JP2004231906A - 塗料組成物 - Google Patents

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賢一 山本
Toshiyuki Kojima
利之 小島
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Abstract

【課題】本発明は、発生錆への浸透による物理的な固定化、素地や既存塗膜に点在する錆に対してキレート反応による化学的な固定化、腐食因子となる塩素イオン等の腐食性イオンを捕集することによる固定化等により腐食反応を抑制し、素地や既存塗膜に対し優れた密着性を有そ、さらにリフティング現象が発生することのない塗料組成物を提供する。
【解決手段】本発明の塗料組成物は、A.キレート変性エポキシ樹脂100重量部に対し、B.ケチミン化合物5〜40重量部、C.アニオン交換型化合物0.01〜20重量部、D.有機溶剤10〜300重量部を含有する。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼構造物等、特に鋼構造物等の塗り替えに用いる防錆性に優れた塗料組成物に関する。
【0002】
【従来技術】
一般に、建築物、橋梁等の鋼構造物や、車両、船舶等の表面は、美観性向上や耐久性向上のために、防食塗装が行なわれているが、時期が経つにつれ、塗膜が劣化しその影響で表面に錆が発生するため、防錆塗料等による塗り替え塗装が行なわれる。塗り替え塗装においては、発生錆と共に既存塗膜を全面除去するのが望ましいが、現実には発生錆と共に既存塗膜を全面除去することは困難な場合が多く、塗り替え塗装を行なう被塗面は、素地(金属面)、発生錆、既存塗膜が混在しているのが殆どであり、塗り替え塗装における防錆塗料には、素地、発生錆及び既存塗膜との密着性、防錆性等の性能が要求される。
【0003】
このような塗料としては、例えば特許文献1では、脂肪族炭化水素系溶剤及び沸点148℃以上の高沸点芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる有機溶剤、該有機溶剤に溶解可能なエポキシ樹脂、特定ケチミン類化合物等を含有するエポキシ樹脂塗料組成物が開示されており、素地及び既存塗膜との密着性、防錆性の向上を図っている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−198521号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら特許文献1のような塗料を用いて塗り替え塗装を行なった場合、発生錆への浸透性が不十分であり、素地や既存塗膜に点在する錆を十分固定化することができず、塩素イオン等の腐食性イオンの浸入による錆の発生を抑制することが困難なため、十分な防錆効果が得られない場合があった。また、既存塗膜との密着性に不十分な場合があり、塗膜の剥れが生じやすいという問題があった。また、既存塗膜が存在する場合には、リフティングと呼ばれる既存塗膜の浮き上がり現象が発生する場合があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題を解決するために、鋭意研究を行った結果、キレート変性能を有する特定エポキシ樹脂、ケチミン化合物、アニオン交換型化合物、有機溶剤を用いることによって、発生錆への浸透による物理的な固定化、素地や既存塗膜に点在する錆に対するキレート反応による化学的な固定化、腐食因子となる塩素イオン等の腐食性イオンを捕集することによる固定化等により腐食反応を抑制し、素地や既存塗膜に対し優れた密着性を有する塗料組成物、さらにリフティング現象が発生することのない塗料組成物を見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.A.キレート変性エポキシ樹脂100重量部に対し、
B.ケチミン化合物5〜40重量部、
C.アニオン交換型化合物0.01〜100重量部、
D.有機溶剤10〜300重量部、
を含有することを特徴とする防錆性に優れる塗料組成物。
2.D.有機溶剤のうち40重量%以上が脂肪族炭化水素系有機溶剤であることを特徴とする1.に記載の塗料組成物。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明は、鋼構造物等、特に鋼構造物の塗り替えに用いることができ、塗り替え時の錆の進行を抑制する効果、錆の発生を防止する効果等の防錆性に優れる塗料組成物を提供する。
【0010】
本発明の対象となる鋼構造物等としては、例えば、一般の建築物、橋梁、送電鉄塔、照明塔、ポール、水槽等、また、車両、船舶等が挙げられる。このような鋼構造物等に用いられる素地としては、例えば、冷延鋼、アルミニウム鋼、ステンレス鋼、銅鋼、溶融亜鉛メッキ鋼、溶融亜鉛・アルミニウム合金メッキ鋼、電気亜鉛メッキ鋼、電気合金メッキ鋼、合金メッキ鋼、銅メッキ鋼、錫メッキ鋼などの素地、またはこれらの素地にリン酸塩系やクロム酸塩系などの表面処理を施した素地、Cu、Ni、Cr、P、Mo等の元素が少量含有し防錆効果を施した素地等が挙げられる。さらにこれらの素地に、公知の塗膜で被覆したもの等が挙げられる。
【0011】
本発明の塗料組成物は、このような鋼構造物等の塗り替えに適したもので、(A)キレート変性エポキシ樹脂(以下、「(A)成分」ともいう。)、(B)ケチミン化合物(以下、「(B)成分」ともいう。)、(C)アニオン交換型化合物(以下、「(C)成分」ともいう。)、(D)有機溶剤(以下、「(D)成分」ともいう。)、を含有することを特徴とする。
【0012】
(A)成分は、発生錆に対して優れた浸透性を有し、発生錆への物理的な固定化による優れた防錆性を示し、素地や既存塗膜に点在する錆に対してキレート反応を起こし、化学的な固定化による優れた防錆性を示す成分である。また、発生錆、素地及び既存塗膜と優れた密着性を有することにより、防錆効果を高めることができる成分である。また、外部環境からの影響を選択的に遮断する作用を有し、錆形成の原因となる塩素イオン等の腐食性イオンの透過を防止することができる。
(B)成分は、(A)成分の架橋剤として作用し強固な塗膜を形成するとともに、腐食因子となる水分と反応する性質がある。そのため、素地表面に存在する水分を低減させることができ、防錆効果を向上させることができる。
(C)成分は、腐食因子となる塩素イオン等の腐食性イオンを捕集し、固定化することによって、防錆効果を高める効果を有するものである。
(D)成分は、塗装時の気温や素地の表面温度に左右されることなく、発生錆に対して優れた浸透性を示す成分である。
本発明では、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分を必須成分とすることにより、互いの相乗効果により極めて優れた防錆性を有する塗料組成物を得ることができる。
【0013】
(A)成分は、エポキシ樹脂の基本骨格や側鎖・末端にキレート形成能を有する官能基を含有するエポキシ樹脂のことである。
【0014】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等、あるいはこれらをポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等で変性したもの等を挙げることができる。
【0015】
キレート形成能を有する官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、アミノ基、カルボニル基などの配位能をもつ官能基等が挙げられる。特に好適なものとして、水酸基、リン酸基、カルボキシル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0016】
(A)成分はこのようなキレート形成能を有する官能基を、前述したエポキシ樹脂の基本骨格や側鎖・末端に含有するものであり、例えば、ケトン変性エポキシ樹脂、リン酸変性エポキシ樹脂等が好適に用いられる。
(A)成分の分子量は通常1000〜10000、好ましくは1500〜6000である。
【0017】
(B)成分は、主に(A)成分の架橋剤として作用し、強固な塗膜を形成するものである。
(B)成分は、化学式1に示すような化合物で、一般的に、カルボニル化合物(O=CR)(以下「(B−1)成分」ともいう)と1級アミノ基を有する化合物(−NH)((以下「(B−2)成分」ともいう)の反応により得られる化合物である。
【0018】
(化学式1)
−N=CR
(B)
(式中のR、Rは、同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、フェニルアルキル基で示される。)
【0019】
具体的には、化学反応式1で示されるような反応により得られるものである。
【0020】
(化学反応式1)
Figure 2004231906
【0021】
(B−1)成分としては、一般式:O=CR(式中のR、Rは、同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、フェニルアルキル基で示される。)で示されるものであれば特に限定されないが、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類などを挙げることができる。
【0022】
(B−2)成分としては、1分子中に1個または2個以上の1級アミノ基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリ(オキシプロピレン)ジアミンなどの脂肪族アミン類;キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族アミン類;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンなどの脂環族アミン類、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピレンジアミン等のポリエーテルアミン類を挙げることができる。
【0023】
このようにして得られる(B)成分からは、化学反応式2のように、発生錆や既存塗膜中に存在する水分及び大気中の水分等と反応し、(B−1)成分と(B−2)成分が得られる。
【0024】
(化学反応式2)
Figure 2004231906
【0025】
このように、腐食因子の一つである水分は、(B)成分との反応により消費され減少する。また、この反応により生成した(B−2)成分と(A)成分により硬化反応が開始される。
このように、(B−2)成分と(A)成分の硬化反応が開始されるためには、(B)成分と水分との反応(化学反応式2)が必須となる。よって、(B)成分と水分との反応(化学反応式2)がある程度進行するまで、(B−2)成分と(A)成分の硬化反応がほとんど進行しない。そのため、塗料の流動性が持続し、発生錆の奥深くまで浸透することが可能である。
次いで(B)成分と水分との反応(化学反応式2)がある程度進行すると、(B−2)成分と(A)成分の硬化反応が進行し、脆弱であった発生錆を強化補強し、外部環境からの遮断性を有する強固でかつ防錆性、密着性に優れた塗膜を形成することができる。
また(B−1)成分は、溶剤としての作用も有し、発生錆への浸透性を高める効果もある。
【0026】
(B)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分の固形分で5〜40重量部、好ましくは8〜20重量部である。5重量部より少ない場合は、(A)成分との反応が十分起こらず、強固な塗膜を形成することができない。(B)成分が40重量部より多い場合は、(A)成分との反応が起こり易く、ポットライフが短くなる。
【0027】
本発明では、前述した(A)成分と(B)成分の反応に際し、硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジブチルメチルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−メチルピロリジン,N,N’−ジメチルピペラジン、2,4,6―トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン、ジイソプロピルフェノール、p−t−ブチルフェノール等のフェノール類、トリメチロールプロパンアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のアクリレート化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。このような硬化促進剤を用いることにより、硬化反応を促進させることができ、強固な塗膜を形成することができる。
【0028】
硬化促進剤の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、硬化促進剤0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。0.01重量部より少ない場合は、低温での硬化反応が十分に促進されず、強固な塗膜を形成することが困難となる場合がある。硬化促進剤が20重量部より多い場合は、(A)成分と(B)成分の反応が起こり易く、ポットライフが短くなる傾向がある。
【0029】
(C)成分は、錆の原因となる塩素イオン等の腐食性イオンを捕集し、腐食性イオンを固定化する成分である。
このような(C)成分としては、例えば、次の一般式で表されるようなものが挙げられる。
一般式:[X1−a(OH)a+[An− a/n・mHO]a−
(X:Mg、Mn、Cu、Ni、Fe、Zn、Ca、Co等の2価の金属元素、Y:Al、Co、Cr、In、Fe等の3価の金属元素、An−:CO 2−、OH、NO 、SO 2−、F、Br、MnO 、CHCOO、Fe(CN) 3−、シュウ酸イオン、サリチン酸イオン等のn価の陰イオン、0<a<1.0、m>0、nは1〜4の整数)
【0030】
(C)成分を構成する金属元素としては、一般式において、X:Mg、Mn、Cu、Ni、Fe、Zn、Ca、Co等の2価の金属元素、Y:Al、Co、Cr、In、Fe等の3価の金属元素が挙げられる。このX、Yは、それぞれ1成分の金属元素で構成されてもよいし、一部を他の金属元素で置換していてもよい。
これらX、Yは、いかなる組み合わせでも用いることが可能であるが、特に好適な組み合わせとしては、例えば、Mg−Al、Ca−Al、Zn−Al、Zn−Cr、Mn−Al等を挙げることができる。
(C)成分を構成する陰イオンとしては、一般式において、An−:CO 2−、OH、HNO 、NO 、SO 2−、F、Br、MnO 、CHCOO、Fe(CN) 3−、シュウ酸イオン、サリチン酸イオン等のn価の陰イオン(nは1〜4の整数)が挙げられる。
【0031】
このAn−は、それぞれ1成分の陰イオンで構成されてもよいし、一部を他の陰イオンで置換していてもよい。本発明では、An−が錆の原因となる塩素イオン等の腐食性イオンと交換され、防錆効果を発揮するものである。このようなAn−としては、特に、CO 2−、HNO 等を使用することが好ましい。An−がこのような場合、より防錆効果が高まる。
【0032】
(C)成分の、特に好適な形態としては、
一般式:[Mg1−aAl(OH)a+[CO 2− a/2・mHO]a−(0<a<1.0、m>0)
で表されるハイドロタルサイト、
一般式:[Ca1−aAl(OH)a+[CO 2− a/2・mHO]a−(0<a<1.0、m>0)
で表されるハイドロカルマイト、等が挙げられる。
【0033】
また、(C)成分は、上述のようなアニオン交換型化合物が含まれていれば特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機酸化物の変性物等が挙げられる。
【0034】
(C)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、(C)成分0.01〜100重量部、好ましくは0.01〜20重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部である。0.01重量部より少ない場合は、優れた防錆効果が得られない。(C)成分が100重量部より多い場合は、コストがかかってしまい、また、それに似合うだけの効果が得られない。
【0035】
(D)成分は、主に、発生錆に対して優れた浸透性を示す成分である。(D)成分としては、(A)成分〜(C)成分により、適宜設定すればよいが、特に(A)成分、(B)成分を溶解できるものを使用する。
(D)成分としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ダイアセトンアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、n−ブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系有機溶剤等が挙げられ、これらのほかに、テルピン油、ミネラルスピリット、HAWS、ソルベッソ100、ソルベッソ150、スワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
このような(D)成分を用いることにより、塗装時の気温や素地表面温度に左右されることなく、塗料の流動性を持続させ、発生錆への浸透性に優れた塗料組成物を得ることができる。
【0036】
本発明では、特に、有機溶剤のうち40重量%以上(好ましくは45重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上)が脂肪族炭化水素系有機溶剤であることが好ましい。脂肪族炭化水素系有機溶剤が40重量%以上であることにより、既存塗膜に塗り重ねたとき既存塗膜のリフティング現象をより緩和することができ、より密着性に優れた塗料を得ることができる。
【0037】
(D)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、(D)成分10〜300重量部、好ましくは50〜250重量部である。(D)成分が10重量部より少ない場合は、発生錆への浸透性に劣る場合がある。(D)成分が300重量部より多い場合は、塗膜の乾燥が遅くなる場合がある。
【0038】
本発明では、さらに、脂肪酸変性エポキシ樹脂を配合することが好ましい。脂肪酸変性エポキシ樹脂としては、例えば、ダイマー酸変性エポキシ樹脂等が挙げられる。このような脂肪酸変性エポキシ樹脂を配合することにより、可とう性に優れた塗膜を得ることができる。
脂肪酸変性エポキシ樹脂の混合比率は、特に限定されないが、(A)成分の固形分100重量部に対し、脂肪酸変性エポキシ樹脂の固形分で10〜100重量部、好ましくは30〜70重量部程度である。
【0039】
また樹脂成分として、前述したような樹脂以外に、本発明の効果を阻害しない程度に、公知の樹脂を配合することもできる。このような樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・ベオバ樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0040】
本発明塗料組成物は、上記成分以外に、本発明の効果を阻害しない程度に、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、増粘剤、レベリング剤、可塑剤、防藻剤、防黴剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を含有することもできる。
【0041】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、亜鉛顔料、アルミニウム顔料、パール顔料等の1種または2種以上を使用いることができる。
【0042】
体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、寒水石、軽微性炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、珪砂、珪石粉、石英粉、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、中空バルーン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0043】
防錆顔料としては、例えば、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウムなどのリン酸系防錆顔料、亜リン酸亜鉛、亜リン酸鉄、亜リン酸アルミニウムなどの亜リン酸系防錆顔料、モリブデン酸カルシウム、モリンブデン酸アルミニウム、モリブデン酸バリウムなどのモリブデン酸系防錆顔料、酸化バナジウムなどのバナジウム系防錆顔料、ストロンチウムクロメート、ジンクロメート、カルシウムクロメート、カリウムクロメート、バリウムクロメートなどのクロメート系防錆顔料、水分散シリカ、ヒュームドシリカなどの微粒シリカ等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0044】
本発明組成物の塗装方法としては、刷毛塗り、鏝塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、静電気塗装、ロールコーター、カーテンフローコーター、ディッピング塗装や電着塗装等を用いることができるが、塗装作業性、塗着性等の点でローラーまたは刷毛が好適である。塗付量としては、特に限定されないが、通常0.05kg/m〜0.15kg/mである。
【0045】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0046】
【表1】
Figure 2004231906
【0047】
【表2】
Figure 2004231906
【0048】
(実施例1)
表1に示す原料を用い、表2に示す原料配合にて、原料を混合し、塗料を作製した。得られた塗料について、以下に示す試験A、試験Bを行った。
【0049】
<試験A>
作製した塗料を7×15cmの鉄板(JIS G3141 SPCC)に、刷毛にて、塗付量0.08kg/mで塗装し、試験体を作製した。塗装後、標準状態(20±1℃、65±5%RH)で、7日間養生させ、各試験を行った。
【0050】
【表3】
Figure 2004231906
【0051】
1.防錆性試験
塗装後の試験体に対し、JIS K 5400:1990 9.1に記載の方法で、120時間、耐塩水噴霧試験を行った。評価は、以下に示す通りである。結果は表3に示す。
◎:塗膜の膨れ・はがれが見当たらず、錆の発生も見当たらなかった。
○:錆の発生がほとんど見当たらなかった。
△:錆の発生が一部見られた。
×:塗膜の膨れ・はがれが見られ、錆の発生が見られた。
【0052】
2.密着性試験
耐塩水噴霧試験後の試験体に対し、JIS K 5400:1990 8.5.3.に記載の方法(Xカットテープ法)で、密着性試験を行った。評価は、以下に示す通りである。結果は表3に示す。
◎:塗膜のはがれが見当たらなかった。
○:塗膜のはがれがほとんど見当たらなかった。
△:塗膜のはがれが一部見られた。
×:塗膜がはがれてしまった。
【0053】
<試験B>
表面の錆びた鉄板(7×15cm)(JIS G3141 SPCC)をワイヤーブラシにて簡易的に錆をケレンした上に、作製した塗料を、刷毛にて、塗付量0.08kg/mで塗装し、試験体を作製した。塗装後、標準状態(20±1℃、65±5%RH)で、7日間養生させ、各試験を行った。
【0054】
1.防錆性試験
塗装後試験体に対し、試験Aと同様の耐塩水噴霧試験を行った。評価は以下の通りである。結果は表3に示す。
◎:塗膜の膨れ・はがれが見当たらず、錆の進行が進んでおらず、錆の発生も見当たらなかった。
○:錆の進行、錆の発生がほとんど見当たらなかった。
△:錆の進行、錆の発生が一部見られた。
×:塗膜の膨れ・はがれが見られ、錆の進行、錆の発生が見られた。
【0055】
2.密着性試験
耐塩水噴霧試験後の試験体に対し、試験Aと同様の密着性試験を行った。評価は、以下に示す通りである。結果は表3に示す。
◎:塗膜のはがれが見当たらなかった。
○:塗膜のはがれがほとんど見当たらなかった。
△:塗膜のはがれが一部見られた。
×:塗膜がはがれてしまった。
【0056】
3.錆への浸透性試験
塗装後の試験体の断面を、実体顕微鏡(SZ6045TRPT:オリンパス(株)社製)にて観察し、錆への浸透性を評価した。評価は、◎(錆への浸透に優れていた)から、○、△、×(錆への浸透が見られなかった)の4段階評価で行ない、その結果を表3に示す。
【0057】
(実施例2〜7、比較例1〜4)
表1に示す原料、表2に示す原料配合以外は、実施例1と同様に、塗料を作製し、試験A、試験Bを行った。
結果はそれぞれ表3に示す。
【0058】
【発明の効果】
本発明は、発生錆への浸透による物理的な固定化、素地や既存塗膜に点在する錆に対してキレート反応による化学的な固定化、腐食因子となる塩素イオン等の腐食性イオンを捕集することによる固定化等により腐食反応を抑制し、素地や既存塗膜に対し優れた密着性を有し、リフティング現象が発生することのない塗料組成物である。

Claims (2)

  1. A.キレート変性エポキシ樹脂100重量部に対し、
    B.ケチミン化合物5〜40重量部、
    C.アニオン交換型化合物0.01〜100重量部、
    D.有機溶剤10〜300重量部、
    を含有することを特徴とする防錆性に優れる塗料組成物。
  2. D.有機溶剤のうち40重量%以上が脂肪族炭化水素系有機溶剤であることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
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