JP2004228277A - 光半導体装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の、基板にレーザダイオードと導波路を集積した光半導体装置においては、導波路領域33のバンドギャップが大きくなるのはよいが、導波路領域33の膜厚が薄くなるので、光閉じ込め効果が弱くなり、導波路損失が大きくなる。しかし従来の製造方法ではバンドギャップが大きく、膜厚が厚くなるようにできない。
【解決手段】導波路領域14の成長阻止マスク13A、13Bの下にFe:InP膜11を入れることにより、MOVPE時の導波路領域14のn−InP基板10の表面温度Tを局所的に高くすることができる。成膜温度が高くなるのでn−InGaAsP光ガイド層16のAs/PがPリッチになる。InGaAsPがPリッチになるとバンドギャップが大きくなる。一方Ga/Inの比は変化しないのでn−InGaAsP光ガイド層16の膜厚は変化しない。
【選択図】 図3
【解決手段】導波路領域14の成長阻止マスク13A、13Bの下にFe:InP膜11を入れることにより、MOVPE時の導波路領域14のn−InP基板10の表面温度Tを局所的に高くすることができる。成膜温度が高くなるのでn−InGaAsP光ガイド層16のAs/PがPリッチになる。InGaAsPがPリッチになるとバンドギャップが大きくなる。一方Ga/Inの比は変化しないのでn−InGaAsP光ガイド層16の膜厚は変化しない。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光半導体装置、特にモノリシック基板にレーザダイオードと導波路を集積した光半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光半導体装置の製造方法は、例えば特開平9−92921号公報に説明がある。同公報をもとにして従来の光半導体装置の製造方法を説明する。
【0003】
図7(a)はn−InP基板30であり、表面の一部に回折格子31が形成してある。この回折格子31は発振したレーザの波長を狭い範囲に絞るためのものである。
【0004】
次に図7(b)のようにn−InP基板30の上面に成長阻止マスク32A、32Bを形成する。成長阻止マスク32A、32Bは左右対称の2枚のSiO2膜で、回折格子領域31(レーザダイオード領域31)では幅が広く、回折格子のない領域33(導波路領域33)では幅が狭い。2枚の成長阻止マスク32A、32Bの間に細い隙間34があって、その隙間34ではn−InP基板30が露出している。これから述べるレーザダイオードと導波路はこの隙間34に形成する。したがって重要なのはこの隙間34の部分であり、成長阻止マスク32A、32Bの外側の部分は重要でない。
【0005】
まずレーザダイオード領域31の膜形成方法を説明する。レーザダイオード領域31は図7(b)でA−A断面図にあたる部分である。図8(a)は成長阻止マスク32A、32Bを形成したn−InP基板(図7(b))のA−A断面図である。以後成長阻止マスク32A、32Bの隙間34にレーザダイオードを形成するので、以後の図8(b)、図8(c)では図8(a)の点線の円の中を拡大して示す。
【0006】
まず図8(b)のように成長阻止マスク32A、32Bの隙間34に、n−InGaAsP光ガイド層35、n−InPスペーサ層36、MQW(多重量子井戸)発光層37、p−InPクラッド層38を順次形成する。
【0007】
次に図8(c)のように成長阻止マスク32A、32Bの隙間34を広げ、先に形成した各層の上にp−InP埋め込み層39、絶縁層40、p(+)−InGaAsコンタクト層41、p側Ti−Au電極42を順次形成する。絶縁層40はいったん形成したあとp(+)−InGaAsコンタクト層41を形成するところだけ除去する。またn−InP基板30の下面にもn側Ti−Au電極43を形成する。以上でレーザダイオード領域31の層形成は完了する。
【0008】
次に導波路領域33の形成方法を説明する。導波路領域33は図7(b)のB−B断面図にあたる部分である。図9(a)は図7(b)の、成長阻止マスク32A、32Bを形成したn−InP基板30のB−B断面図である。以後成長阻止マスク32A、32Bの隙間34に導波路を形成するので、以後の図9(b)、図9(c)では図9(a)の点線の円の中を拡大して示す。
【0009】
まず図9(b)のように成長阻止マスク32A、32Bの隙間34に、n−InGaAsP光ガイド層35、n−InPスペーサ層36、MQW(多重量子井戸)発光層37、p−InPクラッド層38を順次形成する。これらの層はレーザダイオード領域31と層構成が共通なので同時に形成できる。しかしレーザダイオード領域31に比べ成長阻止マスク32A、32Bの幅が狭いので、レーザダイオード領域31と比べ膜厚が薄くなる。またIn比率が低くなり、圧縮歪みが少なくなるのでバンドギャップが大きくなる。
【0010】
次に図9(c)のように成長阻止マスク32A、32Bの隙間34を広げ、先に形成した各層の上にp−InP埋め込み層39、絶縁層40を順次形成する。導波路領域33にはp(+)−InGaAsコンタクト層、Ti−Au電極は形成しない。以上で導波路領域33の層形成は完了する。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−92921号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来のモノリシック基板にレーザダイオードと導波路を集積した光半導体装置において、導波路領域33のバンドギャップが大きくなるのは好都合である。しかし導波路領域33の膜厚が薄くなるのは、光閉じ込め効果が弱くなり、導波路損失が大きくなるので不都合である。導波路領域33の膜厚を厚くするには成長阻止マスク32A、32Bの幅を広くすればよいが、そうすると今度はバンドギャップが小さくなるので、また都合が悪い。
【0013】
導波路領域33の理想はバンドギャップが大きく膜厚が厚いことだが、従来の製造方法ではバンドギャップと膜厚に負の相関関係があるため、バンドギャップを大きく、同時に膜厚を厚くすることはできない。レーザダイオード領域31と導波路領域33をそれぞれに適した条件で成膜すればできるが、工程数が2倍以上に増えるので現実的でない。
【0014】
本発明ではバンドギャップと膜厚に相関関係が無く、バンドギャップと膜厚が独立に決められる製造方法を提供する。これによりバンドギャップが大きく、膜厚が厚い導波路領域が形成できる。このような導波路は光閉じ込め効果が強くなるので導波路損失が小さい。
【0015】
【課題を解決するための手段】
従来は導波路領域の成長阻止マスクの幅はレーザダイオード領域より狭くしなければならなかったが、本発明ではレーザダイオード領域と同じ幅にできる(必要に応じて狭くしても広くしてもよい)。成長阻止マスクの幅が同じであると成長した膜の厚さが同じになる。その代わり本発明ではバンドギャップを変化させるため導波路領域の成長阻止マスクの下にFe:InP膜(FeドープInP膜)を入れる。次にFe:InP膜の機能を述べる。なお、m×10のn乗をmEnと表わす。
【0016】
Fe:InP膜はキャリア濃度が1.0E13[cm−3]以下の高抵抗半導体であるため、基板加熱時に発生する輻射光を吸収しにくい。そのため輻射光はFe:InP膜表面と、その下のn−InP基板表面で多重反射し干渉を起こす。このためFe:InP膜の膜厚に応じてn−InP基板表面に到達する輻射光が強くなったり弱くなったりする。したがってFe:InP膜をn−InP基板の上に形成すると、n−InP基板の表面温度が変化する。
【0017】
詳しくは実施例の説明箇所で述べるが、Fe:InP膜の膜厚が厚くなるにしたがい、n−InP基板の表面温度は上昇・降下を繰り返し、最後にFe:InP膜の無い時の温度に収束する。n−InP基板の表面温度が最も高くなるのは、Fe:InP膜の膜厚tが約0.3μmのときで、導波路領域のn−InP基板の表面温度はレーザダイオード領域より約40℃高くなる。これにより導波路領域ではレーザダイオード領域よりも約40℃高い温度で成膜できる。
【0018】
InGaAsPをMOVPE(有機金属気相成長)させるとき基板温度が高くなるとAs/PがPリッチになる。InGaAsPがPリッチになるとバンドギャップが大きくなる。従来は導波路領域の成長阻止マスクの幅を狭くしてPリッチにし、バンドギャップを大きくするようにしていたが、本発明のように基板温度を局所的に導波路領域だけ高くできれば、成長阻止マスクの幅を狭くする必要がない。
【0019】
一方InGaAsPをMOVPEさせるとき基板温度が高くなってもGa/Inの比は変化しない。これによりn−InGaAsP光ガイド層の膜厚は変化しない。したがってn−InGaAsP光ガイド層の膜厚は基板温度によらず成長阻止マスクの幅で決まる。成長阻止マスクの幅がレーザダイオード領域と導波路領域で同じならば、n−InGaAsP光ガイド層の膜厚はレーザダイオード領域と導波路領域で同じになる。(成長阻止マスクの幅が広いほど膜厚が厚くなる。)
以上説明したように本発明の製造方法ではn−InGaAsP光ガイド層のバンドギャップはFe:InP膜の膜厚でコントロールでき、n−InGaAsP光ガイド層の膜厚は成長阻止マスクの幅でコントロールできる。したがってn−InGaAsP光ガイド層のバンドギャップと膜厚が独立に決められる。これによりバンドギャップが大きく、しかも膜厚が厚い導波路領域が形成できる。このような導波路は光閉じ込め効果が強くなるので導波路損失が小さい。
【0020】
さらに各層の膜厚をレーザダイオード領域よりも導波路領域の方で厚くしたいときは、導波路領域の成長阻止マスクの幅をレーザダイオード領域より広くすれば良い。このようなことは従来は不可能であったが、本発明では容易に実現できる。
【0021】
請求項1記載の発明は、基板上の成長阻止マスクと成長阻止マスクの隙間に選択MOVPE法により、少なくとも光ガイド層、発光層、クラッド層を積層してレーザダイオード領域と導波路領域を一括形成した光半導体装置において、少なくとも前記の光ガイド層の膜厚が前記のレーザダイオード領域と前記の導波路領域でほぼ等しく、少なくとも前記の光ガイド層のバンドギャップが前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で大きいことを特徴とする光半導体装置である。
【0022】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の光半導体装置において、前記の導波路領域の成長阻止マスクの下地にFe:InP膜があり、前記のレーザダイオード領域の成長阻止マスクの下地には前記のFe:InP膜が無いことを特徴とする光半導体装置である。
【0023】
請求項3記載の発明は、基板上の成長阻止マスクと成長阻止マスクの隙間に選択MOVPE法により、少なくとも光ガイド層、発光層、クラッド層を積層してレーザダイオード領域と導波路領域を一括形成する光半導体装置の製造方法において、前記の導波路領域の成長阻止マスクの下地にFe:InP膜があり、前記のレーザダイオード領域の成長阻止マスクの下地には前記のFe:InP膜がなく、成長阻止マスクの幅を前記の導波路領域と前記のレーザダイオード領域でほぼ等しくすることにより、少なくとも前記の光ガイド層の膜厚は前記のレーザダイオード領域と前記の導波路領域でほぼ等しくし、前記のFe:InP膜の効果により、少なくとも前記の光ガイド層を成膜するときは前記の基板の温度を前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で高く保ち、それにより少なくとも前記の光ガイド層のバンドギャップを前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で大きくすることを特徴とする光半導体装置の製造方法である。
【0024】
請求項4記載の発明は、基板上の成長阻止マスクの隙間に選択MOVPE法により、少なくとも光ガイド層、発光層、クラッド層を積層してレーザダイオード領域と導波路領域を一括形成する光半導体装置の製造方法において、前記の導波路領域の成長阻止マスクの下地にFe:InP膜があり、前記のレーザダイオード領域の成長阻止マスクの下地には前記のFe:InP膜がなく、成長阻止マスクの幅を前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で広くすることにより、少なくとも前記の光ガイド層の膜厚は前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で厚くなるようにし、前記のFe:InP膜の効果により、少なくとも前記の光ガイド層を成膜するときは前記の基板の温度を前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で高く保ち、それにより少なくとも前記の光ガイド層のバンドギャップを前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で大きくすることを特徴とする光半導体装置の製造方法である。
【0025】
請求項5記載の発明は、請求項3〜4記載の光半導体装置の製造方法において、前記の導波路領域の前記の光ガイド層のバンドギャップはFe:InP膜の膜厚でコントロールし、前記の導波路領域の前記の光ガイド層の膜厚は成長阻止マスクの幅でコントロールすることを特徴とする光半導体装置の製造方法である。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を説明する。図1(a)はn−InP基板10の表面にFe:InP膜11を形成した状態を示す。Feのドープ量は1.0E16[cm−3]〜1.0E17[cm−3]が適当である。このドープ量でFe:InP膜のキャリア濃度は1.0E14[cm−3]以下に下がる。
【0027】
次に図1(b)のようにFe:InP膜11の一部を除去する。
【0028】
次に図2(c)のようにFe:InP膜11を除去したところに回折格子12を形成する。この回折格子12は発振したレーザの波長を狭い範囲に絞るためのものである。
【0029】
次に図2(d)のようにFe:InP膜11と回折格子12の上にSiO2膜13を形成する。これによりFe:InP膜11と回折格子12はSiO2膜13の下に隠れる。
【0030】
次に図3(e)のようにSiO2膜13を部分的に除去し、残ったSiO2膜13で2枚の成長阻止マスク13A、13Bを形成する。従来と違い、回折格子12の領域(すなわちレーザダイオード領域12)と回折格子12の無い領域14(すなわち導波路領域14)で、成長阻止マスク13A、13Bの幅が同じである。
【0031】
次に図3(f)のように成長阻止マスク13A、13Bから露出しているFe:InP膜11を除去する。Fe:InP膜11も成長阻止マスク13A、13Bと同じ幅になる。
【0032】
成長阻止マスク13A、13Bの間には細い隙間15(幅1.5μm)があって、その隙間15では、n−InP基板10が露出している。レーザダイオードと導波路はこの隙間15に形成する。したがって重要なのはこの隙間15の部分であり、成長阻止マスク13A、13Bの外側の部分は重要でない。
【0033】
まずレーザダイオード領域12の形成方法を説明する。レーザダイオード領域12は図3(f)でA−A断面図にあたる部分である。図4(a)は図3(f)のn−InP基板10のA−A断面図である。以後成長阻止マスク13A、13Bの隙間15にレーザダイオードを形成するので、以後の図4(b)、図4(c)では図4(a)の点線の円の中を拡大して示す。
【0034】
まず図4(b)のように成長阻止マスク13A、13Bの隙間15に、n−InGaAsP光ガイド層16、n−InPスペーサ層17、MQW(多重量子井戸)発光層18、p−InPクラッド層19を順次形成する。ここで用いる原料は、III族原料としてトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を、V族原料としてアルシン(AsH3)、フォスフィン(PH3)を、ドーパントとしてジメチルジンク(DMZn)、ジシラン(Si2H6)を用いる。形成条件は、成長温度約610℃、成長圧力約100hPaである。
【0035】
次に図4(c)のように先に形成した各層の側面・上面にp−InP層20、n−InP層21、p−InP層22、p(+)−InGaAsコンタクト層23、SiO2絶縁層24、p側Ti−Au電極25を順次形成する。またn−InP基板10の下面にもn側Ti−Au電極26を形成する。以上でレーザダイオード領域12の層形成は完了する。
【0036】
次に導波路領域14の形成方法を説明する。導波路領域14は図3(f)でB−B断面図にあたる部分である。図5(a)は図3(f)のn−InP基板のB−B断面図である。以後Fe:InP膜11および成長阻止マスク13A、13Bの隙間15に導波路を形成するので、以後の図5(b)、図5(c)では図5(a)の点線の円の中を拡大して示す。
【0037】
まず図5(b)のように成長阻止マスク13A、13Bの隙間15に、n−InGaAsP光ガイド層16、n−InPスペーサ層17、MQW(多重量子井戸)発光層18、p−InPクラッド層19を順次形成する。これらの層はレーザダイオード領域12(図4(b))と層構造が共通であり、同時に形成できる。
【0038】
従来は導波路領域14の成長阻止マスク13A、13Bの幅はレーザダイオード領域12より狭かったが、本発明ではレーザダイオード領域12と同じである。その代わり本発明では導波路領域14の成長阻止マスク13A、13Bの下にFe:InP膜11がある。これが本発明の特徴である。ここでFe:InP膜11の機能を述べる。
【0039】
Fe:InP膜11をn−InP基板10の上に形成すると、n−InP基板10の表面温度Tが変化する。図6はその様子を示すグラフである。図6のグラフの横軸はFe:InP膜11の膜厚t(μm)、縦軸はn−InP基板10の表面温度T(℃)である。図6から分かるようにFe:InP膜11が無いとき(t=0μm)、n−InP基板10の表面温度Tは約610℃である。Fe:InP膜11の膜厚tが厚くなるにしたがい、n−InP基板10の表面温度Tは上昇・下降を繰り返し、最後にFe:InP膜11の無い時の温度に収束する。n−InP基板10の表面温度Tが最も高くなるのは、Fe:InP膜11の膜厚tが約0.3μmのときで、約650℃になる。つまりFe:InP膜11の膜厚を0.3μmにすると、導波路領域14のn−InP基板10の表面温度Tはレーザダイオード領域12より約40℃高くなる。
【0040】
このため先に述べたn−InGaAsP光ガイド層16、n−InPスペーサ層17、MQW(多重量子井戸)発光層18、p−InPクラッド層19を、導波路領域14ではレーザダイオード領域12よりも約40℃高い温度で成膜できる。この中で重要なのはn−InGaAsP光ガイド層16とMQW(多重量子井戸)発光層18である。MQW(多重量子井戸)発光層18はInGaAsP薄膜(井戸層)とInGaAsP薄膜(バリア層)を交互に10層程度積み重ねた多層膜でできている。一般にInGaAsPをMOVPE(有機金属気相成長)させるとき基板温度Tが高くなるとAs/Pの比が小さくなる。つまりPリッチになる。InGaAsPがPリッチになるとバンドギャップが大きくなる。従来は導波路領域の成長阻止マスクの幅を狭くしてバンドギャップを大きくするようにしていたが、本発明のように基板温度Tを局所的に導波路領域14だけ高くできれば、成長阻止マスク13A、13Bの幅を狭くする必要がない。
【0041】
一方InGaAsPをMOVPEさせるとき基板温度Tが高くなってもGa/Inの比は変化しない。これによりn−InGaAsP光ガイド層16の膜厚は変化しない。したがってn−InGaAsP光ガイド層16の膜厚は成長阻止マスク13A、13Bの幅で決まる。成長阻止マスク13A、13Bの幅がレーザダイオード領域12と導波路領域14で同じならば、n−InGaAsP光ガイド層16の膜厚はレーザダイオード領域12と導波路領域14で同じになる。
【0042】
以上説明したように本発明の製造方法ではn−InGaAsP光ガイド層16のバンドギャップはFe:InP膜11の膜厚tでコントロールし、n−InGaAsP光ガイド層16の膜厚は成長阻止マスク13A、13Bの幅でコントロールする。Fe:InP膜11の膜厚tと成長阻止マスク13A、13Bの幅は独立して決められるから、n−InGaAsP光ガイド層16のバンドギャップと膜厚が独立に決められることになる。これによりバンドギャップが大きく、しかも膜厚が厚い導波路領域14が形成できる。このような導波路は光閉じ込め効果が強くなるので導波路損失が小さい。
【0043】
上の実施例では成長阻止マスク13A、13Bの幅をレーザダイオード領域12と導波路領域14で同じにしたため、レーザダイオード領域12と導波路領域14で各層の膜厚が同じになった。しかし各層の膜厚をレーザダイオード領域12よりも導波路領域14の方で厚くしたいときは、導波路領域14の成長阻止マスク13A、13Bの幅をレーザダイオード領域12より広くすれば良い。このようなことは従来はとても考えられなかったが、本発明では容易に実現できる。
【0044】
次に図5(c)のように先に形成した各層の側面・上面にp−InP層20、n−InP層21、p−InP層22、p(+)−InGaAsコンタクト層23、SiO2絶縁層24を順次形成する。導波路領域14にはTi−Au電極は形成しない。以上で導波路領域14の層形成は完了する。
【0045】
このあとレーザ出射面への無反射膜コーティング、その反対面への高反射コーティングなどを行なうが本発明の本質と関係がないので説明を省略する。
【0046】
【発明の効果】
導波路領域14の成長阻止マスク13A、13Bの下にFe:InP膜11を入れることにより、MOVPEの成膜のさい導波路領域14のn−InP基板10の表面温度Tを局所的に高くすることができる。導波路領域14はMOVPEの成膜温度が高くなるのでn−InGaAsP光ガイド層16のAs/PがPリッチになる。InGaAsPがPリッチになるとバンドギャップが大きくなる。一方Ga/Inの比は変化しないのでn−InGaAsP光ガイド層16の膜厚は変化しない。
【0047】
n−InGaAsP光ガイド層16のバンドギャップはFe:InP膜11の膜厚tでコントロールでき、n−InGaAsP光ガイド層16の膜厚は成長阻止マスク13A、13Bの幅でコントロールできる。Fe:InP膜11の膜厚tと成長阻止マスク13A、13Bの幅は独立して決められるから、n−InGaAsP光ガイド層16のバンドギャップと膜厚が独立に決められる。これによりバンドギャップが大きく、しかも膜厚が厚い導波路領域14が形成できる。このような導波路は光閉じ込め効果が強くなるので導波路損失が小さい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光半導体装置の製造工程順説明図
【図2】本発明の光半導体装置の製造工程順説明図
【図3】本発明の光半導体装置の製造工程順説明図
【図4】本発明の光半導体装置の製造工程順説明図
【図5】本発明の光半導体装置の製造工程順説明図
【図6】Fe:InP膜の膜厚tとn−InP基板の表面温度Tの関係を示すグラフ
【図7】従来の光半導体装置の製造工程順説明図
【図8】従来の光半導体装置の製造工程順説明図
【図9】従来の光半導体装置の製造工程順説明図
【符号の説明】
10 n−InP基板
11 Fe:InP膜
12 回折格子領域・レーザダイオード領域
13 SiO2膜
13A、13B 成長阻止マスク
14 導波路領域
15 成長阻止マスクの隙間
16 n−InP光ガイド層
17 n−InPスペーサ層
18 MQW発光層
19 p−InPクラッド層
20 p−InP層
21 n−InP層
22 p−InP層
23 p(+)−InGaAsコンタクト層
24 SiO2絶縁層
25 p側Ti−Au電極
26 n側Ti−Au電極
30 n−InP基板
31 回折格子領域・レーザダイオード領域
32A、32B 成長阻止マスク
33 導波路領域
34 成長阻止マスクの隙間
35 n−InGaAsP光ガイド層
36 n−InPスペーサ層
37 MQW発光層
38 p−InPクラッド層
39 p−InP埋め込み層
40 絶縁層
41 p(+)−InGaAsコンタクト層
42 p側Ti−Au電極
43 n側Ti−Au電極
【発明の属する技術分野】
本発明は光半導体装置、特にモノリシック基板にレーザダイオードと導波路を集積した光半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光半導体装置の製造方法は、例えば特開平9−92921号公報に説明がある。同公報をもとにして従来の光半導体装置の製造方法を説明する。
【0003】
図7(a)はn−InP基板30であり、表面の一部に回折格子31が形成してある。この回折格子31は発振したレーザの波長を狭い範囲に絞るためのものである。
【0004】
次に図7(b)のようにn−InP基板30の上面に成長阻止マスク32A、32Bを形成する。成長阻止マスク32A、32Bは左右対称の2枚のSiO2膜で、回折格子領域31(レーザダイオード領域31)では幅が広く、回折格子のない領域33(導波路領域33)では幅が狭い。2枚の成長阻止マスク32A、32Bの間に細い隙間34があって、その隙間34ではn−InP基板30が露出している。これから述べるレーザダイオードと導波路はこの隙間34に形成する。したがって重要なのはこの隙間34の部分であり、成長阻止マスク32A、32Bの外側の部分は重要でない。
【0005】
まずレーザダイオード領域31の膜形成方法を説明する。レーザダイオード領域31は図7(b)でA−A断面図にあたる部分である。図8(a)は成長阻止マスク32A、32Bを形成したn−InP基板(図7(b))のA−A断面図である。以後成長阻止マスク32A、32Bの隙間34にレーザダイオードを形成するので、以後の図8(b)、図8(c)では図8(a)の点線の円の中を拡大して示す。
【0006】
まず図8(b)のように成長阻止マスク32A、32Bの隙間34に、n−InGaAsP光ガイド層35、n−InPスペーサ層36、MQW(多重量子井戸)発光層37、p−InPクラッド層38を順次形成する。
【0007】
次に図8(c)のように成長阻止マスク32A、32Bの隙間34を広げ、先に形成した各層の上にp−InP埋め込み層39、絶縁層40、p(+)−InGaAsコンタクト層41、p側Ti−Au電極42を順次形成する。絶縁層40はいったん形成したあとp(+)−InGaAsコンタクト層41を形成するところだけ除去する。またn−InP基板30の下面にもn側Ti−Au電極43を形成する。以上でレーザダイオード領域31の層形成は完了する。
【0008】
次に導波路領域33の形成方法を説明する。導波路領域33は図7(b)のB−B断面図にあたる部分である。図9(a)は図7(b)の、成長阻止マスク32A、32Bを形成したn−InP基板30のB−B断面図である。以後成長阻止マスク32A、32Bの隙間34に導波路を形成するので、以後の図9(b)、図9(c)では図9(a)の点線の円の中を拡大して示す。
【0009】
まず図9(b)のように成長阻止マスク32A、32Bの隙間34に、n−InGaAsP光ガイド層35、n−InPスペーサ層36、MQW(多重量子井戸)発光層37、p−InPクラッド層38を順次形成する。これらの層はレーザダイオード領域31と層構成が共通なので同時に形成できる。しかしレーザダイオード領域31に比べ成長阻止マスク32A、32Bの幅が狭いので、レーザダイオード領域31と比べ膜厚が薄くなる。またIn比率が低くなり、圧縮歪みが少なくなるのでバンドギャップが大きくなる。
【0010】
次に図9(c)のように成長阻止マスク32A、32Bの隙間34を広げ、先に形成した各層の上にp−InP埋め込み層39、絶縁層40を順次形成する。導波路領域33にはp(+)−InGaAsコンタクト層、Ti−Au電極は形成しない。以上で導波路領域33の層形成は完了する。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−92921号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来のモノリシック基板にレーザダイオードと導波路を集積した光半導体装置において、導波路領域33のバンドギャップが大きくなるのは好都合である。しかし導波路領域33の膜厚が薄くなるのは、光閉じ込め効果が弱くなり、導波路損失が大きくなるので不都合である。導波路領域33の膜厚を厚くするには成長阻止マスク32A、32Bの幅を広くすればよいが、そうすると今度はバンドギャップが小さくなるので、また都合が悪い。
【0013】
導波路領域33の理想はバンドギャップが大きく膜厚が厚いことだが、従来の製造方法ではバンドギャップと膜厚に負の相関関係があるため、バンドギャップを大きく、同時に膜厚を厚くすることはできない。レーザダイオード領域31と導波路領域33をそれぞれに適した条件で成膜すればできるが、工程数が2倍以上に増えるので現実的でない。
【0014】
本発明ではバンドギャップと膜厚に相関関係が無く、バンドギャップと膜厚が独立に決められる製造方法を提供する。これによりバンドギャップが大きく、膜厚が厚い導波路領域が形成できる。このような導波路は光閉じ込め効果が強くなるので導波路損失が小さい。
【0015】
【課題を解決するための手段】
従来は導波路領域の成長阻止マスクの幅はレーザダイオード領域より狭くしなければならなかったが、本発明ではレーザダイオード領域と同じ幅にできる(必要に応じて狭くしても広くしてもよい)。成長阻止マスクの幅が同じであると成長した膜の厚さが同じになる。その代わり本発明ではバンドギャップを変化させるため導波路領域の成長阻止マスクの下にFe:InP膜(FeドープInP膜)を入れる。次にFe:InP膜の機能を述べる。なお、m×10のn乗をmEnと表わす。
【0016】
Fe:InP膜はキャリア濃度が1.0E13[cm−3]以下の高抵抗半導体であるため、基板加熱時に発生する輻射光を吸収しにくい。そのため輻射光はFe:InP膜表面と、その下のn−InP基板表面で多重反射し干渉を起こす。このためFe:InP膜の膜厚に応じてn−InP基板表面に到達する輻射光が強くなったり弱くなったりする。したがってFe:InP膜をn−InP基板の上に形成すると、n−InP基板の表面温度が変化する。
【0017】
詳しくは実施例の説明箇所で述べるが、Fe:InP膜の膜厚が厚くなるにしたがい、n−InP基板の表面温度は上昇・降下を繰り返し、最後にFe:InP膜の無い時の温度に収束する。n−InP基板の表面温度が最も高くなるのは、Fe:InP膜の膜厚tが約0.3μmのときで、導波路領域のn−InP基板の表面温度はレーザダイオード領域より約40℃高くなる。これにより導波路領域ではレーザダイオード領域よりも約40℃高い温度で成膜できる。
【0018】
InGaAsPをMOVPE(有機金属気相成長)させるとき基板温度が高くなるとAs/PがPリッチになる。InGaAsPがPリッチになるとバンドギャップが大きくなる。従来は導波路領域の成長阻止マスクの幅を狭くしてPリッチにし、バンドギャップを大きくするようにしていたが、本発明のように基板温度を局所的に導波路領域だけ高くできれば、成長阻止マスクの幅を狭くする必要がない。
【0019】
一方InGaAsPをMOVPEさせるとき基板温度が高くなってもGa/Inの比は変化しない。これによりn−InGaAsP光ガイド層の膜厚は変化しない。したがってn−InGaAsP光ガイド層の膜厚は基板温度によらず成長阻止マスクの幅で決まる。成長阻止マスクの幅がレーザダイオード領域と導波路領域で同じならば、n−InGaAsP光ガイド層の膜厚はレーザダイオード領域と導波路領域で同じになる。(成長阻止マスクの幅が広いほど膜厚が厚くなる。)
以上説明したように本発明の製造方法ではn−InGaAsP光ガイド層のバンドギャップはFe:InP膜の膜厚でコントロールでき、n−InGaAsP光ガイド層の膜厚は成長阻止マスクの幅でコントロールできる。したがってn−InGaAsP光ガイド層のバンドギャップと膜厚が独立に決められる。これによりバンドギャップが大きく、しかも膜厚が厚い導波路領域が形成できる。このような導波路は光閉じ込め効果が強くなるので導波路損失が小さい。
【0020】
さらに各層の膜厚をレーザダイオード領域よりも導波路領域の方で厚くしたいときは、導波路領域の成長阻止マスクの幅をレーザダイオード領域より広くすれば良い。このようなことは従来は不可能であったが、本発明では容易に実現できる。
【0021】
請求項1記載の発明は、基板上の成長阻止マスクと成長阻止マスクの隙間に選択MOVPE法により、少なくとも光ガイド層、発光層、クラッド層を積層してレーザダイオード領域と導波路領域を一括形成した光半導体装置において、少なくとも前記の光ガイド層の膜厚が前記のレーザダイオード領域と前記の導波路領域でほぼ等しく、少なくとも前記の光ガイド層のバンドギャップが前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で大きいことを特徴とする光半導体装置である。
【0022】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の光半導体装置において、前記の導波路領域の成長阻止マスクの下地にFe:InP膜があり、前記のレーザダイオード領域の成長阻止マスクの下地には前記のFe:InP膜が無いことを特徴とする光半導体装置である。
【0023】
請求項3記載の発明は、基板上の成長阻止マスクと成長阻止マスクの隙間に選択MOVPE法により、少なくとも光ガイド層、発光層、クラッド層を積層してレーザダイオード領域と導波路領域を一括形成する光半導体装置の製造方法において、前記の導波路領域の成長阻止マスクの下地にFe:InP膜があり、前記のレーザダイオード領域の成長阻止マスクの下地には前記のFe:InP膜がなく、成長阻止マスクの幅を前記の導波路領域と前記のレーザダイオード領域でほぼ等しくすることにより、少なくとも前記の光ガイド層の膜厚は前記のレーザダイオード領域と前記の導波路領域でほぼ等しくし、前記のFe:InP膜の効果により、少なくとも前記の光ガイド層を成膜するときは前記の基板の温度を前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で高く保ち、それにより少なくとも前記の光ガイド層のバンドギャップを前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で大きくすることを特徴とする光半導体装置の製造方法である。
【0024】
請求項4記載の発明は、基板上の成長阻止マスクの隙間に選択MOVPE法により、少なくとも光ガイド層、発光層、クラッド層を積層してレーザダイオード領域と導波路領域を一括形成する光半導体装置の製造方法において、前記の導波路領域の成長阻止マスクの下地にFe:InP膜があり、前記のレーザダイオード領域の成長阻止マスクの下地には前記のFe:InP膜がなく、成長阻止マスクの幅を前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で広くすることにより、少なくとも前記の光ガイド層の膜厚は前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で厚くなるようにし、前記のFe:InP膜の効果により、少なくとも前記の光ガイド層を成膜するときは前記の基板の温度を前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で高く保ち、それにより少なくとも前記の光ガイド層のバンドギャップを前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で大きくすることを特徴とする光半導体装置の製造方法である。
【0025】
請求項5記載の発明は、請求項3〜4記載の光半導体装置の製造方法において、前記の導波路領域の前記の光ガイド層のバンドギャップはFe:InP膜の膜厚でコントロールし、前記の導波路領域の前記の光ガイド層の膜厚は成長阻止マスクの幅でコントロールすることを特徴とする光半導体装置の製造方法である。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を説明する。図1(a)はn−InP基板10の表面にFe:InP膜11を形成した状態を示す。Feのドープ量は1.0E16[cm−3]〜1.0E17[cm−3]が適当である。このドープ量でFe:InP膜のキャリア濃度は1.0E14[cm−3]以下に下がる。
【0027】
次に図1(b)のようにFe:InP膜11の一部を除去する。
【0028】
次に図2(c)のようにFe:InP膜11を除去したところに回折格子12を形成する。この回折格子12は発振したレーザの波長を狭い範囲に絞るためのものである。
【0029】
次に図2(d)のようにFe:InP膜11と回折格子12の上にSiO2膜13を形成する。これによりFe:InP膜11と回折格子12はSiO2膜13の下に隠れる。
【0030】
次に図3(e)のようにSiO2膜13を部分的に除去し、残ったSiO2膜13で2枚の成長阻止マスク13A、13Bを形成する。従来と違い、回折格子12の領域(すなわちレーザダイオード領域12)と回折格子12の無い領域14(すなわち導波路領域14)で、成長阻止マスク13A、13Bの幅が同じである。
【0031】
次に図3(f)のように成長阻止マスク13A、13Bから露出しているFe:InP膜11を除去する。Fe:InP膜11も成長阻止マスク13A、13Bと同じ幅になる。
【0032】
成長阻止マスク13A、13Bの間には細い隙間15(幅1.5μm)があって、その隙間15では、n−InP基板10が露出している。レーザダイオードと導波路はこの隙間15に形成する。したがって重要なのはこの隙間15の部分であり、成長阻止マスク13A、13Bの外側の部分は重要でない。
【0033】
まずレーザダイオード領域12の形成方法を説明する。レーザダイオード領域12は図3(f)でA−A断面図にあたる部分である。図4(a)は図3(f)のn−InP基板10のA−A断面図である。以後成長阻止マスク13A、13Bの隙間15にレーザダイオードを形成するので、以後の図4(b)、図4(c)では図4(a)の点線の円の中を拡大して示す。
【0034】
まず図4(b)のように成長阻止マスク13A、13Bの隙間15に、n−InGaAsP光ガイド層16、n−InPスペーサ層17、MQW(多重量子井戸)発光層18、p−InPクラッド層19を順次形成する。ここで用いる原料は、III族原料としてトリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を、V族原料としてアルシン(AsH3)、フォスフィン(PH3)を、ドーパントとしてジメチルジンク(DMZn)、ジシラン(Si2H6)を用いる。形成条件は、成長温度約610℃、成長圧力約100hPaである。
【0035】
次に図4(c)のように先に形成した各層の側面・上面にp−InP層20、n−InP層21、p−InP層22、p(+)−InGaAsコンタクト層23、SiO2絶縁層24、p側Ti−Au電極25を順次形成する。またn−InP基板10の下面にもn側Ti−Au電極26を形成する。以上でレーザダイオード領域12の層形成は完了する。
【0036】
次に導波路領域14の形成方法を説明する。導波路領域14は図3(f)でB−B断面図にあたる部分である。図5(a)は図3(f)のn−InP基板のB−B断面図である。以後Fe:InP膜11および成長阻止マスク13A、13Bの隙間15に導波路を形成するので、以後の図5(b)、図5(c)では図5(a)の点線の円の中を拡大して示す。
【0037】
まず図5(b)のように成長阻止マスク13A、13Bの隙間15に、n−InGaAsP光ガイド層16、n−InPスペーサ層17、MQW(多重量子井戸)発光層18、p−InPクラッド層19を順次形成する。これらの層はレーザダイオード領域12(図4(b))と層構造が共通であり、同時に形成できる。
【0038】
従来は導波路領域14の成長阻止マスク13A、13Bの幅はレーザダイオード領域12より狭かったが、本発明ではレーザダイオード領域12と同じである。その代わり本発明では導波路領域14の成長阻止マスク13A、13Bの下にFe:InP膜11がある。これが本発明の特徴である。ここでFe:InP膜11の機能を述べる。
【0039】
Fe:InP膜11をn−InP基板10の上に形成すると、n−InP基板10の表面温度Tが変化する。図6はその様子を示すグラフである。図6のグラフの横軸はFe:InP膜11の膜厚t(μm)、縦軸はn−InP基板10の表面温度T(℃)である。図6から分かるようにFe:InP膜11が無いとき(t=0μm)、n−InP基板10の表面温度Tは約610℃である。Fe:InP膜11の膜厚tが厚くなるにしたがい、n−InP基板10の表面温度Tは上昇・下降を繰り返し、最後にFe:InP膜11の無い時の温度に収束する。n−InP基板10の表面温度Tが最も高くなるのは、Fe:InP膜11の膜厚tが約0.3μmのときで、約650℃になる。つまりFe:InP膜11の膜厚を0.3μmにすると、導波路領域14のn−InP基板10の表面温度Tはレーザダイオード領域12より約40℃高くなる。
【0040】
このため先に述べたn−InGaAsP光ガイド層16、n−InPスペーサ層17、MQW(多重量子井戸)発光層18、p−InPクラッド層19を、導波路領域14ではレーザダイオード領域12よりも約40℃高い温度で成膜できる。この中で重要なのはn−InGaAsP光ガイド層16とMQW(多重量子井戸)発光層18である。MQW(多重量子井戸)発光層18はInGaAsP薄膜(井戸層)とInGaAsP薄膜(バリア層)を交互に10層程度積み重ねた多層膜でできている。一般にInGaAsPをMOVPE(有機金属気相成長)させるとき基板温度Tが高くなるとAs/Pの比が小さくなる。つまりPリッチになる。InGaAsPがPリッチになるとバンドギャップが大きくなる。従来は導波路領域の成長阻止マスクの幅を狭くしてバンドギャップを大きくするようにしていたが、本発明のように基板温度Tを局所的に導波路領域14だけ高くできれば、成長阻止マスク13A、13Bの幅を狭くする必要がない。
【0041】
一方InGaAsPをMOVPEさせるとき基板温度Tが高くなってもGa/Inの比は変化しない。これによりn−InGaAsP光ガイド層16の膜厚は変化しない。したがってn−InGaAsP光ガイド層16の膜厚は成長阻止マスク13A、13Bの幅で決まる。成長阻止マスク13A、13Bの幅がレーザダイオード領域12と導波路領域14で同じならば、n−InGaAsP光ガイド層16の膜厚はレーザダイオード領域12と導波路領域14で同じになる。
【0042】
以上説明したように本発明の製造方法ではn−InGaAsP光ガイド層16のバンドギャップはFe:InP膜11の膜厚tでコントロールし、n−InGaAsP光ガイド層16の膜厚は成長阻止マスク13A、13Bの幅でコントロールする。Fe:InP膜11の膜厚tと成長阻止マスク13A、13Bの幅は独立して決められるから、n−InGaAsP光ガイド層16のバンドギャップと膜厚が独立に決められることになる。これによりバンドギャップが大きく、しかも膜厚が厚い導波路領域14が形成できる。このような導波路は光閉じ込め効果が強くなるので導波路損失が小さい。
【0043】
上の実施例では成長阻止マスク13A、13Bの幅をレーザダイオード領域12と導波路領域14で同じにしたため、レーザダイオード領域12と導波路領域14で各層の膜厚が同じになった。しかし各層の膜厚をレーザダイオード領域12よりも導波路領域14の方で厚くしたいときは、導波路領域14の成長阻止マスク13A、13Bの幅をレーザダイオード領域12より広くすれば良い。このようなことは従来はとても考えられなかったが、本発明では容易に実現できる。
【0044】
次に図5(c)のように先に形成した各層の側面・上面にp−InP層20、n−InP層21、p−InP層22、p(+)−InGaAsコンタクト層23、SiO2絶縁層24を順次形成する。導波路領域14にはTi−Au電極は形成しない。以上で導波路領域14の層形成は完了する。
【0045】
このあとレーザ出射面への無反射膜コーティング、その反対面への高反射コーティングなどを行なうが本発明の本質と関係がないので説明を省略する。
【0046】
【発明の効果】
導波路領域14の成長阻止マスク13A、13Bの下にFe:InP膜11を入れることにより、MOVPEの成膜のさい導波路領域14のn−InP基板10の表面温度Tを局所的に高くすることができる。導波路領域14はMOVPEの成膜温度が高くなるのでn−InGaAsP光ガイド層16のAs/PがPリッチになる。InGaAsPがPリッチになるとバンドギャップが大きくなる。一方Ga/Inの比は変化しないのでn−InGaAsP光ガイド層16の膜厚は変化しない。
【0047】
n−InGaAsP光ガイド層16のバンドギャップはFe:InP膜11の膜厚tでコントロールでき、n−InGaAsP光ガイド層16の膜厚は成長阻止マスク13A、13Bの幅でコントロールできる。Fe:InP膜11の膜厚tと成長阻止マスク13A、13Bの幅は独立して決められるから、n−InGaAsP光ガイド層16のバンドギャップと膜厚が独立に決められる。これによりバンドギャップが大きく、しかも膜厚が厚い導波路領域14が形成できる。このような導波路は光閉じ込め効果が強くなるので導波路損失が小さい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光半導体装置の製造工程順説明図
【図2】本発明の光半導体装置の製造工程順説明図
【図3】本発明の光半導体装置の製造工程順説明図
【図4】本発明の光半導体装置の製造工程順説明図
【図5】本発明の光半導体装置の製造工程順説明図
【図6】Fe:InP膜の膜厚tとn−InP基板の表面温度Tの関係を示すグラフ
【図7】従来の光半導体装置の製造工程順説明図
【図8】従来の光半導体装置の製造工程順説明図
【図9】従来の光半導体装置の製造工程順説明図
【符号の説明】
10 n−InP基板
11 Fe:InP膜
12 回折格子領域・レーザダイオード領域
13 SiO2膜
13A、13B 成長阻止マスク
14 導波路領域
15 成長阻止マスクの隙間
16 n−InP光ガイド層
17 n−InPスペーサ層
18 MQW発光層
19 p−InPクラッド層
20 p−InP層
21 n−InP層
22 p−InP層
23 p(+)−InGaAsコンタクト層
24 SiO2絶縁層
25 p側Ti−Au電極
26 n側Ti−Au電極
30 n−InP基板
31 回折格子領域・レーザダイオード領域
32A、32B 成長阻止マスク
33 導波路領域
34 成長阻止マスクの隙間
35 n−InGaAsP光ガイド層
36 n−InPスペーサ層
37 MQW発光層
38 p−InPクラッド層
39 p−InP埋め込み層
40 絶縁層
41 p(+)−InGaAsコンタクト層
42 p側Ti−Au電極
43 n側Ti−Au電極
Claims (5)
- 基板上の成長阻止マスクと成長阻止マスクの隙間に選択MOVPE法により、少なくとも光ガイド層、発光層、クラッド層を積層してレーザダイオード領域と導波路領域を一括形成した光半導体装置において、
少なくとも前記の光ガイド層の膜厚が前記のレーザダイオード領域と前記の導波路領域でほぼ等しく、
少なくとも前記の光ガイド層のバンドギャップが前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で大きいことを特徴とする光半導体装置。 - 請求項1記載の光半導体装置において、
前記の導波路領域の成長阻止マスクの下地にFe:InP膜があり、
前記のレーザダイオード領域の成長阻止マスクの下地には前記のFe:InP膜が無いことを特徴とする光半導体装置。 - 基板上の成長阻止マスクと成長阻止マスクの隙間に選択MOVPE法により、少なくとも光ガイド層、発光層、クラッド層を積層してレーザダイオード領域と導波路領域を一括形成する光半導体装置の製造方法において、
前記の導波路領域の成長阻止マスクの下地にFe:InP膜があり、
前記のレーザダイオード領域の成長阻止マスクの下地には前記のFe:InP膜がなく、
成長阻止マスクの幅を前記の導波路領域と前記のレーザダイオード領域でほぼ等しくすることにより、
少なくとも前記の光ガイド層の膜厚は前記のレーザダイオード領域と前記の導波路領域でほぼ等しくし、
前記のFe:InP膜の効果により、少なくとも前記の光ガイド層を成膜するときは前記の基板の温度を前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で高く保ち、
それにより少なくとも前記の光ガイド層のバンドギャップを前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で大きくすることを特徴とする光半導体装置の製造方法。 - 基板上の成長阻止マスクの隙間に選択MOVPE法により、少なくとも光ガイド層、発光層、クラッド層を積層してレーザダイオード領域と導波路領域を一括形成する光半導体装置の製造方法において、
前記の導波路領域の成長阻止マスクの下地にFe:InP膜があり、
前記のレーザダイオード領域の成長阻止マスクの下地には前記のFe:InP膜がなく、
成長阻止マスクの幅を前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で広くすることにより、
少なくとも前記の光ガイド層の膜厚は前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で厚くなるようにし、
前記のFe:InP膜の効果により、少なくとも前記の光ガイド層を成膜するときは前記の基板の温度を前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で高く保ち、
それにより少なくとも前記の光ガイド層のバンドギャップを前記のレーザダイオード領域より前記の導波路領域で大きくすることを特徴とする光半導体装置の製造方法。 - 請求項3〜4記載の光半導体装置の製造方法において、
前記の導波路領域の前記の光ガイド層のバンドギャップはFe:InP膜の膜厚でコントロールし、
前記の導波路領域の前記の光ガイド層の膜厚は成長阻止マスクの幅でコントロールすることを特徴とする光半導体装置の製造方法。
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- 2003-01-22 JP JP2003013150A patent/JP2004228277A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010003923A (ja) * | 2008-06-20 | 2010-01-07 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 半導体光素子を作製する方法 |
JP2010003921A (ja) * | 2008-06-20 | 2010-01-07 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 半導体光素子を作製する方法 |
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