JP2004225715A - トルク感応型差動制限機能付き差動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】差動制限トルクを得るために特殊なギヤを必要とせず、安価で標準的なギヤで差動装置を構成するできるようにする。
【解決手段】入力軸3とリングギヤ部材6とをプラネタリピニオン軸11を介して連設し、リングギヤ部材6の出力側をリヤドライブ軸8にスプライン嵌合させ、又サンギヤ軸5をフロントドライブ軸に結合させると共に、入力軸3と一体回転するデフケース2とリヤドライブ軸8との間に湿式多板クラッチ10を介装する。リングギヤ部材6はプラネタリピニオン11aに噛合する入力側リングギヤ部材6aとリヤドライブ軸8にスプライン結合する出力側リングギヤ部材6bとに二分割し、この両部材6a,6b間にドグ15が設けられている。図3に示すように、ドグ15の互いに噛合するカム面13a,14aに、走行時の抵抗によって生じるトルクが印加されて、軸方向に作用する押圧力TSが発生すると、出力側リングギヤ部材6bが押圧され、プレッシャプレート6dを介して湿式多板クラッチ10が締結されて前後輪の差動が制限される。
【選択図】図2
【解決手段】入力軸3とリングギヤ部材6とをプラネタリピニオン軸11を介して連設し、リングギヤ部材6の出力側をリヤドライブ軸8にスプライン嵌合させ、又サンギヤ軸5をフロントドライブ軸に結合させると共に、入力軸3と一体回転するデフケース2とリヤドライブ軸8との間に湿式多板クラッチ10を介装する。リングギヤ部材6はプラネタリピニオン11aに噛合する入力側リングギヤ部材6aとリヤドライブ軸8にスプライン結合する出力側リングギヤ部材6bとに二分割し、この両部材6a,6b間にドグ15が設けられている。図3に示すように、ドグ15の互いに噛合するカム面13a,14aに、走行時の抵抗によって生じるトルクが印加されて、軸方向に作用する押圧力TSが発生すると、出力側リングギヤ部材6bが押圧され、プレッシャプレート6dを介して湿式多板クラッチ10が締結されて前後輪の差動が制限される。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラネタリギヤ機構を有する差動装置に関し、詳しくはプラネタリギヤ機構の入力側、或は出力側の何れかの要素に作用するトルクに応じて差動制限トルクを発生させるトルク感応型差動制限機能付き差動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、フルタイム式の4輪駆動車では、センタデファレンシャルとしてプラネタリギヤ機構を用いたものが知られている。
【0003】
更に、この種のセンタデファレンシャルには、このセンタデファレンシャルに作用するトルクに応じて前後輪の差動を制限することで、トルク配分を適切に行うトルク感応型差動制限機構を併設するものがある。
【0004】
この種のトルク感応型差動制限装置として、例えば、特開平4−271926号公報には、入力側のハウジング内に、両出力軸の端部にそれぞれ連結した一対のサイドギヤ(ウォームギヤ)と、両端に形成した歯車で互いに噛合する複数対のエレメントギヤ(ウォームホィール)とを噛合させて設け、エレメントギヤの端部とハウジングの壁部との間にスラストワッシャ等を介装し、各ギヤの噛み合い部や摺動部の摩擦力等を利用して差動制限トルクを発生させる技術が開示されている。
【0005】
又、特許2774016号(特開平5−280597号)公報には、2つの出力軸とそれぞれ連結した第1,第2のサイドギヤと、一端に第1のサイドギヤと噛み合う第1のギヤ部が形成され他端に第2のギヤ部が形成された第1のピニオンギヤと、一端に第1のギヤ部と噛み合う第3のギヤ部が形成され他端に第2のサイドギヤと噛み合うと共に第2のギヤ部と噛み合う第4のギヤ部が形成された第2のピニオンギヤとをケース内に備え、一端側の側壁と他端側の側壁に、第1の軸孔及び第2の軸孔の外周に沿って所定の間隔を有する複数対の収容孔をケースに形成し、第1のピニオンギヤと第2のピニオンギヤとをこの収容孔で回転自在に支持するとともに、互いに噛み合わせ、各ギヤの噛み合い部や摺動部の摩擦力等を利用して差動制限トルクを発生させる技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−271926号公報
【0007】
【特許文献1】
特許2774016号(特開平5−280597号)公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した各公報に開示されている技術では、差動制限トルクを得るために特殊なギヤを必要としており、差動制限装置自体が高価なものとなってしまう問題がある。
【0009】
又、ギヤの押付力で差動制限トルクを発生させるようにしているため、差動制限トルクを機種毎に調整することが困難で、汎用性に欠ける問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、差動制限トルクを得るために特殊なギヤを必要とせず、安価で標準的なギヤで差動装置を構成するができ、又、差動制限トルクを発生させるための押付力を機種毎に容易に設定することが可能で、しかも差動制限トルクをドライブ走行時とコースト走行時とで異なる特性に設定することの可能なトルク感応型差動制限機能付き差動装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、エンジンからの駆動トルクを入力軸を介してプラネタリギヤ機構に伝達し、該プラネタリギヤ機構を介して第1の出力軸と第2の出力軸とに対して上記駆動トルクをトルク配分する差動装置において、上記入力軸と上記第1の出力軸と上記第2の出力軸との何れかに連設する第1の回転部材と、上記入力軸と上記第1の出力軸と上記第2の出力軸のうち上記第1の回転部材に連設する軸を除く何れかの軸に連設する第2の回転部材と、上記第1の回転部材と上記第2の回転部材との間に介装したクラッチ部材と、上記クラッチ部材を押圧すると共に上記第1の回転部材に連設するプレッシャプレートとを備え、上記第1の回転部材を入力側回転部材と出力側回転部材とに二分割すると共に、上記出力側回転部材を軸方向へスライド自在に設け、上記入力側回転部材と上記出力側回転部材との対向面にドグを設けると共に該ドグの噛合面をカム面とし、走行時の抵抗によって生じるトルクにて上記カム面に発生する軸方向への押圧力で上記プレッシャプレートを介して上記クラッチ部材を締結動作させることを特徴とする。
【0012】
この場合、好ましい態様としては、上記第1の回転部材が上記入力軸にプラネタリピニオン軸を介して連設するリングギヤ部材であることを特徴とする。
【0013】
他の好ましい態様としては、上記第1の回転部材が上記入力軸にプラネタリピニオン軸を介して連設するサンギヤ軸であることを特徴とする。
【0014】
別の好ましい態様としては、上記第1の回転部材が上記入力軸と一体回転するプラネタリキャリアであることを特徴とする。
【0015】
更に、他の好ましい態様としては、上記第2の回転部材が上記入力軸と一体回転するプラネタリキャリアであることを特徴とする。
【0016】
更に、別の好ましい態様としては、上記第2の回転部材が上記入力軸にプラネタリピニオン軸を介して連設するサンギヤ軸であることを特徴とする。
【0017】
更に又、他の好ましい態様としては、上記第2の回転部材が上記入力軸にプラネタリピニオン軸を介して連設するリングギヤ部材であることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。図1〜図6は本発明の第1実施の形態を示し、図1は差動装置の軸方向に沿った断面側面図、図2は差動装置のスケルトン図、図3はリングギヤ部材の要部側面図、図4は差動制限トルクの特性を示す説明図である。尚、以下の説明では、エンジントルクを前後輪へ配分するいわゆるセンタデファレンシャル装置に、本実施の形態による差動装置1Aを採用した場合を例示して説明する。又、伝達トルクを説明するに際しては、便宜的に、図面左側を前輪(前)側、右側を後輪(後)側として説明する。
【0019】
この差動装置1Aはプラネタリギヤ式であり、円筒状のデフケース2の前端に入力軸3がプラネタリキャリア4を介して一体結合されている。尚、この入力軸3に、トランスミッションの出力軸(図示せず)が結合される。
【0020】
又、デフケース2の内部にはサンギヤ軸5が、デフケース2と同軸上に配設されており、このサンギヤ軸5の前端に、第1の出力軸であるフロントドライブ軸(図示せず)が一体結合される。
【0021】
更に、デフケース2の内周に、第1の回転部材であるリングギヤ部材6が、デフケース2に対して相対摺動自在に支持されている。このリングギヤ部材6は円筒状に形成されており、前方へ開口する入力側の開口端がプラネタリキャリア4の内側面に対し、ニードルベアリング或はワッシャ等の軸受け部材7を介して当接されており、又、このリングギヤ部材6の出力側である後部にボス部6eが形成されている。
【0022】
一方、サンギヤ軸5の後端に形成された軸部5aの外周に、第2の出力軸であるリヤドライブ軸8の内周が軸受を介して相対回動自在に支持されている。更に、このリヤドライブ軸8の入力側である前部に、第2の回転部材としてのクラッチハブ8aが形成され、又、このリヤドライブ軸8の出力側である後部にボス部8bが突設され、このボス部8bに、このボス部8bを図示しないトランスミッションケースに回動自在に支持する軸受9が嵌合されている。
【0023】
又、このリヤドライブ軸8の出力側に設けられたリヤドライブギヤ8cが、このリヤドライブギヤ8cに噛合するリダクションギヤ16aを有するリダクションギヤ軸16(図2参照)に連設されており、このリダクションギヤ軸16が後輪側へ延出されているトランスファ軸、プロペラ軸及びリヤデフ装置等を介して後輪軸(何れも図示せず)に連設される。
【0024】
更に、リヤドライブ軸8に形成されているクラッチハブ8aの外周に、リングギヤ部材6のボス部6eの内周がスプライン嵌合されている。又、このクラッチハブ8aと、このクラッチハブ8aに対向するデフケース2の内周との間に、クラッチ部材としての湿式多板クラッチ10を構成するドライブプレート10aとドリブンプレート10bとが所定間隔を開けて交互に配設されており、この湿式多板クラッチ10の後端側にリテーナプレート10cが配設されている。尚、このリテーナプレート10cは、デフケース2の内周に嵌着されているスナップリング10dにて抜け止めされている。
【0025】
一方、湿式多板クラッチ10の前端側に、リングギヤ部材6の出力側に一体形成されているプレッシャプレート6dが対設されている。
【0026】
更に、サンギヤ軸5の外周とリングギヤ部材6の内周との間にブラネタリピニオン軸11が介装されており、このブラネタリピニオン軸11に形成されているプラネタリピニオン11aが、サンギヤ軸5に形成されているサンギヤ5bと、リングギヤ部材6に形成されているリングギヤ6cとに噛合されている。又、このプラネタリピニオン軸11の両端が、互いにの対抗するプラネタリキャリア4,12に軸受けを介して回動自在に支持されている。尚、この両プラネタリキャリア4,12は、プラネタリピニオン軸11と干渉しない部位で、連結部材を介して一体的に結合されている。
【0027】
一方、リングギヤ部材6は、入力側回転部材としての入力側リングギヤ部材6aと、出力側回転部材としての出力側リングギヤ部材6bとに二分割されている。図1、図2に示すように入力側リングギヤ部材6aに、プラネタリピニオン11aに噛合するリングギヤ6cが形成されており、一方、出力側リングギヤ部材6bの出力側端部にボス部6eが形成されている。
【0028】
出力側リングギヤ部材6bは、クラッチハブ8aの外周にスプライン嵌合されているボス部6eに支持されて軸方向へスライド自在にされている。又、入力側リングギヤ部材6aと出力側リングギヤ部材6bとの対向面間にドグ15が設けられている。
【0029】
図3に示すように、ドグ15は、入力側リングギヤ部材6aの端面の円周上に一定の間隔で形成されている入力側ドグ歯13と、この入力側ドグ歯13に噛合すると共に、出力側リングギヤ部材6bの端面の円周上に一定間隔で形成されている出力側ドグ歯14とで構成されている。尚、図においては、前進走行時の回転方向を紙面上方から下方への流れとして示す。
【0030】
又、この各ドグ歯13,14の噛合面に、ドライブ走行時に係合するドライブ側カム面13a,14aと、コースト走行時に係合するコースト側カム面13b,14bとが形成されている。尚、ドライブ側カム面13a,14aの傾斜角θ1とコースト側カム面13b,14bの傾斜角θ2とは、ドライブ走行時とコース走行時とに応じて各々最適な差動制限トルクを得ることができるような値に設定されている。
【0031】
次に、このような構成による本実施の形態の作用について説明する。
前進走行時において、変速機にて所定に変速されて出力軸から出力される駆動トルクは、この出力軸に結合されている差動装置1Aの入力軸3に入力され、この入力軸3に連設するプラネタリキャリア4,12を介して、このプラネタリキャリア4,12に支持されているプラネタリピニオン軸11を公転させる。
【0032】
このプラネタリピニオン軸11に形成されているプラネタリピニオン11aは、サンギヤ軸5に形成されているサンギヤ5bとリングギヤ部材6に形成されているリングギヤ6cとに噛合されている。又、サンギヤ軸5がフロントドライブ軸(図示せず)に結合され、一方、リングギヤ部材6がボス部6eを介してリヤドライブ軸8にスプライン嵌合されている。
【0033】
従って、変速機から出力された駆動トルクは、このプラネタリピニオン軸11により、サンギヤ軸5側とリングギヤ部材6側とに、サンギヤ5bとリングギヤ6cとのギヤ比で決定される配分比率(例えば、前輪4:後輪6)で配分され、前後輪側へ伝達されて4輪駆動走行が行われる。
【0034】
ところで、リングギヤ部材6の入力側リングギヤ部材6aには、プラネタリギヤによって所定に配分された駆動トルクが伝達されており、一方、出力側リングギヤ部材6bには、走行時の抵抗(走行抵抗、加速抵抗等)によって生じるトルクが印加されているため、この両者の分割面に設けたドグ15のドグ歯13,14に形成されているドライブ側カム面13a,14a間には、図3に示すように、回転方向に作用する回転トルクTFと軸方向に作用する押圧力TSとが発生する。
【0035】
この場合、入力側リングギヤ部材6aの入力側端面は、プラネタリキャリア4の内側面に軸受け部材7を介して当接されて軸方向への移動が規制されているため、ドライブ側カム面13a,14a間に発生した押圧力TSにて、出力側リングギヤ部材6bが後方へ押圧移動される。その結果、この出力側リングギヤ部材6bに一体形成されているプレッシャプレート6dが、湿式多板クラッチ10の、交互に配設されているドライブプレート10aとドリブンプレート10bとをリテーナプレート10cに押し付け、この各プレート10a,10b間に差動制限トルク(クラッチ締結力)を発生させ、入力軸3に対しプラネタリキャリア4を介して連結されているデフケース2とリヤドライブ軸8との間に、湿式多板クラッチ10を介してトルク経路をバイパス形成させる。
【0036】
その結果、フロントドライブ軸に連結されているサンギヤ軸5とリヤドライブ軸8との間で、この両者の回転数NF,NRの大きい方から小さい方へ、バイパス形成されたトルク経路を経て、一定割合のトルク移動が行われる。
【0037】
尚、湿式多板クラッチ10に発生する差動制限トルク(クラッチ締結力)は、各プレート10a,10bの枚数に応じて適宜設定することが可能で、更にドグ歯13,14に形成されているドライブ側カム面13a,14aの傾斜角θ1の角度を調整することで、個別的な微調整が可能である。
【0038】
一方、コースト走行においては、後輪側から駆動トルクがリヤドライブ軸8を介して出力側リングギヤ部材6bに印加されるため、出力側リングギヤ部材6bに形成されている出力側ドグ歯14のコースト側カム面14bが、入力側リングギヤ部材6aの入力側ドグ歯13に形成されているコースト側カム面13bを押圧する。
【0039】
すると、入力側リングギヤ部材6aからの反作用により、出力側リングギヤ部材6bに発生する押圧力TSにて湿式多板クラッチ10を押し付けて、湿式多板クラッチ10に差動制限トルクを発生させる。
【0040】
その結果、リヤドライブ軸8とサンギヤ軸5との間で、この両者の回転数NR,NFの大きい方から小さい方へ、一定割合のトルク移動が行われる。尚、この場合も、ドグ歯14,13に形成されているコースト側カム面14b,13bの傾斜角θ2の角度を調整することで、コースト走行時の最適な差動制限トルク(クラッチ締結力)を個別に設定することが可能である。
【0041】
以下、図5〜図6を用いて、前輪側回転数NFと後輪側回転数NRとの関係から、前輪側へ伝達される駆動トルク(以下「前輪側伝達トルクTF」と称する)と、後輪側へ伝達される駆動トルク(以下「後輪側伝達トルクTR」と称する)の変化について説明する。
【0042】
先ず、駆動トルクがほとんど作用していない場合、すなわち、実走行では、カーブに進入する際にアクセルペダルを放した場合等の状態では、互いに噛合しているドグ15のドグ歯13,14に作用するトルクが減少するため、軸方向への押圧力TSが減少し、そのため、湿式多板クラッチ10は開放状態となる。
【0043】
その結果、カーブの進入の際、ステアリングを操作して旋回するときには差動制限トルクが発生しないため前後輪の回転差が滑らかに吸収されスムーズな旋回ができる。
【0044】
次に、図5に示すように、駆動トルクが作用しながら前輪側回転数NFと後輪側回転数NRとが等しい状態から、前輪側回転数NFが後輪側回転数NRよりも大きくなろうとする状態、すなわち、実走行ではカーブに進入した後、アクセルペダルを踏込んで加速した場合に生じるアンダーステア状態等では、アクセルペダルの踏込み量に応じたトルクが互いに噛合しているドグ15のドグ歯13、14に作用することで、入力側リングギヤ部材6aに形成されている入力側ドグ歯13のドライブ側カム面13aが、出力側リングギヤ部材6bの出力側ドグ歯14に形成されているドライブ側カム面14aを押圧して、軸方向への押圧力TSが発生し、この押圧力TSによって、湿式多板クラッチ10が締結されて、差動が制限されると共に、デフケース2とリヤドライブ軸8との間にトルク経路がバイパス形成される。
【0045】
すると、図5に中線で示す矢印のように、入力軸3に入力された駆動トルクの一部が、湿式多板クラッチ10を介して形成されたトルク経路を経て、リヤドライブ軸8側へ伝達されるため、このリヤドライブ軸8には、リングギヤ部材6を介して入力される駆動トルク(細線の矢印で示す)と、上述したトルク経路を経て入力される駆動トルク(中線の矢印で示す)とが合算された伝達トルクTR(太線の矢印で示す)が入力される。
【0046】
その結果、アンダーステア等の状態では、前輪側伝達トルクTFが減少するためアンダーステアを抑制し、良好なハンドル操作を行うことが可能になる。
【0047】
又、図6に示すように、駆動トルクが作用しながら前輪側回転数NFと後輪側回転数NRとが等しい状態から、後輪側回転数NRが前輪側回転数NFよりも大きくなろうとする状態、すなわち、カーブを加速走行中に、後輪が横滑りした場合等の状態では、アクセルペダルの踏込み量に応じたトルクがドグ15のドグ歯13、14に作用することで、入力側リングギヤ部材6aに形成されている入力側ドグ歯13のドライブ側カム面13aが、出力側リングギヤ部材6bの出力側ドグ歯14に形成されているドライブ側カム面14aを押圧して軸方向への押圧力TSが発生する。
【0048】
すると、この押圧力TSによって、湿式多板クラッチ10が締結されて、デフケース2とリヤドライブ軸8との間にトルク経路がバイパス形成され、図6に中線で示す矢印のように、リングギヤ部材6を介してリヤドライブ軸8に入力された駆動トルクの一部が、湿式多板クラッチ10によって形成されたトルク経路を経て、デフケース2、プラネタリキャリア4からプラネタリピニオン軸11に再び入力される。
【0049】
その結果、サンギヤ軸5には、プラネタリピニオン軸11側から入力される駆動トルク(細線の矢印で示す)と、上述したトルク経路を経てデフケース2側から入力される駆動トルク(中線で示す)とが合算された伝達トルクTF(太線の矢印で示す)が入力される。
【0050】
従って、カーブを加速走行中に後輪が横滑りする場合等の状態では、後輪側伝達トルクTRが減少するため、横滑りが抑制されて良好な走行性を得ることができる。
【0051】
次に、図4に示す特性図を用いて、前輪側回転数NF及び後輪側回転数NRと、前輪側伝達トルクTF及び後輪側伝達トルクTRとの関係を説明する。
【0052】
前輪側回転数NFと後輪側回転数NRとの回転数が等しく湿式多板クラッチ10によるトルクの伝達が行われない場合、図の中央に実線で示すように、プラネタリギヤにより設定されるトルク配分で、前輪側伝達トルクTFと後輪側伝達トルクTRとが設定される。
【0053】
一方、前輪側回転数NFが後輪側回転数NRよりも大きくなろうとする状態では、湿式多板クラッチ10が締結動作されるため、その差動が制限されると共に、前輪側へ伝達される駆動トルクの一部が後輪側へ伝達されて、後輪側伝達トルクTRが大きくなる。
【0054】
又、後輪側回転数NRが前輪側回転数NFよりも大きくなろうとする状態においても、湿式多板クラッチ10が締結動作されるため、その差動が制限されると共に、後輪側へ伝達される駆動トルクの一部が前輪側へ伝達されて、前輪側伝達トルクTFが増加される。
【0055】
その結果、図4のハッチングで示す領域では差動が制限され、又、このハッチングで示す領域から外れた領域、すなわち、差動制限トルク(クラッチ締結力)を越えた伝達トルクが発生する領域では、差動が許容され、又、差動制限トルクは前輪側伝達トルクと後輪側伝達トルクに比例して増減するため、例えばタイトコーナブレーキング現象を有効に回避することができる。
【0056】
このように、本実施の形態では、前輪側回転数NFと後輪側回転数NRとの間に差回転が発生した場合、湿式多板クラッチ10を介して回転数が高い側から低い側へ、一定割合のトルク移動が行われるようにしたので、コーナリング走行等においては良好な走行性能を得ることができる。
【0057】
その際、ドグ15の各ドグ歯13,14に形成したカム面13a,14a(13b,14b)によって差動制限トルクを発生させるようにしたので、構造が簡単で、製造が容易となり、製品コストの低減を実現することができる。
【0058】
又、差動制限トルクを発生させるための押付力を、各ドグ歯13,14に形成したカム面13a,14a(13b,14b)の傾斜角θ1(θ2)にて機種毎に容易に設定することができるため、優れた汎用性を得ることができる。
【0059】
又、差動制限トルクをドライブ走行時とコースト走行時とで異なる特性に設定することができるため、例えば、ドグ15のドグ歯13,14に形成されているコースト側カム面13b,14bの傾斜角θ2を0°とし、コースト走行時は差動制限トルクを発生させないようにするなど、各車両の走行特性に応じて、差動制限特性を自在に設定することが可能となり、設計の自由度を増すことができる。
【0060】
更に、ドグ15により湿式多板クラッチ10を締結動作させるようにしたので、プラネタリギヤ機構自体は、特殊なギヤを使用する必要がなく、標準的なギヤで構成することができるため、製品コストをより一層低減させることができる。
【0061】
又、図7に本発明の第2実施の形態による差動装置のスケルトン図を示す。
本実施の形態に示す差動装置1Bは、円筒状に形成されている第1の回転部材としてのサンギヤ軸25を、入力側回転部材としての入力側サンギヤ軸25aと、出力側回転部材としての出力側サンギヤ軸25bとに二分割したもので、この入力側サンギヤ軸25aと出力側サンギヤ軸25bとの対向面に、第1実施の形態と同様の構成を有するドグ15が設けられている。
【0062】
又、このサンギヤ軸25に対して、第1の出力軸としてのフロントドライブ軸35が同軸上に挿通され、このフロントドライブ軸35の入力端部に、第2の回転部材としてのクラッチハブ35aが形成され、このクラッチハブ35aと、このクラッチハブ35aに対向するリングギヤ部材6の出力端部との間に湿式多板クラッチ10が配設されていると共に、このリングギヤ部材6の出力端がリヤドライブ軸8に結合されている。
【0063】
更に、出力側サンギヤ軸25bの出力端に、クラッチハブ35aにスプライン嵌合するボス部25cが形成されていると共に湿式多板クラッチ10を押圧するプレッシャプレート6dが設けられている。一方、入力側サンギヤ軸25aに、プラネタリピニオン11aに噛合するサンギヤ5bが設けられている。
【0064】
尚、符号7aは入力側サンギヤ軸25aの端面をプラネタリキャリア4に対して相対回動自在に当接する軸受け部材、7bはリヤドライブ軸8とデフケース2との間の相対摺動を許容する軸受け部材である。
【0065】
このような構成では、入力側サンギヤ軸25aと出力側サンギヤ軸25bとの間に設けたドグ15に走行時の抵抗(走行抵抗、加速抵抗等)によって生じるトルクが印加されると、ドグ15のドグ歯13,14(図3参照)の互いに噛合するカム面13a,14a(13b,14b)に、軸方向に作用する押圧力TSが発生する。
【0066】
すると、この押圧力TSにて、出力側サンギヤ軸25bが押圧され、この出力側サンギヤ軸25bに設けられているプレッシャプレート6dが湿式多板クラッチ10を押圧して、この湿式多板クラッチ10に差動制限トルク(クラッチ締結力)が発生され、フロントドライブ軸35とリヤドライブ軸8との差動が制限されると共に、湿式多板クラッチ10を介して、フロントドライブ軸35に連結するクラッチハブ35aとリングギヤ部材6との間にトルク経路がバイパス形成される。
【0067】
その結果、前輪側回転数NFが後輪側回転数NRよりも大きくなろうとする状態では、出力側サンギヤ軸25b側から湿式多板クラッチ10を介してリヤドライブ軸8側へ、一定割合のトルク移動が行われるため、後輪側伝達トルクTRが増加し、相対的に前輪側伝達トルクTFが低下される。
【0068】
一方、後輪側回転数NRが前輪側回転数NFよりも大きくなろうとする状態では、リングギヤ部材6側から湿式多板クラッチ10を介してフロントドライブ軸35側へ、トルク移動が行われるため、前輪側伝達トルクTFが増加し、相対的に後輪側伝達トルクTRが低下される。従って、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
又、図8に本発明の第3実施の形態による差動装置のスケルトン図を示す。
本実施の形態に示す差動装置1Cは、第1の回転部材としてのプラネタリキャリア4を、入力軸3に連結する入力側回転部材としての入力側プラネタリキャリア4aと、プラネタリピニオン軸11を支持する出力側回転部材としての出力側プラネタリキャリア4bとに二分割し、この両プラネタリキャリア4a,4b間に、上述した第1実施の形態と同様の構成を有するドグ15を設けたものである。
【0070】
更に詳しく説明すると、フロントドライブ軸(図示せず)に結合するサンギヤ軸5にクラッチハブ5cが形成され、このクラッチハブ5cとリングギヤ部材6との間に湿式多板クラッチ10が配設されている。更に、リングギヤ部材6の出力端にリヤドライブ軸8が結合されている。
【0071】
又、プラネタリピニオン軸11の一端をプラネタリキャリア4と、プラネタリピニオン軸11の他端を支持するプラネタリキャリア12とが、プラネタリピニオン軸11と干渉しない部位で連結部材36を介して一体的に結合されている。更に、プラネタリキャリア12に、湿式多板クラッチ10を押圧するプレッシャプレート6dが設けられている。
【0072】
このような構成では、プラネタリキャリア4を構成する入力側プラネタリキャリア4aと出力側プラネタリキャリア4bとの間に設けたドグ15に走行時の抵抗(走行抵抗、加速抵抗等)によって生じるトルクが印加されると、このドグ15のドグ歯13,14(図3参照)の互いに噛合するカム面13a,14a(13b,14b)に、軸方向に作用する押圧力TSが発生する。
【0073】
すると、この押圧力TSにより出力側プラネタリキャリア4bが押圧され、この出力側プラネタリキャリア4bに対して連結部材36を介して一体に連結されているプラネタリキャリア12が軸方向へ移動し、このプラネタリキャリア12に設けられているプレッシャプレート6dが湿式多板クラッチ10を押圧して差動制限トルク(クラッチ締結力)を発生させる。
【0074】
その結果、サンギヤ軸5とリヤドライブ軸8との差動が制限されると共に湿式多板クラッチ10を介して、サンギヤ軸5に連結するクラッチハブ5cとリングギヤ部材6との間にトルク経路がバイパス形成される。
【0075】
そして、前輪側回転数NFが後輪側回転数NRよりも大きくなろうとする状態では、サンギヤ軸5側から湿式多板クラッチ10を介してリヤドライブ軸8側へ、一定割合のトルク移動が行われて、後輪側伝達トルクTRが増加し、相対的に前輪側伝達トルクTFが低下される。
【0076】
一方、後輪側回転数NRが前輪側回転数NFよりも大きくなろうとする状態では、リングギヤ部材6側から湿式多板クラッチ10を介してサンギヤ軸5側へ、一定割合のトルク移動が行われて、前輪側伝達トルクTFが増加し、相対的に後輪側伝達トルクTRが低下する。従って、この場合も、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0077】
尚、本発明は、上述した各実施の形態に限るものではなく、例えば、サンギヤ側をリヤドライブ軸と連設し、リングギヤ側をリヤドライブ軸と連設させるようにしても良い。
【0078】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、差動制限トルクを得るために特殊なギヤを必要とせず、安価で標準的なギヤで差動装置を構成することができ、又、差動制限トルクを発生させるための押付力を機種毎に容易に設定することが可能で、しかも差動制限トルクをドライブ走行時とコースト走行時とで異なる特性に簡単に設定することができる等、優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施の形態による差動装置の軸方向に沿った断面側面図
【図2】同、差動装置のスケルトン図
【図3】同、リングギヤ部材の要部側面図
【図4】同、差動制限トルクの特性を示す説明図
【図5】同、駆動トルクが作用しながら前輪側回転数が後輪側回転数よりも大きくなろうとする場合の前後輪へのトルク伝達経路を示す説明図
【図6】同、駆動トルクが作用しながら後輪側回転数が前輪側回転数よりも大きくなろうとする場合の前後輪へのトルク伝達経路を示す説明図
【図7】第2実施の形態による差動装置のスケルトン図
【図8】第3実施の形態による差動装置のスケルトン図
【符号の説明】
1A,1B,1C 差動装置
3 入力軸
4 プラネタリキャリア(第1の回転部材)
4a 入力側プラネタリキャリア(入力側回転部材)
4b 出力側プラネタリキャリア(出力側回転部材)
6 リングギヤ部材(第1の回転部材)
6a 入力側リングギヤ部材(入力側回転部材)
6b 出力側リングギヤ部材(出力側回転部材)
6d プレッシャプレート
8 リヤドライブ軸(第2の出力軸)
8a,35a クラッチハブ(第2の回転部材)
10 湿式多板クラッチ(クラッチ部材)
11 プラネタリピニオン軸
13,14 ドグ歯
13a,14a ドライブ側カム面
13b,14b コースト側カム面
15 ドグ
25 サンギヤ軸(第1の回転部材)
25a 入力側サンギヤ軸(入力側回転部材)
25b 出力側サンギヤ軸(出力側回転部材)
35 フロントドライブ軸(第1の出力軸)
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラネタリギヤ機構を有する差動装置に関し、詳しくはプラネタリギヤ機構の入力側、或は出力側の何れかの要素に作用するトルクに応じて差動制限トルクを発生させるトルク感応型差動制限機能付き差動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、フルタイム式の4輪駆動車では、センタデファレンシャルとしてプラネタリギヤ機構を用いたものが知られている。
【0003】
更に、この種のセンタデファレンシャルには、このセンタデファレンシャルに作用するトルクに応じて前後輪の差動を制限することで、トルク配分を適切に行うトルク感応型差動制限機構を併設するものがある。
【0004】
この種のトルク感応型差動制限装置として、例えば、特開平4−271926号公報には、入力側のハウジング内に、両出力軸の端部にそれぞれ連結した一対のサイドギヤ(ウォームギヤ)と、両端に形成した歯車で互いに噛合する複数対のエレメントギヤ(ウォームホィール)とを噛合させて設け、エレメントギヤの端部とハウジングの壁部との間にスラストワッシャ等を介装し、各ギヤの噛み合い部や摺動部の摩擦力等を利用して差動制限トルクを発生させる技術が開示されている。
【0005】
又、特許2774016号(特開平5−280597号)公報には、2つの出力軸とそれぞれ連結した第1,第2のサイドギヤと、一端に第1のサイドギヤと噛み合う第1のギヤ部が形成され他端に第2のギヤ部が形成された第1のピニオンギヤと、一端に第1のギヤ部と噛み合う第3のギヤ部が形成され他端に第2のサイドギヤと噛み合うと共に第2のギヤ部と噛み合う第4のギヤ部が形成された第2のピニオンギヤとをケース内に備え、一端側の側壁と他端側の側壁に、第1の軸孔及び第2の軸孔の外周に沿って所定の間隔を有する複数対の収容孔をケースに形成し、第1のピニオンギヤと第2のピニオンギヤとをこの収容孔で回転自在に支持するとともに、互いに噛み合わせ、各ギヤの噛み合い部や摺動部の摩擦力等を利用して差動制限トルクを発生させる技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平4−271926号公報
【0007】
【特許文献1】
特許2774016号(特開平5−280597号)公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した各公報に開示されている技術では、差動制限トルクを得るために特殊なギヤを必要としており、差動制限装置自体が高価なものとなってしまう問題がある。
【0009】
又、ギヤの押付力で差動制限トルクを発生させるようにしているため、差動制限トルクを機種毎に調整することが困難で、汎用性に欠ける問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、差動制限トルクを得るために特殊なギヤを必要とせず、安価で標準的なギヤで差動装置を構成するができ、又、差動制限トルクを発生させるための押付力を機種毎に容易に設定することが可能で、しかも差動制限トルクをドライブ走行時とコースト走行時とで異なる特性に設定することの可能なトルク感応型差動制限機能付き差動装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、エンジンからの駆動トルクを入力軸を介してプラネタリギヤ機構に伝達し、該プラネタリギヤ機構を介して第1の出力軸と第2の出力軸とに対して上記駆動トルクをトルク配分する差動装置において、上記入力軸と上記第1の出力軸と上記第2の出力軸との何れかに連設する第1の回転部材と、上記入力軸と上記第1の出力軸と上記第2の出力軸のうち上記第1の回転部材に連設する軸を除く何れかの軸に連設する第2の回転部材と、上記第1の回転部材と上記第2の回転部材との間に介装したクラッチ部材と、上記クラッチ部材を押圧すると共に上記第1の回転部材に連設するプレッシャプレートとを備え、上記第1の回転部材を入力側回転部材と出力側回転部材とに二分割すると共に、上記出力側回転部材を軸方向へスライド自在に設け、上記入力側回転部材と上記出力側回転部材との対向面にドグを設けると共に該ドグの噛合面をカム面とし、走行時の抵抗によって生じるトルクにて上記カム面に発生する軸方向への押圧力で上記プレッシャプレートを介して上記クラッチ部材を締結動作させることを特徴とする。
【0012】
この場合、好ましい態様としては、上記第1の回転部材が上記入力軸にプラネタリピニオン軸を介して連設するリングギヤ部材であることを特徴とする。
【0013】
他の好ましい態様としては、上記第1の回転部材が上記入力軸にプラネタリピニオン軸を介して連設するサンギヤ軸であることを特徴とする。
【0014】
別の好ましい態様としては、上記第1の回転部材が上記入力軸と一体回転するプラネタリキャリアであることを特徴とする。
【0015】
更に、他の好ましい態様としては、上記第2の回転部材が上記入力軸と一体回転するプラネタリキャリアであることを特徴とする。
【0016】
更に、別の好ましい態様としては、上記第2の回転部材が上記入力軸にプラネタリピニオン軸を介して連設するサンギヤ軸であることを特徴とする。
【0017】
更に又、他の好ましい態様としては、上記第2の回転部材が上記入力軸にプラネタリピニオン軸を介して連設するリングギヤ部材であることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。図1〜図6は本発明の第1実施の形態を示し、図1は差動装置の軸方向に沿った断面側面図、図2は差動装置のスケルトン図、図3はリングギヤ部材の要部側面図、図4は差動制限トルクの特性を示す説明図である。尚、以下の説明では、エンジントルクを前後輪へ配分するいわゆるセンタデファレンシャル装置に、本実施の形態による差動装置1Aを採用した場合を例示して説明する。又、伝達トルクを説明するに際しては、便宜的に、図面左側を前輪(前)側、右側を後輪(後)側として説明する。
【0019】
この差動装置1Aはプラネタリギヤ式であり、円筒状のデフケース2の前端に入力軸3がプラネタリキャリア4を介して一体結合されている。尚、この入力軸3に、トランスミッションの出力軸(図示せず)が結合される。
【0020】
又、デフケース2の内部にはサンギヤ軸5が、デフケース2と同軸上に配設されており、このサンギヤ軸5の前端に、第1の出力軸であるフロントドライブ軸(図示せず)が一体結合される。
【0021】
更に、デフケース2の内周に、第1の回転部材であるリングギヤ部材6が、デフケース2に対して相対摺動自在に支持されている。このリングギヤ部材6は円筒状に形成されており、前方へ開口する入力側の開口端がプラネタリキャリア4の内側面に対し、ニードルベアリング或はワッシャ等の軸受け部材7を介して当接されており、又、このリングギヤ部材6の出力側である後部にボス部6eが形成されている。
【0022】
一方、サンギヤ軸5の後端に形成された軸部5aの外周に、第2の出力軸であるリヤドライブ軸8の内周が軸受を介して相対回動自在に支持されている。更に、このリヤドライブ軸8の入力側である前部に、第2の回転部材としてのクラッチハブ8aが形成され、又、このリヤドライブ軸8の出力側である後部にボス部8bが突設され、このボス部8bに、このボス部8bを図示しないトランスミッションケースに回動自在に支持する軸受9が嵌合されている。
【0023】
又、このリヤドライブ軸8の出力側に設けられたリヤドライブギヤ8cが、このリヤドライブギヤ8cに噛合するリダクションギヤ16aを有するリダクションギヤ軸16(図2参照)に連設されており、このリダクションギヤ軸16が後輪側へ延出されているトランスファ軸、プロペラ軸及びリヤデフ装置等を介して後輪軸(何れも図示せず)に連設される。
【0024】
更に、リヤドライブ軸8に形成されているクラッチハブ8aの外周に、リングギヤ部材6のボス部6eの内周がスプライン嵌合されている。又、このクラッチハブ8aと、このクラッチハブ8aに対向するデフケース2の内周との間に、クラッチ部材としての湿式多板クラッチ10を構成するドライブプレート10aとドリブンプレート10bとが所定間隔を開けて交互に配設されており、この湿式多板クラッチ10の後端側にリテーナプレート10cが配設されている。尚、このリテーナプレート10cは、デフケース2の内周に嵌着されているスナップリング10dにて抜け止めされている。
【0025】
一方、湿式多板クラッチ10の前端側に、リングギヤ部材6の出力側に一体形成されているプレッシャプレート6dが対設されている。
【0026】
更に、サンギヤ軸5の外周とリングギヤ部材6の内周との間にブラネタリピニオン軸11が介装されており、このブラネタリピニオン軸11に形成されているプラネタリピニオン11aが、サンギヤ軸5に形成されているサンギヤ5bと、リングギヤ部材6に形成されているリングギヤ6cとに噛合されている。又、このプラネタリピニオン軸11の両端が、互いにの対抗するプラネタリキャリア4,12に軸受けを介して回動自在に支持されている。尚、この両プラネタリキャリア4,12は、プラネタリピニオン軸11と干渉しない部位で、連結部材を介して一体的に結合されている。
【0027】
一方、リングギヤ部材6は、入力側回転部材としての入力側リングギヤ部材6aと、出力側回転部材としての出力側リングギヤ部材6bとに二分割されている。図1、図2に示すように入力側リングギヤ部材6aに、プラネタリピニオン11aに噛合するリングギヤ6cが形成されており、一方、出力側リングギヤ部材6bの出力側端部にボス部6eが形成されている。
【0028】
出力側リングギヤ部材6bは、クラッチハブ8aの外周にスプライン嵌合されているボス部6eに支持されて軸方向へスライド自在にされている。又、入力側リングギヤ部材6aと出力側リングギヤ部材6bとの対向面間にドグ15が設けられている。
【0029】
図3に示すように、ドグ15は、入力側リングギヤ部材6aの端面の円周上に一定の間隔で形成されている入力側ドグ歯13と、この入力側ドグ歯13に噛合すると共に、出力側リングギヤ部材6bの端面の円周上に一定間隔で形成されている出力側ドグ歯14とで構成されている。尚、図においては、前進走行時の回転方向を紙面上方から下方への流れとして示す。
【0030】
又、この各ドグ歯13,14の噛合面に、ドライブ走行時に係合するドライブ側カム面13a,14aと、コースト走行時に係合するコースト側カム面13b,14bとが形成されている。尚、ドライブ側カム面13a,14aの傾斜角θ1とコースト側カム面13b,14bの傾斜角θ2とは、ドライブ走行時とコース走行時とに応じて各々最適な差動制限トルクを得ることができるような値に設定されている。
【0031】
次に、このような構成による本実施の形態の作用について説明する。
前進走行時において、変速機にて所定に変速されて出力軸から出力される駆動トルクは、この出力軸に結合されている差動装置1Aの入力軸3に入力され、この入力軸3に連設するプラネタリキャリア4,12を介して、このプラネタリキャリア4,12に支持されているプラネタリピニオン軸11を公転させる。
【0032】
このプラネタリピニオン軸11に形成されているプラネタリピニオン11aは、サンギヤ軸5に形成されているサンギヤ5bとリングギヤ部材6に形成されているリングギヤ6cとに噛合されている。又、サンギヤ軸5がフロントドライブ軸(図示せず)に結合され、一方、リングギヤ部材6がボス部6eを介してリヤドライブ軸8にスプライン嵌合されている。
【0033】
従って、変速機から出力された駆動トルクは、このプラネタリピニオン軸11により、サンギヤ軸5側とリングギヤ部材6側とに、サンギヤ5bとリングギヤ6cとのギヤ比で決定される配分比率(例えば、前輪4:後輪6)で配分され、前後輪側へ伝達されて4輪駆動走行が行われる。
【0034】
ところで、リングギヤ部材6の入力側リングギヤ部材6aには、プラネタリギヤによって所定に配分された駆動トルクが伝達されており、一方、出力側リングギヤ部材6bには、走行時の抵抗(走行抵抗、加速抵抗等)によって生じるトルクが印加されているため、この両者の分割面に設けたドグ15のドグ歯13,14に形成されているドライブ側カム面13a,14a間には、図3に示すように、回転方向に作用する回転トルクTFと軸方向に作用する押圧力TSとが発生する。
【0035】
この場合、入力側リングギヤ部材6aの入力側端面は、プラネタリキャリア4の内側面に軸受け部材7を介して当接されて軸方向への移動が規制されているため、ドライブ側カム面13a,14a間に発生した押圧力TSにて、出力側リングギヤ部材6bが後方へ押圧移動される。その結果、この出力側リングギヤ部材6bに一体形成されているプレッシャプレート6dが、湿式多板クラッチ10の、交互に配設されているドライブプレート10aとドリブンプレート10bとをリテーナプレート10cに押し付け、この各プレート10a,10b間に差動制限トルク(クラッチ締結力)を発生させ、入力軸3に対しプラネタリキャリア4を介して連結されているデフケース2とリヤドライブ軸8との間に、湿式多板クラッチ10を介してトルク経路をバイパス形成させる。
【0036】
その結果、フロントドライブ軸に連結されているサンギヤ軸5とリヤドライブ軸8との間で、この両者の回転数NF,NRの大きい方から小さい方へ、バイパス形成されたトルク経路を経て、一定割合のトルク移動が行われる。
【0037】
尚、湿式多板クラッチ10に発生する差動制限トルク(クラッチ締結力)は、各プレート10a,10bの枚数に応じて適宜設定することが可能で、更にドグ歯13,14に形成されているドライブ側カム面13a,14aの傾斜角θ1の角度を調整することで、個別的な微調整が可能である。
【0038】
一方、コースト走行においては、後輪側から駆動トルクがリヤドライブ軸8を介して出力側リングギヤ部材6bに印加されるため、出力側リングギヤ部材6bに形成されている出力側ドグ歯14のコースト側カム面14bが、入力側リングギヤ部材6aの入力側ドグ歯13に形成されているコースト側カム面13bを押圧する。
【0039】
すると、入力側リングギヤ部材6aからの反作用により、出力側リングギヤ部材6bに発生する押圧力TSにて湿式多板クラッチ10を押し付けて、湿式多板クラッチ10に差動制限トルクを発生させる。
【0040】
その結果、リヤドライブ軸8とサンギヤ軸5との間で、この両者の回転数NR,NFの大きい方から小さい方へ、一定割合のトルク移動が行われる。尚、この場合も、ドグ歯14,13に形成されているコースト側カム面14b,13bの傾斜角θ2の角度を調整することで、コースト走行時の最適な差動制限トルク(クラッチ締結力)を個別に設定することが可能である。
【0041】
以下、図5〜図6を用いて、前輪側回転数NFと後輪側回転数NRとの関係から、前輪側へ伝達される駆動トルク(以下「前輪側伝達トルクTF」と称する)と、後輪側へ伝達される駆動トルク(以下「後輪側伝達トルクTR」と称する)の変化について説明する。
【0042】
先ず、駆動トルクがほとんど作用していない場合、すなわち、実走行では、カーブに進入する際にアクセルペダルを放した場合等の状態では、互いに噛合しているドグ15のドグ歯13,14に作用するトルクが減少するため、軸方向への押圧力TSが減少し、そのため、湿式多板クラッチ10は開放状態となる。
【0043】
その結果、カーブの進入の際、ステアリングを操作して旋回するときには差動制限トルクが発生しないため前後輪の回転差が滑らかに吸収されスムーズな旋回ができる。
【0044】
次に、図5に示すように、駆動トルクが作用しながら前輪側回転数NFと後輪側回転数NRとが等しい状態から、前輪側回転数NFが後輪側回転数NRよりも大きくなろうとする状態、すなわち、実走行ではカーブに進入した後、アクセルペダルを踏込んで加速した場合に生じるアンダーステア状態等では、アクセルペダルの踏込み量に応じたトルクが互いに噛合しているドグ15のドグ歯13、14に作用することで、入力側リングギヤ部材6aに形成されている入力側ドグ歯13のドライブ側カム面13aが、出力側リングギヤ部材6bの出力側ドグ歯14に形成されているドライブ側カム面14aを押圧して、軸方向への押圧力TSが発生し、この押圧力TSによって、湿式多板クラッチ10が締結されて、差動が制限されると共に、デフケース2とリヤドライブ軸8との間にトルク経路がバイパス形成される。
【0045】
すると、図5に中線で示す矢印のように、入力軸3に入力された駆動トルクの一部が、湿式多板クラッチ10を介して形成されたトルク経路を経て、リヤドライブ軸8側へ伝達されるため、このリヤドライブ軸8には、リングギヤ部材6を介して入力される駆動トルク(細線の矢印で示す)と、上述したトルク経路を経て入力される駆動トルク(中線の矢印で示す)とが合算された伝達トルクTR(太線の矢印で示す)が入力される。
【0046】
その結果、アンダーステア等の状態では、前輪側伝達トルクTFが減少するためアンダーステアを抑制し、良好なハンドル操作を行うことが可能になる。
【0047】
又、図6に示すように、駆動トルクが作用しながら前輪側回転数NFと後輪側回転数NRとが等しい状態から、後輪側回転数NRが前輪側回転数NFよりも大きくなろうとする状態、すなわち、カーブを加速走行中に、後輪が横滑りした場合等の状態では、アクセルペダルの踏込み量に応じたトルクがドグ15のドグ歯13、14に作用することで、入力側リングギヤ部材6aに形成されている入力側ドグ歯13のドライブ側カム面13aが、出力側リングギヤ部材6bの出力側ドグ歯14に形成されているドライブ側カム面14aを押圧して軸方向への押圧力TSが発生する。
【0048】
すると、この押圧力TSによって、湿式多板クラッチ10が締結されて、デフケース2とリヤドライブ軸8との間にトルク経路がバイパス形成され、図6に中線で示す矢印のように、リングギヤ部材6を介してリヤドライブ軸8に入力された駆動トルクの一部が、湿式多板クラッチ10によって形成されたトルク経路を経て、デフケース2、プラネタリキャリア4からプラネタリピニオン軸11に再び入力される。
【0049】
その結果、サンギヤ軸5には、プラネタリピニオン軸11側から入力される駆動トルク(細線の矢印で示す)と、上述したトルク経路を経てデフケース2側から入力される駆動トルク(中線で示す)とが合算された伝達トルクTF(太線の矢印で示す)が入力される。
【0050】
従って、カーブを加速走行中に後輪が横滑りする場合等の状態では、後輪側伝達トルクTRが減少するため、横滑りが抑制されて良好な走行性を得ることができる。
【0051】
次に、図4に示す特性図を用いて、前輪側回転数NF及び後輪側回転数NRと、前輪側伝達トルクTF及び後輪側伝達トルクTRとの関係を説明する。
【0052】
前輪側回転数NFと後輪側回転数NRとの回転数が等しく湿式多板クラッチ10によるトルクの伝達が行われない場合、図の中央に実線で示すように、プラネタリギヤにより設定されるトルク配分で、前輪側伝達トルクTFと後輪側伝達トルクTRとが設定される。
【0053】
一方、前輪側回転数NFが後輪側回転数NRよりも大きくなろうとする状態では、湿式多板クラッチ10が締結動作されるため、その差動が制限されると共に、前輪側へ伝達される駆動トルクの一部が後輪側へ伝達されて、後輪側伝達トルクTRが大きくなる。
【0054】
又、後輪側回転数NRが前輪側回転数NFよりも大きくなろうとする状態においても、湿式多板クラッチ10が締結動作されるため、その差動が制限されると共に、後輪側へ伝達される駆動トルクの一部が前輪側へ伝達されて、前輪側伝達トルクTFが増加される。
【0055】
その結果、図4のハッチングで示す領域では差動が制限され、又、このハッチングで示す領域から外れた領域、すなわち、差動制限トルク(クラッチ締結力)を越えた伝達トルクが発生する領域では、差動が許容され、又、差動制限トルクは前輪側伝達トルクと後輪側伝達トルクに比例して増減するため、例えばタイトコーナブレーキング現象を有効に回避することができる。
【0056】
このように、本実施の形態では、前輪側回転数NFと後輪側回転数NRとの間に差回転が発生した場合、湿式多板クラッチ10を介して回転数が高い側から低い側へ、一定割合のトルク移動が行われるようにしたので、コーナリング走行等においては良好な走行性能を得ることができる。
【0057】
その際、ドグ15の各ドグ歯13,14に形成したカム面13a,14a(13b,14b)によって差動制限トルクを発生させるようにしたので、構造が簡単で、製造が容易となり、製品コストの低減を実現することができる。
【0058】
又、差動制限トルクを発生させるための押付力を、各ドグ歯13,14に形成したカム面13a,14a(13b,14b)の傾斜角θ1(θ2)にて機種毎に容易に設定することができるため、優れた汎用性を得ることができる。
【0059】
又、差動制限トルクをドライブ走行時とコースト走行時とで異なる特性に設定することができるため、例えば、ドグ15のドグ歯13,14に形成されているコースト側カム面13b,14bの傾斜角θ2を0°とし、コースト走行時は差動制限トルクを発生させないようにするなど、各車両の走行特性に応じて、差動制限特性を自在に設定することが可能となり、設計の自由度を増すことができる。
【0060】
更に、ドグ15により湿式多板クラッチ10を締結動作させるようにしたので、プラネタリギヤ機構自体は、特殊なギヤを使用する必要がなく、標準的なギヤで構成することができるため、製品コストをより一層低減させることができる。
【0061】
又、図7に本発明の第2実施の形態による差動装置のスケルトン図を示す。
本実施の形態に示す差動装置1Bは、円筒状に形成されている第1の回転部材としてのサンギヤ軸25を、入力側回転部材としての入力側サンギヤ軸25aと、出力側回転部材としての出力側サンギヤ軸25bとに二分割したもので、この入力側サンギヤ軸25aと出力側サンギヤ軸25bとの対向面に、第1実施の形態と同様の構成を有するドグ15が設けられている。
【0062】
又、このサンギヤ軸25に対して、第1の出力軸としてのフロントドライブ軸35が同軸上に挿通され、このフロントドライブ軸35の入力端部に、第2の回転部材としてのクラッチハブ35aが形成され、このクラッチハブ35aと、このクラッチハブ35aに対向するリングギヤ部材6の出力端部との間に湿式多板クラッチ10が配設されていると共に、このリングギヤ部材6の出力端がリヤドライブ軸8に結合されている。
【0063】
更に、出力側サンギヤ軸25bの出力端に、クラッチハブ35aにスプライン嵌合するボス部25cが形成されていると共に湿式多板クラッチ10を押圧するプレッシャプレート6dが設けられている。一方、入力側サンギヤ軸25aに、プラネタリピニオン11aに噛合するサンギヤ5bが設けられている。
【0064】
尚、符号7aは入力側サンギヤ軸25aの端面をプラネタリキャリア4に対して相対回動自在に当接する軸受け部材、7bはリヤドライブ軸8とデフケース2との間の相対摺動を許容する軸受け部材である。
【0065】
このような構成では、入力側サンギヤ軸25aと出力側サンギヤ軸25bとの間に設けたドグ15に走行時の抵抗(走行抵抗、加速抵抗等)によって生じるトルクが印加されると、ドグ15のドグ歯13,14(図3参照)の互いに噛合するカム面13a,14a(13b,14b)に、軸方向に作用する押圧力TSが発生する。
【0066】
すると、この押圧力TSにて、出力側サンギヤ軸25bが押圧され、この出力側サンギヤ軸25bに設けられているプレッシャプレート6dが湿式多板クラッチ10を押圧して、この湿式多板クラッチ10に差動制限トルク(クラッチ締結力)が発生され、フロントドライブ軸35とリヤドライブ軸8との差動が制限されると共に、湿式多板クラッチ10を介して、フロントドライブ軸35に連結するクラッチハブ35aとリングギヤ部材6との間にトルク経路がバイパス形成される。
【0067】
その結果、前輪側回転数NFが後輪側回転数NRよりも大きくなろうとする状態では、出力側サンギヤ軸25b側から湿式多板クラッチ10を介してリヤドライブ軸8側へ、一定割合のトルク移動が行われるため、後輪側伝達トルクTRが増加し、相対的に前輪側伝達トルクTFが低下される。
【0068】
一方、後輪側回転数NRが前輪側回転数NFよりも大きくなろうとする状態では、リングギヤ部材6側から湿式多板クラッチ10を介してフロントドライブ軸35側へ、トルク移動が行われるため、前輪側伝達トルクTFが増加し、相対的に後輪側伝達トルクTRが低下される。従って、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
又、図8に本発明の第3実施の形態による差動装置のスケルトン図を示す。
本実施の形態に示す差動装置1Cは、第1の回転部材としてのプラネタリキャリア4を、入力軸3に連結する入力側回転部材としての入力側プラネタリキャリア4aと、プラネタリピニオン軸11を支持する出力側回転部材としての出力側プラネタリキャリア4bとに二分割し、この両プラネタリキャリア4a,4b間に、上述した第1実施の形態と同様の構成を有するドグ15を設けたものである。
【0070】
更に詳しく説明すると、フロントドライブ軸(図示せず)に結合するサンギヤ軸5にクラッチハブ5cが形成され、このクラッチハブ5cとリングギヤ部材6との間に湿式多板クラッチ10が配設されている。更に、リングギヤ部材6の出力端にリヤドライブ軸8が結合されている。
【0071】
又、プラネタリピニオン軸11の一端をプラネタリキャリア4と、プラネタリピニオン軸11の他端を支持するプラネタリキャリア12とが、プラネタリピニオン軸11と干渉しない部位で連結部材36を介して一体的に結合されている。更に、プラネタリキャリア12に、湿式多板クラッチ10を押圧するプレッシャプレート6dが設けられている。
【0072】
このような構成では、プラネタリキャリア4を構成する入力側プラネタリキャリア4aと出力側プラネタリキャリア4bとの間に設けたドグ15に走行時の抵抗(走行抵抗、加速抵抗等)によって生じるトルクが印加されると、このドグ15のドグ歯13,14(図3参照)の互いに噛合するカム面13a,14a(13b,14b)に、軸方向に作用する押圧力TSが発生する。
【0073】
すると、この押圧力TSにより出力側プラネタリキャリア4bが押圧され、この出力側プラネタリキャリア4bに対して連結部材36を介して一体に連結されているプラネタリキャリア12が軸方向へ移動し、このプラネタリキャリア12に設けられているプレッシャプレート6dが湿式多板クラッチ10を押圧して差動制限トルク(クラッチ締結力)を発生させる。
【0074】
その結果、サンギヤ軸5とリヤドライブ軸8との差動が制限されると共に湿式多板クラッチ10を介して、サンギヤ軸5に連結するクラッチハブ5cとリングギヤ部材6との間にトルク経路がバイパス形成される。
【0075】
そして、前輪側回転数NFが後輪側回転数NRよりも大きくなろうとする状態では、サンギヤ軸5側から湿式多板クラッチ10を介してリヤドライブ軸8側へ、一定割合のトルク移動が行われて、後輪側伝達トルクTRが増加し、相対的に前輪側伝達トルクTFが低下される。
【0076】
一方、後輪側回転数NRが前輪側回転数NFよりも大きくなろうとする状態では、リングギヤ部材6側から湿式多板クラッチ10を介してサンギヤ軸5側へ、一定割合のトルク移動が行われて、前輪側伝達トルクTFが増加し、相対的に後輪側伝達トルクTRが低下する。従って、この場合も、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0077】
尚、本発明は、上述した各実施の形態に限るものではなく、例えば、サンギヤ側をリヤドライブ軸と連設し、リングギヤ側をリヤドライブ軸と連設させるようにしても良い。
【0078】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、差動制限トルクを得るために特殊なギヤを必要とせず、安価で標準的なギヤで差動装置を構成することができ、又、差動制限トルクを発生させるための押付力を機種毎に容易に設定することが可能で、しかも差動制限トルクをドライブ走行時とコースト走行時とで異なる特性に簡単に設定することができる等、優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施の形態による差動装置の軸方向に沿った断面側面図
【図2】同、差動装置のスケルトン図
【図3】同、リングギヤ部材の要部側面図
【図4】同、差動制限トルクの特性を示す説明図
【図5】同、駆動トルクが作用しながら前輪側回転数が後輪側回転数よりも大きくなろうとする場合の前後輪へのトルク伝達経路を示す説明図
【図6】同、駆動トルクが作用しながら後輪側回転数が前輪側回転数よりも大きくなろうとする場合の前後輪へのトルク伝達経路を示す説明図
【図7】第2実施の形態による差動装置のスケルトン図
【図8】第3実施の形態による差動装置のスケルトン図
【符号の説明】
1A,1B,1C 差動装置
3 入力軸
4 プラネタリキャリア(第1の回転部材)
4a 入力側プラネタリキャリア(入力側回転部材)
4b 出力側プラネタリキャリア(出力側回転部材)
6 リングギヤ部材(第1の回転部材)
6a 入力側リングギヤ部材(入力側回転部材)
6b 出力側リングギヤ部材(出力側回転部材)
6d プレッシャプレート
8 リヤドライブ軸(第2の出力軸)
8a,35a クラッチハブ(第2の回転部材)
10 湿式多板クラッチ(クラッチ部材)
11 プラネタリピニオン軸
13,14 ドグ歯
13a,14a ドライブ側カム面
13b,14b コースト側カム面
15 ドグ
25 サンギヤ軸(第1の回転部材)
25a 入力側サンギヤ軸(入力側回転部材)
25b 出力側サンギヤ軸(出力側回転部材)
35 フロントドライブ軸(第1の出力軸)
Claims (7)
- エンジンからの駆動トルクを入力軸を介してプラネタリギヤ機構に伝達し、該プラネタリギヤ機構を介して第1の出力軸と第2の出力軸とに対して上記駆動トルクをトルク配分する差動装置において、
上記入力軸と上記第1の出力軸と上記第2の出力軸との何れかに連設する第1の回転部材と、
上記入力軸と上記第1の出力軸と上記第2の出力軸のうち上記第1の回転部材に連設する軸を除く何れかの軸に連設する第2の回転部材と、
上記第1の回転部材と上記第2の回転部材との間に介装したクラッチ部材と、
上記クラッチ部材を押圧すると共に上記第1の回転部材に連設するプレッシャプレートと、
を備え、
上記第1の回転部材を入力側回転部材と出力側回転部材とに二分割すると共に、
上記出力側回転部材を軸方向へスライド自在に設け、
上記入力側回転部材と上記出力側回転部材との対向面にドグを設けると共に該ドグの噛合面をカム面とし、
走行時の抵抗によって生じるトルクにて上記カム面に発生する軸方向への押圧力で上記プレッシャプレートを介して上記クラッチ部材を締結動作させることを特徴とするトルク感応型差動制限機能付き差動装置。 - 上記第1の回転部材が上記入力軸にプラネタリピニオン軸を介して連設するリングギヤ部材であることを特徴とする請求項1記載のトルク感応型差動制限機能付き差動装置。
- 上記第1の回転部材が上記入力軸にプラネタリピニオン軸を介して連設するサンギヤ軸であることを特徴とする請求項1記載のトルク感応型差動制限機能付き差動装置。
- 上記第1の回転部材が上記入力軸と一体回転するプラネタリキャリアであることを特徴とする請求項1記載のトルク感応型差動制限機能付き差動装置。
- 上記第2の回転部材が上記入力軸と一体回転するプラネタリキャリアであることを特徴とする請求項2或は3記載の記載のトルク感応型差動制限機能付き差動装置。
- 上記第2の回転部材が上記入力軸にプラネタリピニオン軸を介して連設するサンギヤ軸であることを特徴とする請求項2或は4記載の記載のトルク感応型差動制限機能付き差動装置。
- 上記第2の回転部材が上記入力軸にプラネタリピニオン軸を介して連設するリングギヤ部材であることを特徴とする請求項3或は4記載の記載のトルク感応型差動制限機能付き差動装置。
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JP2006341826A (ja) * | 2005-06-10 | 2006-12-21 | Fuji Heavy Ind Ltd | 車両の前後駆動力配分制御装置 |
EP1715219A3 (en) * | 2005-04-20 | 2009-05-20 | GKN Driveline Torque Technology KK | Differential limiter |
JP2011230536A (ja) * | 2010-04-23 | 2011-11-17 | Toyota Motor Corp | 駆動力伝達装置 |
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2003
- 2003-01-17 JP JP2003010350A patent/JP2004225715A/ja active Pending
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