JP2004232137A - 吸音材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有機繊維が相互に交絡したシート状集合体からなる吸音材であって、前記有機繊維が部分的にフィブリル化した短繊維であることを特徴とする吸音材とする。このとき、前記シート状集合体の厚さを5〜50mmとし、かつ前記シート状集合体の通気度を1〜100cm3/cm2・secとすることが好適である。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機繊維が相互に交絡したシート状集合体からなる吸音材及びその製造方法に関する。特に、当該有機繊維が部分的にフィブリル化した短繊維であることを特徴とする吸音材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の騒音問題に対する関心の高まりに伴って、建築物などにおいて騒音防止対策として各種の繊維吸音材が使用されるようになってきている。このような繊維吸音材による吸音現象は、気体の通過する連続孔の形状による吸収や繊維自体による振動の吸収などが複雑に絡み合ったものであると説明されている。一般に、繊維吸音材においては、繊維の種類が同じであればその径が細い方が低周波数領域での吸音性が向上することが知られており、メルトブロー法や分割繊維などによって得られた極細繊維を用いる方法が提案されている。
【0003】
例えば、特開平10−251951号公報(特許文献1)には、ポリビニルアルコール系ポリマーを50重量%以上含有し、その平均径が0.05〜5μmであるPVA系フィブリル繊維からなる吸音シートが記載されている。このフィブリル繊維は、好適には、PVAとそれと非相溶のポリマーからなる海島相分離構造繊維を割繊処理することによって得られるものであり、当該フィブリル繊維と他の有機繊維とを混合して吸音シートを構成できることも記載されている。このような構成にすることによって、軽量で低周波領域の音に対し良好な吸音性能を示す材料を提供できるとされている。
【0004】
また、特開平10−254452号公報(特許文献2)には、無機繊維質材料とフィブリル化した有機質繊維との混合物が、多孔質成形体を形成してなる吸音材が記載されている。この吸音材は、中低周波数音に対して高い吸音性能を有するとともに、振動による繊維の脱落がないとされている。ここで使用されるフィブリル化した有機質繊維とは、繊維自体が数μm以下の極細の径を有する有機質繊維フィブリル、又は繊維の表面に数μm以下の極細径ひげ状突起を有する有機質繊維であるとされている。これに無機質繊維を混合することによって、不燃性とするとともに、かさ密度を高くして吸音率を向上させることができるとされている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−251951号公報(特許請求の範囲、第2〜3頁)
【特許文献2】
特開平10−254452号公報(特許請求の範囲、第2〜3頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
吸音材には、ある程度の通気性が必要であることが知られているが、極細繊維だけで繊維集合体を作製した場合、たとえばセルロース系繊維であれば紙状となるが、通気性が低いため厚い集合体を作製しても表面付近での反射が大きくなり空気の振動が内部まで伝わらない。また極細繊維のみからなる集合体は柔らかく、形態を安定させるため他の材料との張り合わせなど、加工が必要となる。
【0007】
特開平10−251951号公報の実施例に記載の吸音シートの厚みは0.5〜0.6mmであり、厚みが薄いこともあって通気性については何ら考慮されていない。また、当該吸音シートはPVAとその他の複合繊維を割繊して製造されており、複数の素材が混在している結果、リサイクルしにくい点も問題であった。また、特開平10−254452号公報に記載の吸音材は、無機繊維質材料を大量に含んでいるので、それを廃棄処理する際には、有機物と無機物の分別が困難であるし、リサイクルもしにくい。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、広い周波数領域、特に低周波数領域において優れた吸音性を有しながら、通気性や形態保持性に優れた吸音材及びその製造方法を提供することを目的とする。また、廃棄繊維製品からの吸音材の作製を可能とし、使用後の吸音材を再び新たな吸音材の原料とすることを可能とすることも、本発明の一つの目的である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、有機繊維が相互に交絡したシート状集合体からなる吸音材であって、前記有機繊維が部分的にフィブリル化した短繊維であることを特徴とする吸音材を提供することによって解決される。部分的にフィブリル化した短繊維を使用することによって、フィブリル化した部分によって低周波数領域の吸音性を改善し、フィブリル化していない部分によって通気性と形態保持性が確保されるものである。
【0010】
このとき、前記シート状集合体の厚さが5〜50mmであり、かつ前記シート状集合体の通気度が1〜100cm3/cm2・secであることが好ましい。また、実質的に単一の素材の有機繊維のみからなる吸音材が好適な実施態様である。
【0011】
また、上記課題は、有機繊維に物理的衝撃を与えて部分的にフィブリル化させた短繊維を作製した後、該短繊維を相互に交絡させてシート状集合体を形成させることを特徴とする吸音材の製造方法を提供することによっても解決される。このとき、前記短繊維を液体中で撹拌して分散させた後、抄造してシート状集合体を形成させる方法が好適である。
【0012】
本発明の吸音材を製造するに際しては、廃棄された繊維製品に物理的衝撃を与えて部分的にフィブリル化させた短繊維を製造する方法が好適である。また、本発明の吸音材を開繊した後、再度交絡させてシート状集合体を形成させる方法も好適である。これらの製造方法は、資源のリサイクルの観点から好ましい方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の吸音材は、有機繊維が相互に交絡したシート状集合体からなる吸音材であって、前記有機繊維が部分的にフィブリル化した短繊維であることを特徴とするものである。
【0014】
ここで原料として使用される有機繊維は、部分的にフィブリル化させて極細繊維を発生させることのできる繊維であれば良く、特に限定されない。フィブリル化が容易であることから、綿、麻、ポリノジック、リヨセルなどのセルロース系繊維、ビニロン、アクリル、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリエーテルなどが好適なものとして例示される。有機繊維を二種類以上使用することも可能であるが、後述するようにリサイクル性の観点からは必ずしも好ましくない場合がある。
【0015】
原料として使用される有機繊維の直径は、好適には5〜100μmである。本発明の吸音材においては、繊維集合体の中に直径が5〜100μmのフィブリル化していない部分が存在して、通気性や形態保持性に寄与することになる。原料の有機繊維の直径が5μm未満の場合には、通気性が低下し、形態保持性も悪化するおそれがあり、より好適には10μm以上である。一方、原料の有機繊維の直径が100μmを超える場合には、吸音性能が低下するおそれがあり、より好適には50μm以下である。原料の段階では、短繊維であっても良いし、長繊維であっても良い。また、布地や縫製加工品であっても良く、廃棄された繊維製品であっても良い。
【0016】
フィブリル化の手法は、部分的に極細繊維を発生させることができるものであればよく、特に限定されない。延伸配向した有機繊維に物理的衝撃を加えてフィブリル化させることもできるし、化学的に膨潤させるなどしてフィブリル化させることもできる。また、複合繊維を割繊することによってフィブリル化させることもできるが、複合繊維を割繊する場合には、複数の素材が吸音材に含まれることになるため、リサイクル性の観点からは必ずしも好ましくない場合がある。
【0017】
したがって、本発明の吸音材を製造するに際しては、有機繊維、特に実質的に単一の素材からなる有機繊維に物理的衝撃を与えて部分的にフィブリル化させて短繊維を作製することが好ましい。ここで実質的に単一とは、素材として実質的に同一ということであり、その銘柄や組成が僅かに異なるものも含まれるものである。このように実質的に単一の素材からなることで、リサイクル性に優れた吸音材を提供することができる。
【0018】
物理的衝撃を与える方法は特に限定されず、破断、粉砕、切断、叩解などの操作を採用することができる。例えば、粉砕機で繊維を粉砕することによって部分的にフィブリル化させることが可能である。また、水中で叩解する方法なども採用することができる。物理的衝撃を与える強さは対象とする繊維によっても異なるが、これを適当に調整することで、部分的にフィブリル化した、低周波数領域での吸音性能、通気性及び形態保持性のバランスに優れた部分フィブリル化繊維を得ることができる。
【0019】
ここでいう部分フィブリル化繊維は、フィブリル化して得られた極細繊維の部分と、5〜100μm径のフィブリル化されていない太径部分とを有する短繊維である。この太径部分は、原料の繊維のままの形態の部分であってもよいし、物理的衝撃等によって分割されながらも5〜100μm径の太さを保持している部分であってもよい。また、フィブリル化の操作のときにランダムに切断されるために、その長さのバラツキが大きいが、低周波数領域での吸音性能と形態保持性のバランスからは、通常0.2〜10mm程度である。この数値は、顕微鏡で観察される短繊維の長さの大まかな数平均値である。
【0020】
また、フィブリル化した部分の径が0.1〜4μmであり、かつフィブリル化した部分の長さが10μm以上であることが好ましい。このような一定の寸法のフィブリルが形成されることで低周波数領域での吸音特性が発揮される。このようなフィブリルは、通常、短繊維の端部に形成されることが多いが、その両端あるいは一端のみに形成されても良い。また、端部ではない中間部分にフィブリルが形成されても構わない。しかしながら、本発明においては、フィブリル化による極細繊維が部分的に形成されていて、極細繊維を形成せずに太径のままでいる部分を有することが重要である。このような部分があることによってフィブリルがバラバラの個別の繊維にバラけることがなく、繊維集合体の形態を保持するのに寄与することができるからである。本発明の吸音材では、上記のような形態を有する短繊維が主たる構成成分であることが好適である。ここで、主たる構成成分とは、重量基準で半量以上が上述のような形態を有しているということである。
【0021】
こうして得られた部分フィブリル化繊維を相互に交絡させて、シート状の集合体を形成して、本発明の吸音材が得られる。部分フィブリル化繊維を交絡させる方法は特に限定されないが、液体中で撹拌して分散させた後、抄造してシート状集合体を形成させる方法が好ましく採用される。本発明で使用する部分フィブリル化繊維は、細かいフィブリルの分岐を有していながらも、繊維全体がつながっている。したがって、重力の影響を受けにくい液体中で交絡させてから液体を除去する方法によって、細かいフィブリルを絡ませることができ、良好な形態保持性を有する繊維集合体を得ることができる。
【0022】
部分フィブリル化繊維を分散させる液体は、分散させる繊維の種類に対応して選択される。部分フィブリル化繊維が、綿、麻、ポリノジック、リヨセルなどのセルロース系繊維、ビニロンなど、親水性の繊維である場合には、水に分散させることが好ましい。このとき、必要であれば界面活性剤を少量添加しても良いし、有機溶媒を混合して用いても良い。また、ビニロン、アクリル、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリエーテルなどの疎水性の繊維であれば、有機溶媒に分散させることが好ましい。使用される有機溶媒は、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハイドロカーボンなどが使用可能であるが、これらの中でも、安全性やコストの面から、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコールが好適に使用される。このとき、複数の種類の有機溶媒を混合使用しても良いし、水を混合して使用しても良い。
【0023】
前記部分フィブリル化繊維を液体中で撹拌して分散させる方法は特に限定されず、液体中に均一に分散させることの可能な撹拌方法であれば良い。部分フィブリル化繊維1gに対して、10〜1000ml程度の液体が好適に使用される。
【0024】
こうして分散させた後、抄造してシート状集合体が形成される。抄造の方法は特に限定されるものではなく、液体中に分散された部分フィブリル化繊維から液体が分離されてシート状集合体が形成される方法であれば良い。金網、布、濾紙など、液体を通過させ、部分フィブリル化繊維をその上に堆積させることの可能な素材上に堆積させることができる。得られたシート状集合体から、残存する水や有機溶媒などの揮発分を乾燥除去して、本発明の吸音材が得られる。
【0025】
本発明の吸音材には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他の繊維、粒子、又は接着剤などを使用することもできる。しかしながら、リサイクル性の観点からは、このような他の成分の配合は最低限にすることが好ましい。例えば、フィブリル化していない繊維を配合することもできるが、この場合、部分フィブリル化繊維と実質的に同一素材の繊維を配合することが、リサイクル性の観点からは好ましい。
【0026】
得られる吸音材の厚みは特に限定されるものではないが、好適には5〜50mmである。本発明の吸音材は通気性に優れるため、吸音材の表面だけでなく、その内部においても振動のエネルギーを吸収することができるから、比較的厚みの大きい吸音材として好適に使用される。このときの厚みは、吸音材として実際に使用される状態での厚みとして測定されるものである。
【0027】
本発明の吸音材の好適な見かけ密度は30〜150kg/m3である。見かけ密度が高すぎる場合には、吸音材の重量が大きくなりすぎる上に、通気度が低下して吸音性能が低下しやすくなる。一方、見かけ密度が低すぎる場合には、所望する吸音性能を得るために必要な吸音材の厚みが大きくなりすぎる上に、通気度が大きくなってやはり吸音性能が低下しやすくなる。見かけ密度はより好適には40kg/m3以上であり、また100kg/m3以下である。
【0028】
また、得られる吸音材の通気度が、1〜100cm3/cm2・secであることが好ましい。この程度の通気度が得られる程度のフィブリルが形成されている有機繊維を使用することが、本発明の吸音材においては好適である。フィブリル化が不十分であると通気度は大きくなりすぎるし、フィブリル化が過度に進行すると通気度は小さくなりすぎる。通気度を1cm3/cm2・sec以上とすることで、吸音材表面での音波の反射が少なく、吸音材内部においても効率的に音波のエネルギーを吸収することが可能である。より好適には2cm3/cm2・sec以上であり、さらに好適には3cm3/cm2・sec以上である。一方、通気度が100cm3/cm2・secを超える場合には振動の吸収効率が低下し、必要な吸音材の厚みが大きくなりすぎて不経済になるおそれがある。より好適には80cm3/cm2・sec以下であり、さらに好適には60cm3/cm2・sec以下である。当該通気度は、JIS L 1096「一般織物試験方法」の通気性A法(フラジール型法)を準用して測定される値である。
【0029】
こうして得られた繊維集合体からなる吸音材は、それ単独で吸音材として使用することも可能であるが、必要とされる物性に応じて、他の材料と積層して用いることもできる。本発明の吸音材は、広い周波数領域、特に低周波数領域において優れた吸音性を有しながら、通気性や形態保持性にも優れたものである。したがって、吸音性が要求される各種の用途に使用できる。例えば、建築物の内外装、音響装置、騒音発生機器のハウジングなど、各種の用途に使用可能である。
【0030】
本発明の吸音材は、部分フィブリル化繊維単独で構成したものであっても、吸音性、通気性及び形態保持性のバランスに優れるから、回収再使用しても均一な品質のものが得られやすい。したがって、使用後の本発明の吸音材を開繊した後、再度交絡させてシート状集合体を形成させて、再度本発明の吸音材とすることは好適な実施態様である。
【0031】
また、本発明の吸音材の原料とする繊維材料は、もちろん新品を使用しても構わないが、廃棄された繊維製品に物理的衝撃を与えて部分的にフィブリル化させた短繊維を製造することも、好ましい実施態様である。
【0032】
したがって、廃棄物を原料として本発明の吸音材を製造することもできるし、本発明の吸音材を回収して再度吸音材として再生することも可能である。繊維材料の廃棄物のリサイクルの問題は近年の課題であるが、本発明はこのような廃棄物の回収、再使用という観点からも有用な技術を提供するものである。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
原料として直径が15〜26μmの綿を使用した。原料の電子顕微鏡写真を図1に示す。これを不二パウダル株式会社製小型微粉砕機「SAMPLE MILL KII W−2」に投入して粉砕処理し、粉砕機内部に配置されたふるいの開口(直径1mmの円形)を通過したものを、粉砕品として得た。得られた粉砕品を電子顕微鏡で観察した写真を図2に示す。繊維全体としての太さを維持している部分も有しながら、その端部などにフィブリルが発生している短繊維が観察される。主なフィブリルの径は0.1〜4μmであり、その長さは10μm以上であった。このように部分的にフィブリル化された短繊維が主たる成分として含まれており、その短繊維の平均的な長さは0.2〜1mm程度であった。
【0035】
得られた部分フィブリル化繊維5gを500mlの水中に投入し、棒を用いて十分に撹拌してから、5種A濾紙を敷いたブフナー漏斗で濾過して短繊維を堆積させ、緩やかに吸引することで水を除去した後、定温乾燥機を用いて80℃で十分乾燥させることによって、シート状繊維集合体を得た。得られたシート状繊維集合体は、直径10cm、厚さ1.4cm、重さ5gで、見かけ密度が45kg/m3であった。また、株式会社大栄科学精器製作所製「フラジール型通気度試験機AP−360」を用い、JIS L 1096「一般織物試験方法」にある通気性A法(フラジール型法)を準用して通気度を測定したところ、52cm3/cm2・secであった。また、ブリューエルケアー社製2マイクロホンインピーダンス測定管4206型を用いて測定した吸音特性は図7のとおりであった。繊維集合体の端部を1cm程度指先でつまんでも自重では破損することがなく、十分な形態保持性を有していた。
【0036】
比較例1
実施例1で使用したのと同じ綿をはさみで約2mmに切断し、フィブリル化していない短繊維を得た。これを実施例1と同様に水中に分散させてから堆積させ、厚さ3cm、直径10cm、重さ5gで、見かけ密度21kg/m3のシート状繊維集合体を得た。実施例1と同様に通気度と吸音特性を測定したところ、通気度は125cm3/cm2・secであり、吸音特性は図8のとおりであった。この繊維集合体の端部を1cm程度指先でつまむと、自重で破壊した。
【0037】
比較例2
セルロース繊維のフィブリル化が進んだ状態と考えられる試料として、濾紙(アドバンテック東洋株式会社製No.5A)を使用した。濾紙5gを水500mlに投入して、ミキサーで撹拌して水中に十分に分散させてから実施例1と同様に堆積させて、直径10cm、厚さ0.6cm、重さ10gで、見かけ密度212kg/m3のシート状繊維集合体を得た。シート状繊維集合体の電子顕微鏡写真を図3に示す。全体が細かく(概ね3μm以下)フィブリル化した繊維から構成されていることが観察される。実施例1と同様に通気度と吸音特性を測定したところ、通気度は0.8cm3/cm2・secであり、吸音特性は図9のとおりであった。
【0038】
図7及び図8に示されるように、実施例1の部分フィブリル化繊維からなる吸音材は、フィブリル化されていない繊維からなる比較例1の吸音材に比べて、1000Hz以下の低周波領域での吸音性が向上している。しかも、形態保持性も向上していることがわかる。一方、図9に示されるように、フィブリル化が高度に進行した比較例2の吸音材は、膜振動によると考えられる特定の周波数領域では吸音性が向上するものの、波長に対する依存性が大きすぎ、広い周波数領域に亘るバランスの良い吸音性能を発揮することができなかった。これは、フィブリルの存在量が多過ぎて通気を妨げるため、吸音する周波数領域が狭くなったためであると考えられる。
【0039】
実施例2
原料として1.7dtex(直径約13μm)の芳香族ポリアミド繊維(帝人株式会社製パラ型アラミド繊維「テクノーラ」)を使用した。原料の電子顕微鏡写真を図4に示す。これを実施例1と同様に粉砕処理して、粉砕品を得た。得られた粉砕品を電子顕微鏡で観察した写真を図5及び図6に示す。原料の繊維の太さにほぼ匹敵する太さを維持している部分も有しながら、フィブリル化による極細繊維が多数発生している部分も観察される。主なフィブリルの径は0.1〜4μmであり、その長さは10μm以上であった。このように部分的にフィブリル化された短繊維が主たる成分として含まれており、その短繊維の平均的な長さは0.2〜3mm程度であった。
【0040】
得られた部分フィブリル化繊維5gを500mlのエチルアルコール中に投入し、棒を用いて十分に撹拌してから、5種A濾紙を敷いたブフナー漏斗で濾過して短繊維を堆積させ、緩やかに吸引することでエチルアルコールを除去した後、定温乾燥機を用いて80℃で十分乾燥させることによって、シート状繊維集合体を得た。得られたシート状繊維集合体は、直径10cm、厚さ0.7cm、重さ4gで、見かけ密度が73kg/m3であった。実施例1と同様に通気度と吸音特性を測定したところ、通気度は12cm3/cm2・secであり、吸音特性は図10のとおりであった。繊維集合体の端部を1cm程度指先でつまんでも自重では破損することがなく、十分な形態保持性を有していた。
【0041】
比較例3
実施例2で使用したのと同じ芳香族ポリアミド繊維をはさみで約2mmに切断した。これを実施例2と同様にエチルアルコール中に分散させてから堆積させ、厚さ2.8cm、直径10cm、重さ5gで、見かけ密度23kg/m3のシート状繊維集合体を得た。実施例1と同様に通気度と吸音特性を測定したところ、通気度は95cm3/cm2・secであり、吸音特性は図11のとおりであった。この繊維集合体の端部を1cm程度指先でつまむと、自重で破壊した。
【0042】
図10及び図11に示されるように、実施例2の部分フィブリル化繊維からなる吸音材は、フィブリル化されていない繊維からなる比較例3の吸音材に比べて、1000Hz以下の低周波領域での吸音性が顕著に向上していることがわかる。また、同時に形態保持性も向上していることがわかる。
【0043】
【発明の効果】
本発明の吸音材は、広い周波数領域、特に低周波数領域において優れた吸音性を有しながら、通気性や形態保持性に優れているので、建築物の内外装、音響装置、騒音発生機器のハウジングなど、各種の用途に対して好適に使用することができる。しかも、廃棄繊維製品からの吸音材の製造も可能であり、使用後の吸音材を再び新たな吸音材の原料とすることも可能であることから、リサイクル性に優れた吸音材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で使用した原料の綿の電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1で得られた部分フィブリル化繊維の電子顕微鏡写真である。
【図3】比較例2で使用した濾紙の電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例2で使用した原料の芳香族ポリアミド繊維の電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例2で得られた部分フィブリル化繊維の電子顕微鏡写真(低倍率)である。
【図6】実施例2で得られた部分フィブリル化繊維の電子顕微鏡写真(高倍率)である。
【図7】実施例1で得られた繊維集合体の吸音特性である。
【図8】比較例1で得られた繊維集合体の吸音特性である。
【図9】比較例2で得られた繊維集合体の吸音特性である。
【図10】実施例2で得られた繊維集合体の吸音特性である。
【図11】比較例3で得られた繊維集合体の吸音特性である。
Claims (7)
- 有機繊維が相互に交絡したシート状集合体からなる吸音材であって、前記有機繊維が部分的にフィブリル化した短繊維であることを特徴とする吸音材。
- 前記シート状集合体の厚さが5〜50mmであり、かつ前記シート状集合体の通気度が1〜100cm3/cm2・secである請求項1記載の吸音材。
- 実質的に単一の素材の有機繊維のみからなる請求項1又は2記載の吸音材。
- 有機繊維に物理的衝撃を与えて部分的にフィブリル化させた短繊維を作製した後、該短繊維を相互に交絡させてシート状集合体を形成させることを特徴とする吸音材の製造方法。
- 前記短繊維を液体中で撹拌して分散させた後、抄造してシート状集合体を形成させる請求項4記載の吸音材の製造方法。
- 廃棄された繊維製品に物理的衝撃を与えて部分的にフィブリル化させた短繊維を製造する請求項4又は5記載の吸音材の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか記載の吸音材を開繊した後、再度交絡させてシート状集合体を形成させることを特徴とする吸音材の製造方法。
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