JP2004233591A - 光フェルールとその製造方法およびこれを用いた光ファイバ固定具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軸中心部に光ファイバを収納するための貫通孔を有し、先端に面取部を有する光フェルールにおいて、前記光フェルールは、樹脂製のフェルールボディーと該フェルールボディーの外周部の少なくとも一部に被着された硬質の外周パイプとからなり、該外周パイプの少なくとも一部が前記面取部の面内に露出させることにより、光フェルール10を割スリーブへの繰返脱着時に、面取部1hが磨耗することがなくなり、挿入性が劣化することを防止できる。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信などに使用される、光ファイバを相互に接続する光ファイバ固定具およびこれに用いる光フェルールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光通信システムにおける装置の切替え、送受信ポートの取り外し、装置の調整、測定などの脱着自在な光接続が必要な箇所には、光ファイバを保持した一対の光ファイバ固定具のフェルール先端同士を当接させて連結保持することにより、光ファイバ同士を光学的に接続する光ファイバコネクタが使用されている。
【0003】
この光ファイバコネクタに使用される、従来最も一般的に多用されている光フェルールは、図6に示すように細孔53aを有したジルコニア、アルミナなどのセラミックス製のキャピラリ53をステンレスなどの略円筒形状のフェルールボディー54に圧入、はめ込み、接着などをして組立てた光フェルール50を使用することが一般的であった。
【0004】
従来の一般的に多用されてきた図6に示す光フェルール50では、光ファイバを接着固定した後の先端面53bを光ファイバと共に研磨仕上げを行った後の、光ファイバコネクタとしての特性は良好でしかも、環境試験などにおいても非常に安定した性能を示している。しかしながら、キャピラリ53をセラミックス製としているために、安価にならず、低価格化を要求されている光ファイバコネクタの中での低価格化を阻害する大きな要因となっている。
【0005】
そこで、樹脂成型により光フェルールを安価に形成する試みがなされてきた。しかしながら、単にセラミックスを樹脂に置き換えただけでは、材料の剛性が低く耐摩耗性、耐環境性が低い、などの理由から、光フェルールに必要とされる特性を備えることができなかった。
【0006】
これに対して、樹脂材料を工夫し、できる限り必要な特性に近づけようとする試みがなされている。例えば、特許文献1では、図7に示すような、光ファイバを固定するための細孔51a、接続に関わる外周部51b、光ファイバ芯線部を保持固定するための芯線ガイド孔51cなどが一体に形成されている光フェルール60において、光フェルール60の材質として、液晶ポリマーを採用し、その材質を工夫して特性を改善したものが提案されている。
【0007】
その他、樹脂の剛性の低さを別の材料を用いて補強する試みもなされている。例えば、特許文献2では、図8に示すように、軸心に細孔51aを設け、フランジ部51dを有する樹脂製の光フェルール70の本体と、その外周部51bに被着した硬質材製の外周パイプ52を備えた構成を提案している。これは、樹脂製のフェルール本体の周囲を硬質材のパイプで覆うことにより、フェルール本体を補強し、剛性を高めることを狙っている。
【0008】
〔特許文献1〕特開平10−293232号公報(段落0014)
〔特許文献2〕特開2001−96570号公報(段落0013〜0017)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、図7に示す特許文献1の樹脂製の光フェルールでは、液晶ポリマーの改良品を用いることによって特性の改善を試みている。しかしながら、光フェルール60の本体自体が樹脂より形成されているため、先端面51eの研磨加工のため、外周部51bを研磨治具に固定すると必ず変形する。そのため、研磨後の先端面51eの略凸球面の曲率中心が軸心から大きくずれ、反射による挿入損失を増大させる原因となっていた。
【0010】
また、光ファイバを接着固定した後の先端面51eを光ファイバと共に研磨仕上げを行った時に、樹脂材料の方が光ファイバよりも柔らかいため、光ファイバの研磨量と樹脂材料の研磨量が異なり、先端面51eと光ファイバの先端の高さの差が50nmを超える。そのため、光ファイバコネクタとして2個の光フェルールを接続させた際に光ファイバ間に隙間が生じ、反射による挿入損失が増大するという問題を生じている。
【0011】
さらに、光コネクタとして割スリーブへ頻繁に繰り返して脱着する必要があるが、フェルールが樹脂の場合、脱着を繰り返すうちに面取部51hが磨耗してしまい、挿入性が悪くなっていくという問題もあった。
【0012】
また、図8に示す特許文献2のケースでは、外周部51bに高硬度の外周パイプ52を設置しているが、光部品の用途では、該外周パイプ52を超精密に外径寸法、内径寸法、同芯度を加工する必要があり、そのために、外周パイプ52の加工コストが増加するという問題を生じている。
【0013】
さらに、特許文献2の光フェルール70でも割スリーブへの繰返脱着時に、樹脂製の面取部51hが磨耗してしまい、挿入性が悪くなっていくという問題が避けられなかった。
【0014】
このように、低価格化を図って樹脂製の光フェルールが提案されてきたが、一般的に使われているセラミック製の光フェルールの特性に及ぶものがなく、樹脂を使った光フェルールは市場に投入されていなかった。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑みて本発明の光フェルールは、軸中心部に光ファイバを収納するための貫通孔を有し、先端に面取部を有する光フェルールにおいて、前記光フェルールは、樹脂製のフェルールボディーと該フェルールボディーの外周部の少なくとも一部に被着された硬質の外周パイプとからなり、該外周パイプの少なくとも一部が前記面取部の面内に露出していることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の光フェルールは、前記外周パイプの端面の少なくとも一部が斜めに加工され、前記面取部の少なくとも一部を形成していることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の光フェルールは、前記外周パイプの外周面と前記外周パイプの端面の境界部にR面が形成されていることを特徴とする。
【0018】
そして、本発明の光フェルールは、前記外周パイプを結晶化ガラスにより形成したことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の光フェルールは、前記貫通孔は、光ファイバの芯線を保持する細孔部と光ファイバの被覆部を保持する芯線ガイド部と、前記芯線ガイド部から前記細孔部を結ぶテーパ孔部よりなり、前記フェルールボディー内部に一体形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の光フェルールの製造方法は、あらかじめ必要な精度に加工した前記外周パイプを金型にあわせて固定し、該金型中に樹脂を注入し射出成型法により前記フェルールボディーと前記外周パイプとを一体に形成することを特徴とする。
【0021】
そして、本発明の光ファイバ固定具は、本発明の光フェルールに光ファイバを接着固定し先端面を研磨仕上げしたことを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0023】
図1(a)は本発明の実施形態を示す光フェルールの断面図である。軸中心部に光ファイバを収納するための細孔1aを有し、先端に面取部1hを有する光フェルール10において、前記光フェルール10は、樹脂製のフェルールボディー1と該フェルールボディー1の外周部1bの少なくとも一部に被着された硬質材からなる外周パイプ2とからなり、該外周パイプ2の端面が斜めに加工され、光フェルール10の面取部1hの一部を形成している。
【0024】
ここで、外周パイプ2の寸法精度をあらかじめ必要な精度に加工しておくことにより、光フェルール10は必要な精度を保ったまま、硬質材からなる外周パイプ2の耐摩耗性、剛性を具備することとなり、安価な樹脂製のフェルールボディー1を用いても十分な機械的特性を有する光フェルールを得ることが可能となる。
【0025】
また、外周パイプ2の端面を斜めに加工して、光フェルール10の面取部1hの一部を形成したことにより、光フェルール10を割スリーブに繰り返して、脱着させる時に、面取部1hが磨耗することがなくなり、挿入性が良好に保たれる効果が得られる。
【0026】
さらに、外周パイプ2の外周面と外周パイプ2の端面の境界部にR面1iを形成しておくことが望ましい。これにより、光フェルール10を外部の割スリーブへ脱着させる時に、スムースに嵌装させることができ、挿入性が向上するからである。
【0027】
R面1iは、例えば、ダイヤモンド研磨フィルムを用いて研磨加工し、最終仕上げにシリカ研磨フィルムを用いて研磨することにより形成することができる。
【0028】
なお、形成するRの半径は7μm〜30μmの範囲とすることが望ましい。R面の半径が7μm以下の時は光ファイバコネクタとして2個の光フェルールを接続させた際にR面1iにかかる応力により細孔1aと光ファイバ11との間に接着剥離を生じるという問題があり、30μm以上のときは光ファイバコネクタとして2個の光フェルールを接続させた際に、先端面1eが十分に弾性変形できなくなり光ファイバ間に隙間が生じて反射損失が増大するという問題が生ずるからである。
【0029】
また、本発明の光フェルールは、前記貫通孔は、光ファイバの芯線を保持する細孔1aと光ファイバの被覆部を保持する芯線ガイド孔1cと、芯線ガイド部から細孔1aを結ぶテーパ孔1fよりなり、これらがフェルールボディー1内部に一体形成されている。フェルールボディー1は安価な樹脂製であり、しかもインサート射出成形によって、貫通孔内部の構造を全て一体的に形成することができるため、本発明の光フェルール10は製造コストを大幅に低減できる。
【0030】
そして、本発明の光フェルール10は、外周パイプ2を結晶化ガラスにより形成したことを特徴とする。結晶化ガラスは、析出結晶とガラスマトリックスとの界面におけるクラックの屈曲や分岐などによってエネルギーが吸収されるため、従来の非晶質ガラス材料に比べて、高い機械的特性を有している。しかも、従来の非晶質ガラス材料と同様に量産に適した優れた成形性を有している。これらの理由により、本発明の外周パイプ2を形成する材料として、結晶化ガラスが最適である。
【0031】
ここで、本発明の外周パイプ2に用いる結晶化ガラスは、公知の様々な材質のものを用いることができるが、SiO2を60〜70重量%、Al2O3を16〜25重量%、Li2Oを1.5〜3重量%、MgOを0.5〜2.5重量%、TiO2を1.3〜4.5重量%、ZrO2を0.5〜3重量%、TiO2+ZrO2を2〜6.5重量%、K2Oを1〜5.5重量%、ZnOを0〜7重量%、BaOを0〜3重量%の組成を有し、しかも平均粒径が2μm以下のβ−スポジュメン固溶体又はβ−石英固溶体を30〜70体積%析出してなり、かつ曲げ強度が200MPa以上の範囲にある結晶化ガラスからなることが望ましい。
【0032】
さらに、使用する結晶化ガラスの析出結晶量は30〜70体積%、好ましくは35〜60体積%とすることが望ましい。析出結晶量は、熱膨張係数や機械的強度にも影響を及ぼすが、特に耐摩耗性、被研磨特性および成形性に著しい影響を及ぼす。すなわち、結晶の析出量が30体積%未満であると耐摩耗性が不十分になる。これに対し、30体積%以上の量の結晶が析出している場合には、耐摩耗性は著しく向上し、数百回におよぶ割スリーブへの抜き差しを行っても外周面に傷が発生しない。
【0033】
ところが、必要以上に多量の結晶が析出していると被研磨特性や成形性を悪化させることになる。すなわち、70体積%より多くの結晶が析出すると、結晶性が強くなり、そのために色むらが発生し易く、効率の高い生産を行うことができない。
【0034】
結晶化ガラスの析出結晶量は、結晶化の温度および時間の条件を調節することによって調節することができ、例えば、結晶化に必要な温度に保ったまま、結晶化の時間を長くすることによって、結晶量を増加させることができ、逆に結晶化の時間を短くすれば、析出する結晶量を減少させることができる。
【0035】
また、本発明の結晶化ガラス製の外周パイプ2において、結晶化ガラスの析出結晶の平均粒径は2μm以下、好ましくは1μm以下である。平均粒径が2μm以下であれば、200MPa以上の曲げ強度が得られ、かつ、光フェルール10の外周パイプ2として十分な耐摩耗性を有する結晶化ガラスとなる。平均粒径2μmを超えると、結晶とガラスマトリックスの熱膨張差によって、両者の界面での熱応力が大きくなり、マイクロクラックが生じて機械的強度が低下したり、耐摩耗性が劣化したりするという問題がある。
【0036】
次に、本発明の結晶化ガラス製の外周パイプ2の表面に金属酸化物膜を形成して外周パイプ2の抗折強度を向上させることがさらに望ましい。この金属酸化物膜は結晶化ガラスと反応して結晶化ガラス表面の結晶化度を高める効果を有する析出結晶成分あるいは核形成成分からなり、例えば、ZrO2、SiO2、SnO2、Al2O3およびTiO2から選択される少なくとも一種で構成されている金属酸化物膜が適しており、適宜組み合わせてもよい。また、金属酸化物膜を結晶化ガラスよりも小さい熱膨張係数を有する金属酸化物で構成すると、熱膨張係数の差によって膜表面に圧縮応力が発生し、さらに抗折強度を向上させることができる点で好ましい。
【0037】
金属酸化物膜の膜厚は、0.005〜2.0μmであることが好ましい。膜厚が0.005μm未満では、膜厚が薄すぎて、耐摩耗性向上およびキズ防止効果が無くなる。また、膜厚が2.0μm以上では金属酸化物膜にクラックが生じて部分的に剥がれが生じるため好ましくない。
【0038】
フェルールの表面に金属酸化物膜を形成する方法としては、膜形成液に浸漬するディッピング法、膜形成液を塗布して被成膜物を高速回転させるスピンコート法、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等が使用可能である。
【0039】
また、本発明の結晶化ガラス製の外周パイプ2の表面に圧縮応力層を形成しておくことにより、抗折強度を向上させることが望ましい。一般に、抗折強度は、試料に徐々に曲げ荷重を印加してゆき、試料の表面に生じた引張応力が破壊強度を超えて破壊が起こる際の応力の値として表わされる。
【0040】
結晶化ガラス製の外周パイプ2の表面にあらかじめ圧縮応力層が形成されている場合、結晶化ガラス製の外周パイプ2に破壊が起こる際のクラックの進展を妨げるため抗折強度が向上する。
【0041】
なお、圧縮応力層は、急冷処理やイオン交換処理によって形成することができる。例えば、急冷処理の場合、結晶化ガラスを1000℃から100℃まで300℃/minの速度で急冷することによって、表面に圧縮応力層を形成することができる。
【0042】
また、イオン交換処理の場合、約400℃に保ったKNO3の溶融塩中に結晶化ガラスを10時間浸して、結晶化ガラス中のLiイオンを、イオン半径の大きいKイオンに置換することによって、表面に圧縮応力層を形成することが可能である。
【0043】
さらに、上記外周パイプ2の外周部の算術平均表面粗さがRa0.0005μm〜0.01μmであり、かつ内周部の算術平均表面粗さがRa0.1μm〜5.0μmであることが望ましい。これは外周部の算術平均表面粗さがRa0.0005μm未満は製造上および測定上の下限であることと、Ra0.01μmを超えると割スリーブとの磨耗や接続損失に影響を与えるからである。
【0044】
さらに、内周部の算術平均表面粗さがRa0.1μm未満であると表面が滑らか過ぎるために、フェルールボディー1の外周部1bとの接合性が悪く、光フェルール10を割スリーブへ繰り返して抜き差しを行う際に、外周パイプ2の内周部とフェルールボディー1の外周部1bとの間に剥離が生じる可能性がある。
【0045】
また、Ra5.0μmを超えると内周部の凹凸面が大きすぎて、一体成形を行う際に樹脂がスムースに流れ込まなくなり、細孔1aと外周パイプ2の外周部に対する同芯度が悪化するため、この範囲が望ましい。
【0046】
外周パイプ2は外周部に対してセンタレス加工などの粗加工を行った後、最終研磨仕上げすることによりRa0.0005μm〜0.01μmの面を得ることができる。また、内周部は旋盤などを用いて切削することによりRa0.1μm〜5.0μmの面を得ることができる。
【0047】
その他、外周パイプ2を通常ガラスのレンズ成形などで用いられるガラス用金型で成形することによって、外周部や、内周部を一体的に形成しても良い。この場合、金型のサイズや面状態を管理することによって、外周部や内周部を上記の望ましい算術平均表面粗さ範囲内に収めることができ、二次加工が不要となるという利点がある。
【0048】
次に、光フェルール10の先端面1eからのテーパ孔1fまでの細孔1aの長さLが一定の長さ以上であることが望ましい。それは次のような理由による。
【0049】
まず、光ファイバが接着固定されているため、温度変化の著しい環境下で長期間使用すると、光ファイバの被覆部が収縮し、光ファイバを引っ張る。この時、光ファイバは芯線の部分が細孔1aの部分で保持されているため、この長さLが短いと、芯線が被覆部に引っ張られて、初期の位置から動いてしまうという問題があるためである。
【0050】
発明者らは、繰り返し実験を行った結果、保持される光ファイバ11の芯線の長さ、すなわち光フェルール10の先端面1eからテーパ孔1fの開始端までの長さLは、4mm以上25mm以下であれば良いことを見出した。
【0051】
この長さLが4mm未満のときは、光ファイバの芯線に上記の収縮方向の力が加わったときに、光ファイバを保持することができず、位置ずれを起こしてしまい、この光フェルールを用いて光ファイバ固定具を構成したときに、好ましい光学的接続が損なわれる。また、この長さLが25mmを超えるときは、光フェルールが大きくなりすぎるため、25mm以下とすることが望ましい。
【0052】
また、本発明の光フェルール10のフェルールボディー1の材質としては、ポリエーテルイミド(PES)、ポリフェニレンサルホン(PPS)、ポリイミド(PA)、液晶ポリマー(LCP)などのエンジニアリングプラスチック、または、それらを主成分としたアロイ樹脂を用いることができる。その中でも特に液晶ポリマーが安定した成形体が得られるという点で望ましい。
【0053】
次に、本発明の光フェルール10の他の実施形態について説明する。
【0054】
図2(a)はフェルールボディー1の細孔1aを外周パイプ2と同程度に長くしたものである。これにより、光ファイバの接着力を強化するという効果が得られる。
【0055】
また、図2(b)は中孔1gを細孔1aより内径を大きくしたものであり、これにより光ファイバ11の芯線の長さを保つと共に、この中孔1gを成型するための成形金型のピンの外径を太くすることができるので、光フェルール10の安定した寸法精度を得ることができる。なお、中孔1gは螺旋状溝、リング状溝、もしくは表面荒れ部を有する形状であっても良い。これにより光ファイバ11の接着保持性を高めることができる。
【0056】
図2(c)では外周パイプ2の長さがフェルールボディー1の外周部1bの一部まで形成したものであり、研磨用治具の取り付け、光アダプタの割スリーブに嵌装などの際に、外周部1bの全長に接触しない。このように必要最低限のみ外周パイプ2を用いていることから、さらに製造コストを低減することができる。
【0057】
さらに、図2(d)は外周パイプ2がフランジ部1dの内部まで入り込んだ形状であり、これにより光フェルール10をさらに高強度にすることが可能になる。
【0058】
なお、図2(c)、図2(d)では、図1で説明したものと同じく、外周パイプ2の端面の全体が斜めに加工されて、面取部1hを形成しているが、図2(a)や図2(b)に示すように、外周パイプ2の端面の一部が面取部1hを形成しているか、外周パイプ2の少なくとも一部が前記面取部1hの面内に露出していてもよく、いずれの形態であっても、またいずれの組み合わせにおいても本発明の効果を奏することができる。
【0059】
しかしながら、図1もしくは図2(c)、図2(d)に示したように、外周パイプ2の端面の全体が斜めに加工されて、面取部1hを形成している構成のときは、光フェルールを割スリーブなどへ繰り返して脱着させる時に、接触面全体が耐摩耗性を有しているため、最も安定して本発明の効果を奏することができ、より好ましい。
【0060】
次に、本発明の光フェルール10のさらに他の実施形態について図3を用いて説明する。
【0061】
図3は、貫通孔3aを備えたキャピラリ3を樹脂からなるフェルールボディー1の先端に備えた構成であり、本発明と同様の効果を奏することができる。また、ここでは先端からキャピラリ3が飛び出した形状のものを示したが、キャピラリ3の先端面3bはフェルールボディー1先端と同一面もしくは内側に位置していても、本発明の同様の効果を奏することができる。
【0062】
次に本発明の光ファイバ固定具の製造方法について説明する。
【0063】
まず、本発明の外周パイプ2について製造方法を説明する。上記組成の結晶化ガラスのインゴット母材を作製する。結晶化ガラスは、混合したガラス原料を、例えば1600℃〜1700℃で24時間程度溶融させ、カーボンなどの型に鋳込み、徐冷を行い、得られたガラスを最高温度1100℃で結晶化させることによって得られる。
【0064】
次に、得られた結晶化ガラス母材の内周面を真円度および同芯度が1μm以内になるように精密研削を行い、最後にその結晶化ガラス母材を加熱延伸加工し、外周パイプ2が少なくとも1個以上の長手方向に長い円筒状の長物を得る。
【0065】
上記延伸工程では結晶化ガラス母材の寸法精度が比例して転写されるので、真円度や同芯度は径が細くなる分、小さくなり、良好な寸法精度が得られる。
【0066】
この段階ですでに、内周面、外周面が完成されており、このあと長手方向に外周パイプ2の所定の長さになるように切断加工を行い、円筒体を得る。ここで、外周パイプ2の片側の端面に面取部を形成しておくことが望ましい。
【0067】
次に、図4を用いて成形方法について説明する。図4は本発明の成形金型の基本構造を示す断面図である。樹脂成形金型30は、鋼板31、鋼板32、鋼板33、鋼板34の4枚からなり、その中に、細孔1aを形成し、光ファイバの被覆を保持するための芯線ガイド孔1c、該芯線ガイド孔1cにつながるテーパ孔1fを成型するためのピン36とそれを受けるためのピン35からなる。
【0068】
また、鋼板32は外周パイプ2を保持しており、しかも溶融樹脂を流し込むための導入孔(不図示)を有する。鋼板31、32、33、34を組み合わせることにより、相互に密着し、溶融樹脂を流し込むことによって外周パイプ2内にフェルールボディー1が成形される。
【0069】
ここで、外周パイプ2の片側の端面をあらかじめ加工して面取部を形成し、鋼板31に設けた面取部1h形成部分と略同一面となるように設置することが望ましい。その理由としては、割スリーブへの脱着による磨耗がなくなるという光フェルールとしての特性の向上はいうまでもなく、溶融樹脂を流し込んだ際に、形状が平坦となるので面取部1hにまで十分に樹脂が回り込みやすくなるからである。
【0070】
以上の構成による金型装置を用いた場合、例えば、射出成形では射出成形機ノズル(不図示)から、樹脂導入孔(不図示)を経て、樹脂材を注入し、金型内部に充填すれば良い。なお、成型方法は、射出成形が望ましいが、同様の金型構造を用いればプレス成形、トランスファー成型などの方法でもかまわない。
【0071】
図5に、本発明の光フェルールを用いて構成した光ファイバ固定具を示す。この光ファイバ固定具20は、図1の光フェルール10に対して、光ファイバ11を接着剤12によって接着固定した構成であり、光ファイバ11を接着固定した後は、先端面1eを光ファイバ11の先端と共に略同一面となるように、仕上げ研磨加工を行っている。これにより光ファイバコネクタとして割スリーブ内で一対の光ファイバ固定具20同士が接続した際に、光の損失が少なく伝送される。
【0072】
本発明の光ファイバ固定具20は、剛性の高い高硬度の外周パイプ2を周囲に備えているため、先端面1eを研磨するときに、外周パイプ2の部分を研磨治具に固定して保持しても保持部が変形することがない。そのため、研磨後の先端面1eの略凸球面の曲率中心が軸心からのずれが小さく、例えば、IEC規格の基準値である50μm以内に十分に収めることができる。その結果、光ファイバコネクタとして2個の光フェルールを接続させた際に、先端面1eが十分に変形することができ、光ファイバ間に隙間が生じず、反射損失を極小に押さえられるという効果を奏する。
【0073】
【実施例】
以下に示す方法で実験を行った。
【0074】
本発明の第一の実施形態として図1(a)に示す光フェルール10を結晶化ガラスの外周パイプ2とステンレス製の外周パイプ2のものを試作した。
【0075】
本発明の結晶化ガラス製の外周パイプ2はSiO2を65重量%、Al2O3を20重量%、Li2Oを2.0重量%、MgOを1.5重量%、TiO2を2.1重量%、ZrO2を1.3重量%、TiO2+ZrO2を3.1重量%、K2Oを2.6重量%、ZnOを1.6重量%、BaOを2.1重量%、残部をSiO2とした組成とした。
【0076】
上記組成の結晶化ガラスのインゴット母材を作製し、次に得られた結晶化ガラス母材の内周面を真円度および同芯度が1μm以内になるように精密研削を行った。次に、その結晶化ガラス母材を加熱延伸加工し、少なくとも1個以上の長手方向に長い円筒状の長物を得た。なお、加熱延伸加工では相似形のまま延伸されるため、内周面、外周面については、この段階ですでに完成されている。
【0077】
その後、長手方向に外周パイプ2の所定の長さになるように切断加工を行い、円筒体を得た。このあと片側の端面に30°の面取部を形成した。
【0078】
また、ステンレスはSUS304も用いて、旋盤による切削加工により上記結晶化ガラス製の外周パイプ2と同じ精度になるように製作した。
【0079】
次に、上記結晶化ガラス及びステンレスの外周パイプ2を用いて、図4に示す方法で光フェルール10を作製した。
【0080】
共に、細孔1aの内径φ0.126mm、外径φ2.4995mm、全長18.5mm、フランジ部外径φ4.5mmと同一寸法とした。また、フェルールボディー1を液晶ポリマー(LCP)で外周パイプ2とともに一体成形した。
【0081】
また、細孔1aの長さLを4.3mm、外周パイプ2の外周面と端面の境界部にR0.05mmのR面を形成した。
【0082】
ここで、結晶化ガラスは細孔1a長さLを3.8mm、及び外周パイプの外周面と端面の境界部にR面を形成しないサンプルも同時に試作した。
【0083】
比較例として、図6に示す従来のキャピラリ53をジルコニアセラミックス製とし、フェルールボディー54をステンレス製としたセラミックス製の光フェルール50と、図7に示す液晶ポリマー製の光フェルール60を試作した。
【0084】
共に、細孔51aの内径φ0.126mm、外径φ2.4995mm、全長18.5mm、フランジ部外径φ4.5mmと同一寸法とした。
【0085】
また、外周パイプ2の外周面と端面の境界部にR0.05mmのR面を形成した。そして、図7に示す光フェルール60の細孔1aの長さLを4.3mmとした。
【0086】
上記本発明の4種類のサンプルと従来例の2種類のサンプルを各20個作成し、各光フェルールの同芯度を同芯度測定器にて測定した。
【0087】
次に光ファイバ11を接着固定し先端面1eを研磨加工して光ファイバ固定具20とした。
【0088】
その際の、製造コストを算出した。
【0089】
上記光ファイバ固定具20の中心ずれを測定し、その時の合計の研磨時間を測定した。また、そのサンプルの内半数の各10個について、挿抜試験を行い接続損失の変動を確認した。また、残りの各10個のサンプルにて−40°〜+85℃の熱衝撃試験を行い、光ファイバの位置ずれを測定した。
【0090】
上記各試験の結果を表1に示す。合計研磨時間と製造コストは従来例のセラミックスを1とした時の比率であらわした。また、表中の値は各平均値を表す。
【0091】
【表1】
【0092】
以上の結果より、従来例のセラミックス製では合計研磨時間が他に比較して3倍程度大きい。また、従来例の樹脂製では中心ずれが129μmと大きくなり、しかも500回挿抜試験後の接続損失の変動が0.38dBと大きくなるという欠点を生じた。
【0093】
これに対し、本発明のサンプルでは、結晶化ガラスのR面形成なしとステンレスでの500回挿抜試験後の接続損失の変動が0.13dB、0.14dBとわずかながら大きな結果となったが、規格値0.2dBから判断すると問題のないレベルである。
【0094】
また、結晶化ガラスの光ファイバ素線保持部の長さLが4mmを下回った3.8mmのサンプルでは1000サイクル後の光ファイバの位置ずれが48nmとわずかながら大きな結果となったが、規格値50nmから判断すると問題のないレベルである。
【0095】
さらに、製造コストも実用化されている従来例のセラミックス製のものよりも安価となることがわかった。
【0096】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、軸中心部に光ファイバを収納するための貫通孔を有し、先端に面取部を有する光フェルールにおいて、前記光フェルールは、樹脂製のフェルールボディーと該フェルールボディーの外周部の少なくとも一部に被着された硬質の外周パイプとからなり、該外周パイプの少なくとも一部が前記面取部の面内に露出していることにより、安価でしかもセラミックス製と同等の性能を有する樹脂を主体とした光フェルールを得ることができ、しかも、光フェルールを割スリーブへの繰返脱着時に、面取部が磨耗することがなくなり、挿入性が劣化することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光フェルールを示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は本発明の光フェルールを示す断面図である。
【図3】本発明の光フェルールを示す断面図である。
【図4】本発明の光フェルールの製造方法における成形金型の基本構造を示す断面図である。
【図5】本発明の光フェルールを用いた光ファイバ固定具の断面図である。
【図6】従来の光フェル−ルを示す断面図である。
【図7】従来の光フェル−ルを示す断面図である。
【図8】従来の光フェル−ルを示す断面図である。
【符号の説明】
1:フェルールボディー
1a:細孔
1b:外周部
1c:芯線ガイド孔
1d:フランジ部
1e:先端面
1f:テーパ孔
1g:中孔
1h:面取部
1i:R面
2:外周パイプ
3:キャピラリ
3a:貫通孔
3b:先端面
10:光フェルール
11:光ファイバ
12:接着剤
20:光ファイバ固定具
30:樹脂成形金型
31:鋼板
32:鋼板
33:鋼板
34:鋼板
35:ピン
36:ピン
Claims (7)
- 軸中心部に光ファイバを収納するための貫通孔を有し、先端に面取部を有する光フェルールにおいて、前記光フェルールは、樹脂製のフェルールボディーと該フェルールボディーの外周部の少なくとも一部に被着された硬質の外周パイプとからなり、該外周パイプの少なくとも一部が前記面取部の面内に露出していることを特徴とする光フェルール。
- 前記外周パイプの端面の少なくとも一部が斜めに加工され、前記面取部の少なくとも一部を形成していることを特徴とする請求項1記載の光フェルール。
- 前記外周パイプの外周面と前記外周パイプの端面の境界部にR面が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光フェルール。
- 前記外周パイプを結晶化ガラスにより形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光フェルール。
- 前記貫通孔は、光ファイバの芯線を保持する細孔部と光ファイバの被覆部を保持する芯線ガイド部と、前記芯線ガイド部から前記細孔部を結ぶテーパ孔部よりなり、前記フェルールボディー内部に一体形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光フェルール。
- あらかじめ必要な精度に加工した前記外周パイプを金型にあわせて固定し、該金型中に樹脂を注入し射出成型法により前記フェルールボディーと前記外周パイプとを一体に形成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光フェルールの製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の光フェルールに光ファイバを接着固定し先端面を研磨仕上げしたことを特徴とする光ファイバ固定具。
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CN110333579A (zh) * | 2019-08-12 | 2019-10-15 | 黄石晨信光电股份有限公司 | 一种光通讯连接器塑料插芯 |
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- 2003-01-29 JP JP2003021182A patent/JP2004233591A/ja active Pending
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