JP2004224740A - 立体選択的なフルオロシクロプロパン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた抗菌剤であるキノロン誘導体の製造原料として有用な、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミンの製造方法、及びその製造中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ニューキノロン系の合成抗菌薬の中で、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピル基を1位の置換基として有するキノロン誘導体は、強い抗菌活性と高い安全性を兼ね備えており優れた合成抗菌剤として期待されている(特許文献1参照)。この光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピル基を構築するために有用な光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミンの製造方法として、ブタジエンを出発原料として4工程で製造する方法が知られているが(非特許文献1参照)、フルオロシクロプロパン環形成反応におけるシス選択性が低いうえに、有毒かつ高価な試薬を使用するため、工業的に不利であった。また、1−フェニルアルキルアミンを出発原料として5工程で製造する方法は、シクロプロパン化において危険なジエチル亜鉛を使用するため(特許文献2及び特許文献3参照)、やはり工業的には不適な方法であった。さらに、これらの製造方法では、光学活性体を得るために光学分割を行わなければならなかった。
【0003】
【特許文献1】
特開平2−231475号公報
【特許文献2】
特開平5−163212号公報
【特許文献3】
特開平6−92911号公報
【非特許文献1】
和歌山大学教育学部紀要33巻、33(1984)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、安全かつ安価で工業的に有利に、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミンを製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミンの製造方法について鋭意検討を行った結果、例えば、酒石酸のような不斉源化合物より導かれた光学活性なN−ビニルピロリドン誘導体を出発原料として、相間移動触媒の存在下、モノフルオロカルベンを反応させることにより、酒石酸のような不斉源化合物の立体配置に基づいて光学活性な当該アミン化合物が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、一般式(1):
【0006】
【化10】
【0007】
[式中、R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の鎖状のアルキル基もしくは置換基を有していてもよい炭素数3〜12の環状のアルキル基を意味し;R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基又は水素原子を意味し;R3及びR4は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味するか、又はR3及びR4が一緒になって環状構造を形成してもよく;Xは、水素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。]で表される化合物を提供する
【0008】
また、本発明は、一般式(2):
【0009】
【化11】
【0010】
[式中、R1、R3及びR4は、前に定義したとおりであり;Yは、CH−OH又はカルボニル基を意味する。]で表される化合物を提供する。
【0011】
また、本発明は、一般式(3):
【0012】
【化12】
【0013】
[式中、R1、R3及びR4は、前に定義したとおりであり;R5は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアシル基又は炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味する。]で表される化合物にモノフルオロカルベンを反応させ、所望により加水分解することを特徴とする、一般式(1):
【0014】
【化13】
【0015】
[式中、R1、R2、R3、R4及びXは、前に定義したとおりである。]で表される化合物の製造方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、一般式(4):
【0017】
【化14】
【0018】
[式中、R1、R2、R3、R4及びXは、前に定義したとおりである。]で表される化合物から、Xが水素原子以外の場合は還元によりXを除去し、R2が水素原子以外の場合は加水分解により脱保護し、更に還元することを特徴とする、一般式(5):
【0019】
【化15】
【0020】
[式中、R1、R3及びR4は、前に定義したとおりである。]で表される化合物の製造方法を提供する。
【0021】
本発明はさらにまた、一般式(3):
【0022】
【化16】
【0023】
[式中、R1、R3、R4及びR5は、前に定義したとおりである。]で表される化合物にモノフルオロカルベンを反応させ、所望により加水分解して一般式(4):
【0024】
【化17】
【0025】
[式中、R1、R2、R3、R4及びXは、前に定義したとおりである。]で表される化合物を得、当該化合物から、Xが水素原子以外の場合は還元によりXを除去し、R2が水素原子以外の場合は加水分解により脱保護し、更に還元することにより、一般式(5):
【0026】
【化18】
【0027】
[式中、R1、R3及びR4は、前に定義したとおりである。]で表される化合物を得、そして該化合物を加水分解することを特徴とする、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミンの製造方法を提供する。
【0028】
【発明の実施の形態】
式中、R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の鎖状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等)もしくは置換基を有していてもよい炭素数3〜12の環状のアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)を表す。これらのうちで、置換基を有していてもよいフェニル基であることが好ましい。フェニル基又はアルキル基が持ち得る置換基としては、各々1〜3個の炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子等を挙げることができるが、炭素数1〜6のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基であることがより好ましい。
R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基又は水素原子を表す。置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基であることが好ましい。
R3及びR4は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を表すか、又はR3とR4とが一緒になって環状構造を形成してもよい。R3とR4とが一緒になって形成している環状構造としては、環状アセタールが好ましい。これらのうちで、炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基が好ましく、ベンジル基であることがより好ましい。
R5は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアシル基又は炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を表す。これらのうちで、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
Xは、水素原子又は塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子を表す。塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子のなかでは、臭素原子であることが好ましい。
Yは、CH−OH又はカルボニル基を表す。
【0029】
本発明の製造方法は、次の反応式で示すことができる。
【0030】
【化19】
【0031】
すなわち、光学活性なN−ビニルイミド誘導体(6)を出発原料として、これとGrignard試薬との反応を行い、嵩高い基R1を導入して対応するアルコール誘導体を得(第1工程)、当該アルコール誘導体(3)を相間移動触媒存在下、モノフルオロカルベンと反応させ、N−2−フルオロシクロプロピルピロリドン誘導体(4)とした(第2工程)後に、所望により脱保護し、Xが水素原子以外の場合はXを除去し(第3工程)、R2が水素原子以外の場合は脱保護(第4工程)、還元(第5工程)、そして加水分解して(第6工程)、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミン(10)を得る。本発明の製造方法の好適な例としては、化合物(6)の出発物質として不斉源である光学活性な酒石酸((2S,3S)体又は(2R,3R)体)を使用する場合が挙げられる。このように不斉源となる光学活性化合物を出発物質として使用した場合には、それぞれ対応する(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピルアミン、(1S,2R)−2−フルオロシクロプロピルアミンを作り分けることが可能なため、光学分割を行う必要がない。
以下に各工程を詳細に説明する。
【0032】
出発原料となるN−ビニルイミド誘導体(6)は、光学活性な酒石酸ジエステルより、4工程で製造できる。すなわち、光学活性な酒石酸ジエステルの水酸基を保護し、得られた保護酒石酸ジエステルのエステル部位を加水分解し、次いで、その保護酒石酸を尿素で処理し、脱水縮合によって保護酒石酸イミド誘導体を得、最後にビニル基を導入する。イミド化に使用する溶媒としては、反応の進行を阻害しないものであれば如何なるものでもよく、高沸点のキシレンが好ましい。また、イミド化の中間体であるカルボン酸アミドは、溶解度が低く、環化反応の進行が遅くなるため、N,N−ジメチルホルムアミド等の極性溶媒をさらに添加することが望ましい。反応は、150〜200℃の温度範囲にて行うことが好ましい。ビニル基の導入は、一般的な方法によって実施できる。例えば、パラジウム触媒存在下、酢酸ビニルを作用させる方法を挙げることができる。また、反応温度は、溶媒の沸点付近の温度が好ましい
【0033】
第1工程:
本工程は、N−ビニルイミド誘導体にGrignard試薬を作用させ、生成するマグネシウムアルコキシドにさらにアルキル化剤又はアシル化剤を作用させる。反応溶媒は、反応の進行を阻害しないものであれば如何なるものでもよく、テトラヒドロフラン、エーテル等が好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。また、アルキル化等の際に極性の高い溶媒を添加することで反応が促進される。添加する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
アルキル化剤としては、アルキルハライド、アルキルトリフラート等を使用できるが、アルキルトリフラートであることが好ましく、メチルトリフラートであることがより好ましい。
反応は、−196℃〜溶媒の沸点の範囲で行えばよく、−78℃付近の範囲で行うことが好ましい。
【0034】
本工程では、ピロリドン環上の置換基−OR3の立体障害、置換基−OR3の酸素原子と5位のカルボニル基由来の酸素原子とのマグネシウムのキレーション形成等により立体選択的に反応が進行し、下記式に示すように、反応後キラル中心となる5位の立体は特定の配置に制御される。
【0035】
【化20】
【0036】
第2工程:
モノフルオロカルベンは、相間移動触媒の存在下、モノハロゲノフルオロメタン又はジハロゲノフルオロメタン、好ましくはジブロモフルオロメタン又はジヨードフルオロメタン、より好ましくはジブロモフルオロメタンを塩基と反応させて発生させることができる。
【0037】
相間移動触媒としては、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムスルフェート、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムクロリド等の4級ホスホニウム塩、クラウンエーテル等を挙げることができる。これらのうちで、クラウンエーテルを用いることが好ましい。クラウンエーテルとしては、18−クラウン−6、12−クラウン−4、15−クラウン−5、24−クラウン−8、ジベンゾ−18−クラウン−6、クリプタンド[2.2]、クリプタンド[2.2.2]等を挙げることができるが、使用する塩基のカウンターカチオンに応じて適切なものを選択すればよい。
【0038】
塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム等の金属水酸化物、水素化ナトリウム等の金属水素化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシドなどを挙げることができる。これらのうちで、金属水酸化物が好ましく、水酸化カリウムがより好ましい。水酸化カリウムの使用には、18−クラウン−6を選択することが好ましい。
【0039】
反応溶媒としては、水と次に示す有機溶媒とを混合して使用することが好ましい。有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン等の芳香族溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、ジアルキルエーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、エチルt−ブチルエーテル、メチルn−ブチルエーテル、エチルn−ブチルエーテル等)等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アルコール等の極性溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族溶媒等を使用することができるが、ジクロロメタン、トルエン、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ヘキサン又はシクロヘキサンであることがより好ましく、ジクロロメタン又はトルエンであることが特に好ましい。また、2種以上の有機溶媒を混合して使用してもよい。
【0040】
反応は、溶媒の凝固点〜60℃の温度範囲にて行うことができるが、溶媒の凝固点〜25℃の温度範囲にて行うことが好ましく、0℃にて行うことが特に好ましい。
【0041】
本工程で製造される化合物において、所望の配置はシス体であるが、その「シス」とは、下記式:
【0042】
【化21】
【0043】
で表される化合物のように、シクロプロパン環に置換しているフッ素原子とピロリドン環とがシクロプロパン環が形成する平面から見てシス配置であることを意味する。上記式の化合物において、シクロプロパン環の1位と2位の立体配置では、Xが塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子の場合には(1R,2R)体と(1S,2S)体とがあり、これらはピロリドン環の5位の立体配置によりさらに2種のジアステレオマーの関係にある立体異性体を生じ得る。しかしながら、本発明の製造方法においては、ピロリドン環の5位の立体配置は高い立体選択性により一方の特定配置に制御される。従って、シス体としては、(1R,2R)体及び(1S,2S)体の2種の立体異性体が生じ、その生成比の高い方を本願明細書では「cis−major」と称し、他方の生成比が低い方を「cis−minor」と称する。
ここで、cis−major体とcis−minor体とはジアステレオマーの関係にあるため、カラムクロマトグラフィー等で分離が可能となる。
また、所望ではない、下記式で表されるトランス体も副生するが、これらのうちで生成比が高い方を本願明細書では、「trans−major」と称し、他方の生成比が低い方を「trans−minor」と称する。
【0044】
【化22】
【0045】
これらのトランス体と所望のシス体とはジアステレオマーの関係にあるため、カラムクロマトグラフィー等で分離が可能となる。
【0046】
第3工程:
Xの除去は、例えば、Journal of Fluorine Chemistry、49、127−139(1990)に記載の方法に準じて実施できる。反応溶媒としては、反応の進行を阻害しないものであれば如何なるものでもよく、エタノールが好ましい。反応は、室温から溶媒の沸点付近の温度範囲にて行うことが好ましい。
【0047】
本工程で製造される化合物において、所望の配置はシス体であるが、その「シス」とは、下記式:
【0048】
【化23】
【0049】
で表される化合物のように、シクロプロパン環に置換しているフッ素原子とピロリドン環とがシクロプロパン環が形成する平面から見てシス配置であることを意味する。上記式の化合物において、シクロプロパン環の1位と2位の立体配置では、Xが塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子の場合には(1R,2S)体と(1S,2R)体とがあり、これらはピロリドン環の5位の立体配置によりさらに2種のジアステレオマーの関係にある立体異性体を生じ得る。しかしながら、本発明の製造方法においては、ピロリドン環の5位の立体配置は一方の特定配置に制御される。従って、シス体としては、(1R,2S)体及び(1S,2R)体の2種の立体異性体が生じ、その生成比の高い方を本願明細書では「cis−major」と称し、他方の生成比が低い方を「cis−minor」と称する。
ここで、cis−major体とcis−minor体とはジアステレオマーの関係にあるため、カラムクロマトグラフィー等で分離が可能となる。
また、所望ではない、下記式で表されるトランス体も副生するが、これらのうちで生成比が高い方を本願明細書では、「trans−major」と称し、他方の生成比が低い方を「trans−minor」と称する。
【0050】
【化24】
【0051】
これらのトランス体と所望のシス体とはジアステレオマーの関係にあるため、カラムクロマトグラフィー等で分離が可能である。
【0052】
第4工程:
脱アルキル化、脱アシル化又は脱アラルキル化は、通常の条件に従って実施することができる。例えば、含水溶媒中で、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸等の無機酸もしくは有機酸を作用させると脱アルキル化が進行する。水と混合する溶媒としては、反応の進行を阻害しないものであれば如何なるものでもよく、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、アセトン等が好ましく、アセトンがより好ましい。反応は、0℃から室温の範囲にて行うことが好ましい。本工程は、所望により第2工程に引き続いて実施してもよい。
【0053】
第5工程:
ピロリドン誘導体(8)は、還元反応を通常の条件に従って実施することにより開環できる。使用する還元剤は、通常は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素亜鉛、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルコキシホウ素ナトリウム等から選択して使用することができる。これらのうちでは、水素化ホウ素ナトリウムを用いることが好ましい。反応溶媒としては、反応の進行を阻害しないものであれば如何なるものでもよく、また水との混合溶媒でもよく、水とイソプロピルアルコールとの混合溶媒が好ましい。反応は、室温から溶媒の沸点付近の温度範囲にて行うことが好ましい。
【0054】
第6工程:
上記の工程で得られた光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミド誘導体は、適宜の条件下、好ましくは酸存在下で加水分解して、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミン(7)に変換することができ、その後、酸付加塩として再結晶等により高純度な光学活性体を得ることができる。
【0055】
【実施例】
以下、実施例及び参考例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
参考例1
(2R,3R)−2,3−ジベンジルオキシ酒石酸(A)の製造
(L)−酒石酸ジエチル(13.2g、64.0mmol)、炭酸カリウム(44.0g、318mmol)、ベンジルブロミド(20.0mL、168mmol)及びAliquat336(2.50g、6.19mmol)の混合物を室温にて5日間攪拌した。メタノール(28mL)を加えてシリカゲルで濾過し、酢酸エチルで洗い込んだ後に溶媒を減圧留去した。反応残渣をメタノール(120mL)に溶解させ、ここに2規定水酸化ナトリウム水溶液(80mL)を滴下し、2時間攪拌した。反応液が中性になるまで2規定塩酸を加え、塩化メチレンで抽出し、有機層を水で洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、標題化合物(18.0g、85%)を褐色油状物質として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ(ppm):
4.40(d,2H,J=11.5Hz);4.45(s,2H);4.74(d,2H,J=11.5Hz);7.27−7.32(m,10H);13.04(br−s,2H)
【0057】
参考例2
(3R,4R)−3,4−ジベンジルオキシスクシンイミド(B)の製造
化合物(A)(7.48g、22.6mmol)及びo−キシレン(75mL)の混合物を180℃に加熱し、ここに尿素(6.81g、113mmol)を加えた。180℃にて4時間攪拌した後、ジメチルホルムアミド(75mL)を加え、さらに4時間攪拌した。室温に冷却して水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標題化合物(5.29g、75%)を淡黄色油状物質として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):
4.40(s,2H);4.71(d,2H,J=11.7Hz);4.94(d,2H,J=11.7Hz);7.23−7.37(m,10H);8.90(br−s,1H)
【0058】
参考例3
(3R,4R)−N−ビニル−3,4−ジベンジルオキシスクシンイミド(C)の製造
化合物(B)(5.29g、17.0mmol)のビニルアセテート(100mL)溶液にソジウムテトラクロロパラデート(150mg、0.510mmol)を加え、90℃にて13時間攪拌した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標題化合物(4.18g、73%)を淡黄色油状物質として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):
4.38(s,2H);4.75(d,2H,J=11.7Hz);4.98(d,2H,J=11.7Hz);5.13(d,1H,J=9.7Hz);6.10(d,1H,J=16.3Hz);6.66(dd,1H,J=16.3,9.7Hz);7.29−7.37(m,10H)
【0059】
参考例4(第1工程)
(3R,4R)−N−ビニル−5−フェニル−5−メトキシ−3,4−ジベンジルオキシ−2−ピロリドン(D)の製造
マグネシウム(500mg、20.6mmol)及びヨウ素(1mg)の混合物にテトラヒドロフラン(21mL)を加え、ここに室温にて、フェニルブロミド(2.16mL、20.5mmol)を滴下し、加熱還流下30分間攪拌してGrignard試薬を調製した。
化合物(C)(1.73g、5.13mmol)のテトラヒドロフラン(35mL)溶液を−78℃に冷却し、ここに調製したGrignard試薬(10.3mL)を滴下した。−78℃にて30分間攪拌した後、再びGrignard試薬(5.1mL)を滴下し、さらに同温度にて30分間攪拌した。ジメチルホルムアミド(11.5mL)及びメチルトリフラート(6.9mL、60.9mmol)をこの順で滴下し、−78℃にて12時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止して酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標題化合物(1.72g、78%)を黄色油状物質として得た。ジアステレオマー比は、99/1であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):
3.28(s,3H);4.27(d,1H,J=8.2Hz);4.39(d,1H,J=8.2Hz);4.46(d,1H,J=11.9Hz);4.54(dd,1H,J=9.9Hz);4.57(d,1H,J=11.9Hz);4.77(d,1H,J=11.4Hz);4.98(d,1H,J=16.5Hz);5.12(d,1H,J=11.4Hz);6.65(dd,1H,J=16.5,9.9Hz);7.04−7.07(m,2H);7.23−7.42(m,13H)
【0060】
実施例1(第2工程)
(3R,4R)−N−(2’−ブロモ−2’−フルオロシクロプロピル)−5−フェニル−5−メトキシ−3,4−ジベンジルオキシ−2−ピロリドン(E)の製造
化合物(D)(352mg、0.820mmol)、18−クラウン−6−エーテル(5.50mg,0.021mmol)及びジブロモフルオロメタン(
636mg、3.32mmol)のトルエン(3mL)溶液を0℃に冷却し、ここに50%水酸化カリウム水溶液(15mL)をゆっくり滴下した。0℃にて23時間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して標題化合物(4種の立体異性体混合物、199mg、45%)を無色油状物質として得た。ジアステレオマー比は、(1’S,2’R)/(1’R,2’S)/trans−major/trans−minor=47/21/22/10であった。また、未反応の化合物(D)(142mg、40)を回収した。
1H−NMR((1’S,2’R)体, 400MHz,CDCl3) δ(ppm):
1.43(dd,1H,J=18.4,10.4Hz);2.20(ddd,1H,J=18.4,9.2,6.9Hz);2.73(dd,1H,J=0.4,6.9Hz);3.39(s,3H);4.32(d,1H,J=7.6Hz);4.43(d,1H,J=11.9Hz);4.44(d,1H,J=7.6Hz);4.51(d,1H,J=11.9Hz);4.76(d,1H,J=11.4Hz);5.16(d,1H,J=11.4Hz);7.01−7.04(m,2H);7.23−7.48(m,13H)
【0061】
実施例2(第3工程)
(3R,4R)−N−(1’S,2’R)−(2’−フルオロシクロプロピル)−5−フェニル−5−メトキシ−3,4−ジベンジルオキシ−2−ピロリドン(F)の製造
化合物(E)((1’S,2’R)体とtrans−major体との立体異性体混合物、490mg、0.906mmol)及びエチレンジアミン(0.36mL、5.39mmol)のエタノール(14mL)溶液に、ラネーニッケル(エタノールで3回洗浄、0.2mL)を加えた。反応系内を水素で置換して13時間攪拌した後、反応溶液を酢酸エチルで希釈し、シリカゲルで濾過した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標題化合物(192mg、47%)を無色油状物質として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):
0.76(dddd,1H,J=15.2,9.1,8.9,6.1Hz);1.06(dddd,1H,J=23.9,8.9,6.8,3.3Hz);;2.20−2.28(m,1H);3.38(s,3H);4.37(d,1H,J=7.9Hz);4.41(d,1H,J=11.5Hz);4.45(d,1H,J=7.9Hz);4.51(d,1H,J=11.5Hz);4.62(dm,1H,J=68Hz);4.76(d,1H,J=11.5Hz)5.18(d,1H,J=11.5Hz);6.99−7.04(m,2H);7.21−7.46(m,13H)
【0062】
実施例3(第4工程)
(3R,4R)−N−(1’S,2’R)−(2’−フルオロシクロプロピル)−5−フェニル−5−ヒドロキシ−3,4−ジベンジルオキシ−2−ピロリドン(G)の製造
化合物(F)(107mg、0.232mmol)のアセトン(5mL)溶液を0℃に冷却し、ここに9規定塩酸(2.5mL)を加えた。0℃にて10時間攪拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した。酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標題化合物(2種の立体異性体とピロリドン環が開環した構造異性体1種との混合物、103mg、89%、化合物(F)10.7mg混入)を無色油状物質として得た。
1H−NMR(主生成物, 400MHz,CDCl3) δ(ppm):
0.43−0.58(m,1H);1.53−1.69(m,1H);;2.22−2.29(m,1H);4.18−4.46(m,4H);4.39−4.70(m,1H);4.81(d,1H,J=11.3Hz); 5.13(d,1H,J=11.3Hz);7.00−7.03(m,2H);7.21−7.52(m,13H)
【0063】
実施例4(第5工程)
(2R,3R)−N−(1’S,2’R)−(2’−フルオロシクロプロピル)−4−フェニル−4−ヒドロキシ−2,3−ジベンジルオキブチルアミド(H)の製造
化合物(G)(103mg、化合物(F)10.7mg混入、0.209mmol)のイソプロピルアルコール(3.4mL)溶液に、水(0.6mL)及び水素化ホウ素ナトリウム(40.0mg、1.06mmol)を加えた。室温にて1時間30分間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標題化合物(85.9mg、92%)を無色油状物質として得た。また、化合物(E)を回収した(10.7mg)。標題化合物は、4位の立体配置により2種の立体異性体の混合物として得られた。
1H−NMR(主生成物, 400MHz,CDCl3) δ(ppm):
0.81(dddd,1H,J=27.5,8.6,5.6,3.1Hz);1.14(dddd,1H,J=14.9,8.6,8.6,6.3Hz);;2.36(d,1H,J=4.5Hz);2.72(dddd,1H,J=9.7,8.6,5.8,5.6Hz);3.90((d,1H,J=10.5Hz);3.99((dd,1H,J=8.0,2.2Hz);4.23(d,1H,J=10.5Hz);4.28(d,1H,J=2.2Hz);4.53(d,1H,J=11.1Hz);4.62(d,1H,J=11.1Hz);4.64(dddd,1H,J=64,6.3,5.8,3.1Hz);4.85(dd,1H,J=8.0,4.5Hz);6.96−7.05(m,2H);7.17−7.43(m,13H)
1H−NMR(他方の立体異性体, 400MHz,CDCl3) δ(ppm):
0.83(dddd,1H,J=25.1,8.7,5.7,3.1Hz);1.15(dddd,1H,J=14.9,8.7,8.4,6.2Hz);2.72(dddd,1H,J=8.6,8.4,6.1,5.7Hz);3.10((d,1H,J=3.2Hz);3.83((d,1H,J=3.5Hz);4.01(dd,1H,J=6.2,3.5Hz);4.37(d,1H,J=11.1Hz);4.41(d,1H,J=11.1Hz);4.44(d,1H,J=11.1Hz);4.58(d,1H,J=11.1Hz);4.64(dddd,1H,J=64,6.2,6.1,3.1Hz);4.90(dd,1H,J=6.2,3.2Hz);6.96−6.97(m,2H);7.20−7.40(m,13H)
【0064】
実施例5(第6工程)
(1S,2R)−2−フルオロシクロプロピルアミン p−トルエンスルホン酸1水和物(I)の製造
化合物(H)(109mg、0.243mmol)のジエチルエーテル(2.0mL)溶液に、p−トルエンスルホン酸1水和物(55.4mg、0.291mmol)を加えた。室温にて1時間攪拌後、p−トルエンスルホン酸1水和物(20.0mg、0.105mmol)及びジエチルエーテル(1.0mL)を加え、さらに1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、標題化合物(43.5mg、72%)を白色結晶として得た。本化合物を3,5−ジニトロベンゾイル化し、高速液体クロマトグラフィーにより光学純度を測定したところ、83%e.e.であった。
1H−NMR(400MHz,CD3OD) δ(ppm):
1.16−1.29(m,2H);2.36(s,3H);2.63−2.70(m,1H);4.84(dm,1H,J=64Hz);7.23(d,1H,J=8.2Hz);7.70(d,1H,J=8.2Hz)
【0065】
【発明の効果】
優れた抗菌剤であるキノロン誘導体の製造原料として有用な光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミンを立体選択的にかつ工業的に有利に製造できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた抗菌剤であるキノロン誘導体の製造原料として有用な、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミンの製造方法、及びその製造中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ニューキノロン系の合成抗菌薬の中で、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピル基を1位の置換基として有するキノロン誘導体は、強い抗菌活性と高い安全性を兼ね備えており優れた合成抗菌剤として期待されている(特許文献1参照)。この光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピル基を構築するために有用な光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミンの製造方法として、ブタジエンを出発原料として4工程で製造する方法が知られているが(非特許文献1参照)、フルオロシクロプロパン環形成反応におけるシス選択性が低いうえに、有毒かつ高価な試薬を使用するため、工業的に不利であった。また、1−フェニルアルキルアミンを出発原料として5工程で製造する方法は、シクロプロパン化において危険なジエチル亜鉛を使用するため(特許文献2及び特許文献3参照)、やはり工業的には不適な方法であった。さらに、これらの製造方法では、光学活性体を得るために光学分割を行わなければならなかった。
【0003】
【特許文献1】
特開平2−231475号公報
【特許文献2】
特開平5−163212号公報
【特許文献3】
特開平6−92911号公報
【非特許文献1】
和歌山大学教育学部紀要33巻、33(1984)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、安全かつ安価で工業的に有利に、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミンを製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミンの製造方法について鋭意検討を行った結果、例えば、酒石酸のような不斉源化合物より導かれた光学活性なN−ビニルピロリドン誘導体を出発原料として、相間移動触媒の存在下、モノフルオロカルベンを反応させることにより、酒石酸のような不斉源化合物の立体配置に基づいて光学活性な当該アミン化合物が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、一般式(1):
【0006】
【化10】
【0007】
[式中、R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の鎖状のアルキル基もしくは置換基を有していてもよい炭素数3〜12の環状のアルキル基を意味し;R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基又は水素原子を意味し;R3及びR4は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味するか、又はR3及びR4が一緒になって環状構造を形成してもよく;Xは、水素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。]で表される化合物を提供する
【0008】
また、本発明は、一般式(2):
【0009】
【化11】
【0010】
[式中、R1、R3及びR4は、前に定義したとおりであり;Yは、CH−OH又はカルボニル基を意味する。]で表される化合物を提供する。
【0011】
また、本発明は、一般式(3):
【0012】
【化12】
【0013】
[式中、R1、R3及びR4は、前に定義したとおりであり;R5は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアシル基又は炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を意味する。]で表される化合物にモノフルオロカルベンを反応させ、所望により加水分解することを特徴とする、一般式(1):
【0014】
【化13】
【0015】
[式中、R1、R2、R3、R4及びXは、前に定義したとおりである。]で表される化合物の製造方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、一般式(4):
【0017】
【化14】
【0018】
[式中、R1、R2、R3、R4及びXは、前に定義したとおりである。]で表される化合物から、Xが水素原子以外の場合は還元によりXを除去し、R2が水素原子以外の場合は加水分解により脱保護し、更に還元することを特徴とする、一般式(5):
【0019】
【化15】
【0020】
[式中、R1、R3及びR4は、前に定義したとおりである。]で表される化合物の製造方法を提供する。
【0021】
本発明はさらにまた、一般式(3):
【0022】
【化16】
【0023】
[式中、R1、R3、R4及びR5は、前に定義したとおりである。]で表される化合物にモノフルオロカルベンを反応させ、所望により加水分解して一般式(4):
【0024】
【化17】
【0025】
[式中、R1、R2、R3、R4及びXは、前に定義したとおりである。]で表される化合物を得、当該化合物から、Xが水素原子以外の場合は還元によりXを除去し、R2が水素原子以外の場合は加水分解により脱保護し、更に還元することにより、一般式(5):
【0026】
【化18】
【0027】
[式中、R1、R3及びR4は、前に定義したとおりである。]で表される化合物を得、そして該化合物を加水分解することを特徴とする、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミンの製造方法を提供する。
【0028】
【発明の実施の形態】
式中、R1は、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12の鎖状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等)もしくは置換基を有していてもよい炭素数3〜12の環状のアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)を表す。これらのうちで、置換基を有していてもよいフェニル基であることが好ましい。フェニル基又はアルキル基が持ち得る置換基としては、各々1〜3個の炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ハロゲン原子等を挙げることができるが、炭素数1〜6のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基であることがより好ましい。
R2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアシル基、炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基又は水素原子を表す。置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基であることが好ましい。
R3及びR4は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、もしくは炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を表すか、又はR3とR4とが一緒になって環状構造を形成してもよい。R3とR4とが一緒になって形成している環状構造としては、環状アセタールが好ましい。これらのうちで、炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基が好ましく、ベンジル基であることがより好ましい。
R5は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜7のアシル基又は炭素数1〜6のアルキル基と置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基とからなるアラルキル基を表す。これらのうちで、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
Xは、水素原子又は塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子を表す。塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子のなかでは、臭素原子であることが好ましい。
Yは、CH−OH又はカルボニル基を表す。
【0029】
本発明の製造方法は、次の反応式で示すことができる。
【0030】
【化19】
【0031】
すなわち、光学活性なN−ビニルイミド誘導体(6)を出発原料として、これとGrignard試薬との反応を行い、嵩高い基R1を導入して対応するアルコール誘導体を得(第1工程)、当該アルコール誘導体(3)を相間移動触媒存在下、モノフルオロカルベンと反応させ、N−2−フルオロシクロプロピルピロリドン誘導体(4)とした(第2工程)後に、所望により脱保護し、Xが水素原子以外の場合はXを除去し(第3工程)、R2が水素原子以外の場合は脱保護(第4工程)、還元(第5工程)、そして加水分解して(第6工程)、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミン(10)を得る。本発明の製造方法の好適な例としては、化合物(6)の出発物質として不斉源である光学活性な酒石酸((2S,3S)体又は(2R,3R)体)を使用する場合が挙げられる。このように不斉源となる光学活性化合物を出発物質として使用した場合には、それぞれ対応する(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピルアミン、(1S,2R)−2−フルオロシクロプロピルアミンを作り分けることが可能なため、光学分割を行う必要がない。
以下に各工程を詳細に説明する。
【0032】
出発原料となるN−ビニルイミド誘導体(6)は、光学活性な酒石酸ジエステルより、4工程で製造できる。すなわち、光学活性な酒石酸ジエステルの水酸基を保護し、得られた保護酒石酸ジエステルのエステル部位を加水分解し、次いで、その保護酒石酸を尿素で処理し、脱水縮合によって保護酒石酸イミド誘導体を得、最後にビニル基を導入する。イミド化に使用する溶媒としては、反応の進行を阻害しないものであれば如何なるものでもよく、高沸点のキシレンが好ましい。また、イミド化の中間体であるカルボン酸アミドは、溶解度が低く、環化反応の進行が遅くなるため、N,N−ジメチルホルムアミド等の極性溶媒をさらに添加することが望ましい。反応は、150〜200℃の温度範囲にて行うことが好ましい。ビニル基の導入は、一般的な方法によって実施できる。例えば、パラジウム触媒存在下、酢酸ビニルを作用させる方法を挙げることができる。また、反応温度は、溶媒の沸点付近の温度が好ましい
【0033】
第1工程:
本工程は、N−ビニルイミド誘導体にGrignard試薬を作用させ、生成するマグネシウムアルコキシドにさらにアルキル化剤又はアシル化剤を作用させる。反応溶媒は、反応の進行を阻害しないものであれば如何なるものでもよく、テトラヒドロフラン、エーテル等が好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。また、アルキル化等の際に極性の高い溶媒を添加することで反応が促進される。添加する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
アルキル化剤としては、アルキルハライド、アルキルトリフラート等を使用できるが、アルキルトリフラートであることが好ましく、メチルトリフラートであることがより好ましい。
反応は、−196℃〜溶媒の沸点の範囲で行えばよく、−78℃付近の範囲で行うことが好ましい。
【0034】
本工程では、ピロリドン環上の置換基−OR3の立体障害、置換基−OR3の酸素原子と5位のカルボニル基由来の酸素原子とのマグネシウムのキレーション形成等により立体選択的に反応が進行し、下記式に示すように、反応後キラル中心となる5位の立体は特定の配置に制御される。
【0035】
【化20】
【0036】
第2工程:
モノフルオロカルベンは、相間移動触媒の存在下、モノハロゲノフルオロメタン又はジハロゲノフルオロメタン、好ましくはジブロモフルオロメタン又はジヨードフルオロメタン、より好ましくはジブロモフルオロメタンを塩基と反応させて発生させることができる。
【0037】
相間移動触媒としては、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムスルフェート、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムクロリド等の4級ホスホニウム塩、クラウンエーテル等を挙げることができる。これらのうちで、クラウンエーテルを用いることが好ましい。クラウンエーテルとしては、18−クラウン−6、12−クラウン−4、15−クラウン−5、24−クラウン−8、ジベンゾ−18−クラウン−6、クリプタンド[2.2]、クリプタンド[2.2.2]等を挙げることができるが、使用する塩基のカウンターカチオンに応じて適切なものを選択すればよい。
【0038】
塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム等の金属水酸化物、水素化ナトリウム等の金属水素化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシドなどを挙げることができる。これらのうちで、金属水酸化物が好ましく、水酸化カリウムがより好ましい。水酸化カリウムの使用には、18−クラウン−6を選択することが好ましい。
【0039】
反応溶媒としては、水と次に示す有機溶媒とを混合して使用することが好ましい。有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン等の芳香族溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、ジアルキルエーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、エチルt−ブチルエーテル、メチルn−ブチルエーテル、エチルn−ブチルエーテル等)等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アルコール等の極性溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族溶媒等を使用することができるが、ジクロロメタン、トルエン、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ヘキサン又はシクロヘキサンであることがより好ましく、ジクロロメタン又はトルエンであることが特に好ましい。また、2種以上の有機溶媒を混合して使用してもよい。
【0040】
反応は、溶媒の凝固点〜60℃の温度範囲にて行うことができるが、溶媒の凝固点〜25℃の温度範囲にて行うことが好ましく、0℃にて行うことが特に好ましい。
【0041】
本工程で製造される化合物において、所望の配置はシス体であるが、その「シス」とは、下記式:
【0042】
【化21】
【0043】
で表される化合物のように、シクロプロパン環に置換しているフッ素原子とピロリドン環とがシクロプロパン環が形成する平面から見てシス配置であることを意味する。上記式の化合物において、シクロプロパン環の1位と2位の立体配置では、Xが塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子の場合には(1R,2R)体と(1S,2S)体とがあり、これらはピロリドン環の5位の立体配置によりさらに2種のジアステレオマーの関係にある立体異性体を生じ得る。しかしながら、本発明の製造方法においては、ピロリドン環の5位の立体配置は高い立体選択性により一方の特定配置に制御される。従って、シス体としては、(1R,2R)体及び(1S,2S)体の2種の立体異性体が生じ、その生成比の高い方を本願明細書では「cis−major」と称し、他方の生成比が低い方を「cis−minor」と称する。
ここで、cis−major体とcis−minor体とはジアステレオマーの関係にあるため、カラムクロマトグラフィー等で分離が可能となる。
また、所望ではない、下記式で表されるトランス体も副生するが、これらのうちで生成比が高い方を本願明細書では、「trans−major」と称し、他方の生成比が低い方を「trans−minor」と称する。
【0044】
【化22】
【0045】
これらのトランス体と所望のシス体とはジアステレオマーの関係にあるため、カラムクロマトグラフィー等で分離が可能となる。
【0046】
第3工程:
Xの除去は、例えば、Journal of Fluorine Chemistry、49、127−139(1990)に記載の方法に準じて実施できる。反応溶媒としては、反応の進行を阻害しないものであれば如何なるものでもよく、エタノールが好ましい。反応は、室温から溶媒の沸点付近の温度範囲にて行うことが好ましい。
【0047】
本工程で製造される化合物において、所望の配置はシス体であるが、その「シス」とは、下記式:
【0048】
【化23】
【0049】
で表される化合物のように、シクロプロパン環に置換しているフッ素原子とピロリドン環とがシクロプロパン環が形成する平面から見てシス配置であることを意味する。上記式の化合物において、シクロプロパン環の1位と2位の立体配置では、Xが塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子の場合には(1R,2S)体と(1S,2R)体とがあり、これらはピロリドン環の5位の立体配置によりさらに2種のジアステレオマーの関係にある立体異性体を生じ得る。しかしながら、本発明の製造方法においては、ピロリドン環の5位の立体配置は一方の特定配置に制御される。従って、シス体としては、(1R,2S)体及び(1S,2R)体の2種の立体異性体が生じ、その生成比の高い方を本願明細書では「cis−major」と称し、他方の生成比が低い方を「cis−minor」と称する。
ここで、cis−major体とcis−minor体とはジアステレオマーの関係にあるため、カラムクロマトグラフィー等で分離が可能となる。
また、所望ではない、下記式で表されるトランス体も副生するが、これらのうちで生成比が高い方を本願明細書では、「trans−major」と称し、他方の生成比が低い方を「trans−minor」と称する。
【0050】
【化24】
【0051】
これらのトランス体と所望のシス体とはジアステレオマーの関係にあるため、カラムクロマトグラフィー等で分離が可能である。
【0052】
第4工程:
脱アルキル化、脱アシル化又は脱アラルキル化は、通常の条件に従って実施することができる。例えば、含水溶媒中で、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸等の無機酸もしくは有機酸を作用させると脱アルキル化が進行する。水と混合する溶媒としては、反応の進行を阻害しないものであれば如何なるものでもよく、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、アセトン等が好ましく、アセトンがより好ましい。反応は、0℃から室温の範囲にて行うことが好ましい。本工程は、所望により第2工程に引き続いて実施してもよい。
【0053】
第5工程:
ピロリドン誘導体(8)は、還元反応を通常の条件に従って実施することにより開環できる。使用する還元剤は、通常は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素亜鉛、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルコキシホウ素ナトリウム等から選択して使用することができる。これらのうちでは、水素化ホウ素ナトリウムを用いることが好ましい。反応溶媒としては、反応の進行を阻害しないものであれば如何なるものでもよく、また水との混合溶媒でもよく、水とイソプロピルアルコールとの混合溶媒が好ましい。反応は、室温から溶媒の沸点付近の温度範囲にて行うことが好ましい。
【0054】
第6工程:
上記の工程で得られた光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミド誘導体は、適宜の条件下、好ましくは酸存在下で加水分解して、光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミン(7)に変換することができ、その後、酸付加塩として再結晶等により高純度な光学活性体を得ることができる。
【0055】
【実施例】
以下、実施例及び参考例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
参考例1
(2R,3R)−2,3−ジベンジルオキシ酒石酸(A)の製造
(L)−酒石酸ジエチル(13.2g、64.0mmol)、炭酸カリウム(44.0g、318mmol)、ベンジルブロミド(20.0mL、168mmol)及びAliquat336(2.50g、6.19mmol)の混合物を室温にて5日間攪拌した。メタノール(28mL)を加えてシリカゲルで濾過し、酢酸エチルで洗い込んだ後に溶媒を減圧留去した。反応残渣をメタノール(120mL)に溶解させ、ここに2規定水酸化ナトリウム水溶液(80mL)を滴下し、2時間攪拌した。反応液が中性になるまで2規定塩酸を加え、塩化メチレンで抽出し、有機層を水で洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、標題化合物(18.0g、85%)を褐色油状物質として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ(ppm):
4.40(d,2H,J=11.5Hz);4.45(s,2H);4.74(d,2H,J=11.5Hz);7.27−7.32(m,10H);13.04(br−s,2H)
【0057】
参考例2
(3R,4R)−3,4−ジベンジルオキシスクシンイミド(B)の製造
化合物(A)(7.48g、22.6mmol)及びo−キシレン(75mL)の混合物を180℃に加熱し、ここに尿素(6.81g、113mmol)を加えた。180℃にて4時間攪拌した後、ジメチルホルムアミド(75mL)を加え、さらに4時間攪拌した。室温に冷却して水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標題化合物(5.29g、75%)を淡黄色油状物質として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):
4.40(s,2H);4.71(d,2H,J=11.7Hz);4.94(d,2H,J=11.7Hz);7.23−7.37(m,10H);8.90(br−s,1H)
【0058】
参考例3
(3R,4R)−N−ビニル−3,4−ジベンジルオキシスクシンイミド(C)の製造
化合物(B)(5.29g、17.0mmol)のビニルアセテート(100mL)溶液にソジウムテトラクロロパラデート(150mg、0.510mmol)を加え、90℃にて13時間攪拌した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標題化合物(4.18g、73%)を淡黄色油状物質として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):
4.38(s,2H);4.75(d,2H,J=11.7Hz);4.98(d,2H,J=11.7Hz);5.13(d,1H,J=9.7Hz);6.10(d,1H,J=16.3Hz);6.66(dd,1H,J=16.3,9.7Hz);7.29−7.37(m,10H)
【0059】
参考例4(第1工程)
(3R,4R)−N−ビニル−5−フェニル−5−メトキシ−3,4−ジベンジルオキシ−2−ピロリドン(D)の製造
マグネシウム(500mg、20.6mmol)及びヨウ素(1mg)の混合物にテトラヒドロフラン(21mL)を加え、ここに室温にて、フェニルブロミド(2.16mL、20.5mmol)を滴下し、加熱還流下30分間攪拌してGrignard試薬を調製した。
化合物(C)(1.73g、5.13mmol)のテトラヒドロフラン(35mL)溶液を−78℃に冷却し、ここに調製したGrignard試薬(10.3mL)を滴下した。−78℃にて30分間攪拌した後、再びGrignard試薬(5.1mL)を滴下し、さらに同温度にて30分間攪拌した。ジメチルホルムアミド(11.5mL)及びメチルトリフラート(6.9mL、60.9mmol)をこの順で滴下し、−78℃にて12時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止して酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標題化合物(1.72g、78%)を黄色油状物質として得た。ジアステレオマー比は、99/1であった。
1H−NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):
3.28(s,3H);4.27(d,1H,J=8.2Hz);4.39(d,1H,J=8.2Hz);4.46(d,1H,J=11.9Hz);4.54(dd,1H,J=9.9Hz);4.57(d,1H,J=11.9Hz);4.77(d,1H,J=11.4Hz);4.98(d,1H,J=16.5Hz);5.12(d,1H,J=11.4Hz);6.65(dd,1H,J=16.5,9.9Hz);7.04−7.07(m,2H);7.23−7.42(m,13H)
【0060】
実施例1(第2工程)
(3R,4R)−N−(2’−ブロモ−2’−フルオロシクロプロピル)−5−フェニル−5−メトキシ−3,4−ジベンジルオキシ−2−ピロリドン(E)の製造
化合物(D)(352mg、0.820mmol)、18−クラウン−6−エーテル(5.50mg,0.021mmol)及びジブロモフルオロメタン(
636mg、3.32mmol)のトルエン(3mL)溶液を0℃に冷却し、ここに50%水酸化カリウム水溶液(15mL)をゆっくり滴下した。0℃にて23時間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して標題化合物(4種の立体異性体混合物、199mg、45%)を無色油状物質として得た。ジアステレオマー比は、(1’S,2’R)/(1’R,2’S)/trans−major/trans−minor=47/21/22/10であった。また、未反応の化合物(D)(142mg、40)を回収した。
1H−NMR((1’S,2’R)体, 400MHz,CDCl3) δ(ppm):
1.43(dd,1H,J=18.4,10.4Hz);2.20(ddd,1H,J=18.4,9.2,6.9Hz);2.73(dd,1H,J=0.4,6.9Hz);3.39(s,3H);4.32(d,1H,J=7.6Hz);4.43(d,1H,J=11.9Hz);4.44(d,1H,J=7.6Hz);4.51(d,1H,J=11.9Hz);4.76(d,1H,J=11.4Hz);5.16(d,1H,J=11.4Hz);7.01−7.04(m,2H);7.23−7.48(m,13H)
【0061】
実施例2(第3工程)
(3R,4R)−N−(1’S,2’R)−(2’−フルオロシクロプロピル)−5−フェニル−5−メトキシ−3,4−ジベンジルオキシ−2−ピロリドン(F)の製造
化合物(E)((1’S,2’R)体とtrans−major体との立体異性体混合物、490mg、0.906mmol)及びエチレンジアミン(0.36mL、5.39mmol)のエタノール(14mL)溶液に、ラネーニッケル(エタノールで3回洗浄、0.2mL)を加えた。反応系内を水素で置換して13時間攪拌した後、反応溶液を酢酸エチルで希釈し、シリカゲルで濾過した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標題化合物(192mg、47%)を無色油状物質として得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3) δ(ppm):
0.76(dddd,1H,J=15.2,9.1,8.9,6.1Hz);1.06(dddd,1H,J=23.9,8.9,6.8,3.3Hz);;2.20−2.28(m,1H);3.38(s,3H);4.37(d,1H,J=7.9Hz);4.41(d,1H,J=11.5Hz);4.45(d,1H,J=7.9Hz);4.51(d,1H,J=11.5Hz);4.62(dm,1H,J=68Hz);4.76(d,1H,J=11.5Hz)5.18(d,1H,J=11.5Hz);6.99−7.04(m,2H);7.21−7.46(m,13H)
【0062】
実施例3(第4工程)
(3R,4R)−N−(1’S,2’R)−(2’−フルオロシクロプロピル)−5−フェニル−5−ヒドロキシ−3,4−ジベンジルオキシ−2−ピロリドン(G)の製造
化合物(F)(107mg、0.232mmol)のアセトン(5mL)溶液を0℃に冷却し、ここに9規定塩酸(2.5mL)を加えた。0℃にて10時間攪拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した。酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標題化合物(2種の立体異性体とピロリドン環が開環した構造異性体1種との混合物、103mg、89%、化合物(F)10.7mg混入)を無色油状物質として得た。
1H−NMR(主生成物, 400MHz,CDCl3) δ(ppm):
0.43−0.58(m,1H);1.53−1.69(m,1H);;2.22−2.29(m,1H);4.18−4.46(m,4H);4.39−4.70(m,1H);4.81(d,1H,J=11.3Hz); 5.13(d,1H,J=11.3Hz);7.00−7.03(m,2H);7.21−7.52(m,13H)
【0063】
実施例4(第5工程)
(2R,3R)−N−(1’S,2’R)−(2’−フルオロシクロプロピル)−4−フェニル−4−ヒドロキシ−2,3−ジベンジルオキブチルアミド(H)の製造
化合物(G)(103mg、化合物(F)10.7mg混入、0.209mmol)のイソプロピルアルコール(3.4mL)溶液に、水(0.6mL)及び水素化ホウ素ナトリウム(40.0mg、1.06mmol)を加えた。室温にて1時間30分間攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標題化合物(85.9mg、92%)を無色油状物質として得た。また、化合物(E)を回収した(10.7mg)。標題化合物は、4位の立体配置により2種の立体異性体の混合物として得られた。
1H−NMR(主生成物, 400MHz,CDCl3) δ(ppm):
0.81(dddd,1H,J=27.5,8.6,5.6,3.1Hz);1.14(dddd,1H,J=14.9,8.6,8.6,6.3Hz);;2.36(d,1H,J=4.5Hz);2.72(dddd,1H,J=9.7,8.6,5.8,5.6Hz);3.90((d,1H,J=10.5Hz);3.99((dd,1H,J=8.0,2.2Hz);4.23(d,1H,J=10.5Hz);4.28(d,1H,J=2.2Hz);4.53(d,1H,J=11.1Hz);4.62(d,1H,J=11.1Hz);4.64(dddd,1H,J=64,6.3,5.8,3.1Hz);4.85(dd,1H,J=8.0,4.5Hz);6.96−7.05(m,2H);7.17−7.43(m,13H)
1H−NMR(他方の立体異性体, 400MHz,CDCl3) δ(ppm):
0.83(dddd,1H,J=25.1,8.7,5.7,3.1Hz);1.15(dddd,1H,J=14.9,8.7,8.4,6.2Hz);2.72(dddd,1H,J=8.6,8.4,6.1,5.7Hz);3.10((d,1H,J=3.2Hz);3.83((d,1H,J=3.5Hz);4.01(dd,1H,J=6.2,3.5Hz);4.37(d,1H,J=11.1Hz);4.41(d,1H,J=11.1Hz);4.44(d,1H,J=11.1Hz);4.58(d,1H,J=11.1Hz);4.64(dddd,1H,J=64,6.2,6.1,3.1Hz);4.90(dd,1H,J=6.2,3.2Hz);6.96−6.97(m,2H);7.20−7.40(m,13H)
【0064】
実施例5(第6工程)
(1S,2R)−2−フルオロシクロプロピルアミン p−トルエンスルホン酸1水和物(I)の製造
化合物(H)(109mg、0.243mmol)のジエチルエーテル(2.0mL)溶液に、p−トルエンスルホン酸1水和物(55.4mg、0.291mmol)を加えた。室温にて1時間攪拌後、p−トルエンスルホン酸1水和物(20.0mg、0.105mmol)及びジエチルエーテル(1.0mL)を加え、さらに1時間攪拌した。析出した結晶を濾取し、標題化合物(43.5mg、72%)を白色結晶として得た。本化合物を3,5−ジニトロベンゾイル化し、高速液体クロマトグラフィーにより光学純度を測定したところ、83%e.e.であった。
1H−NMR(400MHz,CD3OD) δ(ppm):
1.16−1.29(m,2H);2.36(s,3H);2.63−2.70(m,1H);4.84(dm,1H,J=64Hz);7.23(d,1H,J=8.2Hz);7.70(d,1H,J=8.2Hz)
【0065】
【発明の効果】
優れた抗菌剤であるキノロン誘導体の製造原料として有用な光学活性なシス−2−フルオロシクロプロピルアミンを立体選択的にかつ工業的に有利に製造できる。
Claims (14)
- 一般式(1):
- 一般式(1)において、ピロリドン環の3位、4位及び5位が特定の立体配置を有するものである請求項1記載の化合物。
- ピロリドン環の3位及び4位の立体配置が、(3S,4S)又は(3R,4R)である請求項2記載の化合物。
- 一般式(2)において、酸素原子を介してR4が結合している2位のキラル中心及び酸素原子を介してR3が結合している3位のキラル中心が特定の立体配置を有するものである請求項4記載の化合物。
- 一般式(2)において、酸素原子を介してR4が結合している2位のキラル中心及び酸素原子を介してR3が結合している3位のキラル中心の立体配置が、(2S、3S)又は(2R、3R)である請求項4記載の化合物。
- モノフルオロカルベンが、相間移動触媒の存在下、ジブロモフルオロメタンと塩基との反応により発生するものである請求項7又は9記載の製造方法。
- 塩基が、水酸化カリウムである請求項10記載の製造方法。
- 相間移動触媒が、18−クラウン−6エーテルである請求項10記載の製造方法。
- 一般式(1)、(3)及び(4)において、ピロリドン環の3位、4位及び5位が特定の立体配置を有するものである請求項7〜9のいずれか1項記載の製造方法。
- ピロリドン環の3位及び4位の立体配置が、(3S,4S)又は(3R,4R)である請求項13記載の製造方法。
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-
2003
- 2003-01-23 JP JP2003015319A patent/JP2004224740A/ja active Pending
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