JP2004238564A - インキ組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】生分解性プラスチックフィルムや紙の印刷物の、印刷インキが原因となる自然界での生分解遅れや未分解による残存がなくなる生分解性インキ組成物を提供すること。
【解決手段】顔料と有機溶剤と樹脂からなり、樹脂が有機溶剤に可溶の生分解性ポリカプロラクトン樹脂であることを特徴とするインキ組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】顔料と有機溶剤と樹脂からなり、樹脂が有機溶剤に可溶の生分解性ポリカプロラクトン樹脂であることを特徴とするインキ組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性プラスチック用の生分解性インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から生分解性プラスチックフィルムは大いに注目され、活発に研究開発されている。しかし生分解性印刷インキの開発は行われておらず、非生分解性インキを使用して印刷されている。従来技術の調査を行ったが、生分解性印刷インキに関する特許文献および非特許文献は見当たらなかった。
生分解性インキの開発が遅れている理由として、印刷皮膜は薄く、印刷対象基材と比べて問題にならない重量比率であることや生分解性のある樹脂で印刷インキに適した樹脂が少ないことなども挙げられる。
【0003】
ところで、生分解性プラスチックに非生分解性インキを使用した印刷物は、印刷面からの生分解が進まないことが判明した。このことは生分解が微生物の酵素によって分解される反応であり、微生物との接触がなければ分解は進まないことを意味している。
【0004】
包装袋の印刷は、通常、片面に行われることが大半であり、包装の工程で袋の形状に加工され、包装内容物を取り出す際は袋の端をカットし取り出すのが一般的であり、使用後の廃棄される状態でも袋の形状は維持されている。袋の形状を維持した状態では、生分解は微生物と接触が可能な外層(印刷面)からのみとなる。これは使用済の製品が廃棄→自然界での分解、回収→コンポスト化(たい肥化)して有効再利用される過程での生分解の障害となり、生分解性素材を使用しながら生分解が進まないことは大きな問題である。従って、この問題が解決されれば、環境負荷低減への寄与は大である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、生分解性フィルムや紙の印刷物の、印刷インキが原因となる自然界での生分解遅れや未分解による残存がなくなる生分解性印刷インキ組成物を提供することである。
本発明者は印刷インキの中で溶媒の選択幅の広い溶剤型グラビアインキに着目し、天然樹脂、生分解性のある天然樹脂の変性物、生分解性のある合成樹脂などから有機溶剤に溶解するものを選定し、インキ化を試みた結果、ポリカプロラクトン(以下ではPCLという。)を使用することで生分解性プラスチックフィルムや紙との接着性に優れた積層用グラビアインキが得られることを見いだした。PCLを使用したインキは生分解性があり、積層用(ラミネート用)インキに要求される多くの特性を有し、非生分解性インキの代替が可能であり満足できる結果を得、これらの知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は以下の本発明によって達せられる。即ち、本発明は、顔料と有機溶剤と樹脂からなり、樹脂が有機溶剤に可溶の生分解性ポリカプロラクトン樹脂であることを特徴とするインキ組成物である。
【0007】
本発明においては、印刷インキに使用する樹脂を生分解性にし、印刷の基材である生分解性プラスチックフィルムまたはシートに印刷し、従来試みられたことのない生分解性樹脂の貼り合せ(ラミネート化)においても、本発明の生分解性インキ組成物の使用は有効である。本発明のインキ組成物を使用した生分解性樹脂製の包装袋などが、心なしも廃棄された場合にも、それらのゴミは自然界で自然分解し、回収物は埋め立て後に分解により減量し、埋立地の有効利用になり、コンポストによる堆肥化において未分解による残存が無くなり良質なたい肥が得られる。これらは結果として環境負荷低減に繋がる。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明のインキ組成物で樹脂(ベヒクル樹脂)として使用するPCLは、ε−カプロラクトンを開環重合して得られる直鎖ポリエステルであり、分子量は特に限定されないが、グラビアインキには10,000〜100,000程度が適している。
【0009】
有機溶剤としては、PCLを溶解する溶剤であればいずれでもよいが、好ましくはエステル類、ケトン類、グリコールエステル類および芳香族炭化水素類から選択される少なくとも一種が用いられる。
ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが、エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピルなどが、グリコールエステル類としては、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどが、芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの有機溶剤の1種または2種以上の混合物を主溶剤とし、アルコール類を一部併用することができる。溶解、乾燥調整、粘度調整などの点から、溶剤は混合して使用することが好ましい。また、架橋剤の金属キレート化合物の反応抑制剤としてアルコール系溶剤、グリコール系溶剤がインキ中に0.1〜20重量%の範囲で用いられる。
【0010】
本発明で使用する顔料は、通常使用されているインキ用顔料がいずれも使用でき、特に限定されないが、重金属を含む顔料については印刷物の中での使用制限があり、意匠性表現においては留意することが必要である。その他、一般のインキ以上に安全性に不安がある物は使用を避ける心がけが必要である。
【0011】
本発明のインキ組成物は、顔料、PCL、有機溶剤からなり、さらに印刷インキにおいて従来から使用されている各種添加剤が適宜添加される。PCLは、通常、有機溶剤に10〜30重量%の濃度となるように溶解される。この溶液に顔料やその他の添加剤が溶解あるいは分散される。本発明で必要に応じて使用する添加剤としては、従来から印刷インキで使用されている架橋剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、可塑剤、ロジンなどが使用される。
【0012】
架橋剤は有機金属のキレート化合物やアルコキシレート化合物、ポリイソシアネート化合物などが使用できる。
有機金属キレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセトネート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。アルコキシレート化合物としては、例えば、トリエタノールアミンチタネートなどが挙げられ、インキ組成物製造時に添加しても保存安定性があり一液使用できる。これらの架橋剤の添加量は、樹脂固形分に対して、通常1〜20重量%程度の割合である。
【0013】
また、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、TDI(2,4または2,6−トルエンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、MDI(4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート)、HMDI(水添MDI)のTMP(トリメチロールプロパン)アダクト、トリマー、ビュレットなどが使用できる。使用法は塗布作業の直前に添加する2液仕様である。これらの使用量が樹脂に対して3重量%以下であれば、印刷インキの生分解速度は遅くなるが、障害にはならない。
【0014】
ブロッキング防止剤としては、例えば、二酸化ケイ素顔料、脂肪酸アミド(オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなど)、シリコーン(エポキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーなど)が用いられる。スリップ剤としては、例えば、低分子ポリエチレンワックス、低分子弗化ポリエチレンワックス、クリスタルワックス、カルナバワックスが用いられる。ロジン類としては、例えば、未変性ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン、マレイン酸変性ロジン、アルコール変性ロジンエステルが使用可能である。可塑剤としては、生分解性のある2塩基酸エステル、脂肪酸エステル、ATBC(アセチル−トリ−n−ブチルシトレート)などが使用される。
【0015】
その他、必要に応じてインキ、塗料添加剤である静電防止剤、沈降防止剤、レベリング剤、消泡剤などが使用される。
非生分解性添加剤類は、生分解性樹脂に対して各成分1重量%以下、総量で5重量%以下に抑えることで環境負荷は最小に抑えられる。
【0016】
本発明のインキ組成物は、グラビア印刷、凸版(フレキソ)印刷およびグラビアオフセット印刷に好適である。また、印刷基材は、各種生分解性プラスチックフィルムおよび紙が用いられる。印刷インキの使用量は、通常印刷インキ層の乾燥厚さが0.1〜10μmとなる量である。生分解性プラスチックとしては、例えば、ポリ乳酸、琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリエチレンサクシネート、芳香族・脂肪族コポリエステル、ポリビニールアルコール、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、酢酸セルロースおよび澱粉族脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0017】
本発明の生分解性樹脂を使用した印刷インキは、生分解性プラスチックフィルムや紙と同等以上の生分解性があり、生分解性印刷基材が生分解する前に消失するが、非生分解性樹脂使用印刷インキは、非印刷部分の生分解性印刷基材の分解後も形態を保持する。また、本発明のインキ組成物は、生分解性プラスチックシートあるいはフィルムのラミネート用に好適である。この場合には、本発明のインキ組成物を塗布した生分解性プラスチックフィルムあるいはシートと同種または異種の生分解性プラスチックフィルムあるいはシートを貼り合わせる。
【0018】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
【0019】
実施例1
PCL(分子量5万)20%のトルエン・酢酸エチルの1対1(重量比)混合溶剤の溶液を作製し、顔料分散によりインキ化を行った。インキの組成は、酸化チタン30部、PCL溶液50部、酢酸エチル20部である。
【0020】
作製したインキを用いグラビア印刷方式で、ポリ乳酸2軸延伸フィルム(35μm厚)および処理ポリプロピレンフィルム(50μm厚)のそれぞれに片面印刷を行った。塗布量は、ポリ乳酸2軸延伸フィルムは4g/m2(dry)、処理ポリプロピレンフィルムは10g/m2(dry)である。
【0021】
ポリ乳酸2軸延伸フィルム印刷物は、琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーと押出しラミネートで貼り合わせ、積層物を得た。琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーの厚みは30μmで、押出し温度は260℃である。処理ポリプロピレンフィルム印刷物は50℃±5に温度調整されたコンポストによる生分解性試験を行った。
【0022】
実施例2
PCL(分子量5万)20%のトルエン・酢酸エチルの1対1(重量比)混合溶剤溶液を作製し、顔料分散によりインキ化を行った。インキの組成は、酸化チタン30部、PCL溶液50部、酢酸エチル15部、イソプロピルアルコール4部、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトネート75%イソプロピルアルコール溶液1部である。
【0023】
作製したインキを用いグラビア印刷方式で、ポリ乳酸2軸延伸フィルム(35μm厚)および処理ポリプロピレンフィルム(50μm厚)のそれぞれに片面印刷を行った。塗布量は、ポリ乳酸2軸延伸フィルムは4g/m2(dry)、処理ポリプロピレンフィルムは10g/m2(dry)である。
【0024】
ポリ乳酸2軸延伸フィルム印刷物は、琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーと押出しラミネートで貼り合わせ、積層物を得た。琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーの厚みは30μmで、押出し温度は260℃である。処理ポリプロピレンフィルム印刷物は50℃±5に温度調整されたコンポストによる生分解性試験を行った。
【0025】
実施例3
PCL(分子量5万)の20%トルエン・酢酸エチルの1対1(重量比)混合溶剤の溶液を作製し、顔料分散によりインキ化を行った。インキの組成は、酸化チタン30部、PCL溶液50部、酢酸エチル20部、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクトの酢酸エチル溶液0.6部である。
【0026】
作製したインキを用いグラビア印刷方式で、ポリ乳酸2軸延伸フィルム(35μm厚)、処理ポリプロピレンフィルム(50μm厚)のそれぞれに片面印刷を行った。なお、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクトの酢酸エチル溶液は印刷直前に加えた。塗布量は、ポリ乳酸2軸延伸フィルムは4g/m2(dry)、処理ポリプロピレンフィルムは10g/m2(dry)である。
【0027】
ポリ乳酸2軸延伸フィルム印刷物は、40℃で24時間放置後、琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーと押出しラミネートで貼り合わせ、積層物を得た。琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーの厚みは30μmで押出し温度は260℃である。処理ポリプロピレンフィルム印刷物は50℃±5に温度調整されたコンポストによる生分解性試験を行った。
【0028】
実施例4
PCL(分子量5万)の20%トルエン・酢酸エチルの1対1(重量比)混合溶剤の溶液を作製し、顔料分散によりインキ化を行った。インキの組成は、酸化チタン30部、PCL溶液50部、酢酸エチル20部、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクトの酢酸エチル溶液0.6部、ステアリン酸アミド0.1部、酸化ケイ素(平均粒子径3μm)0.2部である。
【0029】
作製したインキを用いグラビア印刷方式で、ポリ乳酸2軸延伸フィルム(35μm厚)、処理ポリプロピレンフィルム(50μm厚)のそれぞれに片面印刷を行った。なお、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクトの酢酸エチル溶液は印刷直前に加えた。塗布量は、ポリ乳酸2軸延伸フィルムは4g/m2(dry)、処理ポリプロピレンフィルムは10g/m2(dry)である。
【0030】
ポリ乳酸2軸延伸フィルム印刷物は、40℃で24時間放置後、琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーと押出しラミネートで貼り合わせ、積層物を得た。琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーの厚みは30μmで、押出し温度は260℃である。処理ポリプロピレンフィルム印刷物は50℃±5に温度調整されたコンポストによる生分解性試験を行った。
【0031】
比較例1
硝化綿SS1/4の固形分25部、酢酸エチル40部、トルエン25部、イソプロピルアルコール10部の溶液とポリエステル樹脂(バイロン200:東洋紡績社製)30部、酢酸エチル40部、トルエン30部の溶液を作製し、これらの溶液を1対4の重量比で混合し、顔料分散によりインキ化を行った。インキの組成は、酸化チタン30部、混合溶液40部、酢酸エチル20部、トルエン10部である。
【0032】
作製したインキを用いグラビア印刷方式で、ポリ乳酸2軸延伸フィルム(35μm厚)、処理ポリプロピレンフィルム(50μm厚)のそれぞれに片面印刷を行った。塗布量はポリ乳酸2軸延伸フィルムは4g/m2(dry)、処理ポリプロピレンフィルムは10g/m2(dry)である。
【0033】
ポリ乳酸2軸延伸フィルム印刷物は、琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーを押出しラミネートで貼り合わせ、積層物を得た。琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーの厚みは30μmで、押出し温度は260℃である。処理ポリプロピレンフィルム印刷物は50℃±5に温度調整されたコンポストによる生分解性試験を行った。
【0034】
比較例2
印刷インキ用ポリアミド樹脂30部、トルエン50部、イソプロピルアルコール20部の溶液と比較例1の硝化綿溶液を3対1の重量比混合した溶液を作製し、顔料分散によりインキ化を行った。インキの組成は、酸化チタン30部、混合溶液40部、酢酸エチル10部、トルエン10部、イソプロピルアルコール10部である。
【0035】
作製したインキを用いグラビア印刷方式で、ポリ乳酸2軸延伸フィルム(35μm厚さ)、処理ポリプロピレンフィルム(50μm厚)のそれぞれに片面印刷を行った。塗布量は、ポリ乳酸2軸延伸フィルムは4g/m2(dry)、処理ポリプロピレンフィルムは10g/m2(dry)である。
【0036】
ポリ乳酸2軸延伸フィルム印刷物は琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーと押出しラミネートで貼り合わせ、積層物を得た。琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーの厚みは30μmで、押出し温度は260℃である。処理ポリプロピレンフィルム印刷物は50℃±5に温度調整されたコンポストによる生分解性試験を行った。
【0037】
〔インキ組成物の評価〕
(1)ブロッキング試験
各実施例のPCLを含むインキまたは比較例のインキを片面に印刷したポリ乳酸フィルムの印刷面と未印刷ポリ乳酸フィルムを重ね、また2枚の印刷該フィルムの印刷面を重ね、それぞれに40℃で0.2MPaの荷重を15時間掛けた後に、それぞれのフィルムを手でゆっくりと剥離したときの、両剥離面の外観、剥離抵抗の強弱を観察し、各面の表面が重ねる前と変わらない場合をブロッキング性なしとして○で、弱い剥離抵抗があるか、または点状のブロッキングのある場合を△で、全面ブロッキングのある場合を×でそれぞれ表示した。
(2)上記の方法で作製したラミネート物を300mm/分の剥離速度で剥離し、剥離強度(N/15mm)を測定する。剥離形状はT型である。
以上の試験結果を表1に示す。
【0038】
【0039】
〔インキ組成物の生分解性〕
(1)生分解性試験
50℃±2、含水率50〜60%に調整されたコンポストによる、各実施例および比較例のそれぞれのインキ組成物を用いて印刷されたポリプロピレンフィルム印刷物の生分解促進試験における印刷塗膜の生分解状態を観察する。
(2)剥離強度
ポリプロピレンフィルムと印刷塗膜との剥離強度(N/15mm)を前記と同じ方法で測定する。
以上の試験結果を表2に示す。
【0040】
【0041】
実施例1〜4におけるポリ乳酸フィルムに代えて、ポリヒドロキシ酪酸、酢酸セルロース芳香族・脂肪族コポリエステル、ポリビニールアルコールの各フィルムの片面に印刷を行い、ポリブチレンサクシネートとの張り合わせにおいても同様の強度が得られた。また溶融張り合わせ樹脂の琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーをポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリカプロラクトン、澱粉族脂肪酸エステルに変更してもPCL系インキと良好な接着性を示した。
【0042】
各実施例のラミネートは、接着剤を使用しない熱溶融押し出しラミネートであるが、通常使用されているイミン系、イソシアネート系接着剤を使用しても可能である。
また、貼り合わせ方法は熱溶融押し出しラミネート方法以外にフィルム・フィルムの貼り合わせにはイソシアネート系接着剤、エポキシ系接着剤を使用して貼り合わせも可能である。本発明の生分解性インキ組成物を用いたラミネートの例を図1に、接着剤を用いたラミネートの例を図2に示す。
【0043】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、生分解性プラスチックフィルムやシートに印刷することにより、該プラスチックの生分解を遅らせたり、分解残りが生じることのない生分解性インキ組成物が提供される。このインキ組成物は、生分解性プラスチックフィルムやシートのラミネート用インキとしても好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインキ組成物を使用て貼り合わせて形成した生分解性樹脂フィルムのラミネート構造を示す概略断面図である。
【図2】印刷フィルムを接着剤を用いて貼り合わせて形成した生分解性樹脂フィルムのラミネート構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1:被印刷フィルム
2:生分解性インキ組成物
2′:通常のインキ組成物
3:押し出しまたは貼り合わせ樹脂フィルム
4:接着剤
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性プラスチック用の生分解性インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から生分解性プラスチックフィルムは大いに注目され、活発に研究開発されている。しかし生分解性印刷インキの開発は行われておらず、非生分解性インキを使用して印刷されている。従来技術の調査を行ったが、生分解性印刷インキに関する特許文献および非特許文献は見当たらなかった。
生分解性インキの開発が遅れている理由として、印刷皮膜は薄く、印刷対象基材と比べて問題にならない重量比率であることや生分解性のある樹脂で印刷インキに適した樹脂が少ないことなども挙げられる。
【0003】
ところで、生分解性プラスチックに非生分解性インキを使用した印刷物は、印刷面からの生分解が進まないことが判明した。このことは生分解が微生物の酵素によって分解される反応であり、微生物との接触がなければ分解は進まないことを意味している。
【0004】
包装袋の印刷は、通常、片面に行われることが大半であり、包装の工程で袋の形状に加工され、包装内容物を取り出す際は袋の端をカットし取り出すのが一般的であり、使用後の廃棄される状態でも袋の形状は維持されている。袋の形状を維持した状態では、生分解は微生物と接触が可能な外層(印刷面)からのみとなる。これは使用済の製品が廃棄→自然界での分解、回収→コンポスト化(たい肥化)して有効再利用される過程での生分解の障害となり、生分解性素材を使用しながら生分解が進まないことは大きな問題である。従って、この問題が解決されれば、環境負荷低減への寄与は大である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、生分解性フィルムや紙の印刷物の、印刷インキが原因となる自然界での生分解遅れや未分解による残存がなくなる生分解性印刷インキ組成物を提供することである。
本発明者は印刷インキの中で溶媒の選択幅の広い溶剤型グラビアインキに着目し、天然樹脂、生分解性のある天然樹脂の変性物、生分解性のある合成樹脂などから有機溶剤に溶解するものを選定し、インキ化を試みた結果、ポリカプロラクトン(以下ではPCLという。)を使用することで生分解性プラスチックフィルムや紙との接着性に優れた積層用グラビアインキが得られることを見いだした。PCLを使用したインキは生分解性があり、積層用(ラミネート用)インキに要求される多くの特性を有し、非生分解性インキの代替が可能であり満足できる結果を得、これらの知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は以下の本発明によって達せられる。即ち、本発明は、顔料と有機溶剤と樹脂からなり、樹脂が有機溶剤に可溶の生分解性ポリカプロラクトン樹脂であることを特徴とするインキ組成物である。
【0007】
本発明においては、印刷インキに使用する樹脂を生分解性にし、印刷の基材である生分解性プラスチックフィルムまたはシートに印刷し、従来試みられたことのない生分解性樹脂の貼り合せ(ラミネート化)においても、本発明の生分解性インキ組成物の使用は有効である。本発明のインキ組成物を使用した生分解性樹脂製の包装袋などが、心なしも廃棄された場合にも、それらのゴミは自然界で自然分解し、回収物は埋め立て後に分解により減量し、埋立地の有効利用になり、コンポストによる堆肥化において未分解による残存が無くなり良質なたい肥が得られる。これらは結果として環境負荷低減に繋がる。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明のインキ組成物で樹脂(ベヒクル樹脂)として使用するPCLは、ε−カプロラクトンを開環重合して得られる直鎖ポリエステルであり、分子量は特に限定されないが、グラビアインキには10,000〜100,000程度が適している。
【0009】
有機溶剤としては、PCLを溶解する溶剤であればいずれでもよいが、好ましくはエステル類、ケトン類、グリコールエステル類および芳香族炭化水素類から選択される少なくとも一種が用いられる。
ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが、エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピルなどが、グリコールエステル類としては、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどが、芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの有機溶剤の1種または2種以上の混合物を主溶剤とし、アルコール類を一部併用することができる。溶解、乾燥調整、粘度調整などの点から、溶剤は混合して使用することが好ましい。また、架橋剤の金属キレート化合物の反応抑制剤としてアルコール系溶剤、グリコール系溶剤がインキ中に0.1〜20重量%の範囲で用いられる。
【0010】
本発明で使用する顔料は、通常使用されているインキ用顔料がいずれも使用でき、特に限定されないが、重金属を含む顔料については印刷物の中での使用制限があり、意匠性表現においては留意することが必要である。その他、一般のインキ以上に安全性に不安がある物は使用を避ける心がけが必要である。
【0011】
本発明のインキ組成物は、顔料、PCL、有機溶剤からなり、さらに印刷インキにおいて従来から使用されている各種添加剤が適宜添加される。PCLは、通常、有機溶剤に10〜30重量%の濃度となるように溶解される。この溶液に顔料やその他の添加剤が溶解あるいは分散される。本発明で必要に応じて使用する添加剤としては、従来から印刷インキで使用されている架橋剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、可塑剤、ロジンなどが使用される。
【0012】
架橋剤は有機金属のキレート化合物やアルコキシレート化合物、ポリイソシアネート化合物などが使用できる。
有機金属キレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセトネート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。アルコキシレート化合物としては、例えば、トリエタノールアミンチタネートなどが挙げられ、インキ組成物製造時に添加しても保存安定性があり一液使用できる。これらの架橋剤の添加量は、樹脂固形分に対して、通常1〜20重量%程度の割合である。
【0013】
また、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、TDI(2,4または2,6−トルエンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、MDI(4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート)、HMDI(水添MDI)のTMP(トリメチロールプロパン)アダクト、トリマー、ビュレットなどが使用できる。使用法は塗布作業の直前に添加する2液仕様である。これらの使用量が樹脂に対して3重量%以下であれば、印刷インキの生分解速度は遅くなるが、障害にはならない。
【0014】
ブロッキング防止剤としては、例えば、二酸化ケイ素顔料、脂肪酸アミド(オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなど)、シリコーン(エポキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーなど)が用いられる。スリップ剤としては、例えば、低分子ポリエチレンワックス、低分子弗化ポリエチレンワックス、クリスタルワックス、カルナバワックスが用いられる。ロジン類としては、例えば、未変性ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン、マレイン酸変性ロジン、アルコール変性ロジンエステルが使用可能である。可塑剤としては、生分解性のある2塩基酸エステル、脂肪酸エステル、ATBC(アセチル−トリ−n−ブチルシトレート)などが使用される。
【0015】
その他、必要に応じてインキ、塗料添加剤である静電防止剤、沈降防止剤、レベリング剤、消泡剤などが使用される。
非生分解性添加剤類は、生分解性樹脂に対して各成分1重量%以下、総量で5重量%以下に抑えることで環境負荷は最小に抑えられる。
【0016】
本発明のインキ組成物は、グラビア印刷、凸版(フレキソ)印刷およびグラビアオフセット印刷に好適である。また、印刷基材は、各種生分解性プラスチックフィルムおよび紙が用いられる。印刷インキの使用量は、通常印刷インキ層の乾燥厚さが0.1〜10μmとなる量である。生分解性プラスチックとしては、例えば、ポリ乳酸、琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリエチレンサクシネート、芳香族・脂肪族コポリエステル、ポリビニールアルコール、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、酢酸セルロースおよび澱粉族脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0017】
本発明の生分解性樹脂を使用した印刷インキは、生分解性プラスチックフィルムや紙と同等以上の生分解性があり、生分解性印刷基材が生分解する前に消失するが、非生分解性樹脂使用印刷インキは、非印刷部分の生分解性印刷基材の分解後も形態を保持する。また、本発明のインキ組成物は、生分解性プラスチックシートあるいはフィルムのラミネート用に好適である。この場合には、本発明のインキ組成物を塗布した生分解性プラスチックフィルムあるいはシートと同種または異種の生分解性プラスチックフィルムあるいはシートを貼り合わせる。
【0018】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
【0019】
実施例1
PCL(分子量5万)20%のトルエン・酢酸エチルの1対1(重量比)混合溶剤の溶液を作製し、顔料分散によりインキ化を行った。インキの組成は、酸化チタン30部、PCL溶液50部、酢酸エチル20部である。
【0020】
作製したインキを用いグラビア印刷方式で、ポリ乳酸2軸延伸フィルム(35μm厚)および処理ポリプロピレンフィルム(50μm厚)のそれぞれに片面印刷を行った。塗布量は、ポリ乳酸2軸延伸フィルムは4g/m2(dry)、処理ポリプロピレンフィルムは10g/m2(dry)である。
【0021】
ポリ乳酸2軸延伸フィルム印刷物は、琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーと押出しラミネートで貼り合わせ、積層物を得た。琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーの厚みは30μmで、押出し温度は260℃である。処理ポリプロピレンフィルム印刷物は50℃±5に温度調整されたコンポストによる生分解性試験を行った。
【0022】
実施例2
PCL(分子量5万)20%のトルエン・酢酸エチルの1対1(重量比)混合溶剤溶液を作製し、顔料分散によりインキ化を行った。インキの組成は、酸化チタン30部、PCL溶液50部、酢酸エチル15部、イソプロピルアルコール4部、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトネート75%イソプロピルアルコール溶液1部である。
【0023】
作製したインキを用いグラビア印刷方式で、ポリ乳酸2軸延伸フィルム(35μm厚)および処理ポリプロピレンフィルム(50μm厚)のそれぞれに片面印刷を行った。塗布量は、ポリ乳酸2軸延伸フィルムは4g/m2(dry)、処理ポリプロピレンフィルムは10g/m2(dry)である。
【0024】
ポリ乳酸2軸延伸フィルム印刷物は、琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーと押出しラミネートで貼り合わせ、積層物を得た。琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーの厚みは30μmで、押出し温度は260℃である。処理ポリプロピレンフィルム印刷物は50℃±5に温度調整されたコンポストによる生分解性試験を行った。
【0025】
実施例3
PCL(分子量5万)の20%トルエン・酢酸エチルの1対1(重量比)混合溶剤の溶液を作製し、顔料分散によりインキ化を行った。インキの組成は、酸化チタン30部、PCL溶液50部、酢酸エチル20部、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクトの酢酸エチル溶液0.6部である。
【0026】
作製したインキを用いグラビア印刷方式で、ポリ乳酸2軸延伸フィルム(35μm厚)、処理ポリプロピレンフィルム(50μm厚)のそれぞれに片面印刷を行った。なお、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクトの酢酸エチル溶液は印刷直前に加えた。塗布量は、ポリ乳酸2軸延伸フィルムは4g/m2(dry)、処理ポリプロピレンフィルムは10g/m2(dry)である。
【0027】
ポリ乳酸2軸延伸フィルム印刷物は、40℃で24時間放置後、琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーと押出しラミネートで貼り合わせ、積層物を得た。琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーの厚みは30μmで押出し温度は260℃である。処理ポリプロピレンフィルム印刷物は50℃±5に温度調整されたコンポストによる生分解性試験を行った。
【0028】
実施例4
PCL(分子量5万)の20%トルエン・酢酸エチルの1対1(重量比)混合溶剤の溶液を作製し、顔料分散によりインキ化を行った。インキの組成は、酸化チタン30部、PCL溶液50部、酢酸エチル20部、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクトの酢酸エチル溶液0.6部、ステアリン酸アミド0.1部、酸化ケイ素(平均粒子径3μm)0.2部である。
【0029】
作製したインキを用いグラビア印刷方式で、ポリ乳酸2軸延伸フィルム(35μm厚)、処理ポリプロピレンフィルム(50μm厚)のそれぞれに片面印刷を行った。なお、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクトの酢酸エチル溶液は印刷直前に加えた。塗布量は、ポリ乳酸2軸延伸フィルムは4g/m2(dry)、処理ポリプロピレンフィルムは10g/m2(dry)である。
【0030】
ポリ乳酸2軸延伸フィルム印刷物は、40℃で24時間放置後、琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーと押出しラミネートで貼り合わせ、積層物を得た。琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーの厚みは30μmで、押出し温度は260℃である。処理ポリプロピレンフィルム印刷物は50℃±5に温度調整されたコンポストによる生分解性試験を行った。
【0031】
比較例1
硝化綿SS1/4の固形分25部、酢酸エチル40部、トルエン25部、イソプロピルアルコール10部の溶液とポリエステル樹脂(バイロン200:東洋紡績社製)30部、酢酸エチル40部、トルエン30部の溶液を作製し、これらの溶液を1対4の重量比で混合し、顔料分散によりインキ化を行った。インキの組成は、酸化チタン30部、混合溶液40部、酢酸エチル20部、トルエン10部である。
【0032】
作製したインキを用いグラビア印刷方式で、ポリ乳酸2軸延伸フィルム(35μm厚)、処理ポリプロピレンフィルム(50μm厚)のそれぞれに片面印刷を行った。塗布量はポリ乳酸2軸延伸フィルムは4g/m2(dry)、処理ポリプロピレンフィルムは10g/m2(dry)である。
【0033】
ポリ乳酸2軸延伸フィルム印刷物は、琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーを押出しラミネートで貼り合わせ、積層物を得た。琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーの厚みは30μmで、押出し温度は260℃である。処理ポリプロピレンフィルム印刷物は50℃±5に温度調整されたコンポストによる生分解性試験を行った。
【0034】
比較例2
印刷インキ用ポリアミド樹脂30部、トルエン50部、イソプロピルアルコール20部の溶液と比較例1の硝化綿溶液を3対1の重量比混合した溶液を作製し、顔料分散によりインキ化を行った。インキの組成は、酸化チタン30部、混合溶液40部、酢酸エチル10部、トルエン10部、イソプロピルアルコール10部である。
【0035】
作製したインキを用いグラビア印刷方式で、ポリ乳酸2軸延伸フィルム(35μm厚さ)、処理ポリプロピレンフィルム(50μm厚)のそれぞれに片面印刷を行った。塗布量は、ポリ乳酸2軸延伸フィルムは4g/m2(dry)、処理ポリプロピレンフィルムは10g/m2(dry)である。
【0036】
ポリ乳酸2軸延伸フィルム印刷物は琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーと押出しラミネートで貼り合わせ、積層物を得た。琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーの厚みは30μmで、押出し温度は260℃である。処理ポリプロピレンフィルム印刷物は50℃±5に温度調整されたコンポストによる生分解性試験を行った。
【0037】
〔インキ組成物の評価〕
(1)ブロッキング試験
各実施例のPCLを含むインキまたは比較例のインキを片面に印刷したポリ乳酸フィルムの印刷面と未印刷ポリ乳酸フィルムを重ね、また2枚の印刷該フィルムの印刷面を重ね、それぞれに40℃で0.2MPaの荷重を15時間掛けた後に、それぞれのフィルムを手でゆっくりと剥離したときの、両剥離面の外観、剥離抵抗の強弱を観察し、各面の表面が重ねる前と変わらない場合をブロッキング性なしとして○で、弱い剥離抵抗があるか、または点状のブロッキングのある場合を△で、全面ブロッキングのある場合を×でそれぞれ表示した。
(2)上記の方法で作製したラミネート物を300mm/分の剥離速度で剥離し、剥離強度(N/15mm)を測定する。剥離形状はT型である。
以上の試験結果を表1に示す。
【0038】
【0039】
〔インキ組成物の生分解性〕
(1)生分解性試験
50℃±2、含水率50〜60%に調整されたコンポストによる、各実施例および比較例のそれぞれのインキ組成物を用いて印刷されたポリプロピレンフィルム印刷物の生分解促進試験における印刷塗膜の生分解状態を観察する。
(2)剥離強度
ポリプロピレンフィルムと印刷塗膜との剥離強度(N/15mm)を前記と同じ方法で測定する。
以上の試験結果を表2に示す。
【0040】
【0041】
実施例1〜4におけるポリ乳酸フィルムに代えて、ポリヒドロキシ酪酸、酢酸セルロース芳香族・脂肪族コポリエステル、ポリビニールアルコールの各フィルムの片面に印刷を行い、ポリブチレンサクシネートとの張り合わせにおいても同様の強度が得られた。また溶融張り合わせ樹脂の琥珀酸・1,4−ブタンジオールポリマーをポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリカプロラクトン、澱粉族脂肪酸エステルに変更してもPCL系インキと良好な接着性を示した。
【0042】
各実施例のラミネートは、接着剤を使用しない熱溶融押し出しラミネートであるが、通常使用されているイミン系、イソシアネート系接着剤を使用しても可能である。
また、貼り合わせ方法は熱溶融押し出しラミネート方法以外にフィルム・フィルムの貼り合わせにはイソシアネート系接着剤、エポキシ系接着剤を使用して貼り合わせも可能である。本発明の生分解性インキ組成物を用いたラミネートの例を図1に、接着剤を用いたラミネートの例を図2に示す。
【0043】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、生分解性プラスチックフィルムやシートに印刷することにより、該プラスチックの生分解を遅らせたり、分解残りが生じることのない生分解性インキ組成物が提供される。このインキ組成物は、生分解性プラスチックフィルムやシートのラミネート用インキとしても好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインキ組成物を使用て貼り合わせて形成した生分解性樹脂フィルムのラミネート構造を示す概略断面図である。
【図2】印刷フィルムを接着剤を用いて貼り合わせて形成した生分解性樹脂フィルムのラミネート構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1:被印刷フィルム
2:生分解性インキ組成物
2′:通常のインキ組成物
3:押し出しまたは貼り合わせ樹脂フィルム
4:接着剤
Claims (6)
- 顔料と有機溶剤と樹脂からなり、樹脂が有機溶剤に可溶の生分解性ポリカプロラクトン樹脂であることを特徴とするインキ組成物。
- 有機溶剤が、エステル類、ケトン類、グリコールエステル類および芳香族炭化水素類から選択される少なくとも一種である請求項1に記載のインキ組成物。
- 印刷される基材が生分解性プラスチックフィルムである請求項1に記載のインキ組成物。
- 生分解性プラスチックが、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリエチレンサクシネート、芳香族・脂肪族コポリエステル、ポリビニールアルコール、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、酢酸セルロースおよび澱粉族脂肪酸エステルから選択される少なくとも一種である請求項3に記載のインク組成物。
- 生分解性プラスチックフィルムまたはシートのラミネート用である請求項1に記載のインキ組成物。
- 生分解性プラスチックフィルムまたはシートを請求項1に記載のインキ組成物を用いてラミネートしてなることを特徴とする生分解性プラスチックラミネート。
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2003
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