JP2004231931A - ポリイソシアネート溶液並びにこれを用いた接着剤および塗料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有機ポリイソシアネート(A1)と、アルコール性水酸基を有するジオール(A2−1)20〜40モル%およびアルコール性水酸基を有するトリオール(A2−2)80〜60モル%からなるポリオール(A2)と、を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)、および有機溶剤(B)を含んで構成され、トリオール(A2−2)の一部が、グリセリンであるとともに、ポリオール(A2)の15〜35モル%が、グリセリンであるポリイソシアネート溶液。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイソシアネート溶液並びにこれを用いた接着剤および塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイソシアネート溶液は、反応性の非常に高いイソシアネート基を多数含んでいるため、常温でも容易に活性水素含有化合物と反応するという性質を有している。また、このポリイソシアネート溶液から得られるポリウレタン化合物は、接着性、耐摩耗性、耐候性等の性能に優れていることから、接着剤や塗料などの分野で広く用いられている。
【0003】
このようにポリイソシアネート組成物を、活性水素基含有化合物と組み合わせてポリウレタン接着剤やポリウレタン塗料として用いる場合には、ポリイソシアネート組成物の分子量、官能基数がポリウレタン接着剤やポリウレタン塗料におけるポリウレタンシステムの反応性、可使時間、相溶性などに多大な影響を与え、そのシステムの性能や、作業性が大きく左右される。
したがって、ポリイソシアネート組成物の製造では、用途に応じた適切な分子量と官能基数とを有した組成物を調製する必要があるが、その目安としては、接着剤や塗料として用いる場合においては、溶剤に対する溶解性、活性水素化合物との相溶性、硬化性等が指標とされる。これらを適切に調節するためには、触媒の選択、各種原料の組成、その仕込み比および仕込み方法、反応温度、反応時間などの反応条件を調整することが重要となる。
【0004】
イソシアネートは、本質的にジオール、トリオール、ポリエーテルポリオールなどの活性水素化合物との相溶性が低い傾向にあるため、イソシアネート同士の反応、または活性水素化合物との反応によりポリイソシアネート組成物を得る場合において、ポリイソシアネート溶液の溶剤等に対する溶解性を高めるために種々の試みがなされている。
【0005】
例えば、特許文献1(特開2002−60459号公報)には、アロファネート結合を導入することにより、非極性有機溶剤、無臭溶剤への溶解性を向上させたポリイソシアネート組成物が開示されている。
特許文献2(特開平6−256663号公報)には、炭素数10〜30の直鎖脂肪族第1級モノアルコールに脂肪族多価アルコールを1〜50モル%配合してなるアルコール混合物と、イソシアネートとを反応させてなる、有機溶剤に対する溶解性に優れたイソシアネート変性ワックスが開示されている。
【0006】
特許文献3(特開平9−40738号公報)には、イソシアネートとポリエステルポリオールとの反応によりポリウレタンを得る場合に、そのポリエステルポリオール成分として2−メチル−1,3−プロパンジオールを用いることにより汎用溶剤に対する溶解性向上を図る手法が開示されている。
特許文献4(特開平5−155971号公報)には、ポリエステルポリオールのポリオール成分として、分子量300〜3,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、ヒドロキシフェニル基を2個有する化合物または2価フェノールにアルキレンオキサイドを付加重合して得られた分子量1,000以下のポリオキシアルキレンジオールを用いて溶剤溶解性を向上させる手法が開示されている。
【0007】
このように、ポリイソシアネート溶液の溶剤溶解性を改善する種々の試みがなされてはいるものの、ジオールやトリオールなどの活性水素化合物との反応によって得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの溶剤溶解性は、未だ充分であるとは言い難く、さらなる改良が求められている。
また、接着剤や塗料の分野で必要とされる硬度、接着性および密着性等の性能を発揮させるためには、その他の樹脂との相溶性、硬化性に優れたポリイソシアネート溶液が必要とされている。しかし、活性水素化合物を含めたその他の樹脂との相溶性の向上を図る手法として一般的である官能基数を低下させる方法を用いると、官能基数の低下に伴って必要とされる硬化性までもが低下してしまうという問題がある。触媒を添加することにより硬化性の向上を図ることができるものの、触媒を使用せず、ポリイソシアネートの組成を改良することで、相溶性および硬化性の両特性の向上を図る手法が望まれている。
【0008】
一方、ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基は非常に高い反応性を有しているため、上述した反応時の分子量制御だけでなく貯蔵安定性についてもしばしば問題が生じており、従来から、この貯蔵安定性を改良するため、種々の試みがなされている。
例えば、特許文献5(特開平5−247174号公報)には、ポリヒドロキシポリエーテルを過剰のトルエンジイソシアネートと反応させて得られるポリイソシアネートが開示されている。
また、特許文献6(特開平8−283367号公報)には、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチルのような重合阻害剤を用いる手法が開示され、特許文献7(特開平9−194557号公報)には、トリアルキルシリルスルフィド基含有化合物およびイソシアネート基を有する化合物からなる組成物に、水分除去剤として加水分解性の遷移金属化合物を添加する手法が開示されている。
【0009】
さらに、特許文献8(特開昭59−98050号公報)では、有機ポリイソシアネートの空気・光・熱等による着色に対する安定性を改良するため、ジデシルペンタエリスリト−ルジホスフアイト等の有機亜リン酸エステル類と、2,6−ジターシャリブチル−4−メチルフェノールおよび2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジターシャリアミルフェニル)ベンゾトリアゾールとを、有機ポリイソシアネートに併用して添加することにより、安定性改善を図る手法が開示されている。
また、特許文献9(特開平5−117220号公報)では、イソシアヌレート変性ポリイソシアネートを得るに際し、(薄膜)蒸留する前に、特定の有機系強酸のシリル化エステルを添加することにより、安定性改善を図る手法が開示されている。
【0010】
このようにポリイソシアネート溶液の安定性を改善する種々の試みがなされてはいるものの、その特性は、未だ充分満足できるものであるとは言い難く、さらなる改良が求められている。特に優れた硬化性、溶剤溶解性および貯蔵安定性を併せ持ち、しかも接着剤や塗料の分野で必要とされる硬度、接着性および密着性等に優れたポリイソシアネート溶液が求められている。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−60459号公報
【特許文献2】
特開平6−256663号公報
【特許文献3】
特開平9−40738号公報
【特許文献4】
特開平5−155971号公報
【特許文献5】
特開平5−247174号公報
【特許文献6】
特開平8−283367号公報
【特許文献7】
特開平9−194557号公報
【特許文献8】
特開昭59−98050号公報
【特許文献9】
特開平5−117220号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、優れた溶剤溶解性、他の樹脂に対する相溶性および硬化性を有し、接着剤や塗料に用いた場合に好適な硬度、接着性および密着性等を発揮するポリイソシアネート溶液、並びにこの溶液を含む塗料および接着剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記各特性に加えて、さらに優れた貯蔵安定性を有するポリイソシアネート溶液を提供することを他の目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所定のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)および有機溶剤(B)を含むポリイソシアネート溶液が、優れた溶剤溶解性、他の樹脂に対する相溶性および硬化性を有するのみならず、接着剤や塗料の分野で必要とされる硬度、接着性および密着性等に優れていることを見いだすとともに、このポリイソシアネート溶液に、さらに酸ハロゲン化物を配合することでポリイソシアネート溶液の貯蔵安定性が著しく向上することを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、
1. 有機ポリイソシアネート(A1)と、アルコール性水酸基を有するジオール(A2−1)20〜40モル%およびアルコール性水酸基を有するトリオール(A2−2)80〜60モル%からなるポリオール(A2)と、を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)、および有機溶剤(B)を含んで構成され、前記トリオール(A2−2)の一部が、グリセリンであるとともに、前記ポリオール(A2)の15〜35モル%が、前記グリセリンであることを特徴とするポリイソシアネート溶液、
2. 前記有機ポリイソシアネート(A1)が、トルエンジイソシアネートであることを特徴とする1のポリイソシアネート溶液。
3. さらに、酸ハロゲン化物(C)を含むことを特徴とする1または2のポリイソシアネート溶液、
4. 1〜3のいずれかのポリイソシアネート溶液を用いたことを特徴とする接着剤、
5. 1〜3のいずれかのポリイソシアネート溶液を用いたことを特徴とする塗料
を提供する。
【0015】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るポリイソシアネート溶液は、上述のように、有機ポリイソシアネート(A1)と、アルコール性水酸基を有するジオール(A2−1)20〜40モル%およびアルコール性水酸基を有するトリオール(A2−2)80〜60モル%からなるポリオール(A2)と、を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)、および有機溶剤(B)を含んで構成され、トリオール(A2−2)の一部が、グリセリンであるとともに、ポリオール(A2)の15〜35モル%が、グリセリンであることを特徴とするものである。
【0016】
ここで、有機ポリイソシアネート(A1)としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物、例えば、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略称する)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略称する)、MDIとMDI系多核縮合体との混合物(以下、ポリメリックMDIと略称する)、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略称する)、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等を用いることができる。
また、これらのイソシアネート基の一部を変性したビウレット、アロファネート、イソシアヌレート(3量体)、ウレトジオン(2量体)、カルボジイミド、ウレトンイミン等の変性体、オキサゾリドン、アミド、イミド等で変性したものも使用することができる。
これらの有機イソシアネート類(その変性体を含む)は、1種単独でまたは2種以上の混合物として使用することができる。
【0017】
上記有機イソシアネートの中でも、常温液状で扱い易く、その変性体が優れた物性を有するとともに、経済的であるという点から、TDIを用いることが好ましく、特に、2,4−TDIが100〜50質量%、2,6−TDIが0〜50質量%からなるTDIを用いることが好ましい。
【0018】
また、ポリオール(A2)としては、アルコール性水酸基を有するジオール(A2−1)と、アルコール性水酸基を有するトリオール(A2−2)とからなるものである。
この場合、ポリオール(A2)における、ジオール(A2−1)とトリオール(A2−2)との構成比は、ジオール(A2−1)が20〜40モル%、好ましくは、25〜35モル%、トリオール(A2−2)が80〜60モル%、好ましくは、75〜65モル%である。ここで、ジオール(A2−1)が20モル%より少ない場合(すなわち、トリオール(A2−2)が80モル%より多い場合)は、本発明で得られるポリイソシアネート溶液を接着剤や塗料用の硬化剤として用いた場合、硬化性が向上するとともに、硬さなどの物性および乾燥性が向上するが、粘度が高くなるため有機溶剤への溶解性、その他の樹脂に対する相溶性が低下する。また、ジオール(A2−1)が40モル%より多い場合(すなわち、トリオール(A2−2)が60モル%より少ない場合)は、本発明で得られるポリイソシアネート溶液を、接着剤や塗料用の硬化剤として用いた場合、有機溶剤への溶解性および他樹脂との相溶性が向上するものの、硬化性が低下するとともに、硬さなどの物性や乾燥性が低下する。
【0019】
さらに、ポリオール(A2)全体としての(数平均)分子量は、32〜10,000が好ましく、特に好ましくは、100〜5,000である。本発明においては、得られるポリイソシアネート溶液の粘度やイソシアネート含量等を考慮すると、ポリオール(A2)全体の(数平均)分子量は、500未満が最適である。
【0020】
上記アルコール性水酸基を有するジオール(A2−1)としては、特に限定されるものではなく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、モノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン,N−フェニルジエタノールアミン,N−フェニルジプロパノールアミン等の低分子アミノアルコール系ジオール類、水素添加ビスフェノールA等の低分子ジオール類、上記低分子ジオール類にアルキレンオキサイド等の低分子環状エーテルを開環付加させて得られるポリエーテルジオール、活性水素を2個有する低分子アミンやアミノアルコール類にアルキレンオキサイド等の低分子環状エーテルを開環付加させて得られるアミノ基含有ポリエーテルジオール、上記低分子ジオール類と、コハク酸,アジピン酸,アゼライン酸,フタル酸等のジカルボン酸とを脱水縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、上記低分子ジオール類にε−カプロラクタム等の環状エステルモノマーを開環重合させて得られるラクトン系ポリエステルジオール,上記低分子ジオール類にカーボネート基を1個有する低分子カーボネート化合物を反応させて得られるポリカーボネートジオール類、1分子中にアルコール性水酸基を2固有するポリオレフィンポリオール、アクリル系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ノボラック樹脂やレゾール樹脂等のフェノール系ポリオール、シリコン系ポリオール、フッ素系ポリオール、ポリオール中でアクリロニトリルやスチレン等のビニル系モノマーを分散・ラジカル重合させた、いわゆるポリマーポリオール等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0021】
一方、アルコール性水酸基を有するトリオール(A2−2)としても、特に限定されるものではなく、グリセリン、トリメチロールプロパン、2,3,5−ヘキサントリオール等の脂肪族低分子トリオール類、トリエタノールアミン,トリプロパノールアミン等の低分子アミノアルコール系トリオール類、これらにアルキレンオキサイド等の低分子環状エーテルを開環付加させて得られるポリエーテルトリオール、上記低分子トリオール類にε−カプロラクタム等の環状エステルモノマーを開環重合させて得られるラクトン系ポリエステルトリオール等が挙げられ、これらは1種単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0022】
特に、トリオール(A2−2)の一部が、グリセリンであるとともに、ポリオール(A2)中の15〜35モル%、好ましくは、17〜33モル%、より好ましくは18〜32モル%がグリセリンであることが望ましい。
ここで、ポリオール(A2)中のグリセリン含有量が、15モル%より少ないと、硬化性、硬さ、乾燥性等が低下する虞がある。一方、ポリオール(A2)中のグリセリン含有量が、35モル%より多いと、ウレタンプレポリマーの粘度が高くなる虞があると同時に、有機溶剤への溶解性や、他樹脂との相溶性が低下する虞がある。
【0023】
上記有機溶剤(B)は、ポリウレタン工業において常用されるイソシアネート基に対して不活性の溶剤であれば特に限定はなく、例えば、トルエン,キシレン等の芳香族系溶剤、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル,酢酸ブチル,酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート,プロピレングリコールメチルエーテルアセテート,3−メチル−3−メトキシブチルアセテート,エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤、テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0024】
上記有機溶剤(B)の使用量は、特に限定されるものではないが、ポリイソシアネート溶液に対して、10〜90質量%であることが好ましく、特に、20〜80質量%であることが好ましい。
また、この場合、上記ポリイソシアネート溶液中の固形分含量は、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。さらに、イソシアネート含量は、溶液状態で1〜30質量%が好ましく、特に、2〜25質量%であることが好ましい。
【0025】
以上のような(A),(B)各成分を含んで構成されるポリイソシアネート溶液において、さらに酸ハロゲン化物(C)を配合することが好ましい。このような酸ハロゲン化物(C)を上記ポリイソシアネート溶液中に配合することで、ポリイソシアネート溶液の貯蔵期間中に、溶液中のイソシアネート成分が湿気等の活性水素化合物と反応して高分子量化することを防止することができ、ポリイソシアネート溶液の貯蔵安定性をより一層向上させることができる。
【0026】
本発明で使用可能な酸ハロゲン化物(C)は、脂肪族または芳香族のカルボン酸のハロゲン化エステルである。この場合、脂肪族または芳香族のカルボン酸としては、特に限定されるものではなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、乳酸、レプリン酸、アクリル酸、メタアクリル酸、吉草酸、マロン酸、マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、クエン酸、グルタル酸、コハク酸、蓚酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、オレイン酸、安息香酸、シクロヘキシルカルボン酸、フェニル酪酸、トルイル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、パラトルエンスルホン酸、マンデル酸、メリト酸、ケイ皮酸などが挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上の混合物として使用することができる。
また、これらの脂肪族または芳香族のカルボン酸と組み合わせて用いることのできるハロゲン元素は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。
【0027】
上記脂肪族または芳香族カルボン酸のハロゲン化物の中でも、有機ポリイソシアネート(A1)、これから得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)および有機溶剤(B)に対する溶解性等を考慮すると、芳香族カルボン酸のハロゲン化物を用いることが好ましく、特に、フタル酸クロライド、フタル酸ジクロライド、フルオロ安息香酸等を用いることが好ましい。
【0028】
酸ハロゲン化物(C)の添加量は、上述した有機ポリイソシアネート(A1)に対して、0.00003〜5.0質量%が好ましく、特に好ましくは0.00005〜1質量%である。また、酸ハロゲン化物(C)の添加時期については、有機ポリイソシアネート(A1)とポリオール(A2)との反応の前後を問わない。
【0029】
なお、本発明のポリイソシアネート溶液の調製法としては、特に限定はないが、予めイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を調製した後に、これに有機溶剤(B)を配合する方法、有機溶剤(B)の存在下でイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を調製する方法等を採用することができ、これらは使用する原料等に応じて適宜選択すればよい。
一方、酸ハロゲン化物(C)を配合する場合は、予めイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を調製した後に、これに酸ハロゲン化物(C)および有機溶剤(B)を配合する方法、酸ハロゲン化物(C)の存在下でイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を調製した後に、有機溶剤(B)を配合する方法等を採用でき、この場合も使用する原料等に応じて適宜選択すればよい。
【0030】
以上で説明した有機ポリイソシアネート溶液において、有機ポリイソシアネート(A1)とポリオール(A2)とを反応させる(以下、ウレタン化反応という)際の、イソシアネート基と水酸基との当量比(イソシアネート基/水酸基)は、1.5〜500が好ましく、特に、2〜400が好ましい。また、ウレタン化反応の反応温度は、30〜120℃が好ましく、特に好ましくは50〜100℃である。
【0031】
なお、ウレタン化反応の際、公知の3級アミン系触媒や金属系触媒等のウレタン化触媒を用いることができ、それらの添加量は、有機ポリイソシアネート(A1)およびポリオール(A2)の全体に対して、通常、0.01〜20質量%である。
上記3級アミン系触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−シアノイミダゾール、1−シアノメチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、1−メチル−4−エチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−エチル−4−メチルイミダゾール、ピリジン、α−ピコリン等が挙げられる。
上記金属系触媒としては、例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ナフテン酸カルシウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛等が挙げられる。
【0032】
さらに、本発明のポリイソシアネート溶液においては、色数低減効果を発揮させる目的で、有機亜リン酸エステル系化合物、フェノール系化合物等を添加することができる。
ここで、有機亜リン酸エステル系化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、トリフェニルホスファイト等のトリアリールホスファイト、アルキル基の炭素数が4〜20である(ジ)アルキルジアリールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト,ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイトなどの亜リン酸基の酸素原子の少なくとも1個がジ(t−ブチル)フェニル構造を有する炭化水素基で封鎖された亜リン酸トリエステル等の亜リン酸基の酸素原子に結合した炭化水素基の炭素原子の合計が亜リン酸基1個当たり12〜60個である亜リン酸トリエステル、テトラブチル−4,4′−イソプロピリデンジフェニルジホスファイトなどの1分子中に2個の亜リン酸基を有し、亜リン酸基を結ぶ骨格がビスフェノールA構造であるもの、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト,テトラフェニルテトラデシルペンタエリスリトールテトラホスファイトなどの1分子中に2個または4個の亜リン酸基を有し、亜リン酸基を結ぶ骨格がペンタエリスリトール構造であるもの等を好適に用いることができる。
【0033】
なお、上記亜リン酸エステル化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。また、亜リン酸基の酸素原子に結合した炭化水素基の合計炭素原子数が、亜リン酸基1個当たり11個以下であると、沸点が低いためポリメリックMDIの途中で揮発し易く、着色防止効果が小さい場合がある。このため、これらの有機亜リン酸エステル化合物を用いる場合は、フェノール系化合物(酸化防止剤)を併用することが好ましい。
【0034】
また、フェノール系化合物としては、特に限定されるものではなく、ビス[2−ヒドロキシ−5−メチル−3−t−ブチルフェニル]メタン、2,2−ビス[4−ヒドロキシフェニル]プロパン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、3,3′−ジアルキル−、または3,3′,5,5′−テトラアルキル−4,4′−ジヒドロキシビフェニル、ビス[4−ヒドロキシ−2−メチル−5−t−ブチルフェニル]スルフィド、ヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、4−メトキシフェノール、4−t−ブトキシフェノール、4−ベンジルオキシフェノール、4−メトキシ−2−、または−3−t−ブチルフェノール、2,5−ジヒドロキシ−1−t−ブチルベンゼン、4−メトキシ−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(以下、BHTと略称する)、モノまたはジまたはトリ(α−メチルベンジル)フェノール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等が挙げられる。
【0035】
上記亜リン酸エステル化合物やフェノール化合物の添加量は、イソシアネートに対して0.0010〜1質量%、特に0.0050〜0.5質量%が好ましい。また、それらの添加時期は、特に限定はなく、上述したウレタン化反応の開始前でも開始後でも構わない。
【0036】
本発明に係る接着剤および塗料は、上述した本発明のポリイソシアネート溶液を用いるものであり、より具体的には、上記ポリイソシアネート溶液を硬化剤として用いるものである。
一般的に、接着剤および塗料は、1液タイプと2液タイプとに大別される。1液タイプは、上記ポリイソシアネート溶液中のイソシアネート基をさらにブロック剤で封鎖したものを潜在性硬化剤とし、この硬化剤を主剤としての多価ヒドロキシル化合物に予め配合したタイプ、または上記ポリイソシアネート溶液を単独で用いて湿気硬化させるタイプがある。一方、2液タイプは、上記ポリイソシアネート溶液を硬化剤として、この硬化剤と主剤としての多価ヒドロキシル化合物とを使用直前に配合するものである。
【0037】
本発明における接着剤および塗料のタイプは、特に限定されるものではないが、特に、上記ポリイソシアネート溶液を硬化剤として用い、これに主剤としての多価ヒドロキシル化合物を配合して使用する2液タイプが好ましい。
ここで、主剤として用いられる多価ヒドロキシル化合物としては、上述したポリオール(A2)を用いることもできるが、接着剤および塗料として用いた場合の接着性(密着性)、物性、耐久性の付与などの点から、分子内に2個以上の水酸基を有する数平均分子量500〜100,000のものを用いることが好ましい。
【0038】
このような化合物として具体的には、飽和または不飽和ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、飽和または不飽和の油変性または脂肪酸変性アルキッドポリオール、アミノアルキッドポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、含フッ素ポリオール、飽和または不飽和ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、飽和または不飽和の油変性又は脂肪酸変性アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースアセテートブチラート樹脂、含フッ素樹脂等が挙げられる。
【0039】
上記接着剤および塗料において、ポリイソシアネート溶液中のイソシアネート基と主剤中の多価ヒドロキシル化合物中の水酸基とのモル比は、接着剤および塗料として用いた場合の接着性(密着性)、物性、耐久性の付与などの点から、9:1〜1:9が好ましく、特に、7:3〜3:7がより好ましい。
また、本発明における塗料を用いて塗装する際には、従来行われている通常の塗装方法を用いることができ、例えば、エアレススプレー機、エアスプレー機、静電塗装機、浸漬、ロールコーター、ナイフコーター、ハケ等を用いて塗装することができる。
【0040】
なお、本発明の接着剤および塗料には、必要に応じて、さらに前述のウレタン化触媒を配合して用いることができる。この場合、触媒の添加量は、上記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)に対して、0.01〜20質量%が好ましい。添加量が0.01質量%より少ないと、硬化反応が不充分となり、目的とした物性が得られない虞があり、一方、20質量%を超えると、接着剤や塗料において、経時で接着性(密着性)、物性が低下する虞がある。
【0041】
また、セメント、高炉スラグ,石こう,炭酸カルシウム,粘土,水酸化アルミニウム,三酸化アンチモン,生石灰,消石灰,ベントナイト等の無機充填剤や、レベリング剤、難燃剤、老化防止剤、耐熱性付与剤、抗酸化剤、その他のラッカー工業において常用される各種顔料および各種添加剤等を適宜配合することができ、これらの配合量も目的に応じて適宜調整すればよい。
【0042】
以上述べたように、本発明の有機イソシアネート溶液は、所定のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)および有機溶剤(B)を含むポリイソシアネート溶液であるから、優れた硬化性、溶剤溶解性、他の樹脂との相溶性、硬度および乾燥性を兼ね備えている。また、これら(A)、(B)各成分に、さらに酸ハロゲン化物(C)を配合することで、粘度が増大して溶剤溶解性や他の樹脂との相溶性が低下するなどの経時変化が生じにくい、貯蔵安定性に優れたポリイソシアネート溶液とすることができる。
また、これらのポリイソシアネート溶液を硬化剤として用いることで、硬さ、接着性および密着性等の特性に優れた接着剤および塗料を得ることができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0044】
[1]ポリイソシアネート溶液の調製1
[実施例1〜5]
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管のついた、容量が1,000ml、または3,000mlの反応器に、表1に示される配合量で各有機ポリイソシアネート(A1)、ポリオール(A2)を仕込んだ。これを撹拌しながら70〜80℃に加熱し、目標のNCO含量に達するまでウレタン化反応を進めた(イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)の合成)。その後、この反応液中の未反応のTDIを120〜140℃、1〜5Paで薄膜蒸留により残留の遊離TDI含有量が0.5質量%以下になるように除去した。
薄膜蒸留後の溶液に、表1に示される配合量で有機溶剤(B)を加えて、ポリイソシアネート溶液P−1〜5を得た。
【0045】
[比較例1〜5,10〜13,15]
表2に示される配合量で各有機ポリイソシアネート(A1)、ポリオール(A2)を仕込み、これを実施例1と同様にウレタン化反応(イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)の合成)および薄膜蒸留を行った後、表2に示される配合量で有機溶剤(B)を加えて、ポリイソシアネート溶液P−6〜10、P−15〜18、P−20を得た。
【0046】
[比較例6〜9,14]
表2に示される配合量で各有機ポリイソシアネート(A1)、ポリオール(A2)を仕込み、これを実施例1と同様にウレタン化反応(イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)の合成)を行った後、表2に示される配合量で有機溶剤(B)を加えて、ポリイソシアネート溶液P−11〜14、P−19を得た。
上記各実施例および比較例で得られた各ポリイソシアネート溶液について、イソシアネート含量および固形分量を表1,2に併せて示した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
上記表1,2において、f2は1分子中にアルコール性水酸基を2個有するポリオールの全ポリオールに対するモル%を、f3は1分子中にアルコール性水酸基を3個有するポリオールの全ポリオールに対するモル%を、G値はグリセリンの全ポリオールに対するモル%を意味する。
【0050】
また、その他の商品名、略号の詳細は以下のとおりである。
コロネートT−100(日本ポリウレタン工業(株)製):2,4−TDI
コロネートT−80(日本ポリウレタン工業(株)製):2,4−TDIと2,6−TDIの混合物(2,4−TDI/2,6−TDI=80/20(質量比)) コロネートT−65(日本ポリウレタン工業(株)製):2,4−TDIと2,6−TDIの混合物(2,4−TDI/2,6−TDI=65/35(質量比))
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
ミリオネートMTL:カルボジイミド変性タイプMDI(日本ポリウレタン工業(株)製)
TMP:トリメチロールプロパン(官能基数=3)
Gly:グリセリン(官能基数=3)
1,3−BD:1,3−ブタンジオール(官能基数=2)
EG:エチレングリコール
PRD:1,2−プロパンジオール(官能基数=2)
PND:1,5−ペンタンジオール(官能基数=2)
PP−400(三洋化成工業(株)製):ポリ(オキシプロピレン)ポリオール、公称官能基数=2、数平均分子量=400
なお、コロネートは日本ポリウレタン工業(株)の登録商標、ミリオネートは保土谷化学工業(株)の登録商標(日本ポリウレタン工業に使用許諾)である。
【0051】
上記各実施例および比較例で得られたポリイソシアネート溶液について、調製直後の粘度を測定し、表3に示した。
ここで、粘度は、JIS K 2283−1980に規定されるキャノンフェンスケ粘度計を用いる方法に従い測定した。
【0052】
また、ポリイソシアネートは、その使用目的、用途に応じて溶剤希釈して使用することが多いので、上記各ポリイソシアネート溶液の溶剤溶解性を測定、評価し、併せて表3に示した。
なお、溶剤溶解性の測定・評価は、下記試験方法により、行った。
【0053】
〔溶剤溶解性試験〕
ポリイソシアネート溶液を5g採取し、ビュレットにてトルエンを少しずつ加え、よく振り混ぜて濁ったところを終点とし、その時の溶剤の所要ml数を求めた。そして、次の式にて溶剤溶解性(倍)を求めた。この値が大きいほど溶剤溶解性に優れていることを示している。
溶剤溶解性(倍)=溶剤の所要ml数/サンプル量(5g)
【0054】
【表3】
【0055】
表3に示されるように、本発明に規定されるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)および有機溶剤(B)を含む実施例1〜5のポリイソシアネート溶液は、溶剤溶解性が良好であることがわかる。これに対して、比較例1〜15のポリイソシアネート溶液は、溶剤溶解性が低いことがわかる。
【0056】
さらに、以下の方法によって、上記各ポリイソシアネート溶液の他の樹脂に対する相溶性試験を行った。
〔相溶性試験〕
上記各ポリイソシアネート溶液を、表4および表5に示される各種樹脂と質量比1:1で混合し、得られた混合液をガラス板に塗布した後、120℃で1時間かけて溶剤を完全に飛散させ、その後の塗膜外観について、下記評価基準により評価した。結果を併せて表4に示す。
○:透明、△:ややくもりあり、×:不透明
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
なお、ニッポランは日本ポリウレタン工業(株)の登録商標、セルノバは旭化成工業(株)の登録商標、アクリディックは大日本インキ化学工業(株)の登録商標である。
表4,5に示されるように、実施例1〜5で調製したポリイソシアネート溶液は、比較例のポリイソシアネート溶液に比べ、他の樹脂に対する相溶性に著しく優れていることがわかる。
【0060】
[硬化性試験]
上記各ポリイソシアネート溶液を表6および表7に示されるように各樹脂とモル比1:1で混合し、溶剤で固形分=37.5質量%になるように希釈した。そして、このようにして調製した配合液を予めトリクロロエチレンで脱脂したボンデ鋼板に乾燥膜厚=40〜50μmになるように塗布し、20℃、65RH%の雰囲気で3日間放置した。そして、その塗膜を削り取り、メチルエチルケトンを溶剤とし、その沸点での還流下、20時間、ソックスレー抽出器を用いて溶剤抽出を行い、溶剤抽出前後の塗膜の質量を測定した。これらの測定値を用い、下記式によりゲル分率を求め、その値により硬化性の比較を行った。このゲル分率の値が大きいほど硬化性に優れていることを示している。
ゲル分率(%)=[抽出後の塗膜の質量(g)/抽出前の塗膜の質量(g)]×100
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
表6,7において、各商品名で示される物質の詳細は以下のとおりである。
ヒタロイド3088(日立化成工業(株)製):アクリルポリオール、水酸基価=50mgKOH/g、固形分=50%
ニッポラン800(日本ポリウレタン工業(株)製):ポリエステルポリオール、水酸基価=290mgKOH/g、固形分=100%
ニッポラン1100(日本ポリウレタン工業(株)製):ポリエステルポリオール、水酸基価=213mgKOH/g、固形分=100%
なお、ヒタロイドは日立化成工業(株)の登録商標である。
【0064】
表6,7からわかるように、実施例1〜5で得られたポリイソシアネート溶液を用いた場合、優れた硬化性が発揮されていることがわかる。また、比較例1〜15で得られたポリイソシアネート溶液を用いた場合、中には、硬化性に優れたものも見られるが、それらは表3,5に示されるように、溶剤溶解性や他の樹脂との相溶性が悪く、これら全ての特性を兼ね備えているものではない。
【0065】
[2]接着剤評価1
[実施例6〜10,比較例16〜30]
上記実施例1〜5および比較例1〜15で得られたポリイソシアネート溶液P−1〜20を硬化剤とし、接着剤用ポリウレタン樹脂溶液であるニッポラン3016(日本ポリウレタン工業(株)製、酢酸エチル溶液、水酸基含有量=0.04mmol/g、固形分=22%)を主剤とし、下記方法により2液タイプの接着剤の評価を行った。
なお、主剤と硬化剤との配合比は、主剤中の水酸基と硬化剤中のイソシアネート基とが当量となる比率とした。
【0066】
〔接着性試験〕
長さ100mm、幅25mm、厚さ1mmのポリウレタンRIM(リアクティブインジェクションモールディング)成形品、FRP、ABS、鋼板(JIS G3141〈3141−SB〉、仕様:PF−1077、日本テストパネル工業製、以下、ボンデ鋼板と略称する。)を、トリクロロエチレンで脱脂し、その上に上記主剤/硬化剤を配合してなる接着剤を乾燥膜厚40〜50μm、塗布面積25mm×25mmになるように塗布した。
続いて、50℃で5分間予備乾燥して、接着剤中の溶剤を蒸発させ、気泡が入らないようにして同一種類の上記各板を2枚重ねあわせ、2.5MPaで圧着し、これを20℃、65%RHの雰囲気で3日間放置し、接着サンプルを得た。
その後、引張速度=100mm/min、測定雰囲気=23℃、50%RHの条件で、接着剪断強度を測定した。結果を表8,9に示す。
【0067】
【表8】
【0068】
【表9】
【0069】
表8,9に示されるように、実施例1〜5で得られたポリイソシアネート溶液を硬化剤として用いた実施例6〜10の接着剤は、比較例16〜30で得られた接着剤よりも各種材料に対する接着強度が著しく高いことがわかる。
【0070】
[3]塗料評価1
[実施例11〜15,比較例31〜44]
硬化剤として上記実施例1〜5および比較例1,2,4〜15で得られたポリイソシアネート溶液を用い、表10,11に示す配合で、ポリイソシアネート溶液およびその他の各塗料原料を配合・混練して、塗料を調製した。
このようにして調製した塗料を、予めトリクロロエチレンで脱脂したボンデ鋼板に塗布し、20℃、65%RHの環境下で3日間放置して、乾燥膜厚=40〜50μmの塗膜を形成させた。そして、形成した塗膜の各物性をJIS K5400の処方に従って測定、評価した。結果を表12,13に示す。
なお、表10,11において、各商品名で示される物質の詳細は上述のとおりである。
【0071】
【表10】
【0072】
【表11】
【0073】
【表12】
【0074】
【表13】
【0075】
表12,13に示されるように、実施例1〜5で得られたポリイソシアネート溶液を硬化剤として用いている実施例11〜15の塗料は、比較例31〜44の塗料と比べ、各塗膜性能に優れており、特に、密着性、硬度および乾燥性の各特性において、優れていることがわかる。
【0076】
[4]ポリイソシアネート溶液の調製2
[実施例16〜19]
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管のついた、容量が1,000ml、または3,000mlの反応器に、表14に示される配合量で各有機ポリイソシアネート(A1)、ポリオール(A2)および酸ハロゲン化物(C)を仕込んだ。これを撹拌しながら70〜80℃に加熱し、目標のNCO含量に達するまでウレタン化反応を進めた(イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)の合成)。その後、この反応液中の未反応のTDIを120〜140℃、1〜5Paで薄膜蒸留により残留の遊離TDI含有量が0.5質量%以下になるように除去した。
薄膜蒸留後の溶液に、表14に示される配合量で有機溶剤(B)を加えて、ポリイソシアネート溶液P−21〜24を得た。
【0077】
[実施例20]
表14に示される配合量で有機ポリイソシアネート(A1)およびポリオール(A2)を仕込み、これを実施例16と同様にして、ウレタン化反応させ(イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)の合成)、薄膜蒸留をした後、得られた溶液に酸ハロゲン化物(C)を表14に示される配合量で加え、さらに有機溶剤(B)を表14に示される配合量で加えて、ポリイソシアネート溶液P−25を得た。
【0078】
[比較例45〜49,54〜57,59]
表15に示される配合量で各有機ポリイソシアネート(A1)、ポリオール(A2)および安定化剤を仕込み、これを実施例16と同様にウレタン化反応(イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)の合成)および薄膜蒸留を行った後、表15に示される配合量で有機溶剤(B)を加えて、ポリイソシアネート溶液P−26〜30、P−35〜38、P−40を得た。
【0079】
[比較例50〜53,58]
表2に示される配合量で各有機ポリイソシアネート(A1)、ポリオール(A2)および安定化剤を仕込み、これを実施例16と同様にウレタン化反応(イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)の合成)を行った後、表15に示される配合量で有機溶剤(B)を加えて、ポリイソシアネート溶液P−31〜34、P−39を得た。
上記各実施例および比較例で得られた各ポリイソシアネート溶液について、イソシアネート含量および固形分量を表14,15に併せて示した。
【0080】
【表14】
【0081】
【表15】
【0082】
上記表14,15において、PACはフタル酸ジクロライドを、FBAはフルオロ安息香酸を、ACは酢酸を示す。また、f2、f3、G値、その他の商品名および略号の詳細は上述と同様である。
【0083】
上記各実施例および比較例で得られたポリイソシアネート溶液について、調製直後の粘度および50℃,30日後の粘度を測定し、表16に示した。
ここで、粘度は、JIS K 2283−1980に規定されるキャノンフェンスケ粘度計を用いる方法に従い測定した。
【0084】
また、一般的にポリイソシアネートは、末端にイソシアネート基を有しているため、貯蔵期間中に湿気等との反応により高分子化し、溶剤への溶解性が低下することが知られていることから、貯蔵安定性の一つの指標として、上記各ポリイソシアネート溶液の調製直後の溶剤溶解性および50℃,30日経過後の溶剤溶解性を測定、評価し、併せて表16に示した。
溶剤溶解性の測定・評価は、下記試験方法により、行った。
【0085】
〔溶剤溶解性試験〕
ポリイソシアネート溶液を5g採取し、ビュレットにてトルエンを少しずつ加え、よく振り混ぜて濁ったところを終点とし、その時の溶剤の所要ml数を求めた。そして、次の式にて溶剤溶解性(倍)を求めた。この値が大きいほど溶剤溶解性に優れていることを示している。
溶剤溶解性(倍)= 溶剤の所要ml数/サンプル量(5g)
【0086】
【表16】
【0087】
表16に示されるように、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)、有機溶剤(B)、および酸ハロゲン化物(C)を含む実施例16〜20のポリイソシアネート溶液は、高温貯蔵後においても、粘度低下および溶剤溶解性の低下がほとんどないことがわかる。これに対して、酸ハロゲン化物(C)を用いていない比較例45〜59のポリイソシアネート溶液は、粘度の上昇が著しく、溶剤溶解性も大幅に低下していることがわかる。
【0088】
さらに、以下の方法によって、上記各ポリイソシアネート溶液の他の樹脂に対する相溶性試験を行った。
〔相溶性試験〕
上記各ポリイソシアネート溶液を、表17および表18に示される各種樹脂と質量比1:1で混合し、得られた混合液をガラス板に塗布した後、120℃で1時間かけて溶剤を完全に飛散させ、その後の塗膜外観について、下記評価基準により評価した。結果を併せて表17,18に示す。
○:透明、△:ややくもりあり、×:不透明
【0089】
【表17】
【0090】
【表18】
【0091】
表18,19に示されるように、実施例16〜20で調製したポリイソシアネート溶液は、比較例のポリイソシアネート溶液に比べ、他の樹脂に対する相溶性に著しく優れていることがわかる。
【0092】
[5]接着剤評価2
[実施例21〜25,比較例60〜74]
上記実施例16〜20および比較例45〜59で得られたポリイソシアネート溶液P−21〜40を硬化剤とし、接着剤用ポリウレタン樹脂溶液であるニッポラン3016(日本ポリウレタン工業(株)製、酢酸エチル溶液、水酸基含有量=0.04mmol/g、固形分=22%)を主剤とし、下記方法により2液タイプの接着剤の評価を行った。
なお、主剤と硬化剤との配合比は、主剤中の水酸基と硬化剤中のイソシアネート基とが当量となる比率とした。
【0093】
〔接着性試験〕
長さ100mm、幅25mm、厚さ1mmのポリウレタンRIM(リアクティブインジェクションモールディング)成形品、FRP、ABS、鋼板(JIS G3141〈3141−SB〉、仕様:PF−1077、日本テストパネル工業製、以下、ボンデ鋼板と略称する。)を、トリクロロエチレンで脱脂し、その上に上記主剤/硬化剤を配合してなる接着剤を乾燥膜厚40〜50μm、塗布面積25mm×25mmになるように塗布した。
続いて、50℃で5分間予備乾燥して、接着剤中の溶剤を蒸発させ、気泡が入らないようにして同一種類の上記各板を2枚重ねあわせ、2.5MPaで圧着し、これを20℃、65%RHの雰囲気で1週間放置し、接着サンプルを得た。
その後、引張速度=100mm/min、測定雰囲気=23℃、50%RHの条件で、接着剪断強度を測定した。結果を表19,20に示す。
【0094】
【表19】
【0095】
【表20】
【0096】
表19,20に示されるように、実施例16〜20で得られたポリイソシアネート溶液を硬化剤として用いた実施例21〜25の接着剤は、比較例60〜74で得られた接着剤よりも各種材料に対する接着強度が著しく高いことがわかる。
【0097】
[6]塗料評価2
[実施例26〜30,比較例35〜88]
硬化剤として上記実施例1〜5および比較例1,2,4〜15で得られたポリイソシアネート溶液を用い、表21,22に示す配合で、ポリイソシアネート溶液およびその他の各塗料原料を配合・混練して、塗料を調製した。
このようにして調製した塗料を、予めトリクロロエチレンで脱脂したボンデ鋼板に塗布し、20℃、65%RHの環境下で1週間放置して、乾燥膜厚=40〜50μmの塗膜を形成させた。そして、形成した塗膜の各物性をJIS K5400の処方に従って測定、評価した。結果を表23,24に示す。
なお、表21,22において、各商品名で示される物質の詳細は上述のとおりである。
【0098】
【表21】
【0099】
【表22】
【0100】
【表23】
【0101】
【表24】
【0102】
表23,24に示されるように、実施例16〜20で得られたポリイソシアネート溶液を硬化剤として用いている実施例26〜30の塗料は、比較例75〜88の塗料と比べ、各塗膜性能に優れており、特に、密着性、硬度および乾燥性の各特性において、優れていることがわかる。また、50℃,30日後においても、ほとんど性能の低下が見られないことがわかる。
【0103】
【発明の効果】
本発明によれば、硬度、乾燥性、溶剤溶解性、他樹脂との相溶性、貯蔵安定性等に優れた有機ポリイソシアネート溶液を得ることができる。また、これらの特性に優れたポリイソシアネート溶液を用いることで、良好な性能の接着剤および塗料を得ることができる。
Claims (5)
- 有機ポリイソシアネート(A1)と、アルコール性水酸基を有するジオール(A2−1)20〜40モル%およびアルコール性水酸基を有するトリオール(A2−2)80〜60モル%からなるポリオール(A2)と、を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)、および有機溶剤(B)を含んで構成され、
前記トリオール(A2−2)の一部が、グリセリンであるとともに、前記ポリオール(A2)の15〜35モル%が、前記グリセリンであることを特徴とするポリイソシアネート溶液。 - 前記有機ポリイソシアネート(A1)が、トルエンジイソシアネートであることを特徴とする請求項1記載のポリイソシアネート溶液。
- さらに、酸ハロゲン化物(C)を含むことを特徴とする請求項1または2記載のポリイソシアネート溶液。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイソシアネート溶液を用いたことを特徴とする接着剤。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイソシアネート溶液を用いたことを特徴とする塗料。
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