JP2004231454A - 低温焼成磁器および配線基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】低誘電率であり、高強度を有するとともに、高熱膨張化が可能な低温焼成磁器と、それを用いた配線基板を低コストで提供する。
【解決手段】少なくともSiO2とB2O3を含有するガラス成分と、フィラー成分とからなる低温焼成磁器であって、前記ガラス成分が30〜80体積%、前記フィラー成分が20〜70体積%の割合で含まれてなり、かつ、前記該ガラス成分中にSiO2を25〜60モル%、B2O3を25〜50モル%含有し、かつ、前記ガラス成分中に含まれるSiO2およびB2O3の合量が65モル%以上であるとともに、前記フィラー成分としてクオーツを含有する。
【選択図】図1
【解決手段】少なくともSiO2とB2O3を含有するガラス成分と、フィラー成分とからなる低温焼成磁器であって、前記ガラス成分が30〜80体積%、前記フィラー成分が20〜70体積%の割合で含まれてなり、かつ、前記該ガラス成分中にSiO2を25〜60モル%、B2O3を25〜50モル%含有し、かつ、前記ガラス成分中に含まれるSiO2およびB2O3の合量が65モル%以上であるとともに、前記フィラー成分としてクオーツを含有する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温焼成磁器および配線基板に関し、特に、低誘電率を有する低温焼成磁器と、それを絶縁層とする半導体素子収納用パッケージなどに使用される配線基板に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、半導体素子収納用パッケージは、半導体素子の高集積化に伴いメタライズ配線層や接続端子の高密度化が図られているが、特に、接続端子は従来のピン端子から外部回路基板への表面実装が可能なボール状端子(BGA)が多用されている。しかしながら、配線基板の絶縁材料として従来より用いられているアルミナセラミックスでは、高いヤング率と低い熱膨張係数のために熱サイクル試験などの信頼性試験において接続不良が発生しやすくなっている。
【0003】
また、上記のような半導体素子収納用パッケージは、半導体素子の高速、高周波化に伴い、電気信号の遅延や導体抵抗による発熱が問題となっている。
【0004】
このため配線基板を構成する絶縁基板として、従来のアルミナセラミックに代えてガラス成分とフィラー成分とからなる低温焼成磁器が好適に用いられ、また、メタライズ配線層として銅などの低抵抗材料を用いるとともに、基板材料の低誘電率化が図られている。
【0005】
このような基板材料の低誘電率化の手法としては、絶縁材料自体を低誘電率材料によって形成する他、絶縁材料中に気孔を分散させることが提案されている。例えば、下記の特許文献1では、ガラス成分とフィラー成分とからなる低温焼成磁器において、フィラー成分として平均粒径が20μm以下で内部に最大で15μm以下の気孔を有するクオーツを含有させることによって低比誘電率化とともに高熱膨張化をも図ることができると記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−20162号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載された低温焼成磁器では、主構成材料であるクオーツなどのフィラー成分の内部に気孔が形成されているために磁器の比誘電率は低減でき、高い熱膨張係数も確保できるものの、機械的強度や絶縁性には難があり、さらに、気孔を形成したフィラーの原料コストが高価なために、半導体素子収納用パッケージや携帯電話等に用いられる配線基板など汎用的な基板にはコスト高となって使用できないという問題があった。
【0008】
従って、本発明は、低誘電率で高強度、高絶縁性、そして、高熱膨張化が可能な低温焼成磁器と、それを用いた配線基板を低コストで提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点に対して検討を重ねた結果、少なくともSiO2とB2O3を含有するガラス成分と、フィラー成分とからなる低温焼成磁器において、このガラス成分中のSiO2とB2O3の配合量を適宜調整するとともにフィラー成分としてクオーツを含有させることによって、比誘電率の低下と高熱膨張化、さらには、磁器の高強度化を達成できることを見いだし、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明の低温焼成磁器は、少なくともSiO2とB2O3を含有するガラス成分と、フィラー成分とからなる低温焼成磁器であって、前記ガラス成分が30〜80体積%、前記フィラー成分が20〜70体積%の割合で含まれてなり、かつ、前記ガラス成分中にSiO2を25〜60モル%、B2O3を25〜50モル%含有し、かつ、前記ガラス成分中に含まれるSiO2およびB2O3の合量が65モル%以上であるとともに、前記フィラー成分としてクオーツを含有することを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、ガラス成分とフィラー成分とを所定の割合で混合し、かつ、ガラス成分中に低誘電率となるSiO2とB2O3とを多く含有させ、さらに、フィラー成分として低誘電率で高熱膨張係数の特性を有するクオーツを含有させることにより、磁器の内部に気孔を形成しなくても低誘電率でかつ高熱膨張性を有する磁器を形成でき、さらに、十分な機械的強度並びに高い絶縁破壊電圧を有する磁器を低コストで形成することができる。
【0012】
上記低温焼成磁器では、前記ガラス成分のガラス転移点が550〜750℃であることが望ましい。かかる低温焼成磁器によれば、ガラス成分のガラス転移点を、このような温度範囲とすることにより、配合されたガラス成分の軟化性が向上し、磁器の焼結性をさらに高めることができる。
【0013】
また、上記低温焼成磁器では、内部に形成されている気孔の最大径が10μm以下であることが、この磁器の機械的強度をさらに向上させるうえでさらに望ましい。
【0014】
また、上記低温焼成磁器では、1GHzでの比誘電率が5未満、40〜400℃における熱膨張係数が8〜15×10−6/℃であることが望ましい。このような特性を有する本発明の磁器では、信号の伝送速度を速めると共に、プリント基板などの外部回路基板への実装信頼性を高めることができる。
【0015】
本発明の配線基板は、複数の絶縁層により構成された絶縁基板の表面あるいは内部に、メタライズ配線層が配設された配線基板において、前記絶縁層が、上記の低温焼成磁器からなることを特徴とする。
【0016】
本発明のよれば、配線基板を構成する絶縁基板を上記の低温焼成磁器を用いて形成することにより、磁器の内部に気孔を形成しなくても、低誘電率で高熱膨張、かつ、十分な機械的強度並びに高い絶縁破壊電圧を有する絶縁基板を低コストで形成できる。
【0017】
上記配線基板では、前記絶縁層間に、1GHzでの比誘電率が10以上、40〜400℃における熱膨張係数が8〜15×10−6/℃である高誘電率の絶縁層を内層してなることが望ましい。本発明によれば、低誘電率層間に内層される高誘電率層の比誘電率を高めることにより、絶縁層間に形成されるコンデンサの静電容量を高くでき、また、高誘電率層の熱膨張係数をその上下層にある低誘電率層と同程度とすることにより、高誘電率層と低誘電率層との間の熱的応力を抑制できる。
【0018】
上記配線基板では、低誘電率の絶縁層と高誘電率の絶縁層との40〜400℃における熱膨張係数差が1×10−6/℃以下であることが望ましい。熱膨張係数差をこのように小さくすることにより、これらの絶縁層間に作用する応力をさらに低減することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の低温焼成磁器は、基本成分としてガラス成分とフィラー成分とから構成されるものである。ガラス成分中にSiO2を25〜60モル%、B2O3を25〜50モル%含有し、かつ、このガラス成分中に含まれるSiO2およびB2O3の合量がガラス成分全量中65モル%以上であることが重要である。
【0020】
ガラス成分中のSiO2は41〜51モル%、B2O3は27〜39モル%でそれらの合量がガラス成分全量中64〜84モル%であることがさらに望ましい。SiO2およびB2O3をこのような配合量とすることにより、ガラス自体の比誘電率を6以下、ガラス転移点を550〜750℃にできる。
【0021】
これに対して、SiO2量が25モル%より少ないか、B2O3が50モル%より多いとガラス転移点が550℃よりも低くなり、磁器中のボイドが大きくなる。
【0022】
一方、SiO2量が60モル%より多いか、B2O3が25モル%より少ないとガラス転移点が800℃よりも高くなり、クオーツの適正な配合比によって得られる磁器の熱膨張係数を8×10−6/℃以上に高めることが困難となる。
【0023】
また、このガラス成分中に含まれるSiO2およびB2O3の合量がガラス成分全量中で65モル%より少ないとガラスの比誘電率が6より高くなり得られる磁器の低誘電率化が困難となる。
【0024】
また、本発明の低温焼成磁器を構成するガラス成分のガラス転移点は550〜750℃の範囲が好ましいが、特に、磁器中のボイドを低減するという理由から、560〜660℃であることがより望ましい。
【0025】
さらに、本発明では、上記のガラス成分とともに、フィラー成分としてクオーツを含有することが重要である。クオーツはそれ自体、比誘電率が3.8と小さく、かつ、40〜400℃における熱膨張係数が18×10−6/℃と大きいことから磁器の低誘電率化と高熱膨張化に大きく寄与することができる。
【0026】
そして、本発明の低温焼成磁器では、上記の特性に加えて、1000℃以下での焼成を可能とし、金属導体との同時焼成を可能とするという理由から、ガラス成分が30〜80体積%、フィラー成分が20〜70体積%の割合で構成されることが重要である。特には、ガラス成分量が40〜65体積%、フィラー成分量が35〜60体積%であることがより望ましい。ガラス成分が30体積%より少ないかまたはフィラー成分が70体積%より多い場合、また、ガラス成分が80体積%より多いかまたはフィラー成分が20体積%より少ない場合には、磁器中に形成される気孔の最大径が大きくなり、低い熱膨張係数あるいは高い比誘電率しか得られないか、若しくは、例え、所望の値の熱膨張係数や比誘電率が得られたとしても機械的強度および絶縁破壊電圧が低くなる。
【0027】
即ち、本発明の低温焼成磁器は、比誘電率が4〜6のガラス成分と比誘電率が4で熱膨張係数が18×10−6/℃と高いクオーツを混合することによって得られる磁器の比誘電率を5未満にかつ熱膨張係数を8〜15×10−6/℃に調整することができる。
【0028】
また、本発明の低温焼成磁器では、機械的強度や絶縁抵抗を高めるという理由から、その内部に形成される気孔の最大径が10μm以下であることが望ましく、特に、5μm以下がより望ましい。
【0029】
さらに、本発明の低温焼成磁器を構成するガラス成分中には、上記のSiO2やB2O3以外にMgO、CaO、SrOなどのアルカリ土類金属酸化物のうち少なくとも1種を配合することが望ましく。これによりガラス成分の軟化性を高めて焼結密度をさらに高くでき、低温焼成磁器の強度をさらに向上できる。
【0030】
添加成分の配合量は、ガラス成分全量に対して、14〜35モル%であることが望ましく、ガラス成分を低誘電率かつ高熱膨張化するという理由から、特に、16〜32モル%が望ましい。
【0031】
そして、本発明の低温焼成磁器では、低誘電率かつ高熱膨張性を有するとともに、機械的強度並びに絶縁性をより向上させるという点で、フォルステライト(2MgO・SiO2)、スピネル(MgO・Al2O3)、ウォラストナイト(CaO・SiO2)、モンティセラナイト(CaO・MgO・SiO2)、ジオプサイド(CaO・MgO・2SiO2)、メルビナイト(3CaO・MgO・2SiO2)、アケルマイト(2CaO・MgO・2SiO2)、マグネシア(MgO)、アルミナ(Al2O3)、アノーサイト(CaO・Al2O3・2SiO2)、エンスタタイト(MgO・SiO2)、ホウ酸マグネシウム(2MgO・B2O3)、B2O3・2MgO・2SiO2、の群から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。
【0032】
こうして、かかる構成によって、本発明の低温焼成磁器は、比誘電率が5未満、特に、4.7以下、熱膨張係数を8〜15×10−6/℃、特に、8.7〜11.7×10−6/℃とすることによって、伝送特性や実装信頼性に優れた配線基板を得ることができる。
【0033】
次に、本発明の低温焼成磁器を作製するための方法について説明する。
【0034】
まず、出発原料として、上記のガラス成分となるガラス粉末と、フィラー成分となるフィラー粉末とを、焼成温度や熱膨張係数等の目的に応じて、前述した所定の比率で混合する。
【0035】
本発明では、かかる低温焼成磁器中の気孔の最大径を小さくし焼結性を高めるという理由から、この磁器にかかるガラス粉末の平均粒径は0.1〜5μm、特に、1〜3μm、一方、フィラー粉末の平均粒径は0.1〜5μm、特に、1〜3μmであることが望ましい。
【0036】
本発明において用いられる上記ガラス粉末は、フィラー粉末であるクオーツ無添加では、焼成収縮開始温度は800℃以下で、900℃以上では溶融してしまい、メタライズ配線層等を配設することができない。しかし、クオーツを混合することにより焼成過程において結晶の析出が起こり、クオーツを液相焼結させるための液相を適切な温度で形成させることができる。また、成形体全体の収縮開始温度を上昇させることができるため、かかるフィラー粉末の含有量の調整により、用いる金属の種類によりメタライズ配線層との同時焼成条件のマッチングを図ることができる。
【0037】
また、クオーツの配合量は、上記ガラス粉末の屈伏点に応じ、その配合量を適宜調整することが望ましい。屈伏点とは、ガラスが急激に溶融して最も大きな体積変化を示す温度範囲の中心の温度をいい、通常、ガラス転移点よりも30〜60℃高い温度である。即ち、ガラス粉末の屈伏点が550〜700℃と低い場合には、低温での焼結性が高まるため、クオーツ量は40〜70体積%と比較的多く配合できる。これに対して、ガラス粉末の屈伏点が700〜850℃と高い場合には、焼結性が低下するためクオーツ量は20〜50体積%と比較的少量配合することが望ましい。ここで用いるクオーツはフィラー粉末の原料コストを低減するという理由から中実球であることが望ましい。
【0038】
また、本発明の低温焼成磁器は、着色成分として、酸化クロム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化鉄および酸化銅の群から選ばれる少なくとも1種を、上記のガラス粉末とクオーツとの混合物100体積%に対して1体積%以下の割合で配合しても良い。
【0039】
本発明によれば、上記のように配合されたガラス粉末とフィラー粉末との混合物に、適当な成形の有機バインダを添加した後、所望の成形手段、例えば、ドクターブレード、圧延法、金型プレス等により所定の形状に成形後、焼成する。
【0040】
焼成にあたっては、まず、成形のために配合した有機バインダ成分を除去する。有機バインダの除去は、700℃前後の大気雰囲気中または窒素雰囲気中で行われる。この時、成形体の収縮開始温度は700〜850℃程度であることが望ましく、かかる収縮開始温度がこれより低いと有機バインダの除去が困難となるため、成形体中のガラス成分の特性、特に、屈伏点を前述したように制御することが望ましい。
【0041】
焼成は、850℃〜1050℃の酸化性雰囲気中または非酸化性雰囲気中で行われ、これにより気孔の最大径が10μm以下、特に、5μm以下に制御できるとともに、開気孔率が1%以下、特に0.7%以下にまで緻密化される。この時の焼成温度が850℃より低いと緻密化することが難しく、1050℃を越えると後述する配線基板を作製する場合に、銅や銀などのメタライズ配線層との同時焼成が難しくなる。
【0042】
図1は、本発明の低温焼成磁器を用いて形成した配線基板とその実装構造を示す概略断面図である。配線基板としてはBGA型の半導体素子収納用パッケージを一実施例とした。このパッケージは、絶縁基板の表面あるいは内部にメタライズ配線層が配設された、いわゆる配線基板を基礎的構造とするものであり、Aは半導体素子収納用パッケージ、Bは外部回路基板をそれぞれ示す。
【0043】
半導体素子収納用パッケージAは、絶縁基板1と蓋体3とメタライズ配線層5とビアホール導体と接続端子15により構成され、絶縁基板1及び蓋体3は半導体素子9を内部に気密に収容するためのキャビティ11を形成する。そして、キャビティ11内にて半導体素子9は、ガラス、樹脂等の接着材を介して絶縁基板1に接着固定される。
【0044】
また、絶縁基板1は、本発明の低温焼成磁器の一つである低誘電率の絶縁層13を複数積層して形成されている。絶縁基板1の表面および内部には、メタライズ配線層5が配設されており、半導体素子9と絶縁基板1の下面に形成された接続端子15と電気的に接続するように配設されている。図1のパッケージによれば、接続端子15は、接続パッド15aを介して高融点の半田(錫−鉛合金)から成るボール状端子15bがロウ材により取着されている。
【0045】
一方、外部回路基板Bは、絶縁体21と配線導体23により構成されており、絶縁体21は、少なくとも有機樹脂を含む絶縁材料からなり、具体的には、ガラス−エポキシ系複合材料などのように40〜400℃の熱膨張係数が12〜16×10−6/℃の特性を有し、一般にはプリント基板等が用いられる。また、この基板Bの表面に形成される配線導体23は、絶縁体21との熱膨張係数の整合性と、良電気伝導性の点で、通常、Cu、Au、Ag、Al、Ni、Pb−Snなどの金属導体からなる。
【0046】
半導体素子収納用パッケージAを外部回路基板Bに実装するには、半導体素子収納用パッケージAの絶縁基板1下面のボール状端子15bを外部回路基板Bの配線導体23上に載置当接させ、しかる後、低融点の半田等のロウ材により約250〜400℃の温度で半田を溶融させて配線導体23とボール状端子15bとの接合することにより、実装される。この時、配線導体23の表面にはボール状端子15bとのロウ材による接続を容易に行うために予めロウ材が被着形成される。
【0047】
本発明の低温焼成磁器は、前述した通り、低誘電率で、高い熱膨張係数を有し、強度劣化が無く、絶縁抵抗の劣化も無いことから、かかる焼結体を半導体素子収納用パッケージAなどの配線基板における絶縁基板1として用いることによって、有機樹脂を含有する絶縁材料を有するプリント基板などの外部回路基板Bに対して、配線基板を接続端子15を介して実装した場合においても、熱膨張特性を近似させることができることから長期信頼性にわたり安定した実装状態を維持することができる。
【0048】
なお、上記のような配線基板を作製する場合には、前述した低温焼成磁器の製造方法において、ガラス成分とフィラー成分とからなる混合粉末を用いて、ドクターブレード法等によってシート状成形体を作製した後、そのシート状成形体に対して、Cu、Ag、Ni、Pd、Auのうちの1種以上からなる金属粉末に有機バインダ、可塑剤、溶剤を添加混合して得た金属ペーストを前記シート状成形体表面に周知のスクリーン印刷法により所定パターンに印刷塗布する。
【0049】
また、場合によっては、前記グリーンシートに適当な打ち抜き加工してスルーホールを形成し、このホール内にもメタライズペーストを充填する。そして、これらのグリーンシートを複数枚積層圧着した後、以下の方法で焼成する。
【0050】
焼成にあたっては、まず、成形のために配合した有機バインダ成分を除去する。有機バインダの除去は、700℃前後の大気雰囲気中で行われるが、メタライズ配線層5としてCuを用いる場合には、100〜700℃の水蒸気を含有する窒素雰囲気中で行われる。この時、成形体の収縮開始温度は700〜850℃程度であることが望ましく、かかる収縮開始温度がこれより低いと有機バインダの除去が困難となるため、成形体中のガラスの特性、特に屈伏点を前述したように制御することが必要となる。
【0051】
焼成は、850℃〜1050℃の酸化性雰囲気中で行われ、これにより相対密度90%以上まで緻密化される。この時の焼成温度が850℃より低いと緻密化することができず、1050℃を越えるとメタライズ配線層5との同時焼成が難しくなる。但し、メタライズ配線層5としてCuを用いる場合には、非酸化性雰囲気中で行われる。
【0052】
本発明に係る他の配線基板として、図2に示すように、配線基板を構成する低誘電率層間に高誘電率層を内層したものが挙げられる。尚,図2の配線基板は図1の配線基板を構成する絶縁基板1に高誘電率層を介装させたものであり、高誘電率層を除いて他の部材は図1と同じものである。
【0053】
この配線基板は、本発明の低温焼成磁器からなる低誘電率の絶縁層(低誘電率層)31aと、高誘電率の絶縁層(高誘電率層)31bとにより構成される。そのため、かかる高誘電率層31bの上下に銅等のメタライズ配線層33を接続することにより、このメタライズ配線層33間と接続することにより、メタライズ配線層33間で所定の静電容量を取り出すことができる。
【0054】
このような高誘電率層31bとしては、40〜400℃における線熱膨張係数が8〜15×10−6/℃、かつ、1GHzにおける比誘電率が10以上の低温焼成磁器からなることが望ましい。そして、かかる高誘電率層31bとなる低温焼成磁器は、本発明の低誘電率、高熱膨張の低温焼成磁器の作製に用いるガラス成分とフィラー成分を除く以外は全く同様にして形成できる。そのため、上記と全く同様の方法により成形、打ち抜き、メタライズ配線層33となる配線パターンの印刷などを行った高誘電率、高熱膨張の成分を含有するグリーンシートを作製し、本発明の上記の低誘電率、高熱膨張の成分を含むグリーンシートと積層した後、この積層体をメタライズパターンと同時焼成することによりコンデンサを内蔵する配線基板を得ることができる。
【0055】
尚、高誘電率、高熱膨張の低温焼成磁器は、ガラス成分としてアルカリ土類金属、希土類、Al、Ti、Zr等の金属酸化物を含有することが望ましく、また、セラミックフィラーとしては、40〜400℃における線熱膨張係数が8×10−6/℃以上、且つ、1GHzにおける比誘電率が40以上の金属酸化物が望ましく、例えば、TiO2(比誘電率:80、熱膨張係数:9×10−6/℃)、CaTiO3(比誘電率:180、熱膨張係数:13×10−6/℃)、SrTiO3(比誘電率:300、熱膨張係数:9×10−6/℃)、BaTiO3(比誘電率:13000、熱膨張係数:14×10−6/℃)、La2Ti2O7(比誘電率:45、熱膨張係数:15×10−6/℃)等のチタン酸化合物の群から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。
【0056】
かかる金属酸化物が焼成後において上記の高誘電率、高熱膨張の低温焼成磁器の結晶相として含まれるようになり、こうして、比誘電率が10以上、40〜400℃における熱膨張係数が8〜15×10−6/℃の低温焼成磁器を形成できる。
【0057】
本発明の配線基板では、同時に積層される前記低誘電率層31aと高誘電率層31bとの応力を低減するという理由から、40〜400℃における熱膨張係数が1×10−6/℃以下であることが望ましく、特に、0.5×10−6/℃以下が望ましい。
【0058】
本発明の高誘電率層を内層した配線基板は、この高誘電率層31bが高い熱膨張係数を有することからプリント基板などへの実装信頼性を高めることができ、また、コンデンサを内蔵することにより配線基板の小型化を図ることができる。
【0059】
【実施例】
以下、本発明の低温焼成磁器およびそれを用いた配線基板について実施例に基づき具体的に説明する。まず、ガラス粉末として、表1に示す5種類のガラス粉末と、クオーツを用意し、表2に示す割合になるように秤量混合した。ガラス粉末の平均粒径は3μm、クオーツの平均粒径は1μmとした。
【0060】
次に、この混合物を粉砕後、有機バインダおよび溶剤を添加して、十分混合後スラリーを調製し、ドクターブレード法により厚み100μmと300μmのグリーンシートを作製した。
【0061】
次に、得られた厚み300μmグリーンシートを8枚積層積層圧着した後、50mm×50mmのサンプルを作製し、700℃の水蒸気を含む窒素雰囲気中にて脱バインダ処理後、表2に示す、焼成温度×1時間の窒素雰囲気中にて焼成を行い低温焼成磁器を作製した。
【0062】
次に、上記のようにして得られた低温焼成磁器に対して、40〜400℃における熱膨張係数と1GHzにおける比誘電率を測定した。また、この低温焼成磁器の一部を切り出し、断面研磨を行った後、電子顕微鏡観察を行い、この電子顕微鏡写真を画像解析することにより気孔の最大径を測定した。この測定は低温焼成磁器の任意の部分を50μm×50μmの範囲において10点測定してその最大径を求めた。又、上記のグリーンシートを用いて機械的強度評価用サンプルを切り出し評価を行った。機械的強度評価用サンプルは3点曲げ試験(JIS1601)にて行った。さらに、上記の厚み100μmのグリーンシートの両面に直径10mmのパターンを形成し、上記の基板と同様の条件で焼成した後に絶縁破壊電圧の評価を行った。これらの結果を表2に示した。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表2の結果より明らかなように、本発明で規定したガラス成分およびフィラー成分を有する試料No.3〜10、12〜18では、気孔の最大径が11μm、比誘電率が5未満、40℃〜400℃における熱膨張係数が8〜15ppm/℃、機械的強度が200MPa以上、絶縁破壊電圧が400V/mm以上であった。特に、ガラス成分として、SiO2を41〜51モル%、B2O3を27〜39モル%とし、そのガラス成分量を40〜65体積%、残部をフィラー成分量とした試料No.5〜9、13〜17では、気孔の最大径が10μm、比誘電率が4.7以下、40℃〜400℃における熱膨張係数が8.7〜11.7×10−6/℃、機械的強度が210MPa以上、絶縁破壊電圧が410V/mm以上のさらに改善できた。
【0066】
一方、本発明の範囲外の試料では、気孔の最大径が大きく、比誘電率が5以上、熱膨張係数が8×10−6/℃未満のいずれかで、機械的強度や絶縁破壊電圧も低かった。
実施例2.
また、実施例1おける組成物を用いて、ドクターブレード法により厚み500μmのグリーンシートを作製し、このシート表面に銅メタライズペーストをスクリーン印刷法に基づき塗布した。また、グリーンシートの所定箇所にビアホールを形成しその中にも銅メタライズペーストを充填した。そして、メタライズペーストが塗布されたグリーンシートをスルーホール間で位置合わせしながら6枚積層し圧着した。この積層体を700℃の水蒸気を含有する窒素雰囲気中にて脱バインダー処理後、表2に示す焼成温度×1時間の窒素雰囲気中にて、メタライズ配線層と絶縁基板とを同時焼成し配線基板を作製した。
【0067】
次に、配線基板の下面に設けられた電極パッドに図1に示すように鉛90重量%−錫10重量%からなるボール状半田を低融点半田(鉛37重量%−錫63重量%)により取着した。なお、接続端子は、1cm2当たり30端子の密度で配線基板の下面全体に形成した。
【0068】
そして、この配線基板を、ガラス−エポキシ基板から成る40〜800℃における熱膨張係数が13×10−6/℃の絶縁体の表面に銅箔から成る配線導体が形成されたプリント基板表面に実装した。実装は、プリント基板の上の配線導体と配線基板のボール状端子とを位置合わせし、低融点半田によって接続し実装した。次に、パッケージ用の配線基板をプリント基板表面に実装したものを大気の雰囲気にて−40℃と125℃の各温度に制御した恒温槽に試験サンプルを15分/15分の保持を1サイクルとして最高1000サイクル繰り返した。そして、サイクル毎にプリント基板の配線導体と配線基板との電気抵抗を測定し電気抵抗に変化が現れるまでのサイクル数を測定し、1000サイクルまでの評価を行った。本発明の低温焼成磁器を用いたものは、電気抵抗の変化も無く信頼性に優れていた。
実施例3
また、実施例1記載のガラスA50体積%に対して、フィラーとしてCaTiO3を7.5体積%、La2Ti2O7を42.5体積%添加してなる組成物(40〜400℃における線熱膨張係数:9.5ppm/℃、1GHzにおける比誘電率:17)を用意し、実施例1.と全く同様な方法でグリーンシートを作製した。
【0069】
次に、上記グリーンシートの上下に、実施例1における表1の各組成物からなるグリーンシートを1枚ずつ、計3枚を積層圧着した後、50mm×50mmのサンプルを作製し、700℃の水蒸気を含有する窒素雰囲気中にて脱バインダ処理後、表2に示す焼成温度×1時間の窒素雰囲気中にて焼成を行った。
【0070】
本発明の低温焼成磁器を用いたものはクラックの無い緻密体が得られていた。
【0071】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の低温焼成磁器は、ガラス成分中にSiO2を25〜60モル%、B2O3を25〜50モル%含有しかつ前記ガラス成分中に含まれるSiO2およびB2O3の合量が65モル%以上であるとともに、前記フィラー成分としてクオーツを含有させることにより、磁器の内部に気孔を形成しなくても、低誘電率でかつ高熱膨張性を有する磁器を同時に形成でき、こうして、十分な機械的強度並びに高い絶縁破壊電圧を有する磁器を低コストで形成することができる。
【0072】
また、これを配線基板として用いることによって信号伝送特性を向上させるとともに、プリント基板などの外部回路基板に対して接続端子を介して実装した構造においても長期接続信頼性を有する実装構造を提供できる。
【0073】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の低温焼成磁器を用いて形成した配線基板とその実装構造を示す概略断面図である。
【0074】
【図2】本発明の高誘電率層を内層した配線基板を示す概略断面図である。
【0075】
【符号の説明】
1 絶縁基板
5 メタライズ配線層
13 絶縁層
31a 低誘電率の絶縁層
31b 高誘電率の絶縁層
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温焼成磁器および配線基板に関し、特に、低誘電率を有する低温焼成磁器と、それを絶縁層とする半導体素子収納用パッケージなどに使用される配線基板に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、半導体素子収納用パッケージは、半導体素子の高集積化に伴いメタライズ配線層や接続端子の高密度化が図られているが、特に、接続端子は従来のピン端子から外部回路基板への表面実装が可能なボール状端子(BGA)が多用されている。しかしながら、配線基板の絶縁材料として従来より用いられているアルミナセラミックスでは、高いヤング率と低い熱膨張係数のために熱サイクル試験などの信頼性試験において接続不良が発生しやすくなっている。
【0003】
また、上記のような半導体素子収納用パッケージは、半導体素子の高速、高周波化に伴い、電気信号の遅延や導体抵抗による発熱が問題となっている。
【0004】
このため配線基板を構成する絶縁基板として、従来のアルミナセラミックに代えてガラス成分とフィラー成分とからなる低温焼成磁器が好適に用いられ、また、メタライズ配線層として銅などの低抵抗材料を用いるとともに、基板材料の低誘電率化が図られている。
【0005】
このような基板材料の低誘電率化の手法としては、絶縁材料自体を低誘電率材料によって形成する他、絶縁材料中に気孔を分散させることが提案されている。例えば、下記の特許文献1では、ガラス成分とフィラー成分とからなる低温焼成磁器において、フィラー成分として平均粒径が20μm以下で内部に最大で15μm以下の気孔を有するクオーツを含有させることによって低比誘電率化とともに高熱膨張化をも図ることができると記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−20162号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載された低温焼成磁器では、主構成材料であるクオーツなどのフィラー成分の内部に気孔が形成されているために磁器の比誘電率は低減でき、高い熱膨張係数も確保できるものの、機械的強度や絶縁性には難があり、さらに、気孔を形成したフィラーの原料コストが高価なために、半導体素子収納用パッケージや携帯電話等に用いられる配線基板など汎用的な基板にはコスト高となって使用できないという問題があった。
【0008】
従って、本発明は、低誘電率で高強度、高絶縁性、そして、高熱膨張化が可能な低温焼成磁器と、それを用いた配線基板を低コストで提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記問題点に対して検討を重ねた結果、少なくともSiO2とB2O3を含有するガラス成分と、フィラー成分とからなる低温焼成磁器において、このガラス成分中のSiO2とB2O3の配合量を適宜調整するとともにフィラー成分としてクオーツを含有させることによって、比誘電率の低下と高熱膨張化、さらには、磁器の高強度化を達成できることを見いだし、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明の低温焼成磁器は、少なくともSiO2とB2O3を含有するガラス成分と、フィラー成分とからなる低温焼成磁器であって、前記ガラス成分が30〜80体積%、前記フィラー成分が20〜70体積%の割合で含まれてなり、かつ、前記ガラス成分中にSiO2を25〜60モル%、B2O3を25〜50モル%含有し、かつ、前記ガラス成分中に含まれるSiO2およびB2O3の合量が65モル%以上であるとともに、前記フィラー成分としてクオーツを含有することを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、ガラス成分とフィラー成分とを所定の割合で混合し、かつ、ガラス成分中に低誘電率となるSiO2とB2O3とを多く含有させ、さらに、フィラー成分として低誘電率で高熱膨張係数の特性を有するクオーツを含有させることにより、磁器の内部に気孔を形成しなくても低誘電率でかつ高熱膨張性を有する磁器を形成でき、さらに、十分な機械的強度並びに高い絶縁破壊電圧を有する磁器を低コストで形成することができる。
【0012】
上記低温焼成磁器では、前記ガラス成分のガラス転移点が550〜750℃であることが望ましい。かかる低温焼成磁器によれば、ガラス成分のガラス転移点を、このような温度範囲とすることにより、配合されたガラス成分の軟化性が向上し、磁器の焼結性をさらに高めることができる。
【0013】
また、上記低温焼成磁器では、内部に形成されている気孔の最大径が10μm以下であることが、この磁器の機械的強度をさらに向上させるうえでさらに望ましい。
【0014】
また、上記低温焼成磁器では、1GHzでの比誘電率が5未満、40〜400℃における熱膨張係数が8〜15×10−6/℃であることが望ましい。このような特性を有する本発明の磁器では、信号の伝送速度を速めると共に、プリント基板などの外部回路基板への実装信頼性を高めることができる。
【0015】
本発明の配線基板は、複数の絶縁層により構成された絶縁基板の表面あるいは内部に、メタライズ配線層が配設された配線基板において、前記絶縁層が、上記の低温焼成磁器からなることを特徴とする。
【0016】
本発明のよれば、配線基板を構成する絶縁基板を上記の低温焼成磁器を用いて形成することにより、磁器の内部に気孔を形成しなくても、低誘電率で高熱膨張、かつ、十分な機械的強度並びに高い絶縁破壊電圧を有する絶縁基板を低コストで形成できる。
【0017】
上記配線基板では、前記絶縁層間に、1GHzでの比誘電率が10以上、40〜400℃における熱膨張係数が8〜15×10−6/℃である高誘電率の絶縁層を内層してなることが望ましい。本発明によれば、低誘電率層間に内層される高誘電率層の比誘電率を高めることにより、絶縁層間に形成されるコンデンサの静電容量を高くでき、また、高誘電率層の熱膨張係数をその上下層にある低誘電率層と同程度とすることにより、高誘電率層と低誘電率層との間の熱的応力を抑制できる。
【0018】
上記配線基板では、低誘電率の絶縁層と高誘電率の絶縁層との40〜400℃における熱膨張係数差が1×10−6/℃以下であることが望ましい。熱膨張係数差をこのように小さくすることにより、これらの絶縁層間に作用する応力をさらに低減することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の低温焼成磁器は、基本成分としてガラス成分とフィラー成分とから構成されるものである。ガラス成分中にSiO2を25〜60モル%、B2O3を25〜50モル%含有し、かつ、このガラス成分中に含まれるSiO2およびB2O3の合量がガラス成分全量中65モル%以上であることが重要である。
【0020】
ガラス成分中のSiO2は41〜51モル%、B2O3は27〜39モル%でそれらの合量がガラス成分全量中64〜84モル%であることがさらに望ましい。SiO2およびB2O3をこのような配合量とすることにより、ガラス自体の比誘電率を6以下、ガラス転移点を550〜750℃にできる。
【0021】
これに対して、SiO2量が25モル%より少ないか、B2O3が50モル%より多いとガラス転移点が550℃よりも低くなり、磁器中のボイドが大きくなる。
【0022】
一方、SiO2量が60モル%より多いか、B2O3が25モル%より少ないとガラス転移点が800℃よりも高くなり、クオーツの適正な配合比によって得られる磁器の熱膨張係数を8×10−6/℃以上に高めることが困難となる。
【0023】
また、このガラス成分中に含まれるSiO2およびB2O3の合量がガラス成分全量中で65モル%より少ないとガラスの比誘電率が6より高くなり得られる磁器の低誘電率化が困難となる。
【0024】
また、本発明の低温焼成磁器を構成するガラス成分のガラス転移点は550〜750℃の範囲が好ましいが、特に、磁器中のボイドを低減するという理由から、560〜660℃であることがより望ましい。
【0025】
さらに、本発明では、上記のガラス成分とともに、フィラー成分としてクオーツを含有することが重要である。クオーツはそれ自体、比誘電率が3.8と小さく、かつ、40〜400℃における熱膨張係数が18×10−6/℃と大きいことから磁器の低誘電率化と高熱膨張化に大きく寄与することができる。
【0026】
そして、本発明の低温焼成磁器では、上記の特性に加えて、1000℃以下での焼成を可能とし、金属導体との同時焼成を可能とするという理由から、ガラス成分が30〜80体積%、フィラー成分が20〜70体積%の割合で構成されることが重要である。特には、ガラス成分量が40〜65体積%、フィラー成分量が35〜60体積%であることがより望ましい。ガラス成分が30体積%より少ないかまたはフィラー成分が70体積%より多い場合、また、ガラス成分が80体積%より多いかまたはフィラー成分が20体積%より少ない場合には、磁器中に形成される気孔の最大径が大きくなり、低い熱膨張係数あるいは高い比誘電率しか得られないか、若しくは、例え、所望の値の熱膨張係数や比誘電率が得られたとしても機械的強度および絶縁破壊電圧が低くなる。
【0027】
即ち、本発明の低温焼成磁器は、比誘電率が4〜6のガラス成分と比誘電率が4で熱膨張係数が18×10−6/℃と高いクオーツを混合することによって得られる磁器の比誘電率を5未満にかつ熱膨張係数を8〜15×10−6/℃に調整することができる。
【0028】
また、本発明の低温焼成磁器では、機械的強度や絶縁抵抗を高めるという理由から、その内部に形成される気孔の最大径が10μm以下であることが望ましく、特に、5μm以下がより望ましい。
【0029】
さらに、本発明の低温焼成磁器を構成するガラス成分中には、上記のSiO2やB2O3以外にMgO、CaO、SrOなどのアルカリ土類金属酸化物のうち少なくとも1種を配合することが望ましく。これによりガラス成分の軟化性を高めて焼結密度をさらに高くでき、低温焼成磁器の強度をさらに向上できる。
【0030】
添加成分の配合量は、ガラス成分全量に対して、14〜35モル%であることが望ましく、ガラス成分を低誘電率かつ高熱膨張化するという理由から、特に、16〜32モル%が望ましい。
【0031】
そして、本発明の低温焼成磁器では、低誘電率かつ高熱膨張性を有するとともに、機械的強度並びに絶縁性をより向上させるという点で、フォルステライト(2MgO・SiO2)、スピネル(MgO・Al2O3)、ウォラストナイト(CaO・SiO2)、モンティセラナイト(CaO・MgO・SiO2)、ジオプサイド(CaO・MgO・2SiO2)、メルビナイト(3CaO・MgO・2SiO2)、アケルマイト(2CaO・MgO・2SiO2)、マグネシア(MgO)、アルミナ(Al2O3)、アノーサイト(CaO・Al2O3・2SiO2)、エンスタタイト(MgO・SiO2)、ホウ酸マグネシウム(2MgO・B2O3)、B2O3・2MgO・2SiO2、の群から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。
【0032】
こうして、かかる構成によって、本発明の低温焼成磁器は、比誘電率が5未満、特に、4.7以下、熱膨張係数を8〜15×10−6/℃、特に、8.7〜11.7×10−6/℃とすることによって、伝送特性や実装信頼性に優れた配線基板を得ることができる。
【0033】
次に、本発明の低温焼成磁器を作製するための方法について説明する。
【0034】
まず、出発原料として、上記のガラス成分となるガラス粉末と、フィラー成分となるフィラー粉末とを、焼成温度や熱膨張係数等の目的に応じて、前述した所定の比率で混合する。
【0035】
本発明では、かかる低温焼成磁器中の気孔の最大径を小さくし焼結性を高めるという理由から、この磁器にかかるガラス粉末の平均粒径は0.1〜5μm、特に、1〜3μm、一方、フィラー粉末の平均粒径は0.1〜5μm、特に、1〜3μmであることが望ましい。
【0036】
本発明において用いられる上記ガラス粉末は、フィラー粉末であるクオーツ無添加では、焼成収縮開始温度は800℃以下で、900℃以上では溶融してしまい、メタライズ配線層等を配設することができない。しかし、クオーツを混合することにより焼成過程において結晶の析出が起こり、クオーツを液相焼結させるための液相を適切な温度で形成させることができる。また、成形体全体の収縮開始温度を上昇させることができるため、かかるフィラー粉末の含有量の調整により、用いる金属の種類によりメタライズ配線層との同時焼成条件のマッチングを図ることができる。
【0037】
また、クオーツの配合量は、上記ガラス粉末の屈伏点に応じ、その配合量を適宜調整することが望ましい。屈伏点とは、ガラスが急激に溶融して最も大きな体積変化を示す温度範囲の中心の温度をいい、通常、ガラス転移点よりも30〜60℃高い温度である。即ち、ガラス粉末の屈伏点が550〜700℃と低い場合には、低温での焼結性が高まるため、クオーツ量は40〜70体積%と比較的多く配合できる。これに対して、ガラス粉末の屈伏点が700〜850℃と高い場合には、焼結性が低下するためクオーツ量は20〜50体積%と比較的少量配合することが望ましい。ここで用いるクオーツはフィラー粉末の原料コストを低減するという理由から中実球であることが望ましい。
【0038】
また、本発明の低温焼成磁器は、着色成分として、酸化クロム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化鉄および酸化銅の群から選ばれる少なくとも1種を、上記のガラス粉末とクオーツとの混合物100体積%に対して1体積%以下の割合で配合しても良い。
【0039】
本発明によれば、上記のように配合されたガラス粉末とフィラー粉末との混合物に、適当な成形の有機バインダを添加した後、所望の成形手段、例えば、ドクターブレード、圧延法、金型プレス等により所定の形状に成形後、焼成する。
【0040】
焼成にあたっては、まず、成形のために配合した有機バインダ成分を除去する。有機バインダの除去は、700℃前後の大気雰囲気中または窒素雰囲気中で行われる。この時、成形体の収縮開始温度は700〜850℃程度であることが望ましく、かかる収縮開始温度がこれより低いと有機バインダの除去が困難となるため、成形体中のガラス成分の特性、特に、屈伏点を前述したように制御することが望ましい。
【0041】
焼成は、850℃〜1050℃の酸化性雰囲気中または非酸化性雰囲気中で行われ、これにより気孔の最大径が10μm以下、特に、5μm以下に制御できるとともに、開気孔率が1%以下、特に0.7%以下にまで緻密化される。この時の焼成温度が850℃より低いと緻密化することが難しく、1050℃を越えると後述する配線基板を作製する場合に、銅や銀などのメタライズ配線層との同時焼成が難しくなる。
【0042】
図1は、本発明の低温焼成磁器を用いて形成した配線基板とその実装構造を示す概略断面図である。配線基板としてはBGA型の半導体素子収納用パッケージを一実施例とした。このパッケージは、絶縁基板の表面あるいは内部にメタライズ配線層が配設された、いわゆる配線基板を基礎的構造とするものであり、Aは半導体素子収納用パッケージ、Bは外部回路基板をそれぞれ示す。
【0043】
半導体素子収納用パッケージAは、絶縁基板1と蓋体3とメタライズ配線層5とビアホール導体と接続端子15により構成され、絶縁基板1及び蓋体3は半導体素子9を内部に気密に収容するためのキャビティ11を形成する。そして、キャビティ11内にて半導体素子9は、ガラス、樹脂等の接着材を介して絶縁基板1に接着固定される。
【0044】
また、絶縁基板1は、本発明の低温焼成磁器の一つである低誘電率の絶縁層13を複数積層して形成されている。絶縁基板1の表面および内部には、メタライズ配線層5が配設されており、半導体素子9と絶縁基板1の下面に形成された接続端子15と電気的に接続するように配設されている。図1のパッケージによれば、接続端子15は、接続パッド15aを介して高融点の半田(錫−鉛合金)から成るボール状端子15bがロウ材により取着されている。
【0045】
一方、外部回路基板Bは、絶縁体21と配線導体23により構成されており、絶縁体21は、少なくとも有機樹脂を含む絶縁材料からなり、具体的には、ガラス−エポキシ系複合材料などのように40〜400℃の熱膨張係数が12〜16×10−6/℃の特性を有し、一般にはプリント基板等が用いられる。また、この基板Bの表面に形成される配線導体23は、絶縁体21との熱膨張係数の整合性と、良電気伝導性の点で、通常、Cu、Au、Ag、Al、Ni、Pb−Snなどの金属導体からなる。
【0046】
半導体素子収納用パッケージAを外部回路基板Bに実装するには、半導体素子収納用パッケージAの絶縁基板1下面のボール状端子15bを外部回路基板Bの配線導体23上に載置当接させ、しかる後、低融点の半田等のロウ材により約250〜400℃の温度で半田を溶融させて配線導体23とボール状端子15bとの接合することにより、実装される。この時、配線導体23の表面にはボール状端子15bとのロウ材による接続を容易に行うために予めロウ材が被着形成される。
【0047】
本発明の低温焼成磁器は、前述した通り、低誘電率で、高い熱膨張係数を有し、強度劣化が無く、絶縁抵抗の劣化も無いことから、かかる焼結体を半導体素子収納用パッケージAなどの配線基板における絶縁基板1として用いることによって、有機樹脂を含有する絶縁材料を有するプリント基板などの外部回路基板Bに対して、配線基板を接続端子15を介して実装した場合においても、熱膨張特性を近似させることができることから長期信頼性にわたり安定した実装状態を維持することができる。
【0048】
なお、上記のような配線基板を作製する場合には、前述した低温焼成磁器の製造方法において、ガラス成分とフィラー成分とからなる混合粉末を用いて、ドクターブレード法等によってシート状成形体を作製した後、そのシート状成形体に対して、Cu、Ag、Ni、Pd、Auのうちの1種以上からなる金属粉末に有機バインダ、可塑剤、溶剤を添加混合して得た金属ペーストを前記シート状成形体表面に周知のスクリーン印刷法により所定パターンに印刷塗布する。
【0049】
また、場合によっては、前記グリーンシートに適当な打ち抜き加工してスルーホールを形成し、このホール内にもメタライズペーストを充填する。そして、これらのグリーンシートを複数枚積層圧着した後、以下の方法で焼成する。
【0050】
焼成にあたっては、まず、成形のために配合した有機バインダ成分を除去する。有機バインダの除去は、700℃前後の大気雰囲気中で行われるが、メタライズ配線層5としてCuを用いる場合には、100〜700℃の水蒸気を含有する窒素雰囲気中で行われる。この時、成形体の収縮開始温度は700〜850℃程度であることが望ましく、かかる収縮開始温度がこれより低いと有機バインダの除去が困難となるため、成形体中のガラスの特性、特に屈伏点を前述したように制御することが必要となる。
【0051】
焼成は、850℃〜1050℃の酸化性雰囲気中で行われ、これにより相対密度90%以上まで緻密化される。この時の焼成温度が850℃より低いと緻密化することができず、1050℃を越えるとメタライズ配線層5との同時焼成が難しくなる。但し、メタライズ配線層5としてCuを用いる場合には、非酸化性雰囲気中で行われる。
【0052】
本発明に係る他の配線基板として、図2に示すように、配線基板を構成する低誘電率層間に高誘電率層を内層したものが挙げられる。尚,図2の配線基板は図1の配線基板を構成する絶縁基板1に高誘電率層を介装させたものであり、高誘電率層を除いて他の部材は図1と同じものである。
【0053】
この配線基板は、本発明の低温焼成磁器からなる低誘電率の絶縁層(低誘電率層)31aと、高誘電率の絶縁層(高誘電率層)31bとにより構成される。そのため、かかる高誘電率層31bの上下に銅等のメタライズ配線層33を接続することにより、このメタライズ配線層33間と接続することにより、メタライズ配線層33間で所定の静電容量を取り出すことができる。
【0054】
このような高誘電率層31bとしては、40〜400℃における線熱膨張係数が8〜15×10−6/℃、かつ、1GHzにおける比誘電率が10以上の低温焼成磁器からなることが望ましい。そして、かかる高誘電率層31bとなる低温焼成磁器は、本発明の低誘電率、高熱膨張の低温焼成磁器の作製に用いるガラス成分とフィラー成分を除く以外は全く同様にして形成できる。そのため、上記と全く同様の方法により成形、打ち抜き、メタライズ配線層33となる配線パターンの印刷などを行った高誘電率、高熱膨張の成分を含有するグリーンシートを作製し、本発明の上記の低誘電率、高熱膨張の成分を含むグリーンシートと積層した後、この積層体をメタライズパターンと同時焼成することによりコンデンサを内蔵する配線基板を得ることができる。
【0055】
尚、高誘電率、高熱膨張の低温焼成磁器は、ガラス成分としてアルカリ土類金属、希土類、Al、Ti、Zr等の金属酸化物を含有することが望ましく、また、セラミックフィラーとしては、40〜400℃における線熱膨張係数が8×10−6/℃以上、且つ、1GHzにおける比誘電率が40以上の金属酸化物が望ましく、例えば、TiO2(比誘電率:80、熱膨張係数:9×10−6/℃)、CaTiO3(比誘電率:180、熱膨張係数:13×10−6/℃)、SrTiO3(比誘電率:300、熱膨張係数:9×10−6/℃)、BaTiO3(比誘電率:13000、熱膨張係数:14×10−6/℃)、La2Ti2O7(比誘電率:45、熱膨張係数:15×10−6/℃)等のチタン酸化合物の群から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。
【0056】
かかる金属酸化物が焼成後において上記の高誘電率、高熱膨張の低温焼成磁器の結晶相として含まれるようになり、こうして、比誘電率が10以上、40〜400℃における熱膨張係数が8〜15×10−6/℃の低温焼成磁器を形成できる。
【0057】
本発明の配線基板では、同時に積層される前記低誘電率層31aと高誘電率層31bとの応力を低減するという理由から、40〜400℃における熱膨張係数が1×10−6/℃以下であることが望ましく、特に、0.5×10−6/℃以下が望ましい。
【0058】
本発明の高誘電率層を内層した配線基板は、この高誘電率層31bが高い熱膨張係数を有することからプリント基板などへの実装信頼性を高めることができ、また、コンデンサを内蔵することにより配線基板の小型化を図ることができる。
【0059】
【実施例】
以下、本発明の低温焼成磁器およびそれを用いた配線基板について実施例に基づき具体的に説明する。まず、ガラス粉末として、表1に示す5種類のガラス粉末と、クオーツを用意し、表2に示す割合になるように秤量混合した。ガラス粉末の平均粒径は3μm、クオーツの平均粒径は1μmとした。
【0060】
次に、この混合物を粉砕後、有機バインダおよび溶剤を添加して、十分混合後スラリーを調製し、ドクターブレード法により厚み100μmと300μmのグリーンシートを作製した。
【0061】
次に、得られた厚み300μmグリーンシートを8枚積層積層圧着した後、50mm×50mmのサンプルを作製し、700℃の水蒸気を含む窒素雰囲気中にて脱バインダ処理後、表2に示す、焼成温度×1時間の窒素雰囲気中にて焼成を行い低温焼成磁器を作製した。
【0062】
次に、上記のようにして得られた低温焼成磁器に対して、40〜400℃における熱膨張係数と1GHzにおける比誘電率を測定した。また、この低温焼成磁器の一部を切り出し、断面研磨を行った後、電子顕微鏡観察を行い、この電子顕微鏡写真を画像解析することにより気孔の最大径を測定した。この測定は低温焼成磁器の任意の部分を50μm×50μmの範囲において10点測定してその最大径を求めた。又、上記のグリーンシートを用いて機械的強度評価用サンプルを切り出し評価を行った。機械的強度評価用サンプルは3点曲げ試験(JIS1601)にて行った。さらに、上記の厚み100μmのグリーンシートの両面に直径10mmのパターンを形成し、上記の基板と同様の条件で焼成した後に絶縁破壊電圧の評価を行った。これらの結果を表2に示した。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表2の結果より明らかなように、本発明で規定したガラス成分およびフィラー成分を有する試料No.3〜10、12〜18では、気孔の最大径が11μm、比誘電率が5未満、40℃〜400℃における熱膨張係数が8〜15ppm/℃、機械的強度が200MPa以上、絶縁破壊電圧が400V/mm以上であった。特に、ガラス成分として、SiO2を41〜51モル%、B2O3を27〜39モル%とし、そのガラス成分量を40〜65体積%、残部をフィラー成分量とした試料No.5〜9、13〜17では、気孔の最大径が10μm、比誘電率が4.7以下、40℃〜400℃における熱膨張係数が8.7〜11.7×10−6/℃、機械的強度が210MPa以上、絶縁破壊電圧が410V/mm以上のさらに改善できた。
【0066】
一方、本発明の範囲外の試料では、気孔の最大径が大きく、比誘電率が5以上、熱膨張係数が8×10−6/℃未満のいずれかで、機械的強度や絶縁破壊電圧も低かった。
実施例2.
また、実施例1おける組成物を用いて、ドクターブレード法により厚み500μmのグリーンシートを作製し、このシート表面に銅メタライズペーストをスクリーン印刷法に基づき塗布した。また、グリーンシートの所定箇所にビアホールを形成しその中にも銅メタライズペーストを充填した。そして、メタライズペーストが塗布されたグリーンシートをスルーホール間で位置合わせしながら6枚積層し圧着した。この積層体を700℃の水蒸気を含有する窒素雰囲気中にて脱バインダー処理後、表2に示す焼成温度×1時間の窒素雰囲気中にて、メタライズ配線層と絶縁基板とを同時焼成し配線基板を作製した。
【0067】
次に、配線基板の下面に設けられた電極パッドに図1に示すように鉛90重量%−錫10重量%からなるボール状半田を低融点半田(鉛37重量%−錫63重量%)により取着した。なお、接続端子は、1cm2当たり30端子の密度で配線基板の下面全体に形成した。
【0068】
そして、この配線基板を、ガラス−エポキシ基板から成る40〜800℃における熱膨張係数が13×10−6/℃の絶縁体の表面に銅箔から成る配線導体が形成されたプリント基板表面に実装した。実装は、プリント基板の上の配線導体と配線基板のボール状端子とを位置合わせし、低融点半田によって接続し実装した。次に、パッケージ用の配線基板をプリント基板表面に実装したものを大気の雰囲気にて−40℃と125℃の各温度に制御した恒温槽に試験サンプルを15分/15分の保持を1サイクルとして最高1000サイクル繰り返した。そして、サイクル毎にプリント基板の配線導体と配線基板との電気抵抗を測定し電気抵抗に変化が現れるまでのサイクル数を測定し、1000サイクルまでの評価を行った。本発明の低温焼成磁器を用いたものは、電気抵抗の変化も無く信頼性に優れていた。
実施例3
また、実施例1記載のガラスA50体積%に対して、フィラーとしてCaTiO3を7.5体積%、La2Ti2O7を42.5体積%添加してなる組成物(40〜400℃における線熱膨張係数:9.5ppm/℃、1GHzにおける比誘電率:17)を用意し、実施例1.と全く同様な方法でグリーンシートを作製した。
【0069】
次に、上記グリーンシートの上下に、実施例1における表1の各組成物からなるグリーンシートを1枚ずつ、計3枚を積層圧着した後、50mm×50mmのサンプルを作製し、700℃の水蒸気を含有する窒素雰囲気中にて脱バインダ処理後、表2に示す焼成温度×1時間の窒素雰囲気中にて焼成を行った。
【0070】
本発明の低温焼成磁器を用いたものはクラックの無い緻密体が得られていた。
【0071】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の低温焼成磁器は、ガラス成分中にSiO2を25〜60モル%、B2O3を25〜50モル%含有しかつ前記ガラス成分中に含まれるSiO2およびB2O3の合量が65モル%以上であるとともに、前記フィラー成分としてクオーツを含有させることにより、磁器の内部に気孔を形成しなくても、低誘電率でかつ高熱膨張性を有する磁器を同時に形成でき、こうして、十分な機械的強度並びに高い絶縁破壊電圧を有する磁器を低コストで形成することができる。
【0072】
また、これを配線基板として用いることによって信号伝送特性を向上させるとともに、プリント基板などの外部回路基板に対して接続端子を介して実装した構造においても長期接続信頼性を有する実装構造を提供できる。
【0073】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の低温焼成磁器を用いて形成した配線基板とその実装構造を示す概略断面図である。
【0074】
【図2】本発明の高誘電率層を内層した配線基板を示す概略断面図である。
【0075】
【符号の説明】
1 絶縁基板
5 メタライズ配線層
13 絶縁層
31a 低誘電率の絶縁層
31b 高誘電率の絶縁層
Claims (7)
- 少なくともSiO2とB2O3を含有するガラス成分と、フィラー成分とからなる低温焼成磁器であって、前記ガラス成分が30〜80体積%、前記フィラー成分が20〜70体積%の割合で含まれてなり、かつ、前記ガラス成分中にSiO2を25〜60モル%、B2O3を25〜50モル%含有し、かつ、前記ガラス成分中に含まれるSiO2およびB2O3の合量が65モル%以上であるとともに、前記フィラー成分としてクオーツを含有することを特徴とする低温焼成磁器。
- 前記ガラス成分のガラス転移点が550〜750℃であることを特徴とする請求項1に記載の低温焼成磁器。
- 内部に形成されている気孔の最大径が10μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の低温焼成磁器。
- 1GHzでの比誘電率が5未満、40〜400℃における熱膨張係数が8〜15×10−6/℃であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか記載の低温焼成磁器。
- 複数の絶縁層により構成された絶縁基板の表面および/または内部に、メタライズ配線層を具備してなる配線基板であって、前記絶縁層が、請求項1乃至4のうちいずれか記載の低温焼成磁器からなることを特徴とする配線基板。
- 前記絶縁層間に、1GHzでの比誘電率が10以上、40〜400℃における熱膨張係数が8〜15×10−6/℃である高誘電率の絶縁層を介装してなることを特徴とする請求項5に記載の配線基板。
- 前記絶縁層と前記高誘電率の絶縁層との40〜400℃における熱膨張係数差が1×10−6/℃以下であることを特徴とする請求項5または6に記載の配線基板。
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JP2008109053A (ja) * | 2006-10-27 | 2008-05-08 | Kyocera Corp | ガラスセラミック多層回路基板 |
JP2010006690A (ja) * | 2008-06-26 | 2010-01-14 | Korea Inst Of Science & Technology | 低温焼成用低誘電率誘電体セラミック組成物 |
JP2017186223A (ja) * | 2017-01-19 | 2017-10-12 | Tdk株式会社 | 誘電体組成物、誘電体磁器および積層複合電子部品 |
-
2003
- 2003-01-29 JP JP2003020872A patent/JP2004231454A/ja active Pending
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