JP2004239124A - 燃料噴射弁及び筒内噴射式エンジン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジンの燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁100がエンジンのシリンダヘッド106の噴射弁挿入穴107aに挿入される。燃料噴射弁100の外周の第1位置に設けた環状溝18gにシールリング42が装着される。シールリング42は、噴射弁挿入穴107aと燃料噴射弁100間をシールする。また前記第1位置よりも噴孔20から離れた位置に設けた環状溝18hにD−リング43が装着される。D−リング43はシールリング42のシール機能が低下した場合にバックアップのシールとして機能する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関用の燃料噴射弁に係り、更に詳細には、ガソリンエンジンにおいて燃料を気筒(燃焼室)内に直接噴射するいわゆる筒内噴射方式エンジンの燃料噴射弁のシール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガソリンエンジンにおける燃料噴射方式のうち、筒内噴射方式は吸気管燃料噴射方式に比較して、希薄燃焼が実現でき、燃料消費量の削減,有害排気ガスの低減に効果があることが知られている。このような筒内燃料噴射方式のガソリンエンジンでは、燃焼室内に直接燃料を供給する構造になり、電磁式燃料噴射弁(インジェクタ)の先端のノズル部を燃焼室に臨ませるようにして装着される。このため、インジェクタは、エンジンの爆発工程時に高温,高圧の燃焼ガスを直接受けることになる。この燃焼ガスの漏れを防止するために、エンジンのシリンダヘッドとインジェクタのノズル間にシール部材を具備している。ここで、シール部材のシール性を向上させるため、従来より種々の提案がなされている。たとえば特開2000−9000号公報に記載されているインジェクタは、ノズル部に環状溝を設けて、この環状溝に環状シール部材を装着しているが、この環状溝の周面(環状シール部材の内周が接する周面)に曲面状の突起(大きなR)を設け、この曲面状の突起によりシリンダヘッドの噴射弁取付穴(ノズル挿入穴)とノズル間の隙間を局部的に小さくして、シール部材の圧縮率をあげてシール性を高めている。
【0003】
また、特開平11−13593号公報に記載されているインジェクタでは、ノズル部に設けたシール装着用の環状溝の円周面に広角な山形の突起部を形成して、シール部材のインジェクタ取付穴(ノズル挿入穴)への押しつける力を助長させている。
【0004】
特開平11−210600号公報に記載されている燃料噴射弁では、ノズル先端にテーパを形成し、これに対応してエンジンのシリンダヘッドに設けた噴射弁取付穴のノズル挿入部をテーパ穴として、これらのテーパ・テーパ穴間にシール部材を介在する技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの技術は一つのシール部材で燃焼ガスをシールしなくてはならないため、比較的温度特性に優れたPTFE等をシール部材の材料として用いてはいるものの−30℃〜160℃といった幅広い温度環境でのシール性が要求される燃焼ガスシールにおいては特に低温での完全なシールは困難であった。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−9000号公報
【特許文献2】
特開平11−13593号公報
【特許文献3】
特開平11−210600号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、筒内噴射方式のエンジンにおいて、幅広い温度環境、特に低温時における燃焼ガスシール性を高め、しかも、装着性の良いインジェクタを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
エンジンの燃焼室に直接燃料を噴射するインジェクタにおいて、エンジンのシリンダヘッドに設けられた噴射弁挿入穴に挿入された燃料噴射弁の外周の第1位置に設けられた環状溝に前記噴射弁挿入穴と噴射弁間をシールするためのシールリングを装着する。このシールリングにはPTFE等の約200℃までの温度に耐えることができる材料を用いることによって通常のエンジン運転時のシール性は確保することができる。
【0009】
また更に前記第1位置よりも該燃料噴射弁の噴孔より離れた第2位置に設けられた環状溝に前記噴射弁挿入穴と噴射弁間をシールするための断面が略半円形状の環状弾性体であるD−リングを装着することにより、外気温が−30℃といった低温始動時において、シールリングが噴射弁およびエンジンヘッドの熱膨張率との差により完全なシール機能を果たせない場合にも、D−リングの材料をフッ素系ゴム等の低温特性に優れたシール材料を用いることにより、シールリングから漏れた燃焼ガスを完全にシールすることが可能になる。そして始動後に噴射弁周辺温度は急激に上昇していき、シールリングはシール機能を回復するため、D−リングは短時間しか燃焼ガスにさらされることはなく、加えてD−リングの断面形状は略半円形状であるため内径側は接触面積が広く、接触面圧を低くすることができOリングよりも圧縮永久ひずみ等の高温時の材料寿命について有利であり、十分な余裕を持つ。またD−リングにはゴムなどの柔らかい材料を用い、矩形のゴムシールと違いD−リングの外径側(挿入側)は円形をなしているため、エンジンヘッドへの挿入性をほとんど悪化させることは無いうえ、D−リングのバックアップシール機能を考慮してシールリングの締め代を緩和することができるため、挿入荷重を低減することも可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施例に係わる燃料噴射弁の縦断面図、図2はその取付状態を示す筒内噴射式エンジンの概要図である。
【0012】
まず、本実施例の全体概要について説明する。
【0013】
図1の矢印に示すように、燃料噴射弁100は、開弁時に噴射弁本体の上部から燃料が流入し軸方向に流れて噴射弁下端に設けたオリフィス20より燃料が噴射される所謂トップフィード方式のものが例示されている。
【0014】
燃料噴射弁100の本体の軸方向の燃料通路を構成する主な要素として、プレス加工(例えば、深絞り加工,押し出し加工などで、以下に述べるほかの部品においてプレス加工がなされるものも同様である)した燃料導入パイプ40,上端にフランジ1aを有する中空筒形の固定コア1、管材により細長の筒状にプレス加工し下端側に弁座付きオリフィスプレート19を有するノズルホルダー(ノズルボディと称されることもある)18を備える。
【0015】
燃料導入パイプ40は、上端及び下端部にフランジ40a,40bが設けられ、下端側のフランジ40bが符号W6で示す箇所で固定コア1のフランジ1a上面に溶接されている。この溶接はフランジの円周方向に行われ、それによって固定コア1と燃料導入用のパイプ40とが、噴射弁本体の組立前に予め結合されている。
【0016】
ノズルホルダー18の上部内周と固定コア1の外周とは圧入嵌合し、さらに符号W1で示す箇所が全周にわたり溶接されたことでノズルホルダー18と固定コア1とが結合されている。このようにして、パイプ40,固定コア1,ノズルホルダー18が一連に結合されて一つの燃料通路組立体が構成されている。
【0017】
この燃料通路組立体の内部には、円筒形の可動コア14と細長の弁体(弁ロッドを含む)16をジョイントパイプ15を介して結合している可動子5、この可動子5を弁座19a側に付勢する戻しばね7,戻しばね7のばね力を調整する部材6等が組み込まれている。
【0018】
ノズルホルダー18のうちで、固定コア1と圧入嵌合する位置の外周に電磁コイル2が配置され、その外側に筒形のヨーク4が配置される。
【0019】
ヨーク4は、プレス加工された筒形で、その上端が電磁コイル2を収納できるように開口し、この上端縁が固定コア1のフランジ1aに符号W5に示す位置で全周にわたり溶接結合される。ヨーク4の下端部4cは、電磁コイルを収納する部分4aよりも細く絞られて、その下端部4cがノズルホルダー18の外周に圧入嵌合している。
【0020】
この燃料噴射弁100は、電磁コイル2を通電させると、ヨーク4,固定コア1,可動コア14,ノズルホルダー18の一部が磁気回路を形成し、それによって、可動子5が戻しばね7の力に抗して吸引されることで、開弁動作が行われる。電磁コイル2の通電を止めると戻しばね7の力で可動子5が弁座19aに当接し、弁が閉じる。本例では、固定コア1の下端面が開弁動作時に可動子5を受け止めるストッパとしての役割をなしている。
【0021】
固定コア1は、磁性ステンレス鋼でありプレス加工及び切削により上端にフランジ1aを有する細長の中空円筒形に形成されている。
【0022】
フランジ1aには、電磁コイル2の端子29及びピン端子30を通すための窓1bが設けられている。
【0023】
燃料導入パイプ40は、非磁性金属部材で成形され、プレス加工によりその下部が細く絞られており、この下部内周に断面がCの字状のCリングピン6が圧入されている。このピン6の圧入量の調整により戻しばね7の荷重が調整される。燃料導入パイプ40の上端部には燃料フィルタ31が装着されている。
【0024】
ノズルホルダー18は、磁性材であるが、固定コア1の下端面が位置する周辺(符号Hで示す範囲)には、高周波焼き入れにより非磁性或いは弱磁性化の処理がなされている。
【0025】
ノズルホルダー18は、固定コア1を圧入する部分および可動コア14を収納するホルダー上部18aの径をノズルホルダーの中で最も大きくし、可動コア14と弁体16の結合部が位置する中間部18bはテーパー状に形成され、さらにその下の弁体が位置するホルダー下部18cは細長に絞られて、いわゆるロングノズルタイプのノズルホルダー18が形成されている。
【0026】
符号W1は、ノズルホルダー18と固定コア1との溶接箇所で、この位置W1でノズルホルダー18が固定コア1の全周にわたり溶接されている。この溶接W1は、ノズルホルダー18と固定コア1の内周間をシールすることになり、燃料噴射弁100を通過する燃料の漏れを防止する。
【0027】
ノズルボディ(いわゆるロングノズル部)18cの下部外周には、シールリング取付用の環状溝18gが設けられ、この溝18gに合成樹脂などの耐熱性シールリング42、例えばポリテトラフルオロエチレン製のシールが装着されている。またシールリング取付用の環状溝18gよりも噴孔から離れた位置にD−リング取付用の環状溝18hが設けられ、この溝18hにフッ素系ゴムなどの低温特性に優れた材料を用いたD−リング43が装着されている。
【0028】
このロングノズル部18cは、燃料噴射弁100を図2に示すように、エンジン105のシリンダヘッド106の噴射弁取付部107に設けたノズル挿入穴107aに直接挿入される。ノズル挿入穴107aは、噴射弁取付部の一部をなす。このロングノズルタイプは、吸気弁101,吸排気弁の駆動機構102,吸気管103等の実装密度が高い場合に、大径の噴射弁胴体部をこれらの部品やシリンダヘッド106から離した位置(干渉しない位置)に置くことができ、取り付けの自由度を高める利点がある。
【0029】
また、従来は燃料噴射弁100をシリンダヘッドに取り付けた場合、大径のヨーク底部とシリンダヘッドの間にガスケットを配置してエンジンの燃焼ガス漏れを防いでいたが、本実施例では細身のロングノズル部外周に設けたシールリング42によりロングノズル部(ノズルボディ)18c外周とその挿入穴(シリンダヘッド側)の内周間をシールしてエンジンの燃焼ガス漏れを防止するので、そのシール位置で燃焼受圧面積を小さくできるので、シール部材の小形簡易化,コスト低減を図ることができる。
【0030】
ノズルホルダー18の下端(先端)には、オリフィスプレート19と、燃料旋回子(以下、スワラーと称する)21とが設けられるが、これらの部材18,
19,21は別部材により成形される。
【0031】
オリフィスプレート19は、例えばステンレス系の円板状のチップにより形成され、その中央部に噴射孔(オリフィス)20が設けられ、それに続く上流部に弁座19aが形成されている。
【0032】
オリフィスプレート19は、ノズルホルダー18の下端内周18fに圧入により取り付ける仕様としてある。
【0033】
一方、スワラー21は、ノズルホルダー18の下端内周に嵌合する仕様としてあり、焼結合金により形成されている。スワラー21の外周および底面には燃料通路が形成され、このうち底面に設けた通路がスワラーの中央孔(バルブガイド孔)に対し偏心することで燃料に旋回力を付与している。
【0034】
図3は、燃料噴射弁100をエンジン(シリンダヘッド)106に装着したときに、ノズルボディ18がノズル挿入穴107aに挿入された状態を示す部分断面図である。
【0035】
ノズルボディ18の外周には、シールリング(シール部材)42を装着するための環状溝18gが形成され、環状溝18gに装着されたシールリング42は、ノズル挿入穴107aとノズルボディ18間をシールする。
【0036】
同様にD−リング43を装着するための環状溝18hが形成され、環状溝18hに装着されたD−リング43はノズル挿入穴107aとノズルボディ18間をシールする。
【0037】
ノズルボディ18に装着されたシールリング42およびD−リング43の外径は、燃料噴射弁100をシリンダヘッド106に装着する前は、ノズル挿入穴107aの径に対し充分大きい。燃料噴射弁100(ノズルボディ)を挿入していくとその径の差に相当する量がシールに寄与するつぶし量(圧縮量)となり、ノズルボディ18・ノズル挿入穴107a間をシールする。ここで、つぶし量を重視してシールリング42の厚みを厚くすると、シール部材の伸び率が低下するため、シールリング42をノズルホルダー18に装着する時に切れる可能性が発生する。または、挿入できないことが起こる。これは、シールリング42をノズルホルダー18に装着する際、該シールリング42を内径側から押し広げながら挿入するという作業を行うためである。そこで、シールリング42は、シール性・装着性の両方の機能を有する必要がある。シールリング42が、ノズルボディ18・ノズル挿入穴107a間に介在すると、シールリング42の外径側は、図示のとおりノズル挿入穴107aの内周と密着し、シールの機能を果たす。
【0038】
しかし温度変化時、特に低温時に材料の熱膨張率差によって十分密着できない場合にはシールリング42はシール機能を果たすことができなくなる。それをシールリング42のみで解決しようとする場合、つぶし量をシール性重視にさざるを得ず、装着性との両立のためには寸法管理を非常に厳しくする必要がある。
【0039】
低温特性に優れた材料、例えばフッ素系ゴムのD−リング43をバックアップ用のシールとして装着することにより、低温時にシールリング42から漏れが発生した場合にも外部へのシール性を確保することが可能になる。エンジンが始動すればエンジンの温度も上昇するため、シールリング42のシール性は回復し、D−リング43が燃焼ガスにさらされる時間はごく短い。さらに断面を半円形状とすることにより内径側の接触面積を増やし、接触圧力を低減しているため高温時の圧縮永久ひずみに対して有利であり、そのためD−リング43の材料としてゴム材料を用いることが可能である。
【0040】
挿入性に関しても低温時のシール機能をD−リングに依存することが可能になるため、シールリング42のシール性と装着性を両立するつぶし量の範囲を広げることができ、装着性を改善することが可能になる。D−リング自体の挿入性については、断面が半円形状で外径側が弧になっており、材料も柔らかい材料を使えるため、挿入荷重を低く抑えることが可能になっている。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、燃焼ガスシール性、特に低温時の燃焼ガスシール性およびエンジンへの装着性が良好な燃料噴射弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係わる燃料噴射弁の縦断面図。
【図2】上記燃料噴射弁の取付状態を示す概要図。
【図3】インジェクタの取付及びシール構造の具体的態様を示す構成図。
【符号の説明】
18…ノズルボディ(ノズルホルダー)、18g…シール装着用の環状溝、
18h…D−リング装着用の環状溝、42…シールリング、43…D−リング、
100…燃料噴射弁。
Claims (2)
- エンジンの燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁の燃焼ガスシール構造であって、エンジンのシリンダヘッドに設けられた噴射弁挿入穴に挿入された燃料噴射弁の外周の第1位置に設けられた環状溝に前記噴射弁挿入穴と噴射弁間にあって燃焼ガスのシール機能を有するシールリングが装着され、更に前記第1位置よりも該燃料噴射弁の噴孔より離れた第2位置に設けられた環状溝に前記噴射弁挿入穴を含むシリンダヘッドに具備された燃料噴射弁挿入穴と噴射弁間にあって燃焼ガスシール機能を有する断面が略半円形状の環状弾性体が装着されていることを特徴とする燃焼ガスシール構造。
- シリンダヘッドに燃料噴射弁をその先端が燃焼室に臨むように取り付けた筒内噴射式エンジンにおいて、前記シリンダヘッドに設けられた噴射弁挿入穴に燃料噴射弁が挿入され、該燃料噴射弁外周の第1位置に設けられた環状溝に装着した燃焼ガスのシール機能を有するシールリングが燃料噴射弁と噴射弁挿入穴間に介在し、更に前記第1位置よりも該燃料噴射弁の噴孔より離れた第2位置に設けられた環状溝に装着した燃焼ガスシール機能を有する断面が略半円形状の環状弾性体が燃料噴射弁と前記噴射弁挿入穴を含むシリンダヘッドに具備された燃料噴射弁挿入穴との間に介在してあることを特徴とする筒内噴射式エンジン。
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