JP2004234742A - 光学的情報記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】透明基板2、第一記録層構造4、分離層6、第二記録層構造8、基板10がこの順に積層された構造を有し、前記透明基板側からのレーザ光Lの照射により前記第一及び第二記録層構造に情報の記録および消去が行われる光学的情報記録媒体であって、前記第一記録層構造内に、透過率を上昇させる機能を有する透過率上昇作用機能層20aと透過率を調整する機能を有する透過率調整機能層20bとよりなる光学調整層20を備えるように構成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ光の照射により記録層を構成する原子の配列が変化して情報の記録および消去が行なわれる光学的情報記録媒体(以下、光記録媒体とも称す)であって、特に二つの記録層を持ち共に良好な記録、再生、書換特性が得られる光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、レーザ光の照射による情報の記録、再生及び消去可能な光記録媒体の一つとして、結晶−非晶質間、あるいは結晶1−結晶2の2つの結晶相間の転移を利用する、いわゆる相変化型の光記録媒体がよく知られている。
この相変化型の光記録媒体は、Te、Se等のカルコゲンを主成分とした記録層と、この記録層を両面から挟み込む透光性誘電体層と、レーザ光の入射側とは反対に設けた反射層と、保護層とから主に構成されている。記録層の代表的な材料系として、GeSbTe系、AgInSbTe系材料が良く知られていて、実用化されている。
【0003】
記録原理は次の通りである。成膜直後の記録層は非晶質(アモルファス)状態で反射率は低い。従って、まず始めに、レーザ光を照射してこの記録層を加熱し、ディスク全面に亘って記録層を反射率の高い結晶状態にする。すなわち、初期化を行う。初期化した光ディスクにレーザ光を局所的に照射して記録層を溶融、急冷し、アモルファス状態に相変化させる。相変化に伴い記録層の光学的性質(反射率、透過率、複素屈折率等)が変化して、情報が記録されることになる。情報の再生は、記録時よりも弱いレーザ光を記録層に照射して結晶とアモルファスとの反射率差、または位相差を検出して行う。書き換えは、結晶化を引き起こす低エネルギーの消去パワーの上に重畳した記録ピークパワーを記録層に投入することにより消去過程を経ることなくすでに記録された記録マーク上にオーバーライトする。
【0004】
このように相変化型の光ディスクはレーザ光を集光して記録再生を行うので、記録容量を決定する要素としてレーザ光の波長、集光レンズのNA(開口数)が大きく作用する。現在は発振波長が650nmのレーザ光を用いた記録再生装置が商品化されている。更に大容量の光記録媒体を目指してレーザ光の短波長化が盛んに検討されている。中でも400nm付近の波長を持つレーザ光を発する半導体レーザ素子の開発が盛んである。
更に記録容量の倍増を狙って、分離層を介して重ねられ記録層を二つ以上持つ二層構造の光記録媒体の提案がなされてきた(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−212917号公報
【特許文献2】
特開平2001−243655号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した二層構造の光記録媒体にあっては、記録再生用のレーザ光の入射する側から奥に位置する記録層に対して良好な信号を記録、再生するためには、レーザ光の入射する側に位置する記録層の透過率を高める必要がある。そのためには入射する側、すなわち手前側に位置する記録層は40%以上の透過率が必要である。透過率を高めるため上記特開平2001−243655号公報では透過率向上層と称される層を設ける提案がなされている。しかしながら、単に高屈折率な層を設ければ良いと言うわけではない。それどころか、ある膜厚の範囲では、透過率向上層を設けていない光記録媒体と同等か、それ以下の透過率になってしまう場合がある。
【0007】
上記した透過率向上層のみを設けた光記録媒体では、透過率は向上するが記録層の結晶化状態とアモルファス状態との間の透過率差が大きく、奥の記録層への情報の記録再生に悪影響を及ぼしていた。
通常の単層の記録層の光記録媒体で、その記録線速度に最適化した記録層の組成を、二層構造の光記録媒体におけるレーザ光の入射する側に位置する記録層に用いると、結晶化が遅くなって、良好な記録再生特性が得られなかった。
本発明の目的は、このような課題を解決し、二層構造の記録層を有する光記録媒体においてレーザ光の入射側の記録層構造の光透過率を向上させ且つ、記録層の結晶状態とアモルファス状態での透過率差を大幅に小さくすることにより、両層共に良好な記録再生特性を得ることが可能な光学的情報記録媒体を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、透明基板、第一記録層構造、分離層、第二記録層構造、基板がこの順に積層された構造を有し、前記透明基板側からのレーザ光の照射により前記第一及び第二記録層構造に情報の記録および消去が行われる光学的情報記録媒体であって、前記第一記録層構造内に、透過率を上昇させる機能を有する透過率上昇作用機能層と透過率を調整する機能を有する透過率調整機能層とよりなる光学調整層を備えるように構成したことを特徴とする光学的情報記録媒体である。
【0009】
ここで、例えば第一記録層構造は少なくとも第一保護層、記録層、第二保護層、反射層、光学調整層から成る。また例えば上記光学調整層の内、透過率上昇作用機能層の厚さが60〜80nm或いは190〜250nmであり、透過率調整機能層の厚さが2〜10nmである。また例えば前記光学調整層中の透過率上昇作用機能層の光学屈折率が2.0以上であり、透過率調整機能層の屈折率が1.5以下である。更に、例えば上記記録層の組成がSb, Teを含み、SbとTeの組成比が3.8〜4.2であり、これらにGe,Ag,In,Ba,Co,Cr,Ni,Pt,Si,Sr,Au,Cd,Li,Mo,Mn,Zn,Fe,Pb,Na,Cs,Ga,Pd,Bi,Sn,Ti、V、Se、S、As、Tlのうち少なくとも一種類以上添加されている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る光学的情報記録媒体の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る光学的情報記録媒体を示す拡大断面模式図である。図2は表1を図式化したグラフである。図3は表2を図式化したグラフである。図4は表3を図式化したグラフである。
この光学的情報記録媒体(光記録媒体)Dは、内側の表面に案内溝(グルーブ)Gが形成された透明基板2と、第一記録層構造4と、分離層6と、第二記録層構造8と、反対側の基板10とからなり、上記順序で積層されている。上記透明基板2は、例えばポリカーボネート樹脂板からなり、この透明基板2側から記録再生用のレーザ光Lが入射されることになる。
【0011】
上記第一記録層構造4は、上記透明基板2側より、第一保護層12、記録層14、第二保護層16、反射層18及び本発明の特徴とする光学調整層20の順序で積層して構成されている。ここで本発明の特徴とする上記光学調整層20は、上記透明基板2側より、透過率を上昇させる機能を有する透過率上昇作用機能層20aと透過率を調整する機能を有する透過率調整機能層20bとを順次積層して構成されている。
尚、第二記録層構造8の構成は、第一記録層構造4の構成から光学調整層20を除いた構成と略同じなので、ここではその構造についての説明は省略する。
【0012】
以下に、上記した点について詳しく説明する。
これまでに光記録媒体は大きく見て記録再生光源のレーザ光の短波長化と光ピックアップの集光レンズの高NA化に伴い大容量化、高密度化が図られてきた。最近の研究開発では波長が約400nm、NAが0.85という光学系を用いたシステムと、それに適合した光記録媒体の研究が盛んであり、実用化も近い。更に高密度化を進めるためにはレーザ波長の短波長化やNAの向上を図らなければならないが、これ以上の向上は技術的に厳しいの現状である。そこで考えられたのが、記録層の多重化である。特に、一方向からのレーザ光の入射で記録再生が可能な記録層を2層持つ、いわゆる二層構造の光ディスクのアイデアが実現に向かって開発が進められている。
【0013】
この二層構造の光ディスクを実現するためには、幾つかのポイントがあるが、光源に近い記録層(第一記録層構造4)の透過率は特に重要である。現在の光源のレーザ光の出力等のシステム性能から考えると、奥の層(第二記録層構造8)の記録再生特性を良好にするためには、第一記録層構造4の透過率は最低でも40%前後は必要である。第一記録層構造4は信号の記録再生を可能にするために少なくとも第一保護層12、記録層14、第二保護層16、反射層18の4層が必要である。このような構造で透過率を40%以上確保するためには記録層14、反射層18の膜厚をできるだけ薄くする必要がある。尚、現状の光ピックアップの光センサの検出感度を考慮すると、第二記録層構造8の記録情報を検出して安定的にトラッキング等を行なうためには第一記録層構造4における透過率は上述のように40%は必要である。しかし、記録層14、反射層18を薄くし過ぎると第一記録層構造4の記録再生ができなくなってしまう。また、記録層14は薄くするとマーク部分のアモルファス状態と、その外の結晶状態とのコントラストが取れなくなったり、アモルファス状態への変化そのものが起こらなくなってしまう。また、反射層18を薄くすると、レーザ光の充分な反射が得られなくなったり、ヒートシンクとしての働きが劣り、信号マークが記録できなくなることが起こる。
【0014】
第一記録層構造4における記録層14、反射層18の膜厚を変化させ、信号の記録再生実験を行ったところ、特性をある程度良好に保てる範囲が以下であることがわかった。
記録層14:5nm以上
反射層18:6nm以上
しかし、これらの膜厚の範囲では透過率を40%以上得るのは困難であった。
そこでこの課題を解決するため検討したした結果、上記光学調整層20を反射層18に隣接して設けることが効果的であった。
【0015】
記録再生特性を維持した各層の膜厚で、透過率を上げるためには、透過率を向上させる機能のある層、すなわち透過率向上層を設けることが考えられた(特開平2001−243655号公報)。この提案ではある程度高い屈折率が必要でTiやSi等の金属の酸化物、窒化物を用いることが示されている。本発明者の研究では反射層より屈折率が高く、記録再生用のレーザ光に対しては透明か、或いは90%程度以上の透過率を有する材料であれば効果があることを見い出した。材料的には、もちろん金属の酸化物、窒化物でも良いが、第一及び第二保護層12、16に用いられる誘電体を使用できることを見い出した。この誘電体を用いることは、実際の製造上のコスト、成膜設備を考えると有利である。
また、特開平2001−243655号公報では透過率向上層の膜構造に関する記載が無いが、我々の検討した結果では、最適膜厚範囲が存在し、その範囲外では透過率向上の効果は見られないことがわかった。
【0016】
本発明における透過率上昇作用機能層20aを設けた第一記録層構造4は透過率40%以上を容易に確保できることができた。その一方で、透過率の向上だけでは解決困難な課題が存在することが分かった。信号を記録層14に記録してできるマーク部であるアモルファス状態とそれ以外のスペース部、未記録部である結晶状態ではレーザ光の透過率の値に大きな差違が生じてしまい、例えばアモルファス部で高く、結晶部では低い。この状態は第二記録層構造8の記録再生特性に悪影響を及ぼしてしまう。
そこで更なる検討を行った結果、透過率上昇作用機能層20aに隣接して本発明のように透過率調整機能層20bを設けることで解決した。この透過率調整機能層20b(屈折率はn5)は透過率上昇作用機能層20a(屈折率はn4)より低屈折率の材料を用いると効果が出現し(n5<n4)、できれば屈折率が1.5以下の材料を用いるのが好ましい。また、その構造は厚すぎると媒体全体の透過率の低下を招き、薄すぎると効果が表れないということが分かり、最適な膜厚を見い出した。
【0017】
これら透過率上昇作用機能層20aと透過率調整機能層20bとを重ねた層、すなわち光学調整層20を設けることにより、第一記録層構造4の良好な記録再生特性を維持しつつ、第二記録層構造8への記録再生を可能にすることができた。これら透過率の調整には各層の材料の光学屈折率の違いから生じる干渉現象を利用している。従って各層の屈折率の大小関係が重要であることが分かった。
各層の屈折率の関係は、第一及び第二保護層12、16の屈折率をそれぞれn1、記録層14の屈折率をn2、反射層18の屈折率をn3、透過率上昇作用機能層20aの屈折率をn4、透過率調整機能層20bの屈折率をn5とすると、各層の屈折率の関係は以下のような関係の時に記録再生特性を向上させることができる。
n1≦n2,n1>n3,n4>n3,n5<n4
【0018】
また、各層の膜厚も干渉現象に大きく作用する。このため、透過率上昇作用機能層20aの膜厚は、その効果を最大限に発現させるために最適な膜厚範囲が存在する。透過率上昇作用機能層20aの膜厚を変化させて検討した結果、下記に示すような膜厚範囲を見い出した。下記に示す範囲以外では透過率を上昇させる干渉現象が起きにくくなっていることがわかった。すなわち、透過率上昇作用機能層20aの厚さは30〜80nmの範囲内、或いは190〜250nmの範囲内である。また透過率調整機能層20bの厚さは2〜5nmの範囲内である。
また反射層18は非常に薄い膜厚にする必要があるために、その膜厚でも十分なヒートシンク機能を発現させるためにAgやその合金を用いるのが好ましい。Ag薄膜の屈折率は、反射層18に用いることができる他の金属と比較すると約0.4(at650nm)と、比較的小さい。透過率上昇作用機能層20aの材料としては、この屈折率n4が反射層18の屈折率n3より大きな値を有する材料(n4>n3)が良いが、効果が大きのは屈折率が2.0以上と大きなものが良いことが分かった。
【0019】
これまでに記録層が一つの単層の光記録媒体は開発が進み、実用化もされている。それらはデータの転送速度等から光記録媒体の回転線速度が決められている。記録層の材料は、その線速度に合わせてレーザ光の照射による結晶−アモルフ ァス間の変化が適合した速度で起こるような組成が選ばれている。一般的に相変化型の光ディスクにはカルコゲン物質から成る材料が用いられ、特に、SbとTeからなる材料が広く用いられている。結晶−アモルファス間の変化、いわゆる結晶化速度は、SbとTeの組成比が大きく関わっている。単層の光記録媒体で最適な結晶化速度の組成を二層構造の光ディスクの第一記録層構造に用いると記録再生が不可能であることが明らかになった。この理由は結晶加速度が見かけ上遅くなっているからである。そして、良好な記録再生特性を得るためには、最適な組成が存在することを見い出した。
【0020】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例では、波長650nmのレーザ光を発振するレーザ素子と集光レンズのNAが0.65のものを搭載した評価機を用いて、光ディスクとしての記録再生特性の評価を行った。なお、記録再生特性の評価はC/N (キャリアーノイズ比) 、変調度を測定した。記録線速度は3.5m/s、基準クロックは26.1MHz、最短マーク長0.4μm(3Tマーク)で評価した。
【0021】
<実施例1>
まず、第一記録層構造4における記録層14と反射層18の厚さを規則的に徐々に薄くしてゆき、信号の記録可能な膜厚を見極めた。尚、ここではまだ光学調整層20を設けていない。
第一保護層12、第二保護層16の各厚さは固定し、記録層14の厚さについて調べる時は反射層18を10nmで固定し、反射層18の厚さを調べる時は記録層を10nmで固定し、それぞれの記録可能範囲を調べた。各層の膜厚の関係は以下のようになる。尚、X、Yは変数を示す。
第一保護層70nm/記録層X/第二保護層15nm/反射層Y
用いたディスク基板のグルーブトラックピッチは0.74μmである。
【0022】
この場合は、波長650nmの記録再生用のレーザ光においてマーク長0.21μmになる単一信号を記録し、その信号特性を測定し、C/N値が40dB以上を信号記録可能な膜厚範囲とした。その結果、記録層は5nm、反射層は6nmが限界値(下限)であった。
しかし、この膜厚構造の光記録媒体でも透過率(at650nm)は35%しかなく、第二記録層構造4に良好な記録再生特性を得るためには不十分であった。
【0023】
そこで、透過率上昇作用機能のある新たな層、すなわち透過率上昇作用機能層20aを設けて透過率を上げた光記録媒体を作製した。この透過率上昇作用機能層20aの材料としてはSiN,AlN,Al2 O3 ,ZnS,ZnS−SiO2 等の屈折率が高い材料(2.0以上)を用いて試作した。また、その膜厚を変化させて透過率の変化を調べた(ZnS−SiO2 使用)。結果を表1及び図2に示す。この時の各層の膜厚は以下のようになる。尚、Xは変数を示す。
第一保護層(70nm )/記録層( 5nm) /第二保護層( 15nm )/反射層( 8nm) /透過率上昇作用機能層( Xnm )
【0024】
【表1】
【0025】
この表1及び図2の結果から透過率で40%以上を確保できる膜厚の範囲が存在し、その範囲は30〜80nm, 或いは190〜250nmである。
ここで最も透過率が高まる構造は、透過率上昇作用機能層20aの膜厚が210nmの時であってその透過率は50%であり、その膜厚の関係は以下のようになる。
第一保護層(70nm )/記録層( 5nm) /第二保護層( 15nm )/反射層(8nm) /透過率上昇作用機能層( 210nm )
【0026】
次に、上記膜厚構造の光記録媒体について、成膜直後のアモルファス状態と初期化後の結晶状態の透過率を調べた。その結果、アモルファス状態では50%となり、結晶状態では38%となった。
この場合、アモルファス状態と結晶状態との間の透過率差が大きく、奥の層である第二記録層構造8の記録再生特性に悪い影響を及ぼし、良好な記録再生ができなくなってしまった。
そこで、この透過率差を小さくするために透過率上昇作用機能層20a上に透過率調整層20bを設け、透過率差の減少を可能にした。この場合、上記透過率調整層20bの材料としては透過率上昇作用機能層20aより屈折率の小さなものが良い(透過率上昇作用機能層20aの屈折率:n4>透過率調整層20bの屈折率:n5)。一例として透過率調整層20bの材料としてAg合金を窒化したものを用いた。この時の結果を表2及び図3に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2及び図3に示す結果から初期化後の透過率が40%以上となる透過率調整層20bの膜厚は2〜5nmが好ましいことが分かった。
またここで、反射層18と透過率上昇作用機能層20aの各層の屈折率が記録再生特性に与える影響を調べた。
各層の膜厚構造は上記したと同じであって次のようになる。
第一保護層(70nm )/記録層( 5nm) /第二保護層( 15nm )/反射層( 8nm) /透過率上昇作用機能層( 210nm )
【0029】
▲1▼反射層18の材料を屈折率が0.39のAg合金から、屈折率が1.3のAl合金に変更した。この時の透過率はアモルファス状態で33%となり、結晶状態では25%となった。この場合には、透過率が低下して40%以下になったので、第二記録層構造8では十分な記録再生特性が得られなかった。
▲2▼透過率上昇作用機能層20aの材料を屈折率が2.0以上の材料から、屈折率が1.46のSiO2 に変更した。この時の透過率はアモルファス状態で39.5%となり、結晶状態では31.1%となった。この場合にも、透過率が低下して40%以下になったので、第二記録層構造8では十分な記録再生特性が得られなかった。
また記録層14の組成、特にSbとTeの組成比は、結晶化速度に大きく影響することが分かっている。二層構造の光ディスクの実用化のために記録層14を薄くして行くと、見かけ上の結晶化速度が低下することがわかった。そこで、SbとTe比(Sb/Te)を変えた光記録媒体を用い、記録再生特性を調べた。この時の各層の膜厚の関係は以下のようになる。
第一保護層(70nm )/記録層( 5nm) /第二保護層(15nm )/反射層( 8nm) /透過率上昇作用機能層( 210nm )/透過率調整層( 4nm)
【0030】
上記膜厚構造の光ディスクの単一信号を記録し、C/Nと消去率を測定した。その結果を表3及び図4に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
表3及び図4の結果から、C/Nが44dB以上で、且つ消去率が27(−dB)以上で良好とすると、第一記録層構造4の記録層14の組成はSb/Teで4.0〜4.5が良好な記録再生特性を得るために最適な組成範囲であることが判明した。
【0033】
<実施例2>
次に上記実施例1と同様な条件で次のような構造の光ディスクを作製した。
第一記録層構造4側の基板構成を以下のように作製した。
透明基板(0.6mm)/第一保護層(70nm)/記録層(5nm)/第二保護層(15nm)/反射層6(nm)/光学調整層(透過率上昇作用機能層: 210nm, 透過率調整層: 4nm)
第二記録層構造8側の基板構造を以下のように作製した。
第一保護層(85nm)/記録層(14nm)/第二保護層(25nm)/反射層(200nm)/基板( 0.6mm)
第二記録層構造8は予め初期化装置により初期化した。尚、透明基板及び基板は共にポリカーボネート樹脂板を用いた。
【0034】
これら二つの基板構成は、分離層6となるUV(紫外線)硬化樹脂を用いて接着した。接着にはスピンナーを用い2000rpmで回転させ分離層6の厚みが50μmになるように調整した。接着剤はUVランプを照射して硬化させ、その後第一記録層構造4を初期化した。
波長650nmの記録再生用のレーザ光において最短マーク長0.4μmになる単一信号を記録し、その信号特性を測定した結果、第一記録層構造4の特性としてC/Nが47dB、消去率が−30dB、変調度が43%が得られた。第二記録層構造8の特性としてC/Nが51dB, 消去比が−31dBとなり、良好な特性を得た。
【0035】
ここで、本発明になる光記録媒体の製造方法について述べる。反射層18、記録層14、保護層12、16、光学調整層20などを基板上に形成する方法としては、公知の真空中での薄膜形成法、例えば真空蒸着法(抵抗加熱型や電子ビーム型)、イオンプレーティング法、スパッタリング法(直流や交流スパッタリング、反応性スパッタリング)などが挙げられる。特に組成、膜厚のコントロールが容易であることから、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法では、例えば、記録材料と添加材料を各々のターゲットを同時にスパッタリングすることにより容易に混合状態の記録層を形成することができる。成膜前の真空度は、1×10−4Pa以下にするのが好ましい。真空槽内で複数の基板を同時に成膜するバッチ式や基板を1枚ずつ処理する枚葉式成膜装置を使うことが好ましい。
【0036】
形成する反射層18、記録層14、第一及び第二保護層12、16などの厚さの制御は、スパッタ電源の投入パワーと時間を制御したり、水晶振動型膜厚計などで、堆積状態をモニタリングすることで、容易に行える。反射層18、記録層14、第一及び第二保護層12、16などの形成は、基板を固定したまま、あるいは移動、回転した状態のどちらでもよい。膜厚の面内の均一性に優れることから、基板を自転させることが好ましく、さらに公転を組合わせることがより好ましい。
【0037】
成膜は次のような手順で行った。
基板を毎分60回転で遊星回転させながら、スパッタリング法により、第一保護層12、記録層14、第二保護層16、反射層18、光学調整層20の順に真空成膜を行った。まず、真空チャンバー内を8×10−5Paまで排気した後、1.6×10−1PaのArガスを導入した。ZnS−SiO2 を高周波マグネトロンスパッタ法により成膜して第一保護層12を形成した。続いて、Ge,Te, Sbからなる4元素単一ターゲットを直流電源でスパッタして記録層14を形成した。次にZnS−SiO2 を高周波マグネトロンスパッタ法により第二保護層16を形成した。その後Agを主成分とする合金単一ターゲットを直流スパッタ法にて反射層18を形成した。次にZnS−SiO2 を高周波マグネトロンスパッタ法により透過率上昇作用機能層20aを形成した。続いて、Agを主成分とする合金を用い反応性スパッタリング法で透過率調整層20bを形成した。具体的には、Arガスを2.00sccmになるようにマスフローメータを調整し、続けてN2 ガスを50sccmになるようにマスフローメータを調整した。その後、直流電源で成膜速度が0.03nm/sになるよう調整して成膜した。これにより光学調整層20の形成が完了する。
【0038】
この基板構造を真空容器より取り出した後、この第一記録層構造4上に分離層6となる紫外線硬化樹脂を接着層として用い、別に作製した他方の基板構造とをスピンコート法にて貼り合わせた。その後、紫外線照射により硬化させて膜厚50μmの分離層6を形成した本発明の光記録媒体を得た。
こうして作製した光ディスクにレーザ光やフラッシュランプ等を照射して、記録層を結晶化温度以上に加熱して初期化処理を行う。実用的には、特開平7−282475号公報に記載されているような初期化装置と評価機等を用い収束したレーザ光を用いる。以下に、初期化から始める具体例につき説明する。
【0039】
先ずは初期化装置のスピンドルに光ディスクを装着した後、大出力のレーザ光を照射して記録層を加熱して高反射率の状態に変化させる。光ディスクに照射されるレーザ光はトラック幅よりも大きなビーム径を有し、好ましくは半径方向に長く、ディスクを回転しながら複数のトラックを同時に初期化する。
具体的には初期化のレーザ光の波長は830nm、照射ビームの形状は、トラック方向が2μmで半径方向が20μmの幅の広い形をしている。ディスクを線速度4m/sで回転させ、半径22.0mmから初期化を開始した。初期化のレーザ光は、パワー450mWで半径外周方向に2μm/回転の速度で移動させ、半径58.0mmで初期化を終了した。
透明基板2、或いは基板10としては、直径120mm、板厚0.6mmのポリカーボネイト樹脂基板を用いた。トラックピッチが0.74μmのグルーブ方式で記録を行った。溝深さは38nmでグルーブ幅とランド幅の比は、およそ46:54であった。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光学的情報記録媒体によれば、二層構造の記録層を有する光記録媒体において第一記録層構造の光透過率を向上させ且つ、記録層の結晶状態とアモルファス状態での透過率差を大幅に小さくすることにより、両層共に良好な記録再生特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光学的情報記録媒体を示す拡大断面模式図である。
【図2】表1を図式化したグラフである。
【図3】表2を図式化したグラフである。
【図4】表3を図式化したグラフである。
【符号の説明】
2…透明基板、4…第一記録層構造、6…分離層、8…第二記録層構造、10…基板、12…第一保護層、14…記録層、16…第二保護層、18…反射層、20…光学調整層、20a…透過率上昇作用機能層、20b…透過率調整機能層。
Claims (1)
- 透明基板、第一記録層構造、分離層、第二記録層構造、基板がこの順に積層された構造を有し、前記透明基板側からのレーザ光の照射により前記第一及び第二記録層構造に情報の記録および消去が行われる光学的情報記録媒体であって、
前記第一記録層構造内に、透過率を上昇させる機能を有する透過率上昇作用機能層と透過率を調整する機能を有する透過率調整機能層とよりなる光学調整層を備えるように構成したことを特徴とする光学的情報記録媒体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003021135A JP2004234742A (ja) | 2003-01-29 | 2003-01-29 | 光学的情報記録媒体 |
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JP2003021135A JP2004234742A (ja) | 2003-01-29 | 2003-01-29 | 光学的情報記録媒体 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2012309A1 (en) * | 2007-07-04 | 2009-01-07 | Ricoh Company, Ltd. | Optical recording medium |
-
2003
- 2003-01-29 JP JP2003021135A patent/JP2004234742A/ja active Pending
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