSPL2、左第3スピーカユニットSPL3に供給される信号の位相は、外側のスピーカユニットほど遅延が大きくなり、あたかも、左第1スピーカユニットSPL1、左第2スピーカユニットSPL2、左第3スピーカユニットSPL3と順に信号が伝達される。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、スピーカシステムおよびスピーカシステムを備える表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビやPC用の液晶ディスプレイでは、映像の質の向上に注力されているが、音の質に関しては、コスト低減という観点から、あまり重視されない傾向がある。テレビなどでは、高音質のスピーカシステムを搭載している旨をうたっているケースもあるが、一般には、搭載可能なスペースが限られていることから、どうしても、音質には限界がある。省スペースという観点で、例えば、一平面でステレオ音響を実現する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、現在、DVD(Digital Versatile Disc)等が一般に普及し、高品質の映像とともに5.1チャンネルや7.1チャンネルの信号を用いたサラウンド効果と呼ばれる音響効果が提供されている。5.1チャンネルによる音響効果を得るためには、一般には、センターチャンネル用に1台、前方の左右のチャンネル用に2台、後方左右のチャンネル用に2台、低音域専用に1台の計6台のスピーカシステムが必要となる。
【0004】
【特許文献1】
特表2002−528018号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この音響効果を実現するためには、上述の6台のスピーカユニットを、視聴者を取り囲むように配置する必要がある。そのためには、それなりのスペースと、装置が必要となり、設置空間を充分に確保できないユーザもでてくる。また、6台のスピーカシステムの配線も煩雑になり、この点で敬遠するユーザがでてくる。また、上記特許文献1で提案されている技術では、省スペースでステレオ効果を実現しているが、音の広がり、つまりサラウンド効果の実現という観点では、改善の余地が残る。また、2台のスピーカユニットでサラウンド効果を実現する技術がドルビー(登録商標)などで提案されているが、専用のDSP(Digital Signal Processor)等の回路が必要となり、コストが上昇し、設置可能となる表示装置が限定されてしまう。
【0006】
一方、テレビやパーソナルコンピュータに用いられる液晶ディスプレイを利用する際に、上述のような5.1チャンネルによるサラウンドシステムを導入するまではないが、それなりの音響効果を体験したいという要望も依然として存在する。また、供給サイドとしては、専用のDSP回路などを用いず、コスト上昇を抑えつつ、効果的な音響効果を実現し、製品の差別化を行いたいという希望が存在する。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、その目的は、音響効果を効果的に実現する技術を提供することにある。また、別の目的は、コストを抑えつつ効果的な音響効果を実現することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のある態様は、スピーカシステムに関する。このスピーカシステムは、右側音声を出力する複数のスピーカユニットを並列に接続した第1のスピーカユニット群と、左側音声を出力する複数のスピーカユニットを並列に接続した第2のスピーカユニット群と、をキャビネット内の左右に備えるスピーカシステムであって、第1および第2のスピーカユニット群それぞれにおいて、相対的に内側に配置されるスピーカユニットから相対的に外側に配置されるスピーカユニットへ向かう方向において音声信号の位相を遅延させる遅延回路を設けた。このスピーカシステムは、単一キャビネットに配置されてもよい。また、第1および第2のスピーカユニット群それぞれにおいて、各スピーカユニットは略一列に配置されてもよい。
【0009】
例えば、水平方向略一列にスピーカユニットが配置された場合、外側に配置されるスピーカユニットになるに従って、入力される音声信号の位相を遅延させると、サラウンド感が向上する。また、内側に配置されるスピーカユニットになるに従って、入力される音声信号の位相を遅延させると、内側のスピーカユニットになるに従って、奥に位置するような奥行き感が実現できる。
【0010】
本発明の別の態様もスピーカシステムに関する。このスピーカシステムは、キャビネット内にて並列に接続された第1〜第N(Nは2以上の自然数)のスピーカユニットと、第2〜第Nのスピーカユニットに入力される少なくともいずれかの音声信号の位相を遅らせる遅延回路と、を有する。また、遅延回路は、第M(Mは自然数かつ2≦M≦N)のスピーカユニットに入力される音声信号の位相をPとした場合、P≦P≦PかつP<Pを満たすように音声信号の位相を遅延させてもよい。また、連続する複数のスピーカユニットの位相が同一となってもよい。
【0011】
例えば、音声信号を伝達するラインを各スピーカユニットに向けて分岐した後に、各スピーカユニットの直前に遅延回路を設ける構成であれば、各スピーカユニットに入力する音声信号の位相を独立に設定できる。また、徐々に各スピーカユニットにラインが分岐していく構成において、分岐するノード間に遅延回路を設けた場合、遅延回路における音声信号の遅延が加算されることになる。従って、あるノード間で遅延回路を設けない場合、それらノードに接続されるスピーカユニットには、同位相の音声信号が入力される。
【0012】
また、スピーカユニットの中で、相対的に内側に配置されるスピーカユニットより相対的に外側に配置されるスピーカユニット向かう方向において、所定音域が強調された音波を出力するようにスピーカユニットに入力される音声信号に作用する回路を有してもよい。また、音声信号に作用する回路は、高音域が強調された音波を出力するように音声信号の周波数帯域を制限する周波数フィルタを含んでもよい。
【0013】
例えば、複数のスピーカが全て同じ特性を有する場合、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタおよびハイパスフィルタなどの周波数フィルタを用いて、各スピーカユニットに入力される音声信号の周波数帯域を調整すればよい。また、特性の異なるスピーカユニットを用いる場合は、その特性に応じて、周波数フィルタの使用の有無を決定すればよい。一般に、これによって、高音域の音声が内側に配置されるスピーカユニットより外側のスピーカユニットのほうが強調されればよく、これによって、ステレオ効果が向上する。
【0014】
また、スピーカユニットの側方に配置され、前記複数のスピーカユニットのうち、最端に位置するスピーカユニットから出力される音波を反射および拡散する反射装置を更に有してもよい。この反射装置を利用することで、音の広がりを向上させることができる。また、上述のスピーカシステムを、表示装置に搭載してもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本実施の形態では、テレビやモニターなどに設けられる比較的小型のスピーカシステムで、サラウンド効果を実現する。その際、一般に用いられるDSP等の回路を利用せずに、スピーカシステムのみでサラウンド効果を実現する。そのため、左右チャンネルそれぞれ、複数のスピーカユニットを同一キャビネットに概ね水平一列に配置するとともに、並列に接続する。各スピーカユニットに入力された音声信号が、外側のスピーカユニットほど、位相が遅延するようにスピーカシステムを構成する。また、外側のスピーカユニットほど、出力される音声の高音域が強調されるようにスピーカシステムを構成する。このような構成にすることで、スピーカシステムからは、内側から外側に向かって音波が出力されるように聞こえる。また、サラウンド効果を一層向上させるために、スピーカシステムの両サイドに、音を反射および拡散させる機能を有する音声反射装置を配置する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係るスピーカシステム20および表示部12を備える液晶モニター10の構成を示している。本図では、スピーカシステム20は、表示部12の下部に設けられているが、上部に設けられてもよい。スピーカシステム20は、左側チャンネル用の音声信号を入力し音波を出力する左側スピーカユニット群22として、内側から順に、左第1スピーカユニットSPL1、左第2スピーカユニットSPL2、および左第3スピーカユニットSPL3、同様に、右側チャンネル用の音声信号を入力し音波を出力する右側スピーカユニット群24として、内側から順に、右第1スピーカユニットSPR1、右第2スピーカユニットSPR2、および右第3スピーカユニットSPR3を備える。
【0017】
図2は、スピーカシステム20の構成図を示している。左側スピーカユニット群22に左側チャンネルの音声信号を入力する左側チャンネルラインLCSは、左第1ノードNL1で左第1スピーカユニットSPL1に延びる左第1ラインLL1と、左第2ノードNL2に延びる左分岐ラインLLAに分岐する。左分岐ラインLLAは、左第2ノードNL2で、左第2スピーカユニットSPL2に延びる左第2ラインLL2と、左第3スピーカユニットSPL3に延びる左第3ラインLL3に分岐する。
【0018】
左第2ラインLL2は、その途上に、左第1ハイパスフィルタHPL1を備える。左分岐ラインLLAは、その途上に、音声信号の位相を遅延する左第1フェーズシフタPSL1を備える。左第3ラインLL3は、その途上に、左第2ノードNL2側から順に、音声信号の位相を遅延する左第2フェーズシフタPSL2と左第2ハイパスフィルタHPL2を備える。従って、スピーカユニットに入力される音声信号の位相は、音声信号の入力先が左第2スピーカユニットSPL2、左第3スピーカユニットSPL3となるに従って遅延が大きくなる。
【0019】
右側スピーカユニット群24は、左側スピーカユニット群22とは左右対称とした構成である。右側スピーカユニット群24に右側チャンネルの音声信号を入力する右側チャンネルラインRCSは、右第1ノードNR1で右第1スピーカユニットSPR1に延びる右第1ラインRL1と、右第2ノードNR2に延びる右分岐ラインRLAに分岐する。右分岐ラインRLAは、右第2ノードNR2で、右第2スピーカユニットSPR2に延びる右第2ラインRL2と、右第3スピーカユニットSPR3に延びる右第3ラインRL3に分岐する。
【0020】
右第2ラインRL2は、その途上に、右第1ハイパスフィルタHPR1を備える。右分岐ラインRLAは、その途上に、音声信号の位相を遅延する右第1フェーズシフタPSR1を備える。右第3ラインRL3は、その途上に、右第2ノードNR2側から順に、音声信号の位相を遅延する右第2フェーズシフタPSR2と右第2ハイパスフィルタHPR2を備える。
【0021】
なお、スピーカユニットの配置間隔は、等間隔もしくは、外に行くに従って、短くなるように配置するのが望ましい。また、スピーカユニット間の距離は、遅延時間と再生帯域により決定される。例えば、音速が340m/secとすると、34msの遅延が発生し、音源から10m離れたことになる。また、遅延時間が50msを超えると、ユーザは2つの音として認識し、音が重なって聞こえる、いわゆるダブリングと呼ばれる現象が生じたり、音が滲んで聞こえたりという現象が生じる。そこで、各フェーズシフタで発生する遅延時間の合計は、5〜20ms程度に設定することが望ましい。また、例えば、各フェーズシフタが抵抗からなるディレイラインで構成されている場合、その抵抗を可変抵抗とすることで、ユーザによる微調整が可能となる。また、各スピーカユニットの出力を調整可能とするボリュームが設けられてもよい。
【0022】
図3は、左第1ハイパスフィルタHPL1、および左第2ハイパスフィルタHPL2の特性を示している。左第1ハイパスフィルタHPL1は、第1カットオフ周波数fc1を有し、音声信号の低周波領域をカットし、左第2ハイパスフィルタHPL2は、第2カットオフ周波数fc2を有し、左第1ハイパスフィルタHPL1よりも広い範囲に亘って音声信号の低周波領域をカットする。従って、スピーカシステム20において、外側のスピーカユニットほど高音域が強調された音を出力することになる。なお、周波数フィルタの特性として、外側のスピーカユニットほど高音が強調される構成となればよく、例えば、左第1ハイパスフィルタHPL1は、低周波領域をカットするだけでなく高周波領域も一部カットするバンドパスフィルタであってもよい。
【0023】
以上の構成によるスピーカシステム20の動作を、図2に基づいて左側スピーカユニット群22における信号の流れに着目して説明する。左側チャンネルラインLCSに入力された音声信号は、左第1ノードNL1で、左第1ラインLL1と左分岐ラインLLAの2方向に分岐する。左第1ラインLL1に入力された信号は、全帯域幅の周波数を有する音声信号が左第1スピーカユニットSPL1に入力され、入力された音声信号および左第1スピーカユニットSPL1の出力特性に応じた音波が出力される。
【0024】
一方、左分岐ラインLLAに入力された信号は、その経路途上の左第1フェーズシフタPSL1で、位相が遅延され、更に左第2ノードNL2で左第2ラインLL2と左第3ラインLL3の2方向に分岐する。左第2ラインLL2に分岐した音声信号は、その経路途上の左第1ハイパスフィルタHPL1で、左第1ハイパスフィルタHPL1の特性に応じて低周波領域がカットされ左第2スピーカユニットSPL2に入力され、入力された音声信号および左第2スピーカユニットSPL2の特性に応じた音波が出力される。左第3ラインLL3に分岐した音声信号は、その経路途上の左第2フェーズシフタPSL2で、更に位相が遅延され、つづいて、左第2ハイパスフィルタHPL2で、HPL2の特性に応じて、低周波領域をカットされ左第3スピーカユニットSPL3に入力され、入力された音声信号および左第3スピーカユニットSPL3の特性に応じた音波が出力される。
【0025】
従って、左第1スピーカユニットSPL1、左第2スピーカユニットSPL2、左第3スピーカユニットSPL3に供給される音声信号の位相は、左第2スピーカユニットSPL2、左第3スピーカユニットSPL3と順に遅延が大きくなり、ユーザにとっては、あたかも、内側の左第1スピーカユニットSPL1から外側の左第3スピーカユニットSPL3に向かって順に音声信号が伝達され、音波が出力されるように聞こえる。
【0026】
なお、理論上、内側のスピーカユニットほど、音声信号の位相を進行させることもできるが、その場合、スピーカシステム20はアクティブスピーカシステムとして構成される必要があるとともに、DSP等の回路が必要となり、構成が複雑になってしまう。そこで、上述のように、フェーズシフタで、音声信号の位相を遅延させる場合、フェーズシフタを抵抗で構成するディレイラインとすることができ、シンプルな構造で、サラウンド感を提供することができる。更に、外側のスピーカユニットほど、高音域が強調された音波を出力するようにすることで、一層サラウンド感を向上させることができる。つまり、時間軸上で、周波数と位相を変化させた音が、あたかも、内側から外側のスピーカユニットに流れるがごとく伝搬し、端に向かい高音域が強調するように表現することができる。これによって、従来は、モニターなどに備えられているスピーカシステムでは困難であった自然な音の広がりを実現できる。
【0027】
なお、スピーカシステム20には、様々な構成が考えられる。図2に示したスピーカシステム20の構成の変形例を、図4〜図7に挙げる。なお、ここでは、図2と比較して特徴的な点を主に説明する。また、上述したように、左側スピーカユニット群22および右側スピーカユニット群24は、左右対称な構成であるので、左側スピーカユニット群22に着目して説明する。
【0028】
図4は、図2に示した左第1ラインLL1の経路上に、高周波領域をカットする左第1ローパスフィルタLPL1を設けた回路である。この構成のスピーカシステム20では、内側に配置される左第1スピーカユニットSPL1からは、高音域が強調された音波が出力される。このため、ステレオ効果が向上し、音場が豊かに表現される。また、左第1ローパスフィルタLPL1を設けることで、左第1スピーカユニットSPL1から出力される音波の位相が、外側の左第2スピーカユニットSPL2および左第3スピーカユニットSPL3から出力される音波の位相に対して反転した状態となる。これによって、左側スピーカユニット群22から出力される音波と右側スピーカユニット群24から出力される音波の干渉を防ぐことができ、その結果、音場の定位を鮮明にすることができる。
【0029】
図5は、スピーカシステム20に対する音声信号の入力点を真ん中の左第2ノードNL2とした回路である。内側の左第1スピーカユニットSPL1には、左第1ローパスフィルタLPL1によって高周波領域がカットされた音声信号が入力され、左第2スピーカユニットSPL2には、全ての帯域幅の周波数を有する音声信号が入力される。また、左第3スピーカユニットSPL3には、左第2フェーズシフタPSL2で音声信号の位相が遅延されるとともに、左第2ハイパスフィルタHPL2において低周波領域がカットされた音声信号が入力される。
【0030】
図6は、図4に示したスピーカシステム20と比較して、音声信号の入力点を内側の左第1ノードNL1から外側の左第3ノードNL3へ変更した回路である。この構成では、入力された音声信号は、外側から内側のスピーカユニットに向かうほど音声信号の位相の遅延が大きくなる。従って、この構成によると、ユーザは、内側のスピーカユニットほど奥にあるように聞こえる。つまり、左第1スピーカユニットSPL1が一番奥にあるように聞こえる。音声信号が、5.1チャンネルや、7.1チャンネルの信号をダウンミックスした信号である場合、このように外側のスピーカユニットから音声信号を供給し、内側のスピーカユニットに行くに従って音声信号の位相が遅延する構成とすると、音の広がりを大きくする効果が向上することがある。
【0031】
図6に示したスピーカシステム20と、図4に示したスピーカシステム20の構成は、音声信号の入力点が異なるのみである。そこで、例えば、入力点を選択できるスイッチを設けて、外側のスピーカユニットに入力される音声信号の位相を遅延させるか、内側のスピーカユニットに入力される音声信号の位相を遅延させるかの選択を、ユーザから受ける構成とすれば、ユーザは視聴するコンテンツに応じて、より効果のあるスピーカシステム20を選択できる。
【0032】
図7は、図2で示したスピーカシステム20を、左第1フェーズシフタPSL1を左第2ラインLL2の途上に移したものである。この構成のスピーカシステム20では、外側に配置される左第3スピーカユニットSPL3に入力される音声信号の位相が、左第2スピーカユニットSPL2に入力される音声信号の位相より遅延するようにするために、左第1フェーズシフタPSL1と左第2フェーズシフタPSL2を適切に設定する必要がある。例えば、左第1フェーズシフタPSL1と左第2フェーズシフタPSL2が、抵抗から構成されるディレイラインであれば、左第1フェーズシフタPSL1の抵抗より左第2フェーズシフタPSL2の抵抗が大きくなるようにすればよい。
【0033】
図8〜10に、主に、スピーカユニットのレイアウトに着目したスピーカシステム20の変形例を挙げる。図8は、図2に示したスピーカシステム20に対して、後方に音波を出力する背面スピーカSPBが新たに設けられた構成である。背面スピーカSPBからは、左第1スピーカユニットSPL1および右第1スピーカユニットSPR1に入力される信号をミックスし、更に、出力される音波は、左第1スピーカユニットSPL1および右第1スピーカユニットSPR1から出力される音波と、位相が反転するように構成する。このように、スピーカシステム20の背面から音声を出力することで、前方のスピーカユニットから出力された音波の後方への回り込みを抑制でき、その結果、サラウンド効果の向上が図れる。
【0034】
また、図9は、図8において、背面スピーカSPBが設けられた位置に、背面ポートPTを設けた構成である。この構成でも、図8で示した構成と同様に、背面ポートPTから、左第1スピーカユニットSPL1および右第1スピーカユニットSPR1から、位相が反転した音波が出力されることになるので、図9で示した構成のスピーカシステム20と同様の効果が得られる。
【0035】
図10は、図8に示したスピーカシステム20において、左第2スピーカユニットSPL2、左第3スピーカユニットSPL3を左外向きに配置し、右第2スピーカユニットSPR2、右第3スピーカユニットSPR3を右外向きに配置した構成を示している。この構成は、個々のスピーカユニットの指向特性の干渉を考慮したものであり、特に、スピーカユニットを近接配置しなければならないときに効果的である。
【0036】
つづいて、音声信号の位相の遅延および周波数領域の確認のために行ったシミュレーション結果を示す。図11は、図4に示した左側スピーカユニット群22の回路構成を、等価回路70に置き換え、更に音声信号に対応する信号を生成する信号出力装置72を設けたシミュレーション回路80を示す。このシミュレーション回路80をもとに、一部構成要素の設定値を変更して第1シミュレーションI〜第5シミュレーションVの5種のシミュレーションを行った。
【0037】
等価回路70において、プラス側の接続端子である第1端子T1から延びるラインは第1ノードN1で、第1抵抗R1および第2ノードN2の2方向に分岐する。第1抵抗R1と第1ノードN1の間には、コイルL1が直列に接続される。第1ノードN1と第2ノードN2の間には第1ディレイラインDL1が直列に設けられる。また、第2ノードN2に延びるラインは、第2ノードN2で第2抵抗R2および第3抵抗R3の方向に分岐する。第2ノードN2と第2抵抗R2の間には、第2保持容量C2が直列に設けられ、第2ノードN2と第3抵抗R3の間には、第2ディレイラインDL2と第3保持容量C3がこの順で直列に設けられる。なお、信号出力装置72は、シグナルジェネレータとオペアンプから構成される一般な信号出力機能を有する装置であり、ここでは説明を省略する。
【0038】
第1抵抗R1、第2抵抗R2および第3抵抗R3のプラス側の信号入力点である第1信号入力端子NS1、第2信号入力端子NS2および第3信号入力端子NS3において、それぞれ第1抵抗R1、第2抵抗R2および第3抵抗R3に入力される音声信号のゲインおよび位相を、接地電位に接続される第2端子T2を基準に計測した。
【0039】
本図の等価回路70と図4の右側スピーカユニット群22の構成要素の対応関係は以下の通りである。つまり、第1抵抗R1が左第1スピーカユニットSPL1に、第2抵抗R2が左第2スピーカユニットSPL2に、第3抵抗R3が左第3スピーカユニットSPL3に対応する。また、第1ディレイラインDL1が左第1フェーズシフタPSL1に、第2ディレイラインDL2が左第2フェーズシフタPSL2に対応する。また、コイルL1が左第1ローパスフィルタLPL1に、第2保持容量C2が左第1ハイパスフィルタHPL1に、第3保持容量C3が左第2ハイパスフィルタHPL2に対応する。
【0040】
図19に、上述の等価回路80をもとに行った5種類のシミュレーションにおける各構成要素の設定値を示す。検証結果の理解を容易にするために、第1シミュレーションI〜第3シミュレーションIIIでは、第3保持容量C3の値のみを可変として、その他の構成要素の値は固定とした。第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3は0.008Ω、第1ディレイラインDL1は、0.1Ω、第2ディレイラインDL2は、0.4Ω、コイルL1は、400μH、第2保持容量C2は30μFと、それぞれ固定値としている。第3保持容量C3は、第1シミュレーションIでは1μF、第2シミュレーションIIでは2.2μF、第3シミュレーションIIIでは3.3μFと徐々に大きくしている。また、第4シミュレーションIVおよび第5シミュレーションVでは、第3シミュレーションIIIから、第2ディレイラインDL2をそれぞれ0.4Ωから0.6Ωおよび0.8Ωへ変更している。
【0041】
図12は、第1シミュレーションIの結果を、ゲインG(db)および位相P(°)に関して、周波数f(Hz)の関係で示している。G1〜G3は、それぞれ、第1信号入力端子NS1、第2信号入力端子NS2、および第3信号入力端子NS3における音声信号のゲインを示している。つまり、図4に示した左第1ローパスフィルタLPL1、左第1ハイパスフィルタHPL1および左第2ハイパスフィルタHPL2の特性を示している。図12の結果によると、ゲインG1は、周波数fが大きくなるに従って、小さくなっている。また、ゲインG2は、低周波領域がカットされており、ゲインG3はゲインG2より広い範囲で低周波領域がカットされている。
【0042】
また、P1〜P3は、第1信号入力端子NS1、第2信号入力端子NS2、および第3信号入力端子NS3における音声信号の位相を示している。位相P1は、位相P2およびP3に対して180度ずれている、つまり反転している。また、位相P3は、高周波領域で、位相P2より遅延している。
【0043】
図13は、位相P3に着目したグラフで、第1シミュレーションI〜第3シミュレーションIIIにおいて、第3保持容量C3を変化させた場合の第3抵抗R3に入力される信号の位相P3の変化を示している。第1シミュレーションI〜第3シミュレーションIIIで得られた位相P3をそれぞれ、P31、P32、P33として示している。また、理解の容易のために、位相P2も示している。第3保持容量C3を大きくするに従って、位相P3は位相P2に対して遅延が大きくなっている。
【0044】
図14は、位相Pに着目したグラフで、第3シミュレーションIII〜第5シミュレーションVにおいて、第2ディレイラインDL2を変化させた結果を示している。第3シミュレーションIII〜第5シミュレーションVで得られた位相P3を、それぞれP33、P34、P35として示している。第2ディレイラインDL2を大きくすると、位相P3は位相P2に対して遅延が大きくなることが確認できる。
【0045】
なお、上記のシミュレーションは、音声信号の位相の遅延や周波数領域の確認が容易となるように、各構成要素の値を設定したものであり、実際のスピーカシステム20に適用する場合は、スピーカシステム20の大きさや、設置スペース、スピーカユニットの大きさ、配置間隔などを考慮して設定することが求められる。
【0046】
つづいて、上述したスピーカシステム20のサラウンド効果を更に向上させる手法に関して説明する。図15および16に示すように、スピーカシステム20から出力される音波のサラウンド効果を向上させ、音場を安定させる効果を引き出す左音響増幅装置40および右音響増幅装置42を、それぞれ液晶モニター10の両サイドに配置する。図15は、液晶モニター10、左音響増幅装置40および右音響増幅装置42を壁面に設置した状態を表している。図16は、スタンドを使って液晶モニター10を床面に設置するとともに、左音響増幅装置40および右音響増幅装置42も同様に床面に配置した状態を示している。
【0047】
図17(a)〜図17(c)に、左音響増幅装置40および右音響増幅装置42のバリエーションを3例示す。ここでは、左音響増幅装置40および右音響増幅装置42の構造を、前面図および上面図にて示している。また、左右対称の構造でない図17(b)および図17(c)は、左側に配置される左音響増幅装置40を示し、右音響増幅装置42は、左音響増幅装置40と左右対称の構造となる。
【0048】
図17(a)の左音響増幅装置40は、同一形状である3本の半円柱の反射拡散ユニット48が台45に配置されている。図17(b)は、図17(a)の変形例で、異なる大きさの半円柱である反射拡散ユニット48を右側から小さい順に台45に配置されている。図17(c)は、図16に示した左音響増幅装置40の構造を示している。同一形状の3本の円柱の反射拡散ユニット48が台45上に斜め一列に立てられている。なお、反射拡散ユニット48の形状として、円柱、半円柱、半円球、三角柱、三角錐など様々な形状が考えられる。
【0049】
図18は、左音響増幅装置40および右音響増幅装置42の効果を説明する図である。なお、左音響増幅装置40および右音響増幅装置42の機能は同一なので、ここでは、左側スピーカユニット群22、特に左第3スピーカユニットSPL3と左音響増幅装置40の関係を示す。左音響増幅装置40および右音響増幅装置42を液晶モニター10の両サイドに配置することで、スピーカシステム20から出力された音波のうち、特に高音域の音波を一次反射し拡散させる。その結果ステレオ効果をより強調でき、より鮮明な音場を実現できる。また、スイートスポットを拡大する効果が得られる。
【0050】
図20および図21は、それぞれ図4および図7に示したスピーカシステム20における左側スピーカユニット群22および右側スピーカユニット群24に含まれる、スピーカユニット数をnに拡張し一般化した構成を示す。つまり、左側スピーカユニット群22は、スピーカユニットが左第1スピーカユニットSPL1〜左第nスピーカユニットSPLnのn個に、ハイパスフィルタが左第1ハイパスフィルタHPL1〜左第n−1ハイパスフィルタHPLn−1のn−1個に、遅延回路が左第1フェーズシフタPSL1〜左第n−1フェーズシフタn−1のn−1個を備える。また、右側スピーカユニット群24は、スピーカユニットが右第1スピーカユニットSPR1〜右第nスピーカユニットSPRnのn個に、ハイパスフィルタが右第1ハイパスフィルタHPR1〜右第n−1ハイパスフィルタHPRn−1のn−1個に、遅延回路が右第1フェーズシフタPSR1〜右第n−1フェーズシフタn−1のn−1個を備える。
【0051】
以上、本発明をいくつかの実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、音響効果を効果的に実現することができる。また、別の観点では、コストを抑えつつ効果的な音響効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係るスピーカシステムおよび表示部を備える液晶モニターの構成図である。
【図2】実施の形態に係るスピーカシステムの構成図である。
【図3】左第1ハイパスフィルタ、および左第2ハイパスフィルタの特性を示す図である。
【図4】実施の形態に係るスピーカシステムの変形例であって、左第1ローパスフィルタおよび右第1ローパスフィルタを備えるスピーカシステムの構成図である。
【図5】実施の形態に係るスピーカシステムの変形例であって、音声信号の入力点を左第2ノードおよび右第2ノードとしたスピーカシステムの構成図である。
【図6】実施の形態に係るスピーカシステムの変形例であって、音声信号の入力点を左第3ノードおよび右第3ノードとしたスピーカシステムの構成図である。
【図7】実施の形態に係るスピーカシステムの変形例であって、フェーズシフタをスピーカユニットの直前に配置したスピーカシステムの構成図である。
【図8】後方に音波を出力する背面スピーカを設けたスピーカシステムに関して、スピーカユニットのレイアウトに着目した構成図である。
【図9】後方に音波を出力する背面ポートを設けたスピーカシステムに関して、スピーカユニットのレイアウトに着目した構成図である。
【図10】スピーカユニットの向きを一部外向きに変更したスピーカシステムに関して、スピーカユニットのレイアウトに着目した構成図である。
【図11】左側スピーカユニット群の回路構成を、等価回路に置き換えたシミュレーション回路を示す図である。
【図12】第1シミュレーションIの結果を、ゲインG(db)および位相P(°)に関して、周波数f(Hz)の関係で示す図である。
【図13】第1シミュレーションI〜第3シミュレーションIIIに関して、位相P3に着目したグラフを示す図である。
【図14】第3シミュレーションIII〜第5シミュレーションVに関して、位相P3に着目したグラフを示す図である。
【図15】左音響増幅装置および右音響増幅装置を、それぞれ液晶モニターの両サイドに配置した状態を示す図である。
【図16】左音響増幅装置および右音響増幅装置を、それぞれ液晶モニターの両サイドに配置した状態を示す図である。
【図17】左音響増幅装置および右音響増幅装置に関して、3種類の構造を示す図である。
【図18】左音響増幅装置および右音響増幅装置の効果を説明する図である。
【図19】シミュレーションを実施する際に等価回路に設定された値を示す図である。
【図20】実施の形態に係るスピーカシステムの構成を一般化した図である。
【図21】実施の形態に係るスピーカシステムの構成を一般化した図である。
【符号の説明】
10 液晶モニター、 20 スピーカシステム、 22 左側スピーカユニット群、 24 右側スピーカユニット群、 40 左音響増幅装置、 42 右音響増幅装置、 70 等価回路、 C2 第2保持容量、 C3 第3保持容量、 DL1 第1ディレイライン、 DL2 第2ディレイライン、 HPL1 左第1ハイパスフィルタ、 HPL2 左第2ハイパスフィルタ、 HPR1 右第1ハイパスフィルタ、 HPR2 右第2ハイパスフィルタ、 L1コイル、 LPL1 左第1ローパスフィルタ、 LPR1 ローパスフィルタ、 PSL1 左第1フェーズシフタ、 PSL2 左第2フェーズシフタ、PSR1 右第1フェーズシフタ、 PSR2 右第2フェーズシフタ、 R1 第1抵抗、 R2 第2抵抗、 R3 第3抵抗、 SPL1 左第1スピーカユニット、 SPL2 左第2スピーカユニット、 SPL3 左第3スピーカユニット、 SPR1 右第1スピーカユニット、 SPR2 右第2スピーカユニット、 SPR3 右第3スピーカユニット。

Claims (9)

  1. 右側音声を出力する複数のスピーカユニットを並列に接続した第1のスピーカユニット群と、左側音声を出力する複数のスピーカユニットを並列に接続した第2のスピーカユニット群と、をキャビネット内の左右に備えるスピーカシステムであって、
    前記第1および第2のスピーカユニット群それぞれにおいて、相対的に内側に配置されるスピーカユニットから相対的に外側に配置されるスピーカユニットへ向かう方向において音声信号の位相を遅延させる遅延回路を設けたことを特徴とするスピーカシステム。
  2. キャビネット内にて並列に接続された第1〜第N(Nは2以上の自然数)のスピーカユニットと、
    前記第2〜第Nのスピーカユニットに入力される少なくともいずれかの音声信号の位相を遅らせる遅延回路と、
    を有することを特徴とするスピーカシステム。
  3. 前記遅延回路は、第M(Mは自然数かつ2≦M≦N)のスピーカユニットに入力される音声信号の位相をPとした場合、P≦P≦PかつP<Pを満たすように前記音声信号の位相を遅延させることを特徴とする請求項2に記載のスピーカシステム。
  4. 前記スピーカユニットの中で、相対的に内側に配置されるスピーカユニットより相対的に外側に配置されるスピーカユニット向かう方向において、所定音域が強調された音波を出力するようにスピーカユニットに入力される音声信号に作用する回路を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスピーカシステム。
  5. 前記音声信号に作用する回路は、高音域が強調された音波を出力するように前記音声信号の周波数帯域を制限する周波数フィルタを含むことを特徴とする請求項4に記載のスピーカシステム。
  6. 前記スピーカユニットの側方に配置され、前記スピーカユニットのうち、外側に配置されたスピーカユニットから出力される音波を反射および拡散させる反射装置を更に有すことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスピーカシステム。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載のスピーカシステムを備えることを特徴とする表示装置。
  8. 右側音声を出力する複数のスピーカユニットからなる右側ブロックと、左側音声を出力する複数のスピーカユニットからなる左側ブロックを駆動する際、右側および左側それぞれのブロックにおいて、中央寄りに配置されるスピーカユニットよりも外側に配置されるスピーカユニットから、遅延した音声出力がなされるよう音声信号に遅延処理を施すことを特徴とするスピーカユニットの駆動方法。
  9. 請求項8に記載の駆動方法において、前記遅延処理に加え、所定音域の強調処理をなすことを特徴とするスピーカユニットの駆動方法。
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