JP2004231933A - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】側鎖にカルボニル含有基と含窒素複素環とを有する熱可塑性エラストマーと、アミノ基含有化合物とを含有する熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度変化により架橋形成および架橋解離を繰り返し再現しうる特性(以下、単に「リサイクル性」という場合がある)を有する熱可塑性エラストマー組成物に関する。特に、優れたリサイクル性を損なわず、機械的特性および圧縮永久歪(形状保持率)に優れる熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護や省資源等の立場から、使用済み材料の再利用が望まれている。加硫ゴムは、高分子物質と加硫剤とが共有結合した安定な三次元網目構造を有し、非常に高い強度を示すが、強い共有結合による架橋のため再成形が難しい。一方、熱可塑性エラストマーは、物理的架橋を利用するものであり、予備成形等を含む煩雑な加硫・成形工程を必要とせずに、加熱溶融により容易に成形加工することができる。
このような熱可塑性エラストマーの典型例としては、樹脂成分とゴム成分とを含み、常温では微結晶樹脂成分が三次元網目構造の架橋点の役割を果たすハードセグメントとなり、ゴム成分(ソフトセグメント)の塑性変形を阻止し、昇温により樹脂成分の軟化または融解により塑性変形する熱可塑性エラストマーが知られている。しかし、このような熱可塑性エラストマーでは、樹脂成分を含んでいるためゴム弾性が低下しやすい。そのため、樹脂成分を含まずに熱可塑性が付与できる材料が求められている。
【0003】
かかる課題に対し、本発明者らは先に、水素結合を形成しうる反応部位を有するエラストマーと、前記エラストマーの前記反応部位と水素結合を形成しうる反応部位を有する化合物とを含有するエラストマー組成物が、水素結合を利用して温度変化により架橋形成と架橋解離とを繰り返すことができることを提案している(特許文献1参照。)。また、本発明者らは、同様な効果が期待される、カルボニル基含有基と複素環アミン含有基とを側鎖に有するエラストマー性ポリマーからなる水素結合性の熱可塑性エラストマーを提案している(特許文献2参照。)。
さらに、上記課題を解決する技術として、側鎖にカルボニル基含有基と含窒素複素環含有基とを含み、含窒素複素環含有基がその環構成窒素原子に対して2位で直接に、または有機基を介して主鎖と結合している有機重合体および特定の金属元素を含む化合物を含有する金属含有有機重合体材料が提案されている(特許文献3参照。)。
【0004】
これらのエラストマー(組成物)または金属含有有機重合体材料は、変性を受けていないオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂の成形温度で十分に溶融流動性を示すことができ、低温では架橋形成による優れた破断強度等の機械的強度(機械的特性)を有し、温度変化により架橋形成および架橋解離(軟化)を繰り返し再現できる。
このような特性を有する熱可塑性エラストマーは、その産業上の利用価値、および環境保護上の価値は高く、更に高い架橋強度が得られるとともに、架橋形成および架橋解離を繰り返しても物性変化のない、リサイクル性に優れた材料として期待されている。
【0005】
ところで、上述したような熱可塑性エラストマー(組成物)または金属含有有機重合体材料は、物質特性において、加重した際の形状保持率、所定時間加重後に除重した際の圧縮永久歪が十分ではない場合がある。
また、上記金属含有有機重合体材料は、強度が非常に低く、ゴム材としての使用等、弾性部材として使用するにはその特性に不十分な点がある(特許文献3参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−209524号公報
【特許文献2】
特開2000−169527号公報
【特許文献3】
特開平8−239583号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題を解決する技術として、本発明者らは、側鎖にカルボニル含有基と含窒素n員環含有基(n≧3)とを有し、前記含窒素n員環含有基がその3位〜n位で直接に、または有機基を介して主鎖と結合する熱可塑性エラストマーと、周期律表の第2A族、第3A族、第4A族、第5A族、第6A族、第7A族、第8族、第1B族、第2B族、第3B族、第4B族および第5B族から選択される少なくとも1つの金属の化合物とを含むことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が、優れたリサイクル性を損なうことなく、弾性部材として使用するのに十分な硬度を有し、形状保持率が改善された、温度変化により硬化および流動化を繰り返し再現しうる熱可塑性エラストマー組成物を提案した(特願2001−122598号明細書)。
【0008】
しかし、近年の技術革新、材料等の最適化、製造工程の簡素化、短縮化等により、熱可塑性エラストマー組成物に要求される物性、特徴等が高度化する現状においては、優れたリサイクル性を損なわず、硬度(機械的特性)および圧縮永久歪(形状保持率)等の物性がさらに改善された熱可塑性エラストマー組成物が求められている。
【0009】
したがって、本発明は、優れたリサイクル性を保持し、機械的特性および圧縮永久歪(形状保持率)にも優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
なお、本発明において、硬度は機械的特性を評価する指標の1つとして用いている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、側鎖にカルボニル含有基と含窒素複素環とを有する熱可塑性エラストマーに、アミノ基含有化合物を配合させることにより、リサイクル性を損なわず、硬度(機械的特性)および圧縮永久歪(形状保持率)等の物性をさらに改善できることを知見した。
【0011】
すなわち、本発明は、上記知見を基になされたものであり、以下の(I)〜(X)を提供する。
【0012】
(I)側鎖にカルボニル含有基と含窒素複素環とを有する熱可塑性エラストマーと、アミノ基含有化合物とを含有する熱可塑性エラストマー組成物。
ここで、アミノ基含有化合物は、脂肪族化合物(脂肪族(ポリ)アミン)、芳香族化合物(芳香族(ポリ)アミン)または複素環化合物(含窒素複素環アミン)のいずれであってもよい。該化合物中のアミノ基数は特に限定されないが2以上が好ましく、また該化合物中の1級アミノ基数は2以下であるのが好ましく、1個以下であるのがより好ましい。
【0013】
(II)前記側鎖が、下記式(1)で表される構造を有する、上記(I)に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0014】
【化3】
(式中、Aは含窒素複素環であり、Bは単結合;酸素原子、窒素原子またはイオウ原子;あるいはこれらの原子を含んでもよい有機基である。)
【0015】
(III)前記側鎖が、α位またはβ位で主鎖に結合する下記式(2)または(3)で表される構造を有する上記(I)または(II)に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0016】
【化4】
(式中、Aは含窒素複素環であり、BおよびDはそれぞれ独立に、単結合;酸素原子、窒素原子またはイオウ原子;あるいはこれらの原子を含んでもよい有機基である。)
【0017】
(IV)前記含窒素複素環が、5または6員環である上記(I)〜(III)のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0018】
(V)前記含窒素複素環が、トリアゾール環、チアジアゾール環またはピリジン環である上記(IV)に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0019】
(VI)前記アミノ基含有化合物が、2級の脂肪族ジアミン、芳香族1級アミンと複素環状アミンを含むポリアミンまたは3級複素環状ジアミンである上記(I)〜(V)のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
ここで、前記アミノ基含有化合物は、前記熱可塑性エラストマーに導入されたカルボニル含有基と含窒素複素環とを含有する側鎖に対して、該アミノ基含有化合物中の窒素原子数が0.1〜8.0当量の割合で配合されるのが好ましい。
【0020】
(VII)前記アミノ基含有化合物が、アミノ基を有するポリシロキサンである上記(I)〜(V)のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0021】
(VIII)前記アミノ基を有するポリシロキサンが、アミノシラン化合物の縮合物である上記(VII)に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
ここで、アミノシラン化合物の縮合物は、加水分解性置換基とアミノ基とを有するシリル化合物の単独縮合体または該シリル化合物とアミノ基を有さないシリル化合物との共縮合体であるのが好ましい。
【0022】
(IX)前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、前記アミノ基を含有するポリシロキサンを1〜200質量部含有する上記(VII)または(VIII)に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0023】
(X)前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、さらにカーボンブラックおよび/またはシリカを1〜200質量部含有する上記(I)〜(X)のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(以下、単に「本発明の組成物」という場合がある。)は、側鎖にカルボニル含有基と含窒素複素環とを有する熱可塑性エラストマーと、アミノ基含有化合物とを含有する熱可塑性エラストマー組成物である。
【0025】
本発明の組成物において、優れたリサイクル性を損なわず、硬度(機械的特性)および圧縮永久歪(形状保持率)等の物性がさらに改善される理由は、明らかではないが、本発明者らは、以下のように考えている。
熱可塑性エラストマー中にアミノ基含有化合物を含有させることにより、該アミノ基含有化合物と熱可塑性エラストマー中のカルボニル含有基または含窒素複素環(以下、「官能基」という場合がある。)との結合(イオン結合、イオン間相互作用、水素結合等)が形成され架橋密度が向上する。また、該結合等の形成により、熱可塑性エラストマー中のカルボニル含有基と含窒素複素環との間の相互作用(水素結合)も強められる。そのため、硬度(機械的特性)および圧縮永久歪(形状保持率)等の物性が改善されると考えられる。
【0026】
一方、該アミノ基含有化合物中のアミノ基によっては、該アミノ基含有化合物のアミノ基とカルボニル含有基のカルボニル基または含窒素複素環とにより形成される結合が強固となり、組成物の優れたリサイクル性または機械的特性を損なう場合がある。
【0027】
つまり、本発明は、アミノ基含有化合物中のアミノ基と、後述する熱可塑性エラストマー中の官能基とで形成されるイオン結合、水素結合等の架橋結合が、リサイクル性を損なわず、硬度(機械的特性)および圧縮永久歪(形状保持率)等の物性を改善できる程度の好適な結合力を持つような、例えば以下に示すようなアミノ基含有化合物および該化合物中のアミノ基を用いることを特徴とするものである。
【0028】
まず、本発明の第1態様のアミノ基含有化合物について説明する。該第1態様のアミノ基含有化合物を配合した組成物は、優れたリサイクル性を保持し、機械的特性および圧縮永久歪(形状保持率)に優れる。
該アミノ基含有化合物中のアミノ基は、脂肪族アミノ基および芳香族アミノ基(芳香族環に結合したアミノ基)、含窒素複素環を構成するアミノ基のいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。該アミノ基の好ましい態様は、後述するアミノ基含有化合物の好ましい態様で説明する。
また、該化合物中のアミノ基数は特に限定されないが、該アミノ基を1個以上有すればよく、2個以上有するのが好ましい。アミノ基を2個以上有すれば、後述する熱可塑性エラストマーと2以上の架橋結合を形成することができ、物性の改善効果に優れる。
【0029】
該アミノ基の級数は、特に制限されず、1級(−NH2 )、2級(イミノ基、>NH)、3級(>N−)または4級(>N+ <)のいずれであってもよく、本発明の組成物に要求されるリサイクル性、硬度(機械的強度)および圧縮永久歪(形状保持率)等の物性に応じて任意に選択できる。2級アミノ基を選択すると機械的特性に優れる傾向があり、3級アミノ基を選択するとリサイクル性に優れる傾向がある。
特に、2級のアミノ基を2つ有すると、組成物のリサイクル性と圧縮永久歪(形状保持率)に優れ、かつ両物性のバランスにも優れる。
該アミノ基含有化合物が2個以上のアミノ基を含有する場合には、該化合物中の1級アミノ基は2個以下とするのが好ましく、1個以下とするのがより好ましい。該1級アミノ基を3個以上有すると、該アミノ基と後述する熱可塑性エラストマー中の官能基、特にカルボニル含有基がカルボキシ基である場合には、これらの基で形成する(架橋)結合が強固になり、組成物の優れたリサイクル性を損なう場合がある。
【0030】
つまり、熱可塑性エラストマー中の官能基とアミノ基含有化合物中のアミノ基との結合力等を勘案してアミノ基の級数、数およびアミノ基含有化合物の構造を適宜調整、選択することができる。
【0031】
以下に、上記結合力等の好適なアミノ基含有化合物の一例を具体的に示すが、本発明に用いるアミノ基含有化合物は、これらに限定されない。
【0032】
脂肪族(ポリ)アミンとしては、特に限定されず、例えば、分岐していてもよい炭素数1〜40の(ポリ)アミンが挙げられる。
炭素数1〜40の脂肪族モノアミンとして、例えば、後述する置換基を有していてもよい、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、セチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。
炭素数1〜40の脂肪族ポリアミンとして、例えば、後述する置換基を有していてもよい、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、キシリレンジアミン、テトラメチルキシリレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンテトラミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジイソプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’,N’’−トリメチルビス(ヘキサメチレン)トリアミン等が挙げられる。
上記、炭素数1〜40の脂肪族アミンには、それらの構造異性体を含む。
【0033】
芳香族(ポリ)アミンおよび含窒素複素環アミンとしては、特に限定されず、例えば、炭素数5〜40の(ポリ)アミンが挙げられる。
芳香族(ポリ)アミンおよび含窒素複素環アミンとしては、例えば、後述する置換基を有していてもよい、ジピリジルアミン、ジピリジル、エチレンジピリジル、トリメチレンジピリジル、フェナジン、プリン、プテリジン、ジピリジルアミン、1,2−ビス−(4−ピリジル)−エタン、2(または4)−(β−ヒドロキシエチル)−ピリジン、2(または4)−(2−アミノエチル)−ピリジン、2(または4)−アミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2−アミノ−6−ヒドロキシピリジン、6−アザチミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等、および、後述する置換基を有していてもよい、後述する熱可塑性エラストマーの含窒素複素環で例示される化合物が挙げられる。
【0034】
上記したアミノ基含有化合物は、その水素原子の一つ以上を、アルキル基、アルキレン基、アラルキレン基、オキシ基、アシル基、ハロゲン原子等で置換してもよく、また、その骨格に、酸素原子、イオウ原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0035】
上記アミノ基含有化合物は、1種単独で用いることもできまたは2種以上を併用することもできる。2種以上を併用する場合の混合比は、組成物が用いられる用途、組成物に要求される物性等に応じて、任意の比率とすることができる。
【0036】
上記したアミノ基含有化合物の中でも、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジイソプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’,N’’−トリメチルビス(ヘキサメチレン)トリアミン等の2級の脂肪族ジアミン;テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン等の3級の脂肪族ジアミン;アミノトリアゾール、アミノピリジン等の芳香族1級アミンと複素環状アミンとを含むポリアミン;ドデシルアミン等の直鎖アルキルモノアミン;ジピリジル等の3級複素環状ジアミン等が、硬度(機械的特性)および圧縮永久歪(形状保持率)等の改善効果が高く好ましい。
より好ましくは、2級の脂肪族ジアミン、芳香族1級アミンと複素環状アミンを含むポリアミンまたは3級複素環状ジアミンである。
【0037】
該アミノ基含有化合物の含量は、該化合物中の窒素原子数に依存し、後述する熱可塑性エラストマーに導入されたカルボニル含有基と含窒素複素環とを含有する側鎖に対して、該化合物中の窒素原子数が0.1〜8.0当量が好ましい。この範囲であれば、該化合物と熱可塑性エラストマーとの架橋密度が高くなりすぎず、リサイクル性、機械的特性および圧縮永久歪(形状保持率)に優れる。
リサイクル性、機械的特性および圧縮永久歪(形状保持率)により優れる点で、上記含量は、0.3〜6.0当量がより好ましく、0.4〜4.0当量が特に好ましい。
例えば、アミノ基含有化合物が脂肪族ジアミンの場合は、該化合物中に窒素原子が2つ含まれるので、該アミノ基含有化合物の含量は、上記側鎖に対して0.05〜4.0倍モルが好ましく、0.15〜3.0倍モルがより好ましく、0.2〜2.0倍モルが特に好ましい。
【0038】
アミノ基含有化合物としてアミノトリアゾールを用いる場合は、上記含量は、上記側鎖に対して2.0当量超10.0当量以下であるのが好ましく、2.5〜9.0当量であるのがより好ましく、3.0〜8.0当量であるのが特に好ましい。
具体的には、該アミノトリアゾール中には窒素原子が4つ含まれるので、該アミノトリアゾールの含量は、上記側鎖に対して0.5モル超2.5倍モル以下が好ましく、0.6〜2.25倍モルがより好ましく、0.75〜2.0倍モルが特に好ましい。
【0039】
また、上記アミノ基含有化合物の含量を多くしていくと、機械的特性に優れ、また圧縮永久歪(形状保持率)に優れる傾向がある反面、組成物が軟化する温度(以下、「軟化温度」という場合がある。)が高くなる傾向がある。
つまり、上記アミノ基含有化合物の含量は、上記した範囲が好ましいが、本発明の組成物が用いられる用途、要求される物性等に応じて、上記傾向を勘案して好適な物性を発揮する任意の含量に調整できる。
【0040】
次に、本発明の第2態様のアミノ基含有化合物について説明する。
本発明の第2態様のアミノ基含有化合物は、アミノ基を有する高分子化合物(ポリマー)である。該第2態様のアミノ基含有化合物を配合した組成物は、優れたリサイクル性を保持し、機械的特性および圧縮永久歪(形状保持率)に優れる。
【0041】
該第2態様のアミノ基含有化合物が有するアミノ基は、特に限定されず、例えば、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、複素環を構成するアミノ基、これらアミノ基の複数の混合アミノ基等が挙げられる。
この中でも、上記本発明に用いるエラストマーとの相互作用を適度に形成して該エラストマー中に効果的に分散でき、圧縮永久歪等の物性の改善効果が高い点で、脂肪族アミノ基であるのが好ましい。
【0042】
また、該化合物中のアミノ基数は特に限定されない。該アミノ基は、少なくとも1つ有すればよいが、複数の架橋結合を形成することができ組成物としたときの機械的特性および圧縮永久歪等の改善効果に優れる点で複数有するのが好ましい。該アミノ基数は、組成物が用いられる用途、組成物に要求される物性等に応じて任意の数とすることができるが、一般的には、ポリマーの全質量に対するアミノ基の質量(窒素原子の質量)が0.1質量%以上であるのが好ましく、1質量%以上であるのがより好ましく、10質量部以上であるのが特に好ましい。
なお、該質量比は、例えば、NMR(核磁気共鳴分析)またはIR(赤外分光分析)等により測定できる。
【0043】
該アミノ基の級数は、特に限定されず、1級(−NH2 )、2級(イミノ基、>NH)、3級(>N−)または4級(>N+ <)のいずれであってもよい。該アミノ基が1級であると、上記本発明に用いるエラストマーとの相互作用が強くなる傾向があり組成物を調製する際の条件等によってはゲル化する場合がある。一方、該アミノ基が3級であると、上記本発明に用いるエラストマーとの相互作用が弱くなる傾向があり組成物としたときの圧縮永久歪等の改善効果が小さい場合がある。
上記観点から、該アミノ基の級数は、1級または2級であるのが好ましい。
【0044】
すなわち、アミノ基としては、1級または2級の脂肪族アミノ基であるのが好ましい。
アミノ基を複数有する場合は、それらのアミノ基のうち少なくとも1つは脂肪族アミノ基であるのが好ましく、さらに1級または2級の脂肪族アミノ基であるのがより好ましい。
該アミノ基は、組成物に要求される特性に応じてアミノ基の種類、級数および個数を任意に調整できる。
【0045】
このような第2態様のアミノ基含有化合物は、特に限定されず、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアミノスチレン、アミノ基含有ポリシロキサン等のポリマー、または、各種ポリマーをアミノ基を持つ化合物で変性したポリマー等が挙げられる。
これらのポリマーの平均分子量、分子量分布、粘度等の物性は、特に限定されず、組成物が用いられる用途、組成物に要求される物性等に応じて、任意の物性とすることができる。
なお、第2態様のアミノ基含有化合物のアミノ基は、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合等に含まれるアミノ基を含む。
【0046】
本発明においては、上記ポリマーの中でも、アミノ基を持つ縮合性または重合性の化合物(モノマー)を重合(重付加、重縮合)させたポリマーであるのがより好ましい。これらの中でも、加水分解性置換基とアミノ基とを有するシリル化合物の単独縮合体または該シリル化合物とアミノ基を有さないシリル化合物との共縮合体であるアミノ基を有するポリシロキサンであるのが、入手が容易で製造しやすく、分子量の調整、アミノ基量の調整等が容易である点で、特に好ましい。
【0047】
上記アミノ基を有するポリシロキサンの原料となる加水分解性置換基とアミノ基とを有するシリル化合物としては、特に限定されず、好ましくは、アミノシラン化合物が挙げられ、具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン(以上、日本ユニカー(株)製)等の脂肪族1級アミノ基を有するアミノシラン化合物;N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリプロポキシシリル)プロピル]アミン(以上、日本ユニカー(株)製)、3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(Dynasilane1189(デグサヒュルス社製))、N−エチル−アミノイソブチルトリメトキシシラン(Silquest A−Link 15silane、OSiスペシャリティーズ(株)製)等の脂肪族2級アミノ基を有するアミノシラン化合物;N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー(株)製)等の脂肪族1級および2級アミノ基を有するアミノシラン化合物;N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)製)等の芳香族2級アミノ基を有するアミノシラン化合物;イミダゾールトリメトキシシラン(ジャパンエナジー(株)製)、アミノトリアゾールとエポキシシラン化合物またはイソシアネートシラン化合物等とを触媒の存在下または非存在下、室温以上の温度で反応させて得られるトリアゾールシラン等の複素環アミノ基を有するアミノシラン化合物等が挙げられる。
【0048】
これらの中でも、圧縮永久歪等の物性の改善効果が高い点で、上記例示した、脂肪族1級アミノ基を有するアミノシラン化合物、脂肪族2級アミノ基を有するアミノシラン化合物および脂肪族1級および2級アミノ基を有するアミノシラン化合物のアミノアルキルシラン化合物が好ましい。
【0049】
上記アミノ基を有するポリシロキサンの原料となるアミノ基を有さないシリル化合物は、上記加水分解性置換基とアミノ基とを有するシリル化合物と異なる化合物であってアミノ基を含まない化合物であれば、特に限定されず、アルコキシシラン化合物、ハロゲン化シラン化合物等が挙げられる。入手が容易で取り扱いやすく、得られる共縮合体の物性に優れる点で、アルコキシシラン化合物が好ましい。
ハロゲン化シラン化合物としては、例えば、テトラクロロシラン、ビニルトリフルオロシラン等が挙げられるが、これらに限定されない。
アルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
これらの中でも、安価で取扱い等が安全である点で、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランが好ましい。
【0051】
上記加水分解性置換基とアミノ基とを有するシリル化合物および上記アミノ基を有さないシリル化合物は、1種単独で用いることもできまたは2種以上を併用することもできる。
【0052】
加水分解性置換基とアミノ基とを有するシリル化合物の単独縮合体および該シリル化合物と上記アミノ基を有さないシリル化合物との共縮合体であるアミノ基を有するポリシロキサンの製造は、特に限定されず、ポリシロキサンを製造する通常の方法・条件等で行うことができる。
例えば、アミノ基を有するポリシロキサンが上記単独縮合体の場合は、上記シリル化合物に、必要量以上の水を溶媒として、必要により触媒(例えば、酸、塩基等)を加え、室温下または加熱下撹拌することにより製造することができるし、アミノ基を有するポリシロキサンが上記共縮合体の場合は、上記シリル化合物と上記アミノ基を有さないシリル化合物とを適当な溶媒(水が好ましい)中に投入し、必要により触媒(例えば、酸、塩基等)を加え、室温下または加熱下撹拌することにより製造することができる。該共縮合体の場合において、両化合物の縮合速度を同程度にし均一なランダム縮合体を得る点で、両化合物中の加水分解性置換基は同種のものであるのが好ましい。
【0053】
上記共縮合体においては、上記加水分解性置換基とアミノ基とを有するシリル化合物とアミノ基を有さないシリル化合物との混合比は、上記したポリマーの全質量に対するアミノ基の質量を満たせば特に限定されず、任意に選択できるが、例えば、圧縮永久歪等の改善効果に優れる点で、好ましくは、上記アミノ基とを有するシリル化合物が、1質量%以上である。
【0054】
このようにして得られるアミノ基を有するポリシロキサンの構造は、特に限定されず、直鎖状、分岐鎖構造、三次元網目構造、球状構造のいずれであってもよく、またこれらを混合した構造であってもよい。
後述する本発明に用いる熱可塑性エラストマーとの相互作用にアミノ基を有効に利用できる点で、直鎖状、分岐鎖構造または三次元網目構造であるのが好ましい。
上記したアミノ基を有するポリシロキサンは市販品を用いることもできる。
【0055】
上記本発明の第2態様のアミノ基含有化合物は、1種単独で用いることもできまたは2種以上を併用することもできる。2種以上を併用する場合の混合比は、組成物が用いられる用途、組成物に要求される物性等に応じて、任意の比率とすることができる。
【0056】
上記本発明の第2態様のアミノ基含有化合物の含量は、後述する熱可塑性エラストマーに導入されたカルボニル含有基と含窒素複素環とを含有する側鎖に対する該化合物中の窒素原子数(当量)で規定することもできるが、該化合物の構造、分子量等により該エラストマーとの相互作用を有効に形成できないアミノ基が存在する場合がある。そのため、該化合物は、後述する本発明に用いるエラストマー100質量部に対して、1〜200質量部含有するのが好ましく、5質量部以上含有するのがより好ましく、10質量部以上含有するのが特に好ましい。
【0057】
本発明の組成物は、側鎖にカルボニル含有基と含窒素複素環とを有する熱可塑性エラストマーを含有する。
熱可塑性エラストマーは、天然高分子または合成高分子のエラストマー性ポリマーの側鎖にカルボニル含有基と含窒素複素環とを有する。
ここで本発明において、「側鎖」とはエラストマー性ポリマーの側鎖および末端をいう。また「側鎖にカルボニル含有基と含窒素複素環とを有する」とは、エラストマー性ポリマーの主鎖を形成する原子(通常炭素)に、カルボニル含有基と含窒素複素環が化学的に安定な結合(共有結合)をしていることを意味する。
【0058】
熱可塑性エラストマーの主鎖となるエラストマー性ポリマーは、特に限定されず、一般的に公知の天然高分子または合成高分子であればよいが、そのガラス転移点が室温(25℃)以下のポリマー、つまりエラストマーであるのが好ましい。このようなエラストマー性ポリマーとして、具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンゴム、ポリプロピレンゴム等のオレフィン系ゴム;エピクロロヒドリンゴム;多硫化ゴム;シリコーンゴム;およびウレタンゴム等が挙げられる。
【0059】
また主鎖となるエラストマー性ポリマーは、樹脂成分を含むエラストマー性ポリマー(熱可塑性エラストマー)であってもよく、例えば、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー(SBS、SIS、SEBS等)、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、ポリアミド系エラストマー性ポリマー等が挙げられる。
【0060】
上記エラストマー性ポリマーは、液状または固体状であってもよい。その分子量は特に限定されず、組成物の使用目的、組成物に要求される架橋密度等の物性に応じて適宜選択することができる。
本発明の組成物を加熱(脱架橋)した時の流動性を重視する場合は、上記エラストマー性ポリマーは液状であるのが好ましく、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムでは、重量平均分子量が1,000〜100,000であるのが好ましく、1,000〜50,000程度が特に好ましい。一方、本発明の組成物の強度を重視する場合は、上記エラストマー性ポリマーは固体ゴムであるのが好ましく、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムでは、重量平均分子量が100,000以上であることが好ましく、500,000〜1,500,000が特に好ましい。
【0061】
本発明においては、上記エラストマー性ポリマーを2種以上混合して用いることができる。この場合の混合比は、組成物が用いられる用途、組成物に要求される物性等に応じて、任意の比率とすることができる。
また、本発明で用いるエラストマー性ポリマーのガラス転移点が25℃以下であるのが好ましく、該ポリマーが2以上のガラス転移点を有する場合または2種以上のポリマーを併用する場合はガラス転移点の少なくとも1つが25℃以下であるのが好ましい。この範囲であると成形物が室温でゴム状弾性を示す。
【0062】
エラストマー性ポリマーは、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムおよびこれらのジエン系ゴムの水素添加物;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)等のオレフィン系ゴムであるのが特に好ましい。これらのポリマーはガラス転移温度が25℃以下であるため室温でゴム状弾性を示す。またジエン系ゴムを用いると後述する無水マレイン酸での変性が容易であり、オレフィン系ゴムを用いると組成物が架橋した時の引張強度により優れ、二重結合が存在しないため組成物の劣化が抑制される。
【0063】
本発明において、上記スチレン−ブタジエンゴム(SBR)の結合スチレン量、水添エラストマー性ポリマー等の水添率等は、特に限定されず、本発明の組成物が用いられる用途、本発明の組成物に要求される物性等に応じて任意の比率に調整できる。
熱可塑性エラストマーの主鎖にEPM、EPDM、EBMを用いる場合は、そのエチレン含量は、好ましくは10〜80mol%であり、より好ましくは、40〜60mol%である。この範囲であれば、組成物としたときの機械的強度、圧縮永久歪(形状保持率)に優れる。
【0064】
本発明の熱可塑性エラストマーは、エラストマー性ポリマーの側鎖にカルボニル含有基と含窒素複素環とを有する。
カルボニル含有基としては、カルボニル基を含むものであれば特に限定されず、例えば、アミド基、エステル基、イミド基、カルボキシ基、カルボニル基等が挙げられる。このような基を導入しうる化合物としては特に限定されず、例えば、ケトン、カルボン酸およびその誘導体等が挙げられる。
カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の炭化水素基を有する有機酸が挙げられ、該炭化水素基は、脂肪族、脂環族、芳香族等のいずれであってもよい。またカルボン酸誘導体としては、例えば、カルボン酸無水物、アミノ酸、チオカルボン酸(メルカプト基含有カルボン酸)、エステル類、アミノ酸、ケトン類、アミド類、イミド類、ジカルボン酸およびそのモノエステル等が挙げられる。
【0065】
カルボン酸およびその誘導体等としては、具体的に、例えば、マロン酸、マレイン酸、スクシン酸、グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、p−フェニレンジ酢酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸、メルカプト酢酸等のカルボン酸および置換基を含有するこれらのカルボン酸;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等の酸無水物;マレイン酸エステル、マロン酸エステル、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、酢酸エチル等の脂肪族エステル;フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、エチル−m−アミノベンゾエート、メチル−p−ヒドロキシベンゾエート等の芳香族エステル;キノン、アントラキノン、ナフトキノン等のケトン類;グリシン、チロシン、ビシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、メチオニン、プロリン、N−(p−アミノベンゾイル)−β−アラニン等のアミノ酸;マレインアミド、マレインアミド酸(マレインモノアミド)、コハク酸モノアミド、5−ヒドロキシバレルアミド、N−アセチルエタノールアミン、N,N’−ヘキサメチレンビス(アセトアミド)、マロンアミド、シクロセリン、4−アセトアミドフェノール、p−アセトアミド安息香酸等のアミド類;マレインイミド、スクシンイミド等のイミド類が挙げられる。
これらの中でも、カルボニル基(カルボニル含有基)を導入しうる化合物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等の環状酸無水物が好ましく、特に無水マレイン酸が好ましい。
【0066】
熱可塑性エラストマーの側鎖に含有する含窒素複素環は、直接または有機基を介して主鎖に導入される。
該含窒素複素環は、複素環内に窒素原子を含むものであれば複素環内に窒素原子以外のヘテロ原子、例えば、イオウ原子、酸素原子、リン原子等を有するものでも用いることができる。ここで複素環化合物を用いるのは、複素環構造を有すると後述する架橋を形成する水素結合が強くなり組成物の引張強度が向上するためである。
また該複素環は置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、ヘキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる基;シアノ基;アミノ基;芳香族炭化水素基;エステル基;エーテル基;アシル基;チオエーテル基等が挙げられ、これらを組合せて用いることもできる。
これらの置換基の置換位置は特に限定されず、また置換基数も限定されない。また、該複素環は、芳香族性を有していても、有していなくてもよいが、芳香族性を有していると架橋時の引張強度がより高まり組成物の強度がより向上するので好ましい。
【0067】
このような含窒素複素環としては、5員環または6員環であるのが好ましい。
含窒素複素環として、例えば、ピロロリン、ピロリドン、オキシインドール(2−オキシインドール)、インドキシル(3−オキシインドール)、ジオキシインドール、イサチン、インドリル、フタルイミジン、β−イソインジゴ、モノポルフィリン、ジポルフィリン、トリポルフィリン、アザポルフィリン、フタロシアニン、ヘモグロビン、ウロポルフィリン、クロロフィル、フィロエリトリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン、イミダゾロン、イミダゾリドン、ヒダントイン、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリドン、インダゾール、ピリドインドール、プリン、シンノリン、ピロール、ピロリン、インドール、インドリン、オキシルインドール、カルバゾール、フェノチアジン、インドレニン、イソインドール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール、フェナントロリン、オキサジン、ベンゾオキサジン、フタラジン、プテリジン、ピラジン、フェナジン、テトラジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、アントラニル、ベンゾチアゾール、ベンゾフラザン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、アントラゾリン、ナフチリジン、チアジン、ピリダジン、ピリミジン、キナゾリン、キノキサリン、トリアジン、ヒスチジン、トリアゾリジン、メラミン、アデニン、グアニン、チミン、シトシン等が挙げられる。このような含窒素複素環のうち、特に含窒素5員環については、下記の化合物が好ましく例示される。これらは上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素原子が付加または脱離されたものであってもよい。
【0068】
【化5】
【0069】
また、含窒素6員環については、下記の化合物が好ましく例示される。これらについても上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素原子が付加または脱離されたものであってもよい。
【0070】
【化6】
【0071】
また、上記含窒素複素環とベンゼン環または含窒素複素環同士が縮合したものも用いることができ、例えば下記の縮合環が好ましく例示される。これらについても上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素原子が付加または脱離されたものであってもよい。
【0072】
【化7】
【0073】
上記した含窒素複素環の中でも、トリアゾール環、ピリジン環またはチアジアゾール環であるのが、熱可塑性エラストマー組成物としたときの機械的強度、形状保持率、圧縮永久歪およびリサイクル性に優れるため好ましい。
【0074】
本発明の熱可塑性エラストマーは、上記含窒素複素環が直接または有機基を介して主鎖に導入されるが、好ましくは有機基を介して主鎖に導入される。
また、本発明の熱可塑性エラストマーは、カルボニル含有基および含窒素複素環が、互いに独立の側鎖として主鎖に導入されていてもよく、またカルボニル含有基と含窒素複素環とが互いに異なる基を介して1つの側鎖に結合し主鎖に導入されていてもよい。
カルボニル含有基および含窒素複素環が、下記式(1)で表される1つの側鎖として上記ポリマー主鎖に導入されるのが好ましい。
【0075】
【化8】
(式中、Aは含窒素複素環であり、Bは単結合;酸素原子、窒素原子またはイオウ原子;あるいはこれらの原子を含んでもよい有機基である。)
【0076】
ここで、含窒素複素環Aは、具体的には上記した含窒素複素環である。
置換基Bは、単結合;酸素原子、窒素原子もしくはイオウ原子;あるいはこれらの原子を含んでもよい有機基であり、具体的には、例えば、単結合;酸素原子、イオウ原子またはアミノ基NR’(R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基);これらの原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキレン基またはアラルキレン基;これらの原子を末端に有する、炭素数1〜20のアルキレンエーテル基(アルキレンオキシ基、例えば、−O−CH2 CH2 −基)、アルキレンアミノ基(例えば、−NH−CH2 CH2 −基等)またはアルキレンチオエーテル基(アルキレンチオ基、例えば、−S−CH2 CH2 −基);これらの原子を末端に有する、炭素数1〜20のアラルキレンエーテル基(アラルキレンオキシ基)、アラルキレンアミノ基またはアラルキレンチオエーテル基;等が挙げられる。
【0077】
ここで、上記アミノ基NR’の炭素数1〜10のアルキル基としては、異性体を含む、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
上記置換基Bの酸素原子、イオウ原子およびアミノ基、ならびに、酸素原子、窒素原子またはイオウ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキレンエーテルまたはアラルキレンエーテル基等の酸素原子、窒素原子およびイオウ原子は、隣接するカルボニル基と組み合わされ共役系のエステル基、アミド基、イミド基、チオエステル基等を形成するのが好ましい。
置換基Bは、上記した中でも、共役系を形成する、酸素原子、イオウ原子またはアミノ基;これらを末端に有する、炭素数1〜20のアルキレンエーテル基、アルキレンアミノ基またはアルキレンチオエーテル基が好ましく、アミノ基(NH)、アルキレンアミノ基(−NH−CH2 −基、−NH−CH2 CH2 −基、−NH−CH2 CH2 CH2 −基)、アルキレンエーテル基(−O−CH2 −基、−O−CH2 CH2 −基、−O−CH2 CH2 CH2 −基)が特に好ましい。
【0078】
カルボニル含有基と含窒素複素環は、下記式(2)または(3)で表される1つの側鎖として、そのα位またはβ位で上記ポリマー主鎖に導入されるのがより好ましい。
【0079】
【化9】
(式中、Aは含窒素複素環であり、BおよびDはそれぞれ独立に、単結合;酸素原子、窒素原子またはイオウ原子;あるいはこれらの原子を含んでもよい有機基である。)
【0080】
ここで、含窒素複素環Aは上記式(1)の含窒素複素環Aと基本的に同様であり、置換基BおよびDはそれぞれ独立に、上記式(1)の置換基Bと基本的に同様である。
ただし、上記式(3)における置換基Dは、上記式(1)の置換基Bで例示した中でも、単結合;酸素原子、窒素原子またはイオウ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキレン基またはアラルキレン基の共役系を形成するものであるのが好ましく、単結合が特に好ましい。すなわち、上記式(3)のイミド窒素と共に、酸素原子、窒素原子またはイオウ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキレンアミノ基またはアラルキレンアミノ基を形成するのが好ましく、上記式(3)のイミド窒素に含窒素複素環が直接結合する(単結合)のが特に好ましい。具体的には、置換基Dは、単結合;上記した酸素原子、イオウ原子またはアミノ基を末端に有する炭素数1〜20のアルキレン基またはアラルキレン基等;異性体を含む、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、フェニレン基、キシリレン基等が挙げられる。
【0081】
熱可塑性エラストマーに含有される上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環との割合は特に限定されないが、2:1(上記式(3)のイミド構造等の場合は1:1)であると相補的な相互作用を形成しやすくなり、また、容易に製造できるため好ましい。
【0082】
カルボニル含有基と含窒素複素環とを有する側鎖は、主鎖部分100mol%に対して、0.1〜50mol%の割合(導入率)で導入されていることが好ましく、1〜30mol%の割合で導入されていることがより好ましい。
0.1mol%未満では架橋時の強度が十分でない場合があり、50mol%を超えると架橋密度が高くなりゴム弾性が失われる場合がある。すなわち、上記した範囲内であれば、熱可塑性エラストマーの側鎖同士の相互作用が、分子間または分子内で起こり、これらがバランスがよく形成されるため、組成物としたときに、架橋時の引張強度が非常に高く、かつリサイクル性に優れる。
上記導入率は、カルボニル含有基と含窒素複素環が独立に導入されている場合には、上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環との割合に従って、両基を一組として考えればよく、何れかの基が過剰の場合は、多い方の基を基準として考えればよい。
この導入率は、例えば主鎖部分がエチレン−プロピレンゴムである場合には、エチレンおよびプロピレンモノマー単位100ユニット当り、側鎖部分の導入されたモノマーが、0.1〜50ユニット程度である。
【0083】
該熱可塑性エラストマーは、そのガラス転移点が25℃以下であるのが好ましく、該エラストマーが2以上のガラス転移点を有する場合または2種以上のエラストマーを併用する場合はガラス転移点の少なくとも1つは25℃以下であるのが好ましい。ガラス転移点が25℃以下であれば、成形物が室温でゴム状弾性を示す。
【0084】
熱可塑性エラストマーの製造方法は特に限定されず、通常の方法を選択することができる。
熱可塑性エラストマーのうちでも、カルボニル含有基と含窒素複素環とを同一側鎖に有するものは、例えば、エラストマー性ポリマーのカルボニル含有基変性ポリマーを、含窒素複素環を導入しうる化合物と反応させることにより得られる。
具体的には、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムと、無水マレイン酸あるいはメルカプト酢酸を含むトルエン溶液とを、あるいは、EPM等のオレフィン系ゴム、例えば、プロピレン等のα−オレフィンと、メルカプト酢酸を含むトルエン溶液とを、室温または加熱下で窒素雰囲気下反応させ、カルボニル含有基で変性されたエラストマーを得、このエラストマーと含窒素複素環を導入しうる化合物とを反応させることにより得られる。
【0085】
ここで、含窒素複素環を導入しうる化合物とは、含窒素複素環そのものであってもよく、無水マレイン酸等のカルボニル含有基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基等)を有する含窒素複素環であってもよい。また、含窒素複素環を導入しうる化合物は、カルボニル含有基変性エラストマーのカルボニル含有基の一部または全量と反応させればよい。一部とは、カルボニル含有基100mol%に対して1mol%以上が好ましく、50mol%以上であるのがより好ましく、80mol%以上であるのが特に好ましい。この範囲であれば、含窒素複素環を導入した効果が発現し、架橋時の引張強度がより高まる。リサイクル性、引張強度、圧縮永久歪(形状保持率)に優れる点で、カルボニル含有基の全量(100mol%)を該化合物と反応させるのが特に好ましい。
【0086】
上記カルボニル含有基で変性されたエラストマーは、市販品を使用することもでき、例えば、LIR−403(クラレ(株)製)、LIR−410A(クラレ(株)試作品)等の無水マレイン酸変性イソプレンゴム;LIR−410(クラレ(株)製)等の変性イソプレンゴム;クライナック110、221、231(ポリサー(株)製)等のカルボキシ変性ニトリルゴム;CPIB(日石化学(株)製)、HRPIB(日石化学(株)ラボ試作品)等のカルボキシ変性ポリブテン;ニュクレル (三井デュポンポリケミカル(株)製) 、ユカロン(三菱化学(株)製)、タフマーM(例えば、MA8510、三井化学(株)製)等の無水マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴム;タフマーM(例えば、MH7020、三井化学(株)製)等の無水マレイン酸変性エチレン−ブテンゴム;アドマー(例えば、LF128等、三井化学(株)製)、アドテックスシリーズ(無水マレイン酸変性EVA、日本ポリオレフィン(株)製)、HPRシリーズ(無水マレイン酸変性EEA、三井・ジュポンポリオレフィン(株)製)、ボンドファストシリーズ(無水マレイン酸変性EMA、住友化学(株)製)、デュミランシリーズ(無水マレイン酸変性EVOH、武田薬品工業(株)製)等の無水マレイン酸変性ポリエチレン;アドマー(例えば、QB550、三井化学(株)製)等の無水マレイン酸変性ポリプロピレン等を挙げることができる。
【0087】
また、本発明においては、カルボニル含有基と含窒素複素環とを導入しうる化合物同士を反応させた後、エラストマー性ポリマーの側鎖に導入してもよい。
【0088】
カルボニル含有基と含窒素複素環とを、それぞれ独立して側鎖に有する熱可塑性エラストマーを合成する場合には、該エラストマー性ポリマーの主鎖を形成しうるモノマーとカルボニル含有基を含むモノマーと含窒素複素環を含むモノマーとを共重合させて、上記熱可塑性エラストマーを直接製造してもよく、あらかじめ重合等により主鎖(エラストマー性ポリマー)を形成し、次いで、上記カルボニル含有基および含窒素複素環を導入しうる化合物でグラフト変性してもよい。
上記の各製造方法においては、熱可塑性エラストマーの側鎖の各基は、独立に結合しているか、または互いに結合したものであるかは、NMR、IRスペクトル等の通常用いられる分析手段により確認することができる。
【0089】
熱可塑性エラストマーは、上記の製造方法でも、まずカルボニル含有基を導入したカルボニル含有基変性エラストマー性ポリマーを合成し、次に、含窒素複素環を導入しうる化合物と反応させて含窒素複素環を導入する方法が好ましく、特に環状酸無水物を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、含窒素複素環を導入しうる化合物とを、含窒素複素環を導入しうる化合物が環状酸無水物基と化学結合(例えば共有結合、イオン結合)しうる温度にて反応させることにより、カルボニル含有基と含窒素複素環とをエラストマー性ポリマーの主鎖に導入(環状酸無水物基は開環する)させるのが好ましい。該エラストマーの製造に関して、具体的な点については、特開2000−169527号公報に記載されている。
【0090】
本発明の窒素複素環を便宜上「含窒素n員環化合物(n≧3)」とし、含窒素複素環の結合位置について説明する。
以下説明する結合位置(「1〜n位」)は、IUPAC命名法に基づくものである。例えば、非共有電子対を有する窒素原子を3個有する化合物の場合、IUPAC命名法に基づく順位によって結合位置を決定する。具体的には、上記例示した5員環、6員環および縮合環の含窒素複素環に結合位置を記した。
熱可塑性エラストマーでは、直接または有機基を介して主鎖と結合する含窒素n員環化合物の結合位置は、特に限定されず、いずれの結合位置(1位〜n位)でもよい。好ましくは、その1位または3位〜n位である。
含窒素複素環内に含まれる窒素原子が1個(例えば、ピリジン環等)の場合は、分子内でキレートが形成されやすく組成物としたときの引張強度等の物性に劣るため、1位または2位は好ましくない。
【0091】
含窒素n員環化合物がその1位または3位〜n位で主鎖と結合していると、同一側鎖にカルボニル基と含窒素複素環を有していても、含窒素複素環の窒素原子とカルボニル基との距離が離れているため、分子内でのキレートが形成されにくく、分子間キレートおよびイオン結合の形成による架橋強度(組成物としたときの引張強度)の向上が期待でき、また、架橋密度が向上する。含窒素複素環が5員環である場合には、3または4位が好ましく、3位が特に好ましい。
含窒素複素環の結合位置を選択することにより熱可塑性エラストマーは、該熱可塑性エラストマー同士の分子間で、または上記したアミノ基含有化合物との間で、水素結合、イオン結合、配位結合等による架橋が形成されやすく、リサイクル性に優れ、組成物としたときの機械的特性および圧縮永久歪(形状保持率)に優れる。
【0092】
本発明の組成物は、上記熱可塑性エラストマーを1種以上含有する。2種以上含有する場合の混合比は、組成物が用いられる用途、組成物に要求される物性等に応じて、任意の比率とすることができる。
【0093】
本発明の組成物は、補強剤としてカーボンブラックおよび/またはシリカを含有するのが好ましい。
カーボンブラックの含量(カーボンブラック単独で用いる場合)は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1〜200質量部であり、好ましくは10〜100質量部であり、より好ましくは20〜80質量部である。
該カーボンブラックの種類は、用途に応じて適宜選択される。一般に、カーボンブラックは粒子径に基づいて、ハードカーボンとソフトカーボンとに分類される。ソフトカーボンはゴムに対する補強性が低く、ハードカーボンはゴムに対する補強性が強い。本発明では、特に、補強性の強いハードカーボンを用いるのが好ましい。
【0094】
シリカは、特に限定されず、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、けいそう土等が挙げられ、その含量(シリカ単独で用いる場合)は熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1〜200質量部であり、好ましくは10〜100質量部であり、より好ましくは20〜80質量部である。このなかでも、沈降シリカが好ましい。
補強剤としてシリカを用いる場合には、シランカップリング剤を併用できる。シランカップリング剤としては、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si69)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(Si75)、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、上記したアミノシラン化合物も用いることができる。
【0095】
カーボンブラックおよびシリカを併用する場合の含量(カーボンブラックおよびシリカの合計量)は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1〜200質量部であり、好ましくは10〜100質量部であり、より好ましくは20〜80質量部である。
【0096】
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損わない範囲で、本発明に用いる熱可塑性エラストマー以外のポリマー、カーボンブラックおよびシリカ以外の補強剤(充填剤)、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラー等の各種添加剤等を含有することができる。
【0097】
上記添加剤等は、一般に用いられるものを使用することができ、以下に具体的に、その一部を例示するが、これら例示したものに限られない。
本発明に用いる熱可塑性エラストマー以外のポリマーとしては、上記した理由と同様にガラス転移温度が25℃以下のポリマーが好ましく、特に本発明の主鎖として用いるもののうちの何れかであるのが好ましい。より好ましくは、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)であり、特にIIR、EPM、EBMの不飽和結合を有さないポリマーまたは不飽和結合の少ないポリマー(例えば、EPDM)を用いるのが好ましい。また、水素結合可能な部位を有するポリマーも好ましく、例えば、ポリエステル、ポリラクトン、ポリアミド等が挙げられる。該他のポリマーは1種または2種以上を含有させてもよい。該ポリマーの含量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
【0098】
カーボンブラックおよびシリカ以外の補強剤としては、例えば、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー等が挙げられ、これらの含量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、20〜80質量部がより好ましい。
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、脂肪族および芳香族のヒンダードアミン系等の化合物が挙げられ、その含量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0099】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられ、その含量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等が挙げられ、その含量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0100】
可塑剤としては、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバチン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸等の誘導体をはじめ、ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ系等が挙げられる。
揺変性付与剤としては、ベントン、無水ケイ酸、ケイ酸誘導体、尿素誘導体等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系等が挙げられる。
難燃剤としては、TCP等のリン系、塩素化パラフィン、パークロルペンタシクロデカン等のハロゲン系、酸化アンチモン等のアンチモン系、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0101】
溶剤としては、ヘキサン、トルエン等の炭化水素系;テトラクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系;酢酸エチル等のエステル系等が挙げられる。
界面活性剤(レベリング剤)としては、ポリブチルアクリレート、ポリジメチルシロキサン、変性シリコーン化合物、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
脱水剤としては、ビニルシラン等が挙げられる。
【0102】
防錆剤としては、ジンクホスフェート、タンニン酸誘導体、リン酸エステル、塩基性スルホン酸塩、各種防錆顔料等が挙げられる。
接着付与剤としては、公知のシランカップリング剤、アルコキシシリル基を有するシラン化合物、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等が挙げられる。より具体的には、例えば、トリメトキシビニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
帯電防止剤としては、一般的に、第4級アンモニウム塩、あるいはポリグリコールやエチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
可塑剤の含量は、上記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。その他の添加剤の含量は、0.1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0103】
本発明の熱可塑性エラストマーは自己架橋できるものもあるが、本発明の目的を損わない範囲で加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤等を併用することもできる。
加硫剤としては、イオウ系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。
イオウ系加硫剤としては、例えば、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。
有機過酸化物系の加硫剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられる。
その他として、酸化マグネシウム、リサージ、p−キノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリン等が挙げられる。
【0104】
加硫助剤としては、アセチル酸、プロピオン酸、ブタン酸、ステアリン酸、アクリル酸、マレイン酸等の脂肪酸;アセチル酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、ブタン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、マレイン酸亜鉛等の脂肪酸亜鉛等が挙げられる。
加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)等のチウラム系;ヘキサメチレンテトラミン等のアルデヒド・アンモニア系;ジフェニルグアニジン等のグアニジン系;ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)等のチアゾール系;シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系;等が挙げられる。さらにアルキルフェノール樹脂やそのハロゲン化物等を用いることもできる。
加硫遅延剤としては、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸等の有機酸;N−ニトロソージフェニルアミン、N−ニトロソーフェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体等のニトロソ化合物;トリクロルメラニン等のハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール;サントガードPVI等が挙げられる。
これら加硫剤等の含量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。
【0105】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記熱可塑性エラストマー、アミノ基含有化合物および必要に応じて各種添加剤等を、ロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機等により混合すればよい。
【0106】
ここで、第1態様のアミノ基含有化合物を用いる場合には、その添加時期も特に限定されない。
第1態様のアミノ基含有化合物として、上記熱可塑性エラストマーの含窒素複素環と同じ化合物を用いる場合は、1)まず、本発明の熱可塑性エラストマーを上記方法により製造したのち、これとアミノ基含有化合物を混合してもよいし、または、2)本発明の熱可塑性エラストマーの製造時にあらかじめ所定量(過剰量)の含窒素複素環(アミノ基含有化合物)を混合して製造してもよい。
含窒素複素環とアミノ基含有化合物が異なる場合には、上記1)の方法により製造できる。
【0107】
本発明の組成物を(加硫剤により)永久架橋させる場合の硬化条件は、配合する各種成分等に応じて適宜選択することができ、特に制限されない。例えば、130〜200℃の温度で、5〜30分で硬化させる硬化条件が好ましい。
【0108】
本発明の組成物は、約80〜180℃に加熱することにより三次元の架橋結合(架橋構造)が解離して軟化し、流動性が付与される。分子間または分子内で形成されている側鎖同士または側鎖とアミノ基含有化合物との相互作用が弱まるためであると考えられる。
【0109】
本発明の組成物は、例えばゴム弾性を活用して種々のゴム用途に使用することができる。またホットメルト接着剤として、またはこれに含ませる添加剤として使用すると、耐熱性およびリサイクル性を向上させることができるので好ましい。特に自動車周り等に好適に用いることができる。
【0110】
上記自動車周りとしては、具体的には、例えば、タイヤのトレッド、カーカス、サイドウォール、インナーライナー、アンダートレッド、ベルト部等のタイヤ各部;外装のラジエータグリル、サイドモール、ガーニッシュ(ピラー、 リア、カウルトップ)、エアロパーツ(エアダム、スポイラー)、ホイールカバー、ウェザーストリップ、カウベルトグリル、エアアウトレット・ルーバー、エアスクープ、フードバルジ、換気口部品、防触対策部品(オーバーフェンダー、サイドシールパネル、モール(ウインドー、フード、ドアベルト))、マーク類;ドア、ライト、ワイパーのウェザーストリップ、グラスラン、グラスランチャンネル等の内装窓枠用部品;エアダクトホース、ラジエターホース、ブレーキホース;クランクシャフトシール、バルブステムシール、ヘッドカバーガスケット、A/Tオイルクーラーホース、ミッションオイルシール、P/Sホース、P/Sオイルシール等の潤滑油系部品;燃料ホース、エミッションコントロールホース、インレットフィラーホース、タイヤフラム類等の燃料系部品;エンジンマウント、インタンクポンプマウント等の防振用部品;CVJブーツ、ラック&ピニオンブーツ等のブーツ類;A/Cホース、A/Cシール等のエアコンデショニング用部品;タイミングベルト、補機用ベルト等のベルト部品;ウィンドシールドシーラー、ビニルプラスチゾルシーラー、嫌気性シーラー、ボディシーラー、スポットウェルドシーラー等のシーラー類;等が挙げられる。
【0111】
またゴムの改質剤として、例えば流れ防止剤として、室温でコールドフローを起こす樹脂あるいはゴムに含ませると、押出し時の流れやコールドフローを防止することができる。
さらに本発明の組成物は、カーボンブラックおよび/またはシリカ等を含むことにより、引張強度、引裂き強度、曲げ強度が向上し、特にタイヤ、ホース、ベルト、シート、防振ゴム、ローラー、ライニング、ゴム引布、シール材、手袋、防舷材等の用途に特に好適に用いることができる。
【0112】
本発明の組成物は、アミノ基含有化合物を有するため、優れたリサイクル性を保持し、機械的特性および圧縮永久歪(形状保持率)等の物性に優れる。
そのため、本発明の組成物は、上記用途のうち、リサイクル性が要求される場合に特に好適に用いられる。
【0113】
【実施例】
次に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0114】
[実施例1〜14および比較例1〜3]
<熱可塑性エラストマー1の合成>
熱可塑性エラストマー1を以下の方法により合成した。
市販の無水マレイン酸変性イソプレンゴム(変性率2.7mol%、LIR−410A、クラレ(株)製)12.73g(6.55mmol)に、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール0.551g(6.55mmol)を加え、160℃で1時間加熱撹拌した。
反応物はNMR、IRにより、下記構造の熱可塑性エラストマー1(式(4))であることを確認した。
【0115】
【化10】
【0116】
<熱可塑性エラストマー組成物の調製>
次に、上記熱可塑性エラストマー1に第1表に示す第1態様のアミノ基含有化合物を、第1表に示す、該エラストマー1の側鎖に対する該化合物の窒素原子の当量比(第1表において「当量比」と表記する。)で混合し、第1表に示す条件で加熱撹拌して混合し熱可塑性エラストマー組成物を得た。
なお、比較例2および3については、該エラストマー1の側鎖に対する該化合物中の水酸基の当量比を第1表中の「当量比」の欄に示した。
【0117】
得られた各組成物の硬度、形状保持率を測定し、リサイクル性を評価した。その結果を第1表に示す。
【0118】
<JIS A硬度>
得られた各熱可塑性エラストマー組成物を100℃で20分間プレス成型した後、直径29mm×厚さ12.5mmの円筒状のサンプルを作製した。このサンプルを用いて、JIS K6253に準拠して、JIS A硬度を測定した。
なお、第1表中、「液状化」は上記熱可塑性エラストマー組成物が液状化しサンプルが作製できず試験を行えなかったことを示す。
【0119】
<形状保持率>
上記で得た円筒状サンプル上にガラス板を置き、その上に500gの分銅をのせて円筒状サンプルの48時間後の厚さを測定した。測定した厚さにより、形状保持率を下記式を用いて求めた。
形状保持率(%)=(48時間後の厚さ/12.5mm)×100
なお、第1表中、「−」は円筒状サンプルが作製できず、形状保持率を測定できなかったことを示す。
【0120】
<リサイクル性(軟化温度)>
上記で得た円筒状サンプルを10℃/minの昇温速度で加温していき、サンプルが軟化し形状を保持しなくなった温度を軟化温度とした。
なお、第1表中、「−」は円筒状サンプルが作製できず、軟化温度を測定できなかったことを示す。
また、実施例1〜14の組成物では、第1表に示した軟化温度で、繰り返し軟化できることを確認した。
【0121】
【表1】
【0122】
[実施例15、16および比較例4、5]
<熱可塑性エラストマー2の合成>
熱可塑性エラストマー2を以下の方法により合成した。
無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(DSM(株)製、試作品、エチレン含有量60mol%、無水マレイン酸変性率0.8mol%、重量平均分子量90,000)100g(無水マレイン酸骨格22.4mmol)に、4H−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール1.88g(22.4mmol)を加え、ニーダーにて170℃で30〜35分間で加熱攪拌した。
反応物はNMR、IRにより、下記構造の熱可塑性エラストマー2(式(5))であることを確認した。なお、式(5)中、Eは、エチレンまたはプロピレン残基である。
【0123】
【化11】
【0124】
<熱可塑性エラストマー組成物の調製>
得られた熱可塑性エラストマー2、第1態様のアミノ基含有化合物(3−アミノ−1,2,4−トリアゾール)およびカーボンブラックを、第2表に示す、該エラストマー2の側鎖に対する該化合物の窒素原子の当量比(第2表において「当量比」と表記する。)または該エラストマー2に対する質量部で、150℃で20分間加熱撹拌して混合(混練)し、エラストマー組成物とした。
得られた各組成物の硬度、圧縮永久歪を下記方法で測定し、リサイクル性(繰り返し成形試験)を下記方法で評価した。その結果を第2表に示す。
【0125】
<JIS A硬度>
得られた熱可塑性エラストマー組成物を150℃で60分間プレス成形した後、厚さ1cm×縦5cm×横5cmの平板サンプルを作製した。得られた平板サンプルを3枚重ね、JIS K6253に準拠して、JIS A硬度を測定した。
【0126】
<圧縮永久歪み(C−Set)>
上記各熱可塑性エラストマー組成物について、150℃で30分間熱プレスし厚さ2mmのシートを作製後、該シートを7枚重ね合わせて150℃で20分間熱プレスし、円筒状のサンプル(直径29×厚さ12.5mm)を作製した。
この円筒状サンプルを、専用治具で25%圧縮し、70℃で22時間放置した後の圧縮永久歪みをJIS K6262に準じて測定した。
【0127】
<リサイクル性(繰り返し成形試験)>
上記各エラストマー組成物について、170℃にて10分間熱プレスし2mm厚さのシートを作製後、このサンプルを細かく切断して再度プレス成形し、継ぎ目のない一体化したサンプルが作製できる回数で評価した。
10回以上作製できたものを「○」、8回以上10回未満作製できたものを「△」とした。
【0128】
【表2】
【0129】
第1表および第2表から明らかなように、本発明の組成物は、軟化点が低くリサイクル性を損なわず、硬度(機械的特性)を改善でき、さらに圧縮永久歪(形状保持率)に優れた。また、カーボンブラックを含有する組成物においても、同様の結果が得られ、本発明の組成物は上記した用途に好適に用いることができる。
【0130】
なお、実施例15、16および比較例4、5において、上記熱可塑性エラストマー組成物の調製時の混練条件を170℃、25分に変更して得られるエラストマー組成物を用いて、JIS A硬度、圧縮永久歪み(C−Set)およびリサイクル性(繰り返し成形試験)の各試験のサンプル作製条件(プレス条件)を以下の条件に変更して上記と同様に試験行ったが、上記とほぼ同様の結果(傾向)が得られた。
JIS A硬度の測定およびリサイクル性(繰り返し成形試験)試験において、サンプル作製条件を200℃で10分間とした。また、圧縮永久歪み(C−Set)の測定において、円筒状のサンプルの作製条件を、200℃で10分間プレス成形して厚さ2mmのシートを作製後、該シートを重ね合わせて200℃で10分間とした。
【0131】
[実施例17〜20および比較例6]
<熱可塑性エラストマー組成物の調製>
上記で得られた熱可塑性エラストマー2、第1態様のアミノ基含有化合物(N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン)およびカーボンブラックを第3表に示す、該エラストマー2の側鎖に対する該化合物の窒素原子の当量比(第3表において「当量比」と表記する。)または該エラストマー2に対する質量部で、200℃で30分間、ニーダーで加熱混練し、エラストマー組成物とした。
得られた各組成物の硬度、圧縮永久歪を上記実施例15と同様の方法で測定し、リサイクル性(繰り返し成形試験)を上記実施例15と同様の方法で評価した。その結果を第3表に示す。
【0132】
【表3】
【0133】
第3表から明らかなように、本発明の組成物では、第1態様のアミノ基含有化合物を含有させると、圧縮永久歪、硬度を改善でき、優れたリサイクル性を保持した。特に、第1態様のアミノ基含有化合物の含量を多くしていくと、圧縮永久歪の改善効果が高くなった。
すなわち、本発明の組成物が用いられる用途、要求される物性等に応じて、該改善効果を勘案して好適な物性を発揮する任意のアミノ基含有化合物の含量に調整することができる。
【0134】
[実施例21〜30および比較例7]
<熱可塑性エラストマー組成物の調製>
上記で得られた熱可塑性エラストマー2および第4表に示す第1態様のアミノ基含有化合物を第4表に示す、該エラストマー2の側鎖に対する該化合物の窒素原子の当量比(第4表において「当量比」と表記する。)で、200℃で30分間、ニーダーで加熱混練し、エラストマー組成物とした。
得られた各組成物の硬度、圧縮永久歪を上記実施例15と同様の方法で測定し、リサイクル性(繰り返し成形試験)を上記実施例15と同様の方法で評価した。また、引張試験を以下の方法で行った。その結果を第4表に示す。
【0135】
<引張試験>
200℃にて10分間熱プレスし、厚さ2mmのシートを作製した。該シートから3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、JIS K 6251に準拠して、引張速度500mm/分にて引張試験を行った。50%モジュラス(M50)、100%モジュラス(M100 )、200%モジュラス(M200 )、300%モジュラス(M300 )、400%モジュラス(M400 )、破断強度(TB )および破断伸び(EB )を室温にて測定した。
【0136】
【表4】
【0137】
第4表から明らかなように、本発明の組成物では、第1態様のアミノ基含有化合物を含有させると、圧縮永久歪、硬度および機械的特性を改善でき、優れたリサイクル性を保持した。また、実施例17〜20と同様な圧縮永久歪の改善効果が見られた。すなわち、本発明の組成物が用いられる用途、要求される物性等に応じて、該改善効果を勘案して好適な物性を発揮する任意のアミノ基含有化合物の含量に調整することができる。
【0138】
[実施例31〜34および比較例8]
<第2態様のアミノ基含有化合物(アミノ基を有するポリシロキサン)2−1〜2−4の合成>
N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(A−1120、日本ユニカー(株)製)111.18g(0.5mol)に水27g(1.5mol)を加え、室温で1時間攪拌した後、80℃で5時間攪拌した。
攪拌を止め、60℃で15時間、減圧オーブンにて減圧乾燥し、白色固体のアミノ基を有するポリシロキサン2−1を76g得た。収率は99%であった。
【0139】
N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン(A−1170、日本ユニカー(株)製)136.62g(0.4mol)に水21.6g(1.2mol)を加え、室温で1時間攪拌した後、80℃で5時間攪拌した。
攪拌を止め、60℃で15時間、減圧オーブンにて減圧乾燥し、白色固体のアミノ基を有するポリシロキサン2−2を84g得た。収率は103%であった。
【0140】
3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(Dynasilane1189、デグサヒュルス(株)製)117.5g(0.5mol)に水27g(1.5mol)を加え、室温で1時間攪拌した後、80℃で96時間攪拌した。
攪拌を止め、60℃で15時間、減圧オーブンにて減圧乾燥し、白色固体のアミノ基を有するポリシロキサン2−3を76g得た。収率は92%であった。
【0141】
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(A−1110、日本ユニカー(株)製)125.5g(0.7mol)に水37.8g(2.1mol)を加え、室温で1時間攪拌した後、80℃で96時間攪拌した。
攪拌を止め、60℃で15時間、減圧オーブンにて減圧乾燥し、白色固体のアミノ基を有するポリシロキサン2−4を81g得た。収率は105%であった。
【0142】
<熱可塑性エラストマー組成物の調製>
上記で得られた熱可塑性エラストマー2、アミノ基を含有するポリシロキサンまたはシリカゲル(nipsil LP、日本シリカ(株)製)を、第5表に示す、該エラストマー2(100質量部)に対する含量(質量部)で、200℃で20分間、ニーダーで加熱混練し、エラストマー組成物とした。
【0143】
【表5】
【0144】
得られた各組成物のリサイクル性(繰り返し成形試験)を上記実施例15と同様の方法で評価し、硬度および圧縮永久歪の測定を上記実施例15と同様の方法で行い、引張試験を上記実施例21と同様の方法で行った。その結果を第6表に示す。
【0145】
【表6】
【0146】
第6表に示すように、第2態様のアミノ基含有化合物を含有する組成物(実施例31〜34)は、比較例8の組成物と比較して、圧縮永久歪に優れリサイクル性を示し、硬度および機械的特性の改善効果も見られた。
【0147】
なお、本発明において、カーボンブラックは、東海カーボン(株)製、ダイアブラックGを用い、アミノ基含有化合物は以下のものを用いた。
4H−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール;日本カーバイド(株)製、4,4’−ジピリジリル;東京化成(株)製、4−アミノピリジン;東京化成(株)製、ドデシルアミン;東京化成(株)製、テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン;東京化成(株)製、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン;東京化成(株)製、N,N’−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン;東京化成(株)製、N,N’−ジイソプロピル−1,3−プロパンジアミン;東京化成(株)製、2,5−ヘキサンジオール;東京化成(株)製、ビスフェノールA;東京化成(株)製。
【0148】
【発明の効果】
本発明により、優れたリサイクル性を保持し、機械的特性および圧縮永久歪(形状保持率)にも優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供できる。
Claims (10)
- 側鎖にカルボニル含有基と含窒素複素環とを有する熱可塑性エラストマーと、
アミノ基含有化合物と、
を含有する熱可塑性エラストマー組成物。 - 前記含窒素複素環が、5または6員環である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記含窒素複素環が、トリアゾール環、チアジアゾール環またはピリジン環である請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記アミノ基含有化合物が、2級の脂肪族ジアミン、芳香族1級アミンと複素環状アミンを含むポリアミンまたは3級複素環状ジアミンである請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記アミノ基含有化合物が、アミノ基を有するポリシロキサンである請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記アミノ基を有するポリシロキサンが、アミノシラン化合物の縮合物である請求項7に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、前記アミノ基を含有するポリシロキサンを1〜200質量部含有する請求項7または8に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して、さらにカーボンブラックおよび/またはシリカを1〜200質量部含有する請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
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