JP2004231469A - 水素ガス生成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】小型化、軽量化が可能であると共に、炭化水素系燃料の脱水素反応を高効率かつ迅速に行なえ、水素濃度の高い水素ガスの生成量を向上させた水素ガス生成装置を提供する。
【解決手段】脱水素反応用触媒金属が設けられ、少なくとも一部がデカリン(炭化水素系燃料)に浸漬された無端ベルトを、長手方向に搬送させて順次加熱器で加熱し、加熱された無端ベルト上でデカリンを脱水素反応させて水素ガスを生成する水素ガス生成装置である。
【選択図】 図1
【解決手段】脱水素反応用触媒金属が設けられ、少なくとも一部がデカリン(炭化水素系燃料)に浸漬された無端ベルトを、長手方向に搬送させて順次加熱器で加熱し、加熱された無端ベルト上でデカリンを脱水素反応させて水素ガスを生成する水素ガス生成装置である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素ガス生成装置に係り、特に、電気自動車や水素エンジン車等の車両に搭載可能で、かつ車両に搭載された燃料電池や水素エンジンに水素ガスを供給することができる水素ガス生成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電気自動車は、車両の駆動力を得るための電源としての燃料電池、およびこの燃料電池を用いて発電を行なうための燃料である水素または水素を生成するための原燃料を搭載している。また、水素エンジンを搭載した水素エンジン車も同様に燃料源として水素、又は水素を生成するための原燃料を搭載している。
【0003】
水素を搭載する電気自動車や水素エンジン車では、水素ガスを圧縮して高圧に若しくは液状にして充填したボンベ、または水素を吸蔵する水素吸蔵合金や水素吸着材料により水素を搭載している。一方、原燃料を搭載する電気自動車では、原燃料としてのメタノールまたはガソリン等の炭化水素と、この原燃料を水蒸気改質して水素リッチガスを生成する水素生成装置とを搭載している。
【0004】
しかしながら、車両に水素を搭載する場合、高圧タンクに圧縮した状態で搭載すると、高圧タンクは大きいわりに壁厚が厚く内容積を大きくできないために水素充填量が少ない。液体水素として搭載する場合は、気化ロスがあるほか、液化に多大なエネルギーを要するため総合的なエネルギー効率の点で望ましくない。
また、水素吸蔵合金や水素吸着材料では、電気自動車や水素エンジン車に必要とされる水素貯蔵密度が不充分であり、また水素の吸蔵や吸着等を制御するのが非常に困難である。また更に、水素を高圧化、液化したり、吸蔵するのに設備を別途整備する必要もある。
【0005】
一方、原燃料を搭載する電気自動車や水素エンジン車は、水素を搭載する水素エンジン車に比較して、1回の燃料補給で走行可能な距離が長いという利点を有しており、炭化水素系の原燃料は水素ガスに比較して輸送等の取り扱いが容易であるという利点も有している。また、水素は燃焼しても空中の酸素と結合して水となるだけで公害の心配がない。
【0006】
炭化水素系燃料の1つであるデカリン(デカヒドロナフタレン)は、常温では殆ど蒸気圧がゼロ(沸点が200℃近傍)で取り扱いし易いことから、原燃料としての使用の可能性が期待されている。
【0007】
デカリンの脱水素化方法としては、デカリンをコバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、テルニウム、ニッケル、および白金の中から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有する遷移金属錯体の存在下で光照射し、デカリンから水素を離脱させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、有機リン化合物のロジウム錯体の存在下、または有機リン化合物とロジウム化合物との存在下に、デカリンに光照射することによりデカリンから水素を製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、デカリンやシクロヘキサンなどの液体の水素化芳香族化合物を脱水素して得た水素を供給する水素燃料供給システムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、デカリン等の与えられない触媒部分が生じて、脱水素反応により水素を取り出す際の水素化芳香族化合物の触媒との接触率、すなわち脱水素反応効率の点で不充分であり、供給に要する充分な水素量を確保することは困難であった。
【0009】
【特許文献1】
特公平3−9091号公報
【特許文献2】
特公平5−18761号公報
【特許文献3】
特開2001−110437公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特に、燃料電池や水素エンジン等の水素使用装置に水素ガスを供給しようとする場合、供給される水素ガス中の水素濃度が高いこと、充分な水素供給量が確保できることが要求され、上記従来の脱水素化による水素生成技術を電気自動車の燃料電池や水素エンジン等の水素使用装置に適用しようとすると、反応転化率が低いだけでなく、脱水素化によって生じた脱水素生成物や未反応の炭化水素系燃料が混在するために、水素使用装置に供給しても水素分圧が低いことから高性能が得られ難いという問題があった。
【0011】
また、車載する場合には、装置全体が大きすぎたり重量がありすぎると、現実には車両などの狭い場所への搭載は困難となる。
【0012】
本発明は、上記に鑑み成されたもので、小型化、軽量化が可能であると共に、炭化水素系燃料の脱水素反応を高効率かつ迅速に行なえ、水素濃度の高い水素ガスの生成量を向上させた水素ガス生成装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の水素ガス生成装置は、炭化水素系燃料を貯留する貯留タンクと、触媒金属が設けられ、少なくとも一部が前記炭化水素系燃料に浸漬された無端ベルトと、前記無端ベルトを長手方向に搬送させる駆動装置と、前記無端ベルトを加熱する加熱器と、を含んで構成したものである。
【0014】
本明細書中において、炭化水素系燃料は、脱水素反応により水素を発生し得る化合物を含む燃料であり、脂環式炭化水素、脂肪族炭化水素等を含む燃料が含まれる。脂環式炭化水素には、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の単環式化合物、デカリン、メチルデカリン、テトラリン(テトラヒドロナフタレン)等の二環式化合物、テトラデカヒドロアントラセン等の三環式化合物、等が含まれる。脂肪族炭化水素には、2−プロパノ−ル、メタノール、エタノール等が含まれる。特に、デカリン、メチルデカリン、テトラリン、メチルテトラリンを含む燃料が好ましく、デカリンからなる燃料またはデカリンを主成分とする燃料がより好ましい。
【0015】
前記炭化水素系燃料を脱水素反応させると、水素ガスと共に、水素の放出により不飽和結合を持つ脱水素生成物が反応生成物として生成される。炭化水素系燃料から生成される脱水素生成物は、例えば、デカリン、またはシクロヘキサンの場合にはナフタレン(若しくはテトラリン)、またはベンゼンが各々相当する。
すなわち、デカリンからなる燃料またはデカリンを主成分とする燃料を用いた場合、デカリンの脱水素反応によって水素ガスと共に脱水素生成物としてナフタレンが生成される。そして、該脱水素生成物であるナフタレンを水素添加により水素化反応させたときには、ナフタレンの水素化物であるデカリンおよび/またはテトラリンを再生することができる。
【0016】
本発明では、貯留されている炭化水素系燃料中に触媒金属が設けられた無端ベルト(触媒)の少なくとも一部を直接浸漬させることによって、触媒の構造、形状の如何に関わらず無端ベルトが浸漬された部分全体に炭化水素系燃料が付与され、更にこの無端ベルトを長手方向に搬送させることで、無端ベルトの燃料未付与部分が連続的に浸漬され炭化水素系燃料が付与されると共に、炭化水素系燃料が付与された部分は加熱器に搬送されて順次加熱される。これにより、炭化水素系燃料の触媒金属への接触効率が高められ、また、加熱器には炭化水素系燃料を触媒金属と接触させて連続供給されるため、脱水素反応効率は向上する。そして、加熱により脱水素して発生した水素ガスは燃料電池や水素エンジン等の水素使用装置に供給される。このとき、水素ガスは、これと共に生ずる脱水素生成物を含む混合ガス(水素リッチガス)として得られ、分離手段を用いることでより高純度の水素ガスとして分離することができる。
【0017】
本発明に係る無端ベルトは、長尺のベルト状材料をリング形状に構成して無端にしたものであり、ベルトの全体若しくは一部に炭化水素系燃料を脱水素させる触媒金属が設けられる。無端ベルトは、それ自体が触媒として機能するものであるため、浸漬付与された炭化水素系燃料を高効率に脱水素反応させる観点からは、触媒金属がベルト表面の全面に設けられ、またベルトが繊維状や多孔質状に構成されているときには更に繊維間や孔内などのベルト内部に設けられていることが好ましい。
【0018】
無端ベルトを構成するベルト材質は、触媒金属を保持可能であると共に、炭化水素系燃料に対して安定で、かつ脱水素反応に要する加熱温度に耐え得るものから適宜選択すればよく、例えば、繊維材や耐熱性樹脂材などで構成できる。
【0019】
繊維材によるときは、繊維に金属触媒が担持されベルト表面だけでなく内部に触媒金属が存在すると共に、炭化水素系燃料は浸漬によりベルト内部にまで入り込んで保持されるため、炭化水素系燃料の触媒金属との接触面積を確保でき、単位体積当りの水素生成効率が高められ、水素生成量(生成速度)をより向上させることができる。また、耐熱性樹脂材によるときは、触媒金属が表面に担持された長尺の樹脂シートをリング状にして構成することができる。多孔質構造に構成することも可能であり、金属触媒はベルト表面および孔中に担持され、浸漬時に炭化水素系燃料は孔中にも入り込むため、炭化水素系燃料の触媒金属との接触面積を確保でき、上記同様に単位体積当りの水素生成量(生成速度)をより向上させることができる。
【0020】
特に、無端ベルトとしては、液状の炭化水素系燃料を保持し得る吸収性の材料で構成されることが望ましく、具体的には、活性炭繊維、炭素繊維などが好適である。また、無端ベルトの長手方向に直交する断面形状は、矩形状、方形状のほか、台形や丸形など適宜選択した形状とすることができる。
【0021】
前記無端ベルトは、少なくとも一部が炭化水素系燃料に浸漬されるように配置され、駆動装置によって長尺方向に回転され、所定の搬送路を搬送する。これにより、無端ベルトの浸漬部は炭化水素系燃料外に搬送されると同時に、浸漬されていなかった部分は順次炭化水素系燃料中に浸漬され、連続的に無端ベルトに炭化水素系燃料が付与される。駆動装置には、無端ベルトに駆動力を伝達して走行させる駆動ローラ等が好適であり、無端ベルトは張架して支持された状態で搬送される。
【0022】
加熱器は、無端ベルトの搬送路に設けられ、加熱により無端ベルトに浸漬付与された炭化水素系燃料を脱水素反応させる。例えば、炭化水素系燃料やその脱水素生成物、有機ハイドライド等の有機物を空気と共に供給し燃焼させたときの燃焼熱で加熱する加熱器や、無端ベルトを張架して支持すると共に加熱可能な加熱ローラ等を用いることができる。加熱ローラは、後述する加熱用ローラと同様に構成することができる。
【0023】
本発明においては、前記駆動装置および前記加熱器に代えて、駆動装置と加熱器の両機能を兼ねた加熱駆動ローラを設けることができる。この場合、前記無端ベルトを張架して支持しながら搬送すると共に、無端ベルトの加熱をも同時に行なうことができる。これにより、装置全体の更なる小型化、軽量化を実現することができる。
【0024】
炭化水素系燃料を貯留する貯留タンクは、炭化水素系燃料を貯留し、かつ貯留された炭化水素系燃料中に、前記炭化水素系燃料の脱水素反応によって生じた水素ガスを含む混合ガスが供給されると共に、前記水素ガスを排出する排出口を設けて構成することができる。これにより、炭化水素系燃料と脱水素生成物とを共に貯留でき、かつ水素ガスを分離して排出できるので、従来のように水素生成用の燃料を貯留するタンクと反応生成された脱水素生成物を貯留するタンクの両方を必要とせず、またこれらタンクと別に水素ガスを分離する分離手段を併設する必要もなく、単一のタンクに統合されることにより、更なる小型化、軽量化を図ることができる。
【0025】
すなわち、貯留分離タンクには炭化水素系燃料が貯留され、そこから外部に供給され脱水素反応を経た後、再び該貯留分離タンクの炭化水素系燃料中に生成された水素ガス及び脱水素生成物が供給されると、脱水素生成物は炭化水素系燃料中への供給過程で冷却、溶解されながら貯留分離タンクの底部(下方)に沈降、貯留され、水素ガスは燃料に溶解されずに(場合により、水素ガス分離手段を介在させて)排出口から高純度に排出される。
【0026】
無端ベルトが搬送される搬送路における、貯留タンクの搬送方向下流側であって、かつ前記加熱器の搬送方向上流側に、無端ベルトに付与された炭化水素系燃料の量を調節する付与量調節器を設けることができる。炭化水素系燃料中に浸漬された後、該燃料外に搬出されると多くの炭化水素系燃料が付与されているため、無端ベルトを付与量調節器に通し、加熱器に搬送される前に無端ベルトへの炭化水素系燃料の付与量を適量に調節することにより、水素生成効率を高めることができる。すなわち、好ましくは付与量調節器によって触媒である無端ベルト表面が僅かに湿潤した状態、すなわち液膜状態が形成される。
【0027】
付与量調節器は、二つの対向ローラが互いに圧接するローラ対を一対または複数配列したり、脱水素反応を起こさない程度に加熱して余剰分を蒸発させる加熱器などによって構成することができる。前者ではローラ対の数や圧着力を変えることにより、後者では加熱する温度や時間を変えることにより、炭化水素系燃料の付与量を任意に調節することができる。余剰分の炭化水素系燃料は貯留タンクに回収することができるが、後者の場合は蒸発した炭化水素系燃料は冷却液化され貯留タンクに回収される。
【0028】
本発明の水素ガス生成装置は、炭化水素系燃料の脱水素反応を迅速かつ高効率に行なわせて水素密度の高い水素ガスを良好に水素使用装置(例えば燃料電池、水素エンジン)に供給することが可能であり、装置全体の大幅な小型化、軽量化が図れると共に、炭化水素系燃料/脱水素生成物の反応循環系を利用してクリーンシステムを構築することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の水素ガス生成装置の実施形態を説明する。なお、下記の実施形態において、炭化水素系燃料として、デカリンを主成分とする燃料(以下、単に「デカリン」という。)を用いた場合を中心に説明する。但し、本発明においてはこれら実施形態に制限されるものではない。
【0030】
(第1実施形態)
本発明の水素ガス生成装置の第1実施形態を図1を参照して説明する。本実施形態は、水素ガスを燃料とする燃料電池が搭載された電気自動車に本発明の第1実施形態の水素ガス生成装置を搭載し、デカリンを高温触媒の存在下で反応させた際にナフタレンと水素ガスとが生成されるデカリン/ナフタレン反応を利用することで、水素ガス分子を吸着、貯蔵するのではなく、化学結合で燃料中に貯蔵するようにしたものである。
【0031】
本実施形態は、デカリンの脱水素反応を行なう触媒を無端の活性炭繊維ベルトに触媒金属を担持させて構成し、デカリンが付与された触媒をデカリンの燃焼熱で加熱された加熱器に通して連続的に脱水素反応させるようにし、単一の貯留タンクを用いてデカリン及び生成ナフタレンを共に貯留し、かつ発生した混合ガスから水素ガスを分離するようにしたものである。
【0032】
図1に示すように、本実施形態においては、デカリンを貯留し、かつ貯留されたデカリン中に、デカリンの脱水素反応によって生じた水素ガスを含む混合ガス(水素リッチガス)が供給されると共に、排出口から水素ガスを排出する貯留タンク10と、触媒金属が設けられ、少なくとも一部がデカリンに浸漬された無端ベルト15と、無端ベルト15を長手方向に搬送させる駆動ローラ20と、無端ベルト15を加熱する加熱器25と、を備えている。
【0033】
貯留タンク10は、内部にデカリン22を貯留可能に構成され、デカリン22は、貯留タンク10の上方に空隙を有する範囲で図示しない燃料供給管から供給されるようになっている。貯留タンク10上部の壁面には、無端ベルト15を搬送させる駆動ローラ20を備えた筒形状の搬送部16の一端と、搬送部17の一端とが接続され、貯留タンク10の搬送口13、14を通して無端ベルト15が出入できるようになっている。さらに上部壁面には、デカリン22を供給するポンプP1を備えた供給配管31の一端が、デカリン22中に位置するように設けられている。
【0034】
貯留タンク10の底面側の側壁には、排出管32がデカリン22中にその一端が位置するように設けられ、加熱器25と連通されている。液中となる排出管32の一端からは、加熱器25で生成された水素ガス及び気相ナフタレンを含む混合ガス(水素リッチガス;蒸発して残存する残存デカリンを含んでもよい)を液中において供給可能なようになっている。
【0035】
貯留タンク10の上部側の側壁には、供給された混合ガスから分離された水素ガスを排出する排出管11が設けられて排出口が形成されており、燃料電池(FC)40に水素ガスを供給できるようになっている。排出管11と燃料電池40との間には、水素ガスを貯蔵する水素ガス貯蔵タンクを設けることができる。また、底部には、排出管32から導入されて貯留されたナフタレンを外部に排出するバルブを備えた排出管12が設けられている。
【0036】
無端ベルト15は、長尺シート状の活性炭繊維をリング状にした無端構造に構成されており、活性炭繊維からなるベルト全体に直接金属触媒が担持されている。すなわち、活性炭繊維が金属触媒を担持する担体の機能を担っている。金属触媒としては、Pt、Pt−Ir、Pt−Re、Pt−W等の貴金属系の触媒金属微粒子や、これら触媒金属微粒子と活性炭繊維との混合物を用いることができる。
【0037】
加熱器25は、搬送部16の他端と搬送部17の他端とで接続されており、加熱器25を介して搬送部16と17とが連通されて無端ベルト15を搬送する搬送路が形成されている。
【0038】
加熱器25は、無端ベルト15が搬入されると共に熱せられて脱水素反応を生じ水素リッチガスを生成する反応室26と、反応室26の周囲を覆うように設けられ、無端ベルト(触媒)15の加熱が可能な燃焼室27とで構成されている。
反応室26には、排出管32の他端が接続されており、貯留タンク10と連通されている。燃焼室27には、空気を供給する供給装置28と、供給配管31の他端で接続され、デカリンを供給する燃料供給装置29と、図示しない点火装置と、燃焼によって生成された二酸化炭素(CO2)および水(H2O)を排出する排出口30とが設けられている。燃焼室27は、供給配管31によって貯留タンク10と連通されており、燃料供給装置29によって供給されたデカリンに空気を混合して燃焼可能なように構成されている。排出口30は、二酸化炭素を固定するCO2固定装置と連通されている。
【0039】
駆動ローラ20は、搬送部16の内部に配置されると共に、貯留タンク10のデカリン中となる底部側にも配置されており、無端ベルト15は四つの駆動ローラ20によって張架され、ループ状に支持されると共に、駆動ローラからの駆動力を受けて反時計方向に搬送可能なようになっている。また、搬送部16および貯留タンク10内に各々設けられた二つの駆動ローラ間には、無端ベルト15を支持する支持ローラ21が設けられている。
【0040】
無端ベルト15の搬送路における、貯留タンク10の搬送方向下流側であり、加熱器25の搬送方向上流側に位置する搬送部17の内部には、無端ベルト15に付与されたデカリンの量を適量に調節する3対の対向ローラで構成されたデカリン調節用ローラ(付与量調節器)35が設けられている。対向ローラは、無端ベルト表面に所望の力で圧接可能なように対をなして配置されており、無端ベルト15の余剰のデカリンを除去して適量に調節する。無端ベルト表面への圧接の程度は、デカリンの付与量に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
加熱器に搬入されるときの適量なデカリン量としては、加熱触媒表面(すなわち無端ベルト表面)が僅かに湿潤した状態、すなわち液膜状態となる量であることが好ましい。僅かに湿潤した液膜状態では、過熱(デカリンの沸点を越える温度での加熱)・液膜状態での脱水素反応による水素ガス生成量は最大になる。これは、デカリンの蒸発速度が、基質液量(デカリンの液量)が少ない程小さくなり、蒸発速度が小さくかつ高温の状態で脱水素反応させることにより転化率が向上するからである。すなわち、蒸発速度は液量・伝熱面積・加熱源と沸点との温度差の各々に比例するので、液体デカリンの量が少なければ蒸発速度が小さくなる。液体デカリンは、加熱触媒上(例えば、200〜350℃)でも液膜状態で存在するので、触媒活性サイトは液相からのデカリンの速やかな吸着により充分に高い被覆度で常時補填される。すなわち、触媒表面上で液膜状態で脱水素反応させることにより、触媒表面上で気体で反応させるよりも優れた反応性が得られる。
【0042】
デカリン調節用ローラ35は、対向ローラの本数や圧着力などによってデカリンの調節量を調節することができる。デカリン調節用ローラ35を構成する対向ローラの各々は、任意の一定の内径を有した円筒状、円柱状等の、いわゆるローラと呼ばれる断面円形の基体であれば、特に制限されるものではなく、公知のものの中から適宜選択できる。また、対向ローラの内部構造も、中空構造、充填構造のいずれの構造に構成されていてもよく、後述するように、内部に電熱線を設けたり、酸化触媒を配してデカリン等を燃焼させる等して発熱可能に構成することもできる。
【0043】
また、既述した貯留タンク10には、浸漬された無端ベルト10より液底側で且つ排出管32の一端より液面側となるデカリン中の任意位置に、デカリン中でのナフタレンの拡散を抑える水素ガス透過性の分離膜を設けることができる。この分離膜は、貯留タンク10内部に略水平(デカリン22の液面と略平行)に設けられると、デカリン中を浮上する水素ガスを透過させる一方、デカリン内でナフタレンが拡散するのを抑えて分離膜の下方(液底側)に貯留することができる。これにより、貯留されたデカリンの中層若しくは上層部ではナフタレン含量を低減して、無端ベルトおよび加熱器に高純度のデカリンを供給でき、タンク底部に設けられた排出管12から、デカリンの排出を抑えたナフタレンの排出を行なうことができる。このとき、ナフタレン含量比の低いデカリンが無端ベルトに供給され、水素生成効率をより高めることができる。
【0044】
また、デカリン中の排出管32の一端周辺でナフタレン量が不均一になると局部的に粘度上昇等を来すことがあるため、水素ガスの液中移動速度を損なわないようにし、分離膜の膜面を一様に通過できることが望ましい。例えば、デカリンの液面より下部に位置する側壁や底部の任意の位置に、局部的に冷却可能な冷却部材を設けることによって、冷却された部位周辺に一時的にナフタレンを析出させておき、デカリン中のナフタレン含量を低減させることができる。この場合にも、無端ベルトに付与されるデカリン中のナフタレン含量を低減して水素生成効率を高めることができる。
【0045】
分離膜は、その膜面の法線方向と略平行に移動可能に構成すると効果的である。タンク内に分離膜を移動可能に設けると、例えば、生成されたナフタレンの量が少ないときにはデカリン貯留側の容積を大きくして満タンとなる燃料を貯留することができ、徐々に水素ガスの生成に伴ってデカリンが減少し、逆にナフタレン量が増大したときにはその生成量に応じてナフタレン貯留側の容積を大きくすることで多量のナフタレンを貯留することができる。すなわち、デカリン(炭化水素系燃料)とナフタレン(脱水素生成物)との物理的な相対量に応じた分離膜の移動によりタンクの有効利用が図れ、狭い設置場所への設置や装置全体の軽量化を達成することができる。
【0046】
分離膜は、水素ガスを透過できると共に、デカリン中でのナフタレンの拡散を抑制し、かつデカリンに対して安定なものであれば公知のもの(変形し難い板状のものや、伸縮可能な軟性、弾性を有するもののいずれでもよい)を適宜選択でき、例えば、水素透過性でかつ水素ガス以外は物質非透過性(若しくはナフタレン低透過性)のもの、ナフタレンを除いては透過性のものなど、例えばメッシュ状のフィルタ膜や、ナフタレンを高濃度に含む側から水素ガスが透過するときに開弁され、かつ逆側から圧がかかった場合に閉弁される多数の逆止弁が格子状又はランダムに配列された逆止弁膜などが挙げられる。
【0047】
貯留タンク10は、図示しない連結器(ジョイント等)を備えて、連結器によって着脱可能に構成することもできる。例えば、貯留タンク10を搬送部16、17および供給配管31が設けられた上部壁面を含む蓋部とデカリンを貯留する貯留部とで構成すると共に排出管32に連結器を設けるようにし、簡易にはめ込み、取り外しができる形態に構成できる。また、貯留タンクを着脱可能に構成せず、あるいは着脱可能に構成すると共に、貯留タンクのナフタレンが高濃度に貯留された分離膜の下方部分のみを着脱可能な構造、例えば貯留タンクに収納可能なカートリッジ式や貯留タンクの一部を構成する構造に構成することもできる。
【0048】
本実施形態では、イグニッションスイッチがオンされると、加熱器25を構成する燃焼室27に、ポンプP1の駆動によりデカリンが燃料供給装置29から供給されると共に、供給装置28から空気が供給され、燃焼室27内で燃焼させることで反応室26内の雰囲気が高温に加熱される。このとき、加熱器25は、無端ベルト15(少なくとも金属触媒)が所定温度になるように制御される。このとき、無端ベルト(触媒)の温度は、反応室26の雰囲気温度をもとに間接的に所定温度に制御される。ここでの所定温度は、200〜500℃、好ましくは200〜350℃の間の温度、更に好ましくは280℃にすることができる。この理由は、所定温度が200℃未満であると目的とする脱水素反応の高い反応速度、換言すれば水素使用装置の高性能が得られないことがあり、350℃を越えるとカーボンデポジットが生じる可能性を持ち、500℃を越えると実用的でないからである。
【0049】
反応室26内の雰囲気温度が所定の温度以上に達すると、四つの駆動ローラ20の駆動により回転され、無端ベルト15は一定速度で反時計方向に搬送される。貯留タンク10内のデカリンに浸漬されていた無端ベルトの浸漬部分(デカリンが付与された部分)は、搬送口14を通ってデカリン調節用ローラ35に到達し、対をなす対向ローラ間を通過することでデカリンの染込み量が調節された後、加熱器25の反応室26内に連続的に進入する。無端ベルト(触媒)は、加熱器25の反応室26内を搬送されながら加熱され、水素リッチガス(蒸発した残存デカリンを含んでもよい。)を発生する。発生した水素リッチガスは、排出管32を挿通して貯留タンク10のデカリン中に導入される。
【0050】
貯留タンク10に供給された水素リッチガスは、デカリンに溶解性のナフタレン(および残存デカリン)と非溶解性の水素ガスとに分離される。デカリンに溶解し分離されたナフタレンは貯留タンク10の底部にデカリンと混合したナフタレン混合物として貯留され、水素ガスはデカリン中を上昇して貯留タンク10の上部空隙部から排出管11を挿通して燃料電池(FC)40に供給される。このとき、余剰の水素ガスを図示しない水素ガス貯蔵タンクに貯蔵するようにすることができる。加熱器25を通過した後、さらに搬送されて搬送口13を通って再び貯留タンク10内に進入してデカリン22中に浸漬される。
【0051】
このように、無端ベルト15を連続的に回転させることで、無端ベルトにデカリンを液膜状態で供給し得る供給装置を配設する必要がなく、デカリンの脱水素反応効率を効果的に向上させることができる。その結果、水素濃度の高い水素ガスの生成量を増大させることができる。
【0052】
また、無端ベルト15の搬送を止めた後も少量の水素ガスが発生するので、発生した水素ガスを貯留タンク10を経由して水素ガス貯蔵タンクに貯蔵するようにすることができる。なお、水素ガス貯蔵タンクに貯蔵された水素ガスは、燃料電池の始動時に用いることができるほか、他の水素使用装置に供給することができ、更に生成ナフタレンを再生するときには再生時のナフタレンの水素化反応に利用することができる。
【0053】
また、デカリンとテトラリンとの混合燃料を用いることにより、デカリンの脱水素反応の前にテトラリンが脱水素反応するので、速やかに水素ガスを発生させることができる。ここで、貯留タンク内あるいは貯留タンクとは別のタンク内に、デカリンと分離してテトラリンを貯留し、このテトラリンを加熱された触媒上でデカリンの脱水素反応前に脱水素反応させることにより、速やかに多量の水素ガスを発生させることができ、より迅速に水素生成を行なうことができる。
【0054】
(第2実施形態)
本発明の水素ガス生成装置の第2実施形態を図2を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態のデカリンの燃焼熱を利用した加熱器を加熱ローラに代え、別途加熱器を設けることなく、加熱機能と無端ベルトを張架し支持搬送する機能とを兼備させたものである。なお、燃料は第1実施形態で使用した燃料を用いることができ、第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0055】
図2に示すように、本実施形態は、デカリン22を貯留する第1貯留タンク60と、デカリン22を貯留し、かつ貯留されたデカリン中に、デカリンの脱水素反応によって生じた水素ガスを含む混合ガス(水素リッチガス)が供給されると共に、排出口から水素ガスを排出する第2貯留タンク70と、触媒金属が設けられ、少なくとも一部がデカリンに浸漬された無端ベルト15と、無端ベルト15を長手方向に搬送すると共に加熱する加熱駆動ローラ23とを備えている。
【0056】
第1貯留タンク60は、内部にデカリン22を貯留可能に構成され、デカリン22は、第1貯留タンク60の上方に空隙を有する範囲で貯留可能なようになっている。第1貯留タンク60には、デカリンを供給する図示しない燃料供給管が設けられていてもよい。
【0057】
第1貯留タンク60上部の壁面には、無端ベルト15が搬送される筒形状の搬送部51および搬送部52の各一端が接続され、第1貯留タンク60の搬送口13、14を通して無端ベルト15が出入できるようになっている。搬送部51、52の他端には、加熱機能を兼備する加熱駆動ローラ23を備えた反応タンク50が接続されており、反応タンク50は搬送部51、52によって第1貯留分離タンク60と連通されている。
【0058】
第1貯留タンク60の底面側の側壁には、デカリン22中にその一端が位置するように排出管72が設けられ、第2貯留タンク70と連通されている。第1貯留タンク60には、排出管72を挿通して第2貯留タンク70からデカリンを供給することができる。また、底部には、排出管72を挿通してデカリンと共に供給されたナフタレンを外部に排出するバルブを備えた排出管62が設けられている。
【0059】
第1貯留タンク60には、二つの駆動ローラ20が設けられると共に、これら駆動ローラ20間で無端ベルト15がジグザグ状の屈曲をなして張架されるように三つの支持ローラ21が更に配置されている。
【0060】
反応タンク50は、加熱駆動ローラ23と共に複数の加熱支持ローラ23’を備え(以下、総じて「加熱用ローラ」ともいう)、無端ベルト15を屈曲させることで、デカリンの脱水素反応に要する温度以上に迅速に加熱できるようになっている。下部側には、無端ベルト15を加熱しない駆動ローラ20と支持ローラ21とが設けられている。このように、無端ベルト15は、反応タンク50および第1貯留タンク60に配置された複数のローラによって屈曲させて張架され、支持されると共に、駆動ローラおよび加熱駆動ローラの駆動力が伝達されて加熱されと同時に搬送可能に構成されている。
【0061】
無端ベルト15を加熱する加熱用ローラは、例えば、図3−(a)に示すように、断面円形の金属等の熱伝導性筒状体81の内壁に酸化触媒80が担持されたローラ内部に、第1若しくは第2貯留タンクに貯留されたデカリンを空気と共に供給して燃焼させ、その燃焼熱で加熱される構造に構成することができる。この場合、デカリン以外の有機ハイドライドや生成されたナフタレン等の脱水素生成物などの有機物を空気と混合して燃焼させたときの燃焼熱や、取り出した水素の燃焼熱を熱源として構成することもできる。また、筒状体81と酸化触媒80との間にヒータを介在させてローラ内部に発生する遠赤外線によって燃焼させるようにすることもできる。
【0062】
また更に、図3−(b)に示すように、断面円形の金属等の熱伝導性の筒状体81の内部に筒状体81との間に断熱材82を介在させて電熱線83が内装された構造に構成することもできる。
【0063】
無端ベルト15の搬送路における、第1貯留タンク60の搬送方向下流側であって、加熱駆動ローラ23の搬送方向上流側に位置する反応タンク50の内部には、無端ベルト15に付与されたデカリンの量を適量に調節すると共に加熱可能な3対の加熱対向ローラで構成されたデカリン調節用加熱ローラ(付与量調節器)55が設けられている。
【0064】
デカリン調節用加熱ローラ55を構成する加熱対向ローラは、無端ベルト表面に所望の力で圧接可能なように対をなして配置されており、無端ベルト15の余剰のデカリンを搾り取って適量に調節する。無端ベルト表面への圧接の程度は、デカリンの付与量に応じて適宜設定すればよく、デカリン付与量は加熱される触媒表面(すなわち無端ベルト表面)が僅かに湿潤した状態、すなわち液膜状態となる量に調節されることが好ましい。加熱対向ローラは、上記のように発熱可能な加熱用ローラと同様に構成されると共に、第1実施形態のデカリン調節用ローラを構成する対向ローラ35と同様に構成することができる。
【0065】
反応タンク50の上部壁面には、加熱駆動ローラ23および加熱支持ローラ23’による加熱によって反応タンク50内で生成された水素ガス及び気相ナフタレンを含む混合ガス(水素リッチガス;蒸発して残存する残存デカリンを含んでもよい)を供給する逆止弁を備えた供給配管43の一端が接続されており、その他端で第2貯留タンク70と連通されている。
【0066】
第2貯留タンク70は、内部にデカリン22を貯留可能に構成され、第2貯留タンク70の上方に空隙を有する範囲で図示しない燃料供給管からデカリンが供給可能なようになっている。第2貯留タンク70の底部には、供給配管43がデカリン22中にその他端が位置するように設けられ、反応タンク50と連通されている。液中となる供給配管43の他端からは、反応タンク50で発生した水素リッチガスを液中において供給できるようになっている。このとき、供給されたナフタレンは第2貯留タンク70の底部にデカリンと混合した状態で貯留される。
【0067】
また、底部側の側壁には、排出管72の他端が接続されており、第2貯留タンク70の内部に貯留されたナフタレンを、デカリンと混合したナフタレン混合物として排出管72を挿通して第1貯留タンク60に排出できるようになっている。上部壁面には、供給された混合ガスから分離された水素ガスを排出する排出管71が設けられて排出口が形成されており、燃料電池(FC)40に水素ガスを供給できるようになっている。排出管71と燃料電池40との間には、水素ガスを貯蔵する水素ガス貯蔵タンクを設けることができる。
【0068】
第2貯留タンク70には、第1実施形態の貯留タンクと同様に、分離膜を(好ましくは略水平に)設けることができ、また、排出管72および供給配管43に図示しない連結器(ジョイント等)を設けることによって第2貯留タンク70を着脱可能に構成することもできる。また、第2貯留タンクを着脱可能に構成せず、あるいは着脱可能に構成すると共に、第2貯留タンクのナフタレンが高濃度に貯留された部分、例えば略水平に設けられた分離膜の下方部分、を着脱可能な構造、例えば第2貯留タンクに収納可能なカートリッジ式や第2貯留タンクの一部を構成する構造に構成することもできる。
【0069】
本実施形態では、イグニッションスイッチがオンされると、無端ベルト15の加熱を担う加熱駆動ローラ23および加熱支持ローラ23’の加熱が開始され、ローラ表面温度が所定温度以上に達すると、加熱駆動ローラ23および駆動ローラ20の駆動により回転され、無端ベルト15は一定速度で反時計方向に搬送される。搬送時、無端ベルト15を加熱するローラ表面温度は、無端ベルト15の金属触媒によってデカリンが脱水素反応を起こす所定温度に制御される。このときの所定温度は、既述のように、200〜500℃、好ましくは200〜350℃の間の温度、更に好ましくは280℃にすることができる。
【0070】
第1貯留タンク60内のデカリン中に浸漬されていた無端ベルト15の浸漬部分(デカリンが付与された部分)は、搬送開始により搬送口14を通ってデカリン調節用加熱ローラ55に到達し、対をなす加熱対向ローラ間を通過することで(同時に加熱されながら)デカリン付与量が調節される。この浸漬部分は更に搬送されて、加熱駆動ローラ23および加熱支持ローラ23’と接することで熱せられ、水素リッチガス(蒸発した残存デカリンを含んでもよい。)を発生する。
発生した水素リッチガスは、供給配管43を挿通して第2貯留タンク70のデカリン中に供給される。
【0071】
第2貯留タンク70に供給された水素リッチガスは、デカリンに溶解性のナフタレン(および残存デカリン)と非溶解性の水素ガスとに分離される。デカリンに溶解し分離されたナフタレンは第2貯留タンク70の底部にデカリンと混合したナフタレン混合物として貯留され、水素ガスはデカリン中を上昇して第2貯留タンク70の上部空隙部から排出管71を挿通して燃料電池(FC)40に供給される。このとき、余剰の水素ガスを図示しない水素ガス貯蔵タンクに貯蔵するようにすることができる。
【0072】
反応タンク50内の加熱用ローラ(加熱駆動ローラ23等)を通過した後さらに駆動ローラ20および支持ローラ21を通過すると、搬送口13を通って再び第1貯留タンク60内に進入して再びデカリン中に浸漬される。
【0073】
このように、無端ベルト15を連続的に回転させることで、無端ベルトにデカリンを液膜状態で供給し得る供給装置を配設する必要がなく、デカリンの脱水素反応効率を効果的に向上させることができる。その結果、水素濃度の高い水素ガスの生成量を増大させることができる。
【0074】
また、無端ベルトの搬送を止めた後も少量の水素ガスが発生するので、発生した水素ガスを第2貯留タンク70を経由して水素ガス貯蔵タンクに貯蔵するようにすることができる。なお、上記したように、水素ガス貯蔵タンクに貯蔵された水素ガスは、燃料電池の始動や、他の水素使用装置、ナフタレン再生の際のナフタレンの水素化反応に利用することができる。
【0075】
上述した実施形態では、水素生成用の燃料としてデカリンを用いた例を中心に説明したが、既述のデカリン以外の炭化水素系燃料を用いた場合においても同様である。また、水素使用装置についても、特に車載の燃料電池を例に説明したが、本発明は燃料電池以外の水素エンジンや他の水素使用装置に適用することもできる。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、小型化、軽量化が可能であると共に、炭化水素系燃料の脱水素反応を高効率かつ迅速に行なえ、水素濃度の高い水素ガスの生成量を向上させた水素ガス生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す概略構成図である。
【図3】(a)は酸化触媒による燃焼熱を熱源とする加熱用ローラの構成例を示す図であり、(b)は電熱線を内装して熱源とする加熱用ローラの構成例を示す図である。
【符号の説明】
10…貯留タンク
15…無端ベルト
20…駆動ローラ(駆動装置)
23…加熱駆動ローラ(加熱器)
23’…加熱支持ローラ(加熱器)
25…加熱器
35…デカリン調節用ローラ(付与量調節器)
40…燃料電池
55…デカリン調節用加熱ローラ(付与量調節器)
60…第1貯留タンク
70…第2貯留タンク
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素ガス生成装置に係り、特に、電気自動車や水素エンジン車等の車両に搭載可能で、かつ車両に搭載された燃料電池や水素エンジンに水素ガスを供給することができる水素ガス生成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電気自動車は、車両の駆動力を得るための電源としての燃料電池、およびこの燃料電池を用いて発電を行なうための燃料である水素または水素を生成するための原燃料を搭載している。また、水素エンジンを搭載した水素エンジン車も同様に燃料源として水素、又は水素を生成するための原燃料を搭載している。
【0003】
水素を搭載する電気自動車や水素エンジン車では、水素ガスを圧縮して高圧に若しくは液状にして充填したボンベ、または水素を吸蔵する水素吸蔵合金や水素吸着材料により水素を搭載している。一方、原燃料を搭載する電気自動車では、原燃料としてのメタノールまたはガソリン等の炭化水素と、この原燃料を水蒸気改質して水素リッチガスを生成する水素生成装置とを搭載している。
【0004】
しかしながら、車両に水素を搭載する場合、高圧タンクに圧縮した状態で搭載すると、高圧タンクは大きいわりに壁厚が厚く内容積を大きくできないために水素充填量が少ない。液体水素として搭載する場合は、気化ロスがあるほか、液化に多大なエネルギーを要するため総合的なエネルギー効率の点で望ましくない。
また、水素吸蔵合金や水素吸着材料では、電気自動車や水素エンジン車に必要とされる水素貯蔵密度が不充分であり、また水素の吸蔵や吸着等を制御するのが非常に困難である。また更に、水素を高圧化、液化したり、吸蔵するのに設備を別途整備する必要もある。
【0005】
一方、原燃料を搭載する電気自動車や水素エンジン車は、水素を搭載する水素エンジン車に比較して、1回の燃料補給で走行可能な距離が長いという利点を有しており、炭化水素系の原燃料は水素ガスに比較して輸送等の取り扱いが容易であるという利点も有している。また、水素は燃焼しても空中の酸素と結合して水となるだけで公害の心配がない。
【0006】
炭化水素系燃料の1つであるデカリン(デカヒドロナフタレン)は、常温では殆ど蒸気圧がゼロ(沸点が200℃近傍)で取り扱いし易いことから、原燃料としての使用の可能性が期待されている。
【0007】
デカリンの脱水素化方法としては、デカリンをコバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、テルニウム、ニッケル、および白金の中から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有する遷移金属錯体の存在下で光照射し、デカリンから水素を離脱させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、有機リン化合物のロジウム錯体の存在下、または有機リン化合物とロジウム化合物との存在下に、デカリンに光照射することによりデカリンから水素を製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、デカリンやシクロヘキサンなどの液体の水素化芳香族化合物を脱水素して得た水素を供給する水素燃料供給システムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、デカリン等の与えられない触媒部分が生じて、脱水素反応により水素を取り出す際の水素化芳香族化合物の触媒との接触率、すなわち脱水素反応効率の点で不充分であり、供給に要する充分な水素量を確保することは困難であった。
【0009】
【特許文献1】
特公平3−9091号公報
【特許文献2】
特公平5−18761号公報
【特許文献3】
特開2001−110437公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特に、燃料電池や水素エンジン等の水素使用装置に水素ガスを供給しようとする場合、供給される水素ガス中の水素濃度が高いこと、充分な水素供給量が確保できることが要求され、上記従来の脱水素化による水素生成技術を電気自動車の燃料電池や水素エンジン等の水素使用装置に適用しようとすると、反応転化率が低いだけでなく、脱水素化によって生じた脱水素生成物や未反応の炭化水素系燃料が混在するために、水素使用装置に供給しても水素分圧が低いことから高性能が得られ難いという問題があった。
【0011】
また、車載する場合には、装置全体が大きすぎたり重量がありすぎると、現実には車両などの狭い場所への搭載は困難となる。
【0012】
本発明は、上記に鑑み成されたもので、小型化、軽量化が可能であると共に、炭化水素系燃料の脱水素反応を高効率かつ迅速に行なえ、水素濃度の高い水素ガスの生成量を向上させた水素ガス生成装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の水素ガス生成装置は、炭化水素系燃料を貯留する貯留タンクと、触媒金属が設けられ、少なくとも一部が前記炭化水素系燃料に浸漬された無端ベルトと、前記無端ベルトを長手方向に搬送させる駆動装置と、前記無端ベルトを加熱する加熱器と、を含んで構成したものである。
【0014】
本明細書中において、炭化水素系燃料は、脱水素反応により水素を発生し得る化合物を含む燃料であり、脂環式炭化水素、脂肪族炭化水素等を含む燃料が含まれる。脂環式炭化水素には、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の単環式化合物、デカリン、メチルデカリン、テトラリン(テトラヒドロナフタレン)等の二環式化合物、テトラデカヒドロアントラセン等の三環式化合物、等が含まれる。脂肪族炭化水素には、2−プロパノ−ル、メタノール、エタノール等が含まれる。特に、デカリン、メチルデカリン、テトラリン、メチルテトラリンを含む燃料が好ましく、デカリンからなる燃料またはデカリンを主成分とする燃料がより好ましい。
【0015】
前記炭化水素系燃料を脱水素反応させると、水素ガスと共に、水素の放出により不飽和結合を持つ脱水素生成物が反応生成物として生成される。炭化水素系燃料から生成される脱水素生成物は、例えば、デカリン、またはシクロヘキサンの場合にはナフタレン(若しくはテトラリン)、またはベンゼンが各々相当する。
すなわち、デカリンからなる燃料またはデカリンを主成分とする燃料を用いた場合、デカリンの脱水素反応によって水素ガスと共に脱水素生成物としてナフタレンが生成される。そして、該脱水素生成物であるナフタレンを水素添加により水素化反応させたときには、ナフタレンの水素化物であるデカリンおよび/またはテトラリンを再生することができる。
【0016】
本発明では、貯留されている炭化水素系燃料中に触媒金属が設けられた無端ベルト(触媒)の少なくとも一部を直接浸漬させることによって、触媒の構造、形状の如何に関わらず無端ベルトが浸漬された部分全体に炭化水素系燃料が付与され、更にこの無端ベルトを長手方向に搬送させることで、無端ベルトの燃料未付与部分が連続的に浸漬され炭化水素系燃料が付与されると共に、炭化水素系燃料が付与された部分は加熱器に搬送されて順次加熱される。これにより、炭化水素系燃料の触媒金属への接触効率が高められ、また、加熱器には炭化水素系燃料を触媒金属と接触させて連続供給されるため、脱水素反応効率は向上する。そして、加熱により脱水素して発生した水素ガスは燃料電池や水素エンジン等の水素使用装置に供給される。このとき、水素ガスは、これと共に生ずる脱水素生成物を含む混合ガス(水素リッチガス)として得られ、分離手段を用いることでより高純度の水素ガスとして分離することができる。
【0017】
本発明に係る無端ベルトは、長尺のベルト状材料をリング形状に構成して無端にしたものであり、ベルトの全体若しくは一部に炭化水素系燃料を脱水素させる触媒金属が設けられる。無端ベルトは、それ自体が触媒として機能するものであるため、浸漬付与された炭化水素系燃料を高効率に脱水素反応させる観点からは、触媒金属がベルト表面の全面に設けられ、またベルトが繊維状や多孔質状に構成されているときには更に繊維間や孔内などのベルト内部に設けられていることが好ましい。
【0018】
無端ベルトを構成するベルト材質は、触媒金属を保持可能であると共に、炭化水素系燃料に対して安定で、かつ脱水素反応に要する加熱温度に耐え得るものから適宜選択すればよく、例えば、繊維材や耐熱性樹脂材などで構成できる。
【0019】
繊維材によるときは、繊維に金属触媒が担持されベルト表面だけでなく内部に触媒金属が存在すると共に、炭化水素系燃料は浸漬によりベルト内部にまで入り込んで保持されるため、炭化水素系燃料の触媒金属との接触面積を確保でき、単位体積当りの水素生成効率が高められ、水素生成量(生成速度)をより向上させることができる。また、耐熱性樹脂材によるときは、触媒金属が表面に担持された長尺の樹脂シートをリング状にして構成することができる。多孔質構造に構成することも可能であり、金属触媒はベルト表面および孔中に担持され、浸漬時に炭化水素系燃料は孔中にも入り込むため、炭化水素系燃料の触媒金属との接触面積を確保でき、上記同様に単位体積当りの水素生成量(生成速度)をより向上させることができる。
【0020】
特に、無端ベルトとしては、液状の炭化水素系燃料を保持し得る吸収性の材料で構成されることが望ましく、具体的には、活性炭繊維、炭素繊維などが好適である。また、無端ベルトの長手方向に直交する断面形状は、矩形状、方形状のほか、台形や丸形など適宜選択した形状とすることができる。
【0021】
前記無端ベルトは、少なくとも一部が炭化水素系燃料に浸漬されるように配置され、駆動装置によって長尺方向に回転され、所定の搬送路を搬送する。これにより、無端ベルトの浸漬部は炭化水素系燃料外に搬送されると同時に、浸漬されていなかった部分は順次炭化水素系燃料中に浸漬され、連続的に無端ベルトに炭化水素系燃料が付与される。駆動装置には、無端ベルトに駆動力を伝達して走行させる駆動ローラ等が好適であり、無端ベルトは張架して支持された状態で搬送される。
【0022】
加熱器は、無端ベルトの搬送路に設けられ、加熱により無端ベルトに浸漬付与された炭化水素系燃料を脱水素反応させる。例えば、炭化水素系燃料やその脱水素生成物、有機ハイドライド等の有機物を空気と共に供給し燃焼させたときの燃焼熱で加熱する加熱器や、無端ベルトを張架して支持すると共に加熱可能な加熱ローラ等を用いることができる。加熱ローラは、後述する加熱用ローラと同様に構成することができる。
【0023】
本発明においては、前記駆動装置および前記加熱器に代えて、駆動装置と加熱器の両機能を兼ねた加熱駆動ローラを設けることができる。この場合、前記無端ベルトを張架して支持しながら搬送すると共に、無端ベルトの加熱をも同時に行なうことができる。これにより、装置全体の更なる小型化、軽量化を実現することができる。
【0024】
炭化水素系燃料を貯留する貯留タンクは、炭化水素系燃料を貯留し、かつ貯留された炭化水素系燃料中に、前記炭化水素系燃料の脱水素反応によって生じた水素ガスを含む混合ガスが供給されると共に、前記水素ガスを排出する排出口を設けて構成することができる。これにより、炭化水素系燃料と脱水素生成物とを共に貯留でき、かつ水素ガスを分離して排出できるので、従来のように水素生成用の燃料を貯留するタンクと反応生成された脱水素生成物を貯留するタンクの両方を必要とせず、またこれらタンクと別に水素ガスを分離する分離手段を併設する必要もなく、単一のタンクに統合されることにより、更なる小型化、軽量化を図ることができる。
【0025】
すなわち、貯留分離タンクには炭化水素系燃料が貯留され、そこから外部に供給され脱水素反応を経た後、再び該貯留分離タンクの炭化水素系燃料中に生成された水素ガス及び脱水素生成物が供給されると、脱水素生成物は炭化水素系燃料中への供給過程で冷却、溶解されながら貯留分離タンクの底部(下方)に沈降、貯留され、水素ガスは燃料に溶解されずに(場合により、水素ガス分離手段を介在させて)排出口から高純度に排出される。
【0026】
無端ベルトが搬送される搬送路における、貯留タンクの搬送方向下流側であって、かつ前記加熱器の搬送方向上流側に、無端ベルトに付与された炭化水素系燃料の量を調節する付与量調節器を設けることができる。炭化水素系燃料中に浸漬された後、該燃料外に搬出されると多くの炭化水素系燃料が付与されているため、無端ベルトを付与量調節器に通し、加熱器に搬送される前に無端ベルトへの炭化水素系燃料の付与量を適量に調節することにより、水素生成効率を高めることができる。すなわち、好ましくは付与量調節器によって触媒である無端ベルト表面が僅かに湿潤した状態、すなわち液膜状態が形成される。
【0027】
付与量調節器は、二つの対向ローラが互いに圧接するローラ対を一対または複数配列したり、脱水素反応を起こさない程度に加熱して余剰分を蒸発させる加熱器などによって構成することができる。前者ではローラ対の数や圧着力を変えることにより、後者では加熱する温度や時間を変えることにより、炭化水素系燃料の付与量を任意に調節することができる。余剰分の炭化水素系燃料は貯留タンクに回収することができるが、後者の場合は蒸発した炭化水素系燃料は冷却液化され貯留タンクに回収される。
【0028】
本発明の水素ガス生成装置は、炭化水素系燃料の脱水素反応を迅速かつ高効率に行なわせて水素密度の高い水素ガスを良好に水素使用装置(例えば燃料電池、水素エンジン)に供給することが可能であり、装置全体の大幅な小型化、軽量化が図れると共に、炭化水素系燃料/脱水素生成物の反応循環系を利用してクリーンシステムを構築することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の水素ガス生成装置の実施形態を説明する。なお、下記の実施形態において、炭化水素系燃料として、デカリンを主成分とする燃料(以下、単に「デカリン」という。)を用いた場合を中心に説明する。但し、本発明においてはこれら実施形態に制限されるものではない。
【0030】
(第1実施形態)
本発明の水素ガス生成装置の第1実施形態を図1を参照して説明する。本実施形態は、水素ガスを燃料とする燃料電池が搭載された電気自動車に本発明の第1実施形態の水素ガス生成装置を搭載し、デカリンを高温触媒の存在下で反応させた際にナフタレンと水素ガスとが生成されるデカリン/ナフタレン反応を利用することで、水素ガス分子を吸着、貯蔵するのではなく、化学結合で燃料中に貯蔵するようにしたものである。
【0031】
本実施形態は、デカリンの脱水素反応を行なう触媒を無端の活性炭繊維ベルトに触媒金属を担持させて構成し、デカリンが付与された触媒をデカリンの燃焼熱で加熱された加熱器に通して連続的に脱水素反応させるようにし、単一の貯留タンクを用いてデカリン及び生成ナフタレンを共に貯留し、かつ発生した混合ガスから水素ガスを分離するようにしたものである。
【0032】
図1に示すように、本実施形態においては、デカリンを貯留し、かつ貯留されたデカリン中に、デカリンの脱水素反応によって生じた水素ガスを含む混合ガス(水素リッチガス)が供給されると共に、排出口から水素ガスを排出する貯留タンク10と、触媒金属が設けられ、少なくとも一部がデカリンに浸漬された無端ベルト15と、無端ベルト15を長手方向に搬送させる駆動ローラ20と、無端ベルト15を加熱する加熱器25と、を備えている。
【0033】
貯留タンク10は、内部にデカリン22を貯留可能に構成され、デカリン22は、貯留タンク10の上方に空隙を有する範囲で図示しない燃料供給管から供給されるようになっている。貯留タンク10上部の壁面には、無端ベルト15を搬送させる駆動ローラ20を備えた筒形状の搬送部16の一端と、搬送部17の一端とが接続され、貯留タンク10の搬送口13、14を通して無端ベルト15が出入できるようになっている。さらに上部壁面には、デカリン22を供給するポンプP1を備えた供給配管31の一端が、デカリン22中に位置するように設けられている。
【0034】
貯留タンク10の底面側の側壁には、排出管32がデカリン22中にその一端が位置するように設けられ、加熱器25と連通されている。液中となる排出管32の一端からは、加熱器25で生成された水素ガス及び気相ナフタレンを含む混合ガス(水素リッチガス;蒸発して残存する残存デカリンを含んでもよい)を液中において供給可能なようになっている。
【0035】
貯留タンク10の上部側の側壁には、供給された混合ガスから分離された水素ガスを排出する排出管11が設けられて排出口が形成されており、燃料電池(FC)40に水素ガスを供給できるようになっている。排出管11と燃料電池40との間には、水素ガスを貯蔵する水素ガス貯蔵タンクを設けることができる。また、底部には、排出管32から導入されて貯留されたナフタレンを外部に排出するバルブを備えた排出管12が設けられている。
【0036】
無端ベルト15は、長尺シート状の活性炭繊維をリング状にした無端構造に構成されており、活性炭繊維からなるベルト全体に直接金属触媒が担持されている。すなわち、活性炭繊維が金属触媒を担持する担体の機能を担っている。金属触媒としては、Pt、Pt−Ir、Pt−Re、Pt−W等の貴金属系の触媒金属微粒子や、これら触媒金属微粒子と活性炭繊維との混合物を用いることができる。
【0037】
加熱器25は、搬送部16の他端と搬送部17の他端とで接続されており、加熱器25を介して搬送部16と17とが連通されて無端ベルト15を搬送する搬送路が形成されている。
【0038】
加熱器25は、無端ベルト15が搬入されると共に熱せられて脱水素反応を生じ水素リッチガスを生成する反応室26と、反応室26の周囲を覆うように設けられ、無端ベルト(触媒)15の加熱が可能な燃焼室27とで構成されている。
反応室26には、排出管32の他端が接続されており、貯留タンク10と連通されている。燃焼室27には、空気を供給する供給装置28と、供給配管31の他端で接続され、デカリンを供給する燃料供給装置29と、図示しない点火装置と、燃焼によって生成された二酸化炭素(CO2)および水(H2O)を排出する排出口30とが設けられている。燃焼室27は、供給配管31によって貯留タンク10と連通されており、燃料供給装置29によって供給されたデカリンに空気を混合して燃焼可能なように構成されている。排出口30は、二酸化炭素を固定するCO2固定装置と連通されている。
【0039】
駆動ローラ20は、搬送部16の内部に配置されると共に、貯留タンク10のデカリン中となる底部側にも配置されており、無端ベルト15は四つの駆動ローラ20によって張架され、ループ状に支持されると共に、駆動ローラからの駆動力を受けて反時計方向に搬送可能なようになっている。また、搬送部16および貯留タンク10内に各々設けられた二つの駆動ローラ間には、無端ベルト15を支持する支持ローラ21が設けられている。
【0040】
無端ベルト15の搬送路における、貯留タンク10の搬送方向下流側であり、加熱器25の搬送方向上流側に位置する搬送部17の内部には、無端ベルト15に付与されたデカリンの量を適量に調節する3対の対向ローラで構成されたデカリン調節用ローラ(付与量調節器)35が設けられている。対向ローラは、無端ベルト表面に所望の力で圧接可能なように対をなして配置されており、無端ベルト15の余剰のデカリンを除去して適量に調節する。無端ベルト表面への圧接の程度は、デカリンの付与量に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
加熱器に搬入されるときの適量なデカリン量としては、加熱触媒表面(すなわち無端ベルト表面)が僅かに湿潤した状態、すなわち液膜状態となる量であることが好ましい。僅かに湿潤した液膜状態では、過熱(デカリンの沸点を越える温度での加熱)・液膜状態での脱水素反応による水素ガス生成量は最大になる。これは、デカリンの蒸発速度が、基質液量(デカリンの液量)が少ない程小さくなり、蒸発速度が小さくかつ高温の状態で脱水素反応させることにより転化率が向上するからである。すなわち、蒸発速度は液量・伝熱面積・加熱源と沸点との温度差の各々に比例するので、液体デカリンの量が少なければ蒸発速度が小さくなる。液体デカリンは、加熱触媒上(例えば、200〜350℃)でも液膜状態で存在するので、触媒活性サイトは液相からのデカリンの速やかな吸着により充分に高い被覆度で常時補填される。すなわち、触媒表面上で液膜状態で脱水素反応させることにより、触媒表面上で気体で反応させるよりも優れた反応性が得られる。
【0042】
デカリン調節用ローラ35は、対向ローラの本数や圧着力などによってデカリンの調節量を調節することができる。デカリン調節用ローラ35を構成する対向ローラの各々は、任意の一定の内径を有した円筒状、円柱状等の、いわゆるローラと呼ばれる断面円形の基体であれば、特に制限されるものではなく、公知のものの中から適宜選択できる。また、対向ローラの内部構造も、中空構造、充填構造のいずれの構造に構成されていてもよく、後述するように、内部に電熱線を設けたり、酸化触媒を配してデカリン等を燃焼させる等して発熱可能に構成することもできる。
【0043】
また、既述した貯留タンク10には、浸漬された無端ベルト10より液底側で且つ排出管32の一端より液面側となるデカリン中の任意位置に、デカリン中でのナフタレンの拡散を抑える水素ガス透過性の分離膜を設けることができる。この分離膜は、貯留タンク10内部に略水平(デカリン22の液面と略平行)に設けられると、デカリン中を浮上する水素ガスを透過させる一方、デカリン内でナフタレンが拡散するのを抑えて分離膜の下方(液底側)に貯留することができる。これにより、貯留されたデカリンの中層若しくは上層部ではナフタレン含量を低減して、無端ベルトおよび加熱器に高純度のデカリンを供給でき、タンク底部に設けられた排出管12から、デカリンの排出を抑えたナフタレンの排出を行なうことができる。このとき、ナフタレン含量比の低いデカリンが無端ベルトに供給され、水素生成効率をより高めることができる。
【0044】
また、デカリン中の排出管32の一端周辺でナフタレン量が不均一になると局部的に粘度上昇等を来すことがあるため、水素ガスの液中移動速度を損なわないようにし、分離膜の膜面を一様に通過できることが望ましい。例えば、デカリンの液面より下部に位置する側壁や底部の任意の位置に、局部的に冷却可能な冷却部材を設けることによって、冷却された部位周辺に一時的にナフタレンを析出させておき、デカリン中のナフタレン含量を低減させることができる。この場合にも、無端ベルトに付与されるデカリン中のナフタレン含量を低減して水素生成効率を高めることができる。
【0045】
分離膜は、その膜面の法線方向と略平行に移動可能に構成すると効果的である。タンク内に分離膜を移動可能に設けると、例えば、生成されたナフタレンの量が少ないときにはデカリン貯留側の容積を大きくして満タンとなる燃料を貯留することができ、徐々に水素ガスの生成に伴ってデカリンが減少し、逆にナフタレン量が増大したときにはその生成量に応じてナフタレン貯留側の容積を大きくすることで多量のナフタレンを貯留することができる。すなわち、デカリン(炭化水素系燃料)とナフタレン(脱水素生成物)との物理的な相対量に応じた分離膜の移動によりタンクの有効利用が図れ、狭い設置場所への設置や装置全体の軽量化を達成することができる。
【0046】
分離膜は、水素ガスを透過できると共に、デカリン中でのナフタレンの拡散を抑制し、かつデカリンに対して安定なものであれば公知のもの(変形し難い板状のものや、伸縮可能な軟性、弾性を有するもののいずれでもよい)を適宜選択でき、例えば、水素透過性でかつ水素ガス以外は物質非透過性(若しくはナフタレン低透過性)のもの、ナフタレンを除いては透過性のものなど、例えばメッシュ状のフィルタ膜や、ナフタレンを高濃度に含む側から水素ガスが透過するときに開弁され、かつ逆側から圧がかかった場合に閉弁される多数の逆止弁が格子状又はランダムに配列された逆止弁膜などが挙げられる。
【0047】
貯留タンク10は、図示しない連結器(ジョイント等)を備えて、連結器によって着脱可能に構成することもできる。例えば、貯留タンク10を搬送部16、17および供給配管31が設けられた上部壁面を含む蓋部とデカリンを貯留する貯留部とで構成すると共に排出管32に連結器を設けるようにし、簡易にはめ込み、取り外しができる形態に構成できる。また、貯留タンクを着脱可能に構成せず、あるいは着脱可能に構成すると共に、貯留タンクのナフタレンが高濃度に貯留された分離膜の下方部分のみを着脱可能な構造、例えば貯留タンクに収納可能なカートリッジ式や貯留タンクの一部を構成する構造に構成することもできる。
【0048】
本実施形態では、イグニッションスイッチがオンされると、加熱器25を構成する燃焼室27に、ポンプP1の駆動によりデカリンが燃料供給装置29から供給されると共に、供給装置28から空気が供給され、燃焼室27内で燃焼させることで反応室26内の雰囲気が高温に加熱される。このとき、加熱器25は、無端ベルト15(少なくとも金属触媒)が所定温度になるように制御される。このとき、無端ベルト(触媒)の温度は、反応室26の雰囲気温度をもとに間接的に所定温度に制御される。ここでの所定温度は、200〜500℃、好ましくは200〜350℃の間の温度、更に好ましくは280℃にすることができる。この理由は、所定温度が200℃未満であると目的とする脱水素反応の高い反応速度、換言すれば水素使用装置の高性能が得られないことがあり、350℃を越えるとカーボンデポジットが生じる可能性を持ち、500℃を越えると実用的でないからである。
【0049】
反応室26内の雰囲気温度が所定の温度以上に達すると、四つの駆動ローラ20の駆動により回転され、無端ベルト15は一定速度で反時計方向に搬送される。貯留タンク10内のデカリンに浸漬されていた無端ベルトの浸漬部分(デカリンが付与された部分)は、搬送口14を通ってデカリン調節用ローラ35に到達し、対をなす対向ローラ間を通過することでデカリンの染込み量が調節された後、加熱器25の反応室26内に連続的に進入する。無端ベルト(触媒)は、加熱器25の反応室26内を搬送されながら加熱され、水素リッチガス(蒸発した残存デカリンを含んでもよい。)を発生する。発生した水素リッチガスは、排出管32を挿通して貯留タンク10のデカリン中に導入される。
【0050】
貯留タンク10に供給された水素リッチガスは、デカリンに溶解性のナフタレン(および残存デカリン)と非溶解性の水素ガスとに分離される。デカリンに溶解し分離されたナフタレンは貯留タンク10の底部にデカリンと混合したナフタレン混合物として貯留され、水素ガスはデカリン中を上昇して貯留タンク10の上部空隙部から排出管11を挿通して燃料電池(FC)40に供給される。このとき、余剰の水素ガスを図示しない水素ガス貯蔵タンクに貯蔵するようにすることができる。加熱器25を通過した後、さらに搬送されて搬送口13を通って再び貯留タンク10内に進入してデカリン22中に浸漬される。
【0051】
このように、無端ベルト15を連続的に回転させることで、無端ベルトにデカリンを液膜状態で供給し得る供給装置を配設する必要がなく、デカリンの脱水素反応効率を効果的に向上させることができる。その結果、水素濃度の高い水素ガスの生成量を増大させることができる。
【0052】
また、無端ベルト15の搬送を止めた後も少量の水素ガスが発生するので、発生した水素ガスを貯留タンク10を経由して水素ガス貯蔵タンクに貯蔵するようにすることができる。なお、水素ガス貯蔵タンクに貯蔵された水素ガスは、燃料電池の始動時に用いることができるほか、他の水素使用装置に供給することができ、更に生成ナフタレンを再生するときには再生時のナフタレンの水素化反応に利用することができる。
【0053】
また、デカリンとテトラリンとの混合燃料を用いることにより、デカリンの脱水素反応の前にテトラリンが脱水素反応するので、速やかに水素ガスを発生させることができる。ここで、貯留タンク内あるいは貯留タンクとは別のタンク内に、デカリンと分離してテトラリンを貯留し、このテトラリンを加熱された触媒上でデカリンの脱水素反応前に脱水素反応させることにより、速やかに多量の水素ガスを発生させることができ、より迅速に水素生成を行なうことができる。
【0054】
(第2実施形態)
本発明の水素ガス生成装置の第2実施形態を図2を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態のデカリンの燃焼熱を利用した加熱器を加熱ローラに代え、別途加熱器を設けることなく、加熱機能と無端ベルトを張架し支持搬送する機能とを兼備させたものである。なお、燃料は第1実施形態で使用した燃料を用いることができ、第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0055】
図2に示すように、本実施形態は、デカリン22を貯留する第1貯留タンク60と、デカリン22を貯留し、かつ貯留されたデカリン中に、デカリンの脱水素反応によって生じた水素ガスを含む混合ガス(水素リッチガス)が供給されると共に、排出口から水素ガスを排出する第2貯留タンク70と、触媒金属が設けられ、少なくとも一部がデカリンに浸漬された無端ベルト15と、無端ベルト15を長手方向に搬送すると共に加熱する加熱駆動ローラ23とを備えている。
【0056】
第1貯留タンク60は、内部にデカリン22を貯留可能に構成され、デカリン22は、第1貯留タンク60の上方に空隙を有する範囲で貯留可能なようになっている。第1貯留タンク60には、デカリンを供給する図示しない燃料供給管が設けられていてもよい。
【0057】
第1貯留タンク60上部の壁面には、無端ベルト15が搬送される筒形状の搬送部51および搬送部52の各一端が接続され、第1貯留タンク60の搬送口13、14を通して無端ベルト15が出入できるようになっている。搬送部51、52の他端には、加熱機能を兼備する加熱駆動ローラ23を備えた反応タンク50が接続されており、反応タンク50は搬送部51、52によって第1貯留分離タンク60と連通されている。
【0058】
第1貯留タンク60の底面側の側壁には、デカリン22中にその一端が位置するように排出管72が設けられ、第2貯留タンク70と連通されている。第1貯留タンク60には、排出管72を挿通して第2貯留タンク70からデカリンを供給することができる。また、底部には、排出管72を挿通してデカリンと共に供給されたナフタレンを外部に排出するバルブを備えた排出管62が設けられている。
【0059】
第1貯留タンク60には、二つの駆動ローラ20が設けられると共に、これら駆動ローラ20間で無端ベルト15がジグザグ状の屈曲をなして張架されるように三つの支持ローラ21が更に配置されている。
【0060】
反応タンク50は、加熱駆動ローラ23と共に複数の加熱支持ローラ23’を備え(以下、総じて「加熱用ローラ」ともいう)、無端ベルト15を屈曲させることで、デカリンの脱水素反応に要する温度以上に迅速に加熱できるようになっている。下部側には、無端ベルト15を加熱しない駆動ローラ20と支持ローラ21とが設けられている。このように、無端ベルト15は、反応タンク50および第1貯留タンク60に配置された複数のローラによって屈曲させて張架され、支持されると共に、駆動ローラおよび加熱駆動ローラの駆動力が伝達されて加熱されと同時に搬送可能に構成されている。
【0061】
無端ベルト15を加熱する加熱用ローラは、例えば、図3−(a)に示すように、断面円形の金属等の熱伝導性筒状体81の内壁に酸化触媒80が担持されたローラ内部に、第1若しくは第2貯留タンクに貯留されたデカリンを空気と共に供給して燃焼させ、その燃焼熱で加熱される構造に構成することができる。この場合、デカリン以外の有機ハイドライドや生成されたナフタレン等の脱水素生成物などの有機物を空気と混合して燃焼させたときの燃焼熱や、取り出した水素の燃焼熱を熱源として構成することもできる。また、筒状体81と酸化触媒80との間にヒータを介在させてローラ内部に発生する遠赤外線によって燃焼させるようにすることもできる。
【0062】
また更に、図3−(b)に示すように、断面円形の金属等の熱伝導性の筒状体81の内部に筒状体81との間に断熱材82を介在させて電熱線83が内装された構造に構成することもできる。
【0063】
無端ベルト15の搬送路における、第1貯留タンク60の搬送方向下流側であって、加熱駆動ローラ23の搬送方向上流側に位置する反応タンク50の内部には、無端ベルト15に付与されたデカリンの量を適量に調節すると共に加熱可能な3対の加熱対向ローラで構成されたデカリン調節用加熱ローラ(付与量調節器)55が設けられている。
【0064】
デカリン調節用加熱ローラ55を構成する加熱対向ローラは、無端ベルト表面に所望の力で圧接可能なように対をなして配置されており、無端ベルト15の余剰のデカリンを搾り取って適量に調節する。無端ベルト表面への圧接の程度は、デカリンの付与量に応じて適宜設定すればよく、デカリン付与量は加熱される触媒表面(すなわち無端ベルト表面)が僅かに湿潤した状態、すなわち液膜状態となる量に調節されることが好ましい。加熱対向ローラは、上記のように発熱可能な加熱用ローラと同様に構成されると共に、第1実施形態のデカリン調節用ローラを構成する対向ローラ35と同様に構成することができる。
【0065】
反応タンク50の上部壁面には、加熱駆動ローラ23および加熱支持ローラ23’による加熱によって反応タンク50内で生成された水素ガス及び気相ナフタレンを含む混合ガス(水素リッチガス;蒸発して残存する残存デカリンを含んでもよい)を供給する逆止弁を備えた供給配管43の一端が接続されており、その他端で第2貯留タンク70と連通されている。
【0066】
第2貯留タンク70は、内部にデカリン22を貯留可能に構成され、第2貯留タンク70の上方に空隙を有する範囲で図示しない燃料供給管からデカリンが供給可能なようになっている。第2貯留タンク70の底部には、供給配管43がデカリン22中にその他端が位置するように設けられ、反応タンク50と連通されている。液中となる供給配管43の他端からは、反応タンク50で発生した水素リッチガスを液中において供給できるようになっている。このとき、供給されたナフタレンは第2貯留タンク70の底部にデカリンと混合した状態で貯留される。
【0067】
また、底部側の側壁には、排出管72の他端が接続されており、第2貯留タンク70の内部に貯留されたナフタレンを、デカリンと混合したナフタレン混合物として排出管72を挿通して第1貯留タンク60に排出できるようになっている。上部壁面には、供給された混合ガスから分離された水素ガスを排出する排出管71が設けられて排出口が形成されており、燃料電池(FC)40に水素ガスを供給できるようになっている。排出管71と燃料電池40との間には、水素ガスを貯蔵する水素ガス貯蔵タンクを設けることができる。
【0068】
第2貯留タンク70には、第1実施形態の貯留タンクと同様に、分離膜を(好ましくは略水平に)設けることができ、また、排出管72および供給配管43に図示しない連結器(ジョイント等)を設けることによって第2貯留タンク70を着脱可能に構成することもできる。また、第2貯留タンクを着脱可能に構成せず、あるいは着脱可能に構成すると共に、第2貯留タンクのナフタレンが高濃度に貯留された部分、例えば略水平に設けられた分離膜の下方部分、を着脱可能な構造、例えば第2貯留タンクに収納可能なカートリッジ式や第2貯留タンクの一部を構成する構造に構成することもできる。
【0069】
本実施形態では、イグニッションスイッチがオンされると、無端ベルト15の加熱を担う加熱駆動ローラ23および加熱支持ローラ23’の加熱が開始され、ローラ表面温度が所定温度以上に達すると、加熱駆動ローラ23および駆動ローラ20の駆動により回転され、無端ベルト15は一定速度で反時計方向に搬送される。搬送時、無端ベルト15を加熱するローラ表面温度は、無端ベルト15の金属触媒によってデカリンが脱水素反応を起こす所定温度に制御される。このときの所定温度は、既述のように、200〜500℃、好ましくは200〜350℃の間の温度、更に好ましくは280℃にすることができる。
【0070】
第1貯留タンク60内のデカリン中に浸漬されていた無端ベルト15の浸漬部分(デカリンが付与された部分)は、搬送開始により搬送口14を通ってデカリン調節用加熱ローラ55に到達し、対をなす加熱対向ローラ間を通過することで(同時に加熱されながら)デカリン付与量が調節される。この浸漬部分は更に搬送されて、加熱駆動ローラ23および加熱支持ローラ23’と接することで熱せられ、水素リッチガス(蒸発した残存デカリンを含んでもよい。)を発生する。
発生した水素リッチガスは、供給配管43を挿通して第2貯留タンク70のデカリン中に供給される。
【0071】
第2貯留タンク70に供給された水素リッチガスは、デカリンに溶解性のナフタレン(および残存デカリン)と非溶解性の水素ガスとに分離される。デカリンに溶解し分離されたナフタレンは第2貯留タンク70の底部にデカリンと混合したナフタレン混合物として貯留され、水素ガスはデカリン中を上昇して第2貯留タンク70の上部空隙部から排出管71を挿通して燃料電池(FC)40に供給される。このとき、余剰の水素ガスを図示しない水素ガス貯蔵タンクに貯蔵するようにすることができる。
【0072】
反応タンク50内の加熱用ローラ(加熱駆動ローラ23等)を通過した後さらに駆動ローラ20および支持ローラ21を通過すると、搬送口13を通って再び第1貯留タンク60内に進入して再びデカリン中に浸漬される。
【0073】
このように、無端ベルト15を連続的に回転させることで、無端ベルトにデカリンを液膜状態で供給し得る供給装置を配設する必要がなく、デカリンの脱水素反応効率を効果的に向上させることができる。その結果、水素濃度の高い水素ガスの生成量を増大させることができる。
【0074】
また、無端ベルトの搬送を止めた後も少量の水素ガスが発生するので、発生した水素ガスを第2貯留タンク70を経由して水素ガス貯蔵タンクに貯蔵するようにすることができる。なお、上記したように、水素ガス貯蔵タンクに貯蔵された水素ガスは、燃料電池の始動や、他の水素使用装置、ナフタレン再生の際のナフタレンの水素化反応に利用することができる。
【0075】
上述した実施形態では、水素生成用の燃料としてデカリンを用いた例を中心に説明したが、既述のデカリン以外の炭化水素系燃料を用いた場合においても同様である。また、水素使用装置についても、特に車載の燃料電池を例に説明したが、本発明は燃料電池以外の水素エンジンや他の水素使用装置に適用することもできる。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、小型化、軽量化が可能であると共に、炭化水素系燃料の脱水素反応を高効率かつ迅速に行なえ、水素濃度の高い水素ガスの生成量を向上させた水素ガス生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す概略構成図である。
【図3】(a)は酸化触媒による燃焼熱を熱源とする加熱用ローラの構成例を示す図であり、(b)は電熱線を内装して熱源とする加熱用ローラの構成例を示す図である。
【符号の説明】
10…貯留タンク
15…無端ベルト
20…駆動ローラ(駆動装置)
23…加熱駆動ローラ(加熱器)
23’…加熱支持ローラ(加熱器)
25…加熱器
35…デカリン調節用ローラ(付与量調節器)
40…燃料電池
55…デカリン調節用加熱ローラ(付与量調節器)
60…第1貯留タンク
70…第2貯留タンク
Claims (8)
- 炭化水素系燃料を貯留する貯留タンクと、
触媒金属が設けられ、少なくとも一部が前記炭化水素系燃料に浸漬された無端ベルトと、
前記無端ベルトを長手方向に搬送させる駆動装置と、
前記無端ベルトを加熱する加熱器と、
を備え、加熱された前記無端ベルト上で前記炭化水素系燃料を脱水素反応させて水素ガスを生成する水素ガス生成装置。 - 前記炭化水素系燃料が前記加熱器に供給され、供給された炭化水素系燃料を燃焼させたときの燃焼熱によって前記無端ベルトを加熱するようにした請求項1に記載の水素ガス生成装置。
- 前記加熱器が、前記無端ベルトを張架して支持すると共に加熱を行なう加熱ローラである請求項1に記載の水素ガス生成装置。
- 前記駆動装置および前記加熱器を兼ねた加熱駆動ローラが設けられ、前記無端ベルトを張架して搬送すると共に加熱を行なう請求項1に記載の水素ガス生成装置。
- 前記貯留タンクが、炭化水素系燃料を貯留し、かつ貯留された炭化水素系燃料中に、前記炭化水素系燃料の脱水素反応によって生じた水素ガスを含む混合ガスが供給されると共に、前記水素ガスを排出する排出口を備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素ガス生成装置。
- 前記無端ベルトの搬送路の、前記貯留タンクの搬送方向下流側であって、かつ前記加熱器の搬送方向上流側に、前記無端ベルトに付与された炭化水素系燃料の量を調節する付与量調節器を更に備えた請求項1〜5のいずれか1項に記載の水素ガス生成装置。
- 前記無端ベルトが、炭化水素系燃料を保持し得る吸収性材料で構成された請求項1〜6のいずれか1項に記載の水素ガス生成装置。
- 前記吸収性材料が活性炭繊維である請求項7に記載の水素ガス生成装置。
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JP2006062887A (ja) * | 2004-08-24 | 2006-03-09 | Kansai Electric Power Co Inc:The | 水素供給装置 |
JP2007194070A (ja) * | 2006-01-19 | 2007-08-02 | Toyota Motor Corp | 燃料電池用加湿器 |
EP3231984A1 (de) * | 2016-04-11 | 2017-10-18 | Max Wild GmbH | Verfahren zur aufbereitung von bohrschlamm |
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2003
- 2003-01-30 JP JP2003022064A patent/JP2004231469A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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