JP2004226457A - 波面収差補正ミラーおよび光ピックアップ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧電材料(2)が設けられたミラー基板(6a)のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板(6a)とミラー固定用ベース(8)との間に、熱膨張によるミラー基板(6a)の変形を抑制するための抑制層(21)が設けられており、該抑制層(21)を固定する一部分の部材がミラー固定用ベース(8)とは異なる抑制層専用固定部材(24)として設置されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、波面収差補正ミラーおよび光ピックアップに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、光ディスクを用いた情報記憶装置として、CDやDVDなどがある。DVDなどは、CDに比べて記録密度が高いため、情報を読み書きするときの条件が厳しくなっている。
【0003】
例えば、光ピックアップの光軸とディスク面は垂直であることが理想であるが、実際にはディスクが樹脂製のため、かなりうねりを持っていて、これを回転させると、光ピックアップの光軸とディスク面は常に垂直ではなくなる(これを以降、チルトと表現する)。また、ディスクは、図24(a),(b)に示すように、記録層(108)が樹脂層(102)を介しているため、ディスク面が垂直でなくなると光路が曲げられディスク上に正しくスポットを絞れなくなり、コマ収差(103)が発生する。この収差が許容される量よりも大きくなると、正しく読み書きが出来なくなるという不具合が生じる。なお、図24(a),(b)はディスクがそれぞれCD,DVDの場合である。
【0004】
チルトの影響を少なくする手段としては、対物レンズ(101)と記録層(108)との間の樹脂層を薄くすることがある。実際に、DVD(図24(b))が、CD(図24(a))に比較して、対物レンズ(101)と記録層(108)との間の樹脂層(102)の厚さを半分にしたのは、この効果を狙ったものである。しかし、この方法の場合、DVDよりも高密度記録をしようとした場合には樹脂層をもっと薄くしてさらにチルトの影響を少なくすることになるが、今度はディスク上にごみや傷がついた場合に、信号が正しく読み書きできなくなるという不具合が生じる。このため、アクチュエータによって光軸を傾けて(チルト)対応しているのが現状である。
【0005】
チルトを光学的に補正するため、液晶を用いたり(例えば、特許文献1参照。)、透明圧電素子を用いたり(例えば、特許文献2参照。)、可変ミラーを用いたりする(例えば、特許文献3参照。)ことが提案されている。
【0006】
具体的に、特許文献1(図21)では、液晶板を用いて位相制御することによりコマ収差を補正している。しかし、この方法では、レーザーが液晶板を通過するために光量が減衰し、書き込みに必要なエネルギーを得ることが困難であり、また液晶の特性から、特にタンジェンシャルチルト制御に要求される高周波動作に使用するのは困難であると思われる。
【0007】
また、特許文献2(図22)では、実際に透明圧電素子単体で必要な変位量を得るためには高電圧が必要となり、光ピックアップなどに用いるには現実的ではない。
【0008】
また、特許文献3(図23)は、ミラー自体を積層型圧電素子で変形させ位相制御するようにしている。しかし、光ピックアップなどの小さい部品に用いるには配線などの考慮がされておらず、複雑になりかつ組み付けコストも高くなる。また、配線などの問題が解決できたとしても、積層型圧電素子をかなり小さくしなければならなくなるため、技術的にもコスト的にもなかなか困難である。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−79135号公報
【0010】
【特許文献2】
特開平5−144056号公報
【0011】
【特許文献3】
特開平5−333274号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このような情報を読み書きするときに不具合を生じさせるチルトの影響を、圧電素子を使用したユニモルフまたはバイモルフ形状の波面収差補正ミラーで波面収差を補正する方法が、低電圧で小型化にも有利であると考えられるが、ミラー基板のミラー面を変形させる場合、低電圧で駆動させるためには変形しやすくなくてはならない。このためにはミラー基板を薄くすることが一番効果的であるが、図18(a),(b)に示すような波面収差補正ミラーの場合、ミラー基板を薄くすると、その非対称な形状から温度の影響を受けやすくなり、例えば室温から温度が上昇したとき図18(c)に示すように平面度は悪くなってしまう。
【0013】
本発明は、温度によるミラーの平面度への影響を少なくすることの可能な波面収差補正ミラーおよび光ピックアップを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための抑制層が設けられており、前記抑制層を固定する一部分の部材がミラー固定用ベースとは異なる抑制層専用固定部材として設置されていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記抑制層は、弾性部材またはゲル材であり、前記抑制層を固定する一部分の部材の厚みや面積を変えることにより、熱膨張によるミラー基板の変形がコントロールされるようになっていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記抑制層を固定する一部分の部材に穴が設けられていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記抑制層は、弾性部材またはゲル材であり、前記抑制層を固定する一部分の部材は、弾性率を調整できる弾性部材またはゲル材であることを特徴としている。
【0018】
また、請求項5記載の発明は、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記抑制層は、弾性部材またはゲル材であり、前記抑制層を固定する一部分の部材は、圧電材であることを特徴としている。
【0019】
また、請求項6記載の発明は、請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記抑制層は、液体または気体であり、ミラー外部に設けた液室または気室(以下、調整室という)によって抑制層である液体または気体の圧力をコントロールすることにより、熱膨張によるミラー基板の変形がコントロールされるようになっていることを特徴としている。
【0020】
また、請求項7記載の発明は、請求項6記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記調整室は、一部の厚さが他の部分の厚さよりも薄いか、あるいは、薄肉材または薄膜で形成されていることを特徴としている。
【0021】
また、請求項8記載の発明は、請求項7記載の波面収差補正ミラーにおいて、薄肉材または薄膜の厚さや面積や材質によって抑制層である液体または気体の圧力をコントロールすることにより、熱膨張によるミラー基板の変形がコントロールされるようになっていることを特徴としている。
【0022】
また、請求項9記載の発明は、請求項7記載の波面収差補正ミラーにおいて、調整室の厚さが薄い部分には、圧電材が用いられていることを特徴としている。
【0023】
また、請求項10記載の発明は、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー固定用ベースには穴が設けられており、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間にあって、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための抑制部材が、ミラー固定用ベースには直接接することなく設けられており、該抑制部材は、ミラー固定用ベースに設けられた穴に充填された支持部材を介してミラー固定用ベースに支えられていることを特徴としている。
【0024】
また、請求項11記載の発明は、請求項10記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記支持部材は、弾性部材またはゲル材であることを特徴としている。
【0025】
また、請求項12記載の発明は、請求項10または請求項11記載の波面収差補正ミラーにおいて、ミラー固定用ベースに設けられた穴に充填された支持部材の厚さや面積や材質を変えることにより、熱膨張によるミラー基板の変形がコントロールされるようになっていることを特徴としている。
【0026】
また、請求項13記載の発明は、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の波面収差補正ミラーが用いられることを特徴とする光ピックアップである。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図17(a),(b),(c),(d)はミラー面が変位する波面収差補正ミラーの一例を示す図である。なお、図17(a)はミラー固定用ベースに固定された状態の斜視図であり、図17(b)はミラー基板を裏面から見た斜視図である。また、図17(c)または図17(d)はA−A’における断面図である。具体的に、図17(c)は、ミラー基板をドライエッチングで掘った例で、ミラーのエッチングした壁面がほぼ垂直であり、また、図17(d)はミラー基板を異方性エッチングで掘った例で、ミラーのエッチングした壁面が斜めになっている。
【0029】
図17(a),(b),(c),(d)を参照すると、ミラー基板(6)にはミラー材(1)が付いており、その反対側の面には、絶縁層(7)が付いている。絶縁層(7)の下には、共通電極(4)が付いており、その下には圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(ここで、上下の表現は、断面図でミラー基板(6)のミラー面を上として表現している)。このような構造のミラー部はミラー固定用ベース(8)にミラー基板固定部(3a)で固定されている。
【0030】
また、図18(a),(b)はミラー面が変位する波面収差補正ミラーの他の例を示す図である。なお、図18(a)は斜視図であり、図18(b)は図18(a)のA−A’における断面図である。
【0031】
図18(a),(b)を参照すると、ミラー基板(6)にはミラー材(1)が付いており、その反対側の面には、絶縁層(7)が付いている。絶縁層(7)の下には、共通電極(4)が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、左右に分かれた個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー基板(6)のミラー面を上として表現している)。このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端で固定されている。
【0032】
ところで、このような構造で、電極(4)を接地し、左右に分かれた個別電極(5)の一方にプラスの電圧をかけ、他方にマイナスの電圧をかけたとすると、ミラー基板(6)の断面にあたる部分は、例えば図20(b)に示すような断面形状になる。個別電極(5)に逆電圧をかけた場合には、その逆の形状になる。
【0033】
つまり、ミラー基板(6)は電圧がかかっても伸び縮みしないが、圧電材料(2)は電圧がかかれば伸び縮みするため、個別電極(15)にプラスの電圧を加えた場合、その部分の圧電材料(2)が横方向に縮むとすると、マイナス電圧をかけた場合には、その部分の圧電材料(2)は横方向に伸びることになり、個別電極(5)にプラスの電圧を加えた場合には、ミラー基板(6)のミラー材(1)の面は凸になり、個別電極(5)にマイナスの電圧を加えた場合には、ミラー基板(6)のミラー材(1)の面は凹になる。
【0034】
このような波面収差補正ミラーを図19に示すような光ピックアップの光軸上に設け制御することにより、チルトによるコマ収差を低減することが可能になる。
【0035】
なお、図19において、(10)は波面収差補正ミラー、(11)は光ディスク、(12)は対物レンズ及び対物光学系、(13)は立ち上げミラー、(14)は偏光ビームスプリッタ、(15)はレーザ素子及びレーザ光学系、(16)は光検出素子及び光検出光学系である。
【0036】
図19の光ピックアップでは、レーザー素子(15)から発せられたレーザー光は、レーザ光学系により平行光にされ偏光ビームスプリッタ(14)を通り、波面収差補正ミラー(10)で反射され、立ち上げミラー(13)でさらに反射され、対物レンズ及び対物光学系(12)で集光され、光ディスク(11)に焦点を結ぶ。
【0037】
また、光ディスク(11)から反射したレーザ光は、対物レンズ及び対物光学系(12)を通り、立ち上げミラー(13)で反射され、波面収差補正ミラー(10)で反射され、偏光ビームスプリッタ(14)を通り、光検出光学系で集光され、光検出素子(16)で検出する。この検出素子にはチルト検出用の検出素子も設置されている。
【0038】
このような光学系で、光ディスク(11)がレーザ光の光軸に対し垂直な位置から傾くと、光ディスクから反射して戻ってきたレーザ光の波面は乱れ、例えば図20(a)に示すような波面収差(コマ収差)が発生する。ここで横軸は例えば図18(a)に示した波面収差補正ミラーのA−A’断面と同一断面であり、縦軸は波面収差である。つまり、図19の光学系で、光ディスク(11)がチルトしたときに波面収差補正ミラー(10)のミラー面は平らであり、そこで反射した反射光の波面収差である。ちなみに、光ディスク(11)がレーザ光の光軸に対し垂直であれば、波面は図20(a)に示すような収差は発生せず、横軸と同じでまっすぐになる。図25は波面の面方向を等高線で表した図であり、A−A’断面が図20(a)のようになっている。
【0039】
図20(b)は波面収差補正ミラー(10)を故意に収差を発生させるよう動作させ、その反射光の波面収差を表した例である。ここで、横軸は例えば図18(a)に示した波面収差補正ミラーのミラー表面のA−A’断面と同一断面であり、縦軸は波面収差である。
【0040】
いま仮に、光ディスクが傾き、ディスクからの反射光の波面が図20(a)であったとする。ディスクが傾いていない時の反射光の波面が図20(b)のようになるよう波面収差補正ミラーを制御すれば、波面収差補正ミラーから反射された反射光の波面は図20(c)のようになり、図20(a)にくらべ波面収差を低減させることが可能となる。
【0041】
しかし、このような構造の波面収差補正ミラーは、ミラー基板(6)を薄くすると、その非対称な形状から温度の影響を受けやすくなり、例えば室温から温度が上昇したとき図18(c)に示すように平面度は悪くなってしまうという不具合を生じる。平面度が悪くなると、本来波面収差を低減させたい変形形状に変形させることができなくなる。例えば、図18(c)のように変形したミラーで波面収差補正の形状に変形させようとすると、図26(a)のような変形形状になってしまい、本来変形したい形状の26(b)とは違う形状になってしまう。
【0042】
最近のPC(パーソナルコンピューター)などは室温から60℃くらいまで温度上昇するため、このような不具合が出る可能性が高い。
【0043】
このため、電極に直接オフセット電圧などを与えることで平面度を良くする方法もあるが、本発明では、これらの温度によるミラーの平面度への影響を少なくするため、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための抑制層または抑制部材を、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間に、あるいは、ミラー基板内に設けている。
【0044】
本願の発明者は、本願の先願(特願2002−325122)において、図27,図28,図29,あるいは図30に示すような抑制層(21)を設けた発明(以下、先願発明と称す)を案出している。
【0045】
すなわち、図27,図28,図29,図30は、それぞれ、先願発明の波面収差補正ミラーの第1,第2,第3,第4の構成例を示す図である。図27乃至図30を参照すると、先願発明の波面収差補正ミラーでは、ミラー基板(6a)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0046】
このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部(3a)で固定されている。そして、図27,図28,図29,図30の例では、ミラー基板(6a)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち、抑制層(21)が設けられている。
【0047】
なお、図28は抑制層(21)に穴(22)を設け、熱膨張の効果をコントロールできる例であり、また、図29は抑制層(21)に気泡(23)を設け、熱膨張の効果をコントロールできる例であり、また、図30は抑制層(21)を分割して、熱膨張の効果をコントロールできる例である。
【0048】
図27,図28,図29,図30に示す先願発明の波面収差補正ミラーでは、温度上昇が起きて圧電材料(2)がミラー基板(6a)よりも横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6a)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6a)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張してミラー基板(6a)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6a)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合いミラー基板(6a)をほとんど撓まなくすることが可能となる。
【0049】
本発明では、これらの温度によるミラーの平面度への影響をさらに少なく、また熱膨張の効果をさらにコントロールしやすくするため、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための抑制層または抑制部材を固定する一部分に専用部材(専用の固定部材)を設けている。固定部材を抑制層または抑制部材の専用にすることにより、固定部材部分で、熱膨張によるミラー基板の変形に対する微妙なコントロールが可能になる。
【0050】
以下に本発明の実施形態を説明するが、本発明は、少なくとも図17,図18などの構造に適用できるものであり、以下の説明では、便宜上、図18の構造を利用して説明する。
【0051】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための抑制層が設けられており、前記抑制層を固定する一部分の部材がミラー固定用ベースとは異なる抑制層専用固定部材として設置されていることを特徴としている。
【0052】
図1は本発明の第1の実施形態の波面収差補正ミラーの第1の構成例を示す図である。図1の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図18(a),(b),(c)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0053】
図1を参照すると、ミラー基板(6a)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。
【0054】
このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部(3a)で固定されている。そして、ミラー基板(6a)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち、抑制層(21)が設けられている。
【0055】
ところで、図1の構成例では、ミラー固定用ベース(8)の一部には穴があいており、抑制層(21)が穴まで満たされており、穴には抑制層(21)の一部を固定する抑制層専用固定部材(24)が設けられている。すなわち、図1の構成例は、圧電材料(2)が設けられたミラー基板(6a)のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板(6a)とミラー固定用ベース(8)との間に、熱膨張によるミラー基板(6a)の変形を抑制するための抑制層(21)が設けられており、該抑制層(21)を固定する一部分の部材がミラー固定用ベース(8)とは異なる抑制層専用固定部材(24)として設置されている。
【0056】
図2は熱膨張にするミラー基板の変位を説明するための図である。なお、図2では、見やすくするため、厚さをより誇張し、ミラー固定用ベース(8)は省略した。また、使用しているミラー固定用ベース(8)はミラー基板(6)と同じ材質である。
【0057】
図18(a),(b)に示したような従来構造の場合、ミラー基板(6)と圧電材料(2)との熱膨張率は違い、熱膨張率がミラー基板(6)<圧電材料(2)の関係であるとすると、温度上昇が起きると、図2に示すように、圧電材料(2)のほうが大きく横に伸びるためミラー面は凹になるように撓む(矢印の長さは熱膨張率の大きさを表している)。一方、図3のように、ミラー基板(6)の反対側に同じ形状の同じ材料(例えば、圧電材料)を設けると、ミラー基板(6)が撓むことはないが、圧電材料(2)のように組成が粗い材料では研磨してもミラーとして使えない。また図4のように、ミラー基板(6)として、圧電材料(2)とほぼ同じ熱膨張率の基板を使用すれば、ミラー基板(6)はほとんど撓むことはないが、そのように都合の良い材料はなかなかなく、あったとしてもかなり限定される可能性が高い。
【0058】
これに対し、図1の構造であれば、温度上昇が起きて、圧電材料(2)がミラー基板(6a)より横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6a)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6a)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6a)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6a)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6a)はほとんど撓まなくなる。さらに、図1の構成では、抑制層(21)の一部を専用に固定する抑制層専用固定部材(24)が設けられているので、抑制層(21)の熱膨張率やヤング率などの物性値や構造だけではコントロールしきれない部分を抑制層専用固定部材(24)が抑制層(21)に押されて撓むことで、微妙にコントロールすることが可能となる。
【0059】
なお、図1において、ミラー基板(6a)としてSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)として弾性接着剤を用い、抑制層専用固定部材(24)としてPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いることができる。
【0060】
また、図5,図6,図7は図1の波面収差補正ミラーの変形図を示す図である。ここで、図5は抑制層専用固定部材(24)の厚さを変えた例であり、また、図6は抑制層専用固定部材(24)の面積を変えた(同時にミラー固定用ベース(8)の穴の面積も変わる)例であり、また、図7は抑制層専用固定部材(24)に穴(24d)を設けた例である。
【0061】
図5,図6あるいは図7の構造においても、図1の構造と同様に、温度上昇が起きて圧電材料(2)がミラー基板(6a)より横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6a)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6a)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6a)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6a)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6a)はほとんど撓まなくなる。さらに、抑制層(21)の一部を専用に固定する抑制層専用固定部材(24)が設けられているので、抑制層(21)の熱膨張率やヤング率などの物性値や構造だけではコントロールしきれない部分を、抑制層専用固定部材(24)が抑制層(21)に押されて撓むことで、微妙にコントロールすることが可能となる。
【0062】
さらに、図5の構造では、抑制層専用固定部材(24)の厚さを変えられるので、撓みのコントロールがさらにしやすくなる。また、図6の構造では、抑制層専用固定部材(24)の面積を変えることにより(同時にミラー固定用ベースの穴の面積も変わるので)、撓みのコントロールがさらにしやすくなる。また、図7では、抑制層専用固定部材(24)に穴(24d)を自由に設けられるので、撓みのコントロールがさらにしやすくなる。
【0063】
なお、図5,図6,図7においても、ミラー基板(6a)としてSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)として弾性接着剤を用い、抑制層専用固定部材(24)としてPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いることができる。
【0064】
また、図8,図9は図1の波面収差補正ミラーのさらに別の変形例を示す図である。ここで、図8は抑制層専用固定部材(24)の物性を変えて弾性率を変えた弾性材を用いた例であり、また、図9は抑制層専用固定部材(24)に圧電材を使用した例である。
【0065】
図8あるいは図9の構造においても、図1の構造と同様に、温度上昇が起きて圧電材料(2)がミラー基板(6a)より横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6a)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6a)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6a)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6a)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6a)はほとんど撓まなくなる。さらに、抑制層(21)の一部を専用に固定する抑制層専用固定部材(24)が設けられているので、抑制層(21)の熱膨張率やヤング率などの物性値や構造だけではコントロールしきれない部分を、抑制層専用固定部材(24)が抑制層(21)に押されて撓むことで、微妙にコントロールすることが可能となる。
【0066】
さらに、図8の構造では、抑制層専用固定部材(24)に弾性率を変えられる弾性材を用いているので、量のコントロールや弾性率のコントロールがしやすくなり、さらに撓みのコントロールがしやすくなる。また、図9の構造では、抑制層専用固定部材(24)に圧電材を用いているので、電圧コントロールで任意の撓みにコントロールできて、さらに撓みのコントロールがしやすくなる。
【0067】
なお、図8,図9においても、ミラー基板(6a)としてSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)として弾性接着剤を用いることができ、また、抑制層専用固定部材(24)として、弾性材には弾性率が調整できる弾性接着剤、圧電材にはPZTを使用したバイモルフ構造を用いることができる。
【0068】
図10は本発明の第1の実施形態の波面収差補正ミラーの第2の構成例を示す図である。
【0069】
図10の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図18(a),(b),(c)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0070】
すなわち、図10の波面収差補正ミラーも、ミラー基板(6a)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部(3a)で固定されている。
【0071】
ところで、図10の波面収差補正ミラーでは、ミラー基板(6a)とミラー固定用ベース(8)との間には、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための層、すなわち、液体または気体の抑制層(21)が設けられている。そして、ミラー固定用ベース(8)の横には(ミラー外部には)、調整室(液室または気室)(27)が設けられており、調整室(27)には薄肉部(28)が設けられている。なおここで、抑制層(21)は、ミラー固定用ベース(8)と調整室(27)をつなぐ細い流路を除いて、ミラー基板(6a)とミラー固定用ベース(8)とで密封されている。
【0072】
図10の構造では、温度上昇が起きて圧電材料(2)がミラー基板(6a)より横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6a)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6a)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制層(21)が膨張し、ミラー基板(6a)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6a)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6a)はほとんど撓まなくなる。さらに、ミラー固定用ベース(8)の横に設けられている調整室(27)の薄肉部(28)が抑制層(21)に押されて撓むことで、微妙なコントロールが可能となる。なお、ミラー固定用ベース(8)には薄肉部を設けないで調整室(27)を介して薄肉部(28)を設けているのは、ミラー固定用ベース(8)と調整室(27)をつなぐ細い流路(オリフィス)がダンパの役割を果たし、不測の振動などに対し減衰効果が期待できるからである。
【0073】
このように、図10の構成例では、ミラー外部に設けた液室または気室(すなわち、調整室)によって抑制層である液体または気体の圧力をコントロールすることにより、熱膨張によるミラー基板の変形がコントロールされるようになっている。
【0074】
なお、図10において、ミラー基板(6a)としてSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としてシリコンオイルを用い、調整室(27)としてアルミニューム合金を用いることができる。
【0075】
また、図11,図12,図13は、それぞれ、図10の変形例を示す図である。ここで、図11は図10に対して薄肉部(28)の厚さと面積を変えた例であり、また、図12は薄肉部(28)に図10とは別の薄肉材を用いた例であり、図13は薄肉部(28)に圧電材である薄肉材を用いた例である。
【0076】
図11の構成では、薄肉部(28)の厚さと面積を変えられるので、さらに撓みを微妙にコントロールできる。また、図12の構成では、薄肉部(28)に図10,図11とは別の薄肉材を用いているので、容易に形状調整ができ、さらに撓みを微妙にコントロールできる。また、図13の構成では、薄肉部(28)に圧電材である薄肉材(30)を用いているので、電圧によって自由に撓みをコントロールできる。
【0077】
なお、図11,図12,図13においても、ミラー基板(6a)としてSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制層(21)としてシリコンオイルを用い、調整室(27)としてアルミニューム合金を用いることができ、また、図12の薄肉材(28)として精密ばね材のベリリウム銅を用い、図13の薄肉材(28)としてバイモルフの圧電材を用いることができる。
【0078】
上述したように、本発明の第1の実施形態は、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための抑制層が設けられており、前記抑制層を固定する一部分の部材がミラー固定用ベースとは異なる抑制層専用固定部材として設置されている。
【0079】
ここで、前記抑制層は、弾性部材またはゲル材であり、前記抑制層を固定する一部分の部材の厚みや面積を変えることにより、熱膨張によるミラー基板の変形がコントロールされるようになっている。
【0080】
また、前記抑制層を固定する一部分の部材には、穴が設けられていても良い。
【0081】
また、前記抑制層は、弾性部材またはゲル材であり、前記抑制層を固定する一部分の部材には、弾性率を調整できる弾性部材またはゲル材を用いることができる。
【0082】
あるいは、前記抑制層は、弾性部材またはゲル材であり、前記抑制層を固定する一部分の部材には、圧電材を用いることができる。
【0083】
また、上記波面収差補正ミラーにおいて、前記抑制層は、液体または気体であり、ミラー外部に設けた液室または気室(すなわち、調整室)によって抑制層である液体または気体の圧力をコントロールすることにより、熱膨張によるミラー基板の変形がコントロールされるようにすることもできる。
【0084】
ここで、前記調整室は、一部の厚さが他の部分の厚さよりも薄いか、あるいは、薄肉材または薄膜で形成されている。
【0085】
具体的に、薄肉材または薄膜の厚さや面積や材質によって抑制層である液体または気体の圧力をコントロールすることにより、熱膨張によるミラー基板の変形をコントロールすることができる。
【0086】
また、調整室の厚さが薄い部分には、圧電材を用いることができる。
【0087】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー固定用ベースには穴が設けられており、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間にあって、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための抑制部材が、ミラー固定用ベースには直接接することなく設けられており、該抑制部材は、ミラー固定用ベースに設けられた穴に充填された支持部材を介してミラー固定用ベースに支えられていることを特徴としている。
【0088】
図14は本発明の第2の実施形態の波面収差補正ミラーの構成例を示す図である。図14の波面収差補正ミラーも、基本構造は、図18(a),(b),(c)に示したミラー面が変位する波面収差補正ミラーの例と同じである。
【0089】
すなわち、図14の波面収差補正ミラーも、ミラー基板(6a)には、図示していないミラー材が付いており、その反対側の面には、図示していない絶縁層が付いている。絶縁層の下には、図示していない共通電極が付いており、その下に、圧電極性が一方向の圧電材料(2)が付いて、さらにその下に、個別電極(5)が付いている(なお、ここで、上下の表現は断面図でミラー面を上として表現している)。このような構造のミラー部は、ミラー固定用ベース(8)に両端のミラー基板固定部(3a)で固定されている。
【0090】
ところで、図14の波面収差補正ミラーでは、ミラー固定用ベース(8)には穴が開いており、その穴に接しないで、抑制部材(21a)が設けられ、穴の隙間には支持部材(25)が設置されている。ここで、支持部材(25)は、例えば、弾性部材またはゲル材で形成されている。
【0091】
図14の構造では、温度上昇が起きて圧電材料(2)がミラー基板(6a)より横に伸びようとする力が発生しミラー基板(6a)が図の下方向に撓もうとしても、ミラー基板(6a)とミラー固定用ベース(8)との間に設けられている抑制部材(21a)が膨張して、ミラー基板(6a)を押し上げる力が発生し、下方向に撓もうとするミラー基板(6a)を押し上げる形になるので、お互いの力がキャンセルし合い、ミラー基板(6a)はほとんど撓まなくなる。さらに、図14では、穴に接しないで抑制部材(21a)が設けられ、穴の隙間には支持部材(25)が設置されているので、抑制部材(21a)の熱膨張率やヤング率などの物性値や構造だけではコントロールしきれない部分を、支持部材(25)の部分で微妙にコントロールすることが可能となる。
【0092】
また、図15,図16は、それぞれ、図14の変形例を示す図である。ここで、図15は支持部材(25)の厚さを変えた例であり、図15の例では、支持部材(25)の厚さを変えられるため、さらに微妙なコントロールがしやすくなる。また、図16は支持部材(25)の隙間を変えた例であり、図16の例では、支持部材(25)の隙間を変えられるため、さらに微妙なコントロールがしやすくなる。
【0093】
なお、図14,図15,図16において、ミラー基板(6a)としてSi(シリコン)を用い、圧電材料(2)としてPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用い、抑制材(21a)としてセラミックスを用い、支持部材(25)として弾性率が調整できる弾性接着剤を用いることができる。
【0094】
上述したように、本発明の第2の実施形態は、圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー固定用ベースには穴が設けられており、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間にあって、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための抑制部材が、ミラー固定用ベースには直接接することなく設けられており、該抑制部材は、ミラー固定用ベースに設けられた穴に充填された支持部材を介してミラー固定用ベースに支えられていることを特徴としている。
【0095】
ここで、支持部材には、弾性部材またはゲル材を用いることができる。
【0096】
また、この第2の実施形態の波面収差補正ミラーでは、ミラー固定用ベースに設けられた穴に充填された支持部材の厚さや面積や材質を変えることにより、熱膨張によるミラー基板の変形をコントロールすることができる。
【0097】
また、上述した本発明(第1あるいは第2の実施形態)の波面収差補正ミラーを用いた光ピックアップを構成することができる。ここで、光ピックアップは、例えば図19に示すような構成となっており、図19の例において、波面収差補正ミラー(10)に、上述した本発明(第1あるいは第2の実施形態)の波面収差補正ミラーを用いることができる。
【0098】
上述したように、本発明の波面収差補正ミラーによれば、微妙なコントロールがしやすくなり、温度変化に対しさらに変形が少なくなり、ミラー面の平面度を良い状態に保つことができるので、本発明の波面収差補正ミラーを用いることで、信頼性の高い光ピックアップを提供できる。
【0099】
上述の説明では、第1,第2の実施形態および各変形例を示したが、本発明はこれらの実施形態,変形例にとどまることなく、あらゆる組み合わせや応用ができることはいうまでもない。例えば、抑制層専用固定部材または支持部材は1個だけでなくて複数個でも良く、調整室は1個だけでなくて複数個でも良い。また、弾性材やゲル材の例の図では、抑制層は密封されているように描かれていたが、抑制層は特に密封されていなくても良い。また、共通電極としたところは個別電極でも良いし、圧電材料はミラー基板と同じ大きさにして電極だけ必要なサイズにしても良いし、電極と同じ大きさの圧電材料を複数個用いても良い。さらに、使用光学系の説明として、図19に示すように、波面収差補正ミラー(10)と立ち上げミラー(13)とを別々にした例を示したが、立ち上げミラーに波面収差補正ミラーを直接用いても良い、また、レーザ光学系(15)と光検出光学系(16)とを別々にした例を示したが、レーザ光学系(15)と光検出光学系(16)とが一体になっている光学系でも良いことはいうまでもない。
【0100】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項9記載の発明によれば、抑制層を固定する一部分の部材がミラー固定用ベースとは異なる抑制層専用固定部材として設置されているので、熱膨張が発生してミラー基板を変形させる力が発生しても、全体でキャンセルさせようとするときに、抑制層専用固定部材の部分でコントロールでき、温度変化に対してミラーの平面度の変化を小さくできる。
【0101】
特に、請求項2記載の発明では、抑制層が弾性部材またはゲル材であり、抑制層を固定する一部分の部材の厚みや面積を変えられるので、微妙なコントロールができ、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくできる。
【0102】
また、請求項3記載の発明では、抑制層を固定する一部分の部材に穴があいているので、穴の数や開口面積で微妙なコントロールができ、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくできる。
【0103】
また、請求項4記載の発明では、抑制層が弾性部材またはゲル材であり、抑制層を固定する一部分の部材が弾性率を調整できる弾性部材またはゲル材なので、弾性率により微妙なコントロールができ、弾性率で温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくできる。
【0104】
また、請求項5記載の発明では、抑制層が弾性部材またはゲル材であり、抑制層を固定する一部分の部材が圧電材であるので、電圧により微妙なコントロールができ、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくできる。
【0105】
また、請求項6記載の発明では、抑制層が液体または気体であり、ミラー外部に設けた液室または気室(調整室)によって圧力をコントロールできるので、圧力により微妙なコントロールができ、温度変化に対してミラーの平面度の変化をさらに小さくできる。
【0106】
また、請求項7記載の発明では、調整室は、一部の厚さが他の部分の厚さよりも薄いか、あるいは、薄肉材または薄膜で形成されているので、薄肉部で微妙なコントロールができ、温度変化に対してミラーの平面度の変化をより安定して小さくできる。
【0107】
また、請求項8記載の発明では、薄肉材または薄膜の厚さや面積や材質を変えることができるので、薄肉部で微妙なコントロールができ、温度変化に対してミラーの平面度の変化をより安定して小さくできる。
【0108】
また、請求項9記載の発明では、薄肉部に圧電材を用いているので、電圧により微妙なコントロールができ、ミラーの平面度の変化をさらに安定して小さくできる。
【0109】
また、請求項10乃至請求項12記載の発明によれば、ミラー固定用ベースの一部分に穴が設けられており、抑制部材は、ミラー固定用ベースには直接接することなく、ミラー固定用ベースに設けられた穴に充填された支持部材(例えば、弾性部材またはゲル材)を介してミラー固定用ベースに支えられているので、微妙なコントロールができ、ミラーの平面度の変化をさらに小さくできる。
【0110】
特に、請求項12記載の発明では、ミラー固定用ベースに設けられた穴に充填された支持部材の厚さや面積や材質を変えられるので、微妙なコントロールができ、ミラーの平面度の変化をさらに小さくできる。
【0111】
また、請求項13記載の発明によれば、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の波面収差補正ミラーが用いられることを特徴とする光ピックアップを用いているので、温度変化に対し、信頼性の良い光ピックアップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の波面収差補正ミラーの第1の構成例を示す図である。
【図2】熱膨張によるミラー基板の変形を説明するための図である。
【図3】ミラー基板の反対側に同じ形状の同じ材料(例えば圧電材料)を設けた場合を示す図である。
【図4】ミラー基板として、圧電材料とほぼ同じ熱膨張率の基板を使用する場合を示す図である。
【図5】図1の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図6】図1の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図7】図1の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図8】図1の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図9】図1の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の波面収差補正ミラーの第2の構成例を示す図である。
【図11】図10の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図12】図10の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図13】図10の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態の波面収差補正ミラーの構成例を示す図である。
【図15】図14の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図16】図14の波面収差補正ミラーの変形例を示す図である。
【図17】ミラー面が変位する波面収差補正ミラーの一例を示す図である。
【図18】ミラー面が変位する波面収差補正ミラーの一例を示す図である。
【図19】光ピックアップの構成例を示す図である。
【図20】波面収差を説明するための図である。
【図21】従来技術を説明するための図である。
【図22】従来技術を説明するための図である。
【図23】従来技術を説明するための図である。
【図24】CV,DVDのディスクを示す図である。
【図25】反射膜の面を等高線で表した図である。
【図26】波面収差補正の形状変形を説明するための図である。
【図27】先願発明の波面収差補正ミラーの第1の構成例を示す図である。
【図28】先願発明の波面収差補正ミラーの第2の構成例を示す図である。
【図29】先願発明の波面収差補正ミラーの第3の構成例を示す図である。
【図30】先願発明の波面収差補正ミラーの第4の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 ミラー材
2 圧電材料
3a ミラー基板固定部
4 共通電極
5 個別電極
6 ミラー基板
6a ミラー基板
7 絶縁層
8 ミラー固定用ベース
10 波面収差補正ミラー
11 光ディスク
12 対物レンズ及び対物光学系
13 立ち上げミラー
14 偏光ビームスプリッタ
15 レーザ素子及びレーザ光学系
16 光検出素子及び光検出光学系
21 抑制層(弾性材またはゲル材)
21a 抑制部材
22 穴
23 気泡
24 抑制層専用固定部材
24d 穴
25 支持部材
27 調整室
28 薄肉部
101a,101b 対物レンズ(101a:CD用、101b:DVD用)
102a,102b ディスク(102a:CD用、102b:DVD用)
103a,103b スポット(コマ収差)(103a:CD、103b:DVD)
108 記録層
Claims (13)
- 圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間に、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための抑制層が設けられており、前記抑制層を固定する一部分の部材がミラー固定用ベースとは異なる抑制層専用固定部材として設置されていることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記抑制層は、弾性部材またはゲル材であり、前記抑制層を固定する一部分の部材の厚みや面積を変えることにより、熱膨張によるミラー基板の変形がコントロールされるようになっていることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項1または請求項2記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記抑制層を固定する一部分の部材に穴が設けられていることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記抑制層は、弾性部材またはゲル材であり、前記抑制層を固定する一部分の部材は、弾性率を調整できる弾性部材またはゲル材であることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記抑制層は、弾性部材またはゲル材であり、前記抑制層を固定する一部分の部材は、圧電材であることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項1記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記抑制層は、液体または気体であり、ミラー外部に設けた液室または気室(以下、調整室という)によって抑制層である液体または気体の圧力をコントロールすることにより、熱膨張によるミラー基板の変形がコントロールされるようになっていることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項6記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記調整室は、一部の厚さが他の部分の厚さよりも薄いか、あるいは、薄肉材または薄膜で形成されていることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項7記載の波面収差補正ミラーにおいて、薄肉材または薄膜の厚さや面積や材質によって抑制層である液体または気体の圧力をコントロールすることにより、熱膨張によるミラー基板の変形がコントロールされるようになっていることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項7記載の波面収差補正ミラーにおいて、調整室の厚さが薄い部分には、圧電材が用いられていることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 圧電材料が設けられたミラー基板のミラー面を変位させることにより収差補正する波面収差補正ミラーにおいて、ミラー固定用ベースには穴が設けられており、ミラー基板とミラー固定用ベースとの間にあって、熱膨張によるミラー基板の変形を抑制するための抑制部材が、ミラー固定用ベースには直接接することなく設けられており、該抑制部材は、ミラー固定用ベースに設けられた穴に充填された支持部材を介してミラー固定用ベースに支えられていることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項10記載の波面収差補正ミラーにおいて、前記支持部材は、弾性部材またはゲル材であることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項10または請求項11記載の波面収差補正ミラーにおいて、ミラー固定用ベースに設けられた穴に充填された支持部材の厚さや面積や材質を変えることにより、熱膨張によるミラー基板の変形がコントロールされるようになっていることを特徴とする波面収差補正ミラー。
- 請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の波面収差補正ミラーが用いられることを特徴とする光ピックアップ。
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