JP2004227792A - 有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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宏育 松浦
Nobuyuki Ushifusa
信行 牛房
Nobuhiko Fukuoka
信彦 福岡
Hiroshi Kikuchi
廣 菊池
Kazunari Takemoto
一成 竹元
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Abstract

【課題】気温や気圧などの動作環境や動作中の発熱による、基板や封止接着剤へのダメージと表示のゆがみを防止し、外部からの酸素や水分を遮断しダークスポットの発生を防止することができる有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】発光積層体を、酸素及び水の透過性のない発光積層体形成基板1上に配置し、この基板と同等の物性値を持つ封止基板2を設け、前記発光積層体形成基板と封止基板のうち少なくとも一方は光透過性を有し、前記発光積層体形成基板の発光積層体群を囲うように環状に塗付した封止接着剤で前記発光積層体形成基板と前記封止基板を接着し、画素分離用バンク9に突起10を設けて前記発光積層体よりも高く形成し、前記発光積層体形成基板、前記封止基板及び前記封止接着剤で構成する空間14を真空若しくは大気圧以下に減圧した不活性ガスで満たし、前記画素分離用バンクに設けた突起と前記封止基板の内面を接触させる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス表示装置に係り、特に、その封止構造を改善した有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2は従来の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図である。従来の有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機EL)表示装置では、複数の発光積層体5により構成されている。発光積層体5は、絶縁体の枠である画素分離バンク9の中に形成される。この積層体5はアノード電極7とカソード電極8の間に有機発光層6を挟んで構成される。これらの電極7、8に電流を流すことにより、有機発光層6で発光現象が生じる。この発光積層体5は雰囲気中に酸素や水分があると変質してダークスポットと呼ばれる非発光点が発生、成長し、発光しなくなってしまうという欠点を持つ。
【0003】
従来の有機EL装置では、発光積層体形成基板1と封止基板2との2枚の基板をスペーサ4を介して、封止接着剤3で接着して密閉空間17を形成し、弗素化炭素のような不活性の液体を密閉空間17に封入する構造(特許文献1参照)や、窒素ガス等の不活性ガスを密閉空間17に封入する構造(特許文献2参照)を採用してきた。
不活性の液体を封入する方式では、環状に設置した封止接着剤3に切れ目を入れておき、発光積層体形成基板1と封止基板2とを重ね合わせて接着した後、発光積層体形成基板1、封止基板2、封止接着剤3で構成される空間17をその切れ目から減圧し、不活性の液体を注入し、最後に切れ目を封止する工程を経て完成する。これに対して、不活性ガスを封入する場合は、不活性ガスのチャンバ内で、封止接着剤3を配置した後に発光積層体形成基板1、封止基板2を重ね合わせ、接着すればよい。このため、後者の方が生産性に優れているという長所があった。
不活性ガスを封入する方式では、従来は窒素ガス雰囲気で発光積層体形成基板1と封止基板2とを貼り合わせる場合、封止接着剤3を加圧接着するため、発光積層体形成基板1、封止基板2、封止接着剤3で構成される空間17の圧力は正圧なりやすかった。
【0004】
発光積層体形成基板1、封止基板2、封止接着剤3で構成される空間17が正圧であると、外部からの酸素や水分が透過し難くなるため、封止接着剤3のバリア性の不足および乾燥剤13の性能不足を補える長所があった。しかし、前述の空間17の圧力を正圧にすると、有機EL表示装置を構成する基板が外側に膨れてしまう。この症状は基板が大形化する程顕著に表れる。基板1、2に膨れが発生すると、基板1、2自体あるいは封止接着剤3に応力が発生し、有機EL表示装置にダメージを与えるという不具合と光学的なひずみが生じ、透明な基板が変形することによるレンズ効果による画像のゆがみを生じてしまう不具合が生じていた。
これを防ぐために、フレキシブルな材質で封止基板3を形成し封止基板3を積極的に変形させることにより、表示装置内部の圧力変動を抑え、耐熱衝撃性を高める方式が提案された(特許文献3参照)。この場合、発光積層体形成基板1の応力は緩和される。しかし、封止基板5の変形はより顕著になり、封止基板5の側から画像を見るような方式では、光学的なひずみがより拡大してしまった。
【0005】
前述の空間17の圧力を外部と同じにすると、基板の膨れは解消されるが、外部の気圧や気温が変化した場合や長時間の駆動により表示装置が発熱した場合は、やはり基板の膨れは発生してしまう。
なお、図2において、15は溝であり、この溝15に乾燥剤13が塗布されている。また、11は薄膜トランジスタ(TFT)である。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−41281号公報
【特許文献2】
特開2000−30857号公報
【特許文献3】
特開2001−217069号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の不活性ガス封入式の有機EL表示装置では、気温や気圧などの動作環境や動作中の発熱に影響を受けずに、表示装置を構成する基板の形状を常に一定にして、基板や封止接着剤へのダメージと表示のゆがみを防止すること、発光積層体を外力から保護すること、外部からの酸素や水分を遮断しダークスポットの発生を防止することの3点の解決が課題であった。
【0008】
本発明は上記の課題を解決した有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、少なくとも発光層を有する有機層をアノード電極上の画素分離用バンク内部に形成してカソード電極とで挟み込んだ発光積層体を酸素及び水の透過性のない基板上に配置し、前記基板と同等の物性値を持つ封止基板を設け、前記発光積層体を有する基板と前記期封止基板のうち少なくとも一方は光透過性を有し、前記発光積層体を有する基板の発光積層体群を囲うように環状に塗付した封止接着剤で前記発光積層体を有する基板と前記封止基板を接着してなる有機EL表示装置であって、前記画素分離用バンクの少なくとも一部分をその内部にある発光積層体よりも高く形成し、前記発光積層体を有する基板と前記封止基板の間及び封止接着剤で構成する空間を真空若しくは大気圧以下に減圧した不活性ガスで満たし、前記画素分離用バンクの先端又は前記画素分離バンクに設けた突起部と前記封止基板を接触させる。
また、前記の有機EL表示装置であって、前記封止基板において発光積層体に面する部分が平坦であり、発光積層体に面している部分の外側で、且つ前記の環状に塗付した封止接着剤よりも内側の部分に溝を掘り、前記封止基板の溝内部、又はその溝に対向した発光積層体を設けた基板の表面に乾燥剤を設置する。
【0010】
前記の有機EL表示装置において、発光積層体の周囲に環状に設置された封止接着剤が複数列の接着剤である。
また、前記の環状封止接着剤が複数列設けられた有機EL表示装置であって、環状に設置された封止接着剤間についても封止基板側に溝を掘り、前記封止基板の封止接着材間の溝内部、又はその溝に対向した発光積層体を設けた基板の表面に乾燥剤を設置する。
【0011】
以上で述べたように本発明では、発光積層体を形成した基板と封止基板と封止接着剤で構成される密閉空間に窒素ガス等の不活性ガスを大気圧よりも低い圧力になるように充填するあるいは真空状態にして、発光積層体を形成した基板の画素分離バンクの少なくとも一部を突出させて封止基板に密着させるものである。
【0012】
例えば、航空機の機内で使用する場合、飛行中には0.7〜0.8気圧に降下するため、有機EL表示装置内部の密閉空間に0.7気圧よりも低い圧力で不活性ガスを充填しておけば、基板の形状は外側に向かって膨れることはない。また、連続通電磁に、有機EL表示装置が室温t℃に対してΔt℃温度上昇するならば、室温での表示装置内部の圧力がPの時、温度上昇後の圧力は
P(273+Δt+t)/(273+t)
になる。この圧力が大気圧である1気圧以下になるように表示装置内部の圧力Pを調整しておけば、常に基板は外側に向かって膨れることはない。
本発明により、気温や気圧などの動作環境や動作中の発熱に影響を受けずに表示装置を構成する基板を常に平坦に保たせることができ、基板や封止接着剤へのダメージと表示のゆがみを防止することができた。
また、発光積層体が封止基板や乾燥剤と接触することがないため、発光積層体を外力から保護することが可能となった。
さらに、封止接着剤と乾燥剤の性能が不足する場合には、封止接着剤を複数列配置し、封止接着剤間にも乾燥剤を配置することで外部からの酸素や水分の浸入の防止を補い、ダークスポットの発生を防止できた。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用い、図を参照して説明する。
図1は本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置の第1の実施例を示す断面図及び斜視図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は図1(a)のA部分を切り取った場合の斜視図である。図1において、1は発光積層体形成基板、2は封止基板、3は封止接着剤、4は封止接着剤3の高さを規定するスペーサ、5は発光積層体である。発光積層体5は、有機発光層6、アノード電極7、カソード電極8で構成される。9は画素分離バンク、10は画素分離バンクに設けた突起、11は薄膜トランジスタ(以下、TFTという)、12は配線、13は乾燥剤、14は負圧空間、15は乾燥剤13を格納のために設けた封止基板の溝を示す。
【0014】
本実施例では、発光積層体形成基板1若しくは封止基板2のうち少なくともどちらか一方はガラス等の透明な材料を使用した。発光積層体形成基板1にはTFT11とTFT11を駆動するための配線12をまず形成する。次に、画素を分離する画素分離バンク9を形成する。本実施例では、画素分離バンク9に突起10を設けることによって、発光積層体5が封止基板2と直接接触しないようにしている。突起10を設ける代わりに、画素分離バンク9を発光積層体5より高く形成して、発光積層体5が封止基板2と直接接触しないようにしてもよい。
その後、発光積層体5のアノード電極7を画素分離バンク9の間のTFT11上に形成した。アノード電極7は発光積層体形成基板1の面から画像を表示させる場合、ITO(インジウム・スズ酸化物)やIZO(インジウム・亜鉛酸化物)等で透明なカソード電極8を形成し、そうでない場合は不透明な金属電極でも構わない。アノード電極7を形成後、有機発光層6を画素分離バンク9の間に形成した。最後にカソード電極8を形成した。封止基板2の側から画像を見る場合は、ITOやIZO等で透明なカソード電極8を形成すればよく、そうでない場合は不透明な金属電極でも構わない。
【0015】
図3は本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置の第2の実施例を示す断面図及び斜視図であり、図3(a)は断面図、図3(b)は図3(a)のA部分を切り取った場合の斜視図である。図3では、カソード電極8は画素分離バンク9に設けられた突起10の上を跨るように形成されている。以上の処理により、図1、図3に示す発光積層体形成基板1を製作した。
図1又は図3において、封止基板2は、封止基板2の側から画像を見る場合には、ガラスなどの透明な材質とすればよい。封止基板2には平板を用い、発光積層体5と対向する部分の外側に溝15を設けた。その溝15の中に乾燥剤13を設置して、有機EL表示装置外部より進入してくる酸素や水分を吸収するようにした。この溝15は封止基板2の全周囲に設けてもよいし、両側だけに設けてもよい。
【0016】
図4は本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置の第3の実施例を示す断面図である。図4に示すように、封止基板2に溝15を設けるが、シート状の乾燥剤13を溝15に対応する発光積層体形成基板1側に接着しても同様な結果を得ることができる。この場合、溝15を設ける理由は、乾燥剤13の高さがスペーサ4の高さより高くなり、封止基板2の内面と接触するようになることを防ぐためである。
図1、図3、図4に示す実施例において、封止接着剤3として、紫外線硬化形接着剤を用い、予め封止接着剤3の中に球状若しくは円筒状のスペーサを混合した。この封止接着剤3を発光積層体形成基板1又は封止基板2に環状に塗布し、発光積層体5を囲った。そして、窒素ガスのような不活性ガスを充填したチャンバにおいて減圧雰囲気を作り、その環境下で、発光積層体形成基板1と封止基板2の間に封止接着剤3を配置して、両基板1、2を重ね合わせた。その後、前記の発光積層体形成基板1と封止基板2の外部の雰囲気圧力を高くし、気圧差により、塗布した封止接着剤3に混入されているスペーサ4が発光積層体形成基板1と封止基板2に接触するように、発光積層体形成基板1と封止基板2によって封止接着剤3を押しつぶした。封止接着剤3を押しつぶすに当たり、前述の気圧差を用いて行う以外に、機械式プレスで加圧する方法あるいは気圧差と機械式プレスの両者を併用する方法を用いても同等の結果を得ることが可能である。この時、発光積層体形成基板1と封止基板2と封止接着剤3で構成された空間14には不活性ガスが充填される。
今、前記の空間14の体積をV0、発光積層体形成基板1と封止基板2を重ね合わせた時の雰囲気圧力をP0とし、封止接着剤3を押しつぶした後の前記空間14の体積をV1、空間14の圧力をP1とすると、
P1=P0×V0/V1………(数1)
の関係が成り立つ。圧力P1が大気圧以下になるように重ね合わせた時の雰囲気圧力P0と前記空間14の体積を規定する封止接着剤3の初期の高さを調整し、封止接着剤3を押しつぶした後の空間14の圧力を外気圧よりも下げることにより、封止基板2と画素分離バンク9若しくは画素分離バンク9に設けた突起10が常に接触するようにした。この状態で、封止接着剤3に紫外線を照射して、封止接着剤3を硬化させた。
【0017】
上記有機EL表示装置を大気圧よりも低い気圧P、室温よりも高い動作時の温度t℃で駆動する場合には、次のような条件で製造を行えばよい。室温をt0℃とすると、表示装置内部の圧力P1は、
P1=P0(273+t)V0/((273+t0)×V1)……(数2)
で表せる。このP1が使用時の圧力Pよりも小さくなるように、重ね合わせ時の雰囲気圧力P0と重ね合わせ時の空間14の体積を規定する封止接着剤3の初期高さを調整することにより、発光積層体形成基板1と封止基板2が外側に膨らむこと防止することができた。
【0018】
パネル外部の気圧Pが有機EL表示装置の内部の圧力よりも高い場合には、画素分離バンク9上の突起10で封止基板2を支えるため、発光積層体形成基板1と封止基板2同士が内側に変形することが妨げられる。よって、有機EL表示装置の形状変化を防止することができる。また、この場合、画素バンク9に突起10を設けたので、発光積層体5は封止基板2と直接接触することはなく、発光積層体5を外力から保護することができる。
【0019】
乾燥剤の能力や封止接着剤の能力が不足している場合は、図5に示すように構成すればよい。
図5は本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置の第4の実施例を示す断面図である。図に示すように、第1のスペーサ4aを混入した第1の封止接着剤3aと第2のスペーサ4bを混入した封止接着剤3bを発光積層体形成基板1の外周に2重に設置し、第1の接着剤3aと第2の接着剤3bが設置された場所に対応する封止基板2に第1の溝15aを設けると共に、第2の封止接着剤の内側に第2の溝15bを設け、第1の溝15aと第2の溝15bに乾燥剤13a、13bを設置すればよい。
【0020】
次に、本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の一実施例について、図6を用いて説明する。
図6は本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の一実施例を示すフローチャートである。まず、ステップ601はTFT成膜工程であり、基板1を投入し、基板1上に格子状にTFT11を形成する。基板1の成膜面の反対側から画像を見るようにする場合は、基板1をガラスのような透明でガスバリア性のある材質を用いる。このTFT11の製造方法は、従来の液晶パネルと同様な方法を用いてもよい。このTFT11のゲートにはON−OFF駆動させるための信号線12をゲートに取付け、ドレインには液晶駆動用の電源線を取り付けておく。続いて、ステップ602のアノード電極成膜工程では、ホールを画素に供給するためのアノード電極7をTFT11のソースに取り付ける。基板1の成膜面でない面から画像を見る場合は、アノード電極7は透明なITOやIZOなどの薄膜をスパッタにより形成する。そうでない場合は、アルミニウム等の金属膜を蒸着またはスパッタで形成しても構わない。
【0021】
アノード電極7を形成した後のステップ603は画素分離バンク成膜工程であり、画素分離バンク9を形成する。画素分離バンク9は画素の周囲を取り囲むように設置する絶縁体である。感光性の樹脂などのレジスト剤を基板1の表面にコーティングして、露光・現像・エッチング工程により上記の絶縁体を形成する。画素の条件によっては上記の工程を用いずに、印刷により画素分離バンク9を形成してもよい。また、二酸化シリコンや窒化シリコンなどの絶縁体をCVD(Chemical Vapor Deposition)装置で成膜し、露光、現像、エッチング工程により画素分離バンク9を形成しても構わない。この画素分離バンク9の高さは、この後の工程で形成する発光積層体5、よりも少なくとも一部分を高く形成する。
【0022】
以後の工程は封止工程が完了するまで、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気で処理される。ステップ604の有機発光層成膜工程で、有機発光層6を成膜する。有機発光層6は低分子系材料を用いる場合は蒸着で、高分子系の材料を用いる場合は印刷により形成する。低分子系の材料を用いる場合は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、及び電子注入層の順で4層を蒸着により形成する。高分子系の材料を用いる場合には、ホール注入層及び発光層の順で2層を印刷により形成する。赤、緑、又は青の3色の蛍光色素を独立して混入した発光層を用意し、個々の画素を塗り分けることでカラー化を実現することができる。
上記の各層を形成後、ステップ605のカソード電極成膜工程で、有機発光層6の上部にカソード電極8を形成する。成膜面側から画像を見る場合には、カソード電極8はITOやIZO等の透明電極を形成し、そうでない場合はアルミニウム等の金属膜を蒸着によって形成する。以上により、発光積層体形成基板1は完成する。
【0023】
封止基板2については次のように処理を行う。まず、基板2に対し、ステップ606の溝加工工程で溝加工を行う。平板の基板から処理する場合、画素の周囲に乾燥剤13が配置できるように、基板2に溝15を掘り込む。この溝15の掘り込みは、ガラス基板表面にレジスト膜を印刷、焼成して形成し、エッチングまたはサンドブラスト等で加工する。加工が終わったら、レジスト膜を除去し、封止基板2を洗浄する。この他にプレス成型で封止基板2に溝15を形成してもよい。これは、封止基板2を構成する材料を一旦溶融し、所定の形状になるようにプレスして形成するものである。
【0024】
以下の処理は封止工程が完了するまで窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気で行う。ステップ607の乾燥剤搭載工程では、加工した溝15に乾燥剤13を搭載する。乾燥剤13はシート状のものやパック状のものを接着して形成する、あるいは粉末状の乾燥剤を溝15に入れて加圧し、固形化して形成するのいずれかを用いる。この工程で乾燥剤13を封止基板2側に設置したが、図4の実施例に示すように、封止基板2に設けられた溝15に対向する光積層体形成基板1側の面に乾燥剤13を設置してもよい。
以上の処理が終了後、ステップ608の封止接着剤塗布工程において、封止基板2に紫外線硬化形の封止接着剤3をディスペンサまたはスクリーン印刷で環状に塗布する。封止接着剤3に予め球形若しくは円筒状のスペーサ4を混入しておく。発光積層体形成基板1と封止基板2を重ね合わせた時に、封止接着剤3は乾燥剤13及び発光積層体5を取り囲むように塗布される。この例では封止基板2側に封止接着剤3を塗布しているが、発光積層体形成基板1側に塗布しても構わない。
【0025】
乾燥剤13の能力や封止接着剤3の能力が不足している場合は、図5を用いて説明したように、環状に設置する封止接着剤3a、3bを多重にし、各封止接着剤3a、3bの間、封止接着剤3bの内側の両方に乾燥剤13a、13bを設置すればよい。その後、ステップ609の発光積層体形成基板1と封止基板2を基板重ね合わせる工程において、発光積層体形成基板1と封止基板2を重ね合わせる。そして、ステップ610の封止接着剤加圧工程で、封止接着剤3を押しつぶす。
【0026】
この場合、重ね合わせ時の処理室の圧力P0を次のように設定する。処理室の温度をt0℃、重ね合わせた直後の表示装置内部の体積をV0、封止接着剤を押しつぶした時の表示装置内部の体積をV1、動作保障する最高温度をt℃、動作保障する最低気圧をP1と表す。重ね合わせた直後の表示装置内部の体積をV0、封止接着剤を押しつぶした時の表示装置内部の体積V1は、封止基板2の掘り込み体積V3、封止剤で囲われた部分の面積をA、初期の封止接着剤高さをH0、押しつぶした後の封止接着剤高さをH1で表すと、
V0=A×H0+V3………(数3)
V1=A×H1+V3………(数4)
と表せる。この時、画素分離バンクと封止基板が密着するようにするには、次のような関係を満たせばよい。
P1>P0(273+t)V0/((273+t0)×V1)……(数5)
上記式の関係を満足するように、処理室内の圧力P0を調整し、基板を重ね合わせる。そして、重ね合わせた基板をプレスする。または、表示装置外部の圧力を高め、表示装置内外の圧力差を利用し、基板封止接着剤3を押しつぶす。
【0027】
封止接着剤3を押しつぶした状態で、ステップ611の封止接着剤硬化工程で、封止接着剤3に紫外線を照射して、封止接着剤3を硬化させる。紫外線はTFT11などの薄膜の特性を変化させてしまうため、封止接着剤3以外の部分に紫外線が当たらないようにマスク等で覆い、選択的に紫外線を照射して封止接着剤3を硬化させる。
上記のステップ609の基板重ね合わせ工程〜ステップ611の封止接着剤硬化工程においては、上記の手順で処理できるのであれば、同一の処理装置内で処理しても構わない。
上記により製造した表示装置に対して、ステップ612の駆動回路取付け工程において、駆動回路を取り付けることにより、有機EL表示装置が完成する。
以上のようにして、本発明を適用した有機EL表示装置を製造することができる。
【0028】
以上述べたように、本発明では、発光積層体形成基板と封止基板と封止接着剤で構成される密閉空間に窒素ガスなどの不活性ガスを外部の気圧よりも低い圧力になるように充填するあるいは真空状態にして、発光積層体形成基板の画素分離バンクの少なくとも一部を発光積層体よりも突出させて封止基板を密着させるものである。これにより、外力に弱い発光積層体にダメージを与えることなく、使用時の気圧変化や温度変化が生じても基板形状が変化せず、基板変形による基板や封止接着剤にストレスが発生せず、レンズ効果や映り込みの変化といった光学的特性の変化が生じない有機EL表示装置の提供が可能となる。また、多重の環状封止接着剤及び封止接着剤の線と線の間に設けた乾燥剤により、酸素や水分の透過を抑えることができ、ダークスポットを抑制可能である。
【0029】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明では、外力に弱い発光積層体にダメージを与えることなく、使用時の気圧変化や温度変化が生じても基板形状が変化せず、基板変形による基板や封止接着剤にストレスが発生せず、レンズ効果や映り込みの変化といった光学的特性の変化が生じない有機EL表示装置を得ることができる。
また、多重の環状封止接着剤の間、及び封止接着剤の内側に設けた乾燥剤により、酸素や水分の透過を抑えることができるので、ダークスポットを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置の第1の実施例を示す断面図及び斜視図である。
【図2】従来の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の断面図である。
【図3】本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置の第2の実施例を示す断面図及び斜視図である。
【図4】本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置の第3の実施例を示す断面図である。
【図5】本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置の第4の実施例を示す断面図である。
【図6】本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の一実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…発光積層体形成基板、2…封止基板、3…封止接着剤、4…スペーサ、5…発光積層体、6…有機発光層、7…アノード電極、8…カソード電極、9…画素分離バンク、10…突起、11…薄膜トランジスタ(TFT)、12…配線、13…乾燥剤、14…負圧空間、15…溝、16…電極、17…正圧空間、601…TFT成膜工程、602…アノード電極成膜工程、603…画素分離バンク成膜工程、604…有機発光層成膜工程、605…カソード電極成膜工程、606…溝加工工程、607…乾燥剤搭載工程、608…封止接着剤塗布工程、609…基板重ね合わせ工程、610…封止接着剤加圧工程、611…封止接着剤硬化工程、612…駆動回路取付け工程。

Claims (10)

  1. 各画素を分離して配置するための画素分離バンク、前記画素分離バンクによって区切られた各空間にアノード電極、カソード電極、前記アノード電極及び前記カソード電極に挟み込まれた発光積層体が配置された発光積層体郡を備えた第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板の発光積層体郡の外側を囲うように配置され、前記第1の基板と前記第2の基板とを接着するための接着剤とを備え、前記第1の基板、前記第2の基板及び前記接着剤で形成される空間を減圧し、前記画素分離バンクの先端又は前記画素分離バンクに設けられた突起の先端を前記第2の基板の内面に接触させて前記発光積層体を外圧による破壊から保護することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  2. 請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記空間は真空であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  3. 請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記空間に大気圧以下に減圧された不活性ガスを充填することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  4. 請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の基板の前記接着剤が配置される場所より内側で、且つ前記第1の基板に設けられた前記発光積層体郡に対応する場所より外側の位置に乾燥剤を設置することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  5. 請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の基板の前記接着剤が配置される場所より内側で、且つ前記第1の基板に設けられた前記発光積層体郡に対応する場所より外側の位置に溝を設け、前記溝又は前記第1の基板の前記溝に対応する部分に乾燥剤を設置することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  6. 請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記発光積層体郡の周囲に環状に設置された前記接着剤を複数列設けることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  7. 請求項6記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記環状に設置された前記複数列の接着剤の間に相当する第2の基板の位置に溝を設け、前記溝又は前記第1の基板の前記溝に対応する部分に乾燥剤を設置することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  8. 請求項1乃至7の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、第1の基板及び第2の基板は酸素及び水を透過させない材質で構成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  9. 請求項1乃至8の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第1の基板は光透過性の材料で構成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  10. 請求項1乃至8の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、前記第2の基板は光透過性の材料で構成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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