JP2004236119A - 超音波振動子製造用冶具及び超音波振動子の製造方法 - Google Patents
超音波振動子製造用冶具及び超音波振動子の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004236119A JP2004236119A JP2003023886A JP2003023886A JP2004236119A JP 2004236119 A JP2004236119 A JP 2004236119A JP 2003023886 A JP2003023886 A JP 2003023886A JP 2003023886 A JP2003023886 A JP 2003023886A JP 2004236119 A JP2004236119 A JP 2004236119A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- jig
- case
- adhesive
- piezoelectric body
- manufacturing
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Measuring Volume Flow (AREA)
- Transducers For Ultrasonic Waves (AREA)
Abstract
【課題】低温熱処理下で、形状が安定し応力腐食割れを無くし、長期信頼性と優れた生産性でもって超音波振動子を製造することができる、超音波振動子用製造冶具及び超音波振動子の製造方法を提供する。
【解決手段】下冶具23と上冶具24Aとの間で、ケース2の1つの面に接着剤を介して圧電体を加圧した加圧状態を保持可能であり、この加圧状態で低温熱処理を施すことで、圧電体とケースとを接着剤により加圧接着させるとともに、低温熱処理によって応力を緩和させる。
【選択図】図5
【解決手段】下冶具23と上冶具24Aとの間で、ケース2の1つの面に接着剤を介して圧電体を加圧した加圧状態を保持可能であり、この加圧状態で低温熱処理を施すことで、圧電体とケースとを接着剤により加圧接着させるとともに、低温熱処理によって応力を緩和させる。
【選択図】図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有底筒状ケースを用いた超音波振動子の超音波振動子製造用冶具(治具、ジグ)及び超音波振動子のの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波振動子用のケースは、圧電振動子などを収容するケースで、通常、真空又は不活性ガスで置換され封止される。超音波振動子用のケース材料は、超音波振動子が主に気体や液体等の流体の速度を計測するために用いられるため、ケース表面は測定対象の気体及び液体にさらされる。例えば都市ガス等のガスメータに使用される場合は、ガス漏れなどの事故に対する安全性や10年以上連続使用されることから、現状の電子部品以上の長期信頼性が要求される。特に、最近では連続使用期間が10年から20年に移行する動きが業界であり、更なる長期信頼性が要望されている。また、「特定計量器検定検査規則」の第10章「ガスメータ」の第四百五十九条(漏えい試験)ではガスに関して漏洩と水の浸入についての検査及び規定は厳しく記されている。
【0003】
また、ガスメーカーの仕様書においても、圧力スイッチなどについては、ガスに接する部分の主要材料は、資源エネルギー庁ガス事業課及びガス技術安全課が定めたガス事業法令「ガス工作物の技術上の基準の細目を定める告示第84条の規格に適合する耐ガス性、耐食性を有する金属材料であること」と規定されている。
【0004】
そのため、ガスに接するケース部材は、同様に加工や衝撃等による機械的破損や気温、酸性雨などの環境的要因による腐食が許されない。従って、強度、加工性、耐ガス性、耐食性、耐応力腐食割れ性、溶接性に優れていることが要求される。一方、従来のセンサーに関しては、一体成形された樹脂、焼結ケースや切削によって切り出した切削ケース、繋ぎ目を溶接で加工したケース等が一般に用いられていて、上記安全面や長期信頼性について考慮された材料や構造ではなかった。
【0005】
特許文献1には有天筒状ケースを用いた超音波振動子が挙げられているが、有天筒状ケースはケース天面を振動板として用いるため加工精度が要求され、プレス成型や切削などで作製されるが、内部応力を含むために応力腐食割れの発生や加工精度が得られにくいという課題があった。応力腐食割れ発生を防ぐための手段としては、特許文献2に示される熱処理による応力緩和法が、形状修正においては、特許文献3などがあるが、どちらも200℃程度の低温では効果が得られるものではなかった。また、応力緩和が主たる目的で、形状修正と応力緩和又は接着工程までも含んだ工程では実現できなかった。
【0006】
【特許文献1】
実開平4−94898号公報
【特許文献2】
特開平5−317983号公報
【特許文献3】
特開2000−212642号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
有底筒状ケースは、ケース天面に圧電体又は音響整合層を接着し、接着面と振動板の両方の目的で用いられるため非常に加工精度が要求される。例えば、接着面としては、接着剤によってできるだけ接着層を均一に接着し、しかも接着強度も安定する必要がある。また、音響的な振動板としては、できるだけケース天面が形状、厚みなど均一に加工される必要がある。加工には量産性を考慮して、高速プレスが用いられることが多いが、上記加工精度をケース天面に要求する場合には、ケース天面の均一加工から非常に加工応力を全体に蓄積し易く、特に曲部付近に応力腐食割れを生じやすい。
【0008】
一方、樹脂ケースは耐湿性が低く耐久性に欠け、焼結ケースは衝撃に弱く加工精度が悪い。また、樹脂ケース、焼結ケースに関しては、機密性が低く安全面や長期信頼性について保証が難しいという欠点がある。切削ケースについては、精密加工を伴うことから加工性に優れた材料の真鍮などが用いられる。しかし、真鍮のような加工性に優れた材料は耐食性に劣る材料が多く、耐食性を高めるために加工後、メッキ処理などを表面に施す必要がある。そのため、工程数が多くなり加工賃が非常に高くなるという欠点があった。また、切削に耐食性の良好なステンレス鋼を用いた場合でも、天面の厚みは音響的にできるだけ薄くすることが要求され、そのため、加工によって歪むことが多く、これも応力腐食割れを生じやすかった。
【0009】
また、振動板とケースの筒部分が独立した流路を流れる流体に対して繋ぎ目があるケースにおいては、溶接によって有天筒状ケースとされるが、溶接部分はステンレス鋼であっても溶接部にクロム(Cr)が欠乏しやすく、そのため、腐食割れが生じやすい。以上から溶接部の長期信頼性において疑わしい。
【0010】
そこで、本発明の目的は、低コスト、強度、加工性、耐ガス性、耐食性、耐応力腐食割れ性に優れたケース材料を使用し、流路を流れる流体に対して繋ぎ目のない加工で作成したケースを用いて例えばプレス成型又は切削加工によって作製された有底筒状ケースを、低温熱処理下で、形状が安定し応力腐食割れを無くし、長期信頼性と優れた生産性でもって超音波振動子を製造することができる、超音波振動子用製造冶具、及び、その冶具を使用して超音波振動子を製造することができる超音波振動子の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、少なくとも有底筒状金属ケースと、
上記ケースの1つの面に接着剤により設けられた圧電体を備える超音波振動子、又は、圧電体が接着剤により設けられた上記ケースの1つの面の反対側の面に音響整合層が接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子製造用冶具において、
少なくとも、上記圧電体を保持する圧電体保持用凹部と、上記圧電体保持用凹部を有しかつ上記圧電体保持用凹部内に保持された上記圧電体と上記ケースの上記1つの面の内面とを上記接着剤を介して接着させた状態を保持可能なケース保持部とを有する下冶具と、上記下冶具に対向して配置されかつ上記下冶具との間で上記ケースを挟持可能な上冶具とを備えて、
上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤を介して上記圧電体を加圧した加圧状態、又は、上記接着剤を介して上記ケースの上記1つの面に上記圧電体を加圧しかつその反対側の面に上記接着剤を介して上記音響整合層を加圧した加圧状態を保持可能であり、この加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能、又は、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能と、上記低温熱処理によって応力を緩和する機能を発揮することを特徴とする超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0013】
本発明の別の態様によれば、少なくとも有底筒状金属ケースと、
上記ケースの1つの面に接着剤により設けられた圧電体を備える超音波振動子、又は、圧電体が接着剤により設けられた上記ケースの1つの面の反対側の面に音響整合層が接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子製造用冶具において、
少なくとも上記ケースを支える下冶具と、上記下冶具に対向して設けられた上冶具と、上記ケースの厚み方向に対して上記ケースの1つの面の両面側から上記上冶具と上記下冶具とで挟み込むように圧力を加えることが可能な加圧力を上記上冶具と上記下冶具とに作用させる加圧部材とを備えて、上記加圧部材により上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤を介して上記圧電体を加圧した加圧状態、又は、上記接着剤を介して上記ケースの上記1つの面に上記圧電体を加圧しかつその反対側の面に上記接着剤を介して上記音響整合層を加圧した加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能、又は、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能と、上記ケースの形状を修正する機能と、上記低温熱処理によって応力を緩和する機能とを有することを特徴とする超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、超音波振動子製造用冶具の下冶具と上記下冶具に対向して設けられた上冶具との間に、少なくとも有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置し、
次いで、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの1つの面に接着剤を介して圧電体を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和するか、又は、接着剤を介して上記ケースの1つの面に圧電体を加圧しかつその反対側の面に接着剤を介して音響整合層を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和することにより、
上記ケースの上記1つの面に上記接着剤により上記圧電体が設けられる超音波振動子、又は、上記圧電体が上記接着剤により上記ケースの上記1つの面に設けられかつその1つの面の反対側の面に上記音響整合層が上記接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子の製造方法を提供する。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、超音波振動子製造用冶具の下冶具と上記下冶具に対向して設けられた上冶具との間に、少なくとも有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置し、
次いで、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの厚み方向に対して上記ケースの1つの面の両面側から上記上冶具と上記下冶具とで挟み込むように加圧部材により圧力を加えて、上記ケースの1つの面に接着剤を介して圧電体を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和するか、又は、接着剤を介して上記ケースの1つの面に圧電体を加圧しかつその反対側の面に接着剤を介して音響整合層を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和することにより、
上記ケースの上記1つの面に上記接着剤により上記圧電体が設けられる超音波振動子、又は、上記圧電体が上記接着剤により上記ケースの上記1つの面に設けられかつその1つの面の反対側の面に上記音響整合層が上記接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子の製造方法を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1に本発明の実施形態の、超音波振動子の製造方法に使用される超音波振動子用製造冶具を用いて作製された超音波振動子の外観図、図2にその断面図、図3、図4に流路の断面図を示す。
【0018】
図1において、超音波振動子1は、ケース天面3とケースフランジ部としての支持部5とを有する有底筒状金属ケース2と、上記ケース天面3の内壁面に接着剤31を介して配置された圧電体6と、上記ケース天面3の外壁面に接着剤32を介して配置された音響整合層4(ただし、音響整合層4がある場合)とで大略構成されている。図2において、超音波振動子1は、さらに、上記支持部5に固定された端子板7と、上記端子板7に設けられた端子8a、8bと、上記端子8a、8bを絶縁する絶縁物9と、上記圧電体6と上記端子8aを電気的に接続するための導電性ゴム10とを備えている。圧電体6は、ケース2と端子板7で密閉された空間内に配置され、ケース2と端子板7とで囲まれた密閉空間は、空気が不活性ガスで置換された状態で密閉されている。
【0019】
なお、音響整合層4は、必要に応じて、ケース2の天面3に配置される。例えば、気体用として使用する場合には音響整合層4を備えるが、液体用として使用する場合には音響整合層4は不要となる。これは、以後の実施形態などでも同様である。
【0020】
上記有底筒状金属ケースは、筒体の一端に筒体開口を閉塞する底面が一体的に形成されたものであって、切削加工又は精密プレス加工により底面を形成する一体成型加工によって作製したのち、加工後に加工油を完全に除去し、その後、応力腐食割れを防ぐために低温熱処理を施すことにより製造されている。加工法として切削加工よりも精密プレス法を用いるときには、大量に同じ品質のケースを作成可能になり、低コスト化が実現できる。
【0021】
図3に、超音波振動子1を備えた超音波流量計100が配置された、流量測定対象の流体の流路の断面図を示す。
【0022】
超音波流量計100の概略構成を示すと、ガスなどの被測定流体が供給される供給管と連結した入口路100aから流入された被測定流体の流量を測定する流量測定部11と、流量測定部11と連通し、被測定流体を外部へ導く出口路100bと、この流量測定部11に設けられて超音波を送受信する一対の超音波振動子17、18(それぞれは超音波振動子1に対応する。)と、超音波振動子17、18間の伝搬時間を計測する計測回路(図示せず)と、計測回路からの信号に基づいて流量を算出する流量演算手段(図示せず)とを備えている。よって、一方の超音波振動子17から他方の超音波振動子18に向けて超音波を送信し、ガスなどの被測定流体を通過した超音波が上記他方の超音波振動子18で受信されることにより、計測回路で超音波振動子17、18間の伝搬時間を計測する。次いで、逆に、上記他方の超音波振動子17から上記一方の超音波振動子18に向けて超音波を送信し、ガスなどの被測定流体を通過した超音波が上記一方の超音波振動子18で受信されることにより、計測回路で超音波振動子17、18間の伝搬時間を計測する。このように所定回数だけ、上記一対の超音波振動子17、18間で超音波の伝搬時間を計測し、流量演算手段でその平均値を基に、ガスなどの被測定流体の流量を算出するようにしている。よって、各超音波振動子17,18は送受信を行えるようにしている。
【0023】
実例として、流量測定部11を構成する材料は、LPガスや天然ガスを流量計測する家庭用ガスメータを想定してアルミニウム合金ダイカストとしする。側壁部12、13の端面に例えばコルク材からなるシール材14を介して上板部15をネジ止めして、流路断面16が矩形の流量測定部11を構成する。また、超音波振動子17、18は、超音波を発信・受信する送受波面が相対するよう側壁部12、13に斜めに設けられている。具体的には、側壁部12、13に設けられた超音波振動子17、18の振動子取り付け穴19、20に例えばOリングからなるシール材21、22を介して固定する。これは1つの実例であり、本発明はこれに限られるものではない。
【0024】
本発明の第1実施形態にかかる、超音波振動子の製造方法に使用される超音波振動子製造用冶具は、少なくとも、上記圧電体6を保持する圧電体保持用凹部23cと、上記圧電体保持用凹部23cを有しかつ上記圧電体保持用凹部23c内に保持された上記圧電体6と上記有底状ケース2の上記1つの面(例えば天面3)の内面とを上記接着剤31を介して接着させた状態を保持可能なケース保持部23aとを有する下冶具23と、上記下冶具23に対向可能に配置されかつ上記下冶具23との間で上記ケース2を挟持可能な上冶具24Aとを備えている。この実施形態では、さらに、有底状金属ケース2の天面3の厚み方向に対して両面から挟み込むように圧力を加えることが可能な加圧部材の一例としてのバネ25をも備えている。このような構成において、バネ25により上冶具24Aと下冶具23との間でケース2を加圧した状態で超音波振動子製造用冶具と共にケース2に対して低温熱処理を施すことで、(音響整合層4が無い場合には)圧電体6とケース2とを接着剤31により加圧接着させる機能、又は、(音響整合層4が有る場合には)圧電体6とケース2とを接着剤31により加圧接着させるとともに及び音響整合層4とケース2とを接着剤32により加圧接着させる機能と、(音響整合層4の有無にかかわらず)上記低温熱処理によって応力を緩和する機能とを発揮させる。
【0025】
図5(a)は、上記第1実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具においてケース2を加圧していない状態を示し、図5(b)はケース2を加圧した状態を示す。
【0026】
上記冶具を、さらに詳しく説明すると、下冶具23は、主に、圧電体6、ケース2を支持する一方、上冶具24Aは、圧電体6とケース2とを接着剤31で接着するとともにケース2と音響整合層4とを接着剤32で接着するために下冶具23に向けて加圧するとともに、バネ25により、下冶具23に向かう上冶具24Aの加圧力を発生させるように構成している。上冶具24Aとバネ25とを支えるスライド用シャフト26は、上ベース27の中央部で吊支持され、上ベース27は、下ベース28に固定されている2本の支柱29で移動可能に支えられている。すなわち、金属製の板状部材である下ベース28上に、金属製のフランジ付円柱体である下冶具23が載置されており、下冶具23の両側の外側で、下冶具23を間に挟むように、金属製の2本の支柱29が立設されて、金属製の板状部材である上ベース27を移動可能に貫通している。上ベース27は、下ベース28と大略平行になるように配置されている。上ベース27の中央部には、金属製のスライド用シャフト26が下向きに貫通してCリング(図示せず)とナット26Aにより上ベース27が上向きには抜け止め保持されるとともに、スライド用シャフト26沿いに下向きに2本の支柱29で案内されつつ上ベース27が移動可能になっている。スライド用シャフト26の上ベース27から下向きに突き出た部分には、バネ25が外周面に嵌め込まれ、その下向きに突き出た部分の下端には、上蓋付きの円筒状の金属製の上冶具24Aが固定されている。
【0027】
上記下冶具23の円柱状ケース保持部23aは、その上面の中央に、上記圧電体6を保持する圧電体保持用凹部23cが形成されており、かつ、上記超音波振動子1のケース2内に入り込んで、上面がケース2の天面3の内面に当接又は対向可能としている。円柱状ケース保持部23aの下端周囲には、上記超音波振動子1のケース2のケースフランジ部としての支持部5の下面が当接載置されるような平坦な金属製のフランジ23bとを有する。よって、上記圧電体6が圧電体保持用凹部23c内に保持されると、圧電体6の上面と圧電体保持用凹部23cの開口周囲である円柱状ケース保持部23aの上面とが大略同一面となり、上記圧電体6の上面に接着剤31が塗布又は載置されると、接着剤31の上面が円柱状ケース保持部23aの上面よりも突出して、ケース2の天面3の内面と接触可能となるように、圧電体保持用凹部23c及び円柱状ケース保持部23aを寸法形成する。
【0028】
一方、上記上冶具24Aは、上記超音波振動子1のケース2のケース天面3を覆うことができる程度に大きな筒体であり、その筒体の上蓋の平坦な内面が、ケース天面3自体(音響整合層4が無い場合)又はケース天面3の音響整合層4(音響整合層4が有る場合)の上面に当接可能となっている。上冶具24Aの軸方向の長さは、ケース2の軸方向の長さより短くして、下冶具23に載置されたケース2に上冶具24Aを被せて下向きに押圧したとき、上冶具24Aの上蓋の平坦な内面がケース2の天面3又は音響整合層4に接触する前に上冶具24Aがケース2のフランジ5に接触しないようにして、(音響整合層4が無い場合には)上冶具24Aの上蓋の平坦な内面と下冶具23の円柱状ケース保持部23aの上面との間で、圧電体6がケース2に対して接着剤31を介して押圧されるような押圧力が作用し、又は、(音響整合層4が有る場合には)音響整合層4と圧電体6とがケース2に対してそれぞれ接着剤31,32を介して押圧されるような押圧力が作用するようにしている。
【0029】
具体的には、図5(a)の加圧していない状態では、上冶具24Aと、下ベース28上の下冶具23との間の空間で、下冶具23上に、内側に接着剤31を介して圧電体6を貼り付けた上記ケース2を載置し、上記ケース2の天面3に接着剤32を介して配置された音響整合層4を上冶具24Aの下方に位置させる。
【0030】
次いで、加圧時には、図5(b)に示すように、上ベース27を2本の支柱29に沿って下向きにスライドさせて、上ベース27を下方向に加圧して上ベース27と下ベース28のギャップを縮めることで、バネ25を同時に縮ませて、上ベース27側から下ベース28に向けて加圧力を作用させる。バネ25は縮むと同時に、作用反作用の原理から上冶具24Aに付随するバネ25のバネ定数と、縮小させられた長さと、をかけ算しただけの加圧力(バネ力)を発生する。上ベース27は、加圧時に上ベース27を下げたとき上ベース27より上方に突き出たスライド用シャフト26の上ベース27とナット26Aとの間に加圧セパレート30を嵌め込むことでバネ25を圧縮した状態で固定できる。加圧セパレート30は、大略円筒部材であって、スライド用シャフト26を出し入れするための切欠を径方向に形成しており、上記上ベース27とナット26Aとの間のスライド用シャフト26を切欠内に入れることにより、バネ25のバネ力に抗して上ベース27が上向きに移動するのを規制して上ベース27を加圧状態に固定する一方、上記上ベース27とナット26Aとの間のスライド用シャフト26を切欠内から出すことにより、バネ25のバネ力により上ベース27が上向きに移動自在とする。上記加圧力は、ほぼ使用するバネ25のバネ定数と、圧縮される長さとで決定できるため、使用するバネ25の種類と加圧用セパレート30の長さとを調節することで自由に加圧力を選択できる。下冶具23の圧電体保持部である矩形開口の圧電体保持用凹部23cは、図6(a)に示されるように、大略直方体の圧電体6をセットできるように圧電体6と大略同一形状でかつ圧電体6の外径寸法及び軸方向長さ寸法のそれぞれに対して公差を加えて若干大きめに形成されている。よって、下冶具23の圧電体保持用凹部23c内に圧電体6が若干の余裕を持って挿入することができ、かつ、押圧後に圧電体6が圧電体保持用凹部23cから簡単に抜け出ることができるようにしている。圧電体6とケース2とを接着剤31で接着する目的に使用する場合、又は、圧電体6とケース2とを接着剤32で接着する目的及びケース2と音響整合層4とを接着剤で接着する目的に使用する場合には、図6(b)に示すように、ケース2の内径と下冶具23の位置合わせ部分である外径との差が約20〜100μm以内で位置されるように構成する。その場合、上冶具24Aの寸法は、図6(c)に示すように、圧電体6とケース天面3とを接着する部分、すなわち、ケース天面3の端部を含んでケース天面3の80%以上を加圧できるように、構成されている。なお、圧電体6とケース2とを接着剤31で接着する目的のみに使用する場合には、ケース2の天面3に音響整合層4が無いため、その分だけ上冶具24Aのケース2の天面3に当接する部分を厚くする必要がある。
【0031】
なお、加圧により接着固定した後、後述する、適切な温度と時間で接着と応力緩和を行う低温熱処理を、上記超音波振動子用製造冶具により加圧状態でのケース2に施す。
【0032】
上記構成の超音波振動子用製造冶具によれば、2本の支柱29で案内させつつ上ベース27を下降させて、上冶具24Aを上記超音波振動子1の上部に被せて、上冶具24Aと下冶具23との間で押圧力を上記超音波振動子1の軸方向に作用させて、(音響整合層4が無い場合には)圧電体6とケース天面3の内壁面とを接着剤31で接着固定するか、又は、(音響整合層4が有る場合には)音響整合層4とケース天面3の外壁面とを接着剤32で接着固定するとともに圧電体6とケース天面3の内壁面とを接着剤31で接着固定することができる。
【0033】
すなわち、加圧した状態で超音波振動子製造用冶具と共にケース2に対して低温熱処理を施すことで、(音響整合層4が無い場合には)圧電体6とケース2とを接着剤31により加圧接着させる機能、又は、(音響整合層4が有る場合には)圧電体6とケース2とを接着剤31により加圧接着させるとともに及び音響整合層4とケース2とを接着剤32により加圧接着させる機能と、(音響整合層4の有無にかかわらず)上記低温熱処理によって応力を緩和する機能とを発揮させることができる。
【0034】
よって、上記超音波振動子用製造冶具を使用することにより、低コスト、強度、加工性、耐ガス性、耐食性、耐応力腐食割れ性に優れたケース材料、例えば、アルミニウム合金ダイカストでプレス成型又は切削加工によって形成されて流路を流れる流体に対して繋ぎ目のない加工で作成したケース2を用いて、低温熱処理下で、形状が安定し応力腐食割れをなくし、長期信頼性と優れた生産性でもって、超音波振動子17,18を製造することができる。また、バネ25の付勢力により、上冶具24Aと下冶具23との間でケース2を弾性的に加圧するため、応力を徐々に緩和しながらケース2を無理無く加圧して接着動作を行なうことができる。また、各接着面を大略均一化できることにより、各接着界面が均一なものとなり、高い接着精度を達成することができる。また、超音波振動子製造用冶具の機能として、接着と応力緩和及び形状修正を行うための超音波振動子製造用冶具を共用し、熱処理工程を同時にすることで生産性の向上、性能向上を実現することができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0036】
例えば、下冶具及び上冶具は使用する目的によって形状を変えることかできる。具体的には、上記第1実施形態にかかる超音波振動子用製造冶具では、圧電体6とケース2、又は、圧電体6とケース2、ケース2と音響整合層4を接着するために使用する場合を想定して、ケース天面3に加圧できるように下冶具23及び上冶具24Aでケース天面3の厚み方向に対して加圧できるような構成にしている。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、ケース2の形状を修正する場合には、修正する部分を下冶具23と上冶具24Bで加圧できる構成にする。例えば、ケース2のフランジ5を加圧できるようにする例として、本発明の第2実施形態にかかる、超音波振動子の製造方法に使用される超音波振動子製造用冶具について説明する。この超音波振動子製造用冶具が第1実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具と異なる点は、上冶具の形状であり、他の形状及び構造などは第1実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具と同じであるため、基本的に同一部分の説明は省略し、異なる点のみについて説明する。第2実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具の上冶具24Bは、図7及び図8に示すように、上記下冶具23に対向して設けられた筒体部24aと、筒体部24aの下端の外周に張り出してケース2のフランジ5に当接可能なフランジ24bとより構成されている。
【0037】
一方、少なくとも有底状ケース2を支える下冶具23は第1実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具の下冶具23と同一である。図7(a)は、上記第2実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具においてケース2を加圧していない状態を示し、図7(b)はケース2を加圧した状態を示す。
【0038】
このような構成においては、上冶具24Bのフランジ24bと下冶具23のフランジ23bとの間でケース2のフランジ5を加圧可能として、フランジ5の形状を修正可能としている。
【0039】
すなわち、上冶具24Bは、まず、上冶具24Aと同様に、図8(b)に示されるように、筒体部24aの上蓋の平坦な内面が、ケース2の接着面であるケース天面3を挟んで、下冶具23の加圧修正部分である円柱状ケース保持部23aの上面と、必要とされる公差で対向又は接触するように加工形成されて、ケース天面3に対して上冶具24Bと下冶具23とで加圧可能とする。
【0040】
圧電体6とケース2とを接着する目的に使用する場合(音響整合層4が無い場合)、又は、圧電体6とケース2とを接着するとともにケース2と音響整合層4とを接着する目的に使用する場合(音響整合層4が有る場合)には、図6(b)に示すように、ケース2の内径と下冶具23の位置合わせ部分である円柱状ケース保持部23aの外径が約20〜100μm以内で位置されるように構成する。その場合、上冶具24Bは、上冶具24Aと同様に図6(c)に示すように接着する部分、すなわち、ケース天面3の端部を含んで80%以上を加圧できるように構成されている。このように、加圧面を80%以上にすることで、ケース修正時に加える荷重が少なくてすむ(単位面積あたりの荷重が小さくてよい)とともに、熱分布を均一にして、全面を均一に修正可能にすることができる。
【0041】
さらに、上冶具24Bについては、接着に用いるケース天面3の加圧部分はそのままで、フランジ5を加圧する部分に、後述する下冶具23のフランジ23bにフランジ5を介して当接してフランジ5を加圧できるように段加工を施して、フランジ24bを形成する。よって、上冶具24Bの軸方向の長さは、ケース2の軸方向の長さより若干長くして、下冶具23に載置されたケース2に上冶具24Bを被せて下向きに押圧したとき、上冶具24Bの上蓋の平坦な内面がケース2の天面3又は音響整合層4に接触する前に上冶具24Bのフランジ24bがケース2のフランジ5に接触しないようにしている。なお、音響整合層4と接着剤32とがない場合には、上冶具24Aの軸方向の長さをその分だけ短くする。
【0042】
また、下冶具23は、図8(b)に示されるように修正したい部分、例えばケース2のフランジ5を修正する場合には、図8(b)に示すように下冶具23にケース2のフランジ5を加圧できるように、ケース2のフランジ5の下面全てを当接可能な程度の面積を少なくとも有する平坦なフランジ23bを有するように段加工を施しておく。
【0043】
なお、更に、ケース2の側面も修正したい場合には、図8(b)に示すように、修正部分の特に応力が発生しやすいケース天面3の曲部を含んで曲部から20%以上を加圧できるように、下冶具23の側面の外周面と上冶具24Bの側面の内周面との間にケース側面の内周面と外周面とを挟持できるように下冶具23と上冶具24Bを加工形成する。このようにすれば、ケース形状を修正する場合、特に曲部付近の形状を修正することで効率良く形状を修正可能である。
【0044】
よって、第2実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具は、(音響整合層4が無い場合には)上冶具24Bの上蓋の平坦な内面と下冶具23の円柱状ケース保持部23aの上面との間で、圧電体6がケース2に対して接着剤31を介して押圧されるような押圧力が作用し、又は、(音響整合層4が有る場合には)音響整合層4と圧電体6とがケース2に対してそれぞれ接着剤31,32を介して押圧されるような押圧力が作用すると同時的に、上冶具24Bのフランジ24bの下面と下冶具23のフランジ23bの上面との間で、ケース2のフランジ5の形状を修正するように押圧力が作用する。また、必要に応じて、さらに、上冶具24Bの側面の内周面と下冶具23の側面の外周面との間で、ケース側面の形状を修正するように押圧力が作用する。
【0045】
すなわち、上記加圧した状態で超音波振動子製造用冶具と共にケース2に対して低温熱処理を施すことで、圧電体6とケース2とを接着剤31により加圧接着させる機能、又は、圧電体6とケース2とを接着剤31により加圧接着させるとともに音響整合層4とケース2とを接着剤32により加圧接着させる機能と、ケース2のフランジ5(さらには側面)の形状を修正する機能と、低温熱処理によって応力を緩和する機能とを発揮させることができる。
【0046】
従って、上記第1実施形態での作用効果に加えて、バネ25の付勢力により、上冶具24Bと下冶具23との間でケース2を弾性的に加圧するため、応力を徐々に緩和しながらケース2を無理無く加圧して接着動作を行なうと同時に形状修正動作を行なうことができる。また、各接着面を大略均一化できることにより、各接着界面が均一なものとなり、高い接着精度を達成することができる。
【0047】
第1実施形態及び第2実施形態の超音波振動子製造用冶具において加圧状態とした後、熱処理を施すとき、図9に示すような恒温槽61に入れて、適切な温度と時間で低温熱処理を行うことが好ましい。恒温槽61は、底面近くに配置されたヒーター62と、ヒーター62の上に上記超音波振動子製造用冶具35を少なくとも複数個載置可能なステンレス製などの冶具載置板33と、上記超音波振動子製造用冶具を出し入れする恒温槽正面とは反対側の背面に配置されたファン34とを備えるように構成されている。
【0048】
このような構成においては、ヒーター62で暖められた温風は、ファン34で恒温槽内に循環される。ここでは、温風循環式の恒温槽61を用いたが、所定の熱処理を行うことが可能なものであれば、どのような方式のものを用いても問題はない。
【0049】
本発明の上記第1実施形態及び第2実施形態での超音波振動子の製造方法における低温熱処理について、低温熱処理の温度プロファイルは、接着剤31,32の加熱硬化温度プロファイルと同じにすることが好ましい。更に、低温熱処理工程と加熱硬化工程を同時に行うことで、接着と形状修正、応力緩和を同時に行うことができ、生産性を向上することができる。熱処理の温度プロファイルは図10に示すように、熱処理温度Tまで温度を上げる工程41と、熱処理温度Tで温度を一定温度で保持する工程42と、熱処理温度Tカラ温度を下げる工程43とより構成する。温度を上げる工程41は、温度を上げる速度を0℃/minよりも大きく、5℃/min以下することが望ましい。温度を上げる速度が5℃/minを越えて温度を早く上げすぎると、自己発熱性が高い接着剤を用いる場合には、接着面がポーラス状態になり易く、接着強度が低下するとともに、ケース全体の温度が一定に上がらないため、部分的に熱分布が生じ、歪みや反りが発生し、形状が原型と異なってしまうことがある。また、ひどい場合には、割れが生じることがある。。低温熱処理のための温度保持工程42は、熱処理温度Tを150〜300℃の範囲に保持する。熱処理温度Tが150℃未満ではケース天面の反り量を平坦にする効果が少なく、また、熱処理温度Tが300℃を越えるとケース天面の反り量を平坦化する効果も低下し、応力腐食割れ試験においても割れが生じる。また、熱処理温度Tが300℃以下ならば、超音波振動子製造用冶具に関しても特殊鋼などを使用する必要がなく、通常のステンレス(SUS304など)で対応可能である。また、生産性に関しても、できるだけ低い温度である300℃以下であれば、タクトタイムも短縮され熱処理するための恒温槽も通常品で可能なため有利である。以上から、熱処理温度は150〜300℃の範囲が望ましい。よって、超音波振動子製造用冶具の耐熱性としては、低温熱処理の温度が150〜300℃の範囲であることから、300℃を越えるものとする必要がある。なお、上記熱処理温度は、150〜300℃内のある温度例えば170℃で一定であってもよいし、150〜300℃内で変動してもよい。図10に示すように、接着剤の硬化反応に必要とされる温度範囲は150〜200℃の範囲であり、応力緩和に必要とされる温度は150〜300℃、形状修正に必要とされる温度は150〜300℃である。よって、超音波振動子製造用冶具の耐熱温度は150℃以上である。上記ししたように、形状修正及び応力緩和に必要とされる熱処理温度は150℃以上必要であり。150℃未満の温度では殆ど効果が見られないからである。冶具の耐熱温度としては、さらに好ましくは、300℃を越える温度が必要とされる。
【0050】
上記一定温度で保持する工程42において、上記150〜300℃の範囲で熱処理温度Tを保持する温度保持時間は、0分より大きく、60分以内でなければならない、その理由としては、熱処理を60分を越えても応力腐食割れを防ぐ効果は、熱処理時間60分以内と殆ど変わらないためであるとともに、場合によっては、熱処理時間が60分を越えると、応力腐食割れが生じ始めることもあるからである。
【0051】
上記図10の温度プロファイルで示す上記温度を下げる工程43では、その温度を下げる冷却速度を、0℃/minより大きく、必ず1.0℃/min以下で徐冷する必要がある。これは、急冷もしくは1.0℃/minを超える速度で冷却すると、ケース2に応力が蓄えられ、反り、変形が生じたり、内部応力が蓄えられることで、応力腐食割れ試験で割れが生じる。従って、冷却速度は、0℃/minより大きく、必ず1.0℃/min以下で徐冷する必要がある。
【0052】
本発明の上記第1実施形態及び第2実施形態にかかる熱処理工程において、熱処理雰囲気は不活性ガス中で行う。ケース2の材料として、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタンなどは不動態膜が表面に形成されているため、不活性ガス雰囲気中で熱処理しなくても問題ないが、銅や真鍮のように酸化しやすい金属の場合には不活性ガス中で熱処理を行うことが望ましい。
【0053】
本発明の上記第1実施形態及び第2実施形態にかかるケース天面3を平坦化可能な有底筒状金属ケース2の材質としては、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、銅、真鍮、又は、チタンが望ましい。特にこれらの材料を切削加工、もしくはプレス一体成型加工(例えば精密プレスによる深絞り法を用いて一体成型加工)を施した後に、加工油を完全に除去し、低温熱処理すれば、応力腐食割れを防ぐことが可能である。
【0054】
本発明の上記第1実施形態及び第2実施形態にかかる有底筒状金属ケース2のケース天面3の厚みは、0mmより大きく、1mm以下が望ましい。ケース天面3の厚みが1mmを超えると、低温熱処理では応力腐食割れを防止する効果が低下するとともに、超音波振動子の超音波の感度が低下してしまう。従って、ケース天面3の厚みは1mm以下が望ましい。
【0055】
本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る、超音波振動子の製造方法に使用される超音波振動子製造用冶具としては、上記下冶具23が圧電体6に接着剤31を塗布するときに圧電体6を保持するための接着剤印刷塗布用圧電体保持冶具を兼ねることもできるとともに、圧電体6とケース2の位置決め部又はケース2と音響整合層4の位置決め部を有するようにしてもよい。すなわち、図11に示すように、圧電体6を下冶具23の圧電体保持用凹部23c内にセットした後、圧電体保持用凹部23c内にセットされた圧電体6の露出した上面に接着剤31を塗布し、ケース2に対して音響整合層4が塗布された接着剤32で仮止めされた状態のケース2を下冶具23に被せるようにセットする。下冶具23の円柱状ケース保持部23aはケース2の内径に対して特定のマイナス寸法公差(例えば、20〜100μmの公差)が入れられ、ケース2の内径が下冶具23の円柱状ケース保持部23aに対して寸法公差分だけの隙間を介して位置するようにセットされる。すなわち、ケース2の天面3に対する圧電体6の接着位置は下冶具23の圧電体保持用凹部23cと円柱状ケース保持部23aの加工寸法公差と圧電体6の外径寸法公差、ケース2の内径寸法公差をそれぞれ足し合わせた公差が最大公差となり、要求される接着位置精度によって、各々の寸法公差の精度を変えることで対応可能である。上冶具24Bには、音響整合層4とケース2の位置決め部45を具備する。音響整合層4の位置決め部45は、圧電体6を保持する圧電体保持用凹部23cを設けた下冶具23とは反対の上冶具24Bの内側に設けられた円形凹部を囲む環状凸部45より構成し、ケース天面3の外形を基準として音響整合層4の外形がケース天面3の外形と互いに中心が大略一致するように配置されるようにする。音響整合層4とケースの位置精度は、位置決め部45、ケース外形と音響整合層外形の加工精度で決まるため、必要な位置精度に応じてそれぞれの寸法公差を決定すればよい。
【0056】
更に、第1実施形態及び第2実施形態に係る、超音波振動子の製造方法に使用される超音波振動子製造用冶具において、上冶具24A,24B例えば上冶具24B又は下冶具23は、接着、形状修正、応力緩和のための熱処理時に熱が均一に伝わり、場所による熱の不均一が起こらないように、超音波振動子製造用冶具でケース表面を完全に覆わない構造を有することが好ましい。すなわち、下冶具23又は上冶具24A,24Bは、少なくとも圧電体6、ケース2、音響整合層4を完全に覆わない構造を有するようにするのが好ましい。接着剤31,32を加熱硬化させる場合に、接着剤31,32との接着面ができるだけ均一な温度になるようにするため、接着面を完全に覆わないように構成するためである。特に、温風循環式方式や輻射熱方式などの恒温槽61を用いる場合には、超音波振動子製造用冶具で接着剤31,32を完全に覆ってしまうと、熱が接着剤31,32に均一に伝わりにくく接着不良を起こしやすい。また、応力緩和及び形状修正の観点からは、超音波振動子製造用冶具ごとケース2を冷やすときには、超音波振動子製造用冶具をゆっくり冷やすことにより、ケース全体の熱容量が超音波振動子製造用冶具の熱容量に近くなるため超音波振動子製造用冶具及びケース全体が均一にゆっくりと冷やされる。これに対して、ケース2の一部分が急激に冷やされると、その部分の熱膨張係数が他の部分と異なってしまうために応力が発生してしまい、ケース2にひび割れやクラックが発生する。以上の観点から、接着と応力緩和、形状修正の機能を満たす超音波振動子製造用冶具としては、図12に示すようにケース全体を完全に覆わない構成を有する。具体的には、図12に示されるように、ケース側面に対応する上冶具24Bの側面に、厚み方向に貫通しかつ軸方向に延びた所定幅の貫通開口24dを所定間隔ごとに複数個設けるようにしてもよい。貫通開口24dの位置は、これに限られるものではなく、ケース側面の剛性と、熱伝導の均一性の観点から適宜決定すればよい。貫通開口24dの軸方向の長さは、少なくとも、ケース2内の接着剤31に対向するケース側面部分が露出するとともに接着剤32が露出する程度の長さとすることが好ましい。貫通開口24dの総面積は、上冶具24Bの側面の剛性が損なわれない程度とする。貫通開口24dの形状は矩形にすれば、加工がしやすくなる。
【0057】
また、上記実施形態では、加圧部材の一例としてのバネ25を上冶具24A,24Bに備えるようにしたが、下冶具23に備えるようにしてもよい。このように、加圧部材としてバネを用いることで、必要な加圧力をバネを変えることで自由に選択可能となる。
【0058】
また、上記実施形態にかかるに係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具としては、耐荷重が500kgf/cm2以上である。形状を修正するために必要な荷重は最低500kgf/cm2以上必要であるため、冶具の耐荷重も500kgf/cm2以上必要とされる。
【0059】
また、本発明の上記実施形態に係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具としては、冶具に用いられる母材の熱膨張係数がケース2の母材の熱膨張係数の以下であるようにすることが好ましい。冶具自体の熱膨張係数がケース母材の熱膨張係数より大きい場合には、冶具が熱により伸縮することで、ケース2の接着や形状修正、又は応力緩和をする場合に下冶具23と上時具24A,24Bが設計どおりにケース2に対して均等な力で加圧できない場合や、熱が均一に伝わらない場合が発生し、必要とされる効果が得られない場合がある。従って、冶具に用いられる母材の熱膨張係数はケース母材の熱膨張係数以下である必要がある。
【0060】
また、本発明の上記実施形態に係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具としては、金属で構成されていることが好ましい。一般に、金属は、熱伝導率、加工性、剛性に優れていることから、超音波振動子製造用冶具として複雑な形状を作製する上でも非常に取り扱いやすい。また、超音波振動子製造用冶具の加工修正などの目的に応じて、熱膨張係数や熱伝導率などの物性値を適宜選択可能である。以上から冶具としては金属を用いることが好ましい。
【0061】
さらに、本発明の上記実施形態に係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具としては、加圧部分の硬度はケース母材の硬度以上であることが必要である。超音波振動子製造用冶具の加圧面あるいは加圧部分にあたる所は、焼き入れを行って硬度を高めたり、ケース材料よりも硬い材料を用いてケース材料以上の硬度を有することが必要である。これに対して、ケース母材の硬度に比べ超音波振動子製造用冶具の加圧部分の硬度が低い場合には、超音波振動子製造用冶具自体がケースの形状に馴染んでしまい、ケース形状を修正することが不可能である。従って、超音波振動子製造用冶具の加圧部の硬度はケース母材の硬度以上必要とされる。
【0062】
また、本発明の上記実施形態に係る超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具としては、超音波振動子製造用冶具を構成する下冶具23と、上冶具24A又は24Bと、バネ25とを一組として、少なくとも2組以上を組み合わせた構造を有することが生産効率を向上させる観点から好ましい。超音波振動子製造用冶具の構成としては、図13(a)、図13(b)に示されるように、下冶具23及び上冶具24A,24Bより構成する超音波振動子製造用冶具を、例えば3行×3列のマトリックス状に9個、又は、図14(a)、図14(b)に示すように例えば3列の横並びに3個配置する。下冶具23及び上冶具24A,24Bを多数個配置することで一度に同じ条件で熱処理及び加圧が可能となる。加圧の具体的な方法としては、各スライド用シャフト26の上ベース27とナット26Aとの間に加圧セパレート30を嵌め込むことでバネ25を圧縮した状態で固定できる他、各支柱29の上端の係止リング29Aと上ベース27との間に加圧セパレート30をそれぞれ差し込むことにより、各超音波振動子製造用冶具でのケース2に対する加圧状態を維持するようにしてもよい(図22参照)。また、超音波振動子製造用冶具においてもコンパクトに配置することができ、熱処理に必要な恒温槽などの設備もその大きさに応じて小さくすることが可能になるため設備費用も削減可能である。以上の観点からも多数組み合わせた構造を用いることで生産性の向上を図ることが可能である。
【0063】
また、本発明の上記第1及び第2実施形態の変形例に係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具として、上冶具と支柱26とが固定されているのではなく、支柱26に対して上冶具24Eが自在に揺動可能として、下冶具23に対する傾斜角度を自在に調整可能としてもよい。
【0064】
すなわち、まず、上記第1実施形態の変形例として図15に示すように、上冶具24Eを、円柱体状のケース押圧部24fと、ケース押圧部24fを係合突起24hで吊支持しかつ支柱26に固定された筒状固定部24eとより構成する。ケース押圧部24fの上面の中央部の半球状凹部24gと支柱26の下端の球面凹部26aとの間に、揺動支点として機能する球部材の一例としての鋼球99を配置して、支柱26に対してケース押圧部24fが自在に傾斜可能としている。よって、支柱26より上冶具24Eを介して下冶具23に向けて加圧するとき、支柱26に対して上冶具24Eのケース押圧部24fが鋼球99周りに揺動して自在に傾斜することにより、ケース天面3とケース押圧部24fの下面とが大略平行になり、この平行状態で押圧動作を行なわせることができる。従って、より精度良く、音響整合層4とケース天面3とを接着固定させることができる。
【0065】
次に、上記第2実施形態の変形例としての図16では、上冶具24Eの固定部24eに、ケース2の側面及びフランジ5を下冶具23の円柱状ケース保持部23a及びフランジ23bとの間で加圧する側面加圧部24jを備えるものである。よって、支柱26より上冶具24Eを介して下冶具23に向けて加圧するとき、支柱26に対して上冶具24Eのケース押圧部24fが鋼球99周りに揺動して自在に傾斜することにより、ケース天面3とケース押圧部24fの下面とが大略平行になり、ケース側面と側面加圧部24jの内面とが大略平行になり、フランジ5の上面と側面加圧部24jの下面とが大略平行になり、これらの平行状態で押圧動作を行なわせることができる。従って、より精度良く、音響整合層4とケース天面3とを接着固定させるとともに、ケース2の側面及びフランジ5の形状修正を行なうことができる。
【0066】
また、上記第2実施形態の別の変形例としての図17及び図18では、上冶具24Eの固定部24eの側面加圧部24jに、貫通開口24dと同様な複数の貫通開口24dを備えるものである。図18は、恒温槽61内に図17の超音波振動子製造用冶具が配置されたとき熱風が複数の貫通開口24dを通過する状態及び熱風により超音波振動子製造用冶具及びケース2が加熱される状態を矢印で説明したものである。よって、複数の貫通開口24dを熱風が通過することにより、接着剤31,32との接着面ができるだけ均一な温度になり、接着、形状修正、応力緩和のための熱処理時に熱が均一に伝わり、場所による熱の不均一を防止することができる。すなわち、上記複数の貫通開口24dを熱風の向きに沿って配置して、熱風が上記複数の貫通開口24dから超音波振動子製造用冶具内に入りやすくすることにより、超音波振動子製造用冶具、ケース2、接着剤31,32、圧電体6、(音響整合層4がある場合には)音響整合層4が均一に加熱されやすくなり、均一に加熱して超音波振動子を製造することができる。
【0067】
また、上記第2実施形態の上記別の変形例の超音波振動子製造用冶具において、図5(a),(b)又は図7(a),(b)と同様なスライド用シャフト26、支柱29、上ベース27、下ベース28、ナット26A、加圧セパレート30などを使用した、ケース加圧前の状態と加圧状態を図19及び図20に示す。
【0068】
また、上記第2実施形態の上記別の変形例の超音波振動子製造用冶具において、下冶具23及び上冶具24Eより構成する超音波振動子製造用冶具を、例えば3行×3列のマトリックス状に9個配置した、ケース加圧前の状態と加圧状態を図21及び図22に示す。上冶具24E以外の基本的な構成は、図13(a)と同様である。図22の加圧状態では、各支柱29の上端の係止リング29Aと上ベース27との間に加圧セパレート30をそれぞれはめ込んでバネ25を圧縮した状態で固定することにより、各超音波振動子製造用冶具でのケース2に対する加圧を一斉に行ないかつそれらの加圧状態を維持するようにしている。
【0069】
また、上記第2実施形態の上記別の変形例の超音波振動子製造用冶具において、下冶具23及び上冶具24Eより構成する超音波振動子製造用冶具を、図23及び図24に示すように、例えば3列の横並びに3個配置する。上冶具24E以外の基本的な構成は、図14(a),(b)と同様である。図24の加圧状態では、各スライド用シャフト26の上ベース27とナット26Aとの間に加圧セパレート30を嵌め込んでバネ25を圧縮した状態で固定することにより、各超音波振動子製造用冶具でのケース2に対する加圧を一斉に行ないかつそれらの加圧状態を維持するようにしている。
【0070】
また、本発明の第3実施形態に係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具として、図25〜図27に示すように、各超音波振動子製造用冶具を1個ずつ加圧処理することができるものである。すなわち、第3実施形態に係る超音波振動子製造用冶具は、上冶具24Aをスライド用シャフト26によりその内部に吊支持しかつ多数の円形の貫通開口50dを有する円筒状外筒部材50と、下冶具23を載置しかつ外筒部材50を載置する支持台51と、外筒部材50の中心軸に対して支持台51に一対対向して備えられかつ先端がそれぞれ対向する外筒部材50の係合凹部50c内に係合可能な係合フック52とを備えて構成している。外筒部材50の内径は、下冶具23の外径より若干大きめに形成して、下冶具23が外筒部材50により嵌合されるようにしている。
【0071】
図26は、上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具において係合フック52,52で外筒部材50を支持台51に係合保持する前の状態を示す。図27は、上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具において係合フック52,52を支持台51に対して回動させて、それらの先端を外筒部材50の係合凹部50c内に係合させることにより、外筒部材50を支持台51に係合保持した状態を示す。上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具は、図27の係合保持状態で前述したような恒温槽61内に入れることにより、図28及び図29に示すように、外筒部材50の複数の貫通開口50dを熱風が矢印方向に通過させることができる。この結果、個々のケース2を収納した超音波振動子製造用冶具が独立して恒温槽61内に配置することにより、個々の超音波振動子製造用冶具での熱容量を均一化させることができて、各ケース2での接着剤31,32との接着面ができるだけ均一な温度になり、接着、形状修正、応力緩和のための熱処理時に熱が均一に伝わり、恒温槽61内での場所の違いによる熱処理時の不均一な加熱を防止することができる。さらに、複数の穴をあけることで、加圧(接着)部分の状態を確認することが可能となる。
【0072】
また、本発明の第4実施形態に係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具として、図30に示すように、バネによる加圧ではなく、上冶具24Cと下冶具23Cとをねじにより結合して、ケース2を加圧するようにしてもよい。この実施形態によれば、先の実施形態のように係合フックではなく、上冶具24Cと下冶具23Cとを相対的に回転させることによるねじ結合で加圧動作、及び、逆回転で加圧解除動作を行なうことができ、上冶具24Cと下冶具23Cとの結合及び結合解除の自動化が行ないやすいといった効果がある。また、バネを用いないため、冶具の部品点数を削減でき、コストダウンに有効である。さらに、バネを用いないため、全体的に冶具のコンパクト化が可能であり、冶具の熱容量も小さくなるため、昇温、降温時間の短縮と、恒温槽の大きさも小さくするといった工程コスト削減につながる。
【0073】
【実施例】
以下に、具体的な実施例により、本発明の効果の説明を行う。
【0074】
(実施例1)
下冶具と下冶具に対向して設けられた上冶具から構成され、接着面を加圧した状態で低温熱処理を施すことで、圧電体とケースの加圧接着とケースの応力緩和の効果を確認するために、図5(a)に示す冶具構造を用いて検討を行った。圧電体を下冶具に載せた後、スクリーン印刷機にセットして接着剤を圧電体の上面に約20μm塗布した。接着剤が塗布された圧電体を保持する下冶具を印刷機から取り出し、ケースを下冶具に載せ、下ベース上に載置した。その後、冶具の上ベースを少しずつ下ろして、接着面であるケース天面を加圧し、加圧セパレートで固定した。今回用いたケースは、厚み0.2mmのSUS304を用いて作製された直径11.8mm、高さ5.5mm、フランジ付きの有天筒状ケースである。加圧した状態で恒温槽に入れて熱処理を行った。熱処理の温度プロファイルは温度を上げる速度を3℃/minで上げた後、特定の温度で30分保持した。その後、0.5℃/minで常温まで冷却し、恒温槽から取り出した。保持温度を100〜350℃まで10℃ずつ変化させて検討を行った。接着力に関しては接着強度を剥離試験機を用いて接着強度を測定し、300kgf/cm2以上を合格とした。応力緩和については圧電体に接着剤を塗布しないで上記の加圧と熱処理を同じように施し、応力腐食割試験を行った。応力腐食割れ試験については、42%の塩化マグネシウム143℃で48時間行った後、取り出して顕微鏡で観察して割れのないものを合格とした。今回使用したケースについては、熱処理を施していないものは応力腐食割れ試験で割れてしまうことを確認している。以上検討した結果を、図31に示す。接着強度に関しては、今回、エポキシ系の接着剤を用いて150〜200℃の範囲で300kgf/cm2以上が得られた。150℃未満では接着剤の化学反応が不十分で200℃以上になるとポーラス状になり接着剤が炭化し始めるために接着強度の低下が見られた。一方、応力緩和については、150〜300℃の範囲で応力腐食割れが抑制され、効果があることがわかった。また、図31の結果から、接着強度が300kgf/cm2以上得られる接着剤の加圧硬化温度範囲は150〜200℃、応力緩和により応力腐食割れが抑制される温度範囲は150〜300℃であることから、両方の効果を同じ工程で同時に得るための温度プロファイルは150〜200℃である。
【0075】
(実施例2)
下冶具と下冶具に対向して設けられた上冶具から構成され、接着面を加圧した状態で低温熱処理を施すことで、圧電体とケースの加圧接着とケースの応力緩和、形状修正の効果を確認するために、図7(a)に示す冶具構造を用いて検討を行った。圧電体を下冶具に載せた後、スクリーン印刷機にセットして接着剤を圧電体の上面に約20μm塗布した。接着剤が塗布された圧電体を保持する下冶具を印刷機から取り出し、ケースを下冶具に載せ、下ベース上に載置した。その後、冶具の上ベースを少しずつ下ろして、接着面であるケース天面を加圧し、加圧セパレートで固定した。今回用いたケースは厚み0.2mmのSUS304を用いて作製された直径11.8mm、高さ5.5mm、フランジ付きの有天筒状ケースである。加圧した状態で恒温槽に入れて熱処理を行った。熱処理の温度プロファイルは温度を上げる速度を3℃/minで上げた後、特定の温度で30分保持した。その後、0.5℃/minで常温まで冷却し、恒温槽から取り出した。保持温度を100〜350℃まで10℃ずつ変化させて検討を行った。接着力に関しては接着強度を剥離試験機を用いて接着強度を測定し、300kgf/cm2以上を合格とした。応力緩和については圧電体に接着剤を塗布しないで上記の加圧と熱処理を同じように施し、応力腐食割試験を行った。応力腐食割れ試験については42%の塩化マグネシウム143℃で48時間行った後、取り出して顕微鏡で観察して割れのないものを合格とした。今回使用したケースについては熱処理を施していないものは応力腐食割れ試験で割れてしまうことを確認している。また、形状修正については、ケース単体で冶具を用いてケース天面とフランジ面を加圧して上記温度プロファイルで熱処理を行った。このとき、加圧力は500kgf/cm2一定とした。ケース天面については5μm以内、フランジ面については、フランジ面がケース側面に対しては85〜95度の範囲内に修正されていれば合格とした。以上検討した結果を図32に示す。接着強度に関しては、今回、エポキシ系の接着剤を用いて150〜200℃の範囲で300kgf/cm2以上が得られた。150℃未満では接着剤の化学反応が不十分で、200℃以上になるとポーラス状になり接着剤が炭化し始めるために接着強度の低下が見られた。一方、応力緩和については、150〜300℃の範囲で応力腐食割れが抑制され、効果があることがわかった。また、形状修正に関しては150〜250℃の範囲で効果が見られた。図32の結果から、接着強度が300kgf/cm2以上得られる接着剤の加圧硬化温度範囲は150〜200℃、応力緩和により応力腐食割れが抑制される温度範囲は150〜300℃、形状修正効果は150〜250℃であることから、応力緩和と形状修正の効果を得るためには150〜250℃、すべての効果を同じ工程で同時に得るための温度プロファイルは150〜200℃である。
【0076】
(実施例3)
下冶具と下冶具に対向して設けられた上冶具から構成され、接着面を加圧した状態で低温熱処理を施すことで、圧電体とケースの加圧接着とケースの応力緩和、形状修正の効果を確認するために、図7(a)に示す冶具構造を用いて検討を行った。圧電体を下冶具に載せた後、スクリーン印刷機にセットして接着剤を圧電体の上面に約20μm塗布した。接着剤が塗布された圧電体を保持する下冶具を印刷機から取り出し、ケースを下冶具に載せ、下ベース上に載置した。その後、冶具の上ベースを少しずつ下ろして、接着面であるケース天面を加圧し、加圧セパレートで固定した。今回用いたケースは、厚み0.2mmのSUS304を用いて作製された直径11.8mm、高さ5.5mm、フランジ付きの有天筒状ケースである。加圧した状態で恒温槽に入れて熱処理を行った。熱処理の温度プロファイルは温度を上げる速度を3℃/minで上げた後、150℃で30分保持した。その後、0.1〜2.0℃/minで冷却速度を変化させて常温まで冷却し、恒温槽から取り出した。接着力に関しては接着強度を剥離試験機を用いて接着強度を測定し、300kgf/cm2以上を合格とした。応力緩和については、圧電体に接着剤を塗布しないで上記の加圧と熱処理を同じように施し、応力腐食割試験を行った。応力腐食割れ試験については42%の塩化マグネシウム143℃で48時間行った後、取り出して顕微鏡で観察して割れのないものを合格とした。今回使用したケースについては、熱処理を施していないものは応力腐食割れ試験で割れてしまうことを確認している。また、形状修正については、ケース単体で冶具を用いてケース天面とフランジ面を加圧して上記温度プロファイルで熱処理を行った。このとき、加圧力は500kgf/cm2一定とした。ケース天面については5μm以内、フランジ面についてはケース側面に対してフランジ面が85〜95度の範囲内に修正されていれば合格とした。以上の検討結果を、図33に示す。図33の結果から、接着強度が300kgf/cm2以上得られる接着剤の冷却速度は1.1℃/min以下、応力緩和により応力腐食割れが抑制される冷却速度は1.0℃/min以下、形状修正効果は1.2℃/min以下である。従って、応力緩和と形状修正の効果を得るためには冷却速度を1.0℃/min以下、すべての効果を同じ工程で同時に得るための冷却速度は1.0℃/min以下である。
【0077】
(実施例4)
下冶具と下冶具に対向して設けられた上冶具から構成され、接着面を加圧した状態で低温熱処理を施すことで、ケースの応力緩和、形状修正の効果を確認するために、図7(a)に示す冶具構造を用いて検討を行った。今回用いたケースは、厚み0.2mmのSUS304を用いて作製された直径11.8mm、高さ5.5mm、フランジ付きの有天筒状ケースである。加圧した状態で恒温槽に入れて熱処理を行った。熱処理の温度プロファイルは温度を上げる速度を3℃/minで上げた後、150℃で30分保持した。その後、0.5℃/minの冷却速度で常温まで冷却し、恒温槽から取り出した。応力緩和については上記の加圧と熱処理を施し、応力腐食割試験を行った。応力腐食割れ試験については42%の塩化マグネシウム143℃で48時間行った後、取り出して顕微鏡で観察して割れのないものを合格とした。今回使用したケースについては、熱処理を施していないものは応力腐食割れ試験で割れてしまうことを確認している。また、形状修正については、ケース単体で冶具を用いてケース天面とフランジ面を加圧して上記温度プロファイルで熱処理を行った。ケース天面については5μm以内、フランジ面についてはケース側面に対してフランジ面が85〜95度の範囲内に修正されていれば合格とした。このとき、加圧力を300〜800kgf/cm2まで変化させて形状修正に必要とされる加圧力を調べた。以上の検討結果を、図34に示す。図34の結果から、応力腐食割れについては300〜800kgf/cm2の範囲で加圧力に依存性はなく、応力緩和されている。また、形状修正においては、500kgf/cm2以上の加圧力を加えることで、ケース天面及びフランジ面の形状修正を行えることがわかった。
【0078】
以上、詳細に説明したように、上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0079】
本発明の第1態様によれば、少なくとも有底筒状金属ケースと、
上記ケースの1つの面に接着剤により設けられた圧電体を備える超音波振動子、又は、圧電体が接着剤により設けられた上記ケースの1つの面の反対側の面に音響整合層が接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子製造用冶具において、
少なくとも、上記圧電体を保持する圧電体保持用凹部と、上記圧電体保持用凹部を有しかつ上記圧電体保持用凹部内に保持された上記圧電体と上記ケースの上記1つの面の内面とを上記接着剤を介して接着させた状態を保持可能なケース保持部とを有する下冶具と、上記下冶具に対向して配置されかつ上記下冶具との間で上記ケースを挟持可能な上冶具とを備えて、
上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤を介して上記圧電体を加圧した加圧状態、又は、上記接着剤を介して上記ケースの上記1つの面に上記圧電体を加圧しかつその反対側の面に上記接着剤を介して上記音響整合層を加圧した加圧状態を保持可能であり、この加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能、又は、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能と、上記低温熱処理によって応力を緩和する機能を発揮することを特徴とする超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0080】
本発明の第2態様によれば、少なくとも有底筒状金属ケースと、
上記ケースの1つの面に接着剤により設けられた圧電体を備える超音波振動子、又は、圧電体が接着剤により設けられた上記ケースの1つの面の反対側の面に音響整合層が接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子製造用冶具において、
少なくとも上記ケースを支える下冶具と、上記下冶具に対向して設けられた上冶具と、上記ケースの厚み方向に対して上記ケースの1つの面の両面側から上記上冶具と上記下冶具とで挟み込むように圧力を加えることが可能な加圧力を上記上冶具と上記下冶具とに作用させる加圧部材とを備えて、上記加圧部材により上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤を介して上記圧電体を加圧した加圧状態、又は、上記接着剤を介して上記ケースの上記1つの面に上記圧電体を加圧しかつその反対側の面に上記接着剤を介して上記音響整合層を加圧した加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能、又は、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能と、上記ケースの形状を修正する機能と、上記低温熱処理によって応力を緩和する機能とを有することを特徴とする超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0081】
本発明の第3態様によれば、上記低温熱処理の温度プロファイルは、上記接着剤の加熱硬化温度プロファイルと同じである第1又は2の態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0082】
本発明の第4態様によれば、上記下冶具は、少なくとも上記圧電体を上記ケースに対して位置決め保持する位置決め部を有する第1〜3のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0083】
本発明の第5態様によれば、上記下冶具は、少なくとも上記圧電体を上記ケースに対して位置決め保持する位置決め部を有して、少なくとも上記圧電体に上記接着剤を塗布するための接着剤塗布用圧電体保持冶具として機能する第1〜4のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0084】
本発明の第6態様によれば、上記上冶具は、少なくとも上記音響整合層を上記ケースに対して位置決め保持する位置決め部を有する第1〜5のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0085】
本発明の第7態様によれば、上記上冶具は、少なくとも厚み方向に貫通して熱処理時の熱風が通過可能な複数の貫通開口を有する第1又は2の態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0086】
本発明の第8態様によれば、上記下冶具又は上記上冶具は、上記下冶具と上記上冶具とを上記ケースを挟んで加圧状態とする加圧部材を具備する第1〜7のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0087】
本発明の第9態様によれば、上記加圧部材はバネである第8の態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0088】
本発明の第10態様によれば、上記上冶具の天面の内面と、上記下冶具の上面の外面とは、上記ケースの天面において、上記ケースの曲部を含んで上記曲部から2割以上の面積において加圧荷重が加わるように寸法構成されている第1〜9のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0089】
本発明の第11態様によれば、上記熱処理に用いられる超音波振動子製造用冶具は、耐荷重が500kgf/cm2以上である第1〜10のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0090】
本発明の第12態様によれば、上記熱処理に用いられる冶具は、耐熱温度が300℃を超える温度である第1〜11のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0091】
本発明の第13態様によれば、上記熱処理に用いられる超音波振動子製造用冶具は、熱膨張係数が上記ケースの材料の熱膨張係数以下である第1〜11のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0092】
本発明の第14態様によれば、上記上冶具及び上記下冶具は金属で構成されている第1〜11のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0093】
本発明の第15態様によれば、上記加圧部分の硬度は上記ケースの材料の硬度以上である第1〜11のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0094】
本発明の第16態様によれば、上記下冶具と上記上冶具とを少なくとも複数組備える第1〜15のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0095】
本発明の第17態様によれば、超音波振動子製造用冶具の下冶具と上記下冶具に対向して設けられた上冶具との間に、少なくとも有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置し、
次いで、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの1つの面に接着剤を介して圧電体を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和するか、又は、接着剤を介して上記ケースの1つの面に圧電体を加圧しかつその反対側の面に接着剤を介して音響整合層を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和することにより、
上記ケースの上記1つの面に上記接着剤により上記圧電体が設けられる超音波振動子、又は、上記圧電体が上記接着剤により上記ケースの上記1つの面に設けられかつその1つの面の反対側の面に上記音響整合層が上記接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子の製造方法を提供する。
【0096】
本発明の第18態様によれば、超音波振動子製造用冶具の下冶具と上記下冶具に対向して設けられた上冶具との間に、少なくとも有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置し、
次いで、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの厚み方向に対して上記ケースの1つの面の両面側から上記上冶具と上記下冶具とで挟み込むように加圧部材により圧力を加えて、上記ケースの1つの面に接着剤を介して圧電体を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和するか、又は、接着剤を介して上記ケースの1つの面に圧電体を加圧しかつその反対側の面に接着剤を介して音響整合層を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和することにより、
上記ケースの上記1つの面に上記接着剤により上記圧電体が設けられる超音波振動子、又は、上記圧電体が上記接着剤により上記ケースの上記1つの面に設けられかつその1つの面の反対側の面に上記音響整合層が上記接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子の製造方法を提供する。
【0097】
本発明の第19態様によれば、上記低温熱処理の温度プロファイルは、上記接着剤の加熱硬化温度プロファイルと同じである第17又は18の態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0098】
本発明の第20態様によれば、上記下冶具と上冶具との間に、少なくとも上記有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置するとき、
上記下冶具は、少なくとも上記圧電体を位置決め保持する第17〜19のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0099】
本発明の第21態様によれば、上記下冶具と上冶具との間に、少なくとも上記有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置する前に、
上記下冶具を接着剤塗布用圧電体保持冶具として使用して、上記下冶具に支持された上記圧電体に上記接着剤を塗布する第17〜20のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0100】
本発明の第22態様によれば、上記下冶具と上冶具との間に、少なくとも上記有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置するとき、
上記上冶具は、少なくとも上記音響整合層を位置決め保持第17〜21のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0101】
本発明の第23態様によれば、上記低温熱処理を施すとき、上記上冶具の厚み方向に貫通した複数の貫通開口を熱風が通過して上記超音波振動子製造用冶具及び上記ケースを加熱する第17〜22のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0102】
本発明の第24態様によれば、加圧部材により、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤を介して上記圧電体を加圧する第17〜23のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0103】
本発明の第25態様によれば、上記加圧部材はバネであり、上記バネの付勢力により、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤を介して上記圧電体を加圧する第24の態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0104】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0105】
【発明の効果】
本発明にかかる超音波振動子用製造冶具及び超音波振動子の製造方法によれば、上冶具と下冶具との間で押圧力を上記超音波振動子の軸方向に作用させて、(音響整合層が無い場合には)圧電体とケースの1つの面例えば天面の内壁面とを接着剤で接着固定するか、又は、(音響整合層が有る場合には)音響整合層とケース天面の外壁面とを接着剤で接着固定するとともに圧電体とケース天面の内壁面とを接着剤で接着固定することができる。
【0106】
すなわち、加圧した状態で超音波振動子製造用冶具と共にケースに対して低温熱処理を施すことで、(音響整合層が無い場合には)圧電体とケースとを接着剤により加圧接着させる機能、又は、(音響整合層が有る場合には)圧電体とケースとを接着剤により加圧接着させるとともに及び音響整合層とケースとを接着剤により加圧接着させる機能と、(音響整合層の有無にかかわらず)上記低温熱処理によって応力を緩和する機能とを発揮させることができる。
【0107】
よって、上記超音波振動子用製造冶具を使用することにより、低コスト、強度、加工性、耐ガス性、耐食性、耐応力腐食割れ性に優れたケース材料、例えば、アルミニウム合金ダイカストでプレス成型又は切削加工によって形成されて流路を流れる流体に対して繋ぎ目のない加工で作成したケースを用いて、低温熱処理下で、形状が安定し応力腐食割れをなくし、長期信頼性と優れた生産性でもって、超音波振動子を製造することができる。また、超音波振動子製造用冶具の機能として、接着と応力緩和及び形状修正を行うための超音波振動子製造用冶具を共用し、熱処理工程を同時にすることで、生産性の向上、性能向上を実現することができる。
【0108】
また、加圧部材、例えばバネの付勢力により、上冶具と下冶具との間でケースを弾性的に加圧する場合には、応力を徐々に緩和しながらケースを無理無く加圧して接着動作を行なうことができる。また、各接着面を大略均一化できることにより、各接着界面が均一なものとなり、高い接着精度を達成することができる。
【0109】
また、熱処理による応力緩和効果で応力腐食割れの抑制と加圧と熱処理のよる形状修正効果が得られる。また、接着硬化プロファイルと熱処理の温度プロファイルとを同じにするように調整する場合には、さらに生産効率を向上させることができる。
【0110】
更に、冶具の構成を冶具を構成する下冶具と上冶具、さらに必要に応じて加圧部材を一組として、少なくとも複数組以上を同時的に加圧及び熱処理する場合には、生産性や均一性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の超音波振動子製造用冶具により製造される超音波振動子の外観斜視図である。
【図2】本発明の上記第1実施形態の超音波振動子製造用冶具により製造される超音波振動子の断面図である。
【図3】図1,図2の上記超音波振動子を使用する超音波流量計の横断面図である。
【図4】図3の上記超音波流量計の縦断面図である。
【図5】(a),(b)は、それぞれ、本発明の上記第1実施形態の超音波振動子製造用冶具において加圧前の状態と加圧状態を示す斜視図である。
【図6】(a),(b),(c)は、それぞれ、本発明の上記第1実施形態の超音波振動子製造用冶具である下冶具に圧電体を挿入する状態の斜視図、下冶具にケースを被せた状態の斜視図、ケースのみの斜視図である。
【図7】(a),(b)は、それぞれ、本発明の第2実施形態の超音波振動子製造用冶具において加圧前の状態と加圧状態を示す斜視図である。
【図8】(a),(b)は、それぞれ、本発明の上記第2実施形態の超音波振動子製造用冶具の下冶具と上冶具を示す分解斜視図及び一部断面斜視図である。
【図9】本発明の上記実施形態の超音波振動子製造方法で用いる恒温槽を示す図である。
【図10】本発明の上記実施形態の超音波振動子の製造方法での熱処理の温度プロファイルを示す図である。
【図11】本発明の上記実施形態の超音波振動子製造用冶具と超音波振動子の分解状態を示しかつ超音波振動子製造用冶具の上冶具の位置決め部など示す一部断面斜視図である。
【図12】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す図である。
【図13】(a),(b)は、それぞれ、本発明の上記第1及び第2実施形態の超音波振動子製造用冶具を多数個、恒温槽内に入れた状態を示す図である。
【図14】(a),(b)は、それぞれ、本発明の上記第1及び第2実施形態の超音波振動子製造用冶具を多数個、恒温槽内に入れた状態を示す図である。
【図15】本発明の上記第1実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である(接着剤の図示は省略)。
【図16】本発明の上記第2実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である(接着剤の図示は省略)。
【図17】本発明の上記第2実施形態の別の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である(接着剤の図示は省略)。
【図18】図17の上記変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である(接着剤の図示は省略)。
【図19】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である。
【図20】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である。
【図21】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である。
【図22】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である。
【図23】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である。
【図24】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である。
【図25】本発明の第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具を示す斜視図である。
【図26】本発明の上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具において係合フックで外筒部材を支持台に係合保持する前の状態を示す一部断面図である。
【図27】本発明の上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具において係合フックで外筒部材を支持台に係合保持した状態を示す一部断面図である。
【図28】本発明の上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具の低温加圧状態を示す斜視図である。
【図29】本発明の上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具の低温加圧状態を示す断面図である。
【図30】(a),(b)はそれぞれ本発明の第4実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具を示す斜視図である。
【図31】本発明の上記実施形態の一実施例にかかる超音波振動子製造方法の検討結果を示す図である。
【図32】本発明の上記実施形態の一実施例にかかる超音波振動子製造方法の検討結果を示す図である。
【図33】本発明の実施形態の一実施例にかかる超音波振動子製造方法の検討結果を示す図である。
【図34】本発明の実施形態の一実施例にかかる超音波振動子製造方法の検討結果を示す図である。
【符号の説明】
1…超音波振動子、2…ケース、3…ケース天面、4…音響整合層、5…フランジ、6…圧電体、7…端子板、8a、8b…端子、9…絶縁物、10…導電性ゴム、11…流量測定部、12…側壁部、13…側壁部、14…シール材、15…上板部、16…流路断面、17…超音波振動子、18…超音波振動子、19…振動子取り付け穴、20…振動子取り付け穴、21…シール材、22…シール材、23,23C…下冶具、23a…円柱状ケース保持部、23b…フランジ、23c…圧電体保持用凹部、24A,24B,24C,24E…上冶具、24a…円筒部、24b…フランジ、24d…貫通開口、24e…筒状固定部、24f…ケース押圧部、24g…半球状凹部、24h…係合突起、24j…側面加圧部、25…バネ、26…スライド用シャフト、26a…球面凹部、27…上ベース、28…下ベース、29…支柱、30…加圧用セパレート、33…ステンレス製冶具載置板、34…ファン、35…超音波振動子製造用冶具、36…音響整合層を接着剤で仮止めしたケース、、41…温度を上げる工程、42…温度を保持する工程、43…温度を下げる工程、45…位置決め部、50…外筒部材、50a…貫通開口、50c…係合凹部、50d…貫通開口、51…支持台、52…係合フック、61…恒温槽、62…ヒーター、99…鋼球。
【発明の属する技術分野】
本発明は、有底筒状ケースを用いた超音波振動子の超音波振動子製造用冶具(治具、ジグ)及び超音波振動子のの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波振動子用のケースは、圧電振動子などを収容するケースで、通常、真空又は不活性ガスで置換され封止される。超音波振動子用のケース材料は、超音波振動子が主に気体や液体等の流体の速度を計測するために用いられるため、ケース表面は測定対象の気体及び液体にさらされる。例えば都市ガス等のガスメータに使用される場合は、ガス漏れなどの事故に対する安全性や10年以上連続使用されることから、現状の電子部品以上の長期信頼性が要求される。特に、最近では連続使用期間が10年から20年に移行する動きが業界であり、更なる長期信頼性が要望されている。また、「特定計量器検定検査規則」の第10章「ガスメータ」の第四百五十九条(漏えい試験)ではガスに関して漏洩と水の浸入についての検査及び規定は厳しく記されている。
【0003】
また、ガスメーカーの仕様書においても、圧力スイッチなどについては、ガスに接する部分の主要材料は、資源エネルギー庁ガス事業課及びガス技術安全課が定めたガス事業法令「ガス工作物の技術上の基準の細目を定める告示第84条の規格に適合する耐ガス性、耐食性を有する金属材料であること」と規定されている。
【0004】
そのため、ガスに接するケース部材は、同様に加工や衝撃等による機械的破損や気温、酸性雨などの環境的要因による腐食が許されない。従って、強度、加工性、耐ガス性、耐食性、耐応力腐食割れ性、溶接性に優れていることが要求される。一方、従来のセンサーに関しては、一体成形された樹脂、焼結ケースや切削によって切り出した切削ケース、繋ぎ目を溶接で加工したケース等が一般に用いられていて、上記安全面や長期信頼性について考慮された材料や構造ではなかった。
【0005】
特許文献1には有天筒状ケースを用いた超音波振動子が挙げられているが、有天筒状ケースはケース天面を振動板として用いるため加工精度が要求され、プレス成型や切削などで作製されるが、内部応力を含むために応力腐食割れの発生や加工精度が得られにくいという課題があった。応力腐食割れ発生を防ぐための手段としては、特許文献2に示される熱処理による応力緩和法が、形状修正においては、特許文献3などがあるが、どちらも200℃程度の低温では効果が得られるものではなかった。また、応力緩和が主たる目的で、形状修正と応力緩和又は接着工程までも含んだ工程では実現できなかった。
【0006】
【特許文献1】
実開平4−94898号公報
【特許文献2】
特開平5−317983号公報
【特許文献3】
特開2000−212642号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
有底筒状ケースは、ケース天面に圧電体又は音響整合層を接着し、接着面と振動板の両方の目的で用いられるため非常に加工精度が要求される。例えば、接着面としては、接着剤によってできるだけ接着層を均一に接着し、しかも接着強度も安定する必要がある。また、音響的な振動板としては、できるだけケース天面が形状、厚みなど均一に加工される必要がある。加工には量産性を考慮して、高速プレスが用いられることが多いが、上記加工精度をケース天面に要求する場合には、ケース天面の均一加工から非常に加工応力を全体に蓄積し易く、特に曲部付近に応力腐食割れを生じやすい。
【0008】
一方、樹脂ケースは耐湿性が低く耐久性に欠け、焼結ケースは衝撃に弱く加工精度が悪い。また、樹脂ケース、焼結ケースに関しては、機密性が低く安全面や長期信頼性について保証が難しいという欠点がある。切削ケースについては、精密加工を伴うことから加工性に優れた材料の真鍮などが用いられる。しかし、真鍮のような加工性に優れた材料は耐食性に劣る材料が多く、耐食性を高めるために加工後、メッキ処理などを表面に施す必要がある。そのため、工程数が多くなり加工賃が非常に高くなるという欠点があった。また、切削に耐食性の良好なステンレス鋼を用いた場合でも、天面の厚みは音響的にできるだけ薄くすることが要求され、そのため、加工によって歪むことが多く、これも応力腐食割れを生じやすかった。
【0009】
また、振動板とケースの筒部分が独立した流路を流れる流体に対して繋ぎ目があるケースにおいては、溶接によって有天筒状ケースとされるが、溶接部分はステンレス鋼であっても溶接部にクロム(Cr)が欠乏しやすく、そのため、腐食割れが生じやすい。以上から溶接部の長期信頼性において疑わしい。
【0010】
そこで、本発明の目的は、低コスト、強度、加工性、耐ガス性、耐食性、耐応力腐食割れ性に優れたケース材料を使用し、流路を流れる流体に対して繋ぎ目のない加工で作成したケースを用いて例えばプレス成型又は切削加工によって作製された有底筒状ケースを、低温熱処理下で、形状が安定し応力腐食割れを無くし、長期信頼性と優れた生産性でもって超音波振動子を製造することができる、超音波振動子用製造冶具、及び、その冶具を使用して超音波振動子を製造することができる超音波振動子の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、少なくとも有底筒状金属ケースと、
上記ケースの1つの面に接着剤により設けられた圧電体を備える超音波振動子、又は、圧電体が接着剤により設けられた上記ケースの1つの面の反対側の面に音響整合層が接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子製造用冶具において、
少なくとも、上記圧電体を保持する圧電体保持用凹部と、上記圧電体保持用凹部を有しかつ上記圧電体保持用凹部内に保持された上記圧電体と上記ケースの上記1つの面の内面とを上記接着剤を介して接着させた状態を保持可能なケース保持部とを有する下冶具と、上記下冶具に対向して配置されかつ上記下冶具との間で上記ケースを挟持可能な上冶具とを備えて、
上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤を介して上記圧電体を加圧した加圧状態、又は、上記接着剤を介して上記ケースの上記1つの面に上記圧電体を加圧しかつその反対側の面に上記接着剤を介して上記音響整合層を加圧した加圧状態を保持可能であり、この加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能、又は、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能と、上記低温熱処理によって応力を緩和する機能を発揮することを特徴とする超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0013】
本発明の別の態様によれば、少なくとも有底筒状金属ケースと、
上記ケースの1つの面に接着剤により設けられた圧電体を備える超音波振動子、又は、圧電体が接着剤により設けられた上記ケースの1つの面の反対側の面に音響整合層が接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子製造用冶具において、
少なくとも上記ケースを支える下冶具と、上記下冶具に対向して設けられた上冶具と、上記ケースの厚み方向に対して上記ケースの1つの面の両面側から上記上冶具と上記下冶具とで挟み込むように圧力を加えることが可能な加圧力を上記上冶具と上記下冶具とに作用させる加圧部材とを備えて、上記加圧部材により上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤を介して上記圧電体を加圧した加圧状態、又は、上記接着剤を介して上記ケースの上記1つの面に上記圧電体を加圧しかつその反対側の面に上記接着剤を介して上記音響整合層を加圧した加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能、又は、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能と、上記ケースの形状を修正する機能と、上記低温熱処理によって応力を緩和する機能とを有することを特徴とする超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、超音波振動子製造用冶具の下冶具と上記下冶具に対向して設けられた上冶具との間に、少なくとも有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置し、
次いで、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの1つの面に接着剤を介して圧電体を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和するか、又は、接着剤を介して上記ケースの1つの面に圧電体を加圧しかつその反対側の面に接着剤を介して音響整合層を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和することにより、
上記ケースの上記1つの面に上記接着剤により上記圧電体が設けられる超音波振動子、又は、上記圧電体が上記接着剤により上記ケースの上記1つの面に設けられかつその1つの面の反対側の面に上記音響整合層が上記接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子の製造方法を提供する。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、超音波振動子製造用冶具の下冶具と上記下冶具に対向して設けられた上冶具との間に、少なくとも有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置し、
次いで、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの厚み方向に対して上記ケースの1つの面の両面側から上記上冶具と上記下冶具とで挟み込むように加圧部材により圧力を加えて、上記ケースの1つの面に接着剤を介して圧電体を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和するか、又は、接着剤を介して上記ケースの1つの面に圧電体を加圧しかつその反対側の面に接着剤を介して音響整合層を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和することにより、
上記ケースの上記1つの面に上記接着剤により上記圧電体が設けられる超音波振動子、又は、上記圧電体が上記接着剤により上記ケースの上記1つの面に設けられかつその1つの面の反対側の面に上記音響整合層が上記接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子の製造方法を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1に本発明の実施形態の、超音波振動子の製造方法に使用される超音波振動子用製造冶具を用いて作製された超音波振動子の外観図、図2にその断面図、図3、図4に流路の断面図を示す。
【0018】
図1において、超音波振動子1は、ケース天面3とケースフランジ部としての支持部5とを有する有底筒状金属ケース2と、上記ケース天面3の内壁面に接着剤31を介して配置された圧電体6と、上記ケース天面3の外壁面に接着剤32を介して配置された音響整合層4(ただし、音響整合層4がある場合)とで大略構成されている。図2において、超音波振動子1は、さらに、上記支持部5に固定された端子板7と、上記端子板7に設けられた端子8a、8bと、上記端子8a、8bを絶縁する絶縁物9と、上記圧電体6と上記端子8aを電気的に接続するための導電性ゴム10とを備えている。圧電体6は、ケース2と端子板7で密閉された空間内に配置され、ケース2と端子板7とで囲まれた密閉空間は、空気が不活性ガスで置換された状態で密閉されている。
【0019】
なお、音響整合層4は、必要に応じて、ケース2の天面3に配置される。例えば、気体用として使用する場合には音響整合層4を備えるが、液体用として使用する場合には音響整合層4は不要となる。これは、以後の実施形態などでも同様である。
【0020】
上記有底筒状金属ケースは、筒体の一端に筒体開口を閉塞する底面が一体的に形成されたものであって、切削加工又は精密プレス加工により底面を形成する一体成型加工によって作製したのち、加工後に加工油を完全に除去し、その後、応力腐食割れを防ぐために低温熱処理を施すことにより製造されている。加工法として切削加工よりも精密プレス法を用いるときには、大量に同じ品質のケースを作成可能になり、低コスト化が実現できる。
【0021】
図3に、超音波振動子1を備えた超音波流量計100が配置された、流量測定対象の流体の流路の断面図を示す。
【0022】
超音波流量計100の概略構成を示すと、ガスなどの被測定流体が供給される供給管と連結した入口路100aから流入された被測定流体の流量を測定する流量測定部11と、流量測定部11と連通し、被測定流体を外部へ導く出口路100bと、この流量測定部11に設けられて超音波を送受信する一対の超音波振動子17、18(それぞれは超音波振動子1に対応する。)と、超音波振動子17、18間の伝搬時間を計測する計測回路(図示せず)と、計測回路からの信号に基づいて流量を算出する流量演算手段(図示せず)とを備えている。よって、一方の超音波振動子17から他方の超音波振動子18に向けて超音波を送信し、ガスなどの被測定流体を通過した超音波が上記他方の超音波振動子18で受信されることにより、計測回路で超音波振動子17、18間の伝搬時間を計測する。次いで、逆に、上記他方の超音波振動子17から上記一方の超音波振動子18に向けて超音波を送信し、ガスなどの被測定流体を通過した超音波が上記一方の超音波振動子18で受信されることにより、計測回路で超音波振動子17、18間の伝搬時間を計測する。このように所定回数だけ、上記一対の超音波振動子17、18間で超音波の伝搬時間を計測し、流量演算手段でその平均値を基に、ガスなどの被測定流体の流量を算出するようにしている。よって、各超音波振動子17,18は送受信を行えるようにしている。
【0023】
実例として、流量測定部11を構成する材料は、LPガスや天然ガスを流量計測する家庭用ガスメータを想定してアルミニウム合金ダイカストとしする。側壁部12、13の端面に例えばコルク材からなるシール材14を介して上板部15をネジ止めして、流路断面16が矩形の流量測定部11を構成する。また、超音波振動子17、18は、超音波を発信・受信する送受波面が相対するよう側壁部12、13に斜めに設けられている。具体的には、側壁部12、13に設けられた超音波振動子17、18の振動子取り付け穴19、20に例えばOリングからなるシール材21、22を介して固定する。これは1つの実例であり、本発明はこれに限られるものではない。
【0024】
本発明の第1実施形態にかかる、超音波振動子の製造方法に使用される超音波振動子製造用冶具は、少なくとも、上記圧電体6を保持する圧電体保持用凹部23cと、上記圧電体保持用凹部23cを有しかつ上記圧電体保持用凹部23c内に保持された上記圧電体6と上記有底状ケース2の上記1つの面(例えば天面3)の内面とを上記接着剤31を介して接着させた状態を保持可能なケース保持部23aとを有する下冶具23と、上記下冶具23に対向可能に配置されかつ上記下冶具23との間で上記ケース2を挟持可能な上冶具24Aとを備えている。この実施形態では、さらに、有底状金属ケース2の天面3の厚み方向に対して両面から挟み込むように圧力を加えることが可能な加圧部材の一例としてのバネ25をも備えている。このような構成において、バネ25により上冶具24Aと下冶具23との間でケース2を加圧した状態で超音波振動子製造用冶具と共にケース2に対して低温熱処理を施すことで、(音響整合層4が無い場合には)圧電体6とケース2とを接着剤31により加圧接着させる機能、又は、(音響整合層4が有る場合には)圧電体6とケース2とを接着剤31により加圧接着させるとともに及び音響整合層4とケース2とを接着剤32により加圧接着させる機能と、(音響整合層4の有無にかかわらず)上記低温熱処理によって応力を緩和する機能とを発揮させる。
【0025】
図5(a)は、上記第1実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具においてケース2を加圧していない状態を示し、図5(b)はケース2を加圧した状態を示す。
【0026】
上記冶具を、さらに詳しく説明すると、下冶具23は、主に、圧電体6、ケース2を支持する一方、上冶具24Aは、圧電体6とケース2とを接着剤31で接着するとともにケース2と音響整合層4とを接着剤32で接着するために下冶具23に向けて加圧するとともに、バネ25により、下冶具23に向かう上冶具24Aの加圧力を発生させるように構成している。上冶具24Aとバネ25とを支えるスライド用シャフト26は、上ベース27の中央部で吊支持され、上ベース27は、下ベース28に固定されている2本の支柱29で移動可能に支えられている。すなわち、金属製の板状部材である下ベース28上に、金属製のフランジ付円柱体である下冶具23が載置されており、下冶具23の両側の外側で、下冶具23を間に挟むように、金属製の2本の支柱29が立設されて、金属製の板状部材である上ベース27を移動可能に貫通している。上ベース27は、下ベース28と大略平行になるように配置されている。上ベース27の中央部には、金属製のスライド用シャフト26が下向きに貫通してCリング(図示せず)とナット26Aにより上ベース27が上向きには抜け止め保持されるとともに、スライド用シャフト26沿いに下向きに2本の支柱29で案内されつつ上ベース27が移動可能になっている。スライド用シャフト26の上ベース27から下向きに突き出た部分には、バネ25が外周面に嵌め込まれ、その下向きに突き出た部分の下端には、上蓋付きの円筒状の金属製の上冶具24Aが固定されている。
【0027】
上記下冶具23の円柱状ケース保持部23aは、その上面の中央に、上記圧電体6を保持する圧電体保持用凹部23cが形成されており、かつ、上記超音波振動子1のケース2内に入り込んで、上面がケース2の天面3の内面に当接又は対向可能としている。円柱状ケース保持部23aの下端周囲には、上記超音波振動子1のケース2のケースフランジ部としての支持部5の下面が当接載置されるような平坦な金属製のフランジ23bとを有する。よって、上記圧電体6が圧電体保持用凹部23c内に保持されると、圧電体6の上面と圧電体保持用凹部23cの開口周囲である円柱状ケース保持部23aの上面とが大略同一面となり、上記圧電体6の上面に接着剤31が塗布又は載置されると、接着剤31の上面が円柱状ケース保持部23aの上面よりも突出して、ケース2の天面3の内面と接触可能となるように、圧電体保持用凹部23c及び円柱状ケース保持部23aを寸法形成する。
【0028】
一方、上記上冶具24Aは、上記超音波振動子1のケース2のケース天面3を覆うことができる程度に大きな筒体であり、その筒体の上蓋の平坦な内面が、ケース天面3自体(音響整合層4が無い場合)又はケース天面3の音響整合層4(音響整合層4が有る場合)の上面に当接可能となっている。上冶具24Aの軸方向の長さは、ケース2の軸方向の長さより短くして、下冶具23に載置されたケース2に上冶具24Aを被せて下向きに押圧したとき、上冶具24Aの上蓋の平坦な内面がケース2の天面3又は音響整合層4に接触する前に上冶具24Aがケース2のフランジ5に接触しないようにして、(音響整合層4が無い場合には)上冶具24Aの上蓋の平坦な内面と下冶具23の円柱状ケース保持部23aの上面との間で、圧電体6がケース2に対して接着剤31を介して押圧されるような押圧力が作用し、又は、(音響整合層4が有る場合には)音響整合層4と圧電体6とがケース2に対してそれぞれ接着剤31,32を介して押圧されるような押圧力が作用するようにしている。
【0029】
具体的には、図5(a)の加圧していない状態では、上冶具24Aと、下ベース28上の下冶具23との間の空間で、下冶具23上に、内側に接着剤31を介して圧電体6を貼り付けた上記ケース2を載置し、上記ケース2の天面3に接着剤32を介して配置された音響整合層4を上冶具24Aの下方に位置させる。
【0030】
次いで、加圧時には、図5(b)に示すように、上ベース27を2本の支柱29に沿って下向きにスライドさせて、上ベース27を下方向に加圧して上ベース27と下ベース28のギャップを縮めることで、バネ25を同時に縮ませて、上ベース27側から下ベース28に向けて加圧力を作用させる。バネ25は縮むと同時に、作用反作用の原理から上冶具24Aに付随するバネ25のバネ定数と、縮小させられた長さと、をかけ算しただけの加圧力(バネ力)を発生する。上ベース27は、加圧時に上ベース27を下げたとき上ベース27より上方に突き出たスライド用シャフト26の上ベース27とナット26Aとの間に加圧セパレート30を嵌め込むことでバネ25を圧縮した状態で固定できる。加圧セパレート30は、大略円筒部材であって、スライド用シャフト26を出し入れするための切欠を径方向に形成しており、上記上ベース27とナット26Aとの間のスライド用シャフト26を切欠内に入れることにより、バネ25のバネ力に抗して上ベース27が上向きに移動するのを規制して上ベース27を加圧状態に固定する一方、上記上ベース27とナット26Aとの間のスライド用シャフト26を切欠内から出すことにより、バネ25のバネ力により上ベース27が上向きに移動自在とする。上記加圧力は、ほぼ使用するバネ25のバネ定数と、圧縮される長さとで決定できるため、使用するバネ25の種類と加圧用セパレート30の長さとを調節することで自由に加圧力を選択できる。下冶具23の圧電体保持部である矩形開口の圧電体保持用凹部23cは、図6(a)に示されるように、大略直方体の圧電体6をセットできるように圧電体6と大略同一形状でかつ圧電体6の外径寸法及び軸方向長さ寸法のそれぞれに対して公差を加えて若干大きめに形成されている。よって、下冶具23の圧電体保持用凹部23c内に圧電体6が若干の余裕を持って挿入することができ、かつ、押圧後に圧電体6が圧電体保持用凹部23cから簡単に抜け出ることができるようにしている。圧電体6とケース2とを接着剤31で接着する目的に使用する場合、又は、圧電体6とケース2とを接着剤32で接着する目的及びケース2と音響整合層4とを接着剤で接着する目的に使用する場合には、図6(b)に示すように、ケース2の内径と下冶具23の位置合わせ部分である外径との差が約20〜100μm以内で位置されるように構成する。その場合、上冶具24Aの寸法は、図6(c)に示すように、圧電体6とケース天面3とを接着する部分、すなわち、ケース天面3の端部を含んでケース天面3の80%以上を加圧できるように、構成されている。なお、圧電体6とケース2とを接着剤31で接着する目的のみに使用する場合には、ケース2の天面3に音響整合層4が無いため、その分だけ上冶具24Aのケース2の天面3に当接する部分を厚くする必要がある。
【0031】
なお、加圧により接着固定した後、後述する、適切な温度と時間で接着と応力緩和を行う低温熱処理を、上記超音波振動子用製造冶具により加圧状態でのケース2に施す。
【0032】
上記構成の超音波振動子用製造冶具によれば、2本の支柱29で案内させつつ上ベース27を下降させて、上冶具24Aを上記超音波振動子1の上部に被せて、上冶具24Aと下冶具23との間で押圧力を上記超音波振動子1の軸方向に作用させて、(音響整合層4が無い場合には)圧電体6とケース天面3の内壁面とを接着剤31で接着固定するか、又は、(音響整合層4が有る場合には)音響整合層4とケース天面3の外壁面とを接着剤32で接着固定するとともに圧電体6とケース天面3の内壁面とを接着剤31で接着固定することができる。
【0033】
すなわち、加圧した状態で超音波振動子製造用冶具と共にケース2に対して低温熱処理を施すことで、(音響整合層4が無い場合には)圧電体6とケース2とを接着剤31により加圧接着させる機能、又は、(音響整合層4が有る場合には)圧電体6とケース2とを接着剤31により加圧接着させるとともに及び音響整合層4とケース2とを接着剤32により加圧接着させる機能と、(音響整合層4の有無にかかわらず)上記低温熱処理によって応力を緩和する機能とを発揮させることができる。
【0034】
よって、上記超音波振動子用製造冶具を使用することにより、低コスト、強度、加工性、耐ガス性、耐食性、耐応力腐食割れ性に優れたケース材料、例えば、アルミニウム合金ダイカストでプレス成型又は切削加工によって形成されて流路を流れる流体に対して繋ぎ目のない加工で作成したケース2を用いて、低温熱処理下で、形状が安定し応力腐食割れをなくし、長期信頼性と優れた生産性でもって、超音波振動子17,18を製造することができる。また、バネ25の付勢力により、上冶具24Aと下冶具23との間でケース2を弾性的に加圧するため、応力を徐々に緩和しながらケース2を無理無く加圧して接着動作を行なうことができる。また、各接着面を大略均一化できることにより、各接着界面が均一なものとなり、高い接着精度を達成することができる。また、超音波振動子製造用冶具の機能として、接着と応力緩和及び形状修正を行うための超音波振動子製造用冶具を共用し、熱処理工程を同時にすることで生産性の向上、性能向上を実現することができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0036】
例えば、下冶具及び上冶具は使用する目的によって形状を変えることかできる。具体的には、上記第1実施形態にかかる超音波振動子用製造冶具では、圧電体6とケース2、又は、圧電体6とケース2、ケース2と音響整合層4を接着するために使用する場合を想定して、ケース天面3に加圧できるように下冶具23及び上冶具24Aでケース天面3の厚み方向に対して加圧できるような構成にしている。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、ケース2の形状を修正する場合には、修正する部分を下冶具23と上冶具24Bで加圧できる構成にする。例えば、ケース2のフランジ5を加圧できるようにする例として、本発明の第2実施形態にかかる、超音波振動子の製造方法に使用される超音波振動子製造用冶具について説明する。この超音波振動子製造用冶具が第1実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具と異なる点は、上冶具の形状であり、他の形状及び構造などは第1実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具と同じであるため、基本的に同一部分の説明は省略し、異なる点のみについて説明する。第2実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具の上冶具24Bは、図7及び図8に示すように、上記下冶具23に対向して設けられた筒体部24aと、筒体部24aの下端の外周に張り出してケース2のフランジ5に当接可能なフランジ24bとより構成されている。
【0037】
一方、少なくとも有底状ケース2を支える下冶具23は第1実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具の下冶具23と同一である。図7(a)は、上記第2実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具においてケース2を加圧していない状態を示し、図7(b)はケース2を加圧した状態を示す。
【0038】
このような構成においては、上冶具24Bのフランジ24bと下冶具23のフランジ23bとの間でケース2のフランジ5を加圧可能として、フランジ5の形状を修正可能としている。
【0039】
すなわち、上冶具24Bは、まず、上冶具24Aと同様に、図8(b)に示されるように、筒体部24aの上蓋の平坦な内面が、ケース2の接着面であるケース天面3を挟んで、下冶具23の加圧修正部分である円柱状ケース保持部23aの上面と、必要とされる公差で対向又は接触するように加工形成されて、ケース天面3に対して上冶具24Bと下冶具23とで加圧可能とする。
【0040】
圧電体6とケース2とを接着する目的に使用する場合(音響整合層4が無い場合)、又は、圧電体6とケース2とを接着するとともにケース2と音響整合層4とを接着する目的に使用する場合(音響整合層4が有る場合)には、図6(b)に示すように、ケース2の内径と下冶具23の位置合わせ部分である円柱状ケース保持部23aの外径が約20〜100μm以内で位置されるように構成する。その場合、上冶具24Bは、上冶具24Aと同様に図6(c)に示すように接着する部分、すなわち、ケース天面3の端部を含んで80%以上を加圧できるように構成されている。このように、加圧面を80%以上にすることで、ケース修正時に加える荷重が少なくてすむ(単位面積あたりの荷重が小さくてよい)とともに、熱分布を均一にして、全面を均一に修正可能にすることができる。
【0041】
さらに、上冶具24Bについては、接着に用いるケース天面3の加圧部分はそのままで、フランジ5を加圧する部分に、後述する下冶具23のフランジ23bにフランジ5を介して当接してフランジ5を加圧できるように段加工を施して、フランジ24bを形成する。よって、上冶具24Bの軸方向の長さは、ケース2の軸方向の長さより若干長くして、下冶具23に載置されたケース2に上冶具24Bを被せて下向きに押圧したとき、上冶具24Bの上蓋の平坦な内面がケース2の天面3又は音響整合層4に接触する前に上冶具24Bのフランジ24bがケース2のフランジ5に接触しないようにしている。なお、音響整合層4と接着剤32とがない場合には、上冶具24Aの軸方向の長さをその分だけ短くする。
【0042】
また、下冶具23は、図8(b)に示されるように修正したい部分、例えばケース2のフランジ5を修正する場合には、図8(b)に示すように下冶具23にケース2のフランジ5を加圧できるように、ケース2のフランジ5の下面全てを当接可能な程度の面積を少なくとも有する平坦なフランジ23bを有するように段加工を施しておく。
【0043】
なお、更に、ケース2の側面も修正したい場合には、図8(b)に示すように、修正部分の特に応力が発生しやすいケース天面3の曲部を含んで曲部から20%以上を加圧できるように、下冶具23の側面の外周面と上冶具24Bの側面の内周面との間にケース側面の内周面と外周面とを挟持できるように下冶具23と上冶具24Bを加工形成する。このようにすれば、ケース形状を修正する場合、特に曲部付近の形状を修正することで効率良く形状を修正可能である。
【0044】
よって、第2実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具は、(音響整合層4が無い場合には)上冶具24Bの上蓋の平坦な内面と下冶具23の円柱状ケース保持部23aの上面との間で、圧電体6がケース2に対して接着剤31を介して押圧されるような押圧力が作用し、又は、(音響整合層4が有る場合には)音響整合層4と圧電体6とがケース2に対してそれぞれ接着剤31,32を介して押圧されるような押圧力が作用すると同時的に、上冶具24Bのフランジ24bの下面と下冶具23のフランジ23bの上面との間で、ケース2のフランジ5の形状を修正するように押圧力が作用する。また、必要に応じて、さらに、上冶具24Bの側面の内周面と下冶具23の側面の外周面との間で、ケース側面の形状を修正するように押圧力が作用する。
【0045】
すなわち、上記加圧した状態で超音波振動子製造用冶具と共にケース2に対して低温熱処理を施すことで、圧電体6とケース2とを接着剤31により加圧接着させる機能、又は、圧電体6とケース2とを接着剤31により加圧接着させるとともに音響整合層4とケース2とを接着剤32により加圧接着させる機能と、ケース2のフランジ5(さらには側面)の形状を修正する機能と、低温熱処理によって応力を緩和する機能とを発揮させることができる。
【0046】
従って、上記第1実施形態での作用効果に加えて、バネ25の付勢力により、上冶具24Bと下冶具23との間でケース2を弾性的に加圧するため、応力を徐々に緩和しながらケース2を無理無く加圧して接着動作を行なうと同時に形状修正動作を行なうことができる。また、各接着面を大略均一化できることにより、各接着界面が均一なものとなり、高い接着精度を達成することができる。
【0047】
第1実施形態及び第2実施形態の超音波振動子製造用冶具において加圧状態とした後、熱処理を施すとき、図9に示すような恒温槽61に入れて、適切な温度と時間で低温熱処理を行うことが好ましい。恒温槽61は、底面近くに配置されたヒーター62と、ヒーター62の上に上記超音波振動子製造用冶具35を少なくとも複数個載置可能なステンレス製などの冶具載置板33と、上記超音波振動子製造用冶具を出し入れする恒温槽正面とは反対側の背面に配置されたファン34とを備えるように構成されている。
【0048】
このような構成においては、ヒーター62で暖められた温風は、ファン34で恒温槽内に循環される。ここでは、温風循環式の恒温槽61を用いたが、所定の熱処理を行うことが可能なものであれば、どのような方式のものを用いても問題はない。
【0049】
本発明の上記第1実施形態及び第2実施形態での超音波振動子の製造方法における低温熱処理について、低温熱処理の温度プロファイルは、接着剤31,32の加熱硬化温度プロファイルと同じにすることが好ましい。更に、低温熱処理工程と加熱硬化工程を同時に行うことで、接着と形状修正、応力緩和を同時に行うことができ、生産性を向上することができる。熱処理の温度プロファイルは図10に示すように、熱処理温度Tまで温度を上げる工程41と、熱処理温度Tで温度を一定温度で保持する工程42と、熱処理温度Tカラ温度を下げる工程43とより構成する。温度を上げる工程41は、温度を上げる速度を0℃/minよりも大きく、5℃/min以下することが望ましい。温度を上げる速度が5℃/minを越えて温度を早く上げすぎると、自己発熱性が高い接着剤を用いる場合には、接着面がポーラス状態になり易く、接着強度が低下するとともに、ケース全体の温度が一定に上がらないため、部分的に熱分布が生じ、歪みや反りが発生し、形状が原型と異なってしまうことがある。また、ひどい場合には、割れが生じることがある。。低温熱処理のための温度保持工程42は、熱処理温度Tを150〜300℃の範囲に保持する。熱処理温度Tが150℃未満ではケース天面の反り量を平坦にする効果が少なく、また、熱処理温度Tが300℃を越えるとケース天面の反り量を平坦化する効果も低下し、応力腐食割れ試験においても割れが生じる。また、熱処理温度Tが300℃以下ならば、超音波振動子製造用冶具に関しても特殊鋼などを使用する必要がなく、通常のステンレス(SUS304など)で対応可能である。また、生産性に関しても、できるだけ低い温度である300℃以下であれば、タクトタイムも短縮され熱処理するための恒温槽も通常品で可能なため有利である。以上から、熱処理温度は150〜300℃の範囲が望ましい。よって、超音波振動子製造用冶具の耐熱性としては、低温熱処理の温度が150〜300℃の範囲であることから、300℃を越えるものとする必要がある。なお、上記熱処理温度は、150〜300℃内のある温度例えば170℃で一定であってもよいし、150〜300℃内で変動してもよい。図10に示すように、接着剤の硬化反応に必要とされる温度範囲は150〜200℃の範囲であり、応力緩和に必要とされる温度は150〜300℃、形状修正に必要とされる温度は150〜300℃である。よって、超音波振動子製造用冶具の耐熱温度は150℃以上である。上記ししたように、形状修正及び応力緩和に必要とされる熱処理温度は150℃以上必要であり。150℃未満の温度では殆ど効果が見られないからである。冶具の耐熱温度としては、さらに好ましくは、300℃を越える温度が必要とされる。
【0050】
上記一定温度で保持する工程42において、上記150〜300℃の範囲で熱処理温度Tを保持する温度保持時間は、0分より大きく、60分以内でなければならない、その理由としては、熱処理を60分を越えても応力腐食割れを防ぐ効果は、熱処理時間60分以内と殆ど変わらないためであるとともに、場合によっては、熱処理時間が60分を越えると、応力腐食割れが生じ始めることもあるからである。
【0051】
上記図10の温度プロファイルで示す上記温度を下げる工程43では、その温度を下げる冷却速度を、0℃/minより大きく、必ず1.0℃/min以下で徐冷する必要がある。これは、急冷もしくは1.0℃/minを超える速度で冷却すると、ケース2に応力が蓄えられ、反り、変形が生じたり、内部応力が蓄えられることで、応力腐食割れ試験で割れが生じる。従って、冷却速度は、0℃/minより大きく、必ず1.0℃/min以下で徐冷する必要がある。
【0052】
本発明の上記第1実施形態及び第2実施形態にかかる熱処理工程において、熱処理雰囲気は不活性ガス中で行う。ケース2の材料として、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタンなどは不動態膜が表面に形成されているため、不活性ガス雰囲気中で熱処理しなくても問題ないが、銅や真鍮のように酸化しやすい金属の場合には不活性ガス中で熱処理を行うことが望ましい。
【0053】
本発明の上記第1実施形態及び第2実施形態にかかるケース天面3を平坦化可能な有底筒状金属ケース2の材質としては、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、銅、真鍮、又は、チタンが望ましい。特にこれらの材料を切削加工、もしくはプレス一体成型加工(例えば精密プレスによる深絞り法を用いて一体成型加工)を施した後に、加工油を完全に除去し、低温熱処理すれば、応力腐食割れを防ぐことが可能である。
【0054】
本発明の上記第1実施形態及び第2実施形態にかかる有底筒状金属ケース2のケース天面3の厚みは、0mmより大きく、1mm以下が望ましい。ケース天面3の厚みが1mmを超えると、低温熱処理では応力腐食割れを防止する効果が低下するとともに、超音波振動子の超音波の感度が低下してしまう。従って、ケース天面3の厚みは1mm以下が望ましい。
【0055】
本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る、超音波振動子の製造方法に使用される超音波振動子製造用冶具としては、上記下冶具23が圧電体6に接着剤31を塗布するときに圧電体6を保持するための接着剤印刷塗布用圧電体保持冶具を兼ねることもできるとともに、圧電体6とケース2の位置決め部又はケース2と音響整合層4の位置決め部を有するようにしてもよい。すなわち、図11に示すように、圧電体6を下冶具23の圧電体保持用凹部23c内にセットした後、圧電体保持用凹部23c内にセットされた圧電体6の露出した上面に接着剤31を塗布し、ケース2に対して音響整合層4が塗布された接着剤32で仮止めされた状態のケース2を下冶具23に被せるようにセットする。下冶具23の円柱状ケース保持部23aはケース2の内径に対して特定のマイナス寸法公差(例えば、20〜100μmの公差)が入れられ、ケース2の内径が下冶具23の円柱状ケース保持部23aに対して寸法公差分だけの隙間を介して位置するようにセットされる。すなわち、ケース2の天面3に対する圧電体6の接着位置は下冶具23の圧電体保持用凹部23cと円柱状ケース保持部23aの加工寸法公差と圧電体6の外径寸法公差、ケース2の内径寸法公差をそれぞれ足し合わせた公差が最大公差となり、要求される接着位置精度によって、各々の寸法公差の精度を変えることで対応可能である。上冶具24Bには、音響整合層4とケース2の位置決め部45を具備する。音響整合層4の位置決め部45は、圧電体6を保持する圧電体保持用凹部23cを設けた下冶具23とは反対の上冶具24Bの内側に設けられた円形凹部を囲む環状凸部45より構成し、ケース天面3の外形を基準として音響整合層4の外形がケース天面3の外形と互いに中心が大略一致するように配置されるようにする。音響整合層4とケースの位置精度は、位置決め部45、ケース外形と音響整合層外形の加工精度で決まるため、必要な位置精度に応じてそれぞれの寸法公差を決定すればよい。
【0056】
更に、第1実施形態及び第2実施形態に係る、超音波振動子の製造方法に使用される超音波振動子製造用冶具において、上冶具24A,24B例えば上冶具24B又は下冶具23は、接着、形状修正、応力緩和のための熱処理時に熱が均一に伝わり、場所による熱の不均一が起こらないように、超音波振動子製造用冶具でケース表面を完全に覆わない構造を有することが好ましい。すなわち、下冶具23又は上冶具24A,24Bは、少なくとも圧電体6、ケース2、音響整合層4を完全に覆わない構造を有するようにするのが好ましい。接着剤31,32を加熱硬化させる場合に、接着剤31,32との接着面ができるだけ均一な温度になるようにするため、接着面を完全に覆わないように構成するためである。特に、温風循環式方式や輻射熱方式などの恒温槽61を用いる場合には、超音波振動子製造用冶具で接着剤31,32を完全に覆ってしまうと、熱が接着剤31,32に均一に伝わりにくく接着不良を起こしやすい。また、応力緩和及び形状修正の観点からは、超音波振動子製造用冶具ごとケース2を冷やすときには、超音波振動子製造用冶具をゆっくり冷やすことにより、ケース全体の熱容量が超音波振動子製造用冶具の熱容量に近くなるため超音波振動子製造用冶具及びケース全体が均一にゆっくりと冷やされる。これに対して、ケース2の一部分が急激に冷やされると、その部分の熱膨張係数が他の部分と異なってしまうために応力が発生してしまい、ケース2にひび割れやクラックが発生する。以上の観点から、接着と応力緩和、形状修正の機能を満たす超音波振動子製造用冶具としては、図12に示すようにケース全体を完全に覆わない構成を有する。具体的には、図12に示されるように、ケース側面に対応する上冶具24Bの側面に、厚み方向に貫通しかつ軸方向に延びた所定幅の貫通開口24dを所定間隔ごとに複数個設けるようにしてもよい。貫通開口24dの位置は、これに限られるものではなく、ケース側面の剛性と、熱伝導の均一性の観点から適宜決定すればよい。貫通開口24dの軸方向の長さは、少なくとも、ケース2内の接着剤31に対向するケース側面部分が露出するとともに接着剤32が露出する程度の長さとすることが好ましい。貫通開口24dの総面積は、上冶具24Bの側面の剛性が損なわれない程度とする。貫通開口24dの形状は矩形にすれば、加工がしやすくなる。
【0057】
また、上記実施形態では、加圧部材の一例としてのバネ25を上冶具24A,24Bに備えるようにしたが、下冶具23に備えるようにしてもよい。このように、加圧部材としてバネを用いることで、必要な加圧力をバネを変えることで自由に選択可能となる。
【0058】
また、上記実施形態にかかるに係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具としては、耐荷重が500kgf/cm2以上である。形状を修正するために必要な荷重は最低500kgf/cm2以上必要であるため、冶具の耐荷重も500kgf/cm2以上必要とされる。
【0059】
また、本発明の上記実施形態に係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具としては、冶具に用いられる母材の熱膨張係数がケース2の母材の熱膨張係数の以下であるようにすることが好ましい。冶具自体の熱膨張係数がケース母材の熱膨張係数より大きい場合には、冶具が熱により伸縮することで、ケース2の接着や形状修正、又は応力緩和をする場合に下冶具23と上時具24A,24Bが設計どおりにケース2に対して均等な力で加圧できない場合や、熱が均一に伝わらない場合が発生し、必要とされる効果が得られない場合がある。従って、冶具に用いられる母材の熱膨張係数はケース母材の熱膨張係数以下である必要がある。
【0060】
また、本発明の上記実施形態に係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具としては、金属で構成されていることが好ましい。一般に、金属は、熱伝導率、加工性、剛性に優れていることから、超音波振動子製造用冶具として複雑な形状を作製する上でも非常に取り扱いやすい。また、超音波振動子製造用冶具の加工修正などの目的に応じて、熱膨張係数や熱伝導率などの物性値を適宜選択可能である。以上から冶具としては金属を用いることが好ましい。
【0061】
さらに、本発明の上記実施形態に係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具としては、加圧部分の硬度はケース母材の硬度以上であることが必要である。超音波振動子製造用冶具の加圧面あるいは加圧部分にあたる所は、焼き入れを行って硬度を高めたり、ケース材料よりも硬い材料を用いてケース材料以上の硬度を有することが必要である。これに対して、ケース母材の硬度に比べ超音波振動子製造用冶具の加圧部分の硬度が低い場合には、超音波振動子製造用冶具自体がケースの形状に馴染んでしまい、ケース形状を修正することが不可能である。従って、超音波振動子製造用冶具の加圧部の硬度はケース母材の硬度以上必要とされる。
【0062】
また、本発明の上記実施形態に係る超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具としては、超音波振動子製造用冶具を構成する下冶具23と、上冶具24A又は24Bと、バネ25とを一組として、少なくとも2組以上を組み合わせた構造を有することが生産効率を向上させる観点から好ましい。超音波振動子製造用冶具の構成としては、図13(a)、図13(b)に示されるように、下冶具23及び上冶具24A,24Bより構成する超音波振動子製造用冶具を、例えば3行×3列のマトリックス状に9個、又は、図14(a)、図14(b)に示すように例えば3列の横並びに3個配置する。下冶具23及び上冶具24A,24Bを多数個配置することで一度に同じ条件で熱処理及び加圧が可能となる。加圧の具体的な方法としては、各スライド用シャフト26の上ベース27とナット26Aとの間に加圧セパレート30を嵌め込むことでバネ25を圧縮した状態で固定できる他、各支柱29の上端の係止リング29Aと上ベース27との間に加圧セパレート30をそれぞれ差し込むことにより、各超音波振動子製造用冶具でのケース2に対する加圧状態を維持するようにしてもよい(図22参照)。また、超音波振動子製造用冶具においてもコンパクトに配置することができ、熱処理に必要な恒温槽などの設備もその大きさに応じて小さくすることが可能になるため設備費用も削減可能である。以上の観点からも多数組み合わせた構造を用いることで生産性の向上を図ることが可能である。
【0063】
また、本発明の上記第1及び第2実施形態の変形例に係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具として、上冶具と支柱26とが固定されているのではなく、支柱26に対して上冶具24Eが自在に揺動可能として、下冶具23に対する傾斜角度を自在に調整可能としてもよい。
【0064】
すなわち、まず、上記第1実施形態の変形例として図15に示すように、上冶具24Eを、円柱体状のケース押圧部24fと、ケース押圧部24fを係合突起24hで吊支持しかつ支柱26に固定された筒状固定部24eとより構成する。ケース押圧部24fの上面の中央部の半球状凹部24gと支柱26の下端の球面凹部26aとの間に、揺動支点として機能する球部材の一例としての鋼球99を配置して、支柱26に対してケース押圧部24fが自在に傾斜可能としている。よって、支柱26より上冶具24Eを介して下冶具23に向けて加圧するとき、支柱26に対して上冶具24Eのケース押圧部24fが鋼球99周りに揺動して自在に傾斜することにより、ケース天面3とケース押圧部24fの下面とが大略平行になり、この平行状態で押圧動作を行なわせることができる。従って、より精度良く、音響整合層4とケース天面3とを接着固定させることができる。
【0065】
次に、上記第2実施形態の変形例としての図16では、上冶具24Eの固定部24eに、ケース2の側面及びフランジ5を下冶具23の円柱状ケース保持部23a及びフランジ23bとの間で加圧する側面加圧部24jを備えるものである。よって、支柱26より上冶具24Eを介して下冶具23に向けて加圧するとき、支柱26に対して上冶具24Eのケース押圧部24fが鋼球99周りに揺動して自在に傾斜することにより、ケース天面3とケース押圧部24fの下面とが大略平行になり、ケース側面と側面加圧部24jの内面とが大略平行になり、フランジ5の上面と側面加圧部24jの下面とが大略平行になり、これらの平行状態で押圧動作を行なわせることができる。従って、より精度良く、音響整合層4とケース天面3とを接着固定させるとともに、ケース2の側面及びフランジ5の形状修正を行なうことができる。
【0066】
また、上記第2実施形態の別の変形例としての図17及び図18では、上冶具24Eの固定部24eの側面加圧部24jに、貫通開口24dと同様な複数の貫通開口24dを備えるものである。図18は、恒温槽61内に図17の超音波振動子製造用冶具が配置されたとき熱風が複数の貫通開口24dを通過する状態及び熱風により超音波振動子製造用冶具及びケース2が加熱される状態を矢印で説明したものである。よって、複数の貫通開口24dを熱風が通過することにより、接着剤31,32との接着面ができるだけ均一な温度になり、接着、形状修正、応力緩和のための熱処理時に熱が均一に伝わり、場所による熱の不均一を防止することができる。すなわち、上記複数の貫通開口24dを熱風の向きに沿って配置して、熱風が上記複数の貫通開口24dから超音波振動子製造用冶具内に入りやすくすることにより、超音波振動子製造用冶具、ケース2、接着剤31,32、圧電体6、(音響整合層4がある場合には)音響整合層4が均一に加熱されやすくなり、均一に加熱して超音波振動子を製造することができる。
【0067】
また、上記第2実施形態の上記別の変形例の超音波振動子製造用冶具において、図5(a),(b)又は図7(a),(b)と同様なスライド用シャフト26、支柱29、上ベース27、下ベース28、ナット26A、加圧セパレート30などを使用した、ケース加圧前の状態と加圧状態を図19及び図20に示す。
【0068】
また、上記第2実施形態の上記別の変形例の超音波振動子製造用冶具において、下冶具23及び上冶具24Eより構成する超音波振動子製造用冶具を、例えば3行×3列のマトリックス状に9個配置した、ケース加圧前の状態と加圧状態を図21及び図22に示す。上冶具24E以外の基本的な構成は、図13(a)と同様である。図22の加圧状態では、各支柱29の上端の係止リング29Aと上ベース27との間に加圧セパレート30をそれぞれはめ込んでバネ25を圧縮した状態で固定することにより、各超音波振動子製造用冶具でのケース2に対する加圧を一斉に行ないかつそれらの加圧状態を維持するようにしている。
【0069】
また、上記第2実施形態の上記別の変形例の超音波振動子製造用冶具において、下冶具23及び上冶具24Eより構成する超音波振動子製造用冶具を、図23及び図24に示すように、例えば3列の横並びに3個配置する。上冶具24E以外の基本的な構成は、図14(a),(b)と同様である。図24の加圧状態では、各スライド用シャフト26の上ベース27とナット26Aとの間に加圧セパレート30を嵌め込んでバネ25を圧縮した状態で固定することにより、各超音波振動子製造用冶具でのケース2に対する加圧を一斉に行ないかつそれらの加圧状態を維持するようにしている。
【0070】
また、本発明の第3実施形態に係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具として、図25〜図27に示すように、各超音波振動子製造用冶具を1個ずつ加圧処理することができるものである。すなわち、第3実施形態に係る超音波振動子製造用冶具は、上冶具24Aをスライド用シャフト26によりその内部に吊支持しかつ多数の円形の貫通開口50dを有する円筒状外筒部材50と、下冶具23を載置しかつ外筒部材50を載置する支持台51と、外筒部材50の中心軸に対して支持台51に一対対向して備えられかつ先端がそれぞれ対向する外筒部材50の係合凹部50c内に係合可能な係合フック52とを備えて構成している。外筒部材50の内径は、下冶具23の外径より若干大きめに形成して、下冶具23が外筒部材50により嵌合されるようにしている。
【0071】
図26は、上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具において係合フック52,52で外筒部材50を支持台51に係合保持する前の状態を示す。図27は、上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具において係合フック52,52を支持台51に対して回動させて、それらの先端を外筒部材50の係合凹部50c内に係合させることにより、外筒部材50を支持台51に係合保持した状態を示す。上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具は、図27の係合保持状態で前述したような恒温槽61内に入れることにより、図28及び図29に示すように、外筒部材50の複数の貫通開口50dを熱風が矢印方向に通過させることができる。この結果、個々のケース2を収納した超音波振動子製造用冶具が独立して恒温槽61内に配置することにより、個々の超音波振動子製造用冶具での熱容量を均一化させることができて、各ケース2での接着剤31,32との接着面ができるだけ均一な温度になり、接着、形状修正、応力緩和のための熱処理時に熱が均一に伝わり、恒温槽61内での場所の違いによる熱処理時の不均一な加熱を防止することができる。さらに、複数の穴をあけることで、加圧(接着)部分の状態を確認することが可能となる。
【0072】
また、本発明の第4実施形態に係る、超音波振動子の製造方法における超音波振動子製造用冶具として、図30に示すように、バネによる加圧ではなく、上冶具24Cと下冶具23Cとをねじにより結合して、ケース2を加圧するようにしてもよい。この実施形態によれば、先の実施形態のように係合フックではなく、上冶具24Cと下冶具23Cとを相対的に回転させることによるねじ結合で加圧動作、及び、逆回転で加圧解除動作を行なうことができ、上冶具24Cと下冶具23Cとの結合及び結合解除の自動化が行ないやすいといった効果がある。また、バネを用いないため、冶具の部品点数を削減でき、コストダウンに有効である。さらに、バネを用いないため、全体的に冶具のコンパクト化が可能であり、冶具の熱容量も小さくなるため、昇温、降温時間の短縮と、恒温槽の大きさも小さくするといった工程コスト削減につながる。
【0073】
【実施例】
以下に、具体的な実施例により、本発明の効果の説明を行う。
【0074】
(実施例1)
下冶具と下冶具に対向して設けられた上冶具から構成され、接着面を加圧した状態で低温熱処理を施すことで、圧電体とケースの加圧接着とケースの応力緩和の効果を確認するために、図5(a)に示す冶具構造を用いて検討を行った。圧電体を下冶具に載せた後、スクリーン印刷機にセットして接着剤を圧電体の上面に約20μm塗布した。接着剤が塗布された圧電体を保持する下冶具を印刷機から取り出し、ケースを下冶具に載せ、下ベース上に載置した。その後、冶具の上ベースを少しずつ下ろして、接着面であるケース天面を加圧し、加圧セパレートで固定した。今回用いたケースは、厚み0.2mmのSUS304を用いて作製された直径11.8mm、高さ5.5mm、フランジ付きの有天筒状ケースである。加圧した状態で恒温槽に入れて熱処理を行った。熱処理の温度プロファイルは温度を上げる速度を3℃/minで上げた後、特定の温度で30分保持した。その後、0.5℃/minで常温まで冷却し、恒温槽から取り出した。保持温度を100〜350℃まで10℃ずつ変化させて検討を行った。接着力に関しては接着強度を剥離試験機を用いて接着強度を測定し、300kgf/cm2以上を合格とした。応力緩和については圧電体に接着剤を塗布しないで上記の加圧と熱処理を同じように施し、応力腐食割試験を行った。応力腐食割れ試験については、42%の塩化マグネシウム143℃で48時間行った後、取り出して顕微鏡で観察して割れのないものを合格とした。今回使用したケースについては、熱処理を施していないものは応力腐食割れ試験で割れてしまうことを確認している。以上検討した結果を、図31に示す。接着強度に関しては、今回、エポキシ系の接着剤を用いて150〜200℃の範囲で300kgf/cm2以上が得られた。150℃未満では接着剤の化学反応が不十分で200℃以上になるとポーラス状になり接着剤が炭化し始めるために接着強度の低下が見られた。一方、応力緩和については、150〜300℃の範囲で応力腐食割れが抑制され、効果があることがわかった。また、図31の結果から、接着強度が300kgf/cm2以上得られる接着剤の加圧硬化温度範囲は150〜200℃、応力緩和により応力腐食割れが抑制される温度範囲は150〜300℃であることから、両方の効果を同じ工程で同時に得るための温度プロファイルは150〜200℃である。
【0075】
(実施例2)
下冶具と下冶具に対向して設けられた上冶具から構成され、接着面を加圧した状態で低温熱処理を施すことで、圧電体とケースの加圧接着とケースの応力緩和、形状修正の効果を確認するために、図7(a)に示す冶具構造を用いて検討を行った。圧電体を下冶具に載せた後、スクリーン印刷機にセットして接着剤を圧電体の上面に約20μm塗布した。接着剤が塗布された圧電体を保持する下冶具を印刷機から取り出し、ケースを下冶具に載せ、下ベース上に載置した。その後、冶具の上ベースを少しずつ下ろして、接着面であるケース天面を加圧し、加圧セパレートで固定した。今回用いたケースは厚み0.2mmのSUS304を用いて作製された直径11.8mm、高さ5.5mm、フランジ付きの有天筒状ケースである。加圧した状態で恒温槽に入れて熱処理を行った。熱処理の温度プロファイルは温度を上げる速度を3℃/minで上げた後、特定の温度で30分保持した。その後、0.5℃/minで常温まで冷却し、恒温槽から取り出した。保持温度を100〜350℃まで10℃ずつ変化させて検討を行った。接着力に関しては接着強度を剥離試験機を用いて接着強度を測定し、300kgf/cm2以上を合格とした。応力緩和については圧電体に接着剤を塗布しないで上記の加圧と熱処理を同じように施し、応力腐食割試験を行った。応力腐食割れ試験については42%の塩化マグネシウム143℃で48時間行った後、取り出して顕微鏡で観察して割れのないものを合格とした。今回使用したケースについては熱処理を施していないものは応力腐食割れ試験で割れてしまうことを確認している。また、形状修正については、ケース単体で冶具を用いてケース天面とフランジ面を加圧して上記温度プロファイルで熱処理を行った。このとき、加圧力は500kgf/cm2一定とした。ケース天面については5μm以内、フランジ面については、フランジ面がケース側面に対しては85〜95度の範囲内に修正されていれば合格とした。以上検討した結果を図32に示す。接着強度に関しては、今回、エポキシ系の接着剤を用いて150〜200℃の範囲で300kgf/cm2以上が得られた。150℃未満では接着剤の化学反応が不十分で、200℃以上になるとポーラス状になり接着剤が炭化し始めるために接着強度の低下が見られた。一方、応力緩和については、150〜300℃の範囲で応力腐食割れが抑制され、効果があることがわかった。また、形状修正に関しては150〜250℃の範囲で効果が見られた。図32の結果から、接着強度が300kgf/cm2以上得られる接着剤の加圧硬化温度範囲は150〜200℃、応力緩和により応力腐食割れが抑制される温度範囲は150〜300℃、形状修正効果は150〜250℃であることから、応力緩和と形状修正の効果を得るためには150〜250℃、すべての効果を同じ工程で同時に得るための温度プロファイルは150〜200℃である。
【0076】
(実施例3)
下冶具と下冶具に対向して設けられた上冶具から構成され、接着面を加圧した状態で低温熱処理を施すことで、圧電体とケースの加圧接着とケースの応力緩和、形状修正の効果を確認するために、図7(a)に示す冶具構造を用いて検討を行った。圧電体を下冶具に載せた後、スクリーン印刷機にセットして接着剤を圧電体の上面に約20μm塗布した。接着剤が塗布された圧電体を保持する下冶具を印刷機から取り出し、ケースを下冶具に載せ、下ベース上に載置した。その後、冶具の上ベースを少しずつ下ろして、接着面であるケース天面を加圧し、加圧セパレートで固定した。今回用いたケースは、厚み0.2mmのSUS304を用いて作製された直径11.8mm、高さ5.5mm、フランジ付きの有天筒状ケースである。加圧した状態で恒温槽に入れて熱処理を行った。熱処理の温度プロファイルは温度を上げる速度を3℃/minで上げた後、150℃で30分保持した。その後、0.1〜2.0℃/minで冷却速度を変化させて常温まで冷却し、恒温槽から取り出した。接着力に関しては接着強度を剥離試験機を用いて接着強度を測定し、300kgf/cm2以上を合格とした。応力緩和については、圧電体に接着剤を塗布しないで上記の加圧と熱処理を同じように施し、応力腐食割試験を行った。応力腐食割れ試験については42%の塩化マグネシウム143℃で48時間行った後、取り出して顕微鏡で観察して割れのないものを合格とした。今回使用したケースについては、熱処理を施していないものは応力腐食割れ試験で割れてしまうことを確認している。また、形状修正については、ケース単体で冶具を用いてケース天面とフランジ面を加圧して上記温度プロファイルで熱処理を行った。このとき、加圧力は500kgf/cm2一定とした。ケース天面については5μm以内、フランジ面についてはケース側面に対してフランジ面が85〜95度の範囲内に修正されていれば合格とした。以上の検討結果を、図33に示す。図33の結果から、接着強度が300kgf/cm2以上得られる接着剤の冷却速度は1.1℃/min以下、応力緩和により応力腐食割れが抑制される冷却速度は1.0℃/min以下、形状修正効果は1.2℃/min以下である。従って、応力緩和と形状修正の効果を得るためには冷却速度を1.0℃/min以下、すべての効果を同じ工程で同時に得るための冷却速度は1.0℃/min以下である。
【0077】
(実施例4)
下冶具と下冶具に対向して設けられた上冶具から構成され、接着面を加圧した状態で低温熱処理を施すことで、ケースの応力緩和、形状修正の効果を確認するために、図7(a)に示す冶具構造を用いて検討を行った。今回用いたケースは、厚み0.2mmのSUS304を用いて作製された直径11.8mm、高さ5.5mm、フランジ付きの有天筒状ケースである。加圧した状態で恒温槽に入れて熱処理を行った。熱処理の温度プロファイルは温度を上げる速度を3℃/minで上げた後、150℃で30分保持した。その後、0.5℃/minの冷却速度で常温まで冷却し、恒温槽から取り出した。応力緩和については上記の加圧と熱処理を施し、応力腐食割試験を行った。応力腐食割れ試験については42%の塩化マグネシウム143℃で48時間行った後、取り出して顕微鏡で観察して割れのないものを合格とした。今回使用したケースについては、熱処理を施していないものは応力腐食割れ試験で割れてしまうことを確認している。また、形状修正については、ケース単体で冶具を用いてケース天面とフランジ面を加圧して上記温度プロファイルで熱処理を行った。ケース天面については5μm以内、フランジ面についてはケース側面に対してフランジ面が85〜95度の範囲内に修正されていれば合格とした。このとき、加圧力を300〜800kgf/cm2まで変化させて形状修正に必要とされる加圧力を調べた。以上の検討結果を、図34に示す。図34の結果から、応力腐食割れについては300〜800kgf/cm2の範囲で加圧力に依存性はなく、応力緩和されている。また、形状修正においては、500kgf/cm2以上の加圧力を加えることで、ケース天面及びフランジ面の形状修正を行えることがわかった。
【0078】
以上、詳細に説明したように、上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0079】
本発明の第1態様によれば、少なくとも有底筒状金属ケースと、
上記ケースの1つの面に接着剤により設けられた圧電体を備える超音波振動子、又は、圧電体が接着剤により設けられた上記ケースの1つの面の反対側の面に音響整合層が接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子製造用冶具において、
少なくとも、上記圧電体を保持する圧電体保持用凹部と、上記圧電体保持用凹部を有しかつ上記圧電体保持用凹部内に保持された上記圧電体と上記ケースの上記1つの面の内面とを上記接着剤を介して接着させた状態を保持可能なケース保持部とを有する下冶具と、上記下冶具に対向して配置されかつ上記下冶具との間で上記ケースを挟持可能な上冶具とを備えて、
上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤を介して上記圧電体を加圧した加圧状態、又は、上記接着剤を介して上記ケースの上記1つの面に上記圧電体を加圧しかつその反対側の面に上記接着剤を介して上記音響整合層を加圧した加圧状態を保持可能であり、この加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能、又は、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能と、上記低温熱処理によって応力を緩和する機能を発揮することを特徴とする超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0080】
本発明の第2態様によれば、少なくとも有底筒状金属ケースと、
上記ケースの1つの面に接着剤により設けられた圧電体を備える超音波振動子、又は、圧電体が接着剤により設けられた上記ケースの1つの面の反対側の面に音響整合層が接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子製造用冶具において、
少なくとも上記ケースを支える下冶具と、上記下冶具に対向して設けられた上冶具と、上記ケースの厚み方向に対して上記ケースの1つの面の両面側から上記上冶具と上記下冶具とで挟み込むように圧力を加えることが可能な加圧力を上記上冶具と上記下冶具とに作用させる加圧部材とを備えて、上記加圧部材により上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤を介して上記圧電体を加圧した加圧状態、又は、上記接着剤を介して上記ケースの上記1つの面に上記圧電体を加圧しかつその反対側の面に上記接着剤を介して上記音響整合層を加圧した加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能、又は、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能と、上記ケースの形状を修正する機能と、上記低温熱処理によって応力を緩和する機能とを有することを特徴とする超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0081】
本発明の第3態様によれば、上記低温熱処理の温度プロファイルは、上記接着剤の加熱硬化温度プロファイルと同じである第1又は2の態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0082】
本発明の第4態様によれば、上記下冶具は、少なくとも上記圧電体を上記ケースに対して位置決め保持する位置決め部を有する第1〜3のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0083】
本発明の第5態様によれば、上記下冶具は、少なくとも上記圧電体を上記ケースに対して位置決め保持する位置決め部を有して、少なくとも上記圧電体に上記接着剤を塗布するための接着剤塗布用圧電体保持冶具として機能する第1〜4のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0084】
本発明の第6態様によれば、上記上冶具は、少なくとも上記音響整合層を上記ケースに対して位置決め保持する位置決め部を有する第1〜5のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0085】
本発明の第7態様によれば、上記上冶具は、少なくとも厚み方向に貫通して熱処理時の熱風が通過可能な複数の貫通開口を有する第1又は2の態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0086】
本発明の第8態様によれば、上記下冶具又は上記上冶具は、上記下冶具と上記上冶具とを上記ケースを挟んで加圧状態とする加圧部材を具備する第1〜7のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0087】
本発明の第9態様によれば、上記加圧部材はバネである第8の態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0088】
本発明の第10態様によれば、上記上冶具の天面の内面と、上記下冶具の上面の外面とは、上記ケースの天面において、上記ケースの曲部を含んで上記曲部から2割以上の面積において加圧荷重が加わるように寸法構成されている第1〜9のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0089】
本発明の第11態様によれば、上記熱処理に用いられる超音波振動子製造用冶具は、耐荷重が500kgf/cm2以上である第1〜10のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0090】
本発明の第12態様によれば、上記熱処理に用いられる冶具は、耐熱温度が300℃を超える温度である第1〜11のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0091】
本発明の第13態様によれば、上記熱処理に用いられる超音波振動子製造用冶具は、熱膨張係数が上記ケースの材料の熱膨張係数以下である第1〜11のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0092】
本発明の第14態様によれば、上記上冶具及び上記下冶具は金属で構成されている第1〜11のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0093】
本発明の第15態様によれば、上記加圧部分の硬度は上記ケースの材料の硬度以上である第1〜11のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0094】
本発明の第16態様によれば、上記下冶具と上記上冶具とを少なくとも複数組備える第1〜15のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子製造用冶具を提供する。
【0095】
本発明の第17態様によれば、超音波振動子製造用冶具の下冶具と上記下冶具に対向して設けられた上冶具との間に、少なくとも有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置し、
次いで、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの1つの面に接着剤を介して圧電体を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和するか、又は、接着剤を介して上記ケースの1つの面に圧電体を加圧しかつその反対側の面に接着剤を介して音響整合層を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和することにより、
上記ケースの上記1つの面に上記接着剤により上記圧電体が設けられる超音波振動子、又は、上記圧電体が上記接着剤により上記ケースの上記1つの面に設けられかつその1つの面の反対側の面に上記音響整合層が上記接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子の製造方法を提供する。
【0096】
本発明の第18態様によれば、超音波振動子製造用冶具の下冶具と上記下冶具に対向して設けられた上冶具との間に、少なくとも有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置し、
次いで、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの厚み方向に対して上記ケースの1つの面の両面側から上記上冶具と上記下冶具とで挟み込むように加圧部材により圧力を加えて、上記ケースの1つの面に接着剤を介して圧電体を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和するか、又は、接着剤を介して上記ケースの1つの面に圧電体を加圧しかつその反対側の面に接着剤を介して音響整合層を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和することにより、
上記ケースの上記1つの面に上記接着剤により上記圧電体が設けられる超音波振動子、又は、上記圧電体が上記接着剤により上記ケースの上記1つの面に設けられかつその1つの面の反対側の面に上記音響整合層が上記接着剤により設けられる超音波振動子を製造する超音波振動子の製造方法を提供する。
【0097】
本発明の第19態様によれば、上記低温熱処理の温度プロファイルは、上記接着剤の加熱硬化温度プロファイルと同じである第17又は18の態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0098】
本発明の第20態様によれば、上記下冶具と上冶具との間に、少なくとも上記有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置するとき、
上記下冶具は、少なくとも上記圧電体を位置決め保持する第17〜19のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0099】
本発明の第21態様によれば、上記下冶具と上冶具との間に、少なくとも上記有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置する前に、
上記下冶具を接着剤塗布用圧電体保持冶具として使用して、上記下冶具に支持された上記圧電体に上記接着剤を塗布する第17〜20のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0100】
本発明の第22態様によれば、上記下冶具と上冶具との間に、少なくとも上記有底筒状金属ケースを上記下冶具で支持するように配置するとき、
上記上冶具は、少なくとも上記音響整合層を位置決め保持第17〜21のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0101】
本発明の第23態様によれば、上記低温熱処理を施すとき、上記上冶具の厚み方向に貫通した複数の貫通開口を熱風が通過して上記超音波振動子製造用冶具及び上記ケースを加熱する第17〜22のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0102】
本発明の第24態様によれば、加圧部材により、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤を介して上記圧電体を加圧する第17〜23のいずれか1つの態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0103】
本発明の第25態様によれば、上記加圧部材はバネであり、上記バネの付勢力により、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤を介して上記圧電体を加圧する第24の態様に記載の超音波振動子の製造方法を提供する。
【0104】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0105】
【発明の効果】
本発明にかかる超音波振動子用製造冶具及び超音波振動子の製造方法によれば、上冶具と下冶具との間で押圧力を上記超音波振動子の軸方向に作用させて、(音響整合層が無い場合には)圧電体とケースの1つの面例えば天面の内壁面とを接着剤で接着固定するか、又は、(音響整合層が有る場合には)音響整合層とケース天面の外壁面とを接着剤で接着固定するとともに圧電体とケース天面の内壁面とを接着剤で接着固定することができる。
【0106】
すなわち、加圧した状態で超音波振動子製造用冶具と共にケースに対して低温熱処理を施すことで、(音響整合層が無い場合には)圧電体とケースとを接着剤により加圧接着させる機能、又は、(音響整合層が有る場合には)圧電体とケースとを接着剤により加圧接着させるとともに及び音響整合層とケースとを接着剤により加圧接着させる機能と、(音響整合層の有無にかかわらず)上記低温熱処理によって応力を緩和する機能とを発揮させることができる。
【0107】
よって、上記超音波振動子用製造冶具を使用することにより、低コスト、強度、加工性、耐ガス性、耐食性、耐応力腐食割れ性に優れたケース材料、例えば、アルミニウム合金ダイカストでプレス成型又は切削加工によって形成されて流路を流れる流体に対して繋ぎ目のない加工で作成したケースを用いて、低温熱処理下で、形状が安定し応力腐食割れをなくし、長期信頼性と優れた生産性でもって、超音波振動子を製造することができる。また、超音波振動子製造用冶具の機能として、接着と応力緩和及び形状修正を行うための超音波振動子製造用冶具を共用し、熱処理工程を同時にすることで、生産性の向上、性能向上を実現することができる。
【0108】
また、加圧部材、例えばバネの付勢力により、上冶具と下冶具との間でケースを弾性的に加圧する場合には、応力を徐々に緩和しながらケースを無理無く加圧して接着動作を行なうことができる。また、各接着面を大略均一化できることにより、各接着界面が均一なものとなり、高い接着精度を達成することができる。
【0109】
また、熱処理による応力緩和効果で応力腐食割れの抑制と加圧と熱処理のよる形状修正効果が得られる。また、接着硬化プロファイルと熱処理の温度プロファイルとを同じにするように調整する場合には、さらに生産効率を向上させることができる。
【0110】
更に、冶具の構成を冶具を構成する下冶具と上冶具、さらに必要に応じて加圧部材を一組として、少なくとも複数組以上を同時的に加圧及び熱処理する場合には、生産性や均一性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の超音波振動子製造用冶具により製造される超音波振動子の外観斜視図である。
【図2】本発明の上記第1実施形態の超音波振動子製造用冶具により製造される超音波振動子の断面図である。
【図3】図1,図2の上記超音波振動子を使用する超音波流量計の横断面図である。
【図4】図3の上記超音波流量計の縦断面図である。
【図5】(a),(b)は、それぞれ、本発明の上記第1実施形態の超音波振動子製造用冶具において加圧前の状態と加圧状態を示す斜視図である。
【図6】(a),(b),(c)は、それぞれ、本発明の上記第1実施形態の超音波振動子製造用冶具である下冶具に圧電体を挿入する状態の斜視図、下冶具にケースを被せた状態の斜視図、ケースのみの斜視図である。
【図7】(a),(b)は、それぞれ、本発明の第2実施形態の超音波振動子製造用冶具において加圧前の状態と加圧状態を示す斜視図である。
【図8】(a),(b)は、それぞれ、本発明の上記第2実施形態の超音波振動子製造用冶具の下冶具と上冶具を示す分解斜視図及び一部断面斜視図である。
【図9】本発明の上記実施形態の超音波振動子製造方法で用いる恒温槽を示す図である。
【図10】本発明の上記実施形態の超音波振動子の製造方法での熱処理の温度プロファイルを示す図である。
【図11】本発明の上記実施形態の超音波振動子製造用冶具と超音波振動子の分解状態を示しかつ超音波振動子製造用冶具の上冶具の位置決め部など示す一部断面斜視図である。
【図12】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す図である。
【図13】(a),(b)は、それぞれ、本発明の上記第1及び第2実施形態の超音波振動子製造用冶具を多数個、恒温槽内に入れた状態を示す図である。
【図14】(a),(b)は、それぞれ、本発明の上記第1及び第2実施形態の超音波振動子製造用冶具を多数個、恒温槽内に入れた状態を示す図である。
【図15】本発明の上記第1実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である(接着剤の図示は省略)。
【図16】本発明の上記第2実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である(接着剤の図示は省略)。
【図17】本発明の上記第2実施形態の別の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である(接着剤の図示は省略)。
【図18】図17の上記変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である(接着剤の図示は省略)。
【図19】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である。
【図20】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である。
【図21】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である。
【図22】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である。
【図23】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である。
【図24】本発明の上記実施形態の変形例にかかる超音波振動子製造用冶具を示す断面図である。
【図25】本発明の第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具を示す斜視図である。
【図26】本発明の上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具において係合フックで外筒部材を支持台に係合保持する前の状態を示す一部断面図である。
【図27】本発明の上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具において係合フックで外筒部材を支持台に係合保持した状態を示す一部断面図である。
【図28】本発明の上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具の低温加圧状態を示す斜視図である。
【図29】本発明の上記第3実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具の低温加圧状態を示す断面図である。
【図30】(a),(b)はそれぞれ本発明の第4実施形態にかかる超音波振動子製造用冶具を示す斜視図である。
【図31】本発明の上記実施形態の一実施例にかかる超音波振動子製造方法の検討結果を示す図である。
【図32】本発明の上記実施形態の一実施例にかかる超音波振動子製造方法の検討結果を示す図である。
【図33】本発明の実施形態の一実施例にかかる超音波振動子製造方法の検討結果を示す図である。
【図34】本発明の実施形態の一実施例にかかる超音波振動子製造方法の検討結果を示す図である。
【符号の説明】
1…超音波振動子、2…ケース、3…ケース天面、4…音響整合層、5…フランジ、6…圧電体、7…端子板、8a、8b…端子、9…絶縁物、10…導電性ゴム、11…流量測定部、12…側壁部、13…側壁部、14…シール材、15…上板部、16…流路断面、17…超音波振動子、18…超音波振動子、19…振動子取り付け穴、20…振動子取り付け穴、21…シール材、22…シール材、23,23C…下冶具、23a…円柱状ケース保持部、23b…フランジ、23c…圧電体保持用凹部、24A,24B,24C,24E…上冶具、24a…円筒部、24b…フランジ、24d…貫通開口、24e…筒状固定部、24f…ケース押圧部、24g…半球状凹部、24h…係合突起、24j…側面加圧部、25…バネ、26…スライド用シャフト、26a…球面凹部、27…上ベース、28…下ベース、29…支柱、30…加圧用セパレート、33…ステンレス製冶具載置板、34…ファン、35…超音波振動子製造用冶具、36…音響整合層を接着剤で仮止めしたケース、、41…温度を上げる工程、42…温度を保持する工程、43…温度を下げる工程、45…位置決め部、50…外筒部材、50a…貫通開口、50c…係合凹部、50d…貫通開口、51…支持台、52…係合フック、61…恒温槽、62…ヒーター、99…鋼球。
Claims (25)
- 少なくとも有底筒状金属ケース(2)と、
上記ケースの1つの面(3)に接着剤(31)により設けられた圧電体(6)を備える超音波振動子(1)、又は、圧電体(6)が接着剤(31)により設けられた上記ケースの1つの面の反対側の面に音響整合層(4)が接着剤(32)により設けられる超音波振動子(1)を製造する超音波振動子製造用冶具において、
少なくとも、上記圧電体を保持する圧電体保持用凹部(23c)と、上記圧電体保持用凹部を有しかつ上記圧電体保持用凹部内に保持された上記圧電体と上記ケースの上記1つの面の内面とを上記接着剤(31)を介して接着させた状態を保持可能なケース保持部(23a)とを有する下冶具(23,23C)と、上記下冶具に対向して配置されかつ上記下冶具との間で上記ケースを挟持可能な上冶具(24A,24B,24C,24E)とを備えて、
上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤(31)を介して上記圧電体(6)を加圧した加圧状態、又は、上記接着剤(31)を介して上記ケースの上記1つの面に上記圧電体(6)を加圧しかつその反対側の面に上記接着剤(32)を介して上記音響整合層(4)を加圧した加圧状態を保持可能であり、この加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能、又は、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能と、上記低温熱処理によって応力を緩和する機能を発揮することを特徴とする超音波振動子製造用冶具。 - 少なくとも有底筒状金属ケース(2)と、
上記ケースの1つの面に接着剤(31)により設けられた圧電体(6)を備える超音波振動子(1)、又は、圧電体(6)が接着剤(31)により設けられた上記ケースの1つの面の反対側の面に音響整合層(4)が接着剤(32)により設けられる超音波振動子(1)を製造する超音波振動子製造用冶具において、
少なくとも上記ケースを支える下冶具(23,23C)と、上記下冶具に対向して設けられた上冶具(24A,24B,24C,24E)と、上記ケースの厚み方向に対して上記ケースの1つの面の両面側から上記上冶具と上記下冶具とで挟み込むように圧力を加えることが可能な加圧力を上記上冶具と上記下冶具とに作用させる加圧部材(25)とを備えて、上記加圧部材により上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤(31)を介して上記圧電体(6)を加圧した加圧状態、又は、上記接着剤(31)を介して上記ケースの上記1つの面に上記圧電体(6)を加圧しかつその反対側の面に上記接着剤(32)を介して上記音響整合層(4)を加圧した加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能、又は、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させる機能と、上記ケースの形状を修正する機能と、上記低温熱処理によって応力を緩和する機能とを有することを特徴とする超音波振動子製造用冶具。 - 上記低温熱処理の温度プロファイルは、上記接着剤の加熱硬化温度プロファイルと同じである請求項1又は2に記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記下冶具は、少なくとも上記圧電体を上記ケースに対して位置決め保持する位置決め部(23c)を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記下冶具は、少なくとも上記圧電体を上記ケースに対して位置決め保持する位置決め部(23c)を有して、少なくとも上記圧電体に上記接着剤を塗布するための接着剤塗布用圧電体保持冶具として機能する請求項1〜4のいずれか1つに記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記上冶具は、少なくとも上記音響整合層を上記ケースに対して位置決め保持する位置決め部(45)を有する請求項1〜5のいずれか1つに記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記上冶具は、少なくとも厚み方向に貫通して熱処理時の熱風が通過可能な複数の貫通開口(24d)を有する請求項1又は2に記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記下冶具又は上記上冶具は、上記下冶具と上記上冶具とを上記ケースを挟んで加圧状態とする加圧部材(25)を具備する請求項1〜7のいずれか1つに記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記加圧部材(25)はバネである請求項8に記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記上冶具の天面の内面と、上記下冶具の上面の外面とは、上記ケースの天面において、上記ケースの曲部を含んで上記曲部から2割以上の面積において加圧荷重が加わるように寸法構成されている請求項1〜9のいずれか1つに記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記熱処理に用いられる超音波振動子製造用冶具は、耐荷重が500kgf/cm2以上である請求項1〜10のいずれか1つに記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記熱処理に用いられる冶具は、耐熱温度が300℃を超える温度である請求項1〜11のいずれか1つに記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記熱処理に用いられる超音波振動子製造用冶具は、熱膨張係数が上記ケースの材料の熱膨張係数以下である請求項1〜11のいずれか1つに記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記上冶具及び上記下冶具は金属で構成されている請求項1〜11のいずれか1つに記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記加圧部分の硬度は上記ケースの材料の硬度以上である請求項1〜11のいずれか1つに記載の超音波振動子製造用冶具。
- 上記下冶具と上記上冶具とを少なくとも複数組備える請求項1〜15のいずれか1つに記載の超音波振動子製造用冶具。
- 超音波振動子製造用冶具の下冶具(23,23C)と上記下冶具に対向して設けられた上冶具(24A,24B,24C,24E)との間に、少なくとも有底筒状金属ケース(2)を上記下冶具で支持するように配置し、
次いで、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの1つの面に接着剤(31)を介して圧電体(6)を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和するか、又は、接着剤(31)を介して上記ケースの1つの面に圧電体(6)を加圧しかつその反対側の面に接着剤(32)を介して音響整合層(4)を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和することにより、
上記ケース(2)の上記1つの面に上記接着剤(31)により上記圧電体(6)が設けられる超音波振動子(1)、又は、上記圧電体(6)が上記接着剤(31)により上記ケースの上記1つの面に設けられかつその1つの面の反対側の面に上記音響整合層(4)が上記接着剤(32)により設けられる超音波振動子(1)を製造する超音波振動子の製造方法。 - 超音波振動子製造用冶具の下冶具(23,23C)と上記下冶具に対向して設けられた上冶具(24A,24B,24C,24E)との間に、少なくとも有底筒状金属ケース(2)を上記下冶具で支持するように配置し、
次いで、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの厚み方向に対して上記ケースの1つの面の両面側から上記上冶具と上記下冶具とで挟み込むように加圧部材(25)により圧力を加えて、上記ケースの1つの面に接着剤(31)を介して圧電体(6)を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和するか、又は、接着剤(31)を介して上記ケースの1つの面に圧電体(6)を加圧しかつその反対側の面に接着剤(32)を介して音響整合層(4)を加圧しかつその加圧状態で低温熱処理を施すことで、上記圧電体と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させるとともに上記音響整合層と上記ケースとを上記接着剤により加圧接着させると同時的に、上記低温熱処理によって応力を緩和することにより、
上記ケース(2)の上記1つの面に上記接着剤(31)により上記圧電体(6)が設けられる超音波振動子(1)、又は、上記圧電体(6)が上記接着剤(31)により上記ケースの上記1つの面に設けられかつその1つの面の反対側の面に上記音響整合層(4)が上記接着剤(32)により設けられる超音波振動子(1)を製造する超音波振動子の製造方法。 - 上記低温熱処理の温度プロファイルは、上記接着剤の加熱硬化温度プロファイルと同じである請求項17又は18に記載の超音波振動子の製造方法。
- 上記下冶具(23,23C)と上冶具(24A,24B,24C,24E)との間に、少なくとも上記有底筒状金属ケース(2)を上記下冶具で支持するように配置するとき、
上記下冶具は、少なくとも上記圧電体を位置決め保持する請求項17〜19のいずれか1つに記載の超音波振動子の製造方法。 - 上記下冶具(23,23C)と上冶具(24A,24B,24C,24E)との間に、少なくとも上記有底筒状金属ケース(2)を上記下冶具で支持するように配置する前に、
上記下冶具を接着剤塗布用圧電体保持冶具として使用して、上記下冶具に支持された上記圧電体に上記接着剤を塗布する請求項17〜20のいずれか1つに記載の超音波振動子の製造方法。 - 上記下冶具(23,23C)と上冶具(24A,24B,24C,24E)との間に、少なくとも上記有底筒状金属ケース(2)を上記下冶具で支持するように配置するとき、
上記上冶具は、少なくとも上記音響整合層を位置決め保持請求項17〜21のいずれか1つに記載の超音波振動子の製造方法。 - 上記低温熱処理を施すとき、上記上冶具の厚み方向に貫通した複数の貫通開口(24d)を熱風が通過して上記超音波振動子製造用冶具及び上記ケースを加熱する請求項17〜22のいずれか1つに記載の超音波振動子の製造方法。
- 加圧部材(25)により、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤(31)を介して上記圧電体(6)を加圧する請求項17〜23のいずれか1つに記載の超音波振動子の製造方法。
- 上記加圧部材はバネ(25)であり、上記バネの付勢力により、上記下冶具と上記上冶具との間で、上記ケースの上記1つの面に上記接着剤(31)を介して上記圧電体(6)を加圧する請求項24に記載の超音波振動子の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003023886A JP2004236119A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 超音波振動子製造用冶具及び超音波振動子の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003023886A JP2004236119A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 超音波振動子製造用冶具及び超音波振動子の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004236119A true JP2004236119A (ja) | 2004-08-19 |
Family
ID=32952570
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003023886A Pending JP2004236119A (ja) | 2003-01-31 | 2003-01-31 | 超音波振動子製造用冶具及び超音波振動子の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004236119A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008002879A (ja) * | 2006-06-21 | 2008-01-10 | Yazaki Corp | 流量メータ用超音波センサ取付部材 |
JP2009147840A (ja) * | 2007-12-18 | 2009-07-02 | Kasai Seiki Mfg Co Ltd | 超音波センサの製造法および多結晶アルミニウム成形体の製造法ならびに超音波センサ |
JPWO2013031754A1 (ja) * | 2011-08-29 | 2015-03-23 | 住友理工株式会社 | 樹脂製フューエルインレットパイプおよびその製法 |
-
2003
- 2003-01-31 JP JP2003023886A patent/JP2004236119A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008002879A (ja) * | 2006-06-21 | 2008-01-10 | Yazaki Corp | 流量メータ用超音波センサ取付部材 |
JP2009147840A (ja) * | 2007-12-18 | 2009-07-02 | Kasai Seiki Mfg Co Ltd | 超音波センサの製造法および多結晶アルミニウム成形体の製造法ならびに超音波センサ |
JPWO2013031754A1 (ja) * | 2011-08-29 | 2015-03-23 | 住友理工株式会社 | 樹脂製フューエルインレットパイプおよびその製法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4185477B2 (ja) | 圧力センサ | |
CN102519658B (zh) | 一种硅压阻压力传感器芯体及其生产方法 | |
US6180931B1 (en) | Heater unit for semiconductor processing | |
KR101127656B1 (ko) | 낮은 히스테리시스를 제공하도록 장력이 가해진 상태의 비교적 두꺼운 평면 다이어프램을 갖는 전기 용량식 압력계 | |
JP2008256423A (ja) | 高温用超音波探触子及びその製造方法 | |
CN1460839A (zh) | 流量传感器及制造方法 | |
CN105436649B (zh) | 焊接夹具及靶材组件的制作方法 | |
JPH11307682A (ja) | 半導体装置 | |
JP2004236119A (ja) | 超音波振動子製造用冶具及び超音波振動子の製造方法 | |
RU2336505C2 (ru) | Упругоэластичный измерительный элемент и способ его подсоединения | |
EP3205437A1 (en) | Electrical bonding method and electrical bonding device | |
CN103170723B (zh) | 一种大气环境下快速原位生成同质相氧化铝陶瓷的连接方法 | |
JP6418126B2 (ja) | 半導体装置 | |
CN114196812A (zh) | 一种深冷超声喷丸装置 | |
JP2005354281A (ja) | 高温用超音波探触子 | |
JP6424114B2 (ja) | 接続要素を溶接によってパワー半導体モジュールの基板に接続する装置及びそれに関連する方法 | |
JP4248844B2 (ja) | 超音波振動子の製造方法および超音波流量計 | |
JP4259841B2 (ja) | 超音波振動子の製造方法 | |
JPWO2018180329A1 (ja) | 試料保持具 | |
JP3457845B2 (ja) | 高温用超音波探触子及びその取り付け方法 | |
WO2013044471A1 (zh) | 一种超声波换能器及超声设备 | |
JP2008295074A (ja) | 有底筒状金属ケースと、その製造方法と、有底筒状金属ケースを用いた超音波振動子と、超音波振動子を有する超音波流量計 | |
CN110181343B (zh) | 一种辅助细长螺旋面磨削的超声流固界面耦合支撑装置 | |
CN108422057B (zh) | 一种超声辅助直流电阻钎焊铝合金方法 | |
JP3714303B2 (ja) | 超音波送受波器とその製造方法およびそれを用いた超音波流量計 |