JP2004231746A - アイオノマー樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジニアリングプラスチックの添加によってエチレン共重合アイオノマー樹脂の剛性及び耐熱性を改良し、耐衝撃性に優れた樹脂組成物を得る。
【解決手段】エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂のアイオノマー樹脂(A)98〜70重量部とポリカーボネート樹脂又はポリエステル樹脂(B)2〜30重量部と、必要によりエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマー(C)20重量部以下とを溶融混合してなるアイオノマー樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂のアイオノマー樹脂(A)98〜70重量部とポリカーボネート樹脂又はポリエステル樹脂(B)2〜30重量部と、必要によりエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマー(C)20重量部以下とを溶融混合してなるアイオノマー樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、剛性、耐熱性、耐衝撃性等に優れたアイオノマー樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和してなるエチレン系アイオノマー樹脂は、加工性に優れ、透明性、延伸性、ヒートシール性、耐油性等に優れるところから包装材料として、また強靱性、弾力性、耐屈曲性、耐磨耗性、耐衝撃性、耐候性等に優れるところから、ゴルフボール、自動車部品、靴材料、工具、建材などの成形品材料として使用されてきた。しかしながらアイオノマー樹脂は融点が低く、高温での使用領域下で熱変形し易いため、優れた特性を有しながら使用分野が限定されていた。また構造材料として使用されている他の熱可塑性樹脂に比較して剛性が低いことも、用途拡大の障害となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、アイオノマー樹脂の優れた特性を維持しながら、その剛性及び耐熱性を改良することにあり、特定のエンジニアリングプラスチックを所定量配合することによってその解決を図るものである。尚、ある種の柔軟樹脂にエンジニアリングプラスチックのような高剛性、高融点の樹脂を配合することにより、柔軟樹脂の剛性及び耐熱性を改良することは知られている。しかし一般的に柔軟樹脂とエンジニアリングプラスチックスとは相溶性に劣るところから、柔軟樹脂の剛性及び耐熱性が向上する一方で、引張特性や耐衝撃性などの特性が損なわれることが多く、これらを補うため相溶化剤の添加が必要になる場合が多かった。本発明の処方によれば、エンジニアリングプラスチックを配合する処方ではあるが、アイオノマーの種類によっては相溶化剤を使用しなくても耐衝撃性及び/又は引張特性を犠牲することはなく、むしろこれを改良することが可能である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明によれば、エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和してなるアイオノマー樹脂(A)98〜70重量部とカーボネート結合又はエステル結合を有する熱可塑性樹脂(B)2〜30重量部を溶融混合してなるアイオノマー樹脂組成物が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
アイオノマー樹脂(A)のベースポリマーとなるエチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂は、不飽和カルボン酸含量が1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の共重合体であり、エチレンと不飽和カルボン酸の二元共重合体のみならず、任意に他のモノマーが共重合された多元共重合体であってもよい。
【0006】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂における不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを例示することができるが、とくにアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。
【0007】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂において任意に共重合されていてもよい他のモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素、二酸化硫黄などを例示することができる。これらの中では、不飽和カルボン酸エステル、とくにアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルがとくに好ましい。これら他のモノマーは、上記共重合樹脂において例えば0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%の範囲で共重合されていてもよいが、一般にこのような他のモノマーの含有量が増えると、剛性や耐熱性に優れた組成物を得ることが難しくなるので、このような単量体を含まないものか、あるいは含んでいたとしても20重量%以下の量で共重合されているものを使用するのが好ましい。
【0008】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂は、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜1000g/10分、とくに0.5〜800g/10分程度のものを使用するのが望ましい。このような共重合樹脂は、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。
【0009】
本発明におけるアイオノマー樹脂(A)としては、上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂のカルボキシル基の10モル%以上、好ましくは10〜90モル%、一層好ましくは15〜80モル%を金属イオンで中和したものが使用される。ここに金属イオンとしては、リチウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、亜鉛又はマグネシウム、カルシウムのようなアルカリ土類金属のような多価金属のイオンを挙げることができるが、とくに多価金属イオンのものが好ましい。
【0010】
アイオノマー樹脂(A)としてはまた、成形性、機械的特性などを考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜100g/10分、とくに0.1〜50g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0011】
本発明においては、アイオノマー樹脂(A)の剛性及び耐熱性を改良するために、カーボネート結合又はエステル結合を有する熱可塑性樹脂(B)が配合される。
【0012】
カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂の代表的なものはポリカーボネート樹脂であり、脂肪族系あるいは芳香族系のいずれでも良いが、剛性及び耐熱性の顕著な改良を目的とする場合には、芳香族系のものを使用するのが好ましい。改質効果の点からポリカーボネート樹脂としては成形グレードのものを使用するのが好ましく、例えば数平均分子量で10,000〜100,000、とくに20,000〜40,000のものが好適である。このようなポリカーボネート樹脂は、通常の1価フェノール末端のもの、例えばフェノール、ハロゲン置換フェノール、アルキル置換フェノール(クミルフェノール、オクチルフェノールなど)、その他置換フェノールを末端基として有するものを使用することができる。また各種官能基をグラフト共重合、ブロック共重合、ランダム共重合などにより分子末端に導入したものであっても良い。さらにポリアリレート樹脂、ポリエステルポリカーボネート樹脂、その他の縮合成分を含有するものであっても良い。ポリカーボネート樹脂としてはまた、多官能性芳香族化合物をジヒドロキシアリール化合物及び/又はカーボネート前駆体と反応させた熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであっても良い。
【0013】
代表的なポリカーボネート樹脂は、種々のジヒドロキシアリール化合物とホスゲンの反応あるいはジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネートのエステル交換反応などによって製造することができる。具体的には、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Zは単結合あるいは炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基、SO2、SO、O、CO又は一般式(2)
【化2】
で表される基であり、Xは水素、塩素、臭素又は炭素数1〜8のアルキル基であり、a及びbは0〜4の数を示す)で表される繰り返し単位を有する重合体を挙げることができる。
【0014】
ポリカーボネート樹脂の原料となるジヒドロキシアリール化合物として具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンなどを挙げることができる。とくに好ましいのは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)である。
【0015】
(B)成分として使用可能なエステル結合を有する熱可塑性樹脂の代表的なものはポリエステル樹脂であり、脂肪族系、芳香族系のいずれも使用できるが、アイオノマー樹脂(A)の剛性及び耐熱性の顕著な改善のためには、芳香族系ポリエステル樹脂の使用が好ましい。とりわけ酸成分が芳香族ジカルボン酸を主成分とするもの、とくにテレフタル酸を80モル%以上、好ましくは90モル%以上含むものが好ましい。また酸成分として他の芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸、フタル酸のほか、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸のような脂肪族ジカルボン酸などが共重合成分として含むものであってもよい。また少量であれば、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸のような3官能性以上の多価カルボン酸を共重合成分として含むものであってもよい。
【0016】
またポリエステル樹脂を構成するジヒドロキシ化合物成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4ーブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールのような脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジオールのような脂環族ジオール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のような芳香族ジヒドロキシ化合物を例示することができる。これらの中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール又は1,4ーブタンジオールを80モル%以上、好ましくは90モル%以上含むものが好ましい。他に少量であれば、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能性以上の多価ヒドロキシ化合物を含むものであってもよい。
【0017】
代表的なポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンー2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどを挙げることができる。
【0018】
このようなポリエステル樹脂としてはまた、固有粘度が0.2〜2.0dl/g、とくに0.5〜1.2dl/gの範囲にあるものが好ましい。また末端基はカルボキシル基末端でもアルコール性水酸基末端でも差し支えないが、その比が例えば1/9〜9/1のものを使用することができる。また他の官能基を、グラフト共重合、ブロック共重合、ランダム共重合などの形で分子末端に導入したものであっても良い。
【0019】
本発明のアイオノマー樹脂組成物においては、アイオノマー樹脂(A)98〜70重量部、好ましくは95〜75重量部に対し、カーボネート結合又はエステル結合を有する熱可塑性樹脂(B)2〜30重量部、好ましくは5〜25重量部の割合で配合される。アイオノマー樹脂(A)に適量の熱可塑性樹脂(B)を配合することにより、アイオノマー樹脂(A)の剛性及び耐熱性が改良され、またアイオノマー樹脂の種類によっては、さらに耐衝撃性や引張特性が改良されることがある。またアイオノマー樹脂(A)の耐衝撃性や引張特性が損なわれる場合においても、その程度は顕著なものではない。一方、熱可塑性樹脂(B)の配合量が過多になると、(A)、(B)の均一な溶融混合が難しくなり、成形品表面外観が損なわれたり、あるいは層状剥離が生じ易くなるので好ましくない。
【0020】
本発明のアイオノマー樹脂組成物には、(A)、(B)両者の溶融混合性を高め、耐衝撃性を改良するために、相溶化剤(C)を配合することができる。このような相溶化剤(C)の例として、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
【0021】
上記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合樹脂は、エチレンと不飽和カルボン酸エステルからなる二元共重合体のみならず、さらに他のモノマーからなる多元共重合体であってもよい。ここに不飽和カルボン酸エステルとして具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどを例示することができる。これらの中では、とくにアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルであることが好ましい。また上記他のモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルのような不飽和カルボン酸、一酸化炭素、二酸化硫黄などを例示することができる。
【0022】
相溶化剤として好適なエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、構成モノマーの種類によっても異なるが、不飽和カルボン酸エステルが10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、他のモノマーが20重量%以下、好ましくは15重量%以下の割合で共重合されているものを使用するのがよい。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体としてはまた、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜500g/10分、とくに0.2〜100b/10分のものを使用するのが好ましい。このような共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合によって製造することができる。
【0023】
本発明のアイオノマー樹脂組成物における相溶化剤(C)としてはまた、スチレン系熱可塑性エラストマーを使用することができる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系モノマーを主体とする重合体ブロック(X)と共役ジエン化合物を主体とするブロック(Y)のブロック共重合体及び該ブロック共重合体の共役ジエン重合単位を水素添加したものを例示することができる。ここにスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレンなどを例示することができるが、とくにスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチルブタジエンなどを例示することができるが、とくにブタジエン又はイソプレンが好ましい。
【0024】
スチレン系モノマーを主体とする重合体ブロック(X)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)のブロック共重合体としては、例えば、(X−Y)n又は(X−Y)n−X(式中、nは1以上の整数)で表される直鎖状、分岐状、放射状のブロック共重合体を挙げることができる。
【0025】
スチレン系エラストマーとしては、オレフィン性二重結合ができるだけ少ないものが望ましく、上記スチレン系モノマーを主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体の共役ジエン重合単位の70%以上、好ましくは90%以上が水素添加されたものが好ましい。より具体的には、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける1,2−又は3,4−などのビニル結合が10%以上、好ましくは20〜80%、一層好ましくは30〜60%のブロック共重合体が水素添加されたスチレン系化合物含量が8〜50重量%、好ましくは10〜40重量%の水素添加ブロック共重合体であって、例えばX−Y’−X型ブロック共重合体が最適である。ここにXはスチレン重合体ブロックを、またY’は水素添加共役ジエン重合体ブロック、すなわちアルキレン共重合体ブロック、具体的にはエチレン・ブテン共重合体ブロックあるいはエチレン・プロピレン共重合体ブロックなどである。このようなブロック共重合体は、一般にSBSと称されているスチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体あるいはSISと称されているスチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体のブタジエン重合体ブロックあるいはイソプレン重合体ブロックを水素添加して得られるものであって、一般にSEBSあるいはSEPSと称せられているものである。これらは230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに0.5〜50g/10分程度のものを使用するのが好ましい。
【0026】
上記のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマーは、変性体の形で使用することができる。このような変性体は、不飽和化合物のグラフトや付加、酸化、ハロゲン化などの化学変性によって得られるものであるが、とくに不飽和カルボン酸をグラフトさせた変性体は好適に使用することができる。グラフト変性に使用される不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などを挙げることができるが、とくに酸無水物が好ましく、とりわけ無水マレイン酸が好ましい。不飽和カルボン酸の好適なグラフト量は、0.1〜5重量%、とくに0.2〜3重量%の範囲である。
【0027】
相溶化剤(C)は、アイオノマー樹脂(A)とカーボネート結合又はエステル結合を有する熱可塑性樹脂(B)の合計量100重量部に対し20重量部以下、好ましくは1〜15重量部の割合で配合される。熱可塑性樹脂(B)と共に相溶化剤(C)をこのような割合で配合することにより、アイオノマー樹脂(A)の剛性、耐熱性及び耐衝撃性を改良することができる。
【0028】
本発明のアイオノマー樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において他の熱可塑性樹脂や各種添加剤を配合することができる。このような添加剤の例として、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、難燃助剤、発泡剤、発泡助剤、架橋剤、架橋助剤、離型剤、無機充填剤、繊維強化材などを挙げることができる。
【0029】
本発明のアイオノマー樹脂組成物の調製は、アイオノマー樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、任意に配合される相溶化剤(C)、任意に配合される上記添加剤を、溶融条件下に混合することによって行われる。溶融混合は、例えば単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、混練ロール、ブラベンダー、加圧ニーダーなどを用いて行うことができる。溶融混合における各成分の混合順序はとくに制限はなく、任意に行うことができる。また溶融混合の温度は、使用する原料の種類によっても異なるが、例えば180〜340℃の温度範囲で選定すればよい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例及び比較例に用いた原料及び物性評価方法は以下の通りである。
【0031】
[原料樹脂]
A−1:エチレン・メタクリル酸共重合体亜鉛アイオノマー(メタクリル酸含量10重量%、中和度68%、メルトフローレート(MFR)1.0g/10分)
A−2:エチレン・メタクリル酸共重合体亜鉛アイオノマー(メタクリル酸含量15重量%、中和度23%、MFR5.0g/10分)
A−3:エチレン・メタクリル酸共重合体亜鉛アイオノマー(メタクリル酸含量15重量%、中和度59%、MFR0.9g/10分)
B−1:ポリカーボネート(帝人化成(株)製、パンライトL1225、低粘度タイプポリカーボネート)
B−2:ポリカーボネート(帝人化成(株)製、パンライトK1300、高粘度タイプポリカーボネート)
B−3:ポリテトラメチレンテレフタレート(東レ(株)製、トレコン1401X−06)
B−4:ポリエチレンテレフタレート(三井化学(株)製、三井PETJ135)
C−1:エチレン・アクリル酸エチル共重合体(アクリル酸エチル含量34重量%、MFR25g/10分)
C−2:スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体水素添加物(クラレ(株)製セプトン2007、スチレン含量30重量%、MFR(230℃)2.4g/10分)
【0032】
[物性評価方法]
評価サンプル:射出成形試験片
引張特性:JIS K7113
曲げ弾性率:ASTM D790
ビカット軟化点:JIS K7206
IZOD衝撃強度:JIS K7110、試験片厚み1/8インチ(ノッチ1/10インチ)、温度23℃、−30℃
【0033】
[実施例1〜8]
同方向二軸押出機(30mmφ浅溝タイプスクリュー、L/D=35)を用い、温度250℃、回転数150min−1の加工条件で、原料樹脂を表1に示す使用割合で溶融混合し、アイオノマー樹脂組成物を調製した。次いで射出成形機(東芝IS−100型締力100t)を用い、加工温度250℃、金型温度20℃、背圧40kg/cm3の条件で得られたアイオノマー樹脂組成物の射出成形を行い、試験片を作製した。その評価結果を表1に示す。
【0034】
[比較例1〜3]
比較のため、原料樹脂A−1、A−2又はA−3から同様にして射出成形試験片を作製し、その評価を行った。結果を表1に併記する。
【0035】
【表1】
【0036】
[実施例9〜10]
相溶化剤C−1又はC−2を配合した以外は、実施例2と同様にして試験片を作製し、その評価を行った。配合組成及びその評価結果を、比較例1及び実施例2のものと併せ、表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
[実施例11〜13]
原料樹脂を表3で示す割合で使用し、実施例1と同様にしてアイオノマー樹脂組成物を調製後、射出成形試験片を作製した。その評価結果を、比較例1及び2のものと併せ、表3に示す。
【0039】
[実施例14]
原料樹脂を表3で示す割合で使用し、二軸押出機の加工温度及び射出成形の加工温度をそれぞれ270℃に変更した以外は実施例1と同様にしてアイオノマー樹脂組成物を調製後、射出成形試験片を作製した。その評価結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
表中、*印は、試験片厚み1/4インチのものの測定値である
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、剛性、耐熱性、耐衝撃性等に優れたアイオノマー樹脂組成物を提供することができる。このようなアイオノマー樹脂組成物は、押出成形、射出成形、インサート成形、中空成形、圧縮成形、圧空成形、真空成形などの各種成形方法によって、フイルム、シート、棒状物、管状物、中空体などの単純な形状の成形品から複雑な形状の成形品まで種々の形状の成形品を製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、剛性、耐熱性、耐衝撃性等に優れたアイオノマー樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和してなるエチレン系アイオノマー樹脂は、加工性に優れ、透明性、延伸性、ヒートシール性、耐油性等に優れるところから包装材料として、また強靱性、弾力性、耐屈曲性、耐磨耗性、耐衝撃性、耐候性等に優れるところから、ゴルフボール、自動車部品、靴材料、工具、建材などの成形品材料として使用されてきた。しかしながらアイオノマー樹脂は融点が低く、高温での使用領域下で熱変形し易いため、優れた特性を有しながら使用分野が限定されていた。また構造材料として使用されている他の熱可塑性樹脂に比較して剛性が低いことも、用途拡大の障害となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、アイオノマー樹脂の優れた特性を維持しながら、その剛性及び耐熱性を改良することにあり、特定のエンジニアリングプラスチックを所定量配合することによってその解決を図るものである。尚、ある種の柔軟樹脂にエンジニアリングプラスチックのような高剛性、高融点の樹脂を配合することにより、柔軟樹脂の剛性及び耐熱性を改良することは知られている。しかし一般的に柔軟樹脂とエンジニアリングプラスチックスとは相溶性に劣るところから、柔軟樹脂の剛性及び耐熱性が向上する一方で、引張特性や耐衝撃性などの特性が損なわれることが多く、これらを補うため相溶化剤の添加が必要になる場合が多かった。本発明の処方によれば、エンジニアリングプラスチックを配合する処方ではあるが、アイオノマーの種類によっては相溶化剤を使用しなくても耐衝撃性及び/又は引張特性を犠牲することはなく、むしろこれを改良することが可能である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明によれば、エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和してなるアイオノマー樹脂(A)98〜70重量部とカーボネート結合又はエステル結合を有する熱可塑性樹脂(B)2〜30重量部を溶融混合してなるアイオノマー樹脂組成物が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
アイオノマー樹脂(A)のベースポリマーとなるエチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂は、不飽和カルボン酸含量が1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の共重合体であり、エチレンと不飽和カルボン酸の二元共重合体のみならず、任意に他のモノマーが共重合された多元共重合体であってもよい。
【0006】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂における不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを例示することができるが、とくにアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。
【0007】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂において任意に共重合されていてもよい他のモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素、二酸化硫黄などを例示することができる。これらの中では、不飽和カルボン酸エステル、とくにアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルがとくに好ましい。これら他のモノマーは、上記共重合樹脂において例えば0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%の範囲で共重合されていてもよいが、一般にこのような他のモノマーの含有量が増えると、剛性や耐熱性に優れた組成物を得ることが難しくなるので、このような単量体を含まないものか、あるいは含んでいたとしても20重量%以下の量で共重合されているものを使用するのが好ましい。
【0008】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂は、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜1000g/10分、とくに0.5〜800g/10分程度のものを使用するのが望ましい。このような共重合樹脂は、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。
【0009】
本発明におけるアイオノマー樹脂(A)としては、上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂のカルボキシル基の10モル%以上、好ましくは10〜90モル%、一層好ましくは15〜80モル%を金属イオンで中和したものが使用される。ここに金属イオンとしては、リチウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、亜鉛又はマグネシウム、カルシウムのようなアルカリ土類金属のような多価金属のイオンを挙げることができるが、とくに多価金属イオンのものが好ましい。
【0010】
アイオノマー樹脂(A)としてはまた、成形性、機械的特性などを考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜100g/10分、とくに0.1〜50g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0011】
本発明においては、アイオノマー樹脂(A)の剛性及び耐熱性を改良するために、カーボネート結合又はエステル結合を有する熱可塑性樹脂(B)が配合される。
【0012】
カーボネート結合を有する熱可塑性樹脂の代表的なものはポリカーボネート樹脂であり、脂肪族系あるいは芳香族系のいずれでも良いが、剛性及び耐熱性の顕著な改良を目的とする場合には、芳香族系のものを使用するのが好ましい。改質効果の点からポリカーボネート樹脂としては成形グレードのものを使用するのが好ましく、例えば数平均分子量で10,000〜100,000、とくに20,000〜40,000のものが好適である。このようなポリカーボネート樹脂は、通常の1価フェノール末端のもの、例えばフェノール、ハロゲン置換フェノール、アルキル置換フェノール(クミルフェノール、オクチルフェノールなど)、その他置換フェノールを末端基として有するものを使用することができる。また各種官能基をグラフト共重合、ブロック共重合、ランダム共重合などにより分子末端に導入したものであっても良い。さらにポリアリレート樹脂、ポリエステルポリカーボネート樹脂、その他の縮合成分を含有するものであっても良い。ポリカーボネート樹脂としてはまた、多官能性芳香族化合物をジヒドロキシアリール化合物及び/又はカーボネート前駆体と反応させた熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであっても良い。
【0013】
代表的なポリカーボネート樹脂は、種々のジヒドロキシアリール化合物とホスゲンの反応あるいはジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネートのエステル交換反応などによって製造することができる。具体的には、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Zは単結合あるいは炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基、SO2、SO、O、CO又は一般式(2)
【化2】
で表される基であり、Xは水素、塩素、臭素又は炭素数1〜8のアルキル基であり、a及びbは0〜4の数を示す)で表される繰り返し単位を有する重合体を挙げることができる。
【0014】
ポリカーボネート樹脂の原料となるジヒドロキシアリール化合物として具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンなどを挙げることができる。とくに好ましいのは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)である。
【0015】
(B)成分として使用可能なエステル結合を有する熱可塑性樹脂の代表的なものはポリエステル樹脂であり、脂肪族系、芳香族系のいずれも使用できるが、アイオノマー樹脂(A)の剛性及び耐熱性の顕著な改善のためには、芳香族系ポリエステル樹脂の使用が好ましい。とりわけ酸成分が芳香族ジカルボン酸を主成分とするもの、とくにテレフタル酸を80モル%以上、好ましくは90モル%以上含むものが好ましい。また酸成分として他の芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸、フタル酸のほか、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸のような脂肪族ジカルボン酸などが共重合成分として含むものであってもよい。また少量であれば、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸のような3官能性以上の多価カルボン酸を共重合成分として含むものであってもよい。
【0016】
またポリエステル樹脂を構成するジヒドロキシ化合物成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4ーブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールのような脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジオールのような脂環族ジオール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のような芳香族ジヒドロキシ化合物を例示することができる。これらの中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール又は1,4ーブタンジオールを80モル%以上、好ましくは90モル%以上含むものが好ましい。他に少量であれば、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能性以上の多価ヒドロキシ化合物を含むものであってもよい。
【0017】
代表的なポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンー2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどを挙げることができる。
【0018】
このようなポリエステル樹脂としてはまた、固有粘度が0.2〜2.0dl/g、とくに0.5〜1.2dl/gの範囲にあるものが好ましい。また末端基はカルボキシル基末端でもアルコール性水酸基末端でも差し支えないが、その比が例えば1/9〜9/1のものを使用することができる。また他の官能基を、グラフト共重合、ブロック共重合、ランダム共重合などの形で分子末端に導入したものであっても良い。
【0019】
本発明のアイオノマー樹脂組成物においては、アイオノマー樹脂(A)98〜70重量部、好ましくは95〜75重量部に対し、カーボネート結合又はエステル結合を有する熱可塑性樹脂(B)2〜30重量部、好ましくは5〜25重量部の割合で配合される。アイオノマー樹脂(A)に適量の熱可塑性樹脂(B)を配合することにより、アイオノマー樹脂(A)の剛性及び耐熱性が改良され、またアイオノマー樹脂の種類によっては、さらに耐衝撃性や引張特性が改良されることがある。またアイオノマー樹脂(A)の耐衝撃性や引張特性が損なわれる場合においても、その程度は顕著なものではない。一方、熱可塑性樹脂(B)の配合量が過多になると、(A)、(B)の均一な溶融混合が難しくなり、成形品表面外観が損なわれたり、あるいは層状剥離が生じ易くなるので好ましくない。
【0020】
本発明のアイオノマー樹脂組成物には、(A)、(B)両者の溶融混合性を高め、耐衝撃性を改良するために、相溶化剤(C)を配合することができる。このような相溶化剤(C)の例として、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
【0021】
上記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合樹脂は、エチレンと不飽和カルボン酸エステルからなる二元共重合体のみならず、さらに他のモノマーからなる多元共重合体であってもよい。ここに不飽和カルボン酸エステルとして具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどを例示することができる。これらの中では、とくにアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルであることが好ましい。また上記他のモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルのような不飽和カルボン酸、一酸化炭素、二酸化硫黄などを例示することができる。
【0022】
相溶化剤として好適なエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、構成モノマーの種類によっても異なるが、不飽和カルボン酸エステルが10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、他のモノマーが20重量%以下、好ましくは15重量%以下の割合で共重合されているものを使用するのがよい。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体としてはまた、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜500g/10分、とくに0.2〜100b/10分のものを使用するのが好ましい。このような共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合によって製造することができる。
【0023】
本発明のアイオノマー樹脂組成物における相溶化剤(C)としてはまた、スチレン系熱可塑性エラストマーを使用することができる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系モノマーを主体とする重合体ブロック(X)と共役ジエン化合物を主体とするブロック(Y)のブロック共重合体及び該ブロック共重合体の共役ジエン重合単位を水素添加したものを例示することができる。ここにスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレンなどを例示することができるが、とくにスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチルブタジエンなどを例示することができるが、とくにブタジエン又はイソプレンが好ましい。
【0024】
スチレン系モノマーを主体とする重合体ブロック(X)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)のブロック共重合体としては、例えば、(X−Y)n又は(X−Y)n−X(式中、nは1以上の整数)で表される直鎖状、分岐状、放射状のブロック共重合体を挙げることができる。
【0025】
スチレン系エラストマーとしては、オレフィン性二重結合ができるだけ少ないものが望ましく、上記スチレン系モノマーを主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体の共役ジエン重合単位の70%以上、好ましくは90%以上が水素添加されたものが好ましい。より具体的には、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける1,2−又は3,4−などのビニル結合が10%以上、好ましくは20〜80%、一層好ましくは30〜60%のブロック共重合体が水素添加されたスチレン系化合物含量が8〜50重量%、好ましくは10〜40重量%の水素添加ブロック共重合体であって、例えばX−Y’−X型ブロック共重合体が最適である。ここにXはスチレン重合体ブロックを、またY’は水素添加共役ジエン重合体ブロック、すなわちアルキレン共重合体ブロック、具体的にはエチレン・ブテン共重合体ブロックあるいはエチレン・プロピレン共重合体ブロックなどである。このようなブロック共重合体は、一般にSBSと称されているスチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体あるいはSISと称されているスチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体のブタジエン重合体ブロックあるいはイソプレン重合体ブロックを水素添加して得られるものであって、一般にSEBSあるいはSEPSと称せられているものである。これらは230℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに0.5〜50g/10分程度のものを使用するのが好ましい。
【0026】
上記のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体又はスチレン系熱可塑性エラストマーは、変性体の形で使用することができる。このような変性体は、不飽和化合物のグラフトや付加、酸化、ハロゲン化などの化学変性によって得られるものであるが、とくに不飽和カルボン酸をグラフトさせた変性体は好適に使用することができる。グラフト変性に使用される不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などを挙げることができるが、とくに酸無水物が好ましく、とりわけ無水マレイン酸が好ましい。不飽和カルボン酸の好適なグラフト量は、0.1〜5重量%、とくに0.2〜3重量%の範囲である。
【0027】
相溶化剤(C)は、アイオノマー樹脂(A)とカーボネート結合又はエステル結合を有する熱可塑性樹脂(B)の合計量100重量部に対し20重量部以下、好ましくは1〜15重量部の割合で配合される。熱可塑性樹脂(B)と共に相溶化剤(C)をこのような割合で配合することにより、アイオノマー樹脂(A)の剛性、耐熱性及び耐衝撃性を改良することができる。
【0028】
本発明のアイオノマー樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において他の熱可塑性樹脂や各種添加剤を配合することができる。このような添加剤の例として、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、難燃助剤、発泡剤、発泡助剤、架橋剤、架橋助剤、離型剤、無機充填剤、繊維強化材などを挙げることができる。
【0029】
本発明のアイオノマー樹脂組成物の調製は、アイオノマー樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、任意に配合される相溶化剤(C)、任意に配合される上記添加剤を、溶融条件下に混合することによって行われる。溶融混合は、例えば単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、混練ロール、ブラベンダー、加圧ニーダーなどを用いて行うことができる。溶融混合における各成分の混合順序はとくに制限はなく、任意に行うことができる。また溶融混合の温度は、使用する原料の種類によっても異なるが、例えば180〜340℃の温度範囲で選定すればよい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例及び比較例に用いた原料及び物性評価方法は以下の通りである。
【0031】
[原料樹脂]
A−1:エチレン・メタクリル酸共重合体亜鉛アイオノマー(メタクリル酸含量10重量%、中和度68%、メルトフローレート(MFR)1.0g/10分)
A−2:エチレン・メタクリル酸共重合体亜鉛アイオノマー(メタクリル酸含量15重量%、中和度23%、MFR5.0g/10分)
A−3:エチレン・メタクリル酸共重合体亜鉛アイオノマー(メタクリル酸含量15重量%、中和度59%、MFR0.9g/10分)
B−1:ポリカーボネート(帝人化成(株)製、パンライトL1225、低粘度タイプポリカーボネート)
B−2:ポリカーボネート(帝人化成(株)製、パンライトK1300、高粘度タイプポリカーボネート)
B−3:ポリテトラメチレンテレフタレート(東レ(株)製、トレコン1401X−06)
B−4:ポリエチレンテレフタレート(三井化学(株)製、三井PETJ135)
C−1:エチレン・アクリル酸エチル共重合体(アクリル酸エチル含量34重量%、MFR25g/10分)
C−2:スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体水素添加物(クラレ(株)製セプトン2007、スチレン含量30重量%、MFR(230℃)2.4g/10分)
【0032】
[物性評価方法]
評価サンプル:射出成形試験片
引張特性:JIS K7113
曲げ弾性率:ASTM D790
ビカット軟化点:JIS K7206
IZOD衝撃強度:JIS K7110、試験片厚み1/8インチ(ノッチ1/10インチ)、温度23℃、−30℃
【0033】
[実施例1〜8]
同方向二軸押出機(30mmφ浅溝タイプスクリュー、L/D=35)を用い、温度250℃、回転数150min−1の加工条件で、原料樹脂を表1に示す使用割合で溶融混合し、アイオノマー樹脂組成物を調製した。次いで射出成形機(東芝IS−100型締力100t)を用い、加工温度250℃、金型温度20℃、背圧40kg/cm3の条件で得られたアイオノマー樹脂組成物の射出成形を行い、試験片を作製した。その評価結果を表1に示す。
【0034】
[比較例1〜3]
比較のため、原料樹脂A−1、A−2又はA−3から同様にして射出成形試験片を作製し、その評価を行った。結果を表1に併記する。
【0035】
【表1】
【0036】
[実施例9〜10]
相溶化剤C−1又はC−2を配合した以外は、実施例2と同様にして試験片を作製し、その評価を行った。配合組成及びその評価結果を、比較例1及び実施例2のものと併せ、表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
[実施例11〜13]
原料樹脂を表3で示す割合で使用し、実施例1と同様にしてアイオノマー樹脂組成物を調製後、射出成形試験片を作製した。その評価結果を、比較例1及び2のものと併せ、表3に示す。
【0039】
[実施例14]
原料樹脂を表3で示す割合で使用し、二軸押出機の加工温度及び射出成形の加工温度をそれぞれ270℃に変更した以外は実施例1と同様にしてアイオノマー樹脂組成物を調製後、射出成形試験片を作製した。その評価結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
表中、*印は、試験片厚み1/4インチのものの測定値である
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、剛性、耐熱性、耐衝撃性等に優れたアイオノマー樹脂組成物を提供することができる。このようなアイオノマー樹脂組成物は、押出成形、射出成形、インサート成形、中空成形、圧縮成形、圧空成形、真空成形などの各種成形方法によって、フイルム、シート、棒状物、管状物、中空体などの単純な形状の成形品から複雑な形状の成形品まで種々の形状の成形品を製造することができる。
Claims (6)
- エチレン・不飽和カルボン酸共重合樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和してなるアイオノマー樹脂(A)98〜70重量部とカーボネート結合又はエステル結合を有する熱可塑性樹脂(B)2〜30重量部を溶融混合してなるアイオノマー樹脂組成物。
- アイオノマー樹脂(A)が、不飽和カルボン酸含量が1〜30重量%のエチレン・不飽和カルボン酸二元共重合体又はエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル三元共重合体の中和度が10%以上のアイオノマー樹脂である請求項1記載のアイオノマー樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(B)が、ポリカーボネート樹脂である請求項1又は2記載のアイオノマー樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(B)が、ポリエステル樹脂である請求項1又は2記載のアイオノマー樹脂組成物。
- アイオノマー樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対し、相溶化剤(C)を20重量部以下の割合で配合してなる請求項1〜4記載のアイオノマー樹脂組成物。
- 相溶化剤(C)が、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体及びスチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれるものである請求項5記載のアイオノマー樹脂組成物。
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