JP2004240516A - 可変制御方法および可変制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】第1の発明は、位置偏差値ΔPの最大値を抑制して高精度位置決め特性を実現し、また第2の発明は、ワインドアップを防止する装置および方法を提供する。
【解決手段】第1の発明は、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号を判別して微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1を切り替えて、過渡現象抑制特性に優れたダンピング性重視の制御モードにして位置偏差値ΔPの最大値を抑制すること、また、第2の発明は、制御入力量Ucが飽和状態になったときに、外乱推定量w(^)の外乱推定量帰還利得L0を初期設計された利得よりも小にするアンチワインドアップ制御モードに切り替えることによって、制御入力量Ucが飽和してワインドアップになることを防止して、ロバスト性を犠牲にすることなく、高精度位置決め機能を実現する可変制御方法および装置である。
【選択図】 図1
【解決手段】第1の発明は、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号を判別して微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1を切り替えて、過渡現象抑制特性に優れたダンピング性重視の制御モードにして位置偏差値ΔPの最大値を抑制すること、また、第2の発明は、制御入力量Ucが飽和状態になったときに、外乱推定量w(^)の外乱推定量帰還利得L0を初期設計された利得よりも小にするアンチワインドアップ制御モードに切り替えることによって、制御入力量Ucが飽和してワインドアップになることを防止して、ロバスト性を犠牲にすることなく、高精度位置決め機能を実現する可変制御方法および装置である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、外乱オブザーバを用いて制御対象の可変制御を行い、外乱抑圧特性、指令位置追従特性などを向上させる可変制御方法および可変制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
位置決め装置などの制御対象において、例えば、ステップ状の関数dw(^)/dt=0にモデル化される外乱量wを推定できる外乱オブザーバを用いて推定した外乱を帰還させることによって、外乱による影響を低減させ、制御特性を向上させる方法が行われている。
【0003】
例えば、高速な位置移動および高精度な位置決めが要求される半導体製造装置(ステッパー、ボンダーなど)の位置決めテーブル、プリント基板製作に用いられるチィップインサータ(以下、高速・高精度サーボ制御装置という)などに適用される。
[従来技術1]
[図2の説明]
図2は、特開平3−17703[特許文献1と同じ]に記載された制御状態に応じて外乱推定量w(^)のフィードバック(以下、帰還という)ゲインを変化させる「速度依存型外乱推定オブザーバ制御装置」のブロック図である。
【0004】
この発明では、モータの速度vに応じて、ゲイン調整手段4によって外乱推定オブザーバの帰還ゲインを変化させて、低速度領域のみ外乱オブザーバを有効にして高いロバスト性を実現し、速度が高くなるに従って帰還ゲイン3を小さくしていき、速度が高い状態では外乱オブザーバを無効にして、過渡応答特性を向上させている。可変制御の方法は、モータの速度vの大きさを観測し、それに応じて推定外乱帰還ゲインを変化させている。
[従来技術2]
[図3の説明]
図3は本出願人が先に出願して公開された特開平2001−147702[特許文献2と同じ]に記載したように、高次数外乱オブザーバが推定できる外乱微分量の帰還を制御状態に応じて変化させるサーボ制御のブロック図である。
【0005】
本発明では、外乱微分量dw(^)/dtを高次数外乱オブザーバ45で推定し、外乱微分量の大きさに応じて帰還ゲイン乗算器47のゲインを変化させ、高次数外乱オブザーバのロバスト性を確保したまま、過渡応答特性を向上させている。
【0006】
図3の可変制御方法は、外乱微分量dw(^)/dtを観測し、それに応じて外乱微分量帰還ゲインを変化させている。
【0007】
このような制御状態に応じて制御パラメータを変化させる可変制御は実施容易であるので、通常はソフトウエアによるディジタル制御回路によって実施している。
【0008】
本出願において外乱とは、外部からの機械的応力の他に、温度、経年変化などによって電気素子の特性変化、装置の設置状態が傾いて発生する重力外乱、周辺からの振動、ワークの種類による形状、重量変化、モデル化していない摩擦、撓みなどの非線形要素、機械体の高次モードなど、設計時に使用した制御モデルPnに反映されていない要素をいう。
【0009】
【特許文献1】
特開平3−17703(第1図)
【0010】
【特許文献2】
特開平2001−147702(図7)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
外乱オブザーバを用いた方式は、低周波領域の外乱、制御パラメータ変動に対して性能改善は著しいが、過大な積分器ゲインにより過渡現象抑制特性を低下させてしまう問題が知られている。また、この外乱オブザーバを用いた方式は、ソフトウエアによるディジタル制御で実施されるので、積分器の飽和によるワインドアップ現象を引き起こしやすい問題がある。
【0012】
図2に示した従来技術1は、停止摩擦などを補償するためのみに限定して外乱オブザーバを使用している。すなわち、速度が低いときのみ帰還ゲインを1にして、外乱オブザーバを有効にし、速度が上昇すると帰還ゲインを1よりも小さくし、最終的には帰還ゲインをゼロにして外乱オブザーバを無効にし、過渡現象抑制特性を改善している。
【0013】
しかし、この方式では、摩擦などの補償のみにしか外乱オブザーバを使用していなく、制御パラメータ変動も補償できる外乱オブザーバの特性を生かしていない。例えば、慣性変動など全周波数領域で影響を与える制御パラメータ変動、速度などがある一定限度を超えた外乱に対しては全く効果がない。
【0014】
また、モータの速度に応じて最適なゲインを得るために、実機における調整作業が必要であるなど問題がある。
【0015】
従来技術2は、高次数外乱オブザーバ301を用いて、外乱微分量の帰還を制御状態に応じて変化させることによって、外乱オブザーバの高いロバスト性を保ったまま、過渡現象抑制特性の低下の問題を改善している。
【0016】
しかし、従来技術2は、過渡現象抑制特性は向上するが、偏差の最大値が多少大きくなること、外乱微分量の大きさを基に予め定めた一定のしきい値によって制御回路を変化させているために、実際の制御において、しきい値の調整が必須であるために問題がある。
【0017】
この発明の目的は、第1に、速度、外乱微分量などとは異なり大きさを定義しないで、後述する図1に示す位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号(+または−のいずれか一方の値以外はとり得ない観測量)のみで判別し、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させて、複雑な調整作業なしで、外乱抑圧特性を悪化させることなく過渡現象抑制特性を改善できる可変制御方法および可変制御装置を提供することである。
【0018】
この発明の目的は、第2に、第1の発明に加えて、図1に示す位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucが飽和状態になったときに、外乱推定量帰還ゲインL0を初期設計されたゲインよりも小にすることによって、特別な付加回路なしでワインドアップ現象を防止する可変制御方法および可変制御装置を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
実施態様1は、第1の発明の方法の実施態様であって、
位置指令値Pcmdと速度指令値Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱微分量dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御方法において、
上記位置指令値Pcmdと上記速度指令値Vcmdと上記外乱微分量dw(^)/dtとに対応して定まる上記制御対象100の制御位置から制御位置応答値Pを算出し、
上記位置指令値Pcmdから上記制御位置応答値Pを減算した位置偏差値ΔPと上記速度指令値Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を減算した速度偏差値ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差値ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御方法である。
【0020】
実施態様2は、実施態様1の構成を具体化した第1の発明の方法の実施態様であって、
位置指令値Pcmdと速度指令値Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱微分量dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御方法において、
上記位置指令値Pcmdと上記速度指令値Vcmdと上記外乱微分量dw(^)/dtとに対応して定まる上記制御対象100の制御位置から制御位置応答値Pを算出し、
上記位置指令値Pcmdから上記制御位置応答値Pを減算した位置偏差値ΔPと上記速度指令値Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を減算した速度偏差値ΔVとから位置・速度偏差値符号判別値Scを算出し、
上記位置・速度偏差値符号判別値Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替える推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を算出し、
上記位置偏差値ΔPと上記速度偏差値ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差値ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御方法である。
【0021】
実施態様3は、実施態様2の構成を具体化した第1の発明の方法の実施態様であって、
位置指令値Pcmdと速度指令値Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱微分量dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御方法において、
上記位置指令値Pcmdと上記速度指令値Vcmdと上記外乱微分量dw(^)/dtとに対応して定まる上記制御対象100の制御位置から制御位置応答値Pを算出する制御位置応答値算出過程ST100と、
上記位置指令値Pcmdから上記制御位置応答値Pを減算した位置偏差値ΔPを出力する位置指令・応答値減算過程ST105と、
上記速度指令値Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を減算した速度偏差値ΔVを算出する速度指令・応答値減算過程ST415と、
上記位置偏差値ΔPと上記速度偏差値ΔVとから位置・速度偏差値符号判別値Scを算出する位置・速度偏差値符号判別過程ST404と、
上記位置・速度偏差値符号判別値Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1に上記外乱微分量dw(^)/dtを乗算してダンピング補償値Ud(βL1・dw(^)/dt)を算出する推定外乱微分量ゲイン乗算過程ST411と、
上記位置偏差値ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御量Upと上記速度偏差値ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御量Uvと上記ダンピング補償値Udとを加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucを算出する制御入力加減算過程ST406と、
上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucと上記制御位置応答値Pとから上記外乱オブザーバ401が上記外乱微分量dw(^)/dtと上記推定速度値V(^)とを算出する外乱推定過程ST401とから成り、
上記位置偏差値ΔPと上記速度偏差値ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差値ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御方法である。
【0022】
実施態様4は、図1の高精度位置決め機能を実現するブロック図のうちの第1の発明の装置の実施態様であって、
位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御装置において、
上記位置指令信号Pcmdと上記速度指令信号Vcmdと上記外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する制御対象100と、
上記速度指令信号Vcmdから上記制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPと上記速度指令信号Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した上記速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する位置・速度偏差値符号判別回路404と、
上記位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路411Aとから成り、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御装置である。
【0023】
実施態様5は、実施態様4の構成を具体化した図1の高精度位置決め機能を実現するブロック図のうちの第1の発明の装置の実施態様であって、
位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御装置において、
上記位置指令信号Pcmdと上記速度指令信号Vcmdと上記外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する制御対象100と、
上記速度指令信号Vcmdから上記制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPを出力する位置指令・応答値減算回路105と、
上記速度指令信号Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した速度偏差信号ΔVを出力する速度指令・応答値減算回路415と、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する位置・速度偏差値符号判別回路404と、
上記位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えて推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路411Aと、
上記外乱微分量信号dw(^)/dtと上記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1とを入力してダンピング補償信号Ud(βL1・dw(^)/dt)を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路411と、
上記位置偏差信号ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御信号Upと上記速度偏差信号ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御信号Uvと上記ダンピング補償信号Udとを入力し加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucを出力する制御入力加減算回路406と、
上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucと上記制御位置応答信号Pとから上記外乱微分信号dw(^)/dtと上記推定速度信号V(^)とを出力する外乱オブザーバ401とから成り、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御装置である。
【0024】
実施態様6は、第2の発明の方法の実施態様であって、
位置指令値Pcmdと速度指令値Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量w(^)および外乱微分量dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御方法において、
上記位置指令値Pcmdと上記速度指令値Vcmdと上記外乱推定量w(^)および上記外乱微分量dw(^)/dtとに対応して定まる上記制御対象100の制御位置から制御位置応答値Pを算出し、
上記位置指令値Pcmdから上記制御位置応答値Pを減算した位置偏差値ΔPと上記速度指令値Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を減算した速度偏差値ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差値ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
上記位置偏差値ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御量Upと上記速度偏差値ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御量Uvと上記外乱微分量dw(^)/dtに対応したダンピング補償値Udと上記外乱推定量w(^)に対応した外乱補償値Uwとから位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucを算出し、
上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucから制御入力量飽和判定値Suを算出し、
上記制御入力量飽和判定値Suに従って上記外乱推定量帰還ゲインL0を切替える外乱推定量切替帰還ゲインαL0を算出して、
上記制御入力量飽和判定値Suが飽和判定したときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、上記制御入力量飽和判定値Suが飽和判定していないときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、上記位置偏差値ΔPおよび上記速度偏差値ΔVが大きいときのワインドアップを防止する可変制御方法である。
【0025】
実施態様7は、実施態様6の構成を具体化した第2の発明の方法の実施態様であって、
位置指令値Pcmdと速度指令値Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量w(^)および外乱微分量dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御方法において、
上記位置指令値Pcmdと上記速度指令値Vcmdと上記外乱推定量w(^)および上記外乱微分量dw(^)/dtとに対応して定まる上記制御対象100の制御位置から制御位置応答値Pを算出する制御位置応答値算出過程ST100と、
上記位置指令値Pcmdから上記制御位置応答値Pを減算した位置偏差値ΔPと上記速度指令値Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を減算した速度偏差値ΔVとから位置・速度偏差値符号判別値Scを算出する位置・速度偏差値符号判別過程ST404と、
上記位置・速度偏差値符号判別値Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1に上記外乱微分量dw(^)/dtを乗算してダンピング補償値Ud(βL1・dw(^)/dt)を算出する推定外乱微分量ゲイン乗算過程ST411と、
上記位置偏差値ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御量Upと上記速度偏差値ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御量Uvと上記ダンピング補償値Udと上記外乱推定量w(^)に対応した外乱補償値Uwとから算出した位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucから制御入力量飽和判定値Suを算出する制御入力量飽和判定過程ST414と、
上記制御入力量飽和判定値Suに従って上記外乱推定量帰還ゲインL0を切替える外乱推定量切替帰還ゲインαL0を乗算して外乱補償値Uw(αL0・w(^))を算出する推定外乱量ゲイン乗算過程ST412とから成り、
上記位置偏差値ΔPと上記速度偏差値ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差値ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
上記制御入力量飽和判定値Suが飽和判定したときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、上記制御入力量飽和判定値Suが飽和判定していないときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、上記位置偏差値ΔPおよび上記速度偏差値ΔVが大きいときのワインドアップを防止する可変制御方法である。
【0026】
実施態様8は、実施態様7の構成を具体化した図1の高精度位置決め機能を実現するブロック図に示す第2の発明の方法の実施態様であって、
位置指令値Pcmdと速度指令値Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量w(^)および外乱微分量dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御方法において、
上記位置指令値Pcmdと上記速度指令値Vcmdと上記外乱推定量w(^)および上記外乱微分量dw(^)/dtとに対応して定まる上記制御対象100の制御位置から制御位置応答値Pを算出する制御位置応答値算出過程ST100と、
上記位置指令値Pcmdから上記制御位置応答値Pを減算した位置偏差値ΔPを算出する位置指令・応答値減算過程ST105と、
上記速度指令値Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を減算した速度偏差値ΔVを算出する速度指令・応答値減算過程ST415と、
上記位置偏差値ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御量Upを算出する位置帰還過程ST106と、
上記速度偏差値ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御量Uvを算出する速度帰還過程ST416と、
上記位置偏差値ΔPと上記速度偏差値ΔVとから位置・速度偏差値符号判別値Scを算出する位置・速度偏差値符号判別過程ST404と、
上記位置・速度偏差値符号判別値Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替える推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を算出する推定外乱微分量ゲイン切替過程ST411Aと、
上記外乱微分量dw(^)/dtに上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を乗算してダンピング補償値Ud(βL1・dw(^)/dt)を算出する推定外乱微分量ゲイン乗算過程ST411と、
上記位置偏差制御量Upと上記速度偏差制御量Uvと上記ダンピング補償値Udと上記外乱推定量w(^)に対応した外乱補償値Uwとから算出した位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucから制御入力量飽和判定値Suを算出する制御入力量飽和判定過程ST414と、
上記制御入力量飽和判定値Suに従って上記外乱推定量帰還ゲインL0を切替える外乱推定量切替帰還ゲインαL0を算出する推定外乱量ゲイン切替過程ST412Aと、
上記外乱推定量w(^)に上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を乗算して上記外乱補償値Uw(αL0・w(^))を算出する推定外乱量ゲイン乗算過程ST412と、
上記位置偏差制御量Upと上記速度偏差制御量Uvと上記外乱補償値Uwと上記ダンピング補償値Udと上記外乱補償値Uwとを加減算して上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucを算出する制御入力加減算過程ST406とから成り、
上記位置偏差値ΔPと上記速度偏差値ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差値ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
上記制御入力量飽和判定値Suが飽和判定したときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、上記制御入力量飽和判定値Suが飽和判定していないときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、上記位置偏差値ΔPおよび上記速度偏差値ΔVが大きいときのワインドアップを防止する可変制御方法である。
【0027】
実施態様9は、図1の高精度位置決め機能を実現するブロック図の第2の発明の装置の実施態様であって、
位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量信号w(^)および外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御装置において、
上記位置指令信号Pcmdと上記速度指令信号Vcmdと上記外乱推定量信号w(^)および上記外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する制御対象100と、
上記速度指令信号Vcmdから上記制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPと上記速度指令信号Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する位置・速度偏差値符号判別回路404と、
上記位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1と上記外乱微分量信号dw(^)/dtとを入力して上記外乱微分量信号dw(^)/dtに上記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を乗算したダンピング補償信号Ud(βL1・dw(^)/dt)を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路411と、上記位置偏差値ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御量Upと上記速度偏差値ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御量Uvと上記ダンピング補償値Udと上記外乱推定量w(^)に対応した外乱補償値Uwとを入力し加減算した位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucによって制御入力量飽和判定信号Suを出力する制御入力量飽和回路414と、
上記制御入力量飽和判定信号Suに従って上記外乱推定量帰還ゲインL0を切替えた外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0と上記外乱推定量信号w(^)とを入力して上記外乱推定量信号w(^)に上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を乗算して外乱補償信号Uw(αL0・w(^))を出力する推定外乱量ゲイン乗算回路412とから成り、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
上記制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定したときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、上記制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定していないときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、上記位置偏差値ΔPおよび上記速度偏差値ΔVが大きいときのワインドアップを防止する可変制御装置である。
【0028】
実施態様10は、実施態様9の構成を具体化した図1の高精度位置決め機能を実現するブロック図に示す第2の発明の装置の実施態様であって、
位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量信号w(^)および外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御装置において、
上記位置指令信号Pcmdと上記速度指令信号Vcmdと上記外乱推定量信号w(^)および上記外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する制御対象100と、
上記速度指令信号Vcmdから上記制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPを出力する位置指令・応答値減算回路105と、
上記速度指令信号Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した速度偏差信号ΔVを出力する速度指令・応答値減算回路415と、
上記位置偏差信号ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御信号Upを算出する位置帰還回路106と、
上記速度偏差信号ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御信号Uvを算出する速度帰還回路416と、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する位置・速度偏差値符号判別回路404と、
上記位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路411Aと、
上記外乱微分量信号dw(^)/dtと上記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1とを入力してダンピング補償信号Ud(βL1・dw(^)/dt)を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路411と、
上記位置偏差制御信号Upと上記速度偏差制御信号Uvと上記外乱補償信号Uwと上記外乱推定量信号w(^)に対応した外乱補償信号Uwとを入力し加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucを出力する制御入力加減算回路406と、
上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucを入力して制御入力量飽和判定信号Suを出力する制御入力量飽和回路414と、
上記制御入力量飽和判定信号Suに従って上記外乱推定量帰還ゲインL0を切替えた外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0を出力する推定外乱量ゲイン切替回路412Aと、
上記外乱推定量信号w(^)と上記外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0とを入力して上記外乱推定量信号w(^)に上記外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0を乗算した上記外乱補償信号Uw(αL0・w(^))を出力する推定外乱量ゲイン乗算回路412とから成り、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
上記制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定したときに、上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、上記制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定していないときに、上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、上記位置偏差信号ΔPおよび上記速度偏差信号ΔVが大きいときのワインドアップを防止する可変制御装置である。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は、「第1の発明の位置偏差値ΔPの最大値を抑制する機能および第2の発明の第1の発明の機能に加えてワインドアップを防止する機能を備えて、ロバスト性を犠牲にすることなく、高精度位置決め機能を実現するブロック図」を具体化した高精度制御特性ブロック図である。
【0030】
本出願発明の第1の発明の実施の形態は、図1のブロック図に示すように、
実施態様5は、実施態様4の構成を具体化した図1の高精度位置決め機能を実現するブロック図のうちの第1の発明の装置の実施態様であって、
位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量信号w(^)および外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御装置において、
上記位置指令信号Pcmdと上記速度指令信号Vcmdと上記外乱推定量信号w(^)および上記外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する制御対象100と、
上記速度指令信号Vcmdから上記制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPを出力する位置指令・応答値減算回路105と、
上記速度指令信号Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した速度偏差信号ΔVを出力する速度指令・応答値減算回路415と、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する位置・速度偏差値符号判別回路404と、
上記位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えて推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路411Aと、
上記外乱微分量信号dw(^)/dtと上記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1とを入力してダンピング補償信号Ud(βL1・dw(^)/dt)を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路411と、
上記位置偏差信号ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御信号Upと上記速度偏差信号ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御信号Uvと上記ダンピング補償信号Udとを入力し加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucを出力する制御入力加減算回路406と、
上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucと上記制御位置応答信号Pとから上記外乱推定信号w(^)と上記外乱微分信号dw(^)/dtと上記推定速度信号V(^)とを出力する外乱オブザーバ401とから成り、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御装置である。
【0031】
本出願発明の第2の発明の実施の形態は、図1のブロック図に示すように、
位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量信号w(^)および外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御装置において、
上記位置指令信号Pcmdと上記速度指令信号Vcmdと上記外乱推定量信号w(^)および上記外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する制御対象100と、
上記速度指令信号Vcmdから上記制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPを出力する位置指令・応答値減算回路105と、
上記速度指令信号Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した速度偏差信号ΔVを出力する速度指令・応答値減算回路415と、
上記位置偏差信号ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御信号Upを算出する位置帰還回路106と、
上記速度偏差信号ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御信号Uvを算出する速度帰還回路416と、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する位置・速度偏差値符号判別回路404と、
上記位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路411Aと、
上記外乱微分量信号dw(^)/dtと上記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1とを入力してダンピング補償信号Ud(βL1・dw(^)/dt)を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路411と、
上記位置偏差制御信号Upと上記速度偏差制御信号Uvと上記外乱補償信号Uwと上記外乱推定量信号w(^)に対応した外乱補償信号Uwとを入力し加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucを出力する制御入力加減算回路406と、
上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucを入力して制御入力量飽和判定信号Suを出力する制御入力量飽和回路414と、
上記制御入力量飽和判定信号Suに従って上記外乱推定量帰還ゲインL0を切替えた外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0を出力する推定外乱量ゲイン切替回路412Aと、
上記外乱推定量信号w(^)と上記外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0とを入力して上記外乱推定量信号w(^)に上記外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0を乗算した上記外乱補償信号Uw(αL0・w(^))を出力する推定外乱量ゲイン乗算回路412とから成り、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
上記制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定したときに、上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、上記制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定していないときに、上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、上記位置偏差信号ΔPおよび上記速度偏差信号ΔVが大きいときのワインドアップを防止する可変制御装置である。
【0032】
【実施例】
第1の発明の構成は、後述する図4に示すように、制御対象の速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとが形成する平面上で、速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとで描かれる軌道が存在する位置に応じて、後述する図5に示すように、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が同符号のときは、速度偏差値ΔVの推定外乱微分量帰還利得L1=0とし、速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとの符号が異符号でかつ速度偏差値ΔVおよび位置偏差値ΔPが予め定めた値よりも大きいときに、推定外乱微分量帰還利得L1を零よりも大にしてダンピング性重視の制御モードにして位置偏差値ΔPの最大値を抑制する可変制御方法および可変制御装置である。
【0033】
第2の発明の構成は、後述する図6に示すように、ロバスト・ダンピング・アンチワインドアップ制御切り替え遷移図に対応した制御を行うために、後述する図7に示すように、位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号(以下、制御入力信号という)Ucが飽和状態になったときに、外乱推定量w(^)の外乱推定量帰還利得L0を初期設計された利得よりも小にすることによって、アンチワインドアップ制御モードを実現し、位置速度帰還ゲイン切替制御入力量(以下、制御入力量という)Ucの飽和の影響を少なくする可変制御方法および可変制御装置である。
【0034】
第2の発明のシステム制御系は、外乱微分量dw(^)/dtの帰還ゲインを変化させることに加えて、外乱推定量w(^)の帰還ゲインも変化させ、制御状態に応じて、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとの3つの制御モードを使って、高精度位置決め機能を有する高速・高精度サーボ制御装置を実現している。
【0035】
第1の発明では、図1に示すように、位置偏差値Δと速度偏差値ΔVとの符号を判別する位置・速度偏差値符号判別回路404を備えている。
【0036】
同図に示す制御は、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとが同符号のときは、外乱推定量w(^)を帰還して位置指令応答・外乱抑圧特性に優れたロバスト性重視の制御モード(通常モード)とし、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとが異符号のときは、外乱微分量dw(^)/dtの帰還ゲインL1をL1>0として過渡現象抑制特性に優れたダンピング性重視の制御モードにしている。
る。
【0037】
一般的な外乱オブザーバは、外乱量wのモデルをステップ状の関数として、外乱微分量dw(^)/dt=0としてオブザーバが形成されるが、外乱モデルをd(k)w/dt(k)=0とし、推定外乱微分の階(以下、微分階という)k=1の外乱として形成してもよい。例えば、微分階k=1(以下、微分階1という)の場合、ランプ状の外乱としてモデル化することになる。
【0038】
後述する図8において、外乱オブザーバ401は、制御対象100の制御入力信号Ucと制御位置応答信号Pとを入力して、制御対象の推定速度信号V(^)、外乱推定量信号w(^)を出力する。上記k=1の外乱オブザーバを使用した場合、微分階1の外乱微分量信号dw(^)/dtを出力することもできる。上記の(^)は推定量を意味している。
[図1の説明]
図1は、第1の発明の位置偏差値ΔPの最大値を抑制する機能および第2の発明のワインドアップを防止する機能を備えて、ロバスト性を犠牲にすることなく、高精度位置決め機能を実現するブロック図である。
【0039】
第1の発明の可変制御装置は、位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量信号w(^)および外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する。
【0040】
以下、図1を参照して第1の発明の前述した実施態様5の装置について説明する。
【0041】
制御対象100は、位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱推定量信号w(^)および外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する。
【0042】
位置指令・応答値減算回路105は、速度指令信号Vcmdから制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPを出力する。
【0043】
速度指令・応答値減算回路415は、速度指令信号Vcmdから外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した速度偏差信号ΔVを出力する。
【0044】
位置・速度偏差値符号判別回路404は、位置偏差信号ΔPと速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する。
【0045】
推定外乱微分量ゲイン切替回路411Aは、位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えて推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を出力する。
【0046】
推定外乱微分量ゲイン乗算回路411は、外乱微分量信号dw(^)/dtと推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1とを入力してダンピング補償信号Ud(βL1・dw(^)/dt)を出力する。
【0047】
通常の高次数外乱オブザーバの場合は、外乱推定量帰還ゲインL0=1であり、また微分階1ないしk(以下、微分階1からkという)の推定外乱微分量帰還ゲインL1ないしLk=0である。
【0048】
制御入力加減算回路406は、位置偏差信号ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御信号Upと速度偏差信号ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御信号Uvとダンピング補償信号Udとを入力し加減算して制御入力信号Ucを出力する。
【0049】
外乱オブザーバ401は、制御入力信号Ucと制御位置応答信号Pとから外乱推定信号w(^)と外乱微分信号dw(^)/dtと推定速度信号V(^)とを出力する。
【0050】
上記の構成を備えた第1の発明の可変制御装置によって、位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させることができる。
【0051】
次に、図1を参照して第2の発明の前述した実施態様10の装置について説明する。前述した第1の発明の前述した実施態様5の装置について説明した構成、機能などの説明は省略する。
【0052】
制御入力加減算回路406は、位置偏差制御信号Upと速度偏差制御信号Uvと外乱補償信号Uwと外乱推定量信号w(^)に対応した外乱補償信号Uwとを入力し加減算して制御入力信号Ucを出力する。
【0053】
制御入力量飽和回路414は、制御入力信号Ucを入力して制御入力量飽和判定信号Suを出力する。
【0054】
推定外乱量ゲイン切替回路412Aは、制御入力量飽和判定信号Suに従って外乱推定量帰還ゲインL0を切替えた外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0を出力する。
【0055】
推定外乱量ゲイン乗算回路412は、外乱推定量信号w(^)と外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0とを入力して外乱推定量信号w(^)に外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0を乗算した外乱補償信号Uw(αL0・w(^))を出力する。
【0056】
上記の構成を備えた第2の発明の可変制御装置によって、前述した第1の発明の可変制御装置の機能に加えて、制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定したときに、外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定していないときに、外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、位置偏差信号ΔPおよび速度偏差信号ΔVが大きいときのワインドアップを防止することができる。
【0057】
図1に示す制御入力量飽和判定回路414は、制御入力量Ucが制御対象100の内部の図示していない駆動アンプなどを飽和させるか否かを判断し、その判断に応じて外乱推定量帰還ゲインL0を変化させる。
【0058】
位置帰還ゲインKPおよび速度帰還ゲインKVを位置・速度偏差値符号判別回路404または制御入力量飽和判定回路414の出力に応じて変化させてもよい。すなわち、変化させることができる制御パラメータは、位置帰還ゲインKP、速度帰還ゲインKV、外乱推定量帰還ゲインL0および推定外乱微分量帰還ゲインL1である。
【0059】
上記制御パラメータを変化させたときに、制御パラメータを変化後のシステム制御系の相補感度関数のピークゲインと帯域とが、外乱推定量帰還ゲインL0=1、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1=0のシステム制御系に等しいかまたは小さくすることが望ましい。この論理は次のとおりである。
【0060】
設計に使用した理想的なプラントの関数をPn(s)とし、制御回路の関数をC(s)として、パラメータ変動、モデル化などの誤差が含まれる実際のプラントの関数をP(s)とし、P(s)=(1+Δm(s))Pn(s)で表すことができる。システム制御系の安定性は、相補感度関数をT(s)=Pn(s)C(s)/(1+Pn(s)C(s))とすると、T(s)Δm(s)のH無限大ノルムが1よりも小さくなることによって保証される。すなわち、可変制御装置で制御回路の関数がC(s)からC’(s)に変化して、相補感度関数がT(s)になったときに、T’(s)のノルムがT(s)のノルムよりも少なくとも同じか小さくなれば、システム制御系の安定性が保証される。したがって、T’(s)Δm(s)のH無限大ノルムが1よりも小さくなる条件で、位置帰還ゲインKP、速度帰還ゲインKVなどの関数C’(s)のパラメータを決定する。
[図4の説明]
図4は、速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとが形成する平面上で、制御対象の速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとで描かれる軌道が、平面のどの象限にあるかによって、外乱微分量帰還ゲインL1を変化させる速度偏差・位置偏差対応帰還ゲイン切替説明図である。
【0061】
同図は、速度偏差値ΔV(横軸)と位置偏差値ΔP(縦軸)との符号が同符号か異符号かによって、外乱推定量帰還ゲインL0=1のときに、外乱微分量dw(^)/dtの微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1を0および正の値(L1=0およびL>0)に変化させることを示している。
【0062】
図4は、制御位置応答値Pによって初期位置Psから指令目標位置Pe(0,0)までの速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとの変化経路(軌跡)を示す。
【0063】
この図4は、後述する図5に示すように、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が同符号のときは、速度偏差値ΔVの推定外乱微分量帰還ゲインL1=0としてロバスト性を重視し、速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとの符号が異符号のときに、推定外乱微分量帰還ゲインL1>0としてダンピング性重視の制御モードにしている。
【0064】
同図に示すように制御することによって、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号を判別して微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させて位置偏差値ΔPの最大値を抑制して高精度位置決め機能を実現することができる。
【0065】
後述する図6に示すロバスト・ダンピング・アンチワインドアップ制御モード切り替え遷移図の第2の発明においては、制御開始時は、外乱推定量帰還ゲインL0=1および微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1=0の初期位置Psから開始し、制御入力信量Ucが飽和状態に達した場合、例えば、図示していない制御対象駆動用アンプへの指令値が駆動電流の上限を越えた場合、外乱推定量帰還ゲイン0<=L0<1として、制御入力信量Ucの飽和を回避できるアンチワインドアップ制御モードに変化し、過大な積分器ゲインによるワインドアップを防止する。外乱推定量帰還ゲインL0を変化させると同時に、位置帰還ゲインKPおよび速度帰還ゲインKVを変化させてもよい。
【0066】
制御入力量Ucが飽和していない状態では、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号を判定して、同符号のときは外乱推定量帰還ゲインL0=1、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1=0とし、初期設計された制御性能を実現する。異符号のときは外乱推定量帰還ゲインL0=1、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1>0とし、ダンピング性重視の制御モードに切り替わる。この場合もダンピング性をより高くするように、位置帰還ゲインKPおよび速度帰還ゲインKVを変化させてもよい。
[図5の説明]
図5は、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が同符号のときは、外乱推定量w(^)を帰還してロバスト重視の制御モードにし、また位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が異符号のときは、外乱推定量w(^)の帰還の他に、外乱微分量dw(^)/dtの帰還を追加してダンピング性重視の制御モードにする本願発明に係る位置・速度偏差値符号対応外乱微分量設定図である。
【0067】
前述した図4に示すように、速度偏差値ΔV(横軸)と位置偏差値ΔP(縦軸)とが形成する平面上で、制御対象の速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとで描かれる軌道が、平面のどの象限にあるかによって、(1)外乱推定量帰還ゲインL0=1のときに、図5に示すように、速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとの符号が同符号のときは、推定外乱微分量帰還ゲインL1=0とし、(2)速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとの符号が異符号のときに、(推定外乱帰還制御)外乱オブザーバ401が推定できる外乱微分量dw(^)/dtの微分の階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1をゼロよりも大きくする。
[図6の説明]
図6は、第2の発明の制御の概念図であって、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとに変化させるアルゴリズムを示すロバスト・ダンピング・アンチワインドアップ制御モード切り替え遷移図である。
【0068】
この図6は、高速・高精度位置指令応答特性・外乱抑圧特性に優れたロバスト性重視の制御モードと過渡現象抑制特性に優れたダンピング性重視の制御モードと制御入力量の飽和を回避するアンチワインドアップ制御とに変化させる遷移を示している。
【0069】
ロバスト性重視の制御(Normal(通常)制御)モードは、位置指令値、外乱などが変化したときに、通常の初期設計値の帰還ゲインに変化させて高速で追従する位置指令応答・外乱抑圧特性に優れている。その反面、ロバスト性重視の制御モードは、高いゲインの積分器を備えているために、安定性の余裕が十分でなく、大きな外乱、制御対象のパラメータの変化などに対して、振動が発生しやすくなり、位置指令応答特性が損なわれる。
【0070】
また、位置偏差ΔPが大きいときは、外乱推定量w(^)が必要以上に大きくなり、制御入力量Ucが飽和状態になってしまってワインドアップを起こし偏差が大きくなって、実システムではアクチュエータが暴走して装置が損傷することがある。
【0071】
ダンピング性重視の制御(Dump(過渡現象抑制)制御)モードは、振動を抑制する過渡現象抑制特性に優れているが、外乱抑圧特性が低く、高速・高精度位置応答特性が得られない。また、このダンピング性重視の制御モードは、積分特性を持つためにワインドアップを防ぐことができない。
【0072】
アンチワインドアップ制御モードは、制御入力量が飽和状態になったときに、通常の初期設計値よりも小さい帰還ゲインに変化させることによって、制御入力量の飽和を回避できるアンチワインドアップ機能を保持している。しかし、アンチワインドアップ制御は、積分特性を持たないために外乱抑圧特性が非常に低くなる。
【0073】
同図において、制御スタートすると矢印Lsrの方向に、最初に、位置指令応答・外乱抑圧特性に優れたロバスト性重視の制御モードから開始する。このロバスト性重視の制御モードは、外乱が大きいときは、振動が発生しやすくなり、位置指令応答特性が損なわれる。ロバスト性重視の制御モードの過程で振動が発生したきは、矢印Lrdの方向にダンピング性重視の制御モードに切り替える。また、ロバスト性重視の制御モードの過程で、制御入力量Ucが飽和状態になったときは、矢印Lrpの方向に制御入力量の飽和を回避するアンチワインドアップ制御モードに切り替える。
【0074】
ダンピング性重視の制御モード過程でも飽和が発生した場合は、矢印Ldpの方向に制御入力量の飽和を回避するアンチワインドアップ制御モードに切り替える。ダンピング性重視の制御モードの過程で、振動が抑制されたときは、矢印Ldrの方向に高速で追従する高速・高精度位置指令応答・外乱抑圧特性に優れているロバスト性重視の制御モードに切り替える。
【0075】
アンチワインドアップ制御モードの過程で、制御入力飽和が解消されたときは、振動が抑圧されている場合は、矢印Lprの方向に高速で追従する位置指令応答・外乱抑圧特性が得られるロバスト性重視の制御モードに変化し、振動が抑圧されていない場合は、矢印Lpdの方向にダンピング性重視の制御モードに切り替える。
[図7説明]
図7は、第2の発明の図6のロバスト・ダンピング・アンチワインドアップ制御切り替え遷移図に対応した制御を行うために、外乱推定量w(^)の帰還ゲインおよび外乱微分量dw(^)/dtの帰還ゲインの両方を変化させる推定外乱・推定外乱微分量の帰還ゲイン設定図である。
【0076】
第2の発明のシステム制御系は、外乱微分量dw(^)/dtの帰還ゲインを変化させることに加えて、外乱推定量w(^)の帰還ゲインを変化させる機能も追加し、制御状態に応じて、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとの3つの制御モードに変化させることによって、高精度位置決め機能を有する。
【0077】
従来技術2では、外乱推定量w(^)の帰還ゲインを変化させていないために、図7に示す外乱推定量w(^)の帰還ゲインが初期値よりも小さくなるモードがなく、第2の発明に係るアンチワインドアップ制御のモードが存在しない。
【0078】
以下の説明では、従来技術2に存在するロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとの2つの制御を2モード方式といい、第2の発明のロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとの3つの制御を3モード方式という。
【0079】
第2の発明の3モード方式の制御の特徴は、図6で説明したので省略する。なお、第2の発明に係るアンチワインドアップ制御は、制御入力量Ucが飽和状態になると、外乱微分量dw(^)/dtの帰還ゲインを初期設計値よりも小の値に変化させることによって、制御入力量Ucの飽和を回避して「制御入力量の飽和を回避するアンチワインドアップ」機能を維持することができるので、安定性が高く高精度が得られる。
[図8の説明]
図8は、第2の発明において、「制御開始」で制御を開始してから次の位置指令値Pcmdが入力されるまで現在位置に待機する可変制御のステップの一部を示すロバスト・ダンピング・アンチワインドアップモード切替フローチャートである。
【0080】
同図の制御開始ステップST1において、制御開始位置で位置偏差値ΔPおよび速度偏差値ΔVをゼロにした状態で、次のステップST2で待機する。
【0081】
また、後述するアンチワインドアップ制御ステップST10において、外乱推定量帰還ゲインL0<1に変化させて、ステップST2で待機する。
【0082】
位置指令値待機ステップST2において、位置指令値Pcmdが入力される。制御入力量出力ステップST3において、ロバスト性重視の制御モード、ダンピング性重視の制御モードまたはアンチワインドアップ制御モードのいずれかの現在切り替えられているモードで、制御入力信号Ucを出力する。
【0083】
(現在制御モードでの)制御入力量飽和判別ステップST4において、制御入力信号Ucが飽和状態であるかどうかを判別し、飽和状態であるときは後述するアンチワインドアップ制御ステップST10に移行し、まだ飽和していないときはステップST5に移行する。
【0084】
速度・位置偏差符号判別ステップST5において、速度偏差ΔVの符号と位置偏差ΔPの符号とが同符号かどうかを判別し、同符号のときは後述するロバスト性重視の制御帰還ゲイン切替ステップST8に移行し、また異符号のときはステップST6に移行する。
【0085】
ロバスト性重視の制御帰還ゲイン切替ステップST8において、ロバスト性重視の制御モード(外乱推定量帰還ゲインL0=1および微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1=0)に変化させて、制御入力量出力ステップST3に戻る。以下、制御入力量出力ステップST3以後の手順を繰り返す。
【0086】
ダンピング性重視の制御帰還ゲイン切替ステップST9において、ダンピング性重視の制御モード(外乱推定量帰還ゲインL0=1および微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1=1)に変化させて、制御入力量出力ステップST3に戻る。以下、制御入力量出力ステップST3以後の手順を繰り返す。
【0087】
アンチワインドアップ制御ステップST10において、前述した(現在制御モードでの)制御入力量飽和判別ステップST4で、制御入力信号Ucが飽和状態であるときは、外乱推定量帰還ゲインL0を初期設計されたゲインよりも小にするように、外乱推定量帰還ゲイン(L0)をL0<1に変化させる。
[図9の説明]
図9は、外乱推定量帰還ゲインL0および推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させて、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとを切り替えたときのそれぞれの制御回路のボード線図を示す。
【0088】
図9は、外乱推定量帰還ゲインL0および推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させて、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとを切り替えたときのそれぞれの制御回路のボード線図である。
【0089】
同図は、外乱推定量帰還ゲインL0および微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させて、位置指令応答・外乱抑圧特性に優れたロバスト性重視の制御モードと過渡現象抑制特性に優れたダンピング性重視の制御モードと制御入力量Ucの飽和を回避するアンチワインドアップ制御モードとを切り替えたときの周波数・ゲイン特性図および周波数・位相特性図である。
【0090】
同図(A)は周波数(Hz)(横軸)の変化に従って制御入力量Ucのゲイン(dB)(縦軸)が変化している周波数・ゲイン特性図であり、同図(B)は周波数(Hz)(横軸)の変化に従って制御入力量Ucの位相(deg)(縦軸)が変化している周波数・位相特性図である。
【0091】
同図(A)の周波数・ゲイン特性図および同図(B)の周波数・位相特性図において、外乱推定量帰還ゲインL0=1で、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1=0の太線RaおよびRbは、低周波ゲインが非常に大きいPID制御であって、位置指令応答・外乱抑圧特性に優れたロバスト性重視の制御特性を示す。
【0092】
また、同図(A)および同図(B)において、外乱推定量帰還ゲインL0=1で、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1>0の細線DaおよびDbは、前述した太線RaおよびRbよりも低周波ゲインが十分に低いPID制御であって、過渡現象抑制特性に優れたダンピング性重視の制御特性を示す。
【0093】
さらに、同図(A)および同図(B)において、外乱推定量帰還ゲインL0<1(微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1は任意の値)の点線PaおよびPbは、積分特性を持たないために、制御入力量の飽和を回避できるアンチワインドアップ制御特性を示す。
【0094】
同図において、前述した図1の制御対象100に入力する制御入力信号Ucを、外乱推定量帰還ゲインL0、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させるだけで、位置指令応答・外乱抑圧特性に優れたロバスト性重視の制御モードと過渡現象抑制特性に優れたダンピング性重視の制御モードと制御入力量の飽和を回避できるアンチワインドアップ制御モードとの3つの特性に切り替わる。
【0095】
すなわち、第2の発明は、従来技術の通常の切り替え型制御装置のように、物理的に複数のコントローラ(制御対象用複数制御回路)を有することなく、外乱推定量帰還ゲインL0および推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させるだけで、一つの制御回路に3つの特性(モード)を機能させることができる。複数のコントローラを持たないために、演算量を少なくすることができ、切替時のコントローラの初期値を考慮する必要がない。
[図10の説明]
図10は、制御パラメータ変動(慣性変動)がある場合の外乱がステップ状に繰り返して変化した影響を受けて位置偏差値ΔPが変動するパラメータ変動・ステップ外乱影響偏差変動図である。同図(A)は、時間経過Time(sec)(横軸)に対する位置偏差値ΔP(um)(縦軸)を示し、同図(B)は、時間経過Time(sec)(横軸)に対する制御モートの切り替わり状態(縦軸)を示している。
【0096】
同図(B)に示すNormalモード[通常の初期設計のロバスト性重視の制御のNormal(通常)制御(2次積分制御モード)]期間に、時刻0.1(sec)でステップ外乱が生じて、ロバスト性重視の制御のNormal(通常)制御からダンピング性重視の制御のDump制御に切り替わり、同図(A)に示す位置偏差値ΔPが発生する。
【0097】
図10(B)の制御パラメータ変動(慣性変動)がある場合は、前述した図10(B)の制御パラメータ変動(慣性変動)がない場合と異なり、ステップ外乱が生じると、同図(A)に示す位置偏差値ΔPがなくなるまで、ロバスト性重視の制御のNormal(通常)制御とダンピング性重視の制御のDump制御との繰り返しが継続する。
【0098】
同図(A)に示すように、点線d2(従来技術1の外乱オブザーバ)の外乱推定量w(^)の位置偏差値ΔPが最も大である。細線e2(従来技術2の高次数外乱オブザーバ)の推定外乱微分の位置偏差値ΔPは太線f1と同様に小であるが、位置偏差値ΔPおよび振動が太線f2よりも大である。太線f2の第2の発明のモード切り替え型の制御回路を使用した可変制御装置の位置偏差値ΔPおよび振動が小で優れている。
[図11の説明]
図11は、制御パラメータ変動があっても、本願発明の3モード方式が従来技術2の2モード方式に比べて目標位置到達応答性が優れていることを示すモード方式対比目標位置応答特性図である。
【0099】
同図(A)は時間の経過Time[sec](横軸)に対するサーボ制御装置の変化中の制御応答位置P[mm](縦軸)を示し、同図(B)は時間の経過Time[sec](横軸)に対する制御モードを、前述した図6に示すように制御開始とともにNormalモードからアンチワインドアップ制御モードに変化し、それからダンピング性重視の制御Dumpモードに変化させ、さらにロバスト性重視の制御Normalモード(縦軸)に変化させている。
【0100】
同図(B)に示すように、制御パラメータ変動があっても、同図(A)の太線hに示す第2の発明のアンチワインドアップ制御モードとダンピング性重視の制御Dumpモードとロバスト性重視の制御Normalモードとからなる3モード方式の目標位置に達するまでの目標位置飽和曲線hが、点線gで示す従来技術2のロバスト性重視の制御Normalモードとダンピング性重視の制御Dumpモードとからなる2モード方式の目標位置飽和曲線gに比べて目標位置到達応答性が優れている。
【0101】
従来技術2の2モード方式は、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1しか変化させていないシステム制御系であるために、同図(A)の点線で示す目標位置飽和曲線gがワインドアップ現象により振動的に変動する制御位置応答値になっている。それに対して、本願発明の3モード方式では、制御入力が飽和状態に達した場合、位置指令値変化または外乱が発生していない間は通常の初期設計値よりも小さい帰還ゲインに変化させて追従して高精度の制御をするアンチワインドアップ制御モードに切り替わり、同図(A)の太線で示す目標位置飽和曲線hが振動なしに目標位置に到達していることから、ワインドアップの影響が低減している。なお、微分階k=1の外乱微分量dw(^)/dtの帰還を備えていない従来技術1の外乱オブザーバ201の場合は、図示していないがワインドアップの影響で位置指令応答・外乱抑圧特性が発散し(失われて)てしまう。
【0102】
外乱微分量は近似微分回路で演算してもよいし、通常の外乱オブザーバよりも次数の高いモデルを使用して設計する高次数外乱オブザーバを使用して演算してもよい。高次数外乱オブザーバを使用すると外乱微分量の演算手段はオブザーバに内包されているので、外乱微分量演算回路が簡素になる。
【0103】
サーボ装置の位置または速度は、センサで検出してもよいし、オブザーバで算出してもよい。本発明の実施例、問題を解決するための手段、請求項などでは、記載を簡潔にするために、外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を使用したが、センサで検出してもよくその他の均等物であってもよい。
【0104】
位置だけをセンサで検出する場合、速度を外乱オブザーバを使用して推定することができるので、速度検出・演算回路が簡素になる。
【0105】
通常、軌道追従制御の場合、位置指令と速度指令とを設定するが、位置制御だけの場合は、速度指令を設定しない。すなわち、速度指令はゼロであるので、速度偏差値は、検出または演算した速度の符号を反転した値となる。
【0106】
本発明の実施例、問題を解決するための手段、請求項などでは、構成を明瞭にするために、ハードウエア的に、各機能を備えた回路を有機的に結合した装置またはその装置を使用する方法を記載したが、コンピュータを使用して、ソフトウエア的に、各機能を備えた回路の一部または全部を形成してもよい。この場合、各機能を備えた回路を有機的に結合したハードウエアとコンピュータのプログラムで実行するソフトウエアとは、本発明の構成上は同等である。
【0107】
今回開示された実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0108】
【発明の効果】
本発明の各装置または方法が、以下に記載する本発明の効果のすべてを同時に有している必要はなく、本発明の一つ以上の効果が公知技術に有していなければよい。
【0109】
第1の発明は、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が同符号か異符号かを判別して、推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させることによって、位置偏差値ΔPの最大値を抑制して高精度位置決め機能を実現することができる。大きさがない符号(値を有していない正または負またはゼロの符号)をもとにパラメータを変化させているので、しきい値の調整の必要がない。
【0110】
第2の発明は、制御入力量Ucが飽和状態になったときに、外乱推定量帰還ゲインL0を1よりも小さくかつゼロ以上の値にすることによって、制御入力量Ucが飽和状態になったときに、外乱推定量帰還ゲインL0を初期設計されたゲインよりも小にして、制御入力量の飽和を回避してワインドアップを防止することができる。
【0111】
また、従来技術2の2モード方式は、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1しか変化させていないシステム制御系であるためにワインドアップ現象により振動的に変動する制御位置応答値になっているのに対して、第2の発明は、本願発明の3モード方式であるので、制御入力が飽和状態に達した場合、通常の初期設計値よりも小さい制御ゲインに変化させて、アンチワインドアップ制御モードに切り替わり、振動なしに目標位置に到達しているのでワインドアップの影響が低減している。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明の位置偏差値ΔPの最大値を抑制する機能および第2の発明のワインドアップを防止する機能を備えて、ロバスト性を犠牲にすることなく、高精度位置決め機能を実現するブロック図である。
【図2】特開平3−17703に記載された制御状態に応じて外乱推定量w(^)の帰還ゲイン(帰還ゲイン)を変化させる「速度依存型外乱推定オブザーバ制御装置」のブロック図である。
【図3】本出願人が先に出願して公開された特開平2001−147702に記載したように、高次数外乱オブザーバが推定できる外乱微分量の帰還を制御状態に応じて変化させるサーボ制御のブロック図である。
【図4】速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとが形成する平面上で、制御対象の速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとで描かれる軌道が、平面のどの象限にあるかによって、外乱微分量帰還ゲインL1を変化させる速度偏差・位置偏差対応帰還ゲイン切替説明図である。
【図5】位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が同符号のときは、外乱推定量w(^)を帰還してロバスト重視の制御モードにし、また位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が異符号のときは、外乱推定量w(^)の帰還の他に、外乱微分量dw(^)/dtの帰還を追加してダンピング性重視の制御モードにする本願発明に係る位置・速度偏差値符号対応外乱微分量設定図である。
【図6】第2の発明の制御の概念図であって、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとに変化させるアルゴリズムを示すロバスト・ダンピング・アンチワインドアップ制御モード切り替え遷移図である。
【図7】第2の発明の図6のロバスト・ダンピング・アンチワインドアップ制御切り替え遷移図に対応した制御を行うために、外乱推定量w(^)の帰還ゲインおよび外乱微分量dw(^)/dtの帰還ゲインの両方を変化させる推定外乱・推定外乱微分量の帰還ゲイン設定図である。
【図8】第2の発明において、「制御開始」で制御を開始してから次の位置指令値Pcmdが入力されるまで現在位置に待機する可変制御のステップの一部を示すロバスト・ダンピング・アンチワインドアップモード切替フローチャートである。
【図9】外乱推定量帰還ゲインL0および推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させて、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとを切り替えたときのそれぞれの制御回路のボード線図である。
【図10】制御パラメータ変動(慣性変動)がある場合の外乱がステップ状に繰り返して変化した影響を受けて位置偏差値ΔPが変動するパラメータ変動・ステップ外乱影響偏差変動図である。同図(A)は、時間経過Time(sec)(横軸)に対する位置偏差値ΔP(um)(縦軸)を示し、同図(B)は、時間経過Time(sec)(横軸)に対する制御モートの切り替わり状態(縦軸)を示す図である。
【図11】制御パラメータ変動があっても、本願発明の3モード方式が従来技術2の2モード方式に比べて目標位置到達応答性が優れていることを示すモード方式対比目標位置応答特性図である。
【符号の説明】
[回路]
100 制御対象
105 位置指令・応答値減算回路
106 位置帰還回路
401 外乱オブザーバ
404 位置・速度偏差値符号判別回路
406 制御入力加減算回路
411 推定外乱微分量ゲイン乗算回路
411A 推定外乱微分量ゲイン切替回路
412 推定外乱量ゲイン乗算回路
412A 推定外乱量ゲイン切替回路
414 制御入力量飽和判定回路
415 速度指令・応答値減算回路
416 速度帰還回路
[量または値]
KP 位置帰還ゲイン
KV 速度帰還ゲイン
L0 外乱推定量帰還ゲイン
L1 推定外乱微分量帰還ゲイン
αL0 外乱推定量切替帰還ゲイン
βL1 推定外乱微分量切替帰還ゲイン
P 制御位置応答値
Pcmd 位置指令値
Vcmd 速度指令値
ΔP 位置偏差値
ΔV 速度偏差値
Up 位置偏差制御量
Uv 速度偏差制御量
V 検出速度
V(^) 速度推定値
Sc 位置・速度偏差値判別値
Su 制御入力量飽和判定値
Uw(αL0・w(^)) 外乱補償値
Ud(βL1・dw(^)/dt) ダンピング補償値
Uc 制御入力量
w 外乱量
w(^) 外乱推定量
dw(^)/dt 外乱微分量
[信号]
Pcmd 位置指令信号
Vcmd 速度指令信号
P 制御位置応答信号
V(^) 推定速度信号
Kp 位置帰還信号
Kv 速度帰還信号
Up 位置偏差制御信号
Uv 速度偏差制御信号
Sc 位置・速度偏差値符号判別信号
Su 制御入力量飽和判定信号
αL0 外乱推定量切替帰還ゲイン信号
βL1 推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号
w(^) 外乱推定量信号
dw(^)/dt 外乱微分量信号
Uc 制御入力信号
Uw(=αL0・w(^)) 外乱補償信号
Ud(=βL1・dw(^)/dt) ダンピング補償信号。
【発明の属する技術分野】
この発明は、外乱オブザーバを用いて制御対象の可変制御を行い、外乱抑圧特性、指令位置追従特性などを向上させる可変制御方法および可変制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
位置決め装置などの制御対象において、例えば、ステップ状の関数dw(^)/dt=0にモデル化される外乱量wを推定できる外乱オブザーバを用いて推定した外乱を帰還させることによって、外乱による影響を低減させ、制御特性を向上させる方法が行われている。
【0003】
例えば、高速な位置移動および高精度な位置決めが要求される半導体製造装置(ステッパー、ボンダーなど)の位置決めテーブル、プリント基板製作に用いられるチィップインサータ(以下、高速・高精度サーボ制御装置という)などに適用される。
[従来技術1]
[図2の説明]
図2は、特開平3−17703[特許文献1と同じ]に記載された制御状態に応じて外乱推定量w(^)のフィードバック(以下、帰還という)ゲインを変化させる「速度依存型外乱推定オブザーバ制御装置」のブロック図である。
【0004】
この発明では、モータの速度vに応じて、ゲイン調整手段4によって外乱推定オブザーバの帰還ゲインを変化させて、低速度領域のみ外乱オブザーバを有効にして高いロバスト性を実現し、速度が高くなるに従って帰還ゲイン3を小さくしていき、速度が高い状態では外乱オブザーバを無効にして、過渡応答特性を向上させている。可変制御の方法は、モータの速度vの大きさを観測し、それに応じて推定外乱帰還ゲインを変化させている。
[従来技術2]
[図3の説明]
図3は本出願人が先に出願して公開された特開平2001−147702[特許文献2と同じ]に記載したように、高次数外乱オブザーバが推定できる外乱微分量の帰還を制御状態に応じて変化させるサーボ制御のブロック図である。
【0005】
本発明では、外乱微分量dw(^)/dtを高次数外乱オブザーバ45で推定し、外乱微分量の大きさに応じて帰還ゲイン乗算器47のゲインを変化させ、高次数外乱オブザーバのロバスト性を確保したまま、過渡応答特性を向上させている。
【0006】
図3の可変制御方法は、外乱微分量dw(^)/dtを観測し、それに応じて外乱微分量帰還ゲインを変化させている。
【0007】
このような制御状態に応じて制御パラメータを変化させる可変制御は実施容易であるので、通常はソフトウエアによるディジタル制御回路によって実施している。
【0008】
本出願において外乱とは、外部からの機械的応力の他に、温度、経年変化などによって電気素子の特性変化、装置の設置状態が傾いて発生する重力外乱、周辺からの振動、ワークの種類による形状、重量変化、モデル化していない摩擦、撓みなどの非線形要素、機械体の高次モードなど、設計時に使用した制御モデルPnに反映されていない要素をいう。
【0009】
【特許文献1】
特開平3−17703(第1図)
【0010】
【特許文献2】
特開平2001−147702(図7)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
外乱オブザーバを用いた方式は、低周波領域の外乱、制御パラメータ変動に対して性能改善は著しいが、過大な積分器ゲインにより過渡現象抑制特性を低下させてしまう問題が知られている。また、この外乱オブザーバを用いた方式は、ソフトウエアによるディジタル制御で実施されるので、積分器の飽和によるワインドアップ現象を引き起こしやすい問題がある。
【0012】
図2に示した従来技術1は、停止摩擦などを補償するためのみに限定して外乱オブザーバを使用している。すなわち、速度が低いときのみ帰還ゲインを1にして、外乱オブザーバを有効にし、速度が上昇すると帰還ゲインを1よりも小さくし、最終的には帰還ゲインをゼロにして外乱オブザーバを無効にし、過渡現象抑制特性を改善している。
【0013】
しかし、この方式では、摩擦などの補償のみにしか外乱オブザーバを使用していなく、制御パラメータ変動も補償できる外乱オブザーバの特性を生かしていない。例えば、慣性変動など全周波数領域で影響を与える制御パラメータ変動、速度などがある一定限度を超えた外乱に対しては全く効果がない。
【0014】
また、モータの速度に応じて最適なゲインを得るために、実機における調整作業が必要であるなど問題がある。
【0015】
従来技術2は、高次数外乱オブザーバ301を用いて、外乱微分量の帰還を制御状態に応じて変化させることによって、外乱オブザーバの高いロバスト性を保ったまま、過渡現象抑制特性の低下の問題を改善している。
【0016】
しかし、従来技術2は、過渡現象抑制特性は向上するが、偏差の最大値が多少大きくなること、外乱微分量の大きさを基に予め定めた一定のしきい値によって制御回路を変化させているために、実際の制御において、しきい値の調整が必須であるために問題がある。
【0017】
この発明の目的は、第1に、速度、外乱微分量などとは異なり大きさを定義しないで、後述する図1に示す位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号(+または−のいずれか一方の値以外はとり得ない観測量)のみで判別し、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させて、複雑な調整作業なしで、外乱抑圧特性を悪化させることなく過渡現象抑制特性を改善できる可変制御方法および可変制御装置を提供することである。
【0018】
この発明の目的は、第2に、第1の発明に加えて、図1に示す位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucが飽和状態になったときに、外乱推定量帰還ゲインL0を初期設計されたゲインよりも小にすることによって、特別な付加回路なしでワインドアップ現象を防止する可変制御方法および可変制御装置を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
実施態様1は、第1の発明の方法の実施態様であって、
位置指令値Pcmdと速度指令値Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱微分量dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御方法において、
上記位置指令値Pcmdと上記速度指令値Vcmdと上記外乱微分量dw(^)/dtとに対応して定まる上記制御対象100の制御位置から制御位置応答値Pを算出し、
上記位置指令値Pcmdから上記制御位置応答値Pを減算した位置偏差値ΔPと上記速度指令値Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を減算した速度偏差値ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差値ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御方法である。
【0020】
実施態様2は、実施態様1の構成を具体化した第1の発明の方法の実施態様であって、
位置指令値Pcmdと速度指令値Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱微分量dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御方法において、
上記位置指令値Pcmdと上記速度指令値Vcmdと上記外乱微分量dw(^)/dtとに対応して定まる上記制御対象100の制御位置から制御位置応答値Pを算出し、
上記位置指令値Pcmdから上記制御位置応答値Pを減算した位置偏差値ΔPと上記速度指令値Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を減算した速度偏差値ΔVとから位置・速度偏差値符号判別値Scを算出し、
上記位置・速度偏差値符号判別値Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替える推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を算出し、
上記位置偏差値ΔPと上記速度偏差値ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差値ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御方法である。
【0021】
実施態様3は、実施態様2の構成を具体化した第1の発明の方法の実施態様であって、
位置指令値Pcmdと速度指令値Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱微分量dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御方法において、
上記位置指令値Pcmdと上記速度指令値Vcmdと上記外乱微分量dw(^)/dtとに対応して定まる上記制御対象100の制御位置から制御位置応答値Pを算出する制御位置応答値算出過程ST100と、
上記位置指令値Pcmdから上記制御位置応答値Pを減算した位置偏差値ΔPを出力する位置指令・応答値減算過程ST105と、
上記速度指令値Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を減算した速度偏差値ΔVを算出する速度指令・応答値減算過程ST415と、
上記位置偏差値ΔPと上記速度偏差値ΔVとから位置・速度偏差値符号判別値Scを算出する位置・速度偏差値符号判別過程ST404と、
上記位置・速度偏差値符号判別値Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1に上記外乱微分量dw(^)/dtを乗算してダンピング補償値Ud(βL1・dw(^)/dt)を算出する推定外乱微分量ゲイン乗算過程ST411と、
上記位置偏差値ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御量Upと上記速度偏差値ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御量Uvと上記ダンピング補償値Udとを加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucを算出する制御入力加減算過程ST406と、
上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucと上記制御位置応答値Pとから上記外乱オブザーバ401が上記外乱微分量dw(^)/dtと上記推定速度値V(^)とを算出する外乱推定過程ST401とから成り、
上記位置偏差値ΔPと上記速度偏差値ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差値ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御方法である。
【0022】
実施態様4は、図1の高精度位置決め機能を実現するブロック図のうちの第1の発明の装置の実施態様であって、
位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御装置において、
上記位置指令信号Pcmdと上記速度指令信号Vcmdと上記外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する制御対象100と、
上記速度指令信号Vcmdから上記制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPと上記速度指令信号Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した上記速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する位置・速度偏差値符号判別回路404と、
上記位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路411Aとから成り、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御装置である。
【0023】
実施態様5は、実施態様4の構成を具体化した図1の高精度位置決め機能を実現するブロック図のうちの第1の発明の装置の実施態様であって、
位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御装置において、
上記位置指令信号Pcmdと上記速度指令信号Vcmdと上記外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する制御対象100と、
上記速度指令信号Vcmdから上記制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPを出力する位置指令・応答値減算回路105と、
上記速度指令信号Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した速度偏差信号ΔVを出力する速度指令・応答値減算回路415と、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する位置・速度偏差値符号判別回路404と、
上記位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えて推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路411Aと、
上記外乱微分量信号dw(^)/dtと上記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1とを入力してダンピング補償信号Ud(βL1・dw(^)/dt)を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路411と、
上記位置偏差信号ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御信号Upと上記速度偏差信号ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御信号Uvと上記ダンピング補償信号Udとを入力し加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucを出力する制御入力加減算回路406と、
上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucと上記制御位置応答信号Pとから上記外乱微分信号dw(^)/dtと上記推定速度信号V(^)とを出力する外乱オブザーバ401とから成り、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御装置である。
【0024】
実施態様6は、第2の発明の方法の実施態様であって、
位置指令値Pcmdと速度指令値Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量w(^)および外乱微分量dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御方法において、
上記位置指令値Pcmdと上記速度指令値Vcmdと上記外乱推定量w(^)および上記外乱微分量dw(^)/dtとに対応して定まる上記制御対象100の制御位置から制御位置応答値Pを算出し、
上記位置指令値Pcmdから上記制御位置応答値Pを減算した位置偏差値ΔPと上記速度指令値Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を減算した速度偏差値ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差値ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
上記位置偏差値ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御量Upと上記速度偏差値ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御量Uvと上記外乱微分量dw(^)/dtに対応したダンピング補償値Udと上記外乱推定量w(^)に対応した外乱補償値Uwとから位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucを算出し、
上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucから制御入力量飽和判定値Suを算出し、
上記制御入力量飽和判定値Suに従って上記外乱推定量帰還ゲインL0を切替える外乱推定量切替帰還ゲインαL0を算出して、
上記制御入力量飽和判定値Suが飽和判定したときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、上記制御入力量飽和判定値Suが飽和判定していないときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、上記位置偏差値ΔPおよび上記速度偏差値ΔVが大きいときのワインドアップを防止する可変制御方法である。
【0025】
実施態様7は、実施態様6の構成を具体化した第2の発明の方法の実施態様であって、
位置指令値Pcmdと速度指令値Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量w(^)および外乱微分量dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御方法において、
上記位置指令値Pcmdと上記速度指令値Vcmdと上記外乱推定量w(^)および上記外乱微分量dw(^)/dtとに対応して定まる上記制御対象100の制御位置から制御位置応答値Pを算出する制御位置応答値算出過程ST100と、
上記位置指令値Pcmdから上記制御位置応答値Pを減算した位置偏差値ΔPと上記速度指令値Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を減算した速度偏差値ΔVとから位置・速度偏差値符号判別値Scを算出する位置・速度偏差値符号判別過程ST404と、
上記位置・速度偏差値符号判別値Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1に上記外乱微分量dw(^)/dtを乗算してダンピング補償値Ud(βL1・dw(^)/dt)を算出する推定外乱微分量ゲイン乗算過程ST411と、
上記位置偏差値ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御量Upと上記速度偏差値ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御量Uvと上記ダンピング補償値Udと上記外乱推定量w(^)に対応した外乱補償値Uwとから算出した位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucから制御入力量飽和判定値Suを算出する制御入力量飽和判定過程ST414と、
上記制御入力量飽和判定値Suに従って上記外乱推定量帰還ゲインL0を切替える外乱推定量切替帰還ゲインαL0を乗算して外乱補償値Uw(αL0・w(^))を算出する推定外乱量ゲイン乗算過程ST412とから成り、
上記位置偏差値ΔPと上記速度偏差値ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差値ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
上記制御入力量飽和判定値Suが飽和判定したときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、上記制御入力量飽和判定値Suが飽和判定していないときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、上記位置偏差値ΔPおよび上記速度偏差値ΔVが大きいときのワインドアップを防止する可変制御方法である。
【0026】
実施態様8は、実施態様7の構成を具体化した図1の高精度位置決め機能を実現するブロック図に示す第2の発明の方法の実施態様であって、
位置指令値Pcmdと速度指令値Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量w(^)および外乱微分量dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御方法において、
上記位置指令値Pcmdと上記速度指令値Vcmdと上記外乱推定量w(^)および上記外乱微分量dw(^)/dtとに対応して定まる上記制御対象100の制御位置から制御位置応答値Pを算出する制御位置応答値算出過程ST100と、
上記位置指令値Pcmdから上記制御位置応答値Pを減算した位置偏差値ΔPを算出する位置指令・応答値減算過程ST105と、
上記速度指令値Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を減算した速度偏差値ΔVを算出する速度指令・応答値減算過程ST415と、
上記位置偏差値ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御量Upを算出する位置帰還過程ST106と、
上記速度偏差値ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御量Uvを算出する速度帰還過程ST416と、
上記位置偏差値ΔPと上記速度偏差値ΔVとから位置・速度偏差値符号判別値Scを算出する位置・速度偏差値符号判別過程ST404と、
上記位置・速度偏差値符号判別値Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替える推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を算出する推定外乱微分量ゲイン切替過程ST411Aと、
上記外乱微分量dw(^)/dtに上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を乗算してダンピング補償値Ud(βL1・dw(^)/dt)を算出する推定外乱微分量ゲイン乗算過程ST411と、
上記位置偏差制御量Upと上記速度偏差制御量Uvと上記ダンピング補償値Udと上記外乱推定量w(^)に対応した外乱補償値Uwとから算出した位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucから制御入力量飽和判定値Suを算出する制御入力量飽和判定過程ST414と、
上記制御入力量飽和判定値Suに従って上記外乱推定量帰還ゲインL0を切替える外乱推定量切替帰還ゲインαL0を算出する推定外乱量ゲイン切替過程ST412Aと、
上記外乱推定量w(^)に上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を乗算して上記外乱補償値Uw(αL0・w(^))を算出する推定外乱量ゲイン乗算過程ST412と、
上記位置偏差制御量Upと上記速度偏差制御量Uvと上記外乱補償値Uwと上記ダンピング補償値Udと上記外乱補償値Uwとを加減算して上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力量Ucを算出する制御入力加減算過程ST406とから成り、
上記位置偏差値ΔPと上記速度偏差値ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差値ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
上記制御入力量飽和判定値Suが飽和判定したときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、上記制御入力量飽和判定値Suが飽和判定していないときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、上記位置偏差値ΔPおよび上記速度偏差値ΔVが大きいときのワインドアップを防止する可変制御方法である。
【0027】
実施態様9は、図1の高精度位置決め機能を実現するブロック図の第2の発明の装置の実施態様であって、
位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量信号w(^)および外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御装置において、
上記位置指令信号Pcmdと上記速度指令信号Vcmdと上記外乱推定量信号w(^)および上記外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する制御対象100と、
上記速度指令信号Vcmdから上記制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPと上記速度指令信号Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する位置・速度偏差値符号判別回路404と、
上記位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1と上記外乱微分量信号dw(^)/dtとを入力して上記外乱微分量信号dw(^)/dtに上記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を乗算したダンピング補償信号Ud(βL1・dw(^)/dt)を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路411と、上記位置偏差値ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御量Upと上記速度偏差値ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御量Uvと上記ダンピング補償値Udと上記外乱推定量w(^)に対応した外乱補償値Uwとを入力し加減算した位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucによって制御入力量飽和判定信号Suを出力する制御入力量飽和回路414と、
上記制御入力量飽和判定信号Suに従って上記外乱推定量帰還ゲインL0を切替えた外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0と上記外乱推定量信号w(^)とを入力して上記外乱推定量信号w(^)に上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を乗算して外乱補償信号Uw(αL0・w(^))を出力する推定外乱量ゲイン乗算回路412とから成り、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
上記制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定したときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、上記制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定していないときに上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、上記位置偏差値ΔPおよび上記速度偏差値ΔVが大きいときのワインドアップを防止する可変制御装置である。
【0028】
実施態様10は、実施態様9の構成を具体化した図1の高精度位置決め機能を実現するブロック図に示す第2の発明の装置の実施態様であって、
位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量信号w(^)および外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御装置において、
上記位置指令信号Pcmdと上記速度指令信号Vcmdと上記外乱推定量信号w(^)および上記外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する制御対象100と、
上記速度指令信号Vcmdから上記制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPを出力する位置指令・応答値減算回路105と、
上記速度指令信号Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した速度偏差信号ΔVを出力する速度指令・応答値減算回路415と、
上記位置偏差信号ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御信号Upを算出する位置帰還回路106と、
上記速度偏差信号ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御信号Uvを算出する速度帰還回路416と、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する位置・速度偏差値符号判別回路404と、
上記位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路411Aと、
上記外乱微分量信号dw(^)/dtと上記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1とを入力してダンピング補償信号Ud(βL1・dw(^)/dt)を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路411と、
上記位置偏差制御信号Upと上記速度偏差制御信号Uvと上記外乱補償信号Uwと上記外乱推定量信号w(^)に対応した外乱補償信号Uwとを入力し加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucを出力する制御入力加減算回路406と、
上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucを入力して制御入力量飽和判定信号Suを出力する制御入力量飽和回路414と、
上記制御入力量飽和判定信号Suに従って上記外乱推定量帰還ゲインL0を切替えた外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0を出力する推定外乱量ゲイン切替回路412Aと、
上記外乱推定量信号w(^)と上記外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0とを入力して上記外乱推定量信号w(^)に上記外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0を乗算した上記外乱補償信号Uw(αL0・w(^))を出力する推定外乱量ゲイン乗算回路412とから成り、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
上記制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定したときに、上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、上記制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定していないときに、上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、上記位置偏差信号ΔPおよび上記速度偏差信号ΔVが大きいときのワインドアップを防止する可変制御装置である。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は、「第1の発明の位置偏差値ΔPの最大値を抑制する機能および第2の発明の第1の発明の機能に加えてワインドアップを防止する機能を備えて、ロバスト性を犠牲にすることなく、高精度位置決め機能を実現するブロック図」を具体化した高精度制御特性ブロック図である。
【0030】
本出願発明の第1の発明の実施の形態は、図1のブロック図に示すように、
実施態様5は、実施態様4の構成を具体化した図1の高精度位置決め機能を実現するブロック図のうちの第1の発明の装置の実施態様であって、
位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量信号w(^)および外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御装置において、
上記位置指令信号Pcmdと上記速度指令信号Vcmdと上記外乱推定量信号w(^)および上記外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する制御対象100と、
上記速度指令信号Vcmdから上記制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPを出力する位置指令・応答値減算回路105と、
上記速度指令信号Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した速度偏差信号ΔVを出力する速度指令・応答値減算回路415と、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する位置・速度偏差値符号判別回路404と、
上記位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えて推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路411Aと、
上記外乱微分量信号dw(^)/dtと上記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1とを入力してダンピング補償信号Ud(βL1・dw(^)/dt)を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路411と、
上記位置偏差信号ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御信号Upと上記速度偏差信号ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御信号Uvと上記ダンピング補償信号Udとを入力し加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucを出力する制御入力加減算回路406と、
上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucと上記制御位置応答信号Pとから上記外乱推定信号w(^)と上記外乱微分信号dw(^)/dtと上記推定速度信号V(^)とを出力する外乱オブザーバ401とから成り、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御装置である。
【0031】
本出願発明の第2の発明の実施の形態は、図1のブロック図に示すように、
位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量信号w(^)および外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する可変制御装置において、
上記位置指令信号Pcmdと上記速度指令信号Vcmdと上記外乱推定量信号w(^)および上記外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する制御対象100と、
上記速度指令信号Vcmdから上記制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPを出力する位置指令・応答値減算回路105と、
上記速度指令信号Vcmdから上記外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した速度偏差信号ΔVを出力する速度指令・応答値減算回路415と、
上記位置偏差信号ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御信号Upを算出する位置帰還回路106と、
上記速度偏差信号ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御信号Uvを算出する速度帰還回路416と、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する位置・速度偏差値符号判別回路404と、
上記位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って上記推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路411Aと、
上記外乱微分量信号dw(^)/dtと上記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1とを入力してダンピング補償信号Ud(βL1・dw(^)/dt)を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路411と、
上記位置偏差制御信号Upと上記速度偏差制御信号Uvと上記外乱補償信号Uwと上記外乱推定量信号w(^)に対応した外乱補償信号Uwとを入力し加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucを出力する制御入力加減算回路406と、
上記位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号Ucを入力して制御入力量飽和判定信号Suを出力する制御入力量飽和回路414と、
上記制御入力量飽和判定信号Suに従って上記外乱推定量帰還ゲインL0を切替えた外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0を出力する推定外乱量ゲイン切替回路412Aと、
上記外乱推定量信号w(^)と上記外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0とを入力して上記外乱推定量信号w(^)に上記外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0を乗算した上記外乱補償信号Uw(αL0・w(^))を出力する推定外乱量ゲイン乗算回路412とから成り、
上記位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、上記推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、上記位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
上記制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定したときに、上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、上記制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定していないときに、上記外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、上記位置偏差信号ΔPおよび上記速度偏差信号ΔVが大きいときのワインドアップを防止する可変制御装置である。
【0032】
【実施例】
第1の発明の構成は、後述する図4に示すように、制御対象の速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとが形成する平面上で、速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとで描かれる軌道が存在する位置に応じて、後述する図5に示すように、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が同符号のときは、速度偏差値ΔVの推定外乱微分量帰還利得L1=0とし、速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとの符号が異符号でかつ速度偏差値ΔVおよび位置偏差値ΔPが予め定めた値よりも大きいときに、推定外乱微分量帰還利得L1を零よりも大にしてダンピング性重視の制御モードにして位置偏差値ΔPの最大値を抑制する可変制御方法および可変制御装置である。
【0033】
第2の発明の構成は、後述する図6に示すように、ロバスト・ダンピング・アンチワインドアップ制御切り替え遷移図に対応した制御を行うために、後述する図7に示すように、位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号(以下、制御入力信号という)Ucが飽和状態になったときに、外乱推定量w(^)の外乱推定量帰還利得L0を初期設計された利得よりも小にすることによって、アンチワインドアップ制御モードを実現し、位置速度帰還ゲイン切替制御入力量(以下、制御入力量という)Ucの飽和の影響を少なくする可変制御方法および可変制御装置である。
【0034】
第2の発明のシステム制御系は、外乱微分量dw(^)/dtの帰還ゲインを変化させることに加えて、外乱推定量w(^)の帰還ゲインも変化させ、制御状態に応じて、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとの3つの制御モードを使って、高精度位置決め機能を有する高速・高精度サーボ制御装置を実現している。
【0035】
第1の発明では、図1に示すように、位置偏差値Δと速度偏差値ΔVとの符号を判別する位置・速度偏差値符号判別回路404を備えている。
【0036】
同図に示す制御は、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとが同符号のときは、外乱推定量w(^)を帰還して位置指令応答・外乱抑圧特性に優れたロバスト性重視の制御モード(通常モード)とし、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとが異符号のときは、外乱微分量dw(^)/dtの帰還ゲインL1をL1>0として過渡現象抑制特性に優れたダンピング性重視の制御モードにしている。
る。
【0037】
一般的な外乱オブザーバは、外乱量wのモデルをステップ状の関数として、外乱微分量dw(^)/dt=0としてオブザーバが形成されるが、外乱モデルをd(k)w/dt(k)=0とし、推定外乱微分の階(以下、微分階という)k=1の外乱として形成してもよい。例えば、微分階k=1(以下、微分階1という)の場合、ランプ状の外乱としてモデル化することになる。
【0038】
後述する図8において、外乱オブザーバ401は、制御対象100の制御入力信号Ucと制御位置応答信号Pとを入力して、制御対象の推定速度信号V(^)、外乱推定量信号w(^)を出力する。上記k=1の外乱オブザーバを使用した場合、微分階1の外乱微分量信号dw(^)/dtを出力することもできる。上記の(^)は推定量を意味している。
[図1の説明]
図1は、第1の発明の位置偏差値ΔPの最大値を抑制する機能および第2の発明のワインドアップを防止する機能を備えて、ロバスト性を犠牲にすることなく、高精度位置決め機能を実現するブロック図である。
【0039】
第1の発明の可変制御装置は、位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱オブザーバ401が出力する外乱推定量信号w(^)および外乱微分量信号dw(^)/dtとによって制御対象100が制御位置に応答する。
【0040】
以下、図1を参照して第1の発明の前述した実施態様5の装置について説明する。
【0041】
制御対象100は、位置指令信号Pcmdと速度指令信号Vcmdと外乱推定量信号w(^)および外乱微分量信号dw(^)/dtとに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号Pを出力する。
【0042】
位置指令・応答値減算回路105は、速度指令信号Vcmdから制御位置応答信号Pを減算した位置偏差信号ΔPを出力する。
【0043】
速度指令・応答値減算回路415は、速度指令信号Vcmdから外乱オブザーバ401が推定した速度推定信号V(^)を減算した速度偏差信号ΔVを出力する。
【0044】
位置・速度偏差値符号判別回路404は、位置偏差信号ΔPと速度偏差信号ΔVとを入力して位置・速度偏差値符号判別信号Scを出力する。
【0045】
推定外乱微分量ゲイン切替回路411Aは、位置・速度偏差値符号判別信号Scに従って推定外乱微分量帰還ゲインL1を切替えて推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1を出力する。
【0046】
推定外乱微分量ゲイン乗算回路411は、外乱微分量信号dw(^)/dtと推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号βL1とを入力してダンピング補償信号Ud(βL1・dw(^)/dt)を出力する。
【0047】
通常の高次数外乱オブザーバの場合は、外乱推定量帰還ゲインL0=1であり、また微分階1ないしk(以下、微分階1からkという)の推定外乱微分量帰還ゲインL1ないしLk=0である。
【0048】
制御入力加減算回路406は、位置偏差信号ΔPに位置帰還ゲインKPを乗算した位置偏差制御信号Upと速度偏差信号ΔVに速度帰還ゲインKVを乗算した速度偏差制御信号Uvとダンピング補償信号Udとを入力し加減算して制御入力信号Ucを出力する。
【0049】
外乱オブザーバ401は、制御入力信号Ucと制御位置応答信号Pとから外乱推定信号w(^)と外乱微分信号dw(^)/dtと推定速度信号V(^)とを出力する。
【0050】
上記の構成を備えた第1の発明の可変制御装置によって、位置偏差信号ΔPと上記速度偏差信号ΔVとが同符号のときに、推定外乱微分量切替帰還ゲインβL1を0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、位置偏差信号ΔPの最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させることができる。
【0051】
次に、図1を参照して第2の発明の前述した実施態様10の装置について説明する。前述した第1の発明の前述した実施態様5の装置について説明した構成、機能などの説明は省略する。
【0052】
制御入力加減算回路406は、位置偏差制御信号Upと速度偏差制御信号Uvと外乱補償信号Uwと外乱推定量信号w(^)に対応した外乱補償信号Uwとを入力し加減算して制御入力信号Ucを出力する。
【0053】
制御入力量飽和回路414は、制御入力信号Ucを入力して制御入力量飽和判定信号Suを出力する。
【0054】
推定外乱量ゲイン切替回路412Aは、制御入力量飽和判定信号Suに従って外乱推定量帰還ゲインL0を切替えた外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0を出力する。
【0055】
推定外乱量ゲイン乗算回路412は、外乱推定量信号w(^)と外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0とを入力して外乱推定量信号w(^)に外乱推定量切替帰還ゲイン信号αL0を乗算した外乱補償信号Uw(αL0・w(^))を出力する。
【0056】
上記の構成を備えた第2の発明の可変制御装置によって、前述した第1の発明の可変制御装置の機能に加えて、制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定したときに、外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1よりも小さい値にし、制御入力量飽和判定信号Suが飽和判定していないときに、外乱推定量切替帰還ゲインαL0を1にして、位置偏差信号ΔPおよび速度偏差信号ΔVが大きいときのワインドアップを防止することができる。
【0057】
図1に示す制御入力量飽和判定回路414は、制御入力量Ucが制御対象100の内部の図示していない駆動アンプなどを飽和させるか否かを判断し、その判断に応じて外乱推定量帰還ゲインL0を変化させる。
【0058】
位置帰還ゲインKPおよび速度帰還ゲインKVを位置・速度偏差値符号判別回路404または制御入力量飽和判定回路414の出力に応じて変化させてもよい。すなわち、変化させることができる制御パラメータは、位置帰還ゲインKP、速度帰還ゲインKV、外乱推定量帰還ゲインL0および推定外乱微分量帰還ゲインL1である。
【0059】
上記制御パラメータを変化させたときに、制御パラメータを変化後のシステム制御系の相補感度関数のピークゲインと帯域とが、外乱推定量帰還ゲインL0=1、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1=0のシステム制御系に等しいかまたは小さくすることが望ましい。この論理は次のとおりである。
【0060】
設計に使用した理想的なプラントの関数をPn(s)とし、制御回路の関数をC(s)として、パラメータ変動、モデル化などの誤差が含まれる実際のプラントの関数をP(s)とし、P(s)=(1+Δm(s))Pn(s)で表すことができる。システム制御系の安定性は、相補感度関数をT(s)=Pn(s)C(s)/(1+Pn(s)C(s))とすると、T(s)Δm(s)のH無限大ノルムが1よりも小さくなることによって保証される。すなわち、可変制御装置で制御回路の関数がC(s)からC’(s)に変化して、相補感度関数がT(s)になったときに、T’(s)のノルムがT(s)のノルムよりも少なくとも同じか小さくなれば、システム制御系の安定性が保証される。したがって、T’(s)Δm(s)のH無限大ノルムが1よりも小さくなる条件で、位置帰還ゲインKP、速度帰還ゲインKVなどの関数C’(s)のパラメータを決定する。
[図4の説明]
図4は、速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとが形成する平面上で、制御対象の速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとで描かれる軌道が、平面のどの象限にあるかによって、外乱微分量帰還ゲインL1を変化させる速度偏差・位置偏差対応帰還ゲイン切替説明図である。
【0061】
同図は、速度偏差値ΔV(横軸)と位置偏差値ΔP(縦軸)との符号が同符号か異符号かによって、外乱推定量帰還ゲインL0=1のときに、外乱微分量dw(^)/dtの微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1を0および正の値(L1=0およびL>0)に変化させることを示している。
【0062】
図4は、制御位置応答値Pによって初期位置Psから指令目標位置Pe(0,0)までの速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとの変化経路(軌跡)を示す。
【0063】
この図4は、後述する図5に示すように、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が同符号のときは、速度偏差値ΔVの推定外乱微分量帰還ゲインL1=0としてロバスト性を重視し、速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとの符号が異符号のときに、推定外乱微分量帰還ゲインL1>0としてダンピング性重視の制御モードにしている。
【0064】
同図に示すように制御することによって、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号を判別して微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させて位置偏差値ΔPの最大値を抑制して高精度位置決め機能を実現することができる。
【0065】
後述する図6に示すロバスト・ダンピング・アンチワインドアップ制御モード切り替え遷移図の第2の発明においては、制御開始時は、外乱推定量帰還ゲインL0=1および微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1=0の初期位置Psから開始し、制御入力信量Ucが飽和状態に達した場合、例えば、図示していない制御対象駆動用アンプへの指令値が駆動電流の上限を越えた場合、外乱推定量帰還ゲイン0<=L0<1として、制御入力信量Ucの飽和を回避できるアンチワインドアップ制御モードに変化し、過大な積分器ゲインによるワインドアップを防止する。外乱推定量帰還ゲインL0を変化させると同時に、位置帰還ゲインKPおよび速度帰還ゲインKVを変化させてもよい。
【0066】
制御入力量Ucが飽和していない状態では、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号を判定して、同符号のときは外乱推定量帰還ゲインL0=1、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1=0とし、初期設計された制御性能を実現する。異符号のときは外乱推定量帰還ゲインL0=1、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1>0とし、ダンピング性重視の制御モードに切り替わる。この場合もダンピング性をより高くするように、位置帰還ゲインKPおよび速度帰還ゲインKVを変化させてもよい。
[図5の説明]
図5は、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が同符号のときは、外乱推定量w(^)を帰還してロバスト重視の制御モードにし、また位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が異符号のときは、外乱推定量w(^)の帰還の他に、外乱微分量dw(^)/dtの帰還を追加してダンピング性重視の制御モードにする本願発明に係る位置・速度偏差値符号対応外乱微分量設定図である。
【0067】
前述した図4に示すように、速度偏差値ΔV(横軸)と位置偏差値ΔP(縦軸)とが形成する平面上で、制御対象の速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとで描かれる軌道が、平面のどの象限にあるかによって、(1)外乱推定量帰還ゲインL0=1のときに、図5に示すように、速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとの符号が同符号のときは、推定外乱微分量帰還ゲインL1=0とし、(2)速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとの符号が異符号のときに、(推定外乱帰還制御)外乱オブザーバ401が推定できる外乱微分量dw(^)/dtの微分の階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1をゼロよりも大きくする。
[図6の説明]
図6は、第2の発明の制御の概念図であって、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとに変化させるアルゴリズムを示すロバスト・ダンピング・アンチワインドアップ制御モード切り替え遷移図である。
【0068】
この図6は、高速・高精度位置指令応答特性・外乱抑圧特性に優れたロバスト性重視の制御モードと過渡現象抑制特性に優れたダンピング性重視の制御モードと制御入力量の飽和を回避するアンチワインドアップ制御とに変化させる遷移を示している。
【0069】
ロバスト性重視の制御(Normal(通常)制御)モードは、位置指令値、外乱などが変化したときに、通常の初期設計値の帰還ゲインに変化させて高速で追従する位置指令応答・外乱抑圧特性に優れている。その反面、ロバスト性重視の制御モードは、高いゲインの積分器を備えているために、安定性の余裕が十分でなく、大きな外乱、制御対象のパラメータの変化などに対して、振動が発生しやすくなり、位置指令応答特性が損なわれる。
【0070】
また、位置偏差ΔPが大きいときは、外乱推定量w(^)が必要以上に大きくなり、制御入力量Ucが飽和状態になってしまってワインドアップを起こし偏差が大きくなって、実システムではアクチュエータが暴走して装置が損傷することがある。
【0071】
ダンピング性重視の制御(Dump(過渡現象抑制)制御)モードは、振動を抑制する過渡現象抑制特性に優れているが、外乱抑圧特性が低く、高速・高精度位置応答特性が得られない。また、このダンピング性重視の制御モードは、積分特性を持つためにワインドアップを防ぐことができない。
【0072】
アンチワインドアップ制御モードは、制御入力量が飽和状態になったときに、通常の初期設計値よりも小さい帰還ゲインに変化させることによって、制御入力量の飽和を回避できるアンチワインドアップ機能を保持している。しかし、アンチワインドアップ制御は、積分特性を持たないために外乱抑圧特性が非常に低くなる。
【0073】
同図において、制御スタートすると矢印Lsrの方向に、最初に、位置指令応答・外乱抑圧特性に優れたロバスト性重視の制御モードから開始する。このロバスト性重視の制御モードは、外乱が大きいときは、振動が発生しやすくなり、位置指令応答特性が損なわれる。ロバスト性重視の制御モードの過程で振動が発生したきは、矢印Lrdの方向にダンピング性重視の制御モードに切り替える。また、ロバスト性重視の制御モードの過程で、制御入力量Ucが飽和状態になったときは、矢印Lrpの方向に制御入力量の飽和を回避するアンチワインドアップ制御モードに切り替える。
【0074】
ダンピング性重視の制御モード過程でも飽和が発生した場合は、矢印Ldpの方向に制御入力量の飽和を回避するアンチワインドアップ制御モードに切り替える。ダンピング性重視の制御モードの過程で、振動が抑制されたときは、矢印Ldrの方向に高速で追従する高速・高精度位置指令応答・外乱抑圧特性に優れているロバスト性重視の制御モードに切り替える。
【0075】
アンチワインドアップ制御モードの過程で、制御入力飽和が解消されたときは、振動が抑圧されている場合は、矢印Lprの方向に高速で追従する位置指令応答・外乱抑圧特性が得られるロバスト性重視の制御モードに変化し、振動が抑圧されていない場合は、矢印Lpdの方向にダンピング性重視の制御モードに切り替える。
[図7説明]
図7は、第2の発明の図6のロバスト・ダンピング・アンチワインドアップ制御切り替え遷移図に対応した制御を行うために、外乱推定量w(^)の帰還ゲインおよび外乱微分量dw(^)/dtの帰還ゲインの両方を変化させる推定外乱・推定外乱微分量の帰還ゲイン設定図である。
【0076】
第2の発明のシステム制御系は、外乱微分量dw(^)/dtの帰還ゲインを変化させることに加えて、外乱推定量w(^)の帰還ゲインを変化させる機能も追加し、制御状態に応じて、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとの3つの制御モードに変化させることによって、高精度位置決め機能を有する。
【0077】
従来技術2では、外乱推定量w(^)の帰還ゲインを変化させていないために、図7に示す外乱推定量w(^)の帰還ゲインが初期値よりも小さくなるモードがなく、第2の発明に係るアンチワインドアップ制御のモードが存在しない。
【0078】
以下の説明では、従来技術2に存在するロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとの2つの制御を2モード方式といい、第2の発明のロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとの3つの制御を3モード方式という。
【0079】
第2の発明の3モード方式の制御の特徴は、図6で説明したので省略する。なお、第2の発明に係るアンチワインドアップ制御は、制御入力量Ucが飽和状態になると、外乱微分量dw(^)/dtの帰還ゲインを初期設計値よりも小の値に変化させることによって、制御入力量Ucの飽和を回避して「制御入力量の飽和を回避するアンチワインドアップ」機能を維持することができるので、安定性が高く高精度が得られる。
[図8の説明]
図8は、第2の発明において、「制御開始」で制御を開始してから次の位置指令値Pcmdが入力されるまで現在位置に待機する可変制御のステップの一部を示すロバスト・ダンピング・アンチワインドアップモード切替フローチャートである。
【0080】
同図の制御開始ステップST1において、制御開始位置で位置偏差値ΔPおよび速度偏差値ΔVをゼロにした状態で、次のステップST2で待機する。
【0081】
また、後述するアンチワインドアップ制御ステップST10において、外乱推定量帰還ゲインL0<1に変化させて、ステップST2で待機する。
【0082】
位置指令値待機ステップST2において、位置指令値Pcmdが入力される。制御入力量出力ステップST3において、ロバスト性重視の制御モード、ダンピング性重視の制御モードまたはアンチワインドアップ制御モードのいずれかの現在切り替えられているモードで、制御入力信号Ucを出力する。
【0083】
(現在制御モードでの)制御入力量飽和判別ステップST4において、制御入力信号Ucが飽和状態であるかどうかを判別し、飽和状態であるときは後述するアンチワインドアップ制御ステップST10に移行し、まだ飽和していないときはステップST5に移行する。
【0084】
速度・位置偏差符号判別ステップST5において、速度偏差ΔVの符号と位置偏差ΔPの符号とが同符号かどうかを判別し、同符号のときは後述するロバスト性重視の制御帰還ゲイン切替ステップST8に移行し、また異符号のときはステップST6に移行する。
【0085】
ロバスト性重視の制御帰還ゲイン切替ステップST8において、ロバスト性重視の制御モード(外乱推定量帰還ゲインL0=1および微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1=0)に変化させて、制御入力量出力ステップST3に戻る。以下、制御入力量出力ステップST3以後の手順を繰り返す。
【0086】
ダンピング性重視の制御帰還ゲイン切替ステップST9において、ダンピング性重視の制御モード(外乱推定量帰還ゲインL0=1および微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1=1)に変化させて、制御入力量出力ステップST3に戻る。以下、制御入力量出力ステップST3以後の手順を繰り返す。
【0087】
アンチワインドアップ制御ステップST10において、前述した(現在制御モードでの)制御入力量飽和判別ステップST4で、制御入力信号Ucが飽和状態であるときは、外乱推定量帰還ゲインL0を初期設計されたゲインよりも小にするように、外乱推定量帰還ゲイン(L0)をL0<1に変化させる。
[図9の説明]
図9は、外乱推定量帰還ゲインL0および推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させて、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとを切り替えたときのそれぞれの制御回路のボード線図を示す。
【0088】
図9は、外乱推定量帰還ゲインL0および推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させて、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとを切り替えたときのそれぞれの制御回路のボード線図である。
【0089】
同図は、外乱推定量帰還ゲインL0および微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させて、位置指令応答・外乱抑圧特性に優れたロバスト性重視の制御モードと過渡現象抑制特性に優れたダンピング性重視の制御モードと制御入力量Ucの飽和を回避するアンチワインドアップ制御モードとを切り替えたときの周波数・ゲイン特性図および周波数・位相特性図である。
【0090】
同図(A)は周波数(Hz)(横軸)の変化に従って制御入力量Ucのゲイン(dB)(縦軸)が変化している周波数・ゲイン特性図であり、同図(B)は周波数(Hz)(横軸)の変化に従って制御入力量Ucの位相(deg)(縦軸)が変化している周波数・位相特性図である。
【0091】
同図(A)の周波数・ゲイン特性図および同図(B)の周波数・位相特性図において、外乱推定量帰還ゲインL0=1で、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1=0の太線RaおよびRbは、低周波ゲインが非常に大きいPID制御であって、位置指令応答・外乱抑圧特性に優れたロバスト性重視の制御特性を示す。
【0092】
また、同図(A)および同図(B)において、外乱推定量帰還ゲインL0=1で、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1>0の細線DaおよびDbは、前述した太線RaおよびRbよりも低周波ゲインが十分に低いPID制御であって、過渡現象抑制特性に優れたダンピング性重視の制御特性を示す。
【0093】
さらに、同図(A)および同図(B)において、外乱推定量帰還ゲインL0<1(微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1は任意の値)の点線PaおよびPbは、積分特性を持たないために、制御入力量の飽和を回避できるアンチワインドアップ制御特性を示す。
【0094】
同図において、前述した図1の制御対象100に入力する制御入力信号Ucを、外乱推定量帰還ゲインL0、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させるだけで、位置指令応答・外乱抑圧特性に優れたロバスト性重視の制御モードと過渡現象抑制特性に優れたダンピング性重視の制御モードと制御入力量の飽和を回避できるアンチワインドアップ制御モードとの3つの特性に切り替わる。
【0095】
すなわち、第2の発明は、従来技術の通常の切り替え型制御装置のように、物理的に複数のコントローラ(制御対象用複数制御回路)を有することなく、外乱推定量帰還ゲインL0および推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させるだけで、一つの制御回路に3つの特性(モード)を機能させることができる。複数のコントローラを持たないために、演算量を少なくすることができ、切替時のコントローラの初期値を考慮する必要がない。
[図10の説明]
図10は、制御パラメータ変動(慣性変動)がある場合の外乱がステップ状に繰り返して変化した影響を受けて位置偏差値ΔPが変動するパラメータ変動・ステップ外乱影響偏差変動図である。同図(A)は、時間経過Time(sec)(横軸)に対する位置偏差値ΔP(um)(縦軸)を示し、同図(B)は、時間経過Time(sec)(横軸)に対する制御モートの切り替わり状態(縦軸)を示している。
【0096】
同図(B)に示すNormalモード[通常の初期設計のロバスト性重視の制御のNormal(通常)制御(2次積分制御モード)]期間に、時刻0.1(sec)でステップ外乱が生じて、ロバスト性重視の制御のNormal(通常)制御からダンピング性重視の制御のDump制御に切り替わり、同図(A)に示す位置偏差値ΔPが発生する。
【0097】
図10(B)の制御パラメータ変動(慣性変動)がある場合は、前述した図10(B)の制御パラメータ変動(慣性変動)がない場合と異なり、ステップ外乱が生じると、同図(A)に示す位置偏差値ΔPがなくなるまで、ロバスト性重視の制御のNormal(通常)制御とダンピング性重視の制御のDump制御との繰り返しが継続する。
【0098】
同図(A)に示すように、点線d2(従来技術1の外乱オブザーバ)の外乱推定量w(^)の位置偏差値ΔPが最も大である。細線e2(従来技術2の高次数外乱オブザーバ)の推定外乱微分の位置偏差値ΔPは太線f1と同様に小であるが、位置偏差値ΔPおよび振動が太線f2よりも大である。太線f2の第2の発明のモード切り替え型の制御回路を使用した可変制御装置の位置偏差値ΔPおよび振動が小で優れている。
[図11の説明]
図11は、制御パラメータ変動があっても、本願発明の3モード方式が従来技術2の2モード方式に比べて目標位置到達応答性が優れていることを示すモード方式対比目標位置応答特性図である。
【0099】
同図(A)は時間の経過Time[sec](横軸)に対するサーボ制御装置の変化中の制御応答位置P[mm](縦軸)を示し、同図(B)は時間の経過Time[sec](横軸)に対する制御モードを、前述した図6に示すように制御開始とともにNormalモードからアンチワインドアップ制御モードに変化し、それからダンピング性重視の制御Dumpモードに変化させ、さらにロバスト性重視の制御Normalモード(縦軸)に変化させている。
【0100】
同図(B)に示すように、制御パラメータ変動があっても、同図(A)の太線hに示す第2の発明のアンチワインドアップ制御モードとダンピング性重視の制御Dumpモードとロバスト性重視の制御Normalモードとからなる3モード方式の目標位置に達するまでの目標位置飽和曲線hが、点線gで示す従来技術2のロバスト性重視の制御Normalモードとダンピング性重視の制御Dumpモードとからなる2モード方式の目標位置飽和曲線gに比べて目標位置到達応答性が優れている。
【0101】
従来技術2の2モード方式は、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1しか変化させていないシステム制御系であるために、同図(A)の点線で示す目標位置飽和曲線gがワインドアップ現象により振動的に変動する制御位置応答値になっている。それに対して、本願発明の3モード方式では、制御入力が飽和状態に達した場合、位置指令値変化または外乱が発生していない間は通常の初期設計値よりも小さい帰還ゲインに変化させて追従して高精度の制御をするアンチワインドアップ制御モードに切り替わり、同図(A)の太線で示す目標位置飽和曲線hが振動なしに目標位置に到達していることから、ワインドアップの影響が低減している。なお、微分階k=1の外乱微分量dw(^)/dtの帰還を備えていない従来技術1の外乱オブザーバ201の場合は、図示していないがワインドアップの影響で位置指令応答・外乱抑圧特性が発散し(失われて)てしまう。
【0102】
外乱微分量は近似微分回路で演算してもよいし、通常の外乱オブザーバよりも次数の高いモデルを使用して設計する高次数外乱オブザーバを使用して演算してもよい。高次数外乱オブザーバを使用すると外乱微分量の演算手段はオブザーバに内包されているので、外乱微分量演算回路が簡素になる。
【0103】
サーボ装置の位置または速度は、センサで検出してもよいし、オブザーバで算出してもよい。本発明の実施例、問題を解決するための手段、請求項などでは、記載を簡潔にするために、外乱オブザーバ401が推定した速度推定値V(^)を使用したが、センサで検出してもよくその他の均等物であってもよい。
【0104】
位置だけをセンサで検出する場合、速度を外乱オブザーバを使用して推定することができるので、速度検出・演算回路が簡素になる。
【0105】
通常、軌道追従制御の場合、位置指令と速度指令とを設定するが、位置制御だけの場合は、速度指令を設定しない。すなわち、速度指令はゼロであるので、速度偏差値は、検出または演算した速度の符号を反転した値となる。
【0106】
本発明の実施例、問題を解決するための手段、請求項などでは、構成を明瞭にするために、ハードウエア的に、各機能を備えた回路を有機的に結合した装置またはその装置を使用する方法を記載したが、コンピュータを使用して、ソフトウエア的に、各機能を備えた回路の一部または全部を形成してもよい。この場合、各機能を備えた回路を有機的に結合したハードウエアとコンピュータのプログラムで実行するソフトウエアとは、本発明の構成上は同等である。
【0107】
今回開示された実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0108】
【発明の効果】
本発明の各装置または方法が、以下に記載する本発明の効果のすべてを同時に有している必要はなく、本発明の一つ以上の効果が公知技術に有していなければよい。
【0109】
第1の発明は、位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が同符号か異符号かを判別して、推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させることによって、位置偏差値ΔPの最大値を抑制して高精度位置決め機能を実現することができる。大きさがない符号(値を有していない正または負またはゼロの符号)をもとにパラメータを変化させているので、しきい値の調整の必要がない。
【0110】
第2の発明は、制御入力量Ucが飽和状態になったときに、外乱推定量帰還ゲインL0を1よりも小さくかつゼロ以上の値にすることによって、制御入力量Ucが飽和状態になったときに、外乱推定量帰還ゲインL0を初期設計されたゲインよりも小にして、制御入力量の飽和を回避してワインドアップを防止することができる。
【0111】
また、従来技術2の2モード方式は、微分階1の推定外乱微分量帰還ゲインL1しか変化させていないシステム制御系であるためにワインドアップ現象により振動的に変動する制御位置応答値になっているのに対して、第2の発明は、本願発明の3モード方式であるので、制御入力が飽和状態に達した場合、通常の初期設計値よりも小さい制御ゲインに変化させて、アンチワインドアップ制御モードに切り替わり、振動なしに目標位置に到達しているのでワインドアップの影響が低減している。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明の位置偏差値ΔPの最大値を抑制する機能および第2の発明のワインドアップを防止する機能を備えて、ロバスト性を犠牲にすることなく、高精度位置決め機能を実現するブロック図である。
【図2】特開平3−17703に記載された制御状態に応じて外乱推定量w(^)の帰還ゲイン(帰還ゲイン)を変化させる「速度依存型外乱推定オブザーバ制御装置」のブロック図である。
【図3】本出願人が先に出願して公開された特開平2001−147702に記載したように、高次数外乱オブザーバが推定できる外乱微分量の帰還を制御状態に応じて変化させるサーボ制御のブロック図である。
【図4】速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとが形成する平面上で、制御対象の速度偏差値ΔVと位置偏差値ΔPとで描かれる軌道が、平面のどの象限にあるかによって、外乱微分量帰還ゲインL1を変化させる速度偏差・位置偏差対応帰還ゲイン切替説明図である。
【図5】位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が同符号のときは、外乱推定量w(^)を帰還してロバスト重視の制御モードにし、また位置偏差値ΔPと速度偏差値ΔVとの符号が異符号のときは、外乱推定量w(^)の帰還の他に、外乱微分量dw(^)/dtの帰還を追加してダンピング性重視の制御モードにする本願発明に係る位置・速度偏差値符号対応外乱微分量設定図である。
【図6】第2の発明の制御の概念図であって、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとに変化させるアルゴリズムを示すロバスト・ダンピング・アンチワインドアップ制御モード切り替え遷移図である。
【図7】第2の発明の図6のロバスト・ダンピング・アンチワインドアップ制御切り替え遷移図に対応した制御を行うために、外乱推定量w(^)の帰還ゲインおよび外乱微分量dw(^)/dtの帰還ゲインの両方を変化させる推定外乱・推定外乱微分量の帰還ゲイン設定図である。
【図8】第2の発明において、「制御開始」で制御を開始してから次の位置指令値Pcmdが入力されるまで現在位置に待機する可変制御のステップの一部を示すロバスト・ダンピング・アンチワインドアップモード切替フローチャートである。
【図9】外乱推定量帰還ゲインL0および推定外乱微分量帰還ゲインL1を変化させて、ロバスト性重視の制御モードとダンピング性重視の制御モードとアンチワインドアップ制御モードとを切り替えたときのそれぞれの制御回路のボード線図である。
【図10】制御パラメータ変動(慣性変動)がある場合の外乱がステップ状に繰り返して変化した影響を受けて位置偏差値ΔPが変動するパラメータ変動・ステップ外乱影響偏差変動図である。同図(A)は、時間経過Time(sec)(横軸)に対する位置偏差値ΔP(um)(縦軸)を示し、同図(B)は、時間経過Time(sec)(横軸)に対する制御モートの切り替わり状態(縦軸)を示す図である。
【図11】制御パラメータ変動があっても、本願発明の3モード方式が従来技術2の2モード方式に比べて目標位置到達応答性が優れていることを示すモード方式対比目標位置応答特性図である。
【符号の説明】
[回路]
100 制御対象
105 位置指令・応答値減算回路
106 位置帰還回路
401 外乱オブザーバ
404 位置・速度偏差値符号判別回路
406 制御入力加減算回路
411 推定外乱微分量ゲイン乗算回路
411A 推定外乱微分量ゲイン切替回路
412 推定外乱量ゲイン乗算回路
412A 推定外乱量ゲイン切替回路
414 制御入力量飽和判定回路
415 速度指令・応答値減算回路
416 速度帰還回路
[量または値]
KP 位置帰還ゲイン
KV 速度帰還ゲイン
L0 外乱推定量帰還ゲイン
L1 推定外乱微分量帰還ゲイン
αL0 外乱推定量切替帰還ゲイン
βL1 推定外乱微分量切替帰還ゲイン
P 制御位置応答値
Pcmd 位置指令値
Vcmd 速度指令値
ΔP 位置偏差値
ΔV 速度偏差値
Up 位置偏差制御量
Uv 速度偏差制御量
V 検出速度
V(^) 速度推定値
Sc 位置・速度偏差値判別値
Su 制御入力量飽和判定値
Uw(αL0・w(^)) 外乱補償値
Ud(βL1・dw(^)/dt) ダンピング補償値
Uc 制御入力量
w 外乱量
w(^) 外乱推定量
dw(^)/dt 外乱微分量
[信号]
Pcmd 位置指令信号
Vcmd 速度指令信号
P 制御位置応答信号
V(^) 推定速度信号
Kp 位置帰還信号
Kv 速度帰還信号
Up 位置偏差制御信号
Uv 速度偏差制御信号
Sc 位置・速度偏差値符号判別信号
Su 制御入力量飽和判定信号
αL0 外乱推定量切替帰還ゲイン信号
βL1 推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号
w(^) 外乱推定量信号
dw(^)/dt 外乱微分量信号
Uc 制御入力信号
Uw(=αL0・w(^)) 外乱補償信号
Ud(=βL1・dw(^)/dt) ダンピング補償信号。
Claims (10)
- 位置指令値と速度指令値と外乱オブザーバが出力する外乱微分量とによって制御対象が制御位置に応答する可変制御方法において、
前記位置指令値と前記速度指令値と前記外乱微分量とに対応して定まる前記制御対象の制御位置から制御位置応答値を算出し、
前記位置指令値から前記制御位置応答値を減算した位置偏差値と前記速度指令値から前記外乱オブザーバが推定した速度推定値を減算した速度偏差値とが同符号のときに、前記推定外乱微分量帰還ゲインを0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、前記位置偏差値の最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御方法。 - 位置指令値と速度指令値と外乱オブザーバが出力する外乱微分量とによって制御対象が制御位置に応答する可変制御方法において、
前記位置指令値と前記速度指令値と前記外乱微分量とに対応して定まる前記制御対象の制御位置から制御位置応答値を算出し、
前記位置指令値から前記制御位置応答値を減算した位置偏差値と前記速度指令値から前記外乱オブザーバが推定した速度推定値を減算した速度偏差値とから位置・速度偏差値符号判別値を算出し、
前記位置・速度偏差値符号判別値に従って前記推定外乱微分量帰還ゲインを切替える推定外乱微分量切替帰還ゲインを算出し、
前記位置偏差値と前記速度偏差値とが同符号のときに、前記推定外乱微分量切替帰還ゲインを0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、前記位置偏差値の最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御方法。 - 位置指令値と速度指令値と外乱オブザーバが出力する外乱微分量とによって制御対象が制御位置に応答する可変制御方法において、
前記位置指令値と前記速度指令値と前記外乱微分量とに対応して定まる前記制御対象の制御位置から制御位置応答値を算出する制御位置応答値算出過程と、
前記位置指令値から前記制御位置応答値を減算した位置偏差値を出力する位置指令・応答値減算過程と、
前記速度指令値から前記外乱オブザーバが推定した速度推定値を減算した速度偏差値を算出する速度指令・応答値減算過程と、
前記位置偏差値と前記速度偏差値とから位置・速度偏差値符号判別値を算出する位置・速度偏差値符号判別過程と、
前記位置・速度偏差値符号判別値に従って前記推定外乱微分量帰還ゲインを切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲインに前記外乱微分量を乗算してダンピング補償値を算出する推定外乱微分量ゲイン乗算過程と、
前記位置偏差値に位置帰還ゲインを乗算した位置偏差制御量と前記速度偏差値に速度帰還ゲインを乗算した速度偏差制御量と前記ダンピング補償値とを加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力量を算出する制御入力加減算過程と、
前記位置速度帰還ゲイン切替制御入力量と前記制御位置応答値とから前記外乱オブザーバが前記外乱微分量と前記推定速度値とを算出する外乱推定過程とから成り、
前記位置偏差値と前記速度偏差値とが同符号のときに、前記推定外乱微分量切替帰還ゲインを0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、前記位置偏差値の最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御方法。 - 位置指令信号と速度指令信号と外乱オブザーバが出力する外乱微分量信号とによって制御対象が制御位置に応答する可変制御装置において、
前記位置指令信号と前記速度指令信号と前記外乱微分量信号とに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号を出力する制御対象と、
前記速度指令信号から前記制御位置応答信号を減算した位置偏差信号と前記速度指令信号から前記外乱オブザーバが推定した速度推定信号を減算した前記速度偏差信号とを入力して位置・速度偏差値符号判別信号を出力する位置・速度偏差値符号判別回路と、
前記位置・速度偏差値符号判別信号に従って前記推定外乱微分量帰還ゲインを切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路とから成り、
前記位置偏差信号と前記速度偏差信号とが同符号のときに、前記推定外乱微分量切替帰還ゲインを0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、前記位置偏差信号の最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御装置。 - 位置指令信号と速度指令信号と外乱オブザーバが出力する外乱微分量信号とによって制御対象が制御位置に応答する可変制御装置において、
前記位置指令信号と前記速度指令信号と前記外乱微分量信号とに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号を出力する制御対象と、
前記速度指令信号から前記制御位置応答信号を減算した位置偏差信号を出力する位置指令・応答値減算回路と、
前記速度指令信号から前記外乱オブザーバが推定した速度推定信号を減算した速度偏差信号を出力する速度指令・応答値減算回路と、
前記位置偏差信号と前記速度偏差信号とを入力して位置・速度偏差値符号判別信号を出力する位置・速度偏差値符号判別回路と、
前記位置・速度偏差値符号判別信号に従って前記推定外乱微分量帰還ゲインを切替えて推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路と、
前記外乱微分量信号と前記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号とを入力してダンピング補償信号を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路と、
前記位置偏差信号に位置帰還ゲインを乗算した位置偏差制御信号と前記速度偏差信号に速度帰還ゲインを乗算した速度偏差制御信号と前記ダンピング補償信号とを入力し加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号を出力する制御入力加減算回路と、
前記位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号と前記制御位置応答信号とから前記外乱微分信号と前記推定速度信号とを出力する外乱オブザーバとから成り、
前記位置偏差信号と前記速度偏差信号とが同符号のときに、前記推定外乱微分量切替帰還ゲインを0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、前記位置偏差信号の最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させる可変制御装置。 - 位置指令値と速度指令値と外乱オブザーバが出力する外乱推定量および外乱微分量とによって制御対象が制御位置に応答する可変制御方法において、
前記位置指令値と前記速度指令値と前記外乱推定量および前記外乱微分量とに対応して定まる前記制御対象の制御位置から制御位置応答値を算出し、
前記位置指令値から前記制御位置応答値を減算した位置偏差値と前記速度指令値から前記外乱オブザーバが推定した速度推定値を減算した速度偏差値とが同符号のときに、前記推定外乱微分量帰還ゲインを0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、前記位置偏差値の最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
前記位置偏差値に位置帰還ゲインを乗算した位置偏差制御量と前記速度偏差値に速度帰還ゲインを乗算した速度偏差制御量と前記外乱微分量に対応したダンピング補償値と前記外乱推定量に対応した外乱補償値とから位置速度帰還ゲイン切替制御入力量を算出し、
前記位置速度帰還ゲイン切替制御入力量から制御入力量飽和判定値を算出し、前記制御入力量飽和判定値に従って前記外乱推定量帰還ゲインを切替える外乱推定量切替帰還ゲインを算出して、
前記制御入力量飽和判定値が飽和判定したときに前記外乱推定量切替帰還ゲインを1よりも小さい値にし、前記制御入力量飽和判定値が飽和判定していないときに前記外乱推定量切替帰還ゲインを1にして、前記位置偏差値および前記速度偏差値が大きいときのワインドアップを防止する可変制御方法。 - 位置指令値と速度指令値と外乱オブザーバが出力する外乱推定量および外乱微分量とによって制御対象が制御位置に応答する可変制御方法において、
前記位置指令値と前記速度指令値と前記外乱推定量および前記外乱微分量とに対応して定まる前記制御対象の制御位置から制御位置応答値を算出する制御位置応答値算出過程と、
前記位置指令値から前記制御位置応答値を減算した位置偏差値と前記速度指令値から前記外乱オブザーバが推定した速度推定値を減算した速度偏差値とから位置・速度偏差値符号判別値を算出する位置・速度偏差値符号判別過程と、
前記位置・速度偏差値符号判別値に従って前記推定外乱微分量帰還ゲインを切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲインに前記外乱微分量を乗算してダンピング補償値を算出する推定外乱微分量ゲイン乗算過程と、
前記位置偏差値に位置帰還ゲインを乗算した位置偏差制御量と前記速度偏差値に速度帰還ゲインを乗算した速度偏差制御量と前記ダンピング補償値と前記外乱推定量に対応した外乱補償値とから算出した位置速度帰還ゲイン切替制御入力量から制御入力量飽和判定値を算出する制御入力量飽和判定過程と、
前記制御入力量飽和判定値に従って前記外乱推定量帰還ゲインを切替える外乱推定量切替帰還ゲインを乗算して外乱補償値を算出する推定外乱量ゲイン乗算過程とから成り、
前記位置偏差値と前記速度偏差値とが同符号のときに、前記推定外乱微分量切替帰還ゲインを0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、前記位置偏差値の最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
前記制御入力量飽和判定値が飽和判定したときに前記外乱推定量切替帰還ゲインを1よりも小さい値にし、前記制御入力量飽和判定値が飽和判定していないときに前記外乱推定量切替帰還ゲインを1にして、前記位置偏差値および前記速度偏差値が大きいときのワインドアップを防止する可変制御方法。 - 位置指令値と速度指令値と外乱オブザーバが出力する外乱推定量および外乱微分量とによって制御対象が制御位置に応答する可変制御方法において、
前記位置指令値と前記速度指令値と前記外乱推定量および前記外乱微分量とに対応して定まる前記制御対象の制御位置から制御位置応答値を算出する制御位置応答値算出過程と、
前記位置指令値から前記制御位置応答値を減算した位置偏差値を算出する位置指令・応答値減算過程と、
前記速度指令値から前記外乱オブザーバが推定した速度推定値を減算した速度偏差値を算出する速度指令・応答値減算過程と、
前記位置偏差値に位置帰還ゲインを乗算した位置偏差制御量を算出する位置帰還過程と、
前記速度偏差値に速度帰還ゲインを乗算した速度偏差制御量を算出する速度帰還過程と、
前記位置偏差値と前記速度偏差値とから位置・速度偏差値符号判別値を算出する位置・速度偏差値符号判別過程と、
前記位置・速度偏差値符号判別値に従って前記推定外乱微分量帰還ゲインを切替える推定外乱微分量切替帰還ゲインを算出する推定外乱微分量ゲイン切替過程と、
前記外乱微分量に前記推定外乱微分量切替帰還ゲインを乗算してダンピング補償値を算出する推定外乱微分量ゲイン乗算過程と、
前記位置偏差制御量と前記速度偏差制御量と前記ダンピング補償値と前記外乱推定量に対応した外乱補償値とから算出した位置速度帰還ゲイン切替制御入力量から制御入力量飽和判定値を算出する制御入力量飽和判定過程と、
前記制御入力量飽和判定値に従って前記外乱推定量帰還ゲインを切替える外乱推定量切替帰還ゲインを算出する推定外乱量ゲイン切替過程と、
前記外乱推定量に前記外乱推定量切替帰還ゲインを乗算して前記外乱補償値を算出する推定外乱量ゲイン乗算過程と、
前記位置偏差制御量と前記速度偏差制御量と前記外乱補償値と前記ダンピング補償値と前記外乱補償値とを加減算して前記位置速度帰還ゲイン切替制御入力量を算出する制御入力加減算過程とから成り、
前記位置偏差値と前記速度偏差値とが同符号のときに、前記推定外乱微分量切替帰還ゲインを0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、前記位置偏差値の最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
前記制御入力量飽和判定値が飽和判定したときに前記外乱推定量切替帰還ゲインを1よりも小さい値にし、前記制御入力量飽和判定値が飽和判定していないときに前記外乱推定量切替帰還ゲインを1にして、前記位置偏差値および前記速度偏差値が大きいときのワインドアップを防止する可変制御方法。 - 位置指令信号と速度指令信号と外乱オブザーバが出力する外乱推定量信号および外乱微分量信号とによって制御対象が制御位置に応答する可変制御装置において、
前記位置指令信号と前記速度指令信号と前記外乱推定量信号および前記外乱微分量信号とに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号を出力する制御対象と、
前記速度指令信号から前記制御位置応答信号を減算した位置偏差信号と前記速度指令信号から前記外乱オブザーバが推定した速度推定信号を減算した速度偏差信号とを入力して位置・速度偏差値符号判別信号を出力する位置・速度偏差値符号判別回路と、
前記位置・速度偏差値符号判別信号に従って前記推定外乱微分量帰還ゲインを切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号と前記外乱微分量信号とを入力して前記外乱微分量信号に前記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号を乗算したダンピング補償信号を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路と、
前記位置偏差値に位置帰還ゲインを乗算した位置偏差制御量と前記速度偏差値に速度帰還ゲインを乗算した速度偏差制御量と前記ダンピング補償値と前記外乱推定量に対応した外乱補償値とを入力し加減算した位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号によって制御入力量飽和判定信号を出力する制御入力量飽和回路と、
前記制御入力量飽和判定信号に従って前記外乱推定量帰還ゲインを切替えた外乱推定量切替帰還ゲイン信号と前記外乱推定量信号とを入力して前記外乱推定量信号に前記外乱推定量切替帰還ゲインを乗算して外乱補償信号を出力する推定外乱量ゲイン乗算回路とから成り、
前記位置偏差信号と前記速度偏差信号とが同符号のときに、前記推定外乱微分量切替帰還ゲインを0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、前記位置偏差信号の最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、
前記制御入力量飽和判定信号が飽和判定したときに前記外乱推定量切替帰還ゲインを1よりも小さい値にし、前記制御入力量飽和判定信号が飽和判定していないときに前記外乱推定量切替帰還ゲインを1にして、前記位置偏差値および前記速度偏差値が大きいときのワインドアップを防止する可変制御装置。 - 位置指令信号と速度指令信号と外乱オブザーバが出力する外乱推定量信号および外乱微分量信号とによって制御対象が制御位置に応答する可変制御装置において、
前記位置指令信号と前記速度指令信号と前記外乱推定量信号および前記外乱微分量信号とに対応して定まる制御位置に応答して制御位置応答信号を出力する制御対象と、
前記速度指令信号から前記制御位置応答信号を減算した位置偏差信号を出力する位置指令・応答値減算回路と、
前記速度指令信号から前記外乱オブザーバが推定した速度推定信号を減算した速度偏差信号を出力する速度指令・応答値減算回路と、
前記位置偏差信号に位置帰還ゲインを乗算した位置偏差制御信号を算出する位置帰還回路と、
前記速度偏差信号に速度帰還ゲインを乗算した速度偏差制御信号を算出する速度帰還回路と、
前記位置偏差信号と前記速度偏差信号とを入力して位置・速度偏差値符号判別信号を出力する位置・速度偏差値符号判別回路と、
前記位置・速度偏差値符号判別信号に従って前記推定外乱微分量帰還ゲインを切替えた推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号を出力する推定外乱微分量ゲイン切替回路と、
前記外乱微分量信号と前記推定外乱微分量切替帰還ゲイン信号とを入力してダンピング補償信号を出力する推定外乱微分量ゲイン乗算回路と、
前記位置偏差制御信号と前記速度偏差制御信号と前記外乱補償信号と前記外乱推定量信号に対応した外乱補償信号とを入力し加減算して位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号を出力する制御入力加減算回路と、
前記位置速度帰還ゲイン切替制御入力信号を入力して制御入力量飽和判定信号を出力する制御入力量飽和回路と、
前記制御入力量飽和判定信号に従って前記外乱推定量帰還ゲインを切替えた外乱推定量切替帰還ゲイン信号を出力する推定外乱量ゲイン切替回路と、
前記外乱推定量信号と前記外乱推定量切替帰還ゲイン信号とを入力して前記外乱推定量信号に前記外乱推定量切替帰還ゲイン信号を乗算した前記外乱補償信号を出力する推定外乱量ゲイン乗算回路とから成り、
前記位置偏差信号と前記速度偏差信号とが同符号のときに、前記推定外乱微分量切替帰還ゲインを0にし、異符号のときに0よりも大きい値にして、前記位置偏差信号の最大値を抑制することによって過渡応答特性を向上させるとともに、前記制御入力量飽和判定信号が飽和判定したときに、前記外乱推定量切替帰還ゲインを1よりも小さい値にし、前記制御入力量飽和判定信号が飽和判定していないときに、前記外乱推定量切替帰還ゲインを1にして、前記位置偏差信号および前記速度偏差信号が大きいときのワインドアップを防止する可変制御装置。
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